(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】リン酸エステル基を含有する化合物、それを含有する医薬組成物、その調製方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6512 20060101AFI20240514BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240514BHJP
C07F 9/6553 20060101ALI20240514BHJP
C07F 9/655 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C07F9/6512 CSP
A61K31/675
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
C07F9/6553
C07F9/655
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572026
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2022093265
(87)【国際公開番号】W WO2022242629
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110555984.X
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522044799
【氏名又は名称】シャンハイ、レイジング、ファーマシューティカル、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RAISING PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ホアン
(72)【発明者】
【氏名】チン、ホーフォン
(72)【発明者】
【氏名】モン、リーチュアン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA38
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4H050AA01
4H050AB20
4H050AC50
4H050AC60
(57)【要約】
本発明は、式(I)で表される化合物、それを含有する医薬組成物、その調製方法、及び神経変性疾患の治療のためのその使用に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【化1】
(式中、
環Aが、C
6-10芳香環又は5~14員の複素芳香環であり、
L
1が、直接結合又は-R
2-C
1-6アルキレン-であり、
R
2が、-O-、-NH-、-S-、-S(=O)-、又は-S(=O)
2-であり、
R
1が、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
3、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-C(=O)OR
3、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-S(=O)
2NR
3R
4、-NR
3R
4、-C(=O)NR
3R
4、-NR
3-C(=O)R
4、-NR
3-C(=O)OR
4、-NR
3-S(=O)
2-R
4、-NR
3-C(=O)-NR
3R
4、-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、-O-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択されるか、又はnが1より大きい場合、2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
3-6炭化水素環、3~10員の複素環、C
6-10芳香環、若しくは5~14員の複素芳香環を形成し、
R
3及びR
4が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
上記のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、炭化水素環、ヘテロシクリル、複素環、アリール、芳香環、ヘテロアリール、複素芳香環、及びアラルキルは、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
5、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-C(=O)OR
5、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-S(=O)
2NR
5R
6、-NR
5R
6、-C(=O)NR
5R
6、-NR
5-C(=O)R
6、-NR
5-C(=O)OR
6、-NR
5-S(=O)
2-R
6、-NR
5-C(=O)-NR
5R
6、-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、-O-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルが、更に、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R
5及びR
6が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
nが、0、1、2、3、又は4の整数であるが、
但し、L
1が直接結合である場合、環Aはベンゼン環ではない。)
【請求項2】
環Aがベンゼン環若しくは5~6員の複素芳香環である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項3】
環Aがベンゼン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、若しくはピリジン環である、請求項2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項4】
L
1が直接結合若しくは-O-C
1-6アルキレン-である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項5】
L
1が直接結合、-O-CH
2-、若しくは-O-CH
2CH
2-である、請求項4に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項6】
R
1が、ハロゲン、C
1-6アルキル、ハロゲンで置換されていてもよいC
6-10アリール、若しくは-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルであるか、若しくは2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
6-10芳香環を形成し、これが-OR
5で更に置換されていてもよい、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項7】
R
1が、-Cl、メチル、Fで置換されていてもよいフェニル、若しくは-CH
2-O-CH
3であるか、若しくは2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってベンゼン環を形成し、これがメトキシで更に置換されていてもよい、請求項6に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項8】
【化2】
が、
【化3】
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項9】
以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【表1】
【請求項10】
予防若しくは治療有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグと、1つ以上の薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項11】
神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和のための薬剤の製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は請求項10に記載の医薬組成物の、使用。
【請求項12】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、段階的な神経細胞死によって引き起こされる麻痺性認知症、及び進行性失禁によって引き起こされる疾患からなる群から選択され、好ましくはアルツハイマー病である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式(I)の化合物を調製するための方法であって、
式(I)-aの化合物を式(I)-bの化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ることを含む、方法。
【化4】
(式中、
LGが脱離基であり、好ましくはハロゲン、最も好ましくは塩素であり、
残りの基が請求項1~9のいずれか一項に定義される通りである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸エステル基を含有する化合物、それを含む医薬組成物、その調製方法、及び神経変性疾患の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(一般に、老年認知症として知られる、AD)は、主な臨床症状として認知異常及び行動異常を伴う進行性の神経変性疾患であり、高齢者における認知症の最も一般的な形態である。アルツハイマー病は主に、認識能力の低下及び記憶機能の急激な低下を特徴とする。主な病理学的及び生理学的特徴は、老人斑を形成するβ-アミロイド(Aβ)の脳内沈着、神経原線維変化を引き起こすタウタンパク質の過剰リン酸化、脳グルコース代謝の障害、及びニューロン/シナプスの喪失である。この疾患の継続期間は長く、患者のセルフケア能力が低いため、家族及び社会に深刻な精神的及び経済的負担をもたらす。しかしながら、現在、疾患の進行を予防するか、又は遅延させることができる世界中で利用可能な薬物はない。現在市販されているADの治療薬は対症療法薬のみであり、これらは認知症状及び機能症状を一定期間制御又は改善することはできるが、状態の悪化を阻止又は予防することはできない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、神経変性疾患の予防又は治療のために使用できるリン酸エステル基を含有する化合物を提供する。更に、本発明の化合物はまた、より優れた物理化学的特性(例えば、溶解度、物理的及び/又は化学的安定性)、改善された薬物動態特性(例えば、改善されたバイオアベイラビリティ、好適な半減期及び作用持続時間)、改善された安全性(より低い毒性(例えば、低減された心毒性)及び/又はより少ない副作用)、より低い耐性などを含む、優れた特性を有する。
【0004】
本発明の一態様は、式(I)の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0005】
【化1】
(式中、
環Aが、C
6-10芳香環又は5~14員の複素芳香環であり、
L
1が、直接結合又は-R
2-C
1-6アルキレン-であり、
R
2が、-O-、-NH-、-S-、-S(=O)-、又は-S(=O)
2-であり、
R
1が、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
3、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-C(=O)OR
3、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-S(=O)
2NR
3R
4、-NR
3R
4、-C(=O)NR
3R
4、-NR
3-C(=O)R
4、-NR
3-C(=O)OR
4、-NR
3-S(=O)
2-R
4、-NR
3-C(=O)-NR
3R
4、-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、-O-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択されるか、又はnが1より大きい場合、2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
3-6炭化水素環、3~10員の複素環、C
6-10芳香環、若しくは5~14員の複素芳香環を形成し、
R
3及びR
4が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
上記のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、炭化水素環、ヘテロシクリル、複素環、アリール、芳香環、ヘテロアリール、複素芳香環、及びアラルキルが、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
5、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-C(=O)OR
5、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-S(=O)
2NR
5R
6、-NR
5R
6、-C(=O)NR
5R
6、-NR
5-C(=O)R
6、-NR
5-C(=O)OR
6、-NR
5-S(=O)
2-R
6、-NR
5-C(=O)-NR
5R
6、-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、-O-C
1-6アルキレン-NR
5R
6及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルが、更に、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R
5及びR
6が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
