(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】血管閉塞デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240514BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61B17/12
A61B17/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571528
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 US2021057134
(87)【国際公開番号】W WO2022245387
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ハンクン
(72)【発明者】
【氏名】リー,アンドリュー エス.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD62
4C160MM33
(57)【要約】
血管閉塞デバイスは、動脈瘤嚢内に埋め込むように構成された血管閉塞構造体を含み、この血管閉塞構造体が、送達カテーテル内に拘束されたときに送達構成となり、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときに展開構成となり、血管閉塞構造体の少なくとも一部が、AuPtW(金-白金-タングステン)合金で構成され、AuPtW合金が、25重量%~40重量%の範囲内の白金を含み、AuPtW合金が、0.01重量%~10重量%の範囲内のタングステンを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管閉塞デバイスであって、
動脈瘤嚢内に埋め込むように構成された血管閉塞構造体を含み、前記血管閉塞構造体が、送達カテーテル内に拘束されたときに送達構成となり、前記送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときに展開構成となり、前記血管閉塞構造体の少なくとも一部が、AuPtW(金-白金-タングステン)合金で構成され、
AuPtW合金が、25重量%~40重量%の範囲内の白金を含み、
AuPtW合金が、0.01重量%~10重量%の範囲内のタングステンを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
AuPtW合金が、25Mpsi未満のヤング率を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記血管閉塞構造体が、AuPtW合金からなるメッシュを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、編組であることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項5】
請求項3または4に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記血管閉塞構造体の全体が、前記メッシュを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項6】
請求項3~5の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記血管閉塞構造体が、前記メッシュの両端部に配置された2つの螺旋状に巻かれたコイルをさらに備えることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記2つの螺旋状に巻かれたコイルの各々が、AuPtW合金で構成されていることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項8】
請求項3~7の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、少なくとも1本のワイヤを含み、各ワイヤが0.0005インチ~0.004インチの範囲内の最小断面寸法を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項9】
請求項3~8の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、少なくとも1本の撚りをかけたストランドを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項10】
請求項3~9の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、8本のワイヤ~96本のワイヤの範囲のワイヤ数を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、16本のワイヤ~32本のワイヤの範囲のワイヤ数を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項12】
請求項3~11の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが拘束されていないときに、前記メッシュを構成するワイヤが、20度~60度の範囲のそれぞれの編組角度で互いに交差することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項13】
請求項3~12の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、円形断面を有する拡張された幾何学的形状を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項14】
請求項3~12の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、矩形断面を有する拡張された幾何学的形状を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記矩形断面が、0.5mm~5.0mmの範囲の幅を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項16】
請求項14に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記メッシュが、150mN/mm未満の曲げ剛性を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項17】
請求項1または2に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記血管閉塞構造体が、AuPtW合金からなるコイルを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記コイルが、拘束されていない構成にあるときに複数のループを有する三次元形状をとるように構成されていることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項19】
血管閉塞アセンブリであって、
請求項1に記載の血管閉塞デバイスと、
前記血管閉塞デバイスが取り外し可能に結合されるプッシャ部材とを備えることを特徴とする血管閉塞アセンブリ。
【請求項20】
血管閉塞治療システムであって、
請求項19に記載の血管閉塞アセンブリと、
前記血管閉塞アセンブリが配置される送達カテーテルとを備えることを特徴とする血管閉塞治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスおよび血管内医療処置に関し、より詳細には、動脈瘤などの血管障害を閉塞するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管閉塞デバイスまたはインプラントは、血管内動脈瘤の治療など、様々な理由で使用されている。動脈瘤は、血管などの脈管の拡張であり、破裂、凝固または解離により患者の健康に危険をもたらす可能性がある。例えば、患者の脳の動脈瘤が破裂すると、脳卒中を引き起こし、脳の損傷や死亡につながる可能性がある。脳動脈瘤は、例えば、発作や出血の後に患者において検出され、血管閉塞デバイスを適用することによって治療されることがある。
【0003】
