(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】食品又は飲料の原材料組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/104 20160101AFI20240514BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240514BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20240514BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20240514BHJP
A23C 11/06 20060101ALI20240514BHJP
A23F 5/24 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
A23L7/104
A23L5/00 K
A23L5/00 J
A23L9/20
A23L33/21
A23C11/06
A23F5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571733
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022064193
(87)【国際公開番号】W WO2022253662
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10202105808V
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】アナンタ, エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ウェン
(72)【発明者】
【氏名】テラサス ヴェラルデ, コリーナ
(72)【発明者】
【氏名】タン, チン ゼン
(72)【発明者】
【氏名】リュー, サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】ワイング, セイン ラエ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B023
4B025
4B027
4B035
【Fターム(参考)】
4B018LB08
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(57)【要約】
本発明は、酵素加水分解された穀物から製造される食品原材料又は飲料原材料、並びに穀物ふすまのスラリーを、キシラナーゼ、α-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びエンドプロテアーゼを含む酵素組成物と接触させることによって、かかる原材料を製造する方法、に関する。本発明はまた、本発明の食品原材料又は飲料原材料を含む飲料クリーマー組成物、及びその製造方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品原材料又は飲料原材料であって、
乾物重量で5~20%のタンパク質と、
乾物重量で0.1~15%の脂肪と、
乾物重量で2~45%の食物繊維と、
乾物重量で5~35%の糖と、
乾物重量で70~94%の総炭水化物と、を含み、
前記タンパク質、脂肪、食物繊維、糖及び総炭水化物が、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する、
食品原材料又は飲料原材料。
【請求項2】
前記タンパク質、脂肪、食物繊維、糖及び総炭水化物が、酵素加水分解された米、オート麦、コーン、小麦、メイズ、大麦、ライ麦、キビ、ソルガム及びライ小麦のふすま、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する、請求項1に記載の食品原材料又は飲料原材料。
【請求項3】
乾物重量で35~90%の請求項1又は2に記載の食品原材料又は飲料原材料と、
乾物重量で10~45%の脂肪と、
を含む、クリーマー組成物。
【請求項4】
1種以上の乳化剤、及び/又は1種以上の緩衝塩を更に含む、請求項3に記載のクリーマー組成物。
【請求項5】
噴霧乾燥粉末の形態である、請求項3又は4に記載のクリーマー組成物。
【請求項6】
穀物ふすまのスラリーを、キシラナーゼ、α-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びエンドプロテアーゼを含む酵素組成物と接触させるステップと、
前記酵素組成物を20~70℃で30~240分間反応させるステップと、
前記酵素処理されたスラリーから微粒子を除去して、液体の食品原材料又は飲料原材料を製造するステップと、
を含む、請求項1又は2に記載の食品原材料又は飲料原材料を製造する方法。
【請求項7】
前記液体の食品原材料又は飲料原材料を、例えば蒸発によって、濃縮するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
