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特表2024-519999高い薬物充填量の中鎖脂肪酸トリグリセリドを有する安定な液体医薬組成物およびそれに関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】高い薬物充填量の中鎖脂肪酸トリグリセリドを有する安定な液体医薬組成物およびそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/23 20060101AFI20240514BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240514BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240514BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K31/23
A61P25/28
A61K9/107
A61K47/24
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572714
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022030819
(87)【国際公開番号】W WO2022251288
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/192,826
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502398171
【氏名又は名称】セレシン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】リウ,アイクン・ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】カースガールド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ネア シー ケイ バラチャンドラン,ムラリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,サミュエル・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ボイド,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076CC01
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD47
4C076DD63
4C076EE53
4C076FF36
4C076FF63
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB06
4C206DB48
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA42
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZA15
4C206ZA16
(57)【要約】
本発明は、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の高薬物充填組成物に関し、およびニューロン代謝低下を伴う状態、例えばアルツハイマー病を治療するために、ケトン体濃度を上昇させるのに有効な量でそのような組成物により治療する方法に関する。
【選択図】図21A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体医薬組成物であって、前記組成物全体の少なくとも約30重量%のカプリル酸トリグリセリド、および周囲条件で少なくとも1カ月間安定なエマルションを形成するのに十分な濃度で存在する1つまたは複数のエマルション形成賦形剤を含む液体医薬組成物。
【請求項2】
前記1つまたは複数のエマルション形成賦形剤が、レシチン、硬化ヒマシ油、カプリル酸エステル、オレイン酸ナトリウム、グリセロール、モノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル、モノカプリル酸プロピレングリコールを含む脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項3】
前記1つまたは複数のエマルション形成賦形剤が、レシチン、硬化ヒマシ油、カプリル酸エステル乳化剤、グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項4】
前記1つまたは複数のエマルション形成賦形剤が、レシチン、オレイン酸ナトリウム、グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項5】
前記1つまたは複数のエマルション形成賦形剤が、Citrem、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項6】
前記プリル酸トリグリセリドが、前記組成物全体の約30重量%~約60重量%の量で存在する、先行する請求項のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項7】
前記1つまたは複数のエマルション形成賦形剤が、前記組成物全体の約1重量%~約10重量%の量、好ましくは前記組成物全体の約1重量%~約8重量%の量で存在する、先行する請求項のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物中に少なくとも2つのエマルション形成賦形剤が存在し、前記エマルション形成賦形剤の少なくとも1つが、前記組成物全体の少なくとも2.0重量%の量で存在する、先行する請求項のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2つのエマルション形成賦形剤が、互いに対して1:1~2:1比で存在する、請求項8に記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