一般的に使用される血管閉塞デバイスは、白金(または白金合金)のワイヤストランドを「一次」マンドレルに巻き付けることによって形成される、柔らかい螺旋状に巻かれたコイルを含む。
【0004】
その後、このコイルは、より大きな「二次」マンドレルに巻き付けられ、二次形状を付与するために熱処理される。例えば、Ritchart等に発行された米国特許第4,994,069号(この特許は、引用によりあたかも全文が記載されているかのように本明細書に完全に援用されるものとする)には、送達カテーテルのルーメンを介して配置するために引き伸ばされると、直線的で螺旋状の一次形状となり、送達カテーテルから放出されて血管系に置かれると、折り畳まれた複雑な二次形状となる血管閉塞デバイスが記載されている。動脈瘤をより適切にフレーミングして充填するために、複雑な三次元の二次形状を血管閉塞デバイスに付与することができ、血管閉塞デバイスの剛性/柔軟性を変更することができる。
【0005】
血管系内の所望の部位、例えば動脈瘤嚢内に血管閉塞デバイスを送達するために、先ず、ガイドワイヤを用いて小さなプロファイルの送達カテーテルまたは「マイクロカテーテル」をその部位に配置することがよく知られている。一般に、マイクロカテーテルの遠位端には、主治医または製造業者によって、患者の特定の解剖学的構造に応じて、例えば、45度、26度、「J」字状、「S」字状または他の曲げ形状などの選択された予め成形された曲げが設けられ、その結果、ガイドワイヤが引き抜かれたときに、1または複数の血管閉塞デバイスを動脈瘤嚢内に放出するために特定の位置に留まるようになる。その後、送達アセンブリの遠位端に結合された血管閉塞デバイスがマイクロカテーテルの遠位端開口部から動脈瘤嚢内に延びるまで、送達アセンブリまたは「プッシャ」アセンブリまたは「ワイヤ」がマイクロカテーテルに通される。動脈瘤嚢内に入ると、血管閉塞デバイスの一部は、より効率的で完全な充填を可能にするために変形または屈曲することができる。
【0006】
その後、血管閉塞デバイスは、送達アセンブリの遠位端から放出または「分離」され、送達アセンブリはマイクロカテーテルを通して引き戻される。患者の特定の必要性に応じて、1または複数の追加の血管閉塞デバイスを、マイクロカテーテルに通して押し込み、同じ動脈瘤嚢内に放出することができる。
【0007】
蛍光透視法は、動脈瘤内への送達中に血管閉塞デバイスを視覚化するために使用され、一方、磁気共鳴画像法(MRI)は、通常、動脈瘤嚢が適切に閉塞されていることを確認するために、処置後(例えば、動脈瘤の初期治療の数週間後)に治療部位を視覚化するために使用することができる。このため、血管閉塞デバイスは、動脈瘤の治療中にその放射線不透過性を可能にする一方で、処置後のMRI中に生じる視覚化を妨げるアーチファクトを最小限に抑える(すなわち、MRIに適合する)ように構築することができる。また、動脈瘤の繊細な組織の破裂を防止するために、そのような血管閉塞デバイスが「柔らかく」(すなわち、横方向に柔軟または順応性があり)、それにより非外傷性であることが最も重要である。
【0008】
また、そのような血管閉塞デバイスが動脈瘤内に長期間保持されることが重要である。しかしながら、一般に「広頚動脈瘤」として知られている大きな口を有する動脈瘤は、動脈瘤嚢内に血管閉塞デバイスを配置して保持することが困難であり、特に、小さくて比較的細い血管閉塞コイルでは、どんなに巧みに配置しても、そのような動脈瘤嚢内の位置を維持するための実質的な二次的な形状の強度が不足している。このため、血管閉塞コイルを動脈瘤嚢内に確実に保持するために、ステントまたはバルーンを動脈瘤の頸部に隣接する血管に配置することがあり、それによって処置が複雑になる。この問題に対処するために、少なくとも部分的に編組(または織物)構造で構成される血管閉塞デバイスが開発されている。このような編組構造の血管閉塞デバイスは、動脈瘤の頸部全体で広い範囲と効果的なバックボーンを提供し、それにより、バルーンまたはステントなどの補助的な動脈瘤保持デバイスを展開することなく、広頚動脈瘤内に効果的に保持することができる。
【0009】
しかしながら、コイル状または編組の血管閉塞デバイスを使用するかどうかにかかわらず、血管閉塞デバイスの送達システムでは、血管閉塞デバイスが比較的短く拡張性が制限されており、そうでなければ、マイクロカテーテルへそれらを押し入れ/そこから引き戻すことは(不可能ではないにしても)困難となる。残念ながら、小さな(短い)血管閉塞デバイスは、動脈瘤嚢へのそのような小さな血管閉塞デバイスの送達がより長くより複雑な手順を必要とするため、あまり有利ではない。例えば、直径7mmの神経動脈瘤嚢には、通常、5~7個の個別のバネ型コイルが充填されるため、デバイスの数を減らした場合よりも長く複雑な手順になる。
【0010】
理論的には、血管閉塞デバイスの長さを長くして、動脈瘤を治療するために血管閉塞デバイスの数を減らすことができる。しかしながら、血管閉塞デバイスの長さを増大させると、そのような血管閉塞デバイスと送達カテーテルのルーメンとの摩擦が必然的に増加する。そのため、血管閉塞デバイスを動脈瘤内に確実に送達できるように、そのような血管閉塞デバイスのカラム強度を高め(例えば、高いヤング率を有する材料を選択するか、血管閉塞デバイスが形成されるワイヤの直径を大きくし)、かつ/または送達カテーテルの直径を大きくする場合がある。しかしながら、前述したように、非常に小さな血管系から動脈瘤にアクセスできるように、送達カテーテルの直径をできるだけ小さくすることと、血管閉塞デバイスが繊細な動脈瘤の組織を傷つけないように十分に柔らかいことの両方が有利である。
【0011】
比較的長い血管閉塞デバイスが、比較的小さな直径の送達カテーテルを通して送達されるのに適したカラム強度を有する一方で、柔らかさ、放射線不透過性、およびMRI適合性を含む他の対抗する設計パラメータを満たす材料は非常に限られている。
【0012】
例えば、血管閉塞コイルが通常製造される白金タングステン(PtW)合金など、比較的高いヤング率と比較的高い放射線不透過性を有する既知の材料は、比較的長い血管閉塞デバイスに適したカラム強度を提供するために使用することができる。しかしながら、そのような血管閉塞デバイスが製造されるワイヤの直径は、血管閉塞デバイスが小径の送達カテーテル内に収まるようにしながら特定の柔らかさを実現するために縮小され得る。その結果、血管閉塞デバイスの放射線不透過性が低下し、カラム強度が低下するため、血管閉塞デバイスを短くしたり、かつ/またはより大きな直径の送達カテーテルを必要とすることになる。
【0013】
別の例として、ニチノールなどの比較的低いヤング率および低い放射線不透過性を有する既知の材料を使用して、血管閉塞デバイスに適した柔らかさを提供することができる。しかしながら、そのような血管閉塞デバイスは、血管閉塞デバイスの長さを増加させるために適切な放射線不透過性およびカラム強度を有さなくなる。さらに、ニチノールを所定の形状にセットするための加熱プロセスは、表面酸化物をもたらし、それが割れて有毒なニッケルを放出する可能性がある。したがって、そのような酸化物を、費用と時間のかかるプロセスを使用して血管閉塞デバイスから除去する場合がある。
【0014】
さらに別の例として、チタンなどの比較的中間のヤング率および低い放射線不透過性を有する既知の材料を使用して、そのような血管閉塞デバイスが製造されるワイヤに最適な直径が選択されれば、比較的長くて柔らかい血管閉塞デバイスに適したカラム強度を提供することができる。しかしながら、そのような血管閉塞デバイスは、十分な放射線不透過性を示さないであろう。
【0015】
したがって、上述した設計パラメータの1または複数を満たす血管閉塞デバイスを提供する継続的な要求がある。
【発明の概要】
【0016】
本明細書に記載の実施形態は、金-白金-タングステン合金から少なくとも部分的に作られた(すなわち、構成された)塞栓デバイスおよび血流フィルタなどの埋め込み型の医療デバイスを対象とする。
【0017】
様々な実施形態では、埋め込み型デバイスが、カットされたチューブ、コイル状のワイヤ、または編組に編まれた複数のワイヤの形態などの、金-白金-タングステン合金からなる1または複数の細長い部材から作られる。限定するものではないが、細長い部材は、金-白金-タングステン合金からなる、少なくとも1の層、少なくともコアまたは断面全体を有する複合ワイヤまたは非複合ワイヤを含むことができる。
【0018】