穀物ふすまのスラリーを、キシラナーゼ、α-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びエンドプロテアーゼを含む酵素組成物と接触させるステップと、
前記酵素組成物を20~70℃で30~240分間反応させるステップと、
前記酵素処理されたスラリーから微粒子を除去して、液体の食品原材料又は飲料原材料を製造するステップと、
前記液体の食品原材料を脂肪と混合して、液体クリーマー組成物を製造するステップと、
を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載のクリーマー組成物を製造する方法。
【請求項9】
前記液体食品原材料を、脂肪と混合する前に、例えば蒸発によって、濃縮するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記液体クリーマー組成物を乾燥させて、粉末状クリーマー組成物を製造する、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品原材料及び飲料原材料、特に、加水分解された穀物ふすまから製造された食品原材料又は飲料原材料、その製造方法、及びそのような食品原材料の使用の分野に関する。
【0002】
[背景技術]
多くの食品製品及び飲料製品は、多量の糖を、たいていはグルコースシロップの形態で含有する。グルコースシロップは、栄養上の理由から望ましくない場合があり、栄養プロファイルを向上させるために、味、アロマ、テクスチャー、及び他の特性を保持しながら、より良好な栄養プロファイルを有する成分でグルコースシロップを置き換えることが望まれている。グルコースシロップは、多くの食品製品及び飲料製品の甘味に関与するだけでなく、テクスチャー及び体積にも関与する場合があり、更に、食品材料又は飲料材料の製造中の加工性にも影響し得る。合成甘味料は、ごく少量添加されることが多く、甘味に関与し得るが、製品体積が少なくなり、並びに異なるテクスチャー及び加工特性を製品にもたらし得る。甘味に関与し、製品の栄養品質を改善するだけでなく、グルコースシロップで甘味付けした製品と同様のテクスチャー及び体積を維持する、グルコースシロップに取って代わる改善された食品原材料が必要とされている。食品製品及び飲料製品の一例は、コーヒー及び/又は茶などの飲料に添加するために使用される飲料クリーマーである。飲料クリーマーは、例えば粉末形態であってもよく、グルコースシロップは、粉末の体積、並びにクリーマーを飲料に添加したときに得られる口当たりに関与し得る。更に、粉末状飲料クリーマーは、通常、クリーマー製品の成分を含む液体エマルションを乾燥させることによって製造される。意図する飲料に添加したときに容易に溶解する自由流動性粉体を得るのに効率的な方法で、液体組成物を乾燥させることが重要である。グルコースシロップを完全に又は部分的に置き換えること、及びそのようなクリーマーの栄養プロファイルを改善することが所望されており、したがって、甘味、体積、効率的な乾燥及び最終粉末特性を維持しながらグルコースシロップを置き換えることができ、かつ、例えば食物繊維を提供することによって栄養プロファイルを改善することができる、食品原材料及び飲料原材料が必要とされている。
【0003】
[発明の概要]
本発明者らは、穀物ふすまを酵素の特定の組み合わせにより加水分解することで製造できる食品原材料及び飲料原材料が、食品製品及び飲料製品中、例えば粉末状クリーマー組成物中のグルコースシロップの代わりに使用することができ、食物繊維含有量を増加させて製品の栄養プロファイルを改善することを見出した。したがって、本発明は、乾物重量で5%~20%のタンパク質と、乾物重量で0.1%~15%の脂肪と、乾物重量で2%~45%の食物繊維と、乾物重量で5%~35%の糖と、乾物重量で70%~94%の総炭水化物と、を含む食品原材料又は飲料原材料であって、上記タンパク質、脂肪、食物繊維、糖及び総炭水化物が、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する、食品原材料又は飲料原材料に関する。さらなる態様では、本発明は、食品原材料及び飲料原材料の製造方法、クリーマー組成物、並びにクリーマー組成物の製造方法に関する。
【0004】
[発明を実施するための形態]
本発明による穀物ふすまは、任意の穀物のふすまであってよい。好ましい実施形態では、穀物ふすまは、米、オート麦、コーン、小麦、メイズ、大麦、ライ麦及びライ小麦のふすま、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0005】
食品原材料又は飲料原材料
食品原材料又は飲料原材料とは、ヒト及び/又は動物による摂取を意図した食品組成物又は飲料組成物への添加に適した組成物を意味する。
【0006】
本発明は、酵素加水分解された穀物ふすまに由来するタンパク質と、脂肪と、食物繊維と、糖とを含む食品原材料又は飲料原材料を提供する。酵素加水分解された穀物ふすまとは、複合炭水化物及びタンパク質を加水分解して所望の含有量の脂肪、食物繊維、糖及び総炭水化物を有する組成物を得るために、加水分解酵素と接触させた穀物ふすまを意味する。好ましい実施形態では、酵素加水分解された穀物ふすまは、キシラナーゼ、α-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びエンドプロテアーゼを含む酵素組成物と接触させた穀物ふすまである。
