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特表2024-519821特異なレオロジー特性を有する流動性化粧用組成物、前記特性を付与するようにしたポリマーおよびその合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】特異なレオロジー特性を有する流動性化粧用組成物、前記特性を付与するようにしたポリマーおよびその合成
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/895 20060101AFI20240514BHJP
   C08L 87/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240514BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240514BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K8/895
C08L87/00
A61K8/891
A61K8/85
A61K8/87
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/86
A61Q1/04
A61Q1/00
A61K8/40
A61K8/36
A61K8/27
A61K8/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571340
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 IB2022054827
(87)【国際公開番号】W WO2022249046
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021000013463
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516200323
【氏名又は名称】インテルコス エッセ.ピ.ア.
【氏名又は名称原語表記】INTERCOS S.p.A
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルセシア、パトリチア
(72)【発明者】
【氏名】ディステファノ、ガエタノ
(72)【発明者】
【氏名】ガロット、ネラ
(72)【発明者】
【氏名】ピロヴァノ、クローディオ
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC511
4C083AC512
4C083AC931
4C083AC932
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD261
4C083AD262
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD28
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
4C083FF01
4J002CF001
4J002CK021
4J002CP031
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】
特異なレオロジー特性を有する流動性化粧用組成物を提供する。
【解決手段】
成分(A)~(C)の反応によって得られる流動性分岐ポリマーを0.1~50重量%含む製剤を有し、成分(A)は分子量Mwが5000~50000Daの直鎖状ポリマーでありポリマー1g当たり0.1~50mmolの濃度で鎖中に反応性官能基Xを有し、成分(B)は分子量Mwが10000~100000Daの直鎖状ポリマーであり付加又は縮合反応で官能基Xと反応する末端反応性官能基Yを有し、成分(C)は分子量が50~1000Daの直鎖状分子又はオリゴマー又はそれらの混合物であり分子内に付加又は縮合反応で官能基Xと反応する反応性官能基Yを有し、成分(B)および(A)の官能基のモル比が0.01~0.5であり、成分(C)および(A)の官能基のモル比が0.5~1.2であり成分(A)の官能基Xは成分(B)および(C)の官能基Yと反応する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)および(C)の反応によって得られる少なくとも1種の流動性分岐ポリマーを0.1~50重量%含有する製剤を有することを特徴とする流動性化粧用組成物であって、:
前記成分(A)は、分子量Mwが5000Da~50000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、ポリマー1g当たり0.1~50mmolの濃度で鎖中に反応性官能基Xを有し、
前記成分(B)は、分子量Mwが10000Da~100000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、付加又は縮合反応において官能基Xと反応し得る型の末端反応性官能基Yを有し、
