(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】加工性および耐食性に優れためっき鋼材
(51)【国際特許分類】
C23C 2/06 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C23C2/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572667
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 KR2022020446
(87)【国際公開番号】W WO2023191248
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2022-0040400
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェミン
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA22
4K027AB02
4K027AB05
(57)【要約】
本発明は、素地鉄;および前記素地鉄上に形成された溶融合金めっき層;を含み、前記溶融合金めっき層は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、およびその他の不可避不純物を含み、前記溶融合金めっき層内の断面におけるMgZn2相の面積分率が20~70%であり、MgZn2相の面積分率に対するAl含有相の面積分率の割合が1~70%である、加工性および耐食性に優れためっき鋼材を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鉄;および
前記素地鉄上に形成された溶融合金めっき層;を含み、
前記溶融合金めっき層は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、およびその他の不可避不純物を含み、
前記溶融合金めっき層内の断面におけるMgZn
2相の面積分率が20~70%であり、MgZn
2相の面積分率に対するAl含有相の面積分率の割合が1~70%であることを特徴とする、加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【請求項2】
素地鉄;および
前記素地鉄上に形成された溶融合金めっき層;を含み、
前記溶融合金めっき層は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、およびその他の不可避不純物を含み、
前記溶融合金めっき層は、表面において全MgZn
2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn
2相の面積分率が70%以下であることを特徴とする、加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【請求項3】
前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn
2相は、前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1/10以上1/2以下であることを特徴とする、請求項2に記載の加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【請求項4】
前記平均短軸長さ(a)は1~20μmであり、前記平均長軸長さ(b)は2~200μmであることを特徴とする、請求項3に記載の加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【請求項5】
前記溶融合金めっき層は、表面におけるAl相およびZn相で構成されるAl-Znデンドライトの面積分率が30%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【請求項6】
前記溶融合金めっき層は、表面において全MgZn
2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn
2相の面積分率が30%以上であることを特徴とする、請求項2に記載の加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【請求項7】
前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn
2相の断面積と同一の面積を有する仮想の円の直径は1~50μmであることを特徴とする、請求項6に記載の加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【請求項8】
前記溶融合金めっき層は、重量%で、Fe:0.05%~10%およびSi:0超過1%未満をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の加工性および耐食性に優れためっき鋼材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼材に関し、より詳しくは、加工性および耐食性に優れためっき鋼材に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき鋼板は、犠牲防食性に優れており、腐食環境にさらされる際に、電位の低い亜鉛が先に溶出され、鋼材の腐食を防止する特性を有する。このような優れた腐食特性により、溶融亜鉛めっき鋼板は、家電、建材、および自動車用鋼板として用いられている。しかし、技術の発展および品質の目安の向上により耐食性に対する期待要求が高くなるにつれ、従来の溶融亜鉛めっき鋼板よりも優れた耐食性を有する製品の開発に対する必要性が増大している。