(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】眼疾患および障害を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20240514BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240514BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240514BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20240514BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240514BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240514BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240514BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240514BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240514BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/35 ZNA
C12N15/864 100Z
A61P27/02
A61K48/00
A61P25/00
A61P27/12
A61P27/06
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A61P17/00
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A61P7/04
A61P7/06
A61P3/10
A61P19/02
A61P35/00
A61P9/00
A61P25/08
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K31/7105
A61K31/713
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571323
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022029797
(87)【国際公開番号】W WO2022245919
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520032893
【氏名又は名称】アビオナ・セラピュ―ティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Abeona Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パデジマス, ライナス
(72)【発明者】
【氏名】ケバニー, ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
向上した遺伝子治療のための組換えAAVベクター、AAVウイルスベクター、カプシドタンパク質、および投与方法、ならびにそれらの生産および使用方法が本明細書において提供される。本発明は、例えば、眼疾患または障害の処置を必要とする対象において眼疾患または障害を処置する方法であって、前記対象へのAAVウイルスベクターの傍網膜投与を含み、前記AAVウイルスベクターが、配列番号2のアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼疾患または障害の処置を必要とする対象において眼疾患または障害を処置する方法であって、前記対象へのAAVウイルスベクターの傍網膜投与を含み、前記AAVウイルスベクターが、配列番号2のアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む、方法。
【請求項2】
眼疾患または障害の処置を必要とする対象において眼疾患または障害を処置する方法であって、前記対象へのAAVウイルスベクターの傍網膜投与を含み、前記AAVウイルスベクターが、配列番号1~3、30~34、49、67、84、および164のいずれか1つに対して少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、方法。
【請求項3】
前記AAVウイルスベクターが、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸が配列番号1~3、30~34、49、67、84および164のいずれか1つと異なるアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記AAVウイルスベクターが、配列番号2のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号2と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記AAVカプシドタンパク質が、配列番号2のアミノ酸129におけるロイシン(L)、配列番号2のアミノ酸586におけるアスパラギン(N)、および配列番号2のアミノ酸723におけるグルタミン酸(E)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記AAVウイルスベクターが、配列番号1のアミノ酸配列または最大2、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号1と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記AAVカプシドタンパク質が、アミノ酸129におけるロイシン(L)、アミノ酸148におけるプロリン(P)、アミノ酸152におけるアルギニン(R)、アミノ酸153におけるセリン(S)、アミノ酸158におけるスレオニン(T)、アミノ酸163におけるリシン(K)、アミノ酸169におけるアルギニン(R)、アミノ酸306におけるトリプトファン(W)、アミノ酸308におけるフェニルアラニン(F)、およびアミノ酸319におけるアスパラギン(N)を含み、アミノ酸位置が配列番号1に関して番号付けされたものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記AAVウイルスベクターが、配列番号164のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号164と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記AAVウイルスベクターが、配列番号67のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号67と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記AAVウイルスベクターが、配列番号3のアミノ酸配列または最大2、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号3と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記AAVカプシドタンパク質が、可変領域(VR)I~IXを含むVP3部分を含み、
(a)VR-IIがアミノ酸配列DNNGVK(配列番号54)を含み、
(b)VR-IIIがアミノ酸配列NDGS(配列番号55)を含み、
(c)VR-IVがアミノ酸配列INGSGQNQQT(配列番号56)またはQSTGGTAGTQQ(配列番号171)を含み、
(d)VR-Vがアミノ酸配列RVSTTTGQNNNSNFAWTA(配列番号57)を含み、
(e)VR-VIがアミノ酸配列HKEGEDRFFPLSG(配列番号58)を含み、
(f)VR-VIIがアミノ酸配列KQNAARDNADYSDV(配列番号59)を含み、
(g)VR-VIIIがアミノ酸配列ADNLQQQNTAPQI(配列番号60)を含み、かつ
(h)VR-IXがアミノ酸配列NYYKSTSVDF(配列番号61)を含む、
請求項2~3および10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記VR-I領域が、SASTGAS(配列番号52)、NSTSGGSS(配列番号53)、SSTSGGSS(配列番号87)、またはNGTSGGST(配列番号170)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記眼疾患または障害が、優性視神経萎縮症、網膜色素変性症、黄斑変性症、ベストロフィン-1(BEST-1)遺伝子中の変異に関する眼障害、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、シュタルガルト病、コロイデレミア、アッシャー症候群、網膜分離症、ビエッティ結晶性ジストロフィーおよび色覚異常からなる群より選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記網膜色素変性症が、常染色体劣性、常染色体優性、またはX連鎖性である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
BEST-1遺伝子中の変異に関する前記眼障害が、卵黄様黄斑ジストロフィー、加齢性黄斑変性症、常染色体優性硝子体網膜脈絡膜症、緑内障、または白内障である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記AAVウイルスベクターが、SPATA7、LRAT、TULP1、AIPL1、RPGR、AIPL1、ABCA4、CHM、MY07A、CDH23、USH2A、CLRN1、RS1、CYP4V2、CNGA3、CNGB3、GNAT2、RHO、PDE6B、PDE6C、PDE6H、OPA1、OPA3、およびBEST-1から選択される遺伝子をコードするAAVベクターゲノムを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記AAVウイルスベクターが、アンチセンスRNA、microRNA、siRNA、またはガイドRNA(gRNA)をコードするAAVベクターを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記眼疾患または障害が視神経の機能障害に関する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記眼疾患または障害が優性視神経萎縮症である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記AAVウイルスベクターが、OPA1またはOPA3導入遺伝子を含むAAVベクターゲノムを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記眼疾患または障害が網膜分離症である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記AAVウイルスベクターが、RS1導入遺伝子を含むAAVベクターゲノムを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記傍網膜投与が、網膜の表面から0~13ミリメートル(mm)、0~10mm、0~5mm、または0~3mmの距離において目の後部硝子体腔中に注射することを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象がヒトである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
VP3部分を含むAAVカプシドタンパク質をコードする核酸であって、前記VP3部分が可変領域(VR)I~IXを含み、
(a)VR-IIがアミノ酸配列DNNGVK(配列番号54)を含み、
(b)VR-IIIがアミノ酸配列NDGS(配列番号55)を含み、
(c)VR-IVがアミノ酸配列QSTGGTAGTQQ(配列番号171)を含み、
(d)VR-Vがアミノ酸配列RVSTTTGQNNNSNFAWTA(配列番号57)を含み、
(e)VR-VIがアミノ酸配列HKEGEDRFFPLSG(配列番号58)を含み、
(f)VR-VIIがアミノ酸配列KQNAARDNADYSDV(配列番号59)を含み、
(g)VR-VIIIがアミノ酸配列ADNLQQQNTAPQI(配列番号60)を含み、かつ
(h)VR-IXがアミノ酸配列NYYKSTSVDF(配列番号61)を含む、
核酸。
【請求項26】
前記VR-I領域がNGTSGGST(配列番号170)を含む、請求項25に記載の核酸。
【請求項27】
前記VP3部分が配列番号166のアミノ酸配列を有する、請求項25に記載の核酸。
【請求項28】
前記AAVカプシドタンパク質が、i)VP2部分またはii)VP1部分およびVP2部分をさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項29】
コードされる前記AAVカプシドタンパク質が、配列番号164に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号164と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項30】
コードされる前記AAVカプシドタンパク質が、配列番号165に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号165と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項31】
コードされる前記AAVカプシドタンパク質が、配列番号166に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項32】
前記核酸の配列が、配列番号167~169から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一である、請求項25~31のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項33】
前記核酸の配列が、配列番号167~169から選択されるヌクレオチド配列に対して100%同一である、請求項25~31のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項34】
請求項25~33のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項35】
請求項25~33のいずれか一項に記載の核酸によりコードされるAAVカプシドタンパク質。
【請求項36】
配列番号164、165もしくは166のアミノ酸配列、または配列番号164、165もしくは166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、請求項35に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項37】
請求項25~33のいずれか一項に記載の核酸によりコードされるAAVカプシドタンパク質およびAAVベクターゲノムを含むAAVウイルスベクターであって、前記AAVベクターゲノムが、5’から3’への方向に、
(a)第1のAAV逆位末端反復配列、
(b)プロモーター、
(c)異種核酸、
(d)ポリアデニル化シグナル、および
(e)第2のAAV逆位末端反復配列
を含む、AAVウイルスベクター。
【請求項38】
前記異種核酸が、構成的プロモーターに作動可能に連結している、請求項37に記載のAAVウイルスベクター。
【請求項39】
前記異種核酸がポリペプチドをコードする、請求項37または38に記載のAAVウイルスベクター。
【請求項40】
前記異種核酸が、アンチセンスRNA、siRNA、microRNA、またはgRNAをコードする、請求項37または38に記載のAAVウイルスベクター。
【請求項41】
前記AAVカプシドタンパク質が、配列番号164、165または166のアミノ酸配列を含む、請求項37~41のいずれか一項に記載のAAVウイルスベクター。
【請求項42】
(i)配列番号164のアミノ酸配列を有するAAVカプシドタンパク質および
(ii)AAVベクターゲノム
を含むAAVウイルスベクターであって、前記AAVベクターゲノムが、5’から3’への方向に、
(a)第1のAAV逆位末端反復配列、
(b)プロモーター、
(c)異種核酸、
(d)ポリアデニル化シグナル;および
(e)第2のAAV逆位末端反復配列
を含む、AAVウイルスベクター。
【請求項43】
前記異種核酸が、配列番号142~144および177~181のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする、請求項37~39および41~42のいずれか一項に記載のAAVウイルスベクター。
【請求項44】
前記異種核酸が、配列番号116~118および172~176のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項43に記載のAAVウイルスベクター。
【請求項45】
疾患または障害を処置する方法であって、請求項37~44のいずれかに記載のAAVウイルスベクターを対象に投与することを含む、方法。
【請求項46】
前記AAVウイルスベクターが、前記対象に経口的に、直腸に、経粘膜的に、吸入により、経皮的に、非経口的に、静脈内に、皮下に、皮内に、筋肉内に、胸膜内に、脳内に、髄腔内に、脳内に、脳室内に、鼻腔内に、耳内に、眼内に、眼周囲に、外用で、リンパ内に、槽内に、硝子体内に、傍網膜的に、または網膜下に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記疾患または障害が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、ファブリー病、ポンペ病、CLN3病(もしくは若年性神経セロイドリポフスチノーシス)、劣性ジストロフィー性表皮水疱症(RDEB)、若年性バッテン病、常染色体優性障害、筋ジストロフィー、血友病A、血友病B、多発性硬化症、糖尿病、ゴーシェ病、がん、関節炎、筋消耗、心臓疾患、内膜過形成、癲癇、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、サラセミア、ハーラー症候群、スライ症候群、シャイエ症候群、ハーラー-シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A(ムコ多糖症IIIAもしくはMPS IIIA)、サンフィリポ症候群B(ムコ多糖症IIIBもしくはMPS IIIB)、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、モルキオ症候群、マロトー-ラミー症候群、クラッベ病、フェニルケトン尿症、バッテン病、脊髄脳性運動失調症、LDL受容体欠損症、高アンモニア血症、関節炎、黄斑変性症、網膜色素変性症、神経セロイドリポフスチノーシス1(CLN1)、アデノシンデアミナーゼ欠損症、優性視神経萎縮症、網膜分離症、シュタルガルト病、ビエッティ結晶性ジストロフィーまたはBEST卵黄様黄斑ジストロフィーである、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記疾患または障害が眼疾患または障害である、請求項45または46に記載の方法。
【請求項49】
前記眼疾患または障害が、優性視神経萎縮症、網膜色素変性症、黄斑変性症、ベストロフィン-1(BEST-1)遺伝子中の変異に関する眼障害、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、シュタルガルト病、コロイデレミア、アッシャー症候群、網膜分離症、ビエッティ結晶性ジストロフィーおよび色覚異常からなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象がヒトである、請求項45~49のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月18日に出願された米国仮出願第63/189,836号、2021年11月4日に出願された米国仮出願第63/275,527号、および2022年4月26日に出願された米国仮出願第63/334,949号の利益を主張し、該仮出願のすべては参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照による組込み
本明細書と共に電子的に提出されるテキストファイルの内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ読取り可能な形式のコピー(ファイル名:ABEO_008_03WO_SeqList_ST25.TXT、作成日:2022年5月17日、ファイルサイズ:約636kb)。
【背景技術】
【0003】
背景
アデノ随伴ウイルスベクターは、遺伝子治療のための有望な送達ベクターである。しかしながら、それらの治療有効性は、ベクターの送達経路、送達効率により損なわれている。したがって、選択されたAAVウイルスベクターをより良好な治療的な潜在能力を伴って送達するための新たな戦略に対する緊急の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示は、概しては、遺伝子治療の分野に関し、特に、新規のカプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター粒子(AAVウイルスベクターとしても公知である)、それらの生産、それらの送達方法、および導入遺伝子を送達して疾患または障害を処置または予防するためのそれらの使用に関する。
【0005】
一態様では、本開示は、眼疾患または障害の処置を必要とする対象において眼疾患または障害を処置する方法であって、対象へのAAVウイルスベクターの傍網膜(para-retinal)投与を含み、AAVウイルスベクターが、配列番号2のアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む、方法を提供する。
【0006】
