(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】光電子デバイス、単一光子生成器、メモリ、マルチプレクサ、インプラント、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/02 20100101AFI20240514BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L33/02
H01L33/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571686
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022063421
(87)【国際公開番号】W WO2022243364
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507241492
【氏名又は名称】アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム)
(71)【出願人】
【識別番号】323002277
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】506018536
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ 3
(71)【出願人】
【識別番号】508120787
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシヨナル・ポリテクニーク・ドゥ・トゥールーズ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ペルノ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・マサンテ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ルージェ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・カー
(72)【発明者】
【氏名】クレマン・エベール
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA24
5F241CA07
5F241CA33
5F241CA34
5F241CA41
5F241CA48
5F241CA55
5F241CA57
5F241CA93
(57)【要約】
本発明は、第1の部分(15)、第2の部分(20)、第1の接点(25)、および第2の接点(30)を含むデバイス(10)に関し、第1の部分(15)は、第1のドーピングを有する半導体から作られ、第2の部分(20)は、第1のドーピングとは異なる第2のドーピングを有する半導体から作られ、第1の部分(15)および第2の部分(20)は、第1の部分(15)の中に空乏領域(70)を含むp/n接合を形成し、接点(25、30)は、接点(25、30)の間に電圧(V1)が印加されると空乏領域(70)の寸法が電圧の値に依存するように構成され、第2の部分(20)のドーパントに対してイオン化エネルギーが規定される。
デバイス(10)は、イオン化エネルギーよりも大きいエネルギーを有する放射を生成し放射を用いて第2の部分(20)を照射する放出器(40)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分(15)、第2の部分(20)、第1の接点(25)、および第2の接点(30)を含む光電子デバイス(10)であって、前記第1の部分(15)が、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第1のタイプのドーピングを有する第1の半導体材料から作られ、前記第2の部分(20)が、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第2のタイプのドーピングを有する第2の半導体材料から作られ、前記第2のタイプのドーピングが、前記第1のタイプのドーピングとは異なり、前記第1の部分(15)および前記第2の部分(20)が、互いに接触しており、前記第1の部分(15)の中に空乏領域(70)を含むp/n接合を形成し、前記第1の接点(25)が、前記第1の部分(15)に電気的に接続され、前記第2の接点(30)が、前記第2の部分(20)に電気的に接続され、前記第1の接点(25)および前記第2の接点(30)が、前記第1の接点(25)と前記第2の接点(30)との間に電圧(V1)が印加されると前記空乏領域(70)の寸法が前記電圧(V1)の値に依存するように構成され、
前記第2の部分(20)のドーパントに対してイオン化エネルギーが規定され、前記イオン化エネルギーが、n型の材料にとって前記ドーパントのエネルギーレベルと伝導帯のエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、p型の材料にとって価電子帯のエネルギーレベルと前記ドーパントのエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、
前記光電子デバイス(10)が、前記第2の部分(20)の前記ドーパントの前記イオン化エネルギー以上の光子エネルギーを有する電磁放射を生成し前記放射を用いて前記第2の部分(20)を照射するように構成された放出器(40)をさらに含む、
光電子デバイス(10)。
【請求項2】
前記光子エネルギーが、前記第2の部分(20)のバンドギャップ値よりも厳密に小さく、前記バンドギャップ値が、前記第2の部分(20)の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーの差分である、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記第2の部分(20)の中のキャリアの熱エネルギーが前記イオン化エネルギーの1/10以下となるような値に前記第2の部分(20)の温度を維持するように構成された温度調整器(50)をさらに含む、請求項1または2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記放出器(40)による前記放射の前記生成を制御し、前記放射を用いて前記第2の部分(20)が照射される間、前記第1の接点(25)と前記第2の接点(30)との間の電圧(V1)の値を修正するように構成された、コントローラ(45)をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記光電子デバイス(10)が、トランジスタであり第3の電気接点(35)をさらに含み、前記第3の電気接点(35)が前記第1の部分(15)に電気的に接続され、前記第1の接点(25)がソースであり、前記第2の接点(30)がゲートであり、前記第3の接点(35)が前記トランジスタのドレインであり、前記第1の接点(25)および前記第2の接点(30)が、前記第1の接点(25)と前記第2の接点(30)との間の前記電圧(V1)の所与の値に対して、前記空乏領域(70)が前記第1の接点(25)と前記第3の接点(35)との間の、前記第1の部分(15)の中の電荷キャリアの通過を阻止するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記イオン化エネルギーが、0.4電子ボルト以上、特に1電子ボルト以上、特に1.5電子ボルト以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
