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特表2024-519907尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用
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  • 特表-尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用 図1
  • 特表-尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用 図2
  • 特表-尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用 図3
  • 特表-尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用 図4A
  • 特表-尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用 図4B
  • 特表-尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用 図4C
  • 特表-尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用 図4D
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】尿路上皮癌の治療における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240514BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240514BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240514BHJP
   C07K 7/00 20060101ALI20240514BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P13/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K38/07
C07K16/28 ZNA
C07K7/00
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571887
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2022093631
(87)【国際公開番号】W WO2022242692
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110559728.8
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物1:RC48-ADC combined with toripalimab,an anti-PD-1 monoclonal antibody (Ab), in patients with locally advanced or metastatic urothelial carcinoma (UC): Preliminary results of a phase Ib/II study. Journal of Clinical Oncology 39, no. 15_suppl https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2021.39.15_suppl.4534(公開日:2021年5月19日) 添付資料1:刊行物1が2021年5月19日に公開されたことを示すウェブページ「2021 ASCO Annual Meeting Preview: Connect With One of the Largest, Most Diverse Audiences in Oncology」 https://connection.asco.org/magazine/features/2021-asco-annual-meeting-preview-connect-one-largest-most-diverse-audiences
(71)【出願人】
【識別番号】520087262
【氏名又は名称】レメゲン シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】REMEGEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.58 Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong)Pilot Free Trade Zone, Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ジアンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン, ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー, シェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】スー, シャオホン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF63
4C076FF68
4C084AA02
4C084BA16
4C084CA59
4C084MA02
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、尿路上皮癌、特に局所進行性または転移性の尿路上皮癌を有する患者を治療するための医薬品の調製における、免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-1抗体またはPD-L1抗体と併用での、HER2を標的とする抗体薬物複合体の使用を提供する。2種の薬剤を単剤で用いた治療と比較して、両剤を用いた併用療法は、顕著な相乗効果及び有意な治療効果を有する。さらに、この併用療法は、低いHER2 IHC発現(1+)の患者の場合も、良好な効能を有した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿路上皮癌患者を治療するための薬剤の調製における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、
前記抗体が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、
前記リンカーLが、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、前記リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合され、連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞毒性分子Uが、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1抗体またはPD-L1抗体である、前記使用。
【請求項2】
尿路上皮癌患者を治療する方法であって、有効量の抗体薬物複合体(ADC)と免疫チェックポイント阻害剤とを前記患者に投与することを含み、
前記抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、
前記抗体が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、
前記リンカーLが、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、前記リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合され、連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞毒性分子Uが、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1抗体またはPD-L1抗体である、前記方法。
【請求項3】
前記患者のHER2発現が陽性である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項4】
前記患者の尿路上皮癌から得た試料がHER2陽性である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項5】
前記患者の尿路上皮癌から得た前記試料が、免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいてHER2陽性である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項6】
前記患者の尿路上皮癌から得た前記試料におけるHER2発現が、IHC 3+またはIHC 2+である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項7】
前記患者のPD-L1発現またはPD-1発現が陽性である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項8】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、
前記VH領域が、GYTFTDYY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR1、VNPDHGDS(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHCDR2、及びARNYLFDH(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、