血管閉塞デバイスは、動脈瘤嚢内に埋め込むように構成された血管閉塞構造体を含み、この血管閉塞構造体が、送達カテーテル内に拘束されたときに送達構成となり、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときに展開構成となり、血管閉塞構造体の少なくとも一部が、AuPtW(金-白金-タングステン)合金で構成され、AuPtW合金が、25重量%~40重量%の範囲内の白金を含み、AuPtW合金が、0.01重量%~10重量%の範囲内のタングステンを含む。
【0019】
任意選択的には、AuPtW合金が、25メガポンド/平方インチ(Mpsi)未満のヤング率を有する。
【0020】
任意選択的には、血管閉塞構造体が、AuPtW合金からなるメッシュを含む。
【0021】
任意選択的には、メッシュが編組である。
【0022】
任意選択的には、血管閉塞構造体の全体がメッシュを含む。
【0023】
任意選択的には、血管閉塞構造体が、メッシュの両端部に配置された2つの螺旋状に巻かれたコイルをさらに備える。
【0024】
任意選択的には、2つの螺旋状に巻かれたコイルの各々が、AuPtW合金で構成されている。
【0025】
任意選択的には、メッシュが、少なくとも1本のワイヤを含み、各ワイヤが0.0005インチ~0.004インチの範囲内の最小断面寸法を有する。
【0026】
任意選択的には、メッシュが、少なくとも1本の撚りをかけたストランドを含む。
【0027】
任意選択的には、メッシュが8~96本のワイヤの範囲のワイヤ数を有する。
【0028】
任意選択的には、メッシュが、16~32本のワイヤの範囲のワイヤ数を有する。
【0029】
任意選択的には、メッシュが、20度~60度の範囲の拘束されていない編組角度を有する。
【0030】
任意選択的には、メッシュが、円形断面を有する拡張された幾何学的形状を有する。
【0031】
任意選択的には、メッシュが、矩形断面を有する拡張された幾何学的形状を有する。
【0032】
任意選択的には、矩形断面が、0.5mm~5.0mmの範囲の幅を有する。
【0033】
任意選択的には、メッシュが、150mN/mm未満の曲げ剛性を有する。
【0034】
任意選択的には、血管閉塞構造体が、AuPtW合金からなるコイルを含む。
【0035】
任意選択的には、コイルが、送達カテーテルから展開されたときに複数のループを有する三次元形状をとるように構成されている。
【0036】
血管閉塞アセンブリは、血管閉塞デバイスと、血管閉塞デバイスが取り外し可能に結合されるプッシャ部材とを含む。
【0037】
血管閉塞治療システムは、請求項に記載の血管閉塞アセンブリと、この血管閉塞アセンブリが配置される送達カテーテルとを含む。
【0038】
血管閉塞デバイスは、動脈瘤嚢内に埋め込むように構成された血管閉塞構造体を含み、この血管閉塞構造体が、送達カテーテル内に拘束されたときに送達構成となり、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときに展開構成となり、血管閉塞構造体の少なくとも一部が、AuPtW(金-白金-タングステン)合金で構成されている。
【0039】
その他のおよび更なる態様および特徴は、添付の図面を考慮して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、血管閉塞治療システムの側面図であり、特に、送達構成における送達カテーテル内の血管閉塞を示している。
【
図2】
図2は、
図1の血管閉塞治療システムの側面図であり、特に、拡張構成で送達カテーテルから展開された血管閉塞デバイスを示している。
【
図3】
図3は、動脈瘤嚢内に展開された、
図1の血管閉塞治療システムの血管閉塞構造体の平面図である。
【
図4】
図4は、
図1の血管閉塞治療システムの血管閉塞構造体のメッシュ部分の平面図である。
【
図5】
図5Aは、
図4のメッシュ部分に使用されるワイヤの断面図である。
図5Bは、
図4のメッシュ部分に使用されるワイヤの断面図である。
図5Cは、
図4のメッシュ部分に使用されるワイヤの断面図である。
【
図6】
図6Aは、
図1の血管閉塞治療システムのメッシュ部分の断面図である。
図6Bは、
図1の血管閉塞治療システムのメッシュ部分の断面図である。
【
図9】
図9は、血管閉塞治療システムの側面図であり、特に、送達構成における送達カテーテル内の血管閉塞を示している。
【
図10】
図10は、
図9の血管閉塞治療システムの側面図であり、特に、拡張構成で送達カテーテルから展開された血管閉塞デバイスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に定義される用語については、特許請求の範囲または本明細書の他の場所で異なる定義が与えられていない限り、それらの定義が適用されるものとする。
【0042】
すべての数値は、本明細書では、明示されているか否かにかかわらず、「約」という用語によって修飾されているものとみなされる。「約」という用語は、一般に、当業者が言及された値と同等であると考える(すなわち、同じ機能または結果を有する)数値の範囲を指している。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含むことができる。
【0043】
端点による数値範囲の記述には、その範囲内のすべての数値が含まれる(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5が含まれる)。
【0044】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」および「the」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において、「または」という用語は、内容が明確に別段の指示をしない限り、「および/または」を含む意味で通常は使用される。
【0045】
以下、図面を参照して様々な特徴を説明する。図面は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、選択された要素の相対的な縮尺は、明確にするために誇張されている場合があり、同様の構造または機能の要素は、図面全体を通じて同様の符号で示されている。また、図面は特徴の説明を容易にすることを意図しており、特許請求の範囲に記載の発明の網羅的な説明、または添付の特許請求の範囲およびその均等物によって規定されるその範囲の限定を意図したものではないことを理解されたい。
【0046】
さらに、開示の発明のそれぞれの図示された実施形態は、図示された特徴のすべてを有する必要はなく、特定の実施形態に関連して記載された特徴、態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、たとえそのように図示されていなくても、他の実施形態において実施することもできる。
【0047】
図1および
図2を参照しながら、本発明に従って構築された血管閉塞治療システム10の一実施形態について説明する。血管閉塞治療システム10は、送達カテーテル12と、送達カテーテル12内にスライド可能に配置された血管閉塞アセンブリ14とを備える。血管閉塞アセンブリ14は、血管閉塞構造体16と、血管閉塞構造体(または血管閉塞デバイス)16が接合部20で取り外し可能に結合されたプッシャ部材18とを備える。
【0048】
送達カテーテル12は管状構成を有し、例えばマイクロカテーテルなどの形態をとることができる。送達カテーテル12は、近位部分24および遠位部分26を有する細長いシース本体22と、近位部分24と遠位部分26との間でシース本体22を通って延びるルーメン28(破線で示す)とを備える。シース本体22の近位部分24は、血管閉塞治療システム10の使用時には患者の外側に留まってオペレータがアクセスできるが、シース本体22の遠位部分26は、血管系の離れた場所に到達する大きさおよび寸法であり、血管閉塞構造体16を動脈瘤に送達するように構成されている。送達カテーテル12は、流体をシース本体22に導入するために使用される、送達カテーテル12のルーメン28と流体連絡する少なくとも1つのポート30を有し得る。血管閉塞アセンブリ14は、
図1でよく理解されるように、送達カテーテル12のルーメン28内に配置される。
【0049】
