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特表2024-519851トリアゾリルアクリルアミドのヘテロアリール誘導体の合成の方法及び結晶性形態
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】トリアゾリルアクリルアミドのヘテロアリール誘導体の合成の方法及び結晶性形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/06 20060101AFI20240514BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240514BHJP
   C07D 249/08 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C07D403/06 CSP
A61K31/506
C07D249/08 535
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571538
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-29
(86)【国際出願番号】 US2022030294
(87)【国際公開番号】W WO2022246227
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,987
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313015775
【氏名又は名称】カリオファーム セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】バログル,エルカン
(72)【発明者】
【氏名】オースタッド,ブライアン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロー,デービッド,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ルダック,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ゴッシュリング,ステファン,エドムンド
(72)【発明者】
【氏名】ヘッカー,エバン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC60
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、構造式(VII)により表される化合物を調製する方法であって、構造式(II)により表される化合物を、構造式(III)により表される化合物と、溶媒中で、Pd触媒及び1種以上の無機塩基の存在下、構造式(VII)により表される化合物を調製するのに好適な条件下で反応させることを含む方法に関する。構造式(VII)、(II)、及び(III)中の可変要素の値及び例の値は本明細書に定義される。本発明は、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I及びII、CRM1と関連する疾患又は障害の治療における結晶性形態の使用、並びに結晶性形態を調製する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式(VII)により表される化合物:
【化1】
の結晶性形態であって、2θ角4.6°、22.8°、23.2°、及び24.4°のX線粉末回折ピークを特徴とする形態Iである結晶性形態。
【請求項2】
4.6°、20.0°、22.8°、23.2°、及び24.4°から選択される2θ角の少なくとも4つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項1に記載の結晶性形態。
【請求項3】
4.6°、19.0°、20.0°、22.8°、23.2°、23.7°、24.4°、及び27.9°から選択される2θ角の少なくとも5つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項1又は2に記載される結晶性形態。
【請求項4】
図20に描写されているものに実質的に一致するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項5】
約226℃の吸熱事象を有するDSCサーモグラムを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項6】
図21に描写されているものに実質的に一致するDSCサーモグラムを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項7】
構造式(VII)により表される化合物:
【化2】
の結晶性形態であって、2θ角9.9°、19.2°、22.4°、及び24.4°のX線粉末回折ピークを特徴とする形態IIである結晶性形態。
【請求項8】
9.9°、19.2°、22.4°、23.5°、及び24.4°から選択される2θ角の少なくとも4つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項7に記載の結晶性形態。
【請求項9】
9.9°、19.2°、21.3°、21.9°、22.4°、23.5°、24.4°、及び29.2°から選択される2θ角の少なくとも5つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項7又は8に記載の結晶性形態。
【請求項10】
図24に描写されるものに実質的に一致するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項11】
約112℃及び約225℃の2つの吸熱事象を有するDSCサーモグラムを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項12】
図25に描写されているものに実質的に一致するDSCサーモグラムを特徴とする、請求項7~11のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項13】
構造式(VII)の前記化合物が溶媒和物の形態である、請求項7~12のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項14】
前記形態がメタノール溶媒和物である、請求項4~13のいずれか一項に記載の結晶性形態。
【請求項15】
構造式(VII)により表される化合物
【化3】
を調製する方法であって、
構造式(II)により表される化合物
【化4】
を、構造式(III)により表される化合物
【化5】
と、第1の溶媒中で、Pd触媒及び1種以上の無機塩基の存在下で、構造式(VII)により表される化合物を調製するのに好適な条件下で反応させること(式中、各Rは、水素、C~Cアルキルであるか、又は2つの基Rは、それらが結合している酸素原子と共に、5~7員環状アセタール部分を形成する)
並びにそれにより構造式(VII)により表される前記化合物を得ること
を含む方法。
【請求項16】
前記1種以上の無機塩基が、炭酸、炭酸水素、酢酸、又は水酸化第四級アンモニウム、ナトリウム、カリウム、又はセシウムから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Pd触媒が、クロロ{[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-t-ブチルホスフィノ}(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)又はクロロ(クロチル)[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(II)から選択される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
構造式(III)により表される前記化合物が、構造式(IIIB)により表される化合物:
【化6】
である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記無機塩基が、CsCO又はCsOHである、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記無機塩基がCsCOである、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記Pd触媒が、クロロ{[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-t-ブチルホスフィノ}(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)である、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の溶媒が、エーテル溶媒、C~Cアルコール、又はそれらの組合せである、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の溶媒が、単独又は水若しくはエタノールと組み合わせた、MTBE、CPME、THF、ジオキサン、MeTHF、メタノールである、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
Pd触媒負荷が0.5%mol%~10mol%である、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記無機塩基の量が、構造式(II)により表される前記化合物に対して0.5~2モル当量の塩基である、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
構造式(VII)により表される前記化合物を調製するのに好適な前記条件が
-0.5mol%~3mol%の前記Pd触媒負荷;
-構造式(II)により表される前記化合物に対して1.0~2.2モル当量の構造式(III)により表される前記化合物の量;
-構造式(II)により表される前記化合物に対して0.8~1.2総モル当量の塩基の前記無機塩基の量;
-前記第1の溶媒が、16部~21部のジオキサン及び2部~3部の水を含む;
-約55℃~約60℃の反応温度;及び
-約7~8時間の反応時間
を含む、請求項15~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
構造式(II)により表される前記化合物
【化7】
を調製する工程であって、構造式(IV)により表される化合物
【化8】
を、第2の溶媒中で、有機塩基の存在下で、構造式(II)により表される前記化合物を製造するのに好適な条件下で脱臭化水素することによる工程をさらに含む、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記有機塩基が、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である、請求項15~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の溶媒がアセトニトリル(ACN)を含む、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の溶媒が80%ACN/20%水である、請求項15~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
構造式(IV)により表される前記化合物
【化9】
を調製する工程であって、構造式(V)により表される化合物
【化10】
を、臭素(Br)と、第3の溶媒中で、臭化物塩の存在下で、構造式(IV)により表される前記化合物を調製するのに好適な条件下で反応させることによる工程をさらに含む、請求項15~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第3の溶媒が水を含み、前記臭化物塩が臭化ナトリウムである、請求項31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の溶媒が、構造式(IV)により表される前記化合物に対して約11部のACN及び約4部のHOを含み、前記有機塩基がDIPEAであり、構造式(II)により表される前記化合物を調製するのに好適な前記条件が
-構造式(IV)により表される前記化合物に対して約1モル当量のDIPEAの量;
-20℃~25℃の反応温度;及び
-2~3時間の反応時間
を含む、請求項27~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記第3の溶媒が酢酸である、請求項15~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
構造式(V)により表される前記化合物をBrと反応させることが、20℃~30℃の温度で、12時間~16時間の時間実施される、請求項15~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
構造式(V)により表される化合物
【化11】
を調製する工程であって、構造式(VI)により表される化合物
【化12】
を、第4の溶媒中で、アミド化剤により、第三級アミン有機塩基及びクロロギ酸エステルの存在下で、構造式(V)により表される前記化合物を製造するのに好適な条件下でアミド化することによる工程をさらに含む、請求項15~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記アミド化剤が水酸化アンモニウムであり、前記第三級アミン有機塩基がN-メチルモルホリン(NMM)であり、前記クロロギ酸エステルが、以下の構造式
【化13】
により表されるクロロギ酸イソブチルである、請求項15~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第4の溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)又は2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)である、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第4の溶媒がMeTHFであり、構造式(VI)により表される前記化合物をアミド化することが、0℃~5℃の温度で、3時間~4時間の時間実施される、請求項15~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
構造式(V)により表される化合物
【化14】
又はその塩。
【請求項41】
構造式(VII)により表される前記化合物
【化15】
の結晶性形態Iを調製する方法であって、
(a)構造式(VII)により表される前記化合物の結晶性形態IIを、約18体積の4-メチル-2-ペンタノン(MIBK)と接触させて、混合物を形成すること;
(b)工程(a)の前記混合物を約80~85℃に加熱して、加熱された混合物を形成すること;
(c)工程(b)の前記加熱された混合物に、任意選択でSiDMTを加えること;
(d)前記加熱された混合物を約80~85℃の温度で約4.5時間維持すること;
(e)前記加熱された混合物を濾過して、濾液を得ること;
(f)約80~85℃の温度のMIBKを前記濾液に加えること;
(g)前記濾液を約20~25℃に冷却することにより、前記濾液中の形態Iの核形成を誘導すること;
(h)0~5℃の最終温度での前記濾液の制御された冷却結晶化により、形態Iを結晶化させること;及び
(i)結晶性形態Iを前記濾液から単離すること
を含む方法。
【請求項42】
それを必要とする対象のCRM1関連疾患又は障害を治療する方法であって、前記対象に、治療上有効な量の構造式VIIにより表される化合物の結晶性形態Iを投与することを含む方法。
【請求項43】
構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年5月20日に出願された米国仮特許出願第63/190,987号明細書の利益を主張する。上記出願の開示全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
特定のトリアゾリルアクリルアミド、特にフェニルトリアゾリルアクリルアミドは、核外搬出の選択的阻害剤(SINE)として、とりわけ抗癌医薬品として有用である。そのようなフェニルトリアゾリルアクリルアミドは、エクスポーチン1(XPO1又はCRM1)に結合し、そのようにして癌-細胞成長に関与する数種のタンパク質の細胞核から細胞質への輸送を遮断することにより作用し、最終的に細胞周期を停止させ、アポトーシスに導く。これらのSINEを製造するために利用される合成方法は、許容できる収率及び立体選択性を確実にするために条件の厳重な制御を要する多段階スキームである。そのようなSINEを工業規模で製造するための頑強で高収率の合成方法が必要とされている。
【0003】
高収率な合成方法の必要性に加え、SINE化合物の結晶性形態は、医薬組成物の製剤において重要となり得るため、そのような形態も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I及びII、結晶性形態I及びIIを含む組成物、結晶性形態I若しくは結晶性形態II又は結晶性形態I若しくは結晶性形態IIを含む組成物をCRM-1関連疾患又は障害の治療のために投与することを含む治療の方法並びに構造式(VII)により表される化合物及び化合物の結晶性形態(例えば、結晶性形態I及びII)を製造する方法に関する。
【0005】
例の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物
【化1】
を調製する方法である。
【0006】
方法は、構造式(II)により表される化合物
【化2】
を、構造式(III)により表される化合物
【化3】
と、第1の溶媒中で、Pd触媒及び1種以上の無機塩基の存在下で、構造式(VII)により表される化合物を調製するのに好適な条件下で反応させること(式中、各Rは、水素、C~Cアルキルであるか、又は2つの基Rは、それらが結合している酸素原子と共に、5~7員環状アセタール部分を形成する)並びにそれにより構造式(VII)により表される化合物を得ることを含む。
【0007】
別の例の実施形態において、本発明は、構造式(V)により表される化合物
【化4】
又はその塩である。
【0008】
別の例の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物:
【化5】
の結晶性形態Iであり、ここで、結晶性形態は、2θ角4.6°、22.8°、23.2°、及び24.4°のX線粉末回折ピークを特徴とする形態Iである。
【0009】
さらに別の例の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物:
【化6】
