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特表2024-519928ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、および物品を形成する方法
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  • 特表-ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、および物品を形成する方法 図1
  • 特表-ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、および物品を形成する方法 図2
  • 特表-ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、および物品を形成する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、および物品を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20240514BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240514BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20240514BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20240514BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20240514BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20240514BHJP
   C23F 13/02 20060101ALI20240514BHJP
   C23F 13/14 20060101ALI20240514BHJP
   C23F 13/10 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C22C21/00 J
B32B15/01 B
B23K35/28
C22C21/00 E
C22C21/10
B23K35/22 310E
C22C21/06
C23F13/02 A
C23F13/14
C23F13/02 E
C23F13/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571995
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2022071814
(87)【国際公開番号】W WO2022246353
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,362
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520119242
【氏名又は名称】アーコニック テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケイト・ジェイ・バイテンミラー
(72)【発明者】
【氏名】ハリー・アール・ゾンカー
(72)【発明者】
【氏名】バオルート・レン
【テーマコード(参考)】
4F100
4K060
【Fターム(参考)】
4F100AB02A
4F100AB02B
4F100AB02C
4F100AB09A
4F100AB09B
4F100AB09C
4F100AB10A
4F100AB10B
4F100AB10C
4F100AB10D
4F100AB11A
4F100AB11B
4F100AB11C
4F100AB12B
4F100AB12C
4F100AB13A
4F100AB13B
4F100AB13C
4F100AB14A
4F100AB14B
4F100AB14C
4F100AB17B
4F100AB17C
4F100AB18A
4F100AB18B
4F100AB18C
4F100AB19B
4F100AB20C
4F100AB31A
4F100AB31B
4F100AB31C
4F100AB31D
4F100AB40C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100EJ91B
4F100EJ91E
4F100GB51
4F100YY00B
4F100YY00E
4K060AA02
4K060BA13
4K060BA43
4K060EA04
(57)【要約】
ブレージングシート、ブレージングシートから形成されるか、それを含む物品、および物品を形成する方法が提供される。ブレージングシートは、基材層、基材層上に配置されたインターライナー層、およびインターライナー層上に配置されたブレージング層を含む。基材層およびブレージング層は、アルミニウム合金を含む。インターライナー層は犠牲陽極として作用し、基材層はブレージングシート内のガルバニック回路の陰極として作用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレージングシートであって、
アルミニウム合金を含む基材層、
前記基材層上に配置されたインターライナー層であって、前記インターライナー層が、重量パーセントで、
0.05~1.0のマグネシウム、
0.5~5.0の亜鉛、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物を含む、アルミニウム合金を含む、インターライナー層、ならびに
4XXX系アルミニウム合金を含むブレージング層であって、前記インターライナー層上に配置されたブレージング層を含み、
ただし、前記インターライナー層が犠牲陽極として作用し、前記基材層が前記ブレージングシート内でガルバニック回路の陰極として作用する、ブレージングシート。
【請求項2】
前記インターライナー層が、重量パーセントで、1.5~3.0の亜鉛を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項3】
前記インターライナー層が、重量パーセントで、2.0~5.0の亜鉛を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項4】
前記インターライナー層が、重量パーセントで、2.0~5.0超の亜鉛を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項5】
前記インターライナー層中の亜鉛とマグネシウムの重量パーセント濃度の合計が、2.0~6.0である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項6】
前記インターライナー層が、重量パーセントで、
0.1~1.0のシリコン、
0~0.10の銅、
0~0.5のジルコニウム、
0~0.8の鉄、
0~0.5のマンガン、
2.0~5.0の亜鉛、
0.1~1.0のマグネシウム、
0~0.3のチタン、
0~0.05のクロム、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物、を含むアルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項7】
前記インターライナー層が、前記基材層と前記ブレージング層に対する前記ガルバニック回路の犠牲陽極として作用する、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項8】
前記基材層、前記インターライナー層、および前記ブレージング層が互いに結合される、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項9】