送達カテーテル12は、異なる構成および/または特性を有する、その長さに沿った1または複数の領域、または複数の領域を含み得る。例えば、シース本体22の遠位部分26は、遠位部分26のプロファイルを低減し、曲がりくねった血管系におけるナビゲーションを容易にするために、シース本体22の近位部分24の外径よりも小さい外径を有してもよい。さらに、遠位部分26は、近位部分24よりも柔軟であってもよい。一般に、近位部分24は、シース本体22の遠位部分26よりも剛性のある材料から形成されて、その結果、近位部分24が患者の血管系を通って前進するのに適した押し込み性を有し(例えば、近位部分24が座屈したり折れたりすることなく)、一方で遠位部分26はより柔軟な材料で形成されて、遠位部分26が柔軟性を維持してガイドワイヤ上をより容易に進んで、血管系の曲がりくねった領域の遠隔位置にアクセスできるようにしてもよい。シース本体22は、ポリエチレンやステンレス鋼など、適切なポリマー材料、金属および/または合金、あるいは他の適切な生体適合性材料またはこれらの組合せなどから構成され得る。いくつかの実施例では、近位部分24は、シース本体22の押し込み性を高めるために、編組層またはコイル状層などの補強層を含み得る。シース本体22は、近位部分24と遠位部分26との間に移行領域を含むことができる。場合によっては、遠位部分26も補強層を含み得る。
【0050】
一般に、血管閉塞構造体16は、血管閉塞治療システム10を患者の血管系に挿入して動脈瘤部位に到達させることによって(例えば、低侵襲的に)患者に挿入することができる。したがって、送達カテーテル12は可能な限り小さく作られ、非常に細い内径(すなわち、ルーメン28)を有する(例えば、0.015インチ~0.025インチ、好ましくは、0.015インチ~0.018インチ)。血管閉塞治療システム10は、送達カテーテル12が予め導入されたガイドワイヤを介して患者に導入され、送達カテーテル12がガイドワイヤ(図示せず)の全長にわたって延びる「オーバーザワイヤ」構成で使用することができる。あるいは、血管閉塞治療システム10は、ガイドワイヤがガイドワイヤポート(図示せず)から血管閉塞治療システム10の遠位部分を通って延びる「迅速交換」構成で使用することができる。他の代替的な実施形態では、シースまたはアクセスカテーテルの遠位部分を標的部位に残してガイドワイヤを引き出した後に血管閉塞治療システム10を患者に導入して、シースまたはアクセスカテーテル内で患者の血管系を通して血管閉塞治療システム10をナビゲートしてもよい。
【0051】
なお、送達カテーテル12は、上述した寸法の例を有することに限定されるものではなく、他の実施形態では、送達カテーテル12は他の寸法を有することができることに留意されたい。例えば、他の実施形態では、送達カテーテル12のルーメンが、0.020インチ未満、0.018インチ未満、0.016インチ未満、または0.014インチ未満(0.013インチ以下など)の内径を有するものであってもよい。他の実施形態では、送達カテーテル12のルーメンが、0.04インチ、0.06インチ、0.08インチ、0.1インチ、0.2インチなど、0.020インチより大きい内径を有することができる。
【0052】
図1および
図2に示すように、血管閉塞構造体16が送達カテーテル12の内部に収容されているとき、血管閉塞構造体16は第1の断面寸法を有し、血管閉塞構造体16が送達カテーテル12の外部に送達されるとき、血管閉塞構造体16は、第1の断面寸法よりも大きい第2の断面寸法を有する。特に、血管閉塞構造体16が送達カテーテル12の内部にあるとき、血管閉塞構造体16は半径方向に弾性的に潰れて第1の断面寸法を形成する。血管閉塞構造体16が送達カテーテル12の外側にあるとき、血管閉塞構造体16は半径方向外側に弾性復帰して、その第2の断面寸法をとる。いくつかの実施形態では、血管閉塞構造体16の長手方向軸から半径方向に拡張することに加えて、血管閉塞構造体16が三次元構成をとることもある。非限定的な例として、血管閉塞構造16は、複数のループ(例えば、開ループおよび/または閉ループ)、螺旋状の構成、ランダムな構成などをとることができる。いくつかの実施形態では、血管閉塞構造体16が複数のループを有する三次元構成をとる場合、ループはそれぞれの平面内に位置することができ、少なくとも2つの平面が互いに対して非ゼロの角度を形成することができる。
【0053】
図3に示すように、動脈瘤部位において、血管閉塞構造体16は、親血管Vに存在する送達カテーテル12からプッシャ部材18を介して、動脈瘤頸部Nを通して遠位側に、動脈瘤嚢A内へと押し出すことができる。送達カテーテル12から押し出された後、血管閉塞構造体16は、以下に述べるように、事前設定された構成に自己拡張することができる。血管閉塞構造体16が動脈瘤嚢A内に挿入されると、血管閉塞構造体16はプッシャ部材18から切り離すことができる。動脈瘤嚢Aを充填して閉塞するために複数の血管閉塞デバイス16を送達することができる。また、血管閉塞構造体16は、プッシャ部材18を介して血管閉塞構造体16を近位に引き戻すことによって除去あるいは抜去して、畳んで送達カテーテル12内に戻すこともできる。
【0054】
プッシャ部材18は、血管閉塞構造体16を動脈瘤嚢に押し込むことを可能にするのに適したカラム強度を有するコイル、ワイヤ、テンドンなどであり得る。プッシャ部材18が血管閉塞構造体16に結合される接合部20は、例えば血管閉塞構造体16をプッシャ部材18から電解的に切り離すための電解分解性セグメントの形態をとることができるが、他の代替的な切り離しメカニズムは、プッシャ部材18から血管閉塞構造体16を切り離すための機械的、熱的、および油圧的な機構を含み得る。
【0055】
プッシャ部材18は、送達カテーテル12の近位部分24から近位側に延びる近位部分32と、血管閉塞デバイス16が取り付けられる遠位部分34とを有する。プッシャ部材18は、ガイドワイヤ、トルカブルケーブルチューブ、またはハイポチューブでできていてもよい。いずれの場合も、プッシャ部材18が医療デバイスに一般的に関連する適切な特性を実現するために利用可能な多くの材料が存在する。いくつかの例には、金属、金属合金、ポリマー、金属-ポリマー複合材料など、または任意の他の適切な材料が含まれ得る。例えば、プッシャ部材18は、ニッケル-チタン合金、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金とステンレス鋼の複合材料を含み得る。いくつかの実施形態では、プッシャ部材18の少なくとも一部(例えば、ある層)または全体を、ニッケル-チタン-白金(NiTiPt)合金で作ることができる。場合によっては、プッシャ部材18は、その長さに沿って同じ材料で作ることができ、またはいくつかの実施形態では、異なる材料で作られた部分またはセクションを含むことができる。いくつかの実施形態では、プッシャ部材18を構築するために使用される材料は、プッシャ部材18の異なる部分に様々な柔軟性および剛性の特性を与えるように選択される。例えば、プッシャ部材18の近位領域および遠位部分34は、異なる材料、例えば、異なる弾性係数を有する材料で形成されてもよく、その結果、柔軟性の違いがもたらされる。例えば、近位部分32をステンレス鋼で形成し、遠位部分34をニッケル-チタン合金で形成することができる。しかしながら、任意の適切な材料または材料の組合せをプッシャ部材18に使用することができる。
【0056】
血管閉塞構造体16は、動脈瘤嚢Aに埋め込むように寸法決定され、任意の幾何学的形状または断面形状をとることができる。例えば、図示の実施形態では、血管閉塞構造体16は、近位端36および遠位端38を有する弾性管状部材の形態をとる。この場合、血管閉塞構造体16の遠位端38は、典型的には自由または解放された状態(最大の拡張が可能)であり、一方、血管閉塞構造体16の近位端36は、プッシャ部材18に結合/取り付けられている。したがって、血管閉塞構造体16の遠位端38は、自由に浮遊している。別の例では、血管閉塞構造体16は、近位端および遠位端の両方を固定できる平坦な部材の形態をとることができる(最小限の拡張が可能とされる)。血管閉塞構造体16は、送達カテーテル12内で半径方向に拘束されたときはコンパクトな送達構成を有し、送達カテーテル12から動脈瘤嚢内に放出されたときは半径方向外側に拡張して展開構成になるようにバイアスされている。拡張された展開構成における血管閉塞構造体16の断面寸法は、例えば、そのコンパクトな送達構成における血管閉塞構造体16の断面寸法の1.5倍より大きく、好ましくは2倍より大きく、最も好ましくは3倍より大きくてもよい。血管閉塞構造体16の拡張された展開構成は、事前設定することができ、曲がっていても、湾曲していても、三次元(例えば、ボール状、ループ状など)であってもよく、二次または三次構造を含むことができる。