前記第2の材料がダイヤモンドである、請求項6に記載の光電子デバイス。
【請求項8】
前記第2の材料の前記ドーパントが窒素原子である、請求項7に記載の光電子デバイス。
【請求項9】
前記第2の材料の前記ドーパントがリン原子である、請求項7に記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記第1の部分(15)の中に少なくとも1つのNV中心を備え、前記第1の接点(25)および前記第2の接点(30)が、前記第1の接点(25)と前記第2の接点(30)との間の前記電圧(V1)の第1の値に対して前記空乏領域(70)が前記NV中心を含み、かつ前記電圧(V1)の第2の値に対して前記空乏領域(70)が前記NV中心を含まないように構成される、請求項7から9のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の光電子デバイス(10)を含む単一光子生成器。
【請求項12】
少なくとも1つの請求項5に記載のトランジスタ(10)を含むメモリであって、前記トランジスタのオン状態またはオフ状態の形態で少なくとも1つの情報を記憶するように構成されるメモリ。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項5に記載のトランジスタ(10)を含む時間マルチプレクサ。
【請求項14】
請求項13に記載のマルチプレクサおよび/または少なくとも1つの請求項5に記載のトランジスタ(10)を含む、人間または動物の体の中に埋め込まれるのに適したインプラント。
【請求項15】
第1の部分(15)、第2の部分(20)、第1の接点(25)、および第2の接点(30)を含む光電子デバイス(10)を動作させるための方法であって、前記第1の部分(15)が、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第1のタイプのドーピングを有する第1の半導体材料から作られ、前記第2の部分(20)が、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第2のタイプのドーピングを有する第2の半導体材料から作られ、前記第2のタイプのドーピングが、前記第1のタイプのドーピングとは異なり、前記第1の部分(15)および前記第2の部分(20)が、互いに接触しており、前記第1の部分(15)の中に空乏領域(70)を含むp/n接合を形成し、前記第1の接点(25)が、前記第1の部分(15)に電気的に接続され、前記第2の接点(30)が、前記第2の部分(20)に電気的に接続され、
前記第2の部分(20)のドーパントに対してイオン化エネルギーが規定され、前記イオン化エネルギーが、n型の材料にとって前記ドーパントのエネルギーレベルと伝導帯のエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、p型の材料にとって価電子帯のエネルギーレベルと前記ドーパントのエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、前記方法が、その間に前記第1の接点(25)と前記第2の接点(30)との間の電圧(V1)が第1の値を有し前記空乏領域(70)が初期寸法を有する第1のステップ(100)を含み、
前記方法が、
- 前記第2の部分(20)の前記ドーパントの前記イオン化エネルギーよりも大きい光子エネルギーを有する電磁放射を用いて前記第2の部分(20)を照射するステップ(110)、および前記第2の部分(20)が照射される間、前記電圧(V1)を前記第1の値から第2の値に修正するステップと、
- 前記電圧(V1)の前記値の前記修正に応答して前記空乏領域(70)の寸法を修正するステップ(120)と、
- 前記照射を停止するステップ(130)と、
- 照射がない場合に前記電圧(V1)を前記第2の値から前記第1の値に修正するステップ(140)であって、前記空乏領域(70)の前記寸法が変更されないままである、ステップと、
- 前記放射を用いて前記第2の部分(20)を照射するステップ(150)であって、前記電圧(V1)が前記第1の値を有する、ステップ、およびそれに応答して前記空乏領域(70)の前記寸法を前記初期寸法に修正するステップとを含むことを特徴とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電子デバイスに関する。本発明はまた、単一光子生成器、メモリ、マルチプレクサ、インプラント、およびそのような光電子デバイスを実施する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの接点間に印加される電圧によってその特性が制御される半導体材料の少なくとも1つの部分を含む電子デバイスが、数多くの用途において使用される。
【0003】
たとえば、トランジスタは、異なるタイプのドーピングを有するドープされた2つの半導体部分の間の接合部を使用し、2つの接点間の電圧が、2つの部分のうちの少なくとも1つの中の接合部の空乏領域の拡張を修正する。詳細には、所与の値を有する電圧の使用は、その部分のうちの1つの、効果のある断片の中で空乏領域の拡張を引き起こすことができる。
【0004】
空乏領域は自由キャリアが存在しないかまたは極めて少数の自由キャリアしか存在しない領域であるので、いくつかの場合には、空乏領域の大きい拡張が、その部分のうちの1つに接続された2つの電気パッド間のすべての電気伝導を遮断する場合があるが、他の値の電圧に対して、導電性チャネルがこれらの2つのパッド間に存在する。
【0005】
したがって、そのようなデバイスは、それらの接点の間に電圧が印加されるかどうかに従って、かつこの電圧の値に従って、それらの2つの状態の間で急速に切り替わることができ、「接合型電界効果トランジスタ」または「JFET」と呼ばれる。同じタイプの制御を使用する他のタイプのデバイス、たとえば、MOSFETトランジスタ、または(とりわけ)単一光子放出器は、簡単かつ高速な方式で切り替わるために、このタイプの制御を有利に利用する。
【0006】
