(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】三価放射性同位体生物標的放射性医薬品、調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 51/10 20060101AFI20240514BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20240514BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240514BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240514BHJP
A61K 33/245 20190101ALI20240514BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240514BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240514BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240514BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240514BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20240514BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20240514BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240514BHJP
A61K 51/12 20060101ALI20240514BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240514BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20240514BHJP
C07K 16/20 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
A61K51/10 100
A61K31/555
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K33/24
A61K33/245
A61K9/08
A61K9/10
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/04
A61P11/00
A61P15/00
A61P13/08
A61P25/00
A61P13/10
A61P1/18
A61P1/00
A61K47/68
A61K47/64
A61K47/61
A61K51/08 100
A61K51/04 310
A61K51/12 100
C07K16/18
C07K16/40 ZNA
C07K16/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572230
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022030234
(87)【国際公開番号】W WO2022246183
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523439415
【氏名又は名称】ノーススター メディカル テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】323008073
【氏名又は名称】モノパー セラピューティクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴィー ジェームズ ティー
(72)【発明者】
【氏名】マザー アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE30
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF14
4C076FF70
4C084AA12
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZB21
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
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4C085CC23
4C085DD62
4C085DD63
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086EA01
4C086EA16
4C086HA05
4C086HA06
4C086HA07
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA71
4H045DA76
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
式IのPCTAキレート化Q
+3三価放射性イオンに化学的に結合した標的化種を含む標的放射性医薬品が開示される。R
1~R
7の6つはHであり、7番目は反応した官能基であり、Zは標的化種Tと化学結合を形成している。「g」は平均値が1~約12である数である。X
1、X
2、及びX
3は、Q
+3イオンに配位し得る、及び/又はイオン電荷を中和するのに役立ち得る置換基である。陰イオンY
-は任意選択で、イオン電荷のバランスをとるために存在する。望まれない血管新生、腫瘍成長及び/又は腫瘍転移を特徴とする疾患、障害又は病態を有する哺乳動物宿主を治療及び/又は診断するための方法と同様に、薬学上許容される希釈剤中にセラノスティック有効量の式Iの標的放射性医薬品を含む医薬組成物も企図される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCTAキレート化Q
+3放射性同位体イオンに化学的に結合した標的化種を含む標的放射性医薬品であって、前記PCTAキレーターが、下式Iで示される一般構造式を有する標的放射性医薬品。
【化1】
(式中、
Q
+3は、三価放射性同位体イオンであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7のうち6つはHであり、7番目は、前記標的化種Tと前記化学結合を形成する反応した官能基Zを含み、
「g」は、標的化種Tの各分子当たりのキレート化PCTAキレート化三価放射性イオンQ
+3の平均数を示す、平均値が1~約12である数であり、
X
1、X
2、及びX
3は、前記Q
+3放射性同位体イオンに配位し得る、及び/又はイオン電荷を中和するのに役立ち得る同じ又は異なる置換基であり、そして
任意の陰イオンY
-は、イオン電荷のバランスをとるために必要な量で、任意に存在する。)
【請求項2】
前記反応した官能基Zが、反応したマイケル反応アクセプター、反応したイソシアナト基、活性化されたカルボキシル基、及びアジドとアルキンの反応により形成された1,4-二置換-1,2,3-トリアジンの1以上からなる群から選択される、請求項1に記載の標的放射性医薬品。
【請求項3】
前記標的化種Tが、化学的に結合した抗体又は抗体のパラトープ含有部分、化学的に結合したホルモン、化学的に結合した非抗体タンパク質、化学的に結合したサイトカイン、化学的に結合したアプタマー、化学的に結合した核酸又はオリゴヌクレオチド、直鎖又は環状オリゴペプチド、及び直鎖又は分岐オリゴ糖の1以上からなる群から選択される、請求項1に記載の標的放射性医薬品。
【請求項4】
前記X
1、X
2、及びX
3のそれぞれが、-(CH
2)
nCO
2M又は-PO
3M
2置換基であり、nは、0又は1であり、Mは、H
+又はアルカリ金属陽イオンである、請求項1に記載の標的放射性医薬品。
【請求項5】
前記X
1、X
2、及びX
3のそれぞれが、-(CH
2)
nCO
2M置換基であり、nは、0又は1であり、Mは、H
+又はアルカリ金属陽イオンである、請求項4に記載の標的放射性医薬品。
【請求項6】
nが、0である、請求項5に記載の標的放射性医薬品。
【請求項7】
Q
+3が、Ac-225、Bi-212、Bi-213、Zr-89又はIn-111イオンである、請求項1に記載の標的放射性医薬品。
【請求項8】
Q
+3が、Ac-225、Bi-212又はBi-213イオンである、請求項7に記載の標的放射性医薬品。
【請求項9】
Q
+3が、Zr-89又はIn-111イオンである、請求項7に記載の標的放射性医薬品。
【請求項10】
前記標的化種Tが、化学的に結合した抗体又は抗体のパラトープ含有部分である、請求項1に記載の標的放射性医薬品。
【請求項11】
前記抗体又は抗体のパラトープ含有部分が、モノクローナル抗体(mAb)又はそのパラトープ含有部分である、請求項10に記載の標的放射性医薬品。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体又はそのパラトープ含有部分が、ATCC受託番号PTA-8191を有するハイブリドーマにより生産されたATN-658と呼称されるmAb又はATN-658のパラトープ含有部分である、請求項1に記載の標的放射性医薬品。
【請求項13】
前記mAbが、ヒト化されている、請求項11に記載の標的放射性医薬品。
【請求項14】
薬学上許容可能な希釈剤中に溶解又は分散したセラノスティック有効量の請求項1に記載の標的放射性医薬品を含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記薬学上許容可能な希釈剤が、周囲温度で水性液であり、非経口投与用に適合されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が、意図される哺乳動物種宿主レシピエントの血液と等張である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記意図される哺乳動物種宿主レシピエントが、ヒトである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
望まれない血管新生、腫瘍成長及び/又は腫瘍転移を特徴とする疾患、障害又は病態を有する哺乳動物宿主を治療するための方法であって、前記宿主に請求項14に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記セラノスティック有効量は、前記標的放射性医薬品の標的細胞殺傷有効量である、方法。
【請求項19】
前記疾患、障害又は病態が、癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記癌が、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、脳癌、膀胱癌、頭頸部癌、膵臓癌又は結腸癌の1以上からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳動物宿主が、ヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記投与が、反復される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記標的放射性医薬品が、前記哺乳動物宿主に約80~約120kBq/kg体重を与えるのに十分な量で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記投与が、反復される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が、約60日間隔で反復される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
望まれない血管新生、腫瘍成長及び/又は腫瘍転移を特徴とする疾患、障害又は病態を有する哺乳動物宿主をアッセイするための方法であって、
a)前記宿主に請求項14に記載の医薬組成物を投与する工程であって、前記セラノスティック量は、前記標的放射性医薬品の診断上有効な量である工程;
b)前記放射性医薬品が標的細胞に結合するまでの約1時間~数日の期間、前記宿主を維持する工程;及び
c)維持された宿主をスキャンして、標的細胞に結合した標的放射性医薬品によって放出された放射線を検出し、位置を特定する工程、
を含む、方法。
【請求項27】
前記疾患、障害又は病態が、癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、脳癌、膀胱癌、頭頸部癌、膵臓癌又は結腸癌の1以上からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物宿主が、ヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記投与が、反復される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記標的放射性医薬品が、前記ヒトに約0.5~約6.0mCiの量で投与される、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第63/191,499号及び同第63/191,506号(双方とも2021年5月21日出願)の優先権を主張するものであり、これらの開示は参照により本明細書の一部として援用される。
