(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】エレベータ設備のための駆動システム、エレベータ設備、およびエレベータ設備の支持要素上に駆動部を設置するための方法
(51)【国際特許分類】
B66B 11/04 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B66B11/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571585
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022063496
(87)【国際公開番号】W WO2022243398
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロ・ヤーコノ,ロメオ
(72)【発明者】
【氏名】ダピース,アレサンドロ
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306BC04
(57)【要約】
駆動装置(3)と、駆動装置(3)をエレベータ設備の支持要素(5)に締結するための駆動サスペンション(7)とを備え、駆動サスペンション(7)は、駆動装置(3)を支持要素(5)に傾動可能に取り付けるための回転ジョイント(9)と、回転ジョイント(9)を中心に駆動装置(3)の傾きを設定するための調整装置(11)と、を備える、エレベータ設備のための駆動システム(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ設備のための駆動システム(1)であって、
駆動装置(3)と、
エレベータ設備の支持要素(5)に駆動装置(3)を締結するための駆動サスペンション(7)と、
を備え、
駆動サスペンション(7)は、
-回転ジョイント(9)であって、駆動装置(3)を支持要素(5)に締結することができ、かつ駆動装置(3)を支持要素(5)に傾動可能に取り付けるように設計された回転ジョイント(9)と、
-回転ジョイント(9)の周りの駆動装置(3)の傾きを設定するための調整装置(11)と、
を備え、
回転ジョイント(9)は、
支持要素(5)に締結するように設計された固定部(21)と、
駆動装置(3)に締結された第1のサスペンション部(23)と、
を備え、
固定部(21)と第1のサスペンション部(23)とは、回転軸線(31)を中心に回転可能に互いに接続されており、
調整装置(11)は、
駆動装置(3)に締結され、かつ固定部(21)に接続された第2のサスペンション部(41)を備え、
固定部(21)および第2のサスペンション部(41)は、設定可能に互いに対して変位可能であり、
固定部(21)は、少なくとも2つの部分に設計され、少なくとも1つの第1の金属薄板部(25)と少なくとも1つの第2の金属薄板部(27)とを有し、第1の金属薄板部(25)は、第1のサスペンション部(23)に締結し、かつ支持要素(5)に締結するように設計され、第2の金属薄板部(27)は、第2のサスペンション部(41)に締結するように設計され、第1の金属薄板部(25)と第2の金属薄板部(27)とは、リベット(28)によって互いに接続されることが好ましく、第2の金属薄板部(27)は、U字形輪郭として設計されることが好ましい、エレベータ設備のための駆動システム(1)。
【請求項2】
駆動システム(1)は、設置状態において、シャフト内に形成された摩擦駆動プーリ(13)を有する、略水平に延在するシャフトまたはシャフト線(61)を備えるように設計される、請求項1に記載の駆動システム(1)。
【請求項3】
回転ジョイント(9)は、略水平のシャフト軸線(61)の上方に配置され、調整装置(11)は、シャフト軸線(61)の下方に配置される、請求項2に記載の駆動システム(1)。
【請求項4】
エレベータかごを案内するためのガイドレールを備え、ガイドレールは支持要素(5)を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項5】
固定部(21)は、少なくとも1つの円弧状縁部(22)を有するように設計され、円弧状縁部(22)は、好ましくは、設置状態において摩擦駆動プーリ(13)の真上に延在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項6】