前記安定なエマルションが、周囲条件で少なくとも1カ月間0.5μm未満、好ましくは周囲条件で少なくとも1カ月間0.3μm未満、好ましくは周囲条件で少なくとも1カ月間0.2μm未満の平均粒径を示す、先行する請求項のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項11】
油溶性香味剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項12】
認知機能の低下を伴う疾患または障害の治療を必要とする対象における認知機能の低下を伴う疾患または障害を治療する方法に使用するための、先行する請求項のいずれか一項に記載の液体医薬組成物であって、前記方法は、前記対象のケトン体濃度を上昇させるのに有効な量で液体医薬組成物を前記対象に投与して、これにより前記疾患または障害を治療するステップを含む、前記液体医薬組成物。
【請求項13】
前記認知機能の低下を伴う疾患または障害が、アルツハイマー病および加齢に伴う記憶障害から選択される、請求項12に記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
前記患者が、ApoE4遺伝子型を欠くかどうかを決定するステップをさらに含む、請求項12または13に記載の液体医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、約0.05g/kg/日~約10g/kg/日の用量で投与される、請求項12~14に記載の液体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、高い薬物充填量の中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む液体医薬組成物、ならびにそのような組成物の作成方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、5~12個の炭素の鎖長を有する脂肪酸からなる。MCTは広く研究されており、公知の栄養用途および医薬用途を有する。融点を有するMCTは、室温で液体となる。さらに、MCTは比較的小さく、加水分解されると、MCTから形成された脂肪酸は生理学的pHでイオン化可能であり、それ故に水溶液に概ね溶解する。
【0003】
[0003]医薬組成物として使用することを意図するとき、有効成分の組成物を室温ですぐに使用可能な、防腐剤無添加液体剤形として調製することが望ましい場合が多い。しかし、物理化学的安定性も微生物学的安定性も、長期安定性を達成することが極めて難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]そのため、特に、十分な長期安定性を有し、医薬用途として十分に高い(本明細書では薬物充填量と呼ばれる)賦形剤レベルに対する有効成分レベルでの、MCTのすぐに使用可能な、防腐剤無添加液体剤形組成物が当技術分野には必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]1つの側面において、本開示は、組成物全体の少なくとも約30重量%のカプリル酸トリグリセリド、および周囲条件で少なくとも1カ月間安定なエマルションを形成するのに十分な濃度で存在する1つまたは複数のエマルション形成賦形剤を含む液体医薬組成物に関する。いくつかの側面において、カプリル酸トリグリセリドは、組成物全体の約30重量%~約60重量%の量で存在する。いくつかの側面において、カプリル酸トリグリセリドの純度は少なくとも95%である。
【0006】
[0006]いくつかの側面において、1つまたは複数のエマルション形成賦形剤は、レシチン(例えば、ホスホリポン90G)、ポリオキシル40ヒマシ油(例えば、Kolliphor RH40)を含む硬化ヒマシ油(hydrogenated castor oil)、カプリル酸エステル、オレイン酸ナトリウム、グリセロール、モノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル(例えば、Citrem)、モノカプリル酸プロピレングリコール(例えば、Capmul PG-8)を含む脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
[0007]いくつかの側面において、1つまたは複数のエマルション形成賦形剤は、レシチン、Kolliphor RH40、カプリル酸エステル乳化剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの側面において、1つまたは複数のエマルション形成賦形剤は、レシチン、オレイン酸ナトリウム、グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの側面において、1つまたは複数のエマルション形成賦形剤は、Citrem、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
[0008]いくつかの側面において、1つまたは複数のエマルション形成賦形剤は、組成物全体の約1重量%~約10重量%の量、好ましくは組成物全体の約1重量%~約8重量%の量で存在する。
【0009】
[0009]いくつかの側面において、組成物中に少なくとも2つのエマルション形成賦形剤が存在し、エマルション形成賦形剤の少なくとも1つは、組成物全体の少なくとも2.0重量%の量で存在する。いくつかの側面において、少なくとも2つのエマルション形成賦形剤は、互いに対して1:1~2:1比で存在する。
【0010】