前記VL領域が、QDVGTA(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR1、WAS(配列番号7)のアミノ酸配列を含むLCDR2、及びHQFATYT(配列番号8)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項9】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、
前記VH領域が、DYYIH(配列番号31)のアミノ酸配列を含むHCDR1、RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号32)のアミノ酸配列を含むHCDR2、及びARNYLFDHW(配列番号33)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、
前記VL領域が、KASQDVGTAVA(配列番号34)のアミノ酸配列を含むLCDR1、WASIRHT(配列番号35)のアミノ酸配列を含むLCDR2、及びHQFATYT(配列番号8)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項10】
前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項11】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、前記VH領域が、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、前記VL領域が、DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)のアミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項12】
前記抗体がヒトIgG抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項13】
前記抗体が、ヒトIgG1、IgG2及びIgG4抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項14】
前記抗体の前記重鎖のアミノ酸配列が配列番号1であり、前記抗体の前記軽鎖のアミノ酸配列が配列番号2である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項15】
前記抗体薬物複合体が、ジシタマブ ベドチンまたはそのバイオシミラーである、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項16】
前記抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物抗体比)値が、2~7の任意の数である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項17】
前記平均DAR値が、4±0.5である、請求項16に記載の使用または方法。
【請求項18】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項19】
前記PD-1抗体が、トリパリマブ、ドスタルリマブ、プロルゴリマブ、チスレリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、セミプリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ペンプリマブ、ゲノリムズマブ、ジンベレリマブ、及びバルスチリマブからなる群から選択される、請求項18に記載の使用または方法。
【請求項20】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-L1抗体である、先行請求項のいずれかに記載の使用または方法。
【請求項21】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、エンバフォリマブ及びRC98からなる群から選択されるPD-L1抗体である、請求項20に記載の使用または方法。
【請求項22】
前記患者が、化学療法剤、標的療法、免疫療法及び内分泌療法からなる群から選択される1種以上の前治療を過去に受けたことがある、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項23】
前記尿路上皮癌患者が、外科的に切除できない局所進行性尿路上皮癌を有する患者、局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌を有する患者、HER2陽性尿路上皮癌を有する患者、HER2陽性の局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌を有する患者、及び白金ベースの化学療法に耐えることができない尿路上皮癌患者からなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項24】
前記尿路上皮癌患者が、切除不能な局所進行性または転移性の尿路上皮癌患者である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項25】
前記尿路上皮癌患者が、シスプラチンベースの化学療法に不適格である患者、または前記シスプラチンベースの化学療法を拒否している患者である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項26】
前記尿路上皮癌患者が、化学療法後に進行した患者である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項27】
前記尿路上皮癌患者が、術前化学療法または術後補助療法としてのシスプラチンベースの化学療法の完了から12ヵ月以内に疾患の進行を経験した患者である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項28】
前記薬剤が、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内に投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項29】
前記ADCが、1.5mg/kgまたは2.0mg/kgの用量で投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項30】
前記ADCが、2週間または14日ごとに投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項31】
前記尿路上皮癌患者への、前記抗体薬物複合体及び前記免疫チェックポイント阻害剤の投与が、7.5ヵ月を超える無増悪生存期間(PFS)をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項32】
有効量の抗体薬物複合体(ADC)及び免疫チェックポイント阻害剤の使用であって、患者の尿路上皮癌を治療するための、前記ADCを含む第1の薬剤及び前記免疫チェックポイント阻害剤を含む第2の薬剤の製造用の使用であり、
前記抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)n、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、
前記抗体が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、
前記リンカーLが、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、前記リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合され、連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞毒性分子Uが、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1抗体またはPD-L1抗体である、前記使用。
【請求項33】
患者の尿路上皮癌を治療するための薬剤の製造における、有効量の抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記ADCが、免疫チェックポイント阻害剤と併用され、
前記抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)n、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、
前記抗体が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、
前記リンカーLが、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、前記リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合され、連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞毒性分子Uが、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1抗体またはPD-L1抗体である、前記使用。
【請求項34】
患者の尿路上皮癌を治療するための薬剤の製造における、有効量の免疫チェックポイント阻害剤の使用であって、前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗体薬物複合体と併用され、
前記抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)n、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、
前記抗体が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、