前記ブレージング層が、前記基材層の第一の側面上に配置された第一のブレージング層であり、
第二のブレージング層が、前記基材層の前記第一の側面の反対側の前記基材層の第二の側面上に配置され、前記第二のブレージング層が、4XXX系アルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項10】
前記インターライナー層が、前記第一のブレージング層と前記基材層の前記第一の側面の中間に配置された第一のインターライナーであり、
第二のインターライナー層が、前記第二のブレージング層と前記基材層の前記第二の側面の中間に配置される、請求項9に記載のブレージングシート。
【請求項11】
前記ブレージングシートが、前記第一のブレージング層、前記第二のブレージング層、前記基材層、および前記インターライナー層からなる、請求項9に記載のブレージングシート。
【請求項12】
前記インターライナー層が、前記ブレージングシートの合計厚さの8%~30%の厚さを含む、請求項9に記載のブレージングシート。
【請求項13】
前記インターライナー層が、前記ブレージングシートの合計厚さの15%~30%の厚さを含む、請求項11に記載のブレージングシート。
【請求項14】
前記基材層が、1XXX系アルミニウム合金、3XXX系アルミニウム合金、または6XXX系アルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項15】
前記ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つに好適である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項16】
前記ブレージング層が、重量パーセントで、
5~15.0のシリコン、
0~2.5のマグネシウム、
0~1.0の鉄、
0~1.5の亜鉛、
0~0.5の銅、
0~2.0のモリブデン、
0~0.3のマンガン、
0~0.2のチタン、
0~0.4のビスマス、
0~0.01のクロム、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物、を含むアルミニウム合金である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項17】
前記基材層が、重量パーセントで、
0.1~1.0のシリコン、
0~1.0の鉄、
0~1.2の銅、
0.8~1.9のマンガン、
0.05~1.2のマグネシウム、
0~0.10のクロム、
0~0.10の亜鉛、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物を含み、
ただし、チタンとジルコニウムの重量パーセントの合計が、0.10~0.30である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項18】
前記基材層が均質化される、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項19】
請求項1に記載のブレージングシートの全体または一部を含む構造要素を備える、熱交換器。
【請求項20】
請求項11のいずれかのブレージングシートの全体または一部を含む構造要素を含む熱交換器であって、前記第一のブレージング層が、前記熱交換器内の流体経路と接触している、熱交換器。
【請求項21】
前記熱交換器が、オオヤマ川(Oyama River)水溶液を少なくとも600時間連続通水した場合に耐食性を有する、請求項19に記載の熱交換器。
【請求項22】
物品を形成する方法であって、方法が、
第一の材料を含む第一の部分を、請求項1に記載の前記ブレージングシートの全体または一部を含む第二の部分と接触させること、および
前記第一の部分を、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって前記第二の部分と連結すること、を含む、方法。
【請求項23】
前記第一の材料が、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記物品が熱交換器である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレージングシートと、ブレージングシートから形成された物品、もしくはブレージングシートを含む物品と、物品を形成する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、積み重ねられた特別に設計された金属プレートから形成され得る。これらのプレート型熱交換器は、プレートの両側で二つの流体を循環させることによって機能し、流体間の熱交換を可能にする。プレート型熱交換器が許容可能な耐食性を有することを確実にするために、装置は、プレート間の接合部に沿った、およびプレートを形成するために使用されるシート材料の厚さを通した腐食攻撃に抵抗するように設計されてもよい。プレート型熱交換器における腐食攻撃に対する耐性を高めることは、大きな課題を提示する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示による一つの非限定的な態様は、基材層、基材層上に配置されたインターライナー層、およびインターライナー層上に堆積れたブレージング層を含むブレージングシートを対象とする。基材層はアルミニウム合金を含み、ブレージング層は4XXX系アルミニウム合金を含む。インターライナー層は、インターライナー層の総重量に基づく重量パーセントで、0.05~1.0のマグネシウム、0.5~5.0の亜鉛、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。インターライナー層は犠牲陽極として作用し、基材層はブレージングシート内のガルバニック回路の陰極として作用する。
【0004】
本開示によるさらなる非限定的な態様では、ブレージングシートのインターライナー層は、インターライナー層の総重量に基づく重量パーセントで、1.5~3.0の亜鉛、2.0~5.0mの亜鉛、または2.0~5.0超の亜鉛を含む。特定の非限定的な実施形態では、インターライナー層中の亜鉛とマグネシウムの重量パーセント濃度の合計は、2.0~6.0である。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層は、インターライナー層の総重量に基づく重量パーセントで、0.1~1のシリコン、0~0.10の銅、0~0.5のジルコニウム、0~0.8の鉄、0~0.5のマンガン、2.0~5.0の亜鉛、0.05~1のマグネシウム、0~0.3のチタン、0~0.05のクロム、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。特定の非限定的な実施形態では、インターライナー層は、基材層およびブレージング層に対するガルバニック回路の犠牲陽極として作用する。様々な非限定的な実施形態において、基材層、インターライナー層、およびブレージング層は、互いに結合される。特定の非限定的な実施形態では、ブレージングシートの基材層は、1XXX系アルミニウム合金、3XXX系アルミニウム合金、または6XXX系アルミニウム合金を含む。例えば、基材層は、基材層の総重量に基づく重量パーセントで、0.1~1.0のシリコン、0~1.0の鉄、0~1.2の銅、0.8~1.8のマンガン、0.05~1.2のマグネシウム、0~0.10のクロム、0~0.10の亜鉛、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含み得、チタンとジルコニウムの重量パーセント濃度の合計は0.10~0.30である。様々な非限定的な実施形態では、基材層は均質化される。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシートは、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つに適した構造を有する。様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層は、ブレージング層の総重量に基づく重量パーセントで、5.0~15.0のシリコン、0~2.5のマグネシウム、0~1.0の鉄、0~1.5の亜鉛、0~0.5の銅、0~2.0のモリブデン、0~0.3のマンガン、0~0.2のチタン、0~0.4のビスマス、0~0.01のクロム、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。