【0057】
図1および
図2に示す実施形態では、血管閉塞構造体16の全体がAuPtW合金から構成される多孔質メッシュ40を含むが、以下でさらに詳述するように、血管閉塞構造体16の一部がメッシュ40を含むことができる。図示の実施形態では、メッシュ40は、ワイヤ42(例えば、8~96本のワイヤ数、より好ましくは16~32本のワイヤ数を有する)を一緒に編組または織り込むことによって形成される(
図4)。代替的な実施形態では、メッシュ40は、例えばステント材料のチューブまたはシートからパターンをエッチングまたは切り出し、または設計パターンに従って材料のシートをカットまたはエッチングし、その後にシートを巻くか、または他の方法で管状、分岐、または他の形状に形成することによって、モノリシック構造として形成することができる。
【0058】
メッシュ40は、適切な長さ(例えば、5cm超、5cm~45cm、5cm~30cmなど)を有し得る。編組は、編組機を使用して、マンドレル(例えば、実現される血管閉塞構造体16の最終断面形状に応じた、円形、楕円形、平坦、他の形状を有するマンドレル)の周りに編組することができる。あるいは、ワイヤ42は、平らな編組に編まれ、その後にマンドレルの周りに成形されヒートセットされて、所定の形状を有する平らな編組にしてもよい。編組後に、メッシュ40をヒートセットすることができる(例えば、摂氏450度~摂氏650度で1~60分間)。ヒートセットが完了した編組は、メッシュ40の線形の「一次形状」を形成する。次に、このヒートセットが完了した編組を第2のマンドレル(例えば、三次元マンドレル)に巻き付け、二度目のヒートセットを行って、三次元の「二次形状」または「三次形状」を与えることができる。
【0059】
各ワイヤ42は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、モノフィラメントのストランドであってもよいが、代替的な実施形態では
図5Cに示すように、各ワイヤ42はマルチフィラメントのストランドであってもよい。各ワイヤ42は、任意の適切な寸法を有する任意の適切な断面を有することができる。例えば、各ワイヤ42の断面が(
図5Aに示すように)円形である場合、直径は0.0005インチ~0.0040インチとすることができ、各ワイヤ42の断面が(
図5Bに示すように)矩形である場合、厚さは0.0008インチ以上であってもよく、幅は0.005インチ以下であってもよい。別の実施形態では、各ワイヤ42は、得られる血管閉塞構造体16の柔軟性を高めるために(
図5Cに示すように)撚りをかけたワイヤの形態であってもよい。
【0060】
メッシュ40を構成するすべてのワイヤ42は同じサイズおよび組成であってよいが、血管閉塞構造体16を構成するワイヤ42の少なくともいくつかがAuPtW合金で構成される限りにおいて、ワイヤ42は異なるサイズおよび組成を有してよいことが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、メッシュ40が、リボン編組などの編組であってもよい。編組は、同じサイズのワイヤから作られてもよいし、異なるサイズのワイヤから作られてもよい。いくつかの実施形態では、編組が、同じ組成を有するワイヤから作られてもよいし、異なる組成を有するワイヤから作られてもよい。好ましくは、メッシュ40の拘束されていない編組角度44(すなわち、2本の交差するワイヤ42間の角度)は、20度~130度、より好ましくは20度~60度である(
図4)。一般に、編組角度44は、長軸方向に長く見た2本の交差するワイヤ42間の角度とすることができる。編組角度44を選択すると、メッシュ40が潰れるのが防止されて、送達カテーテル12内での血管閉塞構造体16の押し込み性を高めることができ、さもなければ、押したときにメッシュ40が送達カテーテル12内で束となって送達カテーテル12内で血管閉塞構造体16が詰まる原因となる。最終的に、メッシュ40内のワイヤ42の数、編組角度44、および/またはメッシュ40の畳まれた構成に対する拡張構成は、使用される送達カテーテル12の内径に最適に適合するように選択され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、メッシュ40が、管状構成を有する編組構造体であってもよい。他の実施形態では、メッシュ40が非管状構成を有することができる。例えば、幾つかの実施形態では、メッシュ40が平坦な編組であってもよい。平坦な編組は、幅Wおよび(幅に対して垂直な方向で測定される)厚さTを有する断面を持つ任意の編組構造であってよく、ここで、W/Tの比は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20に等しいか、またはそれらよりも大きい。また、いくつかの実施形態では、メッシュ40がリボン編組であってもよい。本明細書に記載の1または複数の実施形態では、編組が、0.020インチ(0.5mm)~0.197インチ(5mm)のいずれかの幅、好ましくは0.030インチ(0.75mm)~0.079インチ(2.0mm)のいずれかの幅、より好ましくは0.030インチ(0.75mm)~0.06インチ(1.5mm)のいずれかの幅を有することができる。更なる実施態様では、編組が、0.039インチ(1mm)以上の幅を有することができる。例えば、一実施態様では、編組が、約1.25mm(例えば、1.25mm±0.1mm)の幅を有することができる。いくつかの実施態様では、編組が、150mN/mm未満の編組剛性を有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、編組が、同じサイズおよび/または同じ組成の複数の編組ワイヤ42から形成されるものであってもよい。他の実施形態では、編組が、異なるサイズおよび/または異なる組成の複数の編組ワイヤ42から形成されるものであってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、編組がカテーテルの外側で拘束されていないとき、編組は第1の幅を有することができ、編組がカテーテルの内側にあるとき、編組は弾性的に潰れかつ/または横方向(例えば、編組の長手方向軸に対して垂直な方向)に曲がって、第1の幅よりも小さい第2の幅を有することができる。例えば、編組は、カテーテル内部では第2の幅を有するように弾性的にカールまたは巻き上げられた平坦な編組であってもよく、カテーテル外側に展開されると第1の幅を有する弛緩した構成に弾性復帰することができる。
【0063】
図6Aに示す一実施形態では、メッシュ40が、平坦な形状(例えば、リボン)である拡張された幾何学的形状を有し、例えば、0.5mm~5.0mmの範囲の幅を有することができる。
図6Bに示す代替的な実施形態では、メッシュ40が、円筒形である(すなわち、円形の断面を有する)拡張された幾何学的形状を有することができ、例えば、0.5mm~5.0mmの範囲の直径を有することができる。このため、メッシュ40は、平坦な編組であっても、丸められた編組であってもよい。いくつかの実施形態では、メッシュ40が平坦な断面または丸められた断面を有するかにかかわらず、メッシュ40は、送達カテーテル16に対して前進するのに適したカラム強度を有する(例えば、メッシュ40が前進する際に送達カテーテル16のルーメン内で座屈、よじれ、折れ曲がりなどを生じない)。
【0064】
試作および試験を通じて、AuPtW合金の正確な組成、ワイヤ42のサイズおよび数、血管閉塞構造体16のメッシュ40を構築するために使用される編組角度、および拡張された血管閉塞構造体16の形状およびサイズを、対象となる用途に応じて、優れた性能を発揮するように最適化することができる。
【0065】
例えば、いくつかの実施形態において、比較的柔らかく長いが放射線不透過性の血管閉塞デバイスは、N本(例えば、8~96本の範囲の数、好ましくは16~32本の数、例えば24本)のワイヤを、20~130度(好ましくは20~60度)のいずれかの編組角度(拘束なし)で、0.5~5mm(好ましくは1~2mm、例えば、1.25mm)の幅および12cm以上の長さを有する平坦な編組に編むことにより構築することができ、各ワイヤは、AuPtWで構成されて、25Mpsi未満のヤング率を有するとともに、0.0005インチ~0.004インチ(例えば、0.001インチ)のいずれかのワイヤ直径を有する。血管閉塞は、(例えば、0.026インチの外径および0.0165インチの内径を有する)マイクロカテーテルを介して送達可能であり得る。いくつかの実施形態では、血管閉塞デバイスを、0.06ポンド未満の摩擦力で送達することができる。そのような血管閉塞デバイスは、有利な形状保持特性、特定の曲げ剛性(例えば、150mN/mm未満)を有することができ、82キロボルトピーク(KVp)のX線エネルギーでの撮像など、特定の放射線不透過性を有することができる。また、幾つかの実施形態では、新規のAuPtW血管閉塞コイルのMRI画像(例えば、3TでのMRI)は、有利なことに、既存の血管閉塞コイル(例えば、Pt/8Wから作られた血管閉塞コイル)に存在し得る界面アーチファクトが殆ど無い。
