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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】植物有害生物用トレイトラップ
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/00 20060101AFI20240514BHJP
   A01M 1/02 20060101ALI20240514BHJP
   A01M 1/10 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A01M1/00 Q
A01M1/02 Z
A01M1/10 A
A01M1/10 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572191
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2022062899
(87)【国際公開番号】W WO2022243150
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21175311.6
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・テンペル
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121AA16
2B121BA40
2B121DA17
2B121DA29
2B121EA26
2B121FA14
2B121FA20
(57)【要約】
本発明は、識別目的で植物有害生物を不動化するための装置および方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を受け入れるための皿を備える、有害生物を不動化するための装置であって、
前記皿は、前記液体を受け入れるための容積を提供する底部および壁を備え、前記底部は複数の凹部を有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記装置が、カメラおよび/またはカメラ用のマウントを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、電磁放射線源を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、作物植物のための圃場に、好ましくは前記作物植物が成長する高さに、または前記作物植物が成長する高さより上に前記装置を位置決めするための手段を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記底部が、凹部を含まない1つ以上の第1の領域を含み、前記底部は、複数の凹部を含む1つ以上の第2の領域を含み、
前記1つ以上の第1の領域は第1の表面積を占め、前記1つ以上の第2の領域は第2の表面積を占め、
前記第1の表面積は前記第2の表面積よりも小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記壁に隣接する前記底部の領域が凹部を含まず、そうでなければ前記凹部は前記底部全体にわたって延在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記凹部が規則的なパターンで配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記凹部がPlatonicタイリングを形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記凹部がハニカム構造の形状を形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
各凹部が、前記底部の平面内で少なくとも2mm、最大8mmの範囲を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
各凹部が1mm~5mmの深さを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記凹部を有する前記底部が、前記皿から可逆的に取り外すことができるインサートによって形成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記凹部が、球形セグメント、円錐台、円柱台、角錐台、立方体、または直方体の形状を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
規定の時点で前記液体を動かす手段をさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
