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特表2024-519898γ-アルミナセパレーターにより有効化された急速充電準固体状態Li金属バッテリー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】γ-アルミナセパレーターにより有効化された急速充電準固体状態Li金属バッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/46 20210101AFI20240514BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240514BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240514BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240514BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M50/434
H01M50/489
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/052
H01M10/0566
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571850
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022072360
(87)【国際公開番号】W WO2022246395
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,052
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】504318142
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リン ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】ラフィズ キシェン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021BB12
5H021BB13
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE22
5H021HH00
5H021HH02
5H021HH03
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ03
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ04
5H029DJ09
5H029DJ13
5H029DJ16
5H029EJ08
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ06
5H029HJ09
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA08
5H050CB08
5H050CB12
5H050FA02
5H050FA13
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA09
(57)【要約】
リチウム金属バッテリー電極で支持されたセパレーターは、導電性基材と、基材上に被覆されたセパレーターとを含む。セパレーターはプレート成形γ-アルミニウム粒子を含み、γ-アルミニウム粒子は粒子間屈曲細孔を画定する。電極で支持されたセパレーターを作製する方法は、プレート成形γ-アルミニウム粒子のスラリーを調製すること、スラリーを導電性基材上に拡げて、被覆セパレーターをもたらすこと、及び被覆セパレーターを乾燥して電極で支持されたセパレーターをもたらすことを含む。リチウム金属バッテリーは、第1の電極と、第1の電極上に被覆されたセパレーターと、リチウム金属を含む第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に接触する電解質とを含む。セパレーターはプレート成形γ-アルミナ粒子を含み、γ-アルミナ粒子は屈曲粒子内細孔を画定し、第2の電極はセパレーターに直接接触する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属バッテリー電極で支持されたセパレーターであって、
導電性基材と、
前記基材上に被覆されたセパレーターであり、プレート成形γ-アルミナ粒子を含み、前記γ-アルミナ粒子が粒子間屈曲細孔を画定する、セパレーターと
を含む、セパレーター。
【請求項2】
セパレーターの厚さが、20μm~60μmの範囲にある、請求項1に記載のセパレーター。
【請求項3】
前記γ-アルミナ粒子の平均厚さが、0.2μm~1μmの範囲にある、請求項1に記載のセパレーター。
【請求項4】
前記γ-アルミナ粒子のアスペクト比が、2~10の範囲にある、請求項3に記載のセパレーター。
【請求項5】
前記細孔の実際の経路長と前記セパレーターの厚さとの比が、3よりも大きい、請求項1に記載のセパレーター。
【請求項6】
前記粒子間細孔の半径が、100nm~700nmの範囲にある、請求項5に記載のセパレーター。
【請求項7】
前記粒子間細孔の半径が、200nm~600nmの範囲にある、請求項6に記載のセパレーター。
【請求項8】
前記粒子間細孔の半径が、300nm~500nmの範囲にある、請求項7に記載のセパレーター。
【請求項9】
前記基材が、ニッケル、マンガン、及びコバルト酸化物を含む、請求項1に記載のセパレーター。
【請求項10】
請求項1に記載の電極で支持されたセパレーターを作製する方法であって、