【0066】
重要なことに、好ましくは25重量%~40重量%の範囲の白金、0.01重量%~10重量%の範囲のタングステン、および残部のAu(例えば、Auの%=100%-Ptの%-Wの%)を含み、かつ25×10^6ポンド/平方インチ(25Mpsi)未満のヤング率を有する、金-白金-タングステン(AuPtW)合金により、血管閉塞構造16は、適切な構造が与えられると、特定の柔らかさを示すこと(例えば、150mN/mm未満の曲げ剛性を有すること)ができ、特定の長さを有すること(例えば、5cmよりも長くすること)ができ、小径の送達カテーテル(例えば、0.017インチの内径)に適合することができ、特定の放射線不透過性を有することができ、特定のMRI適合性を有することができ、かつ、容易に製造することができる(例えば、表面酸化物の除去が不要となる)のを本発明者等は見出している。他の実施形態では、AuPtW合金に加えて、血管閉塞構造体16は、その機械的特性を改善するために、イリジウムをさらに含むことができる。
【0067】
なお、血管閉塞構造体16は、本明細書に記載の寸法および特徴の例を有することに限定されるものではなく、血管閉塞構造体16は、様々な実施形態において様々な寸法および特徴を有することができることに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、血管閉塞構造体16が、編組ワイヤ42から形成された編組構造体を含むことができる。編組ワイヤ42は、異なる実施形態では、異なる形状を有することができる。例えば、編組ワイヤ42の少なくとも1本は、円形断面、正方形断面、楕円形断面または矩形断面などを有することができる。いくつかの実施形態では、編組ワイヤ42の少なくとも1本が、0.0001インチ(0.00254mm)~0.004インチ(0.1016mm)のいずれかの断面寸法を有することができる。他の実施形態では、編組ワイヤ42が、0.00085インチ(0.022mm)未満、好ましくは0.0001インチ(0.00254mm)~0.0008インチ(0.020mm)のいずれか、より好ましくは0.0003インチ(0.0076mm)~0.00075インチ(0.019mm)のいずれかである断面寸法を有することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、編組ワイヤ42が円形断面を有する場合、本明細書に記載の断面寸法は、円形断面の直径である。そのような場合、直径は、0.0005インチ(0.0127mm)~0.004インチ(0.102mm)の範囲内、好ましくは、0.0008インチ(0.0203mm)~0.004インチ(0.102mm)の範囲内、より好ましくは、0.001インチ(0.0254mm)~0.002インチ(0.051mm)の範囲内とすることができる。他の実施形態では、編組ワイヤ42の円形断面の直径が、0.00085インチ未満、好ましくは0.0001インチ~0.0008インチ、より好ましくは0.0003インチ~0.00075インチであってもよい。更なる実施形態では、編組ワイヤ42が、0.0001インチ(0.00254mm)~0.0015インチ(0.0381mm)のいずれか、好ましくは0.0005インチ(0.0127mm)~0.001インチ(0.0254mm)のいずれかの直径を有することができる。
【0069】
また、いくつかの実施形態では、編組ワイヤ42が、幅W1および高さ(または厚さ)H1を有する細長い断面(例えば、楕円形、矩形など)を有することができる。いくつかの実施形態では、幅W1が0.005インチ以下であってもよく、高さH1が少なくとも0.0008インチであってもよい。他の実施形態では、編組ワイヤ42が、0.004インチ(0.102mm)の幅(W1)および0.002インチ(0.051mm)の高さ(H1)を有することができる。他の実施形態では、編組ワイヤ42が、0.002インチ(0.051mm)の最大幅および0.0001インチ(0.00254mm)の最小高さを有することができる。更なる実施形態では、編組ワイヤ42が、0.00085インチ未満の断面寸法(幅または厚さ)を有することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、編組構造を、1または複数の撚りをかけたストランドから形成することができる。さらに、いくつかの実施形態では、編組構造が、8~96本のいずれか、16~32本のいずれか、24~144本のいずれか、または24~72本のいずれかのワイヤ数を有することができる。また、いくつかの実施形態では、編組構造を、リボンワイヤである編組ワイヤ42によって形成することができる。
【0071】
なお、血管閉塞デバイスを構築するためにAuPtW合金を使用することは、直感に反していることに留意すべきである。何故なら、AuPt合金は、タングステンWとの合金化によって強化することはできないと考えられているためである。AuとWは、いくつかの理由により、合金にするのが難しい組合せである。第一に、タングステンは金(摂氏1064度)よりも遥かに高い融点(摂氏3422度)を有し、均一な固溶体と均一な化学組成を達成することが困難である。第二に、AuW相図(
図7)によれば、AuとWは、低温で単一相を形成したり、均一な固溶体を形成したりすることができないという点で、非混和性であるように見える。また、タングステンは超高硬度で高弾性率であるため、タングステンを使用して合金化すると、脆い合金になる可能性があると考えられている。これらの理由から、AuPtW合金、特にワイヤの形態のAuPtW合金は、現在のところ商業的にも学術的にも入手できない。また、それらと同じ理由から、AuPtW合金は、血管閉塞デバイスなどのインプラントの構築に使用されていない。
【0072】
それにもかかわらず、本発明者等は、AuPtとPtWを組み合わせると、白金(Pt)が金(Au)とタングステン(W)の合金間元素として作用する無限固溶体を形成することができるため、均一な固溶体を有するAuPtW三元合金を形成することができることを発見した。さらに、綿密な分析と試作を通じて、本発明者等は、タングステンの含有量を10重量%未満に制御することにより、AuPtW合金が血管閉塞デバイスなどのインプラントの製造に適した一連の機械的特性を有することも発見した。一方、AuPtW合金中のタングステン含有量が10重量%を超えると、得られる合金は、編組用またはコイル製造用のワイヤに伸線するには脆すぎるか、インプラントの製造には硬すぎる。
【0073】
いくつかの実施形態では、合金を作るためにタングステンをAu-Ptの組合せに加えることは、タングステンを含まないAuPt合金の125~175Kpsiと比較して、機械的強度(極限引張強度)を200~300Kpsiの範囲に増加させるという利点を有する。しかしながら、タングステン自体は非常に高い弾性率を持っている。このため、タングステンの含有量は、閉塞デバイスの用途に適した25Mpsi未満の弾性率のレベルを維持しながら良好な機械的強度を達成するために、10%以下に制御される。
【0074】
いくつかの実施形態では、AuPtW合金で作られた血管閉塞構造体16は、AuPt合金で作られた(合金中にタングステンを含まない)血管閉塞構造体と比較して、同じかそれ以上の柔らかさを有し、同じかそれ以上の放射線不透過性を有し、同じかそれ以上の編組長さを有する。
【0075】
