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特表2024-519951GDF15変異体を含む非アルコール性脂肪性肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎の予防または治療用組成物{Composition For Preventing or Treating Non-Alcoholic Fatty Liver Disease or Non-Alcoholic Steatohepatitis Comprising Growth Differentiation Factor-15 Variant}
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  • 特表-GDF15変異体を含む非アルコール性脂肪性肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎の予防または治療用組成物{Composition  For  Preventing  or  Treating  Non-Alcoholic  Fatty  Liver  Disease  or  Non-Alcoholic  Steatohepatitis  Comprising  Growth  Differentiation  Factor-15  Variant} 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】GDF15変異体を含む非アルコール性脂肪性肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎の予防または治療用組成物{Composition For Preventing or Treating Non-Alcoholic Fatty Liver Disease or Non-Alcoholic Steatohepatitis Comprising Growth Differentiation Factor-15 Variant}
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20240514BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240514BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240514BHJP
   C07K 14/495 20060101ALN20240514BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240514BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240514BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
A61K38/18
A61P1/16
A61K47/68
A61K39/395 Y
C07K14/495 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572096
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 KR2022007248
(87)【国際公開番号】W WO2022245183
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065564
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516006530
【氏名又は名称】ユハン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】YUHAN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イム セヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ドフン
(72)【発明者】
【氏名】キム スギョン
(72)【発明者】
【氏名】シム ボラ
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンジ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンファン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC16
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA21
4C084BA41
4C084CA53
4C084DB52
4C084MA16
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA75
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA01
4H045EA27
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、GDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含 む非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後記式(I)で示されるGDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療用薬学的組成物:
N-末端拡張ドメイン - コアドメイン(式I)
前記式(I)において、
N-末端拡張ドメインは、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであり;
コアドメインは、配列番号20のアミノ酸配列を含むか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドであり;
前記15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアラニン(alanine, A)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、アスパラギン(asparagine, N)、システイン(cysteine, C)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、グルタミン(glutamine, Q)、グリシン(glycine, G)、ヒスチジン(histidine, H)、イソロイシン(isoleucine, I)、ロイシン(leucine, L)、リジン(lysine, K)、メチオニン(methionine, M)、フェニルアラニン(phenylalanine, F)、プロリン(proline, P)、セリン(serine, S)、トレオニン(threonine, T)、トリプトファン(tryptophan, W)、チロシン(tyrosine, Y)またはバリン(valine, V)に置換され、
前記50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がアラニン、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、
前記58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、または
前記97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がアラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換される。
【請求項2】
前記コアドメインは、後記(1)~(6)の変異からなる群から選択されるいずれか一つの変異を含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物:
(1) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換される;
(2) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(3) 配列番号20のアミノ酸配列のうち58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン(asparagine, N)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、システイン(cysteine, C)またはロイシン(leucine, L)に置換される;
(4) 配列番号20のアミノ酸配列のうち97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(5) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)及び97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がシステイン(cysteine, C)またはセリン(serine, S)に置換される;及び
(6) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換され、58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)またはアルギニン(arginine, R)に置換される。
【請求項3】
前記コアドメインが配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記GDF15変異体が配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記GDF15変異体が配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記GDF15変異体が配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記GDF15変異体が配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記持続型GDF15融合タンパク質は、前記GDF15変異体とヒトIgG Fcまたはその変異体が結合される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記持続型GDF15融合タンパク質二量体は、持続型GDF15融合タンパク質二つを含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記IgG Fcまたはその変異体は、IgG1 Fc配列を含む第1ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された突出部(protuberance)を含むCH3配列を含む前記第1ポリペプチド;及び
