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特表2024-519979抗ウイルス剤としての新規アザインドール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤としての新規アザインドール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240514BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
A61K31/496
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/20
A61P29/00
A61P25/04
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572557
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2022050979
(87)【国際公開番号】W WO2022243650
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2105359
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】521240402
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリアン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】クロップ,カミーユ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA082
4C084ZA212
4C084ZB072
4C084ZB082
4C084ZB092
4C084ZB112
4C084ZB332
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB09
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための、以下の式(I)の化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくはそれらの混合物:
【化1】

(式中、
Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
Yは、水素原子、-CHOH、-CH=NOH、-COH基、任意に一置換又は多置換されたアリール、任意に一置換又は多置換されたヘテロアリール、及び-L-(CH)p-Wから選択され、
-Lは、-C(O)NH-、-CHNH-、-NHC(O)-、-CHN=CH-、-CH=N-、-NHC(O)NH-又は-CHNHC(O)-を表し、
-pは、0~2の整数であり、
-Lが-CHNH-、-NHC(O)-、-CHN=CH-、-CH=N-、-NHC(O)NH-又は-CHNHC(O)-を表す場合、Wは、
●水素原子、
●C~Cアルキル、好ましくはメチル、
●有利にはハロゲン原子、ヒドロキシル、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシルから独立して選択される1~3個の基によって任意に一置換又は多置換されたC~C10アリール、及び
●N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールから選択され、前記ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ ハロゲン原子、
○ ヒドロキシル、
○ オキソ基、
○ C~Cアルコキシル、
○ 1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、及び
○ ハロゲン原子及び/又はC~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリールから独立して選択される1~4個の基で任意に置換され、
-Lが-C(O)NH-を表す場合、Wは、
●任意に一置換又は多置換された、有利にはハロゲン原子、ヒドロキシル基、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシル基で任意に置換されたフェニル、及び
●N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールから選択され、前記ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ ハロゲン原子、
○ ヒドロキシル、
○ オキソ基、
○ C~Cアルコキシル基、
○ 1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、及び
○ ハロゲン原子及び/又はC~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリールから独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換され、
Zは、-CHQ又は-O(CHTを表し、
-Qは、-OH、-SO、-NR、又は-Rを表し、
-Rは、C~Cアルキルを表し、
-R及びRは、それぞれC~Cアルキルを独立して表し、
-Rは、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~7員のヘテロシクロアルキルを表し、前記ヘテロシクロアルキルは、C~Cアルキル、C~CのC(O)-アルキル、及びC~CのC(O)O-アルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
-mは、1又は2に等しくなり、
-Tは、-O(CHCH又は-Rであり、
●nは、0又は1であり、
●Rは、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~7員のヘテロシクロアルキルであり、前記ヘテロシクロアルキルは、C~Cアルキル、C~CのC(O)-アルキル、及びC~CのC(O)O-アルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換される)。
【請求項2】
式(Id)のものであり、
【化2】

式中、X、Y及びZは、請求項1で定義したとおりである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
Zは、-CHを表し、式中、RがC~Cアルキル、特にメチルで任意に置換されたピペラジン基を表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
Xは、ハロゲン、特にフッ素を表すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
Yは、L-(CH-Wを表し、Lは、CHNH又は-NHC(O)NH-を表し、pは、0~2の整数であり、Wは、
-ヒドロキシル基又はC~Cアルキル基で任意に置換されたフェニル、及び
-N、O、又はSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールから選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
Yは、L-(CH-Wを表し、Lは、-CHNH又は-NHC(O)NH-を
表し、pは、0~2の整数であり、Wは、
-ヒドロキシル基で任意に置換されたフェニル、及び
-イミダゾールから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
Yは、-NHC(O)-Wを表し、Wは、N、O又はSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリール基を表し、前記ヘテロアリールは、
-オキソ基、
-1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル基、及び
-ハロゲン原子及び/又はC~Cアルキル基で任意に置換されたC~C10アリール基から独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
Wは、
-メチル、及び
-フッ素原子で任意に置換されたフェニルから独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換された2(1H)-ピリジノンであることを特徴とする、請求項7に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
【化3】

【化4】

好ましくは、
【化5】

から選択される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
有効成分としての、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、ウイルス感染症の予防及び/及び治療に使用するための医薬組成物。
【請求項11】
抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、免疫不全障害の治療剤、及び疼痛治療剤から選択される追加の治療剤を更に含む、請求項10に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
ここで、前記ウイルス感染は、フラビウイルス(デング熱ウイルス、ジカウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルスなど)、アルファウイルス(チクングニアウイルス、マヤロウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、東部馬脳炎ウイルス、西部馬脳炎ウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスなど)、フィロウイルス(エボラウイルス、マールブルグ熱ウイルスなど)、アレナウイルス(ラッサ熱ウイルス、ジュニンウイルス、アマパリウイルスなど)、ピコルナウイルス(水疱性口内炎ウイルスなど)、パラミクソウイルス(インフルエンザウイルスなど)、又はコロナウイルス(SARS-COV-2など)によるものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための化合物、又は請求項10若しくは11に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染の治療に使用するためのAXLキナーゼの阻害剤として有用な7-アザインドール由来の化合物に関する。本発明はまた、それらの調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
AXLは、TYRO-3、AXL、MERからなるTAMファミリーに属する受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。慢性骨髄性白血病(CML)患者で最初に発見して実証された、デング熱、ジカウイルス、チクングニア熱、エボラ熱などのウイルス感染におけるAXL受容体の関与は文献に記載される((Chen,J.et al.Nature Microbiology,2018,3,pp.302-309;Fedeli,C.et al.Journal of Virology,2018,92:e01613-17;Hastings,A.K.et al.,iScience,2019,13 pp.339-350;Meertens,L.et al.,Cell Reports,2017,18,3,pp.324-333)。当該受容体は、Gas6アダプタを介してウイルスエンベロープに存在するホスファチジルセリンと相互作用することにより、エンベロープに包まれたウイルスの細胞標的への付着を促進する。従って、AXLは、ウイルスのエンドサイトーシスを刺激する。この相互作用中のAXLの関与は、AXL細胞質内ドメインのリン酸化を刺激し、関連するシグナル伝達経路を活性化する。これらのシグナルは、インターフェロンの生成とそれに関連する抗ウイルス反応を中和し、これらのウイルスが宿主の免疫制御から逃れることを促進する。
