(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】3Dプリントのための熱伝達装置
(51)【国際特許分類】
B22F 12/44 20210101AFI20240514BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240514BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240514BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20240514BHJP
B22F 10/36 20210101ALI20240514BHJP
【FI】
B22F12/44
B33Y30/00
B22F10/28
B22F12/41
B22F10/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572506
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021068444
(87)【国際公開番号】W WO2022248069
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021000013400
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523374183
【氏名又は名称】プリマ アディティブ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリオ,ファビオ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA44
(57)【要約】
【要約】
不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)の雰囲気を有する環境内の作業チャンバ内で使用される、3Dプリントのための熱伝達装置(100)が記載され、熱伝達装置は、複数の独立したレーザ光源と、予め確立された作業領域内に電磁放射線を伝達するように設計されたLEDダイオードのアレイとからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリント用の熱伝達装置であって、
熱を生成することが可能であり、作業面のプレートの所定の領域に電磁放射線のビームを伝達するように設計された紫外の独立したレーザ光源のセットであって、前記独立したレーザ光源が、熱勾配を導入することによって前記作業面の前記プレートの前記所定の領域の温度を変化させることができ、前記独立したレーザ光源が、光偏向システムの両側に接続されている、紫外の独立したレーザ光源のセットと、
前記光偏向システムに隣接し、前記作業面に配置された金属粉の温度を変化させることができる、紫外のLEDのアレイと、を含む、3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項2】
前記独立した光源が、前記光偏向システムに接続された複数のシステムにおいてスケーラブルであり、モジュール式であり、3Dプリントのプロセスを実施するのに必要な前記作業面内の作業領域に応じてサイズ決定されることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項3】
前記システムが、少なくとも4つのレーザを用いて設計され、その各々が、
3Dプリントプロセスを実行するためのレーザエネルギーの低減および製造された物体の残留応力の低減を可能にするのに必要な、前記プレートの表面層および/または前記作業面内の金属粉末の温度を上昇させることと、
型に入れて作られた要素の第1の溶融層が前記プレートに付着することを可能にすることと、
ができる電磁放射のビームを放出することを特徴とする、請求項2に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項4】
前記独立したレーザ光源が、215~600 nmの波長スペクトルの電磁放射線を放出することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項5】
前記独立したレーザ光源が、単一ユニット当たり50 Wより大きい電力を有することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項6】
UV-VIS波長範囲の前記LEDのアレイが、前記プレートの前記所定の領域に対して35°の傾斜角と、50 Wよりも大きい電力と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項7】
前記システムが、
-前記プレートおよび/または金属粉を予熱する段階と、
-3Dプリントプロセス、またはプロセスレーザからの電磁放射の放出と同時の3Dプリントプロセスの段階と、
-3Dプリントの後工程の段階と、
で電磁放射線のビームを放出することを特徴とする、請求項2に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項8】
前記独立したレーザ光源が、3Dプリントの適用中に前記プレートの前記所定の領域に隣接する作業セクタを前記電磁放射線に曝露するのに必要な、X軸およびY軸に沿った回転運動を実行するように設計されることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【請求項9】
3Dプリントの適用中の、前記独立した光源および/または前記所定の領域に対して35°の傾斜角を有するUV-VIS波長範囲のLEDのアレイによる前記電磁放射線からの前記プレートの照射が、より高い処理速度で、残留応力および欠陥が低減された低電力レーザ光源を用いての3Dプリント動作を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリント用の熱伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の3Dプリント用の熱伝達装置に関する。特に、粉末床溶融結合又は粉末床技術を用いた3Dプリントのための熱伝達装置が示されている。
【背景技術】
【0002】
