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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ポンプ監視システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20240514BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240514BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571845
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 GB2022051255
(87)【国際公開番号】W WO2022243682
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2107289.7
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パティー アレキサンダー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ クリストファー
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD03
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
本発明の態様は、真空ポンプ(3)の故障状態を識別するためのポンプ監視システム(1)に関する。ポンプ監視システム(1)は、制御装置(23)と、音波を検出するためのマイクロホン(37)とを含む。制御装置(23)は、真空ポンプ(3)によって生成された音波を表す音響信号(SAUD-n)をマイクロホン(37)から受け取るように構成されている。制御装置(23)は、受け取った音響信号(SAUD-n)を処理して、音響信号(SAUD-n)の周波数ドメイン表現を生成する。音響信号(SAUD-n)の周波数ドメイン表現は、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するために分析される。故障状態信号(SFLT-n)は、少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の識別に基づいて、故障状態を識別するために出力される。さらなる実施形態では、ポンプ監視システム(1)は、振動を検出するための振動センサ(51)を備える。また、本発明は、真空ポンプ(3)、真空ポンプ(3)を監視する方法、及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(3)の故障状態を識別するためのポンプ監視システム(1)であって、前記ポンプ監視システム(1)は、制御装置(23)と、音波を検出するためのマイクロフォン(37)とを備え、前記制御装置(23)は、
前記真空ポンプ(3)よって生成された音波を表す音響信号(SAUD-n)をマイクロホン(37)から受け取り、
受け取った前記音響信号(SAUD-n)を処理して、前記音響信号(SAUD-n)の周波数ドメイン表現を生成し、
前記音響信号(SAUD-n)の前記周波数ドメイン表現を分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別し、
前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の識別に基づいて、前記故障状態を識別するための故障状態信号(SFLT-n)を出力する、
ように構成されている、ポンプ監視システム(1)。
【請求項2】
前記制御装置(23)は、前記マイクロホン(37)から受け取った前記音響信号(SAUD-n)を処理し、前記音響信号(SAUD-n)を前記時間ドメインから前記周波数ドメインに変換するように構成された少なくとも1つの電子プロセッサ(25)を備える、請求項1に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電子プロセッサ(25)は、
前記マイクロホン(37)から前記音響信号(SAUD-n)を受け取るための少なくとも1つの電気入力と、
前記故障状態の識別に基づいて、故障状態信号(SFLT-n)を出力するための少なくとも1つの電気出力と、
を備える、請求項2に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項4】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の動作速度を決定するように構成され、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)は、前記真空ポンプ(3)の決定された前記動作速度に基づいて識別される、請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項5】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の定常動作中に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項4に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項6】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が増加又は減少する場合に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項4に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項7】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の動作速度を変化させる要求を出力するように構成され、前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の前記動作速度の変化に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の変化を監視するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項8】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の運転負荷を決定するように構成され、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)は、前記真空ポンプ(3)の前記運転負荷に基づいて識別される、請求項1から7のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項9】
前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)は、1又は2以上の周波数成分識別子を含み、前記制御装置(23)は、前記周波数ドメイン表現の中の前記1又は2以上の周波数成分識別子の識別に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項10】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の周波数又は周波数範囲を含む、請求項9に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項11】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の振幅又は振幅範囲を含む、請求項9又は10に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項12】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、真空ポンプ(3)の動作速度に関して規定される、請求項9から11のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)を備える真空ポンプ(3)。
【請求項14】
真空ポンプ(3)の故障状態を識別する方法であって、
前記真空ポンプ(3)によって生成された音波を表す音響信号(SAUD-n)を受け取るステップと、
前記音響信号(SAUD-n)を周波数ドメインに変換するステップと、
前記周波数ドメインを分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の識別に基づいて前記故障状態を識別するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記真空ポンプ(3)の動作速度を決定するステップと、
前記真空ポンプ(3)の決定された前記動作速度に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記真空ポンプ(3)の定常運転中に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が増加又は減少する場合に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記真空ポンプ(3)の動作速度を変化させるステップと、
前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が変化した場合に、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の変化を監視するステップと、
を含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記真空ポンプ(3)の運転負荷を決定するステップと、
前記真空ポンプ(3)の前記運転負荷に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
を含む、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)は、1又は2以上の周波数成分識別子を含み、前記制御装置(23)は、周波数ドメイン表現の中の1又は2以上の周波数成分識別子の識別に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の周波数又は周波数範囲を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の振幅又は振幅範囲を含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記真空ポンプ(3)の動作速度に関して規定される、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
実行されると、請求項14から23のいずれか一項に記載の方法をプロセッサに実行させる、記憶された命令セットを有する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポンプ監視システム及び方法に関する。本発明の態様は、ポンプの故障状態を識別するためのポンプ監視システム及び方法に関する。本明細書に記載のポンプ監視システム及び方法は、真空ポンプの監視に関して特定の用途を有する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、例えば軸受の摩耗により故障状態になる場合がある。識別されない場合、故障状態になり、真空ポンプの損傷につながる可能性がある。
【0003】
米国公開第2019/0383296号から、加速度センサを備えた真空ポンプを提供することが知られている。加速度センサから出力された振動データは、軸受振動周波数を識別するために処理される。監視された軸受振動周波数の加速度値が閾値以上になると、アラームが発生する。この構成に関連する課題は、加速度センサを分離する必要性、例えば、測定値への干渉を防ぐために取付け組立体の共振周波数を制御する必要性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国公開第2019/0383296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に関連する1又は2以上の欠点に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様及び実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されるようなポンプ監視システム;ポンプ監視システムを含む真空ポンプ;真空ポンプを監視する方法;及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【0007】
