(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】高含有量で粉体を含む乳化または油分散化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240514BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240514BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/04
A61K8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571689
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2022006547
(87)【国際公開番号】W WO2022245029
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064228
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0171581
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イル・シン・メン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・シク・ハン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB242
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC401
4C083AC421
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083BB12
4C083BB21
4C083DD28
4C083DD31
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
本発明は、ワックス、粉体および脂肪酸エステル界面活性剤を含み、前記粉体は、組成物全重量に対して20重量%以上で含まれる乳化または油分散化粧料組成物に関し、高含有量の粉体を含有しながらも、ワックスによる粉体の凝集を防いで分散性に優れ、粉体の充填性が向上し、高温で流動性に優れた組成物を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックス、粉体および脂肪酸エステル界面活性剤を含み、
前記粉体は、組成物全重量に対して20重量%以上で含まれる乳化または油分散化粧料組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤は、ポリヒドロキシ脂肪酸、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセロール脂肪酸エステルから成る群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤は、ポリヒドロキシステアリン酸、PEG-30ジポリヒドロキシステアレートおよびこれらの混合物から成る群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は、分子量が2,000~100,000g/molである、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記ワックスは、オゾケライト、蜜ろう、ココアバター、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックスおよびビーズワックスから成る群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記粉体は、組成物全重量に対して30~80重量%で含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記粉体のサイズが、0.1~100umである、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
油相をさらに含み、油相と粉体の重量比が1:1~1:4である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記組成物は、100~5,000dyne/cm
2の硬度を有するバーム(balm)剤形である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記組成物は、60~100℃の温度で10~1000cpsの粘度を有する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記組成物は、非水系油分散剤形である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含有量で粉体を含む乳化または油分散化粧料組成物に関し、具体的には、ワックス、粉体および脂肪酸エステル界面活性剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
やわらかい伸び広がりおよびパウダリー仕上げ感を具現するために、高含有量の揮発性オイルと粉体を使用できるが、スティックのような油分散バーム剤形の場合、持ち運びが簡単であり、使い勝手の良い利点にもかかわらず、容器の密閉力による剤形の制約に起因して揮発性オイルの使用が制限され、使用感の具現に困難があった。
