IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユハン コーポレーションの特許一覧

特表2024-519950GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物
<>
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図1
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図2
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図3
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図4
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図5
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図6
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図7
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図8
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図9
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図10
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図11
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図12
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図13
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図14
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図15
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図16
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図17
  • 特表-GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】GDF15変異体及びGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240514BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240514BHJP
   C07K 14/495 20060101ALI20240514BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K19/00 ZNA
C07K14/495
C07K16/00
A61P3/10
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/19
A61K38/18
A61K39/395 Y
A61K39/395 W
A61K38/22
A61K38/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572095
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 KR2022007242
(87)【国際公開番号】W WO2022245179
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065563
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516006530
【氏名又は名称】ユハン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】YUHAN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イム セヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジウン
(72)【発明者】
【氏名】キム スギョン
(72)【発明者】
【氏名】シム ボラ
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドフン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ミギョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヒョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンファン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB16
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE59M
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA01
4C084DB37
4C084DB61
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZA701
4C084ZC211
4C084ZC331
4C084ZC351
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA35
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC05
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG04
4H045AA10
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045EA27
(57)【要約】
本発明は、GDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含み、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬と併用投与するための糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後記式(I)で示されるGDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含み、
GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬と併用投与するための、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物:
N-末端拡張ドメイン - コアドメイン(I)
前記式(I)において、
N-末端拡張ドメインは、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであり;
コアドメインは、配列番号20のアミノ酸配列を含むか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドであり;
前記15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアラニン(alanine, A)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、アスパラギン(asparagine, N)、システイン(cysteine, C)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、グルタミン(glutamine, Q)、グリシン(glycine, G)、ヒスチジン(histidine, H)、イソロイシン(isoleucine, I)、ロイシン(leucine, L)、リジン(lysine, K)、メチオニン(methionine, M)、フェニルアラニン(phenylalanine, F)、プロリン(proline, P)、セリン(serine, S)、トレオニン(threonine, T)、トリプトファン(tryptophan, W)、チロシン(tyrosine, Y)またはバリン(valine, V)に置換され、
前記50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がアラニン、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、
前記58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、または
前記97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がアラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換される。
【請求項2】
前記コアドメインは、後記(1)~(6)の変異からなる群から選択されるいずれか一つの変異を含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物:
(1) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換される;
(2) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(3) 配列番号20のアミノ酸配列のうち58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン(asparagine, N)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、システイン(cysteine, C)またはロイシン(leucine, L)に置換される;
(4) 配列番号20のアミノ酸配列のうち97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(5) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)及び97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がシステイン(cysteine, C)またはセリン(serine, S)に置換される;及び
(6) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換され、58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)またはアルギニン(arginine, R)に置換される。
【請求項3】
前記コアドメインが配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記GDF15変異体が配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記GDF15変異体が配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記GDF15変異体が配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記GDF15変異体が配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記持続型GDF15融合タンパク質は、前記GDF15変異体とヒトIgG Fcまたはその変異体が結合される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記持続型GDF15融合タンパク質二量体は、持続型GDF15融合タンパク質二つを含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記IgG Fcまたはその変異体は、IgG1 Fc配列を含む第1ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された突出部(protuberance)を含むCH3配列を含む前記第1ポリペプチド;及び
IgG1 Fc配列を含む第2ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された空洞(cavity)を含むCH3配列を含む前記第2ポリペプチドを含み、