前記リンカーLが、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、前記リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合され、連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞毒性分子Uが、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1抗体またはPD-L1抗体である、前記使用。
【請求項35】
免疫チェックポイント阻害剤と併用して、尿路上皮癌の治療に使用するための抗体薬物複合体(ADC)を含む医薬組成物であって、
前記抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)n、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、
前記抗体が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、
前記リンカーLが、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、前記リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合され、連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞毒性分子Uが、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1抗体またはPD-L1抗体である、前記医薬組成物。
【請求項36】
抗体薬物複合体(ADC)と併用して、尿路上皮癌の治療に使用するための免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物であって、
前記抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)n、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、
前記抗体が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、
前記リンカーLが、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、前記リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合され、連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞毒性分子Uが、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1抗体またはPD-L1抗体である、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月21日に出願された、中国出願第202110559728.8号の優先権の利益を主張するものであり、同出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物に関する内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式(CRF)(ファイル名:761682008641SEQLIST.txt、記録日:2022年5月16日、サイズ:27,948バイト)。
【0003】
本開示は、がんの精密な治療の分野、尿路上皮癌の治療において、免疫チェックポイント阻害剤と併用した、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)を標的とする抗体薬物複合体(ADC)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
尿路上皮癌(UC、または移行上皮癌、TCC)は、通常、泌尿器系、すなわち腎臓、膀胱及び副器官に発生する種類のがんである。尿路上皮癌は、膀胱癌の最も一般的な型であり、尿管、尿道及び尿膜管のがんでも同様である。尿路上皮癌は、腎臓癌で2番目に一般的な型であり、すべての原発性腎臓悪性腫瘍の5~10%を占める(en.wikipedia.org:https://en.wikipedia.org/wiki/Transitional_cell_carcinoma)。
【0005】
尿路上皮(移行上皮としても知られている)は、膀胱、尿管及び尿道の内側にあり、腎盂(尿が集められる腎臓の部分)の粘膜である。尿路上皮は、尿路上皮細胞及び移行細胞から構成される。これらの細胞は、がん細胞、すなわち尿路上皮癌(または、移行上皮癌)として知られているがん細胞に変化する可能性がある。
【0006】
がん細胞の浸潤性に応じて、尿路上皮癌は、非浸潤性(膀胱の粘膜内のみ)または浸潤性(膀胱壁のその他の層への発達)であり得る。これらのうち、非浸潤性尿路上皮癌は、膀胱の内膜でのみ発達し、膀胱壁内でより深くには発達していない。診断において、尿路上皮癌を有する患者のうち、50~60%の腫瘍は非浸潤性である。非浸潤性尿路上皮癌の種類としては、非浸潤性扁平上皮尿路上皮癌(non-invasive squamous urothelial cancer)(上皮内癌としても知られている)、高異型度の非浸潤性乳頭状尿路上皮癌、及び低異型度の悪性腫瘍を有する非浸潤性乳頭状尿路上皮癌が挙げられ、悪性化の可能性が低い非浸潤性乳頭状尿路上皮性腫瘍は、浸潤性癌に発展しにくい。
【0007】
これに対して、浸潤性尿路上皮癌は、膀胱の内膜から膀胱壁のより深い層、例えば結合組織(基底膜として知られている)及び筋肉層(筋層として知られている)に発達する。診断において、尿路上皮癌を有する患者のうち、40~50%の腫瘍は浸潤性である。
【0008】
理論上、尿路上皮癌は、腎盂、尿管、膀胱または尿道が挙げられるが、これらに限らず尿路のどこでも起こり得る。
【0009】
関連する腫瘍細胞が転移していない場合、外科的切除が好ましい治療選択肢である。転移性腫瘍を有する患者については、抗がん剤治療が一般的に必要である。現在のファーストライン治療は、ゲムシタビン及びシスプラチンの併用療法である。しかし、放射線療法は尿路上皮癌ではあまり機能せず、通常、術後補助療法として使用される。腎盂/尿管上皮の癌を治療する場合、BCG注入療法(ウシ結核菌のカテーテル注入)を使用できる。
【0010】
尿路上皮癌は、転移し、しばしば再発する。筋層を含む腫瘍を有する患者にとって、根治的膀胱切除術は第1選択であり、これは、外科手術後に厳密かつ定期的な検討が必要となる。したがって、そのための治療は難しく、再発率は高い(Li Xuesong,Wang Gang,and Zhang Qian,eds.,Essence of Urology Cases,Peking University Medical Press,2017)。外科手術後すぐに(24時間以内に)単回投与として、または外科手術の数週間後に6回投与のレジメンとして膀胱に投与されるマイトマイシン(化学療法剤)もまた、一部の患者にとって治療の選択肢である。
【0011】
ビンフルニンは、進行した尿路上皮性または転移性TCCの治療用として、ヨーロッパで承認されている(Bellmunt,J.et al.,J Clin Oncol.27(27):4454-4461(2009))。いくつかの薬剤は、単剤の薬剤治療として試験した場合、5~10ヵ月の生存期間中央値を伴う穏やかな活性を示している(Yafi,F.A.et al.,Current Oncol.18(1):e25-e34(2011))。転移性の状況では、症状緩和の選択肢として、ドセタキセルが移行上皮癌を有する患者に投与された(NCCN 2014)。さらに、米国及びカナダの医療団体は、フェーズ2試験からの根拠に基づいて、進行した疾患の治療レジメンとして、ドセタキセルを承認している(WO2016/064649A1)。
【0012】
近年では、尿路上皮癌の治療のための新しい薬剤として、主に以下のものが挙げられる。
【0013】
1.ヨーロッパ連合に初承認された抗PD-L1癌免疫療法医薬品、Rocheのアテゾリズマブ(2016)は、転移性尿路上皮癌の治療に有用である。実験群に割り当てられた患者の客観的寛解率(ORR)は63%であり、一方で化学療法群における患者のORRは21%であった。IMvigor210試験のコホートからの結果では、アテゾリズマブ群において15.9ヵ月の全生存期間(OS)中央値が示された。アテゾリズマブの一般的な有害反応としては、疲労感、食欲低下、悪心、呼吸困難、下痢(18.6%)、発熱、発疹、嘔吐、関節痛、脱力感及び掻痒が含まれた。
【0014】
2.局所進行性または転移性の尿路上皮癌を有する患者用として、米国FDAによって承認された、Bristol-Myers Squibbのニボルマブ(2017)。ニボルマブは、抗PD-1モノクローナル抗体である。臨床データでは、客観的寛解率(ORR)は19.6%であり、治療の継続期間中央値は3.3ヵ月(0~13.4ヵ月の範囲)であり、患者の54%は重篤な有害事象を経験したと示された。少なくとも2%の発生率を伴う、最もよく見られた重篤な有害事象には、尿路感染症、敗血症、下痢、小腸閉塞、及び一般的な健康状態の悪化が含まれた。最も一般的な有害反応としては、疲労感、筋肉痛及び骨痛、悪心及び食欲低下が含まれた。ニボルマブ治療は、有害反応のために患者の17%で中断され、有害反応のために患者の46%で投与が遅延した。肺炎または心血管不全に起因する治療関連死亡が、4例の患者で発生した。
【0015】
3.尿路上皮癌の治療用として米国FDAによって承認された(2018)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)チロシンキナーゼ阻害物質である、Johnson&JohnsonのJanssen製エルダフィチニブ。エルダフィチニブは、腫瘍にFGFR突然変異が存在する、再発/難治性の転移性尿路上皮癌を有する59例の患者において、42%の客観的寛解率(ORR)を有したと、試験結果は示した(Janssen Announces U.S.FDA Breakthrough Therapy Designation for Erdafitinib in the Treatment of Metastatic Urothelial Cancer)。
【0016】