【0003】
特に、ワックスを含む固形バームタイプの化粧料は、融点以上の高温で長時間充填するので、揮発性オイルを高含有量で含む場合、充填前後、そして充填時間によって製品の使用感と剤形安定性に影響を与えることができる。
【0004】
従来、揮発性オイルの代わりに、高含有量で粉体を含む乳化および油分散バーム剤形の化粧料が開発され、やわらかく伸び広がり、パウダリー仕上げ感を具現する一方で、剤形安定性および容器制約の限界を克服しようとしたが、多量の球状粉体を適用する場合、粉体の含有量が高くなるほど粉体分散力が劣り、高温での流動度が低下し、充填工程で生産性が低下する問題が発生した。流動度を増加させるために分散性改善のためのベントナイト類原料および界面活性剤を使用する場合、かえって剤形の粘度を高め、流動度が低下し、これは、生産性にさらに悪影響を及ぼす問題点が発生した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ワックスを含む乳化および油分散剤形においてワックスの構造に起因して粉体が互いに凝集しようとする傾向が強くなるが、脂肪酸エステル界面活性剤を適用することによって、粉体の凝集を防げることを確認した。
【0006】
これによって、本発明は、粉体を高含有量で含むことによって、粉体の分散性を改善し、高温で優れた流動性を示すことができる乳化または油分散化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、ワックス、粉体および脂肪酸エステル界面活性剤を含み、前記粉体は、組成物全重量に対して20重量%以上で含まれる乳化または油分散化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、高含有量で粉体を含有しながらも、ワックスによる粉体の凝集を防いで分散性に優れ、高含有量で粉体を含有することができ、粉体の充填性が向上し、高温で流動性に優れた組成物を提供することができる。
【0009】
また、本発明による組成物は、優れた伸び広がり、やわらかい使用感を提供し、皮膚改善効果を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明によるワックス内界面活性剤と粉体の分散模式図を示す図である。
【
図2】
図2は、実験例1による高温流動度を示す写真であり、
図2の(a)は、実施例1、(b)は、実施例2、(c)は、比較例1、(d)は、実施例3を示す図である。
【
図3】
図3は、実験例4による高温流動度を示す写真であり、
図3の(a)は、実施例4、(b)は、実施例5、(c)は、比較例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、ワックス、粉体および脂肪酸エステル界面活性剤を含み、前記粉体は、組成物全重量に対して20重量%以上で含まれる乳化または油分散化粧料組成物に関する。
【0013】
本発明の発明者らは、水酸基を含む1個以上の親水基と脂肪酸を含む1個以上の親油基を有するエステル縮合構造の脂肪酸エステル界面活性剤を用いる場合、粉体の凝集を防いで分散性を改善し、高温で充填性を向上させて、高含有量で粉体を剤形内に含むことができることを確認した。
【0014】
具体的には、ワックスの構造によって粉体が互いに凝集しようとする傾向が大きいが、本発明による界面活性剤は、脂肪酸を含んでいて、ワックスと相溶性が良いだけでなく、他の界面活性剤に比べて嵩が大きいので、物理的に粉体を分散させ、その状態を維持することができる。
【0015】
本発明において「高温」は、40℃以上の温度を意味し、より具体的には、45℃以上、50℃以上、または55℃以上の温度を意味する。
【0016】
本発明において界面活性剤は、脂肪酸エステル界面活性剤であり、ヒドロキシル基と脂肪酸のカルボキシル基のエステル縮合反応の生成物を意味する。
【0017】
本発明の界面活性剤は、具体的には、ポリアルコールと脂肪酸のエステル縮合反応で形成されたり、ヒドロキシ基とカルボキシル基を全て含む脂肪酸化合物の単独エステル縮合反応で形成されてもよい。
【0018】
本発明の界面活性剤は、脂肪酸を含んでいて、嵩が高いので、粉体を物理的に分散させることができる。前記脂肪酸の例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、ヒドロキシステアリン酸またはヒドロキシミリスチン酸がある。
【0019】
本発明の一具体例において、界面活性剤は、ポリヒドロキシ脂肪酸、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、およびポリグリセロール脂肪酸エステルから成る群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0020】
前記ポリヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシ基を含む脂肪酸のポリマーであり、脂肪酸内ヒドロキシ基によって分子内エステル縮合重合反応で形成され得る。例えば、ポリヒドロキシステアリン酸は、ヒドロキシステアリン酸のポリマーであり、ヒドロキシステアリン酸がエステル縮合重合反応により形成されたポリマーを意味する。
【0021】