前記第1ポリペプチドの突出部と前記第2ポリペプチドの空洞の配置により、第2ポリペプチドとヘテロ二量体化されるものである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記GDF15変異体のN-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのうちC-末端または前記第2ポリペプチドのC-末端が結合されるものである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、リンカーを介して行われるものである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記リンカーは、グリシン、セリン、アラニン、リジン及びグルタミン酸残基を含み、10~50個のアミノ酸残基からなるペプチドである、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:48)、GSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:92)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:93)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:94)、GSEEEAEEEAEEEAEEEAEEEAEEEA(配列番号:95)、GSGGSSPTPTPTPTPTPTPTPTPTPT(配列番号:96)またはGSEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号:97)である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記第1ポリペプチドが配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記第2ポリペプチドが配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記GDF15変異体が少なくとも一つのN-連結されたグリカン(N-linked glycan)を含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記持続型GDF15融合タンパク質がi)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiii)配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記GLP-1受容体作動薬は、GLP-1、その断片またはその類似体を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記GLP-1受容体作動薬は、エキセナチド(exenatide)、リラグルチド(liraglutide)、リキシセナチド(lixisenatide)、アルビグルチド(albiglutide)、デュラグルチド(dulaglutide)、セマグルチド(semaglutide)、チルゼパチド(tirzepatide)、コタデュチド(cotadutide)及びタスポグルチド(taspoglutide)からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬は、複合剤形として含まれる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬は、同時または順次投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
後記式(II)で示されるGDF15(Growth differentiation factor-15)変異体及びIgG Fcを含む複合体を含む、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬と併用投与するための、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物;
IgG Fc - (L)m - N末端伸長ドメイン - コアドメイン (II)
ここで、mは0または1の整数であり、Lは、配列番号48、92、93、94、95、96、および97からなる群から選択されるリンカーであり、IgG Fcは、配列番号42、44、または46のアミノ酸配列を含み、かつN末端伸長ドメインおよびコアドメインは、請求項1に定義されるとおりである。
【請求項24】
前記N末端伸長ドメイン-コアドメインが、配列番号21~39からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記複合体が、配列番号50~91および98~109からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含み、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬と併用投与するための、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
GDF15は、MIC-1(Macrophage inhibitory cytokine-1)、PBMP(Placental bone morphogenetic protein)及びNAG-1(Nonsteroidal anti-inflammatory drug-activated gene-1)とも呼ばれ、TGF-βスーパーファミリー(transforming growth factor-beta superfamily)の構成因子の一つであるタンパク質である。
【0003】
最近、GDF15が脳組織で特異的に発現するGFRAL(GDNF Family receptor alpha-like)及びRET(Ret proto-oncogene)との結合を通じて食餌摂取を抑制し、体重減少を誘導するという研究結果が報告されている(Tsai VW, et al., PLoS One 2013; 8 (2): e55174; US 8,192,735)。また、多様な研究で様々な肥満動物モデルにGDF15を投与して優れた体重減少効果を実証し、加えて更なる血糖値降下、脂質値改善、インスリン抵抗性改善などの代謝的利点を確認した。
【0004】
しかし、野生型のGDF15は、体内での半減期が短く、これを医学的に使用する場合、投与頻度が高いという問題がある。そこで、GDF15の体内半減期を増加させるための持続型製剤の開発が行われている。
【0005】
一方、GLP-1受容体作動薬であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、腸のL細胞から腸内の栄養素または血糖濃度に刺激されて分泌されるインクレチン(incretin)ホルモンであり、強力なインスリン分泌刺激をするホルモンで、ブドウ糖濃度によるインスリン分泌を増強させる特徴があり、強力なインスリン分泌刺激効果がある反面、低血糖が起こらないという利点がある。
【0006】
GLP-1は、上部消化管の運動低下、食欲抑制などの作用があり、従来の膵臓の細胞を増殖させることもできる。具体的に、GLP-1は、膵臓に作用してインスリン分泌を増加させ、グルカゴン分泌を減少させ、血糖降下効果を示し、胃の中の食物の通過を遅延させ、脳に作用して食欲を抑制し、複合的に血糖調節に関与し、体重減少にも役立つことができる。また、膵臓β細胞の機能を改善し、インスリン感受性に良い影響を与えることができる(Zander M et al., Lancet 2002;359:824-830)。
【0007】
ただし、活性型GLP-1は、半減期が2分程度と非常に短いため、治療薬として使用するには限界があった。このような限界を克服するために、GLP-1を不活性化する加水分解酵素であるDPP-4(dipeptidylpeptidase-4)を阻害して活性型GLP-1の濃度を維持させようとする努力と、GLP-1と似た構造を有し、DPP-4によって加水分解されないペプチドを見つけようとする努力があった。現在、前者に該当する薬物としてDPP-4阻害剤が開発されて使用されており、後者の場合、GLP-1断片またはGLP-1類似体が開発されて使用されている。
【0008】
本発明者らは、糖尿病、肥満、脂質異常症、または代謝症候群の予防または治療効果を改善するために努力していたところ、GDF15の特定の位置に突然変異を導入し、改善された活性を示すGDF15変異体とGLP-1受容体作動薬を含む併用投与用組成物により、体重減少及び血中脂質改善効果が現れることを確認し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US 8192735 (2009.01.01)
【非特許文献1】Tsai VW, et al., PLoS One 2013; 8 (2)
【非特許文献2】Zander M et al., Lancet 2002;359:824-830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含み、GLP-1受容体作動薬と併用投与するための、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一態様は、後記式(I)で示されるGDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含み、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬と併用投与するための、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物を提供する:
N-末端拡張ドメイン - コアドメイン(I)
前記式(I)において、
N-末端拡張ドメインは、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであり;
コアドメインは、配列番号20であるか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドであり;
前記15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアラニン(alanine, A)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、アスパラギン(asparagine, N)、システイン(cysteine, C)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、グルタミン(glutamine, Q)、グリシン(glycine, G)、ヒスチジン(histidine, H)、イソロイシン(isoleucine, I)、ロイシン(leucine, L)、リジン(lysine, K)、メチオニン(methionine, M)、フェニルアラニン(phenylalanine, F)、プロリン(proline, P)、セリン(serine, S)、トレオニン(threonine, T)、トリプトファン(tryptophan, W)、チロシン(tyrosine, Y)またはバリン(valine, V)に置換され、
前記50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がアラニン、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、
前記58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、または
前記97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がアラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-1、FM9-2、FM9-3、FM9-4、FM9-5及びFM9-6)のリンカータイプ及び長さによる活性を比較した図である。
図2】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM11-1、FM11-2、FM11-3、FM11-4、FM11-5及びFM11-6)のリンカータイプ及び長さによる活性を比較した図である。
図3】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチドの併用反復投与による食餌誘導性-肥満マウス(DIOマウス)における体重変化量(%)を比較した図である。
図4】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチドの併用反復投与による食餌誘導性-肥満マウス(DIOマウス)における累積飼料摂取量を比較した図である(****p<0.0001 vs. 肥満対照群(DIO vehicle)(Two-way ANOVA))。
図5】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチドの併用反復投与による食餌誘導性-肥満マウス(DIOマウス)における血中脂質の改善効果を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び**p<0.01、***p<0.001、そして****p<0.0001 vs. 肥満対照群(DIO vehicle)(One-way ANOVA))。