一態様では、本開示は、眼疾患または障害の処置を必要とする対象において眼疾患または障害を処置する方法であって、対象へのAAVウイルスベクターの傍網膜投与を含み、AAVウイルスベクターが、配列番号1~3、30~34、49、67、84、および164のいずれか1つに対して少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、方法を提供する。
【0007】
実施形態では、AAVウイルスベクターは、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸が配列番号1~3、30~34、49、67、84および164のいずれか1つと異なるアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む。実施形態では、AAVウイルスベクターは、配列番号2のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号2と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む。実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号2のアミノ酸129におけるロイシン(L)、配列番号2のアミノ酸586におけるアスパラギン(N)、および配列番号2のアミノ酸723におけるグルタミン酸(E)を含む。実施形態では、AAVウイルスベクターは、配列番号1のアミノ酸配列または最大2、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号1と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む。実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、アミノ酸129におけるロイシン(L)、アミノ酸148におけるプロリン(P)、アミノ酸152におけるアルギニン(R)、アミノ酸153におけるセリン(S)、アミノ酸158におけるスレオニン(T)、アミノ酸163におけるリシン(K)、アミノ酸169におけるアルギニン(R)、アミノ酸306におけるトリプトファン(W)、アミノ酸308におけるフェニルアラニン(F)、およびアミノ酸319におけるアスパラギン(N)を含み、アミノ酸位置は配列番号1に関して番号付けされたものである。実施形態では、AAVウイルスベクターは、配列番号164のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号164と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む。実施形態では、AAVウイルスベクターは、配列番号67のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号67と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む。実施形態では、AAVウイルスベクターは、配列番号3のアミノ酸配列または最大2、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号3と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む。
【0008】
実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、可変領域(VR)I~IXを含むVP3部分を含み、
(a)VR-IIはアミノ酸配列DNNGVK(配列番号54)を含み、
(b)VR-IIIはアミノ酸配列NDGS(配列番号55)を含み、
(c)VR-IVはアミノ酸配列INGSGQNQQT(配列番号56)またはQSTGGTAGTQQ(配列番号171)を含み、
(d)VR-Vはアミノ酸配列RVSTTTGQNNNSNFAWTA(配列番号57)を含み、
(e)VR-VIはアミノ酸配列HKEGEDRFFPLSG(配列番号58)を含み、
(f)VR-VIIはアミノ酸配列KQNAARDNADYSDV(配列番号59)を含み、
(g)VR-VIIIはアミノ酸配列ADNLQQQNTAPQI(配列番号60)を含み、かつ
(h)VR-IXはアミノ酸配列NYYKSTSVDF(配列番号61)を含む。
実施形態では、VR-I領域は、SASTGAS(配列番号52)、NSTSGGSS(配列番号53)、SSTSGGSS(配列番号87)、またはNGTSGGST(配列番号170)を含む。
【0009】
実施形態では、眼疾患または障害は、優性視神経萎縮症、網膜色素変性症、黄斑変性症、ベストロフィン-1(BEST-1)遺伝子中の変異に関する眼障害、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、シュタルガルト病、コロイデレミア、アッシャー症候群、網膜分離症、ビエッティ結晶性ジストロフィーおよび色覚異常からなる群より選択される。実施形態では、網膜色素変性症は、常染色体劣性、常染色体優性、またはX連鎖性である。実施形態では、BEST-1遺伝子中の変異に関する眼障害は、卵黄様黄斑ジストロフィー、加齢性黄斑変性症、常染色体優性硝子体網膜脈絡膜症(autosomal dominant vitreoretinochoroidopathy)、緑内障、または白内障である。実施形態では、AAVウイルスベクターは、SPATA7、LRAT、TULP1、AIPL1、RPGR、AIPL1、ABCA4、CHM、MY07A、CDH23、USH2A、CLRN1、RS1、CYP4V2、CNGA3、CNGB3、GNAT2、RHO、PDE6B、PDE6C、PDE6H、OPA1、OPA3、およびBEST-1から選択される遺伝子をコードするAAVベクターゲノムを含む。実施形態では、AAVウイルスベクターは、アンチセンスRNA、microRNA、siRNA、またはガイドRNA(gRNA)をコードするAAVベクターを含む。実施形態では、眼疾患または障害は視神経の機能障害に関する。
【0010】
実施形態では、眼疾患または障害は優性視神経萎縮症である。実施形態では、AAVウイルスベクターは、OPA1またはOPA3導入遺伝子を含むAAVベクターゲノムを含む。
【0011】
実施形態では、眼疾患または障害は網膜分離症である。実施形態では、AAVウイルスベクターは、RS1導入遺伝子を含むAAVベクターゲノムを含む。
【0012】
実施形態では、傍網膜投与は、網膜の表面から0~13ミリメートル(mm)、0~10mm、0~5mm、または0~3mmの距離において目の後部硝子体腔(posterior vitreous cavity)中に注射することを含む。実施形態では、傍網膜投与は、網膜の表面から0~13mmの距離において後部硝子体腔中に注射することを含む。実施形態では、傍網膜投与は、網膜の表面から0~10mmの距離において後部硝子体腔中に注射することを含む。実施形態では、傍網膜投与は、網膜の表面から0~5mmの距離において後部硝子体腔中に注射することを含む。実施形態では、傍網膜投与は、網膜の表面から0~3mmの距離において後部硝子体腔中に注射することを含む。
【0013】
実施形態では、対象はヒトである。
【0014】
一態様では、本開示は、VP3部分を含むAAVカプシドタンパク質をコードする核酸であって、VP3部分が可変領域(VR)I~IXを含み、
(a)VR-IIがアミノ酸配列DNNGVK(配列番号54)を含み、
(b)VR-IIIがアミノ酸配列NDGS(配列番号55)を含み、
(c)VR-IVがアミノ酸配列QSTGGTAGTQQ(配列番号171)を含み、
(d)VR-Vがアミノ酸配列RVSTTTGQNNNSNFAWTA(配列番号57)を含み、
(e)VR-VIがアミノ酸配列HKEGEDRFFPLSG(配列番号58)を含み、
(f)VR-VIIがアミノ酸配列KQNAARDNADYSDV(配列番号59)を含み、
(g)VR-VIIIがアミノ酸配列ADNLQQQNTAPQI(配列番号60)を含み、かつ
(h)VR-IXがアミノ酸配列NYYKSTSVDF(配列番号61)を含む、
核酸を提供する。
実施形態では、VR-I領域はNGTSGGST(配列番号170)を含む。実施形態では、VP3部分は配列番号166のアミノ酸配列を有する。実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、i)VP2部分またはii)VP1部分およびVP2部分をさらに含む。
【0015】
実施形態では、コードされるAAVカプシドタンパク質は、配列番号164に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号164と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。実施形態では、コードされるAAVカプシドタンパク質は、配列番号165に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号165と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。実施形態では、コードされるAAVカプシドタンパク質は、配列番号166に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。実施形態では、核酸配列は、配列番号167~169から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一である。実施形態では、核酸配列は、配列番号167~169から選択されるヌクレオチド配列に対して100%同一である。
【0016】
一態様では、本開示は、本開示の核酸を含むベクターを提供する。
【0017】
一態様では、本開示は、本開示の核酸によりコードされるAAVカプシドタンパク質を提供する。実施形態では、タンパク質は、配列番号164、165もしくは166のアミノ酸配列、または配列番号164、165もしくは166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。
【0018】
一態様では、本開示は、本開示の核酸によりコードされるAAVカプシドタンパク質およびAAVベクターゲノムを含むAAVウイルスベクターであって、AAVベクターゲノムが、5’から3’への方向に、
(a)第1のAAV逆位末端反復配列、
(b)プロモーター、
(c)異種核酸、
(d)ポリアデニル化シグナル、および
(e)第2のAAV逆位末端反復配列
を含む、AAVウイルスベクターを提供する。
【0019】
実施形態では、異種核酸は、構成的プロモーターに作動可能に連結している。実施形態では、異種核酸はポリペプチドをコードする。実施形態では、異種核酸は、アンチセンスRNA、siRNA、microRNA、またはgRNAをコードする。実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号164、165または166のアミノ酸配列を含む。
【0020】
一態様では、本開示は、
(i)配列番号164のアミノ酸配列を有するAAVカプシドタンパク質ならびに
(ii)AAVベクターゲノムであって、AAVベクターゲノムが、5’から3’への方向に、
(a)第1のAAV逆位末端反復配列、
(b)プロモーター、
(c)異種核酸、
(d)ポリアデニル化シグナル;および
(e)第2のAAV逆位末端反復配列
を含む、AAVベクターゲノム
を含む、AAVウイルスベクターを提供する。
【0021】
実施形態では、異種核酸は、配列番号142~144および177~181のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする。実施形態では、異種核酸は、配列番号116~118および172~176のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。
【0022】
一態様では、本開示は、疾患または障害を処置する方法であって、本開示のAAVウイルスベクターを対象に投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、AAVウイルスベクターは、対象に経口的に、直腸に、経粘膜的に、吸入により、経皮的に、非経口的に、静脈内に、皮下に、皮内に、筋肉内に、胸膜内に、脳内に、髄腔内に、脳内に、脳室内に、鼻腔内に、耳内に、眼内に、眼周囲に、外用で、リンパ内に、槽内に(intracistemally)、硝子体内に、傍網膜的に、または網膜下に投与される。実施形態では、疾患または障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、ファブリー病、ポンペ病、CLN3病(もしくは若年性神経セロイドリポフスチノーシス)、劣性ジストロフィー性表皮水疱症(RDEB)、若年性バッテン病、常染色体優性障害、筋ジストロフィー、血友病A、血友病B、多発性硬化症、糖尿病、ゴーシェ病、がん、関節炎、筋消耗、心臓疾患、内膜過形成、癲癇、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、サラセミア、ハーラー症候群、スライ症候群、シャイエ症候群、ハーラー-シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A(ムコ多糖症IIIAもしくはMPS IIIA)、サンフィリポ症候群B(ムコ多糖症IIIBもしくはMPS IIIB)、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、モルキオ症候群、マロトー-ラミー症候群、クラッベ病、フェニルケトン尿症、バッテン病、脊髄脳性運動失調症(spinal cerebral ataxia)、LDL受容体欠損症、高アンモニア血症、関節炎、黄斑変性症、網膜色素変性症、神経セロイドリポフスチノーシス1(CLN1)、アデノシンデアミナーゼ欠損症、優性視神経萎縮症、網膜分離症、シュタルガルト病、ビエッティ結晶性ジストロフィーまたはBEST卵黄様黄斑ジストロフィーである。実施形態では、疾患または障害は眼疾患または障害である。実施形態では、眼疾患または障害は、優性視神経萎縮症、網膜色素変性症、黄斑変性症、ベストロフィン-1(BEST-1)遺伝子中の変異に関する眼障害、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、シュタルガルト病、コロイデレミア、アッシャー症候群、網膜分離症、ビエッティ結晶性ジストロフィーおよび色覚異常からなる群より選択される。実施形態では、対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、眼内投与の様々なモードの実例である。Yiu et al., Mol Ther Methods Clin Dev. 2020 Jan 21;16:179-191(その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる)から適合させた。
【0024】
【
図2A】
図2A~2Eは、硝子体内または傍網膜投与を介した非ヒト霊長類動物モデルの目におけるAAVウイルスベクター媒介性GFP発現を示す。走査型レーザー検眼鏡検査(SLO)イメージングを指し示されるAAVウイルスベクターの注射後26日目に行った。
図2Aは、AAV204カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの硝子体内注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
図2Bは、AAV204カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの傍網膜注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
図2Cは、AAV8カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの傍網膜注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
図2Dは、AAV214カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの傍網膜注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
図2Eは、AAV214-D5カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの傍網膜注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
【0025】
【
図3A】
図3A~3Fは、AAV投与後の網膜のイメージング分析を示す。
図3Aは、AAV204硝子体内投与後の網膜の合成画像を示す。
図3Bは、AAV204傍網膜投与後の網膜の合成(左上)、ロドプシン(右上)、および拡大合成(下)画像を示す。
図3Cは、AAV204傍網膜投与後の網膜の合成(左上)、ロドプシン(右上)、および拡大合成(下)画像を示す。
図3Dは、AAV204またはAAV8ウイルスベクターの傍網膜注射の1か月後のロドプシンおよびGFP発現の免疫組織化学分析を示す。
図3Eは、AAV204ウイルスベクターの傍網膜注射後の中心窩におけるロドプシンおよびGFP発現を示す。
図3Fは、AAV204ウイルスベクターの傍網膜注射後の乳頭黄斑束(papillomacular bundle)に沿ったロドプシンおよびGFP発現を示す。
【0026】
【
図4A】
図4A~4Cは、網膜下投与を介した非ヒト霊長類動物モデルの目におけるAAVウイルスベクター媒介性GFP発現を示す。SLOイメージングを指し示されるAAVウイルスベクターの注射後27日目に行った。
図4Aは、AAV8カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの網膜下注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
図4Bは、AAV214カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの網膜下注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
図4Cは、AAV214-D5カプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの網膜下注射により媒介された形質導入の拡大を示す。
図4Dは、AAV8網膜下投与後の網膜の合成(左上)、ロドプシン(右上)、および拡大合成(下)画像を示す。
図4Eは、AAV214網膜下投与後の網膜の合成(左上)、ロドプシン(右上)、および拡大合成(下)画像を示す。
図4Fは、AAV214-D5網膜下投与後の網膜の合成(左上)、ロドプシン(右上)、および拡大合成(下)画像を示す。
【0027】
【
図5】
図5は、カプシドタンパク質のVP1、VP2、およびVP3部分の図表を示す。VP1およびVP2特異的部分をVP3部分と共に指し示しており、VP3部分は、製造されるVP3タンパク質と同一である。AAV214 VP3のアミノ酸配列(配列番号41)を示しており、可変領域I~IXを指し示している。AAV214についての完全VP1タンパク質アミノ酸配列は配列番号3として提供される。
【0028】
【
図6-1】
図6は、AAV214(配列番号3)およびAAV214-D5(配列番号164)のVP1タンパク質アミノ酸配列のアライメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本開示による一部の実施形態が以下においてより完全に記載される。本開示の態様は、しかしながら、異なる形態において具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。本明細書の記載において使用される専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のために過ぎず、限定的であることは意図されない。
【0030】
他に定義されなければ、本明細書において使用されるすべての用語(科学技術用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。用語、例えば一般的に使用される辞典において定義される用語は、本出願および関連技術の文脈におけるそれらの意味と合致する意味を有するとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されなければ、理想化されたまたは過度に形式的な意味において解釈されるべきではないことがさらに理解される。
【0031】
文脈が他に指し示さなければ、本明細書に記載される発明の様々な特徴は任意の組合せで使用され得ることが特に意図される。さらに、本開示はまた、実施形態では、本明細書に記載される任意の特徴または特徴の組合せは除外または省略され得ることを想定する。実例を挙げると、複合体は成分A、BおよびCを含むことが本明細書において述べられている場合、A、BもしくはCのいずれか、またはその組合せは、単独でまたは任意の組合せで省略および放棄され得ることが特に意図される。
【0032】
他に明示的に指し示されなければ、すべての明示される実施形態、特徴、および用語は、記載される実施形態、特徴、または用語およびその生物学的同等物の両方を含むことを意図する。
【0033】
参照による組込み
本明細書において参照されるすべての参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、および特許出願は、参照によりそれらの全体がすべての目的のために組み込まれる。しかしながら、本明細書において参照される任意の参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、および特許出願への言及は、それらが世界の任意の国において有効な先行技術を構成するか、または一般常識の部分を形成することの承認または任意の形態の示唆ではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0034】
定義