画像センサを有するカメラをさらに備え、前記画像センサはアスペクト比を有する長方形の形状を有し、前記皿は平面図において長方形の形状を有し、角は丸みを帯びていることが好ましく、前記皿の前記長方形の形状は前記カメラの前記画像センサの前記アスペクト比に対応するアスペクト比を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の装置を設けるステップと、
前記皿に水を含む液体を充填するステップと、
1つ以上の有害生物が前記皿に入り、完全にまたは部分的に前記液体中に存在する状態となるまで待機するステップと、
前記皿の凹部に位置する有害生物を識別するステップ、または前記皿の複数の凹部内の複数の有害生物を識別および/もしくは計数するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記皿は、前記液体の表面と、凹部を有さない前記底部の一部と、の間の最短距離が前記凹部の深さよりも小さいという結果を生じる量の液体で充填されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
好ましくは作物植物が栽培されている地域において、有害生物を不動化および/または識別するための請求項1から15のいずれか一項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別目的で植物有害生物を不動化するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在知られている種の約2/3は節足動物(節足動物門)であり、その85%は昆虫である。節足動物のかなりの割合が植食性であり、これらの動物は植物を餌とし、植物成長の障害をもたらし、吸引および刺咬傷を引き起こし、ウイルス性疾患を伝染させる可能性がある。これは、例えば、作物植物の成長における収量および品質にかなりの損失を引き起こす。
【0003】
現代の農業では、農業的に利用される地域内の有害生物の検出および認識が重要な役割を果たす。
【0004】
特許文献1、特許文献2および特許文献3は、有害生物を不動化するために水および添加剤を充填することができるトラップ皿を開示している。
【0005】
複数の有害生物がトラップ皿に入ると、これらの有害生物は1つ以上の群に蓄積し、互いに不明瞭になる可能性がある。そのような蓄積における個々の有害生物の識別は、多くの場合、困難であるかまたは不可能であり、有害生物を識別できるようにするために、有害生物をまず互いに分離し、隔離しなければならない。
【0006】
特許文献2および特許文献3に記載されているように、トラップ皿はカメラを装備することができる。カメラは、トラップ皿の底部の画像がカメラのセンサ上に投影されるように、皿の底部の上方に規定の距離で取り付けられる。カメラは、トラップ皿の内容物を遠隔で確認することを可能にする。そのようなカメラによって撮影された画像は、有害生物を検出、計数、および/または識別するために(自動化された方法で)分析され得る。しかしながら、有害生物が1つ以上の群に蓄積している場合、すべての個々の有害生物のこのような(自動化された)分析は、遠隔では不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018054767号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2020058170号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2020058175号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、記載された従来技術から進めて、技術的目的はトラップ皿内の有害生物の蓄積を防止することである。
【0009】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、本明細書および図面に見出される。
【0010】
本発明の第1の主題は、液体を受け入れるための皿を備える有害生物を不動化するための装置であり、皿は、液体を受け入れるための容積を提供する底部および壁を備え、底部は複数の凹部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のさらなる主題は、
装置を設けるステップであって、装置は液体を受け入れるための皿を備え、皿は底部および壁を備え、底部および壁は液体を受け入れるための容積を提供し、底部は複数の凹部を有する、ステップと、
皿に液体を充填するステップと、
皿の凹部に位置する有害生物を識別するステップ、または皿の複数の凹部内の複数の有害生物を識別および/もしくは計数するステップと
を含む方法である。
【0012】
本発明のさらなる主題は、好ましくは作物植物が栽培されている地域において有害生物を不動化および/または識別するための装置の使用であり、装置は、
液体を受け入れるための皿において、皿は、液体を受け入れるための容積を提供する底部および壁を備え、底部は複数の凹部を有することを特徴とする、皿
を備える。
【0013】