【0002】
配列表
本願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書の一部として援用される。配列表を含むテキストファイルの名称______________であり、このテキストファイルは_________KBであり、2022年______日に作成され、本明細書の提出とともにEFS-Webを介して提出される。
【0003】
発明の背景
放射性医薬品は一般に、標的化部分又は担体に結合された放射性同位体を含む。放射性同位体は担体によって標的まで運ばれ、そこで崩壊する。同位体の崩壊様式によって放射性医薬品の種類が決まる。
一般に、構築物の運命を検出するためにガンマ線放出同位体が使用され、診断目的に使用される。治療には粒子放出剤を用いた構築物が好ましい。以前はβ線放出核種が使用されていたが、近年はα線放出核種が優れた有効性を示している。
α線放出放射性核種は、粒子の飛程が短く、線エネルギー付与(LET)が高いこともあって、細胞を殺傷するのに効果的である。Poty et al. (J Nucl Med. 2018 Jun: 59(60):878-884)には、治療用放射性医薬品へのα線放出剤の使用が記載されている。
【0004】
α線放出放射性核種アクチニウム225(Ac-225)の半減期が他のα線放出剤に比べて比較的長いことが、癌治療のための治療用放射性同位体として普及した理由の一つである。この同位体を使用した構築物を用いた臨床試験は優れた結果を示している。約10日間の半減期は、モノクローナル抗体のin vivo生物学的半減期とよく一致しており、Ac-225とその娘核種により産生される4つのα線放出は、高率の腫瘍細胞死滅を担った。しかしながら、Ac-225を標的化部位に結合させるのに必要な化学的性質が欠けていた。
Ac-225イオンは+3の原子価を示し、イオン半径は112pmであるとされている。分極性がないため、Ac+3は、Hard and Soft Acids and Bases (HSAB) [Pearson, J Am Chem Soc 1963, 85:3533-3539]理論によると、「硬質」ルイス酸に分類され、従って同様に、アニオン性酸素供与体などの「硬質」非分極性、電気陰性ルイス塩基を好むと予測される。特定のイオンの酸塩基の硬軟特性は、絶対化学硬度(h)という概念を用いて定量化することができる。イオンの絶対化学硬度(h)は、式(h)=(I-A)/2で与えられ、式中、Iはイオン化エネルギーであり、Aは対象種の電子親和力である。[Parr and Pearson,J Am Chem Soc 1983,105:7512-7516;および Pearson,Inorg Chem 1988,27:734-740]。
【0005】
このようにして計算されたAc+3とLa+3の絶対化学硬度は、それぞれ14.4eVと15.4eVであった。Au+、Ag+、及びCu+などの軟質イオンは、5.7~6.3eVの絶対化学硬度値を示すが、Sc+3及びAl+3のような従来の硬質イオンは、24eVより大きい絶対化学硬度値を特徴とする。Thiele et al., Cancer Biother Radio, 2018 33(8):336-348。
Ac(III)の最も慣用されるキレートは8~12配位の範囲であるので、Ac+3の大きなイオンサイズは、高い歯質の大きな多座キレーターに適している。アクチニウムは、他のアクチノイド及び希土類元素と類似しており、キレート剤の不在下で、溶液中で加水分解を受けて[Ac(OH)3-x]x-を形成することができ、サブピコモル濃度のAc-225が、次に、水酸化物種に反応容器などの表面に結合する放射性コロイドを形成させる。
【0006】
Ac-225の崩壊連鎖における複数のα粒子の放出のために、Ac-225は癌細胞を殺傷するために特に効果的な同位体となるが、それでもなお核種とその崩壊娘核種の指向性輸送を困難にしている。運動量の保存のため、エネルギーを有するα粒子の放出は、いずれの化学結合の結合エネルギーよりも1000倍高い、100keVを超える反跳エネルギーを娘核種に与えることが多い。この結果、娘核種は元の送達ベクターのキレーターから放出される。その後、α線放出娘核種がin vivoで再分布すると、標的外の健康な組織に実質的な害を及ぼし、治療効果を低下させる可能性がある。
Davis et al., Nuc Med Biol 1999, 26(5):581-589は、Ac-225のin vivoでの挙動に関しては限られた情報しかないと報告している。予備的研究では、動物モデルにおける組織取り込み、生体内分布、及び腫瘍向性に関して、クエン酸塩と錯化したAc-225を評価した。ポリアミノカルボン酸キレーター、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はシクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸(CHX-DTPA)のいずれかと錯化したAc-225を用いた以前の研究では、非錯化Ac-225と比較して、様々な組織向性及び高い血液クリアランスが示された。
【0007】
担癌ヌードマウスでの生物動態学的挙動を測定するために使用されたAc-225-CHX-DTPA-モノクローナル抗体(Mab)錯体は、in vitroでの錯化は成功したが、in vivoでの安定性は低かった。このように、Ac-225は放射線治療モデルにおいて有用である可能性があるが、潜在的に効果的なキレーター及びそのようなAc-225錯体のin vivoにおける相対的安定性に関する情報は不足している。
Ac-225放射性医薬品に関する最近の総説文献であるRobertson et al., Curr Radiopharm, 2018, 11(3):156-172は、十分な安定性でAc(III)と結合し、その娘核種の放出も制御するキレート剤の発見は依然として課題であると指摘している。更に、Ac-225の世界的な利用可能性が限られ、安定した代替核種がないために、この同位体の研究は、信頼できるAc-225の供給を確保している世界中の一握りの機関に限られている。
上記の総説の著者らは、上記のDavisらの論文を含み、精製されたAc-225錯体のそれぞれの8日間にわたる生体分布プロファイルが、各錯体の92kBq(2.5mCi)を注射することによって評価され、対照としてAc-225酢酸塩の生体分布と比較されたことを示している。
【0008】
非錯体Ac-225は主に肝臓に蓄積し、骨、腎臓、心臓には少量しか蓄積しないので、キレートのAc-225肝臓取り込みが高いことは、in vivoでは不安定な錯体であることを示す。シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸「a」異性体(CHX-A”-DTPA)、及び1,4,7,10,13-ペンタアザシクロ-ペンタデカン-N,N’,N”,N”’,N””五酢酸(PEPA)は、錯体のAc-225の肝臓取り込みをAc-225酢酸の5.5倍を超えて低下させ、Davisらのデータは-CHX-A”-DTPAがin vivoでの安定性に関して最も効果的な供試キレーター錯体であることを示唆したが、Robertsonらの総説の著者らは、「非標的組織への蓄積を更に減少させるためになお改善が可能である」と記している [Robertson et al., 第164頁]。
従って、CHX-A”-DTPAではAc(III)のキレート化が不十分である。Robertsonらがコメントした最初のin vivo研究のもう一つの重要な発見は、185kBq(5mCi)以上の線量では、注射後(p.i.)1時間という早い段階で重度の組織障害が観察され、最終的に試験動物の死に至り、p.i.8日目までに100%の死亡率を引き起こしたことから、Ac-225-CHX-A”-DTPAの最大耐容線量が185kBq(5mCi)未満であったことである。
【0009】
アクチニウムの標的化分子への結合は、Sheinbergの研究グループ (Sheinberg, Science 2001 Nov 16; 294(5546):1537-1540. doi: 10.1126/science.1064126)によって達成された。選択されたキレーターはDOTAベースの二官能性分子であった。しかしながら、Sheinbergグループの報告では、標的化部分に十分なAc-225を得るために2段階の方法が用いられた。更に、Ac-225出発物質に基づく収率は非常に低く、標的化部分に取り込まれた同位体は10%未満であった。90%を超える同位体が無駄になった。この方法の比放射能は、抗体1mg当たり約50~70μCiの範囲であった。明らかに、より収率の高い1段階法が望ましい。
Scheinberg研究グループによる可能性のあるキレーターの更なる研究[McDevitt et al., App. Radiat. Isot., 2002, 57(6):841-847]は、研究された6つの可能性のあるキレーターのうち、DOTAと1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラプロピオン酸(DOTMP)だけが、37℃で2時間後、それぞれ>99%と78%の放射化学的収率(RCY)で、Ac225の錯化を示した。しかしながら、その後の血清中でのin vitro安定性アッセイから、Ac-225 DOTA錯体は堅牢で、10日後も90%を超えるものが無傷のままであることが示唆されたが、Ac-225-DOMTMP錯体は急速に解離した。
【0010】
最初に二官能性DOTA-NCS配位子を放射性標識し、次にmAbを結合させる(pH8.7、37℃、52分間)ことを必要とする2段階の標識法を再び採用した。全体の放射化学的収率はわずか9.8±4.5%と低かったが、妥当な比放射能(4.1±2.6GBq/g、又は0.11±0.07Ci/g)が達成され、前臨床治療研究が可能となった。低い収率は、DOTA-NCSの最初のAc-225標識工程が加熱を必要とし、その結果、イソチオシアネートリンカーの分解が起こり、次の工程でのmAbの結合ンが不十分となることに起因した。
Scheinbergグループと共同研究者[McGuire et al., J. Nucl. Med., 2014, 55(9):1492-1498]は後に、Ac-225-DOTA-抗体構築物の調製のための1段階法を報告した。この過程は、DOTA-抗体構築物とAc-225+3の添加に放射線防護剤としてL-アスコルビン酸を添加した2M酢酸テトラメチルアンモニウムバッファー(pH7.5)で進行し、典型的な最終反応pH値は5.8であった。37℃で2時間加熱することにより、これまでの2段階法(6~12%)と比較して放射化学的収率が10倍(80%)増加し、最大30倍高い比放射能(3.7~14.8GBq/gに対して120GBq/g)を有するバイオコンジュゲートの調製が可能となった。達成された最高の非活性は、抗体25個に1個のアクチニウムに相当した。
【0011】
US2004/0067924 A1(Frank)は、Ac-225を錯化するための12員大環状アミンベースのポリアセテート及びポリホスホネートキレート剤の使用を教示している。DOTAベースのキレート剤は、Ac-225をキレート化するのに有用であることが見出された。
その特許公開公報の段落[0082]には、示された1つのDOTAキラントのニトロベンジル基をアニリンに還元することができ、そのアミンをその後イソチオシアネートに変換して、標的化ペプチド抗体又は他の実体に連結するための二官能性化合物を形成することができると記載されている。PCTAの二官能性類似体(下記)は、酢酸炭素の1つに連結基を結合させることによって調製できるとされている。
【0012】
3,6,9,15-テトラ-アザビシクロ-[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-酢酸(PCTA)ベースのキレート剤がFlank出願の本文中に記載され、アクチニウムとの結合データが示された。示され使用されたPCTA化合物は、キレート化カルボキシル基の1つを使用する可能性以外には、ペプチド又は抗体などの標的化分子への連結には適合しなかった。PCTAを用いる標的化構築物は開示されていなかった。
Yapp et al., Mol Imaging June 2013 12(4):263-272は、腫瘍血管系のPETスキャン研究で使用するためのCu-64[Cu(II)-64]のキレート化に、PCTA、DPTA、及び1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン-4,7,10-トリ酢酸(Oxo-DO3A)を使用することを報告した。このキレートは、環状ペプチドの付加リジンにベンジルイソチオシアネート結合を介して環状テトラペプチドである環状(RGDyK)に結合された。
Bryan et al., Cancer Biol Ther June 15, 2011 11:12, 1001-1007によって報告された別の研究では、異種移植マウスの結腸癌腫瘍の治療において、キレート剤として1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)を用い、内在化mAbと非内在化mAbに連結したCu-64の放射免疫療法及びPETスキャンの結果が考察されている。腫瘍を毎日測定した結果、PETスキャンは有用であり、内在化抗体の使用はCu-64放射免疫療法の転帰を改善しなかったことが示された。