本技術の実施は、他に指し示されなければ、当技術分野の技術的範囲内にある有機化学、薬理学、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来技術を用いる。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel, et al. eds., (1987));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, a Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (RI. Freshney, ed. (1987))を参照。
【0035】
常に明示的に述べられるわけではないが、本明細書に記載される試薬は単に例示的なものであること、およびその同等物が当技術分野において公知であることもまた理解されるべきである。
【0036】
用語「約」は、測定可能な値、例えば量または濃度などを指す場合に本明細書で使用される場合、指定される量の10%の変動を包含することが意味される。
【0037】
用語「許容される」、「有効な」、または「十分な」は、本明細書に開示される任意の成分、範囲、投与形態などの選択を記載するために使用される場合、前記成分、範囲、投与形態などが、開示される目的のために好適であることを意図する。
【0038】
特に記載されなければ、用語「宿主細胞」は、例えば、真菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を含む、真核宿主細胞を含む。真核宿主細胞の非限定的な例は、サル、ウシ、ブタ、マウス、ラット、鳥類、爬虫類およびヒト、例えば、HEK293細胞および293T細胞を含む。
【0039】
用語「単離された」は、本明細書で使用される場合、他の材料を実質的に含まない分子または生物学的物質または細胞材料を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「核酸配列」および「ポリヌクレオチド」は交換可能に使用され、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。そのため、この用語は、プリンおよびピリミジン塩基または他の天然の、化学的にもしくは生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる一本鎖、二本鎖、または多鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはポリマーを含むが、それに限定されない。
【0041】
「遺伝子」は、特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードする能力を有する少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子産物」または、代替的に、「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写および翻訳された場合に生成されるアミノ酸配列(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写される2ステッププロセス、および/または、転写されたmRNAが引き続いてペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞中でのmRNAのスプライシングを含んでもよい。
【0043】
「転写制御下」は、当技術分野においてよく理解される用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写が、転写の開始に寄与するか、または転写を促進するエレメントに該配列が作動可能に連結していることに依存することを指し示す。「作動可能に連結した」は、複数のポリヌクレオチドが、それらが細胞中で機能することを可能とする方式で並べられていることを意図する。一態様では、本発明は、下流の配列に作動可能に連結したプロモーターを提供する。
【0044】
用語「コードする」は、ポリヌクレオチドに適用される場合、そのネイティブな状態にあるか、または当業者に周知の方法により操作された場合に、転写されてポリペプチドおよび/またはその断片のためのmRNAを生成することができる、ポリペプチドを「コードする」といわれるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖はそのような核酸の相補体であり、コード配列はそれらから導出され得る。
【0045】
用語「プロモーター」は、本明細書で使用される場合、コード配列、例えば遺伝子または導入遺伝子の転写の開始および速度が制御されるポリヌクレオチド配列の領域である制御配列を意味する。プロモーターは、例えば、構成的、誘導性、抑制性、または組織特異的であってもよい。プロモーターは、調節タンパク質ならびに分子、例えばRNAポリメラーゼおよび転写因子が結合し得る遺伝子エレメントを含有してもよい。非限定的な例示的なプロモーターは、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じてRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター、遍在的ニワトリβ-アクチンハイブリッド(CBh)プロモーター、小核RNA(U1aもしくはU1b)プロモーター、MeCP2プロモーター、MeP418プロモーター、MeP426プロモーター、最小MeCP2プロモーター、VMD2プロモーター、mRhoプロモーターまたはEFIプロモーターを含む。
【0046】
本明細書において提供される追加の非限定的な例示的なプロモーターは、EFla、Ubc、ヒトβ-アクチン、CAG、TRE、Ac5、ポリヘドリン、CaMKIIa、Gal1、TEF1、GDS、ADH1、Ubi、およびα-1-アンチトリプシン(hAAT)を含むが、それに限定されない。そのようなプロモーターのヌクレオチド配列は、mRNA転写の効率を増加または減少させるために改変されてもよいことが当技術分野において公知である。例えば、Gao et al. (2018) Mol. Ther.: Nucleic Acids 12:135-145を参照(RNAポリメラーゼIIIの転写を消失させ、RNAポリメラーゼII依存性mRNA転写を刺激するための7SK、U6およびH1プロモーターのTATAボックスの改変)。合成により誘導されたプロモーターは、遍在的なまたは組織特異的な発現のために使用されてもよい。さらに、その一部は上記される、ウイルス由来プロモーターは、本明細書に開示される方法において有用なことがあり、例えば、CMV、HIV、アデノウイルス、およびAAVプロモーターがある。実施形態では、プロモーターは、転写効率を増加させるためにエンハンサーと共に使用される。エンハンサーの非限定的な例は、間質レチノイド結合タンパク質(IRBP)エンハンサー、RSVエンハンサーまたはCMVエンハンサーを含む。
【0047】
エンハンサーは、標的配列の発現を増加させる調節エレメントである。「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーター機能およびエンハンサー機能の両方を提供する能力を有する配列を含有するポリヌクレオチドである。例えば、レトロウイルスの長鎖末端反復配列は、プロモーター機能およびエンハンサー機能の両方を含有する。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」または「外因性」または「異種」であってもよい。「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノム中の所与の遺伝子と天然に連結しているエンハンサー/プロモーターである。「外因性」または「異種」エンハンサー/プロモーターは、遺伝子操作(すなわち、分子生物学技術)によって遺伝子に並置して置かれたエンハンサー/プロモーターであって、その遺伝子の転写が、連結されたエンハンサー/プロモーターにより誘導されるようなものである。本明細書において提供される方法、組成物および構築物における使用のための連結されるエンハンサー/プロモーターの非限定的な例は、PDEプロモーター+IRBPエンハンサーまたはCMVエンハンサー+U1aプロモーターを含む。エンハンサーは、内因性または異種プロモーターの位置に対するそれらの配向性にかかわらず、距離をおいて機能できることが当技術分野において理解される。そのため、プロモーターから距離をおいて機能するエンハンサーは、ベクター中のその位置またはプロモーターの位置に対するその配向性にかかわらずそのプロモーターに「作動可能に連結している」ことがさらに理解される。
【0048】
用語「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、交換可能におよびそれらの最も広い意味において使用され、アミノ酸、アミノ酸アナログまたはペプチド模倣物の2つまたはより多くのサブユニットの化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合により連結されてもよい。別の態様では、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどにより連結されてもよい。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を含み得るか、それから本質的になり得るか、またはそれからなり得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、グリシンならびにDおよびLの両方の光学異性体、アミノ酸アナログおよびペプチド模倣物を含む、天然および/もしくは非天然または合成アミノ酸を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「シグナルペプチド」または「シグナルポリペプチド」は、通常は新たに合成された分泌または膜ポリペプチドまたはタンパク質のN末端に存在するアミノ酸配列を意図する。それは、特異的な細胞位置、例えば細胞膜を越えて、細胞膜中に、または核中に、ポリペプチドを方向付けるように作用する。実施形態では、シグナルペプチドは局在化後に除去される。シグナルペプチドの例は当技術分野において周知である。非限定的な例は、米国特許第8,853,381号、同第5,958,736号、および同第8,795,965号に記載されるものである。実施形態では、シグナルペプチドはIDUAシグナルペプチドであり得る。
【0050】
用語「同等物」または「生物学的同等物」は、特定の分子、生物学的材料、または細胞材料を指す場合に交換可能に使用され、所望される構造または機能性を依然として維持しながら最小の相同性を有するものを意図する。同等のポリペプチドの非限定的な例は、参照ポリペプチド(例えば、野生型ポリペプチド)に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の同一性もしくは少なくとも約99%の同一性を有するポリペプチド;または参照ポリヌクレオチド(例えば、野生型ポリヌクレオチド)に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約97%の配列同一性もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを含む。
【0051】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチドの間または2つの核酸分子の間の配列類似性を指す。同一性パーセントは、比較の目的のためにアライメントされ得る各々の配列中の位置を比較することにより決定され得る。比較される配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸により占有される場合、分子はその位置において同一である。配列間の同一性の程度は、これらの配列により共有されるマッチする位置の数の関数である。「非関連」または「非相同」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性、25%未満の同一性を共有する。アライメントおよび配列同一性パーセントは、本明細書において提供される核酸またはアミノ酸配列について、前記核酸またはアミノ酸配列をClustalW(https://genome.jp/tools-bin/clustalw/において利用可能)およびGonnet(タンパク質用)重みマトリックスにインポートすることおよびこれらを使用することにより決定されてもよい。実施形態では、本明細書において見出される核酸配列を使用して核酸配列アライメントを行うために使用されるClustalWパラメーターは、ClustalW(DNA用)重みマトリックスを使用して生成される。
【0052】
本明細書で使用される場合、アミノ酸改変は、置換、欠失または挿入であってもよい。アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換であってもよい。保存的置換え(保存的変異、保存的置換または保存的変更とも呼ばれる)は、所与のアミノ酸を、類似した生化学的特性(例えば、電荷、疎水性またはサイズ)を有する異なるアミノ酸に変化させるタンパク質中のアミノ酸の置換えである。本明細書で使用される場合、「保存的変更」は、別の、生物学的に類似した残基による、アミノ酸残基の置換えを指す。保存的変更の例は、1つの疎水性残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンでの、別の疎水性残基の置換;または1つの荷電性もしくは極性残基での、別の荷電性もしくは極性残基の置換、例えばアルギニンでのリシンの置換、グルタミン酸でのアスパラギン酸の置換、およびグルタミンでのアスパラギンの置換などを含む。保存的置換の他の実例は、アラニンからセリンへ;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへ;アスパラギン酸からグルタミン酸へ;システインからセリンへ;グリシンからプロリンへ;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへ;リシンからアルギニン、グルタミン、またはグルタミン酸へ;フェニルアラニンからチロシンへ、セリンからスレオニンへ;スレオニンからセリンへ;トリプトファンからチロシンへ;およびチロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへなどの変化を含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、例えばトランスフェクション、感染、または形質転換のプロセスにより、細胞内に置かれた場合に、複製され得るようなインタクトなレプリコンを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる核酸を指す。細胞の内側に入ると、ベクターは、染色体外(エピソーム)エレメントとして複製されてもよく、または宿主細胞染色体に組み込まれてもよいことが当技術分野において理解される。ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、改変されたバキュロウイルス、パポバウイルス、または他に改変された天然に存在するウイルスに由来する核酸を含んでもよい。核酸を送達するための例示的な非ウイルスベクターは、ネイキッドDNA;単独でまたはカチオン性ポリマーと組み合わせて、カチオン性脂質と複合体化したDNA;アニオン性およびカチオン性リポソーム;DNA-タンパク質複合体、ならびにカチオンポリマー、例えば不均質ポリリシン、定義される長さのオリゴペプチド、およびポリエチレンイミンと共に凝集したDNAを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる粒子であって、一部の場合には、リポソーム中に含有されるもの;ならびにウイルスおよびポリリシン-DNAを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる三元複合体の使用を含む。
【0054】
一般的な組換え技術に関して、ポリヌクレオチドが作動可能に連結し得るプロモーターおよびクローニング部位の両方を含有するベクターは、当技術分野において周知である。そのようなベクターは、in vitroまたはin vivoでRNAを転写する能力を有し、供給元、例えばAgilent Technologies(Santa Clara、Calif)およびPromega Biotech(Madison、Wis.)から商業的に入手可能である。発現および/またはin vitro転写を最適化するために、余分な、潜在的な不適切な選択的翻訳開始コドン、または、転写もしくは翻訳のレベルで、発現に干渉し得るかもしくは発現を低減させ得る他の配列を排除するために、クローニングされた導入遺伝子の5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加または変更することが必要であり得る。代替的に、発現を増強するために開始コドンのすぐ5’にコンセンサスリボソーム結合部位が挿入され得る。
【0055】
「ウイルスベクター」は、in vivo、ex vivoまたはin vitroのいずれかで宿主細胞中に送達されるべきポリヌクレオチドを含有する、組換えにより製造されたウイルスまたはウイルス粒子として定義される。ウイルスベクターの例は、レトロウイルスベクター、AAVウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターなどを含む。アルファウイルスベクター、例えばセムリキ森林ウイルスベースベクターおよびシンドビスウイルスベースベクターもまた、遺伝子治療および免疫治療における使用のために開発されている。例えば、Schlesinger and Dubensky (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5:434-439およびYing, et al. (1999) Nat. Med. 5(7):823-827を参照。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「組換え発現システム」または「組換えベクター」は、組換えにより形成されたある特定の遺伝子材料の発現用の1つまたは複数の遺伝子構築物を指す。
【0057】
「遺伝子送達ビヒクル」は、挿入されたポリヌクレオチドを宿主細胞中に運ぶことができる任意の分子として定義される。遺伝子送達ビヒクルの例は、リポソーム、天然ポリマーおよび合成ポリマーを含む、ミセル生体適合性ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖;リポ多糖;人工的なウイルスエンベロープ;金属粒子;細菌;ウイルス、例えばバキュロウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルス;バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、および真菌ベクター;ならびに様々な真核性および原核性宿主における発現について記載されており、遺伝子治療の他に単純なタンパク質発現のために使用され得る、当技術分野において典型的に使用される他の組換えビヒクルである。標的化抗体またはその断片も含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるリポソームは、本明細書に開示される方法において使用され得る。細胞または細胞集団へのポリヌクレオチドの送達に加えて、細胞または細胞集団への本明細書に記載されるタンパク質の直接的な導入は、タンパク質トランスフェクションの非限定的な技術により行うことができ、代替的に、本明細書に開示されるタンパク質の発現を増強することおよび/または活性を促進することができる培養条件は、他の非限定的な技術である。
【0058】
本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して細胞または組織に送達され得る。「遺伝子送達」、「遺伝子移入」、および「形質導入」などは、本明細書で使用される場合、導入のために使用される方法にかかわらず、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチド(「導入遺伝子」として参照される場合がある)の導入を指す用語である。そのような方法は、様々な周知の技術、例えばベクター媒介性遺伝子移入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクション、または様々な他のタンパク質ベースもしくは脂質ベース遺伝子送達複合体によるもの)の他に、「ネイキッド」ポリヌクレオチドの送達を促す技術(例えば電気穿孔、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドの導入のために使用される様々な他の技術)を含む。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞中で安定的にまたは一過的に維持されてもよい。安定な維持は、導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞と適合性の複製起点を含有するか、または宿主細胞のレプリコン、例えば染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)もしくは核もしくはミトコンドリア染色体に組み込まれることを典型的には要求する。当技術分野において公知であるように、および本明細書に記載されるように、哺乳動物細胞への遺伝子の移入を媒介する能力を有するいくつかのベクターが公知である。
【0059】
「プラスミド」は、典型的には染色体DNAとは別々の、かつ染色体DNAから独立して複製する能力を有するDNA分子である。多くの場合に、それは環状および二本鎖である。プラスミドは、微生物の集団内での水平の遺伝子移入のための機構を提供し、典型的には所与の環境状態下での選択的な利点を提供する。プラスミドは、競合的な環境ニッチにおいて天然に存在する抗生物質に対する耐性を提供する遺伝子を保有してもよく、または、代替的に、産生されるタンパク質は、類似した状況下で毒素として作用してもよい。プラスミドベクターは多くの場合に染色体外環状DNA分子として存在するが、プラスミドベクターはまた、無作為にまたは標的化された方式で宿主染色体に安定的に組み込まれるように設計されてもよく、そのような組込みは、環状プラスミドまたは宿主細胞への導入に先立って線状化されたプラスミドのいずれかを使用して達成されてもよいことが当技術分野において公知である。
【0060】