【0003】
現在までに、AXLに対して活性なキナーゼ阻害剤がいくつかあるが(Myer et
al.,J.Med.Chem.(2015),59(8):3593-3608)、このキナーゼに対して実際に選択的又は特異的なものがない。ほとんどの場合、これらのRTK間の配列の類似性により、AXLでの活性はMET又はMERでの望ましい主な活性に対して二次的である。これは、すでに市販されている多標的キナーゼ阻害剤又はMTKIであるボスチニブ若しくはカボザンチニブ、又はBMS777607(現在臨床第2相中)の場合に特に当てはまる。これは、AXL/DDR1/FLT3/KIT/MEK/MET/ROS1及びTIE1などのキナーゼの大きなパネルを阻害することにより、幅広い阻害プロファイルを有する7-アザインドール誘導体NPS-1034の場合にも当てはまる。
【0004】
【化1】
【0005】
別のAXLキナーゼ阻害剤は、現在臨床段階にあるベムセンチニブ(R428又はBGB324とも呼ばれる)である。現在市販されているキナーゼ阻害剤とは構造が大きく異なるこの化合物は、ABL/KIT/JAK2-3/LCK/PDGFRB/TIE2などの他のキナーゼに対しても活性であることが判明している。
【0006】
【化2】
【0007】
従って、ウイルス感染に関してより選択的で効果的な新規AXL阻害剤化合物が必要とされている。
【0008】
従って、本発明は、抗ウイルス剤として使用するための、AXLキナーゼを強力に阻害する新規7-アザインドール誘導体を提供する。
【0009】
この種類の構造に対する非常に特異的かつユニークな阻害プロファイルのため、これらの化合物は、AXL受容体を使用して増殖するウイルスによって引き起こされる感染の治療に使用できる。ウイルス感染と闘うために、これらの化合物は、AXLのリン酸化を阻害することにより、細胞標的におけるエンベロープウイルスのエンドサイトーシスを遮断すること、及びインターフェロンの生成や宿主の抗ウイルス応答を阻害することが周知のAXLによって制御される細胞内シグナルを中和することの両方で作用する。従って、本発明の阻害剤は、AXLが関与する疾患、特にウイルス感染、特に細胞へのウイルス入力の治療に使用することができる。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくはそれらの混合物に関する:
【0011】
【化3】

(式中、
Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
Yは、水素原子、-CHOH、-CH=NOH、-COH基、任意に一置換又は多置換されたアリール、任意に一置換又は多置換されたヘテロアリール、及び-L-(CH)p-Wから選択され、
-Lは、-C(O)NH-、-CHNH-、-NHC(O)-、-CHN=CH-
、-CH=N-、-NHC(O)NH-又は-CHNHC(O)-を表し、
-pは、0~2の整数であり、
-Lが-CHNH-、-NHC(O)-、-CHN=CH-、-CH=N-、-NHC(O)NH-又は-CHNHC(O)-を表す場合、Wは、
●水素原子、
●C~Cアルキル、好ましくはメチル、
●有利にはハロゲン原子、ヒドロキシル、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシルから独立して選択される1~3個の基によって任意に一置換又は多置換されたC~C10アリール、及び
●N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールから選択され、当該ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ ハロゲン原子、
○ ヒドロキシル、
○ オキソ基
○ C~Cアルコキシル、
○ 1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、及び
○ ハロゲン原子及び/又はC~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリールから独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換され、
-Lが-C(O)NH-を表す場合、Wは、
●任意に一置換又は多置換された、有利にはハロゲン原子、ヒドロキシル基、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシル基で任意に置換されたフェニル、及び
●N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールから選択され、当該ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ ハロゲン原子、
○ ヒドロキシル、
○ オキソ基、
○ C~Cアルコキシル基、
○ 1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、及び
○ ハロゲン原子及び/又はC~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリールから独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換され、
Zは、-CHQ又は-O(CHTを表し、
-Qは、-OH、-SO、-NR、又は-Rを表し、
●-Rは、C~Cアルキルを表し、
●-R及びRは、それぞれC~Cアルキルを独立して表し、
●Rは、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~7員のヘテロシクロアルキルを表し、当該ヘテロシクロアルキルは、C~Cアルキル、C~CのC(O)-アルキル、及びC~CのC(O)O-アルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
-mは、1又は2に等しくなり、
-Tは、-O(CHCH又は-Rであり、
●nは、0又は1であり、
●Rは、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~7員のヘテロシクロアルキルであり、当該ヘテロシクロアルキルは、C~Cアルキル、C~CのC(O)-アルキル、及びC~CのC(O)O-アルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換される)。
【0012】
本発明はまた、有効成分としての本発明による化合物又はその薬学的に許容される塩と、及び薬学的に許容される賦形剤とを含むウイルス感染の予防又は治療に使用するための医薬組成物に関する。
【0013】
詳細な説明
一般に、以下の用語と定義が使用される。
【0014】
本発明では、「ペプチドカップリング」とは、アミド-NH-C(O)-結合を形成する反応を指す。この反応で使用される技術は、ペプチド合成に共通であり、即ち、カルボン酸を活性化してアミンと反応させることによるものである。したがって、本発明で使用されるペプチドカップリング反応は、ペプチド合成に由来し、本発明の対象に直接適用できる。
【0015】
ペプチドカップリング反応は当業者に周知であり、特に、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリジノン(NMP)などの溶媒中に、好ましくは20℃から150℃の間の温度で、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又は1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、又はN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボジイミド)、又はベンゾトリアゾール(O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(TBTU)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(BOP)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,2,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(HATU)、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(HBTU)、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-テトラメチルテトラフルオロボレート(TBTU)など)、又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)/EDCI混合物などのカップリング剤を使用して行うことができる。
【0016】
その代わりに、ペプチドカップリングは、最初にカルボン酸を塩化アシル(特に塩化チオニル若しくは塩化アセチルの存在下)又は対応する無水物(例えば、無水酢酸若しくはイソプロピルの存在下)に変換することによって活性化することによって起こり、次に、好ましくは、反応中に放出される酸を中和するための塩基(特に、塩化アシルの場合にはHCl)の存在下で、所望のアミンと反応させる。
【0017】
C(O)という用語は、「C=O」と同等である。
【0018】
本発明における「アルキル」又は「アルキル基」という表現は、特に定義しない限り、1~6個の炭素原子を含む飽和の直鎖状又は分枝状の脂肪族基を意味する。本発明の対象によってカバーされたアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert-ブチル、イソプロピル基である。
【0019】
いくつかの実施形態では、アルキル基の1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されることが明記される。この場合、好ましくは、影響を受ける水素原子の数は多くて1~3個である。例としては、CHCF基が挙げられる。
【0020】
本発明における「アリール基」又は「アリール」という表現は、6~10個の炭素原子を含む(単環式又は多環式)環式芳香族基を意味する。本発明の対象によってカバーされたアリール基の例は、フェニル、ナフチル、好ましくは、フェニル基である。
【0021】
本発明における「ヘテロアリール基」又は「ヘテロアリール」という表現は、2~9個の炭素原子と、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを含む、5~10員の(単環式又は多環式)芳香族環式基を意味する。ヘテロアリール基の例としては、フラン、ピロール、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、キノリン、インドール、キノキサリン、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン、ベンゾジオキソール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール基が挙げられ、好ましくは、ピロール、イミダゾール、チオフェン、インドール、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンズイミダゾールから選択される。
【0022】