【0013】
以前の1段階法は、Simon,国際公開2011/011592 A1に開示されている。この特許出願は、第1段階としてキレーターと結合したタンパク質の調製を教示している。過剰のキレート剤を除去した後、タンパク質キレート結合体を同位体と反応させた。ここでも、DOTAベースのキレーターが研究に使用され、当技術分野における現在の考え方がなおDOTAベースのキレーターがAc-225に最適であるということを示している。
Simonの開示の方法では、高濃度の酢酸イオンの使用と、高いキレーター:抗体比(CAR)を必要とした。開始反応は、CAR数が10~12になるように、抗体当たり100キレーターのモル反応体比を用いて行われた。
より低いCAR数の結合体で高い比放射能のAc-225構築物を作製することが望ましい。これは、CAR数が増加するにつれて、抗体の生物学的標的化が低下するためである。従って、Ac-225とDOTAタイプのキレーターを用いて1段階法が教示されるとしても、DOTAタイプのキレート剤を用いると必要なCAR数が高かった。Ac-225構築物の調製には、より優れたキレート剤が必要であることは明らかである。
【0014】
上述のようなAc-225のキレート剤としてDOTAを使用することの難しさはともかく、Thiele et al., Cancer Biother Radio, 2018 33(8):336-348は、2018年と最近になって、総説の一節に「DOTA:現在のゴールドスタンダード」(340で)という表現を用いている。それらの著者のDOTAの節の最後の文には、「まとめると、これらの欠点は、DOTAは225Ac-TAT[225Ac標的α療法]応用における使用には理想的ではないことを示し、225Acのより適切なキレート足場の必要性を強調している。」と記載されている。
Ac-225を標的化部位に結合させることに関連する化学は、使用者及び著者にとって困難であった。Ac-225を分子に結合させるより良い方法が必要であることは明らかである。本発明はその必要性に取り組む助けとなる。驚くことに、我々は、PCTAベースのキレート剤が、温和な条件下で、先行する「ゴールドスタンダード」であるDOTAを使用した場合に以前に報告されたよりも低いCAR数でAc-225と安定なキレートを形成することを見出した。
【0015】
Bi-213はAc-225の放射性崩壊生成物であり、Bi-212はウラン234(U-234)の段階的崩壊後の鉛-212(Pb-212)の放射性崩壊によって生成される。Bi-212とBi-213は半減期が短いため、これらの放射性核種の放射性核種療法への応用が制限される可能性がある。
ビスマス同位体であるBi-212とBi-213も放射免疫療法に使用するための候補である。一方、他方、又は両方の同位体を利用したいくつかの前臨床試験が公表されている。両者とも原子価は+3であり、従って、アクチニウムが崩壊した後も錯形成を留める傾向がある。
Bi-212の半減期は約1時間であり、α粒子とβ粒子の両方をほぼ1:2の割合で放出する。Bi-213の半減期は約45分であり、β線放出によってほぼ完全に崩壊してポロニウム-213となり、その後α粒子を放出して、本明細書の
図1に示すように鉛-209を形成する。
【0016】
例えば、Park et al., Blood, 2020 116(20):4231-4239は、ラモスリンパ腫の異種移植片を持つマウスを、ストレプトアビジンと融合した抗CD20抗体、その後[213Bi]DOTA-ビオチンで処置した前臨床試験を報告している。腫瘍を有する処置マウスは顕著な増殖遅延を示し、平均生存期間は非処置対照の約4倍長かった。Yong et al., AIMS Med Sci, 2021, 2(3):228-245による総説では、HER2に結合するmAbであるトラスツズマブにキレーターである2-(4-イソチオ-シアナトベンジル-1,4,7,10-テトラアザ-1,4,7,10-テトラ(2-カルバモニルメチル)シクロドデカン(TCMC)を連結したものを用いた研究など、標的α粒子療法(TAT)にPb-212/Bi-212を使用した最近の研究が述べられている。Mulford et al., J Nucl Med 2005, 46(1 Suppl):199S-204Sによる総説では、上記のビスマス同位体の一方又は他方を利用するいくつかのTAT療法が述べられている。
【0017】
上記のYongらに述べられているように、Bi-212又はBi-213の代わりに前駆体Pb-212で生体分子を標識すると、Bi-212の半減期60分又はBi213では46分であるのに対し、10.6時間という半減期の結合体が得られるという利点がある。Pb-212をDOTAキレーターと錯体を形成させた潜在的in vivoジェネレーターを作製しようとした以前の試みは、β粒子によってPb-212が崩壊してBi-212を形成する結果としてBiの約36%が漏れ出し、DOTAによって保持されないという報告があることから失敗した。遊離ビスマスイオンは腎臓に局在するので、Pb-212の崩壊で形成されたBi-212が担体に結合したままであることは重要であるかもしれない。Bartos et al., J Radioanal Nucl Chem, 2013 295:205-209。
【0018】
ジルコニウムは原子価を持ち、Zr-89はガンマ線(909keV)と約397keVの陽電子を放出し、どちらの放出も診断に有用であるという点で、ジルコニウム-89ももう1つの有用な放射性同位体である。Zr-89の半減期は3.3日で、これは医療に用いられる多くのモノクローナル抗体の循環半減期と同様である。これらの同位体は、陽電子放射断層撮影法(Immuno-PET)におけるmAbの放射性標識及び評価に使用されている[Saleem et al., Sci World J 2014, Article ID 269605, 第9頁]。Zr-89の最終崩壊生成物は、安定な非放射性同位体であるイットリウム-89である。
本発明で更に有用な同位体はインジウム-111である。インジウムも+3の原子価を持ち、In-111の半減期は約2.8日である。インジウム-111の崩壊は0.171MeVと0.245MeVのガンマ線を提供し、単一光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)画像法などの診断スキャンに使用できる。In-111は崩壊して、非放射性で安定なカドミウム-111となる。
【0019】
以下に開示する発明は、治療と診断(セラノスティック(theranostic))の両用途に様々な標的化種と単一のキレート剤を使用し、両方の用途に単一のキレーター連結標的化システムを提供することを教示する。このようなセラノスティックは、放射性同位体の標識は別個であるが、標的化種とキレート化剤の製造工程は共通であり得るので、開発及び製造において重要な利点を有する。これにより、開発、非標識標的キレーターを用いた毒性試験、共通の安定性、及び原薬において、時間とコストのいくつかの利点が提供される。
【発明の概要】
【0020】
発明の概要
本発明は、Ac-225、Bi-212、Bi-213、Zr-89及びIn-111などの三価の放射性同位体イオンと、又、標的化種分子と安定な金属配位子錯体を容易に作り出して放射線治療薬又は放射性診断薬(若しくは一般には放射性医薬品)を形成する、驚くことに構造中にピリジン環が埋め込まれた12員大環状アミンを含むキレート剤の使用に関する。これらの放射性医薬品はラジオセラノスティックス薬とも呼ばれ得る。
本発明の一実施形態では、キレート剤が標的化種分子に結合され、分子のその部分へのQ+3イオンのキレート化を可能とする。キレート剤は、標的化分子のその標的に到達する能力を妨げない部標的化分子の部分に結合される。標的化種は、放射性医薬品を、殺傷する細胞、又はその存在、位置、サイズ、及び形状の1以上が決定される細胞に結合させる。
【0021】
より具体的には、標的化種は、キレート化三価放射性同位体イオンQ
+3を有するPCTAキレーターに化学的に結合されて、下記に式Iで示される一般構造式を有する、又、キレート化される放射性同位体に応じて、標的細胞を殺傷するか、又は標的細胞に結合して、結合した細胞の存在、位置、サイズ若しくは形状の1以上のシグナルを得るために治療的に使用され得るセラノスティック放射性医薬品を形成する。
【化1】
そのキレーターでは、キレート化Q
+3イオンは、+3の原子化を有し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7のうち6つがHであり、7番目は、標的化種Tと化学結合を形成する反応した官能基Zを含む、放射性同位体である。X
1、X
2、及びX
3は、そのイオンに配位し得る、及び/又は三価Ac-225、Bi-213、Bi-212、Zr-89又はIn-111などのキレート化Q
+3イオンのイオン電荷を中和するのに役立ち得る同じ又は異なる置換基である。「g」は、標的化種Tの各分子当たりのキレート化PCTAキレート化三価放射性イオンQ
+3の平均数を示す、平均値が1~約12である数である。任意の陰イオンY
-は、イオン電荷のバランスをとるために必要な量で存在することができる。
まずQ
+3イオンとのキレート化反応を行い、その後標的化種分子Tに結合させることができる。同位体を2回取り扱うため、これは2段階法と呼ばれる。或いは、まず結合反応(キレート剤を標的化種に結合させる)を行い、その後Q
+3イオンを挿入することもできる。これは、同位体の取り扱いが1回だけなので1段階法と呼ばれ、好ましい。
225Ac
+3は好ましいQ
+3イオンである。
【0022】
薬学上許容可能な希釈剤中に溶解又は分散した式Iの治療上有効な量の標的放射性医薬品を含む医薬組成物が企図される。好ましくは、薬学上許容可能な希釈剤は、周囲温度で水性液であり、非経口投与用に適合されている。
一実施形態では、その医薬組成物は、宿主に標的細胞殺傷(治療)有効量の標的放射性医薬品を投与することを含む、望まれない血管新生、腫瘍成長及び/又は腫瘍転移を特徴とする疾患、障害又は病態を有する哺乳動物宿主を治療するための方法で使用される。
更なる実施形態では、企図される標的放射性医薬品は診断薬として使用される。従って、本発明は、宿主に標的細胞結合有効量の標的放射性医薬品を投与し、その後、結合した標的放射性医薬品によって放出された放射線を検出し、位置を特定するために宿主をスキャンすることにより、望まれない血管新生、腫瘍成長及び/又は腫瘍転移を特徴とする疾患、障害又は病態を有すると思われる又は有することが分かっている哺乳動物宿主をアッセイするための方法を企図する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、
213Biの調製の開発における
229Thから
225Acを経て安定な
209Biに至る放射性崩壊スキームを示し、4つのα粒子(α)と4つのβ粒子(β
-)の放出、並びに崩壊スキームにおける各核種の半減期をボックスで示し、Huang et al., Comput Math Method M, Vol. 2012, Article ID 153212, 第6頁に報告されているように、数字とその後に続く文字は半減期を示し、d=日、h=時間、m=分、ms=ミリ秒、及びms=マイクロ秒である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、標的化種に化学的に結合したPCTAキレート化Q
+3イオンを含む標的放射性医薬品に関する。企図する本発明の標的放射性医薬品は、下記に式Iで示される一般構造式を有する。
【化2】
その標的放射性医薬品では、Q
+3は三価放射性同位体イオンであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7のうち6つがHであり、7番目は、標的化種Tと化学結合を形成する反応した連結官能基Zを含む。X
1、X
2、及びX
3基は、
225Ac
+3、
212Bi
+3、
213Bi
+3、
89Zr
+3又は
111In
+3などのQ
+3イオンに配位することができ、キレート化Q
+3イオンのイオン電荷を中和するのに役立ち得る、同じ又は異なる置換基である。「g」は、標的化種Tの各分子当たりのキレート化PCTAキレート化三価放射性イオンQ
+3の平均数を示す、平均値が約1~約12である数である。任意の陰イオンY
-は、イオン電荷のバランスをとるために必要な量で存在することができる。
【0025】
例示的標的放射性医薬品キレートは、特定の標的化種、各標的種に結合したキレートの数、又は反応した連結官能基Zを描かずに、下記の式Ia、Ib、Ic及びIdに例示される。2つのビスマス同位体(
212Bi
+3及び
213Bi
+3)は、便宜上、
212/213Bi
+3と一緒に記載される。
【化3】
【0026】
アクチニウム-225は、半減期がほぼ10日であり、
図1に示すように、崩壊して4つのα粒子と3つのβ粒子を放出して安定な同位体であるビスマス-209を形成するので、好ましい放射性医薬品同位体である。Ac-225からの娘崩壊生成物の1つはBi-213であり、最終崩壊生成物はBi-209であり、これには放射性はなく、安定である。
ビスマス-212は、鉛-212の崩壊生成物である。ひと度得られれば、ビスマス-212は、鉛-212から分離され、適切に連結されたPCTAと錯化して標的化種と化学的に結合したキレート化Q
+3イオンを形成することができる。Bi-212は最終的に鉛-208へと崩壊するが、これには放射性はなく、安定である。