遺伝子操作において使用される「プラスミド」は「プラスミドベクター」と呼ばれる。多くのプラスミドがそのような使用のために商業的に入手可能である。複製されるべき遺伝子は、特定の抗生物質に対して細胞を耐性とする遺伝子、およびこの位置におけるDNA断片の容易な挿入を可能とするいくつかの一般的に使用される制限部位を含有する短い領域であるマルチクローニングサイト(MCS、またはポリリンカー)を含有するプラスミドのコピーに挿入される。プラスミドの別の主要な使用は、大量のタンパク質の作製である。この場合、研究者は、目的の遺伝子を有するプラスミドを含有する細菌または真核細胞を増殖させ、該プラスミドは、挿入された遺伝子から大量のタンパク質を産生するように誘導され得る。
【0061】
遺伝子移入がDNAウイルスベクター、例えばアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)により媒介される態様では、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその部分、および導入遺伝子を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリヌクレオチドを指す。
【0062】
用語「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」は、本明細書で使用される場合、この名称と関連付けられ、かつデペンドパルボウイルス属、パルボウイルス科に属する、ウイルスのクラスのメンバーを指す。アデノ随伴ウイルスは、ある特定の機能が同時感染ヘルパーウイルスにより提供される細胞中でのみ増殖する一本鎖DNAウイルスである。AAVの一般的な情報および総説は、例えば、Carter, 1989, Handbook of Parvoviruses, Vol. 1, pp. 169- 228およびBerns, 1990, Virology, pp. 1743-1764, Raven Press, (New York)において見出され得る。これらの総説に記載される同じ原理が、該総説の刊行日後に特徴付けられる追加のAAV血清型に適用可能であることが完全に予想され、その理由は、様々な血清型は、遺伝子レベルにおいてさえ、構造的および機能的の両方で、かなり密接に関連していることが周知であるからである。(例えば、Blacklowe, 1988, pp. 165-174, Parvoviruses and Human Disease, J. R. Pattison, ed.;およびRose, Comprehensive Virology 3: 1-61 (1974)を参照)。例えば、すべてのAAV血清型は、相同的なrep遺伝子により媒介される非常に類似した複製特性を呈するようであり;すべては、AAV2において発現されるもののような3つの関連するカプシドタンパク質を有する。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿った血清型間の大規模なクロスハイブリダイゼーションを明らかにするヘテロデュプレックス分析;および「逆位末端反復配列」(ITR)に対応する末端における類似の自己アニーリングセグメントの存在によりさらに示唆される。類似した感染力パターンはまた、各々の血清型における複製機能が、類似した調節制御下にあることを示唆する。このウイルスの複数の血清型は遺伝子送達のために好適であることが公知であり;すべての公知の血清型は様々な組織タイプからの細胞に感染することができる。少なくとも11個の逐次的に番号付けされたAAV血清型が当技術分野において公知である。本明細書に開示される方法において有用な非限定的な例示的な血清型は、11個の血清型、例えば、AAV2、AAV8、AAV9、またはバリアント血清型、例えば、AAV-DJおよびAAV PHP.Bのいずれかを含む。AAV粒子は、3つの主要なウイルスタンパク質:VPl、VP2およびVP3を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、AAVは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVPHP.B、またはAAVrh74を指す。
【0063】
「AAVベクター」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の異種核酸(HNA)配列および1つまたは複数のAAV逆位末端反復配列(ITR)を含むベクターを指す。そのようなAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物の機能性を提供し、かつITRおよびITRの間の核酸が感染性ウイルス粒子中にパッケージングされることを可能とする宿主細胞中に存在する場合に複製され得る。実施形態では、AAVベクターは、プロモーター、少なくとも1つのタンパク質もしくはRNAをコードし得る少なくとも1つの核酸、ならびに/または感染性AAV粒子中にパッケージングされる隣接するITR内のエンハンサーおよび/もしくはターミネーターを含む。ITRおよびITRの間の核酸は、AAVカプシド中にカプシド被包されることができ、核酸のこのカプシド被包される部分は「AAVベクターゲノム」として参照されることがある。AAVベクターは、カプシド被包される部分に加えてエレメント、例えば、抗生物質耐性遺伝子、または生産目的のためにプラスミド中に含まれるがAAV粒子中にパッケージングされない当技術分野において公知の他のエレメントを含有してもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルスカプシド」または「カプシド」は、ウイルス粒子のタンパク質性シェルまたはコートを指す。カプシドは、ウイルスゲノムをカプシド被包し、保護し、輸送し、かつ宿主細胞中に放出するために機能する。カプシドは、タンパク質(「カプシドタンパク質」)のオリゴマー構造サブユニットから一般に構成される。本明細書で使用される場合、用語「カプシド被包された」は、ウイルスカプシド内に囲まれていることを意味する。AAVのウイルスカプシドは、3つのウイルスカプシドタンパク質:VP1、VP2、およびVP3の混合物から構成される。Sonntag F et al., (June 2010). "A viral assembly factor promotes AAV2 capsid formation in the nucleolus". Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 107 (22): 10220-5、およびRabinowitz JE, Samulski RJ (December 2000). "Building a better vector: the manipulation of AAV virions". Virology. 278 (2): 301-8(これらの各々は参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、VP1、VP2およびVP3の混合物は、1:1:10(VP1:VP2:VP3)または1:1:20(VP1:VP2:VP3)の比でT=1正二十面体対称性に並べられた60個の単量体を含有する。
【0065】
「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVウイルスベクター」または「AAVベクター粒子」または「AAV粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質およびカプシド被包されたAAVベクターゲノムから構成されるウイルス粒子を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、ウイルスまたはプラスミドに関する用語「ヘルパー」は、本明細書に開示されるAAVベクターゲノムのいずれか1つの複製およびパッケージングのために必要な追加の成分を提供するために使用されるウイルスまたはプラスミドを指す。ヘルパーウイルスによりコードされる成分は、ビリオンアセンブリー、カプシド被包、ゲノム複製、および/またはパッケージングのために要求される任意の遺伝子を含んでもよい。例えば、ヘルパーウイルスまたはプラスミドは、ウイルスゲノムの複製のための必要な酵素をコードしてもよい。AAV構築物との使用のために好適なヘルパーウイルスおよびプラスミドの非限定的な例は、pHELP(プラスミド)、アデノウイルス(ウイルス)、またはヘルペスウイルス(ウイルス)を含む。実施形態では、pHELPプラスミドはpHELPKプラスミドであってもよく、ここで、アンピシリン発現カセットはカナマイシン発現カセットと交換されており;pHELPKは配列番号92に示される配列を有する。
【0067】
本明細書で使用される場合、パッケージング細胞(またはヘルパー細胞)は、ウイルスベクターを製造するために使用される細胞である。組換えAAVウイルスベクターの製造は、トランスで提供されるRepおよびCapタンパク質の他に、AAV複製を助けるアデノウイルスからの遺伝子配列を要求する。一部の態様では、パッケージング/ヘルパー細胞は、細胞のゲノムに安定的に組み込まれるプラスミドを含有する。他の態様では、パッケージング細胞は一過的にトランスフェクトされてもよい。典型的には、パッケージング細胞は、真核細胞、例えば哺乳動物細胞または昆虫細胞である。
【0068】
本明細書で使用される場合、レポータータンパク質は、プロモーターの発現(例えば、組織特異性および/または強度)をアッセイするためにプロモーターに作動可能に連結される検出可能なタンパク質である。態様では、レポータータンパク質はポリペプチドに作動可能に連結されてもよい。態様では、レポータータンパク質は、DNA送達方法、プロモーターおよびエンハンサーエレメントの機能的な同定および特徴付け、翻訳および転写調節、mRNAプロセシングならびにタンパク質:タンパク質相互作用のモニタリングにおいて使用されてもよい。レポータータンパク質の非限定的な例は、β-ガラクトシダーゼ;蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP);ルシフェラーゼ;グルタチオンS-トランスフェラーゼ;およびマルトース結合タンパク質である。
【0069】
「医薬組成物」は、活性成分、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体またはウイルスベクターと、組成物をin vitro、in vivoまたはex vivoでの診断的または治療的使用のために好適なものとする、不活性または活性の、担体、例えば固体支持体との組合せを含むことが意図される。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、標準的な薬学的担体、例えばリン酸緩衝食塩溶液、水、およびエマルション、例えば油/水または水/油エマルション、ならびに様々なタイプの湿潤剤のいずれも包含する。組成物はまた、安定化剤および防腐剤を含むことができる。担体、安定化剤およびアジュバントの例について、Martin (1975) Remington's Pharm. Sci., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton)を参照。
【0071】
診断または処置の「対象」は、細胞または動物、例えば哺乳動物、もしくはヒトである。対象は、特有の種に限定されず、サル、マウス、ラット、イヌ、またはウサギ科動物種の他に、他の家畜類、競技動物、または愛玩動物を限定なしに含む、診断または処置に供される非ヒト動物および感染または動物モデルに供される非ヒト動物を含む。実施形態では、対象はヒトである。
【0072】
用語「組織」は、生きたもしくは死んだ生物の組織または生きたもしくは死んだ生物に由来するかもしくは該生物を模倣するために設計された任意の組織を指すために本明細書において使用される。組織は、健常であり、疾患状態であり、かつ/または遺伝的変異を有するものであってもよい。生物学的組織は、任意の単一の組織(例えば、相互接続されていてもよい細胞の集合物)、または生物の身体の臓器もしくは部分もしくは領域を構成する組織の群を含んでもよい。組織は、均質な細胞材料を含むか、それから本質的になるか、もしくはそれからなるものであってもよく、または複合構造物、例えば、例えば肺組織、骨格組織、および/もしくは筋肉組織を含むことができる胸郭を含む身体の領域中に見出されるものであってもよい。例示的な組織は、以下の任意の組合せを含む、肝臓、肺、甲状腺、皮膚、膵臓、血管、膀胱、腎臓、脳、胆樹、十二指腸、腹部大動脈、腸骨静脈、心臓および腸に由来するものを含むが、それに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される場合、対象において疾患を「処置すること」または対象における疾患の「処置」は、(1)素因を有するかもしくは疾患の症状を未だ示していない対象において症状もしくは疾患が起こることを予防すること;(2)疾患を阻害するかもしくはその発症を停止させること;または(3)疾患もしくは疾患の症状を好転させる(ameliorate)かもしくはその退縮を引き起こすことを指す。当技術分野において理解されるように、「処置」は、臨床的結果を含む、有益なまたは所望される結果を得るためのアプローチである。本技術の目的のために、有益なまたは所望される結果は、検出可能または検出不可能のいずれであれ、1つまたは複数の症状の軽減または好転、状態(疾患を含む)の程度の縮小、状態(疾患を含む)の安定化した(すなわち、悪化しない)状況、状態(疾患を含む)、進行の遅延または緩慢化、状態(疾患を含む)、状況の好転または一時的緩和および寛解(部分または完全のいずれであれ)の1つまたは複数を含むことができるが、それに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、所望される効果を達成するために十分な量を意味することを意図する。治療的または予防的適用の文脈において、有効量は、問題とする状態のタイプおよび重症度ならびに個々の対象の特徴、例えば全般的健康状態、年齢、性別、体重、および医薬組成物に対する忍容性に依存する。遺伝子治療の文脈において、実施形態では、有効量は、対象において欠損した遺伝子の部分的なまたは完全な機能の再獲得を結果としてもたらすために十分な量である。実施形態では、AAVウイルス粒子の有効量は、対象において遺伝子の発現を結果としてもたらすために十分な量である。当業者は、これらおよび他の要因に依存して適切な量を決定することができる。
【0075】
実施形態では、有効量は、問題とする適用のサイズおよび性質に依存する。それはまた、標的対象の性質および感受性ならびに使用される方法に依存する。当業者は、これらおよび他の検討事項に基づいて有効量を決定することができる。有効量は、実施形態に依存して組成物の1または複数の投与を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるものであってもよい。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」または「投与」は、対象、例えば動物またはヒトへの物質の送達を意味することを意図する。投与は、1用量で、処置の過程の全体を通じて連続的にまたは間欠的にもたらされ得る。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、治療のために使用される組成物、治療の目的の他に、処置されている対象の年齢、健康状態または性別によって変動する。単回または複数回の投与は、処置医または愛玩動物および他の動物の場合に処置獣医により選択される用量レベルおよびパターンで実行され得る。
【0077】
AAVの構造および機能
AAVは複製欠損型パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、2つの約145ヌクレオチド逆位末端反復配列(ITR)を含む、約4.7kbの長さである。AAVの複数の血清型がある。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV-1の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_002077において提供されており;AAV-2の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001401およびSrivastava et al., J. Virol., 45: 555-564 (1983)において提供されており;AAV-3の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_l829において提供されており;AAV-4の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001829において提供されており;AAV-5ゲノムはGenBankアクセッション番号AF085716において提供されており;AAV-6の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001862において提供されており;AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも部分はそれぞれGenBankアクセッション番号AX753246およびAX753249において提供されており;AAV-9ゲノムはGao et al., J. Virol., 78: 6381-6388 (2004)において提供されており;AAV-10ゲノムはMol. Ther., 13(1): 67-76 (2006)において提供されており;AAV-11ゲノムはVirology, 330(2): 375-383 (2004)において提供されている。AAV rh.74ゲノムの配列は米国特許第9,434,928号(参照により全体が本明細書に組み込まれる)において提供されている。米国特許第9,434,928号はまた、カプシドタンパク質および自己相補的なゲノムの配列を提供する。一態様では、ゲノムは自己相補的なゲノムである。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド被包/パッケージングおよび宿主細胞染色体組込みを誘導するシス作用性配列はAAV ITR内に含有される。3つのAAVプロモーター(それらの相対的なマップ位置にちなんでp5、p19、およびp40と命名されている)は、repおよびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。(ヌクレオチド2107および2227における)単一のAAVイントロンの差次的なスプライシングと連結された2つのrepプロモーター(p5およびp19)は、rep遺伝子からの4つのrepタンパク質(rep 78、rep 68、rep 52、およびrep 40)の産生を結果としてもたらす。Repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製の原因となる複数の酵素特性を有する。
【0078】
cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、3つのカプシドタンパク質、VPl、VP2、およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連するカプシドタンパク質の産生の原因となる。より特には、VP1、VP2およびVP3タンパク質の各々がそこから翻訳される単一のmRNAが転写された後に、それは2つの異なる方式でスプライシングされることができ、より長いイントロンまたはより短いイントロンのいずれかが切除されて、mRNAの2つのプール:2.3kbおよび2.6kbの長さのmRNAプールの形成を結果としてもたらすことができる。より長いイントロンは多くの場合に好ましく、そのため2.3kbの長さのmRNAは主要なスプライスバリアントと呼ばれ得る。この形態は、VP1タンパク質の合成がそこから開始される第1のAUGコドンを欠いており、VP1タンパク質合成の全体的なレベルの低減を結果としてもたらす。主要なスプライスバリアント中に残存する第1のAUGコドンは、VP3タンパク質のための開始コドンである。しかしながら、同じオープンリーディングフレーム中のそのコドンの上流に、最適なKozak(翻訳開始)の文脈により取り囲まれたACG配列(スレオニンをコードする)が存在する。Becerra SP et al., (December 1985). "Direct mapping of adeno-associated virus capsid proteins B and C: a possible ACG initiation codon". Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 82 (23): 7919-23、Cassinotti P et al., (November 1988). "Organization of the adeno-associated virus (AAV) capsid gene: mapping of a minor spliced mRNA coding for virus capsid protein 1". Virology. 167 (1): 176-84、Muralidhar S et al., (January 1994). "Site-directed mutagenesis of adeno-associated virus type 2 structural protein initiation codons: effects on regulation of synthesis and biological activity". Journal of Virology. 68 (1): 170-6、およびTrempe JP, Carter BJ (September 1988). "Alternate mRNA splicing is required for synthesis of adeno-associated virus VP1 capsid protein". Journal of Virology. 62 (9): 3356-63(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、これは、VP1と同様に、実際に追加のN末端残基を有するVP3タンパク質であるVP2タンパク質の低いレベルの合成に寄与する。単一のコンセンサスポリアデニル化シグナルはAAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVのライフサイクルおよび遺伝学は、Muzyczka, Current Topics in Microbiology and Immunology, 158: 97-129 (1992)において総説されている。