AuPtW合金を製造するために、様々な実施形態において、様々な技術を採用することができる。例示的な一実施形態では、固体のPtW合金および固体のAuPt合金を得ることができ、その後、合金を溶融してPtW溶液およびAuPt溶液を得る。次いで、それら溶液を混合して、設計された組成(例えば、設計されたAuPtW組成の重量に対して、25~40重量%のPtおよび0.01~10重量%のW、残りのAu)を達成するAuPtW溶液を形成することができる。いくつかの実施形態では、微調整ステップにおいて、それぞれの成分(Au、Pt、W)の設計された重量パーセントを達成するために、追加のAu溶液、Pt溶液、W溶液、または前述した任意の組合せを混合溶液に任意選択的に加えることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、固体形態の合金AuPtを最初に得る。AuPt合金は、ある量のPt(例えば、設計されたAuPtW組成物の重量に対して25~40重量%)を使用して形成することができる。その後、AuPt合金を加熱して合金を溶融し、AuPt溶液を得ることができる。次に、固体状のタングステンを得て、これを溶融してタングステン溶液を形成する。その後、ある量の溶融したタングステン溶液(例えば、設計されたAuPtW組成物の重量に対して10重量%未満)をAuPt溶液に添加して、AuPtW溶液を形成する。いくつかの実施形態では、微調整ステップにおいて、それぞれの成分(Au、Pt、W)の設計された重量パーセントを達成するために、追加のAu溶液、Pt溶液、W溶液、または前述した任意の組合せを混合溶液に任意選択的に加えることができる。
【0077】
他の実施形態では、固体形態の合金PtWを最初に得る。PtW合金は、ある量のPt(例えば、設計されたAuPtW組成物の重量に対して25~40重量%)およびある量のW(例えば、設計されたAuPtW組成物の重量に対して10重量%未満)を使用して形成することができる。その後、PtW合金を加熱して合金を溶融し、PtW溶液を得ることができる。次に、固体状のAuを得て、これを溶融してAu溶液を形成する。その後、ある量の溶融したAu溶液をPtW溶液に添加して、AuPtW溶液を形成する。いくつかの実施形態では、微調整ステップにおいて、それぞれの成分(Au、Pt、W)の設計された重量パーセントを達成するために、追加のAu溶液、Pt溶液、W溶液、または前述した任意の組合せを混合溶液に任意選択的に添加することができる。
【0078】
また、いくつかの実施形態では、血管閉塞デバイスが、血管閉塞デバイスの重量に対して、少なくとも:50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%等であるAuPtW合金を有することができる。さらに、タングステン(W)のパーセンテージ組成がAuPtW合金の重量の10%以下である限り、合金中の金(Au)および白金(Pt)の合計のパーセンテージは、100%-Pw(PwはAuPtW合金中のW含有量のパーセンテージを示す)に等しいか、または他の材料が存在してもよいように100%-Pw未満であってもよいことを理解されたい。
【0079】
いくつかの実施形態では、AuPtW材料をさらに他の1または複数の材料とともに合金化するようにしてもよい。例えば、他の実施形態では、AuPtWを、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)またはこれらの任意の組合せとともに合金化して、特定のレベルの機械的特性を得る(例えば、材料の機械的特性を高める)ことができる。更なる実施形態では、磁化率を低減するために、材料AuPtWを、Zr、Hf、または前述した任意の組合せとともにさらに合金化することができる。
【0080】
さらに、合金の重量に対して10%以下のタングステン(W)のパーセンテージを有する開示のAuPtW合金で構成された医療デバイスは、当該デバイスを製造する際の製造プロセスに耐えるように、当該デバイスに特定の特性を付与する1または複数の材料を含むことができる。それらの製造プロセスには、例えば、レーザカット、エッチング、圧着、アニーリング、延伸、ピルガリング、電気メッキ、電気研磨、化学研磨、洗浄、酸洗、イオンビーム蒸着または注入、スパッタコーティング、真空蒸着などが含まれる。
【0081】
本明細書に記載のAuPtWで作られた編組ワイヤなどの細長い部材を使用して埋め込み型医療デバイスを作製することは有利である。合金AuPtWにおける白金、金およびタングステンの組合せは、適切なレベルの放射線不透過性を提供し、一方、金は、一定レベルの磁化率を達成するのにも役立ち、タングステンは、一連の機械的特性を得るのにも役立つ。弾性率が高い方が有利ないくつかの用途では、AuPtW合金にさらにWを加えることができる(脆くなるのを避けるため、Wの含有量は10%未満に維持する必要がある)。そのような用途では、AuPtW材料の高いヤング率(例えば、Wを含まないAuPtと比較して高いこと)により、軸方向(カラム)剛性および強度が高い埋め込み型医療デバイスを製造することができる。その結果、埋め込み型医療デバイスは、従来知られているデバイスと比較して、サイズ(例えば、断面寸法)がさらに小さくなる可能性がある。このような埋め込み型医療デバイスの一例としては、動脈瘤を閉塞するために小血管に送達されるように構成された血管閉塞デバイスが挙げられる。小血管は、患者の脳内の遠隔血管を含む、体内の任意の血管であり得る。また、本明細書に記載の材料の機械的強度は高いため、埋め込み型医療デバイスは、折れ曲がったり、座屈したり、よじれたりすることなく、小型カテーテルを使用して円滑に送達することができる。これは、医療デバイスのサイズが小さくなっても同様である。さらに、材料の極限引張強さ(UTS)が高いため、埋め込み型医療デバイスを形成する細長い部材は、操作中および処理中に容易に破壊されたり破断したりしない。さらに、それら用途では材料のヤング率が高いため、より柔らかい曲げ剛性を達成するために、より小さい細長い部材を利用して埋め込み型医療デバイスを製造することができる。その結果、埋め込み型医療デバイスは適切な曲げ剛性を有し、より良好な形状保持特性を示すことができる。
【0082】
閉塞デバイスを製造するための開示の金-白金-タングステン(AuPtW)合金の特性は、送達に適したカラム強度、引張強度、引張伸び、応力-歪み特性、半径方向力、放射線不透過性、可撓性、曲げ易さ、熱感受性、生体適合性などの例示的な特性の1または複数を含むことができる。特に、タングステン(W)のパーセンテージが10重量%以下であるAuPtW合金で構成された医療デバイスは、デバイスのより大きな放射線不透過性、半径方向強度、硬度、降伏強度および/または極限引張強度を有することができ、かつ/またはデバイスの応力-歪み特性、圧着特性および/または膨張特性、曲げ特性および/または柔軟性、デバイスの全体強度および/または耐久性、長手方向の伸長特性、反動特性、摩擦係数、熱感受性特性、生体安定性および/または生体適合性特性をさらに改善することができる。例えば、AuPtW合金中のタングステン(W)のパーセンテージが10%以下の医療デバイスは、25Mpsi未満のヤング率を有するように構成される。追加的または代替的には、AuPtW合金中のタングステン(W)のパーセンテージが10%以下の医療デバイスは、300ppm未満、好ましくは200ppm未満、より好ましくは100ppm未満の磁化率を有するように構成され、それにより磁気共鳴(MR)撮像中のアーチファクトを低減することができる。
【0083】
血管閉塞構造体16は、記載の構成の例を有することに限定されるものではなく、血管閉塞構造体16は、他の実施形態において他の構成を有することができることに留意されたい。例えば、他の実施形態では、血管閉塞構造体16が、メッシュまたは編組を有する代わりに、血管閉塞構造体16がコイル構成を有するものであってもよい。
図8Aおよび
図8Bは、いくつかの実施形態に従って構成された、塞栓コイル100の形態の例示的な血管閉塞構造体を示している。このコイル100は、第1の端部104および第2の端部106を有する螺旋状に巻かれたワイヤ102で形成されている。コイル100(
図8Aおよび
図8B)のワイヤ102は、タングステン(W)のパーセンテージが10重量%以下のAuPtW合金で構成されている。コイル100は、第1の端部104と第2の端部106の両方に固定的に取り付けられた伸張抵抗部材108を含む。代替的な実施形態では、伸張抵抗部材108が、2つの端部のうちの一方に取り付けられるものであってもよく、あるいは2つの端部のどちらにも取り付けられていなくてもよい。
図8Aのコイル100は「一次」巻線または形状で示されており、
図8Bのコイル100は「二次」巻線または形状で示されている。場合によっては、コイル100は、送達カテーテル内に拘束されているときに一次巻線または形状を有し、送達カテーテルの外側に展開されたときに二次巻線または形状をとることができる。