【0007】
本発明の食品原材料又は飲料原材料は、酵素加水分解された穀物ふすまに由来するタンパク質を、乾物重量で5%~20%、好ましくは乾物重量で7%~15%含む。本発明の食品原材料又は飲料原材料は、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する脂肪を、乾物重量で0.1%~15%、好ましくは乾物重量で0.2%~10%、更に含む。更に、本発明の食品原材料又は飲料原材料は、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する食物繊維を、乾物重量で2%~45%、好ましくは乾物重量で3%~15%含む。食物繊維は、本明細書において、植物由来食品のうちヒト消化酵素によって分解されない部分を指して用いられ、可溶性食繊維と不溶性食物繊維とを包含する。
【0008】
本発明の食品原材料又は飲料原材料は、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する糖を、乾物重量で5%~35%、好ましくは乾物重量で10%~30%含む。本文脈における糖とは、単糖及び二糖の総量を意味する。更に、本発明の食品原材料又は飲料原材料は、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する総炭水化物を、乾物重量で70%~94%、好ましくは乾物重量で70%~92%、より好ましくは乾物重量で75%~90%含む。総炭水化物とは、食物繊維及び糖(単糖及び二糖)、並びにオリゴ糖及び多糖などの任意の他の炭水化物、例えばデンプンを含む、炭水化物の総量を意味する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、上記タンパク質、脂肪、食物繊維、糖及び総炭水化物は、加水分解された米、オート麦、コーン、小麦、メイズ、大麦、ライ麦、キビ、ソルガム及びライ小麦のふすま、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、酵素加水分解された穀物ふすまに由来する。
【0010】
グルコースシロップの代替物として使用するために、本発明の食品原材料又は飲料原材料のガラス転移温度は、例えば、当該原材料を用いて製造される食品製品又は飲料製品、例えば飲料クリーマーの加工、例えば乾燥を容易にするため、グルコースシロップと同様であることが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の食品原材料又は飲料原材料のガラス転移温度は、2重量%~3重量%の含水率において50℃~70℃である。
【0011】
クリーマー組成物
クリーマー組成物とは、例えば、コーヒー、茶、ブイヨン及び/又はスープなどの飲料又は液体食品製品に添加されることが意図される組成物を意味し、通常、飲料又は液体食品製品に色(例えば白色付与)、テクスチャー、味及び/又はアロマを付与するために使用される。クリーマーは、白色付与剤として、並びに温飲料及び冷飲料、例えば、コーヒー、ココア、茶などのテクスチャー/口当たり調整剤として、広く使用されている。クリーマーは、乳又は乳クリームの代わりに一般的に使用される。クリーマーは、様々な風味をもたらし、白色付与効果、口当たり、こく(body)、より滑らかなテクスチャー、味及び/又はアロマを提供することができ、液体又は粉末の形態であってもよい。
【0012】
一実施形態では、本発明は、乾物重量で35%~90%の本発明の食品原材料又は飲料原材料、好ましくは乾物重量で50%~80%の本発明の食品原材料又は飲料原材料と、乾物重量で10%~45%の脂肪、好ましくは乾物重量で20%~40%の脂肪と、を含むクリーマー組成物に関する。脂肪は、任意の好適な脂肪、例えば乳脂肪、植物油、又はこれらの組み合わせであってもよい。植物油は、例えば、パーム核油、キャノーラ油、大豆油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油、パーム油、コーン油、ココナッツ油、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0013】
本発明のクリーマー組成物は、1種以上の乳化剤及び/又は1種以上の緩衝剤を更に含んでもよい。
【0014】
乳化剤は、例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタントリオレエート、グリセロールジオレエート、ソルビタントリステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノオレエート及びグリセロールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ナトリウムステアロイルラクチレート、カルシウムステアロイルラクチレート、グリセロールソルビタンモノパルミテート、モノグリセリド、レシチン、リゾレシチンのジアセチル化酒石酸エステル、モノグリセリド及び/又はジグリセリドのコハク酸エステル、モノグリセリド及び/又はジグリセリド、レシチン、リゾレシチン、タンパク質の乳酸エステル、及び脂肪酸、レシチン(例えば、大豆レシチン、キャノーラレシチン、ヒマワリレシチン、及び/又はベニバナレシチン)、リゾレシチン、ペクチンのスクロースエステル、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0015】