4.術前化学療法/術後補助療法において、または局所的に進行した疾患もしくは転移性疾患の治療において、以前にPD-1/L1阻害剤の治療を受け、白金ベースの化学療法レジメンを受けた、局所進行性または転移性の尿路上皮癌を有する患者用として、米国FDAによって2019年12月に承認されたパドセブ(エンホルツマブ ベドチン)。パドセブ治療が、44%(55/125、95%CI:35.1~53.2)の客観的寛解率、12%(15/125)の完全寛解率、及び7.6ヵ月の寛解期間中央値(0.95~11.3+の範囲)を伴って、大部分の患者の腫瘍を迅速に縮小させたことがデータによって示された。パドセブは、膀胱癌に高発現している細胞表面タンパク質を標的とする、ファーストインクラスのADCである。この医薬品は、ネクチン-4を標的とするヒトIgG1モノクローナル抗体であるエンホルツマブを、細胞毒性薬剤MMAE(モノメチルアウリスタチンE、微小管阻害剤)と複合化することによって調製される。
【0017】
5.中国特許公開第CN105008398Aによって開示された、HER2標的に特異的に結合でき、MMAEである薬剤部分を有する、抗体薬物複合体(すなわち、ジシタマブ ベドチン)。現在、この医薬品は、乳癌を含めた様々なHER2発現(IHC 1+以上)がんの適応症、例えば、胃癌及び尿路上皮癌、ならびにHER2低発現(IHC 2+/FISH-またはIHC 1+)のがんの適応症、例えば、HER2低発現乳癌の治療法として検討されている。2020年9月、米国FDAもまた、HER2発現(IHC 2+またはIHC 3+)局所進行性または転移性の尿路上皮癌の適応症のセカンドライン治療として、ジシタマブ ベドチンに画期的治療薬指定を与えた。
【0018】
現在のところ、転移性尿路上皮癌(mUC)のファーストライン化学療法のORRは約50%であり、外国における、白金不耐性患者のファーストライン治療(EV-103試験)としての、免疫療法と併用したエンホルツマブ ベドチンのORRは、73.3%であることが報告された。
【0019】
特許出願、特許公報、及びUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含む、本明細書において引用されるすべての参考文献は、各個々の参考文献が、参照によって組み込まれることを具体的かつ個々に示されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0020】
本開示は、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)及び免疫チェックポイント阻害剤を用いた、尿路上皮癌患者を治療するための方法及び使用を提供する。これらの方法及び使用は、少なくとも部分的には、本明細書に提示される動物モデル及び臨床データの詳細な分析に基づき、これらの分析は、HER2抗体薬物複合体(ADC)と免疫チェックポイント阻害剤との併用が、尿路上皮癌、特に局所進行性または転移性の尿路上皮癌を有する患者での治療における相乗効果を有し、また既存の標準療法と比較して臨床的利益を有するという出願人の驚くべき発見を示している。ORRは、HER2またはPD-L1の高発現の場合に高くなった。さらに、低いHER2 IHC発現(1+)の患者の場合も、この併用療法は、依然として良好な効能を有した。
【0021】
例えば、ジシタマブ ベドチンとPD-L1抗体との併用は、皮下移植腫瘍HT-29の増殖抑制に相乗効果を有した。さらに、PD-1抗体(トリパリマブ)と併用したジシタマブ ベドチンの臨床試験では、併用療法により、単剤治療のみと比較して、特にPFSに関して向上した患者の結果が得られたことを結果は示した。
【0022】
本明細書において、尿路上皮癌患者を治療するための薬剤の調製における、免疫チェックポイント阻害剤と併用での抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、重鎖可変領域のCDR及び/または軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって抗体に共有結合され、連結部位は抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、細胞毒性分子Uは、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1抗体またはPD-L1抗体である、抗体薬物複合体(ADC)の使用が提供される。
【0023】
本明細書においては、尿路上皮癌患者を治療する方法であって、有効量の抗体薬物複合体(ADC)と免疫チェックポイント阻害剤とを患者に投与することを含み、抗体薬物複合体が、一般式Ab-(L-U)、式中、Abは抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lはリンカーを示し、Uは複合化される細胞毒性分子を示し、nは1~8の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す構造を有し、抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、重鎖可変領域のCDR及び/または軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンとして同一のCDR配列を有し、リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、リンカーは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって抗体に共有結合され、連結部位は抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、細胞毒性分子Uは、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1抗体またはPD-L1抗体である、尿路上皮癌患者を治療する方法もまた提供される。
【0024】
上記すべてのいくつかの実施形態において、患者は、HER2発現が陽性である。上記すべてのいくつかの実施形態において、患者の尿路上皮癌から得られる試料は、HER2陽性である。上記すべてのいくつかの実施形態において、患者の尿路上皮癌から得られる試料は、免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいてHER2陽性である。上記すべてのいくつかの実施形態において、患者の尿路上皮癌から得られる試料におけるHER2発現は、IHC 3+またはIHC 2+である。上記すべてのいくつかの実施形態において、患者は、PD-L1発現またはPD-1発現が陽性である。
【0025】
上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、VH領域は、GYTFTDYY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR1、VNPDHGDS(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHCDR2、及びARNYLFDH(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、VL領域は、QDVGTA(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR1、WAS(配列番号7)のアミノ酸配列を含むLCDR2、及びHQFATYT(配列番号8)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、VH領域は、DYYIH(配列番号31)のアミノ酸配列を含むHCDR1、RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号32)のアミノ酸配列を含むHCDR2、及びARNYLFDHW(配列番号33)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、VL領域は、KASQDVGTAVA(配列番号34)のアミノ酸配列を含むLCDR1、WASIRHT(配列番号35)のアミノ酸配列を含むLCDR2、及びHQFATYT(配列番号8)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体は重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、抗体はマウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である。上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、VH領域は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、VL領域は、DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)のアミノ酸配列を含む。上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体は、ヒトIgG抗体である。上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体は、ヒトIgG1、IgG2及びIgG4抗体である。上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体の重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1であり、抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号2である。
【0026】
上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体薬物複合体は、ジシタマブ ベドチンまたはそのバイオシミラーである。上記すべてのいくつかの実施形態において、抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物抗体比)値は、2~7の任意の数である。上記すべてのいくつかの実施形態において、平均DAR値は、4±0.5である。
【0027】