本発明の一態様によれば、真空ポンプの故障状態を識別するためのポンプ監視システムが提供され、ポンプ監視システムは、制御装置と、音波を検出するためのマイクロホンとを備え、制御装置は、
真空ポンプによって生成された音波を表す音響信号をマイクロホンから受け取り、
受け取った音響信号を処理して、音響信号の周波数ドメイン表現を生成し、
音響信号の周波数ドメイン表現を分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別し、
少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別に基づいて、故障状態を識別するための故障状態信号を出力する。ポンプ監視システムは、真空ポンプの故障状態を識別するように構成することができる。ポンプ監視システムは、真空ポンプが動作している場合に真空ポンプから生成される音を監視することによって、故障状態を識別するように動作可能である。真空ポンプの故障状態が識別可能な音響シグネチャを有することが決定される。少なくとも特定の実施形態では、ポンプ監視システムは、1又は2以上の故障状態に関連する音響シグネチャを識別するように動作可能である。故障状態周波数成分は、既知の故障状態に関連する音響シグネチャに基づいて予め設定することができる。制御装置は、故障状態周波数成分の識別を可能にするように音波を周波数ドメインに変換するように構成されている。故障状態は、故障状態周波数成分に関連付けられる。異なる故障状態は、異なる故障状態周波数成分と関連付けることができる。制御装置は、関連する故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するように構成されている。ポンプ監視システムは、故障状態が識別されていることの通知又は警告を提示するために故障状態信号を出力する。特定の実施形態では、故障状態信号に基づいて真空ポンプの動作を停止させることができる。これは、故障の発生を防止するためのメンテナンス又はサービスを可能にすることができる。あるいは、故障状態信号に基づいて、サービス又はメンテナンスをスケジュール設定することができる。
【0008】
少なくとも特定の実施形態では、当該又は各故障状態周波数成分は、音響信号の周波数ドメイン表現の中の識別可能な特徴又は要素を含むか又はそれからなる。当該又は各故障状態周波数成分は、例えば、音響信号の周波数ドメイン表現の中のピーク又はスパイクを含むか又はそれからなる場合がある。用語「周波数成分識別子」は、本明細書では、特定の周波数成分を識別するのに適した特徴又は要素を表すために使用される。故障状態周波数成分の各々は、制御装置によって識別可能な1又は2以上の周波数成分識別子を含むことができる。
【0009】
制御装置は、複数の故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。制御装置は、音響信号の周波数ドメイン表現を分析して、複数の故障状態周波数成分のうちの1又は2以上を識別するように構成することができる。故障状態周波数成分の各々は、関連する故障状態に関連することができる。制御装置は、第1の故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。第1の故障状態は、第1の故障状態を示すことができる。制御装置は、第2の故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。第2の故障状態は、第2の故障状態を示すことができる。第1の故障状態及び第2の故障状態は、互いに異なる場合がある。
【0010】
ポンプ監視システムは、故障状態周波数成分の識別に基づいて、真空ポンプの故障状態を検出することができる。少なくとも特定の実施形態では、ポンプ監視システムは、故障状態の特性又は形態を識別することができる。例えば、ポンプ監視システムは、故障状態が真空ポンプの特定の構成要素に関連することを決定することができる。この決定は、例えば、音響信号の周波数ドメイン表現の中で故障状態周波数成分が発生する周波数に基づいて行うことができる。制御装置は、音響信号の周波数ドメイン表現の中で故障状態周波数成分が発生する周波数に基づいて、故障状態を特徴付けるように構成することができる。故障状態信号は、特定の故障状態を識別することができる。
【0011】
制御装置は、真空ポンプの2以上の故障状態を識別することができることを理解されたい。故障状態の異なる組み合わせは、各故障状態周波数成分に関連する周波数成分識別子に影響を与える可能性がある。制御装置は、2又は3以上の故障状態が同時に識別される場合に、そのような変化を識別するように構成することができる。
【0012】
制御装置は、マイクロホンから受け取った音響信号を処理するように構成された少なくとも1つの電子プロセッサを含むことができる。少なくとも1つの電子プロセッサは、音響信号を時間ドメインから周波数ドメインに変換するように構成することができる。少なくとも1つの電子プロセッサは、マイクロホンから音響信号を受け取るための少なくとも1つの電気入力を備えることができる。少なくとも1つの電子プロセッサは、故障状態の識別に基づいて故障状態信号を出力するための少なくとも1つの電気出力を備えることができる。
【0013】
制御装置は、真空ポンプの動作速度を決定するように構成することができる。制御装置は、真空ポンプの決定された動作速度に基づいて、少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。
【0014】
制御装置は、真空ポンプの定常運転中に、当該又は各故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。
【0015】
制御装置は、真空ポンプの動作速度が増加又は減少する場合に、少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。真空ポンプの動作速度の増加は、ランプアッププロセス中に発生する場合がある。真空ポンプの動作速度の減少は、ランプダウンプロセス中に発生する場合がある。制御装置は、真空ポンプの動作速度が増加又は減少する場合に、当該又は各故障状態周波数成分を規定する1又は2以上の周波数成分識別子の変化を識別するように構成することができる。例えば、制御装置は、真空ポンプの動作速度の変化に基づいて、少なくとも1つの故障状態周波数成分の周波数の増加又は減少を識別するように構成することができる。
【0016】
特定の動作速度では、マイクロホンから発生する音波が高レベルのノイズ又は干渉を含む場合があることが認識されている。これらは、例えば、真空ポンプ内の1又は2以上の構成要素の共振周波数で発生する振動によって引き起こされる可能性がある。このような動作速度では、制御装置は、少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するのに有効であることが証明されていない可能性がある。制御装置は、1又は2以上の動作速度で又は1又は2以上の動作速度範囲内で、少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別を抑止又は抑制するように構成することができる。1又は2以上の動作速度及び/又は1又は2以上の動作速度範囲は、予め設定することができる。
【0017】
代替的に又は追加的に、制御装置は、所定の期間の間、少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別を要求するように構成することができる。代替的に又は追加的に、制御装置は、所定の動作速度で又は所定の動作速度範囲にわたって、少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別を要求するように構成することができる。制御装置は、これらの条件の1又は2以上が満たされた場合にのみ、故障状態を識別するための故障状態信号を出力するように構成することができる。
【0018】
制御装置は、真空ポンプの動作速度を変化させる要求を出力するように構成することができる。制御装置は、真空ポンプの動作速度の変化に基づいて、故障状態周波数成分の変化を監視するように構成することができる。例示的に、真空ポンプの動作速度の変化は、故障状態周波数成分を識別する周波数成分識別子の対応する変化をもたらす場合がある。制御装置は、少なくとも1つの故障状態周波数成分の検出された変化に基づいて、故障状態周波数成分の識別を確認するように構成することができる。制御装置は、少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別が確認されたことに基づいて、故障状態を識別するための故障状態信号を出力するように構成することができる。真空ポンプの動作速度の変化を要求することによって、制御装置は、例えば、同時に動作している可能性のある2又は3以上の真空ポンプを区別するために、真空ポンプを切り離すことができる。この制御戦略は、独立して特許を受けることができると考えられる。さらに、この技術は、振動センサ又は加速度センサなど、マイクロホン以外のセンサを使用する監視システムにも適用可能であることを理解されたい。
【0019】
制御装置は、真空ポンプの動作速度の増加又は減少を要求することができる。制御装置は、真空ポンプの目標動作速度を要求することができる。真空ポンプの動作速度の何らかの変更は、例えば、動作速度が予め設定された制限値を超えないことを保証するために、予め設定された動作範囲内で実行することができる。
【0020】
制御装置は、真空ポンプの運転負荷を決定するように構成することができる。少なくとも1つの故障状態周波数成分は、真空ポンプの運転負荷に基づいて識別することができる。少なくとも1つの故障状態周波数成分は、真空ポンプの運転負荷に基づいて規定することができる。運転負荷は、真空ポンプ内のガス圧に起因するガス負荷、真空ポンプの動作温度に起因する温度負荷、及び真空ポンプの配向に起因する配向負荷のうちの1又は2以上を含むことができる。運転負荷は、例えば、測定された電気負荷、測定された動作圧力及び動作温度のうちの1又は2以上に基づいて、真空ポンプの動作を監視することによって決定することができる。
【0021】
当該又は各故障状態周波数成分は、1又は2以上の周波数成分識別子を含むことができる。当該又は各周波数成分識別子は、関連する故障状態周波数成分の識別を可能にするために、独立して識別可能とすることができる。あるいは、複数の周波数成分識別子の組み合わせを識別して、関連する故障状態周波数成分の識別を可能にすることができる。故障状態周波数成分を識別するための周波数ドメイン表現の分析は、1又は2以上の周波数成分識別子を有する周波数成分を識別することを含むことができる。制御装置は、周波数ドメイン表現の中の1又は2以上の周波数成分識別子の識別に基づいて、当該又は各故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。制御装置は、音響信号の周波数ドメイン表現の中の1又は2以上の周波数成分識別子の有無に基づいて、当該又は各故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。1又は2以上の周波数成分識別子は、予め設定することができる。
【0022】
第1の故障状態周波数成分は、第1の値を有する1又は2以上の周波数成分識別子を含むことができる。第2の故障状態周波数成分は、第2の値を有する1又は2以上の周波数成分識別子を含むことができる。1又は2以上の第1の値と1又は2以上の第2の値は、互いに異なる場合がある。制御装置は、第1及び第2の値に基づいて、第1及び第2の故障状態周波数成分を区別することができる。
【0023】
1又は2以上の周波数成分識別子は、当該又は各故障状態周波数成分の周波数又は周波数範囲を含むことができる。周波数は、離散周波数を含むことができる。制御装置は、離散周波数で発生する周波数成分の識別に基づいて、故障状態周波数成分を識別することができる。周波数範囲は、第1の周波数値及び/又は第2の周波数値を含むことができる。周波数範囲は、第1の周波数値よりも大きい及び/又は第2の周波数値よりも小さい場合がある。制御装置は、周波数範囲内で発生する周波数成分の識別に基づいて、故障状態周波数成分を識別することができる。