前記成分(C)は、分子量が50Da~1000Daの直鎖状分子又はオリゴマー又はそれらの混合物であって、分子内に付加又は縮合反応において前記官能基Xと反応し得る反応性官能基Yを有し、
前記成分(B)および前記成分(A)の官能基のモル比が0.01~0.5であり、
前記成分(C)および前記成分(A)の官能基のモル比が0.5~1.2であり、
前記成分(A)の前記反応性基Xは、前記成分(B)および前記成分(C)の前記反応性部位Yと反応し得る、ことを特徴とする流動性化粧用組成物。
【請求項2】
前記成分(A)および(B)が、化粧品で使用されるポリマー系、特にシリコーン、ポリエステル、ポリウレタンから選択されるポリマーである、ことを特徴とする請求項1に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項3】
前記反応性官能基XおよびYが、相補的な反応性基、特にSi-H、カルボキシル、ビニル、ヒドロキシル、アルコキシ(-O-CH3、-O-CH2CH3、-O-CH(CH32)、アミン、イソシアネートから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項4】
前記流動性分岐ポリマーが分岐アルキルジメチコーンであって:
前記成分(A)が次の構造式を有するポリメチルヒドロシロキサンから選択され:
【化1】
(ここで、x>2;RがH、またはCH3
前記成分(B)が次の構造式を有する末端ビニル基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンから選択され:
【化2】
(ここで、nはポリマーの分子量Mwが10000Da~100000Daになるように特定される)
前記成分(C)が、一般式CH2=CH-Rを有するα-オレフィンから選択され、ここでRは6~50個の炭素原子を含むアルキル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項5】
前記流動性分岐ポリマーが分岐セルロース誘導体であって:
前記成分(A)がセルロース誘導体、特にエチルセルロースから選択され、構造中に適切な数のヒドロキシル基が存在することを保証する市販のエチルセルロースから選択され、
前記成分(B)が末端イソシアネート基を有する直鎖状ポリエステルから選択され、
前記成分(C)が、一般式O=C=N-Rの脂肪族モノイソシアネートから選択され、前記Rは6~50個の炭素原子を含むアルキル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項6】
前記流動性分岐ポリマーが、エチルセルロースのヒドロキシル基(A)を、Zn系触媒の存在下、末端イソシアネート基を有する直鎖状ポリエステル(B)および脂肪族モノイソシアネート(C)と同時に反応させることによって合成されてなる、ことを特徴とする請求項5に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項7】
前記流動性分岐ポリマーが分岐ポリエステル誘導体であって:
前記成分(A)が、ポリグリセロールまたはポリグリセロールエステルから選択され、これらは構造中に適切な数のヒドロキシル基が存在することが保証され、
前記成分(B)が、末端に酸基を有する直鎖状ポリエステルから選択され、
前記成分(C)が、6~50個の炭素原子を含むアルキル基を有する脂肪族一酸から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項8】
前記流動性分岐ポリマーが、Sn系触媒の存在下、ポリグリセロール(A)を直鎖状ポリエステル二酸(B)および脂肪族一酸(C)と同時に反応させるエステル化反応によって合成されてなる、ことを特徴とする請求項7に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項9】
リップ液である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項10】
ファンデーションである、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項11】
リップコンシーラーである、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項12】
プライマーである、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の流動性化粧用組成物。
【請求項13】
下記成分(A)、(B)および(C)間の反応の結果であることを特徴とする、流動性化粧用組成物のための流動性分岐ポリマーであって:
前記成分(A)は、分子量Mwが5000Da~50000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、ポリマー1g当たり0.1~50mmolの濃度で鎖中に反応性官能基Xを有し、
前記成分(B)分子量Mwが10000Da~100000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、付加又は縮合反応において官能基Xと反応し得る型の末端反応性官能基Yを有し、
