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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】被覆切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20240514BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B23B27/14 A
C23C16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572088
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2022064142
(87)【国際公開番号】W WO2022248522
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】21176130.9
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フォン フィーアント, リーヌス
(72)【発明者】
【氏名】モーヤン ブレニング, ラルカ
(72)【発明者】
【氏名】エンクヴィスト, ヤン
【テーマコード(参考)】
3C046
4K030
【Fターム(参考)】
3C046FF09
3C046FF10
3C046FF13
3C046FF16
3C046FF17
3C046FF22
3C046FF23
3C046FF24
3C046FF25
3C046FF27
4K030AA03
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA02
4K030BA18
4K030BA27
4K030BA38
4K030BA41
4K030BA42
4K030BA43
4K030BB12
4K030CA02
4K030CA03
4K030CA05
4K030HA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA22
(57)【要約】
本発明は、被覆で少なくとも部分的に被覆された基材を含む切削工具であって、前記基材が超硬合金、サーメット、またはセラミックの基材であり、前記被覆がTi(C,N)の層、Alの層、およびその間の結合層を含む、切削工具に関する。前記Ti(C,N)層は柱状結晶粒で構成され、Ti(C,N)層の平均結晶粒度D422は25~50nmであり、Ti(C,N)層は、結合層に隣接するB1部分を含み、B1部分のTi(C,N)結晶粒の平均結晶粒度は、Ti(C,N)層全体の平均結晶粒度D422よりも大きい。Ti(C,N)層のB1部分におけるTi(C,N)結晶粒は130nm~300nmの平均結晶粒度を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti(C,N)の層、Alの層、およびその間の結合層を含む被覆で少なくとも部分的に被覆された基材を含む切削工具であって、
3~25μmの厚さを有する前記Ti(C,N)層が柱状結晶粒で構成され、Ti(C,N)層の平均結晶粒度D422が、CuKα放射線を用いたX線回折により測定したときに25~50nmであり、結晶粒度D422が、シェラーの式:
により(422)ピークの半値全幅(FWHM)から計算され、式中、D422はTi(C,N)の平均結晶粒度であり、Kはここで0.9に設定された形状係数であり、λはここで1.5405Åに設定されたCuKα放射線の波長であり、B422は(422)反射のFWHM値であり、θはブラッグ角であり、
Ti(C,N)層が、結合層に隣接するB1部分を含み、B1部分のTi(C,N)結晶粒の平均結晶粒度が、Ti(C,N)層の全厚さにわたる平均結晶粒度D422よりも大きく、Ti(C,N)層のB1部分において、Ti(C,N)結晶粒が、基材表面に平行に延びるTi(C,N)層のB1部分の平面において透過菊池回折(TKD)により測定したときに130~300nmの平均結晶粒度を有する、切削工具。
【請求項2】
Ti(C,N)層のB1部分におけるTi(C,N)層が、基材表面に平行に延びる平面においてTKDにより測定したときに配向を示し、Ti(C,N)層の表面法線が基材表面の表面法線と平行であり、分析された面積の≧93%、好ましくは≧95%が、Ti(C,N)層の表面法線から15度以内の<211>方向を有する、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
Ti(C,N)層のB1部分の厚さが0.5~1.5μm、好ましくは0.6~0.9μm、最も好ましくは0.6~0.8μmである、請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
結合層が、チタンカルボキシド、酸窒化チタン、およびチタンカルボキシニトリドの群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項5】
Ti(C,N)の結晶粒度D422が25~40nm、好ましくは25~35nmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項6】