【0024】
1又は2以上の周波数成分識別子は、当該又は各故障状態周波数成分の大きさ(振幅)又は大きさ(振幅)範囲を含むことができる。当該又は各故障状態周波数成分は、振幅値を含むことができる。制御装置は、音響信号の周波数ドメイン表現の中で振幅値と実質的に等しい振幅を有する周波数成分を識別することによって、当該又は各故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。制御装置は、音響信号の周波数ドメイン表現の中で振動値よりも大きな振動を有する周波数成分を識別することによって、当該又は各故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。当該又は各故障状態周波数成分は、振幅範囲を含むことができる。制御装置は、振幅範囲内の振幅を有する音響信号の周波数ドメイン表現の中の周波数成分を識別することによって、当該又は各故障状態周波数成分を識別するように構成することができる。
【0025】
1又は2以上の周波数成分識別子は、真空ポンプの動作速度に関して規定することができる。制御装置は、真空ポンプの動作速度を決定するように構成することができる。制御装置は、真空ポンプの動作速度に基づいて、周波数ドメイン表現の中の少なくとも1つの周波数成分識別子を識別するように構成することができる。
【0026】
故障状態は、故障状態に進展する可能性がある。少なくとも特定の実施形態では、ポンプ監視システムは、故障状態の早期特定を容易にする。これにより、真空ポンプの損傷を軽減又は回避することができる。
【0027】
マイクロホンは、真空ポンプの内部又は外部に取り付けることができる。マイクロホンは常時オンとすること、又は選択的に作動させる又は停止させることができる。例えば、マイクロホンは、通気中に選択的に動作を停止させることができる。
【0028】
制御装置は、温度センサから温度信号を受け取るように及び/又は圧力センサから圧力信号を受け取るように構成することができる。故障状態の識別は、温度信号及び/又は圧力信号に基づいて実行することができる。
【0029】
ポンプ監視システムは、例えば、互いに間隔をあけて配置された複数のマイクロホンから2以上の音響信号を受け取ることができる。制御装置は、複数のマイクロホンから受け取った音響信号を分析するように構成することができる。制御装置は、受け取った音響信号を処理して、各音響信号の周波数ドメイン表現を生成することができる。制御装置は、音響信号の周波数ドメイン表現を比較することができる。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、真空ポンプの故障状態を識別するためのポンプ監視システムが提供される。ポンプ監視システムは、制御装置と、振動を検出するための振動センサとを備え、制御装置は、
真空ポンプによって生成された振動を表す振動信号を振動センサから受け取り、
受け取った振動信号を処理して、振動信号の周波数ドメイン表現を生成し、
振動信号の周波数ドメイン表現を分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別し、
真空ポンプの動作速度を変化させる要求を出力し、真空ポンプの動作速度の変化に基づいて少なくとも1つの故障状態周波数成分の変化を検出し、
少なくとも1つの故障状態周波数成分の検出された変化に基づいて、故障状態周波数成分の識別を確認し、
確認された少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別に基づいて、故障状態を識別するための故障状態信号を出力する。振動センサは、例えば、加速度センサを含むことができる。振動センサは、真空ポンプに固定的に取り付けることができる。振動センサは、例えば、ポンプハウジングに取り付けることができる。あるいは、振動センサは、例えばポンプ制御装置ハウジングなどのポンプ制御装置に設けることができる。振動信号に適用される処理は、マイクロホンによって生成された音響信号に関して本明細書で説明した技術と同じとすることができる。真空ポンプの動作速度の変化を要求することにより、ポンプ監視システムは、例えば故障状態を切り離すために、異なる真空ポンプの間を区別することができる。ポンプ監視システムは、例えば、互いに間隔をあけて配置された複数の振動センサから2以上の振動信号を受け取ることができる。
【0031】
制御装置は、真空ポンプの動作速度の増加又は減少を要求することができる。制御装置は、真空ポンプの目標動作速度を要求することができる。真空ポンプの動作速度の何らかの変更は、例えば動作速度が予め設定された制限値を超えないことを保証するために、予め設定された動作範囲内で実行することができる。
【0032】
ポンプ監視システムは、真空ポンプの作動中に発生する振動を監視することによって、故障状態を識別するように動作可能である。真空ポンプの故障状態は、識別可能な振動シグネチャを有する。少なくとも特定の実施形態では、ポンプ監視システムは、1又は2以上の故障状態に関連する振動シグネチャを識別するように動作可能である。故障状態周波数成分は、既知の故障状態に関連する振動シグネチャに基づいて予め設定することができる。制御装置は、故障状態周波数成分の識別を可能にするために、振動信号を周波数ドメインに変換するように構成されている。故障状態は、故障状態周波数成分に関連付けられる。異なる故障状態は、異なる故障状態周波数成分に関連付けることができる。制御装置は、関連する故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するように構成されている。ポンプ監視システムは、故障状態が特定されていることの通知又は警告を提示するために故障状態信号を出力する。
【0033】
真空ポンプは、ターボ分子ポンプとすることができる。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載のポンプ監視システムを含む真空ポンプが提供される。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、真空ポンプの故障状態を識別する方法が提供され、この方法は、
真空ポンプによって生成された音波を表す音響信号を受け取るステップと、
音響信号を周波数ドメインに変換するステップと、
周波数ドメインを分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するステップと、
少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別に基づいて故障状態を識別するステップと、
を含む。
【0036】
本方法は、真空ポンプの動作速度を決定するステップを含むことができる。真空ポンプの決定された動作速度に基づいて、少なくとも1つの故障状態周波数成分を特定することができる。
【0037】
本方法は、真空ポンプの定常運転中に少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するステップを含むことができる。
【0038】
本方法は、真空ポンプの動作速度が増加又は減少する場合に少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するステップを含むことができる。
【0039】
本方法は、真空ポンプの動作速度を変化させるステップを含むことができる。本方法は、真空ポンプの動作速度が変化する場合に、少なくとも1つの故障状態周波数成分の変化を監視するステップを含むことができる。
【0040】
本方法は、真空ポンプの運転負荷を決定するステップを含むことができる。真空ポンプの動作負荷に基づいて、少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別することができる。
【0041】
少なくとも1つの故障状態周波数成分は、1又は2以上の周波数成分識別子を含むことができる。1又は2以上の周波数成分識別子は、予め設定することができる。本方法は、周波数ドメイン表現の中の少なくとも1つの周波数成分識別子の識別に基づいて、少なくとも1つの故障状態周波数成分を識別するステップを含むことができる。
【0042】
1又は2以上の周波数成分識別子は、当該又は各故障状態周波数成分の周波数を含むことができる。代替的に又は追加的に、1又は2以上の周波数成分識別子は、当該又は各故障状態周波数成分の周波数範囲を含むことができる。周波数範囲は、下限周波数値及び/又は上限周波数値を含むことができる。
【0043】
1又は2以上の周波数成分識別子は、当該又は各故障状態周波数成分の振幅を含むことができる。代替的に又は追加的に、1又は2以上の周波数成分識別子は、当該又は各故障状態周波数成分の振幅範囲を含むことができる。振幅範囲は、下限振幅値及び/又は上限振幅値を含むことができる。
【0044】
1又は2以上の周波数成分識別子は、真空ポンプの動作速度に関して規定することができる。
【0045】
本方法は、例えば、互いに間隔をあけて配置することができる複数のマイクロホンから2以上の音響信号を受け取ることを含むことができる。本方法は、複数の音響信号を分析するステップを含むことができる。音響信号は、各音響信号の周波数ドメイン表現を生成するために処理することができる。本方法は、音響信号の周波数ドメイン表現を比較するステップを含むことができる。
【0046】
本発明のさらなる態様によれば、真空ポンプの故障状態を識別する方法が提供され、本方法は、
真空ポンプによって生成された振動を表す振動信号を振動センサから受け取るステップと、
振動信号を振動信号の周波数ドメイン表現に変換するステップと、
振動信号の周波数ドメイン表現を分析し、故障状態を示す故障状態周波数成分を識別するステップと、
真空ポンプの動作速度を変化させる要求を出力し、真空ポンプの動作速度の変化に基づいて少なくとも1つの故障状態周波数成分の変化を検出するステップと、
少なくとも1つの故障状態周波数成分の検出された変化に基づいて、故障状態周波数成分の識別を確認するステップと、
確認された少なくとも1つの故障状態周波数成分の識別に基づいて、故障状態を識別するための故障状態信号を出力する。本方法は、例えば、互いに間隔をあけて配置された複数の振動センサから2以上の振動信号を受け取るステップを含むことができる。
【0047】
本発明のさらなる態様によれば、実行されるとプロセッサに本明細書に記載の方法を実行させる、その中に格納された命令セットを有する非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。
【0048】
本明細書に記載される何らかの制御ユニット又は制御装置は、好適には、1又は2以上の電子プロセッサを有する計算装置を備えることができる。システムは、単一の制御ユニット又は電子制御装置を備えることができ、あるいは、制御装置の異なる機能は、異なる制御ユニット又は制御装置に具現化されるか又はホストされる場合がある。本明細書で使用される場合、用語「制御装置」又は「制御ユニット」は、単一の制御ユニット又は制御装置、及び何らかの御機能を提供するために集合的に動作する複数の制御ユニット又は制御装置の両方を含むことを理解されたい。制御装置又は制御ユニットを構成するために、実行されると、上記制御ユニット又は計算装置に本明細書で定義される制御技術を実施させる適切な命令セットを提供することができる。一連の命令は、好適には、上記1又は2以上の電子プロセッサに埋め込むことができる。あるいは、一連の命令は、上記計算デバイス上で実行されるように、上記制御装置に関連する1又は2以上のメモリ上に保存されたソフトウェアとして提供することができる。制御ユニット又は制御装置は、1又は2以上のプロセッサ上で実行されるソフトウェアで実装することができる。1又は2以上の他の制御ユニット又は制御装置は、1又は2以上のプロセッサ(随意的に、第1の制御装置と同じ1又は2以上のプロセッサ)上で実行されるソフトウェアで実装することができる。他の適切な構成を使用することができる。
【0049】
本出願の範囲内で、上記の段落、特許請求の範囲及び/又は以下の説明及び図面に記載された様々な態様、実施形態、実施例、及び代替案、詳細には個々の特徴は、独立して又は何らかの組み合わせで取得することができることが明示的に意図されている。すなわち、全ての実施形態及び/又は何らかの実施形態の特徴は、そのような特徴が両立しない場合を除き、何らかの方法及び/又は組み合わせで組み合わせることができる。本出願人は、最初の出願ではそのように請求項に記載されていないが、他の何らかの請求項の何らかの特徴に応じて、及び/又はそれを組み込むために、最初の出願の請求項を修正する権利を含む、最初の出願の請求項を変更するか又はそれに応じて何らかの新しい請求項を提出する権利を保有する。