しかしながら、これらのデバイスは、持続的に電圧が印加されなければならないというまさにその理由のために、それらの状態のうちの、この電圧の印加を必要とする状態にとどまるために、無視できない数量のエネルギーを必要とする。したがって、特に長い期間にわたって所与の状態を維持する場合には、この不安定な性質に起因して、それらのエネルギー消費が大きい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、長い期間にわたって所与の状態を維持する場合に従来技術のデバイスよりもエネルギー消費が小さい光電子デバイスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、第1の部分、第2の部分、第1の接点、および第2の接点を含む光電子デバイスが提案され、第1の部分は、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第1のタイプのドーピングを有する第1の半導体材料から作られ、第2の部分は、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第2のタイプのドーピングを有する第2の半導体材料から作られ、第2のタイプのドーピングは、第1のタイプのドーピングとは異なり、第1の部分および第2の部分は、互いに接触しており、第1の部分の中に空乏領域を含むp/n接合を形成し、第1の接点は、第1の部分に電気的に接続され、第2の接点は、第2の部分に電気的に接続され、第1の接点および第2の接点は、第1の接点と第2の接点との間に電圧が印加されると空乏領域の寸法がその電圧の値に依存するように構成され、
第2の部分のドーパントに対してイオン化エネルギーが規定され、イオン化エネルギーは、n型の材料にとってドーパントのエネルギーレベルと伝導帯のエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、p型の材料にとって価電子帯のエネルギーレベルとドーパントのエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、
光電子デバイスは、第2の部分のドーパントのイオン化エネルギー以上の光子エネルギーを有する電磁放射を生成し放射を用いて第2の部分を照射するように構成された放出器をさらに含む。
【0009】
有利であるが必須ではない実施形態によれば、デバイスは、単独で採用されるかまたは技術的に可能なすべての組合せに従って、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する。
- 光子エネルギーは、第2の部分のバンドギャップ値よりも厳密に小さく、バンドギャップ値は、第2の部分の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーの差分である。
- デバイスは、第2の部分の中のキャリアの熱エネルギーがイオン化エネルギーの1/10以下となるような値に第2の部分の温度を維持するように構成された温度調整器をさらに含む。
- デバイスは、放出器による放射の生成を制御し、放射を用いて第2の部分が照射される間、第1の接点と第2の接点との間の電圧の値を修正するように構成された、コントローラをさらに含む。
- 光電子デバイスは、トランジスタであり第3の電気接点をさらに含み、第3の電気接点は第1の部分に電気的に接続され、第1の接点はソースであり、第2の接点はゲートであり、第3の接点はトランジスタのドレインであり、第1の接点および第2の接点は、第1の接点と第2の接点との間の電圧の所与の値に対して、空乏領域が第1の接点と第3の接点との間の、第1の部分の中の電荷キャリアの通過を阻止するように構成される。
- イオン化エネルギーは、0.4電子ボルト以上、特に1電子ボルト以上、特に1.5電子ボルト以上である。
- 第2の材料はダイヤモンドである。
- デバイスは、第1の部分の中に少なくとも1つのNV中心を含み、第1の接点および第2の接点は、第1の接点と第2の接点との間の電圧の第1の値に対して空乏領域がNV中心を含み、かつ電圧の第2の値に対して空乏領域がNV中心を含まないように構成される。
【0010】
上記で説明したような光電子デバイスを含む単一光子生成器も提案される。
【0011】
上記で説明したような少なくとも1つのトランジスタを含むメモリも提案され、メモリは、トランジスタのオン状態またはオフ状態の形態で少なくとも1つの情報を記憶するように構成される。
【0012】
上記で説明したような少なくとも1つのトランジスタを含む時間マルチプレクサも提案される。
【0013】
上記で説明したようなマルチプレクサおよび/または上記で説明したような少なくとも1つのトランジスタを含む、人間または動物の体の中に注入されるのに適したインプラントも提案される。
【0014】
第1の部分、第2の部分、第1の接点、および第2の接点を含む光電子デバイスを動作させるための方法も提案され、第1の部分は、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第1のタイプのドーピングを有する第1の半導体材料から作られ、第2の部分は、n型ドーピングおよびp型ドーピングのうちの第2のタイプのドーピングを有する第2の半導体材料から作られ、第2のタイプのドーピングは、第1のタイプのドーピングとは異なり、第1の部分および第2の部分は、互いに接触しており、第1の部分の中に空乏領域を含むp/n接合を形成し、第1の接点は、第1の部分に電気的に接続され、第2の接点は、第2の部分に電気的に接続され、
第2の部分のドーパントに対してイオン化エネルギーが規定され、イオン化エネルギーは、n型の材料にとってドーパントのエネルギーレベルと伝導帯のエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、p型の材料にとって価電子帯のエネルギーレベルとドーパントのエネルギーレベルとの間のエネルギーの差分であり、方法は、その間に第1の接点と第2の接点との間の電圧が第1の値を有し空乏領域が初期寸法を有する第1のステップを含み、
方法は、
- 第2の部分のドーパントのイオン化エネルギーよりも大きい光子エネルギーを有する電磁放射を用いて第2の部分を照射するステップ、および第2の部分が照射される間、電圧を第1の値から第2の値に修正するステップと、
- 電圧の値の修正に応答して空乏領域の寸法を修正するステップと、
- 照射を停止するステップと、
- 照射がない場合に電圧を第2の値から第1の値に修正するステップであって、空乏領域の寸法が変更されないままである、ステップと、
- 放射を用いて第2の部分を照射するステップであって、電圧が第1の値を有する、ステップ、およびそれに応答して空乏領域の寸法を初期寸法に修正するステップとを含む。
【0015】
単に非限定的な例として与えられ添付の図面に関して行われる以下の説明を読むと、本発明の特徴および利点が見えてくる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1のデバイスによって実施される方法のステップのフローチャートである。
