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特表2024-519986ホルミルグリシン含有ポリペプチドの切断を制御する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ホルミルグリシン含有ポリペプチドの切断を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C07K1/02 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572612
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022030922
(87)【国際公開番号】W WO2022251357
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/193,960
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520355792
【氏名又は名称】アール.ピー.シェーラー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ホルダー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】バーフィールド,ロビン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ラブカ,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク,ペネロペ・エム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ブレック,グレゴリー・ティー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA15
4H045FA72
4H045GA45
(57)【要約】
ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含むタンパク質の切断を低減するための方法が提供される。そのような方法は、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することを含み得る。また、本明細書で提供されるのは、標的領域におけるタンパク質の切断を誘導するための方法であって、標的領域が、fGlyアミノ酸を含む、方法である。本方法は、タンパク質を、フラビンの存在下で300nm~500nmの波長を含む可視光に曝露させることを含み得る。タンパク質の切断は、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子の存在下で行われ得る。タンパク質の切断は、フラビンの存在下で行われ得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含むタンパク質の切断を低減する方法であって、前記方法が、
500nm以下の波長を有する可視光への曝露から前記タンパク質を保護することを含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、細胞を培養することを含み、前記細胞が、前記タンパク質を含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露から前記タンパク質を保護することが、前記培養中に500nm超の波長を有する可視光を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質を合成することを含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露から前記タンパク質を保護することが、500nm超の波長を有する可視光の中で前記タンパク質を合成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質を精製することを含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露から前記タンパク質を保護することが、500nm超の波長を有する可視光の中で前記タンパク質を精製することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
精製することが、細胞又は前記細胞を含む細胞培養培地から前記タンパク質を単離することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
500nm超の波長を有する前記可視光が、500nm超かつ620nm未満の波長を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
500nm超の波長を有する前記可視光が、緑色の光、黄色の光、及び/又は橙色の光に限定される可視光を生成する光源によって生成される、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
500nm超の波長を有する前記可視光が、可視光を、380nm~500nmの範囲の可視光の透過を大幅に遮断するフィルタを通過させることによって生成される、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、細胞を培養することを含み、前記細胞が、前記タンパク質を含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露から前記タンパク質を保護することが、可視光の不在下で前記細胞を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質を合成することを含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露から前記タンパク質を保護することが、可視光の不在下で前記タンパク質を合成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質の前記切断が、前記fGlyアミノ酸において、又は前記fGlyアミノ酸に隣接して生じる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記fGlyアミノ酸が、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位において生成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記FGE認識部位が、コンセンサス配列XC/SXP/AXRを含み、Xが、存在するか、又は不在であり、存在する場合、任意のアミノ酸であり、ただし、前記FGE認識部位が、前記タンパク質のN末端にある場合、Xが、存在し、X及びXが、各々独立して、任意のアミノ酸であることを条件とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記FGE認識部位が、配列LCTPSRを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記FGE認識部位が、コンセンサス配列XSXPXRを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記FGE認識部位が、配列LSTPSRを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記FGE認識部位が、コンセンサス配列XCXAXRを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記FGE認識部位が、配列LCTASRを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記FGE認識部位が、配列LCTASAを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質が、抗体及び/又は治療用タンパク質である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記タンパク質の切断が、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子の存在下で生じる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記分子が、500nm以下の波長を有する可視光への曝露によって光活性化される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質の切断が、フラビンの存在下で生じる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記フラビンが、リボフラビンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記フラビンが、フラビンモノヌクレオチド又はフラビンアデニンジヌクレオチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
標的領域においてタンパク質の切断を誘導する方法であって、前記標的領域が、ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含み、前記方法が、
前記タンパク質を、300nm~500nmの波長を含む光に曝露させることを含む、方法。
【請求項27】
前記光が、325nm~495nmの間の波長に限定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記fGlyアミノ酸を前記標的領域に導入することを含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質を前記光に曝露させることが、
前記光の中で前記タンパク質を含む細胞を培養すること、及び/又は
前記光の中で前記タンパク質を精製すること、を含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記タンパク質の前記切断が、前記fGlyアミノ酸において、又は前記fGlyアミノ酸に隣接して生じる、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記fGlyアミノ酸が、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位において生成される、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記FGE認識部位が、コンセンサス配列XC/SXP/AXRを含み、Xが、存在するか、又は不在であり、存在する場合、任意のアミノ酸であり、ただし、前記FGE認識部位が、前記タンパク質のN末端にある場合、Xが、存在し、X及びXが、各々独立して、任意のアミノ酸であることを条件とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記FGE認識部位が、配列LCTPSRを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記FGE認識部位が、コンセンサス配列XSXPXRを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記FGE認識部位が、配列LSTPSRを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記FGE認識部位が、コンセンサス配列XCXAXRを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記FGE認識部位が、配列LCTASRを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記FGE認識部位が、配列LCTASAを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、前記標的領域にホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位を導入することを含む、請求項26~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質が、Fc領域を含む抗体であり、前記標的領域が、前記抗体の前記Fc領域とCH1ドメインとの間に位置する、請求項26~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質が、精製タグを含み、前記標的領域が、前記タンパク質配列と前記精製タグとの間に位置する、請求項26~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
光活性化されて一重項酸素種を放出する分子の存在下で、前記タンパク質を300nm~500nmの波長を含む光に曝露させることを含む、請求項26~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記分子が、500nm以下の波長を有する可視光への曝露によって光活性化される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記タンパク質を、フラビンの存在下で300nm~500nmの波長を含む光に曝露させることを含む、請求項26~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記フラビンが、リボフラビンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記フラビンが、フラビンモノヌクレオチド又はフラビンアデニンジヌクレオチドである、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月27日出願の米国仮特許出願第63/193,690号の利益を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