の結晶性形態IIであり、ここで、結晶性形態は、2θ角9.9°、19.2°、22.4°、及び24.4°のX線粉末回折ピークを特徴とする形態IIである。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態(例えば、結晶性形態I又は結晶性形態II)及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物に関する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、CRM1関連疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に、治療上又は予防上有効な量の、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態(例えば、結晶性形態I又は結晶性形態II)を投与することを含む方法に関する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象の、本明細書に記載されるCRM-1関連疾患又は障害を治療するための、本明細書に記載される結晶性形態I又は結晶性形態IIの使用に関する。
【0013】
さらに別の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象の、本明細書に記載されるCRM-1関連疾患又は障害を治療するための医薬品の製造のための、本明細書に記載される結晶性形態1又は結晶性形態IIの使用に関する。
【0014】
上記のことは、類似の引用符号が異なる図にわたり同じ部品を指す添付図面に表される通り、本発明の例の実施形態の以下のより詳細な説明から明らかだろう。図面は必ずしも正確な比率ではなく、代わりに本発明の実施形態を説明することに強調がおかれている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例の実施形態の一態様による全体的合成スキームを表す。
図2】初期Pd触媒評価の結果をまとめた表を表す。
図3】Pd触媒反応の反応溶媒のスクリーニングの結果をまとめた表を表す。
図4】無機塩基のスクリーニングの結果をまとめた表である。
図5】触媒反応の反応条件のスクリーニングの結果をまとめた表である。
図6】触媒のスクリーニングの結果をまとめた表である。
図7】化学作用の性能に対する触媒化学量論の影響を調べるために実施された実験の結果をまとめた表である。
図8】MB7当量の下限を調査するために実施された実験の結果をまとめた表である。
図9】鈴木カップリングの溶媒スクリーニングの結果をまとめた表である。
図10】ジオキサン:水溶媒系の比を試験した実験の結果をまとめた表である。
図11】鈴木カップリング反応に対する総溶媒体積の影響を試験した結果をまとめた表である。
図12】鈴木カップリングの反応温度を評価した結果をまとめた表である。
図13】鈴木カップリングの脱気された及び脱気されていない反応の結果を比較した表である。
図14】鈴木カップリング反応に対するpHの影響を評価する実験をまとめた表である。
図15A-15B】従来の手順に対する、本明細書に開示される合成方法の顕著な変化及び改善のまとめを集合的に表す。
図16】全体的反応の工程1の生成物のHPLC分析結果を表す。
図17】全体的反応の工程2の生成物のバッチのDMSO中のプロトンNMRを示す。
図18】化合物MB3のH NMRスペクトルを示す(図1参照)。
図19】化合物MB6(5)のH NMRを示す(図1参照)。
図20】化合物MB6(5)の結晶性形態IのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図21】化合物MB6(5)の結晶性形態Iの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを表すグラフである。
図22】化合物MB6(5)の熱重量分析(TGA)サーモグラムを表すグラフである。
図23】化合物MB6(5)の結晶性形態Iの動的水蒸気収着(DVS)パターンである。
図24】化合物MB6(5)の結晶性形態IIのXRPDパターンである。
図25】化合物MB6(5)の結晶性形態IIのDSCサーモグラムを表すグラフである。
図26】化合物MB6(5)の結晶性形態IIのTGAサーモグラムを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の例の実施形態の説明が以下に続く。
【0017】
プロセス
第1の例の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物
【化7】
を調製する方法である。
【0018】
第1の例の実施形態の第1の態様において、方法は、構造式(II)により表される化合物
【化8】
を、構造式(III)により表される化合物
【化9】
と、第1の溶媒中で、Pd触媒及び1種以上の無機塩基の存在下で、構造式(VII)により表される化合物を調製するのに好適な条件下で接触させること(式中、各Rは、水素、C~Cアルキルであるか、又は2つの基Rは、それらが結合している酸素原子と共に、5~7員環状アセタール部分を形成する)並びにそれにより構造式(VII)により表される化合物を得ることを含む。
【0019】
第2の態様において、1種以上の無機塩基は、炭酸、炭酸水素、酢酸、又は水酸化第四級アンモニウム、ナトリウム、カリウム、又はセシウムから選択される。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、第1の態様に関して上記で定義された通りである。
【0020】
第3の態様において、Pd触媒は、クロロ{[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-t-ブチルホスフィノ}(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)又はクロロ(クロチル)[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(II)から選択される。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1から第2の態様に関して上記で定義された通りである。
【0021】
第4の態様において、構造式(III)により表される化合物は、構造式(IIIB)により表される化合物:
【化10】
である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1から第3の態様に関して上記で定義された通りである。
【0022】
第5の態様において、無機塩基は、CsCO又はCsOH、例えば、CsCOである。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1から第4の態様に関して上記で定義された通りである。
【0023】
第6の態様において、Pd触媒はクロロ(クロチル)[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(II)である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1から第5の態様に関して上記で定義された通りである。
【0024】
第7の態様において、第1の溶媒は、エーテル溶媒、C~Cアルコール、又はそれらの組合せである。例えば、第1の溶媒は、単独又は水若しくはエタノールと組み合わせたMTBE、CPME、THF、ジオキサン、MeTHF、メタノールから選択される。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1から第6の態様に関して上記で定義された通りである。
【0025】
第8の態様において、Pd触媒負荷(catalyst load)は、0.5mol%~10mol%である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第7の態様に関して上記で定義された通りである。
【0026】
第9の態様において、無機塩基の量は、構造式(II)により表される化合物に対して0.5~2モル当量の塩基である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第8の態様に関して上記で定義された通りである。
【0027】
第10の態様において、構造式(VII)により表される化合物を調製するための好適な条件は、
-0.5mol%~3mol%のPd触媒負荷;
-構造式(II)により表される化合物に対して1.0~2.2モル当量の構造式(III)により表される化合物の量;
-構造式(II)により表される化合物に対して0.8~1.2総モル当量の塩基の無機塩基の量;
-第1の溶媒は、16部~21部のジオキサン及び2部~3部の水を含む;
-約55℃~約60℃の反応温度;並びに
-約7~8時間の反応時間
を含む。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1から第9の態様に関して上記で定義された通りである。
【0028】
第11の態様において、方法は、構造式(II)により表される化合物
【化11】
を調製する工程であって、構造式(IV)により表される化合物
【化12】
を、第2の溶媒中で、有機塩基の存在下で、構造式(II)により表される化合物を製造するのに好適な条件下で脱臭化水素することによる工程をさらに含む。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第10の態様に関して上記で定義された通りである。
【0029】
第12の態様において、有機塩基は、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第11の態様に関して上記で定義された通りである。
【0030】
第13の態様において、第2の溶媒はアセトニトリル(ACN)を含む。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第12の態様に関して上記で定義された通りである。
【0031】
第14の態様において、第2の溶媒は80%ACN/20%水である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第13の態様に関して上記で定義された通りである。
【0032】
第15の態様において、方法は、構造式(IV)により表される化合物
【化13】
を調製する工程であって、構造式(V)により表される化合物
【化14】
を、臭素(Br)と、第3の溶媒中で、臭化物塩の存在下で、構造式(IV)により表される化合物を調製するのに好適な条件下で反応させることによる工程をさらに含む。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第14の態様に関して上記で定義された通りである。
【0033】
第16の態様において、第3の溶媒は水を含み、臭化物塩は臭化ナトリウムである。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第15の態様に関して上記で定義された通りである。
【0034】
第17の態様において、第2の溶媒は、構造式(IV)により表される化合物に対して約11部のACN及び約4部のHOを含み、有機塩基はDIPEAであり、構造式(II)により表される化合物を調製するのに好適な条件は、
-構造式(IV)により表される化合物に対して約1モル当量のDIPEAの量;
-20℃~25℃の反応温度;及び
-2~3時間の反応時間
を含む。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第16の態様に関して上記で定義された通りである。
【0035】
第18の態様において、第3の溶媒は酢酸である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第17の態様に関して上記で定義された通りである。
【0036】
第19の態様において、構造式(V)により表される化合物をBrと反応させることは、20℃~30℃の温度で、12時間~16時間の時間実施される。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第18の態様に関して上記で定義された通りである。
【0037】
第20の態様において、方法は、構造式(V)により表される化合物
【化15】
を調製する工程であって、構造式(VI)により表される化合物
【化16】
を、第4の溶媒中で、アミド化剤により、第三級アミン有機塩基及びクロロギ酸エステルの存在下で、構造式(V)により表される化合物を製造するのに好適な条件下でアミド化することによる工程をさらに含む。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第19の態様に関して上記で定義された通りである。
【0038】
第21の態様において、アミド化剤は水酸化アンモニウムであり、第三級アミン有機塩基はN-メチルモルホリン(NMM)であり、クロロギ酸エステルは、以下の構造式
【化17】
により表されるクロロギ酸イソブチルである。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第20の態様に関して上記で定義された通りである。
【0039】
第22の態様において、第4の溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)又は2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)である。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第21の態様に関して上記で定義された通りである。
【0040】
第23の態様において、第4の溶媒はMeTHFであり、構造式(VI)により表される化合物をアミド化することは、0℃~5℃の温度で、3時間~4時間の時間実施される。第1の例の実施形態の値及び例の値の残りは、それらのそれぞれの第1~第22の態様に関して上記で定義された通りである。
【0041】
第2の例の実施形態において、本発明は、以下の構造式により表される化合物
【化18】
又はその塩である。
【0042】
構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I及びII並びに再結晶化方法:
用語「約」が、温度の数値を指す場合、特記されない限り、その数値が列挙された数値の±5℃の範囲を有することを意味することが理解されるべきである。例えば、記載される実施形態又は請求項が「約20℃」の温度を列挙する場合、これは、20℃±5℃、すなわち、15℃~25℃の温度を意味すると理解されるものとする。
【0043】
用語「約」が、時間の数値を指す場合、特記されない限り、その数値が列挙された数値の±5分の範囲を有することを意味することが理解されるべきである。例えば、記載される実施形態又は請求項が「約60分」の期間を列挙する場合、これは、60分±5分、すなわち、55分~65分の期間を意味すると理解されるものとする。
【0044】
用語「約」が、アルコール-対-水体積比の数値を指す場合、特記されない限り、xの数値が列挙された数値の±5%の範囲を有することを意味することが理解されるべきである。例えば、記載される実施形態又は請求項が「約70/30」のアルコール-対-水体積比を列挙する場合、これは、75/25~65/35のアルコール-対-水体積比を意味すると理解されるものとする。
【0045】
結晶性形態I及び結晶性形態IIと称される、構造式(VII)の化合物の結晶性形態が本明細書に提供される。
【0046】
本明細書で使用される「結晶性」又は「結晶」は、構成要素部分の間に一定の距離を有する、原子、イオン、又は分子(例えば、無水分子若しくはその塩、その溶媒和物、又は上記の組合せ)の反復する三次元パターンにより形成された均質な固体を指す。単位格子は、このパターン中の最も単純な繰り返し単位である。
【0047】
本明細書に提供される結晶性形態は、X線粉末回折(XRPD)分析における特性ピークに基づいて特定できる。XRPDは、散乱角の関数として、粉末又は微晶質材料により散乱されたX線、中性子、又は電子を測定する科学的技法である。特定の固体により作られる回折パターンは、典型的にはその固体に独特であり、その固体を特定する「指紋」として使用できるので、XRPDを使用して結晶性固体を特定及び特性化できる。例えば、基準XRPDパターン又はディフラクトグラムと実質的に一致するXRPDパターン又はディフラクトグラム(例えば、未知の試料などの試料により作られたパターン又はディフラクトグラム)を使用して、試料材料と基準材料の間の同一性を決定できる。XRPDディフラクトグラム中のピークの位置及び相対強度の両方が材料の特定の相及び本質を示す。
【0048】
本明細書に提供される結晶性形態は、単一の結晶性形態であり得るか、又は2種以上の異なる結晶性形態の混合物を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iは単一の結晶性形態として提供される。或いは、他の実施形態において、結晶性形態は、構造式(VII)により表される化合物の2種以上の結晶性形態の混合物を含み得る。
【0049】
本明細書で使用される「単結晶性形態」は、結晶性固体の単結晶又は複数の結晶のそれぞれが同じ結晶形態を有する結晶性固体の複数の結晶を指す。
【0050】
図20及び24は、それぞれ、本明細書に記載される結晶性形態I及びIIのXRPDパターンを示す。XRPDパターン又はディフラクトグラムを示す本明細書の1つ以上の図と「実質的に一致する」XRPDパターンは、本明細書に提供される1つ以上の図のXRPDパターンを与えた構造式(VII)により表される化合物の試料と、構造式(VII)により表される化合物の同じ結晶性形態を表すと当業者により考えられるだろうXRPDパターンである。そのため、実質的に一致するXRPDパターンは、図の1つのものと同一であり得るか、又は、おそらく、図の1つ以上とは幾分異なり得る。図の1つ以上と幾分異なるXRPDパターンは、必ずしも、本明細書に提示される回折パターンのラインのそれぞれを示さないことがあり、且つ/又はラインの外観若しくは強度のわずかな変化若しくはラインの位置のシフトを示し得る。これらの差異は、典型的には、データを得る際に関与する状態の差異又はデータを得るために使用される試料の純度の差異から生じる。当業者は、結晶性化合物の試料のXRPDパターンと本明細書に開示される対応するXRPDパターンとの比較により、結晶性化合物の試料が本明細書に開示される形態と同じ形態であるか又は異なる形態であるかを決定することが可能である。
【0051】
本明細書で明示されるあらゆる2θ角が明示された値±0.2°を意味することが理解されるべきである。例えば、記載される実施形態又は請求項が4.4°の2θを明示する場合、これは、4.4°±0.2°、すなわち、4.2°~4.6°の2θ角を意味すると理解されるものとする。
【0052】
本明細書に提供される結晶性形態I及び結晶性形態IIは、示差走査熱量測定(DSC)及び/又は熱重量分析(TGA)に基づいても特定することができる。DSCは、試料の温度を増加させるのに要する熱の量の違いが温度の関数として測定される熱分析技法である。DSCを使用して、試料の相転移などの物理的変換を検出できる。例えば、DSCを使用して、試料が、結晶化、融解又はガラス転移を経験する温度を検出できる。
【0053】
TGAは、材料の物理的及び化学的性質の変化が、増加する温度(一定の加熱速度により)又は時間の関数として(一定の温度及び/又は一定の質量減少により)測定される熱重量分析の方法である。TGAは、二次相転移などの物理現象、又は脱溶媒和及び/若しくは分解などの化学現象についての情報を提供できる。
【0054】
図21及び25は、それぞれ、本明細書に記載される結晶性形態I及びIIのDSCサーモグラムを示す。DSC又はTGAサーモグラムを示す本明細書の1つ以上の図と「実質的に一致する」DSC又はTGAサーモグラムは、本明細書に提供される1つ以上の図のDSC又はTGAサーモグラムを与えた構造式(VII)により表される化合物の試料と、構造式(VII)により表される化合物の同じ結晶性形態を表すと当業者により考えられるだろうDSC又はTGAサーモグラムである。