図8Bのコイル100の二次形状は、重なり合わないループ120を有する球状の三次元形状を形成する。コイル100の二次形状は、他の任意の適切な形状をとることができることを理解されたい。コイル100のワイヤ102は、ワイヤ、延伸充填チューブ、スレッド、フィラメントなどで形成することもできる。いくつかの実施形態では、
図8Aおよび
図8Bに示すように、ワイヤ102の直径(D1)が約0.0005インチ(0.0127mm)~約0.005インチ(0.127mm)の範囲であり、コイル100の一次巻線直径(D2)が約0.003インチ(0.0762mm)~約0.030インチ(0.762mm)の範囲であり、かつ/または二次巻線直径(D3)が約0.5mm~約50mmの範囲である。
【0084】
先に開示したように、タングステン(W)のパーセンテージが10重量%以下である開示のAuPtW合金で構成されたコイル100は、現在の血管閉塞デバイスと比較して、磁化率が低いことに起因して、MRアーチファクトが低い。
【0085】
上述したように、いくつかの実施形態では、血管閉塞構造体16の全体が編組構造(例えば、メッシュ40)を有してもよく、編組構造体のワイヤの1または複数(例えば、すべて)がAuPtW合金で構成される。他の実施形態では、血管閉塞構造体16が、少なくとも1の編組要素と少なくとも1の非編組要素とを有することができる。非編組要素は、1または複数のコイルであってもよい。いくつかの実施形態では、非編組要素がAuPtW合金で構成されるものであってもよい。さらに、いくつかの実施形態では、編組構造または編組が、編組の1または複数の層(例えば、編組オーバー編組)を有することができる。他の実施形態では、編組構造または編組を、編組オーバーコイル構造になるようにコイル上に配置することもできる。
【0086】
例えば、他の実施形態では、血管閉塞構造体16が、メッシュ(または編組)と1または複数のコイルとを含むことができる。
図9および
図10は、メッシュ40’およびコイル39a、39bを有する血管閉塞構造体を有する血管閉塞治療システム10’の別の実施形態を示している。特に、血管閉塞治療システム10’は、血管閉塞構造体16’が中央メッシュ40’と、中央メッシュ40’の両端部に配置された2つの螺旋状に巻かれたコイル39a、39bとを含むことを除いて、血管閉塞治療システム10と同様である。中央メッシュ40’は、
図1および
図2に関して述べたメッシュ40と同様に構成することができる。好ましくは、コイル部分39a、39bは、AuPtW合金で構成される。注目すべきことに、コイル39a、39bは、血管閉塞構造体16’に付加的な非外傷特性を提供する。
【0087】
コイル39a、39bは、血管閉塞構造体16’が患者の体内の組織に穴を開けたり傷つけたりするのを防止するための非外傷性部材として機能する。いくつかの実施形態では、コイル39a/39bが、0.0001インチ(0.00254mm)~0.003インチ(0.075mm)のいずれかの断面寸法を有するコイルワイヤを備えることができ、コイル39a/39bが、0.003インチ(0.076mm)~0.030インチ(0.762mm)のいずれかの一次巻線直径を有する。非外傷性部材を形成するコイル39a/39bは、単純な形状または複雑な形状を有することができる。他の実施形態では、血管閉塞構造体16’が両方のコイル39a、39bを含まなくてもよく、コイル39aまたはコイル39bを含むことができる。
【0088】
図1および
図2、
図9および
図10にそれぞれ示した血管閉塞構造体16、16’は、単層の編組を有するものとして説明してきたが、血管閉塞構造体は、複数層の編組(すなわち、編組オーバー編組構造)を含むことができ、あるいは、1層の編組(例えば、編組の外側層)およびコイル層(例えば、内側コイル)(すなわち、編組オーバーコイル構造)を含むことができることを理解されたい。いずれの場合においても、血管閉塞構造体の1または複数の層(例えば、すべての層)が、好ましくはAuPtW合金で構成される。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の血管閉塞構造体16などのAuPtW合金から作製された埋め込み型医療デバイスが、1.2インチ(3cm)~19.7インチ(50cm)、好ましくは2インチ(5cm)~11.8インチ(30cm)の長さを有することができる。また、1または複数の実施形態では、本明細書に記載の長さのいずれかを有する埋め込み型医療デバイス(例えば、編組)が、細長いルーメン内に長さ方向に挿入されたときに、座屈、よじれまたは塑性変形することなく、細長いルーメンを通って押し出されることができる場合に、適切なカラム強度を有すると考えられ、ここで、細長いルーメンは、0.03インチの最大ルーメン幅、好ましくは0.016インチの最大幅、さらに好ましくは0.014インチの最大幅(例えば、0.013インチ)を有する。細長いルーメンは、カテーテルのルーメンであってもよいし、または埋め込み型医療デバイスのカラム強度を試験するために使用されるチューブのルーメンなどの任意の細長いルーメンであってもよい。
【0090】
本明細書に記載のAuPtW合金は、血管閉塞デバイスの製造に限定されるべきものではなく、AuPtW合金は、他のタイプの医療デバイスの製造に使用できることを留意されたい。例えば、タングステン(W)のパーセンテージが10重量%以下の開示のAuPtW合金は、ステント(例えば、スロット付きチューブステントおよび/または編組ステントまたは織布ステント)、フィルタ、血栓塞栓捕捉デバイス、フローダイバータ、嚢内動脈瘤インプラント、血管送達アセンブリ、カテーテル、補強部材、ガイドワイヤ、送達ワイヤ、放射線不透過性マーカーなどのデバイスを形成するために使用することができる。
【0091】
また、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の埋め込み型医療デバイスは、特定の初期曲率半径R1を有する埋め込み型医療デバイスがカテーテル内に挿入され、かつ埋め込み型医療デバイスがカテーテルから展開された後に曲率半径R2を有する場合において、展開された埋め込み型医療デバイスの曲率半径R2が、R1の5倍未満、好ましくはR1の4倍未満、より好ましくはR1の3倍未満、さらに好ましくはR1の2倍未満(例えば、R1の1.5倍、またはR1の1.2倍未満など)である場合に、適切な形状保持特性を有すると考えられる。
【0092】
本明細書において使用される「編組」という用語は、複数の細長い部材によって形成される任意の構造を指し、細長い部材は、構造を形成するために編まれていても、編まれていなくてもよい。いくつかの実施形態では、編組が、間隔をあけた穴を有するオープンテクスチャを有するグリッドまたはメッシュ構成を有することができ、間隔をあけた穴は、一定の均一なパターンを形成することができ、またはランダムなパターンを形成することができる。他の実施形態では、編組が、他の構成を有することができ、オープンテクスチャを有していても、有さなくてもよい。いくつかの実施形態では、細長い部材が、細長い部材間の摩擦力などの機械的な力によって互いに結合されるものであってもよい。非限定的な例として、編組を形成するために細長い部材を結合する摩擦力は、細長い部材をねじること、細長い部材を編むこと、細長い部材を重ね合わせることなどによって生成することができる。他の実施形態では、細長い部材を接着剤によって互いに結合することができる。
【0093】
本明細書中で使用される「約」という用語は、特に別段の記載がない限り、10%以内の値のばらつきを指すことに留意されたい。例えば、重量で「約10%」以下とは、全重量の10%±1%以下の重量を指している。
【0094】
特定の実施形態を本明細書に示し説明してきたが、それらが開示の発明を限定することを意図していないことは当業者には理解されるであろう。また、以下の特許請求の範囲およびその均等物によって規定される開示の発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更、置換および修正(例えば、種々の部品の寸法、部品の組合せ)を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味として見なされるべきである。本明細書に示され説明される様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれ得る、開示の発明の代替物、修正物および均等物を網羅することを意図している。
【国際調査報告】