部位特異的標識又は部位特異的切断のためのタンパク質の修飾のための戦略は、研究及び治療薬におけるそのようなタンパク質の重要性に起因して、広く研究されている。ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含むタンパク質は、目的の部分の部位特異的付着のための化学ハンドルとしてfGlyアミノ酸のアルデヒド部分を利用することによって、標識することができる。タンパク質は、多くの場合、例えば、精製タグを除去するための切断を必要とするタンパク質又はペプチドなどのタグと融合される。そのようなタグは、通常、切断可能なリンカー配列を介してタンパク質に融合される。
【発明の概要】
【0003】
ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含むタンパク質の切断を低減するための方法が提供される。そのような方法は、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することを含み得る。また、本明細書で提供されるのは、標的領域におけるタンパク質の切断を誘導するための方法であって、標的領域が、fGlyアミノ酸を含む、方法である。本方法は、タンパク質を、フラビンの存在下で300nm~500nmの波長を含む可視光に曝露させることを含み得る。タンパク質の切断は、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子の存在下で行われ得る。タンパク質の切断は、フラビンの存在下で行われ得る。
【0004】
図面には、以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】アルデヒドタグ付き抗体調製物のSDS-PAGE。
図2】アルデヒドタグ付き抗体調製物のSDS-PAGE。
図3】細胞培養培地中、又は20mMのクエン酸ナトリウム、50mMの塩化ナトリウム中のいずれかで光に曝露させたfGly含有モノクローナル抗体のHPLC。
図4】光への曝露前後のfGly含有タンパク質調製物中の抗体断片の質量分析の要約。
図5】fGly含有抗体の切断に対するビタミンB12対細胞培養培地の影響の分析。
図6A】fGly含有抗体の切断に対するリボフラビン及び光の影響の分析。
図6B】fGly含有抗体の切断に対するチアミン及び光の影響の分析。
図7A】fGlyペプチド、ALfGlyTPSRGSLFTGR(配列番号1)の切断に対するリボフラビン及び光の影響の分析。
図7B】fGlyペプチド、ALfGlyTPSRGSLFTGR(配列番号1)の切断に対するチアミン及び光の影響の分析。
図8A】逆相クロマトグラフィーによって検出される、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)ペプチドのリボフラビン及び光が媒介する切断は、N及びC末端断片をもたらす。S.M.=出発物質。
図8B】リボフラビン及び光の存在下で、ALfGlyTPSRGSLFTGR(配列番号1)及びGPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)の切断後に観察されたペプチド断片の質量分析。
図9A】ランプ出力、列挙されたフィルタを透過させた光、及びリボフラビン吸収スペクトルの強度及び波長を示す。
図9B】列挙されたフィルタ及び白色の光と関連付けられる光作用(photoaction)スペクトルを示す。
図9C】リボフラビン、及びバンドパスフィルタを用いるか又は用いない光でインキュベートし、HPLCによって分析した、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)ペプチドの切断の結果。
図10】fGly含有タンパク質のリボフラビンが媒介する切断の動態。
図11A】変動するタンパク質量によって評価した、切断に対するリボフラビン対fGly含有タンパクの比の影響。
図11B】変動するリボフラビン量によって評価した、切断に対するリボフラビン対fGly含有タンパクの比の影響。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明について記載する前に、本発明は、記載の特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら、変動し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためにすぎず、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0007】
値の範囲が提供される場合、文脈上別段の指示のない限り、その範囲の上限と下限との間の各介在値も、下限のユニットの10分の1まで具体的に開示されていることを理解されたい。任意の記載値又は記載された範囲内の間に介在する値と、任意の他の記載値又はその記載された範囲内の間に介在する値との間の、各より小さい範囲が、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して範囲に含まれていても、除外されていてもよく、いずれか、どちらでもない、又は両方の限定が小さい範囲に含まれている各範囲も、記載された範囲の中で任意の具体的に除外された限定に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が、限定の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限定のうちのいずれか又は両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0008】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と同様又は均等な任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用され得るが、いくつかの潜在的かつ例示的な方法及び材料がここで記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、引用された刊行物に関連する方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示は、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先されることを理解されたい。
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈による明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことが留意される必要がある。したがって、例えば、「アルデヒドタグ」への言及は、複数のそのようなタグを含み、「ポリペプチド」への言及は、当業者に既知の1つ以上のポリペプチド及びその均等物への言及などを含む。
【0010】
特許請求の範囲は、任意選択であり得る任意の要素を除外するように試案され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、請求項要素の列挙に関連して、「単に」、「のみ」などのそのような排他的な用語の使用、又は「否定的な」限定の使用に対する前提的な根拠として機能することが意図される。
【0011】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前に専らそれらの開示のために提供されている。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような公開に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0012】
定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指すために、本明細書では交換可能に使用される。別段の特定の指示がない限り、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、遺伝子的にコードされるアミノ酸及びコードされないアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾されるか、若しくは誘導体化されるアミノ酸、並びに修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。用語は、限定されないが、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種及び相同リーダー配列を有する融合、少なくとも1つのN末端メチオニン残基を含むタンパク質(例えば、組換え細菌宿主細胞において産生を容易にする)を含む融合タンパク質、免疫学的にタグ付きタンパク質などを含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。
【0013】
「標的ポリペプチド」は、本明細書に記載のfGlyアミノ酸を含むように修飾されているポリペプチドを指すために本明細書で使用される。修飾は、その後、目的の部分の付着又はポリペプチドの切断に使用され得る。
【0014】
本明細書で使用される「標的領域」は、タンパク質の切断が所望される、タンパク質中の配列を指す。標的領域は、スルファターゼモチーフを含み得る。
【0015】
「アルデヒドタグ」又は「ald-タグ」とは、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用によって、2-ホルミルグリシン残基(本明細書では「fGly」と称される)を含有するように変換されているスルファターゼモチーフに由来するアミノ酸配列を含有する、アミノ酸配列を意味する。そのようなスルファターゼモチーフは、本明細書では、FGE認識部位(FRS)と称される。FGEによって生成されるfGly残基は、「ホルミルグリシン」又は「2-ホルミルグリシン」とも称され得る。言い換えれば、「アルデヒドタグ」という用語は、「変換された」スルファターゼモチーフ(すなわち、FGEの作用によって、システイン又はセリン残基がfGlyに変換されているスルファターゼモチーフを含むアミノ酸配列を指すために本明細書で使用される。変換されたスルファターゼモチーフは、「変換されていない」スルファターゼモチーフ(すなわち、FGEによって、システイン又はセリン残基がfGlyに変換されていないが、変換されることが可能であるスルファターゼモチーフ)を含むアミノ酸配列から産生され得る。スルファターゼモチーフに対するFGEの作用の文脈において使用される「変換」とは、スルファターゼモチーフにおけるシステイン又はセリン残基のホルミルグリシン(fGly)残基への(例えば、CysからfGlyへの、又はSerからfGlyへの)生化学的修飾を指す。部位特異的タンパク質修飾におけるアルデヒドタグ及びその使用の更なる態様は、米国特許第7,985,783号及び同第8,729,232号に記載されており、これらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
スルファターゼモチーフに対するホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用の文脈において使用される際の「変換」は、スルファターゼモチーフにおいてホルミルグリシン(fGly)残基(例えば、CysからfGlyへ、又はSerからfGlyへ)へのシステイン又はセリン残基の生化学的修飾を指す。
【0017】
「天然アミノ酸配列」又は「親アミノ酸配列」は、標的ポリペプチドの文脈において本明細書では交換可能に使用され、少なくとも1つの異種FGE認識部位(FRS)を含むように修飾される前の標的ポリペプチドのアミノ酸配列を指す。
【0018】
ポリペプチド、ペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列に関して使用される「遺伝子的にコード可能な」は、アミノ酸配列が、そのアミノ酸配列をコードする核酸の転写及び翻訳によって産生することができるアミノ酸残基から構成され、転写及び/又は翻訳が、細胞中、又は無細胞インビトロ転写/翻訳系において生じ得ることを意味する。
【0019】
「制御配列」という用語は、特定の発現系、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、無細胞合成などにおいて操作可能に連結されたコード配列の発現を容易にするDNA配列を指す。原核生物系に好適である制御配列は、例えば、プロモータ、任意選択でオペレータ配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞系は、プロモータ、ポリアデニレーションシグナル、及びエンハンサを利用し得る。
【0020】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、「操作可能に連結されている」。例えば、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合には、プレ配列若しくは分泌リーダーをコードする核酸は、ポリペプチドをコードする別の核酸に操作可能に連結され、配列の転写に影響を与える場合には、プロモータ若しくはエンハンサが、コード配列に操作可能に連結されるか、又は翻訳の開始を容易にするように位置する場合には、リボソーム結合部位が、コード配列に操作可能に連結される。
【0021】