nが、0、1、2、3、又は4の整数であるが、
但し、L
1が直接結合である場合、環Aはベンゼン環ではない。)
【0006】
本発明の別の態様は、予防若しくは治療有効量の本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグと、1つ以上の薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和のための薬剤の製造における、本発明の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は本発明の医薬組成物の、使用を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和における使用のための、本発明の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和のための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は本発明の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、本発明の化合物を調製するための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0011】
定義
文脈において別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有することが意図されている。本明細書で用いられる技術への言及は、それらの技術に対する変形又は当業者に明らかであろう等価の技術の置換を含む、当該技術分野で一般に理解されるような技術を指すことが意図されている。以下の用語は当業者によって容易に理解されると考えられるが、以下の定義は本発明をより良く説明するために提示される。
【0012】
本明細書で使用される「含む(包括)」、「からなる(包含)」、「有する(具有)」、「含有する(含有)」又は「関する(渉及)」という用語及び他の変形は、包括的又はオープンエンドであり、記載されていない他の要素又は方法工程を排除するものではない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、飽和二価ヒドロカルビルを指し、好ましくは、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有する飽和二価ヒドロカルビル、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、又はブチレンを指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素として定義される。いくつかの実施形態では、アルキルは1~12個、例えば1~6個の炭素原子を有する。例えば、本明細書で使用される場合、「C1-6アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、又はn-ヘキシルなど)であって、ハロゲンなどの1つ以上(例えば、1~3個)の好適な置換基で置換されていてもよい基(この場合、この基は「ハロアルキル」と呼ばれることがある)(例えば、CF3、C2F5、CHF2、CH2F、CH2CF3、CH2Cl、又は-CH2CH2CF3など)を指す。「C1-4アルキル」という用語は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素鎖(すなわち、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチル)を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「アルケニレン」という用語は、1つ以上の二重結合を含有し、好ましくは2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する二価ヒドロカルビル、例えば、エテニレン、プロピレン、又はアリレンを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、二重結合及び2~6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の一価ヒドロカルビル(「C2-6アルケニル」)を指す。アルケニルは、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-メチル-2-プロペニル、及び4-メチル-3-ペンテニルである。本発明の化合物がアルケニレン又はアルケニル基を含有する場合、化合物は、純粋なE(反対側(entgegen))形態、純粋なZ(同じ側(zusammen))形態、又はそれらの任意の混合物として存在し得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、1つ以上の三重結合を含有し、好ましくは2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有する一価ヒドロカルビル、例えばエチニル又はプロピニルを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「環状ヒドロカルビレン」、「環状ヒドロカルビル」及び「炭化水素環」という用語は、例えば、3~10個(好適には3~8個、及びより好適には3~6個)の環炭素原子を有する、飽和(すなわち、「シクロアルキレン」及び「シクロアルキル」)又は不飽和(すなわち、環内に1つ以上の二重結合及び/若しくは三重結合を有する)単環式又は多環式炭化水素環を指し、これには、シクロプロピル(シクロプロピレン)(環)、シクロブチル(シクロブチレン)、シクロペンチル(シクロペンチレン)(環)、シクロヘキシル(シクロヘキシレン)(環)、シクロヘプチル(シクロヘプチレン)(環)、シクロオクチル(シクロオクチレン)(環)、シクロノニル(シクロノニレン)(環)、シクロヘキセニル(シクロヘキセニレン)(環)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、飽和又は不飽和の、非芳香族、単環式又は多環式(例えば、二環式)炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル若しくはシクロノニルなどの単環式、又はスピロ、縮合若しくは架橋系を含む二環式(ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル若しくはビシクロ[5.2.0]ノニル、又はデカヒドロナフタレンなど))であって、1つ以上(例えば、1~3個)の好適な置換基で置換されていてもよい炭化水素環を指す。シクロアルキルは、3~15個の炭素原子を有する。例えば、「C3-6シクロアルキル」という用語は、3~6個の環形成炭素原子を有する、飽和又は不飽和の、非芳香族、単環式又は多環式(例えば、二環式)炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル)であって、1つ以上(例えば1~3個)の好適な置換基で置換されていてもよい炭化水素環を指し、例えばメチル置換シクロプロピルである。
【0020】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリレン」及び「複素環」という用語は、例えば、3~10個(好適には3~8個、及びより好適には3~6個)の環原子を有する、飽和(すなわち、ヘテロシクロアルキル)又は部分的に不飽和(すなわち、環内に1つ以上の二重結合及び/若しくは三重結合を有する)の環式基であって、少なくとも1つの環原子が、N、O、及びSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCである、環式基を指す。例えば、「3~10員の複素環」の「3~10員のヘテロシクリル(ヘテロシクリレン)」は、2~9個(例えば、2、3、4、5、6、7、8若しくは9個)の環炭素原子と、N、O、及びSからなる群から独立して選択される1個以上の(例えば、1、2、3若しくは4個)のヘテロ原子と、を有する、飽和若しくは部分的に不飽和のヘテロシクリル(ヘテロシクリレン)又は複素環を指す。ヘテロシクリレン、ヘテロシクリル、及び複素環の例としては、オキシラニル(オキシラニレン)、アジリジニル(アジリジニレン)、アゼチジニル(アゼチジニレン)、オキセタニル(オキセタニレン)、テトラヒドロフラニル(テトラヒドロフラニレン)、ジオキソリニル(ジオキソリニレン)、ピロリジニル(ピロリジニレン)、ピロリドニル(ピロリドニレン)、イミダゾリジニル(イミダゾリジニレン)、ピラゾリジニル(ピラゾリジニレン)、ピロリニル(ピロリニレン)、テトラヒドロピラニル(テトラヒドロピラニレン)、ピペリジニル(ピペリジニレン)、モルホリニル(モルホリニレン)、ジチアニル(ジチアニレン)、チオモルホリニル(チオモルホリニレン)、ピペラジニル(ピペラジニレン)、又はトリチアニル(トリチアニレン)が挙げられるが、これらに限定されない。当該基には、スピロ、縮合、又は架橋系を含む二環系(例えば、8-アザスピロ[4.5]デカン、3,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデカン、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタンなど)も包含される。ヘテロシクリレン、ヘテロシクリル、及び複素環は、1つ以上(例えば、1、2、3、又は4)の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アリール(アリーレン)」及び「芳香環」という用語は、共役π電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式芳香族基を指す。例えば、本明細書で使用される場合、「C6-10アリール(アリーレン)」及び「C6-10芳香環」という用語は、フェニル(フェニレン)(ベンゼン環)又はナフチル(ナフチレン)(ナフタレン環)などの、6~10個の炭素原子を含有する芳香族基を指す。アリール(アリーレン)又は芳香環は、1つ以上(例えば、1~3個)の好適な置換基(例えば、ハロゲン、-OH、-CN、-NO2、及びC1-6アルキルなど)で置換されていてもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)」及び「複素芳香環」という用語は、5、6、8、9、10、11、12、13若しくは14個の環原子、特に1若しくは2若しくは3若しくは4若しくは5若しくは6若しくは9若しくは10個の炭素原子を有し、同一であっても異なっていてもよい少なくとも1つのヘテロ原子(O、N若しくはSなど)を含有する単環式、二環式又は三環式芳香環系を指す。更に、いずれの場合も、これは、ベンゾ縮合することができる。特に、「ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)」又は「複素芳香環」は、チエニル(チエニレン)、フリル(フリレン)、ピロリル(ピロリレン)、オキサゾリル(オキサゾリレン)、チアゾリル(チアゾリレン)、イミダゾリル(イミダゾリレン)、ピラゾリル(ピラゾリレン)、イソオキサゾリル(イソオキサゾリレン)、イソチアゾリル(イソチアゾリレン)、オキサジアゾリル(オキサジアゾリレン)、トリアゾリル(トリアゾリレン)、チアジアゾリル(チアジアゾリレン)など、及びそれらのベンゾ誘導体;又は、ピリジニル(ピリジニレン)、ピリダジニル(ピリダジニレン)、ピリミジニル(ピリミジニレン)、ピラジニル(ピラジニレン)、トリアジニル(トリアジニレン)など、及びそれらのベンゾ誘導体からなる群から選択される。
【0023】
「アラルキル」という用語は、好ましくはアリール置換アルキル(アリール及びアルキルは本明細書で定義される通りである)を意味する。通常、アリール基は6~14個の炭素原子を有してもよく、アルキル基は1~6個の炭素原子を有してもよい。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、又はIを含むものと定義される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アルキルチオ」という用語は、硫黄原子を介して親分子部分に結合した、上記で定義されたアルキル基を意味する。C1-6アルキルチオの代表例としては、メチルチオ、エチルチオ、tert-ブチルチオ、及びヘキシルチオが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「窒素含有複素環」という用語は、環内に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、若しくは13個の炭素原子、及び少なくとも1個の窒素原子を有する飽和又は不飽和の単環式又は二環式基であって、更に、N、O、C=O、S、S=O、及びS(=O)2からなる群から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、又は4つ)の環員を含んでもよい環式基を指す。窒素含有複素環は、窒素原子を介して残りの分子と接続されている。窒素含有複素環は、好ましくは、飽和窒素含有単環式環である。特に、3~14員の窒素含有複素環は、環内に3~14個の炭素原子及びヘテロ原子(そのうちの少なくとも1つは窒素原子である)を有する基であり、3員の窒素含有複素環(アジリジニルなど)、4員の窒素含有複素環(アゼチジニルなど)、5員の窒素含有複素環(ピロリル、ピロリジニル(ピロリジニル環)、ピロリニル、ピロリドニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリニルなど)、6員の窒素含有複素環(ピペリジニル(ピペリジニル環)、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニルなど)、7員の窒素含有複素環などが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
「置換」という用語は、指定された原子上の1つ以上(例えば、1、2、3、又は4つ)の水素が、示された基から選択されたもので置き換えられる(但し、既存の状況下での指定された原子の通常の原子価を超えず、置換により安定な化合物が得られることを条件とする)ことを意味する。置換基及び/又は変数の組み合わせは、そのような組み合わせによって安定な化合物が得られる場合にのみ許可される。