本発明は、本発明の主題(装置、方法、使用)を区別することなく以下により詳細に記載される。代わりに、以下の説明は、それらが提供される文脈にかかわらず、本発明のすべての主題(装置、方法、使用)に同様に適用されるものとする。
【0014】
本明細書または特許請求の範囲においてステップが順序で記載されている場合、これは、本発明が記載された順序に限定されることを必ずしも意味しない。代わりに、ステップはまた、異なる順序で、または互いに並行して実行されることも考えられ、例外は、1つのステップが別のステップに基づくときであり、それによって、前のステップに基づいて構築されたステップが次に実行されることが不可欠になる(しかしながら、個々の場合に明らかになる)。したがって、記載された順序は、本発明の好ましい実施形態である。
【0015】
本発明による装置、その構造およびその動作モードは、少なくとも1つの液体を含み、1つの場所に設置されるか、または吊り下げられるか、または他の方法で固定される装置に基づいて特に明確に説明され得る。しかしながら、これは、本発明が液体で充填され固定された装置に限定されることを意味するものではない。例えば、本発明による装置は、通常、液体が存在しない状態で市販品として提供され、装置は、通常、市販品として所定の位置にまだ固定されていない。しかしながら、該当する市販品は、本知的財産権により保護される。したがって、本発明による装置の説明および/または規定において液体を参照するとき、または装置が規定された位置に記載されているとき、保護の範囲は、当然ながら、液体のない任意の位置の装置をカバーすることも意図されている。
【0016】
本発明は、有害生物を不動化するのに役立つ。「有害生物」は、植物の成長に現れ、植物を損傷し、または植物の収穫に悪影響を及ぼし得る移動生物を意味すると理解される。有害生物は、好ましくは昆虫(幼虫(毛虫、毛虫類似生物)から成体期までの様々な段階)またはクモ類である。
【0017】
有害生物は、自律的に装置の皿に入ることができるという意味で「移動性」でなければならない。
【0018】
「不動化する」という用語は、装置に入った有害生物が、少なくとも一定期間、自律的に装置から再び離れることができないことを意味する。規定された期間内に、装置内に位置する有害生物の1つ以上の画像記録を、画像記録に描かれた有害生物を識別および/または計数することができるように、カメラを用いて生成することができる。
【0019】
装置は、内部に有害生物が不動化された皿を有する。これは、好ましくは、皿内の液体によって達成される。液体に入る有害生物は、通常、もはや自律的にそれを離れることができないか、または少なくとも一定期間液体によって抑制される。有害生物が液体に浸かる、および/または液体によって抑制されることが考えられる。
【0020】
液体は、通常、水であるか、または液体は、通常、好ましくは主成分として水を含む。液体には、1または複数の添加剤が添加されてもよい。このような添加剤は、例えば、表面張力を低下させるための界面活性剤であってもよい。このような添加剤は、例えば、液体の粘度を高めるための増粘剤であってもよい。このような添加剤はまた、(特定の)有害生物を誘引する誘引剤であってもよい。このような添加剤はまた、藻類の形成を防止する手段(例えば除草剤)であってもよい。このような添加剤はまた、着色剤であってもよい。さらなる添加剤が考えられる。
【0021】
皿は、有害生物を誘引するために特定の色および/または特定のパターンを有してもよい。例えば、多くのアブラナ有害生物は黄色に誘引され、アブラナの有害生物を誘引するために、皿は全体的にまたは部分的に黄色を有することができる。一部の蛾は、例えばストライプパターンに誘引され、したがって、皿は、完全にまたは部分的にストライプパターンを有し得る。一部の有害生物は、特定の波長範囲の電磁放射線によって誘引され、したがって、皿は、特定の波長範囲の1つ以上の電磁放射線源を含み得る。
【0022】
皿は、底部および壁を有する。底部は、皿を1つの空間方向(「下方」)に区切る。反対の空間方向(「上方」)では、有害生物が皿に入ることができるように、皿は通常開いている。側面では、皿は通常、壁によって区切られている。
【0023】
皿が液体で充填されると、底部および壁が液体の流出を防止するため、液体は皿内に残る。
【0024】
液体が皿の内部に導入される場合、皿の内部の液体の体積は、有害生物が集まる可能性がある集合領域を画定する。有害生物は、液体の表面に浮遊し、液体の体積中に浮遊し、および/または液体の体積中で皿の底部に沈む可能性がある。集合領域の容積は、一方の側では皿の底部によって、他方の側では皿の壁によって、そして、皿の開放側では液体の表面によって区切られる。
【0025】
本発明の意味における皿は、例えば、円筒の基部の1つが欠落した円筒の形状(片側に開いた円筒)を有してもよい。本発明の意味における皿は、例えば、円錐台の基部(好ましくはより大きな表面積を有するもの)が欠落した円錐台の形状を有してもよい。本発明の意味における皿は、例えば、直方体の基部が欠落した直方体の形状を有してもよい。本発明の意味における皿は、例えば、角錐台の基部(好ましくはより大きな表面積を有するもの)が欠落した角錐台の形状を有してもよい。さらなる形状、特に言及された形状の混合形状が考えられる。