前記プレート成形γ-アルミナ粒子のスラリーを調製すること、
前記スラリーを導電性基材上に拡げて、被覆セパレーターをもたらすこと、及び
前記被覆セパレーターを乾燥して、前記電極で支持されたセパレーターをもたらすこと
を含む、方法。
【請求項11】
前記スラリーを前記導電性基材上に拡げることが、前記スラリーを前記導電性基材上に直接拡げることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の電極と、
第1の電極上に被覆されたセパレーターであって、前記セパレーターがプレート成形γ-アルミナ粒子を含み、前記γ-アルミナ粒子が屈曲粒子内細孔を画定するセパレーターと、
リチウム金属を含む第2の電極であって、前記セパレーターに直接接触する第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に接触する電解質と
を含む、リチウム金属バッテリー。
【請求項13】
前記第1の電極が、ニッケルマンガンコバルト酸化物電極である、請求項12に記載のバッテリー。
【請求項14】
前記電解質が、液体電解質である、請求項12に記載のバッテリー。
【請求項15】
セパレーターの厚さが、20μm~60μmの範囲にある、請求項12に記載のバッテリー。
【請求項16】
前記セパレーターの屈曲度(EIS法)が、少なくとも6である、請求項12に記載のバッテリー。
【請求項17】
前記セパレーターの多孔度が、40%~60%の範囲にある、請求項12に記載のバッテリー。
【請求項18】
前記セパレーターが、α-アルミナ粒子を含む類似のセパレーターよりも低い固体電解質界面抵抗を実証する、請求項12に記載のバッテリー。
【請求項19】
前記セパレーターが、α-アルミナ粒子を含む類似のセパレーターよりも低い電荷移動抵抗を実証する、請求項12に記載のバッテリー。
【請求項20】
前記セパレーターが、前記バッテリーの充放電中にリチウムデンドライトの形成を阻止する、請求項12に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Fast Charging Quasi-Solid State Li-Metal Batteries Enabled by γ -Alumina Separators(γ-アルミナセパレーターにより有効化された急速充電準固体状態Li金属バッテリー)」という名称の、2021年5月20日に出願された米国仮出願第63/191,052号の利益を主張する。
本発明は、リチウム-金属バッテリー用のγ-アルミナセパレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム金属バッテリー(LMB)は、金属リチウムアノードを持つ再充電可能なバッテリーである。アノードは、多孔質セパレーターによってカソードと分離され、電解質の通過を可能にする。LMBは、薄く且つ柔軟にすることができ、高エネルギーを送出でき、広い温度範囲にわたり動作することができる。これらのバッテリーは長持ちし、長い貯蔵寿命を有する。
【0003】
図1は、液体電解質を持つリチウムイオンバッテリー(LIB)100を示す。リチウムイオンバッテリー100は、アノード102及びカソード104を含む。アノード102及びカソード104は、セパレーター106によって分離される。アノード102は、アノードコレクター108と、アノードコレクターに接触するアノード材料110とを含む。カソード104は、カソードコレクター112と、カソードコレクターに接触するカソード材料114とを含む。電解質116は、アノード材料110及びカソード材料114と接触している。アノードコレクター108及びカソードコレクター112は、閉外部回路118によって電気的に連結される。アノード材料110及びカソード材料114は、その内部に及びそこから、リチウムイオン120が移行することのできる材料である。挿入(又はインターカレーション)中、リチウムイオンは電極(アノード又はカソード)材料中に移動する。抽出(又はデインターカレーション)中、逆プロセスでは、リチウムイオンが電極(アノード又はカソード)材料から外に移動する。LIBが放電するとき、リチウムイオンはアノード材料から抽出され、カソード材料中に挿入される。セルが充電されるとき、リチウムイオンはカソード材料から抽出され、アノード材料中に挿入される。図1中の矢印は、充放電中にセパレーター106を通るリチウムイオンの動きを示す。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、リチウムバッテリーを生成するため、液体カーボネート電解質と組み合わせた、ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)カソード上に、プレート成形γ-アルミナ粒子をブレードコーティングすることによって形成された電極被覆セパレーターについて記述する。これらのプレート成形粒子は、球状γ-アルミナ粒子よりも圧密化された手法で充填される。したがって、その粒子のプレート形状モルホロジーにより有効化された、開示されたγ-アルミナセパレーターの屈曲及び硬度は、高い充放電Cレートでデンドライトの伝播によりバッテリー故障が誘発されるポリプロピレン(PP)及び/又は球状γ-アルミナ被覆セパレーターよりも優れる。プレート成形γ-アルミナ被覆セパレーターを持つリチウム金属バッテリーの安定な性能は、セパレーターを通したデンドライトの伝播なしで3Cレートまで見られた。プレート形状γ-アルミナ被覆セパレーターバッテリーは、その完全充放電電流を、3Cレートであっても約75サイクルまでそれぞれの電圧で実現することができる。開示されたγ-アルミナセパレーターは、高い充放電レートで、デンドライトの伝播で誘発される故障を引き起こすことなく、リチウム金属バッテリーシステム内のセパレーターとして使用するための、規模を拡大縮小可能であり且つ商業的に実現可能な選択肢を提供する。