図6】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける体重変化量(%)を比較した図である。
図7】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける累積飼料摂取量を比較した図である(****p<0.0001 vs. 肥満対照群(ob/ob vehicle)(Two-way ANOVA))。
図8】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける血中脂質改善効果を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び*p<0.05、 **p<0.01、***p<0.001、そして****p<0.0001 vs. 肥満対照群(ob/ob vehicle)(One-way ANOVA))。
図9】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける血糖及びインスリン抵抗性改善効果を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び*p<0.05、**p<0.01、そして****p<0.0001 vs. 肥満対照群(ob/ob vehicle)(One-way ANOVA))。
図10】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)1 nmol/kg単独及び高用量セマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける体重変化量(%)を比較した図である。
図11】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)1 nmol/kg単独及び高用量セマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける累積飼料摂取量を比較した図である(****p<0.0001 vs. 肥満対照群(ob/ob vehicle)(Two-way ANOVA))。
図12】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)1 nmol/kg単独及び高用量セマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける非絶食血糖変化(mg/dL)を測定した図である。
図13】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6) 1 nmol/kg 単独及び高用量セマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおけるブドウ糖の経口負荷検査及びインスリン抵抗性改善効果を比較した図である(*p<0.05、そして****p<0.0001 vs. 肥満対照群(ob/ob vehicle)(One-way ANOVA))。
図14】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)1 nmol/kg単独及び高用量セマグルチドの併用反復投与によるob/obマウスにおける血中脂質の改善効果を比較した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、そして****p<0.0001 vs. 肥満対照群(ob/ob vehicle)(One-way ANOVA))。
図15】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチド、チルゼパチドの併用反復投与による食餌誘導性-肥満マウス(DIOマウス)における体重変化量(%)を比較した図である。
図16】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチド及びチルゼパチドの併用反復投与による食餌誘導性-肥満マウス(DIOマウス)における累積飼料摂取量を比較した図である(*p<0.05、そして****p<0.0001 vs. 肥満対照群(DIO vehicle)(Two-way ANOVA))。
図17】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)単独及びセマグルチド及びチルゼパチドの併用反復投与による食餌誘導性-肥満マウス(DIOマウス)における血中脂質の改善効果を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び**p<0.01、そして***p<0.001 vs. 肥満対照群(DIO vehicle)(One-way ANOVA))。
図18】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)及びセマグルチドの単独及び併用単回投与による正常ラットにおけるアセトアミノフェンを用いた胃排出能抑制効果(Gastric emptying inhibition)を比較した図である(*p<0.05、 **p<0.01、そして***p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(One-way ANOVA))。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一態様において、GDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含み、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬と併用投与するための、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
GDF15変異体
後記式(I)で示されるGDF15変異体を提供する:
N-末端拡張ドメイン - コアドメイン(I)
前記式(I)において、
N-末端拡張ドメインは、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであり;
コアドメインは、配列番号20であるか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドであり;
前記15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアラニン(alanine, A)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、アスパラギン(asparagine, N)、システイン(cysteine, C)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、グルタミン(glutamine, Q)、グリシン(glycine, G)、ヒスチジン(histidine, H)、イソロイシン(isoleucine, I)、ロイシン(leucine, L)、リジン(lysine, K)、メチオニン(methionine, M)、フェニルアラニン(phenylalanine, F)、プロリン(proline, P)、セリン(serine, S)、トレオニン(threonine, T)、トリプトファン(tryptophan, W)、チロシン(tyrosine, Y)またはバリン(valine, V)に置換することができ、
前記50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がアラニン、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換することができ、
前記58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換することができ、または
前記97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がアラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換することができる。
【0016】
本明細書で使用される用語「コアドメイン」とは、配列番号1のGDF15のアミノ酸配列において7番目から112番目までのアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、配列番号20であるか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドを意味する。前記第1コアドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0017】
具体的には、前記コアドメインは、後記(1)~(6)の変異からなる群から選択されるいずれか一つの変異を含むことができる:
(1) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換される;
(2) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(3) 配列番号20のアミノ酸配列のうち58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン(asparagine, N)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、システイン(cysteine, C)またはロイシン(leucine, L)に置換される;
(4) 配列番号20のアミノ酸配列のうち97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(5) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)及び97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がシステイン(cysteine, C)またはセリン(serine, S)に置換される;及び
(6) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換され、58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)またはアルギニン(arginine, R)に置換される。
このとき、前記コアドメインは、配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0018】
前記N-末端拡張ドメインは、前述のコアドメインのN-末端に結合するドメインであり、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであってもよい。
【0019】
本発明で使用される表現「ΔN2」は、「delta N2」とも示すことができ、配列番号1で示されるヒトGDF15のアミノ酸配列のうち1番目及び2番目のアミノ酸が欠失したものを意味する。前記ΔN2は、N-末端拡張ドメインとして表される場合、「NGDH」と示すことができる。
【0020】
本発明で使用される表現「ΔN3、WS insertion、G4N、D5S、H6T」は、「delta N3、WS insertion、G4N、D5S、H6T」とも示すことができ、配列番号1で示されるヒトGDF15のアミノ酸配列のうち1番目~3番目のアミノ酸が欠失し、その代わりにトリプトファン及びセリンが挿入され、4番目のアミノ酸であるグリシンがアスパラギンに置換され、5番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がセリンに置換され、6番目のアミノ酸であるヒスチジンがトレオニンに置換されたことを意味する。前記ΔN3、WS insertion、G4N、D5S、H6Tは、N-末端拡張ドメインとして表される場合、「WSNST」と示すことができる。
【0021】
本発明で使用される表現「ΔN3、G4N、D5S、H6T」は、「delta N3、G4N、D5S、H6T」とも示すことができ、配列番号1で示されるヒトGDF15のアミノ酸配列のうち1番目~3番目のアミノ酸が欠失し、4番目のアミノ酸であるグリシンがアスパラギンに置換され、5番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がセリンに置換され、6番目のアミノ酸であるヒスチジンがトレオニンに置換されたことを意味する。前記「ΔN3、G4N、D5S、H6Tは、N-末端拡張ドメインとして表される場合、「NST」と示すことができる。
【0022】
前記GDF15変異体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。また、前記GDF15変異体は、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。さらに、前記GDF15変異体は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。
【0023】