固定部(21)および支持要素(5)は、固定部(21)が支持要素(5)内に部分的に挿入されることができ、挿入状態の端部位置で支持要素(5)に締結されることができるるように設計される、請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項7】
第1のサスペンション部(23)は、少なくとも1つの第1の開口部を有し、固定部(21)は、少なくとも1つの第2の開口部を有し、回転ジョイント(9)は、少なくとも1つの第1の開口部および少なくとも1つの第2の開口部を通って案内される接続要素(29)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項8】
回転ジョイント(9)を中心とした駆動装置(3)の傾きは、第2のサスペンション部(41)を固定部(21)に対して変位させることによって設定されることができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項9】
駆動サスペンション(7)は、少なくとも1つの第1の分離要素(47)を備え、第1の分離要素(47)は、駆動装置(3)から支持要素(5)への振動または構造物伝播ノイズの伝達を低減または防止するように構成され、第1の分離要素(47)は、好ましくは回転ジョイント9に取り付けられ、駆動サスペンションは、好ましくは第2の分離要素(48)を有し、第2の分離要素(48)は、好ましくは調整装置(11)に取り付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項10】
エレベータ設備(51)であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の駆動システム(1)と、
エレベータかご(53)と、
キャリア手段(57)を介してエレベータかご(53)に接続された釣合おもり(55)と、
を備え、
駆動装置(3)はキャリア手段(57)を駆動するように設計された、エレベータ設備(51)。
【請求項11】
駆動装置(3)は、エレベータ設備(51)の上端領域に配置され、好ましくは、少なくとも1つのさらなる駆動システム(71)を備え、キャリア手段(57)は、好ましくはベルトを備え、エレベータかご(53)は、好ましくは、駆動システム(1)に面する駆動部側側壁(63)を有し、駆動部のシャフト軸線(61)は、好ましくは、駆動部側側壁(63)に対して少なくとも略平行に延在する、請求項11に記載のエレベータ設備(51)。
【請求項12】
エレベータ設備(51)、特に請求項10または11のいずれかに記載のエレベータ設備(51)の支持要素(5)上に駆動装置(3)を設置するための方法であって、
駆動部/駆動サスペンションユニット(2)を形成するために、駆動装置(3)および駆動サスペンション(7)を事前に組み込むことと、
事前に組み込まれた駆動サスペンションユニット(2)を、端部位置に達するまで支持要素(5)に挿入し、続いて駆動サスペンションユニット(2)を支持要素(5)に締結することと、
回転ジョイント(9)を中心とした駆動装置(3)の傾きを設定することと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ設備のための駆動システム、エレベータ設備、およびエレベータ設備の支持要素上に駆動部を設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人または荷物を輸送するための既知のエレベータ設備は、エレベータシャフト内で垂直に移動されることができるエレベータかごを含む。エレベータかごは、通常、キャリア手段を介して釣合おもりに接続される。ガイドレールに沿ってエレベータかごを移動させるための駆動部は、例えば、エレベータシャフトのシャフトヘッド内の駆動アセンブリ上またはエレベータシャフトの上方の機械室に配置されることができる。しかしながら、従来知られているエレベータ設備用駆動システムは、例えばエレベータ設備のシャフトヘッド内に多くの空間を必要とするか、または設置が複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術から知られている駆動システムまたはエレベータ設備と比較して改善されたエレベータ設備のための駆動システムを詳細に記述することであり、このエレベータ設備は、特に、駆動システムに関する必要なスペースが低減された、または駆動システムの組み立てが単純化される。本発明の別の目的は、エレベータ設備の駆動部を設置するための方法を詳細に記述することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の駆動システムおよび追加の独立請求項に記載の方法によって達成される。有利な展開および実施形態は、従属請求項および本明細書に見出されることができる。