【0079】
各々のVP1タンパク質は、VP1部分、VP2部分およびVP3部分を含有する。VP1部分は、配列番号164のアミノ酸1~137部分に対応する、VP1タンパク質に独特のVP1タンパク質のN末端部分である。VP2部分は、配列番号164のアミノ酸138~202部分に対応する、VP2タンパク質のN末端部分にも見出されるVP1タンパク質内に存在するアミノ酸配列である。VP3部分およびVP3タンパク質は同じ配列を有する。VP3部分は、配列番号164のアミノ酸203~737部分に対応する、VP1およびVP2タンパク質と共有されるVP1タンパク質のC末端部分である。
図5を参照。
【0080】
VP3タンパク質は、別々の可変表面領域I~IX(VR-I~IX)にさらに分割され得る。DiMatta et al., "Structural Insight into the Unique Properties of Adeno-Associated Virus Serotype 9" J. Virol., Vol. 86 (12): 6947-6958, June 2012(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、可変表面領域(VR)の各々は、単独でまたは他のVRの各々の特異的なアミノ酸配列と組み合わせて、特定の血清型に対して独特の感染表現型(例えば、他のAAV血清型と比べた抗原性の減少、形質導入および/または組織特異的トロピズムの向上)を付与することができる特異的なアミノ酸配列を含むかまたは含有することができる。
【0081】
AAVは、例えば、遺伝子治療において、細胞に外来DNAを送達するためのウイルスベクターとしてそれを魅力的なものとする独特の特徴を有する。培養における細胞のAAV感染は非細胞傷害性であり、ヒトおよび他の動物の天然の感染はサイレントかつ無症候性である。さらに、AAVは多くの哺乳動物細胞に感染して、in vivoで多くの異なる組織を標的化する可能性を可能とする。さらに、AAVは、緩徐に分裂するおよび分裂しない細胞に形質導入し、転写的に活性の核内エピソーム(染色体外エレメント)として本質的にそれらの細胞の寿命にわたり持続することができる。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミド中にクローニングされたDNAとして挿入され、これは組換えゲノムの構築を実行可能なものとする。さらには、AAV複製およびゲノムカプシド被包を誘導するシグナルはAAVゲノムのITR内に含有されるので、ゲノム(複製および構造カプシドタンパク質、rep-capをコードする)の内部約4.3kbの一部またはすべては、AAVベクターゲノムを生成するために外来DNAで置き換えられてもよい。repおよびcapタンパク質はトランスで提供されてもよい。AAVの別の意義深い特徴は、それは極めて安定かつ丈夫なウイルスであるということである。それは、アデノウイルスを不活性化するために使用される条件(56~65℃で数時間)に容易に耐え、AAVの低温保存の重要性をより小さいものとする。AAVは凍結乾燥されることさえある。最後に、AAV感染細胞は重感染に対して抵抗性ではない。
【0082】
複数の研究は、筋肉における長期間(>1.5年)の組換えAAV媒介性タンパク質発現を実証している。Clark et al., Hum Gene Ther, 8: 659-669 (1997); Kessler et al., Proc Nat. Acad Sc. USA, 93: 14082-14087 (1996);およびXiao et al., J Virol, 70: 8098-8108 (1996)を参照。Chao et al., Mol Ther, 2:619-623 (2000)およびChao et al., Mol Ther, 4:217-222 (2001)も参照。さらに、筋肉は高度に血管形成しているので、Herzog et al., Proc Natl Acad Sci USA, 94: 5804-5809 (1997)およびMurphy et al., Proc Natl Acad Sci USA, 94: 13921- 13926 (1997)に記載されるように、組換えAAV形質導入は、筋肉内注射後の全身循環における導入遺伝子産物の出現を結果としてもたらした。さらに、Lewis et al., J Virol, 76: 8769-8775 (2002)は、骨格筋線維が、正確な抗体グリコシル化、フォールディング、および分泌のための必要な細胞因子を有することを実証しており、筋肉は分泌されるタンパク質治療剤の安定発現が可能であることを指し示している。本発明の組換えAAV(rAAV)ゲノムは、治療用タンパク質(例えば、CYP4V2、RS1、PDE6B、ABCA4、BEST1、OPA1またはOPA3)をコードする核酸分子および該核酸分子に隣接する1つまたは複数のAAV ITRを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。rAAVゲノム中のAAV DNAは、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV PHP.BおよびAAV rh74を含むが、それに限定されない、組換えウイルスが誘導され得る任意のAAV血清型からのものであってもよい。シュードタイプrAAVの製造は、例えば、国際公開第2001083692号において開示されている。他のタイプのrAAVバリアント、例えばカプシド変異を有するrAAVもまた想定される。例えば、Marsic et al., Molecular Therapy, 22(11): 1900-1909 (2014)を参照。様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は当技術分野において公知である。
【0083】
AAVベクター粒子、カプシドタンパク質、およびAAVベクター
望ましい組織特異性を有し、かつ、疾患の処置において有用な核酸およびタンパク質を含む、様々な治療的ペイロードの送達において用途を有するAAVベクター粒子、AAVベクター、およびカプシドタンパク質が本明細書において提供される。
【0084】
AAVカプシドタンパク質
本開示は、高い遺伝子移入効率および増加した組織トロピズムの特性を有するAAV粒子を提供する。AAVウイルスベクターの送達は現在、ウイルスの天然のトロピズムに基づくかまたは標的組織への直接注射による組織標的化のための血清型選択の使用に依拠する。多くの現在利用可能なAAVウイルスベクターは、しかしながら、特異的な標的部位に遺伝子を送達するために最適ではない。
【0085】
本開示は、それらを含むAAV粒子において高い遺伝子移入効率および増加した組織特異性を付与するAAVカプシドタンパク質配列を提供する。実施形態では、そのようなAAVカプシドタンパク質を含むAAV粒子は、特異的な標的部位への最適な送達を達成するために特異的な送達経路を介して投与される。
【0086】
実施形態では、VP1カプシドタンパク質は、表1に列記されるアミノ酸配列のいずれか1つ、または表1に列記されるアミノ酸配列のいずれか1つと比較して最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が変異、欠失もしくは付加された配列を含む。実施形態では、最大15個のアミノ酸、最大20個のアミノ酸、最大30個のアミノ酸、または最大40個のアミノ酸が、これらの配列と比較して変異、欠失または付加されていてもよい。実施形態では、VP1カプシドタンパク質は、表1に列記される核酸配列のいずれか1つ、または表1に列記される核酸配列のいずれか1つに対して最大5個、最大10個、最大30個、もしくは最大60個のヌクレオチド変化を有する配列によりコードされる。
【表1】
【0087】
実施形態では、AAV VP1タンパク質は、配列番号1~3、30~34、49、84もしくは164のアミノ酸配列、または配列番号1~3、30~34、49、84もしくは164と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なる配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。これらのVP1タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた提供される。実施形態では、VP1タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号15、18~23、47、82、98もしくは167の配列または配列番号15、18~23、47、82、98もしくは167に対して最大5個、最大10個、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0088】
実施形態では、AAVカプシド配列は、AAV-110カプシドタンパク質(配列番号1)、AAV204カプシドタンパク質(配列番号2)、AAV214カプシドタンパク質(配列番号3)またはAAV ITB102_45カプシドタンパク質(配列番号49)である。実施形態では、AAVカプシドタンパク質はAAV214カプシドタンパク質のバリアントである。実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、AAV214A(配列番号30)、AAV-214-AB(配列番号84)、AAV214e(配列番号31)、AAV214e8(配列番号32)、AAV214e9(配列番号33)、AAV214e10(配列番号34)、またはAAV214-D5(配列番号164)である。実施形態では、AAVカプシドタンパク質はAAV214-D5(配列番号164)である。
【0089】
実施形態では、AAVカプシド配列は、AAV204カプシドタンパク質(配列番号2)、AAV214カプシドタンパク質(配列番号3)、AAV214-D5カプシドタンパク質(配列番号164)またはAAV8カプシドタンパク質(配列番号67)である。
【0090】
例示的なVP2およびVP3タンパク質の配列は表2および表3において提供される。VP2およびVP3配列を考慮して、VP1部分は、完全なVP1タンパク質配列とのアライメントにより決定されてもよい。
【表2】
【0091】
実施形態では、AAV VP2タンパク質は、配列番号35~40、50、85および165のいずれか1つのアミノ酸配列、または配列番号35~40、50、85もしくは165と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なる配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、AAV VP2タンパク質は、配列番号165のアミノ酸配列、または配列番号165と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なる配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0092】
これらのVP2タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた提供される。実施形態では、VP2タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号47の配列、または配列番号47に対して最大5個、最大10個、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、VP2タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号168の配列、または配列番号168に対して最大5個、最大10個、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0093】
他のカプシドVP2部分のための例示的な核酸は、VP1カプシドタンパク質核酸の対応する部分から導出されてもよい。
【表3】
【0094】
AAV214、AAV214e、AAV214e8、AAV214e9、AAV214e10のVP3タンパク質は、同じアミノ酸(配列番号41)および核酸(配列番号24)配列を有する。
【0095】
実施形態では、AAV VP3タンパク質は、配列番号17、41~46、51、86、もしくは166のアミノ酸配列、または配列番号17、41~46、51、86、もしくは166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なる配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、AAV VP3タンパク質は、配列番号166のアミノ酸配列、または配列番号166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なる配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0096】
これらのVP3タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた提供される。実施形態では、タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号16、24~29、48、83もしくは169の配列、または配列番号16、24~29、48、83、もしくは169に対して最大5個、最大10個、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号169の配列、または配列番号169に対して最大5個、最大10個、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0097】
実施形態では、AAVカプシドタンパク質はキメラタンパク質である。実施形態では、本明細書に開示されるAAVカプシドタンパク質のVP1、VP2、またはVP3部分は、本明細書に開示される異なるAAVカプシドタンパク質からのVP1、VP2、またはVP3部分で置き換えられてもよい。
【0098】
実施形態では、アミノ酸129におけるロイシン残基、アミノ酸586におけるアスパラギン残基およびアミノ酸723におけるグルタミン酸残基を含むAAVカプシドタンパク質であって、AAVカプシドタンパク質中のアミノ酸位置が配列番号2のアミノ酸配列中のアミノ酸位置に関して番号付けされたものである、AAVカプシドタンパク質が本明細書において提供される。一部の場合には、タンパク質は配列番号2のアミノ酸配列を含む。他の場合には、これらのアミノ酸は他のカプシドタンパク質に導入されてもよい。
【0099】
実施形態では、VP1部分、VP2部分およびVP3部分を含むAAV VP1カプシドタンパク質であって、VP1部分がアミノ酸129におけるロイシン(L)残基を含み、VP2部分がアミノ酸157におけるスレオニン(T)またはアスパラギン(N)残基およびアミノ酸162におけるリシン(K)またはセリン(S)残基を含み、かつVP3部分が、アミノ酸223におけるアスパラギン(N)残基、アミノ酸224におけるアラニン(A)残基、アミノ酸272におけるヒスチジン(H)残基、アミノ酸410におけるスレオニン(T)残基、アミノ酸724におけるヒスチジン(H)残基およびアミノ酸734におけるプロリン(P)残基を含み、AAVカプシドタンパク質中のアミノ酸位置が配列番号3のアミノ酸配列中のアミノ酸位置に関して番号付け(すなわち、VP1カプシドサブユニット番号付け)されたものである、AAV VP1カプシドタンパク質が本明細書において提供される。
【0100】
実施形態では、VP1部分はアミノ酸24におけるアスパラギン酸(D)またはアラニン(A)残基をさらに含み、AAVカプシドタンパク質中のアミノ酸位置は配列番号3のアミノ酸配列中のアミノ酸位置に関して番号付けされたものである。実施形態では、VP2部分は、(i)アミノ酸148におけるプロリン(P)残基;(ii)アミノ酸152に挿入されたアルギニン(R)残基;(iii)アミノ酸168におけるアルギニン(R)残基;(iv)アミノ酸189におけるイソロイシン(I)残基;および(v)アミノ酸200におけるセリン(S)残基のうちの1つまたは複数をさらに含み、AAVカプシドタンパク質中のアミノ酸位置は配列番号3のアミノ酸配列中のアミノ酸位置に関して番号付けされたものである。
【0101】
実施形態では、開示されるVP3部分カプシドタンパク質中の1つまたは複数の可変領域I~IX(
図5を参照)は、除去され、かつ代替的な領域で置き換えられてもよい。好適な代替物は、以下の表6において同定される。これらの位置の他に、追加の代替物の同一性は、
図5に示されるように配列番号41に対するアライメントにより同定されてもよい。実施形態では、1つまたは複数のVRは、1、2または3つのアミノ酸の挿入を有してもよい。実施形態では、1つまたは複数のVRは、1、2または3つのアミノ酸の欠失を有してもよい。
【表6】
【0102】
本開示は、本明細書に開示されるAAVカプシドタンパク質のいずれか1つをコードする核酸を提供する。本開示はまた、本明細書に開示される核酸のいずれか1つを含むベクターを提供する。
【0103】
実施形態では、AAVはAAV9血清型である。代替的な血清型または改変されたカプシドウイルスを使用して神経トロピズムを最適化することができる。代替的なベクターは、標準的なAAV9よりも高い神経トロピズムのための改変されたAAV9血清型ベクター、例えば、神経に標的化されたベクターを同定するためにCre-lox組換えシステムを使用するPHP.Bを含む。代替的に、AAV9 PHP.Bは、肝臓トロピズムを低減させるためのアスパラギンからリシンへのVP1のアミノ酸498の改変を有する。変異したいくつかのアミノ酸を有するAAVrh74のさらなるバリアントは、脳を含む非常に広い組織トロピズムのために使用され得る。
【0104】
AAVベクター
AAVベクターは、対象における核酸の発現の制御に関与するエレメントの他に、カプシド被包を促すためのITRを含むAAVベクター粒子中にカプシド被包される核酸を供給する。実施形態では、本明細書に開示されるAAVベクターは、少なくとも1つの異種核酸(HNA)配列を含み、HNA配列は、対象の細胞中で発現された場合に、疾患または障害を処置するために有効である。実施形態では、HNA配列は導入遺伝子を含む。実施形態では、AAVベクターは少なくとも1つのITR配列および少なくとも1つの導入遺伝子を含む。実施形態では、導入遺伝子は治療用タンパク質または治療用RNAをコードする。
【0105】
実施形態では、宿主細胞における導入遺伝子発現の制御は、プロモーター配列、およびポリアデニル化シグナルを含む、AAVベクター内に含有される調節エレメントにより調節されてもよい。実施形態では、AAVベクターはまたシグナルペプチドをコードしてもよい。実施形態では、AAVベクターは5’および3’逆位末端反復配列(ITR)を有する。5’ ITRはプロモーターの上流に位置し、プロモーターは次いで導入遺伝子の上流にある。実施形態では、5’および3’ ITRは同じ配列を有する。実施形態では、それらは異なる配列を有する。実施形態では、本開示のAAVベクターは、5’から3’への方向に、第1(5’)のITR、プロモーター、導入遺伝子、ポリアデニル化シグナル、および第2(3’)のITRを含んでもよい。
【0106】
実施形態では、HNA(例えば、導入遺伝子を含むHNA)は構成的プロモーターに作動可能に連結している。構成的プロモーターは、当技術分野において公知のおよび/または本明細書において提供される任意の構成的プロモーターであり得る。実施形態では、構成的プロモーターは、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じてRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター、ハイブリッドニワトリベータアクチンプロモーター、MeCP2プロモーター、H1プロモーター、U1aプロモーター、mMeP418プロモーター、mMeP426プロモーター、最小MeCP2プロモーター、CAGプロモーター、またはEF1プロモーターを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。そのようなプロモーターのヌクレオチド配列は、mRNA転写の効率を増加または減少させるために改変されてもよいことが当技術分野において公知である。例えば、Gao et al. (2018) Mol. Ther.: Nucleic Acids 12:135-145を参照(RNAポリメラーゼIIIの転写を消失させ、RNAポリメラーゼII依存性mRNA転写を刺激するための7SK、U6およびH1プロモーターのTATAボックスの改変)。実施形態では、HNA配列は、組織特異的制御プロモーター、または誘導性プロモーターに作動可能に連結している。実施形態では、組織特異的制御プロモーターは、中枢神経系(CNS)細胞特異的プロモーター、肺特異的プロモーター、皮膚特異的プロモーター、筋肉特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、目特異的プロモーター(例えば、VMD2、またはmRhoプロモーター)である。
【0107】
実施形態では、プロモーターは、配列番号96(マウスU1プロモーター)または配列番号97(H1プロモーター)の配列を有するポリヌクレオチドを含むか、それから本質的になるかまたはそれからなるものであってもよい。実施形態では、プロモーターは、U1aもしくはU1bプロモーター、EF1プロモーター、またはCBA(ニワトリベータ-アクチン)である。実施形態では、プロモーターは、表5に列記される核酸配列のいずれか1つ、または表5に列記される核酸配列のいずれか1つに対して最大5、最大10、最大20、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含むか、それから本質的になるかまたはそれからなるものであってもよい。実施形態では、プロモーターは、表5に列記される核酸配列のいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるものであってもよい。