【0005】
本開示によるさらなる非限定的な態様は、基材層、基材層上に配置されたインターライナー層、インターライナー層および基材層の第一の側面上に配置された第一のブレージング層、ならびに基材層の第一の側面の反対側の基材層の第二の側面上に配置された第二のブレージング層を含む、ブレージングシートを対象とする。基材層はアルミニウム合金を含み、第一のブレージング層は4XXX系アルミニウム合金を含み、第二のブレージング層は4XXX系アルミニウム合金を含む。インターライナー層は、インターライナー層の総重量に基づく重量パーセントで、0.05~1.0のマグネシウム、0.5~5.0の亜鉛、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。インターライナー層は犠牲陽極として作用し、基材層はブレージングシート内のガルバニック回路の陰極として作用する。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシートは、第一のブレージング層、第二のブレージング層、基材層、およびインターライナー層からなる。特定の非限定的な実施形態では、インターライナー層は、ブレージングシートの合計厚さの8%~30%の厚さ、またはブレージングシートの合計厚さの15%~30%の厚さを含む。
【0006】
本開示による追加の非限定的な態様は、本開示によるブレージングシートのすべてまたは一部分を含む構造要素を備える熱交換器を対象とする。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシートの第一のブレージング層は、熱交換器内の流体経路と接触する。特定の非限定的な実施形態では、熱交換器は、オオヤマ川(Oyama River)水溶液で少なくとも600時間の連続通水に供されたときも故障しない。
【0007】
本開示によるなお別の非限定的な態様は、物品を作製する方法を対象とする。方法は、第一の材料を含む第一の部分を、本開示によるブレージングシートのすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることを含む。方法はさらに、第一の部分を、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって第二の部分に結合することを含む。方法の様々な非限定的な実施形態では、第一の材料はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。方法の特定の非限定的な実施形態では、物品は熱交換器である。
【0008】
当然のことながら、本明細書に開示および記載された発明は、本概要に要約される態様に限定されない。読者は、本明細書による様々な非限定的かつ非網羅的な態様の以下の詳細な説明を考慮すると、前述の詳細ならびに他の詳細を理解するであろう。
【0009】
実施例の特徴および利点、ならびにそれらを達成する方法は、以下の説明を添付図面とともに参照することによって、より明らかになり、実施例はよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示によるブレージングシートの非限定的な一実施形態の概略側面図である。
図2図2は、本開示によるブレージングシートの非限定的な代替的一実施形態の概略側面図である。
図3図3は、ブレージングシートから物品を形成するための本開示による方法の非限定的な一実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載の例示は、特定の実施形態を一つの形態で例示し、このような例示は、いかなる様態においても、添付の特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0012】
様々な実施形態が本明細書に記載および図示されていて、開示された物品および方法の構造、機能、使用の全体的な理解を提供する。本明細書に記載および図示された様々な実施形態は、非限定的かつ非網羅的である。それ故に、本発明は、本明細書に開示の様々な非限定的かつ非網羅的な実施形態の記載によって限定されない。むしろ、本発明は特許請求の範囲によってのみ定義される。様々な実施形態に関連して例示および/または記載される特徴および特性を、他の非限定的な実施形態の特徴および特性と組み合わせることができる。そのような修正および変形は、本明細書の範囲内に含まれることが意図されている。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に明示的もしくは本質的に記述される、またさもなくば明示的もしくは本質的に支持される任意の特徴または特性を列挙するように修正され得る。さらに、出願人は、特許請求の範囲を補正して、先行技術に存在する可能性のある機能または特徴を肯定的に放棄する権利を留保する。本明細書に開示および記載の様々な実施形態は、本明細書に様々に記載の特徴および特性を含む、それらからなる、またはそれから本質的になることができる。
【0013】
本明細書における「様々な実施形態」、「一部の実施形態」、「一つの実施形態」、「一実施形態」、または同様の語句への言及は、実施例に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。それ故に、本明細書中の語句「様々な実施形態において」、「一部の実施形態において」、「一つの実施形態において」、「一実施形態において」、または類似の語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の記載された特徴、構造、または特性は、一つ以上の実施形態において任意の適切な様態で組み合わせられうる。それ故に、一つの実施形態に関連して図示または記載された特定の特徴、構造、または特性は、全体的にまたは部分的に、限定されることなく、一つ以上の他の実施形態の特徴、構造、または特性と組み合わされうる。そのような修正および変形は、本実施形態の範囲内に含まれることが意図されている。
【0014】
本開示による合金の様々な非限定的な実施形態は、随意に、例えば、合金の製造を補助し、および/または合金の一つ以上の特性もしくは特徴を改善し得る、付随元素の意図的な追加を含む。例えば、本開示による合金の特定の非限定的な実施形態は、一つ以上の粒微細化要素、および一つ以上の脱酸化要素の意図的な付随的添加を含み得る。様々な非限定的な実施形態では、本開示による合金中の付随元素の総濃度は、合金の総重量に基づいて1重量パーセントを超えないことが好ましく、任意の単一の付随元素の濃度は、合金の総重量に基づいて0.2重量パーセントを超えないことが好ましい。例えば、ビスマスは、ろう材の金属溶融流を補助するために、0~0.2重量パーセントの範囲で本開示の合金に添加され得る。
【0015】