3Dプリント(AM)は、従来のサブトラクティブ技術(チップ除去、切断、および穿孔のための機械加工)とは対照的に、デジタルモデルから開始する3Dプリントプロセスのセットであり、機械制御システムに統合されたソフトウェアによって、またはオンラインサービスによって層に分割される3D CADモデルを使用して、異なるタイプの材料、特に金属、プラスチック、または複合部品の堆積プロセスまたは焼結のために工作機械によって処理される、結果として生じる層のスキームが得られる。
【0003】
この技術の主な特徴は、プロジェクト図面によって要求されるように、最終部品の形状に非常に近い形状を有する構成部品を製造することを可能にする製造プロセスであることである。AMファミリーでは、レーザビームを使用する粉末床の選択的溶融/焼結(選択的レーザビーム溶融(SLBM)又は選択的レーザビーム焼結(SLBS)、又は粉末床溶融又はPBFとしても知られる)、レーザビームによる金属堆積(レーザビーム金属堆積(LBMD))、及び選択的電子ビーム溶融(SEBM)などのいくつかの異なる技術を識別することができる。
【0004】
粉末床またはPBF技術では、レーザビームは、3次元部品の構築のためにコンパクトな材料が得られなければならない特定のゾーンまたは所定の領域においてのみ金属粉を溶融するのに必要な高電力密度の加熱源として使用される。レーザビームの使用に関連する利点は、レーザビームが、典型的には直径30μm程度の小さい寸法またはスポットに集束され得、したがって、粉末の急速な溶融および作製される部品の表面仕上げに関して良好なレベルの精度をもたらす高い出力密度を保証することである。これらの特徴は、航空宇宙から医療、自動車から宝飾品までの様々な分野における部品の製造のための、粉末床技術の工業市場へのアクセスを可能にした。特に、従来の製造技術と比較して、粉末床技術の大きな柔軟性を前提として、非常に高いレベルの部品カスタマイズを達成することが可能である。
【0005】
製造プロセス中、層の溶融は、レーザ源を使用して行われ、場合によっては、レーザ源の出力は、欠陥および応力が形成されない限り、粉末の層を溶融するのに十分ではない。残留物が生じ、系の生産性が損なわれる。
【0006】
製造プロセスは、主に、放射線-物質相互作用、又は電磁放射線のエネルギーの材料の吸収特性、及び粉末床の温度に依存し、特に、材料の吸収特性は、密度、熱伝導率、比熱、及び放射率などのパラメータを含み、材料自体の温度に従って変化し、粉末床又は粉末床溶融結合における3Dプリント技術において、材料の処理プロセスを決定する。
【0007】
レーザ出力、粉末床上のレーザ走査速度、レーザビームの形状、および使用される材料などのプロセスパラメータの選択は、製造される部品の構造および表面品質、ならびにシステムの生産性に影響を及ぼし、これは、高い空間分解能、毛管プロセス制御、ならびに粉末床の前処理および新たに溶融された材料の後処理を実行する能力などの利点のおかげで、産業分野、特に現在鋳造および/または熱間成形および/またはダイカストによってカバーされている部門におけるこのタイプの機械の使用にとって決定的になる。
【0008】
溶融プロセスは、複数の光学および/または走査システムを用いて作業チャンバ内の1つまたは複数のレーザ源によって、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)の雰囲気を有する環境内で行われ、その内部には、粉末の付加を制御し、したがって部品の実現、選択的溶融プロセスから生じる煙霧の吸引、および製造プロセスを支援するためのガスの注入を保証することを可能にするいくつかのハンドリングデバイスがある。
【0009】
追加の電磁放射源を使用することにより、低出力レーザを使用して最終部品の層内の機械的応力を低減するために、最終部品が生成される表面、及びダストを加熱することが可能になる。
【0010】
例えば、コーティング装置内でマイクロ波及び/又はIR放射及び/又はUV放射によって粉末を加熱するためのシステムを備える、粉末層を溶融することによって部品を製造するための装置に関するEP-A1-3010673、又は、凝固段階中の熱伝導を調節するために、マイクロ波によって粉末床の温度を制御するためのシステムに関するEP-A1-3200942、又は、粉末が堆積されるプレートの下に配置されて、粉末を加熱するための放射システムに関するEP-A1-3285988、又は、UVランプを含むことができる電子ビームの入射領域における静電荷nを低減するための放射源も含む、粉末の凝固プロセスが電子ビームによって行われる3次元物体を実現するための方法に関するWO-A1-2019185642、及び、粉末が配置されるプレートを下から加熱するためのIR内のランプを有する放射システムに関するWO-A1-2019091801などの、3Dプリントシステムの粉末を加熱するための多くのシステムが当技術分野で知られている。
【0011】
従来技術の主な欠点は、装置が、粉末溶融/焼結プロセスのためのレーザビームの活性化の前及びその間では動作できるが、例えばその後では動作できず、またワークプレートの表面層を加熱することができない加熱手段を備えるシステムに関する。
【0012】
さらに、これらは、プレートおよび/またはレーザ金属粉末を加熱するのに適した供給源に関して、特に粉末床内の層の局所的な処理に関して、容易に拡張可能ではない装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、予め確立された処理領域に沿って配置された電磁放射ビームを生成する複数のレーザ源の使用を可能にするスケーラブルシステムからなり、各能力領域に対してある程度の自由度で動作することができ、高い生産速度と組み合わされて作成される物体の高品質を保証する、3Dプリントのための熱伝達装置によって、上述の従来技術の問題を解決することである。
【0014】
本発明の別の目的は、最終部品のより良好な機械的特性、サイクル時間の短縮、及び最終製品の品質の向上に有利な、溶融時間の短縮である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記および他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるように、請求項1に記載されたものなどの3Dプリントのための熱伝達装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態および重要な変形形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0016】