IgG1 Fc配列を含む第2ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された空洞(cavity)を含むCH3配列を含む前記第2ポリペプチドを含み、
前記第1ポリペプチドの突出部と前記第2ポリペプチドの空洞の配置により、第2ポリペプチドとヘテロ二量体化されるものである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記GDF15変異体のN-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのうちC-末端または前記第2ポリペプチドのC-末端が結合されるものである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、リンカーを介して行われるものである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記リンカーは、グリシン、セリン、アラニン、リジン及びグルタミン酸残基を含み、10~50個のアミノ酸残基からなるペプチドである、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:48)、GSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:92)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:93)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:94)、GSEEEAEEEAEEEAEEEAEEEAEEEA(配列番号:95)、GSGGSSPTPTPTPTPTPTPTPTPTPT(配列番号:96)またはGSEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号:97)である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記第1ポリペプチドが配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記第2ポリペプチドが配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記GDF15変異体が少なくとも一つのN-連結されたグリカン(N-linked glycan)を含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記持続型GDF15融合タンパク質がi)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiii)配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
後記式(II)で示されるGDF15(Growth differentiation factor-15)変異体及びIgG Fcを含む複合体を含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療用薬学的組成物:
IgG Fc - (L)m - N末端伸長ドメイン - コアドメイン (II)
ここで、mは0または1の整数であり、
Lは、配列番号48、92、93、94、95、96、および97からなる群から選択されるリンカーであり、
IgG Fcは、配列番号42、44、または46のアミノ酸配列を含み、かつ
N末端伸長ドメインおよびコアドメインは、請求項1に定義されるとおりである。
【請求項20】
前記N末端伸長ドメイン-コアドメインが、配列番号21~39からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記複合体が、配列番号50~91および98~109からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含む非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
GDF15は、MIC-1(Macrophage inhibitory cytokine-1)、PBMP(Placental bone morphogenetic protein)及びNAG-1(Nonsteroidal anti-inflammatory drug-activated gene-1)とも呼ばれ、TGF-βスーパーファミリー(transforming growth factor-beta superfamily)の構成因子の一つであるタンパク質である。
【0003】
最近、GDF15が脳組織で特異的に発現するGFRAL(GDNF Family receptor alpha-like)及びRET(Ret proto-oncogene)との結合を通じて食餌摂取を抑制し、体重減少を誘導するという研究結果が報告されている(Tsai VW, et al., PLoS One 2013; 8 (2): e55174; US 8,192,735)。また、多様な研究で様々な肥満動物モデルにGDF15を投与して優れた体重減少効果を実証し、加えて更なる血糖値降下、脂質値改善、インスリン抵抗性改善などの代謝的利点を確認した。
【0004】
しかし、野生型のGDF15は、体内での半減期が短く、これを医学的に使用する場合、投与頻度が高いという問題がある。そこで、GDF15の体内半減期を増加させるための持続型製剤の開発が行われている。
【0005】
一方、非飲酒者に発生するアルコール性肝障害と類似した脂肪肝を包括するすべての脂肪性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)と呼ばれる。非アルコール性脂肪性肝疾患患者では肝臓の脂肪酸合成が常に活性化されており、脂肪酸合成の活性化は代謝症候群に起因する脂肪肝の形成に関与する重要な因子である。
【0006】
非アルコール性脂肪性肝疾患は、一般的に予後良好と考えられる単純性脂肪肝と、単純性脂肪肝に持続的な炎症や線維化が伴って予後不良と判断されている非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis, NASH)に大別され、NASHは、NAFLDの重症型の一形態といえる。統計によると、脂肪肝人口の約30%程度がNASHの所見を示し、NASH患者の10-29%が肝硬変、さらに肝癌または死亡にまで発展すると報告された。しかし、非アルコール性脂肪性肝炎が肝硬変及び肝癌に進行する重症型疾患であるにもかかわらず、現在まで優れた臨床的NASH改善の証拠を有する薬物がないため、非アルコール性脂肪性肝炎の予防または治療に対する研究の必要性が切実に求められている状況である。
【0007】
本発明者らは、GDF15の特定位置に突然変異を導入して改善された活性を示すGDF15変異体を用いて代謝症候群の予防または治療効果を評価している中、NASH動物モデルで非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の改善可能性を確認し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 2019-0000923 (2019.01.03)
【非特許文献1】Li Ding, et al., BBRC 2018; 498:388-394
【非特許文献2】Zhang Zechusan et al., J Hepatol 2020; 72:976-989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様は、後記式(I)で示されるGDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療用薬学的組成物を提供する:
N-末端拡張ドメイン - コアドメイン(I)
前記式(I)において、
N-末端拡張ドメインは、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであり;
コアドメインは、配列番号20であるか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドであり;
前記15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアラニン(alanine, A)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、アスパラギン(asparagine, N)、システイン(cysteine, C)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、グルタミン(glutamine, Q)、グリシン(glycine, G)、ヒスチジン(histidine, H)、イソロイシン(isoleucine, I)、ロイシン(leucine, L)、リジン(lysine, K)、メチオニン(methionine, M)、フェニルアラニン(phenylalanine, F)、プロリン(proline, P)、セリン(serine, S)、トレオニン(threonine, T)、トリプトファン(tryptophan, W)、チロシン(tyrosine, Y)またはバリン(valine, V)に置換され、
前記50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がアラニン、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、
前記58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換され、または
前記97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がアラニン、アルギニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-1、FM9-2、FM9-3、FM9-4、FM9-5及びFM9-6)のリンカータイプ及び長さによる活性を比較した図である。