【0005】
本発明の一態様は、駆動部と、駆動部をエレベータ設備の支持要素に締結するための駆動サスペンションと、を備えるエレベータ設備のための駆動システムに関し、駆動サスペンションは、駆動部を支持要素に締結することができ、駆動部を支持要素に傾動可能に取り付けるように設計された回転ジョイントと、回転ジョイントを中心に駆動部の傾きを設定するための調整装置と、を備える。
【0006】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる駆動システムと、エレベータかごと、キャリア手段を介してエレベータかごに接続された釣合おもりとを備えるエレベータ設備に関し、駆動部はキャリア手段を駆動するように設計される。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、エレベータ設備の支持要素上に駆動部を設置するための方法であって、回転ジョイントによって駆動部を支持要素上に取り付けるステップと、支持要素に対して駆動部を安定させるステップと、回転ジョイントを中心に駆動部の傾きを設定するステップと、を備える方法に関する。
【0008】
好ましい実施形態では、駆動部は、モータ、特にモータおよびギアを含む。駆動部はギアレスとすることができる。駆動部は駆動シャフトを有する。駆動シャフトは、駆動部のシャフト軸線を中心に回転可能である。駆動部の摩擦駆動プーリは、駆動シャフトに締結されることができる。摩擦駆動プーリは、エレベータ設備のキャリア手段と駆動部との間の接触を提供するように設計されている。特に、摩擦駆動プーリは、駆動部によって提供される力をキャリア手段へ伝達するように設計されている。駆動サスペンションは、好ましくは、駆動部が支持要素に締結されると、摩擦駆動プーリが駆動部のモータと支持要素との間に配置されるように設計される。
【0009】
好ましくは、駆動システムは、設置状態において、シャフト内に形成された摩擦駆動プーリを有する略水平に延在するシャフトまたはシャフト軸線を備えるように設計される。
【0010】
好ましくは、回転ジョイントは、略水平に延在するシャフト軸線の上方に配置され、調整装置は、シャフト軸線の下方に配置される。
【0011】
駆動システムは、エレベータかごを案内するためのガイドレールを含むことが好ましく、ガイドレールは支持要素を形成する。さらに好ましい実施形態では、支持要素は、エレベータ設備のシャフト壁またはエレベータ設備のエレベータシャフト内の運搬構造とすることができる。
【0012】
好ましい実施形態では、駆動サスペンションの回転ジョイントは、駆動部と支持要素との間の回転可能な接続部であると理解されるべきである。回転ジョイントの回転軸線は、好ましくは、駆動部のシャフト軸線に対して少なくとも略垂直である。「少なくとも略垂直」とは、ここでは特に、垂直配向、または垂直配向から最大15°、例えば最大10°、または最大5°逸脱した配向を意味すると理解されるべきである。実施形態では、回転軸線は、駆動部のシャフト軸線に対して少なくとも略垂直に、かつガイドレールの長手方向軸線に対して垂直に位置合わせされることができる。駆動部のシャフト軸線は、回転ジョイントの回転軸線に対して少なくとも略垂直に、かつ垂直方向に対して少なくとも略垂直に、例えばガイドレールの長手方向軸線に対して垂直に位置合わせされることができる。好ましい実施形態では、駆動部のシャフト軸線は、ガイドレールと位置合わせされる。
【0013】
調整装置は、回転ジョイントの下方に配置されることが好ましい。回転ジョイントは、特に、駆動部から支持要素に引張荷重を伝えるように設計される。調整装置は、例えば、駆動部から支持要素に圧縮荷重を伝えるように設計される。実施形態では、回転ジョイントは、駆動部の摩擦駆動プーリの上方に配置され、調整装置は、摩擦駆動プーリの下方に配置される。特に、摩擦駆動プーリは、回転ジョイントと調整装置との間に配置される。さらなる実施形態では、調整装置は、摩擦駆動プーリの周りに配置される。例えば、調整装置は、支持要素の方向に摩擦駆動プーリの周りにケージの形態で延在することができ、調整装置は、キャリア手段が通過するための少なくとも1つの窓を有する。好ましい実施形態では、摩擦駆動プーリは、最大150mm、特に最大100mm、または最大70mmの摩擦駆動プーリ直径を有する。
【0014】