好ましくは、前記GDF15変異体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。また、前記GDF15変異体は、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。さらに、前記GDF15変異体は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6、7及び10~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。このとき、前記GDF15変異体は、配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0024】
持続型GDF15融合タンパク質
前記持続型GDF15融合タンパク質は、前記GDF15変異体とヒトIgG Fcまたはその変異体が結合する。
【0025】
前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcまたはその変異体であってもよい。具体的には、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、ヒトIgG1 Fcまたはその変異体であってもよく、前記ヒトIgG1 Fcは、配列番号41で示されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0026】
前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の隣接アミノ酸配列またはCH3ドメインを含むFcの断片であってもよい。特定の実施態様において、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の隣接アミノ酸配列またはCH2ドメイン及びCH3ドメインを含むFcの断片であってもよい。特定の実施態様において、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の隣接アミノ酸配列または部分的なヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含むFcの断片であってもよい。特定の実施態様において、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有することができる。
【0027】
前記IgG Fcまたはその変異体は、IgG1 Fc配列を含む第1ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された突出部(protuberance)を含むCH3配列を含む前記第1ポリペプチド;及びIgG1 Fc配列を含む第2ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された空洞(cavity)を含むCH3配列を含む前記第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドの突出部と前記第2ポリペプチドの空洞の配置を介して第2ポリペプチドとヘテロ二量体化されるものであってもよい。
【0028】
具体的に、前記第1ポリペプチドは、加工された空洞を含む別のIgG Fcポリペプチド(例えば、第2ポリペプチド)を結合させることができる加工された突出部を含むことができる。前記第2ポリペプチドは、加工された突出部を含む別のIgG Fcポリペプチド(例えば、第1ポリペプチド)を結合させることができる加工された空洞を含むことができる。また、前記第1ポリペプチドの突出部及び第2ポリペプチドの空洞は、IgG FcのCH3ドメインで加工することができる。このとき、第1ポリペプチドの突出部及び第2ポリペプチドの空洞は、GDF15変異体に連結されるか結合されることはない。
【0029】
前記加工された突出部は、配列番号41で示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1 Fcのアミノ酸配列内で少なくとも一つの置換を含むことができる。このとき、アミノ酸の位置の番号付けは、EUの番号付けに従う。前記置換は、アミノ酸残基の347、366及び394からなる群から選択される位置に存在することができる。例えば、前記置換は、Q347W/Y、T366W/Y、T394W/Y及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。さらに、前記加工された空洞は、ヒトIgG1 Fc配列内に相応するアミノ酸の少なくとも一つの置換を含むことができ、前記置換は、アミノ酸残基366、368、394、405、及び407からなる群から選択される位置に存在することができる。例えば、前記置換は、T366S、L368A、T394S、F405T/V/A、Y407T/V/A及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0030】
好ましくは、前記突出部は、T366W/Y置換を含むことができ、前記空洞は、T366S、L368A、Y407T/V/A及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つの置換を含むことができる。例えば、前記突出部は、T366W/Y置換を含むことができ、前記空洞は、Y407T/V/A置換を含むことができる。また、前記突出部は、T366Y置換を含むことができ、前記空洞は、Y407T置換を含むことができる。前記突出部は、T366W置換を含むことができ、前記空洞は、Y407A置換を含むことができる。前記突出部は、T394Y置換を含むことができ、前記空洞は、Y407T置換を含むことができる。
【0031】
前記第1ポリペプチドが配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよく、前記第2ポリペプチドは、配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0032】
前記突出部は「ノブ(Knob)」と呼ばれ、空洞は「ホール(hole)」と呼ばれる。
【0033】
前記第1ポリペプチドは、加工された突出部(protuberance)を含むFc「ノブ」(knob) であり、第2ポリペプチドは、加工された突出部を含むFc「ホール」(hole)である。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、非-共有相互作用(例えば、疎水性効果、例えば、Fcのノブとホール領域間の疎水性相互作用)、共有結合(例えば、ジスルフィド結合、例えば、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチド内のFcのヒンジ領域間の1または2またはそれ以上のジスルフィド結合)、または非-共有相互作用及び共有結合の全てを介して物理的に結合することができる。
【0034】
本発明で使用される用語「二量体」とは、少なくとも2種のポリペプチドを含むタンパク質複合体を意味する。これらのポリペプチドのそれぞれは、N-末端及びC-末端を含む。少なくとも2種のポリペプチドは、共有及び非-共有相互作用(例えば、静電気、π-効果、ファンデルワールス力、及び疎水性効果)の一つまたは二つ全てを介して互いに連携することができる。前記2種のポリペプチドが同一のアミノ酸配列を有するか、または異なる場合があり、2種のポリペプチドが同一の二つのポリペプチドを有する場合、(同種)二量体と呼ばれ、2種のポリペプチドが異なる二つのポリペプチドを有する場合、ヘテロ二量体と呼ばれる。
【0035】
前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むヘテロ二量体であってもよく、前記ヘテロ二量体は、A-1(配列番号42)及びA-2(配列番号43)を用いたヘテロ二量体、B-1(配列番号44)及びB-2(配列番号45)を用いたヘテロ二量体、またはC-1(配列番号46)及びC-2(配列番号47)を用いたヘテロ二量体であってもよい。
【0036】
また、前記IgG Fcまたはその変異体は、持続型GDF15融合タンパク質の特性を改善するために追加の突然変異を含むことができる。具体的には、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドからなるヘテロ二量体に追加の突然変異を含むことができる。
【0037】
例えば、前記IgG Fcまたはその変異体は、IgG効果機能(Effector function)を廃止する(例えば、減少または除去する)突然変異を含むことができる。具体的には、Fcパートナー配列は、効果機能、例えば、補体-依存性細胞傷害(CDC)、抗体-依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体-依存性細胞貪食(ADCP)を廃止する突然変異を含むことができる。例えば、前記A-1及びA-2を用いたIgG Fcまたはその変異体(ヘテロ二量体)に、IgG1効果機能性の除去のためにE233A、L235A突然変異を導入することができる。N297A突然変異を含むB-1及びB-2を用いたヘテロ二量体は、N-連結されたグリカン(N-linked glycan)の除去のために使用することができる。C-1及びC-2を用いたヘテロ二量体は、IgG1効果機能性及びN-連結されたグリカンの除去のために、L234A、L235A、N297A突然変異を導入することができる。
【0038】
前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、GDF15変異体のN-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのC-末端または前記第2ポリペプチドのC-末端が結合するものであってもよい。また、前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、GDF15変異体のC-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのN-末端または前記第2ポリペプチドのN-末端が結合されるものであってもよい。好ましくは、前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、GDF15変異体のN-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのC-末端が結合されるものであってもよい。
【0039】
また、前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、リンカーを介して行われるものであってもよい。前記リンカーは、グリシン、セリン、アラニン、リジン及びグルタミン酸残基を含み、10~50個のアミノ酸残基からなるペプチドであってもよい。前記リンカーは、(G4S)nを含むことができ、このとき、nは、1~10の整数または2~7の整数であってもよい。例えば、前記nは、2、3、4、5、6または7であってもよい。本発明の一実施例においては、nが5の整数である(G4S)5を含むリンカーを使用した。
【0040】
ただし、これに限定されず、前記(G4S)n以外の適合するリンカーの例として、前記リンカーは、GS(G4S)n、GS(EEEA)n、(EEEA)n、GS(EAAAK)n、(EAAAK)nまたはGSGGSS(PT)nを含むことができ、このとき、nは1~10の整数であってもよい。本発明の一実施例においては、nが6の整数であるGS(EEEA)6を含むリンカーまたはnが5の整数であるGS(EAAAK)5を含むリンカーを使用した。
【0041】
具体的には、前記リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:48)、GSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:92)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:93)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:94)、GSEEEAEEEAEEEAEEEAEEEAEEEA(配列番号:95)、GSGGSSPTPTPTPTPTPTPTPTPTPT(配列番号:96)またはGSEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号:97)であってもよい。好ましくは、前記リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:48)、GSEEEAEEEAEEEAEEEAEEEAEEEA(配列番号:95)またはGSEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号:97)であってもよい。
【0042】
前記持続型GDF15融合タンパク質は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドからなるヘテロ二量体一つ当たり一つのGDF15変異体を含む。前記GDF15変異体は、少なくとも一つのN-連結されたグリカン(N-linked glycan)を含むことができる。
【0043】