添付の特許請求の範囲はすべて、本説明の不可欠な部分を形成することが理解される。
【0017】
添付の特許請求の範囲から明らかなように、本発明の範囲から逸脱することなく、記載されたものに対して無数の変形および修正(例えば、形状、寸法、配置、および同等の機能を有する部品に関する)を行うことができることは直ちに明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、添付の図面を参照して、非限定的な例として提供されるいくつかの好ましい実施形態によってより良く説明される。
【0019】
【
図1】本発明による3Dプリント用の熱伝達装置(100)を示す図である。
【
図2】本発明による3Dプリント用の熱伝達装置(100)のレーザ源の配置の図である。
【
図3】本発明による3Dプリント用の熱伝達装置(100)の対応する作業領域におけるLED軌跡の側面図である。
【
図4】本発明による3Dプリント用の熱伝達装置(100)のLEDの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
3Dプリント用の熱伝達装置(100)は、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス等)の雰囲気を有する環境内の作業チャンバ内で使用されるように設計され、複数の独立したレーザ源と、予め確立された作業領域に電磁放射線を伝達するように設計されたLEDダイオードのアレイと、からなり、前記3Dプリント用の熱伝達装置(100)は、拡張可能であり、各能力セクタで独立して動作することができ、高い生産速度と組み合わされた高品質の製造対象物体を保証する。
図1及び
図3から分かるように、熱伝達装置(100)は、熱を生成することが可能であり、作業面(105)のプレート(104)の所定領域(103)に電磁放射線ビーム(102)を伝達するように設計された独立した光源(101)のセットであって、前記独立した光源(101)は、熱勾配を導入することによって前記作業面(105)の前記プレート(104)の前記所定領域(103)の温度を変化させることができ、前記独立した光源(101)は、光偏向システム(108)の両側に接続されている、独立した光源(101)のセットと、光偏向システム(108)に隣接し、前記作業面(105)に配置された金属粉の温度を変化させることができるパワーLED(301)のアレイと、からなる。
【0021】
有利には、
図1から分かるように、前記独立した光源(101)は、光偏向システム(108)に接続された複数のシステム(201)においてスケーラブルであり、モジュール式であり、3Dプリントプロセスを実施するのに必要な前記作業面(105)内の作業領域に応じてサイズ決定される。
【0022】
さらに、
図2から分かるように、前記システム(201)は、1つまたは複数のレーザを用いて設計され、その各々は、3Dプリントプロセスを実行するためのレーザエネルギーの低減および製造された物体の残留応力の低減を可能にし、ならびに印刷された要素の第1の溶融層が前記プレート(104)に付着することを可能にするのに必要な、前記プレート(104)の表面層および/または前記作業面(105)内の金属粉末の温度を上昇させることができる電磁放射のビーム(102)を放出する。特に、UV放射による予熱は、構築プラットフォームが移動軸にしっかりと固定されていない比較的薄い金属ブロックである装置において特に好ましく、構築の体積を変更する必要なく印刷に利用可能な異なるプラットフォームを有することを可能にする。
【0023】
3Dプリント用の熱伝達装置(100)は、215~600 nmの波長スペクトルの電磁放射線(102)を放出する独立した光源(101)のセットを備え、前記独立した光源(101)は、単一ユニットに対して50 Wより高い電力を有する。
【0024】
さらに、3Dプリント用の熱伝達装置(100)は、有利には、前記プレート(104)の前記所定の領域(103)に対して35°の傾斜角と、50 Wよりも大きい電力と、を有するUV-VIS波長範囲のLED(301)のアレイを備える。UVレーザ光源とLEDアレイの間の相乗効果は、処理される金属粉末のタイプと、粉末の層の融合プロセスを実行するために必要とされるエネルギーの量とに基づいて、ワークプレートおよび/または粉末の予熱および後処理動作を実行することを可能にする。
【0025】
さらに、前記熱伝達システム(201)および(301)は、
-前記プレート(104)および/または金属粉を予熱する段階と、
-3Dプリントプロセス、またはプロセスレーザからの電磁放射の放出と同時の3Dプリントプロセスの段階と、
-3Dプリントの後工程の段階と、
で電磁放射ビーム(102)を放出することができる。
【0026】
有利には、前記独立したレーザ光源(101)は、
図1に示すように、3Dプリントの適用中に前記プレート(104)の前記所定の領域(103)に隣接する作業セクタを前記電磁放射(102)に曝露するのに必要な、X軸およびY軸に沿った回転運動を実行するように設計することができる。あるいは、ビーム成形システムまたはレーザビーム修正器が、放射されたビームを加熱される表面に適合させる。
【0027】
さらに、3Dプリントの適用中の、前記独立した光源(101)および/または前記所定の領域(103)に対して35°の傾斜角を有するUV-VIS波長範囲のLEDのアレイによる前記電磁放射線(102)からの前記プレート(104)の照射は、より高い処理速度で、残留応力および欠陥が低減された低電力レーザ光源を用いて3Dプリント動作を実行することを可能にする。
【0028】
本発明によれば、3Dプリント用の熱伝達装置(100)は、外部放射によって造形プラットフォームの上面を予熱及び加熱することを可能にし、このプロセス中に、新たに堆積された粉末の層は、粉末を溶融するために使用されるレーザで層を処理する前に、融点未満の高温に予熱される。
【0029】
この解決策を使用する主な利点は、
-より少ないレーザエネルギーで様々な層を加工することを可能にする前処理と、
-製造された部品が損傷するのを防ぐための後処理と、
-サイクル時間を短縮することを可能にするレーザプロセス中の処理と、
-ワークピースに固有の熱処理と、
-残留応力および欠陥の減少と、
に関する。
【国際調査報告】