【0026】
皿にはカバーが「上方」に設けられ、カバーは、(特定の)有害生物が皿に入ることができる1つ以上の開口部を有することが考えられる。そのような開口部または複数の開口部のサイズは、例えば、それらの(より小さい)サイズのために(1つ以上の)開口部を通過することができる有害生物が皿に選択的に入ることを可能にするために、特定の有害生物のサイズに適合されるが、それらのサイズのために(1つ以上の)開口部を通過することができないより大きな有害生物および/またはより大きな物体(例えば、植物部分または他の汚染物)は皿に入ることができないことが考えられる。例えば、そのようなカバーは格子を備え、格子間隔は特定の有害生物が通過することを可能にするサイズを有することが考えられる。
【0027】
底部は、円形、長円形、楕円形、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、または一般にn角形であり、nは3以上の整数である)または(平面図で)他の形状を有してもよい。好ましくは、底部は、(平面図で)円形または長方形(特に正方形)の形状を有する。長方形の形状は、皿(または皿の底部および/または皿内の液体の表面)をその全表面積にわたってカメラセンサ上で撮像することができ、それによってカメラセンサを最適に利用することができるという利点を有する。したがって、カメラセンサのアスペクト比に対応するアスペクト比(例えば、4:3、3:2、16:9、または別の共通フォーマット)を有する皿が特に好ましい。好ましくは、角が丸みを帯びている。長円形、楕円形もしくは円形の皿または丸い角を有する皿は、角を有する皿よりも洗浄が容易であるという利点を有する。
【0028】
好ましくは、皿の底部は、平面図で、長円形、円形、楕円形、または角のない他の形状を有する。このような形状とすることで、皿を洗浄しやすくなる。
【0029】
凹部が存在しないと仮定される場合、底部は平坦であってもよく、湾曲していてもよい。好ましくは、底部(凹部が存在しないと仮定される場合)は平坦な形態を有する。平坦な底部は、底部のすべての領域をカメラで鮮明に撮像できるという利点を有する。
【0030】
壁は、好ましくは、底面に対して60°~120°の範囲、好ましくは80°~120°の範囲、さらにより好ましくは90°~110°の範囲の角度で円錐状または円筒状に延び、その結果、底部および壁は、一方の側(「上部」)に開いているが、そうでなければ底部および壁によって環境に関して区切られた空間を形成する。この空間は、液体を保持する役割を果たす。本明細書では、この空間は、皿の内部とも呼ばれる。
【0031】
平面図において、底部は、好ましくは10cm~2000cm、さらにより好ましくは50cm~1000cmの表面積に及ぶ。
【0032】
底部は、多数の凹部を有する。好ましくは、凹部は底部の大部分にわたって延在する。言い換えれば、凹部を有する底部の領域は、凹部を有さない底部の領域よりも多いことが好ましい。言い換えれば、底部は、好ましくは、凹部を含まない1つ以上の第1の領域と、複数の凹部を含む1つ以上の第2の領域とを含み、1つ以上の第1の領域は第1の表面積を占め、1つ以上の第2の領域は第2の表面積を占め、第1の表面積は第2の表面積よりも小さい。
【0033】
好ましくは、凹部は底部全体にわたって延在し、壁に沿った1つの領域のみが凹部を含まなくてもよい。
【0034】
好ましくは、凹部は、規則的なパターン、例えば、三角形のパターン、正方形のグリッド、六角形のグリッド、または別のパターンを形成するように配置される。そのようなパターンは、カメラの焦点を設定するため、レンズ誤差(および/または他の撮像誤差)を補正するため、および/または有害生物のサイズを判定するために有用であり得る。好ましくは、凹部は、平面図においてタイリングを識別できるように配置される。タイリングとは、同じ形状のサブ領域によって隙間なく、かつ重なり合うことなく覆われている基部を指す。タイルは、Platonicまたは非Platonicであってもよい。好ましい実施形態では、タイルはPlatonicである。タイリングの例は、以下の刊行物に見出すことができ、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
http://www.mathematikinformation.info/pdf/MI39Heinrich.pdf
http://www.math.uni-magdeburg.de/reports/2002/parkett.pdf
http://www.willimann.org/A07020-Parkettierungen-Theorie.pdf
http://www.udo-rehle.de/pdf/iv-11c.pdf
【0035】
好ましい実施形態では、凹部は円形断面を有し、六角形の格子状に配置される。このような構造は、ハニカム構造とも呼ばれる。