好ましい実施形態では、駆動サスペンションの回転ジョイントは、支持要素に締結されるように設計された固定部と、駆動部に締結される第1のサスペンション部とを備える。固定部と第1のサスペンション部とは、回転軸線を中心に回転可能に互いに接続されている。固定部は、好ましくは、支持要素に堅固に接続され、第1のサスペンション部は、駆動部に堅固に接続される。堅固な接続は、接合方法、例えばねじ止めによってもたらされることができる。
【0015】
好ましくは、固定部は、少なくとも1つの円弧状縁部を有するように設計され、円弧状縁部は、設置状態において摩擦駆動プーリの真上を延びる。
【0016】
円弧状縁部は、(設置状態において支持手段を介して摩擦駆動プーリから吊り下げられている駆動部およびキャビンの重量に起因して)縁部に作用する力が縁部にわたって均一に分布するという利点を有する。したがって、あまり有利でない矩形の設計と比較して、互いに直角に延在する縁部の交差部で力の集中を防止することができる。さらに、摩擦駆動プーリの真上に円弧状縁部を配置することにより、摩擦駆動プーリの径方向一端から摩擦駆動プーリの他端に向かって円弧状に延在する一種の円弧状過電圧が形成され得る。したがって、円弧状縁部と摩擦駆動プーリの摩擦面との間の距離は、少なくとも最初は、一方の径方向端部から他方の径方向端部まで増加する。したがって、円弧状縁部は、摩擦駆動プーリの径方向端部で始まる横方向境界を摩擦面の真上で形成する。したがって、支持手段の横方向の移動は、縁部によって防止される。これにより、キャリア手段が、この目的のために設けられた摩擦駆動プーリ上に追加の縁部なしに飛び出すことが防止される。
【0017】
好ましくは、固定部および支持要素は、固定部が支持要素内に部分的に挿入されることができ、挿入状態の端部位置で支持要素に締結されることができるように設計される。
【0018】
結果として、駆動部および駆動サスペンションは、事前に組み込まれた駆動部/駆動サスペンションユニットとして既に供給されることができ、この目的のために支持要素に設けられた開口部に現場で容易に挿入されることができ、挿入状態の端部位置において締結されることができる。したがって、駆動部/駆動サスペンションユニットの比較的複雑な設置を現場での設置から分離することができる。このようにして、特に、設置が比較的複雑な回転ジョイントが現場で設置される必要がない。したがって、摩擦駆動プーリの向きの微調整の機能は、現場での駆動部(および駆動サスペンション)の容易な設置と組み合わされることができる。
【0019】
好ましい実施形態では、第1のサスペンション部は少なくとも1つの第1の開口部を有し、固定部は少なくとも1つの第2の開口部を有する。回転ジョイントは、少なくとも1つの第1の開口部および少なくとも1つの第2の開口部を通って案内される接続要素を備える。接続要素は、例えば、ピン、ボルト、またはねじとすることができる。特に、接続要素は、回転ジョイントの回転軸線に沿って配置される。
【0020】
好ましい実施形態では、回転軸線は、摩擦駆動プーリの中心の真上に配置され、その結果、駆動部の重量が無視された場合に、摩擦駆動プーリの自動位置合わせが生じる。
【0021】
好ましい実施形態では、回転ジョイントはヒンジとして設計される。実施形態では、第1のサスペンション部は、回転ジョイントの回転軸線に沿って少なくとも1つの第1の開口部を有する。固定部は、回転ジョイントの回転軸線に沿って少なくとも2つの第2の開口部を有する。第1のサスペンション部は、固定部の少なくとも2つの第2の開口部の間に延在し、第1のサスペンション部の少なくとも1つの第1の開口部は、固定部の2つの第2の開口部の間に配置される。
【0022】
好ましい実施形態では、回転ジョイントは、回転軸線に垂直な方向のトルクまたはトルク成分を支持するように設計される。特に、回転ジョイントは、駆動部のシャフト軸線の方向またはガイドレールの長手方向軸線の方向にトルクまたはトルク成分を支持するように設計される。固定部および第1のサスペンション部は、少なくとも2つの接触面を介して回転軸線に沿って接触することができ、接触面は、回転軸線の周り、特に回転軸線の周りで回転軸線に垂直に延在する。特に、固定部および第1のサスペンション部は、トルク支持部を形成することができる。例えば、回転ジョイントは、キャリア手段の駆動あるいはエレベータかごまたは釣合おもりの移動から生じるトルクまたはトルク成分を少なくとも部分的に支持することができる。
【0023】