[0010]いくつかの側面において、本開示の液体医薬組成物は、周囲条件で少なくとも約1カ月間安定なエマルションを形成する。いくつかの側面において、安定なエマルションは、周囲条件で少なくとも1カ月間0.5μm未満、好ましくは周囲条件で少なくとも1カ月間0.3μm未満、好ましくは周囲条件で少なくとも1カ月間0.2μm未満の平均粒径を示す。他の側面において、エマルションは、約1000nm未満だが約100nmより大きい、例えば約100nm~500nm、約200nm~約300nm、約160nm~約190nm等の平均粒径を有してもよい。
【0011】
[0011]いくつかの側面において、本開示の液体医薬組成物は油溶性香味剤をさらに含む。
[0012]さらに他の側面において、本開示は、それを必要とする対象における認知機能低下を伴う疾患または障害を治療する方法であって、前記対象のケトン体濃度を上昇させるのに有効な量で本開示の液体医薬組成物を対象に投与して、これにより前記疾患または障害を治療するステップを含む方法に関する。特定の態様において、認知機能低下を伴う疾患または障害は、アルツハイマー病および加齢に伴う記憶障害から選択される。
【0012】
[0013]複数の態様が開示されているが、本開示のさらに他の態様が、本開示の具体的な態様を示し、および記載する、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。実現されるとき、本発明は、いずれも本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な側面において変更形態が可能である。したがって、詳細な説明は、本質的に例示的であり、制限するものではないと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0014]本開示の液体医薬組成物の調製のための例示的な方法を示す図である。
図2】[0015]本開示の態様による液体医薬組成物の例示的な成分、濃度、および組成を示す図である。
図3】[0016]本開示の態様による図2の液体医薬組成物の最適化された性能の組成の領域を示す図である。
図4】[0017]本開示の態様による図2の液体医薬組成物の組成の性能を示す図である。
図5】[0018]本開示の態様による図2の液体医薬組成物の組成の性能を示す図である。
図6】[0019]本開示の態様による図2の液体医薬組成物の組成の性能を示す図である。
図7】[0020]本開示の態様による種々のCitrem製剤に関する例示的な粒径分布を示す図である。
図8】[0021]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図9】[0022]本開示の態様によるオレイン酸製剤の視覚的安定性結果を示す図である。
図10】[0023]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図11】[0024]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図12】[0025]本開示の態様によるオレイン酸製剤の視覚的安定性結果を示す図である。
図13】[0026]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図14】[0027]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図15】[0028]本開示の態様によるオレイン酸製剤の視覚的安定性結果を示す図である。
図16】[0029]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図17】[0030]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図18】[0031]本開示の態様によるオレイン酸製剤の視覚的安定性結果を示す図である。
図19】[0032]本開示の態様によるオレイン酸製剤の安定性結果を示す図である。
図20】[0033]本開示の態様によるガンマ線照射試料vs保持試料の種々の製剤に関する例示的な粒径分布を示す図である。
図21A】[0034]図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21B図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21C図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21D図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21E図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21F図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21G図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21H図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21I図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図21J図21A~21Jは、本開示の態様による経時的なリード製剤の例示的な粒径分布を示す図である。
図22A】[0035]総ケトンCmaxを含む薬物動態パラメーターを示す図である。
図22B】本開示の態様によるリード製剤の総ケトンAUCを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0036]背景として、中鎖脂肪酸トリグリセリド(「MCT」)は、より一般的な長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)とは異なる方法で代謝される。特に、LCTと比較した場合、MCTは、容易に消化されて中鎖脂肪酸(MCFA)を放出し、MCFAは門脈吸収率の増加を示し、絶対酸化(obligate oxidation)を受ける。MCTの小さいサイズおよび減少した疎水性は、LCTと比べて消化および吸収の速度を増加させる。MCTは摂取されると、先ず、グリセロール骨格から脂肪酸鎖を切断するリパーゼによって処理される。前十二指腸のいくつかのリパーゼはLCTよりMCTを優先的に加水分解し、放出されたMCFAは、次いで一部が胃粘膜によって直接吸収される。胃で吸収されないMCFAは門脈へ直接吸収され、リポタンパク質にパッケージングされない。血液輸送はリンパ液よりはるかに迅速なため、MCFAはすぐに肝臓に到着する。肝臓でMCFAは、絶対酸化を受ける。