キレート剤のいくつかのバージョンは、ピリジンベースの12員テトラアザ大環状配位子又はPCTAと呼ばれる(初出:2019年4月2日 chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/-doi/abs/10.1002/ejoc.201900280)。
【0027】
一実施形態では、反応した官能基Zは、反応したマイケル反応アクセプター、反応したイソシアナト基、反応したカルボキシル基、及びアジドとアルキンの反応により形成された1,4-二置換-1,2,3-トリアジンの1以上からなる群から選択される。反応したイソチオシアネート[-NH-C(=S)-NH-;チオ尿素]は、1つの好ましい反応した官能基である。
所与の組成物中で反応しない抗体分子もあれば反応する抗体分子もあるので、抗体分子当たりに結合したキレーターの数は平均数である。イソチオシアネート基が無傷抗体に結合している場合、抗体分子当たりに結合したキレーターの平均数は1~約12、好ましくは約3~約12、より好ましくは約8~約10である。そのパラトープ含有部分(又は抗原結合フラグメント)が標的化種である場合、重鎖の2対のCH2及びCH3部分が存在しない場合、イソチオシアネート基が反応できるリジンアミノ基の数が少なくなるので、標的化種1分子当たりのPCTAキレーターの数は、例えば約1~約5などと少なくなる傾向がある。
【0028】
反応前の例示的なキレーター反応官能基Zは、マレイミドなどのマイケル反応受容基であり得、還元された無傷抗体チオール基に最大約8個のキレーターを連結することができる。当然のことながら、後述のペプチド模倣環状(RGDyK)などの小さな標的化種では、キレーターに結合できるアミンが1つだけであるので、連結できる放射性医薬品キレートの数が制限される。
マイケル反応受容基は、アミン又はメルカプタンなどの求核剤と反応し得るab-不飽和カルボニル基を含む。例示的なマイケル反応受容基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びマレイミド基が挙げられる。
1,4-二置換-1,2,3-トリアジン、アジド及びアルキンの形成のための前駆体は、キレーターの予め反応した官能基上又は標的化種上のいずれかに、それぞれ1つずつ存在することができる。カップリング反応は、銅(II)イオン又は紫外線照射によって触媒され得る。
【0029】
標的化種Tは、化学的に結合した抗体又は抗体のパラトープ含有部分、化学的に結合したホルモン、化学的に結合した非抗体タンパク質、化学的に結合したサイトカイン、化学的に結合したアプタマー、化学的に結合したオリゴヌクレオチド、化学的に結合したサイトカイン、直鎖又は環状オリゴペプチド又はペプチド模倣剤、及び直鎖又は分岐鎖オリゴ糖の1以上からなる群から選択される。モノクローナル抗体(mAb)又はそのパラトープ含有部分は、好ましい標的化基であり、ヒト化モノクローナル抗体又はそのパラトープ含有部分は特に好ましい。
【0030】
X1、X2、及びX3基は、Q+3イオンに配位し得る、及び/又は標的放射性医薬品のイオン電荷を中和するのに役立ち得るキレート化に有用な官能基である、同じ又は異なる置換基である。例示的X置換基としては、-(CH2)nCO2M基、ホスホン酸(-PO3M2)基及びそのハーフエステル、並びにカルボキサミドである-(CH2)nCONH2、及び-(CH2)nCH2NR10R11第一級、第二級又は第三級アミンが挙げられ、ここで、R10及びR11は同じ又は異なり、H又はC1-C4アルキルである。このような置換基において、Mは、プロトン(H+)、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンである。X1、X2、及びX3基はそれぞれ同じであることが好ましく、より好ましくは、それぞれ-COOM基である。「n」は、0又は1であり、好ましくは、0であり、従って、X基は-CO2Mである。ひと度、バッファーなどの水性組成物中では、カチオン性Mは水性組成物中に存在する別のカチオンと交換される可能性が高いことを理解されたい。
【0031】
好ましいキレーターは、当技術分野ではPCTAと呼ばれる。特に好ましい形態のPCTAの化学式は、キレートターを二官能性とすることができる(4-イソチオシアナト-フェニル)メチル誘導体であり、下記に式IIで示され、式中、Mは従前に記載されている。
【化4】
式IIのキレート剤はMacrocyclics Inc.(ダラス、TX)からp-SCN-Bn-PCTAの名称で市販されている。
【0032】
標的化種
抗体は、癌細胞などの体内の望まれない細胞の細胞表面抗原に結合するものが多いので、本発明の一態様において好ましい標的化種分子の一群である。ひと度結合すると、抗体及びその結合キレート化Q
+3イオンは、望まれない細胞(治療される細胞)内に取り込まれ、その際にAc-225などのQ
+3イオン、又は
213Bi
+3などのその娘原子の1つが分解して、望まれない細胞内でその細胞傷害性α粒子を放出することができる。Q
+3イオンとPCTAキレーターの特定の組合せは、Q
+3イオンとキレーターとしてのDOTAを使用して形成されるものと比較して、特に安定なキレート生成物を形成する。その結果、DOTAなどのキレーターを使用した場合よりも、標的細胞における放射性同位元素の濃度が高くなり、レシピエント体内の他の場所における放射性同位体の濃度は低くなる。
標的化種として使用するためのモノクローナル抗体の例示的リストを下表に示す。リストのほとんどはヒト又はヒト化抗体であり、ヒトの治療に使用することが承認されているが、他のものはマウス抗体である。このリストは、ヒトでの使用について米国FDAによる承認を待っている約80~90の有用な可能性のあるモノクローナル抗体の例に過ぎないことを理解されたい。
【表1】
【0033】
本明細書で例示的に使用されるmAb MNPR-101と呼ばれるmAbは、マウスmAb ATN-658のヒト化型であり、そのハイブリドーマはATCC受託番号PTA-8191を有し、米国特許第8,101,726号に開示され特許請求されている。又、米国特許第8,101,726号に開示され特許請求されているマウスmAb ATN-615は、ATCC受託番号PTA-8192を有するハイブリドーマによって分泌される。
これらのmAbは、uPA-uPARと呼ばれる二元複合体、すなわちウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)とその細胞表面受容体であるuPAR、並びに二元複合体の形成を妨げない遺伝子座のuPARに特異的に結合する(免疫反応する)。米国特許第8,101,726号は、uPAとuPARの発現が多くの腫瘍型で証明されていることに言及している。
mAb MNPR-101のパラトピックアミノ酸残基配列(CDR;相補性決定領域;可変領域)は、mAb ATN-658表3、以下)の結合と非常によく似て、そのuPA-uPAR抗原に結合する。重鎖定数領域(CH1、CH2及びCH3)はヒトIgG1抗体のものである。
【0034】
MNPR-101を調製するためのATN-658のヒト化には、Wu and Kabat, 1992 Mol. Immunol., 29(9):1141-1146(以下Kabat)に報告されているヒト抗体アミノ酸残基配列とヒト化される抗体の可変領域の配列を組み合わせて1以上のコンセンサス配列を形成しているものを用いるXoma HE(商標)合成プラットフォームを使用した。この方法には次のようないくつかの工程がある。
(1)XOMA Corp.(エメリービル、CA)独自のHE(商標)法を用いたATN-658軽鎖及び重鎖のHuman Engineer(商標)(HE(商標))による、低リスク及び低リスク+中リスクのHE(商標)変異体の作製;
(2)HE(商標)可変(V)領域配列のコドンの最適化、エネルギーの最小化及び遺伝子合成;
(3)ヒトγ-1及びκ定常領域モジュールを含むXOMA独自の一過性発現ベクターへの4つのHE(商標)V領域のクローニング;
(4)HE(商標)変異体の一過性発現;
(5)ヒト化抗体の精製、及びそれらの純度と内毒素の特性決定;並びに
(6)4つのHE(商標)変異体の親和性の確認。
上記及び以下で議論される「低リスク」という表現は、マウスからヒトへのアミノ酸残基の変化が、結合親和性に影響を与える可能性がほとんどなく、治療免疫原性の大幅な低下をもたらすかどうかに関する。もう1つの表現「高リスク」は、マウスからヒトへのアミノ酸残基の変化が、治療免疫原性の実際の低下がほとんど又は全くなく、結合活性の低下又は消失をもたらす位置の改変に関する。
【0035】
Xoma HE(商標)プラットフォームを使用してmAb MNPR-101を作出するためのATN-658のヒト化は、以下の刊行物、特許及び特許出願で示唆されている「低リスク」、「中リスク」、及び「高リスク」置換に従って実行された:1)国際公開93/11794“Methods and materials for preparation of modified antibody variable domains and therapeutic uses thereof”;2)米国特許第5,766,886号“Modified antibody variable domains”;3)米国特許第5,770,196号“Modified antibody variable domains and therapeutic uses thereof”;4)米国特許第5,821,123号“Modified antibody variable domains”;5)米国特許第5,869,619号、“Modified antibody variable domains”、及び6)Studnicka et al. 1994 Protein Eng 7:805-814、これらの開示は全て参照により本明細書の一部として援用される。
mAb MNPR-101の調製に関してさらに詳しくは以下の実施例で述べる。
【0036】
「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン(Ig)分子並びにIg分子のタンパク質分解的切断によって産生され得る、又は遺伝的若しくは化学的に操作され得るフラグメント及び誘導体の両方を含むことを意味する。パラトープ含有部分又はフラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvが含まれ、それぞれが抗原に結合することができる。これらのフラグメントは、無傷抗体(Ab)のFcフラグメントを欠いており、治療に使用した場合、無傷抗体よりも循環からより迅速に除去され、非特異的な組織結合が少ないという付加的利点がある。Igのパパイン処理によりFabフラグメントが生じ;ペプシン処理によりF(ab’)2フラグメントが生じる。これらのフラグメントは、当技術分野で周知の方法を使用して、遺伝子工学又はタンパク質工学によって作製することもできる。
【0037】
Fabフラグメント又は部分は、共有結合したIg重(H)鎖とIg軽(L)鎖の免疫学的に活性な部分を含み、抗原と特異的に結合できるIg分子の部分からなる多量体タンパク質である。Fabフラグメントは、一般に、当技術分野で周知の方法を使用して、実質的に無傷のIg分子をパパインでタンパク質分解消化することによって調製される。しかしながら、Fabフラグメントは、当技術分野で周知の方法を使用して、IgH鎖及びL鎖の所望の部分を適切な宿主細胞内で発現させることによって調製することもできる。F(ab’)2フラグメントは、2つのH鎖と2つのL鎖のフラグメントを含む四量体である。
Fvフラグメントは、共有結合したIgH鎖可変(V)領域(VH)とIgL鎖V領域(VL)の免疫学的に活性な部分からなる多量体タンパク質であり、抗原と特異的に結合することができる。Fvフラグメントは、一般に、当技術分野で周知の方法を使用して、Ig VH領域及びVL領域の所望の部分を適切な宿主細胞内で発現させることによって調製される。
【0038】
「scFv」とも呼ばれる一本鎖抗原結合タンパク質又は一本鎖Abは、VL配列のC末端をVH配列のN末端に連結するペプチドによってIg VHアミノ酸残基配列につながれたIg VLアミノ酸残基配列から構成されるポリペプチドである。好ましい実施形態では、Abは、ATN-615(Creative Biolabs,Inc.、シャーリー、NY)又はATN-658(ハイブリドーマB細胞:ATCC PTA-8191;マナサス、VA)と称されるマウスモノクローナル抗体(mAb)であり、その両方がIgG1抗体である。
本発明のAbは、通常の多量体構造の代わりに、一本鎖Ab又はscFvとして作製することができる。一本鎖Abは目的のIgの超可変領域を含み、無傷Igのサイズの何分の一かで、天然Igの抗原結合部位を再作出する(Skerra et al., Science, 1988 240:1038-1041; Pluckthun et al. Methods Enzymol 1989 178:497-515; Winter et al., Nature 1989 349:293-299); Bird et al., Science 1988 242:423-426; Huston et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988 85:5879-5883; Jost et al., J Biol Chem. 1994 269:26267-26273; 米国特許第4,704,692号、同第4,853,871号、同第4,946,778号、同第5,260,203号、及び同第5,455,030号)。