本明細書で使用される「発現カセット」という用語は、(例えば、目的の構築物へのライゲーションと適合性のある制限部位の使用によって、又は目的の構築物へ、若しくは宿主細胞ゲノムへの相同組換えによって)核酸に挿入することができる、核酸(通常はDNA)のセグメントを指す。概して、核酸セグメントは、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、カセット及び制限部位は、転写及び翻訳のための適切なリーディングフレームへのカセットの挿入を容易にするように設計される。発現カセットはまた、宿主細胞中で対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を容易にする要素を含む。これらの要素としては、限定されないが、プロモータ、最小プロモータ、エンハンサ、応答要素、ターミネータ配列、ポリアデニル化配列などが挙げられ得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、化合物が天然で存在するものとは異なる環境にある目的の化合物を説明することを意味する。「単離された」は、目的の化合物が実質的に濃縮されており、かつ/又は目的の化合物が部分的若しくは実質的に精製されている、試料内にある化合物を含むことを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「実質的に精製された」という用語は、その天然環境から除去され、天然に関連する他の構成要素を少なくとも60%含まず、通常75%含まず、ほとんどの場合、通常90%含まない化合物を指す。
【0024】
「生理学的条件」という用語は、生細胞と適合性のあるそれらの条件、例えば、生細胞と適合性のある温度、pH、塩分などの主に水性条件を包含することを意味する。
【0025】
「異種」とは、第1の実体及び第2の実体(又はそれ以上の実体)が、通常は天然では見出されない関連で提供されることを意味する。例えば、第1の配列及び第2の配列を含有するタンパク質であって、2つの配列が天然の単一のタンパク質中に存在しない。
【0026】
「N末端」は、遊離アミン基を有するポリペプチドの末端アミノ酸残基を指し、非N末端アミノ酸残基中のアミン基が、通常、ポリペプチドの共有結合性骨格の一部を形成する。
【0027】
「C末端」は、遊離カルボキシル基を有するポリペプチドの末端アミノ酸残基を指し、非C末端アミノ酸残基中のカルボキシル基が、通常、ポリペプチドの共有結合性骨格の一部を形成する。
【0028】
「N末端」とは、C末端よりもN末端に近い、ポリペプチドの領域を意味する。
【0029】
「C末端」とは、N末端よりもC末端に近い、ポリペプチドの領域を意味する。
【0030】
「可視光」及び「光」という用語は、人間の目が見ることができる電磁スペクトルのセグメントを指すために、本明細書では交換可能に使用される。典型的には、健康なヒトの眼は、波長が可視光スペクトルを形成する、約380nm~約700nmの範囲の波長を検出することができる。可視光スペクトルは、6つの異なる色を含む。赤色の光は、約700nm~約620nmの波長を有する。橙色の光は、約620nm~約597nmの波長を有する。黄色の光は、約597nm~約577nmの波長を有する。緑色の光は、約577nm~約492nmの波長を有する。青色の光は、約492nm~約455nmの波長を有する。紫色の光は、約455nm~約380nmの波長を有する。
【0031】
本明細書で使用される「フラビン」という用語は、リボフラビン、並びにフラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラボセミキノン、スルホリボフラビン、リボフラビンのエステル誘導体、リボフラビンテトラカルボキシレート、リボフラビン酢酸、リボフラビンテトラアセテート、リボフラビンプロピオン酸、ロセオフラビンなどのその誘導体及び類似体を指す。リボフラビンは、ビタミンB2としても知られている。
【0032】
FGLY含有タンパク質の光クリッピングを低減する方法
ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含むタンパク質の切断を低減する方法が提供される。本方法は、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することを含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、タンパク質の切断は、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子の存在下で、例えば、分子も含む溶液中にタンパク質が存在する場合に、生じ得る。ある特定の実施形態では、分子は、500nm以下、例えば、300nm~500nmの波長を有する可視光への曝露によって光活性化される。ある特定の実施形態では、タンパク質の切断は、フラビンの存在下、例えば、フラビンも含む溶液中に、タンパク質が存在する場合に生じ得る。ある特定の実施形態では、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子は、フラビンであり得、例えば、フラビンは、500nm以下、例えば、300nm~500nmの波長を有する可視光への曝露によって光活性化される。ある特定の実施形態では、タンパク質の切断は、タンパク質を発現する細胞、細胞培養培地、又はその両方で生じ得る。細胞培養培地は、原核細胞又は真核細胞などの細胞を培養するために使用される、任意の標準的な成長培地であり得る。
【0034】
ある特定の実施形態では、本方法は、細胞を培養することを含み、細胞が、タンパク質を発現し、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、培養中に500nm超の波長を有する可視光を使用することを含む。例えば、500nm超の波長に限定された周囲光、すなわち、500nm以下の波長を有する光を含まない周囲光の中で、細胞培養物はインキュベート及び/又は取り扱われ得る。ある特定の実施形態では、細胞培養物を取り扱うことは、細胞から細胞培養培地を分離するステップを含み得、このステップは、500nm超の波長を有する光の中で実施される。したがって、培養中及び/又は細胞からの培養培地の分離中にタンパク質が曝露される可視光は、赤色の光、緑色の光(例えば、500nm~577nmの波長)、黄色の光、及び橙色の光のうちの1つ以上に限定され得る。ある特定の実施形態では、培養中及び/又は細胞からの培養培地の分離中にタンパク質が曝露される可視光は、緑色の光、黄色の光、及び橙色の光のうちの1つ以上に限定され得、赤色の光は含まれない。
【0035】
ある特定の実施形態では、細胞培養物は、実質的な量の可視光がインキュベータに入ることを可能にしないインキュベータ内に配置され得る。そのようなインキュベータは、光に対して実質的に不透過性である不透明な材料から作製されるインキュベータであり得る。加えて、インキュベータは、周囲光が500nm超の波長を有するように収容され得、インキュベータドアが開かれ、細胞培養物が周囲光に曝露されるときに、500nm以下の波長を有する可視光への曝露に起因する切断から、そのような周囲光がタンパク質を保護する。ある特定の実施形態では、細胞培養物は、例えば、ガラスのドアを通じて、実質的な量の可視光がインキュベータに入ることを可能にするインキュベータ内に配置され得る。そのような実施形態では、インキュベータの周りの周囲光は、500nm超の波長の光に限定され得る。ある特定の実施形態では、細胞培養物を、500nm以下の波長を有する光に対して不透過性である容器内で成長させ、それによって、500nm以下の波長を有する光への曝露から細胞培養物中の細胞によって発現されるタンパク質を保護する。ある特定の実施形態では、の切断を低減するための方法は、可視光の不在下でタンパク質を培養することを含み得る。
【0036】
ある特定の実施形態では、方法は、タンパク質を合成することを含み得、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、500nm超の波長に限定された可視光の中でタンパク質を合成することを含む、すなわち、可視光は、500nm以下の波長を有する光を含まない。ある特定の実施形態では、タンパク質が合成中に曝露される可視光の部分は、赤色の光、緑色の光(例えば、500nm~577nmの波長)、黄色の光、及び橙色の光のうちの1つ以上に限定され得る。ある特定の実施形態では、タンパク質が合成中に曝露される可視光の部分は、緑色の光(例えば、500nm~577nmの波長)、黄色の光、及び橙色の光のうちの1つ以上に限定され得、赤色の光は含まない。ある特定の実施形態では、切断を低減するための方法は、可視光の不在下でタンパク質を合成することを含み得る。
【0037】
ある特定の実施形態では、本方法は、細胞培養培地からタンパク質を精製することを含み得、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、500nm超の波長に限定された可視光の中でタンパク質を精製することを含む。ある特定の実施形態では、タンパク質が精製中に曝露される可視光の部分は、赤色の光、緑色の光(例えば、500nm~577nmの波長)、黄色の光、及び橙色の光のうちの1つ以上に限定され得る。ある特定の実施形態では、タンパク質が精製中に曝露される可視光の部分は、緑色の光(例えば、500nm~577nmの波長)、黄色の光、及び橙色の光のうちの1つ以上に限定され得、赤色の光は含まない。ある特定の実施形態では、の切断を低減するための方法は、可視光の不在下でタンパク質を精製することを含み得る。ある特定の実施形態では、タンパク質を精製することは、細胞を細胞培養培地から分離すること、タンパク質が細胞内若しくは細胞上に位置する場合に細胞を処理すること、又はタンパク質が分泌される場合に細胞培養培地を処理することを含み得る。タンパク質が細胞内又は細胞上に位置する場合、細胞を処理することは、細胞を溶解させることを含み得る。
【0038】
タンパク質の培養、合成、及び/又は精製に使用される可視光は、500nm超であり得、例えば、500nm超の波長を有する可視光は、510nm超、520nm超、530nm超、540nm超、550nm超、又は最大約700nmまでの波長を有する可視光であり得る。ある特定の実施形態では、タンパク質を培養、合成、及び/又は精製するために使用される可視光は、500nm超かつ620nm未満であり得、例えば、500nm超の波長を有する可視光は、510nm~620nm未満、520nm~620nm未満、530nm~620nm未満、540nm~620nm未満、又は550nm~620nm未満の範囲の波長を有する可視光であり得る。
【0039】
ある特定の実施形態では、ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含むタンパク質の切断を低減するための方法は、500nm~380nmの範囲の波長を有する光へのタンパク質の曝露を避けながら、タンパク質を550nm~610nmの波長の光に限定された可視光に曝露させることを含み得る。ある特定の実施形態では、タンパク質は、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子を含む溶液中に存在し得る。ある特定の実施形態では、タンパク質は、フラビンを含む溶液中に存在し得る。
【0040】
ある特定の実施形態では、500nm超の波長を有する可視光は、約380nm~約700nm(例えば、400nm~700nm)の波長の光を含む可視光を、380nm~500nmの範囲の可視光の透過を大幅に遮断するフィルタを通過させることによって生成される。ある特定の実施形態では、380nm~500nmの範囲の可視光の透過を遮断するために、1つ以上のフィルタが利用され得る。1つ又は複数のフィルタは、380nm~500nmの波長の光を含む光を生成する光源に隣接して位置され得る。ある特定の実施形態では、500nm超の波長を有する可視光は、そのような光を生成し、380nm~500nmの波長範囲の光を生成しない光源を使用することによって生成される。
【0041】
ある特定の実施形態では、1つ又は複数のフィルタは、バンドパスフィルタであり得る。バンドパスフィルタは、干渉フィルタであり得、例えば、積み重ねられた構成で配置された分布ブラッグ反射器(DBR)を備え得る。DBRは、個々に使用される場合、狭線幅反射器として作用し得るが、近接して(例えば、透過波長に関連する指定された距離で)積み重ねられた構成で配置されると、DBRは、帯域の外側で高い反射度を有する狭帯域透過フィルタとして作用し得る。一実施形態によれば、バンドパスフィルタは、他の材料を使用することが可能であるが、ヒ化ガリウム(GaAs)などの材料を含み得る。バンドパスフィルタとして使用するためのDBRは、GaAs、並びに他の同様の材料(例えば、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)及び他)の堆積を介して製作することができる。異なる屈折率を有するGaAsのドープされたバージョンは、DBRに必要な構造を生成することができる。最も単純な形態のバンドパスフィルタは、数ナノメートル(nm)程度の比較的狭いバンドパス(例えば、透過帯域)を有する。しかしながら、2つのDBR間の異なる屈折率を使用することによって、又はDBRの層の厚さを変動させることによって、帯域幅は、これよりも実質的に広く(例えば、数十~数百nm)なるように調整され得る。
【0042】
光源としては、限定されないが、LEDランプ、白熱ランプ、蛍光ランプ、及びレーザーが挙げられる。レーザー又はLEDの場合、フィルタは必要ではない場合があり、代わりに、出力は、所望の波長範囲内であり得る。例えば、タンパク質光クリッピングを保護するために、緑色LED(例えば、500nm~577nmの波長)、黄色LED、橙色LED、又は赤色LEDのうちの1つ以上が光源として使用され得る。ある特定の実施形態では、光クリッピングは、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子によって媒介され得る。ある特定の実施形態では、光クリッピングは、フラビンによって媒介され得る。
【0043】
ある特定の実施形態では、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子は、フラビンであり得る。ある特定の実施形態では、フラビンは、リボフラビン、FMN、又はFADであり得る。ある特定の実施形態では、フラビンは、フラボセミキノン、スルホリボフラビン、リボフラビンのエステル誘導体、リボフラビンテトラカルボキシレート、リボフラビン酢酸、リボフラビンテトラアセテート、リボフラビンプロピオン酸、又はロセオフラビンであり得る。
【0044】