【0005】
添付される請求項の実施形態及び上述の実施形態に加え、以下の番号が付された実施形態も革新的である。
実施形態1は、リチウム金属バッテリー電極で支持されたセパレーターであって、
導電性基材と、
基材上に被覆されたセパレーターであり、プレート成形γ-アルミナ粒子を含み、γ-アルミナ粒子が粒子間屈曲細孔を画定する、セパレーターと
を含む、セパレーターである。
【0006】
実施形態2は、セパレーターの厚さが、20μm~60μmの範囲にある、実施形態1のセパレーターである。
実施形態3は、γ-アルミナ粒子の平均厚さが、0.2μm~1μmの範囲にある、実施形態1又は2のセパレーターである。
実施形態4は、γ-アルミナ粒子のアスペクト比が、2~10の範囲にある、実施形態3のセパレーターである。
実施形態5は、細孔の実際の経路長とセパレーターの厚さとの比が、3よりも大きい、実施形態1~4までのいずれか1つのセパレーターである。
実施形態6は、粒子間細孔の半径が、100nm~700nmの範囲にある、実施形態5のセパレーターである。
実施形態7は、粒子間細孔の半径が、200nm~600nmの範囲にある、実施形態6のセパレーターである。
実施形態8は、粒子間細孔の半径が、300nm~500nmの範囲にある、実施形態7のセパレーターである。
実施形態9は、基材が、ニッケル、マンガン、及びコバルト酸化物を含む、実施形態1~8までのいずれか1つのセパレーターである。
【0007】
実施形態10は、実施形態1~9までのいずれか1つ電極で支持されたセパレーターを作製する方法であって、
プレート成形γ-アルミナ粒子のスラリーを調製すること、
スラリーを導電性基材上に拡げて、被覆セパレーターをもたらすこと、及び
被覆セパレーターを乾燥して電極で支持されたセパレーターをもたらすこと
を含む、方法である。
実施形態11は、スラリーを導電性基材上に拡げることが、スラリーを導電性基材上に直接拡げることを含む、実施形態10の方法である。
実施形態12は、
第1の電極と、
第1の電極上に被覆されたセパレーターであって、セパレーターが、プレート成形γ-アルミナ粒子を含み、γ-アルミナ粒子が屈曲粒子内細孔を画定する、セパレーターと、
リチウム金属を含む第2の電極であって、セパレーターに直接接触する第2の電極と、
第1の電極及び第2の電極に接触する電解質と
を含む、リチウム金属バッテリーである。
実施形態13は、第1の電極が、ニッケルマンガンコバルト酸化物電極である、実施形態12のバッテリーである。
【0008】
実施形態14は、電解質が、液体電解質である、実施形態12又は13のバッテリーである。
実施形態15は、セパレーターの厚さが、20μm~60μmの範囲にある、実施形態12~14までのいずれか1つのバッテリーである。
実施形態16は、セパレーターの屈曲度(EIS法)が、少なくとも6である、実施形態12~15までのいずれか1つのバッテリーである。
実施形態17は、セパレーターの多孔度が、40%~60%の範囲にある、実施形態12~16までのいずれか1つのバッテリーである。
【0009】
実施形態18は、セパレーターが、α-アルミナ粒子を含む類似のセパレーターよりも低い固体電解質界面抵抗を実証する、実施形態12~17までのいずれか1つのバッテリーである。
実施形態19は、セパレーターが、α-アルミナ粒子を含む類似のセパレーターよりも低い電荷移動抵抗を実証する、実施形態12~18までのいずれか1つのバッテリーである。
実施形態20は、セパレーターが、バッテリーの充放電中にリチウムデンドライトの形成を阻止する、実施形態12~19までのいずれか1つのバッテリーである。
本開示の対象の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付図面及び説明で述べられる。対象のその他の特徴、態様、及び利点は、説明、図面、及び請求項から明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液体電解質を含むリチウムイオンバッテリー(LIB)の概略断面図である。
図2】電極で支持されたセパレーターの概略断面図である。
図3A-3D】図3Aは、R.J.Marchall Inc.社から調達されたアルミニウム三水和物(ATH)粉末(約2μm粒度)の上面走査型電子顕微鏡法(SEM)画像である。図3Bは、アルミニウム三水和物粉末のx線回折(XRD)測定を示す。図3Cは、既に合成された40質量%ATHスラリーの熱水合成後に形成されたベーマイト(約2μm粒度)の上面SEM画像である。図3Dは、熱水合成後に形成されたベーマイトのXRD測定を示す。
図4A-4D】図4Aは、合成されたγ-アルミナのSEM画像である。図4B-4Dは、それぞれ合成されたγ-アルミナの粒度分布、XRD測定、及び孔径分布を示す。
図5】ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)カソード上のγ-アルミナセパレーターの断面SEM画像である。
図6A-6D】図6A及び6Bは、それぞれ、圧縮前及び圧縮後の電極被覆α-アルミナセパレーターの断面SEM画像である。図6C及び6Dは、それぞれ、圧縮前及び圧縮後の電極被覆γ-アルミナセパレーターの断面SEM画像である。セル圧着中に加えられる圧縮圧力は、400psiであった。
図7A-7B】図7Aは、γ-アルミナ(点線)、α-アルミナ(破線)、及びPPセパレーター(実線)を含むNMC/Liセルに関する、0.2Cレートでの定電流-定電圧(CC-CV)充放電曲線を示す。図7Bは、α-アルミナ(円)、PP(四角形)、及びγ-アルミナ(三角形)セパレーターを含むNMC/Liセルに関する電気化学インピーダンス分光法(EIS)から得られたNyquistプロットを示す。データは、EC-lab(登録商標)ソフトウェア(直線)を使用して当て嵌めた。セルを、カソードとしてのNMC及びアノードとしてのリチウム金属で作製した。