【0036】
凹部は、円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、または一般にn角形であり、nは2より大きい整数である)または他の断面を有する。異なる断面(形状)を有する凹部も考えられる。
【0037】
「断面」という用語は、本明細書では、特に明記しない限り、好ましくは底部の平面内の(凹部のない)セクションを意味する。
【0038】
凹部は、球形セグメント(球状部分とも呼ばれる)、円錐台、円柱台、角錐台、立方体、直方体、または別の形状を有し得る。好ましくは、それらは球形セグメントの形状を有し、球形セグメントの容積は、好ましくは、球形セグメントが由来する球の容積の半分よりも小さい。このようなトラフまたはドーム形状を有する凹部は、角および/または縁を有する凹部よりも容易に洗浄することができる。
【0039】
好ましい実施形態では、複数の凹部の各凹部は、特定の(規定された)有害生物が占める体積よりも大きいが、2つの特定の(規定された)有害生物の体積よりも小さい体積を提供する。言い換えれば、凹部は、好ましくは、2つではなく1つの特定の(規定された)有害生物が入ることができるような寸法にされる。トラップ皿に入るべき特定の有害生物に応じて、当業者は、それに応じて凹部を寸法決めすることができる。
【0040】
特定の有害生物が完全に凹部に入ること、または特定の有害生物がその身体の一部(例えば大部分)と共に凹部に入る一方で、身体の一部が(そうでなければ好ましくは平坦な)底面を越えて突出することが考えられる。
【0041】
特定の(規定された)有害生物は、例えば、装置が使用されている場所または使用されることが意図されている場所に現れる有害生物であり得る。例えば、本発明による装置は、特定の作物植物のための圃場で使用されるか、または特定の作物植物のための特定の有害生物の存在を確認および/または監視するためにそこで使用されることが考えられる。
【0042】
特定の作物植物の例はアブラナであり、特定有害生物の例は、アブラナ茎ゾウムシである。具体的な有害生物の他の例は、コドリンガ、アブラムシ、アザミウマ、サマーフルーツハマキガ、コロラドハムシ、サクラショウジョウバエ、コフキコガネ、ヨーロッパマツマダラメイガ、プラムフルーツガ、シャクナゲヨコバイ、カブラヤガ、カイガラムシ、マイマイガ、ハダニ、ヨーロッパブドウガ、クルミハスクフライ、温室コナジラミ、キャベツ茎ゾウムシ、アブラナ花粉ビートル、キャベツ新芽ゾウムシ、アブラナ花粉ユスリカもしくはキャベツ茎ノミハムシ、または森林有害生物、例えば、アブラムシ、スチールブルータマムシ、キクイムシ、オークスプレンダービートル、オーク行進蛾、グリーンオークハマキガ、トウヒウェブワーム、一般的なファニチャビートル、グレートブラウンバークイータ、一般的なマツハバチ、マツビューティー、マツルーパー、小トウヒハバチ、マツガ、マロニエハモグリムシ、マイマイガ、ブラウンパウダーポストビートルである。
【0043】
凹部は、断面において1mm~2mmの範囲を有し得る。
【0044】
好ましくは、凹部は、2mm~8mm、さらにより好ましくは3mm~6mmの断面範囲を有する。好ましくは、断面における最小範囲(最も小さい範囲)は少なくとも2mmであり、断面における最大範囲(最も大きい範囲)は最大8mmである。
【0045】
平面図で正方形状の凹部は、例えば、正方形の一辺の長さが2~8mmであってもよい。
【0046】
平面図で円形状の凹部は、例えば、円形の直径が2~8mmであってもよい。
【0047】
平面図で長方形状の凹部は、例えば、いずれの場合も1辺の長さが2~8mmであってもよい。
【0048】
好ましくは、凹部は、1mm~5mm、さらにより好ましくは1mm~3mmの深さを有する。好ましくは、凹部は、少なくとも1mmの最小深さ(最も小さい深さ)および1cmの最大深さ(最も大きい深さ)を有する。
【0049】
好ましい実施形態では、凹部は、凹部の上方に取り付けられたカメラが、凹部による著しい遮蔽または隠蔽なしに(特に壁に近い縁部領域で)凹部に位置する有害生物を検出することができるように配置および寸法決めされる。
【0050】
好ましい実施形態では、凹部のサイズは可変であり得る。例えば、皿に導入され、複数の凹部を確保するインレー(インサート)を設けることが考えられる。例えば、異なる格子間隔を有する正方形の切り欠きを有する格子インサート、例えば、3mmの格子間隔を有する格子、4mmの間隔を有するさらなる格子、および6mmの格子間隔を有するさらなる格子を使用することが考えられる。他の格子間隔も考えられる。格子はまた、円形、楕円形、長円形、n角形の切り欠きを有してもよく、nは2より大きい整数である。他の形状も考えられる。格子は、片側が閉じていてもよいし、両側が開いていてもよい。
【0051】