図2】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM11-1、FM11-2、FM11-3、FM11-4、FM11-5及びFM11-6)のリンカータイプ及び長さによる活性を比較した図である。
図3】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるコリン欠乏-高脂肪食(choline-deficient, L-amino acid defined, high-fat diet)誘導非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデル(CDAHF食餌誘導NASHマウスモデル)における体重変化量(%)を比較した図である。
図4】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるCDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおける相対的な肝臓の重量減少効果を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び***p<0.001、そして****p<0.0001 vs. CDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)(One-way ANOVA))。
図5】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるCDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおける肝臓の損傷に関する血液指標の改善効果を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び*p<0.05、そして**p<0.01 vs. CDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)(One-way ANOVA))。
図6】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるCDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおける肝臓組織NAFLD activity score(NAS)の改善効果を示す図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び**p<0.01 vs. CDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)(One-way ANOVA))。
図7】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるCDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおける個体別steatosis及びhypertrophy scoreを示す図である。
図8】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるCDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおける肝臓の中性脂肪の数値を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び***p<0.001 vs. CDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)(One-way ANOVA))。
図9】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるCDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおいてH&E染色した肝臓の組織写真を比較した図である。
図10】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるCDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおけるPicro sirus stain(PSR)結果を比較した図である(###p<0.001 vs. 正常対照群(Normal vehicle)(Student's t-test)及び***p<0.001、そして****p<0.0001 vs. CDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)(One-way ANOVA))。
図11】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるob/obマウスモデルにおける体重変化量(%)を比較した図である。
図12】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるob/obマウスモデルにおける肝臓重量(g)及び相対的な肝臓重量(%)の減少効果を比較した図である(####p<0.0001 vs. 正常対照群(Lean vehicle)(Student's t-test)及び****p<0.0001 vs. ob/ob対照群(ob/ob vehicle)(One-way ANOVA))。
図13】持続型GDF15融合タンパク質(二量体、FM9-6)の反復投与によるob/obマウスモデルにおける肝臓の損傷に関する血液指標の改善効果を比較した図である(###p<0.001、そして####p<0.0001 vs. 正常対照群(Lean vehicle)(Student's t-test)及び*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、そして****p<0.0001 vs. ob/ob対照群(ob/ob vehicle)(One-way ANOVA))。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、一態様において、GDF15(Growth differentiation factor-15)変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を有効成分として含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
GDF15変異体
後記式(I)で示されるGDF15変異体を提供する:
N-末端拡張ドメイン - コアドメイン(I)
前記式(I)において、
N-末端拡張ドメインは、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであり;
コアドメインは、配列番号20であるか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドであり;
前記15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアラニン(alanine, A)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、アスパラギン(asparagine, N)、システイン(cysteine, C)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、グルタミン(glutamine, Q)、グリシン(glycine, G)、ヒスチジン(histidine, H)、イソロイシン(isoleucine, I)、ロイシン(leucine, L)、リジン(lysine, K)、メチオニン(methionine, M)、フェニルアラニン(phenylalanine, F)、プロリン(proline, P)、セリン(serine, S)、トレオニン(threonine, T)、トリプトファン(tryptophan, W)、チロシン(tyrosine, Y)またはバリン(valine, V)に置換することができ、
前記50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がアラニン、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換することができ、
前記58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換することができ、または
前記97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がアラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンに置換することができる。
【0015】
本明細書で使用される用語「コアドメイン」とは、配列番号1のGDF15のアミノ酸配列において7番目から112番目までのアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、配列番号20であるか、配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目、50番目、58番目、97番目及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたポリペプチドを意味する。前記第1コアドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0016】
具体的には、前記コアドメインは、後記(1)~(6)の変異からなる群から選択されるいずれか一つの変異を含むことができる:
(1) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換される;
(2) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(3) 配列番号20のアミノ酸配列のうち58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)、アルギニン(arginine, R)、アスパラギン(asparagine, N)、アスパラギン酸(aspartic acid, D)、グルタミン酸(glutamic acid, E)、システイン(cysteine, C)またはロイシン(leucine, L)に置換される;
(4) 配列番号20のアミノ酸配列のうち97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がロイシン(leucine, L)に置換される;