Ti(C,N)層が、CuKα放射線およびθ-2θスキャンを使用して測定したときにX線回折パターンを示し、TC(hkl)がHarrisの式
により規定され、式中、I(hkl)は(hkl)反射の測定強度(積分面積)であり、I(hkl)はICDDのPDFカード番号42-1489による標準強度であり、nは反射の数であり、計算に使用される反射は、(111)、(200)、(220)、(311)、(331)、(420)、および(422)であり、TC(422)が≧3、好ましくは≧4である、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項7】
Al層がα-Al層であり、好ましくは、1μm~15μm、より好ましくは3~10μmの平均厚さを有するα-Al層である、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項8】
α-Al層が、CuKα放射線およびθ-2θスキャンを使用したX線回折により測定したときに、Harrisの式により規定される組織係数TC(hkl)を示し、式中、I(hkl)は(hkl)反射の測定強度(積分面積)であり、I(hkl)はICDDのPDFカード番号00-010-0173による標準強度であり、nは計算に使用される反射の数であり、使用される(hkl)反射は、(104)、(110)、(113)、(024)、(116)、(214)、(300)、および(0012)であり、TC(0012)が≧7.5、好ましくは≧7.7、より好ましくは≧7.8であることを特徴とする、請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記α-Al層が、≦0.2、好ましくは≦0.1の組織係数TC(110)を示す、請求項7または8に記載の切削工具。
【請求項10】
Ti(C,N)層のB1部分において、Ti(C,N)結晶粒が、基材表面に平行に延びる平面においてTKDにより測定したときに130nm~165nmの平均結晶粒度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項11】
前記α-Al層が、結合層から1μm延びるO1部分を含み、前記O1部分が、前記α-Al層の断面で電子後方散乱回折(EBSD)により測定したときに配向を示し、α-Al層の表面法線が基材表面の表面法線と平行であり、分析された面積の≧80%、好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、最も好ましくは≧97%が、α-Al層の表面法線から15度以内の<001>方向を有する、請求項7から10のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項12】
Ti(C,N)層の平均厚さが4~20μm、好ましくは5~15μmである、請求項1から11のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項13】
結合層の平均厚さが0.25~2.5μm、好ましくは0.5~2.0μmである、請求項1から12のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項14】
被覆の平均厚さが5.0μm~30.0μm、好ましくは10~20μmである、請求項1から13のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項15】
前記基材が超硬合金、サーメット、またはセラミックの基材である、請求項1から14のいずれか一項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材および被覆を含む被覆切削工具であって、被覆がCVDによって堆積され、かつTi(C,N)層およびα-Al層を含む、切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属切削工業において、被覆切削工具は該技術分野で周知である。CVD被覆切削工具およびPVD被覆切削工具が最も優勢な2種類の被覆切削工具である。これらの被覆の利点は、化学およびアブレシブ摩耗に対する高耐性であり、これは被覆切削工具の長い工具寿命を達成するのに重要である。アルミナの層と共にTi(C,N)の層を含むCVD被覆は、例えば鋼鉄の旋削またはフライス加工において良い性能を示すことが公知である。
【0003】
欧州特許出願公開第2791387号A1には、微細な結晶粒の炭窒化チタン層を備えた被覆切削工具が開示されている。被覆は、ノジュラー鋳鉄の旋削および高速切削において高い耐フレーキング性を示す点で有利である。平均結晶粒幅が0.05~0.4μmの柱状CVD TiCN層が記載されている。
【0004】
最近の研究では、非常に微細な結晶粒のTi(C,N)層とAl層の組合せは、Ti(C,N)とAlの間の接着不良につながる場合があることが示されている。非常に微細な結晶粒のTi(C,N)は有望な切削工具特性を示しているため、この課題に対処することは興味深い。
【0005】