前記持続型GDF15融合タンパク質は、i)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiii)配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むことができる。
【0044】
好ましくは、前記持続型GDF15融合タンパク質は、i)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号48のアミノ酸配列を含むリンカー、iii)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiv)配列番号43のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むことができる。
【0045】
さらに好ましくは、前記持続型GDF15融合タンパク質は、i)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号92~97から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むリンカー、iii)配列番号46のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiv)配列番号47のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むことができる。
【0046】
融合タンパク質二量体
前記持続型GDF15融合タンパク質二量体は、二つの持続型GDF15融合タンパク質を含む。具体的には、前記二つの持続型GDF15融合タンパク質は、GDF15-GDF15相互作用を介して二量体化され、これを「融合タンパク質二量体」と命名した。
【0047】
複合体
複合体は成長分化因子-15 (GDF15) 変異体およびIgG Fcを含み、前記複合体は以下の式(II)で表される:
IgG Fc - (L)m - N末端伸長ドメイン- コアドメイン (II)
ここで、mは0または1の整数であり、
Lは、配列番号48、92、93、94、95、96、および97からなる群から選択されるリンカーであり、
IgG Fcは、配列番号42、44、または46のアミノ酸配列を含み、かつ
N末端伸長ドメインおよびコアドメインは上記で定義した通りである。
一実施形態では、N末端伸長ドメイン-コアドメインは、配列番号21~39からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
さらに、複合体は、配列番号50~91および98~109からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0048】
核酸分子、発現ベクター及び宿主細胞
前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0049】
本明細書で使用される用語「単離された核酸分子」とは、核酸全体が供給源細胞から単離されたときに、それと共に自然で発見されるタンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質の約50%以上から分離されるか、自然では連結されないポリヌクレオチドに作動可能に連結されるか、または、より大きなポリヌクレオチド配列の一部として自然で発生しない本発明の核酸分子を意味する。具体的には、本発明の単離された核酸分子には、任意の他の汚染核酸分子、またはポリペプチドの生産またはその治療、診断、予防または研究用途におけるその使用を阻害するその自然環境で発見される他の汚染物質が実質的に存在しない。
【0050】
このとき、前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質をコードする単離された核酸分子は、コドンの重複(redundancy)により、互いに異なる配列を有することができる。また、前記単離された核酸分子は、前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質を生産することができる限り、目的に応じて適切に変形されるか、N-末端またはC-末端にヌクレオチドが添加されてもよい。
【0051】
前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0052】
本明細書で使用される用語「発現ベクター」とは、宿主細胞の形質転換に適し、挿入された異種核酸配列の発現を指示または制御する核酸配列を含むベクターを意味する。前記ベクターは、線形(linear)核酸、プラスミド、ファージミド(phagemids)、コスミド(cosmids)、RNAベクター、ウイルスベクター及びその類似体を含む。前記ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)、及びアデノ-随伴ウイルス(adeno-associated virus)を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される用語、目的タンパク質の「異種核酸配列の発現」または「発現」とは、挿入されたDNA配列の転写、mRNA転写体の翻訳、及び融合タンパク質生産物または抗体または抗体断片の生産を意味する。
【0054】
有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen, Carlsbad)またはその変異体であってもよい。有用な発現ベクターは、哺乳類細胞において目的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトCMV(cytomegalovirus)プロモーター、及び転写後のRNAの安定状態水準を高めるためのウシ成長ホルモン(bovine growth hormone)ポリアデニル化シグナル配列を含むことができる。
【0055】
前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0056】
本明細書で使用される用語「宿主細胞」とは、組換え発現ベクターが導入される可能性がある原核及び真核細胞を示す。本明細書で使用される用語、「形質転換された」及び「形質感染された」は、当業界に公知の多くの技術による細胞内への核酸(例えば、ベクター)の導入を意味する。
【0057】
前記宿主細胞は、本発明のDNA配列に形質転換または形質感染させることができ、目的タンパク質の発現及び/または分泌に用いることができる。本発明に使用することができる宿主細胞は、不死のハイブリドーマ細胞(immortal hybridoma cells)、NS/0骨髄腫細胞(NS/0 myeloma cells)、293細胞、中国ハムスター卵巣細胞(CHO cell)、HeLa細胞、CAP細胞(ヒト羊水由来細胞)、またはCOS細胞を含むことができる。
【0058】
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1受容体に活性を付与する分子を意味する。前記GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1、その断片またはその類似体を含むことができる。
【0059】
前記GLP-1は、天然GLP-1または組換えGLP-1を含むことができる。「天然」とは、自然で発見されるポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。「組換え」とは、GLP-1を発現する核酸によって特定の配列を有するアミノ酸を有するポリペプチドがコードされることを意味する。
【0060】
前記GLP-1の断片は、GLP-1化合物のN-末端及び(または)C-末端から一つ以上のアミノ酸が切断された後に得られる生物学的に活性なポリペプチドを意味する。前記GLP-1の断片は、例えば、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)またはGLP-1(9-36)を含むことができる。天然GLP-1(7-37)のアミノ末端は7番残基、カルボキシ-末端は37番残基として指定され、GLP-1(7-37)OHを記載するために使用される命名法は、GLP-1断片にも適用することができる。例えば、GLP-1(9-36)は、N-末端から二つのアミノ酸を切断し、C-末端から一つのアミノ酸を切断することによって得られるGLP-1断片を示す。例えば、GLP-1(7-36)は、C-末端から一つのアミノ酸を切断することによって得られるGLP-1断片を示す。
【0061】
前記GLP-1の類似体は、GLP-1のアミノ酸配列の一つ以上が元の配列と異なるように変形されるか、アミノ酸が切断されるか、アミノ酸が延長された形態を有することができる。
【0062】
前記GLP-1受容体作動薬としては、例えば、リラグルチド(Novo Nordisk VICTOZA(登録商標));アルビグルチド(GlaxoSmithKline SYNCRIA(登録商標));タスポグルチド(Hoffman La-Roche);デュラグルチド(LY2189265);LY2428757;デスアミノ-His7,Arg26,Lys34(Nε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカンオイル)))-GLP-1(7-37);デスアミノ- His7,Arg26,Lys34(Nε-オクタンオイル)-GLP-1(7-37);Arg26,34,Lys38(Nε-(ω-カルボキシペンタデカンオイル))-GLP-1(7-38);Arg26,34,Lys36(Nε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカンオイル)))-GLP-1(7-36);Aib8,35,Arg26,34,Phe31-GLP-1(7-36);HXaa8EGTFTSDVSSYLEXaa22Xaa23AAKEFIXaa30WLXaa33Xaa34G Xaa36Xaa37;(ここで、Xaa3はA、VまたはGであり;Xaa22はG、KまたはEであり;Xaa23はQまたはKであり;Xaa30はAまたはEであり;Xaa33はVまたはKであり;Xaa34はK、NまたはRであり;Xaa36はRまたはGであり;Xaa37はG、H、Pまたはなし);Arg34-GLP-1(7-37);Glu30-GLP-1(7-37);Lys22-GLP-1(7-37);Gly8,36,Glu22-GLP-1(7-37);Val8,Glu22,Gly36-GLP-1(7-37);Gly8,36,Glu22,Lys33,Asn34-GLP-1(7-37);Val8,Glu22,Lys33,Asn34,Gly36-GLP-1(7-37);Gly8,36,Glu22,Pro37-GLP-1(7-37);Val8,Glu22,Gly36Pro37-GLP-1(7-37);Gly8,36,Glu22,Lys33,Asn34,Pro37-GLP-1(7-37);Val8,Glu22,Lys33,Asn34,Gly36,Pro37-GLP-1(7-37);Gly8,36,Glu22-GLP-1(7-36);Val8,Glu22,Gly36-GLP-1(7-36);Val8,Glu22,Asn34,Gly36-GLP-1(7-36);またはGly8,36,Glu22,Asn34-GLP-1(7-36)を含むことができる。例示されたペプチドの具体的な配列は、米国登録特許第10905772号に具体的に記載されており、本出願に参照として導入することができる。
【0063】
前記GLP-1受容体作動薬としては、例えば、エクセンディン-4;エクセンディン-3;Leu14-エクセンディン-4;Leu14,Phe25-エクセンディン-4;Leu14,Ala19,Phe25-エクセンディン-4;エクセンディン-4(1-30);Leu14-エクセンディン-4(1-30);Leu14,Phe25-エクセンディン-4(1-30);Leu14,Ala19,Phe25-エクセンディン-4(1-30);エクセンディン-4(1-28);Leu14-エクセンディン-4(1-28);Leu14,Phe25-エクセンディン-4(1-28);Leu14,Ala19,Phe25-エクセンディン-4(1-28);Leu14,Lys17,20,Ala19,Glu21,Phe25,Gln28-エクセンディン-4;Leu14,Lys17,20,Ala19,Glu21,Gln28-エクセンディン-4;オクチルGly14,Gln28-エクセンディン-4;Leu14,Gln28,オクチルGly34-エクセンディン-4;Phe4,Leu14,Gln28,Lys33,Glu34,Ile35,36,Ser37-エクセンディン-4(1-37);Phe4,Leu14,Lys17,20,Ala19,Glu21,Gln28-エクセンディン-4;Val11,Ile13,Leu14,Ala16,Lys21,Phe25-エクセンディン-4;エクセンディン-4-Lys40 ;リキシセナチド(Sanofi-Aventis/Zealand Pharma);CJC-1134(ConjuChem, Inc.);[Ne-(17-カルボキシヘプタデカン酸)Lys20]エクセンディン-4-NH2 ;[Ne-(17-カルボキシヘプタ-デカンオイル)Lys32]エクセンディン-4-NH2;[デスアミノ-His1,Ne-(17-カルボキシヘプタデカンオイル)Lys20]エクセンディン-4-NH2;[Arg12,27,NLe14,Ne-(17-カルボキシ-ヘプタデカンオイル)Lys32]エクセンディン-4-NH2;[Ne-(19-カルボキシ-ノナデカンオイルアミノ)Lys20]-エクセンディン-4-NH2;[Ne-(15-カルボキシペンタデカンオイルアミノ)Lys20]-エクセンディン-4-NH2;[Ne-(13-カルボキシトライデカンオイルアミノ)Lys20]エクセンディン-4-NH2;[Ne-(11-カルボキシ-ウンデカンオイル-アミノ)Lys20]エクセンディン-4-NH2;エクセンディン-4-Lys40(e-MPA)-NH2;エクセンディン-4-Lys40(e-AEEA-AEEA-MPA)-NH2;エクセンディン-4-Lys40(e-AEEA-MPA)-NH2;エクセンディン-4-Lys40(e-MPA)-アルブミン;エクセンディン-4-Lys40(e-AEEA-AEEA-MPA)-アルブミン;またはエクセンディン-4-Lys40(e-AEEA-MPA)-アルブミンを含むことができる。例示されたペプチドの具体的な配列は、米国登録特許第10905772号に具体的に記載されており、本出願に参照として導入することができる。