(5) 配列番号20のアミノ酸配列のうち50番目のアミノ酸であるアスパラギン(asparagine, N)及び97番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(aspartic acid, D)がシステイン(cysteine, C)またはセリン(serine, S)に置換される;及び
(6) 配列番号20のアミノ酸配列のうち15番目のアミノ酸であるアルギニン(arginine, R)がアスパラギン(asparagine, N)に置換され、58番目のアミノ酸であるセリン(serine, S)がリジン(lysine, K)またはアルギニン(arginine, R)に置換される。
このとき、前記コアドメインは、配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0017】
前記N-末端拡張ドメインは、前述のコアドメインのN-末端に結合するドメインであり、配列番号3~5のいずれか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドであってもよい。
【0018】
本発明で使用される表現「ΔN2」は、「delta N2」とも示すことができ、配列番号1で示されるヒトGDF15のアミノ酸配列のうち1番目及び2番目のアミノ酸が欠失したものを意味する。前記ΔN2は、N-末端拡張ドメインとして表される場合、「NGDH」と示すことができる。
【0019】
本発明で使用される表現「ΔN3、WS insertion、G4N、D5S、H6T」は、「delta N3、WS insertion、G4N、D5S、H6T」とも示すことができ、配列番号1で示されるヒトGDF15のアミノ酸配列のうち1番目~3番目のアミノ酸が欠失し、その代わりにトリプトファン及びセリンが挿入され、4番目のアミノ酸であるグリシンがアスパラギンに置換され、5番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がセリンに置換され、6番目のアミノ酸であるヒスチジンがトレオニンに置換されたことを意味する。前記ΔN3、WS insertion、G4N、D5S、H6Tは、N-末端拡張ドメインとして表される場合、「WSNST」と示すことができる。
【0020】
本発明で使用される表現「ΔN3、G4N、D5S、H6T」は、「delta N3、G4N、D5S、H6T」とも示すことができ、配列番号1で示されるヒトGDF15のアミノ酸配列のうち1番目~3番目のアミノ酸が欠失し、4番目のアミノ酸であるグリシンがアスパラギンに置換され、5番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がセリンに置換され、6番目のアミノ酸であるヒスチジンがトレオニンに置換されたことを意味する。前記「ΔN3、G4N、D5S、H6Tは、N-末端拡張ドメインとして表される場合、「NST」と示すことができる。
【0021】
前記GDF15変異体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。また、前記GDF15変異体は、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。さらに、前記GDF15変異体は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。
【0022】
好ましくは、前記GDF15変異体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。また、前記GDF15変異体は、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号8、9または20で示されるアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。さらに、前記GDF15変異体は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むN-末端拡張ドメイン及び配列番号6、7及び10~19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むコアドメインを含むことができる。このとき、前記GDF15変異体は、配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0023】
持続型GDF15融合タンパク質
前記持続型GDF15融合タンパク質は、前記GDF15変異体とヒトIgG Fcまたはその変異体が結合する。
【0024】
前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcまたはその変異体であってもよい。具体的には、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、ヒトIgG1 Fcまたはその変異体であってもよく、前記ヒトIgG1 Fcは、配列番号41で示されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0025】
前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の隣接アミノ酸配列またはCH3ドメインを含むFcの断片であってもよい。特定の実施態様において、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の隣接アミノ酸配列またはCH2ドメイン及びCH3ドメインを含むFcの断片であってもよい。特定の実施態様において、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の隣接アミノ酸配列または部分的なヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含むFcの断片であってもよい。特定の実施態様において、前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、配列番号41と90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有することができる。
【0026】
前記IgG Fcまたはその変異体は、IgG1 Fc配列を含む第1ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された突出部(protuberance)を含むCH3配列を含む前記第1ポリペプチド;及びIgG1 Fc配列を含む第2ポリペプチドであり、少なくとも一つの加工された空洞(cavity)を含むCH3配列を含む前記第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドの突出部と前記第2ポリペプチドの空洞の配置を介して第2ポリペプチドとヘテロ二量体化されるものであってもよい。
【0027】
具体的に、前記第1ポリペプチドは、加工された空洞を含む別のIgG Fcポリペプチド(例えば、第2ポリペプチド)を結合させることができる加工された突出部を含むことができる。前記第2ポリペプチドは、加工された突出部を含む別のIgG Fcポリペプチド(例えば、第1ポリペプチド)を結合させることができる加工された空洞を含むことができる。また、前記第1ポリペプチドの突出部及び第2ポリペプチドの空洞は、IgG FcのCH3ドメインで加工することができる。このとき、第1ポリペプチドの突出部及び第2ポリペプチドの空洞は、GDF15変異体に連結されるか結合されることはない。
【0028】
前記加工された突出部は、配列番号41で示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1 Fcのアミノ酸配列内で少なくとも一つの置換を含むことができる。このとき、アミノ酸の位置の番号付けは、EUの番号付けに従う。前記置換は、アミノ酸残基の347、366及び394からなる群から選択される位置に存在することができる。例えば、前記置換は、Q347W/Y、T366W/Y、T394W/Y及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。さらに、前記加工された空洞は、ヒトIgG1 Fc配列内に相応するアミノ酸の少なくとも一つの置換を含むことができ、前記置換は、アミノ酸残基366、368、394、405、及び407からなる群から選択される位置に存在することができる。例えば、前記置換は、T366S、L368A、T394S、F405T/V/A、Y407T/V/A及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0029】
好ましくは、前記突出部は、T366W/Y置換を含むことができ、前記空洞は、T366S、L368A、Y407T/V/A及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つの置換を含むことができる。例えば、前記突出部は、T366W/Y置換を含むことができ、前記空洞は、Y407T/V/A置換を含むことができる。また、前記突出部は、T366Y置換を含むことができ、前記空洞は、Y407T置換を含むことができる。前記突出部は、T366W置換を含むことができ、前記空洞は、Y407A置換を含むことができる。前記突出部は、T394Y置換を含むことができ、前記空洞は、Y407T置換を含むことができる。
【0030】
前記第1ポリペプチドが配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよく、前記第2ポリペプチドは、配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
前記突出部は「ノブ(Knob)」と呼ばれ、空洞は「ホール(hole)」と呼ばれる。
【0031】
前記第1ポリペプチドは、加工された突出部(protuberance)を含むFc「ノブ」(knob) であり、第2ポリペプチドは、加工された突出部を含むFc「ホール」(hole)である。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、非-共有相互作用(例えば、疎水性効果、例えば、Fcのノブとホール領域間の疎水性相互作用)、共有結合(例えば、ジスルフィド結合、例えば、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチド内のFcのヒンジ領域間の1または2またはそれ以上のジスルフィド結合)、または非-共有相互作用及び共有結合の全てを介して物理的に結合することができる。
【0032】