【
図3】
図2の方法の間のデバイスのいくつかのパラメータの変化を示す1組のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
【0018】
デバイス10は、たとえば、メモリ、インプラント、パワー電子デバイス、または通信装置もしくは暗号化装置などの装置を形成する、デバイス10のセットのうちのデバイス10である。
【0019】
光電子デバイス10は、第1の部分15、第2の部分20、第1の接点25、第2の接点30、第3の接点35、放出器40、コントローラ45、および随意に温度調整器50を含む。
【0020】
光電子デバイス10の第1の例は、たとえば、トランジスタである。
【0021】
第1の部分15は、たとえば、平行六面体である。
【0022】
第1の部分15は、第1の端部55と第2の端部60との間で拡張の方向DEに延在する。
【0023】
第1の部分15は、たとえば、拡張の方向DEに垂直な平面、すなわち、断面を有し、その表面面積は0.1平方ミリメートル(mm2)以下である。
【0024】
第1の部分15は、たとえば、基板65の法線方向Dに垂直な面によって担持される層である。
【0025】
第1の部分15は、たとえば、拡張の方向DEに垂直な第1の方向、特に法線方向Dにおける、10ナノメートル(nm)と10マイクロメートル(μm)との間の厚さ、および/または1μmと1センチメートル(cm)との間の、第1の方向および拡張の方向DEに垂直な第2の方向における幅を有する。
【0026】
第1の部分15は、たとえば、第1の部分15の第1の面67および第2の面68によって法線方向Dにおいて画定される。
【0027】
第1の面67は基板65と接触している。
【0028】
第2の面68は第2の部分20と接触している。
【0029】
第1の部分15は第1の半導体材料から作られている。
【0030】
半導体材料は、0よりも厳密に大きく8電子ボルト(eV:electronvolt)以下、特に6.5eV以下のバンドギャップ値を有する材料である。
【0031】
「バンドギャップ値」という表現は、材料の価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップの値であるものとして理解されるものとする。
【0032】
価電子帯は、材料の中の電子に対して許容されるエネルギー帯のうちの、20ケルビン(K:Kelvin)以下の温度において完全に充填される間に最も高いエネルギーを有するバンドであるものとして定義される。
【0033】
各価電子帯に対して第1のエネルギーレベルが規定される。第1のエネルギーレベルは、価電子帯の最も高いエネルギーレベルである。
【0034】
伝導帯は、材料の中の電子に対して許容されるエネルギー帯のうちの、20K以下の温度において完全に充填されるとは限らない間に最も低いエネルギーを有するバンドであるものとして定義される。
【0035】
各伝導帯に対して第2のエネルギーレベルが規定される。第2のエネルギーレベルは、伝導帯の最も低いエネルギーレベルである。
【0036】
したがって、各バンドギャップ値は、材料の第1のエネルギーレベルと第2のエネルギーレベルとの間で測定される。
【0037】
直接バンドギャップを有する半導体は、半導体材料の一例を構成する。伝導帯の最小値および価電子帯の最大値が電荷キャリアの同じ値の運動量に対応するとき、材料は「直接バンドギャップ」を有するものと見なされる。伝導帯の最小値および価電子帯の最大値が電荷キャリアの異なる値の運動量に対応するとき、材料は「間接バンドギャップ」を有するものと見なされる。
【0038】
各半導体材料は、たとえば、III-V半導体、特にIII元素の窒化物、II-VI半導体、またはIV-IV半導体によって形成されるセットから選ばれやすい。
【0039】
III-V半導体は、具体的には、InAs、GaAs、AlAs、およびそれらの合金、InP、GaP、AlP、およびそれらの合金、ならびにIII元素の窒化物を含み、III元素の窒化物は、AlN、GaN、InN、およびAlGaNまたはInGaNのようなそれらの合金である。
【0040】
II-VI半導体は、具体的には、CdTe、HgTe、CdSe、HgSe、およびそれらの合金を含む。
【0041】
IV-IV半導体は、具体的には、ダイヤモンド、Si、Ge、およびそれらの合金、特にSiCを含む、いくつかの形態のC炭素を含む。
【0042】
第1の材料は、たとえば、3eV以上の、特に5eV以上のバンドギャップを有する。
【0043】
第1の材料は、たとえば、ダイヤモンドである。
【0044】
代替として、第1の材料は、たとえば、SiC、GaN、AlN、BN、Ga2O3、MgGa2O4、Al2O3、ZnSiN2、AlGaInN、MgSiN2、もしくはZnO、またはこれらの材料のうちのいくつかの合金である。
【0045】
第1の材料は、第1のタイプのドーピングを有する。
【0046】
第1のタイプのドーピングは、p型ドーピングおよびn型ドーピングから選ばれる。たとえば、第1のタイプのドーピングはp型ドーピングである。
【0047】
ドーピングとは、材料の中の、自由電荷キャリアを与える不純物の存在として定義される。不純物は、たとえば、材料の中に自然には存在しない元素の原子である。
【0048】
ドープされていない材料に対して不純物が材料の中の正孔の密度を大きくするとき、ドーピングはp型のドーピングである。たとえば、ダイヤモンドは、ホウ素(B)の原子を加えることによってpドープされる。
【0049】
ドープされていない材料に対して不純物が材料の中の自由電子の密度を大きくするとき、ドーピングはn型のドーピングである。たとえば、ダイヤモンドは、窒素(N)またはリン(P)の原子を加えることによってnドープされる。
【0050】
第1の材料は、たとえば、ダイヤモンドの中へのホウ素原子の挿入によってドープされる。
【0051】
第1の材料は、たとえば、立方センチメートル当り1014(cm-3)以上の、特に1017cm-3以上の、特に2.1017cm-3に等しい密度のドーパントを有する。しかしながら、第1の部分のドーパントの密度は変えることが可能である。
【0052】
第2の部分20は、第2の半導体材料から作られている。
【0053】
一般に、第2の材料は、具体的には、ドーピングを除いて第1の材料と同一である。
【0054】
第2の材料は、p型ドーピングおよびn型ドーピングのうちの、第1のタイプのドーピングとは異なる第2のタイプのドーピングを有する。たとえば、第2のタイプのドーピングはn型ドーピングである。
【0055】
第2の材料は、たとえば、ドーピングのタイプを除いて第1の材料と同じ材料である。
【0056】
第2の材料は、たとえば、ダイヤモンドである。
【0057】
第2の材料に対してイオン化エネルギーが規定される。