本開示による合金の様々な非限定的な実施形態は、不純物を含み得る。本明細書で使用される場合、「不純物」は、本開示による合金中に比較的少量の濃度で存在し得るが、合金の特性または特徴に影響を与えるために意図的に添加されない材料である。例えば、本開示による合金中の不純物は、例えば、供給材料中の不可避または意図しない存在、溶融および精製中の大気からの混入、処理装置との接触による汚染に起因して、微量の濃度で存在し得る。様々な非限定的な実施形態では、本開示による合金中の不純物の総濃度は、合金の総重量に基づいて0.15重量パーセントを超えないことが好ましく、任意の単一の不純物の濃度は、合金の総重量に基づいて0.05重量パーセントを超えないことが好ましい。
【0016】
ブレージングされた継ぎ目は、基材層の組成と、基材層(例えば、ブレージング層またはインターライナー層)に連結された(例えば、ガルバニック結合された)材料の組成との間のガルバニック差に起因して、ガルバニック腐食の影響を受けやすい。本明細書で使用される「ガルバニック差」とは、ある領域(例えば、層)と別の領域との間の腐食電位差を意味する。腐食電位は、ASTM G69-20(2020年5月)に従って測定され得る。領域間の腐食電位差は、領域の組成の差に起因し得る。特定の機構または理論に束縛されるものではないが、本開示による一部の非限定的な実施形態では、腐食電位差を有する二つの領域が互いに連結されていて、電解質の存在下にある場合、一方の領域はガルバニック回路の陽極として働き、他方の領域はガルバニック回路の陰極として働く。本明細書で使用される「陽極」または「陽極の」とは、別の領域よりも陰電性である組成物を有する領域を指す。本明細書で使用される「陰極」または「陰極の」とは、別の領域よりも陰電性の低い組成物を有する領域を指す。
【0017】
熱交換器は、多くの場合、ブレージングプロセスを利用して互いに連結される積み重ねられたプレートを使用して設計される。プロセスは、プレート間の小さなギャップの生成をもたらし、二つの流体(例えば、オイルおよび冷却剤)がプレートの両側で循環して、所望の冷却をもたらすことを可能にする。ブレージングされた継ぎ目の耐食性を改善するために、またそれによって、熱交換器など、ブレージングされた継ぎ目を含む物品の動作寿命を延ばすために、本開示は、基材層および基材層上に配置されたブレージング層を含むブレージングシートを提供し、インターライナー層は犠牲陽極として働き、ブレージング層はブレージングシート内のガルバニック回路の陰極として働く。このようにして、腐食攻撃はブレージングシートのインターライナー層に向けられる。様々な非限定的な実施形態では、陽極構成の結果として増大する腐食率に適応するため、インターライナー層の厚さを、典型的なインターライナー層と比較して増加させ得る。それ故に、本明細書に提供されたブレージングシートの非限定的実施形態は、ブレージングシートから作製された、またはブレージングシートを組み込む物品の腐食性能の向上および動作寿命の延長を提供することができる。
【0018】
図1を参照すると、本開示によるブレージングシート100の一つの非限定的な実施形態が提供される。ブレージングシート100は、基材層102、基材層102上に配置されたブレージング層104、および基材層102とブレージング層104の中間に配置されたインターライナー層106を備える。様々な非限定的な実施形態では、基材層102、インターライナー層106、およびブレージング層104は、互いに結合される。ブレージングシート100は、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つでの使用に適した組成および厚さを有することができる。
【0019】
基材層102の耐食性を高めるために、インターライナー層106は、犠牲陽極として作用するように構成され、基材層102は、ブレージングシート100内のガルバニック回路の陰極として作用するように構成される。例えば、インターライナー層106の組成は、基材層106の組成よりも陽極性が高くなり得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106と基材層102との間の腐食電位差は、ASTM G69-20に従って測定すると、少なくとも1mV、例えば、ASTM G69-20に従って測定すると、少なくとも2mV、少なくとも5mV、少なくとも10mV、少なくとも15mV、少なくとも20mV、少なくとも30mV、少なくとも40mV、少なくとも50mV、少なくとも60mV、少なくとも70mV、少なくとも80mV、少なくとも90mV、少なくとも100mV、少なくとも120mV、少なくとも130mV、少なくとも140mV、または少なくとも150mVなどであり得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106と基材層102との間の腐食電位差は、ASTM G69-20に従って測定すると、1000mV以下、例えば500mV以下、250mV以下、150mV以下、または100mV以下であり得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106と基材層102との間の腐食電位差は、ASTM G69-20に従って測定すると、1mV~1000mVの範囲、例えば5mV~500mV、10mV~250mV、または50mV~500mVなどであり得る。
【0020】
特定の非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、基材層102およびブレージング層104に対するガルバニック回路の犠牲陽極として作用するように構成され得る。例えば、インターライナー層106の組成は、ブレージング層104の組成より陽極性が高くてもよく、基材層102の組成よりも陽極性が高くてもよい。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシート100内の層の数にかかわらず、ガルバニック電位の勾配は、インターライナー層106が層の最も高い陽極性であり、基材層102が層の最も高い陰極性であるブレージングシート100内に構成され得る。
【0021】
インターライナー層106が犠牲陽極として作用するように、ブレージングシート100内にガルバニック回路を適切に構成するために、インターライナー層106は、基材層102の組成よりも負の腐食電位を有し、様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層104の組成よりも負の腐食電位を有する組成で構成される。例えば、インターライナー層106は亜鉛(Zn)を含み得、これはインターライナー層106の陰電性の高い腐食電位を生成することができる。特定の非限定的な実施形態では、インターライナー層は、インターライナー層106の総重量に基づく重量パーセントで、少なくとも0.5の亜鉛、少なくとも1.0の亜鉛、少なくとも1.5の亜鉛、少なくとも1.75の亜鉛、少なくとも2.0の亜鉛、2.0超の亜鉛、少なくとも2.1の亜鉛、少なくとも2.2の亜鉛、または少なくとも2.3の亜鉛を含む。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、インターライナー層106の総重量に基づく重量パーセントで、5.0以下の亜鉛、または4.5以下の亜鉛を含み得る。例えば、インターライナー層106は、インターライナー層の総重量に基づく重量パーセントで、0.5~5の亜鉛、または2.0~5.0の亜鉛を含み得る。亜鉛は、例えば、ガルバニック回路の結果としてインターライナー層106に腐食を向け、ガルバニック回路から生じる腐食に対するインターライナー層106の耐食性および耐浸食性を増加させるなど、様々な機能を果たすことができる。
【0022】