【0039】
H鎖及びL鎖のV領域をコードするDNA配列は、少なくとも約4アミノ酸残基(一般に小さな中性アミノ酸)の配列をコードするリンカーに連結される。この融合によってコードされたタンパク質は、元のAbの特異性と親和性を保持する機能的可変領域の構築を可能にする。
異なるタイプの一本鎖Abは、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーニャなどのラクダ科動物で誘導される抗体である。これらの動物は、可変領域と定常領域を有し、小さいサイズ、優れた溶解性、優れた安定性、血液からの迅速なクリアランス、及び深部組織浸透などの多くのユニークな特性を備えた単一の重鎖のみの抗体(HcAb)を産生する。「ナノボディ」の名称は、そのナノメートルサイズと約15kDa未満の分子量により、ベルギーの会社Ablynx(登録商標)によって最初に採用された。Sanofiの関連会社であるAblynx N.V.は、NANOBODY(登録商標)商標の世界的な所有者である。
【0040】
しかしながら、ナノボディの抗原結合能力は、以下の理由により、従来の抗体のものと同様のままである。第一に、ナノボディの相補性決定領域3(CDR3)は、ヒトVHドメイン(免疫グロブリン重鎖の可変ドメイン)と同様か、又はそれより長い。前者は3~28個のアミノ酸(AA)からなるが、後者は8~15個のアミノ酸に過ぎない。治療薬として、ナノボディは、薬物及びエフェクタードメインの病巣特異的送達による標的治療を可能にし、それによって療法の特異性と有効性を向上させる[Bao et al., EJNMMI Res (2021) 11:6.]。モノクローナルナノボディのヒト化型は、一般に、必要な手順が一般に少ないことを除いて、二本鎖mAbの調製に使用される方法と同様の方法で調製される。
本発明のキメラ抗体の定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、ヒト胎児肝臓ライブラリー又はヒトIgを発現及び産生する細胞を含む任意のヒト細胞に由来し得る。ヒトCH領域は、γ、μ、α、δ、又はε、及びG1、G2、G3及びG4などのそのサブタイプを含む、ヒトH鎖の既知のクラス又はアイソタイプのいずれかに由来し得る。
H鎖アイソタイプはAbの様々なエフェクター機能を担っているので、CH領域の選択は、補体結合、又はAb依存性細胞傷害(ADCC)の活性などの所望のエフェクター機能によって決まる。好ましくは、CH領域は、γ1(IgG1)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、又はμ(IgM)に由来する。
ヒトCL領域は、ヒトL鎖アイソタイプκ又はγに由来し得る。
【0041】
ヒトIgC領域をコードする遺伝子は、標準的なクローニング技術[Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (1989)]によってヒト細胞から得られる。ヒトC領域遺伝子は、2つのクラスのL鎖、5つのクラスのH鎖、及びそれらのサブクラスを表す遺伝子を含む既知のクローンから容易に入手可能である。
一般に、本発明のキメラ抗体は、本発明の特定のAb、好ましくは非ヒトAbのH鎖及びL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローニングし、これらのDNAセグメントをそれぞれヒトCH及びヒトCH領域をコードするDNAセグメントに結合してキメラIgコード遺伝子を作出することによって産生される。
よって、好ましい実施形態では、結合(J)セグメントを有するV領域のCDR1、CDR2及びCDR3などの、少なくとも非ヒト起源の抗原結合領域をコードする第1のDNAセグメントとヒトC領域の少なくとも一部をコードする第2のDNAセグメントに結合されたものを含む融合遺伝子が作製される。
【0042】
F(ab’)2及びFabなどのキメラAbフラグメントは、適切に切断されたキメラH鎖遺伝子を設計することによって調製することができる。例えば、F(ab’)2フラグメントのH鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメイン及びヒンジ領域をコードするDNA配列と、その後に切断された分子が得られる翻訳停止コドンを含む。
全てのIgH鎖及びL鎖遺伝子とコードされるそれらのmRNAの1つの共通の特徴は、J領域である。H鎖とL鎖のJ領域の配列は異なるが、各グループ間、特にC領域付近に高度な配列相同性(80%を超える)が存在する。この方法ではこの相同性が利用され、H鎖及びL鎖のJ領域のコンセンサス配列を使用して、その後のV領域セグメントとヒトC領域セグメントとの結合のために有用な制限部位をJ領域に導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0043】
ヒト細胞から調製されたC領域cDNAベクターは、部位特異的突然変異誘発によって改変され、ヒト配列の類似の位置に制限部位を置くことができる。例えば、完全なヒトκ鎖C(Cκ)領域及び完全なヒトγ-1C領域(Cγ-1)をクローニングすることができる。この場合、C領域ベクターのソースとしてゲノムC領域クローンに基づく代替法では、介在配列の除去に必要な酵素が存在しない細菌系でこれらの遺伝子を発現させることはできない。クローン化されたV領域セグメントは切り出され、L鎖又はH鎖C領域ベクターにライゲーションされる。
或いは、終止コドンを導入することによってヒトCγ-1領域を改変し、それによりFab分子のH鎖部分をコードする遺伝子配列を作製することもできる。次いで、結合したV領域及びC領域を有するコード配列を、適切な原核生物又は真核生物宿主で発現させるために適切な発現媒体に導入する。
【0044】
本発明の別の態様では、標的化分子は、約400~約1000amuの分子量を有する直鎖又は環状のオリゴペプチド又はペプチド模倣薬などの比較的小さい分子である。1つの例示的環状オリゴペプチドが、環状(RGDyK)と呼ばれる環状テトラペプチドで、これは一部の腫瘍及び腫瘍新生血管の内皮細胞に発現するavb3受容体に結合する[Yapp et al., Mol Imaging June 2013 12(4):263-272]。
ペプチド模倣薬は、その必須要素(ファーマコフォア)が三次元空間で天然のペプチド又はタンパク質を模倣し、生物学的標的と相互作用して天然のペプチド又はタンパク質と同じ生物学的作用を生じる能力を保持している化合物である[Vagner et al., Curr Opin Chem Biol June 2008 12(3):292-296]。ここで対象となる例示的なペプチド模倣薬は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)の阻害剤である。
【0045】
PSMAは、葉酸ヒドロラーゼとカルボキシペプチダーゼ、及び内部移行活性を備えた表面タイプ2内在性膜糖タンパク質である[Cimadamore et al., Front Oncol December 21, 2018 8:article 653]。PSMAは、前立腺癌腫瘍細胞並びに様々な非前立腺固形腫瘍の血管で発現が高い。
モノクローナル抗体J591及び他の3つの抗PSMAモノクローナルはそれぞれマウスモノクローナル抗体である。これらのmAbの1以上が、以下の米国特許:第6,107,090号;第6,136,311号;第6,649,163号;第6,770,450号;第7,045,605号;第7,112,412号;第7,163,680号;第7,192,586号;第7,514,078号;第7,666,414号;第7,666,425号;及び第8,951,737号で開示及び/又は特許請求される対象である。
【0046】
N-アセチルアスパルチルグルタミン酸ペプチダーゼ(N-アセチル化α結合酸ジペプチダーゼ;NAAALDASE)間の構造的及び機能的相同性は、NAAALDASEに対するいくつかの阻害剤を含むとして同定された。最も先進的なペプチド模倣阻害剤の1つは尿素ベースのPSMA配位子で、通常、結合モチーフ(グルタミン酸-尿素-リジン[Glu-尿素-Lys])、リンカー、及び放射性標識含有部分(放射性標識のためのキレーター分子)の3つの成分からなる。特に有用なそのような分子をキレーターなしで以下に示す。
【化5】
【0047】
分岐オリゴ糖標的化種の例としては、内皮細胞上のセレクチン受容体に結合するシアリル-ルイス a (sLea)シアリル-ルイス x (sLex)抗原、及び転移を引き起こす可能性があるその他のものがある。抗CD33 mAbであるリンツズマブは、シアロヘシン受容体CD33に結合する。
葉酸及び誘導体は、葉酸受容体を過剰発現する癌性腎細胞の標的化種として使用することができる。葉酸受容体は、正常細胞におけるより低いレベルと比較して、脳、腎臓、肺、卵巣、及び乳房の癌でも過剰発現される(例えば、Sudimack et al., Adv Drug Deliv Rev 2000 41:147-162参照)。Figliola et al., RSC Adv 2019 9:14078-14092は、エチレンジアミン、エチレンオキシド、シスタミン、及びジアミノオリゴオキシエチレン(diamino oligo oxytheylene)などのいくつかのα,ω-アミノ結合基を用いて、薬物プロジジオセンを含む葉酸標的化種の調製のための合成経路を示している。
免疫細胞はマンノースに対する親和性を有し、4~30のアミノ酸残基を含むいくつかのRGD含有標的化ペプチドが知られており、多くがBeer et al., Methods Mol. Biol. 2011 680:183-200; Beer et al., Theranostics 2011 1:48-57; Morrison et al., Theranostics 2011 1:149-153; Zhou et al., Theranostics 2011 1:58-82;及びAuzzas et al., Curr. Med. Chem. 2010 17:1255-1299、及びGoonewardena et al., 米国特許第9,931,412号に記載されている。
【0048】
医薬組成物
薬学上許容可能な希釈剤中に溶解又は分散された治療上有効な量の企図される標的放射性医薬品を含有する医薬組成物が、企図される方法において使用される。一実施形態では、処置が治療的である場合、治療上有効な量は、標的細胞殺傷有効量である。このような組成物は、癌細胞及び異常な免疫細胞などの望まれない標的細胞に結合して殺傷するために、in vivoにおいて哺乳動物宿主動物に投与される。
例示的な望まれない標的細胞としては、望まれない細胞転移、浸潤、増殖、免疫応答又は血管新生に関連する細胞が挙げられる。このような細胞の例としては、異常な免疫細胞、並びに、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、脳癌、膀胱癌、頭頸部癌、膵臓癌及び結腸癌の癌細胞などの癌細胞がある。CD33マーカーを発現する急性骨髄性白血病などの血液癌、及びHER2マーカーを発現する乳癌の治療も企図される。
【0049】
標的細胞殺傷有効量を提供するために治療的に投与される標的放射性医薬品Q+3イオンのセラノスティック量は、通常、患者及び患者が有する癌状況における腫瘍量などの疾患の重症度によって異なる。しかしながら、2~約4サイクルの隔月(ひと月おき、約60日間隔)の約80~約120kBq/kg体重が一般に良好な結果を示す。前立腺癌患者においてDOTAベースのキレート剤を利用する225AC-PSMA-617を使用し、同じ投与計画で3サイクルの約100kBq/kg体重を使用すると良好な結果が得られ、一部の患者では完全寛解に至ることが報告されている。Kratochwil et al., J Nucl Med 2016 57(12):1941-1944; Langbein et al., J Nucl Med 2019 60:13S-19S;及びEder et al., Pharmaceuticals 2022 15:267参照。このような用量は、他の病態の治療的処置のための用量の基礎を提供するために使用することができる。
【0050】
診断目的のために、宿主には、標的放射性医薬品の標的細胞結合(診断)有効量であるセラノスティック量が投与される。その後、宿主は、放射性医薬品が標的細胞に結合するように約1時間~数日、より通常には約1~約4時間の期間維持される。維持時間は、使用する三価同位体の崩壊速度及び標的放射性医薬品のクリアランス速度などのいくつかの要因によって異なり得る。その後、維持された宿主哺乳動物は、陽電子放出のPETスキャン(PETスキャン)又はγ線検出器(例えば、SPECTスキャン)によってスキャンされ、標的細胞に結合した標的放射性医薬品によって放出された放射線を検出及び位置特定し、それにより以下のうちの1以上を特定する:1)標的細胞が宿主内に存在していたこと、2)標的細胞の宿主体内の位置、3)大きさ、場合によっては4)標的化種によって結合された細胞塊の形状。
投与される標的放射性医薬品の診断有効量は、一般には成人の場合約0.5~約6mCiを提供するのに十分な放射性同位体であり、小児の場合は適切に少ない量である。In-111は、一般には、平均的な成人(70kg)への静脈内投与の場合、約111MBq(3mCi)~約222MBq(6mCi)で使用される。患者は、全身PETスキャンのために静脈内投与により約0.5~約2mCiのZr-89を受容することができる。