本発明の目的は、被覆の層の高度な接着を有する金属切削用被覆切削工具を提供することである。さらなる目的は、高い耐摩耗性、特に金属切削中の高い耐フレーキング性を有する被覆切削工具を提供することである。また、本発明の目的は、鋼鉄の金属切削におけるクレーター摩耗に対する高い耐性を有する切削工具を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
上述の目的のうちの少なくとも1つは、請求項1による切削工具により達成される。好ましい実施形態は、従属請求項において開示される。
【0007】
本発明は、Ti(C,N)の層、Alの層、およびその間の結合層を含む被覆で少なくとも部分的に被覆された基材を含む切削工具であって、3~25μmの厚さを有する前記Ti(C,N)層が柱状結晶粒で構成され、Ti(C,N)層の平均結晶粒度D422が、CuKα放射線を用いたX線回折により測定したときに25~50nmであり、結晶粒度D422が、シェラーの式:
により(422)ピークの半値全幅(FWHM)から計算され、式中、D422はTi(C,N)の平均結晶粒度であり、Kはここで0.9に設定された形状係数であり、λはここで1.5405Åに設定されたCuKα放射線の波長であり、B422は(422)反射のFWHM値であり、θはブラッグ角であり、Ti(C,N)層が、結合層に隣接するB1部分を含み、B1部分のTi(C,N)結晶粒の平均結晶粒度が、Ti(C,N)層の全厚さにわたる平均結晶粒度D422よりも大きく、Ti(C,N)層のB1部分において、Ti(C,N)結晶粒が、基材表面に平行に延びる平面上の5×5μmの分析面積でTKD(透過菊池回折)により測定したときに130~300nmの平均結晶粒度を有する、切削工具に関する。
【0008】
本発明は、非常に微細な結晶粒のTi(C,N)層とα-Al層の間の向上した接着をもたらす。この向上した接着は、微細なTi(C,N)結晶粒の一部が広がり、より粗い結晶粒のTi(C,N)部分が形成されるように、Ti(C,N)堆積の最後に堆積プロセス条件を変更することによって達成される。その後、今度はTi(C,N)結晶粒の最適な外表面をもたらすために、プロセス条件が再度変更される。この方法において、結合層を介したα-Al層への高い接着を示すことが公知である粗い結晶粒のTi(C,N)の最外面と類似のTi(C,N)の最外面が形成される。B1部分の平均結晶粒度が小さすぎる場合、続いて堆積されるα-Al層への接着は向上しない。B1部分の平均結晶粒度は、好適には300nm未満であり、これは耐摩耗性に有利なためである。
【0009】
分解能が限定されているため、SEMで非常に微細な結晶粒のTi(C,N)の結晶粒度を調べることは難しい。本明細書において、Ti(C,N)層の微細な結晶粒の部分の平均結晶粒度は、XRDおよびシェラーの式によって代わりに規定する。XRDからのシグナルは、より粗い結晶粒のTi(C,N)B1部分からの情報も含むが、この寄与は限定されていると考えられる。
【0010】
他方で、粗い結晶粒のB1部分の結晶粒度を調べることには、それがTi(C,N)層の一部分にすぎず、したがって非常に高い精度を有する方法を選択する必要があるという難題があった。得られた情報が、結晶粒度についての情報と、また非常に局所的なスケールでのTi(C,N)結晶粒の配向についての情報の両方を含んだので、TKDによる平面の調査が選択された。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記Ti(C,N)層のB1部分におけるTi(C,N)層は、基材表面に平行に延びる前記Ti(C,N)層の平面においてTKDにより測定したときに、かつ少なくとも5×5μmの面積で測定したときに配向を示し、Ti(C,N)層の表面法線が基材表面の表面法線と平行であり、分析された面積の≧93%、好ましくは≧95%が、Ti(C,N)層の表面法線から15度以内の<211>方向を有する。
【0012】
結合層に最も近い、したがってまたα-Al層に最も近い、<211>に沿った高配向の部分を有するTi(C,N)層は、高度に001配向したα-Al層を堆積させようとすることにおいて有利であると考えられる。分析された面積が、93%未満の、Ti(C,N)層の表面法線から15度以内の<211>方向を有する場合、後続のα-Al層の001配向は明白さがより低くなる。
【0013】
本発明の一実施形態において、Ti(C,N)層のB1部分の厚さは、被覆の成長方向で測定したときに、0.5~1.5μm、好ましくは0.6~0.9μm、最も好ましくは、0.6~0.8μmである。
【0014】
微細な結晶粒のTi(C,N)は、耐摩耗性層として有利であり、これはその多量の結晶粒界または層のより平滑もしくは一様な厚さに起因しうる。したがって、微細な結晶粒であるTiCN層の部分は、比較的厚くすべきである。接着の増加に寄与する粗い結晶粒の部分は比較的限定され、B1部分の厚さが好ましくは0.5~1.5μm、より好ましくは0.6~0.9μm、最も好ましくは0.6~0.8μmとなる。B1部分が薄すぎると、接着は向上しない。
【0015】
本発明の一実施形態において、結合層は、チタンカルボキシド(titanium carboxide)、酸窒化チタン、およびチタンカルボキシニトリド(titanium carboxynitride)の群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0016】