【0028】
置換基が「置換されていてもよい」と記載されている場合、その置換基は、(1)置換されていない、又は(2)置換されているのいずれもよい。置換基の炭素が列挙された置換基のうちの1つ以上で置換されていてもよいと記載されている場合、炭素上の水素のうちの1つ以上(存在する場合)は、別個に及び/又は一緒になって、独立して選択された置換基で置き換えられていてもよい。置換基の窒素が列挙された置換基のうちの1つ以上で置換されていてもよいと記載されている場合、窒素上の水素のうちの1つ以上(存在する場合)は各々、独立して選択された置換基で置き換えられていてもよい。
【0029】
置換基がある群から「独立して選択される」と記載されている場合、各置換基は他の置換基とは無関係に選択される。したがって、各置換基は、他の置換基と同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「1以上」という用語は、合理的な条件下で、1又は2以上(例えば、2、3、4、5、又は10)を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、置換基の結合点は、置換基の任意の好適な位置からであり得る。
【0032】
置換基への結合が環内の2つの原子を接続する結合と交差することが示されている場合、そのような置換基は、その環内の置換可能な環形成原子のいずれかに結合され得る。
【0033】
本発明はまた、全ての薬学的に許容される同位体標識化合物を含み、これらは、1つ以上の原子が、同じ原子番号を有するが、自然界で優勢である原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられていることを除いて、本発明のものと同一である。本発明の化合物に含まれるのに適した同位体の例としては、水素の同位体(重水素(D、2H)、三重水素(T、3H)など);11C、13C、及び14Cなどの炭素の同位体;36Clなどの塩素;18Fなどのフッ素の同位体;123I及び125Iなどのヨウ素の同位体;13N及び15Nなどの窒素の同位体;15O、17O、及び18Oなどの酸素の同位体;32Pなどのリンの同位体;並びに35Sなどの硫黄の同位体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の同位体標識化合物、例えば放射性同位体を組み込んだ化合物は、薬物及び/又は基質の組織分布研究(例えばアッセイ)に有用である。放射性同位体三重水素(すなわち、3H)及び炭素-14(すなわち、14C)は、組み込みが容易で検出が容易なため、この目的に特に有用である。11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、基質受容体の占有率を調べるための陽電子放出断層撮影法(PET)研究に有用であり得る。本発明の同位体標識化合物は、一般に、以前に使用した非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用することにより、添付のスキーム並びに/又は実施例及び調製例に記載したものと類似のプロセスにより調製することができる。本発明による薬学的に許容される溶媒和物としては、結晶化の溶媒が同位体で置換されていてもよい溶媒和物が挙げられ、例えば、D2O、アセトン-d6、又はDMSO-d6である。
【0034】
「立体異性体」という用語は、少なくとも1つの不斉中心を持つ異性体を指す。1つ以上(例えば、1、2、3、又は4つ)の不斉中心を有する化合物は、ラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物、及び個々のジアステレオマーを生じさせることができる。特定の個々の分子は、幾何異性体(シス/トランス)として存在する場合がある。同様に、本発明の化合物は、急速な平衡状態にある2つ以上の構造的に異なる形態の混合物(一般に、互変異性体と呼ばれる)として存在する場合がある。互変異性体の代表的な例としては、ケト-エノール互変異性体、フェノール-ケト互変異性体、ニトロソ-オキシム互変異性体、イミン-エナミン互変異性体などが挙げられる。このような異性体及び任意の割合(60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、及び99%など)でのそれらの混合物は全て本発明の範囲内に包含されることが理解されるべきである。
【0035】
本発明の化合物の炭素-炭素結合は、本明細書では実線(
【化2】
)、実線のくさび形(
【化3】
)、又は点線のくさび形(
【化4】
)を使用して表すことができる。不斉炭素原子への結合を表すために実線を使用することは、その炭素原子における全ての可能な立体異性体(例えば、特定の鏡像異性体、ラセミ混合物など)が含まれることを示すことを意味する。不斉炭素原子への結合を表すために実線又は点線のくさび形を使用することは、示された立体異性体が存在することを示すことを意味する。ラセミ化合物中に存在する場合、実線及び点線のくさび形は、絶対立体化学ではなく相対立体化学を定義するために使用される。特記しない限り、本発明の化合物は、シス異性体及びトランス異性体、R鏡像異性体及びS鏡像異性体などの光学異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、回転異性体、配座異性体、アトロプ異性体、並びにそれらの混合物を含む立体異性体として存在し得ることが意図されている。本発明の化合物は、2種類以上の異性を示し、それらの混合物(ラセミ体及びジアステレオマー対など)からなってもよい。
【0036】
本発明は、本発明の化合物の全ての可能な結晶形若しくは多形を、単一の多形として、又は任意の比率での2つ以上の多形の混合物として含む。
【0037】
また、本発明の特定の化合物は、遊離形態で、又は必要に応じて薬学的に許容される誘導体の形態で治療のために使用できることも理解されるべきである。本発明において、薬学的に許容される誘導体としては、それを必要とする患者に投与された後に本発明の化合物又はその代謝産物若しくは残留物を直接的若しくは間接的に提供することができる、薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、代謝産物、若しくはプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本明細書に記載の「本発明の化合物」とは、上記のような化合物の様々な誘導体形態を包含することを意味する。
【0038】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩としては、その酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。
【0039】
好適な酸付加塩は、薬学的に許容される塩を形成する酸から形成される。具体例としては、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、マレイン酸塩、マロン酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩などが挙げられる。
【0040】
好適な塩基付加塩は、薬学的に許容される塩を形成する塩基から形成される。具体例としては、アルミニウム、アルギニン、コリン、ジエチルアミン、リジン、マグネシウム、メグルミン、カリウムなどが挙げられる。
【0041】
好適な塩に関する検討については、“Hand book of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”by Stahl and Wermuth(Wiley-VCH,2002)を参照されたい。本発明の化合物の薬学的に許容される塩を調製するための方法は、当業者に知られている。
【0042】
本明細書で使用される場合、「エステル」という用語は、本出願における様々な式の化合物から誘導されるものを指し、これには、生理学的に加水分解可能なエステル(生理学的条件下で加水分解されて、遊離酸又はアルコールの形態で本発明の化合物を放出し得る)が含まれる。本発明の化合物自体がエステルであってもよい。
【0043】
本発明の化合物は、溶媒和物(好ましくは水和物)として存在することができ、本発明の化合物は、例えば、化合物の結晶格子の構造要素として極性溶媒、特に水、メタノール、又はエタノールを含有する。極性溶媒、特に水の量は、化学量論比又は非化学量論比で存在し得る。
【0044】
本発明の化合物の代謝産物、すなわち本発明の化合物の投与によりインビボで形成される物質も本発明の範囲に含まれる。このような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素分解などから生じ得る。したがって、本発明は、本発明の化合物の代謝産物をもたらすのに十分な期間、本発明の化合物を哺乳動物と接触させることを含む方法によって生成される化合物を含む、本発明の化合物の代謝産物を包含する。
【0045】
また、本発明の化合物のプロドラッグも本発明の範囲内にあり、これは、それ自体は薬理学的活性をほとんど又は全く有さない場合があるが、身体内又は身体上に投与すると、例えば、加水分解的開裂により、所望の活性を有する本発明の化合物に変換され得る本発明の化合物の特定の誘導体である。一般に、そのようなプロドラッグは、インビボで所望の治療活性を有する化合物に容易に変換される化合物の機能的誘導体である。プロドラッグの使用に関する更なる情報は、“Pro-drugs as Novel Delivery Systems”,Vol.14,ACS Symposium Series(T.Higuchi and V.Stella)及び“Bioreversible Carriers in Drug Design,”Pergamon Press,1987(edited by E.B.Roche,American Pharmaceutical Association)に見出され得る。本発明によるプロドラッグは、例えば、本発明の化合物中に存在する適切な官能基を、例えば、“Design of Prodrugs”by H.Bundgaard(Elsevier,1985)に記載されるように、「プロ分子」として当業者に知られている特定の分子で置き換えることによって生成することができる。
【0046】
本発明には更に、保護基を有する本発明の化合物も包含される。本発明の化合物の調製のためのプロセスのいずれかの間に、関係する分子のいずれかの上にある感受性基又は反応性基を保護することが必要及び/又は望ましい場合があり、それによって本発明の化合物の化学的に保護された形態が得られる。これは、従来の保護基、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry,ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973及びT.W.Greene&P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons,1991(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものにより達成されてもよい。保護基は、当該技術分野で知られている方法を使用して、好都合な後続段階で除去されてもよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定値の±10%以内、好ましくは±5%以内、及びより好ましくは±2%以内の範囲を指す。
【0048】
化合物
いくつかの実施形態において、本発明は、式(I)の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0049】
【化5】
(式中、
環Aが、C
6-10芳香環又は5~14員の複素芳香環であり、
L
1が、直接結合又は-R
2-C
1-6アルキレン-であり、
R
2が、-O-、-NH-、-S-、-S(=O)-、又は-S(=O)
2-であり、
R
1が、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
3、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-C(=O)OR
3、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-S(=O)
2NR
3R
4、-NR
3R
4、-C(=O)NR
3R
4、-NR
3-C(=O)R
4、-NR
3-C(=O)OR
4、-NR
3-S(=O)
2-R
4、-NR
3-C(=O)-NR
3R
4、-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、-O-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択されるか、又はnが1より大きい場合、2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
3-6炭化水素環、3~10員の複素環、C
6-10芳香環、若しくは5~14員の複素芳香環を形成し、
R
3及びR
4が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
上記のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、炭化水素環、ヘテロシクリル、複素環、アリール、芳香環、ヘテロアリール、複素芳香環、及びアラルキルが、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
5、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-C(=O)OR
5、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-S(=O)
2NR
5R
6、-NR
5R
6、-C(=O)NR
5R
6、-NR
5-C(=O)R
6、-NR
5-C(=O)OR
6、-NR
5-S(=O)
2-R
6、-NR
5-C(=O)-NR
5R
6、-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、-O-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルが、更に、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R