【0055】
本明細書で明示されたDSC又はTGAと関連するあらゆる温度は、明示された値±5℃又は以下を意味することが理解されるべきである。例えば、実施形態又は請求項が約184℃の吸熱ピークを明示する場合、これは、184℃±5℃又は以下、すなわち、179℃~189℃の温度を意味すると理解されるものとする。好ましい実施形態において、DSC又はTGA温度は、明示された値±3℃であり、より好ましい実施形態において、±2℃である。
【0056】
提供された結晶性形態Iは、動的水蒸気収着(DVS)により追加的に特性化でき、その場合、試料は湿度及び温度の様々な状態に曝され、試料の応答は重量測定法で測定される。DVS分析の結果は、詳細には、試料重量パーセントを相対湿度(RH)の関数として経時的に与える二重曲線、試料含水量をRHの関数として経時的に与える二重曲線、RHと関連して重量パーセントを与える曲線、又はRHと関連して含水量を与える曲線であり得る。そのようなデータを測定するのに有用な装置は当技術分野に公知であり、そのような装置のいずれも本開示による化合物を測定するために使用できる。特定の実施形態において、DVS分析は、一連の特定なRH値で走査することにより実施できる。そのため、本開示による特定の多形体は、具体的には5%又は10%RHのステップ間隔で0%から95%RHに走査してDVS分析で得られる代表的なグラフ及び/又はおおよそのピークに関連して特定及び記載され得る。
【0057】
図23は、本明細書に記載される結晶性形態IのDVSパターンを示す。DVSパターンを示す本明細書の1つ以上の図と「実質的に一致する」DVSパターンは、本明細書に提供される1つ以上の図のDVSパターンを与えた構造式(VII)により表される化合物の試料と、構造式(VII)により表される化合物の同じ結晶性形態を表すと当業者により考えられるだろうDVSパターンである。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される結晶性形態は、構造式(VII)により表される化合物により表される化合物の結晶性形態であって、その化合物が溶媒和物の形態である結晶性形態であり得る。本明細書で使用される「溶媒和物」は、溶質(例えば、構造式(VII)の化合物)と1種以上の溶媒(例えば、メタノール、エタノール、水)の相互作用により形成された化学化合物を指す。そのため、「溶媒和物」は、1種類の溶媒分子を含む溶媒和物及び2種以上の溶媒分子を含む溶媒和物(混合溶媒和物又は共溶媒和物(co-solvates)を含む。典型的には、本明細書に記載される溶媒和物中の1種以上の溶媒は有機溶媒又は有機溶媒の組合せであるが、水も水和物と呼ばれる溶媒和物を形成し得る。
【0059】
形態I
第3の例の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態であり、結晶性形態は形態Iであり、4.6°、22.8°、23.2°、及び24.4°の2θ角のX線粉末回折ピークを;4.6°、20.0°、22.8°、23.2°、及び24.4°から選択される2θ角の少なくとも4つのX線粉末回折ピークを;又は4.6°、19.0°、20.0°、22.8°、23.2°、23.7°、24.4°、及び27.9°から選択される2θ角の少なくとも5つのX線粉末回折ピークを特徴とする。第3の例の実施形態のいくつかの態様において、結晶性形態Iは、図20に表されるものと実質的に一致するX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0060】
結晶性形態Iは、融解と一致する約225℃の鋭い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とし得る。第3の実施形態のいくつかの態様において、DSCサーモグラムは図21のものと実質的に一致する。第3の実施形態のいくつかの態様において、TGAサーモグラムは図22のものと実質的に一致する。
【0061】
結晶性形態Iは、0から90%RHで可逆的0.12%w/w水吸着を表す動的水蒸気収着パターンを追加的に特徴とし得る。第3の実施形態のいくつかの態様において、DVSパターンは図23に示されるものと実質的に一致する。
【0062】
形態II
第4の例の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態であり、結晶性形態は形態IIであり、9.9°、19.2°、22.4°、及び24.4°の2θ角のX線粉末回折ピークを;9.9°、19.2°、22.4°、23.5°、及び24.4°から選択される2θ角の少なくとも4つのX線粉末回折ピークを;又は9.9°、19.2°、21.3°、21.9°、22.4°、23.5°、24.4°、及び29.2°から選択される2θ角の少なくとも5つのX線粉末回折ピークを特徴とする。第4の実施形態のいくつかの態様において、結晶性形態VIは、図24に表されるものと実質的に一致するX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0063】
結晶性形態IIは、脱溶媒和と一致する約112℃の幅広い吸熱ピーク及び融解と一致する約225℃の鋭い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とし得る。第4の実施形態のいくつかの態様において、DSCサーモグラムは図25のものと実質的に一致する。第4の実施形態のいくつかの態様において、TGAサーモグラムは図26のものと実質的に一致する。
【0064】
結晶性形態IIは、構造式(VII)により表される化合物により表される化合物の結晶性形態であって、その化合物が溶媒和物の形態である結晶性形態であり得る。例えば、構造式(VII)の化合物はメタノール溶媒和物である。
【0065】
形態Iを単離する再結晶化手順:
第5の例の実施形態において、本発明は、構造式(VII)により表される化合物
【化19】
の結晶性形態Iを調製する方法であって、
(a)構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態IIを、約18体積の4-メチル-2-ペンタノン(MIBK)と接触させて、混合物を形成すること;(b)工程(a)の混合物を約80~85℃に加熱して、加熱された混合物を形成すること;(c)工程(b)の加熱された混合物に、任意選択でSiDMTを加えること;(d)加熱された混合物を約80~85℃の温度で約4.5時間維持すること;(e)加熱された混合物を濾過して、濾液を得ること;(f)約80~85℃の温度のMIBKを濾液に加えること;(g)濾液を約20~25℃に冷却することにより、濾液中の形態Iの核形成を誘導すること;(h)0~5℃の最終温度での濾液の制御された冷却結晶化により、形態Iを結晶化させること;及び(i)結晶性形態Iを濾液から単離することを含む方法である。一態様において、結晶性形態Iを濾液から単離することは濾過により実施される。
【0066】
定義
本発明の化合物は、上記で一般的に記載されたものを含み、本明細書に開示されるクラス、サブクラス、及び種によりさらに表される。本明細書で使用される通り、特記されない限り以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的には、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CASバージョン,Handbook of Chemistry and Physics 75thEdに従って特定される。さらに、有機化学の一般原則は、“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999及び“March’s Advanced Organic Chemistry”,5thEd.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley&Sons,New York:2001に記載されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0067】
本明細書内で特記されない限り、本明細書で使用される命名法は、一般的に、その例示的な化学構造名及び化学構造を命名する規則に関して本明細書に参照により組み込まれるNomenclature of Organic Chemistry,Sections A,B,C,D,E,F,and H,Pergamon Press,Oxford,1979に述べられている例及び規則に従っている。任意選択で、化合物の名称は、化学命名プログラム:ACD/ChemSketch,Version 5.09/September 2001,Advanced Chemistry Development,Inc.,Toronto,Canadaを使用して生成され得る。
【0068】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸、及びキラル面を有し得て(例えば、E.L.Eliel and S.H.Wilen,Stereo-chemistry of Carbon Compounds,John Wiley&Sons,New York,1994,pages 1119-1190に記載される通り)、ラセミ体、ラセミ混合物として、及び個別のジアステレオマー又はエナンチオマーとして存在するが、光学異性体を含む、可能性があるその全ての異性体及び混合物は本発明に含まれる。
【0069】
本明細書で使用される通り、「エーテル溶媒」は、C-O-C部分を含む有機溶媒である。例としては、tert-アミルエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジ-tert-ブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、1,4-ジオキサン(ジオキサン)、エチルtert-ブチルエーテル、メトキシエタン、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、メチルtert-ブチルエーテル(MBTE)、モルホリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF(MeTHF)、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロピラン、2,2,5,5-テトラメチルテトラヒドロフランがある。
【0070】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、特記されない限り、典型的にはC~C12、好ましくはC~Cの直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。したがって、「C~Cアルキル」は、1~6(例えば、1、2、3、4、5又は6)個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、及びt-ブチルがあるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、アルキルが上記で定義されている「アルキル-O-」基を意味する。アルコキシの例としてはメトキシ及びエトキシがある。
【0072】
本明細書で使用される通り、用語「アルケニル」は、2~12個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する飽和直鎖又は分岐鎖の非環式炭化水素を意味する。アルケニル基は、1つ以上の置換基により任意選択で置換され得る。用語「アルケニル」又はその構造描写のいずれも、「シス」及び「トランス」又は、或いは、「E」及び「Z」配置の炭素-炭素二重結合を有するラジカルを包含する。アルケニル基が2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む場合、各炭素-炭素二重結合は、独立に、シス若しくはトランス二重結合、又はそれらの混合物である。
【0073】
本明細書で使用される用語「アミノ」はモノ-及びジアルキルアミノ基を含み、式-N(R)を有する化学部分を指し、ここで、各Rは、水素及びC~Cアルキルから独立に選択される。
【0074】
本明細書で使用される単独又は組み合わせた用語「アリール」は、垂れ下がるように共に結合していても縮合していてもよい1つ以上の環を含む炭素環式芳香族系を意味する。特定の実施形態において、アリールは、1、2、又は3つの環である。一態様において、アリールは6~12個の環原子を有する。用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アンスリル及びアセナフチルなどの芳香族ラジカルを包含する。アリール基は、本明細書に定義及び記載される通り任意選択で置換され得る。
【0075】
本明細書で使用される用語「ハロ」又は「ハロゲン」はハロゲンを意味し、例えば、非限定的に、放射性及び非放射性形態の両方のフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードなどを含む。好ましい実施形態において、ハロは、フルオロ、クロロ及びブロモからなる群から選択される。
【0076】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、1つ以上のF、Cl、Br、又はIにより置換されたアルキルを含み、ここで、アルキルは上記で定義されている。
【0077】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、S及びNから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子)を含む芳香族基を指す。ヘテロアリール基は、単環式でも多環式でもあり得て、例えば、1つ以上の炭素環式芳香族基又は他の単環式ヘテロアリール基に縮合した単環式ヘテロアリール環がある。本発明のヘテロアリール基は、1つ以上のオキソ部分により置換された環系も含み得る。一態様において、ヘテロアリールは、5~15個の環原子、好ましくは、5又は6個の環原子を有する。ヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プリニル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、ジヒドロキノリル、テトラヒドロキノリル、ジヒドロイソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ベンゾフリル、フロピリジニル、ピロロピリミジニル(pyrolopyrimidinyl)、及びアザインドリルがあるが、これらに限定されない。上記ヘテロアリール基は、C結合でもN結合でもよい(そのようなものが可能な場合)。例えば、ピロールから誘導された基は、ピロール-1-イル(N結合)でもピロール-3-イル(C結合)でもあり得る。
【0078】
「ヒドロキシル」は-OHを意味する。
【0079】
「オキソ」は=Oを意味する。
【0080】
「スルフヒドリル」は-SHを意味する。
【0081】
「シアノ」は-CNを意味する。
【0082】
「チオアルコキシ」及び「チオアルキル」は、それぞれ、-S-アルコキシ及び-S-アルキルを意味し、ここで、アロコキシ(alokoxy)及びアルキルは上記で定義されている。
【0083】
「ピリミジニル」は、置換であれ非置換であれ、ピリミジン環から誘導されたラジカルである。
【化20】
【0084】
「ジオキサン」は以下の構造式により表される化合物である。
【化21】
【0085】
本明細書で使用される用語「アセタール」は、以下の構造式により表される部分を指し
【化22】
式中、「原子」は、炭素又はホウ素など、2つの酸素原子と共有結合を形成できるあらゆる原子を意味し、波線は他の原子への結合点を表す。環状アセタール部分は、「原子」がそれに結合している2つの酸素原子と共に環式基を形成するアセタールである。環状アセタール部分の例は、以下の構造式により表される基:
【化23】
である。
【0086】
本明細書で使用される通り、「無機塩基」は有機部分を含まない塩基を指す。例としては、金属(NH 、Li、K、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Srなど)水酸化物、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩及び重炭酸塩がある。追加の例としては、Na、K、又はCs炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及び水酸化物がある。無機塩基のさらなる例は第四級アンモニウム塩である。いくつかの例の実施形態において、無機塩基はCsOH又はCsCOである。
【0087】
「有機塩基」は、塩基の認められている定義(Arrhenius、Bronsted又はLewis)のいずれか1つにしたがって、塩基として作用する有機塩基である。
【0088】
本明細書で使用される「Pd触媒」は、事前形成かPd含有材料及び別なリガンドの添加によりインサイチュで形成されるかを問わず、構造式(VII)により表される化合物を製造する、構造式(II)により表される化合物と(III)により表される化合物の間の反応を促進することが可能な、あらゆるPd含有材料を指す。そのような触媒の例は、クロロ{[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-t-ブチルホスフィノ}(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)又はクロロ(クロチル)[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(II)から選択されるPd触媒である。
【0089】
本発明の化合物上の置換基及び置換パターンが当業者により選択されて、化学的に安定であり、当技術分野に公知である技法により、並びに以下に述べられる方法により容易に合成できる化合物を提供できることが理解される。一般に、用語「置換されている」は、用語「任意選択で」が前にあるかどうかを問わず、指定された部分の1つ以上の水素が好適な置換基に置き換えられていることを意味する。特記されない限り、「任意選択で置換されている基」は、基の置換可能な各位置で好適な置換基を有し得て、あらゆる所与の構造中の2つ以上の位置が、明示された群から選択される2つ以上の置換基により置換され得る場合、置換基は、全ての位置で同じことも異なることもある。或いは、「任意選択で置換されている基」は未置換(unsubstitued)であり得る。
【0090】
あらゆるアルキル、アリール又はヘテロアリール上の例の置換基は、-OH、-SH、ニトロ(-NO)、ハロゲン、アミノ、シアノ、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C12アルコキシ、C~C12ハロアルキル、C~C12ハロアルコキシ及びC~C12チオアルコキシからなる群から選択され得る。アルキル上の例の置換基としては、上記置換基及びオキソがある。一実施形態において、置換基は式-N(R)を有するアミノ基であり、式中、各Rは水素及びC~Cアルキルから独立に選択される。
【0091】
医薬組成物