チタンカルボキシド、酸窒化チタン、またはチタンカルボキシニトリドの結合層は、Ti(C,N)層とα-Al層の間にエピタキシャル関係をもたらすことができるという点で有利である。
【0017】
本発明の一実施形態において、Ti(C,N)の結晶粒度D422は25~40nm、好ましくは25~35nmである。
【0018】
微細な結晶粒のTi(C,N)とα-Al層の間の接着を向上させる本発明は、非常に微細な結晶粒を有するTi(C,N)層、例えばTi(C,N)の結晶粒度D422が25~40nm、またはさらには25~35nmである場合に特に有利である。
【0019】
本発明の一実施形態において、Ti(C,N)層は、CuKα放射線およびθ-2θスキャンを使用して測定したときにX線回折パターンを示し、TC(hkl)はHarrisの式:
により規定され、式中、I(hkl)は(hkl)反射の測定強度(積分面積)であり、I0(hkl)はICDDのPDFカード番号42-1489による標準強度であり、nは反射の数であり、計算に使用される反射は、(111)、(200)、(220)、(311)、(331)、(420)、および(422)であり、TC(422)は≧3、好ましくは≧4である。
【0020】
本発明の一実施形態において、Al層は、好ましくはα-Al層の平均厚さが1μm~15μm、好ましくは3~10μmである、α-Al層である。
【0021】
本発明の一実施形態において、層であって、前記α-Al層が、CuKα放射線およびθ-2θスキャンを使用したX線回折により測定したときに、Harrisの式により規定される組織係数TC(hkl)を示し、式中、I(hkl)は(hkl)反射の測定強度(積分面積)であり、I0(hkl)はICDDのPDFカード番号00-010-0173による標準強度であり、nは計算に使用される反射の数であり、使用される(hkl)反射は、(104)、(110)、(113)、(024)、(116)、(214)、(300)、および(0012)であり、TC(0012)が≧7.5、好ましくは≧7.7、より好ましくは≧7.8であることを特徴とする、層。
【0022】
本発明の一実施形態において、層であって、前記α-Al層が、≦0.2、好ましくは≦0.1のTC(110)を示す、層。
【0023】
本発明の一実施形態において、Ti(C,N)層のB1部分のTi(C,N)結晶粒は、基材表面に平行に延びる平面上の5×5μmの分析面積でTKDにより測定したときに130nm~165nmの平均結晶粒度を有する。B1部分の平均結晶粒度が大きすぎる場合、接着性は依然として高いが、続いて堆積されるα-Al層の最も高い配向に達することができないことが見出された。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記α-Al層のO1部分のα-Al層は、前記α-Al層の断面で電子後方散乱回折(EBSD)により測定したときに、および少なくとも1×10μmの分析面積の少なくとも4つの異なる領域での平均として測定したときに、配向を示し、O1部分は結合層から1μm延び、α-Al層の表面法線は基材表面の表面法線と平行であり、分析された面積の≧80%、好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、最も好ましくは≧97%が、α-Al層の表面法線から15度以内の<001>方向を有する。
【0025】
O1領域、すなわちα-Al層の最下部で結合層に隣接する領域におけるα-Al層のこの高配向は、鋼鉄の旋削における第1および第2の逃げ面摩耗およびまた増加したクレーター摩耗に対する耐性の向上への寄与において予想外に有利であることが示されている。
【0026】
本発明の一実施形態において、Ti(C,N)層の平均厚さは4~20μm、好ましくは5~15μmである。
【0027】
本発明の一実施形態において、結合層の平均厚さは0.25~2.5μm、好ましくは0.5~2.0μmである。
【0028】
本発明の一実施形態において、被覆の平均厚さは5.0μm~30.0μm、好ましくは10~20μmである。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記基材は超硬合金、サーメット、またはセラミックの基材である。
【0030】
本発明のTi(C,N)層中に含有される炭素と窒素の合計に対する炭素の原子比率(C/(C+N))は、電子マイクロプローブ分析により測定したときに、好ましくは0.50~0.65、より好ましくは0.55~0.62である。
【0031】
本発明のさらなる他の目的および特徴は、添付の図面と併せて考慮される以下の定義および実施例から明らかとなる。
【0032】
定義
本明細書において「切削工具」という用語は、金属切削用途に好適な切削工具、例えばインサート、エンドミル、またはドリルを示すことを意図する。適用領域は、例えば、鋼鉄などの金属の旋削、フライス加工、またはドリル加工でありうる。
【0033】
方法
Ti(C,N)層の平均結晶粒度、D422