【0015】
[0037]対照的に、通常の食事性脂肪に由来する長鎖脂肪酸(LCFA)は、LCTに再エステル化され、リンパ液への輸送のためにカイロミクロンにパッケージングされる。これは、MCTと比べてLCTの代謝を著しく遅らせる。摂食時、LCFAは、主にマロニル-CoAの阻害効果のために肝臓で酸化をほとんど受けない。条件が脂肪貯蔵に有利に働く場合、マロニル-CoAは脂質生成の中間体として生成される。マロニル-CoAは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIをアロステリックに阻害し、これによりミトコンドリアへのLCFA輸送を阻害する。このフィードバック機構が、脂質分解および脂質生成の無益サイクルを防いでいる。
【0016】
[0038]MCFAは、大部分は、LCFAの酸化を制御する調節に対して影響されない。MCFAは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIを使用することなくミトコンドリアに入り、それ故にMCFAはこの調節段階を迂回し、生物の代謝状態に関係なく酸化される。重要なことには、MCFAは迅速に肝臓に入り、すぐに酸化されるため、大量のケトン体がMCFAから容易に生成される。そのため、大経口用量のMCT(例えば、約20mL~40mL)は、持続的高ケトン血症をもたらすことになる。
【0017】
[0039]本開示は、一般的に、高充填量の少なくとも1つのMCTを含む液体医薬組成物、ならびにそのような組成物の作成および使用方法に関する。ある特定の態様において、液体医薬組成物は、水性使用環境で、例えば水中で、または水性使用環境に投与されると、安定な液体エマルションを形成する。ある特定の態様において、MCTは本明細書に記載されるカプリル酸トリグリセリドである。
【0018】
[0040]ある特定の態様において、液体医薬製剤は、「防腐剤無添加」であってもよい。そのような態様において、製剤は、防腐剤を使用することなく周囲条件で少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、無菌性(すなわち、薬学的使用を可能にする十分なバイオバーデン低減)を維持する安定な液体エマルションを形成し得る。
【0019】
[0041]ある特定の側面において、本開示の医薬組成物は、高い薬物充填量のMCT、例えば、カプリル酸トリグリセリド、および周囲条件でエマルションを形成するのに十分な濃度で存在する1つまたは複数のエマルション形成賦形剤を含む液体医薬組成物である。医薬組成物は、本明細書に記載される量の成分を含み得る。いくつかの態様において、組成物は、例えば、少なくとも1日間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間等にわたり、周囲条件で安定な液体エマルションを形成し得る。本開示のエマルションは、一般に、高剪断混合または当技術分野で理解される「高圧均質化」によって形成され得る。
【0020】
[0042]本明細書に記載されているように、本開示の医薬組成物は、周囲条件で安定な液体エマルションを形成し得る。エマルションは、水または他の水性媒体で希釈され、穏やかに混合されると、約1μm未満だが、約100nm(すなわち、0.1~1μm)より大きい平均粒径を有する、および概ね多分散である安定な油/水エマルションをもたらす組成物を指す。そのようなエマルションは安定であり、目に見えて検出可能な相分離がないこと、および目に見えて検出可能な結晶化がないことを意味する。
【0021】
[0043]いくつかの側面において、本開示の医薬組成物は、周囲条件で少なくとも約1カ月間安定なエマルションを形成する。いくつかの側面において、安定なエマルションは、周囲条件で少なくとも1カ月間0.5μm未満、好ましくは周囲条件で少なくとも1カ月間0.3μm未満、好ましくは周囲条件で少なくとも1カ月間0.2μm未満の平均粒径を示す。他の側面において、エマルションは、約1000nm未満だが、約100nmより大きい、例えば約100nm~500nm、約200nm~約300nm、約160nm~約190nm等の平均粒径を有してもよい。
【0022】
[0044]上記で論じられたように、本開示の医薬組成物は、水性使用環境で、例えば、水、薬学的に適した水溶液中で、またはin vivoで投与されると、安定なエマルショを形成する。例として、エマルションは、少なくとも約24時間、少なくとも1日間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間等にわたり、周囲条件で安定であり得る。特定の態様において、形成されたエマルションは、安定である間は相分離しない。特定の態様において、エマルションは、約1μm未満だが、約100nmより大きい(すなわち、0.1~1μmの)平均粒子径を有してもよい。
【0023】
[0045]特定の態様において、形成されたエマルションは、胃pH、例えば、約1~約3、約1.2~2.9等のpHで安定であり得る。特定の態様において、形成されたエマルションは、腸および/または結腸pH、例えば、約5~約7、約5.5~約6.9等のpHで安定であり得る。特定の態様において、形成されたエマルションは、胃pHで約1/2~約1時間後に分解または相分離しはじめ得るが、腸または結腸pHまでカプセル化MCTを放出しない。これに関して、理論に制限されるものではないが、in vitro消化アッセイは、カプセル化MCTが、脂質消化酵素の主要部位である腸および/または結腸pHでエマルションから放出されることを示している。本開示の特定の側面によれば、胃よりむしろ腸および/または結腸でのMCTの優先的放出は、これらの領域における脂質消化酵素の部位を考慮すると、MCTのバイオアベイラビリティを高める可能性がある。