このような問題を解決するために、2000年代の初めから、ヨーロッパおよび日本では、亜鉛(Zn)めっき浴にアルミニウム(Al)とマグネシウム(Mg)を添加して耐食性を向上させる高耐食性めっき鋼板を生産している。高耐食性めっき鋼板は、Znの犠牲防食性の他に、MgとAlの添加により腐食環境で緻密な腐食生成物を形成させ、酸化雰囲気から鋼材を遮断して耐食性を向上させる。しかし、Zn-Al-Mgめっき鋼板は、亜鉛めっき鋼板と比べて、耐食性には優れるものの、加工性に劣るという短所がある。Zn-Al-Mgの金属間化合物は、硬度が高いためクラック抵抗性が低く、このようなクラックは、加工工程で外観を損傷させるか、または素地鋼材を露出させて耐食性が低下するという問題がある。関連の先行技術には日本の特開2005-105367号公報がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が達成しようとする技術的課題は、加工性および耐食性に優れためっき鋼材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の一態様による加工性および耐食性に優れためっき鋼材は、素地鉄;および前記素地鉄上に形成された溶融合金めっき層;を含み、前記溶融合金めっき層は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、およびその他の不可避不純物を含み、前記溶融合金めっき層内の断面におけるMgZn2相の面積分率が20~70%であり、前記溶融合金めっき層内の断面におけるMgZn2相の面積分率に対するAl含有相の面積分率の割合が1~70%である。
【0005】
上記課題を解決するための本発明の他の態様による加工性および耐食性に優れためっき鋼材は、素地鉄;および前記素地鉄上に形成された溶融合金めっき層;を含み、前記溶融合金めっき層は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、およびその他の不可避不純物を含み、前記溶融合金めっき層は、表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相の面積分率が70%以下である。
【0006】
前記加工性および耐食性に優れためっき鋼材において、前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相は、前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1/10以上1/2以下であってもよい。
【0007】
前記加工性および耐食性に優れためっき鋼材において、前記平均短軸長さ(a)は1~20μmであり、前記平均長軸長さ(b)は2~200μmであってもよい。
【0008】
前記加工性および耐食性に優れためっき鋼材において、前記溶融合金めっき層は、表面におけるAl相およびZn相で構成されるAl-Znデンドライトの面積分率が30%以下であってもよい。
【0009】
前記加工性および耐食性に優れためっき鋼材において、前記溶融合金めっき層は、表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn2相の面積分率が30%以上であってもよい。
【0010】
前記加工性および耐食性に優れためっき鋼材において、前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn2相の断面積と同一の面積を有する仮想の円の直径は1~50μmであってもよい。
【0011】
前記加工性および耐食性に優れためっき鋼材において、前記溶融合金めっき層は、重量%で、Fe:0.05%~10%およびSi:0超過1%未満をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、加工性および耐食性に優れためっき鋼材を実現することができる。
【0013】
このような効果により本発明の範囲が限定されるものではないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実験例における実施例2による溶融合金めっき層の表面を撮影した写真である。
【
図2】第1実験例における実施例2による溶融合金めっき層の断面をFE-SEMで1000倍の倍率で撮影した写真である。
【
図3】第1実験例における実施例2による溶融合金めっき層に対して1T曲げ加工性の評価後に加工部をFE-SEMで500倍の倍率で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態による加工性および耐食性に優れためっき鋼材について詳しく説明する。後述する用語は、本発明における機能を考慮して適宜選択された用語であり、当該用語に関する定義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて下されなければならない。以下では、延伸率に優れた超高強度・高耐食性めっき鋼板およびその製造方法の具体的な内容を提供しようとする。
【0016】
前述したように、Zn-Al-Mgめっき鋼板は、亜鉛めっき鋼板と比べて、耐食性には優れるものの、加工性に劣るという短所がある。Zn-Al-Mgの金属間化合物は、硬度が高いためクラック抵抗性が低く、このようなクラックは、加工時に外観を損傷させるか、または素地鋼材が露出して加工時に耐食性が低下する。金属間化合物中のMgZn2は硬度が最も高いため、MgZn2相の形状および大きさを抑制する技術が重要である。
【0017】