Ti(C,N)層のTi(C,N)結晶粒の平均結晶粒度を調査するために、PIXcel検出器を備えたPANalytical CubiX3回折計を使用して、逃げ面でX線回折(XRD)を行った。被覆切削工具を試料ホルダーに取り付けて、試料の逃げ面が試料ホルダーの基準面に平行であり、さらに逃げ面が適切な高さにあることを確実にした。Cu-Kα放射線を測定に使用し、電圧は45kV、および電流は40mAであった。1/2度の散乱防止スリットおよび1/4度の発散スリットを使用した。被覆切削工具からの回折強度は、20°~140°の2θの範囲、すなわち10~70°入射角θの範囲にわたって測定した。データのバックグラウンドフィッティング、Cu-Kαストリッピング、およびプロファイルフィッティングを含むデータ分析は、PANalyticalのX’Pert HighScore Plusソフトウェアを使用して行った。
【0034】
PANalyticalのX’Pert HighScore Plusソフトウェアから得られたプロファイルフィッティングされた曲線の積分ピークの半値全幅を使用して、シェラー式(式1)により層の結晶粒度を計算した(Birkholz、2006)。
【0035】
平均結晶粒度D422は、シェラーの式:
により(422)ピークの半値全幅(FWHM)から計算し、式中、D422はTi(C,N)の平均結晶粒度であり、Kはここで0.9に設定された形状係数であり、λはここで1.5405Åに設定されたCuKα放射線の波長であり、B422は(422)反射のFWHM値であり、θはブラッグ角、すなわち入射角である。
【0036】
測定から得られたFWHMは、機器によるブロードニングと、小さな結晶粒度によって生じるブロードニングの両方を含む。これを補償するため、ガウス近似を使用した(Birkholz、2006)。B422は、機器のブロードニング(0,00174533ラジアン)を差し引いた後のFWHMでの線幅ブロードニング(ラジアン単位)であり、式(2):
B422 =√((FWHMobs)2-(FWHMins)2) (2)
で定義され、式中、B422は結晶粒度の計算に使用されるブロードニング(ラジアン単位)であり、FWHMobsは測定されたブロードニング(ラジアン単位)であり、FWHMinsは機器のブロードニング(ラジアン単位)である。
【0037】
Ti(C,N)層の上にありうるさらなる層は、Ti(C,N)層に入り被覆全体から出るX線強度に影響を及ぼすため、層中のそれぞれの化合物の線吸収係数を考慮して、これらに対する補正を行う必要がある。あるいは、Ti(C,N)単層の上のさらなる層を、XRD測定の結果に実質的に影響しない方法、例えば化学エッチングによって除去することができる。
【0038】
Ti(C,N)のB1部分の結晶粒度および配向
Al層をTi(C,N)層に結合する結合層の最も近くに位置する、Ti(C,N)層の最上部領域のB1領域において、Ti(C,N)の結晶粒を拡大させて接着を改良する。この領域におけるTi(C,N)結晶粒の平均結晶粒度は、B1領域の平面を介して分析する。この平面は、基材の表面と平行な面内で延び、よって柱状結晶粒の幅を、例えば重なった結晶粒によるいずれの妨害も受けずに調べることができる。
【0039】
B1領域の結晶粒領域分析用の試料は、FIB in-situリフトアウト技術(Langford&Clinton、2004)により、対象の領域の平面薄箔標本を製造することによって作製した。試料は、研磨した断面から取り出した。試料の作製には、Ga+イオン源を用いたHelios Nanolab 650を使用した。
【0040】
対象の領域は、79pAのイオン電流および30kVの加速電圧を使用して表面にエッチングした十字で端部に印付けし、対象の正確な領域が標本の中心にあることを確実にした。続いて、430pAのイオン電流および30kVの加速電圧を使用して堆積した厚さ約2μmの保護Pt層で領域を被覆した。保護Pt堆積後、周知のin-situリフトアウト技術(Langford&Clinton、2004)を用いて試料を作製した。
【0041】
標本は、厚さ<200nmまで薄くして、電子透過性を確保した。
【0042】
B1領域の結晶粒度は、Oxford symmetry EBSD検出器を備えたHelios Nanolab 650において透過菊池回折(TKD)を用いて分析した。20kVの加速電圧および13~26nAのビーム電流を使用した。少なくとも5×5μmの領域(少なくとも640個の結晶粒)を10nmのステップサイズで分析し、Speed 1ビニングモードを使用した(622×512pix)。平均結晶粒度(相当円)は、Aztec Crystalソフトウェアパッケージ(v2.0)を使用して分析し、穏やかなノイズ低減のために、Aztec Crystalソフトウェア(v2.0)を使用した1回の自動クリーンアップを適用した。試料は、標本の表面が基材表面に平行になるように分析し、したがって被覆の面外配向が試料法線に平行であることを確保した。結晶粒検出の閾値を10°および少なくとも40ピクセルの面積に設定した。
【0043】
配向は、設定軸からのある特定の角度偏差内にある分析領域の量(%)として決定する。B1領域では、表面法線に平行な方向として<211>Ti(C,N)方向を選んだ。配向は、<211>Ti(C,N)方向から≦15°の偏差であった分析領域の量として計算した。配向の決定にはAztec Crystalソフトウェア(v2.0)を使用した。
【0044】
Ti(C,N)の測定には、Ti(C,N)、J.Electrochem.Soc.[JESOAN]、(1950)、97巻、299~304頁の基準パターンを使用し、測定には89個の反射器を使用した。