【0058】
イオン化エネルギーは、第2の材料がnドープされるとき、バンドギャップの中のドーパントに対応するエネルギーレベルと伝導帯の最下位エネルギーレベルとの間のエネルギーの差分である。
【0059】
第2の材料がpドープされるとき、イオン化エネルギーは、バンドギャップの中のドーパントに対応するエネルギーレベルと価電子帯の最上位エネルギーレベルとの間のエネルギーの差分である。
【0060】
第2の材料のイオン化エネルギーは、0.4eV以上、たとえば、1eV以上、特に1.5eV以上である。
【0061】
第2の材料がダイヤモンドであるとき、ドーピングは、たとえば、窒素(N)原子を用いたドーピングであり、その場合、イオン化エネルギーは1.7eVに近い。
【0062】
別の例によれば、ドーピングはリン(P)原子を用いたドーピングであり、その場合、イオン化エネルギーは1.2eVに近い。
【0063】
以下で明らかになるように、第2の部分20は、いくつかの環境ではそのドーピングに起因して導電性であるが、他の環境ではそうでない。
【0064】
一般に、価電子帯の電子がpドーパントによって捕獲される(したがって、価電子帯の中に移動正孔を残す)とき、またはnドーパントの電子が伝導帯によって捕獲される(それらが自由に移動することになる)とき、ドーピングが電気伝導を可能にするので、ドープされた半導体に対してこのことは事実である。
【0065】
しかしながら、このことに対して、電子がそれらの間で移動する2つの状態の間のエネルギーの差分に等しいエネルギーを、これらの電子が獲得することが必要である。実際には、このエネルギーは従来技術の使用の際の熱エネルギーである。しかしながら、以下で示すように、単に熱以外のエネルギー源が可能である。
【0066】
第2の部分20は第1の部分15と接触している。
【0067】
第2の部分20は、たとえば、第1の部分15の第2の面68によって担持される、第2の材料の層である。
【0068】
特に、第2の部分20および第1の部分15はp/n接合を形成する。
【0069】
p/n接合とは、それぞれ、p型ドーピングおよびn型ドーピングを有する、半導体材料の2つの部分の間の界面であるものとして定義される。
【0070】
pn接合は、特に空乏領域70を含む。
【0071】
空乏領域70とは、第1の部分15と第2の部分20との間の界面の近くの、第1のタイプのドーパントによってもたらされる自由キャリアと別のタイプのドーパントによってもたらされる自由キャリアとの再結合に起因して、自由電荷キャリアがない、第1の部分15および/または第2の部分20の領域である。
【0072】
空乏領域70は、第1の部分15の少なくとも一部を含む。空乏領域70は、第2の部分20の一部をさらに含む。
【0073】
本質的に知られている方法で、空乏領域70の拡張は、第1の部分15および第2の部分20の各点における電位に依存する。
【0074】
第1の接点25は、導電性材料またはそのような材料の組立体から作られている。
【0075】
第1の接点25は、第1の部分15に電気的に接続される。
【0076】
たとえば、第1の接点25は、第1の部分15の面によって(詳細には第2の面68によって)担持される、金属の1つまたは複数の層によって、たとえば、チタン、白金、および金の層の積層によって形成される。
【0077】
詳細には、第1の接点25は、第1の端部55に電気的に接続される。
【0078】
随意に、第1のタイプのドーピングを有し自由キャリアの濃度が第1の部分15よりも高い第1の材料の一部分が、第1の接点25と第1の端部55との間に介在させられる。この部分は、たとえば、50ナノメートルと300ナノメートル(nm)との間の(第1の接点25と第1の端部55との間で測定された)厚さを有する。
【0079】
光電子デバイス10がトランジスタであるとき、第1の接点25は、たとえば、トランジスタのドレインまたはソース、特にドレインである。
【0080】
第2の接点30は、第2の部分20に電気的に接続される。
【0081】
たとえば、第2の接点30は、第2の部分20の面によって担持される、金属の1つまたは複数の層によって、たとえば、チタン、白金、および金の層の積層によって形成される。
【0082】
代替として、第2の接点30は、たとえば、ホウ素がドープされたダイヤモンドの、第2のタイプのドーピングを有する半導体材料から作られている。
【0083】
第2の接点30は、たとえば、法線方向Dにおいて第2の部分20を画定する第2の部分20の面によって担持される。
【0084】
第2の部分20は、第2の接点30と第1の部分15との間に介在させられる。
【0085】
光電子デバイス10がトランジスタであるとき、第2の接点30は、たとえば、トランジスタのゲートである。
【0086】
第2の接点30は、詳細には、第1の接点25と第2の接点30との間に電圧V1が課されると空乏領域70の寸法が電圧V1の値に依存するように構成される。
【0087】
「寸法」とは、空乏領域70の拡張の実測値、たとえば、空乏領域70のボリューム、またはpn接合部の所与の点と空乏領域70の最も遠い点との間の距離を意味する。
【0088】
たとえば、第2の接点30および第1の接点25は、一緒に、第1の部分15の第2の面68と法線方向Dにおいて第2の面68から最も遠い空乏領域70の点との間の距離が第1の接点25と第2の接点30との間の電圧V1の値に依存するように構成される。
【0089】
本質的に知られているそのような効果は「電界効果」と呼ばれ、特に上述のJFETのような、いくつかのトランジスタにおいて使用される。
【0090】
詳細には、第2の接点30および第1の接点25は、一緒に、これらの2つの接点25、30の間の電圧V1が、以下で「カットオフ値VC」と呼ばれる既定値に等しいとき、空乏領域70が第1の接点25と第3の接点35との間で第1の部分15を通る電流の通過を遮断するように構成される。
【0091】
たとえば、電圧V1がそのカットオフ値VCを有するとき、空乏領域70は、第1の部分15の少なくとも1つの区画の中で、第2の面68から第1の面67まで拡張する。
【0092】
カットオフ値VCは、たとえば、絶対値が10ボルト(V)以上であり、たとえば、40Vに等しい。カットオフ値VCは、たとえば、-100Vと+100Vとの間にある。
【0093】
このタイプの動作は、具体的には上述のJFETタイプのトランジスタの動作である。
【0094】
このことのために、第2の接点30および第1の接点25は、詳細には、上記で説明したように、第1の部分15および第2の部分20によって形成される組立体の異なる面によって担持される。
【0095】
第3の接点35は、導電性材料またはそのような材料の組立体から作られている。
【0096】
第3の接点35は、第1の部分15に電気的に接続される。
【0097】
たとえば、第3の接点35は、第1の部分15の面によって担持される、金属の1つまたは複数の層によって、たとえば、チタン、白金、および金の層の積層によって形成される。