【0051】
企図される標的放射性医薬品医薬組成物は、注射による非経口投与を意図しているので、このような組成物は電解質を含むべきであり、好ましくはレシピエントとして意図される哺乳動物種のおよその生理学的浸透圧及びpH値を有するべきである。標的放射性医薬品医薬組成物中の一価の電解質イオンの好ましい濃度は、約0.5~約1.5%(w/v)、より好ましくは約0.8~約1.2%(w/v)、最も好ましくは約0.9%(w/v)の濃度である。約0.9%(w/v)の濃度は、ヒトにとってほぼ等張溶液に相当するので、特に好ましい。更に好ましい実施形態では、化学切除性医薬組成物中の電解質は塩化ナトリウムである。
このようなレベルの電解質は、標的放射性医薬品医薬組成物の浸透圧を増加させる。従って、電解質濃度の範囲を指定する代わりに、浸透圧を使用して、組成物の電解質レベルを部分的に特徴付けることができる。組成物の浸透圧は、約100mOsm/kgより大きく、約520mOsm/kg未満であることが好ましく、組成物の浸透圧は約250mOsm/kgより大きいことがより好ましく、約300~約500mOsm/kgであることが最も好ましい。
【0052】
標的放射性医薬品組成物のpH値は、水性ビヒクル中での標的放射性医薬品の溶解度を最大にし、生物組織との適合性を確保するためには、約4~約9であることが好ましい。特に好ましいpH値は約5~約8であり、より好ましくは約6~約7.5である。
標的放射性医薬品医薬組成物のpH値は、当業者に公知の任意の好適な手段によって調節又は調整可能である。組成物は緩衝させることもできるし、又は酸若しくは塩基などの添加によりpH値を調整することもできる。
【0053】
企図される標的放射性医薬品医薬組成物は非経口投与経路を意図しているので、米国薬局方(USP)<71>に適合するために必要なように無菌であること、更には、含まれるの発熱性物質は無視できるレベルであること、そのために、1mL当たり(NMT)10内毒素単位(EU)以下に相当する発熱物質若しくは内毒素レベルで、USP<85>(カブトガニ血球抽出成分(limulus amebocyte)アッセイ)若しくはUSP<151>(ウサギ発熱物質検査)、又は実質的に同等の要件に適合することが更に好ましい。更に、医薬組成物は、USP<788>で定義されるような粒子状物質の含有量を制限する要件(すなわち、容器当たりサイズが10ミクロンを超える場合はNMT 3000粒子、サイズが25ミクロンを超える場合はNMT 300粒子)、又は実質的に同等の要件に適合する要がある。USPからのこれらの参考文献のそれぞれは、参照により本明細書の一部として援用される。
【0054】
企図される標的放射性医薬品組成物を投与することができる例示的哺乳類動物宿主としては、ヒトなどの霊長類;チンパンジー若しくはゴリラなどの類人猿;カニクイザル若しくはマカクなどのサル;ラット、マウス若しくはウサギなどの実験動物;イヌ、ネコ、ウマなどの愛玩動物;又はウシ若しくは去勢牛、ヒツジ、子ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマなどの食用動物などが挙げられる。
企図される医薬組成物は通常、数週間又は数か月にわたって哺乳動物宿主に複数回投与される。上述したように、通常の投与計画は隔月で実施される。投与間の宿主のスクリーニングにより、主治医が更なる治療に関して決定し得るように最新情報が得られ得る。従前に述べたように、種々のAc-225含有標的放射性医薬品の組成物を隔月(約60日間隔)で各100kBq/kgで3回連続投与すると、一部の前立腺癌患者で完全寛解が得られた。
【0055】
非経口組成物の製剤化は、例えば、Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania; 1975及びLiberman, H.A. and Lachman, L.,編, Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980に述べられている。
注射用製剤の場合、例えば、無菌注射用水性懸濁液は、適切な分散又は湿潤化合物及び懸濁材料を使用して公知の技術に従って製剤することができる。無菌注射用調製物は又、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。使用可能な許容可能なビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液、リン酸緩衝生理食塩水などの周囲温度の水性液体がある。液体医薬組成物としては、例えば、非経口投与に適した溶液が挙げられる。水、エタノール、DMSO又はプロピレングリコールを含む溶媒中の、標的放射性医薬品の無菌水溶液又は標的放射性医薬品の無菌溶液は、非経口投与に適した液体組成物の例である。
無菌溶液は、標的放射性医薬品成分を所望の溶媒系に溶解させ、次いで得られた溶液をメンブランフィルターに通してそれを除菌することか、或いは予め滅菌した溶媒に、無菌条件下で無菌化合物を溶解させることによって調製することができる。
【実施例】
【0056】
実施例1
2種類の二官能性キレート剤をMacrocyclics、ダラス、TXから購入した。これら2つの構造を以下に示す。それらのMacrocyclicsカタログ名は:S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸及び3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-4-S-(4-イソチオシアナトベンジル)-3,6,9-三酢酸である。それらには又、未反応前駆体としてそれぞれp-SCN-Bn-DOTA及びp-SCN-Bn-PCTAの名称もある。標的化種とひと度反応すると、より簡単にDOTA及びPCTAと呼ばれ、本明細書ではそのように呼称する。
【化6】
【0057】
モノクローナル抗体(MNPR-101)との結合反応は、金属を含まないバイアル中で行われ、ガラス器具は酸洗浄して潜在的な金属混入を除去した。反応は、2mgの抗体を使用し、二官能性キレート剤のモル反応物比を増加させて行った。
モノクローナル抗体(mAb)MNPR-101は、米国特許第8,101,726号に開示され特許請求されている、ATCC受託番号PTA-8191のヒト化型マウスIgG1、κ、mAb ATN-658である。mAb MNPR-101パラトープアミノ酸残基配列(CDR;相補性決定領域)はATN-658のものと同じであるが、可変領域のフレームワーク部分がヒト化され、Fc部分はヒトIgG1抗体のものである。
PCTAキレート剤の場合、モル反応比は1、3、5、10及び20である。DOTAレート剤の場合、モル反応比は、3、10、25,50及び100である。溶液のpHは、1M Na2CO3で9.2に調整した。反応は37℃で1.5時間行った。
【0058】
分子量カットオフ6,000ダルトンのBio-Rad 10DG重力供給カラムを使用して結合体を精製した。カラムを、0.1M NaCl中の0.1M HEPESバッファー15mLですすいだ。バッファーのpHは7.3であった。反応バイアルの全内容物をカラムの上部に導入し、2mLチューブに回収した。同じバッファーを使用した複数の0.5mL溶出液も別のチューブに採取した。各画分の280nmにおけるUV吸光度を測定して、タンパク質含有画分を決定した。通常、タンパク質は4つの画分に溶出し、それらを合わせた。合わせた画分のタンパク質含量を、Pierce BCAアッセイキットを用いて測定した。生成したタンパク質結合体の濃度は約1mg/mLであった。
各結合体の分析はサイズ排除HPLCで行った。カラムはIGM Tosoh(TSKgelG3000SWx1;Tosoh Bioscience LLC,キングオブプルシア、PA)製であった。移動相はリン酸緩衝生理食塩水であり、流速は1mL/分であった。280nmのUV検出器を使用した。HPLCの結果は、高純度結合体と一致する保持時間約8分の溶出の早いピークを示した。結合体の保持時間は、抗体へのキレート剤の添加と一致して、二官能性キレーターの比率が高くなるとわずかに減少した。
【0059】
実施例2
結合体は、キレート剤とタンパク質のモル反応比を12及び25とした以外は、実施例1の方法により調製した。典型的な反応収率は約30%である。従って、反応では平均CAR数が約4及び8であると予想される。
Ac-225は、ORNLから入手した。反応バイアルには固体Ac-225が含まれており、これを0.2M HClを用いて溶解させた。前節に記載したものと同じ4つの結合体を使用して、Ac-225キレートを調製した。50μgのMNPR-101-PCTAキレート剤結合体に対して50μCiのAc-225の比率を使用し、収率が100%であれば比放射能は1mCi/mgとなるようにした。反応は100μLの容量で行った。この容量には、0.2M HCl中約4μLのAc-225、60μLの0.1M酢酸アンモニウムバッファー、及び36μLのMNPR-101-PCTA結合体又はMNPR-101-DOTA結合体が含まれていた。反応物をpH5.8及び37℃で60分間インキュベートした。
【0060】
反応の放射化学収率は、反応液の50μLアリコートをバッファーで3mLに希釈し、30kDa Amicon(登録商標)フィルターに通すことによって決定した。キレート化されていない小さなAc-225イオンはフィルターを通過するが、結合体はフィルターに保持される。サンプルは、Ac-225の最初の娘核種(Fr-221)を使用して、45分後にGe検出器でカウントした。更に、Acとその娘核種を一晩(約18時間)平衡化した後、ドーズキャリブレーターを使用してサンプルをカウントした。キレート化の結果を以下に示す。
【表2】
上記の表は、両方のPCTA結合体の定量的収率を示すが、DOTA結合体の収率は遙かに低く、12:1と25:1結合体の間に有意な差がある。驚くことに、CAR数が低くても、PCTA結合体は高い収率を示す。
【0061】
PCTAから形成されたキレートの比放射能は1,000μCi/gであったが、DOTAから調製された結合体からのキレートの比放射能は約216~284mCi/gの範囲であった。このDOTAとPCTAの直接比較は、Acのキレート化に関してDOTAキレーターと比較してPCTAキレーターの優位性を示している。
リン酸緩衝生理食塩水を移動相としてサイズ排除カラムを使用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、上記サンプルの純度を決定した。HPLCデータは、濾過法と実質的に同じ結果を示した。
【0062】
実施例3
キレート剤と抗体開始反応液比が12:1である実施例2のMNPR-PCTA結合体をAc-225でキレート化した。反応が定量的であれば、これにより1mCi/mgの比放射能が得られる。キレート剤と抗体のモル反応比を25:1として、MNPR-101のDOTA結合体を用いて同じキレート化反応を行った。更に、キレート剤を添加していないウシ血清アルブミンを陰性対照として使用した。
各反応の総量は150μLであった。実施例2の濾過法を使用して、それぞれの反応の収率を測定した。保持液中の活性のパーセントを反応の収率として使用した。
【0063】
並行研究で、更に35μLの0.1Mジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含む上記の反応を行い、反応液を室温で1時間静置した。この際、収率又は純度を決定するために、上記のようなカウントを使用する濾過法を再度使用した。両方の研究の結果を下表に示す。
【表3】
MNPR-PCTA(12)の初期収率は99.1%であった。DTPA添加後、キレートは活性の約1%を失ったに過ぎなかった。これに対して、MNPR-DOTA(25)の初期収率は8.9%に過ぎず、DTPA添加後には5.6%に低下した。更に、対照BSAは、タンパク質に関連する活性(非特異的結合)の3.4%を示すに過ぎず、DTPA洗浄後には1.3%に低下した。このデータは、より低いCAR比率でもAc-225をキレート化する能力においてPCTAがDOTAを上回っていることと一致している。更に、裸のBSAとの結合が無かったことは、非特異的結合が問題ではないことを示す。
【0064】
実施例4
MNPR-101(MNPR)とPCTAの結合体は、Ac-225を効率的にキレート化することが示されている。直接比較では、Ac-225は、DOTA結合体よりもPCTA結合体に対して遙かに効率的にキレート化した。
Ac-225はORNLから得られたものである。これらの反応に用いた結合体は、従前に調製され、上記野実施例2及び3に記載されている。ウシ血清アルブミン(BSA)は、キレート剤が結合していない陰性対照タンパク質として使用した。MNPR-PCTA(12)は、p-SCN-Bn-PCTA(PCTA)と抗体の開始モル反応比が12:1であるPCTAを用いて作製されたMNPR-101結合体を指す。MNPR-DOTA(25)は、抗体に対してp-SCN-Bn-DOTA(DOTA)キレート剤が25の開始モル反応比でのMNPR-101の結合体を指す。
【0065】
抗体へのAcの組み込みが100%であると仮定して、反応は1mCi/mgを生成することを目標とした。反応は150μLの容量で行い、pH5.8、37℃で60分間インキュベートした。反応後、各反応液の35μLアリコートを35μLの1Mジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)と混合し、室温で1時間静置した。