緩衝剤は、コーヒーなどの高温で酸性の環境に添加したときに、クリーマーの望ましくないクリーミング又は沈殿を防止することができる。緩衝剤は、例えば、モノホスフェート、ジホスフェート、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び重炭酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり得る。好ましい緩衝剤は、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、ヒドロリン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ヒドロリン酸ナトリウム、クエン酸、及びトリポリリン酸ナトリウムなどの塩である。緩衝剤は、例えば、乾物重量でクリーマーの約0.1%~約3%の量で存在してもよい。
【0016】
本発明によるクリーマー組成物は、タンパク質を、例えば、乾物重量で0.5%~15%、例えば1.5%~10%、例えば1.5%~5%の範囲で更に含み得る。タンパク質は、任意の好適なタンパク質、例えば、カゼイン、カゼイン塩、及びホエイタンパク質などの乳タンパク質;植物性タンパク質、例えば、大豆、オート麦、米及び/若しくはエンドウ豆タンパク質;並びに/又はこれらの組み合わせであってもよい。組成物中のタンパク質は、乳化剤として機能すること、テクスチャーを提供すること、及び/又は白色付与効果を提供することができる。
【0017】
クリーマー組成物は、親水コロイドを含んでもよい。親水コロイドは、組成物の物理的安定性の改善に役立ち得る。好適な親水コロイドは、例えば、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、及び/又はラムダカラギーナンなどのカラギーナン;デンプン、例えば、加工デンプン;セルロース、例えば、微結晶セルロース、メチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロース;寒天;ゼラチン;ジェラン(例えば、高アシル、低アシル);グアーガム;アラビアガム;コンニャク(kojac);ローカストビーンガム;ペクチン;アルギン酸ナトリウム;マルトデキストリン;トラガカント;キサンタン;又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0018】
本発明のクリーマー組成物(例えば、クリーマー成分において提供される)は、風味料、甘味料、着色料、酸化防止剤(例えば脂質酸化防止剤)、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上の追加の原材料を更に含んでよい。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明によるクリーマー組成物は、粉末の形態、例えば、噴霧乾燥粉末、ローラー乾燥粉末、凍結乾燥粉末、凝集粉末、若しくは任意の他の好適な粉末形態、又はこれらの組み合わせの形態である。より好ましい実施形態では、本発明によるクリーマー組成物は、噴霧乾燥粉末の形態である。
【0020】
本発明の食品原材料又は飲料原材料の製造方法
更なる態様において、本発明は、本発明の食品原材料又は飲料原材料を製造する方法であって、穀物ふすまのスラリーを、キシラナーゼ、α-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びエンドプロテアーゼを含む酵素組成物と接触させるステップと、上記酵素組成物を20℃~70℃で30~240分間反応させるステップと、上記酵素処理されたスラリーから微粒子を除去して液体食品原材料を製造するステップと、を含む、方法に関する。
【0021】
キシラナーゼは、エンド-1,4-β-キシラナーゼとも呼ばれる酵素クラスEC 3.2.1.8の酵素活性を有する酵素であり、キシランにおける(1→4)-β-D-キシロシド結合のエンド型加水分解(endohydrolysis)を触媒するものと理解されたい。キシラナーゼは、キシラナーゼ活性のみを有してもよく、又はキシラナーゼ活性に加えて、1つ以上の副活性、すなわち他の酵素活性を更に有してもよい。
【0022】
α-アミラーゼは、酵素クラスEC3.2.1.1の酵素活性を有する1種以上の酵素であり、(1→4)-α結合したD-グルコース単位を3つ以上含む多糖類における(1→4)-α-D-グルコシド結合のエンド型加水分解を触媒するものと理解されたい。本発明によるα-アミラーゼは、α-アミラーゼ活性のみを有してもよく、又は1つ以上の副活性を更に有してもよい。