【0045】
最下部Al-O1部分の配向
結合層に近いAl層の部分は、本発明において非常に高度に配向している。この領域を分析するため、被覆の断面を作製し、結合層から高さ1μm延びるO1部分のAl結晶粒をEBSDで詳細に調べた。研磨した断面の作製は、CNMG120408-PMインサートの各々をAKASEL製の黒色導電性フェノール樹脂に取り付け、その後これを約1mmに粉砕し、次いでダイヤモンドスラリー溶液を使用した粗研磨(9μm)および微細研磨(1μm)の2工程で研磨した。コロイダルシリカ溶液を使用した最終研磨を施した。
【0046】
Alの最下部部分の配向は、設定軸からのある特定の角度偏差内にある分析領域の量(%)として決定する。O1部分では、表面法線に平行な方向として<001>Al方向を選んだ。配向は、<001>Al方向から≦15°の偏差であった分析領域の量として計算した。
【0047】
少なくとも80μm幅の領域を50nmのステップサイズで分析し、Speed 1ビニングモードを使用した(622×512pix)。O1の配向を分析するため、O1の4つの長方形形状の切片を接触面に沿って幅10μmおよび高さ1μmのサイズで無作為に選んだ。配向は、4つの長方形形状の切片の平均として計算した。1回の自動クリーンアップ工程、および5つの最隣接レベルを使用した1回のゼロソリューション除去をデータに適用した。配向の決定にはAztec Crystalソフトウェア(v2.0)を使用した。
【0048】
O1部分の配向は、Zeiss Supra 55およびHelios Nanolab 650を使用して分析し、これらは両方ともOxford-symmetry EBSD検出器を備えた。20kVの加速電圧および13~26nAのビーム電流を使用した。試料を70°に予め傾斜した試料ホルダーに取り付けて、最大収集効率を確保した。
【0049】
Alの測定には、アルミナ(アルファ)、Acta Crystallogr、Sec B[ACBCAR]、49B巻973~980頁の基準パターンを使用し、測定には89個の反射器を使用した。
【0050】
SEM調査
研磨した断面および試料頂面のSEM調査は、3kVの加速電圧で作動させたCarl Zeiss AG-Supra 40型で、30μmのアパーチャサイズを用いて行った。画像は二次電子検出器を使用して取得した。
【0051】
Ti(C,N)およびAlのX線回折測定
層全体の組織を調査するため、PIXcel検出器を備えたPANalytical CubiX3回折計を使用して、切削工具インサートの逃げ面でX線回折を行った。被覆切削工具インサートを試料ホルダーに取り付けて、切削工具インサートの逃げ面が試料ホルダーの基準面に平行であり、さらに逃げ面が適切な高さにあることを確実にした。Cu-Kα放射線を測定に使用し、電圧は45kV、および電流は40mAであった。1/2度の散乱防止スリットおよび1/4度の発散スリットを使用した。被覆切削工具からの回折強度は、20°~140°の2θの範囲、すなわち10~70°入射角θの範囲にわたって測定した。
【0052】
データのバックグラウンド差引、Cu-Kα2ストリッピング、およびプロファイルフィッティングを含むデータ分析は、PANalyticalのX’Pert HighScore Plusソフトウェアを使用して行った。フィッティングの一般的な説明は以下に行う。次いで、このプログラムからの出力(プロファイルフィッティングした曲線の積分ピーク面積)を使用して、下記で開示するHarrisの式(3)を使用して、特定の層(例えば、Ti(C,N)またはα-Alの層)のPDFカードによる標準強度データに対する測定強度データの比を比較することにより、層の組織係数を計算した。層は有限の厚さであるので、層を通る経路長の差に起因して、異なる2θ角での一対のピークの相対強度は、バルク試料に対するものと異なる。したがって、TC値を計算するとき、層の線吸収係数も考慮して、プロファイルフィッティングした曲線の抽出積分ピーク面積強度に薄膜補正を適用した。例えばα-Al層の上にありうるさらなる層は、α-Al層に入り被覆全体から出るX線強度に影響を及ぼすため、層中のそれぞれの化合物の線吸収係数を考慮して、これらに対する補正も行う必要がある。Ti(C,N)層が例えばα-Al層の下に位置する場合、同じことがTi(C,N)層のX線回折測定に当てはまる。あるいは、アルミナ層の上のさらなる層、例えばTiNを、XRD測定の結果に実質的に影響しない方法、例えば化学エッチングによって除去することができる。
【0053】
α-Al層の組織を調査するため、CuKα放射線を使用してX線回折を行い、Harrisの式(3):
によりα-Al層の柱状結晶粒の異なる成長方向の組織係数TC(hkl)を計算し、式中、I(hkl)=(hkl)反射の測定(積分面積)強度、I(hkl)=ICDDのPDFカード番号00-010-0173による標準強度、n=計算に使用される反射の数である。この場合、使用される(hkl)反射は、(104)、(110)、(113)、(024)、(116)、(214)、(300)、および(0012)である。測定積分ピーク面積は薄膜補正し、α-Al層の上の(すなわち、その頂部上の)任意のさらなる層について補正した後、前記比を計算する。
【0054】