時間(1、24及び72時間)の関数として、上記のような濾過(カウント)によって、タンパク質と会合したAc-225のパーセントについて溶液を試験した。初期試験の結果を、時間の関数としてタンパク質と会合したAc-225のパーセントとして下表に示す。
【表4】
【0066】
パーセンテージは、合計(フィルター+濾液)と比較したフィルター内の活性の相対量を示す。MNPR-PCTA(12)は、DTPAと1時間及び24時間インキュベートした後、99%及び98%が抗体に結合する(フィルター上)という最良の結果をもたらした。72時間後、純度は73%に低下した。放射線防護剤は添加されておらず、Ac-225が溶液に高い放射線量を与えることに留意されたい。同位体がタンパク質と会合したままであったという事実は、高度の安定性と、調べた期間中に溶液へのビスマス崩壊生成物の損失がほとんどなかったことを示している。
【0067】
対照(BSA)とMNPR-DOTA(25)はどちらも、タンパク質に関連する活性のパーセンテージが有意に低い。溶液の高分解能γ線分光分析は、表1の濾過結果と一致していた。
開始キレーターと抗体のモル反応比が12:1であるPCTAと結合した抗体MNPR-101は、高収率及び高比放射能(1,000μCi/mg)で再現性よくAc-225をキレート化することが示された。材料を過剰なDTPA中でインキュベートすると、製剤が放射線防護剤を含んでいない場合でも、高度な安定性を示した。配位子とタンパク質のモル比の開始比が25:1でDOTAと結合させた同じ抗体との直接比較では、収率が遙かに低く、Ac-225のキレート化に関してDOTAよりもPCTAの利点が示された。裸のBSAを対照として使用したところ、少量の非特異的結合を示した。
【0068】
実施例5
式I(式中、Q+3は125Ac+3である)によって示されるような、mAb MNPR-101に結合したPCTAによってキレート化されたAc-225を含む標的放射性医薬品を、前述のように調製した。キレーターと抗体の開始モル比は12:1であった。50μCiのAc-225を50μgのMNPR-PCTA結合体と混合し、pH値を37℃で60分間、酢酸アンモニウムで5.8に調整した。反応の総用量は100μLであった。
25μL容量の反応混合物を、サイズ排除カラムを使用した高速液体クロマトグラフィーで分析した。移動相は、pH=7.4の0.1Mリン酸バッファーであり、流速は1mL/分であった。検出は、280nmでのUV吸収よって、又、放射測定検出器によっても行った。
【0069】
UV及び放射測定検出器の評価により、タンパク質と共溶出する放射能が示された。サイズ排除カラムは、化学物質をサイズに基づいて分離する。Ac-225溶液からの放射能の大部分はその放射性娘核種に由来するため、タンパク質に結合していない放射性金属が後に溶出すると予想される。小分子と一致する保持時間の放射性シグナルは無かった。
この結果は、Bi-213などの放射性Ac-225娘核種をキレートするMNPR-101-PCTA結合体と一致する。理論に拘束されるものではないが、PCTA結合体の優れた結合特性は、キレーターがAc-225だけでなく、三価及び/又は非放射性であるBi-213などの娘核種と結合する結果であると考えられる。
【0070】
ビスマスイオンは、ビスマスイオンとアクチニウムイオンの両方を保持して沈殿し得る極めて不溶性の化合物を形成する可能性がある。mAb結合PCTAキレート化官能基によるビスマス化合物沈殿の防止は、本発明のもう1つの利点を提供する。
mAb MNPR-101に結合されたキレート剤としてDOTAを用いる、同様のサイズ排除カラム研究では、異なる結果が示された。このように、DOTAを使用する場合、オンライン放射線検出器では、タンパク質に関連するシグナルはほとんど見られないこと、及び活性の大部分はタンパク質に結合していない放射性金属を示す後から溶出するピークにあることを示す。
【0071】
実施例6
PCTA結合体を、ヒト化mAb MNPR-101を用いて、2つの他の例示的マウスモノクローナル抗体:mAb ATN-616及びmAb ATN-292と並行して調製した。キレート剤とタンパク質のモル比12:75を用いて、続いてのAc-225のキレート化を最適化した。
MNPR-101及びATN-616をPCTAと、12:1のモル反応比で結合させ、ATN-292は、75:1の過剰で結合させた。溶液のpH値を1M NaH2CO3及び0.2M HClで9.2に調整した。反応は37℃で1.5時間行った。
【0072】
このようにして形成された結合体を、Bio-Rad 10DG重力供給カラム(6,000ダルトン(Da)分子量カットオフ)を用いて精製し、各結合体を0.1M酢酸アンモニウムバッファーpH5.77で溶出させた。溶出画分(0.5mL)を1.5mLの金属非含有チューブに採取し、280nmでUV吸光度を測定した。溶出液中のタンパク質濃度によって3又は4画分を合わせ、Amicon(登録商標)濃縮器(30kDa)を用いて再濃縮した。合わせた画分を、Pierce(商標)BCAアッセイキット(Thermofisher;最終タンパク質濃度は約2~3mg/mL)を用いて分析した。
前述のように、サイズ排除高速液体クロマトグラフィーを利用して、リン酸緩衝生理食塩水溶媒及び流速1mL/分で結合体の純度を分析した。HPLC結果により、裸の抗体から観察される予想される約8分のピークと、二官能性キレーターPCTAの添加と一致した結合体の保持時間(Rt)の減少が明らかになった。
【0073】
結果は、結合体とそれぞれの裸のmAbの間で観察された保持時間の増加(ΔRt)は、結合体のその後のAc-225をキレートする能力に関連しており、ΔRtが大きいほど抗体に結合したキレート剤の数が多いことに相関することを示唆する。3種類の結合体と裸の抗体の保持時間の違いを以下に示す。
【表5】
【0074】
実施例7
固体Ac-225を含む反応バイアルをORNLから入手し、0.2M HClを用いて溶解させた。実施例6からの3種類の結合体を用いて、Ac-225キレートを調製した。全ての反応で、100μgのmAb-PCTAキラント結合体に対して100μCiのAc-225の比率を使用し、収率が100%であれば、比放射能は1mCi/mgとなるようにした。反応は、0.2M HCl中の約10μLのAc-225、60μLの0.1M酢酸アンモニウムバッファー、及び40μLのmAb-PCTA結合体を含む約110μLの容量で行い、これは各タンパク質濃度に応じ、各タンパク質濃度に対して正規化した。反応液はpH5.7、37℃で60分間インキュベートした。
【0075】
各キレート化反応の25μLアリコートを、0.1M酢酸アンモニウムバッファーを用いたBio-Rad 10DG重力供給カラムで0.5mL画分を溶出することにより精製した。Ac標識結合体は3~4の「ピーク画分」で溶出すると予想され、これをカラムに残った活性と合計して放射化学収率を決定する。最低5時間後(Acとその娘核種との平衡化させるめ)、画分とそれぞれのカラムをドーズキャリブレーター(Capintec、設定番号086)で測定した。ドーズキャリブレーターで測定した各キレート化の重力供給画分の結果を下表に示す。
【表6】
【0076】
各反応のピーク画分を精製後24時間と48時間の時点で測定し、キレート剤がAc-225娘同位体を保持する能力を決定した。ピーク活性が時間の関数として増加することは、キラントが娘同位体を効果的に制御しなかった証拠となる。しかしながら、活性がAc-225の分解と一致する速度で低下した場合、キラントがAc-225とその娘同位体を保持できたことを示唆する証拠となる。
下表に見られる結果は、各ピーク活性が時間の関数として放射能上昇を示さないことから、3つのキレート系がAc-225娘同位体を効果的に制御している証拠となる。
【表7】
【0077】
実施例8
各キレート化反応の20μLサンプルを、無勾配法(1×PBS溶媒、pH7.4)を用いるHPLCにより、280nmのUV吸収と放射測定検出器による検出法を用いて分析した。毎分1mLの画分を採取し、平衡化(5時間を超える)させた後、ワイドウィンドウのNaI検出器で測定した。
実施例5で観察されたように、HPLCの結果は、3つの反応からのタンパク質と共溶出する放射能を示した。低分子と一致する保持時間の放射性シグナルはなく、PCTAキレーターがAc-225及びその娘核種と結合するという推論を更に支持した。各反応収率の結果を下表に示す。
【表8】
【0078】
ドーズキャリブレーターで分析した場合の3つの反応のピーク収率は、実施例7に記載したように、それぞれ80.6%、77.0%、及び75.5%を示すが、HPLC精製及びNaI検出を使用して分析した場合、これらの同じ反応は、それぞれ96.2%、92.7%、及び97.8%の反応収率を示す。このばらつきは、サイズ排除カラムに残存する活性を測定する能力がないため、Bio-Rad重力供給カラムとドーズキャリブレーター値から、より控えめな収率を観測することに起因すると理解される。
記載された方法と結果から、対象とする二官能性キレーターであるPCTAは、ヒト化mAb MNPR-101だけでなく、2種類のマウスモノクローナル抗体mAb ATN-616とmAb ATN-292のような他の抗体と結合した場合にも同様に、Ac-225と結合する顕著な能力を示すことが示唆される。
【0079】
実施例9
マウスmAb ATN-658の可変(V)領域アミノ酸残基配列のヒト化
mAb ATN-658の軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)ポリペプチドのコンセンサスアミノ酸配列(一文字コード)は、Parry and Mazarの米国特許第8,191,726号に示され、ここでは繰り返さないが、参照により本明細書の一部として援用される。ATN-658及び可変領域を発現するハイブリドーマから抽出された全RNAからcDNAを、標準的な技術を用いて、クローニングし、増幅させ、配列決定した。
上記のStudnickaらにより示されている手順に従って、ヒトVκ軽鎖サブグループ2(VK2)及びヒト重鎖サブグループ1(VH1)コンセンサス配列を用いた。コグネイトマウスシグナル配列は保持した。
【0080】
軽鎖と重鎖の可変領域それぞれについて2つの配列が調製された。各鎖の一方の配列は低リスクの変化のみを含み、VK2領域とVH1領域については低リスクと中程度のリスクの両方の変化を含む他方配列を作製し、合計4つの配列を準備した。軽鎖フレームワーク配列には10個の低リスク変化と1個の中リスク変化が導入され、重鎖フレームワーク配列には11個の低リスク変化と5個の中リスク変化が導入された。低リスクの残基位置の変化は、溶媒に曝されるが抗原結合又は抗体構造には寄与しないもので、結合親和性にはほとんど又は全く影響を与えずに免疫原性を低下させる可能性が高い。
これらのアミノ酸残基配列は、コドン(チャイニーズハムスター卵巣細胞)及び発現の最適化のためにBlue Heron Biotech LLP(ボセル、WA)へ送った。最適化されたDNA配列を受け取り、遺伝子合成のためにBlue Heronに送り返した。
【0081】
一過性発現ベクターの構築
コドン及び発現に最適化された低リスク及び低+中リスクのHuman Engineered(商標)軽鎖及び重鎖を、ヒトκ及びγ-1定常領域モジュールを含むXOMA独自の一過性抗体発現ベクターにインフレームでクローニングした。発現を開始するためにDNA配列を確認した(ELIM Biopharmaceuticals, Inc.、ヘイワード、CAにて)。
【0082】
Human Engineered(商標)ATN-658抗体の生産
4つのHE(商標)ATN-658変異体(HE(商標)ATN-1、HE(商標)ATN-2、HE(商標)ATN-3及びHE(商標)ATN-4と呼ばれる)を、HEK293E細胞における一過性トランスフェクションにより生産した。XOMAの一過性トランスフェクションアプローチは、2005 ASCB Annual Meetingのポスタープレゼンテーションに詳細に記載されている。
簡単に述べれば、2リットルの振盪フラスコを用い、軽鎖と重鎖を、IS293培地(Irvine Scientific,アーバイン,CA)で増殖させたXOMAの懸濁適応HEK293E細胞に共導入した。振盪フラスコで24時間後、200mlのトランスフェクト細胞を遠心分離し、40mlの新鮮培地に再懸濁させ、生産のためにインテグラフラスコ(Wilson Wolf Manufacturing,Inc.、ニューブライントン、MN)に移した。7日間インキュベートした後、細胞懸濁液をIntegraフラスコから取り出し、遠心分離し、培養上清を保持した。培養上清中の抗体をプロテインAスピンカラム(Pro-Chem)で精製し、PBSで透析後、濃縮し、濾過除菌した。
【0083】
これら4つの抗体の可変領域構成配列を下記の表1に示す。
【表9】
【0084】
濃度は1.52の消光係数を用いてA280により決定した。タンパク質はSDS-PAGE(4~20%)により純度を、LALアッセイを用いて内毒素を分析した。精製結果は、全ての抗体調製物が1mg/ml以上の濃度を有し、90%を超える純度で、低レベルの内毒素(<1EU/mg)であったことを示している。
【0085】
Biacoreアッセイ法によるHuman Engineered(商標)ATN-658抗体の親和性の評価