第6の例の実施形態において、本開示は、第3の実施形態の態様のいずれか1つによる構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物に関する。例えば、医薬組成物は、2θ角4.6°、22.8°、23.2°、及び24.4°のX線粉末回折ピークを特徴とする構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I並びに薬学的に許容できる担体を含む。
【0092】
用語「薬学的に許容できる担体」は、医薬組成物、すなわち対象に投与されることが可能な剤形の形成を可能にするために有効成分と混合される非毒性の溶媒、分散化剤、賦形剤、補助剤又は他の材料を意味する。「薬学的に許容できる担体」は、共に製剤される化合物の活性を損なうべきではない。薬学的に許容できる担体は当技術分野に周知である。
【0093】
本開示の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容できる担体、補助剤又はビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩又は電解質、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリラート、蝋、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂があるが、これらに限定されない。
【0094】
本開示の医薬組成物は、経口的、非経口的(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)、吸入スプレーにより、外用により、直腸内、鼻腔内、頬側、膣内又は埋込型リザーバーにより投与できる。いくつかの実施形態において、提供される医薬組成物は経口投与される。
【0095】
本明細書で使用される用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、硝子体内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、腹腔内病変内及び頭蓋内注射又は注入技法を含む。特定の実施形態において、医薬組成物は、経口、皮下、腹腔内又は静脈内投与される。滅菌された注射用形態の本開示の医薬組成物は、水性又は油性懸濁剤であり得る。これらの懸濁剤は、当技術分野に公知である技法により、好適な分散化剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して製剤され得る。滅菌された注射用調合物は、また、例えば1,3-ブタンジオール溶液としての、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒中の滅菌された注射用液剤又は懸濁剤であり得る。利用され得る許容できるビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液及び等張性塩化ナトリウム液がある。さらに、滅菌された不揮発油は、溶媒又は懸濁媒として従来利用されている。
【0096】
本開示の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤又は液剤を含むがこれらに限定されない任意の経口的に許容できる剤形で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体として、ラクトース及びトウモロコシデンプンがある。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥トウモロコシデンプンがある。水性懸濁剤が経口使用のために必要とされる場合、有効成分は乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされる。所望の場合、特定の甘味剤、着香剤、又は着色剤も添加され得る。いくつかの実施形態において、提供される経口製剤は、即時放出又は持続/遅延放出のために製剤される。いくつかの実施形態において、組成物は、錠剤、ロゼンジ剤及び香錠をはじめとして、頬側又は舌下投与に好適である。提供される化合物は、マイクロカプセル化形態であってもよい。
【0097】
錠剤又はカプセル剤などの経口製剤に使用するのに好適な具体的な薬学的に許容できる担体としては、微結晶セルロース(Avicel PH101)、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)、コリドン30パウダー(ポリビニルピロリドン、ポビドン)、コロイド状二酸化ケイ素M5-P、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース(Avcel PH102)、ラウリル硫酸ナトリウム(Kolliphor SLS Fine)及びコロイド状二酸化ケイ素M5-Pがあるが、これらに限定されない。上記で列記された担体のそれぞれは、単独でも任意の組合せでも経口製剤に使用できる。
【0098】
錠剤又はカプセル剤などの経口製剤に使用するのに好適なさらなる薬学的に許容できる担体としては、微結晶セルロース((Avicel PH112)、クロスポビドン(polyplasdone XL-10)、コロイド状シリコーンジオキシド(silicone dioxide)(Cab-O-Sil M-5P)、タルク、デンプン及びステアリン酸カルシウムがあるが、これらに限定されない。
【0099】
本開示の医薬組成物は鼻腔内エアロゾル又は吸入によっても投与され得る。
【0100】
本開示の医薬組成物中の構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iの量は、対象のCRM1活性に関連する障害を測定可能な程度に治療又は予防するのに有効であるようなものである。本明細書で使用される用語「対象」はヒト対象でも動物でもあり得る。
【0101】
薬学的に許容できる担体材料と組み合わせて単一剤形の医薬組成物を生みだすことができる結晶性形態Iの量は、治療される宿主及び/又は特定の投与様式によって変わるだろう。一実施形態において、医薬組成物は、0.01~200mgの用量の構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iが、これらの組成物を服用する患者に投与できるように製剤されるべきである。別の実施形態において、用量は約0.5~約100mgである。用量は1日1回又は1日あたり複数回投与でき、所与の治療サイクルにわたり週に1回又は1週あたり複数回(例えば1日目、3日目及び5日目)投与できる。
【0102】
任意の特定の対象(例えば、患者)のための具体的な用量及び治療レジメンが、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与の時間、排泄速度、薬物組合せ、及び治療にあたる医師の判断並びに治療されている特定の疾患の重症度を含む種々の因子に依存することも理解されるべきである。
【0103】
対象の病態の改善と同時に、必要な場合、維持量の本開示の医薬組成物が投与され得る。その後に、投与の用量若しくは頻度又は両方が、症状の関数として、症状が所望のレベルに軽減された場合の改善された状態が維持されるレベルに低減され得る。しかし、対象は、疾患症状の再発時に、長期的に断続的な治療を必要とし得る。
【0104】
治療の方法並びに結晶性形態I及びそれを含む医薬組成物の使用(used)
本明細書に開示される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I及びそれを含む医薬組成物は、一般的にCRM1の阻害に有用であり、したがって、CRM1の活性と関連する1種以上の障害を治療するのに有用である。そのため、第7の実施形態において、本開示は、CRM1の活性と関連する障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療上有効な量の結晶性形態I又は結晶性形態I及び本明細書に記載される薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。結晶性形態I及びそれを含む医薬組成物は、例えばインビトロ若しくはエクスビボで培養している細胞に投与されて、又は例えばインビボで対象に投与されて、本明細書で以下に記載されるものを含む種々の障害を治療、予防、及び/又は診断できる。
【0105】
結晶性形態I及びそれを含む医薬組成物のCRM1の阻害剤としての活性は、インビトロ、インビボ、又は細胞株中でアッセイされ得る。構造式Iにより表される化合物の結晶性形態IなどのCRM1の阻害剤をアッセイするための詳細な条件は国際公開第14/205389号パンフレットに述べられている。
【0106】
用語「治療する」又は「治療すること」は、症状を緩和し、一時的若しくは永続的に症状の原因を除去し、又は指名される障害若しくは病態の症状の出現を予防若しくは緩徐化することを意味する。
【0107】
本明細書で使用される用語「CRM1媒介性」障害若しくは病態又は「CRM1活性と関連する障害」は、CRM1が役割を果たすと知られているあらゆる疾患又は他の有害病態を意味する。したがって、本開示の別の実施形態は、CRM1が役割を果たすと知られている1種以上の疾患を治療すること、又はその重症度を減らすことに関する。いくつかの実施形態において、本開示は、対象のp53、p73、p21、pRB、p27、INB、NFNB、c-Abl、FOXOタンパク質、COX-2、又はHDAC(ヒストンデアセチラーゼ)の発現又は活性と関連する疾患を治療する方法であって、対象に、治療上有効な量の本明細書に記載される結晶性形態Iを投与することを含む方法を提供する。別の実施形態において、本開示は、増殖性疾患(例えば、癌)、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス感染、眼科疾患若しくは神経変性疾患から選択される疾患若しくは病態を治療するか、又はその重症度を減らす方法であって、それを必要とする患者に、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は形態I及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。より具体的な実施形態において、本開示は、癌を治療するか、又はその重症度を減らす方法に関する。上記障害の具体例は以下に詳細に述べられる。
【0108】
用語「治療上有効な量」は、障害若しくは病態の1つ以上の症状を治療するか、又はその重症度を減らすのに有効である構造式(VII)により表される化合物の結晶形態Iの量を意味する。創傷治癒を促進する場合には、治療上有効な量は、創傷の治癒を促進する量である。
【0109】
本明細書で使用される通り、用語「予防」又は「予防的な」は、疾患の発症の前に疾患を予防するか、又は疾患に対する抵抗性を増加させるためにとられる措置、並びに疾患の発症前にとられる場合疾患の症状を改善する措置を指す。予防は、疾患の再発を防ぐためにとられる措置も含む。
【0110】
用語「予防上有効な量」は、構造式(VII)により表される化合物により治療可能な病態の予防に有効である、構造式(VII)により表される化合物の結晶形態Iの量を意味する。
【0111】
本明細書で使用される通り、「創傷治癒を促進すること」は、創傷を有する対象を治療し、部分的又は完全に創傷の治癒を達成することを意味する。創傷治癒を促進することは、例えば、下記の1つ以上を意味し得る:表皮閉鎖を促進すること;真皮の移動を促進すること;真皮中の皮膚閉鎖を促進すること;創傷治癒合併症、例えば、表皮の過形成及び接着を減少させること;創傷離開を減少させること;並びに適切な痂皮形成を促進すること。
【0112】
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象の創傷治癒を促進する方法であって、それを必要とする対象に、治療上有効な量の構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0113】
本明細書に記載される構造式VIIにより表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物により治療可能な癌としては、血液系悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫を含む骨髄腫、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性疾患)及び固形腫瘍(前立腺、乳房、肺、結腸、膵臓、腎臓、卵巣などの癌腫並びに軟部組織及び骨肉腫、及び間質腫瘍)があるが、これらに限定されない。乳癌(BC)は、基底細胞様乳癌(BLBC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)及びBLBCとTNBCの両方である乳癌を含み得る。さらに、乳癌は、浸潤性又は非浸潤性乳管又は小葉癌、乳房の腺管、髄様、粘液、乳頭、篩状癌、男性乳癌、再発性又は転移性乳癌、乳房の葉状腫瘍及び乳首のパジェット病を含み得る。一実施形態において、癌は多発性骨髄腫である。
【0114】
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物により治療可能な炎症性疾患としては、多発性硬化症、関節リウマチ、変性関節疾患、全身性狼瘡、全身性強皮症、血管炎症候群(小、中、及び大血管)、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、粘液性大腸炎、潰瘍性大腸炎、胃炎、敗血症、乾癬及び他の皮膚の炎症性疾患(湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、蕁麻疹、強皮症、及び急性炎症性成分を有する皮膚病、天疱瘡、類天疱瘡、アレルギー性皮膚炎など)、並びに蕁麻疹症候群があるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物により治療可能なウイルス性疾患としては、急性熱性咽頭炎、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、小児胃腸炎、コクサッキー感染症、伝染性単核細胞症、バーキットリンパ腫、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌、原発性HSV-1感染(例えば、小児の歯肉口内炎、成人の扁桃炎及び咽頭炎、角結膜炎)、不顕性HSV-1感染(例えば、口唇ヘルペス及び単純疱疹)、原発性HSV-2感染、不顕性HSV-2感染、無菌性髄膜炎、伝染性単核細胞症、巨細胞性封入体症、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病、原発性滲出性リンパ腫、AIDS、インフルエンザ、ライ症候群、麻疹、感染後脳脊髄炎、おたふくかぜ、異型増殖性病変(例えば、尋常性、扁平、足底及び肛門性器疣贅、喉頭パピローマ、疣贅状表皮発育異常症)、子宮頸癌、扁平上皮癌、クループ、肺炎、細気管支炎、感冒、ポリオ、狂犬病、インフルエンザ様症候群、肺炎を伴う重症細気管支炎、風疹、先天性風疹、水痘、及び帯状疱疹があるが、これらに限定されない。本開示の化合物により治療可能なウイルス性疾患としては、B型肝炎及びC型肝炎を含む慢性ウイルス感染もある。さらに、本開示の化合物により治療可能なウイルス性疾患としては、コロナウイルスにより起こされる感染、例えば、SARS、MERS、及びSARS-CoV-2がある。
【0116】
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物により治療可能な例示的な眼科障害としては、黄斑浮腫(糖尿病性及び非糖尿病性黄斑浮腫)、加齢黄斑変性滲出型及び萎縮型、加齢性(aged)円板状黄斑変性、嚢胞様黄斑浮腫、眼瞼浮腫、網膜浮腫、糖尿病性網膜症、網脈絡膜炎、血管新生黄斑症、血管新生緑内障、ぶどう膜炎、虹彩炎、網膜血管炎、眼内炎、全眼球炎、転移性眼炎、脈絡膜炎、網膜色素上皮炎、結膜炎、毛様体炎、強膜炎、上強膜炎、視神経炎、球後視神経炎、角膜炎、眼瞼炎、滲出性網膜剥離、角膜潰瘍、結膜潰瘍、慢性貨幣状角膜炎、低酸素症又は虚血と関連する眼病、未熟児網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、ポリープ脈絡膜血管症、網膜血管腫状増殖、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、コーツ病、家族性滲出性硝子体網膜症、脈なし病(高安病)、イールズ病、抗リン脂質抗体症候群、白血病性網膜症、血液過粘稠症候群、マクログロブリン血症、インターフェロンに関連する網膜症、高血圧性網膜症、放射線網膜症、角膜上皮幹細胞疲弊症又は白内障があるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物により治療可能な神経変性疾患としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びハンチントン病、並びに筋萎縮性側索硬化症(ALS/ルー・ゲーリック病)があるが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、肺線維症、肝線維症、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎(PKD)及び他の腎障害を含む、異常な組織増殖及び線維形成の障害を治療するためにも使用され得る。
【0119】
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、肥満及び過食症など、摂食に関連する障害を治療するためにも使用され得る。
【0120】
別の実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、喘息、気管支炎、肺線維症、アレルギー性鼻炎、酸素中毒、肺気腫、慢性気管支炎、急性呼吸窮迫症候群、及びあらゆる慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含むアレルギー及び呼吸器疾患を治療又は予防するために使用され得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、CRM1活性と関連し、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iにより治療可能な障害又は病態は、β-サラセミア、筋ジストロフィー、関節炎、例えば、変形性関節症及び関節リウマチ、強直性脊椎炎(ankylosing spondilitis)、外傷性脳損傷、脊髄損傷、敗血症、リウマチ性疾患、癌 アテローム性動脈硬化、1型糖尿病、2型糖尿病、レプトスピラ症腎疾患、緑内障、網膜疾患、加齢、頭痛、疼痛、複合性局所疼痛症候群、心肥大、筋肉消耗、異化障害、肥満、胎児発育遅延、高コレステロール血症、心疾患、慢性心不全、虚血/再潅流、脳卒中、脳動脈瘤、狭心症、肺病、嚢胞性線維症、酸誘発性肺損傷、肺高血圧、喘息、慢性閉塞性肺疾患、シェーグレン症候群、ヒアリン膜症、腎臓病、糸球体疾患、アルコール性肝疾患、腸疾患、腹膜子宮内膜症、皮膚疾患、鼻腔内副鼻腔炎、中皮腫、無汗性外胚葉形成異常症(anhidrotic ecodermal dysplasia)-ID、ベーチェット病、色素失調症、結核、喘息、クローン病、大腸炎、眼のアレルギー、虫垂炎、パジェット病、膵炎、歯周病(periodonitis)、子宮内膜症、炎症性腸疾患、炎症性肺疾患、シリカ誘発性疾患、睡眠時無呼吸、AIDS、HIV-1、自己免疫疾患、抗リン脂質症候群、狼瘡、ループス腎炎、家族性地中海熱、遺伝性周期性発熱症候群、心理社会的ストレス疾患、神経病理疾患、家族性アミロイドポリニューロパチー、炎症性神経障害、パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、白内障、又は難聴である。