5及びR
6が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
nが、0、1、2、3、又は4の整数であるが、
但し、L
1が直接結合である場合、環Aはベンゼン環ではない。)
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明は、環Aがベンゼン環若しくは5~6員の複素芳香環である、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、環Aがベンゼン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、若しくはピリジン環である、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明は、L1が直接結合若しくは-O-C1-6アルキレン-である、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明は、L1が直接結合、-O-CH2-、又は-O-CH2CH2-である、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、L1が直接結合であり、nが0である場合、環Aは非置換フラン環でも非置換チオフェン環でもない。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明は、R1が、ハロゲン、C1-6アルキル、ハロゲンで置換されていてもよいC6-10アリール、若しくは-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキルであるか、又は2つのR1が、それらが結合している基と一緒になってC6-10芳香環を形成し、これが-OR5で更に置換されていてもよく、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明は、R1が、-Cl、メチル、Fで置換されていてもよいフェニル、若しくは-CH2-O-CH3であるか、又は2つのR1が、それらが結合している基と一緒になってベンゼン環を形成し、これがメトキシで更に置換されていてもよい、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0058】
【0059】
様々な実施形態の任意の組み合わせによって得られる化合物は、本発明に包含される。
【0060】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の化合物ではない。
【0061】
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0063】
【0064】
調製方法
いくつかの実施形態では、本発明は、式(I)の化合物を調製するための方法であって、式(I)-aの化合物を式(I)-bの化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ることを含む、方法を提供する。
【0065】
【化9】
(式中、
LGが脱離基であり、好ましくはハロゲン、最も好ましくは塩素であり、
残りの基が上で定義した通りである。)
【0066】
この反応は、好ましくは、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム)又は有機塩基などの塩基の存在下で行われる。好ましくは、式(I)-aの化合物を最初に塩基と混合し、次に式(I)-bの化合物を得られた混合物に添加する。反応溶媒は、好ましくは、水、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、又はそれらの混合物(例えば、水とテトラヒドロフランとの混合物)である。反応温度は、0~50℃、例えば25℃が好ましい。
【0067】
医薬組成物及び治療方法
いくつかの実施形態では、予防若しくは治療有効量の本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグと、1つ以上の薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和のための薬剤の製造における、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和における使用のための、本発明の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和のための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は本発明の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、段階的な神経細胞死によって引き起こされる麻痺性認知症、及び進行性失禁によって引き起こされる疾患からなる群から選択され、好ましくはアルツハイマー病である。
【0072】
本発明における「薬学的に許容される担体」という用語は、それと共に治療薬が投与される希釈剤、補助物質、賦形剤、又はビヒクルを指し、この担体は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症を伴うことなく、ヒト及び動物の組織との接触に好適であり、合理的な利益/リスク比に見合ったものである。
【0073】
本発明の医薬組成物に使用できる薬学的に許容される担体としては、水、及び石油、動物、植物、又は合成起源のものを含む油(落花生油、大豆油、鉱物油、ごま油など)などの滅菌液体が含まれるが、これらに限定されない。医薬組成物を静脈内投与する場合、水は、例示的な担体である。生理食塩水、並びにデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液も、特に注射液用の液体担体として使用することができる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、マルトース、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。医薬組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。経口製剤には、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体が含まれる場合がある。好適な医薬担体の例は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)に記載されている。
【0074】
本発明の医薬組成物は、全身的及び/又は局所的に作用することができる。この目的のために、この組成物は、注射(静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内注射(点滴を含む))若しくは経皮投与などの適切な経路を通じて投与することができ、又は経口、頬側、経鼻、経粘膜、局所投与するか、若しくは眼科用製剤として投与するか、若しくは吸入により投与することができる。
【0075】
これらの投与経路に関して、本発明の医薬組成物は、好適な剤形で投与することができる。
【0076】
このような剤形としては、錠剤、カプセル、トローチ、ハードキャンディー、粉末、スプレー、クリーム、膏薬、座薬、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、水性懸濁液、注射液、エリキシル、及びシロップが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、治療されている障害の症状のうちの1つ以上をある程度軽減する、投与されている化合物の量を指す。
【0078】
投与レジメンは、最適な所望の反応を提供するように調整することができる。例えば、1回のプッシュ投与を行うか、数回の分割投与を経時的に行うか、又は状態を処置する緊急の必要性によって示されるように、投与量を比例的に減少若しくは増加させることができる。投与量の値は、緩和される状態の種類及び重篤度に応じて変化し、単回投与又は複数回投与を含み得ることに留意されたい。更に、任意の特定の対象について、特定の投薬計画は、個人の必要性及び組成物を投与するか、又はその投与を監督する人の専門的判断に従って、経時的に調整されるべきであることが理解される。
【0079】
投与される本発明の化合物の量は、治療されている対象、障害、又は状態の重篤度、投与速度、化合物の性質及び処方する医師の裁量に依存するであろう。一般に、有効投与量は、単回又は分割用量で、1日当たり体重1kg当たり約0.0001~約50mg、例えば約0.01~約10mg/kg/日の範囲である。体重70kgのヒトの場合、有効投与量は、約0.007mg~約3500mg/日、例えば、約0.7mg~約700mg/日となるであろう。場合によっては、前述の範囲の下限を下回る投与量レベルで十分すぎることもあるが、他の場合には、更に大量の用量を最初に数回の少量の用量に分割して一日にわたって投与することを条件として、このように大量の用量が、いかなる有害な副作用をも引き起こすことなく使用されることもある。
【0080】
医薬組成物中の本発明の化合物の含有量又は投与量は、約0.01mg~約1000mg、好適には0.1~500mg、好ましくは0.5~300mg、より好ましくは1~150mg、特に好ましくは1~50mg、例えば、1.5mg、2mg、4mg、10mg、25mgなどである。
【0081】
別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「治療すること」又は「治療」という用語は、そのような用語が適用される障害若しくは状態、又はそのような障害若しくは状態の1つ以上の症状を逆転させる、緩和する、その進行を阻害する、又は予防することを意味する。
【0082】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語には、ヒト又は非ヒト動物が含まれる。例示的なヒト対象には、疾患(本明細書に記載のものなど)を有するヒト対象(患者と呼ばれる)、又は正常な対象が含まれる。本明細書で使用される場合、「非ヒト動物」という用語には、非哺乳動物(例えば、鳥類、両生類、爬虫類)並びに非ヒト霊長類、家畜(livestock)及び/又は家畜(domesticated animals)(羊、犬、猫、牛、豚など)などの哺乳動物などの全ての脊椎動物が含まれる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤又は予防剤を更に含むことができる。
【実施例】
【0084】
本発明の目的及び技術的解決策をより明確にするために、以下の実施例を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、当業者であれば、以下の実施例は本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解するであろう。実施例において特定の条件が指定されていない場合、それらは従来の条件又は製造業者が推奨する条件に従って実施されるものとする。使用した試薬又は機器について製造業者が示されていない場合は、全て市場で購入できる従来品である。
【0085】
化合物の構造は核磁気共鳴(1H NMR)又は質量スペクトル(MS)により決定した。NMRは、Bruker AVANCE-500又はVarian-400MHz NMRによって測定した。使用した溶媒は、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化メタノール(CD3OD)、重水素化水(D2O)などであった。内部標準はテトラメチルシラン(TMS)であり、化学シフト(δ)は百万分率(ppm)で示した。
【0086】
MS測定機器は、Agilent(ESI)質量分析計(製造業者:Agilent、モデル:Agilent 6110)であった。
【0087】
分取高速液体クロマトグラフィー分離方法:
【0088】
機器モデル:Elite P3500、クロマトグラフィーカラム:welch Ultimate XB-C18(30×250mm、10μm);クロマトグラフィーカラム温度、25℃;流量:42mL/分;検出波長:254nm;溶出勾配:(0分:10%A、90%B;25分:90%A、10%B;35分:90%A、10%B;38分:10%A、90%B;40分:10%A、90%B);移動相:A:メタノール、B:0.05%ギ酸水溶液。
【0089】
以下の実施例で合成した化合物は分子式で表される化合物であり、化合物名はChemBioDrawソフトウェアによって生成されたものである。
【0090】
実施例1:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)2-プロピルペンタンチオエート(化合物1)の合成
【化10】
チアミン一リン酸クロリド(1a)(含有量83%、20g、0.04モル、1.0当量)を水(40mL)に溶解し、撹拌により溶解した。水酸化ナトリウム溶液(30%)を滴下してpHを10.5~11.0に調整し、混合物を30分間撹拌した。系の温度を25℃に維持し、テトラヒドロフラン(20mL)で希釈した2-プロピルペンタノイルクロリド(1b)(0.07モル、1.75当量)を20分以内に滴下した。混合物を10分間撹拌し、水相のpHを1.5に調整した。系が混濁し、酢酸エチル(100mL)をゆっくり滴下した。白色固体が沈殿し、それを濾過し、乾燥させた後、水(100mL)に溶解した。混合物にNaHCO
3(1.0当量)を加え、撹拌して少数の泡を発生させ、濃縮乾固し、DCMを加え、撹拌し、溶解し、濾過して塩を除去し、濾液を濃縮して、表題化合物1(白色固体)を得た。
MS m/z(ESI):489[M+1]
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ7.90(s,1H),7.74(s,1H),4.42(s,2H),3.74-3.76(m,2H),2.58(s,2H),2.42-2.43(m,1H),2.38(s,3H),2.10(s,3H),1.41-1.44(m,2H),1.30-1.35(m,2H),1.28-1.33(m,4H),0.80-0.83(t,6H).