マウスモノクローナル抗体ATN-658及びHuman Engineered(商標)ATN-658変異体抗体の動態解析は、Biacore 2000(登録商標)表面プラズモン共鳴装置分析機(ウプサラ、スウェーデン)で行い、抗体-表面相互作用に基づくセンソグラムを作成した。動態決定は捕捉法を用いて行った。
マウス親mAb ATN-658をPBSで2mg/mLに希釈し、ウサギ抗マウス捕捉表面上に注入した。HE(商標)変異体は1mg/mLに希釈し、プロテインA/G表面上に注入した。抗体注入は100~200RUの抗体濃度になるように最適化した。
可溶性UPAR(suPAR)の3倍連続希釈液を6つ、ランニングバッファー(PBS)で調製し、各希釈液を25℃にて無作為な順序に3回注入した。バッファーの注入は、実施中、均等に行った。バルクシフト又は非特異的結合を補正するため、サンプル注入はブランクフローセルとバッファー注入に関して二重参照とした。データはBiacore(登録商標)のBiaEvaluationソフトウエアで解析した。センサーグラムは、1:1のラングミュアモデルを用いてフィッティングした。
【0086】
ヒト化mAb MNPR-101
mAb ATN-658と比較して、mAb MNPR-101の6つのCDRに到達する際に、mAb ATN-658のCDR配列(CDR L1及びCDR H2)と比較して、mAb MNPR-101のVK2及びVH1領域のそれぞれの1つのCDRにおいて1残基が変更された。mAb MNPR-101のパラトピック領域に存在する各可変領域の相補性決定領域(CDR)を以下の表2に示す。
【表10】
【0087】
配列
mAb MNPR-101のFab部分のVL及びVH領域並びにCL及びCH領域の配列、又、両鎖の可変領域の低リスク配列(HE(商標)ATN-1)も以下に示す。
配列番号1-[mAb MNPR-101 VL]
Asp Val Val Met Thr Gln Ser Pro Leu Ser Leu Ser Val Thr Ile Gly Glu Pro Ala Ser Ile Ser Cys Arg Ser Ser Gln Ser Leu Leu Asp Ser Asp Gly Lys Thr Tyr Leu Asn Trp Leu Leu Gln Lys Pro Gly Gln Ser Pro Gln Arg Leu Ile Tyr Leu Val Ser Lys Arg Asp Ser Gly Val Pro Asp Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Lys Ile Ser Arg Val Glu Ala Glu Asp Val Gly Val Tyr Tyr Cys Trp Gln Gly Thr His Phe Pro Leu Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Leu Glu Ile Lys
配列番号2-[HE(商標) ATN-1 VL]
Asp Val Val Met Thr Gln Ser Pro Leu Ser Leu Ser Val Thr Ile Gly Glu Pro Ala Ser Ile Ser Cys Arg Ser Ser Gln Ser Leu Leu Asp Ser Asp Gly Lys Thr Tyr Leu Asn Trp Leu Leu Gln Lys Pro Gly Gln Ser Pro Lys Arg Leu Ile Tyr Leu Val Ser Lys Arg Asp Ser Gly Val Pro Asp Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Lys Ile Ser Arg Val Glu Ala Glu Asp Val Gly Val Tyr Tyr Cys Trp Gln Gly Thr His Phe Pro Leu Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Leu Glu Ile Lys
配列番号3[mAb MNPR-101 CDR L1]
Arg Ser Ser Gln Ser Leu Leu Asp Ser Asp Gly Lys Thr Tyr Leu Asn
配列番号4[mAb MNPR-101 CDR L2]
Leu Val Ser Lys Arg Asp Ser
配列番号5mAb[MNPR-101 CDR L3]
Trp Gln Gly Thr His Phe Pro Leu Thr
配列番号6[LCシグナル配列]
MSPAQFLFLL VLWIRETNG
配列番号7[mAb MNPR-101 LC定常領域配列]
RTVAAPSVFI FPPSDEQLKS GTASVVCLLN NFYPREAKVQ WKVDNALQSG NSQESVTEQD SKDSTYSLSS TLTLSKADYE KHKVYACEVT HQGLSSPVTK SFNRGEC
配列番号8[mAb MNPR-101低+中リスク-VH]
Glu Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Pro Glu Val Lys Lys Thr Gly Ala Ser Val Lys Ile Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Ser Phe Thr Ser Tyr Tyr Met His Trp Val Arg Gln Ala His Gly Gln Gly Leu Glu Trp Ile Gly Glu Ile Asn Pro Tyr Asn Gly Gly Ala Ser Tyr Asn Gln Lys Ile Gln Gly Arg Ala Thr Phe Thr Val Asp Thr Ser Thr Ser Thr Ala Tyr Met Glu Phe Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Ser Ile Tyr Gly His Ser Val Leu Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
配列番号9[HE(商標) ATN-1 VH]
Glu Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Pro Glu Val Val Lys Thr Gly Ala Ser Val Lys Ile Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Ser Phe Thr Ser Tyr Tyr Met His Trp Val Lys Gln Ala His Gly Gln Gly Leu Glu Trp Ile Gly Glu Ile Asn Pro Tyr Asn Gly Gly Ala Ser Tyr Asn Gln Lys Ile Lys Gly Arg Ala Thr Phe Thr Val Asp Thr Ser Thr Arg Thr Ala Tyr Met Glu Phe Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Ser Ile Tyr Gly His Ser Val Leu Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
配列番号10[mAb MNPR-101 CDR H1]
Gly Tyr Ser Phe Thr Ser Tyr Tyr Met His
配列番号11[mAb MNPR-101 HC CDR H2]
Glu Ile Asn Pro Tyr Asn Gly Gly Ala Ser Tyr Asn Gln Lys Ile Gln Gly
配列番号12[mAb MNPR-101 HC CDR H3]
Ser Ile Tyr Gly His Ser Val Leu Asp Tyr
配列番号13[mAb MNPR-101 HCシグナル配列]
MGWIWIFLFL LSGTAGVHS
配列番号14[mAb MNPR-101 HC定常領域配列]
ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKRVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSREE MTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPGK
コード核酸を発現ベクターに挿入するために、SalI制限部位を重鎖と軽鎖のそれぞれのコードされたN末端の上流にインフレームで配置し、又、XhoI部位をそれぞれの鎖のコードされたC末端の下流にインフレームで挿入した。
【0088】
MNPR-101の生産
モノクローナル抗体候補の重鎖と軽鎖をpUC19プラスミドにパッケージし、モノクローナル抗体をコードするcDNAインサートをクローニングし、重鎖と軽鎖を発現ベクターに挿入した。
配列の確認後、DHFR欠損CHO細胞株DUX B11を、軽鎖及び重鎖含有ベクターとカチオン性リポソーム混合物(リポフェクタミン(登録商標)2000;Invitrogen Corp.、カールスバッド、CA)でトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、ジェネティシン(G418)及び20nMメトトレキサート(MTX)存在下、プリンを含まない増殖培地を用いて96ウェルディッシュで細胞をサブクローニングした。
【0089】
選択後、全てのサブクローンを、hIgGベチルELISAキットを用いてスクリーニングした。12の最良サブクローンそれぞれについて、3つのバイアルを凍結した。次いで、上位6つの最良産生サブクローンを、漸増量の、DHFRの阻害剤であるメトトレキサート(MTX)を添加した培地に移した。MTX濃度は、選抜過程で20から1,000nMまで、その後1,500nM MTXまで順次増加させた。増殖したMTX耐性クローンをELISAによりスクリーニングした。最初の一連の増幅の後、1,000nMのMTXを含む培地で2つの最高発現集団サブクローンが得られた。これら2つのクローンは、1,500nM MTXまで増幅された後、1,000nM及び1,500nM MTXでサブクローニングされた。これらのサブクローンは現在6ウェルプレートに拡大され、数日中にELISAによりスクリーニングされる予定である。上位2~3の最良サブクローンは、無血清培地に適応させた後、研究用細胞バンクの作製のために拡大される予定である。
【0090】
結果
マウスmAb ATN-658と上述のHuman Engineered(商標)ATN-658抗体の配位子結合動態を1回測定した。各アッセイのセンサーグラムの結果から、一過性発現抗体は全てmAb ATN-658と同様の親和性を示し、又、それら自体の中でも同様の親和性を示した。2本のVL鎖と2本のVH鎖の4つの組合せの結果を表3に示す。
【表11】
【0091】
実施例10
企図されるPCTA-MNPR-101キレーター標的化種を用いたIn-111のキレート化特性及び安定性の初期研究。従って、タンパク質分析によって4.0mg/mLを含むpH値9.2の水溶液(1M NaHCO3及びHCl)中で新たに調製したPCTA-MNPR-101(12:1で作製)を37℃で1.5時間インキュベートした。結合体(220.0mL MNPR-101-PCTA)は、PD10カラムに通し、0.1M酢酸アンモニウムで溶出させることにより精製した。結合体を含むサンプルを回収し、30kDaアミコン(登録商標)濃縮機を用いて濃縮した(4000rpm、20分間)。
3つの水性キレート化反応が設定され、それぞれ10mCi/mgの目標比放射能に対して約200μCiの放射能を持つ。それぞれをBWXT Medical、オタワ、ON、カナダから入手した塩化In-111と混合した。全ての反応物は4℃で保存し、24時間後、48時間後、及び72時間後に安定性を測定した。
【0092】
この文脈で安定性とは、放射性イオンの経時的キレート化の維持である。安定性は、比較のために重力供給SECカラム(PD10 6,000ダルトンカットオフ)、HPLC及びTLCによって決定した。
目標比放射能10mCi/mgに対して、それぞれ約200μCiの放射能を持つ3つの水性キレート化反応を設定した。これらは以下の通りであった。
1)37℃で30分間のインキュベーション 4℃で72時間の保存
2)室温で30分間のインキュベーション 4℃で24時間の保存
3)室温で1.5時間インキュベーション 4℃で48時間の保存
【0093】
この初期研究の結果を下表に示す。
【表12】
この初期研究の結果は、10mCi/mgの目標比放射能で比較的高い収率のキレート化が得られたことを示した。収率を高めるために条件を最適化できる可能性が高い。3つの異なる分析方法のそれぞれで、キレートが形成されたことが示された。インジウム111の半減期が約2.8日であることを考えると、妥当なキレート化In-111の安定性が観察された。
【0094】
本明細書に引用される特許、特許出願、及び論文はそれぞれ、参照により援用される。冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、1以上を含むものとする。
前述の説明及び実施例は例示を意図したものであり、限定として理解されるべきではない。本発明の趣旨及び範囲内で更に他の変形が可能であり、それら自体、当業者に容易に提示されるであろう。
【配列表】
【国際調査報告】