本発明における「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクロアルキル基」という表現は、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ホモピペラジン(1,4-ジアザシクロヘプタン)などの、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1個以上(好ましくは1~2個)のヘテロ原子を含む5~7員の環状脂肪族基を表す。好ましくは、それは、モルホリン又はピペラジンである。
【0023】
本発明における「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子を意味する。好ましくは、それは、塩素又はフッ素、特にフッ素である。
【0024】
本発明における「アルコキシル基」とは、酸素が結合したアルキル基を指す。アルコキシル基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ基が挙げられる。好ましくは、それはメトキシ又はエトキシが挙げられる。
【0025】
本発明における「アリールオキシ基」とは、酸素原子に結合したアリール基を意味する。アリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基が挙げられる。
【0026】
本発明における「ヒドロキシル基」又は「ヒドロキシル」という表現は、OHを指す。
【0027】
「オキソ基」という表現は、置換基=Oを意味する。
【0028】
本発明における「任意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基」という表現は、ハロゲン原子、ニトロ基-(NO)、シアノ(CN)基、C~Cアルコキシル基、C~C10アリールオキシ基、C~Cアルキル基から独立して選択される1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個)の置換基によって任意に置換されたアリール又はヘテロアリールを指し、1個以上の水素原子は、フッ素原子、ヘテロアリール基、ヒドロキシル基、オキソ基、C~Cの-CONH-アルキル基、C~Cの-NHCOアルキル基、及びNR基で任意に置換され、R及びRはそれぞれ、C~Cアルキル基、あるいはハロゲン原子及び/又はC~Cアルキル基で任意に置換されたC~C10のアリール基を表す。
【0029】
好ましくは、「任意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基」という表現における置換基は、
ハロゲン原子、特にフッ素又は塩素、
ヒドロキシル、
オキソ基、
~Cアルコキシル、特にメトキシ、
1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、好ましくはメチル基又はCHCF、及び
ハロゲン原子(特にフッ素又は塩素)及び/又はC~Cアルキル基で任意に置換さ
れたC~C10アリール基、例えば、フルオロフェニル(好ましくは4-フルオロフェニル)又はメチルフルオロフェニル(例えば、4-フルオロ-2-メチルフェニル)から独立して選択される。
【0030】
本発明における「7-アザインドール」という表現は、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンを指す:
【0031】
【化4】
【0032】
本発明では、「薬学的に許容される」とは、一般に安全で、無毒であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではなく、獣医学的使用及びヒトの薬学的使用に許容される医薬組成物の調製に有用なものを指す。
【0033】
本発明では、「医薬組成物」という表現は、有効用量の少なくとも1つの本発明の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤からなる任意の組成物を指す。このような賦形剤は、医薬形態及び所望の投与方法に応じて、当業者に通常知られている賦形剤から選択される。
【0034】
化合物の「薬学的に許容される塩」とは、本明細書に定義されるように、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を指す。そのような塩は、以下を含む。
(1)水和物及び溶媒和物、
(2)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの薬学的に許容される無機酸で形成され、若しくは酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、ジベンゾイル-L-酒石酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、トリフルオロ酢酸などの薬学的に許容される有機酸で形成された薬学的に許容される酸付加塩、又は
(3)親化合物中に存在する酸プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオンのいずれかで置換され、若しくは薬学的に許容される有機塩基又は無機塩基と配位結合する場合に形成される薬学的に許容される塩基付加塩。許容される有機塩基としては、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0035】
本発明における「鏡像異性体混合物」という表現は、鏡像異性体の任意の混合物を指す。混合物は、各エナンチオマーの50/50重量(w/w)のラセミ、又は、例えば95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の鏡像異性体過剰率が得られるように、鏡像異性体の一方若しくは他方が富化される非ラセミであり得る。
【0036】
本発明における「ジアステレオマー混合物」という表現は、比率に関係なく、ジアステレオマーの任意の混合物を指す。
【0037】
「治療」という表現は、あらゆる種類の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに適用される。ヒト以外の動物の治療の場合、この表現は、獣医学的治療を指す。
【0038】
本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくはそれらの混合物に関する:
【0039】
【化5】

(式中、
Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
Yは、水素原子、-CHOH、-CH=NOH、-COH基、任意に一置換又は多置換されたアリール、任意に一置換又は多置換されたヘテロアリール、及び-L-(CH)p-Wから選択され、
-Lは、-C(O)NH-、-CHNH-、-NHC(O)-、-CHN=CH-、-CH=N-、-NHC(O)NH-又は-CHNHC(O)-を表し、
-pは、0~2の整数であり、
-Lが-CHNH-、-NHC(O)-、-CHN=CH-、-CH=N-、-NHC(O)NH-又は-CHNHC(O)-を表す場合、Wは、
●水素原子、
●C~Cアルキル、好ましくはメチル、
●有利にはハロゲン原子、ヒドロキシル、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシルから独立して選択される1~3個の基によって任意に一置換又は多置換されたC~C10アリール、及び
●N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールから選択され、当該ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ ハロゲン原子、
○ ヒドロキシル、
○ オキソ基
○ C~Cアルコキシル、
○ 1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、及び
○ ハロゲン原子及び/又はC~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリールから独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換され、
-Lが-C(O)NH-を表す場合、Wは、
●任意に一置換又は多置換された、有利にはハロゲン原子、ヒドロキシル基、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシル基で任意に置換されたフェニル、及び
●N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員のヘ
テロアリールから選択され、当該ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ ハロゲン原子、
○ ヒドロキシル、
○ オキソ基、
○ C~Cアルコキシル基、
○ 1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、及び
○ ハロゲン原子及び/又はC~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリールから独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換され、
Zは、-CHQ又は-O(CHTを表し、
-Qは、-OH、-SO、-NR、又は-Rを表し、
●-Rは、C~Cアルキルを表し、
●-R及びRは、それぞれC~Cアルキルを独立して表し、
●Rは、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~7員のヘテロシクロアルキルを表し、当該ヘテロシクロアルキルは、C~Cアルキル、C~CのC(O)-アルキル、及びC~CのC(O)O-アルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
-mは、1又は2に等しくなり、
-Tは、-O(CHCH又は-Rであり、
●nは、0又は1であり、
●Rは、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~7員のヘテロシクロアルキルであり、当該ヘテロシクロアルキルは、C~Cアルキル、C~CのC(O)-アルキル、及びC~CのC(O)O-アルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換される)。
【0040】
本発明による式(I)の化合物は、互変異性体、鏡像異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体又は立体異性体の混合物の形態であり得る。
【0041】
第1実施形態では、本発明の化合物は、式(Ia)であり、
【0042】
【化6】
【0043】
第2実施形態では、本発明の化合物は、式(Ib)である
【0044】
【化7】
【0045】
第3実施形態では、本発明の化合物は、式(Ic)である
【0046】
【化8】
【0047】
第4実施形態では、本発明の化合物は、式(Id)である
【0048】
【化9】
【0049】
式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)では、置換基X、Y及びZは上記及び下記に定義されるとおりである。
【0050】
特定の実施形態では、本発明の化合物において、Zは、-CH又は-O(CHを表す。好ましくは、この実施形態では、R及びRは独立して、C~Cアルキル又はC(O)O(C~C)-アルキル基で任意に置換されたピペラジン、モルホリン又はホモピペラジン基を表す。この実施形態では、好ましくは、mは、2を表す。
【0051】
特定の実施形態では、Zは、-CHOH、-CHSOCH、-OCHOCHCH、-OCHCHOCH、-N(CHCH
【0052】
【化10】

を表し
【0053】