好ましくは、駆動サスペンションの調整装置は、支持要素に締結するように設計された固定部と、駆動部に締結され、固定部に接続された第2のサスペンション部と、を備える。固定部および第2のサスペンション部は、設定可能な方法で互いに対して変位可能である。調整装置は、特に線形調整装置として設計されることができる。調整装置は、調整ねじを備えることができ、調整装置は、調整ねじを回転させることによって、固定部と第2のサスペンション部とを互いに対して変位させるように、特にそれらを互いに対して直線的に移動させるように設計される。第2のサスペンション部は、好ましくは駆動部に堅固に接続され、固定部は支持要素に堅固に接続される。
【0024】
好ましい実施形態では、回転ジョイントの周りの駆動部の傾きは、固定部に対して第2のサスペンション部を変位させることによって設定されることができる。例えば、調整装置の調整ねじを回転させることによって傾きが設定されることができ、調整ねじを回転させることによって、第2のサスペンション部が固定部に対して変位される。特に、駆動サスペンションは、変位によって、支持要素に対して、例えばガイドレールに対して、回転ジョイントの回転軸線を中心に駆動部を傾けるように設計されている。特に、20°の最大傾き、例えば最大10°、または最大5°が、変位によって設定されることができる。実施形態では、固定部は、回転ジョイントおよび調整装置の一部である。
【0025】
駆動サスペンションは、好ましくは、少なくとも1つの第1の分離要素、特に機械的分離要素またはバッファ要素を備え、少なくとも第1の分離要素は、駆動装置から支持要素への振動または構造物伝播ノイズの伝達を低減または防止するように構成され、第1の分離要素は、好ましくは回転ジョイントに取り付けられ、駆動サスペンションは、好ましくは第2の分離要素を有し、第2の分離要素は、好ましくは調整装置に取り付けられる。分離要素は、好ましくはばね減衰要素である。駆動部は、分離要素によって、振動または構造物伝播ノイズの伝播に関して支持要素から分離されることができる。特に、分離要素は、駆動部と支持要素との間の振動または構造物伝播ノイズを減衰させるように設計される。分離要素は、第1のサスペンション部と固定部との間、または第2のサスペンション部と固定部との間に配置されることができる。接続手段は、第1のサスペンション部の少なくとも1つの第1の開口部と固定部の少なくとも1つの第2の開口部とを通過するように配置され、好ましくは、第1の分離要素によって少なくとも部分的に包まれる。特に、接続手段は、少なくとも1つの第1の開口部の領域、例えば、少なくとも1つの第1の開口部および少なくとも1つの第2の開口部の領域において、分離要素によって囲まれている。実施形態では、少なくとも1つの分離要素は、プラスチックまたはゴムを備える。少なくとも1つの分離要素は、本明細書に記載の実施形態による駆動システムを備えるエレベータ設備が設置される建物への構造物伝播ノイズの拡散が防止されるという利点を提供することができる。
【0026】
好ましい実施形態では、駆動サスペンション、特に第1のサスペンション部分または第2のサスペンション部分は、駆動サスペンションを駆動部のサスペンション側端部に締結するように設計されたアダプタプレートを備える。アダプタプレートは、ねじ止めなどで駆動部に堅固に接続される。アダプタプレートは、駆動部の駆動シャフトが通過するためのシャフト開口部を有することができる。実施形態では、アダプタプレートは別個の構成要素として製造される。さらなる実施形態では、アダプタプレートは、第1のサスペンション部の一部として、または第2のサスペンション部の一部として製造される。特に、アダプタプレートを含む第1のサスペンション部および第2のサスペンション部は、一体に製造されることができる。
【0027】
実施形態によれば、エレベータ設備は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる駆動システムを備える。エレベータ設備は、エレベータかごを備える。エレベータかごは、ガイドレールに沿って移動されるように設計されている。エレベータ設備は、キャリア手段を介してエレベータかごに接続される釣合おもりを備える。ガイドレールは、好ましくは、エレベータかごと釣合おもりとの間に配置される。駆動部は、キャリア手段を駆動するように設計されている。キャリア手段が駆動される結果として、エレベータかごおよび釣合おもりは、例えば互いに反対の垂直方向に垂直に移動されることができる。「上向き」、「下向き」、「水平」、または「垂直」に関する方向の記述は、ここでは特に重力の方向に関して理解されるべきである。