【0122】
他の実施形態において、CRM1活性と関連する障害又は病態は、頭部損傷、ぶどう膜炎、炎症性疼痛、アレルゲン誘発性喘息、非アレルゲン誘発性喘息、糸球体腎炎、潰瘍性大腸炎、壊死性小腸結腸炎、反復性発熱を伴う高免疫グロブリンD血症(HIDS)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、クリオピリン関連周期性症候群、マックル・ウェルズ症候群(蕁麻疹難聴アミロイドーシス)、家族性寒冷蕁麻疹、新生児発症多臓器炎症性疾患(NOMID)、周期性発熱、アフタ性口内炎、咽頭炎及び腺炎(PFAPA症候群)、ブラウ症候群、化膿性無菌性関節炎、壊疽性膿皮症ざ瘡(PAPA)、インターロイキン-1-受容体拮抗物質欠損症(DIRA)、くも膜下出血、多発性嚢胞腎、移植、臓器移植、組織移植、骨髄異形成症候群、刺激物誘発性炎症、植物刺激物誘発性炎症、ツタウルシ/ウルシオール油誘発性炎症、化学的刺激物誘発性炎症、蜂刺傷誘発性炎症、虫刺され誘発性炎症、日焼け、熱傷、皮膚炎、内毒素血症、肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、アルコール性肝炎、又は寄生虫感染により起こされる腎障害である。
【0123】
さらなる態様において、本開示は、CRM1活性と関連する障害の治療のための医薬品の製造のための、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物の使用に関する。本開示は、CRM1活性と関連する障害の治療に使用するための、本明細書に記載される結晶性形態I又は医薬組成物にも関する。CRM1活性と関連する障害の具体例は本明細書に詳細に述べられている。
【0124】
なおさらなる態様において、本開示は、対象のp53、p73、p21、pRB、p27、INB、NFNB、c-Abl、FOXOタンパク質、COX-2又はHDACの発現又は活性と関連する疾患の治療のための医薬品の製造のための、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物の使用に関する。いくつかの実施形態において、本開示は、癌及び/又は腫瘍性疾患、血管新生、自己免疫疾患、炎症性障害及び/又は疾患、エピジェネティクス、ホルモンの障害及び/又は疾患、ウイルス性疾患、神経変性障害及び/又は疾患、創傷、並びに眼科障害のいずれかの治療のための医薬品の製造における、本明細書に記載される結晶性形態I又は医薬組成物の使用に関する。
【0125】
いくつかの実施形態において、本開示は、生体試料中のCRM1を阻害する方法であって、生体試料を、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物と接触させるか、又は患者に、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0126】
腫瘍性疾患
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、腫瘍性疾患を治療するために使用できる。「腫瘍性疾患」は、自律的増殖又は複製の能力、例えば、増殖性細胞成長を特徴とする異常な状態又は状況を有する細胞を特徴とする疾患又は障害である。例示的な腫瘍性疾患としては、癌腫、肉腫、転移性障害、例えば、前立腺、脳、骨、結腸、肺、乳房、卵巣、及び肝臓由来から生じる腫瘍、造血器腫瘍性障害、例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び他の悪性形質細胞障害、及び転移性腫瘍がある。多く見られる癌としては、乳癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、肝臓癌、及び膵臓癌がある。化合物による治療は、腫瘍性障害の少なくとも1つの症状を改善する、例えば、細胞増殖の減少、腫瘍量の減少などに有効である量であり得る。
【0127】
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、例えば、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、及びその転移を含む癌の予防及び治療に、並びにリ・フラウメニ症候群、家族性乳房-卵巣癌(BRCA1又はBRAC2変異)症候群などの家族性癌症候群において有用である。本明細書に記載される結晶性形態I又は医薬組成物は、非固形癌の治療にも有用である。例示的な固形腫瘍としては、肺、乳房、リンパ、胃腸(例えば、結腸)、及び泌尿生殖器(例えば、腎、尿路上皮、又は精巣腫瘍)管、咽頭、前立腺、及び卵巣のものなど、種々の器官系の悪性腫瘍(例えば、肉腫、腺癌、及び癌腫)がある。例示的な腺癌としては、結腸直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺の非小細胞癌、及び小腸の癌がある。
【0128】
National Cancer Instituteにより記載される例示的な癌としては、急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、小児期;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児期;AIDS関連リンパ腫;AIDS関連悪性腫瘍;肛門癌;星状細胞腫、小児期小脳;星状細胞腫、小児期大脳;胆管癌、肝外;膀胱癌;膀胱癌、小児期;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹グリオーマ、小児期;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹グリオーマ、小児期;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児期;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性グリオーマ、小児期;脳腫瘍、上衣腫、小児期;脳腫瘍、髄芽細胞腫、小児期;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児期;脳腫瘍、視経路及び視床下部グリオーマ、小児期;脳腫瘍、小児期(他);乳癌;乳癌及び妊娠;乳癌、小児期;乳癌、男性;気管支腺腫/カルチノイド、小児期;カルチノイド腫瘍、小児期;カルチノイド腫瘍、胃腸;癌腫、副腎皮質;癌腫、島細胞;原発不明癌;中枢神経系リンパ腫、原発;小脳星状細胞腫、小児期;大脳星状細胞腫/悪性グリオーマ、小児期;子宮頸癌;小児癌;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱鞘の明細胞肉腫;結腸癌;結腸直腸癌、小児期;皮膚T細胞(T-ceIl)リンパ腫;子宮内膜癌;上衣腫、小児期;上皮癌、卵巣;食道癌;食道癌、小児期;ユーイングファミリー腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児期;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼癌、眼内メラノーマ;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(gastric)(胃(stomach))癌;胃(gastric)(胃(stomach))癌、小児期;消化管カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児期;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛性腫瘍;グリオーマ、小児脳幹;グリオーマ、小児視経路及び視床下部;有毛細胞白血病;頭頸部癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(原発);肝細胞(肝臓)癌、小児期(原発);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、小児期;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部及び視経路グリオーマ、小児期;眼内メラノーマ;島細胞癌(膵臓内分泌部);カポジ肉腫;腎臓癌;喉頭癌;喉頭癌、小児期;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児期;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児期;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、有毛細胞;口唇口腔癌;肝臓癌、成人(原発性);肝臓癌、小児期(原発性);肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ芽球性白血病、成人急性;リンパ芽球性白血病、小児期急性;リンパ球性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、中枢神経系(原発);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン、小児期;リンパ腫、妊娠中のホジキン;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児期;リンパ腫、妊娠中の非ホジキン;リンパ腫、原発中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム;男性乳癌;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、小児期;悪性胸腺腫;髄芽細胞腫、小児期;メラノーマ;メラノーマ、眼内;メルケル細胞癌;中皮腫、悪性;原発不明転移性扁平上皮性頸部癌;多発性内分泌腫瘍症候群、小児期;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍;菌状息肉症;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児期急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔癌及び副鼻腔癌;鼻咽頭癌;鼻咽頭癌、小児期;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児期;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;口腔癌、小児期;口腔及び口唇癌;中咽頭癌;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌、小児期;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、小児期;膵臓癌、膵島細胞;副鼻腔及び鼻腔癌;副甲状腺癌;陰茎癌;褐色細胞腫;松果体及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児期;下垂体腫瘍;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠及び乳癌;妊娠及びホジキンリンパ腫;妊娠及び非ホジキンリンパ腫;原発中枢神経系リンパ腫;原発肝臓癌、成人;原発肝臓癌、小児期;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;腎細胞癌、小児期;腎盂及び尿管、移行上皮癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児期;唾液腺癌;唾液腺癌、小児期;肉腫、ユーイングファミリー腫瘍;肉腫、カポシ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児期;肉腫、軟部組織、成人;肉腫、軟部組織、小児期;セザリー症候群;皮膚癌;皮膚癌、小児期;皮膚癌(メラノーマ);皮膚癌、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟部肉腫、成人;軟部肉腫、小児期;原発不明扁平上皮性頸部癌、転移性;胃(胃)癌;胃(胃)癌、小児期;テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児期;T細胞リンパ腫、皮膚;精巣癌;胸腺腫、小児期;胸腺腫、悪性;甲状腺癌;甲状腺癌、小児期;腎盂と尿管の移行上皮癌;絨毛性腫瘍、妊娠性;原発部位不明、癌、小児期;小児期の稀な癌;尿管及び腎盂、移行上皮癌;尿道癌;子宮肉腫;膣癌;視経路及び視床下部グリオーマ、小児期;外陰癌;ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症;並びにウィルムス腫がある。
【0129】
さらなる例示的な癌としては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)がある。なおさらなる例示的な癌としては、子宮頸癌、B細胞ALL、T細胞ALL、B又はT細胞リンパ腫、肥満細胞癌、膠芽腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びリヒター症候群がある。
【0130】
例示的な肉腫としては、線維肉腫、胞巣状軟部肉腫(ASPS)、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、軟骨肉腫、滑膜肉腫、脊索腫、紡錘細胞肉腫、組織球腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、神経外胚葉性肉腫、葉状/骨原性肉腫及び軟骨芽細胞性骨肉腫がある。
【0131】
上述の癌の転移も、本明細書に記載される方法に従って治療又は予防できる。
【0132】
種々の例の実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I、又は医薬組成物は、結腸直腸癌、前立腺癌、骨髄異形成症候群、炎症性腸疾患、鼻咽頭癌、及び陰茎癌から選択される障害を治療するために使用できる。
【0133】
併用療法
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、追加の「第2の」治療剤又は治療と共に投与される。第2の治療剤の選択は、典型的に適応のある疾患又は病態を治療する単独療法に使用されるあらゆる薬剤からなされ得る。本明細書で使用される通り、用語「共に投与される」及び関連する用語は、本明細書に記載される1つ以上の適応症を治療するための、それを必要とする対象への治療剤の同時又は連続的な投与を指す。例えば、本明細書に記載される結晶性形態I又は医薬組成物は、別の治療剤と、別々な単位剤形で同時若しくは連続的に、又は単一の単位剤形で共に投与され得る。したがって、本開示は、本明細書に記載される結晶性形態I又は医薬組成物、追加の治療剤、及び薬学的に許容できる担体を含む単一の単位剤形に関する。
【0134】
本開示の一実施形態において、第2の治療剤が対象に投与される場合、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iの有効量は、第2の治療剤が投与されない場合のその有効量より少ない。別の実施形態において、第2の治療剤の有効量は、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iが投与されない場合のその有効量より少ない。このようにして、いずれかの薬剤の高い投与量と関連する望ましくない副作用は最低限にされ得る。他の潜在的な利点(非限定的に、投与レジメンの改善及び/又は薬物コストの減少を含む)は当業者には明らかだろう。追加の薬剤は、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物とは別に、複数回投与レジメンの一部として投与され得る。或いは、それらの薬剤は、本明細書に記載される結晶性形態I又は医薬組成物と混合されて、単一の剤形の一部であり得る。
【0135】
特定の実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、単独でも、炎症を治療又は予防するのに有用な他の化合物と組み合わせても投与され得る。例示的な抗炎症剤としては、例えば、ステロイド(例えば、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、6α-メチルプレドニゾン(methylprednisone)、トリアムシノロン、ベタメタゾン又はデキサメタゾン)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、トルメチン、イブプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、ナブメトン、ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトドラク又はニメスリド)がある。別の実施形態において、他の治療剤は、抗生物質(例えば、バンコマイシン、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフィキシム、リファンピンメトロニダゾール、ドキシサイクリン又はストレプトマイシン)である。別の実施形態において、他の治療剤は、PDE4阻害剤(例えば、ロフルミラスト又はロリプラム)である。別の実施形態において、他の治療剤は、抗ヒスタミン剤(例えば、シクリジン、ヒドロキシジン、プロメタジン又はジフェンヒドラミン)である。別の実施形態において、他の治療剤は、抗マラリア薬(例えば、アーテミシニン、アルテメテル、アルトスナート(artsunate)、リン酸クロロキン、塩酸メフロキン、ドキシサイクリンヒクラート、プログアニル塩酸塩、アトバコン又はハロファントリン)である。一実施形態において、他の化合物はドロトレコギン・アルファである。具体的な実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、デキサメタゾンと組み合わせて投与される。
【0136】