【0050】
本発明の1又は2以上の実施形態は、以下に、添付の図面を参照しながら単に例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の一実施形態による真空ポンプ及びポンプ監視システムの概略図を示す。
図2図1に示すポンプ監視システム1の制御装置を示す概略図を示す。
図3】真空ポンプから放出される音波の周波数ドメイン表現を示すグラフを示す。
図4】本発明の一実施形態によるポンプ監視システムの動作を示す第1のブロック図を示す。
図5】本発明の実施形態の変形例によるポンプ監視システムの動作を示す第2のブロック図を示す。
図6】本発明のさらなる実施形態による真空ポンプ及びポンプ監視システムの概略図である。
図7図6に示す実施形態によるポンプ監視システムの動作を示す第3のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の実施形態によるポンプ監視システム1は、添付の図面を参照して本明細書で説明される。ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の1又は2以上の故障状態を識別するように構成されている。1又は2以上の故障状態の各々は、ポンプ監視システム1によって識別可能な特徴的な音響シグネチャ(signature)を有する。ポンプ監視システム1は、故障状態を示す音響シグネチャ(複数可)の識別に基づいて故障状態通知を生成する。
【0053】
ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作を監視するように構成されている。詳細には、ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の1又は2以上の故障状態を識別するように構成されている。少なくとも特定の実施形態では、ポンプ監視システム1は、故障状態の早期識別を可能にすることができる。これは、さもなければ故障状態につながる可能性のある故障の進展を防止するために、メンテナンス行動又は修理を実行するのを可能にすることができる。故障状態の早期識別は、真空ポンプ3のメンテナンスのスケジューリングを容易にすることができる。
【0054】
図1は真空ポンプ3の概略図を示す。真空ポンプ3は、例えば半導体エッチングプロセス及び化学気相成長(CVD)プロセスに関連するプロセスガスをポンプ送給するよう作動する。本実施形態における真空ポンプ3は、ターボ分子ポンプを含む。ターボ分子ポンプは、ガスを圧縮するための高速回転ブレードを備える多段軸流タービンを含む。ポンプ監視システム1は、異なるタイプのポンプで動作するように構成することができることを理解されたい。真空ポンプ3は、駆動軸7を回転させる駆動モータ5を備える。駆動軸7は、内輪11、外輪13、内輪11と外輪13との間に配置された複数の軸受(転動)要素15、及び軸受要素15を保持するための軸受ケージ(図示せず)を備える少なくとも1つの軸受組立体9によって支持されている。軸受ケージは、軸受分離器又は軸受保持器と呼ばれる場合もある。軸受要素15は、例えば、玉軸受で構成することができる。内輪11は、駆動軸7に固定され、駆動軸7と共に回転する。外輪13は、軸受又はポンプハウジング(一般に参照番号17で示される)に固定的に取り付けられる。本明細書で説明するように、ポンプ監視システム1は、駆動軸7及び/又は軸受組立体9に関連する故障状態を識別するように作動する。ポンプ監視システム1は、例えばプロセスガスからの堆積物の蓄積によって引き起こされる駆動軸7のアンバランスを識別することができる。ポンプ監視システム1は、摩耗に起因する軸受組立体9の故障状態を識別することができる。特定の実施形態では、ポンプ監視システム1は、内輪11、外輪13、及び軸受要素15のうちの1又は2以上の摩耗を区別することができる。
【0055】
ポンプ制御装置23は、真空ポンプ3の動作を制御するために設けられている。ポンプ制御装置23は、電子プロセッサ25及びシステムメモリ27を備える。電子プロセッサ25は、駆動モータ5の動作速度を制御するための速度制御信号SSPD-1を出力するように構成されている。本明細書で説明するように、ポンプ監視システム1及びポンプ制御装置23は、互いに通信するように構成されている。詳細には、速度制御信号SSPD-1は、ポンプ制御装置23からポンプ監視システム1に出力することができる。ポンプ監視システム1は、例えば速度制御信号SSPD-1に基づいて、駆動モータ5の現在の(瞬間的な)動作速度を決定するように構成されている。代替的に又は追加的に、駆動モータ5の動作速度を測定するために回転センサ(図示せず)を設けることもできる。速度信号は、回転センサからポンプ監視システム1及び/又はポンプ制御装置23に出力することができる。ポンプ制御装置23は、例えば真空ポンプ3の運転負荷を示す負荷信号及び/又は真空ポンプ3の動作モードを示す動作モード信号など、他の動作パラメータをポンプ監視システム1に出力することができる。本実施形態では、ポンプ監視システム1及びポンプ制御装置23は互いに分離されている。変形例では、ポンプ監視システム1及びポンプ制御装置23は互いに組み合わせることができる。例えば、ポンプ監視システム1の機能は、ポンプ制御装置23に組み込むことができる。
【0056】
ポンプ監視システム1は、監視システム制御装置35及び音波を検出するためのマイクロホン37を備える。マイクロホン37は、真空ポンプ3から発生する音波を検出するように構成されている。音波は音響波として空気中を伝播し、マイクロホン37によって検出される。本実施形態のマイクロホン37は、可聴周波数範囲(約20Hz及び20kHzの範囲)の音波を検出するように構成されている。代替的に又は追加的に、マイクロホン37は、非可聴音波、例えば超音波を検出することができる。マイクロホン37は、音波を表す音響信号SAUD-1を生成するように構成されている。音響信号SAUD-1は、監視システム制御装置35に出力されて処理される。マイクロホン37は、真空ポンプ3の近くに配置される。真空ポンプ3は、真空ポンプ3の外側から離間した固定位置にある。マイクロホン37は真空ポンプ3に取り付けることができる。防振ダンパーは、マイクロホン37を分離するのを助けるために設けることができる。
【0057】
図2に示すように、監視システム制御装置35は、少なくとも1つの電子プロセッサ39及びシステムメモリ41を備える。一連の命令43は、少なくとも1つの電子プロセッサ39の動作を制御するために提供される。命令43は、例えば、システムメモリ41に格納することができる。少なくとも1つの電子プロセッサ39によって実行されると、命令は、少なくとも1つの電子プロセッサ39に、本明細書に記載の方法(複数可)を実行させる。監視システム制御装置35は、少なくとも1つの入力45及び少なくとも1つの出力47を備える。少なくとも1つの入力45は、マイクロホン37から音響信号SAUD-1を受け取るように構成されている。本実施形態では、少なくとも1つの入力45は、ポンプ制御装置23から、駆動モータ5の動作速度(又は駆動モータ5の目標動作速度)を示す速度制御信号SSPD-1を受け取るように構成されている。変形例では、少なくとも1つの入力45は、例えば軸速度センサ(図示せず)から、駆動軸7の回転速度を示す信号を受け取ることができる。さらなる変形例では、監視システム制御装置は、音響信号SAUD-1を分析して、真空ポンプ3の動作速度を決定することができる。少なくとも1つの出力47は、少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nを出力するように構成されている。少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nは、例えば可聴警報及び/又は可視警報などの警報の発生を促すことができる。少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nは、故障タイプ及び/又は故障重大度評価を示すことができる。第1の故障状態信号SFLT-1は、第1の故障状態を示すことができ、第2の故障状態信号SFLT-2は、第2の故障状態を示すことができる。少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nは、ポンプ制御装置23に出力され、例えば真空ポンプ3の動作速度を低下させること又は運転停止手順を開始させることができる。本実施形態では、少なくとも1つの出力47は、速度要求信号SREQ-1をポンプ制御装置23に出力するようにも構成されている。速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を制御するための要求を含む。例えば、速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を増加又は減少させる要求を含むことができ、及び/又は、真空ポンプ5の目標動作速度の要求を含むことができる。
【0058】
少なくとも1つの電子プロセッサ39は、音響信号SAUD-1を処理するように構成されている。音響信号SAUD-1の処理は、少なくとも実質的にリアルタイムで実行される。マイクロホン37から出力される音響信号SAUD-1は、時間ドメイン(time domain)である。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、音響信号SAUD-1を周波数ドメイン(frequency domain)に変換するように構成されている。これにより、音響信号SAUD-1の分析は、(時間ではなく)周波数に関して実行することができる。周波数ドメインは、音響信号SAUD-1が各周波数においてどの程度発生するかを定量的に提示する。本実施形態では、少なくとも1つの電子プロセッサ39は、フーリエ変換などの変換を適用して、音響信号SAUD-1を複数の周波数成分に分解するように構成されている。電子プロセッサ39は、音響信号SAUD-1の離散フーリエ変換を決定するために、例えば、高速フーリエ変換アルゴリズムを実装することができる。各周波数成分は、正弦波周波数成分を含むことができる。周波数成分のスペクトルは、音響信号SAUD-1の周波数ドメイン表現を形成する。周波数ドメイン表現は、音響信号SAUD-1の周波数コンテンツに関する情報を含む。周波数成分の振幅は、周波数成分の相対的な強さの指標を提示する。音響信号SAUD-1を変換するために他の変換を使用することができる。
【0059】
少なくとも1つの電子プロセッサ39は、周波数ドメイン表現を分析して、1又は2以上の故障状態周波数成分を識別するように構成されている。当該又は各故障状態周波数成分は、真空ポンプ3の故障状態を示す。当該又は各故障状態周波数成分は、周波数ドメイン表現の中の識別可能な周波数成分であり、これは特定の故障状態に特徴的である。故障状態周波数成分は、特定の故障状態の音響シグネチャに対応する。故障状態周波数成分を識別することにより、ポンプ監視システム1は、対応する故障状態を識別(又は発生を予測)することができる。当該又は各故障状態周波数成分は、一般に、周波数ドメイン表現におけるピークの形である。当該又は各故障状態周波数成分は、予め設定された振幅値よりも大きい振幅(magnitude)を含む。代替的に又は追加的に、当該又は各故障状態周波数成分は、周波数ドメイン表現の中の予め設定された周波数で又は予め設定された周波数範囲の中で発生する場合がある。周波数範囲は、例えば、上限周波数値及び/又は下限周波数値によって規定することができる。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、周波数ドメイン表現の中の当該又は各故障状態周波数成分の有無を識別するように構成されている。詳細には、少なくとも1つの電子プロセッサ39は、予め設定された周波数(又は予め設定された周波数範囲内)で発生し、予め設定された振幅値よりも大きい振幅を有する周波数成分を識別するように構成されている。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、周波数ドメイン表現にフィルタを適用して、故障状態に関連しない周波数成分を低減又は除去することができる。例えば、少なくとも1つの電子プロセッサ39は、背景雑音を低減又は除去するためのフィルタを適用することができる。周波数ドメイン表現は、随意的に、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置に出力することができる。周波数ドメイン表現のグラフ表示は、オペレータによる分析を容易にするために表示することができる。しかしながら、周波数ドメイン表現が表示されることは必須ではないことを理解されたい。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、自動的に故障状態を識別するために真空ポンプ3の動作を監視することができる。