図8A-8D】図8A及び8Bは、1Cレートで、γ-アルミナセパレーターを含むリチウム金属セルに関し、それぞれ電圧対時間及び電流対時間を表す充放電プロファイルを示す。図8C及び8Dは、2Cレートでγ-アルミナセパレーターを持つリチウム金属セルに関し、それぞれ電圧対時間及び電流対時間を表す充放電プロファイルを示す。
図9A-D】2Cレートで100サイクル後の、γ-アルミナセパレーター面の表面の、様々な倍率での上面SEM画像である。
図10A-10B】それぞれ電圧対時間及び電流対時間に関し、3Cレートでの、γ-アルミナセパレーターを持つNMC/Liセルに関する充放電プロファイルを示す。
図11A-11D】図11A及び11Bは、0.2Cレートで、PPセパレーターを持つNMC/Liセルに関し、それぞれ電圧対時間及び電流対時間を表す充放電プロファイルを示す。図11C及び11Dは、1Cレートで、α-アルミナセパレーターを持つNMC/Liセルに関し、それぞれ電圧対時間及び電流対時間を表す充放電プロファイルを示す。
図12A-12D】0.2Cレートで約15サイクル後のPPセパレーター面の表面の様々な倍率のSEM画像である。
図13A-13D】1Cレートで約20サイクル後の、PPセパレーター面の表面の様々な倍率でのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、リチウム金属バッテリーで使用するための、デンドライトの伝播を阻止し又は防止する電極で支持されたセパレーターについて記述する。これらのセパレーターは、導電性基材及び基材上に被覆されたセパレーターを含む。セパレーターは、プレート成形γ-アルミナ粒子を含み、γ-アルミナ粒子は粒子間屈曲細孔を画定する。本明細書で使用される「屈曲細孔」は一般に、実際の経路長とセパレーターの厚さとの比が3よりも大きい細孔を指す。セパレーターの厚さは、典型的には20μm~60μmの範囲にある。γ-アルミナ粒子の平均厚さは、0.2μm~1μmの範囲とすることができる。γ-アルミナ粒子のアスペクト比は、典型的には2~10の範囲である。粒子間細孔の半径は、典型的には100nm~700nm(例えば、200nm~600nm又は300nmから500nm)の範囲にある。適切な基材は、ニッケル、マンガン、及びコバルト酸化物を含む。
【0012】
電極で支持されたセパレーターの製作は、プレート成形γ-アルミナ粒子のスラリーを調製すること、スラリーを導電性基材上に拡げて、被覆セパレーターをもたらすこと、及び被覆セパレーターを乾燥して電極で支持されたセパレーターをもたらすことを含む。導電性基材上にスラリーを拡げることは、スラリーを導電性基材上に直接拡げることを含んでもよい。
【0013】
本明細書に記述されるリチウム金属バッテリーは、第1の電極、第1の電極上に被覆されたセパレーター、リチウム金属を含む第2の電極、並びに第1の電極及び第2の電極に接触する電解質を含む。セパレーターは、プレート成形γ-アルミナ粒子を含み、γ-アルミナ粒子は、屈曲粒子内細孔を画定する。第2の電極は、セパレーターに直接接触することができる。一部の実施例では、第1の電極は、ニッケルマンガンコバルト酸化物電極である。電解質は、液体電解質とすることができる。セパレーターは典型的には、20μm~60μmの範囲の厚さ、少なくとも6の屈曲度(電気化学インピーダンス分光法)、及び40%~60%の範囲の多孔度を有する。セパレーターは、α-アルミナ粒子を含む類似のセパレーターよりも低い固体電解質界面抵抗を実証する。一部の実施例では、セパレーターは、α-アルミナ粒子を含む類似のセパレーターよりも低い電荷移動抵抗を実証する。セパレーターは、バッテリーの充放電中のリチウムデンドライトの形成を阻止する。図2は、電極被覆γ-アルミナセパレーター200の断面図を示す。γ-アルミナセパレーター202は、約30μm~約100μm(例えば、約40μm)の範囲の厚さを有するニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)カソード204上に、約20μm~約60μmの範囲の均一な厚さを有する。カソードは、アルミ箔206の層上に被覆される。一実施例では、γ-アルミナセパレーターは約25μmの厚さを有し、NMCカソードは約40μmの厚さを有する。
【実施例
【0014】
(材料、プレート成形γ-アルミナ合成、及びスラリーの調製)
プレート成形γ-アルミナを、アルミニウム三水和物から熱水的に合成した(約2μmの粒度、R.J. Marshall Inc., USA)。アルミニウム三水和物(ATH)及び脱イオン水の40質量%のスラリーを混合し、Teflonで裏打ちされたオートクレーブ内に注いだ。次いでこの溶液を220℃で3時間、オートクレーブで加熱して、約2μmサイズの、必要とされるプレート形状のベーマイト粒子を得た。大気冷却後にオートクレーブから溶液を回収した後、溶液を撹拌しながらホットプレート上で乾燥して、溶液中の大量の水を除去した。
次いで粉末を120℃で真空乾燥して、ベーマイト粉末中のあらゆる微量の水分を除去した。この後、媒体としての大気で、480℃で6時間か焼して、粒度又はモルホロジーのいかなる変化もなしにベーマイトからγ-アルミナへの相変化をもたらし且つγ-アルミナからあらゆる微量の水分を除去した。γ-アルミナのスラリーを形成するため、気泡のない均質なスラリーが形成されるまで、3gmの粉末を1gmの5質量%ポリビニルアルコール(PVA)水性溶液(分子量:77000~79000Da)(ICN Biomedical Inc.,USA)及び1gmの脱イオン水と混合した。
【0015】