【0091】
実施例2:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)2-エチルブタンチオエート(化合物2)の合成
【化11】
表題化合物2(白色固体)は、実施例1の1bを2-エチルブタノイルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):461[M+1]
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ9.18(br,1H),8.19(s,1H),8.15(br,1H),7.84(s,1H),4.48(s,2H),3.89(q,2H),2.63(t,2H),2.48(s,3H),2.34-2.27(m,1H),2.14(s,3H),1.51-1.37(m,4H),0.80(t,6H).
【0092】
実施例5:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)O-フェネチルカルボノチオエート(化合物5)の合成
【化12】
表題化合物5(オフホワイト固体)は、実施例1の1bをクロロギ酸フェネチルに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):511.1[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.84(s,2H),7.29-7.21(m,5H),6.73(s,2H),4.25(m,4H),3.65(m,4H),2.87(t,2H),2.25(s,3H),2.07(s,3H).
【0093】
実施例6:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)O-ベンジルカルボノチオエート(化合物6)の合成
【化13】
表題化合物6(オフホワイト固体)は、実施例1の1bをクロロギ酸ベンジルに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):497.1[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.84(m,2H),7.37(m,5H),6.75(s,2H),5.04(m,2H),4.37(m,2H),3.37(m,2H)2.59(m,2H),2.26(s,3H),2.08(s,3H).
【0094】
実施例7:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)5-クロロチオフェン-2-カルボチオエート(化合物7)の合成
【化14】
表題化合物7(白色固体)は、実施例1の1bを5-クロロチオフェン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):507[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.95(s,1H),7.92(s,1H),7.61(d,1H),7.31(d,1H),4.49(s,2H),3.86(t,2H),2.70(t,2H),2.33(s,3H),2.20(s,3H).
【0095】
実施例8:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)5-メトキシベンゾフラン-2-カルボチオエート(化合物8)の合成
【化15】
【0096】
表題化合物8(オフホワイト固体)は、実施例1の1bを5-メトキシベンゾフラン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):537[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.95(s,2H),7.63(s,2H),7.28(s,1H),7.18(s,1H),4.47(s,2H),3.86(q,2H),3.82(s,3H),2.71(t,2H),2.28(s,3H),2.20(s,3H).
【0097】
実施例9:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)フラン-2-カルボチオエート(化合物9)の合成
【化16】
表題化合物9(オフホワイト固体)は、実施例1の1bをフラン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):456.9[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ8.02(s,1H),7.85(s,1H),7.83(s,1H),7.27(d,1H),6.75(t,1H),4.45(s,2H),3.85(q,2H),2.70(t,2H),2.30(s,3H),2.17(s,3H).
【0098】
実施例10:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)1H-ピロール-2-カルボチオエート(化合物10)の合成
【化17】
表題化合物10(オフホワイト固体)は、実施例1の1bを1H-ピロール-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):456.0[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ12.12(s,1H),7.88(s,1H),7.86(s,1H),7.14(s,1H),6.77(d,1H),6.20(m,1H),4.45(s,2H),3.85(q,2H),2.70(t,2H),2.36(s,3H),2.15(s,3H).
【0099】
実施例11:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-カルボチオエート(化合物11)の合成
【化18】
表題化合物11(オフホワイト固体)は、実施例1の1bを5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):567[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.92(s,2H),7.84(dd,2H),7.70(d,1H),7.62(d,1H),7.35(dd,2H),4.48(s,2H),3.88(q,2H),2.72(t,2H),2.31(s,3H),2.19(s,3H).
【0100】
実施例12:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)5-(メトキシメチル)フラン-2-カルボチオエート(化合物12)の合成
【化19】
表題化合物12(オフホワイト固体)は、実施例1の1bを5-(メトキシメチル)フラン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):501.5[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.88(s,2H),7.40(s,2H),7.24(s,1H),6.69(s,1H),4.44(s,4H),3.86(q,2H),3.30(s,3H),2.72(t,2H),2.32(s,3H),2.16(s,3H).
【0101】
実施例13:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)ベンゾフラン-2-カルボチオエート(化合物13)の合成
【化20】
表題化合物13(白色固体)は、実施例1の1bをベンゾフラン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):507[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.98(d,2H),7.83(d,1H),7.73(s,2H),7.58(t,1H),7.40(t,1H),4.49(s,2H),3.89(d,2H),2.72(s,2H),2.29(s,3H),2.21(s,3H).
【0102】
実施例14:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)チオフェン-2-カルボチオエート(化合物14)の合成
【化21】
表題化合物14(白色固体)は、実施例1の1bをチオフェン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):473[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ8.08(d,1H),7.92(s,1H),7.90(s,1H),7.71(d,1H),7.24(t,1H),4.47(s,2H),3.85(q,2H),2.70(t,2H),2.31(s,3H),2.18(s,3H).
【0103】
実施例15:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)フラン-3-カルボチオエート(化合物15)の合成
【化22】
表題化合物15(オフホワイト固体)は、実施例1の1bをフラン-3-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):457[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ8.39(s,1H),7.96(s,1H),7.88(s,1H),7.86(s,1H),6.68(d,1H),4.49(s,2H),3.86(q,2H),2.69(t,2H),2.34(s,3H),2.17(s,3H).
【0104】
実施例16:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)ピリジン-2-カルボチオエート(化合物16)の合成
【化23】
表題化合物16(オフホワイト固体)は、実施例1の1bを2-ピリジルカルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):468.1[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ8.67(d,1H),8.03(t,1H),7.90(s,2H),7.78(d,1H),7.73(t,1H),7.28(s,2H),4.43(s,2H),3.86(q,2H),2.70(t,2H),2.25(s,3H),2.16(s,3H).
【0105】
実施例17:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)5-メチルフラン-2-カルボチオエート(化合物17)の合成
【化24】
表題化合物17(オフホワイト固体)は、実施例1の1bを5-メチルフラン-2-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):471[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.86(s,2H),7.19(d,1H),7.40(d,1H),4.44(s,2H),3.86(q,2H),2.67(t,2H),2.37(s,3H),2.32(s,3H),2.15(s,3H).
【0106】
実施例18:(Z)-S-(2-(N-((4-アミノ-2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)ホルムアミド)-5-(ホスホノオキシ)ペント-2-エン-3-イル)2,5-ジメチルフラン-3-カルボチオエート(化合物18)の合成
【化25】
表題化合物18(オフホワイト固体)は、実施例1の1bを2.5-ジメチルフラン-3-カルボニルクロリドに置き換えた以外は実施例1におけるのと同じ合成経路により調製した。
MS m/z(ESI):485[M+1]
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ7.94(s,1H),7.84(s,1H),6.17(s,1H),4.47(s,2H),3.83-3.79(m,2H),2.67(s,2H),2.41(s,3H),2.35(s,3H),2.22(s,3H),2.17(s,3H).