前記成分(C)分子量が50Da~1000Daの直鎖状分子又はオリゴマー又はそれらの混合物であって、分子内に付加又は縮合反応において前記官能基Xと反応し得る反応性官能基Yを有し、
前記成分(B)および(A)の官能基のモル比が0.01~0.5であり、
前記成分(C)および(A)の官能基のモル比が0.5~1.2であり、
前記成分(A)の前記反応性基Xは、前記成分(B)および(C)の前記反応性部位Yと反応し得る、ことを特徴とする流動性分岐ポリマー。
【請求項14】
前記成分(A)および(B)が、化粧品で使用されるポリマー系、特にシリコーン、ポリエステル、ポリウレタンから選択されるポリマーである、ことを特徴とする請求項13に記載の流動性分岐ポリマー。
【請求項15】
前記反応性官能基XおよびYが、相補的な反応性基、特にSi-H、カルボキシル、ビニル、ヒドロキシル、アルコキシ(-O-CH3、-O-CH2CH3、-O-CH(CH32)、アミン、イソシアネートから選択される、ことを特徴とする請求項13に記載の流動性分岐ポリマー。
【請求項16】
前記流動性分岐ポリマーが分岐アルキルジメチコーンであって:
前記成分(A)が次の構造式を有するポリメチルヒドロシロキサンから選択され:
【化3】
(ここで、x>2;RがH、またはCH3
前記成分(B)が次の構造式を有する末端ビニル基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンから選択され:
【化4】
(ここで、nはポリマーの分子量Mwが10000Da~100000Daになるようい特定される)
前記成分(C)が、一般式CH2=CH-Rを有するα-オレフィンから選択され、ここで前記Rは6~50個の炭素原子を含むアルキル基である、ことを特徴とする請求項13に記載の流動性分岐ポリマー。
【請求項17】
ヒドロシリル化触媒の存在下、ポリメチルヒドロシロキサン(A)を、ビニル基で末端化されたポリジメチルシロキサン(B)およびα-オレフィン(C)と反応させるヒドロシリル化反応によって得られてなる、ことを特徴とする請求項16に記載の流動性分岐ポリマー。
【請求項18】
分岐セルロース誘導体であって:
前記成分(A)がセルロース誘導体、特にエチルセルロースから選択され、構造中に適切な数のヒドロキシル基が存在することを保証する市販のエチルセルロースグレードから選択され、
前記成分(B)が末端イソシアネート基を有する直鎖状ポリエステルから選択され、
前記成分(C)が、一般式O=C=N-Rの脂肪族モノイソシアネートから選択され、前記Rは6~50個の炭素原子を含むアルキル基である、ことを特徴とする請求項13に記載の流動性分岐ポリマー。
【請求項19】
エチルセルロースのヒドロキシル基(A)を、Zn系触媒の存在下、末端イソシアネート基を有する直鎖状ポリエステル(B)および脂肪族モノイソシアネート(C)と同時に反応させることによって合成されてなる、ことを特徴とする請求項18に記載の流動性分岐ポリマー。
【請求項20】
分岐ポリエステル誘導体であって:
前記成分(A)が、ポリグリセロールまたはポリグリセロールエステルから選択され、これらは構造中に適切な数のヒドロキシル基が存在することが保証され、
前記成分(B)が、末端に酸基を有する直鎖状ポリエステルから選択され、
前記成分(C)が、6~50個の炭素原子を含むアルキル基を有する脂肪族一酸から選択される、ことを特徴とする請求項13に記載の流動性分岐ポリマー。
【請求項21】
Sn系触媒の存在下、ポリグリセロール(A)を直鎖状ポリエステル二酸(B)および脂肪族一酸(C)と同時に反応させるエステル化反応によって合成されてなる、ことを特徴とする請求項20に記載の流動性分岐ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連の流動性化粧用組成物に関し、より正確には、延長された塗布時間、相当の皮膜特性、長期持続性、および非移行性を決定するようにした特異なレオロジー特性を有する対応する流動性化粧品を作成するのに適した、粘弾性流体のレオロジー特性を有する非固形の化粧用組成物に関する。本発明はまた、化粧用組成物にこのような特異なレオロジー特性を付与するのに使用できるポリマー、ならびにその合成にも関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品においては、精密な仕上げ、予期しない感覚体験や高度な機能性を備えた、洗練された製品への継続的な要求は、上記効果の創出、特に最終的な化粧品における所望の感覚的変化の達成に決定的となり得る新規化粧品原料の設計および概念化に向けた推進力となる。
【0003】
特に、以下に記載の発明は、従来市販されている類似の製品に見られるものと比べて特異な感触を有する化粧品を得ることを目的とし、これは、使用者の身体への塗布時に、流動方向に垂直な力(ここでは、垂直抗力またはFNと称する)を生成する能力によって特徴付けられる。このような力は、(例えばファンデーションの場合の指と顔の肌の間のように)アプリケーターと塗布面の間の製剤の薄層化に抵抗し、評価される独特の特性を製剤に付与する。