α-アルミナ(粒度約2.2μm)をAluchem Inc.,USA.から得て、水性α-アルミナスラリーを、3gmの粉末と1gmの5質量%ポリビニルアルコール(PVA)水性溶液(分子量:77000~79000Da)(ICN Biomedical Inc.,USA)と1gmの脱イオン水とを混合することによって調製した。25μmの厚さの商業的に使用されるPP-2500セパレーターを、対照として使用するためにCelgard LLC,USAから調達した。0.1mmの厚さ及び15.6mmの直径のリチウム金属チップとNMC電極を、MTI Corporation,USAから調達した。CR-2032を構成するための構成要素をX2 Labwares,シンガポールから調達した。使用される電解質は、MTI,USAから密閉容器で調達された、等体積の炭酸エチレン(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、及び炭酸ジメチル(DMC);EC:DEC:DMC=1:1:1、v/v/v)に加えた1M LiPF6塩であった。
【0016】
(セパレーターの被覆及び特徴付け)
γ-アルミナ及びα-アルミナの調製されたスラリーを、エッジの1つを通して滴下し、次いでキャリパー調節可能なドクターブレード(Gardco LLC,USA)を使用してアルミ箔又は電極の長さの下へと拡げた。金属酸化物で被覆された電極で支持されたセパレーターを生成するために、初期ブレードギャップを50μmに保持した。被覆セパレーターを、湿度調節されたチャンバー内で、40℃及び60%の相対湿度で8時間乾燥した。次いでセパレーターを、70℃の温度制御真空炉(Thermo Fisher Scientific,USA)を使用して12時間乾燥して、微量の水分全てを完全に除去した。被覆セパレーターの厚さを、精度1μmのマイクロメーター(ミツトヨ、日本)によって測定した。最終的な厚さは、セパレーターの乾燥に起因して約10μmの圧縮が観察されたように、セパレーターの両方に関して40μmであることが見出された。
【0017】
無機γ-アルミナ及びα-アルミナセパレーターの多孔度を測定するため、アルミ箔上の被覆セパレーターを、いかなる物理的損傷もセパレーターに引き起こすことなく慎重に剥離した。これらの自立型γ-アルミナ及びα-アルミナセパレーターは、PP-2500セパレーターの物理的に自立する性質を一致させるために得た。セパレーターの多孔度(φ)は、方程式1を使用して、測定された嵩密度から得た(被覆シリカ及びシリカライト膜セパレーターの質量及び次元体積を使用する)。
【0018】
【数1】
PP-2500、α-アルミナ、及びγ-アルミナセパレーターの屈曲度は、セパレーターを、グローブボックス内の電解質に24時間浸漬することによって測定した。このステップの後、浸漬したセパレーターを、自立型セパレーターとして、同じ形状及び断面を有する2枚のステンレス鋼の電極間に挿入した。次いでセパレーターのオーム抵抗を、電気化学インピーダンス分光法(PARSTAT 2263 EIS station,Princeton Applied Research,USA)を25℃で使用することによって得た。走査パラメーターは、100kHzの出発周波数及び100mHzの終了周波数に設定し、AC振幅は10mVrmsであった。セパレーターの屈曲度(τ)は、下記の方程式により、その測定されたオーム抵抗(R)及び電解質の伝導度「K」に関係し
【0019】
【数2】
式中、「d」はセパレーターの厚さであり、「A」はセパレーターの断面積であり、「φ」はセパレーターの多孔度である。このように方程式2は、電解質に浸漬された様々なセパレーターの屈曲度を見出すのに使用した。
被覆セパレーターの断面モルホロジーは、顕微鏡写真の現像を容易にするために金でスパッタリングコーティングされたセパレーター試料の、走査型電子顕微鏡法(SEM)(Philips,USA,FEI XL-30)によって試験した。また、熱水経路を介して合成されたγ-アルミナ粒子は、ブレードコーティング法を使用してアルミ箔の被覆した後に上面SEMを行うことにより、粒度に関して特徴付けられた。上面SEM画像を、0.25μmである粒度間隔を持つ粒度分布に関してGatan GMSソフトウェアを使用して、粒度分布に関して定量した。エネルギー分散型x線分光法(EDX)の拡張を、同じSEM設備に使用して、元素マップを得た。
【0020】
X線回折パターンを、γ-アルミナで被覆されたNMCで得て(Bruker AXS-D8,Cu Kα radiation,USA)、被覆材料の相構造を確認した。被覆アルミ箔を16mmのディスクにカットし、水銀ポロシメーター(Micrometrics Auto Pore V,USA)を使用してそれらの孔径分布に関して試験した。この特徴付けは、NMCの孔径分布がそれぞれの粉末の孔径分布の測定を妨げないように、NMCではなくアルミ箔上にγ-アルミナ及びα-アルミナ粉末を被覆することによって行った。水銀ポロシメトリーは、高圧モード及び低圧モードの両方で行って、ナノメートル~マイクロメートルに及ぶ寸法の孔径を検出した。
【0021】
(コインセルの構成及び試験、その後のセパレーターの検査)
16mm直径のα-アルミナ又はγ-アルミナ被覆電極ディスクを、対応する被覆電極シートからカットし、次いで70℃で12時間、真空炉内で保持した。次いでこのディスクを即座に、アルゴンが充填されたグローブボックス(Innovative Technology Inc.,USA)内に入れ、24時間にわたり保持して、電極で支持されたセパレーターディスクのあらゆる微量の大気ガス又は水分を除去した。セルのその他の構成要素は、グローブボックス内に組立てのため既に保持された。カットされた16mmの電極で支持されたセパレーターディスクをCR-2032セルのボトムケース内に置き、150μmの電解質(1M LiPF6塩、等体積の炭酸エチル(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、及び炭酸ジメチル(DMC);EC:DEC:DMC=1:1:1、v/v/v中)を、NMC電極の上面のα-アルミナ/γ-アルミナ被覆表面にピペット分取した。