抗炎症剤のさらなる例としては、例えば、アセクロフェナク、アセメタシン、e-アセトアミドカプロン酸、アセトアミノフェン、アセトアミノサロール、アセトアニリド、アセチルサリチル酸、S-アデノシルメチオニン、アルクロフェナク、アルクロメタゾン、アルフェンタニル、アルゲストン、アリルプロジン、アルミノプロフェン、アロキシプリン、アルファプロジン、アルミニウムビス(アセチルサリチレート)、アムシノニド、アンフェナク、アミノクロルテノキサジン、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸、2-アミノ-4-ピコリン、アミノプロピロン、アミノピリン、アミキセトリン、サリチル酸アンモニウム、アンピロキシカム、アムトルメチングアシル、アニレリジン、アンチピリン、アントラフェニン、アパゾン、ベクロメタゾン、ベンダザック、ベノリレート、ベノキサプロフェン、ベンズピペリロン、ベンジダミン、ベンジルモルフィン、ベルモプロフェン、ベタメタゾン、ベタメタゾン-17-吉草酸エステル、ベジトラミド、α-ビサボロール、ブロムフェナク、p-ブロモアセトアニリド、5-ブロモサリチル酸アセテート、ブロモサリゲニン、ブセチン、ブクロキシ酸、ブコローム、ブデソニド、ブフェキサマク、ブマジゾン、ブプレノルフィン、ブタセチン、ブチブフェン、ブトルファノール、カルバマゼピン、カルビフェン、カイプロフェン(caiprofen)、カルサラム、クロロブタノール、クロロプレドニゾン、クロルテノキサジン、サリチル酸コリン、シンコフェン、シンメタシン、シラマドール、クリダナク、クロベタゾール、クロコルトロン、クロメタシン、クロニタゼン、クロニキシン、クロピラク、クロプレドノール、クローブ、コデイン、コデインメチルブロミド、リン酸コデイン、硫酸コデイン、コルチゾン、コルチバゾール、クロプロパミド、クロテタミド、シクラゾシン、デフラザコート、デヒドロテストステロン、デソモルヒネ、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン-21-イソニコチン酸エステル、デキソキサドロール、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デオキシコルチコステロン、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン(diamorphone)、ジクロフェナク、ジフェナミゾール、ジフェンピラミド、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、ジヒドロモルフィン、ジヒドロキシアルミニウムアセチルサリチレート、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、ジプロセチル(diprocetyl)、ジピロン、ジタゾール、ドロキシカム、エモルファゾン、エンフェナム酸、エノキソロン、エピリゾール、エプタゾシン、エテルサラート、エテンザミド、エトヘプタジン、エトキサゼン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトドラク、エトフェナメート、エトニタゼン、オイゲノール、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロズ酸、フェンドサール、フェノプロフェン、フェンタニル、フェンチアザク、フェプラジノール、フェプラゾン、フロクタフェニン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルフェナム酸、フルメタゾン、フルニソリド、フルニキシン、フルノキサプロフェン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルオコルチンブチル、フルオコイトロン(fluocoitolone)、フルオレソン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルピルチン、フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルプロクアゾン、フルランドレノリド、フルルビプロフェン、フルチカゾン、ホルモコルタール、ホスホサール、ゲンチジン酸、グラフェニン、グルカメタシン、サリチル酸グリコール、グアイアズレン、ハルシノニド、ハロベタソール、ハロメタゾン、ハロプレドノン(haloprednone)、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾンコハク酸エステル、ヒドロコルチゾンヘミコハク酸エステル、ヒドロコルチゾン21-リジナート、ヒドロコルチゾンシピオン酸エステル、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロキサム、サリチル酸イミダゾール、インドメタシン、インドプロフェン、イソフェゾラク、イソフルプレドン、イソフルプレドン酢酸エステル、イソラドール(isoladol)、イソメタドン、イソニキシン、イソキセパク、イソキシカム、ケトベミドン、ケトプロフェン、ケトロラク、p-ラクトフェネチド、レフェタミン、レバロルファン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、ロナゾラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、アセチルサリチル酸リジン、マジプレドン、メクロフェナム酸、メドリゾン、メフェナム酸、メロキシカム、メペリジン、メプレドニゾン、メプタジノール、メサラミン、メタゾシン、メタドン、メトトリメプラジン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン酢酸エステル、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロンスレプトネート(suleptnate)、メチアジン酸、メトホリン、メトポン、モフェブタゾン、モフェゾラク、モメタゾン、モラゾン、モルヒネ、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、サリチル酸モルホリン、ミロフィン、ナブメトン、ナルブフィン、ナロルフィン、サリチル酸1-ナフチル、ナプロキセン、ナルセイン、ネホパム、ニコモルフィン、ニフェナゾン、ニフルム酸、ニメスリド、5’-ニトロ-2’-プロポキシアセトアニリド、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、オルサラジン、アヘン、オキサセプロール、オキサメタシン、オキサプロジン、オキシコドン、オキシモルホン、オキシフェンブタゾン、パパベレタム、パラメタゾン、パラニリン、パルサルミド、ペンタゾシン、ペリソキサール、フェナセチン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェナゾピリジン塩酸塩、フェノコール、フェノペリジン、フェノピラゾン、フェノモルファン、アセチルサリチル酸フェニル、フェニルブタゾン、サリチル酸フェニル、フェニラミドール、ピケトプロフェン、ピミノジン、ピペブゾン、ピペリロン、ピラゾラク、ピリトラミド、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、プログルメタシン、プロヘプタジン、プロメドール、プロパセタモール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、プロピフェナゾン、プロクアゾン、プロチジン酸、プロキサゾール、ラミフェナゾン、レミフェンタニル、メチル硫酸リマゾリウム、サラセタミド、サリシン、サリチルアミド、サリチルアミドo-酢酸、サリチル酸、サリチル硫酸、サルサレート、サルベリン、シメトリド、スフェンタニル、スルファサラジン、スリンダク、スーパーオキシドジスムターゼ、スプロフェン、スキシブゾン、タルニフルメート、テニダップ、テノキシカム、テロフェナマート、テトランドリン、チアゾリノブタゾン、チアプロフェン酸、チアラミド、チリジン、チノリジン、チキソコルトール、トルフェナム酸、トルメチン、トラマドール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トロペシン、ビミノール、キセンブシン、キシモプロフェン、ザルトプロフェン及びゾメピラクがある。
【0137】
一実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、炎症を治療又は予防するために選択的COX-2阻害剤と共に投与され得る。例示的な選択的COX-2阻害剤としては、例えば、デラコキシブ、パレコキシブ、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、及びルミラコキシブがある。
【0138】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される構造式VIIにより表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、アントラサイクリン又はTopo II阻害剤と組み合わせて投与される。特定の実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、ドキソルビシン(Dox)と組み合わせて投与される。特定の実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、ボルテゾミブ(及びより広くはカーフィルゾミブを含む)と共に投与される。
【0139】
癌併用療法
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中)は、追加の癌治療と共に投与される。例示的な追加の癌治療としては、例えば、化学療法、抗体療法などの標的療法、キナーゼ阻害剤、免疫療法、及びホルモン療法、エピジェネティック療法、プロテオソーム阻害剤、及び抗血管新生療法がある。これらの治療のそれぞれの例は以下に与えられる。本明細書で使用される通り、用語「組合せ」、「併用」及び関連する用語は、本開示による治療剤の同時又は連続的な投与を指す。例えば、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iは、別の治療剤と共に、別々な単位剤形中で同時若しくは連続的に、又は単一の単位剤形で共に投与できる。したがって、本開示は、構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I、追加の治療剤、及び薬学的に許容できる担体を含む単一の単位剤形を提供する。
【0140】
担体材料と組み合わせて単一の剤形を製造することが可能な構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I及び追加の治療剤(上述の追加の治療剤を含む医薬組成物中)の両方の量は、治療される宿主及び特定の投与様式により変わるだろう。好ましくは、本開示の医薬組成物は、0.01~200の用量の構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態Iを投与できるように製剤されるべきである。
【0141】
化学療法
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は化学療法と同時投与され得る。化学療法は、癌細胞を破壊できる薬物による癌の治療である。「化学療法」は、通常、標的療法とは対照的に、迅速に分裂している細胞全般に影響を与える細胞傷害性薬剤を指す。化学療法薬は、可能性がある種々の方法で、細胞分裂と、例えばDNAの複製又は新たに形成された染色体の分離と干渉する。ほとんどの形態の化学療法は、迅速に分裂している細胞を全て標的とし、癌細胞に特異的ではないが、正常な細胞がDNA損傷を修復する一方で、多くの癌細胞がDNA損傷を修復できないことからある程度の特異性が生じ得る。
【0142】
癌療法に使用される化学療法剤の例としては、例えば、代謝拮抗剤(例えば、葉酸、プリン、及びピリミジン誘導体)及びアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、白金、スルホン酸アルキル、ヒドラジン、トリアゼン、アジリジン、紡錘体阻害剤、細胞毒性剤、トポイソメラーゼ阻害剤及び他のもの)がある。例示的な薬剤としては、アクラルビシン、アクチノマイシン、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミノプテリン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アトラセンタン、ベロテカン、ベキサロテン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルボクオン、カーフィルゾミブ、カルモフール、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロルメチン、CHOEP-21、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン又はara-C、ダカルバジン、ダクチノマイシン、DA EPOCH、ダラツムマブ、ダウノルビシン、デシタビン、デメコルシン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エファプロキシラル、エレスクロモール、エルサミトルシン、エノシタビン、エピルビシン、エリブリン、エストラムスチン、エトグルシド、エトポシド、FLAG(Flu+Cyt)、フロクスウリジン、フルダラビン、フロオロウラシル(5FU)、FOLFOX、フォテムスチン、ゲムシタビン、ゲムシタビン-オキサリプラチン(GemOx)、ギリアデルインプラント、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシウレア、イブルチニブ、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、イロフルベン、イキサベピロン、イキサゾミブ、ラロタキセル、レナリドミド、ロイコボリン、リポソーマルドキソルビシン、リポソーマルダウノルビシン、ロニダミン、ロムスチン、ルカントン、マンノスルファン、マソプロコール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、アミノレブリン酸メチル、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトタン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナブパクリタキセル、ネダプラチン、ニムスチン、オブリメルセン、オマセタキシン、オルタタキセル、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペグアスパラガーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピラルビシン、ピキサントロン、PLD(ペグ化されたリポソーマルドキソルビシン)、プリカマイシン、ポマリドミド、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ラニムスチン、R-CHOP、r-dhaox、r-dhap、リツキシマブ、ロミデプシン ルビテカン、サパシタビン、セムスチン、シチマジーンセラデノベック、ソラフォニブ(Sorafonib)、ストラタプラチン(Strataplatin)、ストレプトゾシン、タラポルフィン、テガフール-ウラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テセタキセル、テストラクトン、テトラ硝酸塩、チオテパ、チアゾフリン、チオグアニン、チピファルニブ、トポテカン、トラベクテジン、トリアジクオン、トリエチレンメラミン、トリプラチン、トレチノイン、トレオスルファン、トロホスファミド、ウラムスチン、バルルビシン、ベルテポルフィン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ボリノスタット、ゾルビシン、及び本明細書に記載される他の細胞増殖抑制又は細胞毒性剤がある。
【0143】
標的療法
本明細書に記載される構造式(VII)により表される化合物の結晶性形態I又は医薬組成物は、標的療法と組み合わせて、又はその一部として使用され得る。標的療法は、癌細胞中の対象とする標的(例えば、制御されていないタンパク質)に特異的である薬剤の使用を構成する。小分子標的療法薬は、一般的に、癌細胞内の変異、過剰発現、又は他の点で重大なタンパク質上の酵素ドメインの阻害剤である。顕著な例は、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、デサチニブ(desatinib)、エロロチニブ(erolotinib)、イマチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、及びバンデタニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、並びにアルボシジブ及びセリシクリブなどのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤である。モノクローナル抗体療法は、治療剤が、癌細胞の表面上のタンパク質に特異的に結合する抗体である別の戦略である。例としては、乳癌に典型的に使用される抗HER2/neu抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))並びに種々のB細胞悪性腫瘍に典型的に使用される抗CD20抗体リツキシマブ及びトシツモマブがある。他の例示的な抗体としては、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、エドレコロマブ、及びゲムツズマブがある。例示的な融合タンパク質としては、アフリベルセプト及びデニロイキンジフチトクスがある。いくつかの実施形態において、標的療法、例えば、Gleevec(Vignari and Wang 2001)は、本明細書に記載される医薬組成物と組み合わせて使用できる。
【0144】
標的療法は、腫瘍周囲の細胞表面受容体又は冒された細胞外マトリックスに結合できる「自動誘導装置」としての小型ペプチドも含み得る。これらのペプチド(例えば、RGD)に結合している放射性核種は、核種が細胞の近くで崩壊する場合、最終的に癌細胞を殺傷する。そのような療法の例としては、BEXXAR(登録商標)がある。
【0145】
構造式(VII)により表される化合物(化合物5))を調製するプロセス:
図1を参照すると、本発明の1態様の全体的反応スキームが示されている。工程1において、化合物1はアミド化される。工程2において、2つのテレスコーピング反応が化合物2を二臭素化化合物3に転化し、それに続いて3の脱臭素化水素により化合物4にする。工程3において、化合物4と構造式(IIIB)により表される化合物の間の鈴木カップリングにより、化合物5が製造される。
【0146】
構造式(VII)により表される化合物(化合物5)の結晶性形態:
図20~26を参照すると、構造式(VII)により表される化合物(本明細書において化合物5又は化合物MB6とも称され、当技術分野においてエルタネクソル又はKPT-8602とも称される)の結晶性形態I及びIIの特性化データが示される。そのようなデータとしては、X線粉末回折(XRPD)パターン、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、熱重量分析(TGA)サーモグラム及び動的水蒸気収着(DVS)パターンがある。各形態が単離される方法の説明及び特性化データを生成させるために使用される技法は以下に与えられる。
【0147】
結晶性形態の特性化のための一般的な材料及び方法
XRPD
USPガイドラインによると、可変の(variable)水和物及び溶媒和物は、0.2°2θを超えるピーク分散を示し得て、したがって、0.2°2θのピーク分散はこれらの材料に適用されない。
【0148】
「顕著なピーク」は、観察されたピーク全体のリストのサブセットである。顕著なピークは、好ましくは、高強度を有する重複しない低角度ピークを特定することにより、観察されたピークから選択される。
【0149】
多数の回折パターンが利用可能な場合、粒子統計(PS)及び/又は優先配向(preferred orientation)(PO)の評価が可能である。1つの回折計で分析された多数の試料のXRPDパターンの間の再現性は、粒子統計が充分であることを示す。多数の回折計から得たXRPDパターンの間の相対強度の一致は、良好な配向統計を示す。或いは、観察されたXRPDパターンは、利用可能であれば、結晶構造に基づいて、計算されたXRPDパターンと比較され得る。面検出器を使用する二次元散乱パターンも、PS/POを評価するために使用できる。PS及びPOの両方の影響がごくわずかであると決定される場合、XRPDパターンは、試料の粉末平均強度を代表し、顕著なピークは「代表ピーク」であると特定され得る。一般に、代表ピークを決定するために収集されたデータが多いほど、それらのピークの分類に信頼を置くことができる。