さらに、インターライナー層106にマグネシウム(Mg)を含有させることにより、インターライナー層106の腐食電位をより陰電性にし、ブレージングシート100の腐食特性を高めることができる。様々な非限定的な実施形態では、マグネシウムは、ブレージングシート100の耐浸食性を高めることができる。例えば、インターライナー層106は、ブレージングシート100との真空ブレージングを促進するために、例えば、0.35~1.0のマグネシウムまたは0.45~1.0のマグネシウムなどの0.05~1.0重量パーセントのマグネシウムを含み得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、0.05~0.45重量パーセントのマグネシウムを含み、ブレージングシート100との制御された雰囲気ブレージングを促進することができる。
【0023】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、発明者らは、インターライナー層106に亜鉛およびマグネシウムの両方を含むことにより、インターライナー層106の腐食防止と浸食防止の相乗的な改善がもたらされると考えている。これは、次に、ブレージングシート100の腐食がブレージングシート100内に確立されたガルバニック回路の結果として実質的にインターライナー層106に向けられるため、ブレージングシート100の全体的な耐食性および耐浸食性を向上させることができる。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層中の亜鉛とマグネシウムの重量パーセント濃度の合計は、2.0~6.0の範囲であり得る。インターライナー層の亜鉛およびマグネシウムレベルのバランスをとることにより、様々なブレージングプロセスを容易にすることができる。例えば、真空ブレージングを促進するために、より低いレベルの亜鉛(例えば、亜鉛蒸発による)およびより高いレベルのマグネシウム(例えば、酸化アルミニウム形成を阻害するため)を提供することが望ましい場合があり、一方で制御された雰囲気ブレージングを促進するためにより低いレベルのマグネシウムを提供することが望ましい場合がある。
【0024】
様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシート100のインターライナー層106は、例えば、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.1~1.0のマグネシウム、0.5~5の亜鉛、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含む、アルミニウム合金などのアルミニウム合金を含み得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.1~1.0のシリコン、0~0.10の銅、0~0.5のジルコニウム、0~0.8の鉄、0~0.5のマンガン、2.0~5.0の亜鉛、0.1~1.0のマグネシウム、0~0.3のチタン、0~0.05のクロム、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。特定の非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.1~1.0のシリコン、0~0.05の銅、0~0.5のジルコニウム、0~0.8の鉄、0~0.5のマンガン、2.0~5.0の亜鉛、0.1~1.0のマグネシウム、0~0.3のチタン、0~0.05のクロム、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。
【0025】
図1を再び参照すると、ブレージングシート100の基材層102は、例えば1XXX系アルミニウム合金、3XXX系アルミニウム合金、または6XXX系アルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、基材層102は、合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.1~1.0のシリコン、0~1.0の鉄、0~1.2の銅、0.8~1.9のマンガン、0.05~1.2のマグネシウム、0~0.10のクロム、0~0.10の亜鉛、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含み、チタンと亜鉛の合計重量パーセントは、0.10~0.30である。様々な非限定的な実施形態では、基材層102は、合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.1~1.0のシリコン、0~1.0の鉄、0.1~1.0の銅、0.8~1.8のマンガン、0.05~1.2のマグネシウム、0~0.10のクロム、0~0.10の亜鉛、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含み、チタンと亜鉛の合計重量パーセントは、0.10~0.20である。様々な非限定的な実施形態では、基材層102は、基材層102が有利な成形性を示すように、高温熱処理、例えば均質化処理(例えば、華氏900度~華氏1150度または華氏1000度~華氏1140度の間の熱処理)によって処理することができる。例えば、非限定的な実施形態では、基材層は、米国特許7,255,932号に記載の均質化プロセスを使用して処理され、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
図1を参照すると、ブレージングシート100のブレージング層104は、例えば4XXX系アルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層104は、合金の総重量に基づく重量パーセントで、5~15.0のシリコン、0~2.5のマグネシウム、0~1.0の鉄、0~1.5の亜鉛、0~0.5の銅、0~2.0のモリブデン、0~0.3のマンガン、0~0.2のチタン、0~0.4のビスマス、0~0.01のクロム、アルミニウム、随意に付随元素、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。
【0027】
ブレージングシート100内の各層の厚さは、ブレージングシート100から製造されるか、またはブレージングシート100を組み込む物品の所望の構造特性に基づいて構成されることができる。例えば、様々な非限定的な実施形態では、基材層102は、ブレージングシート100の合計厚さ、すなわち、ttotalの50%~85%の範囲内であり得る、第一の厚さtを含み得る。
【0028】
インターライナー層106は、ブレージングシート100の犠牲陽極として構成され得るため、ブレージングシート100の他の層の前に腐食および/または侵食される可能性が高い。したがって、インターライナー層106の厚さを増加させることにより、ブレージングシート100によって形成された物品の腐食および/または浸食による故障に対する抵抗を改善することができる。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、例えば、ブレージングシート100の合計厚さ(ttotal)の少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%、または少なくとも25%など、ブレージングシート100の合計厚さ(ttotal)の少なくとも8%である、第二の厚さtを含み得る。例えば、様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、ブレージングシート100の合計厚さ(ttotal)の8%~30%、8%~18%、12%~30%、12%~18%、15%~25%、15%~30%、18%~30%、または20%~30%の範囲内であり得る第二の厚さtを含み得る。
【0029】