本発明は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、およびその他の不可避不純物を含むZn-Al-Mg系の高耐食性めっき鋼材に関し、加工性および加工耐食性を改善するために硬度が高いMgZn2相の微細組織を制御することを目的とする。
【0018】
本発明の一実施形態による加工性および耐食性に優れためっき鋼材は、素地鉄;および前記素地鉄上に形成された溶融合金めっき層;を含み、前記溶融合金めっき層は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、およびその他の不可避不純物を含む。さらに、前記溶融合金めっき層は、重量%で、0.05%~10%のFeおよび0超過1%未満のSiをさらに含んでもよい。
【0019】
本発明の亜鉛合金めっき層は、初晶Al相(Zn固溶したAl単相組織)、Zn固溶相、MgZn2(Alを含むMgZn2相、Mg2Zn11相を含む)、Al/Zn/Mg共晶組織で構成されることができる。加工性および加工耐食性を改善するための微細組織の面で、前記Zn-Al-Mg系めっき層の表面にMgZn2相およびAlを含むMgZn2相は、多角形(Polygon)形状とロッド(Rod)および針状形状とからなることができる。
【0020】
前記亜鉛合金めっき層は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Zn、および不可避不純物で構成されることができる。めっき層内のMgとAlは、耐食性を向上させる元素の一つであり、腐食生成物をさらに緻密に形成させて耐食性を向上させる。Mgが1.0重量%未満である場合には耐食性に寄与するところが少なく、従来は、2.0重量%超過時にMg酸化ドロスによる生産の難しさがあるため、Mgを2.0重量%未満使用した。しかし、本発明においては、より優れた耐食性を実現するために、Mgを2.0重量%以上添加する。前述したように、Mgを2.0重量%超過添加時には酸化ドロスによる生産の難しさがあるが、Alを5.0重量%以上添加時に溶湯中のMg酸化によるドロスを減少させることができる。さらには、Alの添加時に初晶Alの生成とZn-Al-Mgの三元共晶相を形成して耐食性を向上させる役割を行うことができる。一方、Mgを10.0重量%超過添加時には、前述したロッド(Rod)および針状形状のMgZn2またはAlを含むMgZn2相が全MgZn2の面積分率70%を超過するように成長してめっき層の加工性に劣り、加工時にめっき層のクラック発生により鋼材もしくはFe-Al-Zn界面合金化層の露出により耐食性が低下する。一方、Alを30重量%超過添加時には、めっき浴の融点上昇により鋼材とめっき層との間の不連続的なFe-Al-Zn界面合金層が過剰成長して加工時に界面密着性が脆弱になり得る。
【0021】
本発明において、素地鉄上に溶融合金めっき層を形成する例示的な工程は次のとおりである。
【0022】
先ず、680~850℃で焼鈍した素地鉄は、440~530℃のめっき浴に浸漬した後、エアナイフを通過して片面基準に30~300g/m2を満たすようにする。ただし、焼鈍後の素地鉄の進入温度は、めっき浴の温度と±20℃以上の差が出ないように調節する。
【0023】
MgZn2相の形状および分率は、冷却により綿密に制御することができる。めっき浴に浸漬してから200℃に冷却される区間まで3~30℃/sの冷却速度で冷却し、めっき層の凝固時に生成される相の形状を制御することができる。より好ましくは、5~20℃/sの冷却速度で冷却することができる。冷却速度が5℃/s未満である場合には、初晶MgZn2相が粗大に成長して加工性に劣り、液相状態のめっき層が酸素と反応してめっき表面の外観を阻害する要素として作用し得る。これに対し、30℃/s超過の冷却速度で冷却する際には、不均一な凝固によりめっき層が均一に形成されず、板の振動により生産性が低下するという短所がある。
【0024】
本発明の一態様によるめっき鋼材は、前記溶融合金めっき層内の断面(例えば、縦断面)におけるMgZn2相の面積分率が20~70%であり、前記溶融合金めっき層内の断面(例えば、縦断面)におけるMgZn2相の面積分率に対するAl含有相の面積分率の割合が1~70%であることを特徴とする。ここで、前記Al含有相は、前記溶融合金めっき層内の断面において、MgZn2相から離隔して存在するか、またはMgZn2相の内部に存在することができる。また、本実施形態において、前記Al含有相は、i)Al単相、およびii)Alを20%以上含有し、不可避不純物が2%以内であり、残部がZnである相を意味する。
【0025】
例えば、溶融合金めっき層は、断面においてMgZn2相を面積分率として20~70%含む。すなわち、前記溶融合金めっき層の全断面積(A1)中でMgZn2相が占める断面積(A2)の割合が20~70%であり、(A2/A1)×100の値が10~60の範囲を満たす。一方、溶融合金めっき層の断面において、MgZn2相から離隔して存在するAl含有相の断面積(B1)およびMgZn2相の内部に存在するAl含有相の断面積(B2)の和が、全MgZn2相の断面積(B3)に対して1~70%の割合を有する。すなわち、[(B1+B2)/B3]×100の値が1~70の範囲を満たす。このような組織によれば、クラック抵抗性に優れ、具体的には、曲げ評価(3T曲げ評価、1T曲げ評価)におけるクラック幅の平均が30μm以下であってもよい。
【0026】
本発明のめっき鋼材の溶融合金めっき層は、表面においてMgZn2相の面積分率が10~70%であってもよく、前記面積分率が10%未満のものは形成が不可能であり、70%を超過すれば、耐クラック性が低下する。ここで、溶融合金めっき層の表面は、外部と接する上部表面を意味し得る。
【0027】