fGly残基を含むタンパク質は、fGly残基を含むように修飾されている任意のタンパク質であり得る。このタンパク質は、本明細書では標的タンパク質とも称される。標的タンパク質は、2つ以上のfGly残基、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、又は最大10個以上のfGly残基を含み得る。いくつかの実施形態では、fGly残基は、化学合成を使用して導入される。他の実施形態では、標的タンパク質は、FGE認識部位に存在するシステイン又はセリン残基に対するFGEの作用の結果としてfGly残基が存在する、タンパク質であり得る。FGE認識部位は、本明細書ではスルファターゼモチーフとも称される。
【0045】
ある特定の実施形態では、fGly残基は、タンパク質コンフォメーションに悪影響を及ぼさない位置の標的ポリペプチドに位置する。いくつかの実施形態では、FGE認識部位(FRS)は、折り畳まれている場合(例えば、無細胞環境、通常は、無細胞生理学的環境において)及び/又は細胞膜内又は細胞膜上に提示される場合(例えば、膜貫通タンパク質などの細胞膜会合ポリペプチドでは)、その構造を考慮して、標的ポリペプチドに位置することが望ましい。例えば、FRSは、折り畳まれた標的ポリペプチドの溶媒アクセス可能な部位に位置し得る。したがって、折り畳まれたポリペプチドの溶媒アクセス可能なFRSは、セリン又はシステインのfGlyへの変換のためにFGEにアクセス可能である。同様に、アルデヒドタグ付きポリペプチドの溶媒アクセス可能なfGly残基は、目的の部分へのコンジュゲートのための反応性パートナー試薬にアクセス可能である。FRSが溶媒アクセス可能な部位に位置する場合、タンパク質を変性させることを必要とせずに、FGEが媒介するインビトロでの変換、及び反応性パートナーとの反応による部分とのコンジュゲーションを実施することができる。また、溶媒アクセス可能な部位としては、(例えば、標的ポリペプチドの膜貫通領域以外の)宿主細胞内で発現される場合、細胞外又は細胞内細胞表面で曝露される、標的ポリペプチド領域を挙げることができる。
【0046】
したがって、1つ以上のFRSは、例えば、溶媒アクセス可能なN末端、溶媒アクセス可能なN末端領域、溶媒アクセス可能なC末端、溶媒アクセス可能なC末端領域、及び/又はループ構造(例えば、細胞外ループ構造及び/又は細胞内ループ構造)から独立して選択される部位に提供され得る。いくつかの実施形態では、FRSは、ポリペプチドのC末端以外の部位に位置する。他の実施形態では、FRSが位置するポリペプチドは、全長ポリペプチドである。
【0047】
他の実施形態では、FRSは、天然標的ポリペプチドにおいて翻訳後修飾されている部位に位置する。例えば、FRSは、天然標的ポリペプチドにおけるグリコシル化(例えば、N-グリコシル化、O-グリコシル化)、リン酸化、硫酸化、ユビキチン化、アシル化、メチル化、プレニル化、ヒドロキシル化、カルボキシル化の部位などに導入され得る。多様な翻訳後修飾部位のコンセンサス配列、及びポリペプチドにおける翻訳後修飾部位の同定のための方法は、当該技術分野で周知である。翻訳後修飾部位は、ポリペプチドの天然に存在する部位、又は(例えば、EPOのハイパーグリコシル化バリアントのグリコシル化部位におけるように)ポリペプチドに(例えば、組換え技法を介して)非天然である翻訳後修飾部位を含むように操作されているそのような部位であり得ることが理解される。後者の実施形態では、非天然翻訳後修飾部位を有し、目的の生物学的活性を呈することが実証されているポリペプチドは、特定の目的のものである。
【0048】
FRSは、(例えば、天然アミノ酸配列内の5又は6つのアミノ酸残基挿入を提供するような)挿入によって、又は(例えば、標的ポリペプチドのN又はC末端での)付加によって、標的ポリペプチドに提供され得る。FRSはまた、FRSの連続したアミノ酸配列を用いる天然アミノ酸残基の完全な又は部分的な置換によって提供され得る。例えば、異種FRSは、天然アミノ酸配列の1、2、3、4、又は5つ(又は1、2、3、4、5、又は6つ)のアミノ酸残基を、FRSの対応するアミノ酸残基で置き換えることによって、標的ポリペプチドに提供され得る。アルデヒドタグのfGlyの同じ部分又は異なる部分の付着を提供するために、2つ以上のFRSを有する標的ポリペプチドが使用され得る。
【0049】
標的ポリペプチドは、任意のタンパク質又はペプチド、例えば、組換えタンパク質又はペプチドであり得る。標的ポリペプチドは、融合タンパク質、抗体(IgG1、2、3、4、IgM、IgA)、酵素(例えば、プロテアーゼ)、ホルモン、成長因子、受容体、リガンド、糖タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質など、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。標的タンパク質の例としては、サイトカインが挙げられ、サイトカインは、インターフェロン(例えば、IFN-γなど)、ケモカイン、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17など)、リンホカイン、腫瘍壊死因子(例えば、TNF-αなど)、形質転換成長因子β(TGFβ)などであり得る。一実施形態では、標的ポリペプチドは、治療利益、特に、部分への付着が、例えば、標的薬物送達、血清半減期の増加、有害な免疫応答の減少、追加若しくは代替的な生物学的活性若しくは機能性など、又は有害な副作用の他の利益若しくは低減のうちの1つ以上を提供することができるポリペプチドを提供し得る。治療用ポリペプチドが、ワクチン用の抗原である場合、修飾は、ポリペプチドの免疫原性の向上を提供することができる。
【0050】
治療用タンパク質のクラスの例としては、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ホルモン、抗体、及び抗原であるものが挙げられる。更なる例としては、エリスロポエチン、ヒト成長ホルモン(hGH)、ウシ成長ホルモン(bGH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インターフェロン(例えば、IFN-ガンマ、IFN-ベータ、IFN-アルファ、IFN-オメガ、コンセンサスインターフェロンなど)、インスリン、インスリン様成長因子(例えば、IGF-I、IGF-IIなど)、血液因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)など)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球-CSF(G-CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)など)、形質転換成長因子(例えば、TGF-ベータ、TGF-アルファ)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-12など)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF、例えば、aFGF、bFGF)、グリア細胞株由来成長因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、RANTESなどが挙げられる。
【0051】
更なる例としては、抗体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗原結合断片(例えば、F(ab)’、Fab、Fv)、一本鎖抗体、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)、IgM、IgAなどが挙げられる。特に目的のものは、腫瘍抗原、免疫細胞抗原(例えば、CD4、CD8など)、微生物の抗原、特に病原性微生物(例えば、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生抗原)などに特異的に結合する抗体である。fGly残基を使用して付着することができる目的の部分としては、薬物(例えば、低分子)、ポリマー(例えば、PEG)、検出可能な標識などが挙げられる。
【0052】
作業実施例に説明されるように、細胞培養培地中に存在するリボフラビンは、可視光、特に、リボフラビンによって吸収される380~500nmの範囲の波長を有する光に曝露すると、細胞によって発現されるfGlyタンパク質の切断を引き起こす。したがって、本明細書に開示される方法では、少なくとも、タンパク質がリボフラビン又はその誘導体若しくは類似体から分離されるまで、380~500nmの範囲の波長を有する光への曝露を限定することによって、標的タンパク質は、切断から保護される。
【0053】
FGLY含有タンパク質の光クリッピングを誘導する方法
標的領域がホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含む、標的領域においてタンパク質の切断を誘導する方法が開示される。本方法は、タンパク質を、300nm~500nmの波長を含む光に曝露させることを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、タンパク質を325nm~500nm、325nm~495nm、350nm~500nm、350nm~480nm、又は350nm~450nmの波長を有する光に曝露させることを含み得る。ある特定の実施形態では、光は、300nm~500nmの波長に限定され、500nm超、例えば、510nm~700nmの波長の光を含まない。
【0054】
ある特定の実施形態では、タンパク質は、細胞培養培地、例えば、E.coliなどの原核細胞を培養するために使用される標準的な成長培地、又は哺乳動物細胞などの真核細胞を培養するために使用される標準的な成長培地中に存在し得る。ある特定の実施形態では、タンパク質は、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子を含む溶液中に存在し得る。ある特定の実施形態では、分子は、塩素、ポルフィセン、フタロシアニン、及びナフタロシアニンなどのポルフィリン及びそれらのテトラピロール類似体などの光増感剤である。本明細書で使用される場合、光増感剤という用語は、可視光の吸収によって光活性化され、一重項酸素種を放出する分子を指す。ある特定の実施形態では、分子は、380nm~500nmの波長の可視光を吸収する。ある特定の実施形態では、タンパク質は、フラビンを含む溶液中に存在し得る。ある特定の実施形態では、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子は、フラビンであり得る。ある特定の実施形態では、標的領域がfGlyアミノ酸を含む、標的領域におけるタンパク質の切断を誘導する方法は、タンパク質及び光増感剤を含む溶液を可視光に曝露させることを含み得る。光増感剤は、可視光の吸収によって光活性化され、一重項酸素種を放出する任意の分子であり得る。実施例の段落で説明されているように、リボフラビンは、可視光に曝露されるとfGly含有タンパク質の切断を媒介する光増感剤である。
【0055】
曝露の長さ及び/又は分子(例えば、フラビン)の量は、変動させてもよく、経験的に決定することができる。タンパク質が光に曝露される期間はまた、光の強度及び/又は分子(例えば、フラビン)の濃度及び/又は温度を増加させることによって、変動させてもよい。ある特定の実施形態では、タンパク質及び分子(例えば、フラビン)を含有する溶液は、1分~48時間、3分~40時間、5分~36時間、10分~24時間、15分~20時間、20分~10時間、1分~1時間、3分~30分、1分~30分、5分~30分、又は10分~30分の期間の間、300nm~500nmの波長を含む光に曝露され得る。溶液中の分子(例えば、リボフラビンなどのフラビン)の濃度は、少なくとも0.001μM、0.01μM、0.03μM、0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、5μM、10μM、又はそれ以上、例えば、最大20μMであり得る。fGly残基での光クリッピングを誘導するためにタンパク質を光に曝露させる場合、タンパク質及び分子(例えば、フラビン)を含む溶液は、4℃、室温、37℃、又はより高い温度、例えば、最大60℃、又は約4℃~60℃の間の任意の温度でインキュベートされ得る。
【0056】
ある特定の実施形態では、タンパク質は、LEDランプ、白熱ランプ、蛍光ランプ、又はレーザーなどの任意の好適な光源を使用することによって、分子(例えば、フラビン)の存在下で可視光に曝露され得る。タンパク質のフラビンが媒介する(例えば、リボフラビンが媒介する)光クリッピングを誘導するために、例えば、紫色LED、青色LED、又は紫色及び青色LEDが使用され得る。
【0057】
光に曝露されるタンパク質及び分子(例えば、フラビン)を含有する溶液は、緩衝液、例えば、7~8、例えば、約7.4のpHを有する緩衝液を含む、溶液であり得る。ある特定の実施形態では、タンパク質は、細胞によって発現されるタンパク質であり得、ある特定の実施形態では、タンパク質を発現する細胞から細胞培養培地中に分泌される。そのような実施形態では、細胞培養培地中に存在する光活性化されて一重項酸素種を放出する分子(例えば、フラビン)は、切断を誘導するのに十分であり得、単離された分子(例えば、フラビン)の追加は必要ではない。ある特定の実施形態では、細胞培養培地中に存在するフラビンは、フラビンを培地に添加することによって補充され得る。
【0058】
ある特定の実施形態では、フラビンは、リボフラビン、FMN、又はFADであり得る。ある特定の実施形態では、フラビンは、フラボセミキノン、スルホリボフラビン、リボフラビンのエステル誘導体、リボフラビンテトラカルボキシレート、リボフラビン酢酸、リボフラビンテトラアセテート、リボフラビンプロピオン酸、又はロセオフラビンであり得る。
【0059】