上記すべてのいくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1抗体である。上記すべてのいくつかの実施形態において、PD-1抗体は、トリパリマブ、ドスタルリマブ、プロルゴリマブ、チスレリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、セミプリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ペンプリマブ、ゲノリムズマブ、ジンベレリマブまたはバルスチリマブである。上記すべてのいくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1抗体である。上記すべてのいくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、エンバフォリマブまたはRC98であるPD-L1抗体である。
【0028】
上記すべてのいくつかの実施形態において、患者は過去に1種以上の前治療、例えば化学療法剤、標的療法、免疫療法、または内分泌療法を受けたことがある。上記すべてのいくつかの実施形態において、尿路上皮癌患者は、外科的に切除できない局所進行性尿路上皮癌を有する患者、局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌を有する患者、HER2陽性尿路上皮癌を有する患者、HER2陽性の局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌を有する患者、または白金ベースの化学療法に耐えることができない尿路上皮癌患者である。上記すべてのいくつかの実施形態において、尿路上皮癌患者は、切除不能な、局所進行性または転移性の尿路上皮癌患者である。上記すべてのいくつかの実施形態において、尿路上皮癌患者は、シスプラチンベースの化学療法に不適格である患者、またはそれを拒否している患者である。上記すべてのいくつかの実施形態において、尿路上皮癌患者は、化学療法後に進行した患者である。上記すべてのいくつかの実施形態において、尿路上皮癌患者は、術前化学療法または術後補助療法としてのシスプラチンベースの化学療法の完了から12ヵ月以内に、疾患の進行を経験した患者である。
【0029】
上記すべてのいくつかの実施形態において、薬剤は、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与される。上記すべてのいくつかの実施形態において、ADCは、1.5mg/kgまたは2.0mg/kgの用量で投与される。上記すべてのいくつかの実施形態において、ADCは、2週間または14日ごとに投与される。
【0030】
上記すべてのいくつかの実施形態において、尿路上皮癌患者への、抗体薬物複合体及び免疫チェックポイント阻害剤の投与は、7.5ヵ月を超える無増悪生存期間(PFS)という結果をもたらす。
【0031】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性の1つ、一部、またはすべてを組み合わせて、本発明の他の実施形態が形成されてもよいことを理解されたい。本発明のこれらの及び他の態様が、当業者には明らかになるであろう。本発明のこれらの及び他の実施形態は、後続の発明を実施するための形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】モノメチルアウリスタチンE
【化1】
(MMAE)の構造の概略図を示す。
【0033】
図2】本開示の構造一般式Ab-(L-U)、式中、nは、それぞれ1、2、3、4、5、6、7及び8であり、Lは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)であり、Uは、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)であり、「-L-U」の構造は次の通りであるという、複合化条件の1つの可能なセット下(Lは、抗体の1つ以上の鎖間ジスルフィド結合部位に、スルフヒドリルコンジュゲーションを介して連結される)での、抗体薬物複合体の例示的な構造を示す概略図である。
【0034】
図3】フェーズII臨床試験において使用される方法の概略である。
【0035】
図4A】RC48-ADC及びJS001を用いた同時治療に対する、患者の奏効のグラフ表示である。患者の全体的な奏効率を示す。
図4B】RC48-ADC及びJS001を用いた同時治療に対する、患者の奏効のグラフ表示である。患者の全体的な奏効率を示す。
図4C】RC48-ADC及びJS001を用いた同時治療に対する、患者の奏効のグラフ表示である。患者の全体的な奏効率を示す。
図4D】RC48-ADC及びJS001を用いた同時治療に対する、患者の奏効のグラフ表示である。患者の無増悪生存期間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
I.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。当該分野の定義及び用語については、専門業者は、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel)を参照することができる。
【0037】
本開示で使用されるアミノ酸の3文字及び1文字のレターコードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載されているとおりである。
【0038】
本開示における、抗体の様々なドメインにおける相補性決定領域(CDR)の決定またはナンバリング方法としては、IMGT及びKabatシステムが挙げられ、これらは当該技術分野においてよく知られている。
【0039】
本開示で使用される「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)及び抗原結合断片が挙げられるが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。本開示で使用される「抗原結合断片」は、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含み、供給源の抗体と同一の結合特異性を保持するのに十分であり、十分な親和性を有する、抗体断片を示す。特に、抗原結合断片は、Fab、F(ab’)、及びF(ab’)2を含み、これらは、ポリペプチドに対して特定の抗原を結合させるために十分な、少なくとも1つの免疫グロブリン断片を含む。上記の断片は、合成によって、または酵素法によって、または無傷の免疫グロブリンの化学的切断によって調製される場合もあれば、組み換えDNA技術を使用することによって遺伝子操作される場合もある。上記断片の生成方法は、当該技術分野では周知である。
【0040】
本開示で使用される、「マウス抗体」という用語は、当該技術分野の知識及び技能に従って調製されるモノクローナル抗体である。調製の過程で、対応する抗原を試験対象に注射した後、所望の配列または機能特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離する。いくつかの実施形態では、マウス抗体またはその抗原結合断片は、マウスのκもしくはλ鎖またはそれらの変種の軽鎖定常領域をさらに含むことができるか、あるいは、マウスIgG1、IgG2、IgG3、またはそれらの変種の重鎖定常領域をさらに含む。
【0041】
本開示で使用される、「キメラ抗体」という用語は、マウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域との融合であり、マウス抗体によって誘導される免疫応答を低減することができる抗体である。キメラ抗体を確立する場合、マウスの特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを最初に確立する。続いて、マウスのハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子のクローンを作り、必要に応じて、ヒト抗体から定常域遺伝子のクローンを作る。マウス可変領域遺伝子とヒト定常領域遺伝子を連結してキメラ遺伝子を形成し、ヒトベクターに挿入する。最後に、キメラ抗体分子を、真核生物の工業系または原核生物の工業系で発現させる。いくつかの実施形態では、キメラ抗体の抗体軽鎖は、さらに、ヒトκ鎖もしくはλ鎖またはそれらの変種の軽鎖定常領域を含む。キメラ抗体の抗体重鎖は、さらに、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、またはそれらの変種の重鎖定常領域を含むことができる。ヒト抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、またはそれらの変種の重鎖定常領域から選択することができ、ヒトIgG2またはIgG4の重鎖定常領域を含む。あるいは、アミノ酸の変異が生じた後にADCC毒性(抗体依存性細胞媒介性細胞毒性)を有しないIgG4が使用される。
【0042】
本開示で使用される、「ヒト化抗体」という用語は、CDRグラフト抗体としても知られ、マウスCDR配列をヒト抗体可変領域フレームワーク(すなわち、異なるタイプのヒト生殖系列抗体フレームワーク配列)にグラフトすることによって生成される抗体を指す。それは、非ヒト抗体に由来するCDR領域を含み、抗体分子の残りは、1つのヒト抗体(または複数のヒト抗体)に由来する。さらに、結合親和性を維持するために、フレームワーク領域(FRとして知られる)セグメントのいくつかの残基を修飾することができる(Jones et al.,Nature,321:522-525,1986、Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536,1988、及びRiechmann et al.,Nature,332:323-327,1988)。本開示によるヒト化抗体またはそれらの断片は、当業者に既知の技術に従って調製され得る(例えば、Singer et al.,J.Immun.150:2844-2857,1992、Mountain et al.,Biotechnol.Genet.Eng.Rev.,10:1-142,1992、またはBebbington et al.,Bio/Technology,10:169-175,1992に記載)。