【0098】
詳細には、第3の接点35は、第2の端部60に電気的に接続される。
【0099】
随意に、第1のタイプのドーピングを有し自由キャリアの濃度が第1の部分15よりも高い第1の材料の一部分が、第3の接点35と第2の端部60との間に介在させられる。この部分は、たとえば、100nmと300nmとの間の(第3の接点35と第2の端部60との間で測定された)厚さを有する。
【0100】
光電子デバイス10がトランジスタであるとき、第3の接点35は、たとえば、トランジスタのドレインまたはソース、特にソースである。
【0101】
放出器40は、電磁放射を生成し放射を用いて第2の部分20を照射するように構成される。
【0102】
放出器40は、たとえば、発光ダイオード75および少なくとも1つの第4の電気接点80を含む。
【0103】
放出器40は、たとえば、第2の接点30と同じ、第2の部分20の面によって担持されるか、または第2の接点30自体によって担持され、この場合、第2の接点30は、放射に対して部分的に透過的または完全に透過的である。
【0104】
代替として、たとえば、放出器40がいくつかのデバイス10によって共有される場合、または放出器40によって生成される放射がレンズなどの集束デバイスによって第2の部分20上に集束されるか、もしくは光ファイバなどの光導体によって第2の部分20に持ってこられる場合、放出器40はデバイス10の残部と接触していない。
【0105】
一般に、放出器40は、数多くの形態、たとえば、いくつかのデバイス10によって共有される光源の形態を取ることができ、デバイス10ごとに、必要な場合、対応するデバイス10を放射が照射することを阻止するのに適した素子、たとえば、液晶から作られた素子を含む。
【0106】
放出器40は、詳細には、いくつかのデバイス10が存在する場合、単一のデバイス10しか照射しないように構成される。たとえば、隣接するデバイス10の間に不透明な障壁が配設される。
【0107】
発光ダイオード75は、ダイオード75の2つの面の間に、たとえば、放出器40が第2の接点30によって担持されるときの第4の接点80と第2の接点30との間に電圧が課されると、放射を生成するように構成される。
【0108】
発光ダイオード75は、たとえば、法線方向Dにおいて重畳される層の積層によって形成される平面状のダイオードである。
【0109】
代替として、発光ダイオード75は、法線方向Dに各々が延在するナノ構造のセットによって形成され、各ナノ構造は、たとえば、ナノワイヤまたはナノコラムである。この場合、各ナノ構造は、たとえば、発光ダイオード構造、詳細には、第2のタイプのドーピングを有するベース、第1のタイプを有する上部、およびベースと上部との間に介在させられる中間部分を有し、放射を生成するように構成される。
【0110】
放射は光子エネルギーを有する。光子エネルギーは、放射の光子のエネルギーであるものとして定義される。
【0111】
詳細には、光子エネルギーは、放射の最大個数の光子が有するエネルギー、言い換えれば、光子エネルギーによる放射の光強度を表す曲線のピークの最上位に対応するエネルギーであるものとして定義される。
【0112】
放射の光子エネルギーは、第2の部分のイオン化エネルギー以上である。
【0113】
詳細には、光子エネルギーは、第2の材料のバンドギャップの値よりも厳密に小さい。
【0114】
光子エネルギーは、たとえば、1.7eVと3.3eVとの間、特に2.6eVと3.3eVとの間にある。この場合、放射は青色または紫色の放射である。
【0115】
放射は、たとえば、基板65の方向における発光ダイオード75から法線方向Dに伝搬する。
【0116】
放射は、たとえば、平方センチメートル当り1ミリワットと平方センチメートル当り10ワットとの間の、たとえば、平方センチメートル当り11ミリワットに等しい光子電力Pを有する。
【0117】
コントローラ45は、第1の接点25と第2の接点30との間の電圧V1、第1の接点25と第3の接点35との間の電圧V2、および/または第2の接点30と第4の接点80との間の電圧の印加を制御するように構成される。
【0118】
詳細には、コントローラ45は、放出器40による放射の生成および放射を用いた第2の部分20の照射を制御するように構成される。
【0119】
コントローラ45および/または温度調整器50は、たとえば、いくつかのデバイス10によって共有される。可能な実施形態によれば、単一のコントローラ45は、たとえば、各デバイス10を制御すること、特にデバイスの各々の電圧V1およびV2ならびに様々な放出器40を制御することに適している。
【0120】
随意である温度調整器50は、少なくとも第2の部分20、たとえば、デバイス10のすべてを、設定された温度に維持するように構成される。
【0121】
詳細には、温度調整器50は、第2の部分20の中の自由キャリアの熱エネルギーが第2の部分20のイオン化エネルギーの1/10以下となるような温度に第2の部分20を維持するように構成される。
【0122】
熱エネルギーは、ボルツマン定数kとケルビン単位での温度との積に比例する。ボルツマン定数kは、ケルビン当り1.380649×10-23ジュールに等しい。
【0123】
たとえば、温度調整器50は、ボルツマン定数と温度との積がイオン化エネルギーの1/10以下となるような値に温度を維持するために設けられる。
【0124】
ここで、第1の例の動作が
図2および
図3を参照しながら説明される。
【0125】
図2は、電子デバイス10を動作させるための方法のステップのフローチャートを示す。
【0126】
図3は、方法の実施中、放射の光子電力P、接点25と30との間の電圧V1、および接点25と30との間を循環する電流の電流密度Iの値の変化を示す。
【0127】
方法は、初期ステップ100、第1の照射ステップ110、第1の修正ステップ120、停止ステップ130、第2の修正ステップ140、および第2の照射ステップ150を含む。
【0128】
初期ステップ100の間、第1の接点25と第2の接点30との間の電圧V1は初期値に等しく、後者は、たとえば、0ボルトである。その上、放出器40によって放射が放出されない。
【0129】
初期ステップ100の間、空乏領域70は最小寸法を有する。たとえば、初期ステップ100は、以下で見られるように、電圧V1が初期値に等しかった間、放射によって第2の部分20が照射されたステップによって先行された。
【0130】
電圧V1がその初期値を有し第2の部分20が導電性であるとき、たとえば、第2の部分20の温度が、放射がない場合に第2の部分20の中の自由キャリアの濃度が1010cm-3以上となるのに十分であるとき、またはこの温度未満で、放射によって第2の部分20が照射されるとき、空乏領域70の最小寸法はそれの寸法である。
【0131】
空乏領域70は、
図1ではその最小寸法で記号的に示される。
【0132】