【0004】
この概念をより良く理解するために、生体ポリマー溶液から生じる、天然に存在する潤滑流体を考える。組織によって合成されたこれらの生体ポリマーは、分泌物に粘りとコシを与えることを可能にする:例えば、ムチンは呼吸器や消化管の粘液分泌物中に存在する糖タンパク質であり、潤滑や保護機能を有する。このような生理的流体の主な特性は、粘性および「糸引き性」という特性である。レオロジー的観点からは、粘液には所謂ワイセンベルク効果があり、これは撹拌機によって回転された流体が、撹拌機自体のロッドに沿って上昇する(「ロッド上昇」効果)というものである。この挙動は、高分枝のハイドロコロイド溶液、例えばキサンタンガムの濃縮溶液の場合にはかなり一般的であり、このような溶液は粘性が高く、弾性があり、糸引き性があり、ワイセンベルク効果を示す。皮膜効果と潤滑効果は、このような流体が、ある方向(たとえば、相対運動している2つの面の間)に沿って直接せん断力の作用下に置かれると、相対運動している2つの面を分離する、このような方向に垂直な力(垂直抗力、FN)を発生させるという事実によって得られる。
【0005】
上記のハイドロコロイドの特性を有する脂溶性ポリマーは珍しいが、シリコーン流体は、例えばアルキル-シリコーンエラストマーの使用を提供する特許文献1や、材料の特性を強く特徴付ける流体担体の存在下でのシリコーン試薬(例えば、オルガノポリシロキサン)の使用を提供する特許文献2に示されているように、化粧用組成物中で広く使用されている。分子量および架橋の程度に応じて、異なる化粧品性能および用途が得られる。
【0006】
ここで、潤滑流体を含む化粧用組成物が、例えば相対的な回転運動下に置かれた2枚の平行な平面の間に挟まれるなどして、制御された流動を受けることを考える。このような回転運動に起因して、流動性化粧用組成物は2つの表面を互いに分離する力を生成するが、この力は表面自体に垂直であり、FN(ニュートンで表される)を流される材料の面積(mm2で表される)で割ることによって圧力Pa(N/mm2)の形で表される。
【0007】
生成されるFNは、せん断速度に比例し、最大値(FN,MAX)に達するまで増加傾向を示し、それを超えるとFNは減少する。
【0008】
考慮すべきせん断速度は、0.1s-1~1000s-1の範囲内のものであり、これは化粧品の局所塗布のせん断速度が該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1010715号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/156148号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特異なレオロジー特性を有する流動性化粧用組成物、前記特性を付与するようにしたポリマーおよびその合成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、下記成分(A)、(B)および(C)の反応によって得られる少なくとも1種の流動性分岐ポリマーを0.1~50重量%含有する製剤を有することを特徴とする流動性化粧用組成物であって、:前記成分(A)は、分子量Mwが5000Da~50000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、ポリマー1g当たり0.1~50mmolの濃度で鎖中に反応性官能基Xを有し、前記成分(B)は、分子量Mwが10000Da~100000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、付加又は縮合反応において官能基Xと反応し得る型の末端反応性官能基Yを有し、前記成分(C)は、分子量が50Da~1000Daの直鎖状分子又はオリゴマー(又はそれらの混合物)であって、分子内に付加又は縮合反応において前記官能基Xと反応し得る反応性官能基Yを有し、前記成分(B)および前記成分(A)の官能基のモル比が0.01~0.5であり、前記成分(C)および前記成分(A)の官能基のモル比が0.5~1.2であり、前記成分(A)の前記反応性基Xは、前記成分(B)および前記成分(C)の前記反応性部位Yと反応し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述の原理から出発して、本発明により流動性化粧用組成物が得られた。この組成物は、使用時に使用者の身体に対して垂直に加えられる力とは反対の力に対抗することにより、塗布中に相対運動下にある表面(例えば、手/顔またはアプリケーター/唇)間の物質の厚さを維持することを可能にするという事実の機能として、潤滑な感覚的性質を有する。
【0013】