【0064】
前記GLP-1受容体作動剤としては、例えば、GLP-1受容体活性化化合物を含むことができる。前記GLP-1受容体活性化化合物は、例えば、エキセナチド(exenatide)、リラグルチド(liraglutide)、リキシセナチド(lixisenatide)、アルビグルチド(albiglutide)、デュラグルチド(dulaglutide)、セマグルチド(semaglutide)、チルゼパチド(tirzepatide)、コタデュチド(cotadutide)及びタスポグルチド(taspoglutide)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0065】
本発明による具体的な実施例では、GLP-1受容体活性化化合物としてセマグルチド(semaglutide)またはチルゼパチド(tirzepatide)を併用する場合、体重減少に対する相加効果、有意な中性脂肪値の減少を確認した。
【0066】
薬学的組成物
本発明による薬学的組成物は、任意の経路で投与することができる。本発明の組成物は、直接的に(例えば、組織部位への注入、移植または局部的に投与することで、局所的に)またはシステム的に(例えば、非経口または経口で)、任意の適切な手段により動物に投与することができる。本発明の組成物が、静脈内、皮下、眼(ophthalmic)、腹腔内、筋肉内、経口、直腸、眼窩内(intraorbital)、脳内(intracerebral)、頭蓋内(intracranial)、脊椎内(intraspinal)、脳室内(intraventricular)、髄膜腔内(intrathecal)、嚢内(intracistenal)、カプセル内(intracapsular)、鼻腔内(intranasal)またはエアロゾル投与のように非経口的に提供される場合、薬学的組成物は、例えば、水性(aqueous)または生理学的に適用可能な体液懸濁液または溶液の部分を含むことができる。これにより、担体または運搬体(vehicle)が生理学的に許容可能であるため、組成物に添加して患者に伝達することができる。したがって、製剤のための体液のような担体として、一般的に生理食塩水を含むことができる。
【0067】
さらに、投与頻度は、使用される製剤中のGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬の薬物動態パラメータにより異なる。典型的には、臨床医は、目的の効果を達成する投与量に達するまで薬学的組成物を投与する。したがって、薬学的組成物は、単一の投与量として、時間間隔をあけて2回以上の投与量(同じ量のGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬を含む場合と含まない場合がある)であり、または移植装置またはカテーテルを介した連続注入することで投与することができる。適切な投与量の追加の精密化は、当業者によって日常的に行われており、当業者によって日常的に行われる業務範囲内に該当する。
【0068】
また、単位投与量は、ヒトにおいて0.01μg/kg~100mg/kgであり、具体的には、1μg/体重kg~10mg/kgである。前記含有量が最適量ではあるが、治療対象の疾患及び副作用の有無によって異なる場合があり、最適な投与量は通常の実験を用いて決定することができる。融合タンパク質の投与は、周期的な急速注入(periodic bolus injections)によるか、外側の供給源(external reservoir)(例えば、点滴静注バッグ(intravenous bag))または内側(例えば、生体侵食性インプラント(bioerodable implant))からの持続的な静脈内、皮下、または腹膜内投与によって行うことができる。
【0069】
併用
GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬は、好ましくは、相補的な活性を有するため、これらは互いに悪影響を及ぼさない。
【0070】
本発明による組成物は、(1)複合剤形として共同-剤形化し、同時に投与または伝達するか;(2)別個の剤形として、同時または順番に投与または伝達することができる。
【0071】
前記複合剤形の場合、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬が同一の組成で存在してもよい。剤形は、例えば、乾燥した粉末組成物、溶液または懸濁液であってもよいが、これに限定されない。
【0072】
GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬を同時または順次投与することができる。GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬は、通常、互いに分離され、同時にまたは順次投与することができる。順次投与する場合、2回以上の投与で投与することができる。順次投与する場合、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬のいずれか一方の投与後、もう一方の投与、またはGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬の二つの投与の間に間隔を置いて交互に投与することができる。
【0073】
前記作動薬の適切な投与量は、現在業界で通常使用されている量であってもよく、GDF15変異体の併用により投与量を減らすことができる。
【0074】
組成物の投与
本発明の組成物は、治療しようとする疾患に適したあらゆる経路で投与することができる。適切な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、吸入、皮内、髄腔内、硬膜、及び注入技術を含む)、経皮、直腸、鼻腔内、局所(頬及び舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内及び鼻腔内投与が含まれる。局所投与は、経皮パッチまたはイオン浸透療法装置のように経皮投与を用いることを含むことができる。薬物の剤形化は、以下の文献で議論されている[参考:Remington's Pharmaceutical Sciences, 18thEd., (1995) Mack Publishing Co., Easton, PA]。薬物剤形化の他の例は、以下の文献に記載されている[参考:Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, Vol 3, 2nd Ed., New York, NY]。
【0075】
好ましい経路は、例えば、受容者の状態によって様々である。経口投与する場合には、これを製薬上許容される担体、滑沢剤または賦形剤とともに、丸剤、カプセル剤、錠剤などとして剤形化することができる。非経口投与する場合には、これを製薬上許容される非経口ビヒクルまたは希釈剤とともに、単位投与注射剤の形で剤形化することができる。
【0076】
予防または治療
本発明の組成物は、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療に使用される。本発明の組成物は、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性心筋症、ブドウ糖水準の上昇、インスリン水準の上昇、肥満、肥満によって悪化する疾患、脂質異常症、代謝症候群(症候群Xまたはインスリン抵抗性症候群)の予防または治療に使用することができる。
【0077】
本発明は、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療のためのGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬の用途を提供する。本発明は、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療用薬剤を製造するためのGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬の用途を提供する。本発明は、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬を個体に投与する段階を含む糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療方法を提供する。
【0078】
前記個体は、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群を患っている個体であってもよい。また、前記個体は哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトであってもよい。
【0079】
「治療」とは、任意の主観的または客観的パラメータ、例えば、軽減;寛解;患者に対してより容認可能な症状または損傷の生成、病理または病態の減少;退歩または衰退の速度の遅延;衰弱の少ない最終的な退歩点の生成;患者の身体的または精神的な健康の改善を含む損傷、病理または病態の治療または改善における任意の成功兆候を指す。症状の治療または改善は、身体検査、神経精神医学的検査及び/または精神医学的評価を含む客観的または主観的パラメータに基づく。
【0080】
「有効量」とは、一般に、症状の重症度、頻度を減少させるか、症状、根本原因を除去するか、症状の発生または根本原因を予防するか、疾患状態に起因するか、またはこれに関連する損傷を改善または矯正するのに十分な量である。一部の実施態様において、有効量は、治療的有効量または予防的有効量である。「治療的有効量」は、疾患状態または症状、特に疾患状態に関連する状態または症状を矯正するか、または疾患状態または何らかの方法で疾患に関連する任意の他の好ましくない症状の進行を予防、妨害、遅延、または反転させるのに十分な量である。「予防的有効量」は、被験体に投与されたときに、意図された予防効果、例えば、疾患状態の開始の予防または遅延、または疾患状態または関連症状の開始(または再発)の可能性の低減をもたらす薬学的組成物の量である。本発明による組成物の治療上の有効量は、生物学的または医学的反応の観察可能な水準、例えば、血糖、インスリン、中性脂肪またはコレステロール水準の低下;体重減少;または耐糖能、エネルギー消費量またはインスリン感受性の改善を支えるGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬の量を意味する。
【0081】
製品
前記疾患及び障害の治療に有用なGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬を含むキットを提供することができる。このようなキットは、複合剤形に共同-剤形化する場合、単一の容器を含む。このようなキットがGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬をそれぞれ含む容器を含む。
【0082】
キットは、前記容器と関連付けられるか、その上にラベルまたはパッケージ挿入物を追加的に含むことができる。用語「パッケージ挿入物」は、治療製品の市販パッケージ内に通常含まれる指示事項を指し、そのような治療製品の適応症、活用、投与量、投与、禁止事項、及び/または使用に関する警告に関する情報を含んでいる。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器、ブリスターパック(blister pack)などが含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラスまたはプラスチックで形成することができる。前記のラベルまたはパッケージ挿入物は、当該組成物が選択された疾患、例えば、糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療するために使用されることを表示する。さらに、製薬上許容される緩衝剤、例えば、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含むことができる。商業的及びユーザーにとって好ましい他の材料、例えば、他の緩衝剤、希釈剤、充填剤、針及び注射器をさらに含むことができる。