【0043】
本開示で使用される、平均「DAR」値、すなわち、薬物抗体比は、抗体薬物複合体調製物に含まれる抗体に連結した薬物の数の平均値を指す。
【0044】
本開示で使用される、「スルフヒドリルコンジュゲーション」という用語は、リンカーが抗体上の遊離スルフヒドリル基に共有結合で連結されるコンジュゲーション方法を指す。システインは、抗体内でジスルフィド結合の形で存在しており、IgG抗体には、容易に還元される鎖間ジスルフィド結合が4対存在する。したがって、抗体薬物複合体の調製中に、IgG抗体内の4対の鎖間ジスルフィド結合は、多くの場合還元され、これによって上述の「抗体上の遊離スルフヒドリル基」が産生される。加えて、IgG抗体には4対の鎖間ジスルフィド結合があるため、それらが還元されると、最大8つの遊離スルフヒドリル基が生成されることになる。したがって、IgG抗体は、最大8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位を有することになる。したがって、一般式Ab-(L-U)の抗体薬物複合体のnが1の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の1つの部位に共有結合で連結され得る。同様に、nが2の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の2つの部位に共有結合で連結され得る。nが3の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の3つの部位に連結され得る。nが4の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の4つの部位に共有結合で連結され得る。nが5の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の5つの部位に共有結合で連結され得る。nが6の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の6つの部位に共有結合で連結され得る。nが7の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の7つの部位に共有結合で連結され得る。nが8の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位に共有結合で連結され得る。
【0045】
II.使用及び方法
本開示のある特定の態様は、HER2に結合する抗体薬物複合体(ならびにその方法及び使用)に関する。いくつかの実施形態では、関与する抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)n、式中、Abは、抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体を示し、Lは、リンカーを示し、Uは、複合化された細胞毒性分子を示し、nは、1~8(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8)の整数であり、各抗体に結合される細胞毒性分子の数を示す、構造を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、細胞毒性分子は、アウリスタチンまたはそれらの類似体もしくは誘導体である。アウリスタチンは、天然産物ドラスタチンの誘導体である。例示的なアウリスタチンとしては、ドラスタチン-10、アウリスタチンE、アウリスタチンT、MMAE(N-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-ノルエフェドリン、すなわちモノメチルアウリスタチンE)及びMMAF(N-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニンまたはドバリン(dovaline)-バリン-ドライソロイイン(dolaisoleunine)-ドラプロイン-フェニルアラニン)、AEB(アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸で反応させることにより生成されるエステル)、AEVB(アウリスタチンEをベンゾイル吉草酸で反応させることにより生成されるエステル)、及びAFP(ジメチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニン-p-フェニレンジアミン、すなわちアウリスタチンフェニルアラニンフェニレンジアミン)が挙げられる。WO2015/057699は、MMAEを含むペグ化アウリスタチンについて記載している。使用が企図されるさらなるドラスタチン誘導体は、参照によりいかなる目的に対しても本明細書に組み込まれる米国特許第9,345,785号に開示されている。
【0047】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性分子は、MMAEである。その他の実施形態では、細胞傷害性薬剤は、MMAFである。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される抗体薬物複合体において、抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体またはそれらの機能的断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域のCDR及び/または軽鎖可変領域のCDRは、ジシタマブ ベドチンと同一のCDR配列を有し、リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、細胞毒性分子Uは、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、リンカーLは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって抗体に共有結合で連結され、連結部位は、抗体の鎖間ジスルフィド結合部位である。
【0050】
いくつかの好ましい例では、本開示の抗体薬物複合体は、2~7個の細胞毒性分子と連結された抗体薬物複合体の混合物であり、抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物抗体比)値は、2~7の任意の数であり、より好ましくは、本開示の抗体薬物複合体の平均DAR値は、2、3、4、5、6または7とほぼ等しい。本開示のいくつかの特定の例では、本開示の抗体薬物複合体の平均DAR値は、4±0.5である。
【0051】
より具体的には、本開示の抗体薬物複合体はジシタマブ ベドチンであり、これはHER2標的を標的とする抗体薬物複合体であり、リンカー部分Lは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)であり、細胞毒性分子Uは、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含み、リンカーLは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって抗体に共有結合され、平均DAR値は、4±0.5である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示に関与する抗HER2抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の対応するCDR1~3は、以下の通りである(IMGTナンバリング):
【表1】
【表2】
【0053】
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号3~8で表される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の対応するCDR1~3を含むが、配列番号3~8に対して1、2、または3個の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含む。しかしながら、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号31~35及び8で表される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の、対応するCDR1~3を含むが、配列番号31~35及び8に対して1、2または3個の置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含む。しかしながら、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される抗体薬物複合体における抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であり、好ましくはヒト化モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される抗体薬物複合体における抗HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4をはじめとするIgGであり、より好ましくはIgG1、IgG2及びIgG4である。
【0056】
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/またはVL領域は、DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態においては、VH配列(例えば、配列番号9に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する)は、配列番号9に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号9において置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。ある特定の実施形態では、VL配列(例えば、配列番号10に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する)は、配列番号10に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号10において置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。