ある特定の実施形態では、本方法は、タンパク質の標的領域にホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位を導入するステップを含み得る。FGly残基を含むタンパク質は、fGly残基に隣接する切断を引き起こすことによって反応する、任意のタンパク質であり得る。このタンパク質は、本明細書では標的タンパク質とも称される。ある特定の態様では、標的タンパク質は、分泌シグナル(例えば、シグナルペプチド)を含む、タンパク質であり得る。分泌シグナルは、タンパク質のN末端に存在し得、fGly残基は、分泌シグナルとタンパク質の残りの部分のタンパク質のN末端との間に位置する標的領域に含まれ得る。(フラビン、例えば、リボフラビンを含む)細胞培養培地中の分泌タンパク質を、可視光、例えば、波長300nm~500nmを有する光に曝露させると、分泌シグナルは切断され得る。
【0060】
別の実施形態では、タンパク質は、タグ、例えば、N末端又はC末端の精製タグを含み得る。fGly残基は、タグと、タンパク質の残りの部分のタンパク質のN末端又はC末端との間に位置する標的部位に存在し得る。タンパク質が精製された後、タグは、開示の方法によって切断され得る。いくつかの実施形態では、フラビンが媒介するタンパク質の光クリッピングを防止するための、タンパク質の培養及び/又は精製は、前の段落に開示されるように実施され得る。タンパク質が精製されると、精製タグは、フラビンの存在下で可視光(例えば、300nm~500nmの波長を含む光)に曝露させることによる光クリッピングを誘導することによって除去され得る。
【0061】
主題の方法を使用して切断されるタンパク質は、前の段落に記載の治療用タンパク質などの任意のタンパク質であり得る。
【0062】
別の実施形態では、タンパク質は、Fc領域を含む抗体であり、標的領域は、抗体のFc領域とCH1ドメインとの間に位置する。標的領域内のfGly残基を切断することによって、Fab及びFc断片の生成が生じる。
【0063】
別の実施形態では、タンパク質は、タンパク質を発現する細胞の細胞膜と会合し得る。タンパク質は、膜貫通領域を含み得る。fGly残基は、膜貫通領域に対するN末端又は膜貫通領域に対するC末端である、標的領域に位置し得る。タンパク質は、アンカー部分、例えば、脂質部分を介して膜に付着し得る。fGly残基は、アンカー部分の付着領域の前に、タンパク質のC末端にあるか、又はそれに隣接する標的領域に位置し得る。本明細書に開示の方法を使用する標的部位での切断は、膜会合タンパク質を細胞表面から放出するために使用され得る。
【0064】
FGE認識部位(FRS)
前の段落に記載されるように、1つ以上のfGly残基は、標的タンパク質に存在し得る。1つ以上のfGly残基は、化学合成を使用することによって導入され得る。他の実施形態では、1つ以上のfGly残基は、スルファターゼモチーフに対するFGEの作用によって生成され、これによって、モチーフにおけるシステイン又はセリンの酸化がもたらされて、fGly残基が生成される。本明細書で使用される場合、「スルファターゼモチーフ」及び「FGE認識部位」という用語は、交換可能に使用され、FGEによって認識されるアミノ酸の連続配列を指す。ある特定の実施形態では、標的タンパク質は、スルファターゼモチーフを天然に含み得る。ある特定の実施形態では、標的タンパク質は、スルファターゼモチーフを含むように修飾され得る。ある特定の実施形態では、切断が所望されるタンパク質の位置に存在するスルファターゼモチーフは、標的部位であっても、標的部位内に位置してもよい。
【0065】
任意のスルファターゼモチーフ配列は、標的タンパク質に含まれ得る。いくつかの実施形態では、スルファターゼモチーフにおけるC又はS残基をfGlyに変換するために、スルファターゼモチーフを認識するFGEは、標的タンパク質を発現する細胞によって産生されるか、又は細胞培養培地若しくは精製されたタンパク質に添加されるかのいずれかである。
【0066】
FGEは、真核生物FGE(例えば、ヒトFGEを含む哺乳動物FGE)又は原核生物FGEであり得る。FGEは、修飾されたFGEが由来する野生型FGEと比較して、修飾されたFGEが、異なるか又は追加のスルファターゼモチーフを認識するような、修飾されたFGEであり得る。
【0067】
スルファターゼモチーフは、以下の式を有し得、
(C/S)X(P/A)X
式中、
が、存在しても不在であってもよく、存在する場合、任意のアミノ酸であり得るが、通常、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、通常、L、M、S、又はVであり得、ただし、スルファターゼモチーフが、標的ポリペプチドのN末端にある場合、Xが存在することを条件とし、
及びXが、独立して、任意のアミノ酸であり得るが、通常、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、通常、S、T、A、V、G、又はC、より通常には、S、T、A、V、又はGであり得、
が、塩基性アミノ酸(アルギニン(R)以外であり得、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常、リジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、通常、A、G、L、V、又はIであり得る。
【0068】
スルファターゼモチーフの例としては、以下のコンセンサス配列が挙げられる:
SXPX
【0069】
スルファターゼモチーフの別の例としては、以下のコンセンサス配列が挙げられる:
CXPX
【0070】
スルファターゼモチーフの具体例としては、LCTPSR、MCTPSR、VCTPSR、LCSPSR、LCAPSR LCVPSR、LCGPSR、ICTPAR、LCTPSK、MCTPSK、VCTPSK、LCSPSK、LCAPSK、LCVPSK、LCGPSK、LCTPSA、ICTPAA、MCTPSA、VCTPSA、LCSPSA、LCAPSA、LCVPSA、LCGPSA、LSTPSR、LCTASR、及びLCTASAが挙げられる。他の特定のスルファターゼモチーフは、本明細書に提供される開示から容易に明らかである。標的タンパク質は、そのようなスルファターゼモチーフのうちの1つ以上を含み得る。
【0071】
FGE認識部位を含む標的ポリペプチドの修飾
1つ以上のFGE認識部位を含むように標的ポリペプチドを修飾することは、所望の標的ポリペプチドをコードする核酸を産生するように、組換え分子遺伝子技法を使用して達成され得る。そのような方法は、当該技術分野で周知であり、クローニング方法、部位特異的変異方法などが挙げられる(例えば、Sambrook et al.,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989)、“Current Protocols in Molecular Biology”(eds.,Ausubel et al.、Greene Publishing Associates,Inc.,and John Wiley&Sons,Inc.1990及び追録を参照されたい)。代替的に、例えば、1つ以上のFGE認識部位を標的ポリペプチドのC末端に付加するために、非組換え技法を使用して、例えば、天然化学ライゲーション又は擬似天然化学ライゲーションを使用して、1つ以上のFGE認識部位は、付加され得る(例えば、US6,184,344、US6,307,018、US6,451,543、US6,570,040、US2006/0173159、US2006/0149039を参照されたい)。Rush et al.(Jan 5,2006)Org Lett.8(1):131-4も参照されたい。
【0072】
ホルミルグリシン生成酵素(FGE)
スルファターゼモチーフにおけるシステイン又はセリンをfGlyに酸化する任意の酵素は、本明細書では「ホルミルグリシン生成酵素」又は「FGE」と称される。したがって、上で考察されたように、「FGE」は、スルファターゼモチーフのシステイン(C)のfGlyへの変換を媒介するfGly生成酵素として作用することができる任意の酵素、又はスルファターゼモチーフのセリン(S)のfGlyへの変換を媒介することができるものを指すために本明細書で使用される。概して、文献は、スルファターゼモチーフ中でFGEとしてCをfGlyに変換するfGly生成酵素を指し、スルファターゼモチーフ中でAts-BなどとしてSをfGlyに変換する酵素を指すことを留意されるべきである。しかしながら、本開示の目的では、「FGE」は、一般的には、適切なFGEが適切なスルファターゼモチーフを含有する(すなわち、C含有又はS含有)標的反応性パートナーに従って選択されるであろうという理解の下で、スルファターゼモチーフにおけるfGly生成酵素活性を呈する、任意の種類の酵素を指すために使用される。
【0073】
活性部位にfGlyを有するスルファターゼの遍在的な存在によって証明されるように、FGEは、真核生物及び原核生物の両方を含む多種多様な細胞型に見出される。FGEには少なくとも2つの形態が存在する。真核生物のスルファターゼは、それらのスルファターゼモチーフにシステインを含有し、「SUMF1型」FGEによって修飾される(Cosma et al.Cell 2003,113,(4),445-56、Dierks et al.Cell 2003,113,(4),435-44)。fGly生成酵素(FGE)は、SUMF1遺伝子によってコードされる。原核生物のスルファターゼは、それらのスルファターゼモチーフにシステイン又はセリンのいずれかを含有し得、それぞれ、「SUMF1型」FGE又は「AtsB型」FGEのいずれかによって修飾される(Szameit et al.J Biol Chem 1999,274,(22),15375-81)。真核生物において、この修飾は、共翻訳的に、又は小胞体(ER)における翻訳の直後に生じると考えられる(Dierks et al.Proc Natl Acad Sci USA 1997,94(22):11963-8)。理論を固持するものではないが、原核生物では、SUMF1型FGEは、細胞質で機能し、AtsB型FGEは、細胞膜の近く又は細胞膜で機能すると考えられる。脊椎動物及び棘皮動物を含む後口動物のSUMF2 FGEについても記載されている(例えば、Pepe et al.(2003)Cell 113,445-456、Dierks et al.(2003)Cell 113,435-444、Cosma et al.(2004)Hum.Mutat.23,576-581を参照されたい)。
【0074】
概して、標的ポリペプチドのスルファターゼモチーフにおけるシステイン又はセリンのfGlyへの変換を容易にするために使用されるFGEは、標的ポリペプチドに存在するスルファターゼモチーフに従って選択される。FGEは、標的ポリペプチドが発現される宿主細胞に対して天然であり得るか、又は宿主細胞は、適切なFGEを発現するように遺伝子修飾され得る。いくつかの実施形態では、ヒトFGE(例えば、SUMF1型FGE、例えば、Cosma et al.Cell 113,445-56(2003)、Dierks et al.Cell 113,435-44(2003)を参照されたい)と適合性のあるスルファターゼモチーフを使用すること、及びFGEを発現するヒト細胞において、又は宿主細胞において、通常、ヒトFGEを発現するように遺伝子修飾された哺乳動物細胞において標的タンパク質を発現することが望ましい場合がある。
【0075】
概して、本明細書に開示される方法での使用のためのFGEは、天然型供給源から得ることができるか、又は合成的に生成され得る。例えば、適切なFGEは、FGEを天然に生成するか、又はFGEをコードする組換え遺伝子を発現するように遺伝子修飾されている生物学的供給源に由来し得る。多くのFGEをコードする核酸は、当該技術分野で既知であり、容易に利用可能である(例えば、Preusser et al.2005 J.Biol.Chem.280(15):14900-10(Epub 2005 Jan 18)、Fang et al.2004 J Biol Chem.79(15):14570-8(Epub 2004 Jan 28)、Landgrebe et al.Gene.2003 Oct 16;316:47-56、Dierks et al.1998 FEBS Lett.423(1):61-5、Dierks et al.Cell.2003 May 16;113(4):435-44、Cosma et al.(2003 May 16)Cell 113(4):445-56、Baenziger(2003 May 16)Cell 113(4):421-2(考察)、Dierks et al.Cell.2005 May 20;121(4):541-52、Roeser et al.(2006 Jan 3)Proc Natl Acad Sci USA 103(1):81-6、Sardiello et al.(2005 Nov 1)Hum Mol Genet.14(21):3203-17、WO2004/072275、及びGenBank受託番号NM_182760を参照されたい。したがって、本開示は、標的ポリペプチドに存在するFRSとの使用に適合性のあるFGEを発現するように遺伝子修飾された組換え宿主細胞を提供する。一実施形態では、FGEは、結核マイコバクテリウム(Mtb)から得られ、例示的なMtb FGEは、GenBank Acc番号NP_215226(gi:15607852)で提供されるアミノ酸配列を有するものである。
【0076】
無細胞がスルファターゼモチーフ含有ポリペプチドを変換するために使用される場合、単離されたFGEが使用され得る。任意の好都合なタンパク質精製手順は、FGEを単離するために使用され得、例えば、Guide to Protein Purification,(Deuthser ed.)(Academic Press,1990)を参照されたい。例えば、ライセートは、所望のFGEを産生する細胞から調製され得、例えば、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、親和性クロマトグラフィーなどを使用して精製されたFGE。
【0077】
FGLYポリペプチドの産生のための発現ベクター及び宿主細胞