【表5】
【0108】
実施形態では、HNA配列は追加の調節エレメントに作動可能に連結している。追加の調節エレメントはウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(「WPRE」)であり得る。実施形態では、AAVベクターは、ベクター製造の目的のための細菌宿主中でのベクターの増殖および培養のために好適な調節成分を含んでもよい。例えば、ベクターは、抗生物質耐性、および細菌中でのプラスミドの維持のための遺伝子の他に、細菌中でのタンパク質発現を制御するための付随する調節エレメントを含んでもよい。
【0109】
実施形態では、HNA配列はポリアデニル化シグナルに作動可能に連結している。実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、MeCP2ポリアデニル化シグナル、レチノールデヒドロゲナーゼ1(RDH1)ポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、SPA49ポリアデニル化シグナル、sNRP-TK65ポリアデニル化シグナル、sNRPポリアデニル化シグナル、またはTK65ポリアデニル化シグナルを含むか、それから本質的になるかまたはそれからなる。例示的なSPA49ポリアデニル化シグナルは、Ostedgaard et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA (Feb. 22, 2005) 102:2952-2957(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0110】
異種核酸(HNA)
本明細書に開示されるAAVウイルスベクターは、標的組織に感染し、かつ1つまたは複数の異種核酸(HNA)を標的組織に送達する。実施形態では、HNA配列は、標的組織の細胞中で転写され、かつ必要に応じて翻訳される。
【0111】
一部の場合には、HNAは、アンチセンスRNA、microRNA、siRNA、またはガイドRNA(gRNA)をコードする。改変のために生細胞のゲノムを標的化するためにCRISPR技術が使用されている。Cas9タンパク質は、CRISPRシステムを通じた遺伝子修復を媒介するために標的組織および細胞に効率的に送達されなければならない大きい酵素であり、現在のCRISPR/Cas9遺伝子修正プロトコールはいくつかの欠点を抱えている。Cas9の長期発現は宿主免疫応答を誘発し得る。追加のガイドRNAが、パッケージングの制約に起因して別々のベクターを介して送達されてもよい。実施形態では、HNAはCas9タンパク質またはその同等物をコードする。
【0112】
実施形態では、HNAは、タンパク質をコードする導入遺伝子を含み、該タンパク質は、ネイティブなタンパク質の活性の低減または排除に起因する疾患または障害を処置するために対象の細胞において発現されてもよい。そのため、実施形態では、導入遺伝子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)、N-アセチル-アルファ-グルコサミニダーゼ(NAGLU)、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)、テロメア生存運動ニューロン1(survival of motor neuron 1, telomeric)(SMN1)、バイオミネラリゼーション関連アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase, biomineralization associated)(ALPL;TNALPとしても公知)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、グルコシルセラミダーゼベータ(GBA1)、イズロニダーゼアルファ-L-(IDUA)、メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)、神経セロイドリポフスチノーシス1(ceroid lipofuscinosis, neuronal, 1)(CLN1)、ロドプシン(Rho)、シトクロムP450ファミリー4サブファミリーVメンバー2(CYP4V2)、レチノスキシン1(RS1)、ホスホジエステラーゼ6B(PDE6B)、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)、ベストロフィン-1(BEST1)、OPA1ミトコンドリアダイナミン様GTPase(OPA1)、および視神経萎縮症3(Optic Atrophy 3)(OPA3)から選択されるタンパク質をコードしてもよい。
【0113】
実施形態では、導入遺伝子はシトクロムP450ファミリー4サブファミリーVメンバー2(CYP4V2)をコードする。実施形態では、CYP4V2導入遺伝子は、CYP4V2の変異体配列、コドン最適化配列、および/または切断型配列を含む。実施形態では、CYP4V2導入遺伝子は、配列番号116の配列、または配列番号116に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を有する核酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、CYP4V2導入遺伝子は、配列番号142のアミノ酸配列、または配列番号142に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるタンパク質をコードする。実施形態では、本開示のAAVベクターまたはAAVベクターゲノムは、CYP4V2をコードし、かつビエッティ結晶性ジストロフィーを処置するためのものである。
【0114】
実施形態では、導入遺伝子はレチノスキシン1(RS1)をコードする。実施形態では、RS1導入遺伝子は、RS1の変異体配列、コドン最適化配列、および/または切断型配列を含む。実施形態では、RS1導入遺伝子は、配列番号117の配列、または配列番号117に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を有する核酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、RS1導入遺伝子は、配列番号143のアミノ酸配列、または配列番号143に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるタンパク質をコードする。実施形態では、本開示のAAVベクターまたはAAVベクターゲノムは、RS1をコードし、かつ網膜分離症を処置するためのものである。
【0115】
実施形態では、導入遺伝子はホスホジエステラーゼ6B(PDE6B)をコードする。実施形態では、PDE6B導入遺伝子は、PDE6Bの変異体配列、コドン最適化配列、および/または切断型配列を含む。実施形態では、PDE6B導入遺伝子は、配列番号118の配列、または配列番号118に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を有する核酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、PDE6B導入遺伝子は、配列番号144のアミノ酸配列、または配列番号144に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるタンパク質をコードする。実施形態では、本開示のAAVベクターまたはAAVベクターゲノムは、PDE6Bをコードし、かつ網膜色素変性症を処置するためのものである。
【0116】
実施形態では、導入遺伝子はATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)をコードする。実施形態では、ABCA4導入遺伝子は、ABCA4の変異体配列、コドン最適化配列、および/または切断型配列を含む。実施形態では、ABCA4導入遺伝子は、配列番号172の配列、または配列番号172に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を有する核酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、ABCA4導入遺伝子は、配列番号177のアミノ酸配列、または配列番号177に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるタンパク質をコードする。実施形態では、本開示のAAVベクターまたはAAVベクターゲノムは、ABCA4をコードし、かつシュタルガルト病を処置するためのものである。
【0117】
実施形態では、導入遺伝子はベストロフィン-1(BEST-1)をコードする。実施形態では、BEST-1導入遺伝子は、BEST-1の変異体配列、コドン最適化配列、および/または切断型配列を含む。実施形態では、BEST-1導入遺伝子は、配列番号173もしくは174の配列、または配列番号173もしくは174に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を有する核酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、BEST-1導入遺伝子は、配列番号178もしくは179のアミノ酸配列、または配列番号178もしくは179に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるタンパク質をコードする。実施形態では、本開示のAAVベクターまたはAAVベクターゲノムは、BEST-1をコードし、かつBEST卵黄様黄斑ジストロフィーを処置するためのものである。
【0118】
実施形態では、導入遺伝子はOPA1ミトコンドリアダイナミン様GTPase(OPA1)をコードする。実施形態では、OPA1導入遺伝子は、OPA1の変異体配列、コドン最適化配列、および/または切断型配列を含む。実施形態では、OPA1導入遺伝子は、配列番号175の配列、または配列番号175に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を有する核酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、OPA1導入遺伝子は、配列番号180のアミノ酸配列、または配列番号180に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるタンパク質をコードする。実施形態では、本開示のAAVベクターまたはAAVベクターゲノムは、OPA1をコードし、かつ優性視神経萎縮症を処置するためのものである。
【0119】
実施形態では、導入遺伝子は視神経萎縮症3(OPA3)をコードする。実施形態では、OPA3導入遺伝子は、OPA3の変異体配列、コドン最適化配列、および/または切断型配列を含む。実施形態では、OPA3導入遺伝子は、配列番号176の配列、または配列番号176に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を有する核酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。実施形態では、OPA3導入遺伝子は、配列番号181のアミノ酸配列、または配列番号181に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも99.5%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるタンパク質をコードする。実施形態では、本開示のAAVベクターまたはAAVベクターゲノムは、OPA3をコードし、かつ優性視神経萎縮症を処置するためのものである。
【0120】
実施形態では、導入遺伝子は、表4に列記される核酸配列のいずれか1つ、または表4中のDNA配列(配列番号116~118および172~176)のいずれか1つに対して最大5個、最大10個、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含む。実施形態では、導入遺伝子は、表4に列記されるアミノ酸配列のいずれか1つ、または表4に列記されるアミノ酸配列(配列番号142~144および177~181)のいずれか1つと最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なる配列をコードする。
【表4】
【0121】
実施形態では、導入遺伝子は、配列番号99~133および172~176のいずれか1つに記載される核酸配列、または配列番号99~133および172~176のいずれか1つに対して最大5個、最大10個、もしくは最大30個のヌクレオチド変化を有する配列を含む。実施形態では、導入遺伝子は、配列番号134~151および177~181のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、または配列番号134~151および177~181のアミノ酸配列のいずれか1つと最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なる配列をコードする。
【0122】
実施形態では、異種核酸は、レポータータンパク質;例えば、蛍光タンパク質をコードする。
【0123】
AAVウイルスベクターを製造する方法
様々なアプローチがAAVウイルスベクターを製造するために使用され得る。実施形態では、パッケージングは、ヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドおよび細胞系を使用することにより達成される。ヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドは、ウイルスベクターの製造を促すエレメントおよび配列を含有する。別の態様では、ヘルパープラスミドは、パッケージング細胞系のゲノムに安定的に組み込まれ、その結果、パッケージング細胞系は、ヘルパープラスミドでの追加のトランスフェクションを要求しない。
【0124】
実施形態では、細胞はパッケージングまたはヘルパー細胞系である。実施形態では、ヘルパー細胞系は、真核細胞;例えば、HEK 293細胞または293T細胞である。実施形態では、ヘルパー細胞は酵母細胞または昆虫細胞である。
【0125】
実施形態では、細胞は、テトラサイクリン活性化因子タンパク質をコードする核酸;およびテトラサイクリン活性化因子タンパク質の発現を調節するプロモーターを含む。実施形態では、テトラサイクリン活性化因子タンパク質の発現を調節するプロモーターは構成的プロモーターである。実施形態では、プロモーターはホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(PGK)またはCMVプロモーターである。
【0126】
ヘルパープラスミドは、例えば、複製能のないAAVをパッケージングするために要求されるすべてのビリオンタンパク質をトランスでコードする、および、複製能のあるAAVの製造なしに、高い力価で複製能のないAAVをパッケージングする能力を有するビリオンタンパク質を製造するための、複製能のないウイルスゲノムに由来する少なくとも1つのウイルスヘルパーDNA配列を含んでもよい。
【0127】
AAVをパッケージングするためのヘルパープラスミドは当技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開第2004/0235174 A1号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。該文献において記載されるように、AAVヘルパープラスミドは、非限定的な例として、それらのそれぞれの元々のプロモーターによりまたは異種プロモーターにより制御されるAd5遺伝子E2A、E4およびVAをヘルパーウイルスDNA配列として含有してもよい。AAVヘルパープラスミドは、所望される標的細胞のトランスフェクションの単純な検出を可能にするためのマーカータンパク質、例えば蛍光タンパク質の発現用の発現カセットを追加的に含有してもよい。
【0128】
本開示は、AAV粒子を製造する方法であって、パッケージング細胞系に、本明細書に開示されるAAVヘルパープラスミドのいずれか1つ;および本明細書に開示されるAAVベクターのいずれか1つをトランスフェクトすることを含む、方法を提供する。実施形態では、AAVヘルパープラスミドおよびAAVベクターは、パッケージング細胞系に共トランスフェクトされる。実施形態では、細胞系は、哺乳動物細胞系、例えば、ヒト胚性腎臓(HEK)293細胞系である。本開示は、本明細書に開示されるAAVベクターおよび/またはAAV粒子のいずれか1つを含む細胞を提供する。
【0129】
医薬組成物
本開示は、本明細書に記載されるAAVベクター、AAVカプシドおよび/またはAAV粒子のいずれか1つを含む医薬組成物を提供する。典型的には、AAV粒子は治療のために投与される。
【0130】
本明細書に記載されている医薬組成物は、薬理学の分野において公知のまたは開発された任意の方法により製剤化されてもよく、該方法は、活性成分(例えば、ウイルス粒子またはAAVベクター)を賦形剤または他の副成分と接触させること、生成物を用量単位に分割または包装することを含むがそれに限定されない。望ましい特徴、例えば、増加した安定性、増加した細胞トランスフェクション、持続または遅延された放出、体内分布またはトロピズム、in vivoでのコードされるタンパク質のモジュレートまたは増強された翻訳、およびin vivoでのコードされるタンパク質の放出プロファイルを有する本開示のウイルス粒子が、製剤化されてもよい。
【0131】
そのため、医薬組成物は、食塩水、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、AAVベクターでトランスフェクトされたかAAVウイルス粒子で形質導入された細胞(例えば、対象への移植用)、ナノ粒子模倣物またはその組合せをさらに含んでもよい。実施形態では、医薬組成物はナノ粒子として製剤化される。実施形態では、ナノ粒子は、自己集合した核酸ナノ粒子である。
【0132】
本開示による医薬組成物は、バルクで、単回単位用量として、および/または複数の単回単位用量として調製、包装、および/または販売されてもよい。活性成分の量は、対象に投与されるであろう活性成分の投薬量および/またはそのような投薬量の好都合な比率、例えば、そのような投薬量の2分の1もしくは3分の1などに概して等しい。本発明の製剤は、1つまたは複数の賦形剤を含むことができ、その各々は、一緒になって、ウイルスベクターの安定性を増加させ、ウイルスベクターによる細胞トランスフェクションもしくは形質導入を増加させ、ウイルスベクターによりコードされるタンパク質の発現を増加させ、かつ/またはウイルスベクターによりコードされるタンパク質の放出プロファイルを変更する量であり得る。実施形態では、医薬組成物は賦形剤を含む。賦形剤の非限定的な例は、溶媒、分散媒体、希釈剤、もしくは他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、防腐剤、またはその組合せを含む。
【0133】
実施形態では、医薬組成物は凍結保護剤を含む。用語「凍結保護剤」は、凍結の間の物質への損傷を低減または排除する能力を有する作用物質を指す。凍結保護剤の非限定的な例は、スクロース、トレハロース、ラクトース、グリセロール、デキストロース、ラフィノースおよび/またはマンニトールを含む。
【0134】
治療方法
本開示は、障害を予防または処置する方法であって、対象に治療有効量の本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを投与することを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、方法を提供する。
【0135】
実施形態では、障害は、CNS障害、皮膚障害、肺障害、筋肉障害、肝臓障害、または眼疾患(もしくは網膜疾患)である。実施形態では、障害は嚢胞性線維症である。実施形態では、障害は眼疾患である。実施形態では、障害は網膜疾患である。
【0136】
実施形態では、障害は、低ホスファターゼ血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、劣性ジストロフィー性表皮水疱症(RDEB)、リソソーム貯蔵障害(デュシェンヌ型筋ジストロフィー、およびベッカー型筋ジストロフィーを含む)、若年性バッテン病、乳児バッテン病、常染色体優性障害、筋ジストロフィー、ビエッティ結晶性ジストロフィー、網膜分離症(例えば、変性性、遺伝性、牽引性、滲出性)、血友病A、血友病B、多発性硬化症、糖尿病、ファブリー病、ポンペ病、神経セロイドリポフスチノーシス1(CLN1)、CLN3病(もしくは若年性神経セロイドリポフスチノーシス)、ゴーシェ病、がん、関節炎、筋消耗、心臓疾患、内膜過形成、レット症候群、癲癇、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、自己免疫疾患、嚢胞性線維症、サラセミア、ハーラー症候群(MPS IH)、スライ症候群、シャイエ症候群、ハーラー-シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A(ムコ多糖症IIIAもしくはMPS IIIA)、サンフィリポ症候群B(ムコ多糖症IIIBもしくはMPS IIIB)、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、モルキオ症候群、マロトー-ラミー症候群、クラッベ病、フェニルケトン尿症、脊髄脳性運動失調症、LDL受容体欠損症、高アンモニア血症、貧血、関節炎、またはアデノシンデアミナーゼ欠損症である。
【0137】
本明細書に開示される特異的な導入遺伝子に加えて、公知の活性酵素配列が、機能的な酵素活性を伝達するための導入遺伝子として使用されてもよい。
【0138】
実施形態では、障害はCLN3病である。CLN3病または若年性神経セロイドリポフスチノーシスは、CLN3遺伝子における常染色体劣性遺伝的変異により引き起こされるリソソーム貯蔵疾患である。CLN3病は、中枢神経系(CNS)が大いに影響されて、行動上の問題、視力低下、および他の認知障害を結果としてもたらす、進行性の神経変性障害である。