複数の凹部の深さはまた、インレー(インサート)によって可変であり得る。例えば、1mmの高さを有する格子インサート、1.5mmの高さを有する別の格子インサート、2mmの高さを有する別の格子インサート、3mmの高さを有する別の格子インサート、4mmの高さを有する別の格子インサート、および5mmの高さを有する別の格子インサートが考えられる。さらなる高さが考えられる。高さを増加させるために、複数の格子インサートを互いに積み重ねることができる。
【0052】
インレー/インサートは、当然ながら格子に限定されない。したがって、六角形格子配置の丸い凹部または切り欠きを有するハニカム構造インサートが提供されることが考えられる。円形の凹部または切り欠き(または他の形状の凹部/切り欠き)の正方形の配置が考えられる。
【0053】
インレー/インサートは、一方の側(「底部」)で閉じており、一方の側(「上部」)で開いていてもよく、または両側(「底部」および「上部」)で開いていてもよい。
【0054】
有害生物の隔離の変動性の増加とは別に、そのようなインレー/インサートは、底部に恒久的に作られる凹部よりも、皿からの除去後により容易に洗浄することができるという利点を有する。
【0055】
液体が皿の内部に導入される場合、皿の内部の液体の体積は、有害生物が集まる可能性がある集合領域を画定する。凹部は、有害生物が凹部に定着することを確実にし、通常、1つ以下の有害生物が凹部に定着する。蓄積は低減されるか、または回避される。
【0056】
好ましくは、液体の表面と凹部を有さない底部の一部との間の最短距離が凹部の深さ未満であるという効果を有する量の液体が皿に導入される。
【0057】
本発明による装置内の液体は、所定の時点で動くように設定されることが考えられる。したがって、好ましくは、装置は、所定の時点で皿内の液体を動かす手段を有する。そのような動きは、個々の凹部間での皿の液体中の有害生物の分布およびそれらの隔離を必要とし、その結果、各凹部は複数の有害生物を含まない。そのような動きは、例えば、液体の表面上のフロートによって生成されることができ、フロートは、例えばモータまたは往復ピストンを使用して、1つ以上の波の生成につながる液体の表面上の1つ以上の運動を実行する。また、機械的パルス発生器によって壁または底部が衝撃を受けること、または皿が水平運動または傾斜運動などを行うことも考えられる。
【0058】
本発明による使用のために、本発明による装置は、通常、ある場所に設置され、吊り下げられ、または他の方法で固定される。その際、装置は、皿の好ましくは平坦な底部(凹部が存在しないと仮定される場合)が好ましくは水平に、すなわち平坦な地面に平行に延びるように向けられる。別の表現をすると、面法線(皿の平坦な底面に垂直)は、地球の中心の方向を指す。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明による装置は、少なくとも1つのカメラおよび/または少なくとも1つのカメラ用の少なくとも1つのマウントを備える。
【0060】
そのようなカメラは、デジタル画像を生成するために使用されることができる。そのようなカメラは、画像センサ(カメラセンサ)および光学素子を備える。画像センサは、電気的手段により光から2次元画像を記録する装置である。これは、典型的には、半導体ベースの画像センサ、例えばCCD(CCD=charge-coupled device(電荷結合素子))またはCMOSセンサ(CMOS=complementary metal-oxide-semiconductor(相補型金属酸化膜半導体))を備える。光学素子(レンズ、ストップ等)は、画像センサ上にデジタル画像が生成される物体の撮像の最大の鮮明さを提供する。
【0061】
少なくとも1つのマウントおよび/または少なくとも1つのカメラは、集合領域全体または集合領域の少なくとも一部が少なくとも1つの画像センサ上に撮像されるように位置決めされる。それぞれの画像センサ上の集合領域の異なる領域を撮像する複数のカメラを使用することが考えられる。このように複数のカメラを使用するとき、後の時点で個々の画像記録からより容易に全体画像を生成できるようにするために、撮像領域が少なくとも部分的に重なり合うと有利である。
【0062】
少なくとも1つのカメラを、好ましくは、少なくとも1つのマウントに可逆的に固定することができる。少なくとも1つのマウントは、好ましくは、集合領域から規定された一定の距離にあり、したがって、少なくとも1つの画像センサと集合領域との間の規定された一定の距離を確保する。
【0063】
本発明による装置は、好ましくはスペクトルの可視、赤外および/または紫外範囲の少なくとも1つの電磁放射線源を備えることが考えられる。そのような電磁放射線源を用いて、集合領域を照明することができ、その結果、太陽光に関係なく(すなわち、例えば夜間にも)一定の品質のデジタル画像記録を生成することができる。
【0064】