空乏領域70がその最小寸法を有するとき、空乏領域70は、第1の接点15と第3の接点35との間で第1の部分15を通る電流の通過を可能にする。
【0133】
したがって、初期ステップ100の間、ソース35とドレイン25との間またはその逆に循環する電流に対して第1の部分15が導電性であるので、トランジスタ10は「オン」状態にある。
【0134】
ここで説明する方法例では、コントローラ45によって第1の接点25と第3の接点35との間に-40Vと40Vとの間の電圧V2が印加される。したがって、電流は第1の接点25と第3の接点35との間で循環する。
【0135】
初期ステップ100の間のデバイス10の構成が、
図3の中で矢印200によって示される。電流密度Iは、特にミリメートル当り0.1ミリアンペア(mA/mm)に等しいが、この電流密度は電圧V2に従って変わる場合がある。
【0136】
第1の照射ステップ110の間、第2の部分20が放射を用いて照射される。
【0137】
たとえば、コントローラ45は、放出器40による放射の生成を引き起こすように放出器40に電気的に電力供給する。
【0138】
第1の照射ステップ110の間、電圧V1は、初期値からカットオフ値VCにコントローラ45によって修正される。
【0139】
詳細には、第1のステップ110の間、その間に電圧V1がカットオフ値VCを有し第2の部分20が放射を用いて照射される少なくとも1つの時間間隔がある。この時間間隔は、1ナノ秒(ns)以上の、たとえば、10nsと100マイクロ秒(μs)との間の持続時間を有する。
【0140】
たとえば、電圧V1は、第1の部分20が放射を用いて照射される前、カットオフ値VCに維持される。代替として、照射は電圧V1の値の修正の前に開始する。
【0141】
照射が開始する前に電圧V1の修正が行われる場合には、照射が開始する前に空乏領域70の拡張が変化しないことに留意されたい。
【0142】
実際、空乏領域のサイズは、pn接合の中で移動して再結合するための両方のタイプ(正孔および自由電子)の自由キャリアの容量に依存し、そのことは、著しい数量での自由キャリアがない空乏領域70をもたらす。
【0143】
本事例では、第2の部分20の温度が、キャリアにとって利用可能な熱エネルギーがイオン化エネルギーよりも明らかに小さいようなものであるので、極めて少数のドーパントしか熱イオン化されることが可能でなく、したがって、それらのキャリアを解放できるので、極めて少数の自由キャリアが自然にそこに存在する。したがって、2つの接点25、30によって引き起こされる電界効果、およびそれらの間の電圧V1が、空乏領域70の寸法を大きくする傾向があるはずであるにもかかわらず、このことは実際には起こらない。
【0144】
第1の修正ステップ120は、その間に第2の部分20が照射され電圧V1がカットオフ値VCを有する時間間隔中に行われる。
【0145】
この時間間隔は
図3の中で認識でき、矢印210によって示される。
【0146】
放射がイオン化エネルギー以上の光子エネルギーを有するので、ドーパントは、放射の一部を吸収することによってイオン化され、したがって、第2の部分20の中の自由キャリアを解放する。
【0147】
したがって、放射を用いた照射、ならびにそのカットオフ値VCにおける第2の電圧V1の存在は、空乏領域70の拡張の修正につながる。
【0148】
詳細には、空乏領域70が第1の接点25と第3の接点35との間の電流の通過をカットオフするまで、空乏領域70の寸法のうちの少なくとも1つは大きくなる。したがって、トランジスタはオフである。その結果として、測定される電流密度Iは初期ステップに対して大幅に小さくなり、ほぼ10-7mA/mmである。
【0149】
詳細には、空乏領域は、電圧V1および照射の影響下で、第2の面68から第1の面67まで拡張する。
【0150】
停止ステップ130の間、照射は停止される。たとえば、コントローラ45が、放出器40に電気的に電力供給することを停止する。
【0151】
照射の停止は、それのドーパントが今やイオン化されるのに不十分な熱エネルギーしか当てにできないので、もう一度第2の部分20を電気的に絶縁させる。
【0152】
照射の停止は、
図3の中で矢印220によって示される。
【0153】
第2の修正ステップ140の間、電圧V1はそのカットオフ値からその初期値に修正される。
【0154】
照射がない場合に第2の部分20が電気的に絶縁しているので、空乏領域70はその最大寸法にとどまり、したがって、第1の接点25と第3の接点35との間の電流の通過を阻止する。
【0155】
このことは、
図3の中で矢印230によって示される領域の中で認識でき、ここで、初期ステップ100におけるように、電圧V1がヌルであり照射が存在しないが、測定される電流密度Iは、初期ステップ100の中にあるものよりも小さい、ほぼ6桁の大きさにとどまる(矢印200を参照)。
【0156】
第2の照射ステップ150の間、第2の部分20は放射を用いて照射され、電圧V1はその初期値にとどまる。
【0157】
放射による第2の部分20のドーパントのイオン化は、そのように空乏領域70の寸法の修正につながる。
【0158】
詳細には、空乏領域70の寸法はその初期値(すなわち、初期ステップ100の間の値)に戻る。したがって、電流はもう一度電圧V2の影響下で第1の接点25と第3の接点35との間で循環することができる。このことは、
図3の中の矢印240において見られ、電流密度Iがその初期レベルに戻る。
【0159】
ステップ100~150は、たとえば、デバイス10の動作中に必要である限り繰り返される。
【0160】
本発明を介して、空乏領域70の寸法は、電圧V1の値とは無関係に、第2の部分20が放射を用いて照射されるときにしか修正されない。
【0161】
したがって、デバイス10は、不安定でない方式でその2つの(空乏領域70の2つの寸法に対応する)状態の間で切り替わる。
【0162】
具体的には、本発明者は、297Kにおいて48時間にわたって、電圧V1が0に等しくても、照射がない場合にトランジスタがそのオフ状態にとどまり、照射の開始が電流の大きさの4桁を超える増大につながることを測定することができた。373Kにおいて、1時間後、第2の部分20が照射されると、大きさの3桁を超える差分が観測される。
【0163】
詳細には、デバイス10は、電圧がない場合(すなわち、V1が0に等しいとき)でも、その状態の各々の中にとどまる。電圧V1の値は、事実上、第2の部分20が照射されるときにしか、いかなる重要性も有しない。
【0164】
その結果、そのとき、少なくとも放射を生成し、必要な場合、接点25と30との間に、そのカットオフ値VCを有する電圧V1を印加することが必要であるので、ある状態から他の状態にデバイスを切り替えることが望まれるとき、デバイス10は(たとえば、随意の電圧V2以外に)電源を必要とするにすぎない。
【0165】
したがって、デバイス10のエネルギー消費が小さくなる。
【0166】