本発明の他の態様によるめっき鋼材において、前記めっき鋼材の溶融合金めっき層は、表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相の面積分率が70%以下であってもよい。例えば、溶融合金めっき層の表面における全MgZn2相中の70%以下のMgZn2相は、平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1:2~1:10であって0.5以下の値を有することができる。この場合、前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相は、前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1/10以上1/2以下であってもよい。前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5未満である場合には耐クラック性が低下する。前記平均短軸長さ(a)は1~20μmであり、前記平均長軸長さ(b)は2~200μmであってもよい。1μm未満の平均短軸長さ(a)と2μm未満の平均長軸長さ(b)は形成が不可能であり、前記平均短軸長さ(a)が20μmを超過するか、または前記平均長軸長さ(b)が200μmを超過する場合には耐クラック性が低下する。
【0028】
一方、本発明の他の態様によるめっき鋼材の溶融合金めっき層は、表面におけるAl相およびZn相で構成されるAl-Znデンドライトの面積分率が30%以下であってもよい。Al-Znデンドライトは、化成処理性や耐LME(Liquid Metal Embrittlement)性に好ましくない影響を与えるため、その面積分率が低いことが好ましい。したがって、本実施形態によるめっき層においては、Al-Znデンドライトの面積分率を30%以下とする。
【0029】
前述したように、本発明の一実施形態による加工性および耐食性に優れためっき鋼材において、前記Zn-Al-Mg系めっき層の表面にMgZn2相およびAlを含むMgZn2相は、多角形(Polygon)形状とロッド(Rod)および針状形状とからなり、ロッド(Rod)および針状形状の平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1:2≦a:b≦1:10であることを特徴とする。全MgZn2中で、ロッドおよび針状形状のMgZn2相は、表面に70%以下の面積分率で分布し、より好ましくは、50%未満の面積分率で分布し、残部MgZn2は、多角形(Polygon)形状で分布している。
【0030】
前記溶融合金めっき層は、表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn2相の面積分率が30%以上であることを特徴とする。例えば、溶融合金めっき層は、表面における全MgZn2相中の30%以上のMgZn2相は、平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過する1:1.5、1:1.2などの値を有することを特徴とする。前記平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn2相の断面積と同一の面積を有する仮想の円の直径(平均直径)は1~50μmであってもよい。前記平均直径が1μm未満のものは形成が不可能であり、50μmを超過する場合には耐クラック性が低下する。
【0031】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実験例を提示する。ただし、下記の実験例は、本発明の理解を助けるためのものにすぎず、本発明が下記の実験例により限定されるものではない。
【0032】
第1実験例
1.試験片の組成および工程条件
素地鋼板として1.2mmの冷延素材を準備し、成分は、炭素(C):0.15重量%、ケイ素(Si):0.01重量%、マンガン(Mn):0.6重量%、リン(P):0.05重量%、硫黄(S):0.05重量%、および残りの鉄(Fe)の組成を有する。窒素-5~10%水素雰囲気ガスで760℃の温度で焼鈍した後、焼鈍試験片をめっき浴と20℃以上の差が出ない温度まで冷却した後、めっき浴に1~5秒間浸漬した。温度485℃のめっき浴に浸漬した後、窒素ワイピングでめっき厚さを20μm内外に調節し、7℃/sの冷却速度で冷却してZn-Al-Mg系めっき鋼板を得た。前記めっき浴の組成は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Znである範囲を満たす。
【0033】
2.めっき層の組成および微細組織の評価
表1は、本発明の第1実験例によるめっき鋼材において、溶融合金めっき層の組成(単位:重量%)と微細組織を評価した結果を示したものである。
【0034】
【0035】
製造されたそれぞれのめっき鋼板に対し、ロッド(Rod)および針状型MgZn2の面積は、FE-SEMで500倍の倍率で表面観察後にイメージプログラムを用いて測定した。界面合金層の厚さは、断面を1000倍に拡大して測定した。
【0036】
表1の実施例1~実施例3を参照すれば、ロッド(Rod)および針状型MgZn2の面積比率が50%未満と加工性に優れることを確認することができる。発明者は、実施例に対する比較例として、ロッド(Rod)および針状型MgZn2相の面積が急激に増加することを確認し、めっき浴の温度上昇により界面合金層が10μmを超過して形成されて加工性に劣る場合を確認することができた。
【0037】
図1は、第1実験例における実施例2による溶融合金めっき層の表面を撮影した写真である。
図1を参照すれば、Zn-Al-Mg系めっき層の表面におけるロッド(Rod)および針状形状を示すMgZn
2相は、平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1:2≦a:b≦1:10の範囲を満たすことを確認することができる。また、全MgZn