本開示は、FRSを含む標的ポリペプチド又はFRSをコードする核酸、並びに核酸を含有する構築物及び宿主細胞を提供する。そのような核酸は、FRS、又はFRSを含む標的ポリペプチドをコードし、ほとんどの実施形態では、適切な条件下で、発現されることが可能であるオープンリーディングフレームを有するDNAの配列を含む。「核酸」は、DNA、cDNA、mRNA、及びそのような核酸を含むベクターを包含する。
【0078】
FRS、並びにFRSを含む標的ポリペプチドをコードする核酸が、本明細書で提供される。そのような核酸としては、FGE認識部位をコードする配列の挿入によって修飾されたゲノムDNA、及び標的ポリペプチドをコードするcDNAが挙げられる。本明細書で使用される「cDNA」という用語は、天然成熟mRNA種(スプライスバリアントを含む)に見出される配列要素の配置を共有する全ての核酸を含むことを意図しており、配列要素は、エクソン、並びに3’及び5’非コード領域である。通常、mRNA種は、連続したエクソンを有し、介在するイントロンが存在する場合、核RNAスプライシングによって除去されて、主題発明によるタンパク質をコードする連続的なオープンリーディングフレームを作製する。
【0079】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド(例えば、FGE認識部位を含むポリペプチド)をコードするオープンリーディングフレーム、及び任意選択で任意のイントロンを有する核酸を意図し、発現の調節に関与する隣接する5’及び3’非コードヌクレオチド配列(例えば、転写及び/又は翻訳の調節因子、例えば、プロモータ、エンハンサ、翻訳調節シグナルなど)を、コード領域を最大約20kb超えるが、更に可能性としていずれかの方向で更に含み得、隣接する5’及び3’非コードヌクレオチド配列が、コード配列に対して内因性又は異種性であり得る。転写領域の5’又は3’末端のいずれかで、約1kb、更に可能性としてそれ以上の隣接するゲノムDNAを含む、プロモータ、エンハンサなどの転写及び翻訳調節配列が含まれ得る。
【0080】
本明細書で企図される核酸は、ベクター(構築物とも称される)の一部として提供され得、多種多様なベクターが当該技術分野で既知であり、本明細書で詳述される必要はない。例示的なベクターとしては、限定されないが、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)、非ウイルスベクター、人工染色体(YAC、BACなど)、ミニ染色体などが挙げられる。
【0081】
ベクターの選択は、伝播が望ましい細胞の型及び伝播の目的などの様々な因子に依存するであろう。ある特定のベクターは、大量の所望のDNA配列を増幅及び作製するのに有用である。他のベクターは、培養物中の細胞における発現に好適である。なお他のベクターは、動物全体の細胞における移動及び発現に好適である。適切なベクターの選択は、十分当該技術分野内である。そのようなベクターの多くが市販されている。
【0082】
構築物を調製するために、ポリヌクレオチドは、典型的には、ベクターの切断された制限酵素部位へのDNAリガーゼ付着の手段によって、ベクターに挿入される。代替的に、所望のヌクレオチド配列は、相同組換え又は部位特異的組換えによって挿入され得る。
【0083】
ベクターは、宿主細胞内で染色体外維持を提供し得るか、又は宿主細胞ゲノム内に組み込みを提供し得る。ベクターは、当業者に周知の無数の刊行物に十分に記載されている。使用され得る例示的なベクターとしては、これらに限定されないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNAに由来するものが挙げられる。例えば、pBR322、pUC 19/18、pUC 118、119、及びM13 mp系列のベクターなどのプラスミドベクターが使用され得る。バクテリオファージベクターは、λgt10、λgt11、λgt18~23、λZAP/R、及びEMBL系列のバクテリオファージベクターを含み得る。利用され得るコスミドベクターとしては、限定されないが、pJB8、pCV 103、pCV 107、pCV 108、pTM、pMCS、pNNL、pHSG274、COS202、COS203、pWE15、pWE16、及びcharomid9系列のベクターが挙げられる。代替的に、組換えウイルスベクターは、操作され得、限定されないが、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、又はウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来するものが挙げられる。
【0084】
目的のポリペプチドの発現には、発現カセットが用いられ得る。したがって、本発明は、主題の核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。発現ベクターは、転写及び翻訳調節配列を提供し、誘導性又は構成的な発現を提供し得、コード領域が、転写開始領域の転写制御、並びに転写及び翻訳終端領域下で操作可能に連結される。これらの制御領域は、ポリペプチド(例えば、標的ポリペプチド又はFGE)をコードする遺伝子に対して天然であり得るか、又は外因的供給源に由来し得る。概して、転写調節配列及び翻訳調節配列は、限定されないが、プロモータ配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、及びエンハンサ又は活性化配列を含み得る。
【0085】
発現ベクターは概して、プロモータ配列の近くに位置する好都合な制限部位を有し、対象のタンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供する。発現宿主内で操作性の選択可能なマーカーは、ベクターを含む細胞の選択を容易にするために存在し得る。選択遺伝子は、当該技術分野で周知であり、使用される宿主細胞と共に変化するであろう。
【0086】
FRSをコードする核酸、及び標的ポリペプチドをコードする核酸のフレーム内挿入のためのタグ-コード配列に隣接する好適な制限部位を含む、FGE認識部位(FRS)コードカセットも本明細書で提供される。そのような発現構築物は、標的ポリペプチドのN末端又はC末端でのFRSの付加を提供することができる。FRSカセットは、プロモータ配列に操作可能に連結されて、FRSを含む結果として生じるポリペプチドの発現を提供することができ、1つ以上の選択可能なマーカーを更に含み得る。
【0087】
本開示はまた、FRSを含む(例えば、C末端に、N末端に位置するFRSを有する)ポリペプチドを産生するための発現カセットを提供する。そのような発現カセットは、概して、FRSコード配列を含む第1の核酸、及び目的のポリペプチドをコードする第2の核酸の挿入のための少なくとも1つの制限部位を含む。制限部位は、FRSコード配列の5’及び/又は3’に位置し得る。FRSコード配列を含むフレーム内のポリペプチドコード配列の挿入は、本明細書に記載のFRS含有ポリペプチドである融合タンパク質をコードする組換え核酸の産生を提供する。そのような発現カセットを含有する構築物はまた、概して、産生されるFRS含有ポリペプチドの発現を提供するために、発現カセットに操作可能に連結されたプロモータを含む。発現構築物の他の構成要素は、選択可能なマーカー及び他の好適な要素を含み得る。
【0088】
宿主細胞
多くの好適な宿主細胞のうちのいずれも、FRS含有ポリペプチドの産生に使用され得る。FRS含有ポリペプチドの産生に使用される宿主細胞は、任意選択で、(例えば、宿主細胞に対して天然のFGE(これは、細胞の内因性コード配列から発現され得、及び/又は組換え構築物から産生され得る)の作用によって、宿主細胞に対して天然ではないFGEの作用によって、又はその両方によって)FGEが媒介する変換を提供することができるので、産生されるポリペプチドは、FGEによる発現及び翻訳後修飾の後にアルデヒドタグを含有する。代替的に、宿主細胞は、FRS含有ポリペプチドの産生を提供し得(例えば、アルデヒドタグの産生を容易にするFGEの発現を欠くことに起因する)、次いで、FGEへの曝露によって修飾されるであろう。
【0089】
概して、本明細書に説明されるポリペプチドは、発現の目的に応じて、従来の方式に従って原核生物又は真核生物中で発現され得る。標的ポリペプチドをコードする核酸を含む、宿主細胞、例えば、遺伝子修飾された宿主細胞は、宿主細胞に対して内因性又は異種性であり得る組換えFGEを更に任意選択で含み得る。
【0090】
変換されていないか若しくは(宿主細胞が好適なFGEを発現する)変換されたFRS含有ポリペプチドの産生(大規模産生を含む)、又は(例えば、無細胞方法での使用のための)FGEの産生のための宿主細胞は、多様な利用可能な宿主細胞のうちのいずれかから選択され得る。例示的な宿主細胞としては、細菌(例えば、Escherichia coli株、Bacillus spp.(例えば、B.subtilis)など)、酵母又は菌類(例えば、S.cerevisiae、Pichia spp.など)などの原核又は真核の単細胞生物のものが挙げられ、他のそのような宿主細胞が使用され得る。昆虫、脊椎動物、特に哺乳動物(例えば、CHO、HEKなど)などの高等生物にもともと由来する例示的な宿主細胞は、発現宿主細胞として使用され得る。
【0091】
対象の特異的発現系は、発現系に由来する細菌、酵母菌、昆虫の細胞及び哺乳動物細胞を含む。
【0092】
アルデヒドタグの産生及びコンジュゲーションのための方法
FRS含有ポリペプチドにおけるアルデヒドタグの産生は、細胞に基づく方法(インビボ)又は無細胞の方法(インビトロ)によって達成され得る。同様に、ポリペプチドにおけるアルデヒドタグのコンジュゲーションは、細胞に基づく方法(インビボ)又は無細胞の方法(インビトロ)によって達成され得る。これらは、以下により詳細に説明される。
【0093】
「インビボ」宿主細胞産生及びコンジュゲーション
FRSポリペプチドにおけるアルデヒドタグの産生は、好適なFGEを含有する細胞におけるFRS含有ポリペプチドの発現によって達成され得る。この実施形態では、アルデヒドタグを産生するためのシステイン又はセリンの変換は、宿主細胞における翻訳中又は翻訳後に生じる。
【0094】
FRSを含有する標的ポリペプチドの性質に応じて、アルデヒドタグの産生後、ポリペプチドは、宿主細胞において細胞内に保持されるか、分泌されるか、又は宿主細胞の細胞外膜と会合するかのいずれかである。FRS含有ポリペプチドが細胞表面に存在する場合、産生されたアルデヒドタグのコンジュゲーションは、生理学的条件下で反応性パートナーを使用して反応性パートナーの部分を表面アクセス可能なアルデヒドタグのfGly残基に付着させることによって達成され得る。アルデヒドタグ付きポリペプチドへの反応性パートナー部分のコンジュゲーションを達成するための使用に好適な条件は、Mahal et al.(1997 May 16)Science276(5315):1125-8に記載されているものと同様である。
【0095】
本発明の方法のためのタンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、多様な培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、Minimal Essential Medium(MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びDulbecco’s Modified Eagle’s Medium((DMEM)、(Sigma)、Expi293培地などの市販の成長培地が、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Ham et al(1979)Meth.Enz.58:44、Barnes et al(1980)Anal.Biochem.102:255、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、同第5,122,469号、WO90/03430、WO87/00195、又は米国特許再発行第30,985号に記載の培地のうちのいずれも、宿主細胞の培養培地として使用され得る。これらの培地のうちのいずれも、必要に応じて、ホルモン、及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(MES及びHEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)薬など)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース、又は等価のエネルギー源を補充され得る。任意の他の必要な補充物も、当業者に既知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0096】
ある特定の実施形態では、本方法は、細胞内で行われ、細胞は、インビトロ、例えば、インビトロ細胞培養、例えば、細胞が、単一細胞懸濁液中インビトロで又は付着性細胞培養物として培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、FGEを活性化することができる酸化試薬の存在下で培養される。酸化試薬は、Cu2+であり得る。いくつかの実施形態では、FGEを発現する細胞は、培地で好適な量のCu2+の存在下で培養される。ある特定の態様では、Cu2+は、0.1μM~10mM、1μM~1mM、2μM~500μM、4μM~300μM、又は5μM~200μM(例えば、10μM~150μM)などの1nM~100mMの濃度で細胞培養培地中に存在する。培地は、Cu2+を提供するように任意の好適な銅塩が補充され得る。好適な銅塩としては、限定されないが、硫酸銅(すなわち、硫酸銅(II)、CuSO)、クエン酸銅、酒石酸銅、硝酸銅、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0097】
「インビトロ」(無細胞)変換及びコンジュゲーション
FRS含有ポリペプチドのアルデヒドタグのインビトロ(無細胞)産生は、スルファターゼモチーフのシステイン又はセリンのfGlyへの変換に好適な条件下でポリペプチドをFGEと接触させることによって達成され得る。例えば、FRS含有ポリペプチドをコードする核酸は、アルデヒドタグ付きポリペプチドの産生を提供するのに好適なFGEの存在下でインビトロ転写/翻訳系において発現され得る。