様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層104は、ブレージングシート100の合計厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、第三の厚さtを含み得る。様々な非限定的な実施形態において、第一の厚さtは、第二の厚さtよりも大きく、また第三の厚さtよりも大きい。特定の非限定的な実施形態において、ブレージングシート100の総厚さ(ttotal)は、100μm~5mmの範囲、例えば200μm~1mmの範囲などである。
【0030】
様々な非限定的な実施形態では、本開示によるブレージングシートは、基材層に加えて、インターライナー層、およびブレージング層を含み得る。例えば、図2に概略的に示された非限定的な実施形態を参照すると、ブレージングシート200は、基材層102、インターライナー層106、第一のブレージング層104、および第二のブレージング層204を含む。様々な非限定的な実施形態では、基材層102、インターライナー層106、第一のブレージング層104、および第二のブレージング層204は、互いに結合され、ブレージングシート200を形成する。ブレージングシート200は、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つに好適であり得る。例えば、ブレージングシート200は、ブレージングシート200を制御された雰囲気ブレージングおよび/または真空ブレージングに好適となものとするような組成を有する層を含み得る。ブレージングシート200の犠牲陽極として構成された単一のインターライナー層106を使用すること、および腐食攻撃に十分に適応するインターライナー層106の厚さを提供することにより、ブレージングシート100の全体的な腐食および浸食性能を改善することができる。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシート200は、基材層102に対して犠牲陽極として構成されてもされなくてもよい第二のインターライナー層(図示せず)を含み得る。
【0031】
図2に示す通り、第二のブレージング層204は、基材層102の第二の側面102b上に配置され、第一のブレージング層104は、基材層102の第一の側面102a上に配置される。基材層102の第二の側面102bは、基材層102の第一の側面102aの反対側に配置される。様々な実施形態において、第二のブレージング層204は、第一のブレージング層104に関して本明細書に記載の通りの組成で構成され得る。様々な非限定的な実施形態において、第二のブレージング層204の組成は、第一のブレージング層104の組成と同一でもまたは異なっていてもよい。
【0032】
ブレージングシート200内の各層の厚さは、ブレージングシート200から製造される、またはブレージングシート200の全体または部分を組み込む物品の所望の構造特性に基づいて構成され得る。例えば、様々な非限定的な実施形態では、基材層102は、ブレージングシート100の合計厚さ、すなわち、ttotalの50%~85%の範囲内であり得る、第一の厚さtを含み得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナー層106は、例えば、ブレージングシート100の合計厚さ(ttotal)の少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%、または少なくとも25%など、ブレージングシート100の合計厚さ(ttotal)の少なくとも8%である、第二の厚さtを含み得る。例えば、インターライナー層106は、ブレージングシート100の合計厚さ(ttotal)の8%~30%、8%~18%、12%~30%、12%~18%、15%~25%、15%~30%、18%~30%、または20%~30%の範囲内であり得る第二の厚さtを含み得る。様々な非限定的な実施形態において、第一のブレージング層104および第二のブレージング層204は、ブレージングシート200の合計厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、組み合わせた厚さt+tを含み得る。特定の非限定的な実施形態において、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)は、100μm~5mmの範囲、例えば200μm~1mmの範囲などである。
【0033】
様々な非限定的な実施形態において、例えば、熱交換器などの物品は、本開示によるブレージングシートの全体または一部を含む構造要素を含み得る。様々な非限定的な実施形態では、熱交換器または他の物品は、ブレージングシート100の全体もしくは一部、および/またはブレージングシート200の全体もしくは一部を含む構造要素を含み得る。熱交換器は、例えばオイル冷却器またはラジエータであり得る。ブレージング層104は、熱交換器内の流体経路と接触し得る。例えば、ブレージング層104は、熱交換器の動作中に冷却剤と接触していてもよい。様々な非限定的実施形態では、本開示によるブレージングシートの全部または一部からなる構造要素を含む熱交換器は、例えば、少なくとも640時間、少なくとも700時間、または少なくとも750時間など、オオヤマ川水溶液で少なくとも600時間の連続通水を受けても破損しない。当業者には理解されるように、オオヤマ川水溶液は、225.50mgのNaCl、89mgのNaSO、2.65mgのCuCl*2HO、145mgのFeCl*6HO(それによって、195ppmのClを有する)、および残りは脱イオン水と不純物からなり、溶液の総容量は20リットルである。流量は熱交換器のサイズに依存する。オオヤマ川水溶液は摂氏95度、オオヤマ川水溶液のpHは3.2である。試験中に熱交換器が腐食するにつれて、オオヤマ川水溶液のpHは中性pH(例えば、7)に向かって上昇する。熱交換器は、試験手順中に様々な時間間隔で評価され、熱交換器に穿孔(例えば、溶液が材料の反対側に到達した)があるかどうかが判断され、その時点で熱交換器は故障したとみなされる。
【0034】
図3は、例えば熱交換器などの物品を形成するための本開示による方法の非限定的な一実施形態のブロック図を提供する。方法は、第一の材料を含む第一の部分を、本開示によるブレージングシートの一実施形態のすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることを含む。例えば、本開示による方法の非限定的な一実施形態は、本明細書に記載されるように、第一の材料を含む第一の部分を、ブレージングシート100および/またはブレージングシート200のすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることを含んでもよい(図3、工程302)。様々な非限定的な実施形態では、第一の部分は、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって、第二の部分に結合され得る(工程304)。
【0035】
様々な実施形態では、工程304は、制御された雰囲気ブレージングを含み、フラックスは使用され得る。特定の非限定的な実施形態では、工程304は、制御された雰囲気ブレージングを含み、基材層102は、合金の総重量に基づく重量パーセントで、0~0.45マグネシウムを含むアルミニウム合金を含み得る。様々な非限定的な実施形態では、工程304は真空ブレージングを含み、基材層102は合金の総重量に基づく重量パーセントで、例えば、0.35~1.0のマグネシウムまたは0.45~1.0のマグネシウムなど、0.05~1.0のマグネシウムを含むアルミニウム合金を含み得る。様々な非限定的な実施形態において、第一の材料はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。