2中で、ロッドおよび針状形状のMgZn
2相は、表面に70%以下の面積分率で分布することを確認することができる。
【0038】
図2は、第1実験例における実施例2による溶融合金めっき層の断面をFE-SEMで1000倍の倍率で撮影した写真である。
図2を参照すれば、実施例2による溶融合金めっき層において、Fe-Al界面合金層の成長が10μm以下であることを確認することができる。
【0039】
3.曲げ加工性の評価
表2は、本発明の第1実験例によるめっき鋼材に対する曲げ加工性の評価結果を示したものである。3T曲げ、1T曲げ後に、曲げ加工部をFE-SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)で200倍、500倍の倍率で観察した後、曲げクラックの幅を測定した後に平均化して評価した。3T(クラック幅)および1T(クラック幅)において、「◎」項目は、曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μm以下である場合を意味し、「○」項目は、曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μm超過30μm以下である場合を意味し、「△」項目は、曲げ評価におけるクラック幅の平均が30μm超過40μm以下である場合を意味する。
【0040】
また、3T曲げ、1T曲げ後に、曲げ加工部をFE-SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)で100倍の倍率で観察した後、イメージプログラムを用いてクラックの面積分率を計算して評価した。3T(クラック面積分率)および1T(クラック面積分率)において、「◎」項目は、曲げ評価におけるクラック面積分率が30%以下である場合を意味し、「○」項目は、曲げ評価におけるクラック面積分率が30%超過50%以下である場合を意味し、「△」項目は、曲げ評価におけるクラック面積分率が50%超過70%以下である場合を意味する。
【0041】
【0042】
表2の実施例1~実施例3を参照すれば、ロッドおよび針状型MgZn
2の形成が比較的に少なく発達し、クラックの幅が40μm以内に構成されることを確認することができる。発明者は、実施例に対する比較例として、ロッド(Rod)および針状型MgZn
2の面積分率が70%を超過する場合、硬度が高いMgZn
2相におけるクラックだけでなく、粒界に沿ってクラックが進行し、クラックの幅が平均40μmを超過する場合を確認することができた。また、発明者は、実施例に対する比較例として、MgZn
2相がロッド(Rod)型に発達した場合、クラックの幅だけでなく、クラックの頻度数が増加し、クラックの面積が70%を超過して劣ることを確認することができた。
図3は、第1実験例における実施例2による溶融合金めっき層に対して1T曲げ加工性の評価後に加工部をFE-SEMで500倍の倍率で撮影した写真である。
図3を参照すれば、実施例2による溶融合金めっき層において、ロッドおよび針状型MgZn
2の形成が比較的に少なく発達し、クラックの幅が40μm以内に構成され、ロッド(Rod)および針状型MgZn
2の面積分率が70%以下を示すことを確認することができる。
【0043】
上述した第1実験例の結果によれば、加工性に不利な硬度の高いMgZn2相が形成されても、ロッドおよび針状型MgZn2相の成長を抑制し面積分率を調節して加工性に優れためっき鋼板を実現可能であることを確認することができる。
【0044】
第2実験例
1.試験片の組成および工程条件
素地鋼板として1.2mmの冷延素材を準備し、成分は、炭素(C):0.15重量%、ケイ素(Si):0.01重量%、マンガン(Mn):0.6重量%、リン(P):0.05重量%、硫黄(S):0.05重量%、および残りの鉄(Fe)の組成を有する。窒素-5~10%水素雰囲気ガスで760℃の温度で焼鈍した後、焼鈍試験片をめっき浴と20℃以上の差が出ない温度まで冷却した後、めっき浴に1~5秒間浸漬した。温度485℃のめっき浴に浸漬した後、窒素ワイピングでめっき厚さを20μm内外に調節し、7℃/sの冷却速度で冷却してZn-Al-Mg系めっき鋼板を得た。前記めっき浴の組成は、重量%で、Al:5%~30%、Mg:2%~10%、残部Znである範囲を満たす。溶融合金めっき層は、5重量%以上30重量%以下のAl、2重量%以上10重量%以下のMg、0.05重量%以上10重量%以下のFe、0重量%超過1重量%未満のSi、および残部のZnとその他の素地鉄から拡散された成分を含む。
【0045】
2.めっき層断面の微細組織および曲げ加工性の評価
表3は、本発明の第2実験例によるめっき鋼材において、溶融合金めっき層の断面におけるMgZn2相の面積分率(%)と、溶融合金めっき層の断面におけるMgZn2相の面積分率に対するAl単相の面積比率(%)に応じた曲げ加工性の評価結果を示したものである。表3において、曲げ加工性の評価は、3T曲げ後に、曲げ加工部をFE-SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)で200倍、500倍の倍率で観察した後、曲げクラックの幅を測定した後に平均化して評価した。「○」項目は、曲げ評価におけるクラック幅の平均が0超過30μm以下である場合を意味し、「X」項目は、曲げ評価におけるクラック幅の平均が30μmを超過する場合を意味する。
【0046】
【0047】
表3を参照すれば、試験片1、2、3、4は、溶融合金めっき層内の断面におけるMgZn2相の面積分率が20~70%の範囲を満たすとともに、MgZn2相の面積分率に対するAl含有相の面積分率の割合が1~70%の範囲を満たす場合に該当し、3T曲げ後の曲げ加工部におけるクラック幅の平均がいずれも30μm以下を示すことを確認することができる。