【0098】
代替的に、FRS含有ポリペプチドは、単離され得、その後、好適なFGEを欠く宿主細胞において組換え産生されるか、又は合成産生される。次いで、単離されたFRS含有ポリペプチドを、アルデヒドタグ産生を提供するための条件下で、好適なFGEと接触させる。
【0099】
アルデヒドタグのコンジュゲーションに関して、コンジュゲーションは、通常、インビトロで行われる。アルデヒドタグ付きポリペプチドは、産生供給源(例えば、組換え宿主細胞産生物、合成産生物)から単離され、アルデヒドタグのfGlyへの反応性パートナーの部分のコンジュゲーションを提供するのに好適な条件下で、反応性パートナーと接触させる。アルデヒドタグが溶媒アクセス可能ではない場合、アルデヒドタグ付きポリペプチドは、反応性パートナーと反応させる前に、当該技術分野で既知の方法によって広げられ得る。
【0100】
本開示の例示的な非限定的な態様
上述の本主題の実施形態を含む態様は、単独で、又は1つ以上の他の態様若しくは実施形態と組み合わせて有益であり得る。前述の記載を限定することなく、本開示のある特定の非限定的な態様は、別々に付番された条項として以下に提供される。本開示を閲読すると当業者には明らかであろうように、個々に付番された条項の各々は、前の又は後続の個々に付番された条項のうちのいずれかと共に使用してもよいか、又は組み合わせてもよい。これは、そのような態様の全ての組み合わせに対する支持を提供することを意図している。本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【0101】
そのような条項としては、以下を挙げることができる。
1.ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含むタンパク質の切断を低減する方法であって、方法が、
500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することを含む、方法。
2.方法が、細胞を培養することを含み、細胞が、タンパク質を含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、培養中に500nm超の波長を有する可視光を使用することを含む、条項1に記載の方法。
3.タンパク質を合成することを含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、500nm超の波長を有する可視光の中でタンパク質を合成することを含む、条項1に記載の方法。
4.タンパク質を精製することを含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、500nm超の波長を有する可視光の中でタンパク質を精製することを含む、条項1に記載の方法。
5.精製することが、細胞又は細胞を含む細胞培養培地からタンパク質を単離することを含む、条項4に記載の方法。
6.500nm超の波長を有する可視光が、500nm超かつ620nm未満の波長を含む、条項2~5のいずれか1つに記載の方法。
7.500nm超の波長を有する可視光が、緑色の光、黄色の光、及び/又は橙色の光に限定される可視光を生成する光源によって生成される、条項2~6のいずれか1つに記載の方法。
8.500nm超の波長を有する可視光が、可視光を、380nm~500nmの範囲の可視光の透過を大幅に遮断するフィルタを通過させることによって生成される、条項2~7のいずれか1つに記載の方法。
9.方法が、細胞を培養することを含み、細胞が、タンパク質を含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、可視光の不在下で細胞を培養することを含む、条項1に記載の方法。
10.タンパク質を合成することを含み、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することが、可視光の不在下でタンパク質を合成することを含む、条項1に記載の方法。
11.タンパク質の切断が、fGlyアミノ酸において、又はfGlyアミノ酸に隣接して生じる、条項1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.fGlyアミノ酸が、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位において生成される、条項1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.FGE認識部位が、コンセンサス配列XC/SXP/AXRを含み、Xが、存在するか、又は不在であり、存在する場合、任意のアミノ酸であり、ただし、FGE認識部位が、タンパク質のN末端にある場合、Xが、存在し、X及びXが、各々独立して、任意のアミノ酸であることを条件とする、条項12に記載の方法。
14.FGE認識部位が、配列LCTPSRを含む、条項13に記載の方法。
15.FGE認識部位が、コンセンサス配列XSXPXRを含む、条項13に記載の方法。
16.FGE認識部位が、配列LSTPSRを含む、条項15に記載の方法。
17.FGE認識部位が、コンセンサス配列XCXAXRを含む、条項13に記載の方法。
18.FGE認識部位が、配列LCTASRを含む、条項17に記載の方法。
19.FGE認識部位が、配列LCTASAを含む、条項13に記載の方法。
20.タンパク質が、抗体又は治療用タンパク質である、条項1~19のいずれか1つに記載の方法。
21.タンパク質の切断が、光活性化されて一重項酸素種を放出する分子の存在下で生じる、条項1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.分子が、500nm以下の波長を有する可視光への曝露によって光活性化される、条項21に記載の方法。
23.タンパク質の切断が、フラビンの存在下で生じる、条項1~20のいずれか1つに記載の方法。
24.フラビンが、リボフラビンである、条項23に記載の方法。
25.フラビンが、フラビンモノヌクレオチド又はフラビンアデニンジヌクレオチドである、条項23に記載の方法。
26.標的領域においてタンパク質の切断を誘導する方法であって、標的領域が、ホルミルグリシン(fGly)アミノ酸を含み、方法が、
タンパク質を、300nm~500nmの波長を含む光に曝露させることを含む、方法。
27.光が、325nm~495nmの間の波長に限定される、条項26に記載の方法。
28.方法が、fGlyアミノ酸を標的領域に導入することを含む、条項26又は27に記載の方法。
29.タンパク質を光に曝露させることが、
光の中でタンパク質を含む細胞を培養すること、及び/又は
光の中でタンパク質を精製すること、を含む、条項26~28のいずれか1つに記載の方法。
30.タンパク質の切断が、fGlyアミノ酸において、又はfGlyアミノ酸に隣接して生じる、条項26~29のいずれか1つに記載の方法。
31.fGlyアミノ酸が、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位において生成される、条項26~30のいずれか1つに記載の方法。
32.FGE認識部位が、コンセンサス配列XC/SXP/AXRを含み、Xが、存在するか、又は不在であり、存在する場合、任意のアミノ酸であり、ただし、FGE認識部位が、タンパク質のN末端にある場合、Xが、存在し、X及びXが、各々独立して、任意のアミノ酸であることを条件とする、条項31に記載の方法。
33.FGE認識部位が、配列LCTPSRを含む、条項32に記載の方法。
34.FGE認識部位が、コンセンサス配列XSXPXRを含む、条項32に記載の方法。
35.FGE認識部位が、配列LSTPSRを含む、条項34に記載の方法。
36.FGE認識部位が、コンセンサス配列XCXAXRを含む、条項32に記載の方法。
37.FGE認識部位が、配列LCTASRを含む、条項36に記載の方法。
38.FGE認識部位が、配列LCTASAを含む、条項32に記載の方法。
39.方法が、標的領域にホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位を導入することを含む、条項26~38のいずれか1つに記載の方法。
40.タンパク質が、Fc領域を含む抗体であり、標的領域が、抗体のFc領域とCH1ドメインとの間に位置する、条項26~39のいずれか1つに記載の方法。
41.タンパク質が、精製タグを含み、標的領域が、タンパク質配列と精製タグとの間に位置する、条項26~39のいずれか1つに記載の方法。
42.光活性化されて一重項酸素種を放出する分子の存在下で、タンパク質を300nm~500nmの波長を含む光に曝露させることを含む、条項26~41のいずれか1つに記載の方法。
43.分子が、500nm以下の波長を有する可視光への曝露によって光活性化される、条項42に記載の方法。
44.タンパク質を、フラビンの存在下で300nm~500nmの波長を含む光に曝露させることを含む、条項26~41のいずれか1つに記載の方法。
45.フラビンが、リボフラビンである、条項44に記載の方法。
46.フラビンが、フラビンモノヌクレオチド又はフラビンアデニンジヌクレオチドである、条項44に記載の方法。
【実施例
【0102】
以下の実施例は、本発明をどのように作製及び使用するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが自分たちの発明とみなす範囲を限定することを意図せず、かつ、以下の実験が、実施される全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用された数字(例えば量、温度など)に対する精度を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏であり、圧力は、大気圧又はほぼ大気圧である。
【0103】
実施例1:FGLY含有タンパク質及びペプチドのフォトクリッピング
細胞培養物からの培地の回収が実施された場合と比較して、抗体バッチが、調整された培地から早期及び後期の2つの異なる時間に精製された、アルデヒドタグ付き抗体調製物(prep)のSDS-PAGE。図1及び2を参照されたい。早期又は後期に抗体産生バッチから精製されたアルデヒドタグ付き抗体のLC/MS分析を実施した。早期及び後期の抗体prepから得られた比較結果では、後期prepで観察された新しいピークが明らかであり、これらの抗体に存在するホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識部位LCTPSR(配列番号3)のfGly残基とThr残基との間のアルデヒドタグで生じる潜在的な断片化に質量でほぼ整列する。
【0104】
4℃又は37℃での細胞培養培地(Epi293培地)中のfGly含有ペプチドの安定性の評価を実施した。(ガラスドア、窓に面した)4℃のデリケース内で1日後には、fGlyペプチドは検出可能ではなかった。可視光を通さない37℃の閉鎖オーブン内で1日後には、fGlyペプチドの濃度は変化しない。
【0105】
細胞培養培地中、又は20mMのクエン酸ナトリウム、50mMの塩化ナトリウム中のいずれかのfGly含有mAbを、デスクランプからの光に1時間曝露させ、次いでHPLCによって分析した。図3を参照されたい。
【0106】
図4.光への曝露前後のfGly含有タンパク質調製物中の抗体断片の質量分析。抗体を、PNGaseFを使用して脱グリコシル化し、ABSciex4000QTRAP機器でのRP-LC/MSによって分析した。分析前にDTTでPrep19及び83~89を還元させた。F(ab)ドメインからFcを遊離させるために、IdeSプロテアーゼ(Promega)でPrep99を処理した。
【0107】
抗体配列:
異なる位置にFGE認識部位を担持する抗体重鎖定常領域。FGE認識部位、LCTPSRは、太字で示す。FGEによるLfGlyTPSRへの変換後、タンパク質は、リボフラビンの存在下で光に曝露されると、ロイシン残基とfGly残基との間で切断された。
【0108】
ヒンジ1.6:
[配列表1]
【0109】
CH1-3.1:
[配列表2]
【0110】
CT:
[配列表3]
【0111】
図1.光への曝露前後の、調整された培地から精製したアルデヒドタグ付き抗体のSDS-PAGE。分析前にDTTで抗体を還元させた。
【0112】
図2.光への曝露前後の、調整された培地から精製したアルデヒドタグ付き抗体のSDS-PAGE。分析前にDTTで抗体を還元させた。
【0113】
図3.細胞培養培地中でのfGly含有抗体の光を伴うインキュベーションは、切断産生物を生じる。CH1-3.1位にアルデヒドタグを担持するfGly含有抗体を、Expi293細胞培養培地中、又は20mMのクエン酸ナトリウム、50mMの塩化ナトリウム、pH5.5中のいずれかで、光と共にインキュベートした。試料を、デスクランプからの光に1時間曝露させ、次いで、C8逆相HPLCによって分析した。50mMのDTT及び0.5%のSDS(最終濃度)を添加し、50℃で30分間加熱することによって、HPLC分析のために試料を調製した。
【0114】
図4.光への曝露前後のfGly含有タンパク質調製物中の抗体断片の質量分析。抗体を、PNGaseFを使用して脱グリコシル化し、ABSciex4000QTRAP機器でのRP-LC/MSによって分析した。分析前にDTTでPrep19及び83~89を還元させた。F(ab)ドメインからFcを遊離させるために、IdeSプロテアーゼ(Promega)でPrep99を処理した。
【0115】
実施例2:FGLY含有タンパク質及びペプチドの光クリッピングは、リボフラビンによって媒介される
fGly含有ペプチド分解を監視するための分析条件を決定したが、細胞培養培地中のUV/Visによって予期しないピークが検出された。ピークは、ビタミンB12の存在を示していると仮定した。ビタミンB12は、他の分子を感作させるか、又は一重項酸素を生成するために、多様な光化学反応を実施することができ、基底状態の一重項有機分子と反応することができる。
【0116】