【0083】
さらに、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬を必要とする患者に同時に、順次に、または別々に投与することに関する指示事項をさらに含むことができる。
【0084】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例などを挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0085】
実施例1:持続型GDF15融合タンパク質の生産
実施例1.1:遺伝子クローニング
優れた活性及び精製後の純度改善を示す二つの変異体(FM9+Fc_hole, FM11+Fc_hole)に対する融合キャリア及びリンカー最適化研究のために、各GDF15配列に効果機能(effector function)を最小化するための融合キャリア(配列番号46及び47)及び様々なリンカー(配列番号92、93、94、95、96及び97)を導入した持続型GDF15融合タンパク質をデザインし、これを表1に示した。
【表1】
【0086】
具体的には、Fc_ノブ(knob)-(G4S)5-GDF15変異体の構造を有する第1ポリペプチド(FM series)及びFc_ホール(Fc_hole)構造を有する第2ポリペプチドを生産するために、配列番号98~109のうちいずれか一つのアミノ酸配列を含む第1ポリペプチドをコードする遺伝子及び配列番号47のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドをコードする遺伝子を含むpcDNA3.3(Invitrogen)発現ベクターを用いて遺伝子クローニングを行った。この時、配列番号98~109及び配列番号47のアミノ酸配列をコードする塩基配列を(株)マクロジェン社に依頼して合成した。
【0087】
実施例1.2:持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の発現及び精製
前記実施例1.1でクローニングしたpcDNA3.3発現ベクターをExpiCHO細胞株(Invitrogen)に一時的形質感染(transient transfection)させた後、8日目に細胞培養液を回収(harvest)して精製した。前記回収した細胞培養液(harvest cell culture fluid, HCCF)内の第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを精製するために、Protein A resinを用いた親和性(Affinity)精製を行った。
【0088】
具体的には、1X PBS(pH 7.4)で平衡状態になったMabSelect SuRe Protein A resin(GE Healthcare)に前記回収した細胞培養液をロードして結合(binding)させた。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの結合が完了した後、前記MabSelect SuRe Protein A resinを1X PBS(pH 7.4)で洗浄した後、最終物質を得るために、0.1M濃度のグリシン(pH 3.5)溶液を使用して溶出(elution)した。
【0089】
第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを1 M Tris-HCl溶液を用いて約pH 8.0水準に中和した。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドがノブインホール(knob-in-hole)相互作用を通じて完全に二量体化され、これを「持続型GDF15融合タンパク質」と命名した。二つの分子の持続型GDF15融合タンパク質は、GDF15-GDF15相互作用を通じて再び二量体化され、これを「融合タンパク質二量体」と命名した。
【0090】
また、高純度の持続型GDF15融合タンパク質を得るために、1段階精製を完了したプーリング(pool)を用いて陰イオン交換(Anion exchange, AEX)resin、陽イオン交換(Cation exchange, CEX)resinを用いた2段階イオン交換(Ion exchange, IEX)精製を行った。
【0091】
具体的には、陰イオン交換(AEX)の場合、1X PBS(pH7.4)で平衡状態が形成されたPOROS HQ 50μm Strong anion exchange resin(Thermofisher)に前記1段階プーリングをロードして結合させた。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの結合が完了した後、前記POROS HQ 50μm Strong Anion Exchange resinを1X PBS(pH7.4)で洗浄した後、最終物質を得るために、1M塩化ナトリウムを含有する50mM Tris-HCl(pH8.0)溶液を使用して濃度勾配により溶出(elution)した。サイズ排除クロマトグラフィー(Size exclusion chromatography)分析を用いて、純度が95%以上の基準を満たす画分をプーリング(pooling)した。
【0092】
また、陽イオン交換(CEX)の場合、20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)溶液で平衡状態が形成されたPOROS XS Strong Cation Exchange resin(Thermofisher)に前記1段階プーリングを等電点(Isoelectric point)に応じてpH調整後、ロードして結合させた。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの結合が完了した後、前記POROS XS Strong Cation Exchange resinを20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)溶液で洗浄した後、最終物質を得るために、1 M濃度の塩化ナトリウムを含有する20 mMリン酸ナトリウム(pH6.5)溶液を使用して濃度勾配により溶出(elution)した。サイズ排除クロマトグラフィー(Size exclusion chromatography)分析を用いて、純度が95%以上の基準を満たす画分をプーリング(pooling)した。
【0093】
実施例2:持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の活性測定
二つの変異体(FM9+Fc_hole, FM11+Fc_hole)のリンカータイプ及び長さによるGDF15活性の比較評価を行った。前記GDF15活性は、Bright-GloTM luciferase assay kit(Promega)及びGFRAL/RET/SRE-lucが過剰発現されたHEK293細胞株(Human embryonic kidney 293)を用いて測定した。
【0094】
具体的には、10% FBSを含むDMEM培地に1×105個のGFRAL/RET/SRE-lucが過剰発現したHEK293細胞を96-ウェル-プレート(96-well-plate)の各ウェルに分注した後、37℃、5% CO2条件で24時間培養した。24時間後、96-ウェル-プレートの各培地を50μLの無血清培地に交換し、37℃、5% CO2条件で4時間培養した。
【0095】
また、前記実施例1で製造した持続型GDF15融合タンパク質を無血清培地を用いて2000nM濃度から3倍系列希釈(serial dilution)して準備した。その後、交換した無血清培地50μL及びGFRAL/RET/SRE-luc細胞株が入った各ウェルに持続型GDF15融合タンパク質希釈液50μLを添加して、実際の濃度が1000nMで3倍系列希釈されるようにした後、37℃、5% CO2条件で4時間反応させた。4時間後、Bright-GloTM基質にBright-GloTMバッファーを添加して作製したBright-GloTM溶液を各ウェルに100μLずつ処理し、1分間常温で反応させた。
【0096】
その後、発光(Luminescence)測定が可能なマイクロプレートリーダー(microplate reader, Perkin Elmer, Wallac Victor X5)で反応値(Relative light unit, RLU)を測定した。その結果を後記表2と図1、2に示した。この時、FM9-6+Fc_holeの試験管内のGDF15活性を基準(Emax 100%)としてGDF15配列、リンカータイプ及び長さによる持続型GDF15融合タンパク質の活性を比較した。
【表2】
【0097】
その結果、前記表2に示したように、各持続型GDF15融合タンパク質は、リンカーGS(EEEA)6(配列番号:95)を除いて類似した活性を示し、リンカーGS(EEEA)6(配列番号:95)で連結された持続型GDF15融合タンパク質(FM9-4+Fc_hole, FM11-4+Fc_hole)の場合、比較的低いEC50値と高いEmax値を示すことを確認した(図1及び図2)。
【0098】
実施例3:持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の薬物動態評価
6週齢のC57BL/6Nマウス(オリエントバイオ、Orient Bio、Republic of Korea)は、ハルリム(Hallym Lab. Animal Inc., Republic of Korea)から購入した。オスC57BL/6マウスを薬物処理日に体重の平均値が類似するように群を分離(採血時間当たりn=3)した後、FM9-4+Fc_hole、FM9-6+Fc_hole、FM11-4+Fc_hole及びFM11-6+Fc_holeをそれぞれ1mg/kg用量で単回皮下投与し、血液サンプルは、投与後4、24、48、72、96、120、168及び240時間後にそれぞれ収集した。免疫検定方法を使用してマウス血中持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の濃度を測定し、これに基づいて計算された各持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の薬物動態学的パラメータの結果を後記表3に示した。
【表3】
【0099】
実施例4:食餌誘導性-肥満(diet-induced obese, DIO)マウスにおける持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の単独及びセマグルチド(Semaglutide)併用投与による抗肥満効果の評価
マウスに高脂肪飼料を給餌して誘導した食餌誘導性-肥満(DIO)マウスは、肥満、高血糖症及びインスリン抵抗性を特徴とする。6週齢のオスC57BL/6Nマウス(オリエントバイオ、Orient Bio、Republic of Korea)をハルリム(Hallym Lab. Animal Inc., Republic of Korea)から購入した。前記C57BL/6Nマウスは到着後、合計13週間高脂肪飼料(60 kcal % fat, Research Diets, Cat# D12492, USA)を給餌して食餌誘導性-肥満(diet-induced obese, DIO)を誘導し、本試験に使用した。薬物処理日の前日に個々のマウスの平均体重を基準に群を分離(群当たりn=6)した後、FM9-6+Fc_hole 10及び30nmol/kg、対照薬としてセマグルチド(持続型GLP-1誘導体、配列番号:114)10及び30nmol/kg、そして併用療法としてFM9-6+Fc_holeとセマグルチド10+10及び30+30nmol/kgを2日間隔(Q2D)で合計8週間皮下投与した。試験に使用したセマグルチドはNovo NorDisk社のOzempic(登録商標)(Semaglutide)を購入して使用した。この時、ビヒクル(vehicle)処理はDPBS(Dulbecco's phosphate buffered saline, Gibco, USA)を2日間隔(Q2D)で皮下投与した。薬物処理初日から54日まで体重を2日ごとに測定し、その結果を後記表4に示した。
【表4】
【0100】
その結果、FM9-6+Fc_holeまたはセマグルチド単一物質投与群と比較した時、FM9-6+Fc_hole及びセマグルチド併用投与群で体重減少と飼料摂取量に対する相加効果(Additive effect)が現れることを確認した(図3及び図4)。
【0101】
また、FM9-6+Fc_holeとセマグルチドを併用投与した時、単一物質投与最大薬効以上の効果を示し、血中コレステロール及び中性脂肪数値を正常マウス水準まで低下させた(図5)。
【0102】