本発明で使用される用語「二量体」とは、少なくとも2種のポリペプチドを含むタンパク質複合体を意味する。これらのポリペプチドのそれぞれは、N-末端及びC-末端を含む。少なくとも2種のポリペプチドは、共有及び非-共有相互作用(例えば、静電気、π-効果、ファンデルワールス力、及び疎水性効果)の一つまたは二つ全てを介して互いに連携することができる。前記2種のポリペプチドが同一のアミノ酸配列を有するか、または異なる場合があり、2種のポリペプチドが同一の二つのポリペプチドを有する場合、(同種)二量体と呼ばれ、2種のポリペプチドが異なる二つのポリペプチドを有する場合、ヘテロ二量体と呼ばれる。
【0033】
前記ヒトIgG Fcまたはその変異体は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むヘテロ二量体であってもよく、前記ヘテロ二量体は、A-1(配列番号42)及びA-2(配列番号43)を用いたヘテロ二量体、B-1(配列番号44)及びB-2(配列番号45)を用いたヘテロ二量体、またはC-1(配列番号46)及びC-2(配列番号47)を用いたヘテロ二量体であってもよい。
【0034】
また、前記IgG Fcまたはその変異体は、持続型GDF15融合タンパク質の特性を改善するために追加の突然変異を含むことができる。具体的には、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドからなるヘテロ二量体に追加の突然変異を含むことができる。
【0035】
例えば、前記IgG Fcまたはその変異体は、IgG効果機能(Effector function)を廃止する(例えば、減少または除去する)突然変異を含むことができる。具体的には、Fcパートナー配列は、効果機能、例えば、補体-依存性細胞傷害(CDC)、抗体-依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体-依存性細胞貪食(ADCP)を廃止する突然変異を含むことができる。例えば、前記A-1及びA-2を用いたIgG Fcまたはその変異体(ヘテロ二量体)に、IgG1効果機能性の除去のためにE233A、L235A突然変異を導入することができる。N297A突然変異を含むB-1及びB-2を用いたヘテロ二量体は、N-連結されたグリカン(N-linked glycan)の除去のために使用することができる。C-1及びC-2を用いたヘテロ二量体は、IgG1効果機能性及びN-連結されたグリカンの除去のために、L234A、L235A、N297A突然変異を導入することができる。
【0036】
前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、GDF15変異体のN-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのC-末端または前記第2ポリペプチドのC-末端が結合するものであってもよい。また、前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、GDF15変異体のC-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのN-末端または前記第2ポリペプチドのN-末端が結合されるものであってもよい。好ましくは、前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、GDF15変異体のN-末端にIgG Fcまたはその変異体の第1ポリペプチドのC-末端が結合されるものであってもよい。
【0037】
また、前記GDF15変異体とIgG Fcまたはその変異体の結合は、リンカーを介して行われるものであってもよい。前記リンカーは、グリシン、セリン、アラニン、リジン及びグルタミン酸残基を含み、10~50個のアミノ酸残基からなるペプチドであってもよい。前記リンカーは、(G4S)nを含むことができ、このとき、nは、1~10の整数または2~7の整数であってもよい。例えば、前記nは、2、3、4、5、6または7であってもよい。本発明の一実施例においては、nが5の整数である(G4S)5を含むリンカーを使用した。
【0038】
ただし、これに限定されず、前記(G4S)n以外の適合するリンカーの例として、前記リンカーは、GS(G4S)n、GS(EEEA)n、(EEEA)n、GS(EAAAK)n、(EAAAK)nまたはGSGGSS(PT)nを含むことができ、このとき、nは1~10の整数であってもよい。本発明の一実施例においては、nが6の整数であるGS(EEEA)6を含むリンカーまたはnが5の整数であるGS(EAAAK)5を含むリンカーを使用した。
【0039】
具体的には、前記リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:48)、GSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:92)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:93)、GSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:94)、GSEEEAEEEAEEEAEEEAEEEAEEEA(配列番号:95)、GSGGSSPTPTPTPTPTPTPTPTPTPT(配列番号:96)またはGSEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号:97)であってもよい。好ましくは、前記リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:48)、GSEEEAEEEAEEEAEEEAEEEAEEEA(配列番号:95)またはGSEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号:97)であってもよい。
【0040】
前記持続型GDF15融合タンパク質は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドからなるヘテロ二量体一つ当たり一つのGDF15変異体を含む。前記GDF15変異体は、少なくとも一つのN-連結されたグリカン(N-linked glycan)を含むことができる。
【0041】
前記持続型GDF15融合タンパク質は、i)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号42、44及び46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiii)配列番号43、45及び47から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むことができる。
【0042】
好ましくは、前記持続型GDF15融合タンパク質は、i)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号48のアミノ酸配列を含むリンカー、iii)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiv)配列番号43のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むことができる。
【0043】
さらに好ましくは、前記持続型GDF15融合タンパク質は、i)配列番号21~39から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むGDF15変異体、ii)配列番号92~97から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むリンカー、iii)配列番号46のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及びiv)配列番号47のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含むことができる。
【0044】
融合タンパク質二量体
前記持続型GDF15融合タンパク質二量体は、二つの持続型GDF15融合タンパク質を含む。具体的には、前記二つの持続型GDF15融合タンパク質は、GDF15-GDF15相互作用を介して二量体化され、これを「融合タンパク質二量体」と命名した。
【0045】
複合体
複合体は成長分化因子-15 (GDF15) 変異体およびIgG Fcを含み、前記複合体は以下の式(II)で表される:
IgG Fc - (L)m - N末端伸長ドメイン- コアドメイン (II)
ここで、mは0または1の整数であり、
Lは、配列番号48、92、93、94、95、96、および97からなる群から選択されるリンカーであり、
IgG Fcは、配列番号42、44、または46のアミノ酸配列を含み、かつ
N末端伸長ドメインおよびコアドメインは上記で定義した通りである。
一実施形態では、N末端伸長ドメイン-コアドメインは、配列番号21~39からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
さらに、複合体は、配列番号50~91および98~109からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0046】
核酸分子、発現ベクター及び宿主細胞
前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0047】
本明細書で使用される用語「単離された核酸分子」とは、核酸全体が供給源細胞から単離されたときに、それと共に自然で発見されるタンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質の約50%以上から分離されるか、自然では連結されないポリヌクレオチドに作動可能に連結されるか、または、より大きなポリヌクレオチド配列の一部として自然で発生しない本発明の核酸分子を意味する。具体的には、本発明の単離された核酸分子には、任意の他の汚染核酸分子、またはポリペプチドの生産またはその治療、診断、予防または研究用途におけるその使用を阻害するその自然環境で発見される他の汚染物質が実質的に存在しない。
【0048】
このとき、前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質をコードする単離された核酸分子は、コドンの重複(redundancy)により、互いに異なる配列を有することができる。また、前記単離された核酸分子は、前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質を生産することができる限り、目的に応じて適切に変形されるか、N-末端またはC-末端にヌクレオチドが添加されてもよい。