好ましい実施形態では、Zは、-CHを表し、式中、RがC~Cアルキル、特にメチルで任意に置換されたピペラジン基を表す。
【0054】
特定の実施形態では、Xは、ハロゲン、特にフッ素を表す。
【0055】
特定の実施形態では、Xは、水素を表す。
【0056】
特定の実施形態では、Yは、-H、-CN、-CHOH、-CH=NOH、任意に一置換若しくは多置換されたアリール若しくはヘテロアリール、又は-L-(CH)p-Wを表す。
【0057】
有利な実施形態では、Yは、任意に一置換若しくは多置換されたアリール若しくはヘテロアリール、又は-L-(CH)p-Wを表す。
【0058】
この場合、Yは、任意に一置換又は多置換されたアリール又はヘテロアリールを表し、好ましくは任意に一置換又は多置換されたアリール、具体的には、特に非置換のフェニルである。
【0059】
より有利な実施形態では、Yは、L-(CH)p-Wを表す。この場合、Yは、-L-(CH)p-Wを表し、好ましくは、pは、0、1又は2に等しくなる。
【0060】
有利には、YがL-(CH)p-Wを表す場合、Lは、-C(O)NH-、-CHNH-、-NHC(O)-、-NHC(O)NH-又は-CHNHC(O)-、好ましくは、-CHNH-、-NHC(O)-又は-NHC(O)NH-を表す。
【0061】
この実施形態では、Yは、-L-(CH)p-Wを表し、Wは有利には、C~C10アリール、又はN、S及びOから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員のヘテロアリールを表し、上記アリール又はヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換される。
【0062】
好ましい実施形態では、Wは、C~C10アリール、特に非置換又は好ましくはヒドロキシルによって一置換されたフェニルを表す。
【0063】
別の好ましい実施形態では、Wは、N、S及びOから独立して選択される1~2個のヘテロ原子、特にNを含む5員又は6員のヘテロアリール、例えば、ピラゾール、ピリジン又はイミダゾールを表す。有利には、上記ヘテロアリールは、
●ハロゲン原子、特にフッ素、
●オキソ基、
●1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、特にメチル、及び
●ハロゲン原子(特にフッ素)及び/又はアルキルC~Cで任意に置換されたC~C10アリール、例えば、メチル、フルオロフェニル(好ましくは4-フルオロフェニル)又はメチルフルオロフェニル(例えば、4-フルオロ-2-メチルフェニル)から独立して選択される1~4個、好ましくは1又は2個の基で任意に置換される。
【0064】
好ましくは、Wは、ピラゾール、3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール、ピリジン、2(1H)-ピリジノン、4(1H)-ピリジノン又はイミダゾール、特に、
●C~Cアルキル、特にメチル、及び
●C~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリール、例えば、メチルから独立して選択される1~4個、好ましくは1又は2個の基で任意に置換された2(1H)-ピリジノン又はイミダゾールを表す。
【0065】
特に、Wは、以下から選択される:
【0066】
【化11】

好ましくは、
【0067】
【化12】
【0068】
有利な実施形態では、Yは、アリール、ヘテロアリール又はL-(CH-Wを表し、Lは、-CHNH又は-NHC(O)NH-、特に-CHNHを表し、pは、0~2の整数であり、Wは、
ヒドロキシル基、又はC~Cアルキル基、好ましくはヒドロキシルで任意に置換されたフェニル基、及び
N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子、特にNを含み、好ましくは、ピロール、イミダゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンゾイミダゾールからなる群から選択される5~10員のヘテロアリール基から選択され、
【0069】
好ましくは、Yは、L-(CH-Wを表し、Lは、-CHNH又は-NHC(O)NH-、特に-CHNHを表し、pは、0~2の整数であり、Wは、
ヒドロキシル基、又はC~Cアルキル基、好ましくはヒドロキシルで任意に置換されたフェニル基、及び
ピロール、イミダゾール、3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール、チオフェン、ピリジン、2(1H)-ピリジノン、4(1H)-ピリジノン、ピリミジン、ピリミジン-2,4-ジオン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンズイミダゾール、より好ましくはイミダゾールから選択される。
【0070】
この実施形態では、Zは、好ましくは、-CH又は-O(CHを表し、また、好ましくは、-CHを表す。好ましくは、この実施形態では、R及びRは独立して、C~Cアルキル又はC(O)O(C~C)-アルキル基で任意に置換されたピペラジン、又はモルホリン基を表す。好ましくは、Zは、-CHを表し、ここで、Rがメチルで置換されたピペラジン基を表す。更に、この実施形態では、Xは、有利にはハロゲン、特にフッ素を表す。
【0071】
別の有利な実施形態では、Yは、-NHC(O)-Wを表し、Wは、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子、特にNを含む5~10員のヘテロアリール基を表し、上記ヘテロアリールは、
●オキソ基、
●1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC~Cアルキル、特にメチル、及び
●ハロゲン原子(特にフッ素)及び/又はアルキルC~Cで任意に置換されたC~C10アリール、例えば、メチル、フルオロフェニル(好ましくは4-フルオロフェニル)又はメチルフルオロフェニル(例えば、4-フルオロ-2-メチルフェニル)から独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換される。
【0072】
好ましくは、この実施形態では、ヘテロアリール基は、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンゾイミダゾールからなる群から選択され、
●オキソ基、
●C~Cアルキル、特にメチル、及び
●C~Cアルキルで任意に置換されたC~C10アリール、例えば、メチルから独立して選択される1~4個の基で任意に置換される。
【0073】
より好ましくは、この実施形態では、Wはピラゾール、ピロール、イミダゾール、3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール、チオフェン、ピリジン、2(1H)-ピリジノン、4(1H)-ピリジノン、ピリミジン、ピリミジン-2,4-ジオン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール又はベンズイミダゾール、好ましくは2(1H
)-ピリジノンであり、
●C~Cアルキル基、特にメチル、及び
●C~C10アリール基、特にハロゲン原子、特にフッ素で任意に置換されたフェニルから独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換される。
【0074】
この実施形態では、Zは、好ましくは、-CH又は-O(CHを表し、好ましくは、-CHを表す。好ましくは、この実施形態では、R及びRは独立して、C~Cアルキル又はC(O)O(C~C)-アルキル基で任意に置換されたピペラジン、又はモルホリン基を表す。好ましくは、Zは、-CHを表し、ここで、Rがメチルで置換されたピペラジン基を表す。
【0075】
好ましくは、本発明の化合物は、以下から選択される:
【0076】
【化13】
【0077】
【化14】

より好ましくは、
【0078】
【化15】
【0079】
組成物及び治療応用
本発明の化合物は、AXL受容体を阻害する。AXLは多くの生物学的プロセスに関与しており、治療的に検証された標的であるため、本発明の化合物及びその薬学的に許容される塩、又は以下に定義する本発明の組成物は、特にウイルス感染の治療において薬剤として有用であり、その感染サイクルはAXL及び関連するシグナル伝達に依存する。
【0080】
本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための、上で定義した式(I)の化合物に関する。
【0081】
より具体的には、これらの化合物は、有効成分としての、少なくとも1つの上記式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を調製するために使用され得る。従って、本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための、有効成分としての本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。上記賦形剤は、当業者に知られている通常の賦形剤から所望の医薬形態及び投与様式に従って選択される。
【0082】
本発明による医薬組成物は、典型的には、抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、免疫不全障害の治療剤、及び疼痛治療剤から選択される追加の治療剤を更に含み得る。特に、それは、ウイルス感染に対する治療に有用な薬剤である。
【0083】
従って、本発明の1つの目的は、ウイルス感染の予防及び/又は治療における、上で定義した式(I)の化合物又は上で定義した医薬組成物の応用に関する。
【0084】
換言すれば、本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療用の薬剤を調製するための、上で定義した式(I)の化合物又は上で定義した医薬組成物の応用に関する。
【0085】
本発明による式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は本発明による医薬組成物は、フラビウイルス(デング熱ウイルス、ジカウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルスを含む)、アルファウイルス(チクングニアウイルス、マヤロウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、東部馬脳炎ウイルス、西部馬脳炎ウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスを含む)、フィロウイルス(エボラウイルス、マールブルグ熱ウイルスを含む)、アレナウイルス(ラッサ熱ウイルス、ジュニンウイルス、アマパリウイルスを含む)、ピコルナウイルス(水疱性口内炎ウイルスを含む)、パラミクソウイルス(インフルエンザウイルスを含む)、又はSARS-COV-2などなどのコロナウイルスによるウイルス感染の予防及び/又は治療に特に有用である。
【0086】
特定の実施形態では、本発明は、コロナウイルス、特にSARS-COV-2によるウイルス感染の予防及び/又は治療における、上で定義した式(I)の化合物又は上で定義した医薬組成物に関する。
【0087】
この実施形態では、式(I)の化合物は、以下の化合物に優先的に対応する:
【0088】
【化16】
【0089】
本発明はまた、
a)有効成分としての本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む第1組成物と、
b)典型的には抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、免疫不全疾患治療剤及び疼痛治療剤、好ましくはウイルス感染に対する治療に有用な薬剤からから選択される、別個に、併用して、又は逐次的に使用するための組み合わせ製品としての追加の治療剤を含む第2組成物とを含むキットに関する。