少なくとも1つのカメラによって生成された集合領域のデジタル画像は、専門家によって、または自己学習システムによって分析され、集合領域に有害生物が存在するかどうかを決定し、集合領域に存在する有害生物を計数および/または識別することができる。この詳細は、例えば、以下の刊行物に見出すことができる:特許文献2、特許文献3、特許文献1、韓国特許出願公開第1020100127473号明細書、国際公開第0217119号パンフレット、O.LopezらによるMonitoring Pest Insect Traps by Means of Low-Power Image Sensor Technologies;Sensors 2012,Vol.12 No.12 pages 15801-15819。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明による装置は、例えば、存在するカメラおよび/または皿内の液体に波を生成して有害生物を隔離するために存在する手段および/または存在する制御および管理ユニットに電力を供給するための電源を有する。電源は、例えば、電気化学セル(電池)、充電式蓄電池、ソーラーパネル、燃料電池、発電機および/または別の電力源を備えた風力タービン、または上述のユニットの組み合わせであってもよい。
【0066】
好ましくは、本発明による装置は、装置を地面上または地面内に位置決めすることができる手段を有する。装置は、例えば嵐などで転倒するのを防ぐために、地面に固定できることが好ましい。地面と集合領域との間の距離を変えることができる手段があることが好ましい。そのような高さ調整手段の一例は、一端によって地面に固定することができる伸縮ロッドであり、その他端に集合領域を取り付けることができる。高さ調整手段の他の例は、昇降式プラットホームである。このような可変高さ調整手段により、集合領域を植物の上方に位置決めすることができ、飛行する昆虫が植物の上空を飛行する際に集合領域を認識することができる。可変高さ調整手段は、周囲の植物が集合領域を隠すことを防止するために、集合領域の高さ(地面からの距離)を成長中の植物に合わせることを可能にする。好ましい実施形態では、高さ調整手段は自動であるが、手動の高さ調整手段も可能である。高さは、好ましくは、集合領域が常に周囲の植物の上または高さにあるように自動的に適合される。これは、距離センサおよび/または輝度センサによって達成されることができる。
【0067】
しかしながら、本発明による装置は、例えば、枝または小枝または幹に取り付けるためのフックまたはループまたはストラップによって、植物または別の物体に取り付けることができる手段を有することも考えられる。
【0068】
好ましい実施形態では、本発明による装置は、カメラ画像を別個のコンピュータシステムに送信することができる送信ユニットを備える。この送信は、例えば、携帯電話ネットワークなどのネットワークを介して行われてもよい。
【0069】
本発明による装置は、さらなる特徴、特に特許文献2および/または特許文献3に記載されている特徴を有してもよい。言及された刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
最も好ましい実施形態は以下の通りである。
【0070】
1.液体を受け入れるための皿を備える有害生物を不動化するための装置において、皿は、液体を受け入れるための容積を提供する底部および壁を備え、底部は複数の凹部を有することを特徴とする、装置。
【0071】
2.底部の大部分が凹部を有する、実施形態1に記載の装置。
【0072】
3.凹部が底部全体にわたって延在し、壁に隣接する底部の領域が凹部を含まないことは任意である、実施形態1または2に記載の装置。
【0073】
4.凹部が規則的なパターンで配置される、実施形態1から3のいずれか1つに記載の装置。
【0074】
5.凹部がPlatonicタイリングを形成する、実施形態1から4のいずれか1つに記載の装置。
【0075】
6.凹部がハニカム構造の形状を形成する、実施形態1から5のいずれか1つに記載の装置。
【0076】
7.各凹部が、特定の有害生物を完全にまたは部分的に収容するが、2つの特定の有害生物を収容しない容積を有する、実施形態1から6のいずれか1つに記載の装置。
【0077】
8.各凹部が、底部の平面内で少なくとも2mm、最大8mmの範囲を有する、実施形態1から7のいずれか1つに記載の装置。
【0078】
9.各凹部が1mm~5mmの深さを有する、実施形態1から8のいずれか1つに記載の装置。
【0079】
10.凹部を有する底部が、皿から可逆的に取り外すことができるインサートによって形成される、実施形態1から9のいずれか1つに記載の装置。
【0080】
11.規定の時点で壁および/または底部に1つ以上のパルスを放出する手段をさらに備える、実施形態1から10のいずれか1つに記載の装置。
【0081】
12.画像センサを有するカメラをさらに備え、画像センサはアスペクト比を有する長方形の形状を有し、皿は平面図において長方形の形状を有し、角は丸みを帯びていることが好ましく、皿の長方形の形状はカメラの画像センサのアスペクト比に対応するアスペクト比を有する、実施形態1から10のいずれか1つに記載の装置。
【0082】
13.実施形態1から12のいずれか1つに記載の装置を設けるステップと、
皿に液体を充填するステップと、