【0049】
前記GDF15変異体または前記持続型GDF15融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0050】
本明細書で使用される用語「発現ベクター」とは、宿主細胞の形質転換に適し、挿入された異種核酸配列の発現を指示または制御する核酸配列を含むベクターを意味する。前記ベクターは、線形(linear)核酸、プラスミド、ファージミド(phagemids)、コスミド(cosmids)、RNAベクター、ウイルスベクター及びその類似体を含む。前記ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)、及びアデノ-随伴ウイルス(adeno-associated virus)を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される用語、目的タンパク質の「異種核酸配列の発現」または「発現」とは、挿入されたDNA配列の転写、mRNA転写体の翻訳、及び融合タンパク質生産物または抗体または抗体断片の生産を意味する。
【0052】
有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen, Carlsbad)またはその変異体であってもよい。有用な発現ベクターは、哺乳類細胞において目的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトCMV(cytomegalovirus)プロモーター、及び転写後のRNAの安定状態水準を高めるためのウシ成長ホルモン(bovine growth hormone)ポリアデニル化シグナル配列を含むことができる。
【0053】
前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0054】
本明細書で使用される用語「宿主細胞」とは、組換え発現ベクターが導入される可能性がある原核及び真核細胞を示す。本明細書で使用される用語、「形質転換された」及び「形質感染された」は、当業界に公知の多くの技術による細胞内への核酸(例えば、ベクター)の導入を意味する。
【0055】
前記宿主細胞は、本発明のDNA配列に形質転換または形質感染させることができ、目的タンパク質の発現及び/または分泌に用いることができる。本発明に使用することができる宿主細胞は、不死のハイブリドーマ細胞(immortal hybridoma cells)、NS/0骨髄腫細胞(NS/0 myeloma cells)、293細胞、中国ハムスター卵巣細胞(CHO cell)、HeLa細胞、CAP細胞(ヒト羊水由来細胞)、またはCOS細胞を含むことができる。
【0056】
薬学的組成物
本発明による薬学的組成物は、任意の経路で投与することができる。本発明の組成物は、直接的に(例えば、組織部位への注入、移植または局部的に投与することで、局所的に)またはシステム的に(例えば、非経口または経口で)、任意の適切な手段により動物に投与することができる。本発明の組成物が、静脈内、皮下、眼(ophthalmic)、腹腔内、筋肉内、経口、直腸、眼窩内(intraorbital)、脳内(intracerebral)、頭蓋内(intracranial)、脊椎内(intraspinal)、脳室内(intraventricular)、髄膜腔内(intrathecal)、嚢内(intracistenal)、カプセル内(intracapsular)、鼻腔内(intranasal)またはエアロゾル投与のように非経口的に提供される場合、薬学的組成物は、例えば、水性(aqueous)または生理学的に適用可能な体液懸濁液または溶液の部分を含むことができる。これにより、担体または運搬体(vehicle)が生理学的に許容可能であるため、組成物に添加して患者に伝達することができる。したがって、製剤のための体液のような担体として、一般的に生理食塩水を含むことができる。
【0057】
さらに、投与頻度は、使用される製剤中のGDF15変異体の薬物動態パラメータにより異なる。典型的には、臨床医は、目的の効果を達成する投与量に達するまで薬学的組成物を投与する。したがって、薬学的組成物は、単一の投与量として、時間間隔をあけて2回以上の投与量であり、または移植装置またはカテーテルを介した連続注入することで投与することができる。適切な投与量の追加の精密化は、当業者によって日常的に行われており、当業者によって日常的に行われる業務範囲内に該当する。
【0058】
また、単位投与量は、ヒトにおいて0.01μg/kg~100mg/kgであり、具体的には、1μg/体重kg~10mg/kgである。前記含有量が最適量ではあるが、治療対象の疾患及び副作用の有無によって異なる場合があり、最適な投与量は通常の実験を用いて決定することができる。融合タンパク質の投与は、周期的な急速注入(periodic bolus injections)によるか、外側の供給源(external reservoir)(例えば、点滴静注バッグ(intravenous bag))または内側(例えば、生体侵食性インプラント(bioerodable implant))からの持続的な静脈内、皮下、または腹膜内投与によって行うことができる。
【0059】
組成物の投与
本発明の組成物は、治療しようとする疾患に適したあらゆる経路で投与することができる。適切な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、吸入、皮内、髄腔内、硬膜、及び注入技術を含む)、経皮、直腸、鼻腔内、局所(頬及び舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内及び鼻腔内投与が含まれる。局所投与は、経皮パッチまたはイオン浸透療法装置のように経皮投与を用いることを含むことができる。薬物の剤形化は、以下の文献で議論されている[参考:Remington's Pharmaceutical Sciences, 18thEd., (1995) Mack Publishing Co., Easton, PA]。薬物剤形化の他の例は、以下の文献に記載されている[参考:Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, Vol 3, 2nd Ed., New York, NY]。
【0060】
好ましい経路は、例えば、受容者の状態によって様々である。経口投与する場合には、これを製薬上許容される担体、滑沢剤または賦形剤とともに、丸剤、カプセル剤、錠剤などとして剤形化することができる。非経口投与する場合には、これを製薬上許容される非経口ビヒクルまたは希釈剤とともに、単位投与注射剤の形で剤形化することができる。
【0061】
予防または治療
本発明の組成物は、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療に使用される。本発明による組成物は、肝臓脂肪の蓄積を抑制する効果がある。
【0062】
「非アルコール性脂肪性肝疾患」とは、非アルコール性脂肪肝及び非アルコール性肝脂肪症と同じ意味である。非アルコール性脂肪性肝疾患には、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び単純性脂肪肝が含まれる。非アルコール性脂肪性肝疾患は、例えば、明らかな飲酒歴がないにもかかわらず、肝臓組織に対する所見はアルコール性肝障害と類似した、主に大滴性の肝脂肪沈着を特徴とする肝障害で、予後良好な単純性脂肪肝と進行性の非アルコール性脂肪性肝炎を含む概念として定義される。
【0063】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療のためのGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体の用途を提供する。本発明は、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を個体に投与する段階を含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防または治療方法を提供する。
【0064】
前記個体は、非アルコール性脂肪性肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎を患っている個体であってもよい。また、前記個体は、哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトであってもよい。
【0065】
「治療」とは、任意の主観的または客観的パラメータ、例えば、軽減;寛解;患者に対してより容認可能な症状または損傷の生成、病理または病態の減少;退歩または衰退の速度の遅延;衰弱の少ない最終的な退歩点の生成;患者の身体的または精神的な健康の改善を含む損傷、病理または病態の治療または改善における任意の成功兆候を指す。症状の治療または改善は、身体検査、神経精神医学的検査及び/または精神医学的評価を含む客観的または主観的パラメータに基づく。
【0066】
「有効量」とは、一般に、症状の重症度、頻度を減少させるか、症状、根本原因を除去するか、症状の発生または根本原因を予防するか、疾患状態に起因するか、またはこれに関連する損傷を改善または矯正するのに十分な量である。一部の実施態様において、有効量は、治療的有効量または予防的有効量である。「治療的有効量」は、疾患状態または症状、特に疾患状態に関連する状態または症状を矯正するか、または疾患状態または何らかの方法で疾患に関連する任意の他の好ましくない症状の進行を予防、妨害、遅延、または反転させるのに十分な量である。「予防的有効量」は、被験体に投与されたときに、意図された予防効果、例えば、疾患状態の開始の予防または遅延、または疾患状態または関連症状の開始(または再発)の可能性の低減をもたらす薬学的組成物の量である。本発明による組成物の治療上の有効量は、生物学的または医学的反応の観察可能な水準、例えば、血糖、インスリン、中性脂肪またはコレステロール水準の低下;体重減少;または耐糖能、エネルギー消費量またはインスリン感受性の改善を支えるGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体の量を意味する。
【0067】
製品
前記疾患及び障害の治療に有用なGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体及びGLP-1受容体作動薬を含むキットを提供することができる。このようなキットは、複合剤形に共同-剤形化する場合、単一の容器を含む。このようなキットがGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を含む容器を含む。