【0036】
[実施例]
評価1
【0037】
インターライナーを含まない比較ブレージングシート1(3層ブレージングシート)と、少なくとも一つのインターライナーを含む本開示によるブレージングシート2~4の耐食性を評価した。本明細書の実施例で使用される様々なアルミニウム合金の組成を表1に示す。比較ブレージングシート1およびブレージングシート2-4の構成を表2に示す。ブレージングシートは、基材層、基材層の第一の側面上の第一のブレージング層、第一の側面とは反対側の基材層の第二の側面上の第二のブレージング層、随意に、第一のブレージング層と基材層の中間の第一のインターライナー層、および随意に、第二のブレージング層と基材層の中間の第二のインターライナー層から構成された。全ての材料を0.6mmの最終厚さまで冷間圧延し、-O温度条件で製造した。
【0038】
幅0.5インチ、長さ6インチの二枚のブレージングシートの間にオオヤマ川水溶液を連続的に流し、比較ブレージングシート1およびブレージングシート2~4の耐食性試験を行った。ブレージングシートに単一のインターライナーがある場合、単一のインターライナーは、オオヤマ川水溶液に向かって配向された。試験中、一定間隔でブレージングシートの穿孔を評価し、その結果を表2に示す。各ブレージングシートについて穿孔を計数した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
比較ブレージングシート1は、わずか320時間後に穿孔が観察され、著しい漏れが観察され、比較ブレージングシート1の耐食性が不足していたため、試験は中止された。合金A、およびブレージングシート2の全体厚さの12%の厚さを含む二つのインターライナーを有するブレージングシート2は、515時間後でも穿孔がないことが観察された。ブレージングシート2の穿孔は、720時間後に観察された。合金A、およびブレージングシート3の全体厚さの18%の厚さを含む単一のインターライナーを有するブレージングシート3は、515時間後でも穿孔がないことが観察された。さらに、720時間後でも、ブレージングシート3には小さな穿孔が一つだけ観察された。合金B、およびブレージングシート4の全体厚さの18%の厚さを含む単一のインターライナーを有するブレージングシート4は、720時間後でも穿孔がないことが観察された。
【0042】
オオヤマ川水溶液に対する保護は、ブレージングシート1と2の比較からわかるように、ブレージングシートの片面だけに必要な場合がある。犠牲陽極として構成されたブレージングシートに単一のインターライナー層を利用することにより、ブレージングシートの全体厚さは製造工程によって制限されることがあり、基材層の厚さを薄くすることは望ましくない場合があるため、インターライナー層を厚くすることができる。このように、最も腐食が進行するブレージングシート側で選択的に腐食防止効果を高めることができるため、腐食性能はさらに向上する。
【0043】
評価2
【0044】
比較を含む第一の比較プレート式熱交換器は比較ブレージングシートから作製され、第二のプレート式熱交換器は、オオヤマ川水溶液による試験のために、本開示によるブレージングシートから作製された。各熱交換器は、以下の五つの層:基材層、基材層の第一の側面上の第一のブレージング層、第一の側面とは反対側の基材層の第二の側面上の第二のブレージング層、第一のブレージング層と基材層の中間の第一のインターライナー層、および第二のブレージング層と基材層の中間の第二のインターライナー層を含むブレージングシートから作製された。各ブレージングシートについて、第一のブレージング層はブレージングシートの全体厚さの8%、第一のインターライナー層はブレージングシートの全体厚さの12%、基材層はブレージングシートの全体厚さの60%、第二のインターライナー層はブレージングシートの全体厚さの12%、第二のブレージング層はブレージングシートの全体厚さの8%であった。表3は、腐食試験の対象となった熱交換器に使用されたブレージングシートの各層の組成を示す。
【0045】
【表3】
【0046】
実施例HX2の熱交換器は、本開示に従って、第一および第二のインターライナー層のアルミニウム合金中に亜鉛を含むブレージングシートから真空ブレージングを利用して作製され、これらの層はブレージングシート中の犠牲陽極として機能した。比較HX1の熱交換器は、比較HX1の熱交換器に使用されたブレージングシートのインターライナー層が亜鉛を含まないことを除いて、実施例HX2の熱交換器に使用されたものと同じ組成を有する層を含むブレージングシートから作製された。両熱交換器とも、オオヤマ川水溶液の連続通水試験(滞留なしなど)に供された。各熱交換器は、オオヤマ川水溶液試験中に定期的に故障について評価され、故障が検出された時間を以下の表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
表4の結果は、マグネシウム含有アルミニウム合金に亜鉛を添加することにより、オオヤマ川水溶液試験で評価したとき、耐食性および/または耐浸食性が向上したことを示している。実施例HX2で使用されたような5層構造は、ブレージングシートの層同士を接着する際や、ブレージングシートを熱交換器を作るために配向する際に、製造工程を容易にすることができる。
【0049】
以下の番号付きの条項は、本開示による様々な非限定的および態様を対象としている。
条項1.
ブレージングシートであって、
アルミニウム合金を含む基材層、
基材層上に配置されたインターライナー層であって、インターライナー層が、重量パーセントで、
0.05~1.0のマグネシウム、
0.5~5.0の亜鉛、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物を含む、アルミニウム合金を含む、インターライナー層、ならびに
4XXX系アルミニウム合金を含むブレージング層であって、インターライナー層上に配置されたブレージング層を含み、
ただし、インターライナー層が犠牲陽極として作用し、基材層がブレージングシート内でガルバニック回路の陰極として作用する、ブレージングシート。
条項2.
インターライナー層が、重量パーセントで、1.5~3.0の亜鉛を含む、条項1に記載のブレージングシート。
条項3.
インターライナー層が、重量パーセントで、2.0~5.0の亜鉛を含む、条項1に記載のブレージングシート。
条項4.
インターライナー層が、重量パーセントで、2.0~5.0超の亜鉛を含む、条項1に記載のブレージングシート。
条項5.
インターライナー層中の亜鉛とマグネシウムの重量パーセント濃度の合計が、2.0~6.0である、条項1~4のいずれかに記載のブレージングシート。
条項6.
インターライナー層が、重量パーセントで、
0.1~1.0のシリコン、
0~0.10の銅、
0~0.5のジルコニウム、
0~0.8の鉄、
0~0.5のマンガン、
2.0~5.0の亜鉛、
0.1~1のマグネシウム、
0~0.3のチタン、
0~0.05のクロム、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物、を含むアルミニウム合金を含む、条項1~5のいずれかに記載のブレージングシート。
条項7.
インターライナー層が、基材層とブレージング層に対するガルバニック回路の犠牲陽極として作用する、条項1~6のいずれかに記載のブレージングシート。
条項8.
基材層、インターライナー層、およびブレージング層が互いに結合される、条項1~7のいずれかに記載のブレージングシート。
条項9.
ブレージング層が、基材層の第一の側面上に配置された第一のブレージング層であり、
第二のブレージング層が、基材層の第一の側面の反対側の基材層の第二の側面上に配置され、第二のブレージング層が、4XXX系アルミニウム合金を含む、条項1~8のいずれかに記載のブレージングシート。
条項10.