【0024】
[0046]本開示のある特定の側面において、医薬組成物は、使用者の下部胃腸管での高い薬物充填量のMCTの優先的放出を提供する。理論に制限されるものではないが、結腸を含む下部胃腸管でのMCTの優先的放出は、非製剤化MCT油の標準的な投与と比較して胃の不調および関連する有害事象を低減する可能性がある。さらに、MCTのバイオアベイラビリティの改善は、非製剤化MCT油の標準的な投与と比較して、一般にin vivoでのケトン体生成の増加につながる可能性がある。
【0025】
[0047]ある特定の態様において、医薬組成物は、組成物全体の少なくとも約20%、組成物全体の少なくとも約25%、組成物全体の少なくとも約30重量%、組成物全体の少なくとも約40重量%、組成物全体の約30重量%~組成物全体の約65重量%、組成物全体の約30重量%~組成物全体の約60重量%、組成物全体の約40重量%~組成物全体の約50重量%、組成物全体の約40重量%~組成物全体の約45重量%等の高薬物充填量の少なくとも1つのMCT、例えばカプリル酸トリグリセリドを含んでもよい。
【0026】
[0048]本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「重量%」は「組成物全体の重量%」を指す。
[0049]本開示の特定の側面において、MCTは、それぞれの脂肪酸分子が5~12個の炭素の炭素鎖を有する、3個の脂肪酸分子にエステル結合された任意のグリセロール分子を指す。特定の態様において、医薬組成物は、以下の一般式:
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、R、RおよびRは、グリセロール骨格にエステル化された炭素骨格に5~12個の炭素を有する脂肪酸である)によって表されるMCTを含み得る。
[0050]本開示のMCTは、直接エステル化、転位、分画、エステル交換反応等の当技術分野で公知の任意のプロセスにより調製することができる。MCTの供給源には、半合成、合成または天然の任意の適切な供給源が挙げられる。MCTの天然の供給源の例には、ココナッツおよびココナッツ油、パーム核およびパーム核油などの植物供給源、ならびに様々な種(例えば、ヤギ)のいずれかからの乳汁などの動物供給源が挙げられる。例えば、脂質は、ココナッツ油などの植物油の転位により調製することができる。鎖長の長さおよび分布は、供給源油に応じて異なり得る。例えば、1~10%のC6、30~60%のC8、30~60%のC10、1~10%のC10を含有するMCTは、通常、パーム油およびココナッツ油から得られる。
【0029】
[0051]本開示の特定の態様によれば、本開示の医薬組成物は、R、RおよびRに約95%を超えるC8を有し、本明細書においてカプリル酸トリグリセリド(「CT」)と呼ばれるMCTを含んでもよい。CTの例示的な供給源には、ミグリオール(登録商標)808またはNEOBEE(登録商標)895が挙げられる。特定の側面において、CTは、ココナッツまたはパーム核油から得ることができ、グリセリン等へのオクタン酸の半合成エステル化により作成される。
【0030】
[0052]他の態様において、医薬組成物は、R、R、およびRが6炭素骨格を含有する脂肪酸(tri-C6:0)であるMCTを含んでもよい。Tri-C6:0 MCTは、いくつかの動物モデル系において極めて迅速に胃腸管に吸収される。高吸収速度は、肝臓の迅速な灌流、および強力なケトン体生成反応をもたらす。別の態様において、医薬組成物は、R、R、およびRが8炭素骨格を含有する脂肪酸(tri-C8:0)であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R、R、およびRが10炭素骨格を含有する脂肪酸(tri-C10:0)であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R、R、およびRがC8:0およびC10:0脂肪酸の混合物であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R、RおよびRがC6:0、C8:0、C10:0、およびC12:0脂肪酸の混合物であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R、RおよびRの95%超が8炭素長であるMCTを含んでもよい。さらに別の態様において、医薬組成物は、R、R、およびR炭素鎖が6炭素鎖または10炭素鎖であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R、RおよびRの約50%が8炭素長であり、ならびにR、RおよびRの約50%が10炭素長であるMCTを含んでもよい。1つの態様において、医薬組成物は、R、RおよびRが6、8、10または12炭素鎖長、またはそれらの混合物であるMCTを含んでもよい。
【0031】
[0053]ある特定の側面において、本開示の液体医薬製剤は、1つまたは複数のエマルション形成賦形剤を含む。ある特定の態様において、1つまたは複数のエマルション形成賦形剤は、MCT油とエマルションを形成することができる任意の乳化剤であってもよい。例として、レシチン(例えば、ホスホリポン90G)、ポリオキシル40ヒマシ油(例えば、Kolliphor RH40)を含む硬化ヒマシ油、カプリル酸エステル、オレイン酸ナトリウム、グリセロール、モノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル(例えば、Citrem)、モノカプリル酸プロピレングリコール(例えば、Capmul PG-8)を含む脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。エマルション形成賦形剤は、所望のエマルション形成をもたらすのに十分な量で存在し得る。例えば、ある特定の態様において、エマルション形成賦形剤は、組成物全体の約1重量%~約10重量%、組成物全体の約1重量%~約8重量%、組成物全体の約1.3重量%~約10重量%等の量で存在してもよい。