【0090】
上記キットは、特にウイルス感染、特に上で定義したウイルス感染の予防及び/又は治療のために使用する薬剤として有用である。
【0091】
本発明による医薬組成物は、静脈内若しくは皮内経路などの非経口的に、又は局所的に、経口的に若しくは経鼻的に投与することができる。
【0092】
非経口的に投与できる形態は、薬理学的に適合する分散剤及び/又は湿潤剤を含み得る水性懸濁液、等張食塩水又は滅菌注射用溶液を含む。経口投与できる形態は、錠剤、ソフト又はハードゲルカプセル、粉末、顆粒、経口溶液及び懸濁液を含む。経鼻投与できる形態は、エアロゾルを含む。局所的に投与できる形態は、パッチ、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、スプレー、及び点眼薬を含む。
【0093】
好ましくは、本発明の化合物又は組成物は、経口又は非経口(特に静脈内)で投与される。
【0094】
本発明の化合物の有効用量は、例えば、選択した投与経路、体重、年齢、性別、治療すべき病状の進行状態、及び治療すべき個体の感受性などの多数のパラメータの関数として変化する。
【0095】
本発明の別の態様によれば、本発明はまた、本発明による式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による組成物の有効用量、好ましくは胃腸外(特に静脈内)又は経口投与を必要とする患者に投与することを含む、上記病状の予防及び/又は治療のための方法に関する。
【0096】
本発明の化合物の調製方法
本発明はまた、上記化合物、特に5-ブロモ-3-ヨード-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンからの化合物の調製方法に関する。
【0097】
第1実施形態によれば、本発明による方法は、図表1に示される。
【0098】
【化17】
【0099】
図表1
図表中、X及びZは、上記と同義であり、Yは、水素原子、CHO、CN、CHOH、COH、NH又はフェニル基を表す。
【0100】
方法は、少なくとも以下のステップを含む。
a)5-ブロモ-3-ヨード-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(II)を、例えば、水素化ナトリウムなどの塩基の存在下、塩化トルエン-4-スルホニルでトシル化し、中間体(III)を得て、
b)パラジウムジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン](Pd(dppf)Cl)などのパラジウム触媒の存在下での式(IV)の中間体と鈴木-宮浦型カップリング反応を行い、Uは、ボロン酸又はそのピナコールエステルを表し、式(V)の化合物を得て、
c)パラジウムジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン](Pd(dppf)Cl)などのパラジウム触媒の存在下での式(VI)の中間体と鈴木-宮浦型カップリング反応を行い、Uは、ボロン酸又はそのピナコールエステルを表し、式(VII)の化合物を得て、及び
d)塩基、好ましくは水酸化ナトリウム又は炭酸セシウムによるトシル基の加水分解により、式(I)の化合物を得る。
【0101】
中間体アミン化合物(VIII)(即ち、X及びZが上で定義したとおりであり、Yが(CHNH基を表し、nが1である式(I)の化合物)の合成を図表2に示す。
【0102】
【化18】
【0103】
図表2
図表中、X及びZは、上で定義したとおりである。
【0104】
この実施形態では、式(VIII)のアミノ中間体を調製する方法は、少なくとも以下のステップを含み得る。
e)ヒドロキシルアミンを式(I)の化合物上で縮合させ、Yは、CHOであり、式(IX)のオキシムを形成し、
f)オキシム(IX)を、特に亜鉛の存在下、超音波下で還元して、式(VIII)のメチルアミン中間体を得る。
【0105】
当業者であれば、これらの種類の化合物を合成するために、適切に記載され公知の他の合成技術を全て適用することは当然である。
【0106】
YがL-(CH-W基を表し、Lがアミド基-NHC(O)-又は-CHNHC(O)-を表す式(I)の化合物は、例えば、図表3に示されるアミノ-7-アザインドール誘導体からの合成方法によって得られる:
【0107】
【化19】
【0108】
図表3
図表中、W、X、Z、及びpは、上で定義したとおりであり、nは、0又は1に等しくなる。
【0109】
図表3の方法は、式W-(CH-C(O)OHの酸と上で定義した式(VIII)のアミノ中間体との間のペプチドカップリング反応の少なくとも1つのステップを含み、特に、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HATU)などの少なくとも1つの活性化剤及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などの塩基の存在下で行われる。
【0110】
当業者は、これらのアミド化合物を得るために、適切に記載され公知の他の全ての合成技術を利用するのは当然である。
【0111】
YがL-(CH-W基を表し、LがA-CONH-基を表す式(I)の化合物は
、例えば、特に2つの方法に従って、図表4に示される式(X)のカルボン酸7-アザインドール誘導体からの合成方法によって得られる:
【0112】
【化20】
【0113】
図表4
図表中、W、Z、及びpは、上で定義したとおりである。
【0114】
有利には、図表4の方法は、式(X)の酸と式W-(CH-NHのアミンとの間の、カップリングによる、又は塩化チオニルの事前作用による塩化アシルのその場生成によるペプチドカップリング反応の少なくとも1つのステップを含む。
【0115】
本発明の尿素化合物、即ち、YがL-(CH-W基を表し、Lが尿素-NHCONH-基を表す式(I)の化合物は、例えば、図表5に示される方法に従って製造される:
【0116】
【化21】
【0117】
図表5
図表中、W、X及びZは、上で定義したとおりである。
【0118】
有利には、図表5の方法は、nが0に等しい式(VIII)の化合物と、式W-NCO(Wは上で定義したとおりである)のイソシアネートとの少なくとも1回の反応を含む。上記イソシアネートは市販され、又は当業者に知られている合成方法に従って得られる。更に、当業者は、これらのアミド化合物を得るために、適切に記載され公知の他の全ての合成技術を利用するのは当然である。
【0119】
別の実施形態によれば、本発明の第二級アミン化合物、即ち、YがL-(CH-W基を表し、Lが-CHNH-基を表す式(I)の化合物の合成方法に関しては、特に3つの方法が図表6に示される:
【0120】
【化22】
【0121】
図表6
図表中、W、X、Z及びpは、上で定義したとおりである。
【0122】
有利には、図表6の方法は、この方法は、nが1に等しい式(VIII)の化合物と式W-CHOのアルデヒドとの間、又は式(XI)の7-アザリンドールアルデヒドと式W(CH-NHのアミンとの間の還元的アミノ化の少なくとも1つのステップを含む。
【0123】
式W-CHOのアルデヒド及び式W-(CH-NHのアミンは、特に市販され、又は当業者に知られている調製方法に従って容易に入手できる。
【0124】
当業者は、これらのアミド化合物を得るために、適切に記載され公知の他の全ての合成技術を利用するのは当然である。
【0125】
別の実施形態は、以下の図表7に従って、式(XIII)の化合物を脱保護することによって得られる式(XII)の第二級アミン誘導体を合成するための方法に関する:
【0126】
【化23】
【0127】
図表7
図表中、X及びYは、上で定義したとおりである。
【0128】
有利には、方法は、酸媒体中で式(XIII)のカルバメート化合物を加水分解して式
(XII)の所望の第二級アミンを形成する少なくとも1つのステップを含む。
【0129】
当業者は当然、他の公知の合成技術を全て適用して、期待される第2級アミンを脱保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
図1】R428/ベムセンチニブと比較した、化合物1、2及び3によるセルロにおけるAxlのリン酸化の阻害である。A549細胞を、Axlを標的とする2.5μMの化合物とともに1時間プレインキュベートした。次に、1mM過バナジン酸塩で5分間刺激した。Axlキナーゼの細胞質内ドメインのY779残基のリン酸化の阻害の評価は、抗体R&D Systems(AF2228)を使用したイムノブロットとデンシトメトリ(画像J)(P-Axl/Axl比)によるシグナル強度の測定によって行われる。
図2】キナーゼAxl及びキナーゼFLT3の阻害に関する化合物1、2及び3のIC50の測定である。段階希釈によって10種類の濃度の化合物を調製した。化合物を最終濃度1%のDMSO中でスクリーニングする。キナーゼをキナーゼ緩衝液中で2倍の濃縮濃度に希釈した。全てのATP溶液を4倍濃縮の使用濃度(50mM HEPES pH7.5、0.01% BRIJ(登録商標)-35、10mM MgCl2、1mM EGTA)に希釈した。IC50を計算するために、各化合物を100nM~0.00495nMの10種類の濃度でインキュベートした。IC50が示される。a)化合物1の結果、b)化合物2の結果、c)化合物3の結果。
図3】R428/ベムセンチニブと比較した、化合物1、2、3、10及び11の抗ZIKV活性である。細胞を、示された濃度の化合物とともに1時間プレインキュベートし、次に、ウイルス株に感染させた(MOI=0.1)。細胞を化合物の存在下で24時間培養状態に保った。残留ウイルス複製は、ウイルスゲノムRNAのqRT-PCRによって定量化される。値は、希釈溶媒DMSO(0)の存在下での細胞のインキュベーションによって得られた対照条件で検出された感染の百分率として表される。Axl R428の阻害剤/ベムセンチニンブも並行して評価される。値は、3つの反復の平均+標準偏差である。a)2.5μMの濃度での化合物1、2、3、10及びR428の結果、b)0.15、0.31、0.62、1.25、2.5及び5μの濃度での化合物1、2及びR428の結果、c)0.1、0.2、0.4、0.5、1及び2.5μMの濃度での化合物10、並びに0.001、0.1、0.4、0.5、及び1μMの濃度での化合物11の結果、d)化合物1(左側)及び10(右側)について得られた用量効果の対数効果。R428で得られた結果も並行して示す。
図4】化合物10、11、及び14の抗DENV活性である。細胞を、示された濃度(0.01、0.1、0.5、1及び2.5μM)の化合物とともに1時間プレインキュベートし、次に、ウイルス株DENV2に感染させた(MOI=0.1)。細胞を化合物の存在下で3日間培養状態に保った。残留ウイルス複製は、RT-PCRによる細胞内ウイルスRNAの定量化によって測定され、値は、希釈溶媒DMSO(0)の存在下での細胞のインキュベーションによって得られた対照条件で検出された感染の百分率として表される。値は、3つの反復の平均+標準偏差である。
図5】化合物10の抗KUNV活性である。細胞を、示された濃度(0.001、0.1、0.5、1及び2.5μM)の化合物とともに1時間プレインキュベートし、次に、ウイルス株に感染させた(MOI=0.1)。細胞を化合物の存在下で24時間培養状態に保った。残留ウイルス複製は、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の定量化によって測定され、希釈溶媒DMSO(0)の存在下での細胞のインキュベーションによって得られる対照条件で検出された感染の百分率として表される。値は、3つの反復の平均+標準偏差である。