【0023】
セルラーゼは、酵素クラスEC3.2.1.4の酵素活性を有する酵素であり、セルロース、リケニン、及び穀物のβ-D-グルカンにおける(1→4)-β-グルコシド結合のエンド型加水分解を触媒し、また、1,3-結合も含有するβ-D-グルカンにおける1,4-結合も加水分解し得るものと理解されたい。セルラーゼは、セルラーゼ活性のみを有してもよく、又はセルラーゼ活性に加えて、1つ以上の副活性、すなわち他の酵素活性を更に有してもよい。
【0024】
β-グルカナーゼは、エンド-1,3(4)-β-グルカナーゼとも呼ばれる酵素クラスEC3.2.1.6の酵素活性を有する酵素であり、加水分解を受ける結合に自身の還元基が関与するグルコース残基がC-3にて置換されている場合の、β-D-グルカンの(1→3)-結合又は(1→4)-結合のエンド型加水分解を触媒するものと理解されたい。
【0025】
エンドプロテアーゼは、末端アミノ酸の末端部分からペプチド結合を切断するエキソペプチダーゼとは対照的に、非末端アミノ酸(すなわち、分子内)のペプチド結合を切断するプロテアーゼを意味し、エンドペプチダーゼとも呼ばれる。
【0026】
EC(Enzyme Committee)番号とは、国際生化学分子生物学連合の命名委員会によって定められた、酵素活性及び命名法についての定義を指す。
【0027】
「酵素組成物」とは、1種以上の酵素を含み、1つ以上の酵素活性を有する、組成物と理解される。酵素組成物は、任意の好適な供給源に由来し得る。これは例えば、所望の酵素活性を含む微生物細胞の抽出物の形態であってもよく、又は例えば、2つ以上の異なる微生物細胞の抽出物の混合物の形態であってもよい。細胞抽出物は、望ましくない成分、例えば望ましくない酵素活性を除去するため、及び/又は所望の酵素の濃度を高めるために、精製されてもよい。酵素組成物はまた、精製された酵素の混合物であってもよく、又は1種以上の細胞抽出物と1種以上の精製酵素との混合物であってもよい。
【0028】
好適な酵素は、例えば、微生物源(細菌、真菌、酵母)由来、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、バチルス属(Bacillus sp.)、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)、セルロモナス属(Cellulomonas sp.)、クロストリジウム属(Clostridium sp.)、ペニシリウム属(Penicillium sp.)、フザリウム属(Fusarium sp.)、サッカロミセス属(Saccharomyces sp.)、ソラヌム属(Solanum sp.)、ビブリオ属(Vibrio sp.)、ストレプトミセス属(Streptomyces sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、及び/又はリゾプス属(Rhizopus sp.)由来;動物源由来、例えば、海洋無脊椎動物(ホタテガイなど)、シロアリ、昆虫、ザリガニ、原生動物、巻貝、及び/若しくは甲殻類由来;並びに/又は植物源由来、例えば、海藻、オリーブ、及び/若しくはアーモンド由来であってもよい。
【0029】
本発明の方法によれば、穀物ふすま(cereal brand) のスラリーを酵素組成物と接触させる。スラリーは、酵素加水分解に適した任意の比率で、例えば、1:2~1:5の穀物ふすま対水の比率で、穀物ふすまと水とを混合することによって提供されてもよい。スラリーは、任意の適切な方法で、例えば、液体又は粉末状酵素組成物をスラリーと混合することによって、酵素組成物と接触させてもよい。酵素組成物は、組み合わされた組成物として添加されてもよく、又は1種以上の酵素が、例えば粉末又は液体の形態で、個別にスラリーに添加されてもよい。
【0030】
酵素組成物を20℃~70℃で30分間~240分間スラリーと反応させて、穀物ふすまの炭水化物及びタンパク質を加水分解して所望の組成物を得る。温度は、例えば、組成物の個々の酵素の異なる最適温度を考慮して、酵素反応中に変化させてもよい。例えば、温度を、例えば3段階で、段階的に変化させてもよい。好ましい実施形態では、酵素組成物を、45℃~55℃の温度で15分間~60分間、続いて55℃~65℃で30分間~120分間反応させる。より好ましい実施形態では、酵素組成物を、45℃~55℃の温度で15分間~60分間、続いて55℃~65℃で30分間~100分間、続いて65~75℃で15分間~60分間反応させる。酵素の反応は、所望の組成が達成されたときに、例えば酵素の不活性化によって、例えば使用している酵素の不活性化に適した任意の温度及び任意の時間、例えば70℃~100℃で5分間~60分間の熱処理によって、停止させてもよい。
【0031】
酵素処理したスラリーから微粒子を除去して、液体食品原材料を製造する。微粒子は、例えば、最終的な食品原材料又は飲料原材料において望ましくない、穀物ふすまの加水分解されていない残留物であり得、除去される。微粒子は、任意の好適な方法によって、例えば濾過又は遠心分離によって除去され得る。液体の食品原材料又は飲料原材料は、任意の好適な方法によって、好ましくは蒸発によって、更に濃縮されてもよい。