【0057】
いくつかの実施形態においては、抗体は、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含み、VH領域は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、VL領域は、DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)のアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示に関与する抗体薬物複合体に含まれる抗体Abの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1に示され、その軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。いくつかの実施形態では、重鎖は、C末端のリジンを除いた配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【化2】
【化3】
【0059】
本発明の使用及び方法のある特定の態様は、免疫チェックポイント阻害剤に関する。例示的なPD-1抗体としては、トリパリマブ、ドスタルリマブ、プロルゴリマブ、チスレリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、セミプリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ペンプリマブ、ゲノリムズマブ、ジンベレリマブ、及びバルスチリマブが挙げられる。例示的なPD-L1抗体としては、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ及びエンバフォリマブが挙げられる。
【0060】
抗体薬物複合体及び免疫チェックポイント阻害剤は、任意の順序で投与されてよい。例えば、抗体薬物複合体及び免疫チェックポイント阻害剤は、逐次的(異なる時間に)に、または同時(同じ時間に)に投与されてよい。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体と免疫チェックポイント阻害剤は、別々の組成物中にある。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体及び免疫チェックポイント阻害剤は、同じ組成物中にある。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の患者は、過去に1種以上の前治療、例えば化学療法剤、標的療法、免疫療法及び内分泌療法を受けたことがある。
【0062】
いくつかの実施形態において、患者は、外科的に切除できない局所進行性尿路上皮癌を有する、局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌を有する、HER2陽性尿路上皮癌を有する、HER2陽性の局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌を有する、または白金ベースの化学療法に耐えることができない患者である。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示の患者は、化学療法が無効であった患者である。
【実施例
【0064】
以下の実施例は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以下の実施例において、特定の条件について特定されていない実験方法は、従来の方法及び条件に従って、または製品の説明書に従って選択される。
【0065】
実施例1:PD-L1抗体と併用したジシタマブ ベドチン(RC48)の相乗的治療効果
使用したPD-L1抗体(RC98)は、WO2021/037007A1に開示されているものであった。重鎖アミノ酸配列は、配列番号21に示され、軽鎖アミノ酸配列は、配列番号22に示されている。抗体の重鎖のCDR1~3配列は、配列番号23~25に示され、抗体の軽鎖のCDR1~3配列は、配列番号26~28に示され、重鎖アミノ酸配列の可変領域は配列番号29に示され、軽鎖アミノ酸配列の可変領域は配列番号30に示される。
【0066】
ヒトPBMCを植え込んだNSGマウス(供給源:Biocytogen jiangsu Co.,Ltd.)の、ヒト大腸癌細胞HT-29(供給源:ATCC)から皮下移植した腫瘍の成長に、相乗的な抑制効果があったかどうかを評価した。
【0067】
方法:2×10個のヒト大腸癌細胞HT-29を、NSGマウスの背中近傍の右腋窩内に播種した。腫瘍体積が約100~300mmに成長したとき、各NSGマウスにおいて、5×10個のヒトPBMCを静脈内に植え込んだ。翌日、腫瘍体積に従ってマウスを無作為に4群に分け、対照(生理食塩液)群、RC98(10mg/kg)群、RC48-ADC(2mg/kg)群、RC98(10mg/kg)とRC48-ADC(2mg/kg)との併用投与群と名づけ、各群には5匹の実験動物を有した。対照(生理食塩液)群のマウスには、1週間に1回、合計2回、生理食塩液注射を静脈内投与した。RC98群のマウスには、1週間に2回、合計8回、腹膜内に投薬した。RC48-ADC群のマウスには、1週間に1回、合計2回の投薬で、静脈内に投薬した。RC98とRC48-ADCとの併用投与群では、RC98を1週間に2回、合計8回、マウスの腹膜内に投与し、RC48-ADCを1週間に1回、合計2回、静脈内に投与した。RC48-ADCとRC98との併用が、HT-29皮下移植腫瘍の成長に相乗的な抑制効果を有したかどうかを、2種の薬剤が相乗効果を有するかどうかを算出するための式:Q=P0/[P(A)+P(B)-P(A)P(B)]に基づいて評価した。
【表3】
【0068】
結果:(1)試験の間、動物の各群において、薬剤関連の体重損失は見いだされなかった。(2)腫瘍体積測定の結果により、RC98群またはRC48-ADC群と対照群との間に、統計的差はなく(P>0.05)、併用投与群と対照群との間の統計的差は極めて重大であった(P<0.01)と示された。(3)腫瘍塊検出の結果は、RC98群またはRC48-ADC群と対照群との間に統計的差はなく(P>0.05)、腫瘍抑制率(TGITW%)は、それぞれ3%及び18%であったことを示した。併用投与群と対照群との間の統計的差は極めて重大(P<0.01)であり、腫瘍抑制率(TGITW%)は、41%であった。(4)2種の薬剤間に、相乗効果であるQ値が存在したかどうかを計算するための式:Q=P0/[P(A)+P(B)-P(A)P(B)]に基づき、効果指数として相対腫瘍抑制率(TGIRTV)を用いた場合は、Q=1.5と算出され、または効果指数として腫瘍抑制率(TGITW)を用いた場合は、Q=2.0と算出された。
【0069】
結論:RC98とRC48-ADCとの併用は、ヒトPBMCを植え込んだNSGマウスの、ヒト大腸癌細胞HT-29から皮下移植した腫瘍に有意な抑制効果を有した。2つの異なる効果指数を用いて算出したQ値は、両方とも1.2を超えた。RC98とRC48-ADCとの併用は、HT-29皮下移植腫瘍の増殖抑制に相乗効果を有すると結論付けることができる。
【0070】
実施例2:PD-1抗体(トリパリマブ、JS001)と併用したジシタマブ ベドチン(RC48)を用いた治療の臨床試験:中間解析
抗PD-1モノクローナル抗体(トリパリマブ、JS001)と併用したRC48を使用して、ファーストライン治療における白金ベースの化学療法に耐えられない患者を含む、mUCを治療した。
【0071】
トリパリマブの重鎖アミノ酸配列は配列番号11に示され、トリパリマブの軽鎖アミノ酸配列は配列番号12に示されている。抗体の重鎖のCDR1~3配列は、配列番号13~15に示され、抗体の軽鎖のCDR1~3配列は、配列番号16~18に示され、重鎖アミノ酸配列の可変領域は配列番号19に示され、軽鎖アミノ酸配列の可変領域は配列番号20に示される。
主な選択基準:
・組織学的に切除不能、局所的に進行、または転移性と確認され、
・術前化学療法またはシスプラチンベースの術後補助化学療法の完了後12ヵ月以内に、少なくとも1回の前全身性化学療法レジメンを用いた治療後、進行が遅く、シスプラチンベースの化学療法に耐えることができない、及び
・ECOGパフォーマンスステータスが0~1である尿路上皮癌。
投薬計画:
・RC48 2.0mg/kg+JS001 3mg/kg Q2W(n=3)
・RC48 2.0mg/kg+JS001 3mg/kg Q2W(n=13)
・RC48 1.5mg/kg+JS001 3mg/kg Q2W(n=3)
【表4】
【0072】
治療結果:合計19例の患者が少なくとも1回の治療薬投与を完了し、17例の患者が少なくとも1回の効能評価を完了した。結果は、客観的寛解率(ORR)が94.1%(16例/17例)であり、そのうち3例の患者は完全寛解を達成し、13例は部分的な寛解を達成したことを示した。試験治療を受けた19例の患者において、報告された最も一般的なTRAEは、食欲不振(15例、79.0%)、疲労感(13例、68.4%)、ALT/ASTの上昇(11例、57.9%)及び末梢性感覚ニューロパチー(11例、57.9%)であった。HER2発現患者(HER2 1+、2+または3+)においては、ORRは100%に到達した。
【0073】
実施例3:PD-1抗体(トリパリマブ、JS001)と併用したジシタマブ ベドチン(RC48)を用いた治療の臨床試験
本実施例は、追加の参加者の登録後のデータ解析に加えて、実施例2に記載した臨床試験に関してさらなる詳細を含む。
【0074】