fGly含有ペプチド断片化に対するビタミンB12の影響を試験した。顕著な断片ピークは、mAbを培地と共にインキュベートした場合にのみ見られた。最大75モル当量のビタミンB12の添加は、微量の光断片化のみを誘導した。図5を参照されたい。
【0117】
fGly含有CH1-アルデヒドタグ付き抗体断片化に対する、細胞培養培地中に見出される、リボフラビン及びチアミンなどの他の光吸収分子の影響を試験した。リボフラビン+光は、新しいタンパク質断片を誘導した(図6A)が、チアミンは、タンパク質切断に対して顕著な影響を有するようには思われなかった(図6B)。
【0118】
fGly含有ペプチドに対するリボフラビン及びチアミンの影響(「fGlyペプチド」、配列:ALfGlyTPSRGSLFTGR(配列番号1))を試験した。リボフラビン+光でインキュベートしたfGlyペプチドのLCMS分析によって、新しいペプチドピークが検出された(図7A)。チアミン+光でインキュベートしたfGlyペプチドの切断は、検出されなかった(図7B)。
【0119】
リボフラビン及び光への曝露後のfGlyペプチド試料のLC/MS分析は、元のペプチドのC末端部分を表す新しいペプチド断片を明らかにした。観察されたペプチド断片の配列は、fGlyTPSRGSLFTGRである。
【0120】
切断されたペプチドのN末端側を検出するために、LfGlyTPSR配列の前により多くのアミノ酸を有する異なるペプチド配列を選択した。このペプチド、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)を、デスクランプによって照射した50mg/Lのリボフラビンと共に1mg/mLで30分間インキュベートした。次いで、試料をC18逆相クロマトグラフィーによって分析した。N及びC末端断片の両方が観察された。図8A及び8B.S.M.、出発物質。N断片(GPSVFPL)及びC末端断片(fGlyTPSR)の両方が観察された(図8A)。リボフラビン及び光を用いた切断後に観察されたペプチド断片の質量分析の結果を、図8Bに表にする。ALfGlyTPSRGSLFTGR(配列番号1)ペプチドの予想されるN末端断片は、ALであった。このジペプチドは、実験条件下でカラムに保持されていない可能性が高いので、クロマトグラフィー又は質量分析によって観察されなかった。より長いN末端断片を生成するので、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)ペプチドを使用し、これは、クロマトグラフィー(図8A)及び質量分析(図8B)の両方によって検出された。
【0121】
リボフラビンの吸収スペクトルに対応する波長を有する光の影響を試験した。リボフラビン+バンドパスフィルタを用いるか又は用いない光でGPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)ペプチドをインキュベートし、HPLCによって分析した。550以上のロングパスフィルタを使用すると、断片化は観察されなかった(図9C)。図9Aは、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)ペプチドのリボフラビンが媒介する切断に対する可視光の波長の影響を決定するために使用した器具類を示す。Thor labsからの広域スペクトルランプ(QTH10)のランプ出力を、図9Aにプロットする。列挙されたフィルタを通ることができる光の波長を示している。リボフラビンによって吸収される光の波長も、プロットしている。リボフラビンは、約300nm~500nmの範囲の光を吸収し、ピーク吸収は、約450nmであり、低いピークは、約380nmである。光作用、図9B.白色の光、及びリボフラビン吸光度(300~500nm未満)の枠内で光を通過させる全てのフィルタが、切断と関連付けられた。断片化結果、図9C.フィルタを使用した光のうち、400nmロングパスフィルタは、最大レベルの切断(消費される出発物質の約95%)と関連付けられた。これは、約450nmでのリボフラビン光吸収のピーク面積に対応した。550以上のロングパスフィルタを使用すると、断片化は観察されなかった。したがって、光及びリボフラビンが媒介するfGly含有ペプチドの切断は、リボフラビンによる光の吸収に依存していた。その吸収を遮断することは、ペプチドを切断から効果的に保護した。
【0122】
反応に一重項酸素クエンチャー(アジ化物)を添加することによって、光クリッピングのメカニズムを更に調査した。アジ化物の添加は、fGly含有ペプチドに対する、光及びリボフラビンによって誘導される光クリッピングを阻害し、断片化のかなり部分が、fGlyと一重項酸素との反応から生じることを示している。
【0123】
先述の実験は、光及びリボフラビンの存在下で、fGly含有タンパク質が切断されることを確立している。切断は、fGlyと、fGlyに対して近接するアミノ酸N末端との間で生じるように思われる。タンパク質が曝露される光が、リボフラビンによって吸収される波長を含まない場合、この切断は防止される。言い換えれば、約300~500nmの範囲の波長へのfGly含有タンパク質の曝露を防止することは、リボフラビン、例えば、細胞培養培地中に存在するリボフラビンの存在下でさえも、タンパク質の光切断を防止する。
【0124】
したがって、ここに提示されるデータは、リボフラビンも有する溶液中にfGly含有タンパク質が存在する場合、光切断を低減するために、500nm以下の範囲の光へのタンパク質の曝露を限定すべきであることを示している。タンパク質を処理する、例えば、タンパク質を精製するために光が必要である場合、500nm超の波長に限定された光、例えば、青色の光、緑色の光、黄色の光、赤色の光、及び/又は橙色の光を使用して、タンパク質が存在する溶液からリボフラビンが除去されるまで、分解からタンパク質を保護しながら、可視性を提供することができる。
【0125】
このデータはまた、標的部位でのタンパク質の切断が望ましい場合、光クリッピングを引き起こす波長の光、及びタンパク質が存在する溶液中にリボフラビンを含めることを使用して、例えば、標的部位にfGly残基を含めることによって、標的部位での切断を達成することができることを示している。タンパク質を、リボフラビンによって吸収される波長範囲、例えば、約300~500nmの範囲のより高い強度の光に曝露させることによって、この切断を向上することができる。
【0126】
アジ化物による光クリッピングの阻害は、断片化のかなりの部分が、fGlyが一重項酸素と反応することから生じることを示している。他のフラビン、例えば、フラビンモノヌクレオチド(FMN)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)は、光に曝露すると反応性酸素(ROS)を生成することが知られているので、光(例えば、約300~500nmの範囲の光)に曝露すると一重項酸素を生成するリボフラビン類似体及び誘導体などのフラビンを使用して、標的領域がfGlyアミノ酸を含む、標的領域におけるタンパク質の切断を誘導することができることが予想される。更に、例えば、500nm以下の波長を有する可視光への曝露からタンパク質を保護することによって、フラビンによって吸収される可視光への曝露からタンパク質を保護して一重項酸素を放出することによって、fGlyアミノ酸を含むタンパク質のフラビンが媒介する切断を低減することができることが予想される。
【0127】
図5.fGly含有ペプチドの断片化に対するビタミンB12及び光の影響を試験すること。10μMの緩衝液中で、ビタミンB12のモル当量を増加させて、CH1-3.1位にアルデヒドタグを担持するfGly含有抗体をインキュベートした。具体的には、抗体と比較して1、10、25、50、及び75のモル当量で、ビタミンB12を試験した。タンパク質切断の陽性対照として、Expi293培地中で抗体をインキュベートした。試料をデスクランプからの光に1時間曝露させ、次いでC8逆相クロマトグラフィーによって分析した。50mMのDTT及び0.5%のSDS(最終濃度)を添加し、50℃で30分間加熱することによって、HPLC分析のために試料を調製した。顕著な切断は、抗体を培地と共にインキュベートした場合(上面パネル)にのみ見られた。最大75モル当量のビタミンB12を添加することは、微量の光断片化のみを誘導した(データは示さず)。
【0128】
図6A及び6B.fGly含有タンパク質の切断を媒介するために、細胞培養培地中に見出される他の光吸収分子の潜在性を評価すること。120μMのリボフラビン又は1mMのチアミンのいずれかを含む緩衝液中1mg/mLで、CH1-3.1位にアルデヒドタグを担持するfGly含有抗体をインキュベートした。試料をデスクランプからの光に1時間曝露させ、次いで、30MWCOフィルタを使用して、0.1Mの重炭酸アンモニウム緩衝液へと緩衝液を交換した。50mMのDTT及び0.5%のSDS(最終濃度)を添加し、50℃で30分間加熱することによって、試料を分解させた。次いで、試料をC8逆相クロマトグラフィーによって分析した。リボフラビン及び光は、新しいタンパク質断片を誘導した(図6A)が、チアミンは、誘導したようには思われなかった(図6B)。
【0129】
図7A及び7B.fGly含有ペプチド、ALfGlyTPSRGSLFTGR(配列番号1)に対するチアミン又はリボフラビンの影響を試験すること。緩衝液中のペプチドを、リボフラビン(図7A)又はチアミン(図7B)のいずれかと混合し、デスクランプからの光に1時間曝露させ、続いてC18逆相クロマトグラフィーによって分析した。チアミン及び光ではなく、リボフラビン及び光が、新しいペプチドピークを誘導した。
【0130】
図8A.逆相クロマトグラフィーによって検出される、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)ペプチドのリボフラビン及び光が媒介する切断は、N及びC末端断片をもたらす。ペプチド、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)を、デスクランプによって照射した50mg/Lのリボフラビンと共に1mg/mLで30分間インキュベートした。次いで、試料をC18逆相クロマトグラフィーによって分析した。N及びC末端断片の両方が観察された。S.M.、出発物質。
【0131】
図8B.リボフラビン及び光を用いた切断後に観察されたペプチド断片の質量分析。
【0132】
図9A.ランプ出力によって網羅される関連するUV-Vis範囲、リボフラビン吸収、及びフィルタ。光源として、ThorLabs広域スペクトルランプ(QTH10)を使用した。ThorLabsフィルタセット(UV~NIR)を試験した。
【0133】
図9B~9C.リボフラビンが媒介するペプチド切断に対する光の波長の影響を評価すること。100μMのリボフラビンを含むトリエタノールアミン緩衝液(pH7.4)中20μMで、GPSVFPLfGlyTPSR(配列番号2)ペプチドをインキュベートした。室温のThorLabs広域スペクトルランプ(QTH10)からの光に試料を1時間曝露させた。いくつかの試料では、ThorLabsUV-NIRフィルタセットからのフィルタで光源を覆った。インキュベーション後、試料をC18逆相クロマトグラフィーによって分析し、出発物質(SM)の損失を監視することによって切断を定量化した。
【0134】
実施例3.FGLY含有タンパク質のリボフラビンが媒介する切断の動態
50μMのリボフラビンを含むか又は含まない緩衝液中5μMで、CH1-3.1位にアルデヒドタグを有するfGly含有抗体をインキュベートした。5分~2時間の範囲の変動する時間の長さの間、試料を光に曝露させた。次いで、材料をDTTで還元し、SDS-PAGEによって分析して、出発物質(それぞれ、23kD及び49kDの軽鎖及び重鎖)及び重鎖切断産生物(それぞれ、17kD及び32kDのN末端断片及びC末端断片)を検出した。図10を参照されたい。試料は脱グリコシル化されず、分析物の見かけの分子量が増加したことに留意されたい。
【0135】
実施例4.切断に対するリボフラビン対FGLY含有タンパク質の比の影響
2つのfGly含有タンパク質基質を試験した。一方は、酵素-Fc接合部(DNAseI-Fc)にアルデヒドタグを担持するFcドメインに付加されたヒトDNAseIであった。他方は、CH1-3.1位にアルデヒドタグ(HuIgG-CH1タグ)を担持するfGly含有抗体であった。変動する量のタンパク質(図11Aに示される)を、50μMのリボフラビンを含有する10μLの緩衝液中でインキュベートした。試料を光に20分間曝露させた。次いで、材料をDTTで還元させ、SDS-PAGEによって分析して、出発物質及び切断産生物を検出した。DNAseI-Fcについて、出発物質は、55kDであり、N末端断片及びC末端断片の切断産生物は、それぞれ、29kD及び26kDであった。HuIgG-CH1タグについては、抗体の軽鎖及び重鎖の出発物質は、それぞれ、23kD及び49kDであった。N末端断片及びC末端断片のHuIgG-CH1タグ重鎖切断産生物は、それぞれ、17kD及び32kDであった。試料は脱グリコシル化されず、分析物の見かけの分子量が増加したことに留意されたい。
【0136】
60μM(飽和溶液の50%、試料#1)~50nM(試料#11)の範囲の変動する濃度のリボフラビンと共に、1μMのCH1-3.1位にアルデヒドタグを担持するfGly含有抗体をインキュベートした。図11Bを参照されたい。試料を光に20分間曝露させた。次いで、材料をDTTで還元させ、SDS-PAGEによって分析して、出発物質及び切断産生物を検出した。最適なリボフラビン対タンパク質比は、およそ1.6μMのリボフラビン対1μMの抗体の試料#6において観察された。出発物質は、それぞれ、抗体軽鎖及び重鎖を表す、23kD及び49kDであった。抗体重鎖切断産生物は、それぞれ、N末端断片及びC末端断片を表す17kD及び32kDであった。試料は脱グリコシル化されず、分析物の見かけの分子量が増加したことに留意されたい。
【0137】
酵素-Fc接合部にアルデヒドタグを担持するヒトDNAseI-Fc構築物配列。FRS、LCTPSRは、太字で示す。
【0138】
DNaseI-Fc:
[配列表4]
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】