【0032】
クリーマー組成物の製造方法
なお更なる態様において、本発明は、本発明のクリーマー組成物を製造する方法であって、穀物ふすまのスラリーを、キシラナーゼ、α-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びエンドプロテアーゼを含む酵素組成物と接触させるステップと、酵素組成物を20℃~70℃で30分間~240分間反応させるステップと、酵素処理したスラリーから微粒子を除去して、液体食品原材料を製造するステップと、液体食品原材料を脂肪と混合して、液体クリーマー組成物を製造するステップと、を含む方法に関する。
【0033】
液体食品原材料の製造を含む方法の最初の部分は、先の段落で開示した食品原材料又は飲料原材料を製造する方法と同一である。このようにして製造された食品原材料又は飲料原材料を脂肪と混合して、クリーマー組成物を製造する。脂肪は、クリーマー組成物に関連して上に開示した任意の好適な脂肪であってもよく、上に開示したクリーマー組成物に含めるのに好適な任意の更なる成分を、クリーマー組成物に更に混合してもよい。成分の混合は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法によって達成されてもよい。例えば、脂肪を、1種以上の乳化剤、1種以上の緩衝塩、1種以上の親水コロイド及び/又は1つ以上のタンパク質の、水性懸濁液中に混合して、水中油型エマルションを製造してもよい。このエマルションを、本発明の食品原材料又は飲料原材料と混合してもよい。この混合物を、微生物学的安全性を確保するために更に熱処理してもよく、及び/又は良好な分散及び安定性を確保するために均質化してもよい。
【0034】
好ましい実施形態では、クリーマー組成物を、例えば噴霧乾燥、ローラー乾燥、又は凍結乾燥によって乾燥させて、粉末状クリーマー組成物を製造する。更に好ましい実施形態では、噴霧乾燥して、粉末状クリーマー組成物を製造する。
【0035】
[実施例]
実施例1 食品原材料又は飲料原材料の製造
16.8%のタンパク質と、9.8%の脂肪と、45.9%の炭水化物と、14.8%の食物繊維とを有するオート麦ふすまを加水分解の基質として使用した。ふすま対水の比1:3でスラリーを調製し、次の酵素:0.25%のFoodPro CBL(β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びキシラナーゼ)、0.075%のNZ26210(α-アミラーゼ)、及び0.5%のFoodPro Alkaline Protease(エンドプロテアーゼ)を添加した。塩酸(5M)を使用してpHを5.5に調整し、スラリーを50℃で30分間維持した。その後、温度を1℃/分で60℃まで上昇させ、次いで60℃で60分間維持した。次いで、1℃/分で68℃まで上昇させ、68℃で30分間維持した。最後に、1℃/分で80℃まで上昇させ、80℃で10分間維持した。次に、反応混合物を、下記のパラメータで濾過システムに通した:フィルター圧0.4bar;浸出圧力0.8bar;予備圧縮0.6bar;及び最終圧縮0.8bar。次いで、気圧(air)を4barとし、麦芽汁を液膜流下蒸発器(falling film evaporator)に移した。シロップの最終固形分は70%~81%であり、水分活性は0.8未満であった。
【0036】
米ぬかシロップは、米ぬかともみ殻(3:1)を含有する混合物を使用して調製した。ふすま/もみ殻対水の比1:3でスラリーを調製し、次の酵素:1%のFoodPro CBL(β-グルカナーゼ、セルラーゼ及びキシラナーゼ)、0.8%のNZ26210(α-アミラーゼ)、及び0.3%のFoodPro Alkaline Protease(エンドプロテアーゼ)を添加した。塩酸(5M)を使用してpHを5.5に調整し、スラリーを50℃で30分間維持した。その後、温度を1℃/分で60℃まで上昇させ、次いで60℃で60分間維持した。次いで、1℃/分で68℃まで上昇させ、68℃で30分間維持した。最後に、1℃/分で80℃まで上昇させ、80℃で10分間維持した。次に、反応混合物を、下記のパラメータで濾過システムに通した:フィルター圧0.4bar;浸出圧力0.8bar;予備圧縮0.6bar;及び最終圧縮0.8bar。次いで、気圧を4barとし、麦芽汁を液膜流下蒸発器に移した。シロップの最終固形分は70%~81%であり、水分活性は0.8未満であった。
【0037】
コーンふすまシロップは、コーンふすまペレットを使用して調製した。ふすま/もみ殻対水の比1:3でスラリーを調製し、次の酵素:1%のGrindamyl H490(キシラナーゼ)、1%のNZ26210(α-アミラーゼ)、及び0.3%のFAN Boost(エンドプロテアーゼ)を添加した。スラリーを50℃で30分間維持した。その後、温度を1℃/分で60℃まで上昇させ、次いで60℃で80分間維持した。最後に、1℃/分で80℃まで上昇させ、80℃で30分間維持した。次に、反応混合物を、下記のパラメータで濾過システムに通した:フィルター圧0.4bar;浸出圧力0.8bar;予備圧縮0.6bar;及び最終圧縮0.8bar。次いで、気圧を4barとし、麦芽汁を液膜流下蒸発器に移した。シロップの最終固形分は70%~81%であり、水分活性は0.8未満であった。