【0107】
生物学的アッセイ
実験例1
BCAタンパク質アッセイキットは碧云天(Beyotime)社から購入し、Aβ40及びAβ42検出キットはWakoから購入し、細胞培養関連試薬はGibcoから購入した。
【0108】
HEK293APP/sw過剰発現細胞を、48ウェルプレート中で10%のFBS、100μg/mLのG418(Geneticin)、及び1×ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するDMEM培地中で培養した。4mMの化合物ストック溶液(DMEM培養培地に化合物を溶解することによって調製)を0.22μm滅菌フィルターで濾過し、その後の使用のために-20℃で保存した。70%の細胞密度で、最終濃度が400μMに達するように40μLの化合物試験溶液を各ウェルに添加し、プレートを24時間インキュベートした。
【0109】
培養培地の上清を回収した。上清の一部にBCA試薬を添加し、室温で30分間インキュベートした後、各ウェルの吸光度値(すなわち、OD値)をマイクロプレートリーダーにより570nmで測定した。総タンパク質濃度は、タンパク質標準曲線に従って計算した。一方、上清の残りの部分(100μL)を、コートした96ウェルプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートし、溶液を除去し、試薬を洗浄した後、HRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)標識抗体を添加し、4℃で2時間インキュベートした。試薬を除去し、洗浄した後、TMB発色溶液を添加し、プレートを室温で30分間インキュベートし、その後、停止溶液を添加して、反応を停止させた。各ウェルの吸光度値(すなわち、OD値)をマイクロプレートリーダーにより450nmで測定した。Aβ40及びAβ42の濃度は、それぞれAβ40及びAβ42の標準曲線に従って計算した。最終的に、Aβ40及びAβ42の濃度を総タンパク質濃度によって調整して、最終濃度を得た。試験結果を次の表に示す。
【0110】
【0111】
*化合物試験溶液はブランク対照には添加しなかった。
上記の試験結果によれば、本発明の化合物は、Aβ42及び/又はAβ40のレベルを有意に低下させることができる。
【0112】
実験例2.急性毒性試験
2.1.試験目的
【0113】
試験化合物の安全性の予備評価のために、試験化合物をマウスに強制投与した後の毒性反応及び死亡を観察した。
【0114】
2.2.試験方法
【0115】
2.2.1.試験材料
CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)は、Shanghai Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から購入した。
【0116】
試験動物はBeijing Keao Xieli Feed Co., Ltd.から提供された18~20gの昆明系統マウスであった。
【0117】
2.2.2.試験手順
1)0.7%CMC-Naの調製:0.7gのCMC-Naを蒸留水に添加して、0.7g/100mLの溶液を調製した。
2)被験化合物を0.7%CMC-Naに添加し、100mg/mLの懸濁液を調製した。
3)各試験群は10匹のマウスで構成され、全て雄であった。各マウスに試験化合物(2000mg/kg)を1日1回、15日間の累積期間、強制経口投与した。投与後、動物の以下の応答について観察した:動物の食餌、外観、行動、分泌物、排泄物、異常な動物応答の症状、発症時間、重篤度、持続期間、可逆性、及び死亡。体重は、投与日、7日目及び14日目に記録した。
【0118】
2.3.試験結果
【0119】
【0120】
試験化合物の投与後、動物は異常を示さなかった。継続的な観察の間に重大な毒性反応は認められず、これは試験化合物が安全であることを示した。
【0121】
実験例3.水迷路行動試験
3.1.試験原理
水中のげっ歯類には、水環境から逃げようとする強い動機があり、最も速く、かつ最も直接的な方法で水環境から逃げることができる。水環境から逃げることを学習するプロセスは、動物の学習能力を反映している。周囲の環境に応じた空間的な位置決めと、水中の安全な場所(プラットフォームなど)まで意図的に泳ぐことは、動物の空間学習及び記憶能力を反映している可能性がある。
【0122】
3.2.試験方法
【0123】
3.2.1.試験材料
1)試験動物
試験動物は、APP/PS1 2×Tgマウス(ブランク対照としてC57BL/6野生型マウス)であった。生後6~8ヶ月、体重20~40gのマウスをジャクソン研究所から購入した。
【0124】
APP/PS1マウスは、APP/PS1ジトランスジェニックアルツハイマー病(2×Tg-AD)モデルマウスであり、Aβの沈着の出現はタウタンパク質の病理学的変化よりも数か月早く、これは、アルツハイマー病の臨床プロセス及び病理学的変化をより正確にシミュレートできる。
【0125】
2)主な試薬
CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、Shanghai Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から購入;
陽性対照:BTMP(ベンフォチアミン)、Shanghai Raising Pharmaceutical Co., Ltd.により調製。
【0126】
比較化合物1:
【化26】
を、CN201811435584.Xの実施例6の方法に従って調製した。
【0127】
3)主な機器
【0128】
【0129】
3.2.2.試験方法
1)薬物の調製及び投与の情報
1.1.薬物の調製
0.7%CMC-Naの調製:0.7gのCMC-Naに適量の水を加え、加熱して溶解し、室温まで放冷し、100mLに希釈し、4℃で保存した。
【0130】
BTMPの調製:100mgのBTMPを10mLの0.7%CMC-Naに添加して、10mg/mLの懸濁液を調製して使用した。
【0131】
試験化合物及び比較化合物1の調製:100mgの被験化合物を秤量し、10mLの0.7%CMC-Naに添加して、10mg/mLの懸濁液を調製して使用した。
【0132】
1.2.投与情報
実験用マウスをランダムに群分けした(1群当たり9匹又は10匹のマウス)。各群のマウスに、0.2mL/10g体重の投与量を1日1回、8週間強制経口投与した。
【0133】
【0134】
2)試験手順
ブランク対照群、モデル群、及び試験群のマウスに、上記の投与量/仕様に従って連続8週間、経口投与した。水迷路の訓練及び試験を投与の最終週に開始した。水迷路の訓練及び試験を6日間続け、訓練期間は5日間、試験期間は1日であった。更に、水迷路の訓練及び試験期間中(合計6日間)、照明などの室内条件を一定に保ち、部屋は静かに保ち、環境及び人員からの干渉は排除した。
【0135】
2.1.試験前の準備:水温を22±3℃に保ちながら適量の水を水迷路プールに入れた。プラットフォームを水面下1cmの固定位置(目標象限)に置き、水が白くなってプラットフォームがはっきり見えなくなるまで二酸化チタンを添加した。
【0136】
2.2.訓練期間(1日目~5日目):各日、最初の象限での訓練の前に、各マウスをプラットフォーム上に15秒間置き(プラットフォーム上でのマウスの安心感を高めるため)、その後マウスをプラットフォームが配置された象限からプールに(頭をプールの壁に向けて)入れ、水泳時間は60秒に設定した。マウスが60秒以内にプラットフォームを発見し、5秒間滞在した場合、プラットフォームの発見に成功したと見なした。マウスがプラットフォームを発見できなかった場合、時間は60秒として記録した。マウスをプラットフォームに誘導し、20秒間滞在させた後、マウスを取り出し、このマウスの象限訓練を終了した。
【0137】
最初の象限での訓練の後、残りの3つの象限において順番にマウスを訓練した。訓練前にマウスをプラットフォーム上に15秒間置く必要はない。2つの象限ごとの各マウスの訓練を10~15分の間隔で実施した。このようにして5日間連続して訓練を実行した。
【0138】
2.3.試験期間(6日目):最後の訓練から24時間後、プラットフォームを取り外し、以前にプラットフォームが配置された象限の反対側の位置(つまり、プラットフォームから最も離れた位置)にマウスを落下させた。マウスが目標象限(以前にプラットフォームが配置された象限)にいた時間、以前にプラットフォームが配置された位置を横断した回数(プラットフォームを横断した回数)、及び以前にプラットフォームが配置された位置を初めて横断した時間(潜時)を記録し、これらをマウスの空間学習及び記憶能力を評価するための指標として使用した。
【0139】
【0140】
注:ブランク対照群と比較して、**P<0.01、*P<0.05;モデル群と比較して、##P<0.01、#P<0.05。
試験結果によれば、本願の化合物を投与した試験群の動物の潜伏期間(例えば、化合物1を投与した試験群の動物の潜伏期間は22.0±1.5秒であった)は、ブランク対照群の動物の潜伏時間(21.8±3.3秒)と実質的に同等であり、BTMP又は比較化合物1を投与した試験群の動物の潜伏時間(それぞれ、27.3±1.6秒及び27.0±1.3秒)よりもはるかに短かった。本願の化合物によって達成されるこの効果は予想外である。
【0141】
実験例4.跳躍台試験
1.1.試験動物及び試薬
本試験で使用したマウスは、Xipuer-BIKAI Laboratory Animal Co.,Ltd.から購入し、生後3~4週、体重16~18gのSPFグレードICRマウスであった。
【0142】
スコポラミン臭化水素酸塩三水和物は、aladdinから購入した(製品番号:S107418、純度:98%)。
【0143】
亜硝酸ナトリウム(NaNO2)は、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から購入した(製品番号:10020018、仕様:分析グレード)。
【0144】
1.2.薬物の調製及び投与の情報
1)薬物の調製
0.7%CMC-Naの調製:0.7gのCMC-Naを秤量し、適量の精製水を加え、加熱して溶解し、室温まで放冷し、100mLに希釈し、4℃で保存した。
【0145】
試験品の調製:100mgの被験化合物を秤量し、10mLの0.7%CMC-Naに添加して、10mg/mLの懸濁液を調製して使用した。
【0146】
2)投与情報
実験用マウスをランダムに群分けした(1群当たり9匹又は10匹のマウス)。各群のマウスに、0.2mL/10g体重の投与量を1日1回、3週間強制経口投与した。
【0147】
【0148】
1.3.試験手順
実験用動物に、上記の投与量/仕様に従って連続3週間強制投与した。投与最終日に訓練を開始し、24時間後に試験を実施した。
【0149】
1)スコポラミン誘発性急性記憶機能障害モデル
実験用動物に3週間強制投与し、最後の投与の0.5時間後にスコポラミン(マウス:2mg/kg)を腹腔内注射した。動物をYLS-3TB跳躍台検出器を使用して訓練し、24時間後に記憶獲得機能を試験した。潜伏期間(カウント開始から最初に台から飛び降りるまでの時間)及びエラー数(電気ショック数)を記録した。
【0150】
2)亜硝酸ナトリウム誘発性低酸素性記憶障害モデル
実験用動物に3週間強制投与した。最後の投与から1時間後、動物をYLS-3TB跳躍台検出器を用いて訓練した。訓練後、直ちに亜硝酸ナトリウム(マウス:120mg/kg)を(首に)皮下注射した。跳躍台試験を24時間後に実施した。潜伏期間(カウント開始から最初に台から飛び降りるまでの時間)及びエラー数(電気ショック数)を記録した。
【0151】
1.4.跳躍台試験における行動検出
YLS-3TB跳躍台検出器は、透明板で5つの区画に分割した。区画の底部を銅グリッドで覆い、50Vの電圧を印加した。高さ3.5cm、直径3.5cmのゴムパッド台を各区画に入れて、マウスが電気ショックを回避するための安全領域として機能させた。正式な試験前の実験用マウスの訓練:環境に慣れるために実験用マウスを台付きの小さな区画に5分間入れ(5つの区画は接続されている)、その後、電圧50V、電流1.00mAで通電して刺激した(この時点では全ての実験用マウスがグリッド上にいた)。マウスは高いところから飛び降りる習性がある。飛び降りると、ショックを受けて記憶が生成される。電流を5分間印加し、これは訓練プロセスとして機能した。