【0068】
キットは、前記容器と関連付けられるか、その上にラベルまたはパッケージ挿入物を追加的に含むことができる。用語「パッケージ挿入物」は、治療製品の市販パッケージ内に通常含まれる指示事項を指し、そのような治療製品の適応症、活用、投与量、投与、禁止事項、及び/または使用に関する警告に関する情報を含んでいる。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器、ブリスターパック(blister pack)などが含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラスまたはプラスチックで形成することができる。前記のラベルまたはパッケージ挿入物は、当該組成物が選択された疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患または脂肪性肝炎の予防または治療するために使用されることを表示する。さらに、製薬上許容される緩衝剤、例えば、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含むことができる。商業的及びユーザーにとって好ましい他の材料、例えば、他の緩衝剤、希釈剤、充填剤、針及び注射器をさらに含むことができる。
【0069】
さらに、GDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を必要とする患者に同時に、順次に、または別々に投与することに関する指示事項をさらに含むことができる。
【0070】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例などを挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0071】
実施例1:持続型GDF15融合タンパク質の生産
実施例1.1:遺伝子クローニング
優れた活性及び精製後の純度改善を示す二つの変異体(FM9+Fc_hole, FM11+Fc_hole)に対する融合キャリア及びリンカー最適化研究のために、各GDF15配列に効果機能(effector function)を最小化するための融合キャリア(配列番号46及び47)及び様々なリンカー(配列番号92、93、94、95、96及び97)を導入した持続型GDF15融合タンパク質をデザインし、これを表1に示した。
【表1】
【0072】
具体的には、Fc_ノブ(knob)-(G4S)5-GDF15変異体の構造を有する第1ポリペプチド(FM series)及びFc_ホール(Fc_hole)構造を有する第2ポリペプチドを生産するために、配列番号98~109のうちいずれか一つのアミノ酸配列を含む第1ポリペプチドをコードする遺伝子及び配列番号47のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドをコードする遺伝子を含むpcDNA3.3(Invitrogen)発現ベクターを用いて遺伝子クローニングを行った。この時、配列番号98~109及び配列番号47のアミノ酸配列をコードする塩基配列を(株)マクロジェン社に依頼して合成した。
【0073】
実施例1.2:持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の発現及び精製
前記実施例1.1でクローニングしたpcDNA3.3発現ベクターをExpiCHO細胞株(Invitrogen)に一時的形質感染(transient transfection)させた後、8日目に細胞培養液を回収(harvest)して精製した。前記回収した細胞培養液(harvest cell culture fluid, HCCF)内の第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを精製するために、Protein A resinを用いた親和性(Affinity)精製を行った。
【0074】
具体的には、1X PBS(pH 7.4)で平衡状態になったMabSelect SuRe Protein A resin(GE Healthcare)に前記回収した細胞培養液をロードして結合(binding)させた。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの結合が完了した後、前記MabSelect SuRe Protein A resinを1X PBS(pH 7.4)で洗浄した後、最終物質を得るために、0.1M濃度のグリシン(pH 3.5)溶液を使用して溶出(elution)した。
【0075】
第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを1 M Tris-HCl溶液を用いて約pH 8.0水準に中和した。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドがノブインホール(knob-in-hole)相互作用を通じて完全に二量体化され、これを「持続型GDF15融合タンパク質」と命名した。二つの分子の持続型GDF15融合タンパク質は、GDF15-GDF15相互作用を通じて再び二量体化され、これを「融合タンパク質二量体」と命名した。
【0076】
また、高純度の持続型GDF15融合タンパク質を得るために、1段階精製を完了したプーリング(pool)を用いて陰イオン交換(Anion exchange, AEX)resin、陽イオン交換(Cation exchange, CEX)resinを用いた2段階イオン交換(Ion exchange, IEX)精製を行った。
【0077】
具体的には、陰イオン交換(AEX)の場合、1X PBS(pH7.4)で平衡状態が形成されたPOROS HQ 50μm Strong anion exchange resin(Thermofisher)に前記1段階プーリングをロードして結合させた。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの結合が完了した後、前記POROS HQ 50μm Strong Anion Exchange resinを1X PBS(pH7.4)で洗浄した後、最終物質を得るために、1M塩化ナトリウムを含有する50mM Tris-HCl(pH8.0)溶液を使用して濃度勾配により溶出(elution)した。サイズ排除クロマトグラフィー(Size exclusion chromatography)分析を用いて、純度が95%以上の基準を満たす画分をプーリング(pooling)した。
【0078】
また、陽イオン交換(CEX)の場合、20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)溶液で平衡状態が形成されたPOROS XS Strong Cation Exchange resin(Thermofisher)に前記1段階プーリングを等電点(Isoelectric point)に応じてpH調整後、ロードして結合させた。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの結合が完了した後、前記POROS XS Strong Cation Exchange resinを20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)溶液で洗浄した後、最終物質を得るために、1 M濃度の塩化ナトリウムを含有する20 mMリン酸ナトリウム(pH6.5)溶液を使用して濃度勾配により溶出(elution)した。サイズ排除クロマトグラフィー(Size exclusion chromatography)分析を用いて、純度が95%以上の基準を満たす画分をプーリング(pooling)した。
【0079】
実施例2:持続型GDF15融合タンパク質(二量体)の活性測定
二つの変異体(FM9+Fc_hole, FM11+Fc_hole)のリンカータイプ及び長さによるGDF15活性の比較評価を行った。前記GDF15活性は、Bright-GloTM luciferase assay kit(Promega)及びGFRAL/RET/SRE-lucが過剰発現されたHEK293細胞株(Human embryonic kidney 293)を用いて測定した。
【0080】
具体的には、10% FBSを含むDMEM培地に1×105個のGFRAL/RET/SRE-lucが過剰発現したHEK293細胞を96-ウェル-プレート(96-well-plate)の各ウェルに分注した後、37℃、5% CO2条件で24時間培養した。24時間後、96-ウェル-プレートの各培地を50μLの無血清培地に交換し、37℃、5% CO2条件で4時間培養した。
【0081】
また、前記実施例1で製造した持続型GDF15融合タンパク質を無血清培地を用いて2000nM濃度から3倍系列希釈(serial dilution)して準備した。その後、交換した無血清培地50μL及びGFRAL/RET/SRE-luc細胞株が入った各ウェルに持続型GDF15融合タンパク質希釈液50μLを添加して、実際の濃度が1000nMで3倍系列希釈されるようにした後、37℃、5% CO2条件で4時間反応させた。4時間後、Bright-GloTM基質にBright-GloTMバッファーを添加して作製したBright-GloTM溶液を各ウェルに100μLずつ処理し、1分間常温で反応させた。
【0082】
その後、発光(Luminescence)測定が可能なマイクロプレートリーダー(microplate reader, Perkin Elmer, Wallac Victor X5)で反応値(Relative light unit, RLU)を測定した。その結果を後記表2と図1、2に示した。この時、FM9-6+Fc_holeの試験管内のGDF15活性を基準(Emax 100%)としてGDF15配列、リンカータイプ及び長さによる持続型GDF15融合タンパク質の活性を比較した。
【表2】
【0083】
その結果、前記表2に示したように、各持続型GDF15融合タンパク質は、リンカーGS(EEEA)6(配列番号:95)を除いて類似した活性を示し、リンカーGS(EEEA)6(配列番号:95)で連結された持続型GDF15融合タンパク質(FM9-4+Fc_hole, FM11-4+Fc_hole)の場合、比較的低いEC50値と高いEmax値を示すことを確認した(図1及び図2)。
【0084】
実施例3:持続型GDF15融合タンパク質(二量体)のコリン欠乏-高脂肪食(choline-deficient, L-amino acid defined, high-fat diet)誘導非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデル(CDAHF食餌誘導NASHマウスモデル)における抗脂肪性肝炎効果の評価