【0022】
次いで0.1mmの厚さ及び15.6mmの直径のリチウム金属チップ(MTI,USA)を、セパレーターが損傷しないようにセパレーター表面の上部に非常に慎重に置いた。次いで2個のスペーサー及び1個のバネ(X2 Labares,シンガポール)を、黒鉛アノード上に置き、その後、CR-2032wセルの上部ケースを、完全セルを密接に包封するように置いた。次いでコインセルを、400psiの圧力まで圧着した。圧着後のα-アルミナ及びγ-アルミナ被覆セパレーターモルホロジーを試験するため、これらの被覆セパレーターを、電解質を添加することなく同じコインセル内で圧着し、次いでセルを圧着解除した。これらの圧着セパレーターを、金でスパッタリングコーティングし、SEMを使用してそれらの断面を検査した。更に、セパレーターを通したデンドライトの伝播を検査するため、α-アルミナ、γ-アルミナ、及びPPセパレーターを持つサイクル動作させた短いコインセルを、グローブボックス内で分解した。リチウム金属アノードをセルから取り出し、セパレーター被覆カソード及びサイクル動作させたPPセパレーターをSEM試料保持ステージ上に置いた。次いでこれらのサンプラーホルダーを、真空密閉容器内での金のスパッタリング用に採用し、次いでアノードに接触するセパレーターの表面のデンドライトに関して検査した。
【0023】
次いで電解質で満たされた、組み立てられたリチウム金属コインセルを取り上げ、その充放電特性を、バッテリー試験システムによって(Neware Co.,中国)試験した。様々なCレート(0.2Cレート~3Cレート)で様々なセパレーターの性能を試験するため、PP、α-アルミナ、及びγ-アルミナセパレーターを持つセルを、標準的なCC-CV(定電流-定電圧)法により、2.0~4.2Vの間で100サイクルにわたって様々なCレートで試験した。組み立てられたセルの電気化学インピーダンス分光(EIS)測定を、ACモードでPARSTAT 2263 EISステーション(Princeton Applied Research,USA)を使用して実行した。組み立てられた完全セルに関するNyquistプロットを、100kHz~100mHzの周波数範囲を利用することによって作成した。
【0024】
(γ-アルミナ粉末の形成、γ-アルミナセパレーター、及びその特徴付け)
図3A及び3Bはそれぞれ、調達されたATH粉末の上面SEM及びXRDを示す。ATH粒子の粒度は、供給元が述べる平均粒度2μmに一致する。またXRDパターンは、粉末が実際に、それ自体が合成手順の要件であるギブサイト状態にあることも確認する。この粉末を使用して、アルミニウム三水和物及び脱イオン水の40質量%スラリーを作製した。得られた結果を、ベーマイトの合成のために使用して、ATHのこれらの丸みのある粒子をプレート成形粒子に変換した。図3C及び3Dはそれぞれ、40質量%のATHスラリーの熱水合成後に形成されるベーマイトの上面SEM及びXRDを示す。SEM画像は、粒度が著しく変化しないことを示すが、粒子の形状は、丸みの付いた形からプレート形状へと変化する。これは熱水合成中のギブサイトからベーマイトへの相変化に起因して生じる。XRDパターンは、結晶構造がベーマイト相のものであることを確認する。このベーマイト粉末をか焼して過剰な水を結晶から除去し、か焼プロセス中の粒度を変化させることなくγ-アルミナを形成した。
【0025】
合成されたγ-アルミナ粒子の粒度分析を、図4Bに示される粒度分布ヒストグラムを生成するために、Gatan粒度測定ソフトウェア(GMS-90)を使用して、図4A等の画像を処理することによってSEM画像から行った。粒子は、約7の高い長さ対厚さのアスペクト比を持つ(長さ、幅、及び厚さはそれぞれ約2μm、1.5μm、及び300nm)、二次元プレート形状のものである。したがってこれらの粒子は、長さに沿った平均粒度が約2μmの直方体プレート成形粒子として定めることができ、これはNMCカソードの孔径に近いものである。この粒度は、ブレードコーティングの間のカソードに対するセパレーターの、より良好な接着を助ける。
【0026】
γ-アルミナ粉末をアルミ箔上に被覆し、図4Cに示されるXRDによって検査し、合成された粉末がγ-アルミナであることを確認した。アルミ箔上に被覆されたγ-アルミナ及びα-アルミナのセパレーターフィルムを、水銀ポロシメトリーに供し、孔径分布結果を図4Dに示す。γ-アルミナフィルム及びα-アルミナフィルムの孔径分布は非常に類似している。γ-アルミナフィルムが約430nmの孔径を有するのに対し、α-アルミナフィルムは約610nmの孔径を有する。この値は、これらフィルムの細孔の屈曲度がどのようにデンドライトの伝播を防止する原因となっているかを比較することを望むので、これらセパレーターに関する粒度を選択する間の設計パラメーターである。このように、種々の粒子のモルホロジーに起因する屈曲度のみが変化し、孔径は可能な限り密接に保持される。
【0027】
次いで特徴付けられた粉末を、スラリーに作製し、NMCカソード材料にブレードコーティングして、電極被覆γ-アルミナセパレーターを形成した。図5は、セパレーターの断面SEM画像である。形成された電極被覆γ-アルミナセパレーター500は、電極502を横断する厚さが均一で約40μmの厚さであり、それに比べてセパレーター504は25μmの厚さである。これはどのような亀裂や不均質性も形成することなく、単一被覆で実現できた最小厚さであり、したがって電極の単離は、抵抗の実質的な増大なしに実現され得る。EDX分光法は、セパレーター、カソード、及び表面にカソード502が被覆されたアルミ箔506の領域が、区別可能であり、コーティングプロセス中に損傷しないことを確認した。
【0028】