【0152】
試験:動物を1匹ずつ跳躍区画内の台に置いた。各動物を置く時間間隔は5秒間であった。最初の動物を台に置いた後、直ちに電気を印加した。電気印加時間は6分間であった。電気印加終了後にデータを印刷し、潜伏期間(カウント開始から最初に台から飛び降りるまでの時間)とエラー数(試験期間中の電気ショック数)を記録した。動物を置く時間が異なるため、動物を置く実際の時間に応じて時間差を差し引くことができる。
【0153】
【0154】
注:ブランク対照群と比較して、**P<0.01、*P<0.05;ADモデル群と比較して、##P<0.01、#P<0.05。
【0155】
【0156】
注:ブランク対照群と比較して、**P<0.01、*P<0.05;ADモデル群と比較して、##P<0.01、#P<0.05。
【0157】
実験例5.暗所回避試験における行動検出
1.試験材料
1.1.試験動物及び試薬
本試験で使用したマウスは、Xipuer-BIKAI Laboratory Animal Co.,Ltd.から購入し、生後3~4週、体重16~18gのSPFグレードICRマウスであった。
【0158】
無水エタノール:Shanghai Titan Technology Co.,Ltd.;製品番号:G73537B;純度:≧99.7%。
【0159】
1.2.薬物の調製及び情報
1)薬物の調製
0.7%CMC-Naの調製:0.7gのCMC-Naを秤量し、適量の精製水を加え、加熱して溶解し、室温まで放冷し、100mLに希釈し、4℃で保存した。
【0160】
試験品の調製:100mgの被験化合物を秤量し、10mLの0.7%CMC-Naに添加して、10mg/mLの懸濁液を調製して使用した。
【0161】
2)投与情報
実験用マウスをランダムに群分けした(1群当たり9匹又は10匹のマウス)。各群のマウスに、0.2mL/10g体重の投与量を1日1回、3週間強制経口投与した。
【0162】
【0163】
2.エタノールにより誘発される記憶再生障害モデル
実験用マウス動物に3週間強制投与した。最後の投与から1時間後に、マウスをYLS-17B暗所回避試験機を使用して訓練した。試験を24時間後に実行した。45%エタノール溶液(0.1mL/10g)を試験の30分前に強制経口投与した。動物の潜伏期間(カウント開始から最初に暗区画に入るまでの時間)及びエラー数(電気ショック数)を記録した。
【0164】
暗所回避自動試験機の活動ボックスは2つの区画(明暗)で構成され、2つの区画の間には穴があり、ボックスは底部を銅グリッドで覆われ、動物は通常、暗区画に入る。正式な試験の前に、実験用マウスを、背中を穴の入り口に向けて明区画内に入れることによって訓練して、5分間環境に慣れさせ、その後、暗区画内の銅グリッドに電圧50V、電流1.00mA(実際の状況に応じて調整できる)で2時間通電して刺激した。動物が電気ショックを受けると、明区画に入るか、又は2つの区画の間を行ったり来たりした。電流を5分間連続して印加し、これは訓練プロセスとして機能した。
【0165】
試験:エタノールでモデル化したマウスを、背中を穴の入り口に向けて一匹ずつ明区画内に入れ、各動物を置く時間間隔は5秒であった。最初の動物を明区画内に置いた後、すぐに電気を印加した。電気印加時間は6分間であった。電気印加終了後にデータを印刷し、潜伏期間(カウント開始から最初に暗区画に入るまでの時間)とエラー数(試験期間中の電気ショック数)を記録した。動物を置く時間が異なるため、動物を置く実際の時間に応じて時間差を差し引く必要がある。マウスが5分以内に暗区画に入らなかった場合、潜伏期間は300秒として記録した。
【0166】
統計分析:全てのデータは平均値±標準偏差として表し、分析にはSPSSソフトウェアを使用した。
【0167】
【0168】
注:ブランク群と比較して、**P<0.01、*P<0.05;ADモデル群と比較して、##P<0.01、#P<0.05。
【0169】
実験例6.薬物動態試験
1.1実験動物及び試薬
この試験で使用したSDラットはZhejiang Charles rive Laboratory Animal Co.,Ltd.から購入した。体重約250gのSPFグレードの雄雌両方のラットを使用した。
【0170】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)は、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から入手した(製品番号:20160704)。
【0171】
BTMPはShanghai Raising Pharmaceutical Co.,Ltd.によって調製されている。
【0172】
比較化合物2:
【化27】
を、CN201811435584.Xの実施例13に記載の方法に従って調製した。
【0173】
1.2薬物の調製
0.7%CMC-Naの調製:7gのCMC-Naを正確に秤量し、1Lのビーカーに入れた。マグネチックスターラーをビーカーに入れ、次に1Lの精製水を添加した。透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0174】
試験品の調製:適量の試験品を秤量し、乳鉢で微粉末として粉砕した。特定の量のビヒクルを適切な容器に添加し、次に磁気撹拌下で粉砕した試験品を容器に添加した。外観が均一になるまで混合物を撹拌した。残りのビヒクルを徐々に添加し、続いて少なくとも20分間磁気撹拌して、15.353mMの濃度の溶液を調製した。
【0175】
1.3試験手順
(1)吸収試験
SDラットを3つの群(各群6匹のラット、半分が雄で半分が雌)に分けた。各群の動物に、化合物1(75mg/kgの遊離塩基、15.353mM)、BTMP(71.6mg/kg、15.353mM)、又は比較化合物2(75mg/kgの遊離塩基、15.353mM)をそれぞれ単回強制投与した。薬物投与前(0分)並びに薬物投与から3分、8分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、5時間、8時間、12時間、24時間及び48時間後に採血した(約200μL/回)。血液をEDTAで抗凝固処理し、採取後氷上に置いた。各時点で採取した血液サンプルについて、150μLの全血を採取し、150μLの5.2%過塩素酸を添加して、TM(チアミン)及びTDP(チアミン二リン酸)を測定した(TM及びTDPは、化合物1、BTMP及び比較化合物2のインビボ代謝産物であった)。サンプルは全て冷凍し、-80℃の冷蔵庫で保管した。
【0176】
(2)脳分布試験
雄のSDラットを3つの群(各群16匹のラット)に分けた(4匹の動物を4つの時点で屠殺した)。各群の動物に、化合物1(75mg/kgの遊離塩基、15.353mM)、BTMP(71.6mg/kg、15.353mM)、又は比較化合物2(75mg/kgの遊離塩基、15.353mM)のいずれかをそれぞれ単回強制投与した。投与から5分、1時間、3時間、及び9時間後に動物を屠殺した。屠殺後直ちに脳を取り出し、氷冷水ですすぎ、水分を吸収させた。50mgの脳組織を秤量し、0.45mLの100mMリン酸水素二カリウム緩衝液(pH=5.0)に添加し、ホモジナイズした。血液サンプルを同時に採取し、EDTAで抗凝固処理した。採取後、血液サンプルを氷上に置いた。150μLの全血を採取し、150μLの5.2%過塩素酸を添加してTMを測定した。別の4匹の動物には、内因性TM濃度を測定するために生理食塩水を強制投与した。サンプルは全て冷凍し、-80℃の冷蔵庫で保管した。
【0177】
(3)サンプルのアッセイ
サンプル中のTM及びTDPの濃度をHPLC-FLDによって測定した。
【0178】
(4)データ処理
DASソフトウェアのノンコンパートメントモデルを使用して、投与後のラットの血液中のTM及びTDPの薬物動態パラメータを計算した。ラットにおける薬物投与後の脳組織中のTM濃度を測定し、平均値及び標準偏差を計算した。薬物-時間曲線下面積AUCは、台形法を使用して計算した。
【0179】
1.4試験結果
1.4.1吸収試験におけるラットの血漿濃度及び薬物動態パラメータ
ラットへの単回強制投与後の化合物1、BTMP、及び比較化合物2の薬物動態パラメータの概要を表1に示す。
【0180】
【0181】
上記試験結果によれば、同じ薬剤用量において、化合物1投与群のTM及びTDP曝露量は、BTMP及び比較化合物2投与群のものよりも高かった。更に、TDPのt1/2に関して、化合物1投与群のt1/2は、BTMP又は比較化合物2投与群のt1/2に比べて有意に高かった。
【0182】
1.4.2脳分布試験における異なる時間でのラットの脳及び全血中の濃度変化
化合物1、BTMP、及び比較化合物2をラットに単回強制投与した後の異なる時点での脳及び全血中のTM濃度を表2に示す。
【0183】
【0184】
上記のデータによれば、化合物1、BTMP、及び比較化合物2をラットに強制投与した後の脳中のTMのAUC(0時間での濃度を差し引いて計算)は、それぞれ1156.6ng・h/g、739.9ng・h/g、及び555.9ng・h/gであった。化合物1投与群のTMのAUCは、BTMP投与群のものの1.56倍、比較化合物2投与群のものの2.08倍であった。
【0185】
本明細書に記載された変更に加えて、本発明の様々な変更は、以上の説明から当業者には明らかとなるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。本明細書で参照される全ての特許、出願、雑誌記事、書籍、及びその他の開示を含む各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【化1】
(式中、
環Aが、C
6-10芳香環又は5~14員の複素芳香環であり、
L
1が、直接結合又は-R
2-C
1-6アルキレン-であり、
R
2が、-O-、-NH-、-S-、-S(=O)-、又は-S(=O)
2-であり、
R
1が、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
3、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-C(=O)OR
3、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-S(=O)
2NR
3R
4、-NR
3R
4、-C(=O)NR
3R
4、-NR
3-C(=O)R
4、-NR
3-C(=O)OR
4、-NR
3-S(=O)
2-R
4、-NR
3-C(=O)-NR
3R
4、-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、-O-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択されるか、又はnが1より大きい場合、2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
3-6炭化水素環、3~10員の複素環、C
6-10芳香環、若しくは5~14員の複素芳香環を形成し、
R
3及びR
4が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
上記のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、炭化水素環、ヘテロシクリル、複素環、アリール、芳香環、ヘテロアリール、複素芳香環、及びアラルキルは、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
5、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-C(=O)OR
5、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-S(=O)
2NR
5R
6、-NR
5R
6、-C(=O)NR
5R
6、-NR
5-C(=O)R
6、-NR