Ti(C,N)層の柱状結晶粒の異なる成長方向の組織係数TC(hkl)は、先に開示したHarrisの式(3)により計算し、式中、I(hkl)は(hkl)反射の測定(積分面積)強度であり、I(hkl)はICDDのPDFカード番号42-1489による標準強度であり、nは計算に使用される反射の数である。この場合、使用される(hkl)反射は、(111)、(200)、(220)、(311)、(331)、(420)、および(422)である。
【0055】
ピークの重なりは、例えばいくつかの結晶性層を含み、および/または結晶性相を含む基材上に堆積された被覆のX線回折分析において起こりうる現象であり、これは考慮および補償されなければならないことに留意されたい。Ti(C,N)層からのピークとα-Al層からのピークの重なりは測定に影響することがあり、考慮する必要がある。例えば、基材中のWCは、本発明の関連するピークに近い回折ピークを有しうることにも留意されたい。
【0056】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の被覆の一例である試料Dの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、Ti(C,N)層(1)のB1部分、結合層(2)、およびα-Al層(3)のO1部分が示されている。
図2】基準被覆の一例である試料Aの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、最上部Ti(C,N)(1)、結合層(2)、および最下部α-Al(3)が見られる。
図3】本発明の被覆の一例である試料Gの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、Ti(C,N)層(1)のB1部分、結合層(2)、およびα-Al層(3)のO1部分が示されている。
図4】基準被覆の一例である試料Bの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、最上部Ti(C,N)(1)、結合層(2)、および最下部α-Al(3)が見られる。
図5】試料DのTi(C,N)に相当するTi(C,N)層を備えた試料のB1部分の頂面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、B1部分の最外面のモルフォロジーが見られる。
図6】試料BのTi(C,N)に相当するTi(C,N)層を備えた試料のTi(C,N)層の頂面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、非常に微細な結晶粒のTi(C,N)の最外面のモルフォロジーが見られる。
図7】基準試料AのTi(C,N)に相当するTi(C,N)層を備えた試料のTi(C,N)層の頂面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、粗い結晶粒のTi(C,N)の最外面のモルフォロジーが見られる。
図8】本発明の層および部分であるTi(C,N)層(1)、Ti(C,N)層(1)のB1部分、結合層(2)、α-Al層(3)、α-Al層(3)のO1部分、および基材(4)の位置を示す概略的概観である。
図9】試料Dの平面のバンドコントラストTKD画像であり、B1部分のTi(C,N)結晶粒が見られる。
【実施例
【0058】
これより本発明の例示的な実施形態をより詳細に開示し、基準実施形態と比較する。被覆切削工具(インサート)を製造し、分析し、切削試験で試験した。
【0059】
フライス加工、混合、噴霧乾燥、プレス加工、および焼結を含む従来のプロセスを利用して、超硬合金基材を製造した。超硬合金基材(インサート)のISO型形状は、CNMG-120408-PMであった。超硬合金の組成は、Co 7.2wt%、TaC 2.9wt%、NbC 0.5wt%、TiC 1.9wt%、TiN 0.4wt%、および残部のWCであった。
【0060】
被覆の堆積前に、基材を穏やかなブラスト処理に曝して、基材表面上の焼結プロセスからのあらゆる残留物を除去した。
【0061】
CVD堆積
1/2インチのサイズの切削インサート10.000個を収容することができる、Ionbondのサイズ530型の放射状CVD反応器において、焼結した基材をCVD被覆した。さらに試験および分析する試料は、チャンバーの中央から、プレートの半径の半分に沿ってプレートの中心と周囲の間の位置で選択した。マスフローコントローラーは、例えばCHCNの高流量を設定することができるように選んだ。
【0062】
約0.2μmのTiNの第1の最内被覆を、400mbarおよび885℃のプロセスで全ての基材に堆積させた。H 48.8vol%、N 48.8vol%、およびTiCl 2.4vol%のガス混合物を使用した。
【0063】
その後、続いてTi(C,N)層を堆積させ、全試料A~Gに、以下に従って異なるTi(C,N)を堆積させた。基準試料Aは、表1に示すプロセス工程VおよびWで堆積させた。試料B~Gでプロセス工程Xから開始する前の885℃から870℃への温度調整は、50vol%のHおよび50vol%のN中で、80mbarで行った。基準試料BのTi(C,N)層は、表1に示すプロセス工程Xで堆積させた。試料C~Gにおいて、Ti(C,N)層は、表1および表2に示す堆積時間を用い、プロセス工程X、Y、およびZで堆積させた。プロセス時間は、全試料でほぼ同じTi(C,N)層の合計厚さに達するように調整した。