本発明が、詳細には、熱エネルギー単独の影響下でこの温度において第2の部分20が導電性であることを阻止する、デバイス10の動作温度と第2の部分20のイオン化エネルギーとの間の組合せの選択にあることに留意されたい。言い換えれば、第2の部分のドーピングは、所望の動作温度において放射がない場合に機能するには深すぎる。したがって、そのようなドーピングは、放出器がない従来技術のデバイスにおいて、当業者にとって無用かつ非効率と見なされることになる。
【0167】
光子エネルギーが第2の部分20のバンドギャップの値よりも厳密に小さい場合、ドーパントだけが放射を吸収し、光子エネルギーは、後者によってほとんど吸収されないので第2の部分をそのように深く照射することができる。放出される放射の強度はそのように小さく、エネルギー消費が小さくなる。
【0168】
温度調整器50の存在は、ドーパントがわずかにしか熱イオン化されない温度に第2の部分20を維持し、したがって、幅広い可能な半導体材料を使用することを可能にする。
【0169】
イオン化エネルギーが0.4eV以上であるとき、周囲温度(ほぼ20~30°C)において第2の部分20のドーパントがごくわずかにしかイオン化されないので、デバイス10は温度調整器50を有しないことが可能である。
【0170】
特にダイヤモンドは、極めて広いバンドギャップを有し、したがって、高いイオン化エネルギーを有するドーパント、具体的には、そのイオン化エネルギーが1.7eVである窒素、またはそのイオン化エネルギーが1.2eVであるリンの選択を可能にする。
【0171】
そのようなデバイス10、特にそのようなトランジスタは、たとえば、メモリの中で、たとえば、トランジスタのオン状態またはオフ状態の形態で(たとえば、オンのトランジスタが値「0」を示しオフのトランジスタが状態「1」を、またはその逆を示す)、状態メモリの中に記憶される情報にとって有利に使用可能である。
【0172】
低消費のトランジスタ10は、詳細には、たとえば、メモリまたはマルチプレクサの、患者または動物の体の中、たとえば、脳の中に注入されることが意図されるインプラントの、モジュールの一部を形成することにそれらを適合させる。
【0173】
たとえば、様々な電極を情報処理モジュールに接続する時間マルチプレクサを作成するためにトランジスタ10を使用すると、このマルチプレクサは、電極と処理モジュールとの間で交換される信号の多重化を可能にするように、様々な電極を情報処理モジュールに連続的に接続するように設けられる。
【0174】
具体的には、ダイヤモンドは生体適合性材料であり、したがって、たとえば、体液と接触しているデバイス10の配置がそのように患者にもデバイス10の動作にも損傷を与えていないことになるので、特にそのような埋め込みに適合されることになる。
【0175】
トランジスタ10の形態でのデバイス10の一例が図面に示され上記で説明されているが、本発明が他のタイプのデバイス10に適用され得ることは当業者にとって明らかである。詳細には、空乏領域の拡張の修正は、必ずしも電流の通過を可能にするかまたは遮断するために使用されるとは限らない。
【0176】
たとえば、デバイス10は単一光子生成器であり、第1の部分15の中にXV中心を含む。
【0177】
これらの欠陥は、結晶格子の中の炭素原子にとって代用可能な原子(X)によって形成され、隣接する空孔(空孔を表すV)と結合される。Xは、炭素原子にとって代用可能な原子(たとえば、N、Si、Snなど)の包括的なシンボルである。
【0178】
そのような中心は、それらの電荷に従っていくつかの状態を有することができる。詳細には、それらの状態は、局所的なフェルミレベルに従って変わることができ、したがって、XV中心が空乏領域70に位置するか否かに従って修正され得る。
【0179】
XV中心の励起を介して、特に量子通信または暗号法のための使用を有する単一光子の放出を取得することが可能である。
【0180】
NV中心は、たとえば、接地状態から励起状態への遷移を実行するために、可視光源によって光学的に励起されるように設けられる。NV-中心のルミネセンスの光信号の強度は、温度、結晶の変形、ならびに磁界および電界などの、外側の擾乱に敏感である。ルミネセンスの強度は、周囲温度におけるこれらの物理値のうちの1つを測定するために定量的に使用され得る。NV-中心は、フェルミレベルを修正することによってNV0中心から取得されることが可能であり、そのことは本発明を介して不安定でない方式で実行される。
【0181】
デバイス10の場合には、接点25および30は、放射20がある場合に、電圧V1がその初期値を有するときにXV中心が空乏領域70の外側に位置し、電圧V1がカットオフ値VCを有するときにXV中心が空乏領域70の中に含まれるように構成される。
【0182】
したがって、XV中心の状態、特にその電荷状態は、放射が第2の部分20を照射するときに、電圧V1を制御することによって修正され、電圧V1の値にかかわらず放射がない場合に変更されずに保たれる。
【0183】
トランジスタの場合のように、このことは従来技術の単一光子生成器に対してエネルギー消費の低減をもたらす。
【0184】
このタイプの単一光子生成器は、たとえば、第3の接点35がないことに留意されたい。
【0185】
別の可能な代替形態によれば、デバイス10は、MOSFETタイプ、特に反転を介して動作するMOSFETのトランジスタであり、第1の部分15はトランジスタを担持する基板の一部分である。したがって、空乏領域の拡張は、不安定でない方式で基板を偏極させること、したがって、ドレインとソースとの間の伝導チャネルがそれに対して出現するしきい値電圧を修正することを可能にする。
【0186】
デバイス10の幾何形状が変化することが可能であることにも留意されたい。たとえば、複数の第2の部分20が存在することが可能であり、これらの第2の部分は各々、対応する第2の接点30に接続され、第2の接点30は、たとえば、同じ電位を有するように互いに電気的に接続される。この場合、第1の部分15は、たとえば、いくつかの第2の部分20の間に介在させられ、その結果、第2の部分20の空乏領域70は、電圧V1がカットオフ値VCを有するとき、それらが合併し、したがって、第1の部分15の区画全体にわたって接点25と35との間の電流の通過への障壁を形成するまで、互いに向かって拡張する。
【0187】
別の代替形態によれば、第2の部分20は、第1の部分15を担持する基板の一部分または全体であり、したがって、接点30は、たとえば、第1の部分15を担持する面に対向する、基板の面上に配設される。
【符号の説明】
【0188】
10 光電子デバイス
15 第1の部分
20 第2の部分
25 第1の接点
30 第2の接点
35 第3の接点
40 放出器
45 コントローラ
50 温度調整器
55 第1の端部
60 第2の端部
65 基板
67 第1の面
68 第2の面
70 空乏領域
75 発光ダイオード
80 第4の接点
【国際調査報告】