前記ポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、ポリエチレングリコール基のヒドロキシ基と脂肪酸のエステル縮合重合反応で形成され得る。例えば、PEG-30ジポリヒドロキシステアレートは、平均30個のPEGとヒドロキシステアレートのジエステル形態を示すことができる。
【0022】
前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸のエステル縮合重合反応で形成され得、前記ポリグリセロール脂肪酸エステルは、ポリグリセロールと脂肪酸のエステル縮合重合反応で形成され得る。
【0023】
本発明において界面活性剤は、ポリヒドロキシステアリン酸、PEG-30ジポリヒドロキシステアレート、PEG-20ジポリヒドロキシミリステート、PEG-40ジポリヒドロキシパルミテート、PEG-4トリメチロールプロパンジステアレート、PEG-4グリセリルジステアレート、ポリグリセリル-2ジイソステアレート、ポリグリセリル-ジイソステアレート、ポリグリセリル-3ジステアレート、ポリグリセリル-3ポリリシノレエート、PEG-6ジステアレート、PEG-6ジイソステアレート、PEG-8ジステアレート、PEG-8ジイソステアレート、PEG-12ジイソステアレート、グリセリルステアレート、PEG-23ステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-100ステアレート、PEG-150ステアレート、ソルビタンステアレートソルビタンセスキオレート、およびソルビタンオリベートから成る群から選ばれたいずれか1つ以上が使用できるが、これに限定されるものではない。
【0024】
より好ましくは、本発明の界面活性剤は、ポリヒドロキシステアリン酸、PEG-30ジポリヒドロキシステアレートおよびこれらの混合物から成る群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0025】
本発明の一具体例において、界面活性剤は、分子量が2,000~100,000g/molであってもよい。前記範囲の分子量を有する場合、界面活性剤が粉体を物理的に容易に分散させることができる。
【0026】
本発明の一具体例において、界面活性剤は、組成物全重量に対して0.01~3重量%で含まれ得る。好ましくは、界面活性剤は、0.01~2重量%、0.01~1重量%、0.1~1重量%、または0.1~0.8重量%で含まれ得る。界面活性剤が前記範囲内の場合、粉体を十分に分散させることができ、高温流動性を向上させることができる。
【0027】
本発明においてワックスは、オゾケライト、蜜ろう、ココアバター、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックスおよびビーズワックスから成る群から選択された1種以上であってもよい。最も好ましいワックスは、セレシンワックスまたは合成ワックスであってもよい。しかしながら、当業界においてバーム剤形またはスティック剤形の製造に使用されるワックスであれば、制限なしに使用が可能である。
【0028】
本発明の一具体例において、ワックスは、組成物全重量に対して2~10重量%で含まれ得る。好ましくは、ワックスは、2~8重量%、または4~8重量%で含まれ得る。ワックスの含有量が2重量%未満の場合、粘度が不十分に形成され、所望の化粧品剤形で製造することが困難であり、10重量%超の場合、剤形安定性または使用感が阻害されることがある。
【0029】
本発明において、粉体は、チタンジオキサイド、ジンクオキサイド、タルク、マイカ、酸化鉄、ナイロン、ポリメチルシルセスキオキサン、合成フルオロフロゴパイト、メチルメタクリレートクロスポリマー、シリカ、およびこれらの混合物から選ばれる1種以上であってもよい。好ましくは、粉体は、チタンジオキサイド、ポリメチルシルセスキオキサンまたはこれらの混合物であってもよい。
【0030】
前記粉体は、組成物全重量に対して20重量%以上で含まれ得る。好ましくは、30重量%以上、40重量%以上、43重量%以上、45重量%以上または50重量%以上で含まれ得、より好ましくは、30~80重量%、40~80重量%、45~75重量%、45~70重量%、または50~70重量%で含まれ得る。本発明の組成物は、粉体を前記含有量の範囲のように高含有量で含んでいても、高い流動性および充填性を有することができる。粉体は、パウダリー使用感を提供するためのものであれば、上記した粉体の含有量あるいは粉体の種類は特に限定されない。
【0031】
本発明において粉体のサイズは、0.1~100um、好ましくは、0.1~10um、より好ましくは、0.1~1umまたは3~10umであってもよく、例えば、約250nmまたは4~9umであってもよい。
【0032】
本発明の組成物は、油相をさらに含んでもよい。また、油相と粉体の重量比が1:1~1:4であってもよい。好ましくは、1:1~1:3であってもよく、より好ましくは、1:1.3~1:2.5であってもよい。前記重量比で油相および粉体を含む場合、伸び広がりがやわらかく、仕上げ感にべたつきが残っておらず、パウダリー使用感を付与することができる。
【0033】
前記油相は、シリコーンオイル、エステル系オイル、ハイドロカーボン系オイル、トリグリセリド系オイルおよびこれらの混合物から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0034】