【0048】
これに対し、試験片5は、溶融合金めっき層内の断面におけるMgZn2相の面積分率が20~70%の範囲を満たさず、試験片6、7、8は、溶融合金めっき層内の断面におけるMgZn2相の面積分率に対するAl含有相の面積分率の割合が1~70%の範囲を満たさない場合に該当し、この場合、T曲げ後の曲げ加工部におけるクラック幅の平均が30μmを超過することを確認することができる。
【0049】
【0050】
表4は、本発明の第2実験例によるめっき鋼材において、溶融合金めっき層の表面においてMgZn2相の面積分率(%)と、平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比に応じた曲げ加工性の評価結果を示したものである。CASE1は、めっき層の表面において全MgZn2中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn2に関するものであり、CASE2は、めっき層の表面において全MgZn2中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2に関するものである。表4における曲げ加工性の評価は、めっき層の断面におけるMgZn2面積分率が20~70%であり、前記MgZn2相の内部に存在するかまたは前記MgZn2相から離隔して存在するAl含有相がMgZn2相の断面積に対して1~70%の割合で存在するめっき鋼板を用いて曲げ加工性の評価を行うが、この際、曲げ加工性の評価は、3T曲げ後に、曲げ加工部をFE-SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)で200倍、500倍の倍率で観察した後、曲げクラックの幅を測定した後に平均化して評価し、「◎」項目は、3T曲げ評価におけるクラック幅の平均が0超過15μm以下である場合を意味し、「○」項目は、3T曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μm超過30μm以下である場合を意味する。
表4を参照すれば、試験片A1、A2、B1、B2、C1、C2は、前記溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn2相の面積分率が30%以上であり、前記溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相の面積分率が70%以下であり、前記溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1/10以上1/2以下であり、前記平均短軸長さ(a)が1~20μmであり、前記平均長軸長さ(b)が2~200μmである場合を全て満たし、この場合、3T曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μm以下であることを確認することができる。
【0051】
これに対し、試験片D1、D2、D3、D4、D5は、溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5を超過するMgZn2相の面積分率が30%以上の範囲を満たさず、溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相の面積分率が70%以下の範囲を満たさない場合であり、この場合、3T曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μmを超過することを確認することができる。
【0052】
また、試験片A3、B3、C3、D5は、溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1/10以上1/2以下の範囲を満たさない場合であり、この場合、3T曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μmを超過することを確認することができる。
【0053】
また、試験片A4、B4、C4は、溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相の面積分率が70%以下であり、前記溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1/10以上1/2以下の範囲を満たしても前記平均短軸長さ(a)が1~20μmの範囲を満たさない場合であり、この場合、3T曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μmを超過することを確認することができる。
【0054】
また、試験片A5、B5、C5は、溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が0.5以下のMgZn2相の面積分率が70%以下であり、前記溶融合金めっき層の表面において全MgZn2相中で平均短軸長さ(a)と平均長軸長さ(b)の比が1/10以上1/2以下の範囲を満たしても前記平均長軸長さ(b)が2~200μmの範囲を満たさない場合であり、この場合、3T曲げ評価におけるクラック幅の平均が15μmを超過することを確認することができる。
【0055】
以上、本発明の実施例を中心に説明したが、当業者レベルで多様な変更や変形を加えることができる。このような変更および変形が本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明に属するといえる。したがって、本発明の権利範囲は、後述する請求範囲により判断しなければならない。
【国際調査報告】