【0060】
1又は2以上の故障状態周波数成分は、本実施形態では予め設定されている。故障状態周波数成分は、例えば、1又は2以上の既知の故障状態を有する真空ポンプによって放出される音波を分析することによって、実験分析によって識別することができる。既知の故障状態を有する真空ポンプの周波数ドメイン表現と、故障状態のない真空ポンプの周波数ドメイン表現を比較することで(同様の動作条件下で)、特定の故障状態に関連する周波数成分を識別することができる。識別された周波数成分は、その故障状態に関連する故障状態周波数成分を規定するために使用することができる。このプロセスは、異なる故障状態に関連する複数の周波数成分を識別するために繰り返すことができる。1又は2以上の故障状態周波数成分は、例えば、周波数ドメイン表現の中の周波数成分を真空ポンプ3のサービスデータ又はメンテナンスデータと関連付けることによって、動的に決定することができる。故障状態周波数成分(複数可)は、真空ポンプの特定のタイプ又はモデルに固有である可能性がある。しかしながら、故障状態周波数成分(複数可)は、類似のタイプ又は構成の複数の異なる真空ポンプに適用できることが想定されている。
【0061】
本実施形態では、少なくとも1つの電子プロセッサ39は、複数の故障状態周波数成分のうちの1又は2以上の存在を識別するように構成されている。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、例えば、第1の故障状態周波数成分及び第2の故障状態周波数成分の存在を識別することができる。本発明によるポンプ監視システム1は、(i)軸受ケージ欠陥、(ii)外輪欠陥、(iii)転動要素欠陥、及び(iv)内輪欠陥のうちの1又は2以上の欠陥状態を識別することができる。欠陥状態周波数成分は、これらの欠陥状態の各々について規定することができる。次に、故障状態周波数成分を識別するための周波数ドメインの解析について説明する。
【0062】
図3には真空ポンプ3の周波数ドメイン表現を示すグラフ50が示されている。グラフ50は、X軸上の周波数(Hz)と、周波数成分の振幅(m/s2)とを表している。グラフ50は、マイクロホン37によって捕捉された音響信号SAUD-1の周波数ドメイン表現の中の識別可能な複数の周波数成分を含む。周波数成分は、真空ポンプ3の正常動作に関連する動作周波数成分OFC-n及び真空ポンプ3の故障状態に関連する故障状態周波数成分FFC-nを含む。動作周波数成分OFC-n及び故障状態周波数成分FFC-nの各々は、1又は2以上の周波数成分識別子によって規定される。周波数成分識別子は、周波数成分の振幅、周波数成分の振幅範囲、この周波数成分が発生する周波数、及びこの周波数成分が発生する周波数範囲のうちの1又は2以上を含む。周波数成分の振幅範囲は、下限振幅値及び/又は上限振幅値を参照して規定することができる。周波数成分の周波数範囲は、下限周波数値及び/又は上限周波数値を参照して規定することができる。
【0063】
少なくとも1つの電子プロセッサ39は、周波数ドメイン表現の中の各動作周波数成分OFC-nの有無、及び周波数ドメイン表現の中の各故障状態周波数成分FFC-nの有無を識別するように構成されている。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、それぞれの動作周波数成分及び故障状態周波数成分に関連付けられた1又は2以上の周波数成分識別子に基づいて、動作周波数成分OFC-n及び故障状態周波数成分FFC-nを識別する。本実施形態における1又は2以上の周波数成分識別子は、周波数成分の周波数及び周波数成分の振幅を含む。1又は2以上の周波数成分識別子は、各周波数成分の識別を可能にするために規定される。動作周波数成分OFC-nの1又は2以上は、一般に、真空ポンプ3が動作しているときに周波数ドメイン表現で識別することができる。故障状態周波数成分FFC-nは、真空ポンプ3の状態に応じて周波数ドメイン表現で識別できない場合があることを理解されたい。真空ポンプ3が故障状態なしで動作している場合、周波数ドメイン表現は、故障状態周波数成分FFC-nのいずれも含まないことになる。同様に、真空ポンプ3が1又は2以上の故障状態で動作している場合、周波数ドメイン表現は、1又は2以上の故障状態の各々を示す故障状態周波数成分(複数可)FFC-nのみを含むことになる。
【0064】
次に、図2に示すグラフ50に表される動作周波数成分OFC-nについて説明する。第1の動作周波数成分OFC-1は、真空ポンプ3の動作速度(駆動軸7の回転速度に対応する)に関連する。第1の動作周波数成分OFC-1は、第1の動作周波数で発生する。第1の動作周波数は、本例では約1000Hzである。第1の動作周波数成分OFC-1の周波数は、真空ポンプ3の動作速度によって決まる。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、随意的に、第1の動作周波数成分OFC-1の周波数に基づいて真空ポンプ3の動作速度を決定するように構成することができる。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、予め設定された第2の振幅値MV-2よりも大きい振幅を有する周波数成分を識別することによって、第1の動作周波数成分OFC-1を識別するように構成されている。第2の動作周波数成分OFC-2は、軸受組立体9の軸受要素15のスピン周波数に関連する。第2の動作周波数成分OFC-2は、第2の動作周波数で発生する。第2の動作周波数は、本例では約4322Hzである。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、予め設定された範囲、例えば4300Hzから4400Hzの範囲の周波数を有する周波数成分を識別することによって、第2の動作周波数成分OFC-2を識別するように構成されている。第2の動作周波数は、真空ポンプ3の動作速度に関連する場合もある。真空ポンプ3の動作速度の変化は、第2の動作周波数成分の第2の動作周波数を変更する場合もある。動作周波数成分OFC-nについて本明細書で言及した周波数は、単なる例示であることを理解されたい。本明細書では、各動作周波数成分OFC-nを識別するために、100Hzの周波数範囲が示されている。この周波数範囲は、例えば200Hzの範囲まで増加させること又は例えば50Hzの範囲まで減少させることができる。
【0065】
次に、図2に示すグラフ50に表される故障状態周波数成分FFC-nについて説明する。第1の故障条件周波数成分FFC-1は、ケージ欠陥に関連する。第1の故障条件周波数成分FFC-1は、第1の周波数F1で発生する。第1の周波数F1は、本例では約382Hzである。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、予め設定された第3の振幅値MV-3よりも大きい振幅を有する及び/又は第1の周波数範囲内の周波数を有する周波数成分を識別することによって、第1の故障状態周波数成分FFC-1を識別するように構成されている。第1の周波数範囲は、本例では300Hzから500Hzである。第2の故障状態周波数成分FFC-2は、軸受組立体9の外輪13の欠陥又は故障に関連する。第2の故障状態周波数成分FFC-2は、第2の周波数F2で発生する。第2の周波数F2は、本例では約2677Hzである。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、第2の周波数範囲内の周波数を有する周波数成分を識別することによって、第2の故障状態周波数成分FFC-2を識別するように構成されている。第2の周波数範囲は、本例では2600Hzから2700Hzである。第3の故障状態周波数成分FFC-3は、軸受組立体9の軸受(転動)要素15の欠陥又は故障に関連する。第3の故障状態周波数成分FFC-3は、第3の周波数F3で発生する。第3の周波数F3は、本例では約3779Hzである。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、第3の周波数範囲内の周波数を有する周波数成分を識別することによって、第3の故障状態周波数成分FFC-3を識別するように構成されている。第3の周波数範囲は、本例では3700Hzから3800Hzの範囲である。第4の故障状態周波数成分FFC-4は、軸受組立体9の内輪11の欠陥又は故障に関連する。第4の故障状態周波数成分FFC-4は、第4の周波数F4で発生する。第4の周波数は、本例では約4322Hzである。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、第4の周波数範囲内の周波数を有する周波数成分を識別することによって、第4の故障状態周波数成分FFC-4を識別するように構成されている。第4の周波数範囲は、本例では4300Hzから4400Hzである。故障状態周波数成分FFC-nについて本明細書で言及した周波数は、単なる例示であることを理解されたい。本明細書では、各故障状態周波数成分FFC-nを識別するために、100Hzの周波数範囲が示されている。この周波数範囲は、例えば200Hzの範囲まで増加させること又は例えば50Hzの範囲まで減少させることができる。
【0066】
次に、図4に示す第1のブロック図100を参照してポンプ監視システム1の動作を説明する。ポンプ監視システム1及び真空ポンプ3が起動される(ブロック105)。マイクロホン37は、真空ポンプ3から発生する音波を示す音響信号SAUD-1を生成する(ブロック110)。音響信号SAUD-1は、音響信号SAUD-1を時間ドメインから周波数ドメインに変換する監視システム制御装置35に出力される(ブロック115)。監視システム制御装置35は、得られた周波数ドメイン表現を分析する(ブロック120)。監視システム制御装置35は、周波数ドメイン表現の中の周波数成分を識別する(ブロック125)。周波数成分は、予め設定された第1の振幅値MV-1より大きい振幅を有する成分として識別することができる。識別された周波数成分のうちの1又は2以上が、故障状態を示す予め設定された故障状態周波数成分のうちの1つに対応するか否かを決定するための検査が実行される(ブロック130)。識別された周波数成分が予め設定された故障状態周波数成分FFC-nの1つに対応しない場合、ポンプ監視システム1は周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック115)。特定された周波数成分の1又は2以上が、予め設定された故障状態周波数成分FFC-nの1つに対応する場合、ポンプ監視システム1は、故障状態信号SFLT-nを生成する(ブロック135)。監視システム制御装置35は、例えば故障状態周波数成分FFC-nの周波数に基づいて、故障状態信号SFLT-nのタイプを識別することができる。故障状態信号SFLT-nは、故障状態のタイプを示すことができる。故障状態信号SFLT-nに基づいて警告又は通知が生成される(ブロック140)。ポンプ監視システム1は、周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック115)。ポンプ監視システム1及び真空ポンプ3は動作を停止する(ブロック145)。
【0067】
ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作速度に応じて故障状態周波数成分FFC-nを識別するように構成することができる。周波数ドメイン表現の中の故障状態周波数成分FFC-nが発生する周波数は、真空ポンプ3の動作速度に応じて変わる場合がある。故障状態周波数成分FFC-nの振幅は、真空ポンプ3の動作速度に応じて変わる場合がある。各故障状態周波数成分FFC-nに関連する周波数範囲は、そのような何らかの変動を考慮するように規定することができる。各故障状態周波数成分FFC-nの周波数は、真空ポンプ3の動作速度に基づいて変更することができる。各周波数範囲を規定する上限値及び/又は下限値は、真空ポンプ3の動作速度に基づいて変更することができる。ポンプ監視システム1は、第1の動作周波数成分OFC-1が識別された周波数を参照して、真空ポンプ3の動作速度を決定することができる。代替的に又は追加的に、ポンプ監視システム1は、ポンプ制御装置23と通信することによって決定することができる。ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作速度が変化する場合に、例えばランプアッププロセス中に速度が増加する場合に、又はランプダウンプロセス中に速度が減少する場合に故障状態周波数成分FFC-nの周波数の変化を監視することができる。周波数成分を識別するために適用される予め設定された振幅値MV-nは、真空ポンプ3の動作速度に基づいて調整することができる。
【0068】
真空ポンプ3の異なる動作速度における故障状態周波数成分FFC-nの周波数及び/又は振幅の変化は、故障状態の識別を検証するために使用できることが認識されている。本明細書に記載のポンプ監視システム1の変形例では、監視システム制御装置35は、真空ポンプ5の動作速度を制御するために、ポンプ制御装置23に速度要求信号SREQ-1を出力することができる。速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を増加又は減少させる要求を含むことができる。ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作速度が変化した場合の故障状態周波数成分FFC-nの周波数及び/又は振幅の変化を監視することができる。少なくとも特定の実施形態では、真空ポンプ3の動作速度が変化した場合の特徴的な故障状態FFC-nの周波数の変化を追跡することによって、故障状態の検出精度を向上させることができる。代替的に又は追加的に、速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の目標動作速度を設定する要求を含むことができる。ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作速度が目標動作速度にある場合に故障状態周波数成分FFC-nの周波数を監視することができる。少なくとも特定の実施形態では、真空ポンプ3が目標動作速度で動作している場合に故障状態の検出精度が向上する可能性がある。目標動作速度は、例えば、基準データの収集に使用された動作速度に対応するように規定することができる。
【0069】
次に、図5に示す第2のブロック図200を参照してこの変形例によるポンプ監視システム1の動作を説明する。ポンプ監視システム1及び真空ポンプ3が起動される(ブロック205)。マイクロホン37は、真空ポンプ3から発生する音波を示す音響信号SAUD-1を生成する(ブロック210)。音響信号SAUD-1は、音響信号SAUD-1を時間ドメインから周波数ドメインに変換する監視システム制御装置35に出力される(ブロック215)。監視システム制御装置35は、得られた周波数ドメイン表現を分析する(ブロック220)。監視システム制御装置35は、周波数ドメイン表現の中の周波数成分を識別する(ブロック225)。周波数成分は、予め設定された第1の振幅値MV-1より大きい振幅を有する成分として識別することができる。識別された周波数成分のうちの1又は2以上が、故障状態を示す予め設定された故障状態周波数成分のうちの1つに対応するか否かを決定するための検査が実行される(ブロック230)。識別された周波数成分が、予め設定された故障状態周波数成分FFC-nの1つに対応しない場合、ポンプ監視システム1は、周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック215)。識別された周波数成分の1つ以上が、予め設定された故障状態周波数成分FFC-nの1つに対応する場合、ポンプ監視システム1は、真空ポンプ5の動作速度の変更を要求するために、ポンプ制御装置23に速度要求信号SREQ-1を出力する(ブロック235)。速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を増加又は減少させる要求を含むことができる。監視システム制御装置35は、真空ポンプ3の動作速度が変化した場合の故障状態周波数成分FFC-nの周波数の変化を識別するために、周波数ドメイン表現を分析する(ブロック240)。真空ポンプ3の動作速度の変化が、故障状態周波数成分FFC-nの1又は2以上の周波数成分識別子の予測された(予期された)変化をもたらすか否かを決定するための検査が実行される(ブロック245)。予測される変化は、周波数成分の周波数及び/又は振幅の増加又は減少を含むか又はこれからなることができる。監視システム制御装置35は、真空ポンプ3の動作速度の変化に基づいて、周波数成分の周波数及び/又は振幅の変化を監視することができる。代替的に又は追加的に、予測される変化は、周波数成分の変化率を含むか又はこれからなることができる。監視システム制御装置35は、真空ポンプ3の動作速度の変化に基づいて、故障状態周波数成分FFC-nの周波数の変化率を監視することができる。例示的に、故障状態周波数成分FFC-nの周波数は、動作速度が増加する場合に増加する可能性がある、又は故障状態周波数成分FFC-nの周波数は、動作速度が減少する場合に減少する可能性がある。1又は2以上の周波数成分識別子の変化における予期される変化が識別される場合、ポンプ監視システム1は、故障状態信号SFLT-nを生成する(ブロック250)。1又は2以上の周波数成分識別子の変化における予期される変化が識別されない場合、ポンプ監視システム1は、周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック215)。故障状態信号SFLT-nに基づいて警告又は通知が生成される(ブロック255)。ポンプ監視システム1は、周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック215)。ポンプ監視システム1及び真空ポンプ3は動作を停止する(ブロック260)。
【0070】
監視システム制御装置35は、随意的に、故障状態周波数成分FFC-nの振幅に基づいて、故障状態を等級付け又は分類することができる。故障状態周波数成分FFC-nの振幅が第1の値よりも大きい場合、監視システム制御装置35は、例えば、次のサービス間隔でのメンテナンスを促すために、故障状態を第1の分類を有するものとして分類することができる。代替的に又は追加的に、故障状態周波数成分FFC-nの振幅が第2の値よりも大きい場合、監視システム制御装置35は、例えば、できるだけ速いメンテナンスを促すために、故障状態を第2の分類を有するものとして分類することができる。代替的に又は追加的に、故障状態周波数成分FFC-nの振幅が第3の値よりも大きい場合、監視システム制御装置35は、例えば真空ポンプ3を停止させるために、故障状態を第3の分類を有するものとして分類することができる。監視システム制御装置35は、音響信号の周波数ドメイン表現及び/又は音響信号の時間ドメイン表現に基づいて、故障状態を等級付け又は分類することができる。
【0071】
監視システム制御装置35が真空ポンプ5の動作速度を制御するために速度要求信号SREQ-1を出力する上記の構成は、真空ポンプ3を監視するために異なるセンサを採用するポンプ監視システムで利用することができる。例えば、この制御システム及び方法は、加速度センサのような振動センサを利用するポンプ監視システム1に採用することができる。次に、振動センサ51を含むポンプ監視システム1の実施形態について、図6及び7を参照して説明する。この実施形態では、同様の参照数字は同様の構成要素に使用される。振動センサ51は、マイクロホン37の代わりに又はそれに加えて使用できることを理解されたい。
【0072】
本実施形態によるポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作を監視するように構成されている。真空ポンプ3の構成は、図1を参照して本明細書で説明した構成から変更されていない。真空ポンプ3は、駆動軸7を回転させるように動作する駆動モータ5を備える。駆動軸7は、内輪11、外輪13、内輪11と外輪13との間に配置された複数の軸受(転動)要素15、及び軸受要素15を保持するための軸受ケージ(図示せず)を備える少なくとも1つの軸受組立体9によって支持されている。内輪11は、駆動軸7に固定され、駆動軸7と共に回転する。外輪13は、軸受又はポンプハウジング(一般に参照数字17で示される)に固定的に取り付けられる。ポンプ監視システム1は、駆動軸7及び/又は軸受組立体9に関連する故障状態を識別するように動作する。ポンプ監視システム1は、例えばプロセスガスからの堆積物の蓄積によって引き起こされる駆動軸7のアンバランスを識別することができる。ポンプ監視システム1は、摩耗に起因する軸受組立体9の故障状態を識別することができる。特定の実施形態では、ポンプ監視システム1は、内輪11、外輪13、及び軸受要素15のうちの1又は2以上の摩耗を区別することができる。
【0073】
ポンプ制御装置23は、真空ポンプ3の動作を制御するために設けられている。ポンプ制御装置23は、図2に示された構成と同じである。ここでも、同様の参照数字は同様の構成要素に使用される。ポンプ制御装置23は、電子プロセッサ25及びシステムメモリ27を備える。電子プロセッサ25は、駆動モータ5の動作速度を制御するための速度制御信号SSPD-1を出力するように構成されている。速度制御信号SSPD-1は、ポンプ制御装置23からポンプ監視システム1に出力することができる。
【0074】
ポンプ監視システム1は、監視システム制御装置35と、振動検出用の加速度センサ51とを備える。加速度センサ51は、真空ポンプ3の動作によって発生する振動を検出するように構成されている。振動は真空ポンプ3の構造体、例えばポンプハウジング17を通って伝播し、加速度計51によって検出される。加速度センサ51は、振動を表す振動信号SVIB-1を生成するように構成されている。振動信号SVIB-1は、監視システム制御装置35に出力され、処理される。加速度計51は真空ポンプ3に固定的に取り付けられており、例えばポンプハウジング17に固定されている。
【0075】
監視システム制御装置35は、少なくとも1つの電子プロセッサ39及びシステムメモリ41を備える。一連の命令43は、少なくとも1つの電子プロセッサ39の動作を制御するために提供される。命令43は、例えば、システムメモリ41に格納することができる。少なくとも1つの電子プロセッサ39によって実行されると、命令は、少なくとも1つの電子プロセッサ39に、本明細書に記載の方法(複数可)を実行させる。監視システム制御装置35は、少なくとも1つの入力45と少なくとも1つの出力47を備える。少なくとも1つの入力45は、加速度計51から振動信号SVIB-1を受け取るように構成されている。本実施形態では、少なくとも1つの入力45は、ポンプ制御装置23から、駆動モータ5の動作速度(又は駆動モータ5の目標動作速度)を示す速度制御信号SSPD-1を受け取るように構成されている。変形例では、少なくとも1つの入力45は、例えば軸速度センサ(図示せず)から、駆動軸7の回転速度を示す信号を受け取ることができる。さらなる変形例では、監視システム制御装置は、振動信号SVIB-1を分析して、真空ポンプ3の動作速度を決定することができる。少なくとも1つの出力47は、少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nを出力するように構成されている。少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nは、例えば可聴警報及び/又は可視警報などの警報の発生を促すことができる。少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nは、故障タイプ及び/又は故障重大度評価を示すことができる。第1の故障状態信号SFLT-1は、第1の故障状態を示すことができ、第2の故障状態信号SFLT-2は、第2の故障状態を示すことができる。少なくとも1つの故障状態信号SFLT-nは、ポンプ制御装置23に出力され、例えば真空ポンプ3の動作速度を低下させること又は運転停止手順を開始させたることができる。本実施形態では、少なくとも1つの出力47は、速度要求信号SREQ-1をポンプ制御装置23に出力するようにも構成されている。速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を制御するための要求を含む。例えば、速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を増加又は減少させる要求を含むことができ、及び/又は、真空ポンプ5の目標動作速度の要求を含むことができる。