化粧品が塗布され、形を整えることができる塗布時間または「プレイタイム」が非常に長くなり、溶けるような感覚(皮膚上で製品が溶けて均一になる能力)が生じ、色あせることがないため、化粧品の皮膚への適合性が非常に高くなる。さらに、使用される流動性組成物の弾力性は、製品にかなりの皮膜特性を与えるが、最も一般的に使用される皮膜形成剤の乾燥による乾燥感や硬さといった不快な感覚とは無縁である。均質で快適な皮膜の形成は、製剤の長期持続性(「長持ち」)および非移行性(「移らない」)といった非常に望ましい特性に反映される。
【0014】
この挙動は、強い弾性と潤滑特性を持つ流動性分岐ポリマーを配合することによって得られた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
より正確には、本発明によると、特許文献1および特許文献2の教示とは異なり、下記成分(A)、(B)および(C)の反応によって得られる少なくとも1種の流動性分岐ポリマーを0.1~50重量%含有する製剤を有することを特徴とする流動性化粧用組成物が得られた。
【0016】
この流動性化粧用組成物において、前記成分(A)は、分子量Mwが5000Da~50000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、ポリマー1g当たり0.1~50mmolの濃度で鎖中に反応性官能基Xを有し、
前記成分(B)は、分子量Mwが10000Da~100000Da(ポリスチレン当量で表される)の直鎖状ポリマーであって、付加又は縮合反応において官能基Xと反応し得る型の末端反応性官能基Yを有し、
前記成分(C)は、分子量が50Da~1000Daの直鎖状分子又はオリゴマー(又はそれらの混合物)であって、分子内に付加又は縮合反応において官能基Xと反応し得る反応性官能基Yを有し、
前記成分(B)および前記成分(A)の官能基のモル比が0.01~0.5(mol YB/mol XA)であり、
前記成分(C)および前記成分(A)の官能基のモル比が0.5~1.2(mol YC/mol XA)であり、
前記成分(A)の反応性基Xは、前記成分(B)および前記成分(C)の反応性部位Yと反応し得る。
【0017】
前記流動性分岐ポリマーは、「せん断減粘挙動を有する粘弾性流体の特性を有し、1mm離れた直径50mmの2枚の平板の間で、温度20℃で、0.1s-1および1000s-1のせん断速度の間で回転させたときに、3000Paの最大法線圧力(PN,MAX)に対応する少なくとも6Nの最大法線力(FN,MAX)を発生させることができる。
【0018】
このような分岐ポリマーは、10℃~70℃の温度で粘性流体として現れ、せん断力を受けると粘度が低下する(「せん断減粘」):したがって、このような分岐ポリマーは、広がりながら、流れに平行な方向では粘度を低下させ、同時に流れに垂直な方向では「クッション」効果を発生させる材料であり、その結果、独特の潤滑特性を持つ。
【0019】
前記成分(A)および(B)は、非限定的な例として、シリコーン、多糖類、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタンなどの化粧品に使用される主要なポリマー系から選択することができる。
【0020】
反応性官能基XおよびYは、Si-H、カルボキシル、ビニル、ヒドロキシル、アルコキシ(-O-CH3、-O-CH2CH3、-O-CH(CH32)、アミン、イソシアネートなどの相補的な反応性基から好都合に選択することができるが、これらに限定されない。
【0021】
このような流動性分岐ポリマーの1つのクラスは、分岐アルキルジメチコーンで代表される。
【0022】
この分岐ポリマーにおいて前記成分(A)はポリメチルヒドロシロキサンから好ましく選択され、その構造式は以下の通りである。
【0023】
【化1】
(ここで、x>2;RがH、またはCH3
【0024】
この分岐ポリマーにおいて前記成分(B)は末端ビニル基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンから好ましく選択され、その構造式は以下の通りである。
【0025】
【化2】
(ここで、nはポリマーの分子量Mwが10000Da~100000Daになるように特定される)
【0026】
この分岐ポリマーにおいて前記成分(C)は一般式CH2=CH-Rを有するα-オレフィンから好ましく選択され、ここでRは6~50個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0027】
このような分岐ポリマーは、ヒドロシリル化触媒(Karstedt触媒)の存在下、ポリメチルヒドロシロキサン(A)を、ビニル基で末端化されたポリジメチルシロキサン(B)およびα-オレフィン(C)と同時に反応させるヒドロシリル化反応によって有利に合成することができる。
【0028】
このような流動性分岐ポリマーのもう1つのクラスは、分岐セルロース誘導体で代表される。この分岐ポリマーにおいて前記成分(A)は、好ましくはセルロース誘導体、特にエチルセルロースから選択され、構造中に適切な数のヒドロキシル基が存在することを保証する市販のエチルセルロースグレードから選択できる。この分岐ポリマーにおいて前記成分(B)は、好ましくは、末端イソシアネート基を有する直鎖状ポリエステルから選択される。この分岐ポリマーにおいて前記成分(C)は、好ましくは一般式O=C=N-Rの脂肪族モノイソシアネートから選択され、Rは6~50個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0029】