【0028】
好ましい実施形態では、駆動部は、エレベータ設備の上端領域に配置されている。エレベータ設備の上端領域は、例えば、エレベータ設備の垂直領域を意味すると理解されるべきであり、垂直領域は、エレベータ設備の高さの上部30%、特に上部20%、または上部10%に対応する。例えば、駆動部は、低いシャフトヘッド内に配置されることができる。特に、エレベータ設備は、機械室なしで設計されることができる。
【0029】
キャリア手段は、好ましくはベルトを備える。例えば、ベルトは、被覆スチールケーブルなどの被覆コードで作製されてもよい。断面において、ベルトは、ベルトの厚さより大きい幅を有する。例えば、支持要素に対する駆動部の傾きを設定することにより、ベルトのスキューまたはベルトの不均一な負荷を防止または低減することができる。特に、傾きは、エレベータ設備の寿命にわたって再調整されることができる。さらなる実施形態では、キャリア手段は、少なくとも1本のケーブル、例えば少なくとも1本のスチールケーブルを備える。
【0030】
好ましい実施形態によるエレベータ設備では、エレベータかごは、駆動システムに面する駆動部側側壁を有し、駆動装置のシャフト軸線は、駆動部側側壁に対して少なくとも略平行に延びる。「少なくとも略平行」とは、ここでは特に、平行な位置合わせ、または平行な位置合わせから最大20°、例えば最大10°、または最大5°逸脱した位置合わせを意味すると理解されるべきである。特に、駆動部の摩擦駆動プーリは、エレベータ設備の平面図において釣合おもりとエレベータかごとの間に配置されることができる。
【0031】
好ましい実施形態は、少なくとも1つのさらなる駆動システムを含む。特に、エレベータ設備は、本明細書に記載の実施形態による少なくとも1つのさらなる駆動システムを含む。駆動システムおよび少なくとも1つのさらなる駆動システムは、エレベータかごの両側に配置されることができる。少なくとも1つのさらなる駆動システムは、好ましくは、エレベータかご、特にさらなる釣合おもりに接続されたさらなるキャリア手段を駆動する。少なくとも2つの駆動システムの使用は、より小型またはより軽量の駆動部が使用されることができるという利点を提供することができる。特に、駆動システムに関する必要なスペースが低減されることができる。例えば、エレベータ設備の平面図において、エレベータかごとシャフト壁または釣合おもりとの間に駆動部が配置されることができる。
【0032】
設置方法の好ましい実施形態は、駆動サスペンションユニットを形成するための駆動部および駆動サスペンションの事前組み込みを備える。これは、駆動サスペンションの第1のサスペンション部を駆動部に締結し、固定部を第1のサスペンション部に締結することによって行われる。したがって、それは第1のサスペンション部を固定部に接続して、駆動サスペンションの回転ジョイントを形成することを備える。例えば、駆動部は、第1のサスペンション部と共に、第1のサスペンション部の開口部および固定部の開口部が、形成される回転ジョイントの回転軸線に沿って配置されるように、固定部に対して配置されることができる。次いで、例えばピン、ボルト、またはねじなどの接続手段を開口部を通して案内または配置して、回転ジョイントを形成することができる。この方法ステップは、好ましくは、工場での製造中に既に実施されている。固定部に接続される第2のサスペンション部もまた工場で設置済みであることが好ましく、その結果、傾き調整可能な駆動サスペンションユニットが現場に提供される。
【0033】
本方法は、好ましくは、事前に組み込まれた駆動サスペンションユニットを、終端位置に達するまで支持要素に挿入し、続いて、例えばねじによって駆動サスペンションユニットを支持要素(5)に締結するステップをさらに備える。
【0034】
この方法は、好ましくは、傾きを設定することと、第2のサスペンション部を固定部に対して変位させることによって、駆動部を支持要素に対して位置合わせすることとを備える。変位は、調整装置の調整ねじを回転させることによって実行されることができる。特に、回転ジョイントの回転軸線を中心とした傾きが設定される。好ましい方法では、駆動部は、支持要素としてガイドレール上に設置される。
【0035】