シリコーンオイルは、ジメチコン、シクロメチコン、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンからなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0035】
エステル系オイルは、ヘキシルラウレート、トリエチルヘキサノイン、セチルエチルヘキサノエート、セチルオクタノエート、セチルイソオクタノエート、オクチルドデシルミリステート、ペンタエリスリチルテトラエチルヘキサノアート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、カプリリック/カプリクトリグリセリド、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、トコフェロールアセテートおよびジカプリリックカーボネートから成る群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0036】
ハイドロカーボン系オイルは、パラフィン、セレシンおよびマイクロクリスタリンワックスから成る群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0037】
トリグリセリド系オイルとしては、C8-12アッシドトリグリセリド、C12-18アッシドトリグリセリド、カプリリック/カプリクトリグリセリド、カプリリック/カプリク/ラウリックトリグリセリド、C10-40イソアルキルアッシドトリグリセリド、C10-18トリグリセリド、グリセリルトリアセチルヒドロキシステアレート、ソイビングリセリド、トリベヘニン、トリカプリン、トリエチルヘキサノイン、トリヘプタノイン、トリイソステアリン、トリパルミチンおよびトリステアリンからなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限らない。
【0038】
本発明の組成物は、常温でバーム(balm)剤形のような固体状態であるとき、硬度が100~5,000、好ましくは、200~4000、より好ましくは、1500~3200dyne/cm2であってもよいが、これに限定されるものではない。前記硬度は、例えば、Fudoh Reo Meterの専用アダプター中に直径が10Φのピンを用いて2cm/minの速度で2mmの深さの条件で測定することができる。好ましくは、本発明の組成物は、100~5,000dyne/cm2の硬度を有するバーム(balm)剤形であってもよい。
【0039】
本発明の組成物は、粘度が10~1000cps(Centipoise)、好ましくは、10~200cps、15~200cpsまたは10~100cpsであってもよく、最も好ましくは、13~90cpsであってもよい。前記粘度の範囲は、高温、好ましくは、60~100℃、より好ましくは、70~90℃、例えば、80℃で測定されたものであってもよい。前記組成物の高温での粘度が10cps未満の場合には、過度な流れ性によって溶融状態での剤形安定性が阻害され、1000cps超の場合には、過度な粘度によって充填性が不良であり、所望の形態で生産しにくい。前記粘度は、ブルックフィールド粘度計(Brookfield rheometer)でスピンドル#3を用いて30rpmで1分間測定したものであってもよい。
【0040】
本発明の組成物は、通常使用される乳化安定化剤、紫外線遮断剤、保湿剤、油相基剤、防腐剤、酸化防止剤、アルコール、香料、pH調節剤または天然抽出物などをさらに含んでもよいが、これに限らない。
【0041】
本発明による組成物は、増粘剤を実質的に含まないか、または全く含まなくてもよい。特に、ヘクトライトのような粉体系油相増粘剤を実質的に含まなくてもよい。また、本発明による組成物は、揮発性オイルを実質的に含まないか、または全く含まなくてもよい。
【0042】
本発明による組成物は、水相を実質的に含まないか、または全く含まない非水系油分散剤形であってもよい。
【0043】
本発明において「実質的に含まない」は、1重量%未満または0.1重量%未満で含むか、または全く含まないことを意味する。
【0044】
本発明の組成物は、バーム(balm)タイプの剤形、特に、油分散バームタイプの剤形で製造することができ、このような剤形で製造するとき、高温製造工程で組成物の粘度(流動度)に優れていて、優れた充填性を有することができる。
【0045】
前記バーム剤形は、固形状態で存在するものであり、皮膚への塗布時に溶ける形態を意味するが、本発明がこれに限定されるものではない。バーム剤形は、オイルバーム、クレンジングバーム、リップバーム、サンバーム、ヘアバーム、マルチバームなどで剤形化することができる。
【0046】
また、本発明による組成物は、バームタイプの剤形の他にも、スティック、ケーキ、ファクトまたはゲルタイプの剤形などで製造することができ、ファンデーション、コンシーラー、メイクアップベース、BBクリーム、ローション、クリーム、およびワックスなどからなる群から選択されたいずれか1つの用途に使用できる。
【0047】
以下、本発明を下記実験例によって詳細に説明する。ただし、下記実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実験例によって制限されるものではない。また、これらの実験例は、本発明に対する理解を助けるための目的に過ぎず、いかなる意味においても本発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【実施例】