図6A及び6Bは、それぞれ400Psiの圧力までセル圧着により圧縮する前後の、NMC電極上に被覆されたα-アルミナセパレーターの断面SEM画像である。α-アルミナ粉末の粒度は、約600nmの孔径を得ることができる、約2μmになるように選択した。これはγ-アルミナセパレーターの400nmの孔径に密接に一致し、ほぼ同じ孔径を持つ細孔の屈曲度の効果の比較を可能にする。画像は、粒子の充填に著しい変化がなく、得られた屈曲度は、セル構成中に加えられた圧着圧力に起因して、影響を与えないことを示す。このことは、これらα-アルミナ粒子の球の性質が、圧着中に加えられた圧縮力の均一分布に起因して更に耐密な充填に耐えることができるとして期待される。
図6C及び6Dは、それぞれ400Psiの圧力までセルを圧着により圧縮する前後での、NMC電極上に被覆されたγ-アルミナセパレーターの断面画像である。画像は、γ-アルミナ粒子の充填が、400Psiでの圧着での圧縮後に、より耐密になることを示す。これは、不均一粒子モルホロジーが、圧着中に圧縮応力がセパレーターに加えられたときに孔空間の寸法を低減させるのを可能にするとして期待される。このように屈曲セパレーターは、セパレーターが電極上に被覆されたとき、γアルミナのプレート成形粒子に起因してもたらされる。更にセルがその構成中に圧着されたとき、更になお屈曲したセパレーターが、プレート成形粒子のより高い充填密度に起因して形成される。
【0029】
セパレーターの多孔度、孔径、及び細孔屈曲度は、デンドライトの伝播がセパレーターによってどのように効果的に抑制されることになるかを決定することができるパラメーターである。γ-アルミナ、α-アルミナ、及びPPセパレーターのこれらの性質の値は、実験セクションでそれぞれ記述される手順を使用して定量化され、その最終屈曲度の値は約6%の誤差を有する。表1の値からわかるように、γ-アルミナ及びα-アルミナセパレーターの孔径は非常に類似しているが、前者の屈曲度は後者よりも3倍大きい。更に、γ-アルミナセパレーターの多孔度は、α-アルミナセパレーターの場合よりも低い。これら両方の観察事項は、セパレーター粒子のモルホロジー及び得られる充填に関連する。α-アルミナセパレーターの場合、球状粒子が更に緩く充填されて更に高い多孔度がもたらされ、一方、プレート成形γ-アルミナ粒子は更に耐密に充填され、したがって更に低い多孔度を有する。この充填は、γ-アルミナセパレーターの、より高い屈曲度ももたらす。これらの、より高い屈曲度及びより低い多孔度の値は、γ-アルミナセパレーターに関し、より高いCレートでデンドライトの伝播の抑制に寄与する。
【0030】
【表1】
【0031】
(セパレーター性能評価)
図7Aは、α-アルミナ及びPPセパレーターをそれぞれ持つNMC/Liセルと比較した、0.2Cレートでの、γ-アルミナセパレーターを持つNMC/Liセルの定電流-定電圧(CC-CV)充放電曲線の第1のサイクルを示す。3個のセルは全て、NMC/Liセルの類似の充放電曲線特性を示す。3個のセパレーターを持つこれらNMC/Liセルの、Nyquistプロット及び対応する等価回路も、図7Bに示す。様々なセパレーターを持つセルの抵抗に関する定量値は、表2で定量化される。図示されるように、α-アルミナセパレーターにより提供された抵抗は、PPセパレーターよりも厚い場合であっても、PPセパレーターより低い。これは電解質に対するα-アルミナセパレーターの非常に高い濡れ性及び多孔度によって説明することができ、より低い抵抗をもたらすものである。しかしながらγ-アルミナセパレーターは、高い屈曲度に主に起因して最も高いオーム抵抗を示し、それと共に、より高いSEI及び電荷移動抵抗を示すが、これは図7Aに示されるγ-アルミナを持つセルに関して、そのそれほど急峻ではないCC-CV曲線と矛盾がないものである。
【0032】
【表2】
【0033】
図8A及び8Cは、それぞれ1Cレート及び2Cレートでのγ-アルミナセパレーターセルに関する電圧対時間曲線を示し、一方、図8B及び8Dは、それぞれ1Cレート及び2Cレートでのγ-アルミナセパレーターセルに関する電流対時間曲線を示す。図8A及び8Cからわかるように、γ-アルミナセパレーターを持つセルの電圧対時間曲線は、100サイクルにわたる1C及び2Cレートでのリチウム金属バッテリーの充放電中に、目に見えるいかなる変動も示さない。安定な電圧プロファイルは、充放電のより高いレートであっても、前方に移動/伝播する経路を持たないことに起因して、形成されたリチウム金属のデンドライトがその表面に保持されることを意味する。更に、図8B及び8Dに見られるように、安定な電流対時間曲線は、それぞれのCレートでセルから首尾良く放電できる電流量の損失をもたらす、セパレーターに捕捉された不活性リチウム金属がないことを示す。屈曲度及び多孔度の既に定量化された値(α-アルミナと比較された)は、γ-アルミナセパレーターが、その屈曲度の高い値及び多孔度の低い値に起因して、高いCレートでデンドライトの伝播を防止し得ることを決定する。Cレートが高いときであっても、デンドライトは、細孔の屈曲経路を通して移動させるのに十分な傾向を持たないと考えられる。
【0034】
図9A~9Dは、2Cレートでサイクル動作する間の、リチウム金属アノードに接触したサイクル後γアルミナセパレーターの表面のSEM画像である。依然として電極に接触している間のこの電極被覆セパレーターを、リチウム金属に対して擦りも押圧することもせずに、グローブボックス内で分解したセルから慎重に回収した。このことは、リチウム金属デンドライトがセパレーターを通して伝播した場合、セパレーターの表面に存在し得る残留リチウム金属への損傷を防止するために行った。図9A~9Dは、セパレーターを通して伝播する間、細孔内に留まっていると考えられる残留リチウム金属を観察するために、低い及び高い倍率の両方で撮影した。より低い倍率の画像、図9C及び9Dは、リチウム金属残留物が、より大きい面積でセパレーターの表面に存在しないことを示す。それに対して、より高い倍率の画像、図9A及び9Bは、リチウム金属残留物がミクロ規模の細孔領域においても存在しないことを示す。