【0139】
実施形態では、障害はファブリー病である。ファブリー病は、リソソームにおける糖脂質生成物、グロボトリアオシルセラミド(Gb3)およびlyso-Gb3の蓄積を結果としてもたらすアルファ-ガラクトシダーゼA(GLA)活性における欠損により引き起こされるX連鎖性リソソーム貯蔵障害である。疾患の提示は高度に不均質であるが、末梢神経栄養性疼痛の頻繁な発作、被角血管腫、汗産生の低減、角膜ジストロフィー、および消化管合併症を通常は含む。疾患が進行するにつれて、患者は、心筋症、腎不全および脳血管疾患を患い、これらのすべては、ファブリー患者における寿命の低減の主要な原因である。男性は、GLA遺伝子中に変異を有する患者の最も重度に影響される集団であるが、女性患者もまた頻繁に症候性であるが多くの場合に誤診されることがますます明確になってきた。酵素置換治療(ERT)は現在、ファブリーを処置するための唯一のFDA承認済みの治療であり、比較的大量の組換えタンパク質の2週毎の注射を要求する。ERTは、心臓、腎臓および血管系におけるGb3の蓄積を低減させるが、CNSに効率的に入ることができないことに主に起因して、ファブリーのすべての症状を完全に処置するわけではない。遺伝子治療戦略が研究されており、多くは糖脂質蓄積の矯正において大きな有望性を示しているが、ほとんどは、CNSに効率的に入ることに失敗しており、そしてまたGLA置換の間に多くの場合に見られる免疫応答を抱えている。
【0140】
実施形態では、本明細書に開示されるAAVウイルスベクターは、ERTに対して非応答性であるか、またはERTがすべての症状に対処しない場合の患者においてファブリー病を処置するために使用される。実施形態では、本明細書に開示されるAAVウイルスベクターは、ERTを既に投与されている患者においてファブリー病を処置するために使用される。
【0141】
実施形態では、障害はポンペ病である。ポンペ病は、リソソームにおけるグリコーゲンの蓄積を結果としてもたらす酸α-グルコシダーゼ(GAA)活性における欠損により引き起こされるリソソーム貯蔵障害である。疾患は、早期死亡を伴う、平滑筋系および横紋筋系の両方の他に中枢神経系(CNS)に主に影響する筋ジストロフィーの形態として現れる。酵素置換治療(ERT)は現在、ポンペを処置するための唯一のFDA承認済みの治療であり、比較的大量の組換えタンパク質の2週毎の注射を要求する。ERTは、治療なしで2歳までに典型的には死亡する乳児ポンペ患者の死亡率を有意に低減させるが、CNSに効率的に入ることができないことおよび結果的なGAAタンパク質に対する免疫応答に主に起因して、ポンペのすべての症状を完全に好転させるわけではない。遺伝子治療戦略が研究されており、多くはグリコーゲン蓄積およびポンペの他の症状の矯正において大きな有望性を示している。ほとんどは、GAA置換の間に見られる重度の免疫応答を抱えている。肝臓特異的な発現は、動物をGAAタンパク質に対して忍容性とすることができ、かつ液性応答を有意に低減できることを、先行する研究は実証している。
【0142】
実施形態では、本明細書に開示されるAAVウイルスベクターは、ERTを既に投与されている患者;例えばERTに対して非応答性であるか、またはERTがすべてのそれらの症状に対処しなかった場合の患者において、ポンペ病を処置するために使用される。
【0143】
実施形態では、本明細書に開示されるAAVウイルスベクターは、がんを処置するために使用される。実施形態では、がんは、固形がん;例えば、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、直腸、子宮内膜、腎臓、口唇、口腔、肝臓、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺、非黒色腫皮膚、卵巣、膵臓、前立腺、肉腫、小細胞肺腫瘍、または甲状腺のものである。
【0144】
実施形態では、障害は眼疾患である。目は免疫特権的な組織である。ごく少数のウイルスが治療利益のために必要である。実施形態では、眼疾患は光受容細胞およびRPE細胞に影響する。実施形態では、眼疾患は、網膜色素変性症(例えば、常染色体劣性(SPATA7遺伝子;LRAT遺伝子;TULP1遺伝子)、常染色体優性(AIPL1遺伝子)、およびX連鎖性(RPGR遺伝子))、ベストロフィン-1(BEST-1もしくはBEST1)遺伝子における変異に関する眼障害(例えば、卵黄様黄斑ジストロフィー、加齢性黄斑変性症、常染色体優性硝子体網膜脈絡膜症、緑内障、白内障)、レーバー先天性黒内障(LCA;アリール-炭化水素相互作用タンパク質様1(aryl-hydrocarbon interacting protein-like 1;AIPL1)遺伝子)、錐体桿体ジストロフィー(CRD;ABCA4遺伝子)、シュタルガルト(ABCA4遺伝子)、コロイデレミア(CHM遺伝子)、アッシャー症候群(MYO7A遺伝子;CDH23遺伝子;USH2A遺伝子;CLRN1遺伝子)、優性視神経萎縮症(例えば、常染色体(OPA1遺伝子;OPA3遺伝子))、網膜色素変性症(PDE6B遺伝子)、網膜分離症(RS1遺伝子)、ビエッティ結晶性ジストロフィー(CYP4V2遺伝子)または色覚異常(CNGA3遺伝子、CNGB3遺伝子、GNAT2遺伝子、PDE6C遺伝子、もしくはPDE6H遺伝子)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0145】
実施形態では、本開示は、網膜細胞において導入遺伝子を発現させる方法を提供する。実施形態では、方法は、本開示の核酸を網膜細胞に送達することを含む。実施形態では、方法は、本開示のAAVウイルスベクターで網膜細胞を形質導入することを含む。
【0146】
実施形態では、本開示の標的細胞は網膜細胞を含む。実施形態では、網膜細胞は、光受容細胞、双極細胞、網膜神経節細胞、水平細胞、またはアマクリン細胞を含む。実施形態では、網膜細胞は網膜神経節細胞を含む。実施形態では、網膜細胞は双極細胞を含む。実施形態では、網膜細胞は水平細胞を含む。実施形態では、網膜細胞はアマクリン細胞を含む。実施形態では、網膜細胞は光受容細胞を含む。実施形態では、光受容細胞は桿体細胞および/または錐体細胞を含む。
【0147】
実施形態では、本開示の標的細胞は、光受容細胞を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0148】
実施形態では、対象は、哺乳動物;例えば、ヒトである。特定の態様では、ヒトは、ヒト乳児;例えば、3歳未満、2歳未満、または1歳未満のヒト乳児である。
【0149】
本明細書に開示される処置および予防方法は、治療または予防のための患者を同定および選択するための適切な診断技術と組み合わせられてもよい。例えば、本明細書に開示される障害を処置または予防する方法は、対象において障害に関する遺伝的変異または欠失を同定するために遺伝子検査を行うステップをさらに含んでもよい。実施形態では、障害を処置または予防する方法は、障害に関する変異を有するとして、または(例えば、遺伝的要因に基づいて)障害を発症する高いリスクがあるとして以前に同定された対象に投与することを含む。
【0150】
本開示は、宿主細胞においてタンパク質のレベルを増加させる方法であって、宿主細胞を本明細書に開示されるAAV粒子のいずれか1つと接触させることを含み、AAV粒子が、該タンパク質をコードするHNA配列を含む、本明細書に開示されるAAVベクターゲノムのいずれか1つを含む、方法を提供する。実施形態では、タンパク質は治療用タンパク質である。実施形態では、宿主細胞は、in vitro、in vivo、またはex vivoのものである。実施形態では、宿主細胞は対象に由来する。実施形態では、対象は、正常な対象におけるタンパク質のレベルおよび/または機能性と比較してタンパク質のレベルおよび/または機能性の低減を結果としてもたらす障害を患っている。
【0151】
実施形態では、タンパク質のレベルは、宿主細胞において約1×10-7ng、約3×10-7ng、約5×10-7ng、約7×10-7ng、約9×10-7ng、約1×10-6ng、約2×10-6ng、約3×10-6ng、約4×10-6ng、約6×10-6ng、約7×10-6ng、約8×10-6ng、約9×10-6ng、約10×10-6ng、約12×10-6ng、約14×10-6ng、約16×10-6ng、約18×10-6ng、約20×10-6ng、約25×10-6ng、約30×10-6ng、約35×10-6ng、約40×10-6ng、約45×10-6ng、約50×10-6ng、約55×10-6ng、約60×10-6ng、約65×10-6ng、約70×10-6ng、約75×10-6ng、約80×10-6ng、約85×10-6ng、約90×10-6ng、約95×10-6ng、約10×10-5ng、約20×10-5ng、約30×10-5ng、約40×10-5ng、約50×10-5ng、約60×10-5ng、約70×10-5ng、約80×10-5ng、または約90×10-5ngのレベルまで増加される。
【0152】
本開示は、対象において細胞に目的の遺伝子を導入する方法であって、細胞を有効量の本明細書に開示されるAAVウイルス粒子のいずれか1つと接触させることを含み、AAVウイルス粒子が、目的の遺伝子を含む、本明細書に開示されるAAVベクターゲノムのいずれか1つを含有する、方法を提供する。
【0153】
投薬量および投与
投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は当業者に公知であり、治療のために使用される組成物、治療の目的および処置されている対象によって変動する。単回または複数回の投与は、用量レベルおよびパターンが処置医により選択されて実行され得る。投薬量は投与の経路により影響され得ることが留意される。好適な投薬製剤および薬剤を投与する方法は当技術分野において公知である。そのような好適な投薬量の非限定的な例は、1投与当たり109ベクターゲノムもの低さから1017ベクターゲノムもの高さまでであってもよい。
【0154】
本明細書に記載される方法の実施形態では、対象に投与されるウイルス粒子(例えば、AAV)の数は、約109~約1017の範囲内である。実施形態では、約1010~約1012、約1011~約1013、約1011~約1012、約1011~約1014、約5×l011~約5×1012、または約1012~約1013個のウイルス粒子が対象に投与される。ヒトの目への投与のために、約1×1010vg/目の総用量が使用されてもよく、5×109vg/目の総用量がマウスの目のために使用されてもよい。非侵襲的なin vivoイメージング技術を使用して動物における有効性/安全性をモニターすることができ、該技術は、走査型レーザー検眼鏡検査(SLO)、光干渉断層撮影法(OCT)、マルチフォトン顕微鏡法、フルオレセイン血管造影法を含むがそれに限定されない。
【0155】
実施形態では、AAV粒子は、対象において遺伝子欠損を修復する。実施形態では、成功裏に処置された細胞、組織、臓器または対象における修復された標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの、修復されていない標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する比は、少なくとも約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、約1000:1、約10,000:1、約100,000:1、または約1,000,000:1である。修復された標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量または比は、ウエスタン分析、ノーザン分析、サザン解析、PCR、シークエンシング、質量分析、フローサイトメトリー、免疫組織化学、免疫蛍光、蛍光in situハイブリダイゼーション、次世代シークエンシング、イムノブロット、およびELISAを含むがそれに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法により決定され得る。
【0156】
実施形態では、ウイルス粒子は、対象に静脈内に、髄腔内に、脳内に、脳室内に、鼻腔内に、気管内に、耳内に、眼内に、または眼周囲に、経口的に、直腸に、経粘膜的に、吸入により、経皮的に、非経口的に、皮下に、皮内に、筋肉内に、胸膜内に、外用で、リンパ内に、嚢内に導入され;そのような導入はまた、動脈内、心臓内、脳室下、硬膜外、大脳内、脳室内、網膜下、傍網膜、硝子体内、関節内、腹腔内、子宮内、またはその任意の組合せであってもよい。実施形態では、ウイルス粒子は、所望される標的組織に、例えば、非限定的な例として、肺、目、またはCNSに、送達される。実施形態では、ウイルス粒子の送達は全身性である。槽内の投与経路は、直接的に脳室の脳脊髄液中への薬物の投与を伴う。それは、大槽への直接注射によりまたは永久的に配置された管を介して行われ得る。
【0157】
眼内で眼疾患(または眼障害)を処置するために、涙腺(LG)投与、外用点眼、角膜への間質内投与、前房内投与(前眼房)、硝子体内投与、網膜下投与、傍網膜投与、全身投与、またはその組合せを含むがそれに限定されない、当業者に公知の複数の投与のモードがある。遺伝的眼障害の80%は光受容細胞において起こる。小体積の遺伝子治療の硝子体内送達は外来診療所で行うことができる。
【0158】
実施形態では、投与のモードは傍網膜投与である。本明細書で使用される場合、用語「傍網膜投与」は、網膜の所望される領域に近接させて硝子体腔中に治療剤(例えば、AAVウイルスベクター)を注射する硝子体内投与の形態(すなわち、標的化された送達)を指す。実施形態では、網膜の所望される領域は、網膜の中心窩領域の近くである。中部硝子体腔中に生成物を沈着させるために設計された短い針を使用して行われ、直接的な視覚化を要求しない慣用的な硝子体内投与とは対照的に、傍網膜注射は、網膜の近くの後部硝子体腔中に生成物を送達する能力を有するより長い針の直接的な視覚化の下で行われる。実施形態では、治療剤は、網膜の表面から0mm~13mmの距離において、網膜の表面から0mm~10mmの距離において、網膜の表面から0mm~5mmの距離において、または網膜の表面から0mm~3mmの距離において硝子体腔中に沈着される。実施形態では、治療剤は、網膜の表面から0~13mm、0~12mm、0~11mm、0~10mm、0~9mm、0~8mm、0~7mm、0~6mm、0~5mm、0~4mm、0~3mm、0~2mm、または0~1mmの距離において硝子体腔中に沈着される。
【0159】
実施形態では、傍網膜投与は、網膜下注射が適切でない状況において使用される。実施形態では、傍網膜投与は、視神経の標的化された形質導入のために使用される。実施形態では、傍網膜投与は、視神経の機能障害に関する疾患または障害を処置するために使用される。実施形態では、傍網膜投与は、優性視神経萎縮症または網膜分離症を処置するために使用される。
【0160】
実施形態では、傍網膜投与は、ヒトの目の後極に達するために十分な長さ(25mmまたは同様の長さ)を有する小ゲージ針(30ゲージまたは同様のゲージ)、眼外照明(exo-illumination)または眼内照明(endo-illumination)および顕微鏡を使用する視覚化の使用、ならびに後部硝子体腔および網膜に焦点を合わせることを可能とする角膜コンタクトレンズの使用を伴う。これは典型的には十分な鎮痛および消毒後に実行し、その時点において角膜コンタクトレンズを目に着け、後部網膜を見るために顕微鏡を位置させる。針を、目の壁を通して毛様体扁平部領域に挿入し、その先端を視覚化する。直接的な視覚化の下で、針の先端を、網膜表面の近くの所望される位置に進める。シリンジプランジャーを進めて、ウイルスベクター(任意の好適な組成物または製剤中に含有され得る)を緩徐に沈着させる。針を引き抜き、目を検査する。ポートは、縫合糸を用いて閉じてもよいが、十分に小口径の針(例えば30ゲージ)の場合、穿刺経路(needle tract)を閉じるために縫合糸は必要とされない。軟膏およびアイシールドを適用してもよく、所望される場合、対象を、生成物の高い傍網膜濃度をさらに促すために術後の期間にわたり仰臥位に保ち得る。送達器具における変形形態は、ブラントカニューレの使用を可能とするための硝子体切除ポートの使用を伴うかもしくは伴わない強膜切開の創出、ならびに/または網膜表面への近接性および安全性を最適化するためのテーパー状かつ/もしくは柔軟な伸長可能な先端もしくは側部ポートを有するカニューレ設計、ならびに/または単純なシリンジプランジャーの代わりに空気圧式システムの使用を含むことができる。傍網膜投与の追加の記載は、例えば、国際公開第2020/018766号およびZeng et al., Mol Ther Methods Clin Dev. 2020 Sep 11; 18: 422-427(これらの各々の内容は参照により全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる)において開示されている。
【0161】
実施形態では、投与のモードは網膜下投与であり、網膜下投与では、網膜色素上皮(RPE)細胞と光受容細胞との間の網膜下空間に材料を注射する。網膜下空間中で、注射された材料は、光受容細胞の形質膜、およびRPE細胞および網膜下ブレブと直接的に接触される。実施形態では、網膜下投与のために使用されるAAVは、AAV214またはAAV214-D5のカプシドタンパク質を含む。実施形態では、網膜下投与は、シュタルガルト病、ビエッティ結晶性ジストロフィー、またはBEST卵黄様黄斑ジストロフィーを処置するためである。網膜下投与の追加の記載は、例えば、Peng et. al., Ophthalmic Res 2017;58:217-226;およびHartman et al., J Ocul Pharmacol Ther. 2018 Mar 1; 34(1-2): 141-153(これらの各々の内容は参照により全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる)において開示されている。
【0162】
本開示のAAVウイルス粒子または組成物の投与は、1用量で、処置の過程の全体を通じて連続的にまたは間欠的にもたらされ得る。実施形態では、本開示のAAVウイルス粒子または組成物は、注射、注入または移植により非経口的に投与される。
【0163】
実施形態では、本開示のAAV粒子は、脳および頚椎についての増強されたトロピズムを示す。実施形態では、本開示のウイルス粒子は血液脳関門(BBB)を越えることができる。実施形態では、本開示のAAV粒子は、傍網膜、網膜下および/または硝子体内注射により高い網膜トロピズムを示す。実施形態では、本開示のAAV粒子は、複数の眼細胞タイプ、例えば、錐体、桿体、および網膜色素上皮(RPE)などを標的化する。実施形態では、本開示のAAV粒子は、天然血清型に対する中和抗体を回避し、そのため潜在的な再投与を可能にする。さらなる態様では、本開示のAAV粒子および組成物は、処置されている障害のための他の公知の処置と組み合わせて投与されてもよい。
【0164】
キット
本明細書に記載される薬剤、ウイルスベクター、または組成物は、実施形態では、治療的、診断的または研究的適用におけるそれらの使用を促すために集められて、医薬キットまたは診断キットまたは研究キットにされてもよい。実施形態では、本開示のキットは、本明細書に記載されている改変されたAAVカプシドタンパク質、AAVベクター、AAVウイルス粒子、宿主細胞、単離された組織、組成物、または医薬組成物のいずれか1つを含む。
【0165】
実施形態では、キットは、使用のための指示をさらに含む。特に、そのようなキットは、本明細書に記載される1つまたは複数の薬剤を、これらの薬剤の意図される適用および適正な使用を記載する指示と共に含んでもよい。例として、実施形態では、キットは、キットの1つもしくは複数の成分を混合するためならびに/または試料を単離および混合するためならびに対象に適用するための指示を含んでもよい。実施形態では、キット中の薬剤は、特定の適用および薬剤の投与方法のために好適な医薬製剤中および投薬量において存在する。研究目的のキットは、様々な実験を実行するための適切な濃度または量で成分を含有してもよい。
【0166】
キットは、本明細書に記載される方法の使用を促すために設計されてもよく、多くの形態を取ることができる。キットの組成物の各々は、適用可能な場合、液体形態(例えば、溶液中)、または固体形態(例えば、乾燥粉末)で提供されてもよい。ある特定の場合には、組成物の一部は、例えば、キットと共に提供されてもよいしそうでなくてもよい好適な溶媒または他の種(例えば、水または細胞培養培地)の添加により、(例えば、活性形態に)構成可能または他に加工可能であってもよい。実施形態では、組成物は、保存溶液(例えば、凍結保存溶液)中で提供されてもよい。保存溶液の非限定的な例は、DMSO、パラホルムアルデヒド、およびCryoStor(登録商標)(Stem Cell Technologies、Vancouver、Canada)を含む。実施形態では、保存溶液は、ある量のメタロプロテアーゼ阻害剤を含有する。
【0167】
実施形態では、キットは、1つまたは複数の容器中に本明細書に記載される成分の任意の1つまたは複数を含有する。そのため、実施形態では、キットは、本明細書に記載される薬剤を収容する容器を含んでもよい。薬剤は、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態であってもよい。薬剤は、無菌で調製され、シリンジ中に包装され、冷蔵されて輸送されてもよい。代替的に、それらは、貯蔵用のバイアルまたは他の容器中に収容されてもよい。第2の容器は、無菌で調製された他の薬剤を有してもよい。代替的に、キットは、シリンジ、バイアル、管、または他の容器中で予備混合および輸送される活性剤を含んでもよい。キットは、対象に薬剤を投与するために要求される成分、例えばシリンジ、局所的適用デバイス、またはIV針管状材料およびバッグの1つまたは複数またはすべてを有してもよい。
【0168】
本発明が上記の実施形態と組み合わせて記載されたが、上記の記載および例は、本発明の範囲の実例を示すことが意図され、該範囲を限定することは意図されないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の他の態様、利点および修飾は、本発明が関する技術分野の当業者に明らかである。
【0169】