【0076】
少なくとも1つの電子プロセッサ39は、振動信号SVIB-1を処理するように構成されている。振動信号SVIB-1の処理は、少なくとも実質的にリアルタイムで実行される。加速度計51から出力される振動信号SVIB-1は時間ドメインである。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、振動信号SVIB-1を周波数ドメインに変換するように構成されている。これにより、振動信号SVIB-1の分析は、(時間ではなく)周波数に関して実行することができる。周波数ドメインは、振動信号SVIB-1が各周波数においてどの程度発生するかを定量的に提示する。本実施形態では、少なくとも1つの電子プロセッサ39は、フーリエ変換などの変換を適用して、振動信号SVIB-1を複数の周波数成分に分解するように構成されている。電子プロセッサ39は、振動信号SVIB-1の離散フーリエ変換を決定するために、例えば、高速フーリエ変換アルゴリズムを実装することができる。各周波数成分は、正弦波周波数成分を含むことができる。周波数成分のスペクトルは、振動信号SVIB-1の周波数ドメイン表現を形成する。周波数ドメイン表現は、振動信号SVIB-1の周波数コンテンツに関する情報を含む。周波数成分の振幅は、周波数成分の相対的な強さの指標を提示する。振動信号SVIB-1を変換するために他の変換を使用することができる。
【0077】
少なくとも1つの電子プロセッサ39は、周波数ドメイン表現を分析して、1又は2以上の故障状態周波数成分を識別するように構成されている。当該又は各故障状態周波数成分は、真空ポンプ3の故障状態を示す。当該又は各故障状態周波数成分は、周波数ドメイン表現の中の識別可能な周波数成分であり、これは特定の故障状態に特徴的である。故障状態周波数成分は、特定の故障状態の振動シグネチャに対応する。故障状態周波数成分を識別することにより、ポンプ監視システム1は、対応する故障状態を識別(又は発生を予測)することができる。当該又は各故障状態周波数成分は、一般的に周波数ドメイン表現にけるピークの形である。当該又は各故障状態周波数成分は、予め設定された振幅値よりも大きい振幅を含む。代替的に又は追加的に、当該又は各故障状態周波数成分は、周波数ドメイン表現における予め設定された周波数で又は予め設定された周波数範囲の中で発生する場合がある。周波数範囲は、例えば、上限周波数値及び/又は下限周波数値によって規定することができる。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、周波数ドメイン表現における当該又は各故障状態周波数成分の有無を識別するように構成される。詳細には、少なくとも1つの電子プロセッサ39は、予め設定された周波数(又は予め設定された周波数範囲内)で発生し、予め設定された振幅値よりも大きい振幅を有する周波数成分を識別するように構成されている。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、周波数ドメイン表現にフィルタを適用して、故障状態に関連しない周波数成分を低減又は除去することができる。例えば、少なくとも1つの電子プロセッサ39は、背景雑音を低減又は除去するためのフィルタを適用することができる。周波数ドメイン表現は、随意的に、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置に出力することができる。周波数ドメイン表現のグラフ表示は、オペレータによる分析を容易にするために表示することができる。しかしながら、周波数ドメイン表現が表示されることは必須ではないことを理解されたい。少なくとも1つの電子プロセッサ39は、故障状態を自動的に識別するために真空ポンプ3の動作を監視することができる。
【0078】
真空ポンプ3の異なる動作速度における故障状態周波数成分FFC-nの周波数及び/又は振幅は、故障状態の識別を検証するために使用される。本実施形態の監視システム制御装置35は、真空ポンプ5の動作速度を制御するために、ポンプ制御装置23に速度要求信号SREQ-1を出力するように構成されている。速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を増加又は減少させる要求を含むことができる。ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作速度が変化した場合の故障状態周波数成分FFC-nの周波数及び/又は振幅の変化を監視することができる。少なくとも特定の実施形態では、真空ポンプ3の動作速度が変化した場合の特徴的な故障状態FFC-nの周波数の変化を追跡することによって、故障状態の検出精度を向上させることができる。代替的に又は追加的に、速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の目標動作速度を設定する要求を含むことができる。ポンプ監視システム1は、真空ポンプ3の動作速度が目標動作速度にある場合に故障状態周波数成分FFC-nの周波数を監視することができる。少なくとも特定の実施形態では、真空ポンプ3が目標動作速度で動作している場合に故障状態の検出精度が向上する可能性がある。目標動作速度は、例えば、基準データの収集に使用される動作速度に対応するように規定することができる。
【0079】
次に、図7に示す第3のブロック図300を参照してこの変形例によるポンプ監視システム1の動作を説明する。ポンプ監視システム1及び真空ポンプ3が起動される(ブロック305)。加速度センサ51は、真空ポンプ3から発生する振動を示す振動信号SVIB-1を生成する(ブロック310)。振動信号SVIB-1は、振動信号SVIB-1を時間ドメインから周波数ドメインに変換する監視システム制御装置35に出力される(ブロック315)。監視システム制御装置35は、得られた周波数ドメイン表現を分析する(ブロック320)。監視システム制御装置35は、周波数ドメイン表現の中の周波数成分を識別する(ブロック325)。周波数成分は、予め設定された第1の振幅値MV-1より大きい振幅を有する成分として識別することができる。識別された周波数成分の1又は2以上が、故障状態を示す予め設定された故障状態周波数成分のうちの1つに対応するか否かを決定するための検査が実行される(ブロック330)。識別された周波数成分が予め設定された故障状態周波数成分FFC-nの1つに対応しない場合、ポンプ監視システム1は、周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック315)。識別された周波数成分の1又は2以上が、予め設定された故障状態周波数成分FFC-nの1つに対応する場合、ポンプ監視システム1は、真空ポンプ5の動作速度の変更を要求するために、ポンプ制御装置33に速度要求信号SREQ-1を出力する(ブロック335)。速度要求信号SREQ-1は、真空ポンプ5の動作速度を増加又は減少させる要求を含むことができる。監視システム制御装置35は、真空ポンプ3の動作速度の変化に基づいて、周波数及び/又は周波数成分の振幅の変化を監視することができる。代替的に又は追加的に、予測される変化は、周波数成分の変化率を含むか又はこれからなることができる。監視システム制御装置35は、真空ポンプ3の動作速度の変化に基づいて、故障状態周波数成分FFC-nの周波数の変化率を監視することができる。監視システム制御装置35は、真空ポンプ3の動作速度が変化した場合の故障状態周波数成分FFC-nの周波数の変化を識別するために、周波数ドメイン表現を分析する(ブロック340)。真空ポンプ3の動作速度の変化が、故障状態周波数成分FFC-nの1又は2以上の周波数成分識別子の予測された(予期された)変化をもたらすか否かを決定するための検査が実行される(ブロック345)。予測される変化は、周波数成分の周波数及び/又は振幅の増加又は減少を含むことができる。例示的に、故障状態周波数成分FFC-nの周波数は、動作速度が増加する場合に増加する可能性がある、又は故障状態周波数成分FFC-nの周波数は、動作速度が減少する場合に減少する可能性がある。1又は2以上の周波数成分識別子の変化における予期される変化が識別される場合、ポンプ監視システム1は、故障状態信号SFLT-nを生成する(ブロック350)。1又は2以上の周波数成分識別子の変化における予期される変化が識別されない場合、ポンプ監視システム1は、周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック315)。故障状態信号SFLT-nに基づいて警告又は通知が生成される(ブロック355)。ポンプ監視システム1は、周波数ドメイン表現の分析を継続する(ブロック315)。ポンプ監視システム1及び真空ポンプ3は動作を停止する(ブロック360)。
【0080】
本出願の範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更及び修正を加えることができることを理解されたい。
【0081】
マイクロホン37によって捕捉された音響信号の分析は、真空ポンプ3に関する他の測定データと組み合わせることができる。例えば、温度センサは、真空ポンプ3の動作温度を示す温度信号を生成することができる。この温度信号は、音響信号SAUD-1と組み合わせて分析することで、真空ポンプ3の動作を監視して、1又は2以上の故障状態を識別することができる。代替的に又は代替的に、圧力センサは、例えば、ポンプ入口又はポンプ出口で真空ポンプ3の作動圧力を測定するために設けることができる。
【0082】
本明細書では、ポンプ監視システム1は、単一のマイクロホン37を参照して説明されている。2以上のマイクロホン37を採用できることを理解されたい。
【符号の説明】
【0083】
1 ポンプ監視システム
3 真空ポンプ
5 駆動モータ
7 駆動軸
9 軸受組立体
11 内輪
13 外輪
15 軸受要素
17 ポンプハウジング
23 ポンプ制御装置
25 電子プロセッサ
27 システムメモリ
35 監視システム制御装置
37 マイクロホン
39 電子プロセッサ
41 システムメモリ
43 計算命令
45 入力
47 出力
50 周波数成分を示すグラフ
51 加速度センサなどの振動センサ
SAUD-1 音響信号
SFLT-n 故障状態信号
SSPD-1 速度制御信号
FFC-n 故障状態周波数成分
OFC-n 動作周波数成分
SREQ-1 速度要求信号

第1のブロック図100のラベル
105 ポンプ監視システムを起動させる
110 音響信号を受け取る
115 音響信号を周波数ドメインに変換する
120 周波数ドメイン表現を分析する
125 周波数成分を識別する
130 故障状態を示す故障状態周波数成分(複数可)を検査する
135 故障状態周波数成分(複数可)が識別された場合、故障状態信号を出力する
140 故障状態通知を生成する
145 ポンプ監視システムを停止させる
第2のブロック図200のラベル
205 ポンプ監視システムを起動させる
210 音響信号を受け取る
215 音響信号を周波数ドメインに変換する
220 周波数ドメイン表現を分析する
225 周波数成分を識別する
230 故障状態を示す故障周波数成分(複数可)を検査する
235 真空ポンプの動作速度を変更する。
240 動作速度が変化した場合の故障状態周波数成分(複数可)の変化を監視する
245 動作速度の変化に相関する故障状態周波数成分(複数可)を検査する。
250 故障状態信号を出力する
255 故障状態通知を生成する
260 ポンプ監視システムを停止させる
第3のブロック図300のラベル
305 ポンプ監視システムを起動させる
310 振動信号を受け取る
315 振動信号を周波数ドメインに変換する
320 周波数ドメイン表現を分析する
325 周波数成分を識別する
330 故障状態を示す故障状態周波数成分(複数可)を検査する
335 真空ポンプの動作速度を変更する
340 動作速度が変化した場合の故障状態周波数成分(複数可)の変化を監視する
345 動作速度の変化に相関する故障状態周波数成分(複数可)を検査する
350 故障状態信号を出力する