図6】化合物10の抗CHIKV活性である。細胞を、示された濃度(0.001、0.1、0.250.5、1及び1.5μM)の化合物とともに1時間プレインキュベートし、次に、ウイルス株LR-OPY-1に感染させた(MOI=0.1)。細胞を化合物の存在下で24時間培養状態に保った。残留ウイルス複製は、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の定量化によって測定され、DMSO(0)の存在下での細胞のインキュベーションによって得られる対照条件で検出された感染の百分率として表される。値は、3つの反復の平均+標準偏差である。
図7】VeroE6系統で測定された化合物1、2、3、10、及び14の抗SARS-COV-2活性である。細胞を、1.25μMの濃度の化合物とともに1時間プレインキュベートし、その後、ウイルス株BetaCoV/France/IDF0371/2020に感染させた(MOI=0.01)。細胞を化合物の存在下で24時間培養状態に保った。残留ウイルス複製は、qRT-PCRによる細胞培養中のウイルスRNAの定量化によって測定される。対照条件は、希釈溶媒DMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られる。値は、3つの反復の平均+標準偏差である。
図8】A549-ACE2細胞において測定された化合物1、2、3、10及び14の抗SARS-CoV-2活性である。細胞を、1.25μMの濃度の化合物とともに1時間プレインキュベートし、その後、ウイルス株BetaCoV/France/IDF0371/2020に感染させた(MOI=0.01)。細胞を化合物の存在下で24時間培養状態に保った。残留ウイルス複製は、qRT-PCRによる細胞培養中のウイルスRNAの定量化によって測定される。対照条件は、希釈溶媒DMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られる。Axl R428の阻害剤/ベムセンチニンブも並行して評価される。値は、3つの反復の平均+標準偏差である。
図9】SARS-COV-2に対する化合物1、2、及び3の比活性度の計算である。A549-ACE2細胞を、濃度を増加させながら1時間インキュベートし、その後、ウイルス株BetaCoV/France/IDF0371/2020に感染させた(MOI=0.01)。細胞を化合物の存在下で24時間培養状態に保った。残留ウイルス複製は、qRT-PCRによる細胞培養中のウイルスRNAの定量化によって測定される。対照条件は、DMSOの存在下で細胞をインキュベートすることによって得られる。値は、3つの反復の平均+標準偏差である。IC50は、ソフトウェアPrism(GraphPad)を使用して計算される。
図10】初代ヒト気管支上皮モデルにおいて測定された化合物1の抗SARS-COV-2活性である。細胞を、培養物の基底区画に加えた1.25μMの濃度で使用した化合物(MucilAir(商標)、Epielix)とともに1時間プレインキュベートした。次に、細胞を、頂端区画に加えたウイルス株BetaCoV/France/IDF 0371/2020によって感染させた(MOI=0.1)。2時間後、接種材料を除去し、細胞を化合物の存在下で24時間培養し続ける。残留ウイルス複製は、qRT-PCRによる細胞培養中のウイルスRNAの定量化によって測定される。対照条件は、希釈溶媒DMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られる。NIは、感染しない細胞に相当する状態を示す。個々の値、平均値、標準偏差が示される。
図11】化合物1によるA549-ACE2細胞感染の阻害メカニズムである。A549-ACE2(a)又はveroE6(b)細胞をSARS-COV-2(BetaCoV/France/IDF0371/2020株)に感染させた(MOI=0.01)。化合物1(1.25μM)をウイルス攻撃の1時間前に細胞培養物に加え、実験全体を通じて維持した(図表1、SARS-COV-2の条件);ウイルス攻撃の1時間前に加え、かつ感染の最初の4時間のみ(図表2、Pre-Ttの条件);SARS-COV-2への曝露後4時間目から(図表3、Post-Ttの条件)のいずれか。細胞の感染は、特異的抗体(抗スパイクSARS-COV-2、クローン1A9、Gene Tex)を使用したFACSによるスパイクタンパク質の細胞内検出によって決定される。個々の値、平均値、標準偏差が示され、希釈溶媒DMSO(0)の存在下で維持された細胞から実行された対照条件と比較される。
【実施例
【0131】
本発明は、以下の実施例を読めばよりよく理解されるであろうが、これらの実施例は単
に例示として示されており、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0132】
実施例1、合成
材料
合成及び解析は、以下の条件で行われた。
【0133】
核磁気共鳴H及び13C:
装置:Bruker Avance 400(400MHz)、Bruker Avance 300(300MHz)
使用条件:周囲温度、100万分の1(ppm)で表される化学シフト、小文字で示されるシグナルの多重度(一重項s、二重項d、三重項t、四重項q、多重項m)、重水素化溶媒としてのジメチルスルホキシドd、メタノールd、クロロホルムd
【0134】
高圧液体クロマトグラフィ(HPLC):
装置:Agilent Technology 1260 Infinity
使用条件:Zorbax SB-C18カラム又はEclipse plus(2.1×50mm)、1.8μm。温度:30℃、流量:方法X及びYでは0.5mL/分、方法Zでは0.4mL/分、溶出勾配 水(A)/アセトニトリル(B)/ギ酸0.1%(時間(分)/%B):
方法X:0/10、0.3/10、5.7/100、6.0/100
方法Y:0/10、1/50、6/100、8/100
方法Z:0/10、11/100、15/100
【0135】
質量分析(MS):
装置:Quadripole Agilent Technologies 6120
使用条件:ポジティブ及び/又はネガティブモードのエレクトロスプレー(ESI)。
【0136】
秤量:
器具:Denver Instrument TP214(精度0.1mg)
使用条件:秤量はミリグラム単位で行われる。
【0137】
圧力反応:
装置:オートクレーブ Parr 300mL。
使用条件:20バールの水素下での水素化。
【0138】
マイクロ波照射下の反応:
器具:CEM Discover SP(登録商標)
使用条件:出力200ワット、平均撹拌速度
【0139】
以下では、次の略語が使用される。
【0140】
【表1】
【0141】
3,5-ジアリール-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(I)中間体の一般的合成
ステップ1、5-ブロモ-3-ヨード-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピ
ロロ[2,3-b]ピリジン(III)の合成
3Gの5-ブロモ-3-ヨード-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(II)をアルゴン下で60mLの無水THFで希釈し、氷浴で冷却する。558mg(1.5当量)の水素化ナトリウム(60%)をゆっくり加え、媒体を0℃で20分間撹拌する。次に、塩化トシル(2.11g、1.2当量)を加え、媒体をRTで5時間撹拌する。溶媒を蒸発させる。得られた残留物を最小限の石油エーテルに懸濁し、濾過する。沈殿物を2M水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄し、次に、真空下で一晩乾燥させる。
【0142】
RMN H(400MHz、DMSO-d6)δ(ppm)8.52(d、J=1.9、1H)、8.22(s、1H)、8.01(m、3H)、7.44(d、J=8.2、2H)、2.51(s、3H).
【0143】
収率:97%、HPLC:99%、MS[M+1]:476.9-478.9
【0144】
ステップ2、3-5-アリール-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(I)(Y=CHO、NH、又はフェニルで置換されたフェニル)の一般的合成
5-ブロモ-3-ヨード-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(III)(100mg)、カップリングされた第1ボロン酸(IV)(1当量)及び炭酸カリウム(3eq)を3/1ジオキサン/水混合物(3mL)に懸濁し、混合物をアルゴン下で20分間脱気する。Pd(dppf)Cl(2%)を加え、出発試薬が完全に消費されるまで、混合物をマイクロ波照射下、80℃で20分間、1~3回撹拌する。反応媒体をNaHCO3で飽和した水溶液で洗浄し、酢酸エチルで抽出する。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3飽和水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させ、次に、シリカカラムで精製する。次に、化合物を、第2ボロン酸又はピナコール(VI)のエステル(1.2eq)及び炭酸カリウム(3eq)の存在下で、ジオキサン/水(3/1、4mL)混合物に溶解する。媒体をアルゴン下で20分間再度脱気し、次に、Pd(dppf)Cl(0.025eq)を加え、混合物をマイクロ波照射下、120℃で45分間撹拌する。次に、500μLの1M水酸化ナトリウム(3eq)を反応媒体に加え、マイクロ波照射下、100℃で45分間撹拌する。次に、反応媒体をNaHCO3で飽和した水溶液で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させ、次に、順相シリカカラム(ジクロロメタン/メタノール-アンモニア)で精製する。
【0145】
【表2】
【0146】
アミンの合成
方法1、4-フルオロ-3-{5-[3-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル}-フェニルアミンの合成
【0147】
【化24】
【0148】
ステップ1、5-ブロモ-3-(2-フルオロ-5-ニトロ-フェニル)-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの合成
5-ブロモ-3-ヨード-1-(トルエン-4-スルホニル)-ピロロ[2,3-b]
ピリジン(460mg)、例えば、2-(2-フルオロ-5-ニトロ-フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン(1eq)及び炭酸カリウム(3eq)をジオキサン/水混合物(9/1、20mL)に懸濁し、アルゴン下で20分間脱気する。Pd(dppf)Cl(18mg、0.025eq)を加え、混合物をマイクロ波照射下、50℃で20分間、LC/MSによって測定される試薬の全消費量まで2~4回撹拌する。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3飽和水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させ、次に、順相シリカカラム(石油エーテル/ジクロロメタン)で精製する。
【0149】
収率:66%、HPLC:90%、MS[M+1]:490.0~492.0
【0150】
ステップ2、3-[5-ブロモ-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]-4-フルオロ-フェニルアミンの合成