【0038】
実施例2 化学組成
実施例1で製造した加水分解穀物ふすま(シロップ)の化学組成(乾物ベース)
【0039】
【0040】
使用した方法:
タンパク質(N×6.25)ケルダール法(PGEN_S)
Official Methods and Recommended Practices of the American Oil Chemists’ Society,Champaign,IL,Official Methods Ac 4-91
(2011)。(修正法)
【0041】
総食物繊維(IDFM_S)
Official Methods of Analysis,Method 2011.25,AOAC INTERNATIONAL(修正法)。
【0042】
酸加水分解による脂肪(FAT_AH_S)
乳製品、卵製品又はチーズ製品ではない食品製品
Official Methods of Analysis of AOAC INTERNATIONAL(2005)18TH Ed.,AOAC,INTERNATIONAL,Gaithersburg,MD,USA,
公定法922.06及び954.02(修正法)。
【0043】
イオンクロマトグラフィーによる糖プロファイル(SGIC_2_S)
Ellingson,D.,Anderson,P.,Berg,D.,”Analytical Method for Sugar Profile in Pet Food and Animal Feeds by High-
Performance Anion-Exchange Chromatography with Pulsed Amperometric Detection”,Journal of AOAC
INTERNATIONAL 99(2):342-352(2016)(修正法)。
【0044】
炭水化物(CHO)
United States Department of Agriculture,”Energy Value of Foods”,Agriculture
Handbook No.74,pp.2-11,(1973)。
【0045】
M100_T100による水分(M100T100_S)
Official Methods of Analysis of AOAC INTERNATIONAL,18th Ed.,Methods 925.09 and 926.08,AOAC INTERNATIONAL,Gaithersburg,MD,USA(2005)(修正法)。
【0046】
実施例3 粉末状クリーマー組成物
実施例1で製造した食品原材料又は飲料原材料(穀物ふすまシロップ)のそれぞれを使用して飲料クリーマー組成物を製造した。
【0047】
緩衝塩を水に可溶化した(0.7%のクエン酸及び1.5%の重炭酸ナトリウム)。可溶化が完了したら、乳タンパク質(1.89%のカゼインナトリウム)を完全に懸濁するまで添加した(約10分)。これらのステップは、60℃~70℃において連続撹拌下で実施した。並行してこれとは別に、約60℃~70℃にて、撹拌下で、30.15%のパーム核油と0.8%のヒマワリレシチンとで構成される油相を調製した。これらの2つの相、水相と油相とを、一緒に添加した。ふすまシロップ(64.96%)を組み込んだ(約60℃で予熱)。濃縮物は約60%の総固形分を有していた。粘度を、記載のように測定した。均質化ステップに進む前に、濃縮物を81℃で25秒間の熱処理に供した。均質化設定は、第1/第2段階では180/50barとした。熱処理及び均質化したスラリーを噴霧乾燥機に進めて、含水量が最大3%である粉末クリーマーが得られるまで過剰な水を蒸発させた。ガラス転移温度を、記載のように測定した。全ての百分率は、水(総重量による)を除いた乾物の重量による。
【0048】
結果
下表は、上記で製造したクリーマー、及び同様に製造したが本発明の食品原材料又は飲料原材料の代わりにグルコースシロップを使用した参照クリーマー(HAKKE RheoWin,RS6000)について、乾燥前に測定したクリーマー濃縮物粘度の結果を示す。良好な加工のために、濃縮物粘度は、噴霧を妨げるほど高くてはならず、又は加工問題及びカップ内再構成不良をもたらす過剰な微粉をクリーマー粉末中に生じるほど低すぎてはならない。表は、総固形分(TS)が類似した濃縮物の濃縮物粘度に対する剪断速度の結果を示す。全て、500~600 1/sで30~100mPa・sの噴霧可能な範囲内である。
【0049】
【0050】
最終粉末のガラス転移開始温度を測定した。示差走査熱量測定法による結果を下表に示す。製品を噴霧乾燥して、シロップを使用した粉末コーヒークリーマーを得ることができることを示す。
【0051】
【0052】
官能特性は、訓練を受けたパネリストによって評価した。レシピを、22%の純粋な可溶性コーヒーと68%のクリーマー(風味剤又は調整剤を含まない)に設定した。本発明によるクリーマーを、グルコースシロップを使用して製造した参照クリーマーと比較して試験した。有意なオフノートは検出されず、全てのクリーマーが許容可能な官能プロファイルを有していた。
【国際調査報告】