好ましい実施形態は、駆動部が支持要素上、例えばガイドレール上に省スペースで設置されることができるという従来技術を超える利点を提供することができる。特に、好ましい実施形態によれば、駆動システムは、ガイドレールの上または上方に上部構造なしで、または機械室なしで設置されることができる。好ましい実施形態による駆動システムは、低いシャフトヘッドを有するエレベータシャフトに設置されることができる。特に、実施形態によれば、駆動システムは、特に小型または軽量の駆動部を備えることができる。好ましい実施形態はまた、支持要素に対する駆動部の傾きが設定され得るという利点を提供することができる。特に、ベルトがキャリア手段として使用される場合、スキューが防止または低減されることができる。傾きは、エレベータ設備の寿命にわたって再調整されることができる。
【0036】
本発明の様々な態様は、図面と併せて実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】駆動部/駆動サスペンションユニットの好ましい実施形態の概略図である。
【
図3】
図1および
図2に示す駆動部/駆動サスペンションユニットが設置された駆動システムの好ましい実施形態の概略図である。
【
図4】エレベータ設備の好ましい実施形態の概略図である。
【
図5】好ましい実施形態によるエレベータ設備の概略平面図である。
【
図6】エレベータ設備の支持要素上に駆動部を設置するための好ましい方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の可能な実施形態による駆動部/駆動サスペンションユニット2の概略図を示す。駆動部/駆動サスペンションユニット2は、駆動サスペンション7を介して取り付けられた駆動装置3を備える。
図2は、
図1の駆動部/駆動サスペンションユニット2の概略断面図を示す。断面図は、ガイドレール(図示せず、
図3参照)の長手方向軸線に平行な駆動装置3の駆動シャフト15のシャフト軸線61に沿った断面を示す。
図1および
図2において、駆動装置3のシャフト軸線61は、回転ジョイント9の回転軸線31に対して少なくとも略垂直に位置合わせされる。特に、駆動システム1は、シャフト軸線61がエレベータかごの駆動部側側壁に対して少なくとも略平行に延びるように設計される。
【0039】
駆動サスペンション7は、駆動装置3を支持要素5に傾動可能に取り付けるための回転ジョイント9を備える。回転ジョイント9は、支持要素5に締結されることができる固定部21を備える(図示せず、
図3参照)。固定部21は、摩擦駆動プーリ13の真上に延在する円弧状縁部22を有する。回転ジョイント9はまた、駆動装置3に締結される第1のサスペンション部23を備える。第1のサスペンション部23は、駆動装置3に堅固に接続され、特にねじ止めされる。図示の実施形態では、第1のサスペンション部23は、回転ジョイント9の回転軸線31に沿った開口部を有する。
図1および
図2から分かるように、固定部21は、回転ジョイント9の回転軸線31に沿った2つの開口部を有する。例えば
図2に示すように、サスペンション部23は、固定部21の2つの開口部の間に延在する。固定部と第1のサスペンション部とのヒンジ状の連結は、例えば、回転ジョイント9の回転軸線31に垂直なトルクに関して、特にガイドレールの長手方向軸線の方向のトルクに関して、回転ジョイント9の曲げ剛性を高めることができる。接続手段29が開口部を通して配置されている。図示の実施形態では、接続手段29は、ボルト、特にねじ付きボルトとして設計されている。
【0040】
駆動サスペンション7は、調整装置11を備える。調整装置11は、固定部21および第2のサスペンション部41を備える。第2のサスペンション部41は、固定部21に対して直線的に変位されることができる。
図1、
図2および
図3の実施形態では、第2のサスペンション部41は、調整装置11の調整ねじ43を回転させることによって、固定部21に対して変位されることができる。第2のサスペンション部41を固定部21に対して変位させることによって、支持要素5に対する回転ジョイント9の回転軸線31を中心とした駆動装置3の傾きが設定または調整されることができる。特に、支持要素5に対する駆動シャフト15および駆動シャフト15上に配置された摩擦駆動プーリ13の傾きも設定されることができる。摩擦駆動プーリ13の傾きを設定することにより、例えば、キャリア手段としてベルトを使用する場合に、ベルトのスキューを防止または低減することができる。
【0041】
図示の実施形態の駆動サスペンション7は、第2の分離要素48を備え、第2の分離要素48は、第1のサスペンション部23と固定部21との間、および第2のサスペンション部41と固定部21との間に配置される。特に、第1のサスペンション部23および固定部21の開口部の領域において、接続手段29の周囲に第1の分離要素47が配置される。分離要素47、48は、駆動装置3から支持要素5への振動または構造物伝播ノイズの伝播を低減する、特に減衰させるように設計される(