5-ブロモ-3-(2-フルオロ-5-ニトロ-フェニル)-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(100mg)を、232mgの塩化スズ二水和物(5eq)とともに3mLの酢酸エチルに懸濁し、還流下で4時間撹拌する。反応媒体を酢酸エチルに溶解し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄する。沈殿物を濾別し、水、次に酢酸エチルで洗い流す。水相を酢酸エチルで抽出する。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させ、次に、順相シリカカラム(石油エーテル/酢酸エチル)で精製する。
【0151】
収率:76%、HPLC:97%、MS[M+1]:460.0~462.0
【0152】
ステップ3、4-フルオロ-3-{5-[3-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル}-フェニルアミンの合成
3-[5-ブロモ-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]-4-フルオロフェニルアミン(475mg)、1-メチル-4-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ベンジル]-ピペラジン(1.2eq)及び炭酸カリウム(3eq)をジオキサン/水混合物(9/1、20mL)に懸濁し、アルゴン下で20分間脱気する。次に、Pd(dppf)Cl(19mg、0.025eq)を加え、混合物をマイクロ波照射下、120℃で45分間撹拌する。次に、3μLの1M水酸化ナトリウム(3eq)を反応媒体に加え、マイクロ波照射下、100℃で45分間撹拌する。次に、反応媒体をNaHCO3で飽和した水溶液で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させ、次に、順相シリカカラム(ジクロロメタン/メタノール-アンモニア)で精製する。
【0153】
収率:91%、HPLC:98%、MS[M+1]:416.3
【0154】
様々非営利的なカルボン酸の合成では、
[Traore et al.European Journal of Medicinal Chemistry(2013),70,789-801]記載の手順に従って、1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸(HPLC:97%、MS[M+1]:243.1)を得る。
[Flynn et al.Organic Process Research &
Development(2014),18(4),501-510]記載の手順に従って、1-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸(HPLC:97%、MS[M+1]:248.2)を得る。1-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリジン-3
-カルボン酸(HPLC:100%、MS[M+1]:248.2)は、上記1-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸の合成中に副生成物として得られる。
【0155】
アミノ-7-アザインドールとカルボン酸化合物からのアミド化合物の一般的合成。
【0156】
【化25】
【0157】
カルボン酸(1eq)を無水DMFに溶解し、アルゴン雰囲気下で乾燥シュレンクに入れる。N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1eq)、次に、誘導体アミノ-7-アザインドール(1eq)を加える。次に、媒体を70℃で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させる。次に、得られた残留物を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3飽和水溶液で2回洗浄し、Na2SO4乾燥塩化ナトリウム飽和水溶液で1回洗浄した後、綿で濾過し、蒸発乾固させ、1%トリフルオロ酢酸で逆相シリカカラム(水/アセトニトリル)上で精製して所望のアミド誘導体を得る。
【0158】
【表3-1】

【表3-2】
【0159】
尿素の一般的合成
【0160】
【化26】
【0161】
アミノ誘導体(1eq)、フェニルイソシアネート(1.05eq)及びトリエチルアミン(2eq)を無水THFに溶解し、アルゴン下、室温で一晩撹拌する。反応媒体を飽和NaHCO3溶液でクエンチする。水相を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。有機相を合わせ、蒸発乾固させ、順相シリカカラム(ジクロロメタン/メタノール-アンモニア)で精製して、所望の尿素誘導体を得る。
【0162】
【表4】
【0163】
ホルミルアザインドールからのアミン化合物の合成
【0164】
【化27】
【0165】
アルデヒド誘導体(1eq)及びアミン誘導体(1eq)をメタノール/酢酸混合物(9/1)に溶解する。混合物を室温で3時間撹拌し、次に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(2eq)を加え、媒体を室温で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させて除去し、残留物を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3飽和水溶液で2回、塩化ナトリウム飽和水溶液で1回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、綿で濾過し、蒸発乾固させる。得られた残留物を、100%ジクロロメタンから90/10のジクロロメタン/メタノール-アンモニアの勾配を用いてシリカカラム上で精製する。
【0166】
【表5】
【0167】
アミノ誘導体の脱保護。
【0168】
【化28】
【0169】
保護されたアミン誘導体(1eq)をジオキサン及び濃塩酸(4eq)に溶解する。混合物を室温で2時間撹拌する。溶媒を蒸発させて除去し、残留物を酢酸エチル/水混合物に溶解する。水相をNaHCO粉末を加えることによって中和する。沈殿物を濾別し、次に、水で洗浄し、乾燥させる。
【0170】
実施例2.生物学的検査
A-キナーゼAxLに対する本発明の化合物の選択性
本発明の化合物を、キナーゼAxlに対する阻害活性について評価した。
【0171】
1-セルロースにおけるキナーゼAxlのリン酸化の阻害
A549細胞を2.5μMの化合物1、2、又は3とともに1時間プレインキュベートした。次に、リン酸化によってキナーゼAxlを活性化することが知られている化合物である1mMの過バナジン酸塩でそれらを5分間刺激した。
【0172】
Axlの細胞質内ドメインのY779残基のリン酸化の阻害は、抗体R&D Systems(AF2228)を使用した免疫ブロットによって視覚化される。
【0173】
その結果は、図1に示される。これらは、化合物1、2及び3の存在下で、対照(DMSO)と比較して、AxLのY779残基の活性化がはるかに低く、又はゼロでさえあることを示す。
【0174】
2-キナーゼAxlの選択的阻害
とりわけ、AXL及びFLT3を含むキナーゼのパネルに対する化合物の阻害活性は、Z’-LYTE(登録商標)及びAdapta(登録商標)Select Screenテクノロジーを使用してThermo Fisher Scientificによって評価された。
【0175】
蛍光ベースの生化学検査は共役酵素を使用し、タンパク質分解性切断に対するリン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドの感受性の違いに基づいている。ペプチド基質は、2つの蛍光色素(各末端に1つずつ)で標識されており、蛍光転移(FRET)が可能である。
【0176】
化合物1、2及び3は、1%DMSO中最終濃度100nMでウェル中で試験された。
【0177】
結果は以下の表に示される。
【0178】
【表6】
【0179】
本発明の化合物によるキナーゼの阻害率。列は左から右へ:試験したキナーゼ-化合物
1-化合物2-化合物3。
結果は、本発明の化合物のそれぞれが、他のキナーゼと比較した場合、キナーゼAxlに対して優れた活性(95%、95%、及び94%阻害)を示すことを示し、結果は化合物ごとに異なる。
【0180】
本発明の化合物によるAxl及びFLT3のIC50阻害を計算するために、出発濃度から1/3段階希釈することによって各化合物1、2及び3の10濃度を調製した。Axl又はFLT3キナーゼをキナーゼバッファで2倍の濃度に希釈した。全てのATP溶液を4倍の使用濃度(50mM HEPES pH7.5、0.01% BRIJ(登録商標)-35、10mM MgCl2、1mM EGTA)に希釈する。
【0181】
IC50を計算するために、各化合物を100nM~0.00495nMの10種類の濃度でインキュベートする。
【0182】
結果は、図2に示され、以下の表にまとめられる。
【0183】
【表7】
【0184】
化合物1、2及び3は、2つのキナーゼAxl及びFLT3に対して優れた活性を示す。Axlは、FLT3の活性化において重要な役割を果たすため、化合物3は、FLT3と比較してAxlに関して選択性さえ示す。
【0185】
B-抗ウイルス評価
本発明の化合物は、感染性完全ウイルスの複製に対する分子の阻害効果を試験することにより、インビトロでの抗ウイルス活性について評価された。選択される細胞系(HeLa、A549、A549-ACE2細胞)は、想定される感染モデルに関連しており、フローサイトメトリでAxl分子の発現が検証される。
【0186】
【表8】
【0187】
1-ジカウイルスに対する抗ウイルス活性
試験は、96ウェルプレートで培養したHeLa株(子宮頸癌、ATCC#CCL-2)の2.5×10細胞を、化合物の濃度を増加させながら37℃で1時間プレインキュベートすることによって行われる。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%のCO2雰囲気下で培養する。次に、細胞を、化合物の存在下でZIKV BeH8株(MOI=0.1)に1時間曝露する。
【0188】
次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を阻害剤の存在下で24時間維持する。細胞の感染は、Luna社の標準的な1-ステップRT-PCRキットを使用したqRT-PCR、及びLuna社の標準的な1-ステップRT-PCRキットを使用したプライマー5’-CCGCTGCCCAACACAAGと5’-CCACTAACGTTCTTTTGCAGACATによって検出されたウイルスRNAを定量化することによって決定される。値(DCT)は、GAPDHのmRNAの定量化に対して正規化される。表される値は、3つの反復の平均+標準偏差である。
【0189】
対照条件は、試験した化合物の可溶化に使用される溶媒であるDMSOの存在下で細胞をインキュベートすることによって行われた。これらの条件下で使用されるDMSOの体積は、試験条件下で化合物によって提供される体積に対応する。
【0190】
同じ実験条件下で、
Bergenbio社が開発した臨床試験段階のAxl阻害剤であるR428/Bemcentinibを用いて並行治療を実施した。
【0191】
化合物1、2、3、10及び11で得られた結果は図3に示される。化合物1、10及びR428/ベムセイニブのIC50は、ソフトウェアGraphpad Prismによって決定された。
【0192】
これらの実験条件下では、150nM以上の濃度で使用される化合物1、2、3、10及び11は、ZIKV BeH-8株によるHeLa細胞の感染を防止する。これらの化合物のインビトロ有効性は、1~3μMの濃度でのZIKVウイルスに対する有効性について文献に記載されているR428/ベムセンチニブの有効性と少なくとも同等である。
【0193】
2-デング熱ウイルスに対する抗ウイルス活性