実施例3.1:コリン欠乏-高脂肪食(choline-deficient, L-amino acid defined, high-fat diet)誘導非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデル(CDAHF食餌誘導NASHマウスモデル)
非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の動物モデルは、食餌誘導モデル、化学物質誘導モデル、遺伝子変形モデル及び複合モデル、この四つのタイプに分けることができる。このうち、高脂肪を含む食餌誘導モデルは、過剰な量の脂質が肝臓に蓄積して脂肪肝を引き起こすことが主な発症メカニズムで、このモデルは、ヒトのNAFLDと類似しており、最も一般的なNAFLD動物モデルである。特に、CDAHF食餌(choline-deficient, L-amino acid defined, high-fat diet)は、果糖よりはるかに大きな非アルコール性脂肪肝誘発因子であり、肝臓の脂質蓄積とコレステロール蓄積を加速し、肝臓の炎症性変化と線維化がさらに現れる。
【0085】
5週齢のオスC57BL/6Jマウス(Shizuoka Laboratory Center Inc., Japan)は中央実験動物(Central Lab. Animal Inc., Seoul, Republic of Korea)から購入した。前記C57BL/6Jマウスは正常飼料(Teklad Certified Irradiated Global 18% Protein Rodent Diet, 2918C, Harlan Co., USA)で1週間適応飼育させた後、6週齢からCDAHF食餌(choline-deficient, L-amino acid defined, high-fat diet, Research Diets, Cat# A06071302, USA)を6週間給餌して薬物処理を開始した。薬物処理日の前日に個々のマウスの体重を基準に群を分離(群当たりn=8)した。その後、FM9-6+Fc_hole 0.1、1、そして3nmol/kgを毎日(QD)、合計8週間皮下投与した。体重は実験期間(56日)の間、週2回測定し、この時、vehicle処理はDPBS(Dulbecco's phosphate buffered saline, Gibco, USA)を投与した。試験物質を投与する間、CDAHF食餌を8週間同時に供給し、合計14週間CDAHF食餌を給餌した。
【0086】
実施例3.2:CDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおける体重、肝臓重量、及び肝損傷関連血液指標に対する改善効果
FM9-6+Fc_holeを8週間反復投与した結果、CDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)に対して(5.1%)、FM9-6+Fc_hole 0.1nmol/kg投与群で約-0.04%***、FM9-6+Fc_hole 1nmol/kg投与群で約-13.0%****、そしてFM9-6+Fc_hole 3nmol/kg投与群で約-13.8%****の(***p<0.001、及び****p<0.0001 vs. CDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle);Two-way ANOVA分析法を利用)体重減少効果を示した(図3)。また、絶食体重を考慮した相対的な肝臓重量(%)を評価したところ、FM9-6+Fc_hole投与量依存的な相対的肝臓重量の減少を確認した(図4)。
【0087】
血液中の肝損傷指標を観察したところ、CDAHF食餌誘導NASHマウス(CDAHF vehicle)で正常対照群(Chow vehicle)に対してALT(alanine aminotransferase)、AST(aspartate aminotransferase)、ALP(alkaline phosphatase)、及び総ビリルビン(total bilirubin)が有意に増加した。FM9-6+Fc_holeを投与したとき、投与量依存的な肝損傷指標の改善を確認し、FM9-6+Fc_hole 1nmol/kg投与群で統計学的に有意なAST及びtotal bilirubinの減少を、FM9-6+Fc_hole 3nmol/kg投与群で統計学的に有意なALT、AST、ALP、及び総ビリルビンの減少を確認した(図5)。
【0088】
実施例3.3:CDAHF食餌誘導NASHマウスモデルにおける組織学的改善効果
正常対照群(Chow vehicle)に対してCDAHF食餌誘導NASHマウス(CDAHF vehicle)でNAFLD activity score (NAS)が有意に増加し、FM9-6+Fc_hole 3nmol/kgを投与したときに有意なNAS改善効果を確認した(図6)。NASを項目別に見ると、FM9-6+Fc_hole 1及び3nmol/kg投与群でsteatosis score及びhypertrophy scoreがCDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)より低いscoreを示すことを確認した(図7)。肝臓組織の中性脂肪を分析したところ、正常対照群に比べてCDAHF食餌対照群で約1.7倍増加し、FM9-6+Fc_hole投与によって投与量依存的に肝臓中性脂肪値が減少することを確認し、特にFM9-6+Fc_hole 1及び3nmol/kg投与群で統計学的な有意性を示した(図8)。また、肝臓組織のH&E染色写真を観察したところ、FM9-6+Fc_hole 1及び3nmol/kg投与群でsteatosisの減少を肉眼で確認した(図9)。
【0089】
PSR(Picro sirus stain)分析法は、肝臓組織内のコラーゲンを染色する分析法で、個体別の肝臓の重量を考慮し、total PSR contents(mg)として図10に示した。正常対照群(Chow vehicle)に対してCDAHF食餌対照群(CDAHF vehicle)で有意なPSR増加を確認し、FM9-6+Fc_hole投与によって投与量依存的にtotal PSR contentsが減少し、これはFM9-6+Fc_hole投与を通じて肝線維化の進行が抑制されることを意味する。FM9-6+Fc_hole 1及び3nmol/kg投与群で統計学的な有意性を示した(図10)。
【0090】
結論として、CDAHF食餌誘導NASHマウスモデルでFM9-6+Fc_holeを投与したところ、肝脂肪症及び肝線維化の進行を抑制し、これは非アルコール性脂肪性肝炎が改善されたことを意味する。
【0091】
実施例4:持続型GDF15融合タンパク質(二量体)のob/obマウスモデル(遺伝子変形による肥満と肝臓脂肪変性を有するモデル)における抗脂肪肝炎効果の評価
実施例4.1:ob/obマウスモデル
肝細胞脂肪の生成と除去は様々な遺伝子によって調節され、その突然変異、欠失、過剰発現または変形は脂肪の代謝に影響を及ぼし、脂肪肝を形成する。したがって、動物の遺伝子に人工的に関与することで、NAFLDの動物モデルを作製することができる。
【0092】
特に、ob/obマウスモデルは、レプチン(leptin)遺伝子が欠乏した遺伝子変形モデルとして、レプチンにより食欲抑制が調節されないため自然に肥満が発生し、これによりインスリン抵抗性による肝脂肪変性を有する。
【0093】
5週齢のオスob/ob(B6.Cg-Lepob/J)マウスとC57BL/6Jマウス(The Jackson laboratory, USA)は、ラオンバイオ(Raonbio. Yong-in, Republic of Korea)から購入した。前記ob/obマウスとC57BL/6Jマウスは正常飼料(Teklad Certified Irradiated Global 18% Protein Rodent Diet, 2918C, Harlan Co., USA)で適応飼育及び試験終了時まで給餌し、4週間適応飼育後、薬物処理を開始した。薬物処理日の前日に個々のマウスの体重を基準に群を分離(群当たりn=6)した。その後、FM9-6+Fc_hole 1nmol/kgと対照物質としてセマグルチド(Semaglutide)30nmol/kg(持続型GLP-1誘導体)を3日間隔(Q3D)で合計4週間皮下投与した。体重は、実験期間(26日)の間、週2回以上測定し、この時、vehicle処理はDPBS(Dulbecco's phosphate buffered saline, Gibco, USA)を投与した。
【0094】
実施例4.2:ob/obマウスモデルにおける体重、肝臓重量、及び肝損傷関連血液指標に対する改善効果
FM9-6+Fc_hole 4週間反復投与した結果、ob/ob対照群(ob/ob vehicle)に対して(19.67%)、FM9-6+Fc_hole 1nmol/kg投与群で約-8.24%****、セマグルチド(Semaglutide)30nmol/kg(持続型GLP-1誘導体)投与群で約7.66%**(**p<0.01、及び****p<0.0001 vs. ob/ob対照群(ob/ob vehicle);Two-way ANOVA分析法を利用)体重減少効果を示した(図11)。また、肝臓重量(g)及び絶食体重を考慮した相対的な肝臓重量(%)を評価したところ、FM9-6+Fc_hole投与群で相対的な肝臓重量の減少を確認した(図12)。
【0095】
血液中の肝損傷指標を観察したところ、ob/obマウス(ob/ob vehicle)で正常対照群(Lean vehicle)に対してALT、AST、ALP、総コレステロール(total cholesterol)及びLDL-c(low density lipoprotein-cholesterol)が有意に増加した。FM9-6+Fc_holeを投与した時、肝損傷指標の改善を確認し、FM9-6+Fc_hole 1nmol/kg投与群で統計学的に有意なALT、AST、ALP、総コレステロール及びLDL-cの減少を確認した(図13)。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によるGDF15変異体、持続型GDF15融合タンパク質または持続型GDF15融合タンパク質二量体を含む組成物を通じて、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の予防または治療効果を示すことができる。
【0097】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】