転移性尿路上皮癌の予後は不良であり、局所進行性または転移性の尿路上皮癌(la/mUC)の5年生存率は、約15%である。ファーストラインのシスプラチン化学療法に耐えられない、または白金療法が無効であった患者のための、満たされていない臨床的ニーズが依然として存在する。画期的治療、例えば、単独療法としての抗体薬物複合体(ADC)及び免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、有望な効能結果を達成してきたが、新規の療法または有効な併用療法に対するニーズは満たされていないままである。
【0075】
前臨床試験により、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)に連結されたADCが、免疫原性細胞死(ICD)を誘発し、樹状細胞(DC)の成熟及び活性化に対して直接的な効果を有し、これによって抗腫瘍免疫が増強され得ることが示された。最近のフェーズII試験では、HER2陽性の局所進行性または転移性の尿路上皮癌の治療において、2種の組み換えヒト化抗HER2モノクローナル抗体-MMAE化合物(以下、まとめて「RC48-ADC」と示した)を評価し、この試験は肯定的な効能及び安全性の結果を示した。NCT03507166試験では、RC48-ADCが、HER2が過剰発現した(IHC 2+/3+)la/mUCのセカンドライン治療であり、cORRは51.2%であり、mPFSは6.9ヵ月であり、mOSは、13.9ヵ月であった。第2のRC48-ADC化合物を評価するNCT03809013試験では、RC48-ADCが、HER2が過剰発現した(IHC 2+/3+)la/mUCのセカンドライン治療であり、cORRは50.0%であり、mPFSは5.1ヵ月であり、mOSは14.2ヵ月であった。これらの試験後に、RC48-ADC化合物は、FDA及びCDEによって画期的治療薬として承認された。
【0076】
la/mUCのセカンドライン治療としての、トリパリマブ(JS001)として知られている抗PD-1モノクローナル抗体の効能及び安全性を評価する別の臨床試験である、POLARIS-03試験(NCT03113266)では、cORRが26%、mPFSが2.3ヵ月、mOSが14.4ヵ月であったと示された。
【0077】
本実施例に記載した試験は、記載したRC48-ADCとJS001との併用療法モデルの臨床的関連性を確立するように、特に進行性または転移性の尿路上皮癌を有する患者における、RC48-ADCとJS001との併用療法の安全性及び薬物動態を評価するように設計した。
【0078】
方法
JS001と併用したRC48-ADC化合物を、3.0mg/kgのJS001及び1.5mg/kgまたは2.0mg/kgのRC48-ADCでの、隔週(Q2W)の注射として、n=3例の患者に、いかなる初期の安全性の懸念も評価するための3+3用量漸増フェーズII臨床試験において投与した。RC48-ADCの推奨のフェーズII用量(RP2D)は、標準的な承認されたJS001の3mg/kgでの用量と併用した、RC48-ADCの最初の6例の患者の安全性導入期によって、2mg/kgと決定した。続いて、合計でn=35例の患者が、2.0mg/kgのRC48及び3mg/kgのJS001との併用をQ2Wで受け、拡大過程においては、合計n=41例の登録された患者が受けた。患者の特性を、以下の表5に報告する。患者をモニターして、用量制限毒性(DLT)が発生していないことを確認した。後述のように同時治療の安全性及び効能プロファイルを分析するために、大部分の評価項目について最大12ヵ月間、及び客観的奏効率(ORR)を評価するために60週間、患者を追跡した。図3は、この臨床試験で使用した試験方法の概要を示す。
【0079】
含まれる選択基準:
(a)年齢(≧18歳)、
(b)性別(すべて)、
(c)白金未実施及びシスプラチンが不適格である、または少なくともファーストラインの標準的全身性化学療法後に進行した(術前/術後補助療法の12ヵ月以内の進行を含む)、局所進行性または転移性の悪性尿路上皮癌を有する患者、
(d)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)が0または1、
(e)以下基準によって定義される、適切な器官機能の実証:
(i)好中球絶対数(ANC)≧基準上限値(ULN)1.0倍、またはCrCl<60mL/分、
(ii)血小板≧100×10/L、
(iii)総血清クレアチニン≦ULNの1.5倍、
(iv)肝機能異常が、根底にある悪性腫瘍に起因する場合は、血清アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)及び血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)≦ULNの2.5倍、またはAST及びALT≦ULNの5倍;正常な血清クレアチニン、
(v)左心室駆出率(LVEF)≧50%
(vi)ヘモグロビン≧9g/dL。
【0080】
含まれる除外基準:
(a)RC48-ADCもしくはJS001またはそれらの構成成分へのアレルギー、
(b)試験治療開始の3週間以内に、化学療法、放射線療法、免疫療法、またはその他の臨床試験治療をはじめとする抗がん治療を受けた、
(c)脱毛症を除き、過去の抗がん治療からの未解決の毒性がある、
(d)HER2-ADC及び/または抗PD-1もしくは抗PD-L1もしくは抗PD-L2療法での過去の治療、
(e)試験薬物の初回投与の4週間以内に大手術を受け、完全に回復していない、
(f)試験薬物の初回投与の4週間以内にワクチンを受けた、
(g)試験開始日に、または過去6ヵ月以内に、臨床的に有意な心血管疾患が活動状態である、
(h)解決した/治療可能ながん、例えば基底皮膚癌(basal skin cancer)または扁平上皮細胞皮膚癌を除いて、試験薬物を受ける前の3年以内の、その他の新生物疾患の既往歴、
(i)中枢神経系(CNS)への転移及び/または脳軟膜転移癌、ただし転移またはCNS及び/または脳軟膜転移癌の治療を受け、少なくとも3ヵ月間疾患が安定し、試験治療の初回投与の4週間以内に進行の根拠がない患者を除く、
(j)新規または拡大した転移の根拠、
(k)試験治療の初回投与の4週間以内に、放射線療法、手術またはステロイド治療で治療した、
(l)同種異系の造血幹細胞移植または臓器移植の既往歴、
(m)試験治療の初回投与以前、過去2年以内に、全身性ステロイド治療を受けた、
(n)HIV検査が陽性である、
(o)活動性のB型肝炎もしくはC型肝炎ウイルス(HBVもしくはHCV)または結核への感染、
(p)研究者の判断に従って臨床的に重大であると見なされるその他の障害が陽性である、及び
(q)必要とされるすべての試験評価及び手順に参加する意思がない、または参加できない。
【0081】
主要評価項目には、患者への推奨される用量を特定するために、RC48-ADC及びJS001併用療法の安全性及び忍容性の解析が含まれた。この評価項目には、用量制限毒性(DLT)及び有害事象(AE)のアセスメントが含まれた。
【0082】
副次評価項目には以下が含まれた:
(a)客観的奏効率(ORR)、
(b)無増悪生存期間(PFS)、
(c)全生存期間(OS)、及び
(d)薬物動態(PK)の特性評価。
【表5】
【0083】
安全性
RC48-ADCとJS001との併用療法は、la/mUCを有する患者において、有望な有効性とともに、忍容性が良好であると示された。実際、治療に関連する有害事象(TRAE)のほとんどは、グレード1~2であり、最も一般的に起こったのは、食欲不振及び高トリグリセリド血症であった。表6~7では、この試験からの安全性の結果を提供する。試験治療を受けている41例の患者のうち、最も一般的に報告されたTRAEは、ASTの上昇(65.9%)及びALTの上昇(63.4%)、末梢性感覚ニューロパチー(63.4%)、無力症(58.5%)、食欲低下(56.1%)、高トリグリセリド血症(56.1%)、及びγ-グルタミルトランスフェラーゼの上昇(51.2%)であった。報告されたグレード3以上のTRAEとしては、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(12.2%)及びALT(7.3%)の上昇、無力症(7.3%)ならびに高トリグリセリド血症(7.3%)が含まれた。免疫関連肺臓炎、間質性肺疾患、肝炎、筋炎、高血糖及び発疹などの免疫関連有害事象(irAE)は、16例の患者で報告された。
【表6】

【表7】
【0084】
有効性
この試験の41例の患者のうち、39例の患者が少なくとも2回の腫瘍評価を受け、これにより、下記の表8に記載されているように、3例の患者での完全奏効(7.7%)及び25例の患者での部分奏効(64.1%)を含み、全患者の確定ORRが71.8%(95%CI:55.1、85)であり、DCRが92.3%(95%CI:79.1、98.4)であったことが示された。治療前のla/mUC患者のcORRは、73.9%であった。la/mUC患者において、HER2発現(IHC 1+、IHC 2+、IHC 3+)の場合のcORRは、77.8%であった。HER2(3+)、HER2(2+)、HER2(1+)及びHER2(0)である患者についてのORRは、下記表9に示すように、それぞれ、100%、77.8%、66.7%及び50%であった。ORRは、HER2またはPD-L1の高発現の場合に高くなった。対応するORRは、PD-L1 CPS≧1を有する患者、及びCPS<1の患者の50%で、91.7%であった。同様に、mPFSは9.2ヵ月であり、mOSには達しなかった。
【0085】
図4A~Bは、RC48-ADCとJS001との併用療法を受けている患者における、測定したベースラインからの標的病変の変化率を示す。図4Aでは、HER2ステータスがIHCグレードを示す。図4Bでは、患者標的病変の直径の合計を、500日までの時間の経過とともに、変化率について分析した。図4Cは、RC48-ADCとJS001との併用療法の効能を、cORRによって、時間の経過とともに示し、また各部分群及び個人の奏効評価にさらに細分化した、奏効の継続期間を示す。図4Dは、この試験に登録した患者における、経時的な無増悪生存期間の割合を示す。まとめると、これらの結果は、RC48-ADCとJS001との併用療法が、単剤治療のみと比較して、特にPFSに関して、向上した患者結果を生み出したと示している。
【表8】
【表9】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
【配列表】
2024519907000001.app
【国際調査報告】