図3参照)。
【0042】
図示の実施形態では、駆動装置3はギアレス電気モータとして設計されている。駆動サスペンション7は、電気モータに締結されたアダプタプレート33を備える。第1のサスペンション部23および第2のサスペンション部41は、アダプタプレート33を介して駆動装置3に締結される。
【0043】
図3は、駆動システム1を形成するように設置された駆動部/駆動サスペンションユニット2の実施形態の図を示し、駆動部/駆動サスペンションユニット2は、支持要素5に挿入され、それに締結される。
図3において、支持要素は、エレベータかごを案内するためのガイドレールとして設計されており、駆動サスペンション7の固定部21を挿入する可能性がガイドレール5の端部領域に設けられている。固定部21は、支持要素5に堅固に接続されている。
【0044】
図4および
図5は、エレベータ設備51の一実施形態を示す。エレベータ設備51は、本明細書に記載の実施形態による駆動システム1を備え、駆動システム1は、駆動装置3と、駆動装置3を支持要素5に締結するための駆動サスペンション7とを備える。
図4および
図5において、支持要素5として、エレベータかご53を案内するガイドレールが設けられている。エレベータかご53は、キャリア手段57を介して釣合おもり55に接続される。キャリア手段57、例えばベルトは、駆動装置3の摩擦駆動プーリ13上に案内される。駆動装置3は、キャリア手段57を駆動し、エレベータかご53および釣合おもり55を垂直に移動させるように設計されている。
【0045】
図4および
図5において、駆動装置7は、エレベータ設備51の上端領域に配置されている。例として
図5のエレベータ設備51の平面図に示すように、駆動装置3のシャフト軸線61は、エレベータかご53の駆動部側側壁63に対して少なくとも略平行に位置合わせされる。駆動サスペンション7の回転ジョイントの回転軸線31は、シャフト軸線61に対して少なくとも略垂直に、かつ垂直方向に対して少なくとも略垂直に向けられている。ガイドレールの垂直方向または長手方向軸線に対するシャフト軸線61の傾きは、例えば、少なくとも略垂直となるように設定される。
【0046】
図4および
図5のエレベータ設備51は、本明細書に記載の駆動システムの実施形態による、さらなる駆動システム71を有する。さらなる駆動システム71は、さらなる駆動装置73と、さらなる駆動サスペンション75と、を備え、さらなる駆動サスペンション75は、さらなる駆動装置73を、
図4および
図5のさらなるガイドレールによって形成されるさらなる支持要素79に締結するためのものである。さらなる駆動装置73は、エレベータかご53およびさらなる釣合おもり77に接続されたさらなるキャリア手段81を駆動するように設計されている。さらなる駆動システムの使用は、より小型またはより軽量の駆動部の使用を可能にすることができる。特に、シャフトヘッドまたはシャフトピット内の駆動部に関する必要なスペースが低減されることができる。さらに、より小型またはより軽量の駆動部がより容易に設置されることができる。
【0047】
図6は、一実施形態におけるエレベータ設備の支持要素上に駆動部を取り付けるための方法100を示す。方法100は、110において、駆動部/駆動サスペンションユニット(2)を形成するために駆動装置(3)および駆動サスペンション(7)を事前に組み込むことを備える。第1のサスペンション部および第2のサスペンション部は、アダプタプレートを介して駆動装置に締結される。次いで、ボルトが固定部の第1のサスペンション部の開口部を通って案内されてヒンジ状の回転ジョイントを形成するように、駆動部が位置決めされる。ボルトは固定されている。このステップは、完全に事前に組み込まれた駆動部/駆動サスペンションユニットが現場で利用可能であるように、工場で実行されることができる。
【0048】
事前組込みの後、駆動部/駆動サスペンションユニットは、120において支持要素に挿入され、挿入状態の終了位置で、駆動部/駆動サスペンションユニットは、例えばねじ止めによって支持要素に締結される。
【0049】
130において、回転ジョイントを中心とした駆動部の傾きは、調整ねじを回転させることによって設定される。駆動部または駆動部のシャフト軸線の傾きは、シャフト軸線が垂直方向に対して少なくとも略垂直に延びるように、またはベルトのスキューが防止または低減されるように設定される。
【国際調査報告】