追加的に、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群の観点において記載される場合、本発明はそれにより、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点においても記載されることを当業者は認識する。
【0170】
さらなる番号付けされた実施形態
実施形態1.眼疾患または障害の処置を必要とする対象において眼疾患または障害を処置する方法であって、対象へのAAVウイルスベクターの傍網膜投与を含み、AAVウイルスベクターが、配列番号2のアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む、方法。
【0171】
実施形態2.眼疾患または障害の処置を必要とする対象において眼疾患または障害を処置する方法であって、対象へのAAVウイルスベクターの傍網膜投与を含み、AAVウイルスベクターが、配列番号1~3、30~34、49、67、84、および164のいずれか1つに対して少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、方法。
【0172】
実施形態3.AAVウイルスベクターが、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸が配列番号1~3、30~34、49、67、84および164のいずれか1つと異なるアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む、実施形態2に記載の方法。
【0173】
実施形態4.AAVウイルスベクターが、配列番号2のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号2と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、実施形態2に記載の方法。
【0174】
実施形態5.AAVカプシドタンパク質が、配列番号2のアミノ酸129におけるロイシン(L)、配列番号2のアミノ酸586におけるアスパラギン(N)、および配列番号2のアミノ酸723におけるグルタミン酸(E)を含む、実施形態4に記載の方法。
【0175】
実施形態6.AAVウイルスベクターが、配列番号1のアミノ酸配列または最大2、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号1と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、実施形態2に記載の方法。
【0176】
実施形態7.AAVカプシドタンパク質が、アミノ酸129におけるロイシン(L)、アミノ酸148におけるプロリン(P)、アミノ酸152におけるアルギニン(R)、アミノ酸153におけるセリン(S)、アミノ酸158におけるスレオニン(T)、アミノ酸163におけるリシン(K)、アミノ酸169におけるアルギニン(R)、アミノ酸306におけるトリプトファン(W)、アミノ酸308におけるフェニルアラニン(F)、およびアミノ酸319におけるアスパラギン(N)を含み、アミノ酸位置が配列番号1に関して番号付けされたものである、実施形態6に記載の方法。
【0177】
実施形態8.AAVウイルスベクターが、配列番号164のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号164と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、実施形態2に記載の方法。
【0178】
実施形態9.AAVウイルスベクターが、配列番号67のアミノ酸配列または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号67と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、実施形態2に記載の方法。
【0179】
実施形態10.AAVウイルスベクターが、配列番号3のアミノ酸配列または最大2、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸が配列番号3と異なるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるAAVカプシドタンパク質を含む、実施形態2に記載の方法。
【0180】
実施形態11.AAVカプシドタンパク質が、可変領域(VR)I~IXを含むVP3部分を含み、
(a)VR-IIがアミノ酸配列DNNGVK(配列番号54)を含み、
(b)VR-IIIがアミノ酸配列NDGS(配列番号55)を含み、
(c)VR-IVがアミノ酸配列INGSGQNQQT(配列番号56)またはQSTGGTAGTQQ(配列番号171)を含み、
(d)VR-Vがアミノ酸配列RVSTTTGQNNNSNFAWTA(配列番号57)を含み、
(e)VR-VIがアミノ酸配列HKEGEDRFFPLSG(配列番号58)を含み、
(f)VR-VIIがアミノ酸配列KQNAARDNADYSDV(配列番号59)を含み、
(g)VR-VIIIがアミノ酸配列ADNLQQQNTAPQI(配列番号60)を含み、かつ
(h)VR-IXがアミノ酸配列NYYKSTSVDF(配列番号61)を含む、
実施形態2~3および10のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
実施形態12.VR-I領域が、SASTGAS(配列番号52)、NSTSGGSS(配列番号53)、SSTSGGSS(配列番号87)、またはNGTSGGST(配列番号170)を含む、実施形態11に記載の方法。
【0182】
実施形態13.眼疾患または障害が、優性視神経萎縮症、網膜色素変性症、黄斑変性症、ベストロフィン-1(BEST-1)遺伝子中の変異に関する眼障害、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、シュタルガルト病、コロイデレミア、アッシャー症候群、網膜分離症、ビエッティ結晶性ジストロフィーおよび色覚異常からなる群より選択される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
実施形態14.網膜色素変性症が、常染色体劣性、常染色体優性、またはX連鎖性である、実施形態13に記載の方法。
【0184】
実施形態15.BEST-1遺伝子中の変異に関する眼障害が、卵黄様黄斑ジストロフィー、加齢性黄斑変性症、常染色体優性硝子体網膜脈絡膜症、緑内障、または白内障である、実施形態13に記載の方法。
【0185】
実施形態16.AAVウイルスベクターが、SPATA7、LRAT、TULP1、AIPL1、RPGR、AIPL1、ABCA4、CHM、MY07A、CDH23、USH2A、CLRN1、RS1、CYP4V2、CNGA3、CNGB3、GNAT2、RHO、PDE6B、PDE6C、PDE6H、OPA1、OPA3、およびBEST-1から選択される遺伝子をコードするAAVベクターゲノムを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
実施形態17.AAVウイルスベクターが、アンチセンスRNA、microRNA、siRNA、またはガイドRNA(gRNA)をコードするAAVベクターを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態18.眼疾患または障害が視神経の機能障害に関する、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
実施形態19.眼疾患または障害が優性視神経萎縮症である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
実施形態20.AAVウイルスベクターが、OPA1またはOPA3導入遺伝子を含むAAVベクターゲノムを含む、実施形態19に記載の方法。
【0190】
実施形態21.眼疾患または障害が網膜分離症である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態22.AAVウイルスベクターが、RS1導入遺伝子を含むAAVベクターゲノムを含む、実施形態21に記載の方法。
【0192】
実施形態23.傍網膜投与が、網膜の表面から0~13ミリメートル(mm)、0~10mm、0~5mm、または0~3mmの距離において目の後部硝子体腔中に注射することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施形態23.1.傍網膜投与が、網膜の表面から0~13mmの距離において目の後部硝子体腔中に注射することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態23.2.傍網膜投与が、網膜の表面から0~10mmの距離において目の後部硝子体腔中に注射することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施形態23.3.傍網膜投与が、網膜の表面から0~5mmの距離において目の後部硝子体腔中に注射することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施形態23.4.傍網膜投与が、網膜の表面から0~3mmの距離において目の後部硝子体腔中に注射することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施形態24.対象がヒトである、実施形態1~23.4のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
実施形態25.VP3部分を含むAAVカプシドタンパク質をコードする核酸であって、VP3部分が可変領域(VR)I~IXを含み、
(a)VR-IIがアミノ酸配列DNNGVK(配列番号54)を含み、
(b)VR-IIIがアミノ酸配列NDGS(配列番号55)を含み、
(c)VR-IVがアミノ酸配列QSTGGTAGTQQ(配列番号171)を含み、
(d)VR-Vがアミノ酸配列RVSTTTGQNNNSNFAWTA(配列番号57)を含み、
(e)VR-VIがアミノ酸配列HKEGEDRFFPLSG(配列番号58)を含み、
(f)VR-VIIがアミノ酸配列KQNAARDNADYSDV(配列番号59)を含み、
(g)VR-VIIIがアミノ酸配列ADNLQQQNTAPQI(配列番号60)を含み、かつ
(h)VR-IXがアミノ酸配列NYYKSTSVDF(配列番号61)を含む、
核酸。
【0199】
実施形態26.VR-I領域がNGTSGGST(配列番号170)を含む、実施形態25に記載の核酸。
【0200】
実施形態27.VP3部分が配列番号166のアミノ酸配列を有する、実施形態25に記載の核酸。
【0201】
実施形態28.AAVカプシドタンパク質が、i)VP2部分またはii)VP1部分およびVP2部分をさらに含む、実施形態25~27のいずれか1つに記載の核酸。
【0202】
実施形態29.コードされるAAVカプシドタンパク質が、配列番号164に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号164と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、実施形態25~27のいずれか1つに記載の核酸。
【0203】
実施形態30.コードされるAAVカプシドタンパク質が、配列番号165に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号165と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、実施形態25~27のいずれか1つに記載の核酸。
【0204】
実施形態31.コードされるAAVカプシドタンパク質が、配列番号166に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列または配列番号166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、実施形態25~27のいずれか1つに記載の核酸。
【0205】
実施形態32.核酸の配列が、配列番号167~169から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一である、実施形態25~31のいずれか1つに記載の核酸。
【0206】
実施形態33.核酸の配列が、配列番号167~169から選択されるヌクレオチド配列に対して100%同一である、実施形態25~31のいずれか1つに記載の核酸。
【0207】
実施形態34.実施形態25~33のいずれか1つに記載の核酸を含むベクター。
【0208】
実施形態35.実施形態25~33のいずれか1つに記載の核酸によりコードされるAAVカプシドタンパク質。
【0209】
実施形態36.配列番号164、165もしくは166のアミノ酸配列、または配列番号164、165もしくは166と最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む、実施形態35に記載のAAVカプシドタンパク質。
【0210】
実施形態37.実施形態25~33のいずれか1つに記載の核酸によりコードされるAAVカプシドタンパク質およびAAVベクターゲノムを含むAAVウイルスベクターであって、AAVベクターゲノムが、5’から3’への方向に、
(a)第1のAAV逆位末端反復配列、
(b)プロモーター、
(c)異種核酸、
(d)ポリアデニル化シグナル、および
(e)第2のAAV逆位末端反復配列
を含む、AAVウイルスベクター。
【0211】
実施形態38.異種核酸が、構成的プロモーターに作動可能に連結している、実施形態37に記載のAAVウイルスベクター。
【0212】
実施形態39.異種核酸がポリペプチドをコードする、実施形態37または38に記載のAAVウイルスベクター。
【0213】
実施形態40.異種核酸が、アンチセンスRNA、siRNA、microRNA、またはgRNAをコードする、実施形態37または38に記載のAAVウイルスベクター。
【0214】
実施形態41.AAVカプシドタンパク質が、配列番号164、165または166のアミノ酸配列を含む、実施形態37~41のいずれか1つに記載のAAVウイルスベクター。
【0215】
実施形態42.(i)配列番号164のアミノ酸配列を有するAAVカプシドタンパク質および
(ii)AAVベクターゲノム
を含むAAVウイルスベクターであって、AAVベクターゲノムが、5’から3’への方向に、
(a)第1のAAV逆位末端反復配列、
(b)プロモーター、
(c)異種核酸、
(d)ポリアデニル化シグナル;および
(e)第2のAAV逆位末端反復配列
を含む、AAVウイルスベクター。
【0216】
実施形態43.異種核酸が、配列番号142~144および177~181のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする、実施形態37~39および41~42のいずれか1つに記載のAAVウイルスベクター。
【0217】
実施形態44.異種核酸が、配列番号116~118および172~176のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、実施形態43に記載のAAVウイルスベクター。
【0218】
実施形態45.疾患または障害を処置する方法であって、実施形態37~44のいずれかに記載のAAVウイルスベクターを対象に投与することを含む、方法。
【0219】
実施形態46.AAVウイルスベクターが、対象に経口的に、直腸に、経粘膜的に、吸入により、経皮的に、非経口的に、静脈内に、皮下に、皮内に、筋肉内に、胸膜内に、脳内に、髄腔内に、脳内に、脳室内に、鼻腔内に、耳内に、眼内に、眼周囲に、外用で、リンパ内に、槽内に、硝子体内に、傍網膜的に、または網膜下に投与される、実施形態45に記載の方法。
【0220】
実施形態47.疾患または障害が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、ファブリー病、ポンペ病、CLN3病(もしくは若年性神経セロイドリポフスチノーシス)、劣性ジストロフィー性表皮水疱症(RDEB)、若年性バッテン病、常染色体優性障害、筋ジストロフィー、血友病A、血友病B、多発性硬化症、糖尿病、ゴーシェ病、がん、関節炎、筋消耗、心臓疾患、内膜過形成、癲癇、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、サラセミア、ハーラー症候群、スライ症候群、シャイエ症候群、ハーラー-シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A(ムコ多糖症IIIAもしくはMPS IIIA)、サンフィリポ症候群B(ムコ多糖症IIIBもしくはMPS IIIB)、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、モルキオ症候群、マロトー-ラミー症候群、クラッベ病、フェニルケトン尿症、バッテン病、脊髄脳性運動失調症、LDL受容体欠損症、高アンモニア血症、関節炎、黄斑変性症、網膜色素変性症、神経セロイドリポフスチノーシス1(CLN1)、アデノシンデアミナーゼ欠損症、優性視神経萎縮症、網膜分離症、シュタルガルト病、ビエッティ結晶性ジストロフィーまたはBEST卵黄様黄斑ジストロフィーである、実施形態45または46に記載の方法。
【0221】
実施形態48.疾患または障害が眼疾患または障害である、実施形態45または46に記載の方法。
【0222】
実施形態49.眼疾患または障害が、優性視神経萎縮症、網膜色素変性症、黄斑変性症、ベストロフィン-1(BEST-1)遺伝子中の変異に関する眼障害、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、シュタルガルト病、コロイデレミア、アッシャー症候群、網膜分離症、ビエッティ結晶性ジストロフィーおよび色覚異常からなる群より選択される、実施形態48に記載の方法。
【0223】
実施形態50.対象がヒトである、実施形態45~49のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0224】
(実施例1)
様々なAAVウイルスベクターを使用した、非ヒト霊長類傍網膜および網膜下投薬の特徴付け
複数の眼投与モードを介するAAV204、AAV214、AAV214-D5、またはAAV8カプシドを含むAAVウイルスベクターの形質導入効率を以下に記載されるように評価した。
【0225】
この実施例において使用したすべてのAAVウイルスベクターは、CBhプロモーターに作動可能に連結した強化型緑色蛍光タンパク質(以下において「EGFP」または「GFP」)レポーター導入遺伝子をコードする組換え核酸を含む。
【0226】
in vivoでAAVウイルスベクターの形質導入効率を試験するために、指し示されるAAVウイルスベクターの傍網膜、網膜下、または硝子体内投与により非ヒト霊長類(NHP)Macaca fascicularisに投薬した。各々の投与モードのための用量/体積は以下の通りであった:
・傍網膜投薬 - 100μLの注射体積中1.0E+11vg
・網膜下投薬 - 100μLの注射体積中2.5E+10vg
・硝子体内投薬 - 150μLの注射体積中1.5E+12vg
傍網膜投与は、硝子体膜と内境界膜との間で網膜の上にウイルスを層にすることにより行い、そのため網膜下剥離を作出しなかった。走査型レーザー検眼鏡検査(SLO)を使用してGFP発現をモニターした。注射の26~27日後に収集した試料についてSLO画像を撮影した。注射の28日後に、目を収集し、処理し、免疫組織化学により分析した。
【0227】
図2B~2Eは、AAV204(
図2B)、AAV8(
図2C)、AAV214(
図2D)、またはAAV214-D5(
図2E)のカプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの傍網膜注射のSLO結果を示す。試験したカプシドタンパク質の中で、AAV204カプシドを含むAAVウイルスベクターは、傍網膜注射を介する黄斑、乳頭黄斑束、および網膜神経線維におけるロバストな形質導入を示し、他の試験したカプシドと比較してはるかに高い形質導入効率であった。
【0228】
追加的に、AAV204カプシドを含むAAVウイルスベクターの傍網膜投与(
図2B)はまた、同じAAVウイルスベクターの伝統的な硝子体内投与(
図2A)と比較してはるかに高い局所的な形質導入効率(特には視神経形質導入について)を示す。
【0229】
これらの2つの投与経路の形質導入効率をさらに比較するために、網膜をイメージング分析のために処理した(
図3A~3C)。再び、AAV204カプシドを含むAAVウイルスベクターの傍網膜投与を与えられた網膜(
図3B~3C)は、同じAAVウイルスベクターの硝子体内投与を与えられた網膜(
図3A)よりもはるかにロバストな黄斑および視神経形質導入を示している。
【0230】
AAV204ウイルスベクターの傍網膜注射の1か月後のロドプシンおよびGFPのさらなる免疫組織化学分析(
図3D)は、網膜全体にわたる網膜神経節細胞(RGC)における高いGFP発現を示し、高いGFP発現を有する神経線維が、網膜に沿っておよび視神経に入って観察された。比較として、AAV8ウイルスベクターの傍網膜注射(
図3D)は、RGCにおけるはるかに低いGFP発現を示した。
図3E~3Fに示されるように、AAV204ウイルスベクターの傍網膜投与はまた、NHP中心窩におけるおよび斑と視神経との間の乳頭黄斑束に沿ったロバストなGFP発現を結果としてもたらした。これらの結果はSLO分析と合致していた。そのため、AAV204ウイルスベクターの傍網膜投与は、当分野において一般的に使用される硝子体内AAV注射と比較して10分の1以下の用量で、斑および中心窩における標的細胞の他に、網膜神経節細胞、および視神経にまで及ぶ付随する網膜神経線維において効率的な形質導入を結果としてもたらす。
【0231】
AAV8(
図4A;
図4D)、AAV214(
図4B;
図4E)、およびAAV214-D5(
図4C;
図4F)のカプシドタンパク質を含むAAVウイルスベクターの形質導入効率もまた取得した。これらの3つのカプシドは網膜下に投与された場合に類似した形質導入効率を示すことを結果は示す。
【0232】
結論:AAV204カプシドを含むAAVベクターの傍網膜注射はペイロードを斑または視神経/網膜神経節細胞層に効率的に送達できることをこれらの結果は示す。
【配列表】
【国際調査報告】