インターライナー層が、第一のブレージング層と基材層の第一の側面の中間に配置された第一のインターライナーであり、
第二のインターライナー層が、第二のブレージング層と基材層の第二の側面の中間に配置される、条項9に記載のブレージングシート。
条項11.
ブレージングシートが、第一のブレージング層、第二のブレージング層、基材層、およびインターライナー層からなる、条項9に記載のブレージングシート。
条項12.
インターライナー層が、ブレージングシートの合計厚さの8%~30%の厚さを含む、条項9~11のいずれかに記載のブレージングシート。
条項13.
インターライナー層が、ブレージングシートの合計厚さの15%~30%の厚さを含む、条項9~11のいずれかに記載のブレージングシート。
条項14.
基材層が、1XXX系アルミニウム合金、3XXX系アルミニウム合金、または6XXX系アルミニウム合金を含む、条項1~13のいずれかに記載のブレージングシート。
条項15.
ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つに好適である、条項1~14のいずれかに記載のブレージングシート。
条項16.
ブレージング層が、重量パーセントで、
5~15.0のシリコン、
0~2.5のマグネシウム、
0~1.0の鉄、
0~1.5の亜鉛、
0~0.5の銅、
0~2.0のモリブデン、
0~0.3のマンガン、
0~0.2のチタン、
0~0.4のビスマス、
0~0.01のクロム、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物、を含むアルミニウム合金である、条項1~15のいずれかに記載のブレージングシート。
条項17.
基材層が、重量パーセントで、
0.1~1.0のシリコン、
0~1.0の鉄、
0~1.2の銅、
0.8~1.9のマンガン、
0.05~1.2のマグネシウム、
0~0.10のクロム、
0~0.10の亜鉛、
アルミニウム、
随意で付随元素、および
不純物を含み、
ただし、チタンとジルコニウムの重量パーセントの合計が0.10~0.30である、アルミニウム合金である、条項1~16に記載のブレージングシート。
条項18.
基材層が均質化される、条項1~17のいずれかに記載のブレージングシート。
条項19.
条項1~18のいずれかに記載のブレージングシートの全体または一部を含む構造要素を含む、熱交換器。
条項20.
第一のブレージング層が、熱交換器内の流体経路と接触している、条項9~13のいずれかに記載のブレージングシートの全体または一部を含む構造要素を含む、熱交換器。
条項21.
熱交換器が、オオヤマ川水溶液を少なくとも600時間連続通水した場合に耐食性を有する、条項19および20のいずれかに記載の熱交換器。
条項22.
物品を形成する方法であって、方法が、
第一の材料を含む第一の部分を、条項1~18のいずれかに記載のブレージングシートのすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させること、および
第一の部分を、制御された雰囲気ブレージングと真空ブレージングのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって第二の部分と連結すること、を含む、方法。
条項23.
第一の材料が、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む、条項22に記載の方法。
条項24.
物品が熱交換器である、条項22および23のいずれかに記載の方法。
【0050】
本明細書において、別段の指示がない限り、すべての数値パラメータは、すべての場合において、「約」という用語で始まり、修飾されていると理解されるべきであり、これにおいて数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基礎となる測定法の固有の変動特性を有する。少なくとも、および均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、本明細書に記載の各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、および通常の丸める方法を適用することによって解釈されるべきである。
【0051】
また、本明細書に列挙された任意の数値範囲は、列挙された範囲内に包含されるすべての部分範囲を含む。例えば、「1~10」の範囲には、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間の(およびそれらを含む)すべての部分範囲が含まれ、つまり、1以上の最小値と10以下の最大値を有する。また、本明細書に列挙されたすべての範囲は、列挙された範囲の端の数値を含む。例えば、「1~10」の範囲は、端の数値である1および10を含む。本明細書に列挙された任意の最大の数値制限は、そこに包含されたすべてのより低い数値制限を含むことが意図されていて、本明細書に列挙された任意の最小の数値制限は、そこに包含されたすべてのより高い数値制限を含むことが意図されている。従って、出願人は、明示的に列挙された範囲内に包含された部分範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む本明細書を修正する権利を留保する。こうしたすべての範囲は、本明細書に本質的に記述されている。
【0052】
本明細書で使用される文法の冠詞「一つ(a)」、「一つ(an)」、および「その(the)」は、別段の指示がない限り、特定の場合において「少なくとも一つ」または「一つ以上」が明示的に使用されている場合であっても、「少なくとも一つ」または「一つ以上」を含むことが意図されている。それ故に、前述の文法の冠詞は本明細書において、特定の識別された要素のうちの一つ以上(すなわち、「少なくとも一つ」)を指すために使用される。さらに、単数名詞の使用には複数形が含まれ、複数名詞の使用には単数形が含まれるが、使用の文脈によって別段の解釈が要求される場合はこの限りではない。
【0053】
当業者は、本明細書に記載の物品および方法、ならびにそれらに付随する考察が、概念的明瞭性のために実施例として使用されていて、様々な構成修正が企図されていることを認識するであろう。従って、本明細書で使用される、記載の特定の実施例/実施形態および付随する考察は、そのより一般的なクラスの代表であることが意図されている。一般的に、特定の例の使用は、そのクラスの代表であることが意図されていて、特定の構成要素、装置、操作/動作、および対象を含まないことは、限定的であると受け止められるべきではない。本開示は、本開示の様々な態様および/またはその潜在的な適用例を解説する目的で様々な特定の態様の説明を提供する一方で、当業者には変形および修正が生じることが理解されよう。従って、本明細書に記載の単独の発明または複数の発明は、それらが特許請求されるのと少なくとも同程度に広範であると理解されるべきであり、本明細書に提供された特定の例示的態様によってより狭義に定義されるものではないと理解されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】