【0064】
4つの別個の反応工程からなるプロセスにより、Ti(C,N)層の頂部上に0.7~0.9μmの厚さの結合層を1000℃で堆積させた。まず400mbarでTiCl、CH、N、HCl、およびHを用いた8分のHTCVD Ti(C,N)工程、次に70mbarでTiCl、CHCN、CO、N、およびHを用いた7分間の第2の工程(Ti(C,N,O)-1)、次に70mbarでTiCl、CHCN、CO、N、およびHを用いた5分間の第3の工程(Ti(C,N,O)-2)を行い、ならびに最後に70mbarでTiCl、N、およびHを用いた6分間の第4の工程(TiN)。第3の堆積工程の間、COガス流量を、表3に示す開始値から停止値まで連続的に直線的に増加させた。他の全てのガス流量は一定に維持したが、全体のガス流量が増加するので、全てのガスの濃度はこれに起因していくらか影響を受けた。後続のAl核形成を開始する前に、CO、CO、N、およびHの混合物中で、結合層を4分間酸化させた。
【0065】
結合層の堆積の詳細を表3に示す。
【0066】
結合層の頂部上にα-Al層を堆積させた。全てのα-Al層を1000℃および55mbarで、2工程で堆積させた。1.2vol%のAlCl、4.7vol%のCO、1.8vol%のHCl、および残余のHを使用し、約0.1μmのα-Alを生成する第1の工程、および下記で開示され、約5μmのα-Al層の合計厚さを生成する第2の工程。α-Al層の第2の工程は、1.16%のAlCl、4.65%のCO、2.91%のHCl、0.58%のHS、および残余のHを使用して堆積させた。
【0067】
被覆分析
層の厚さは、走査型電子顕微鏡を使用して、切削工具試料のすくい面上で測定した。試料A~Gの被覆の層の厚さを表4に示す。
【0068】
Ti(C,N)層の結晶粒度は、Ti(C,N)層全体および結合層に近いB1部分の平均値として、両方で分析した。結果を表5に示す。
【0069】
Ti(C,N)層のB1部分のTi(C,N)結晶粒の配向およびα-Al層のO1部分のα-Al結晶粒の配向を分析した。結果を表5に示す。
【0070】
基準試料AのTi(C,N)層の結晶粒度は、XRDで分析するには大きすぎ、シェラーの式は約0.2μmより大きい結晶粒度には有効でないと考えられる。この層の平均結晶粒度は、断面SEM画像で測定したときに200nmよりも大きい。
【0071】
Ti(C,N)およびα-Al層の組織係数を、X線回折を用いて分析し、結果を表6および表7に示す。
【0072】
性能試験
被覆されたままの切削工具を、高合金鋼鉄であるワークピース材料Ovako825B(100CrMo7-3)での長手方向旋削操作における2つの並列切削試験、切削試験1および切削試験2で試験した。切削速度Vcは220m/分であり、送りfnは0.3mm/回転であり、切り込み深さは2mmであり、水混和性切削液を使用した。機械加工は寿命終了基準に到達するまで続けた。切削工具1つ当たり1つの切刃を評価した。
【0073】
工具寿命基準は、第1または第2の逃げ面摩耗が>0.3mmであったとき、またはクレーター面積(露出した基材)が>0.2mmであったときに到達したとみなした。これらの基準のいずれかが満たされたらすぐに、試料の寿命に達したとみなした。切削試験の結果を表8および表9に示す。
【0074】
表8でわかるように、試料C、D、E、FおよびGは全て高い耐摩耗性を示した。表9に示されているように、試料DおよびEは、鋼鉄の金属切削において逃げ面とクレーターの両方の摩耗に対する高い耐性を示し、また、非常に高い性能の基準試料である基準試料Aに匹敵した。
【0075】
切削工具はまた、研磨材ウェットブラストに曝すことによって評価した。ブラストは切削工具のすくい面に行った。ブラスタースラリーは水中20vol%のアルミナからなり、切削インサートのすくい面とブラスタースラリーの方向の間の角度は90°であった。ガンノズルとインサートの表面の間の距離は約145mmであった。ガンへのスラリーの圧力は全ての試料で1.8barであり、ガンへの空気の圧力は2.2barであった。アルミナグリットはF230メッシュ(FEPA42-2:2006)であった。面積単位当たりのブラストの平均時間は4.4秒であった。試料BおよびCはウェットブラストに耐えることができず、試料Bの被覆は著しいフレーキングを示し、試料Cは点状フレーキングを示した。他の試料は全て、被覆を破壊することなくウェットブラストに耐えた。
【0076】
本発明を種々の例示的実施形態に関連して記載したが、本発明は、開示された例示的実施形態に限定されるものではなく、対照的に、添付の特許請求の範囲内の種々の改変および均等な構成を包含することを意図することが理解されるべきである。さらに、本発明の任意の開示された形態または実施形態は、設計上選択される一般的事項として、任意の他の開示もしくは記載もしくは提案された形態または実施形態に組み込まれてもよいことが認識されるべきである。したがって、本明細書に添付される、添付の特許請求の範囲によって示されるようにのみ限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】