【0150】
「特性ピーク」は、それらが存在する範囲で、代表ピークのサブセットであり、ある結晶性多形体を別の結晶性多形体(同じ化学組成を有する結晶性形態である多形体)から区別するために使用される。特性ピークは、代表ピークが存在するとしたら、どの代表ピークが、化合物の全ての他の公知の結晶性多形体に対して、その化合物のある結晶性多形体に、±0.2°2θ以内で存在するかを評価することにより決定される。化合物の全ての結晶性多形体が必ずしも少なくとも1つの特性ピークを有するわけではない。
【0151】
X線粉末回折パターンは、Cu Kα線(40kV、40mA)、自動化XYZステージ、自動試料位置決め用のレーザービデオ顕微鏡及びHiStar 2次元面検出器を使用してBruker AXS C2 GADDS回折計で収集された。X線光学系は、0.3mmのピンホールコリメーターと接続している単一のGoebel多層膜ミラーからなる。週に1回の性能チェックが、認証された標準NIST 1976コランダム(平板)を使用して実施される。
【0152】
ビーム広がり、すなわち試料上のX線ビームの有効サイズはおよそ4mmであった。θ-θ連続スキャンモードを、試料-検出器距離を20cmとして利用したが、それは3.2°~29.7°の有効な2θ範囲を与えた。典型的には、試料は、X線ビームに120秒間曝露された。データ収集に使用されたソフトウェアはGADDS for XP/2000 4.1.43であり、Diffrac Plus EVA v15.0.0.0を使用してデータが分析及び提示された。
【0153】
周囲条件:試料は、粉末を受領したまま粉砕なしに使用して、平板試験片として調製された。およそ1~2mgの試料がガラススライド上で軽く押されて、平坦な表面が得られた。
【0154】
非周囲条件:非周囲条件で実験される試料は熱伝導化合物と共にシリコンウエハー上に載せられた。次いで、試料は適切な温度に20℃/分で加熱され、その後に等温で1分間保たれてから、データ収集が開始された。
【0155】
さらに、X線粉末回折パターンは、Cu Kα線(40kV、40mA)、θ-2θゴニオメーター、並びにV4の発散及び受光スリット、Geモノクロメーター及びLynxeye検出器を使用して、Bruker D8回折計で収集された。機器は、認証されたコランダム標準(NIST 1976)を使用して性能チェックされた。データ収集に使用されたソフトウェアはDiffrac Plus XRD Commander v2.6.1であり、Diffrac Plus EVA v15.0.0.0を使用してデータが分析及び提示された。
【0156】
試料は、周囲条件下で、粉末を受領したまま使用して平板試験片として実験された。試料は、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウエハーに切り込んだ空洞に優しく詰め込まれた。試料を、分析の間それ自身の面で回転させた。データ収集の詳細は下記の通りである:
角度範囲:2~42°2θ;
ステップサイズ:0.05°2θ;
収集時間:0.5秒/ステップ。
【0157】
TGA
TGAデータは、16ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500 TGAで収集された。機器は、認証されたアルメル及びニッケルを使用して温度較正された。典型的には、5~10mgの各試料が、事前に風袋計量されたアルミニウムDSCパンにロードされ、10℃/分で周囲温度から350℃に加熱された。60ml/分での窒素パージが試料上に維持された。
【0158】
機器制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.5.0.256及びThermal Advantage v5.5.3であり、Universal Analysis v4.5Aを使用してデータが分析された。
【0159】
DSC
DSCデータは、50ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q2000で収集された。熱容量の較正はサファイアを使用して実施され、エネルギー及び温度の較正は認証されたインジウムを使用して実施された。典型的には、ピンホールのあるアルミニウムパン中の0.5~3mgの各試料は、10℃/分で25℃から280℃に加熱された。50ml/分での乾燥窒素のパージが試料上に維持された。
【0160】
機器制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.8.0.394及びThermal Advantage v5.5.3であり、Universal Analysis v4.5Aを使用してデータが分析された。
【0161】
DVS
収着等温線は、DVS Intrinsic Controlソフトウェアv1.0.1.2(又はv1.0.1.3)により制御されているSMS DVS Intrinsic水分吸着分析器を使用して得られた。試料温度は、機器制御により25℃に維持された。湿度は、乾燥窒素と湿潤窒素の流れを混合することにより制御され、総流量は200ml/分であった。相対湿度(RH)は、試料の近くに置かれた、較正済みRotronicプローブ(1.0~100%RHの動的範囲)により測定された。RH%の関数としての試料の重量変化(質量緩和)は、マイクロバランス(正確度±0.005mg)により絶えずモニターされた。
【0162】
典型的には、5~20mgの試料が、周囲条件下で、風袋計量されたメッシュステンレススチールバスケットに配置された。試料は、40%RH及び25℃(典型的な室内条件)でロード及びアンロードされた。水分吸着等温線は、以下に概説される通り実施された(2回のスキャンが1つの完全なサイクルを与える)。標準的等温線は、25℃で、0~90%RH範囲にわたり10%RH間隔で実施された。データ分析は、DVS Analysis Suite v6.2(又は6.1若しくは6.0)を使用してMicrosoft Excelを使用して実施された。
【0163】
【表1】
【0164】
試料は等温線の完了後に回収され、XRPDにより再分析された。
【0165】
H NMR
NMRスペクトルは、オートサンプラーを備え、DRX400コンソールにより制御されるBruker 400MHz機器で収集された。自動化実験は、Topspin v1.3で動作するICON-NMR v4.0.7を使用して、標準的なBruker搭載実験を使用して取得された。非定型的な分光法のためには、データは、Topspin単独の使用により取得された。試料は、特記されない限りDMSO-d中に調製された。オフライン分析は、ACD Spectrus Processor 2012を使用して実施された。
【実施例
【0166】
プロセス
工程1
工程1は、図1でKPT-9508/MB3と称される化学構造により表されるアクリルアミドの調製を含む。クロロギ酸イソブチルを使用して混合無水物を生成させ、次いで水酸化アンモニウム中でクエンチして、MB3/KPT-9508を得る。反応スキームの詳細は下記の通りである:
【化24】
【0167】
硫酸スクラバーを備え窒素下で不活性化された558Lのガラスライニングされたコニカルボトム容器に、水酸化アンモニウム(29.653kg 26%w/w水溶液)を入れ、溶液温度を0~5℃に調整した(内部温度8.4℃~3.0℃ 11時間36分)。
【0168】
窒素下で不活性化された別な206Lガラスライニングされた容器に2-MeTHF(24.0kg)を入れ、それを30分間還流加熱して、ガラス容器及びコンデンサーアセンブリーを乾燥させた。容器及び内容物を30℃未満に調整し、次いで2-MeTHFをIPC用にサンプリングした(最初の試料は、0.1%w/vの目標に対して0.2%w/vの残留水を示したので、追加の2-MeTHFにより還流を繰り返した)。容器を空にして、次いで真空下で乾燥させた。
【0169】
206L容器に、KG1(KPT-454、15.5kg)、及び2-MeTHF(77.1kg)を入れ、次いでバッチを撹拌し、0~5℃に調整して(15分かけて内部温度15.5℃から0.7℃に)、溶液を形成した。クロロギ酸イソブチル及びN-メチルモルホリンのその後の添加と、それに続く水酸化アンモニウム中のクエンチは、最長で4時間以内の完了を要した(実際の時間 3時間5分)。温度を0~5℃に維持しながら、クロロギ酸イソブチル(12.1kg)を入れ(25分間 0.0℃~1.0℃の温度範囲)、添加装置を2-MeTHF(8.1kg)により順方向に(forward)すすいだ。0~5℃の温度を維持しながら(温度範囲 25分にわたり0.4℃~5.6℃)、N-メチルモルホリン(8.9kg、4~8℃に事前冷却)を入れ、添加装置を2-MeTHF(5.4kg)により順方向にすすいだ。バッチを、30~45分の期間撹拌した(35分、内部温度1.8℃~0.5℃)。
【0170】
0~5℃の温度を維持しながら、バッチを、激しく撹拌しながら水酸化アンモニウムを含む第1の容器に移すと同時に、受ける容器の0~10℃の温度を維持した(40分の範囲で0.1℃~9.1℃の温度範囲)。第2の容器の反応混合物を、第1の容器に、2-MeTHF(13.1kg)によりすすぎ入れ、30分間4.3℃で撹拌し、次いでIPCのためにサンプリングした(MB3+MC8に対する残留KG1+KG5は、2%a/a以下の目標に対して2%a/aであった)。次いで、バッチを20~25℃の温度に調整した(53分、内部温度1.7℃から20.4℃に)。撹拌を49分間停止させて、相分離を可能にし、下部の水相を排出して廃棄した(分離時間58分、有機層との界面、上部の有機相140L、下部の水相20L)。20~25℃の温度を維持しながら(温度範囲 22.2℃~24.3℃40分間)、水(77.5kg)を入れ、20分間撹拌した。次いで、撹拌を45分間停止させ、相分離を可能にして、下部の水相を排出して廃棄した(分離時間35分、水層との界面、上部の有機相144L、下部の水相86L)。
【0171】
バッチを0~5℃に冷却し(65分間で22.5℃から3.3℃に)、真空下に置いて、次いで徐々に17.3℃の温度に温め、57~62L(目視の体積61L、57Lで浸漬体積(dip volume)測定)の目標体積まで、3時間10分かけて蒸留した。N-ヘプタン(10.5kg)を、20.7℃~21.7℃の温度で30分かけて入れて、次いで1時間撹拌し、生成物を結晶化させた。固体の存在を目視で確認し、次いでさらなるn-ヘプタン(94.9kg)を1時間で22.2℃~22.5℃の温度範囲で入れた。
【0172】
バッチを、綿布裏打を有する20cfmポリエステル濾過布による濾過により単離し(SRFフィルター上で22.5℃に保たれた2時間20分の濾過時間)、次いで濾液を容器に戻し、1時間24分かけて22.2℃で再び濾過し、残存固体を順方向にすすいだ。フィルターケーキをn-ヘプタンで洗浄し(2l.2kgを2回に分ける-15分及び17分の濾過時間)、次いで液をきり(de-liquored)(2時間)、窒素気流下で乾燥させた(58時間、周囲温度)。IPC分析は、5%w/w以下の限界に対して、検出限界が58時間で1.4%w/wであることを示し、生成物を、12.4kgの収率80%のKPT-9508を与えるように包装した。単離された生成物は、この化合物のHPLC基準に一致した。生成物のHPLCを図16に示す。
【0173】
HPLC条件は下記の通りであった:
【0174】
【表2】
【0175】
最終生成物(KPT-9508/MB3)のH NMRスペクトルを図18に示す。
【0176】
工程2
工程2は、2つのテレスコープ転化により、異性体ME2/KPT-9515+ME3/KPT-9506の二臭素化混合物(図1の工程2a)を形成し、次いで、脱臭化水素化により、異性体MB5/KPT-7538+MB9/KPT-9507の中間体混合物(図1の工程2b)を形成することからなる。
【0177】
工程2aスキーム
【化25】
【0178】
オーバーヘッド撹拌機、温度計、滴下漏斗及び窒素バブラーを備えた2L三口丸底フラスコに、14.69gのNaBr及び110mLの酢酸を入れた。バッチの内容物を周囲温度で撹拌した。バッチに45.6gの臭素を入れた。滴下漏斗を110mLの酢酸で順方向にすすいだ。別な500mL三口フラスコに、55gのMB3及び220mLの酢酸を入れた。500mLフラスコの内容物を周囲温度で撹拌して、溶液を形成した。
【0179】
500mL容器の内容物を、滴下漏斗により、内部温度を20~30℃の範囲に保ちながら2L容器に1時間にわたり入れた。滴下漏斗を110mLの酢酸により順方向にすすいだ。バッチを、20~30℃で16時間の最低期間さらに撹拌した。
【0180】
バッチに、275mLの10%w/v亜硫酸水素ナトリウム溶液を、20~30℃の内部温度を維持しながら30分の最低期間にわたり入れた。バッチに、275mLの水を、20~30℃の内部温度を維持しながら、5分の期間にわたり入れた。バッチを、20~30℃で、60分の最低期間さらに撹拌した。バッチのアリコートを取り除き、残留臭素の存在に関して観察した。臭素の完全な還元が、白色から灰白色の懸濁液の存在により観察された。
【0181】
次いで、バッチの内容物を、減圧下のブフナー漏斗で、Whatmannペーパー(70mm)により濾過した。フィルターケーキを、2つのおよそ等しい部分に分けた220mLの水で洗浄した。収集したケーキを、減圧下で15分の最低期間、20~30℃に保った。中間体ME2生成物を、102.13gの粗製質量並びにME2:86.0%a/a及びME3:9.5%a/aの開発された基準に対するHPLC純度で得た。
【0182】
工程2bスキーム
【化26】
【0183】
工程2bに関して記載された反応手順は、工程内管理(IPC)試験の間の反応混合物のサンプリングの難題を表した早期の開発作業に改善を与える。IPC試験の難題は、大部分は、工程2bの反応混合物の過度の濃厚さの結果であった。難題には、塩基としてトリメチルアミンよりもジイソプロピルエチルアミンを使用すること、混合物の体積を約3倍に増加させること、及びアセトニトリル単独ではなく水とアセトニトリルの混合物を使用することにより対処した。述べられた難題に対処するために発見された最終手順を以下に記載する。
【0184】
500mL三口丸底フラスコに、温度計、オーバーヘッドスターラー及び窒素入口を取り付けた。フラスコに、25gのME2(49mmol;1.0当量)及び140mLのACN(MB3に対して8部)及び70mLの水(MB3に対して4部)を入れた。別な100mL丸底フラスコに、8.6mLのDIPEA(49mmol、MB3に対して1.0当量)及び52mLのACN(MB3に対して3部)を入れた。混合物を20~30分間撹拌した。激しい撹拌と共に、DIPEA溶液を、ME2の懸濁液に、1.0~1.5時間の期間にわたり少しずつ加えた。添加アセンブリーを9mLのACN(MB3に対して0.5部)により順方向にすすいだ。バッチを2~3時間20~25℃で撹拌した。IPC試験を実施し、IPC目標は満たされた(目標:MB5に対する残留ME2が0.3%a/a以下である)。
【0185】
生じた懸濁液を、濾紙を使用して濾過した。フィルターケーキを、34mLの8:2 ACN/HO混合物(MB3に対して2部)により洗浄した。フィルターケーキを34mLのACN(MB3に対して2部)により洗浄した。フィルターケーキを、窒素パージにより、アスピレーター吸引しながら20時間乾燥させた。単離された生成物は白色の固体であり、純度を、以下のプロトコルに従いHPLCにより評価した。
【0186】
【表3】
【0187】
二連の実験により、それぞれ99.2%a/a及び99.2%a/aを有する86.0%及び90.7%の単離収率が得られた。収率86.0%で単離されたバッチのDMSO中のプロトンNMRを図17に示す。
【0188】
工程3
【化27】
【0189】
本試験において、化合物5、(E)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2-(ピリミジン-5-イル)アクリルアミド(MB6/KPT-8602)の製造のための拡大可能なプロセスを開発した。
【0190】
以下のHPLCプロトコルを使用できる。
【0191】
【表4】
【0192】
最終生成物、化合物KPT-8602/MB6/5のH NMRを図19に示す。
【0193】
利用したパラジウムテトラキストリフェニルホスフィンの乏しい選択性に気付いたので、より頑強で選択性があるPd触媒(すなわちStrem amphosパラダサイクル第2世代(カタログ番号46-0342))を、この工程の鈴木カップリングのために数種の触媒をスクリーニングすることにより見出した。新たな触媒系に基づき、プロセスを、いくつかの主要プロセスパラメーター、すなわち、Strem amphosパラダサイクル第2世代(カタログ番号46-0342)及びボロン酸(構造式(IIIB)により表される化合物、MB7)の化学量論、反応溶媒と溶媒比、溶媒体積、反応温度、及び異なる塩基を検討することによりさらに評価した。MB7分解、プロセス操作を単純化すること、粗生成物単離(MB6メタノール溶媒和物、本明細書に記載される結晶性形態II)の条件及びMIBK中のMB6再結晶化による本明細書に記載される結晶性形態Iの生成、並びに最後に、単離された生成物中のそれぞれPd及びMB7残留レベルなどの他の問題も検討した。粗生成物のパラジウムレベルが常に現在の限界(400ppm以下)未満であったため、改善されたプロセスにおいてSi-DMTシリカスカベンジャーによる処理による粗生成物からのパラジウム除去が必要ではない(しかし許容される)ことが見出された。
【0194】
驚くべきことに、新たな反応系は、激しい脱気なしに、非常に頑強で性能が良いことが見出された。新たなプロセスを、15.5gスケールで、実証実験で実施し、結晶性形態Iとしての化合物5(構造式(VII)により表されるMB6(KPT-8602))の81~86%全体収率が首尾よくもたらされた。81~86%の収率は、以前のプロセスの26~49%の報告された収率に対して著しい改善である。生成物の純度は非常に良好であり(HPLC純度は100%a/aであった)、Pd及びボロン酸MB7は許容できるレベルであった。
【0195】
一般的な反応条件工程3:工程3の種々のプロセスパラメーターを評価する実験(以下で詳細に議論)に基づいて、以下の反応条件を利用した:約1.0当量MB5、約2.0当量MB7、約0.5当量CsCO、約24部の脱気されたジオキサン:HO 7:1 v/v、2mol%Strem amphosパラダサイクル第2世代(カタログ番号46-0342)、55~60℃で7~7.5時間。全ての当量はMB5に対するものである。
【0196】
メタノラート(形態II)の単離-一般的手順1:
形態II(最終形態Iへのメタノラート前駆体)の一般的な単離手順は下記の通りである:55~60℃での7~7.5時間の反応時間の後で(上記の一般的反応条件参照)、反応混合物を約40~45℃に調整し、それに続いて、セライト(MB5に対して約0.5部)及び約7:1 v/vのジオキサン:水(MB5に対して約2.5部)のスラリーを入れる。生じた懸濁液を約40~45℃で約15~20分間撹拌する。反応混合物を濾過し、フィルターケーキをジオキサン:水 約7:1 v/v(約40~45℃、MB5に対して約3部)で洗浄する。生じた濾液を真空蒸留に付し、MB5に対して約4.5~5.5部の目標体積まで蒸留する。生じた懸濁液を約50~55℃の内部温度に調整する。次いで、反応混合物に、MeOH(MB5に対して約20部)を少量ずつ入れる。次いで、懸濁液を、約50~55℃で約60~70分間撹拌する。次いで、反応混合物を約20~25℃に冷却し、次いで約2~2.5時間かけて約0~5℃にさらに冷却し、その温度で約2~2.5時間の期間維持する。次いで、生じた懸濁液を濾過し、フィルターケーキをMeOH(MB5に対して約10部)で洗浄する。次いで、ケーキを乾燥させる。