【0035】
それぞれが類似の倍率で、リチウム金属アノードによりサイクル動作する前及び後のセパレーターの画像である、画像図6Dを画像図9Aと比較したとき、セパレーター粒子及び細孔領域は、その外観が非常に類似することが観察される。デンドライトがセパレーターを貫通した可能性がある場合、セパレーターとリチウム金属アノードとの界面にリチウム金属の残余物がある可能性がある。しかしながら、上述のCレートのサイクル動作で、これらの細孔でリチウム金属のそのような残余物は、見られなかった。したがってデンドライトは、セパレーター表面内に移動するのが防止され、リチウム金属アノードに取着されたままであった。セパレーターの細孔及び表面には、リチウムデンドライトが貫通しなかったと結論付けることができる。
【0036】
図10A~10Bは、3Cレートへの充放電レートの連続的な増大で、約75サイクル目に充電電流に減少があることを示す。このことは、図10Bにおけるそれぞれ低い充電電流ピークで見ることができる。この充電電流の低下は、アノードの電気化学的に活性なリチウムの損失をもたらす、セパレーターの母材中に移動するデンドライトを示している。電気化学的に活性なリチウムのこの損失は、セルが完全充電容量を実現するのを防止し、セパレーター母材に留まるリチウムはもはや電気化学的充放電反応に関与しない。
【0037】
電圧の突然の降下は、セパレーターを通るデンドライトの伝播の特徴である。この突然の電圧降下は、デンドライトがセパレーターを通して伝播し且つカソードに到達するときに、部分的にはセルの短絡によって引き起こされる。図11A及び11Cで、電圧は、それぞれ0.2Cレート及び1CレートでPP及びα-アルミナセパレーターセルに関して降下することがわかる。また、図11B及び11Dからわかるように、セルが短絡したとき、システムは、セルを充電するため電流をその最大許容値まで増加させようとするが、電流は、セル内を流れるだけであり、それ以上セル電圧を増加させない。α-アルミナ及びPPセパレーターは、γ-アルミナセパレーターと比較したそれらの低い屈曲度に起因して、より高いCレートでデンドライトの伝播を防止できない。図11A及び11Bからわかるように、PPセパレーターは、その最も低い屈曲度及び本来の最も低い材料硬度に起因して、約15回の充放電サイクル後に0.2Cレートでの伝播(リチウムデンドライトによるセパレーターの穿刺)を可能にする。
【0038】
α-アルミナセパレーターは、より良好に動作し、1Cレートで約20サイクルまで、セパレーターを経たデンドライトの伝播を防止できる。γ-アルミナセパレーターと比較した、α-アルミナセパレーターの比較的低いデンドライトの抑制は、それらが類似の硬度を有するとしても、より多くのデンドライトを不動態化するセパレーターのための粒子形状の役割を示す。α-アルミナセパレーターの比較的高い多孔度及び低い屈曲度は、そのデンドライトの抑制特性を低減させ、より高い細孔容積がより容易なデンドライトの移動度を可能にする。
【0039】
図12A~12D及び13A~13Dは、0.2Cレートでサイクル動作しかつ故障した後のセルから回復したPPセパレーター及びα-アルミナセパレーターの表面を示す。これらの画像を撮影した様々な倍率は、詳細な局所領域並びにより大きいセパレーター表面のマクロ的観点を示す。原始的α-アルミナ及びPPセパレーターを表す図6A及び6Bと比較したとき、これらのランダムに成形された白色粒子は、図12A~12D及び13A~13Dでは外来実体として見られる。図12A~12D及び13A~13DのSEM画像は、リチウム金属アノードに面した表面のものであり、したがってセパレーター内に伝播するデンドライトは、最初に、リチウム金属に面するこの表面を通過する。図12A~12DのSEM画像から、そのような低いCレートでサイクル動作する間であっても、PPセパレーターを通して穿刺された可能性があるいくつかのデンドライトがあることがわかる。これはその低い材料強度及び低い屈曲度の原因となる可能性がある。同様に図13A~13Dでは、α-アルミナセパレーターを通して伝播した可能性のある一部のデンドライトは、α-アルミナセパレーターの表面の白色外来粒子として観察されるように、その残余物を残した可能性がある。
【0040】
本開示は、多くの特定の実施形態の詳細を含有するが、これらは対象の範囲又は請求項に記載され得る範囲を限定すると解釈すべきではなく、むしろ特定の実施形態に特異的となり得る特徴の記述である。別々の実施形態の文脈で本開示に記述される、ある特定の特徴も、組み合わせて、単独の実施形態で、実現することができる。逆に、単一実施形態の文脈で記述される様々な特徴は、多数の実施形態で、別々に、又は任意の適切な部分的組合せで実現することもできる。更に、既に記述された特徴は、ある特定の組合せで及び更に最初に請求項に記載されたそのままでも作用すると記述され得るが、請求項に記載された組合せの1つ又は複数の特徴は、ある場合には、組合せから削除することができ、請求項に記載された組合せは、部分的組合せ又は部分的組合せの変形例を対象としてもよい。
【0041】
対象の特定の実施形態について記述してきた。その他の実施形態、変更例、及び記述される実施形態の置換例は、当業者に明らかにされるように、以下の請求項の範囲内にある。動作は、特定の順序で図面に又は請求項に示されるが、これは所望の結果を実現するために、そのような動作が、示される特定の順序で又は連続的順序で行われ或いは全ての例示される動作が行われる(いくつかの動作は任意と見なされ得る)ことを必要とすると理解されるべきではない。
したがって前述の例示的な実施形態は、本開示を画定又は制約しない。その他の変更、置換、及び代替も、本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
【国際調査報告】