5-C(=O)OR
6、-NR
5-S(=O)
2-R
6、-NR
5-C(=O)-NR
5R
6、-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、-O-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルが、更に、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R
5及びR
6が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
nが、0、1、2、3、又は4の整数であるが、
但し、L
1が直接結合である場合、環Aはベンゼン環ではない。)
【請求項2】
環Aがベンゼン環若しくは5~6員の複素芳香環である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項3】
環Aがベンゼン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、若しくはピリジン環である、請求項2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項4】
L
1が直接結合若しくは-O-C
1-6アルキレン-である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項5】
L
1が直接結合、-O-CH
2-、若しくは-O-CH
2CH
2-である、請求項4に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項6】
R
1が、ハロゲン、C
1-6アルキル、ハロゲンで置換されていてもよいC
6-10アリール、若しくは-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルであるか、若しくは2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
6-10芳香環を形成し、これが-OR
5で更に置換されていてもよい、請求項1~
3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項7】
R
1が、-Cl、メチル、Fで置換されていてもよいフェニル、若しくは-CH
2-O-CH
3であるか、若しくは2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってベンゼン環を形成し、これがメトキシで更に置換されていてもよい、請求項6に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項8】
【化2】
が、
【化3】
である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項9】
以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【表1】
【請求項10】
予防若しくは治療有効量の請求項1~
3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグと、1つ以上の薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項11】
神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和のための薬剤の製造における、請求項1~
3のいずれか一項に記載の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は請求項10に記載の医薬組成物の、使用。
【請求項12】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、段階的な神経細胞死によって引き起こされる麻痺性認知症、及び進行性失禁によって引き起こされる疾患からなる群から選択され、好ましくはアルツハイマー病である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式(I)の化合物を調製するための方法であって、
式(I)-aの化合物を式(I)-bの化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ることを含む、方法。
【化4】
(式中、
LGが脱離基であり、好ましくはハロゲン、最も好ましくは塩素であり、
残りの基が請求項1~
3のいずれか一項に定義される通りである。)
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【化1】
(式中、
環Aが、C
6-10芳香環又は5~14員の複素芳香環であり、
L
1が、直接結合又は-R
2-C
1-6アルキレン-であり、
R
2が、-O-、-NH-、-S-、-S(=O)-、又は-S(=O)
2-であり、
R
1が、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
3、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-C(=O)OR
3、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-S(=O)
2NR
3R
4、-NR
3R
4、-C(=O)NR
3R
4、-NR
3-C(=O)R
4、-NR
3-C(=O)OR
4、-NR
3-S(=O)
2-R
4、-NR
3-C(=O)-NR
3R
4、-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、-O-C
1-6アルキレン-NR
3R
4、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択されるか、又はnが1より大きい場合、2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
3-6炭化水素環、3~10員の複素環、C
6-10芳香環、若しくは5~14員の複素芳香環を形成し、
R
3及びR
4が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
上記のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、炭化水素環、ヘテロシクリル、複素環、アリール、芳香環、ヘテロアリール、複素芳香環、及びアラルキルは、各発生時に、各々、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、C
6-12アラルキル、=N-OR
5、-C(=NH)NH
2、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-C(=O)OR
5、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-S(=O)
2NR
5R
6、-NR
5R
6、-C(=O)NR
5R
6、-NR
5-C(=O)R
6、-NR
5-C(=O)OR
6、-NR
5-S(=O)
2-R
6、-NR
5-C(=O)-NR
5R
6、-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、-O-C
1-6アルキレン-NR
5R
6、及び-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、環状ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルが、更に、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミノ、シアノ、ニトロ、C
1-6アルキル、C
3-6環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R
5及びR
6が、各発生時に、各々、H、C
1-6アルキル、C
3-10環状ヒドロカルビル、3~10員のヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~14員のヘテロアリール、及びC
6-12アラルキルからなる群から独立して選択され、
nが、0、1、2、3、又は4の整数であるが、
但し、L
1が直接結合である場合、環Aはベンゼン環ではない。)
【請求項2】
環Aがベンゼン環若しくは5~6員の複素芳香環である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項3】
環Aがベンゼン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、若しくはピリジン環である、請求項2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項4】
L
1が直接結合若しくは-O-C
1-6アルキレン-である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項5】
L
1が直接結合、-O-CH
2-、若しくは-O-CH
2CH
2-である、請求項4に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項6】
R
1が、ハロゲン、C
1-6アルキル、ハロゲンで置換されていてもよいC
6-10アリール、若しくは-C
1-6アルキレン-O-C
1-6アルキルであるか、若しくは2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってC
6-10芳香環を形成し、これが-OR
5で更に置換されていてもよい、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項7】
R
1が、-Cl、メチル、Fで置換されていてもよいフェニル、若しくは-CH
2-O-CH
3であるか、若しくは2つのR
1が、それらが結合している基と一緒になってベンゼン環を形成し、これがメトキシで更に置換されていてもよい、請求項6に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項8】
【化2】
が、
【化3】
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【請求項9】
以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ。
【表1】
【請求項10】
予防若しくは治療有効量の請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグと、1つ以上の薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項11】
神経変性疾患の予防若しくは治療、又は神経変性疾患の症状の緩和のための薬剤の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、互変異性体、多形体、溶媒和物、代謝産物、同位体標識化合物、若しくはプロドラッグ、又は請求項10に記載の医薬組成物の、使用。
【請求項12】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、段階的な神経細胞死によって引き起こされる麻痺性認知症、及び進行性失禁によって引き起こされる疾患からなる群から選択され、好ましくはアルツハイマー病である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式(I)の化合物を調製するための方法であって、
式(I)-aの化合物を式(I)-bの化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ることを含む、方法。
【化4】
(式中、
LGが脱離基であり、好ましくはハロゲン、最も好ましくは塩素であり、
残りの基が請求項1~3のいずれか一項に定義される通りである。)
【国際調査報告】