試験は、96ウェルプレートで培養したHeLa株(腺癌、ヒトの頸部、ATCC#CCL-2)の4×10細胞を、化合物の濃度を増加させながら1時間プレインキュベートすることによって行われる。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%のCO2雰囲気下で培養する。次に、細胞を、化合物の存在下で、キャプシドタンパク質をコードする配列の上流にナノルシフェラーゼ遺伝子を発現するDENVサブタイプ2株(DENV2)に1時間曝露する。次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を阻害剤の存在下で3日間維持する。
【0194】
細胞を受動的溶解バッファ(Promega)試薬によって溶解する。ウイルス感染は、試薬Genofax A(Yelen)の存在下、Infinite F200PRO(Tecan)蛍光光度計を使用して細胞溶解物中のナノルシフェラーゼ活性を定量することによって検出される。値は、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化され、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して562nmでの吸光度を測定することによって決定される。表される値は、3つの反復の平均+標準偏差である。対照条件は、上記と同様である。
【0195】
化合物10、11及び14について得られた結果は、図4に示される。
【0196】
これらの実験条件下では、500nM以上の濃度で使用される化合物10、11及び14は、サブタイプDENV2によるHeLa細胞の感染を防止する。
【0197】
3-WNVウイルスのクンジン株に対する抗ウイルス活性
試験は、96ウェルプレートで培養したHeLa株(ATCC#CCL-2)の4×10細胞を、化合物の濃度を増加させながら1時間プレインキュベートすることによって行われる。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%のCO2雰囲気下で培養する。次に、細胞を、化合物の存在下で、キャプシドタンパク質をコードする配列の上流にナノルシフェラーゼ遺伝子を発現するWNVウイルスのクンジン株に1時間曝露する。次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を阻害剤の存在下で24時間維持する。
【0198】
細胞を受動的溶解バッファ(Promega)試薬によって溶解する。ウイルス感染は、試薬Genofax A(Yelen)の存在下、Infinite F200PRO(Tecan)蛍光光度計を使用して細胞溶解物中のナノルシフェラーゼ活性を定量することによって検出される。値は、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化され、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して562nmでの吸光度を測定することによって決定される。表される値は、3つの反復の平均+標準偏差である。対照条件は、上記と同様である。
【0199】
化合物10について得られた結果は、図5に示される。
【0200】
これらの実験条件下では、500nM以上の濃度で使用される化合物10は、WNVのクンジン株によるHeLa細胞の感染を防止する。
【0201】
4-チクングニアウイルスに対する抗ウイルス活性
試験は、96ウェルプレートで培養したHeLa株(ATCC#CCL-2)の4×10細胞を、化合物の濃度を増加させながら1時間プレインキュベートすることによって行われる。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%のCO2雰囲気下で培養する。次に、細胞を、ルシフェラーゼ遺伝子、又はnsP3タンパク質をコードする配列の上流にあるGFPをコードする配列のいずれかを発現するCHIKVウイルスのLR-OPY1株に曝露する。細胞を化合物の存在下で1時間インキュベートする。
【0202】
次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を阻害剤の存在下で24時間維持する。ウイルス感染は、受動的溶解バッファ(Promega)試薬を使用した細胞溶解後に、GFPの蛍光を直接定量するか、Genofax A(Yelen)試薬の存在下でInfinite F200PRO(Tecan)蛍光光度計を使用して行われる細胞溶解物中のファイアフェラーゼ活性の定量化によって測定される。値は、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化され、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して562nmでの吸光度を測定することによって決定される。どちらのプロトコールでも、値は、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化され、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)によって測定される。表される値は、3つの反復の平均+標準偏差である。対照条件は、上記と同様である。
【0203】
化合物10について得られた結果は、図6に示される。
【0204】
これらの実験条件下では、100nM以上の濃度で使用される化合物10は、チクングニアウイルスによるHeLa細胞の感染を防止する。
【0205】
試験した各感染モデルについて、IC50活性化合物は、ソフトウェアGraphpad Prismによって決定された。
【0206】
【表9】
【0207】
これらの評価は、いくつかの化合物のEC50が1μM未満であることを示す。
【0208】
5-コロナウイルスSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性
SARS-CoV-2による感染に対する本発明の化合物の阻害活性を、この病原体の研究のための3つの関連系統の感染によってインビトロで評価した。それらの系統は、ミドリザル系統VeroE6(不死化腎臓上皮、ATCC#CRL-1586)、A549系統(肺上皮癌、ATCC#CCL-185)におけるACE2受容体のトランスフェクションによって産生されるA549-ACE2系統、市販の初代気管支上皮細胞(Mucilair Epithelix)である。
【0209】
a-VeroE6細胞及びA549-ACE2細胞における抗ウイルス活性の評価
感染試験は、96ウェルプレートで培養した4×10個のVeroE6又はA549-ACE2細胞を、示された濃度の化合物とともに1時間プレインキュベートすることによって行われる。細胞を、2%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%のCO2雰囲気下で培養する。次に、化合物の存在下で2時間、SARS-CoV-2ウイルスBetaCoV/France/IDF0371/2020(MOI=0.01)に細胞を曝露し、次に、化合物の存在下で、接種源を除去し、洗浄し、細胞を培養する。ウイルス攻撃の24時間後、Luna社の標準的な1-ステップRT-PCRキットを使用したqRT-PCRによるウイルスRNAの増幅によって感染を定量化する。値(DCT)は、GAPDH mRNAによって正規化される。表される値は、3つの反復の平均+標準偏差である。対照条件は、試験した化合物の可溶化に使用される溶媒であるDMSOの存在下で細胞をインキュベートすることによって行われた。これらの条件下で使用されるDMSOの体積は、試験条件下で化合物によって提供される体積に対応する。
【0210】
同じ実験条件下で、
Bergenbio社が開発した臨床試験段階のAxl阻害剤であるR428/Bemcentinibを用いて並行治療を実施した。
【0211】
化合物1、2、3、10及び14について得られた結果は、図7(VeroE6系統)及び8(A549-ACE2系統)に示される。
【0212】
これらの実験条件下では、化合物1、2、3、10及び14は、SARS-COV-2ウイルスによるVeroE6細胞及びA549-ACE2細胞の感染を防止する。
【0213】
化合物1、2及び3のIC50は、ソフトウェアGraphpad Prismを使用してVeroE6及びA549-ACE2細胞で決定された。
【0214】
得られた結果は、図9及び以下の表に示される。
【0215】
【表10】
【0216】
化合物1、2、3、10及び14は、インビトロで抗SARS-COV-2活性を示す。
b-ヒト上皮モデル抗ウイルス薬における抗ウイルス活性の評価
原発性気管支上皮の感染試験はモデルから行われた。
【0217】
MucilAir(商標)適切な培地(HAE培地、Epithelix)で培養されたヒト気道上皮細胞(Epithelix)。化合物を培養物の基底区画に加え、37℃で1時間プレインキュベートする。次に、ウイルス接種源(MOI=0.01)を化合物と同時に頂端区画に加える。37℃で2時間後、ウイルス接種源を除去し、試験化合物を含む培地に交換し、培養物を37℃で24時間維持する。細胞の感染は、Luna社の標準的な1-ステップRT-PCRキットを使用したqRT-PCRによって検出されるウイルスRNAの定量化によって決定される。値(DCT)は、GAPDH mRNAに関して正規化される。
【0218】
化合物1について得られた結果は、図10に示される。
【0219】
これらの評価は、化合物1がSARS-CoV-2.7による原発性気管支上皮の感染を阻害することを示す。SARS-CoV-2コロナウイルスに対する化合物#1の予防及び治療活性
【0220】
SARS-CoV-2による感染に対する化合物1の阻害活性は、A549系統におけるACE2受容体のトランスフェクションによって生成されたA549-ACE2系統(肺上皮癌、ATCC#CCL-185)a)及びミドリザル系統VeroE6(不死化腎臓上皮、ATCC#CRL-1586)の予防的治療(Pre-Tt)又は治癒的治療(Post-Tt)との関連でインビトロで評価される。
【0221】
感染試験は、96ウェルプレートで5%のCO2雰囲気下、2%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した4×10細胞に対して行われる。細胞を、SARS-CoV-2ウイルス、BetaCoV/France/IDF0371/2020(MOI=0.01)に曝露する。化合物を、感染の1時間前に細胞に加え、24時間維持し、又は感染の1時間前に細胞に加え、ウイルス攻撃の4時間後に洗浄して除去し、ウイルスに曝露してから4時間後に細胞に加え、24時間維持する(Post-Tt)。Luna社の標準的な1-ステップRT-PCRキットを使用したqRT-PCRによるウイルスRNAの増幅によって残留感染を定量化する。値(DCT)は、GAPDH mRNAに関して正規化される。
【0222】
対照条件は、試験した化合物の可溶化に使用される溶媒であるDMSO(SARS-CoV-2)の存在下で細胞をインキュベートすることによって行われた。これらの条件下で使用されるDMSOの体積は、試験条件下で化合物によって提供される体積に対応する。
【0223】
得られた結果は、図11に示される。
【0224】
これらの評価は、化合物の予防的使用がヒトA549-ACE2細胞及びVeroE6サル細胞におけるSARS-CoV-2による感染を阻害することを示す。ウイルス攻撃後の化合物の投与は、A549-ACE2細胞におけるウイルス増殖を減少させるが、I型インターフェロン産生の欠陥を特徴とするVeroE6系統では減少しない。
【0225】
結論として、試験した様々な感染モデルに対する活性化合物は、以下のとおりである。
【0226】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】