【0197】
形態Iの単離-一般的手順2:
次いで、一般的手順1の乾燥させたフィルターケーキを、オーバーヘッドスターラー、温度計及び窒素入口を備えたフラスコに移し、Si DMT(MB5に対して約5当量)をフラスコに入れる。次いで、MIBKをフラスコに入れる(MB5に対して約25部)。次いで、反応混合物を約65~70℃の内部温度に加熱し、その温度で、スカベンジャーを使用しない場合約1~1.5時間維持し、スカベンジャーを使用する場合約4~5時間維持する。次いで、反応混合物を、約65~70℃で熱いまま濾過して、オーバーヘッドスターラー、温度計及び窒素入口を備えた清浄なフラスコに入れる。フィルターをMIBKで洗浄する(約65~70℃で、MB5に対して約1.0部)。撹拌しながら、濾液を約20~30℃に約3~3.5時間かけてゆっくりと冷却し、次いでMB5に対して約3~4部の目標体積まで真空下で蒸留する。バッチ温度を約55~60℃に調整し、反応混合物を55~60℃で約2~2.5時間撹拌する。次いで、懸濁液を約0~5℃に約2~2.5時間かけて冷却し、この温度で最低約1時間撹拌する。次いで、反応混合物を濾過し、生じたケーキをMIBKで洗浄する(約0~5℃で、MB5に対して約1.0部)。
【0198】
15.5gスケールで上記の一般的手順に従った。手順の変動(使用した量、温度、時間など)が起こり得るが、それでも良好な収率及び純度を得る。単離(一般的手順1)及び再結晶化条件(一般的手順2)の追加の例も以下に提供する。
【0199】
15.5gスケールの一般的手順1及び2
500mL四口丸底フラスコに、オーバーヘッドスターラー、温度計、還流冷却器及びNバブラーを取り付けた。フラスコに窒素を最低30分間流した。N流の下で、フラスコに、15.5gの化合物4(MB5)(36.1mmol、1.0当量)、8.95gのMB7(72.2mmol、MB5に対して2.0当量)、5.88gのCsCO(18.0mmol、MB5に対して0.5当量)及び0.415gのPd触媒PT4(Strem Amphosパラダサイクル第2世代、カタログ番号46-0342、0.72mmol、MB5に対して0.02当量)を入れ、それに続いて326mLの脱気された1,4-ジオキサン(MB5に対して21部)及び47mLの脱気された水(MB5に対して3部)を入れた。
【0200】
適度な撹拌をしながら、次いで、反応混合物を、60~70分の期間窒素をそれにバブリングすることによりさらに脱気した。次いで、反応混合物を55~60℃の内部温度に加熱し、その温度で7~7.5時間の期間維持した。反応温度を40~45℃に調整し、IPC試料を採取した。完了と同時に、反応混合物を40~45℃に調整し、それに続いて、7.75gのセライト(MB5に対して0.5部)と39mLのジオキサン:水 7:1 v/v(MB5に対して2.5部)のスラリーを入れた。生じた懸濁液を40~45℃で15~20分間撹拌した。反応混合物を濾過し、フィルターケーキを、46.5mLの事前加温されたジオキサン:水 7:1 v/v(40~45℃、MB5に対して3部)で洗浄した。生じた濾液を真空蒸留に付し、70~85mL(MB5に対して4.5~5.5部)の目標体積まで蒸留した。生じた濃厚な懸濁液を50~55℃の内部温度に調整した。次いで、50~55℃の反応混合物に、310mLのMeOH(MB5に対して20部)を少量ずつ入れた。次いで、懸濁液を50~55℃で60~70分の期間撹拌した。次いで、反応混合物を20~25℃に冷却し、次いで、0~5℃に2~2.5時間かけてさらに冷却し、その温度で2~2.5時間の期間維持した。次いで、生じた懸濁液を、Whatmann濾紙を使用してブフナー漏斗により濾過し、フィルターケーキを155mLのMeOH(MB5に対して10部)で洗浄した。次いで、ケーキを、真空下で、45~50℃で約4.5時間乾燥させた。結晶性形態II(メタノラート)を収率89%で得た。生成物の純度は非常に良好だった(HPLC純度は、99.3%~99.4面積%であり、Pd及びボロン酸は許容されるレベルであった。
【0201】
次いで、乾燥されたフィルターケーキを、オーバーヘッドスターラー、温度計及び窒素入口を備えた500mL三口丸底(round botton)フラスコに移し、それに続いて、0.25gのSiDMT(MB5に対して5当量(230ppmの残留Pd)を入れた。[以下の計算を使用して、残留パラジウムレベルに基づいて、どれくらいの量のDMTシリカを入れるべきかを決定できる。生成物中のmm Pdを計算するためには:Mmol Pd=ppm Pd×生成物のg/106.42×100及びスカベンジャー充填量=mmol Pd×4当量/スカベンジャーローディング(mmol/g)。]次いで、固体に、390mLの本明細書でMIBKとも称される4-メチル-2-ペンタノン(MB5に対して25部)を入れた。次いで、反応混合物を65~70℃の内部温度に加熱し、スカベンジャー処理が実施される場合その温度で4~5時間の期間維持した(スカベンジャー処理がない場合、1~1.5時間で充分である)。次いで、反応混合物を、65~70℃で熱いままブフナー漏斗により(Whatmann濾紙を使用して)濾過して、オーバーヘッドスターラー、温度計及び窒素入口を備えた新たな500mL三口丸底フラスコに入れた。次いで、濾紙を15mLの事前加温されたMIBK(65~70℃、MB5に対して1部)で洗浄した。攪拌しながら、濾液を、20~30℃に3~3.5時間かけてゆっくりと冷却し、次いで50~55mLの目標体積まで(MB5に対して3~4部)真空下で蒸留した。浴温度を55~60℃に調整し、反応混合物を55~60℃で3~3.5時間撹拌した。懸濁液を0~5℃に2~2.5時間かけて冷却し、その温度で最低1.0時間撹拌した。次いで、反応混合物を、Whatmann濾紙を使用してブフナー漏斗により濾過した。次いで、ケーキを15.5mLの事前冷却された0~5℃のMIBK(MB5に対して1.0部)で洗浄した。次いで、フィルターケーキを48~53℃の真空オーブン中で1~2時間乾燥させて、生成物(結晶性形態I)を固体として得た。全体的収量は81~86%であり、HPLC純度は100.0%a/aであり、Pd及びボロン酸は許容されるレベルであった。
【0202】
形態Iの単離-一般的手順2A:
粗製のMB6メタノラート形態IIをリアクターに入れ、それに続いて約18体積のMIBKを入れる。スラリーを約80~85℃に加熱して、溶液を生成させる。この時点で、約1体積のMIBK中のSiliaMetS(登録商標)DMT(本明細書でSiDMTとも称され、シリカ結合2,4,6-トリメルカプトトリアジン(トリチオシアヌル酸、TMT)スカベンジャーである)を、Pdの除去のためにリアクターに入れることができる。このスカベンジャーの使用は任意選択である。次いで、溶液(スカベンジャーなし)又はスラリー(スカベンジャーあり)をある期間混合する。その時間が完了すると、約80~85℃の温度を維持しながら、溶液/スラリーを熱いまま研磨濾過して、清浄なリアクターに入れる。次いで、2体積のMIBKを元のリアクターに入れ、約80~85℃に加熱する。その温度になると、溶媒を、リアクター/濾過系のすすぎとして研磨濾過装置によりバッチに移す。次いで、溶液をわずかに冷却して、保持期間の間に核形成を誘導する。核形成が確認された後、固体を、制御された冷却結晶化により、0~5℃の最終温度で結晶化させる。スラリーをこの温度で適切な時間保持して、結晶化を完了させ、次いで、固体を濾過により単離する。約2体積のMIBKを研磨濾過してリアクターに入れ、約0~5℃に冷却する。その温度になると、洗浄液を2回に分けてケーキに入れ、吸引によりケーキから引き出す。洗浄の完了後、固体を乾燥させ、包装する。
【0203】
17gスケールの一般的手順2A:
17gの粗製のMB6(メタノール溶媒和物形態II)を400ml Easy max容器に量り入れた。約306mLの4-メチル-2-ペンタノン(MIBK;MB6メタノラートに対して18V)を加えた。混合物を適度に撹拌し、約80~85℃に加温して固体を溶解させた。約0.51gのSi DMT(MB6(メタノラート形態II)に対して3%)を容器に入れた。約18mLのMIBK(2V X 0.51g+1Vすすぎ)を容器に入れた。混合物を約4.5時間約80~85℃で適度に撹拌した。次いで、反応混合物を、約80~85℃で熱いままブフナー漏斗(Whatmann濾紙を使用する)により濾過して、500mL三角フラスコに入れた。次いで、濾紙/SiDMT/CsCOを、約34mLの事前加温された4-メチル-2-ペンタノン/MIBK(約80~85℃;メタノラート形態IIとしてのMB6に対して約2V)で洗浄した。easy max容器を洗浄し、濾液及び洗浄液を含む三角フラスコの内容物を約80~85℃に加温し、easy max容器に戻した。バッチ温度を約80~85℃に調整し、反応混合物を約30分間撹拌して、溶解に達した。次いで、溶液を、最低3時間かけて約20~25℃に冷却した。次いで、懸濁液を、約2~2.5時間かけて約0~5℃に冷却し、この温度で最低約1.0時間撹拌した。次いで、反応混合物を、Whatmann濾紙を使用してブフナー漏斗により濾過した。
【0204】
次いで、ケーキを、約34mLの事前冷却された4-メチル-2-ペンタノン/MIBK(MB6メタノラート形態IIに対して約2体積;約0~5℃)により洗浄した。次いで、フィルターケーキを、約25~30℃の真空オーブン中で、約3時間乾燥させて、生成物を白色の固体として得た(収率%75%、純度=99.98%a/a)。
【0205】
Pdにより触媒される鈴木カップリング反応-触媒の評価
初期のPd触媒評価の結果を、図2に表される表にまとめる。ベースライン実験を、Pd(dppf)Cl・DCMを使用して実施した(図2;エントリー1)。既に観察した通り、ベースライン実験は不完全な転化(71.1%a/a)及び著しいレベルの脱臭素化(15.8%a/a)を示した。
【0206】
一連のクロチル系プレ触媒系によるスクリーニングは、特にAmphos及びP(tBu)などの嵩高い電子に富むリガンドが使用された場合、改善された結果を示した(図2;エントリー3及び4)。P(tBu)はAmphosよりわずかに良好な性能を有し、より高いレベルの転化(24時間後に81.3%に対して93.5)を与えることが見出された。P(tBu)を繰り返し、類似の性能(97.2%a/a転化)を与えることが見出され、再現性を示した(図2;エントリー11)。脱臭素化経路が著しく低下したことも注目すべきである(3.8~5.7%a/a)。興味深いことに、m/z=699(ESI)を有する以前に特性化されていない不純物をスクリーニング試験において特定した。暫定的構造(PF9)を、観察された質量に基づいて帰属した。この不純物は、MC8とMB5のヘックタイプカップリングを含む副反応から生じると仮定される。上述の結果に基づいて、tBuPPd(クロチル)Clを、さらなるプロセス開発のための望ましい触媒として特定した。
【0207】
以下に示される3種の不純物はこの鈴木カップリングの主要な副生成物であり、反応後のそれらのレベルは、カップリングの性能の評価において主要な因子であった。
【化28】
【0208】
反応溶媒も、Pd触媒反応に関してスクリーニングした。これらの結果を図3にまとめる。
【0209】
ジオキサン/HO、THF/HO、及びEtOH/MeTHF/HO中で起こる反応は、100%転化を良好な生成物純度と共に与えた。しかし、それでも著しい量の不純物形成があった。MeTHF/HO及びトルエン/MeTHF/HOの両方の中の反応は失速したことが観察された。したがって、THF/HO溶媒系が、さらなる評価の可能性を示した。鈴木カップリングを、異なる種類の塩基を使用して試みた。以下の図4に結果をまとめた。CsCOが、これらの4種の塩基のうちで最良の性能を与えることが見出された。
【0210】
さらなるプロセス調査
この作業のために、断りがない限り、高いHPLC純度(99.5%a/a)を有する単一ロットのMB5を使用した。
【0211】
最初に、上記で望ましい触媒と特定された触媒系tBuPPd(クロチル)Cl)を4.3gスケール反応で実験した。反応条件を、還流状態(63℃)の16部の脱気されたTHF/HO 15:2 v/v中の1.0当量MB5、2.0当量のボロン酸MB7、0.5当量炭酸セシウム、及び3%tBuPPd(クロチル)Clと選択した(懸濁液としての反応混合物を加熱前に20~30分間脱気した)。還流状態で4時間後、IPCは、MB6に対する残留MB5が115%a/aである一方で(反応が1時間後に失速していた)、著しい量のMC8(MB6に対して21%a/a)が生成したことを示した。カップリングは、追加のPd触媒(さらに2mol%)を入れた後に再活性化できた。しかし、反応は、MB6に対する残留MB5の55%a/aで再び失速したことが観察された。この反応を類似の条件下で再び実施して、結果を図5にまとめる。
【0212】
これらの結果は、これらの反応条件が再現性のある結果を与えなかったことを示した。追加の触媒を評価し、結果を図6にまとめる。
【0213】
JM Amphos Pd(クロチル)Cl(Pd-161)及びStrem Amphosパラダサイクル第2世代(カタログ番号46-0342)の両方が、ジオキサン:HOを反応の溶媒系として使用した場合同じ優れた結果を与え(図6;エントリー5、6及び7)、はるかに低いレベルの不純物を有することが見出された。Strem Amphosパラダサイクル第2世代を溶媒系としてのTHF:HOと共に使用した場合(表6;エントリー3及び4)、生成された不純物の増加があった。鈴木カップリング触媒としてのJM Amphos Pd(クロチル)Cl(Pd-161)及びStrem Amphosパラダサイクル第2世代(カタログ番号46-0342)の両方は、tBuPPd(クロチル)Clより良好な選択性及び頑強性を示した。
【化29】
【0214】
Strem Amphosパラダサイクル第2世代(カタログ番号46-0342)及びJM Amphos触媒は、活性触媒系として好適である。
【0215】
図7は、化学作用の性能に対する触媒化学量論の影響を調査するために実施した実験の結果をまとめる。これらの結果は、2mol%と3mol%のPd触媒の間に同等な性能がある一方で、触媒が2mol%未満に減らされた場合に反応失速が観察されたことを表す。触媒ローディングをさらに減少させることが可能であり得る。
【0216】
ボロン酸MB7の量は、望ましくない影響を避けるために最低限にすべきである。実験を実施して、MB7当量の下限を調査した。図8はこれらの試験をまとめるものである。
【0217】
反応は、3mol%Pd触媒を使用した場合ですら、ボロン酸を1.5当量に減らした場合に失速することが観察された。ボロン酸が1.8当量であった場合、反応完了後の残留MB5は限界に近かった(1%a/a未満)。鈴木カップリングが頑強であることを確実にするために、わずかに高いレベル(2.0当量)のMB7を、このプロセスの最終的な手順に設定した。過剰な残留MB7が、生成物単離工程の間に首尾よく除去されたことに注目すべきである。
【0218】
数種の溶媒系を調査して、鈴木カップリングを最適化した。実験結果を図9に列挙する。
【0219】
ジオキサン:水を、よりクリーンな反応が得られるので有益な系として特定した一方で、他の溶媒系は、失速かより高いレベルの不純物のいずれかをもたらした。ジオキサンはクラス2溶媒であり、他の溶媒より低いICH限界を有するが、それでもジオキサン:水溶媒系を最終プロセスのために選択したが、その理由は、ジオキサンが優れた性能を与え、生成物単離/再結晶化操作の後で最終API中の要求される限界を満たすように減少させ得るからであり、それは以前のGMP製造で実証された。
【0220】
ジオキサン:水溶媒系の比をさらに評価し、結果を図10にまとめる。水の減少(14:1 v/v ジオキサン:水;図10、エントリー1)により反応が緩徐になり、より高い水(2:1 v/v ジオキサン:水;図10、エントリー3)はより高レベルの不純物をもたらした。7:1 v/v ジオキサン:水は最良の結果を与え、したがって、このプロセスの最終的な溶媒比として設定した。
【0221】
このカップリングの総溶媒体積も評価した。図11は、これらの実験結果のまとめである。
【0222】
24部と34部の間で同等な性能があった(図11;エントリー1及び2)。18部も許容できると見なされたが、性能は低下した。12部を利用した場合カップリングは失速した(恐らく、生じた二相の反応条件のため)。したがって、このカップリングの体積を、最終プロセスのために24部であると選択した。
【0223】
この鈴木カップリングのための反応温度も調査した。この試験のまとめた結果を図12において表にする。
【0224】
上昇した温度(71~72℃;図12中のエントリー4)は、増加したレベルのMC0(Z異性体)を与えた。50~55℃の反応(図12中のエントリー1)はわずかによりクリーンであったが、より緩徐だった。55~60℃又は60~65℃での反応は同等な性能をもたらした。最終的プロセスを55~60℃に設定した。
【0225】
図13は、鈴木カップリングの脱気された、及び脱気されていない反応(試薬/溶媒組み合わせ後)の結果の比較である。
【0226】
鈴木カップリングは、試薬/溶媒組み合わせ後に激しい脱気なしに良好に作用することが見出された。加熱前に反応混合物を脱気することは、頑強さを確実にするために望まれる場合実行できる。
【0227】
数種の塩基を、以下に議論されるボロン酸分解試験と同時に評価した。これらの異なる塩基試験を、反応の性能に影響し得る因子としてpHを評価すると考えることができる。関連した結果を図14にまとめる。
【0228】
POをCsCOの代わりに使用する場合(図14、エントリー2)、反応は失速した。0.25当量CsCO/0.25当量CsHCOの1:1混合物(図14、エントリー3)を使用した場合、反応はやはり失速したが、さらなるCsHCO(0.25当量)を入れることにより再開することができ、それにより、塩基充填量が基準状態のものに等しいレベルに増加した(図14、エントリー1)。0.25当量CsCO/0.50当量CsOHの混合物を使用する反応(図14、エントリー4)は、CsCOのみの使用と同等な性能を示した。これらの結果は、CO排出ガス率の変動が、規模拡大時にプロセス性能に影響しそうにないことを示す。
【0229】
一般的反応条件工程3で述べた通り、上記のセットの実験の完了時に、以下の反応条件を推奨した:1.0当量MB5、2.0当量MB7、0.5当量CsCO、24部の脱気されたジオキサン:HO 7:1 v/v、2mol%Strem amphosパラダサイクル第2世代、55~60℃で7~7.5時間。以前の手順に対する顕著な変化及び改善を図15A及び図15Bにまとめる。
【0230】
本明細書に引用される全ての特許、公開された出願、及び参考文献の開示は、全体として参照により組み込まれる。
【0231】
本発明は、その例の実施形態を参照して詳細に示され記載されてきたが、添付される特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱せずに、形態及び詳細の種々の変化が本明細書になされ得ることが当業者により理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15A
図15B
図16
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【国際調査報告】