【0048】
製造例1:実施例1~3および比較例1の組成物の製造
油相槽にワックス成分と油相成分、界面活性剤を投入し、85℃に加温してワックスを完全溶融させた後、ディスパーミキサーで均一に混合した。均一に混合されたことを確認した後、粉体を徐々に投入し、ディスパーミキサーを用いて完全に分散後、脱泡して製造した。下記表1に記載された組成で実施例1~3および比較例1の組成物をそれぞれ製造した。
【0049】
【0050】
ポリヒドロキシステアリン酸は、NISSHIN OILLIO社のSalacos HS-6Cを使用した。粉体中、チタンジオキサイドは、MIYOSHI社のLP-TR-10を使用し、その平均サイズが250umである。ポリメチルシルセスキオキサンは、N&M TECH社のSESQ-101を使用し、その平均サイズが4~9umである。
【0051】
実験例1:高温流動度の評価
製造例1による組成物をx-1金属皿に80℃で充填(15g)し、内容物が積み重ねられるか、エッジまで十分に充填されるかを目視で比較し、面が平坦であり、エッジの空いた空間が少ないほど流動度が良好であると判断した。その結果を下記表2および
図2に示した。
図2の(a)~(d)は、それぞれ実施例1、2、比較例1および実施例3を示したものである。
【0052】
【0053】
図2および表2に示されたように、粉体含有量が増加するほど高温流動度が低下し、界面活性剤含有量が増加するほど高温流動度が改善される様子を確認することができた。特に界面活性剤を含まない比較例1は、内容物が積み重なって外郭部分が充填されなかったが、実施例3の場合、粉体含有量が高いにも関わらず、メタル皿のエッジまで剤形が隙間なく充填され、面が平坦で、高温流動度が大きく改善されることを確認した。
【0054】
実験例2:官能評価
20~40代の消費者20人を対象として5段階評価で伸び広がり、カバー力、パウダリー性および選好度の官能評価を進めた。その結果を表3に示した。
【0055】
【0056】
チタンジオキサイド含有量が高く、全てのサンプルにおいてカバー力の項目点数が高く評価された。また、実施例1および3を比較すると、粉体含有量が増加するほど伸び広がりが維持されるが、パウダリー性に対する評価点数が向上することを確認した。比較例1および実施例3を比較すると、粉体含有量が同一である場合、界面活性剤の含有量が増加するほど高温流動度が改善され、同時に、伸び広がり、パウダリー性の評価点数が向上することを確認した。
【0057】
実験例3:粘度および硬度の測定
実施例1~3および比較例1に対して硬度および粘度を測定した。硬度は、実験例1のように80℃でx-1金属皿に組成物をモールディングし、1時間後にFUDOH RheometerのNo.3(D=10φ)spindleを用いて、2cm/minの速度で2mmの深さの条件で押し込み硬度を測定した。粘度は、温度80℃でブルックフィールド粘度計spindle#3を用いて30rpmで1分間測定した。その結果を表4に示した。
【0058】
【0059】
表4に示されたように、実施例1~3は、比較例1より低い粘度値を有し、充填性に優れ、硬度においても適切な範囲の値を示すことを確認することができる。
【0060】
製造例2:実施例4および5、比較例2の組成物の製造
ポリヒドロキシステアリン酸の他に類似構造のPEG-30ジポリヒドロキシステアレートと一般的に多く使用される界面活性剤であるPEG-10ジメチコンに変更して、前記製造例1と同様の方式で下記表5に記載された組成を有する実施例4および5、比較例2の組成物をそれぞれ製造した。
【0061】
【0062】
ポリヒドロキシステアリン酸は、NISSHIN OILLIO社のSalacos HS-6Cを使用し、PEG-30ジポリヒドロキシステアレートは、CRODA社のCITHROL DPHS-SO-(MV)(ARLACEL135)を、PEG-10ジメチコンは、SHIN-ETSU社のKF-6017を使用した。粉体中、チタンジオキサイドは、MIYOSHI社のLP-TR-10を使用し、その平均サイズが250umである。ポリメチルシルセスキオキサンは、N&M TECH社のSESQ-101を使用し、その平均サイズが4~9umである。
【0063】
実験例4:高温流動度の評価
実験例1と同じ方式で高温流動度の評価を進めた。その結果を下記表6および
図3に示した。
図3の(a)~(c)は、それぞれ、実施例4、5および比較例2を示したものである。
【0064】
【0065】
図3および表6に示されたように、界面活性剤としてPEG-30ジポリヒドロキシステアレートを使用する実施例5は、実施例4より多少低下したが、改善された高温流動度を示し、充填状態に異常がなかった。しかしながら、界面活性剤としてPEG-10ジメチコンを使用する比較例2の場合、高温流動度が低下し、充填状態が均一でないことを確認した。
【0066】
実験例5:粘度および硬度の測定
実験例3と同じ方式で実施例4および5、比較例2の硬度および粘度を測定し、その結果を表7に示した。
【0067】
【0068】
表7に示されたように、実施例4および5は、比較例2より低い粘度値を有し、充填性に優れ、硬度においても適切な範囲の値を示すことを確認することができる。
【国際調査報告】