このような流動性分岐ポリマーは、エチルセルロース(A)のヒドロキシルを、Zn系触媒の存在下、末端イソシアネート基を有する直鎖状ポリエステル(B)および脂肪族モノイソシアネート(C)と同時に反応させる反応によって有利に合成することができる。
【0030】
このような流動性分岐ポリマーのさらなるクラスは、分岐ポリエステル誘導体で代表される。この分岐ポリマーにおいて前記成分(A)は、好ましくはポリグリセロールまたはポリグリセロールエステルから選択され、これらは構造中に適切な数のヒドロキシル基が存在することが保証される。この分岐ポリマーにおいて前記成分(B)は、好ましくは末端に酸基を有する直鎖状ポリエステルから選択される。この分岐ポリマーにおいて前記成分(C)は、好ましくは、6~50個の炭素原子を含むアルキル基を有する脂肪族一酸から選択される。
【0031】
このような分岐ポリマーは、Sn系触媒の存在下、ポリグリセロール(A)を直鎖状ポリエステル二酸(B)および脂肪族一酸(C)と同時に反応させるエステル化反応によって有利に合成することができる。
【0032】
本発明の流動性分岐ポリマーは、予想に反して、成分(A)、(B)および(C)を一段階で合成することによって得られた。合成段階におけるこの工夫と、成分(A)、(B)および(C)の反応性基のモル比の慎重な選択は、上述のレオロジー特性を有する流動性分岐ポリマーの形成にとって極めて重要な側面である。
【0033】
本発明によるもののような、記載されたレオロジー挙動を有する原料を製剤に使用することにより、製剤自体に、従来の原料の使用では得られなかった特別な特性が付与される。特に、このようにして得られた製剤は、長い塗布時間または「プレイタイム」、および最適な耐摩耗性(高い「ロングウェア性」および「長持ち性」)を有する。原料のレオロジー特性は、本発明に記載の様々な流動性製剤から受け継がれる。
【0034】
本発明による独特なレオロジー特性を有する流動性化粧用組成物のいくつかの処方例を以下に示す。
【実施例
【0035】
リップ液、ファンデーション、コンシーラー、プライマー(実施例1、2、3、4、5、6および7)などの本発明の化粧品は、そこに含まれる材料の高度なレオロジー特性により、非常に特殊な感触を有する。
【0036】
このようなレオロジー特性は、化粧用組成物を非常に特別なものにする。リップ液(実施例1)は、材料(試料II)が柔らかいが耐摩耗性の薄膜を形成するため、塗布時および時間が経過しても「移らない」効果で非常に快適である。同じレオロジー特性は、非シリコーンリップ液(実施例6)の試料Vを有する処方によって維持される。通常の「移らない」化粧用組成物とは異なり、説明したものは、塗布したときに唇を乾燥させず、煩わしい引き締め効果を生じさせない。顔用の流動性化粧用組成物(実施例2、3、4、5および7)は、説明した原料(試料I、試料II、試料III、試料IVおよび試料VI)の存在により、塗布した際や時間が経っても非常に快適であり、「移らない」効果および柔軟性を与える。
【0037】
使用原料
試料I:独自の特性を持つ非常に弾力性のある液体で、長時間塗布すると独自の官能効果が得られる。その弾力性と鎮静性により、化粧用組成物は非常に快適かつ柔軟で、長時間肌に密着する。
【0038】
【表1】
【0039】
試料II:弾力性のある液体で、流動性があるにもかかわらず、独特の非常に制御された感覚プロファイルを持つ。非常に密着性が高く、持続性のある薄い膜を作り、時間が経っても快適である。
【0040】
【表2】
【0041】
試料III:高分子量の分岐アルキルシリコーン。シリコーンの性質は素材に柔らかさを与え、ワックス状(アルキル)の性質は塗布時にクリーミーでとろけるような感触を与える。あらゆる製品カテゴリーに使用でき、心地よいクリーミーさを与える。
【0042】
【表3】
【0043】
試料IV:流体原料(60℃)。ワックス状鎖で官能基化された部分架橋アルキルシリコーン。中・高粘度シリコーンオイルや流動性アルキルシリコーンのレオロジーを改質する機能を持つ。粘度調整された化粧品オイルは弾力性があり、塗布するとツヤとクリーミーさを与える。
【0044】
【表4】
【0045】
試料V:室温で固体原料の分岐とアルキル官能基化により、60℃以下の温度で流動弾性を持つようになった分岐エチルセルロース。低極性オイルやエステルのレオロジーを改質する能力を持つ。
【0046】
【表5】
【0047】
試料VI:アルキル鎖で官能基化された部分架橋ポリエステル。中~高極性オイルやエステルのレオロジーを改質する機能を持つ。この化粧用オイルは弾力性があり、塗布するとツヤとクリーミーさを与える。
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
【0053】
【表11】
【0054】
【表12】
【0055】
【表13】
【0056】
【表14】
【国際調査報告】