皿の凹部に位置する有害生物を識別するステップ、または皿の複数の凹部内の複数の有害生物を識別および/もしくは計数するステップと
を含む、方法。
【0083】
14.皿が、液体の表面と凹部を有さない底部の一部との間の最短距離が凹部の深さよりも小さいという効果を有する量の液体で充填されている、実施形態13に記載の方法。
【0084】
15.好ましくは作物植物が栽培されている地域において、有害生物を不動化および/または識別するための実施形態1から12のいずれか1つに記載の装置の使用。
【0085】
本発明は、本発明を図面に示される特徴および特徴の組み合わせに限定することを意図せずに、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1(a)】例として、本発明による装置の一実施形態を概略的に示す平面図である。
図1(b)】例として、本発明による装置の一実施形態を概略的に示す側面からの断面図である。
図1(c)】例として、本発明による装置の一実施形態を概略的に示す拡大図である。
図2(a)】例として、本発明による装置の底部の一実施形態を概略的に示す平面図である。
図2(b)】例として、本発明による装置の底部の一実施形態を概略的に示す側面からの断面図である。
図3(a)】例として、本発明による装置の底部の一実施形態を概略的に示す平面図である。
図3(b)】例として、本発明による装置の底部の一実施形態を概略的に示す側面からの断面図である。
図4(a)】例として、本発明による装置のインサートの一実施形態を概略的に示す平面図である。
図4(b)】例として、本発明による装置のインサートの一実施形態を概略的に示す側面からの断面図である。
図5(a)】例として、本発明による装置の一実施形態を概略的に示す平面図である。
図5(b)】例として、本発明による装置の一実施形態を概略的に示す側面からの断面図である。
図5(c)】例として、本発明による装置の一実施形態を概略的に示す拡大図である。
図6】一例として、本発明による装置の一実施形態を片側からの断面で概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1は、本発明による装置を(「上」から)平面図で示している。装置(10)は、共に皿を形成する壁(11)および底部(12)を備える。底部(12)は、角が丸い長方形の形状を有する。凹部(13)は、底部(12)に作られている。凹部は、ハニカム構造の規則的なパターンを形成する。図1(b)は、側方から破線A-A’に沿った断面で装置を示している。壁(11)は、高さに関して底部(12)から90°を超える角度で延在する。図1(c)は、図1(b)の詳細を拡大図で示している。凹部(13)は、球状セグメントの形状を有する。凹部(13)は、(平面図で)底部(12)の平面において、直径/広がりaの丸みを帯びた形状を有する。凹部(13)は、最大深さtを有する。
【0088】
図2(a)は、本発明による装置の底部のさらなる実施形態を(「上」から)平面図で示している。凹部(13)は、底部(12)に作られている。凹部(13)は、正方形の形状を有する。凹部(13)は、正方形の規則的なパターンを形成する。図2(b)は、側面からのA-A’に沿った断面で底部(12)を示している。
【0089】
図3(a)は、本発明による装置の底部のさらなる実施形態を(「上」から)平面図で示している。凹部(13)は、底部(12)に作られている。凹部(13)は、三角形のベース形状を有する円筒の形状を有する。凹部(13)は、正六角形のパターンを形成する。図3(b)は、側面からのA-A’に沿った断面で底部(12)を示している。
【0090】
図4(a)は、本発明による装置のインサートの一実施形態を(「上」から)平面図で示している。インサートは、切り欠き(16)が作られて格子をもたらす平坦な正方形の本体(15)からなる。切り欠き(16)は正方形であり、規則的な正方形パターンを形成する。図4(b)は、側面からのA-A’に沿った断面で切り欠き(16)を有する本体(15)を示している。
【0091】
図5(a)は、皿に導入された図4のインサートを(「上」から)平面図で示している。本実施例では、インサートは皿に配置されている。図5(b)は、側面からのA-A’に沿った断面でインサートを有する皿を示している。インサートにより、皿には、凹部を有する底部が生成される。底部は本体(15)によって形成され、凹部は切り欠き(16)によって形成される。
【0092】
図6(a)は、共に皿を形成する壁(11)および凹部(13)を有する底部(12)を備える装置を示している。液体Fが装置に導入されている。液体Fは、液面(一点鎖線で示す)を形成する。液体の表面と凹部のない底部(12)の部分との最短距離hは、凹部(13)の深さtよりも小さい。
【符号の説明】
【0093】
10 装置
11 壁
12 底部
13 凹部
15 本体
16 切り欠き
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6
【国際調査報告】