実施例5:反復投与によるob/obマウスにおける最適化された持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の単独及びセマグルチド併用投与による抗肥満効果の評価
ob/obマウスは、レプチン(leptin)遺伝子が遺伝的に欠乏しており、高血糖症、インスリン抵抗性、過食症及び肥満を特徴とするマウスである。5週齢のオスob/obマウス(Jackson Laboratory, USA)は、ラオンバイオ(Raon Bio, Animal Inc., Republic of Korea)から購入した。前記ob/obマウスは、正常飼料(Teklad Certified Irradiated Global 18 % Protein Rodent Diet, 2918C, Harlan Co., USA)で4週間適応させ、9週齢で薬物処理を開始した。薬物処理日の前日に、個々のマウスの体重及び尾静脈を通じたランダム血糖を基準に群を分離(群当たりn=6)した。その後、FM9-6+Fc_hole 1及び10nmol/kg、セマグルチド10及び30nmol/kg、そしてFM9-6+Fc_holeとセマグルチドを併用して1+10及び10+10nmol/kgを3日間隔(Q3D)で合計10回皮下投与し、体重と飼料摂取量を実験期間(29日)の間、毎日または3日間隔で測定した。この時、ビヒクル処理はDPBS(Dulbecco's phosphate buffered saline, Gibco, USA)を投与した。その結果を後記表5に示した。
【表5】
【0103】
その結果、体重の減少と飼料摂取量の減少効果に対して、FM9-6+Fc_hole及びセマグルチド併用投与群でFM9-6+Fc_hole単一物質投与群より優れた効果を、セマグルチド単一物質投与群の最大効果以上の顕著な体重減少効果を確認した。FM9-6+Fc_hole及びセマグルチド併用投与群について、FM9-6+Fc_hole低用量(1nmol/kg)併用投与群は、FM9-6+Fc_hole高用量(10nmol/kg)併用投与群と同等水準の体重減少効果を示した(図6及び図7)。
【0104】
また、FM9-6+Fc_holeとセマグルチドを併用投与した時、Semaglutide単一物質投与群よりも多くの血中コレステロールと中性脂肪の数値の低下を確認し、FM9-6+Fc_hole高用量(10nmol/kg)単一物質投与水準の血中脂質数値の改善薬効がFM9-6+Fc_hole低用量及びSemaglutide併用投与群(1+10nmol/kg)で確認された(図8)。
【0105】
そして、FM9-6+Fc_hole低用量及びセマグルチド併用投与群(1+10nmol/kg)で、FM9-6+Fc_hole(1nmol/kg)またはセマグルチド(10nmol/kg)単一物質投与群より血糖降下効果及びインスリン抵抗性の改善効果が優れており、低用量併用投与群でFM9-6+Fc_hole単一物質高用量(10nmol/kg)投与群水準の薬効が確認された(図9)。
【0106】
実施例6:反復投与によるob/obマウスにおける最適化された持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の単独及び高用量セマグルチド併用投与による抗肥満及び代謝指標の改善効果の評価
5週齢のオスob/obマウス(Jackson Laboratory, USA)は、ラオンバイオ(Raon Bio, Animal Inc., Republic of Korea)から購入した。前記ob/obマウスは、正常飼料(Teklad Certified Irradiated Global 18% Protein Rodent Diet, 2918C, Harlan Co., USA)で5週間適応させ、10週齢で薬物処理を開始した。薬物処理日の前日に、個々のマウスの体重及び尾静脈を通したランダム血糖を基準に群を分離(群当たりn=6)した。その後、FM9-6+Fc_hole 1nmol/kg、セマグルチド30nmol/kg、そしてFM9-6+Fc_holeとセマグルチドを併用して1+30nmol/kgを3日間隔(Q3D)で合計9回皮下投与し、体重、飼料摂取量及び非絶食血糖を実験期間(24日)の間、毎日または3日間隔で測定した。この時、ビヒクル処理は、DPBS(Dulbecco's phosphate buffered saline, Gibco, USA)を投与した。その結果を後記表6に示した。
【表6】
【0107】
その結果、体重の減少、飼料摂取量の減少及び非絶食血糖降下の効果に対して、FM9-6+Fc_hole及びセマグルチド併用投与群でFM9-6+Fc_hole単一物質投与群より優れた効果を、セマグルチド単一物質投与群の最大効果以上の顕著な体重減少及び非絶食血糖降下の効果を確認した。FM9-6+Fc_holeまたはセマグルチド単一物質投与群と比較したとき、FM9-6+Fc_hole及びセマグルチド併用投与群で体重減少と飼料摂取量に対する相加効果(Additive effect)が現れることを確認した(図10図11及び図12)。
【0108】
反復投与の終了時点で実施した経口負荷試験とインスリン抵抗性確認試験において、FM9-6+Fc_hole(1nmol/kg)とセマグルチド(30nmol/kg)併用投与群は、単一物質投与群より優れた代謝指標の改善効果を示すことを立証した(図13)。
【0109】
また、FM9-6+Fc_holeとセマグルチドを併用投与した時、セマグルチド単一物質投与群よりも多くの血中総コレステロール(total cholesterol)とLDL-c(low density lipoprotein-cholesterol)の減少が観察された(図14)。
【0110】
実施例7:食餌誘導性-肥満(diet-induced obese, DIO)マウスにおける持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の単独及びセマグルチド併用投与による抗肥満効果の評価
マウスに高脂肪飼料を給餌して誘導した食餌誘導性-肥満(DIO)マウスは、肥満、高血糖症及びインスリン抵抗性を特徴とする。C57BL/6Nマウスに高脂肪飼料(60 kcal% fat, Research Diets, Cat# D12492, USA)を8週間給餌した食餌誘導性-肥満マウス(Taconic, USA)をラオンバイオ(Raon Bio, Animal Inc., Republic of Korea)から購入した。前記食餌誘導性-肥満マウスが到着した後、5週間、60%高脂肪飼料を追加給餌して本試験に使用した。薬物処理日の前日に個々のマウスの平均体重を基準に群を分離(群当たりn=6)した後、FM9-6+Fc_hole 0.1及び1nmol/kg、対照薬としてセマグルチド(持続型GLP-1誘導体、配列番号:114) 10nmol/kgとチルゼパチド(Tirzepatide:持続型GLP-1/GIP誘導体、配列番号:117) 10nmol/kg、そして併用療法としてFM9-6+Fc_holeとセマグルチド0.1+10及び1+10nmol/kg、そしてFM9-6+Fc_holeとチルゼパチド1+10nmol/kgを3日間隔(Q3D)で合計4週間皮下投与した。試験に使用したセマグルチドは、Novo NorDisk社のOzempic(登録商標)(Semaglutide)を購入して使用し、チルゼパチドはMedChemExpress(HY-P1731B, USA)社で合成した物質を使用した。この時、ビヒクル処理はDPBS(Dulbecco's phosphate buffered saline, Gibco, USA)を投与し、実験期間(26日)の間、体重は毎日、そして飼料摂取量は3日間隔で測定した。その結果を後記表7に示した。
【表7】
【0111】
その結果、FM9-6+Fc_holeまたはセマグルチド単一物質投与群と比較した時、FM9-6+Fc_hole及びセマグルチド併用投与群で体重減少と飼料摂取量に対する相加効果(Additive effect)が現れることを確認した。FM9-6+Fc_hole低用量及びセマグルチド併用投与群(0.1+10nmol/kg)は、チルゼパチド単一物質投与群(10nmol/kg)と同等水準の体重減少効果を、FM9-6+Fc_hole高用量及びセマグルチド併用投与群(1+10nmol/kg)は、チルゼパチド単一物質投与群より優れた薬効を示した。そして、FM9-6+Fc_holeとチルゼパチドを併用投与した時、FM9-6+Fc_hole単独またはチルゼパチド単独投与群に比べて体重減少に対する相加効果が確認された(図15及び図16)。
【0112】
また、FM9-6+Fc_holeとセマグルチドの併用投与群でFM9-6+Fc_holeまたはセマグルチド単一物質投与の最大効果より優れた血中コレステロール値の減少を示し、これはチルゼパチド単一投与群と同等水準で正常マウス水準の減少効果を示した。そして、FM9-6+Fc_holeとセマグルチドを併用投与した時、正常マウス水準の中性脂肪数値の減少を確認し、FM9-6+Fc_holeとチルゼパチドを併用投与群で有意な中性脂肪数値の減少を確認した(図17)。
【0113】
実施例8:正常ラットにおける持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の単独及びセマグルチド併用投与による胃内容物排出(Gastric emptying)の抑制効果の評価
GLP-1受容体作動薬は、強力な胃排出能抑制を特徴(Can et al., Int J Obes 2014;38:784-793)としており、天然型GDF15によっても投与量に応じてこのような抑制効果が報告されている(Borner et al., Cell Reports 2020;31:107543)。したがって、新規持続型GDF15融合タンパク質の薬効用量及び最大薬効用量(maximal effective dose)以上での胃内容物排出の抑制程度及びGLP-1受容体作動薬との併用投与時、胃排出能抑制効果においてどのような影響があるかを調べようとした。これを確認するため、ラットで持続型GDF15融合タンパク質(二量体)と持続型GLP-1誘導体の単独及び併用投与後、薬物による胃排出能抑制効果(Gastric emptying inhibition)を評価した。
【0114】
6週齢のオスSDラット(オリエントバイオ、Orient Bio、Republic of Korea)をハルリム(Hallym Lab. Animal Inc., Republic of Korea)から購入した。前記SDラットは、到着後1週間適応飼育後、本試験に使用した。薬物投与当日に最低6時間絶食後、個々のラットの平均体重を基準に群を分離(群当たりn=5)した後、FM9-6+Fc_hole 0.1、1及び10nmol/kg、セマグルチド(持続型GLP-1誘導体、配列番号:114)10nmol/kg、そして併用療法としてFM9-6+Fc_holeとセマグルチドを1+10nmol/kgで単回皮下投与した。試験に使用したセマグルチドはNovo NorDisk社のOzempic(登録商標)(Semaglutide)を購入して使用した。陰性対照薬としてD-PBS(Normal vehicle)を単回皮下投与し、陽性対照薬としてロペラミド(Loperamide)30mg/kgをアセトアミノフェン(acetaminophen)投与の約45分前に経口投与した。薬物投与後3時間、24時間及び72時間にアセトアミノフェン100mg/kgを経口投与し、アセトアミノフェン投与前と投与後30分、60分、90分、120分及び150分に血中アセトアミノフェン濃度を定量した。その後、アセトアミノフェンの薬物動態学的変化と体内露出度を比較し、薬物による胃排出能抑制効果を評価し、その結果を後記表8に示した。
【表8】
【0115】
その結果、Normal vehicle投与群と比較した時、セマグルチド単一物質投与群では投与後3時間にアセトアミノフェンの体内露出度が有意に減少し、胃排出能抑制が観察され、投与後24時間及び72時間にはアセトアミノフェンの体内露出度が正常群と類似に増加し、胃排出能が回復することを確認した。FM9-6+Fc_hole単一物質投与群では、0.1、1及び10nmol/kg全て投与後3時間、24時間及び72時間で有意なアセトアミノフェンの体内露出度の変化が観察されず、FM9-6+Fc_holeは試験用量で胃排出能に影響を与えないことが確認された。また、セマグルチド単独物質投与群と比較した時、FM9-6+Fc_hole及びセマグルチド併用投与群で有意なアセトアミノフェンの体内露出度変化が観察されず、FM9-6+Fc_holeをセマグルチドと併用投与する場合、胃排出能抑制に対する相加効果(Additive effect)が現れないことを立証した(図18)。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によるGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬を含む組成物により、胃排出能に影響を与えることなく、改善された糖尿病、肥満、脂質異常症または代謝症候群の予防または治療効果を示すことができる。
【0117】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2024519950000001.app
【国際調査報告】