355 故障状態通知を生成する
360 ポンプ監視システムを停止させる
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(3)の故障状態を識別するためのポンプ監視システム(1)であって、前記ポンプ監視システム(1)は、制御装置(23)と、音波を検出するためのマイクロフォン(37)とを備え、前記制御装置(23)は、
前記真空ポンプ(3)よって生成された音波を表す音響信号(SAUD-n)をマイクロホン(37)から受け取り、
受け取った前記音響信号(SAUD-n)を処理して、前記音響信号(SAUD-n)の周波数ドメイン表現を生成し、
前記音響信号(SAUD-n)の前記周波数ドメイン表現を分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別し、
前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の識別に基づいて、前記故障状態を識別するための故障状態信号(SFLT-n)を出力する、
ように構成されている、ポンプ監視システム(1)。
【請求項2】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の動作速度を決定するように構成され、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)は、前記真空ポンプ(3)の決定された前記動作速度に基づいて識別される、請求項1に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項3】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の定常動作中に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項2に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項4】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が増加又は減少する場合に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項2に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項5】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の動作速度を変化させる要求を出力するように構成され、前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の前記動作速度の変化に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の変化を監視するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項6】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の運転負荷を決定するように構成され、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)は、前記真空ポンプ(3)の前記運転負荷に基づいて識別される、請求項1から5のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項7】
前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)は、1又は2以上の周波数成分識別子を含み、前記制御装置(23)は、前記周波数ドメイン表現の中の前記1又は2以上の周波数成分識別子の識別に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項8】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の周波数又は周波数範囲を含む、請求項7に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項9】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の振幅又は振幅範囲を含む、請求項7又は8に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項10】
真空ポンプ(3)の故障状態を識別する方法であって、
前記真空ポンプ(3)によって生成された音波を表す音響信号(SAUD-n)を受け取るステップと、
前記音響信号(SAUD-n)を周波数ドメインに変換するステップと、
前記周波数ドメインを分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の識別に基づいて前記故障状態を識別するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記真空ポンプ(3)の動作速度を決定するステップと、
前記真空ポンプ(3)の決定された前記動作速度に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真空ポンプ(3)の定常運転中に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が増加又は減少する場合に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記真空ポンプ(3)の動作速度を変化させるステップと、
前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が変化した場合に、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の変化を監視するステップと、
を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記真空ポンプ(3)の運転負荷を決定するステップと、
前記真空ポンプ(3)の前記運転負荷に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
を含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(3)の故障状態を識別するためのポンプ監視システム(1)であって、前記ポンプ監視システム(1)は、制御装置(23)と、音波を検出するためのマイクロフォン(37)とを備え、前記制御装置(23)は、
前記真空ポンプ(3)よって生成された音波を表す音響信号(SAUD-n)をマイクロホン(37)から受け取り、
受け取った前記音響信号(SAUD-n)を処理して、前記音響信号(SAUD-n)の周波数ドメイン表現を生成し、
前記音響信号(SAUD-n)の前記周波数ドメイン表現を分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別し、
前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の識別に基づいて、前記故障状態を識別するための故障状態信号(SFLT-n)を出力する、
ように構成されている、ポンプ監視システム(1)。
【請求項2】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の動作速度を決定するように構成され、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)は、前記真空ポンプ(3)の決定された前記動作速度に基づいて識別される、請求項1に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項3】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の定常動作中に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項2に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項4】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が増加又は減少する場合に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項2に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項5】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の動作速度を変化させる要求を出力するように構成され、前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の前記動作速度の変化に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の変化を監視するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項6】
前記制御装置(23)は、前記真空ポンプ(3)の運転負荷を決定するように構成され、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)は、前記真空ポンプ(3)の前記運転負荷に基づいて識別される、請求項1からのいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項7】
前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)は、1又は2以上の周波数成分識別子を含み、前記制御装置(23)は、前記周波数ドメイン表現の中の前記1又は2以上の周波数成分識別子の識別に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するように構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項8】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の周波数又は周波数範囲を含む、請求項7に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項9】
前記1又は2以上の周波数成分識別子は、前記又は各故障状態周波数成分(FFC-n)の振幅又は振幅範囲を含む、請求項に記載のポンプ監視システム(1)。
【請求項10】
真空ポンプ(3)の故障状態を識別する方法であって、
前記真空ポンプ(3)によって生成された音波を表す音響信号(SAUD-n)を受け取るステップと、
前記音響信号(SAUD-n)を周波数ドメインに変換するステップと、
前記周波数ドメインを分析して、故障状態を示す少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の識別に基づいて前記故障状態を識別するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記真空ポンプ(3)の動作速度を決定するステップと、
前記真空ポンプ(3)の決定された前記動作速度に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真空ポンプ(3)の定常運転中に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が増加又は減少する場合に前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記真空ポンプ(3)の動作速度を変化させるステップと、
前記真空ポンプ(3)の前記動作速度が変化した場合に、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)の変化を監視するステップと、
を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記真空ポンプ(3)の運転負荷を決定するステップと、
前記真空ポンプ(3)の前記運転負荷に基づいて、前記少なくとも1つの故障状態周波数成分(FFC-n)を識別するステップと、
を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】