【0032】
[0054]いくつかの側面において、組成物中に少なくとも2つのエマルション形成賦形剤が存在し、エマルション形成賦形剤の少なくとも1つは、組成物全体の少なくとも2.0重量%の量で存在する。いくつかの側面において、少なくとも2つのエマルション形成賦形剤は、互いに対して1:1~2:1比で存在する。
【0033】
[0055]ある特定の態様において、エマルション形成賦形剤は、レシチン、Kolliphor RH40、およびカプリル酸エステル乳化剤、および場合によりグリセロールの様々な組み合わせを含んでもよい。他の態様において、エマルション形成賦形剤は、レシチン、オレイン酸ナトリウム、および場合によりグリセロールの様々な組み合わせを含んでもよい。さらに他の態様において、エマルション形成賦形剤は、Citremを単独でまたは脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドと組み合わせて含んでもよい。
【0034】
[0056]ある特定の態様において、本開示の液体医薬製剤は、場合により1つまたは複数の香味剤または甘味剤を含んでもよい。ある特定の態様において、香味剤または甘味剤は、甘味剤については組成物全体の0.025重量%~0.3重量%、0.15重量%~0.3重量%、0.5%重量%、香味剤については0.3重量%等の量で存在してもよい。ある特定の態様において、スクラロース、ステビアまたは類似の甘味剤が使用されてもよく、スクラロースが好ましい。ある特定の態様において、バニラ、マンゴー、ベリー、または類似の香味剤が使用されてもよく、バニラが好ましい。いくつかの態様において、香味剤または甘味剤は油溶性であってもよい。
【0035】
[0057]非限定的な例として、以下の表1は例示的な液体医薬製剤の特質および特性を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
[0058]非限定的な例として、本開示のエマルション形成賦形剤として有用な適切なレシチンは、任意の適切な供給源、例えば、タマゴまたはダイズに由来し得る。非限定的な例として、適切なレシチンは、Soy PC、95%、Avanti Number 441601;Egg PC、95%、Avanti Number 131601等から選択されてもよい。
【0038】
[0059]脂肪酸の任意の適切なモノグリセリドまたはジグリセリド、例えば、脂肪酸のモノおよびジグリセリドのクエン酸エステル(Citrem)E472C;脂肪酸のモノおよびジグリセリドE471等が本開示のエマルション形成剤として使用されてもよい。
【0039】
[0060]本開示の医薬組成物を作成するための任意の適切な方法が使用され得る。本開示のある特定の側面において、再現性およびエマルション安定性は、本明細書の例に示される製造プロセスを変更することにより制御できることが見出された。
【0040】
[0061]特定の側面において、本開示は、それを必要とする対象における認知機能低下を伴う疾患または障害を治療する方法であって、前記対象のケトン体濃度を上昇させるのに有効な量で本開示の医薬組成物を対象に投与して、これにより前記疾患または障害を治療するステップを含む方法に関する。特定の態様において、本開示の医薬組成物は、ケトン食療法の関連以外で投与されてもよい。例えば、本開示の関連では、炭水化物が本明細書に開示された医薬組成物と同時に消費されてもよい。
【0041】
[0062]本開示のある特定の側面によれば、認知機能の低下を伴う疾患および障害には、加齢に伴う記憶障害(AAMI)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、GLUT1欠損癲癇、妖精症、およびラブソン-メンデンホール症候群、冠状動脈バイパス移植片(CABG)認知症、麻酔誘導性記憶喪失、ハンチントン病、片頭痛および関連する頭痛、ならびに多くの他のものが挙げられる。
【0042】
[0063]別の態様において、患者は、ニューロン代謝低下に起因する疾患に関連した認知機能低下、例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、GLUT1欠損癲癇、妖精症、およびラブソン-メンデンホール症候群、冠状動脈バイパス移植片(CABG)認知症、麻酔誘導性記憶喪失、ハンチントン病、および多くの他のものと関連した認知機能低下を発症するリスクを有する、またはこのリスクがある。
【0043】
[0064]本明細書で使用される場合、ニューロン代謝低下は、ニューロン代謝の低下につながり得る、全ての可能性のある機構を指す。そのような機構には、ミトコンドリア機能障害、フリーラジカル攻撃、活性酸素種(ROS)の発生、ROS誘導ニューロンアポトーシス、グルコース輸送または解糖不全、膜イオン電位の不均衡、カルシウム流の機能障害等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
[0065]本発明によれば、高い血中ケトンレベルは、グルコース代謝が損なわれている脳細胞にエネルギー源を提供し、認知機能の成績の改善につながるであろう。本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」は互換的に使用され、ニューロン代謝低下と関連した、またはニューロン代謝低下から生じる疾患および状態の治療から恩恵を受けることができるヒトを含む任意の哺乳動物を指す。
【0045】
[0066]「有効量」は、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書に記載される化合物、材料、または医薬組成物の量を指す。上述の状態の治療に対する有効性は、少なくとも1種類の神経心理学的検査からの結果の改善によって評価することができる。これらの神経心理学的検査は当技術分野で公知であり、特に、変化の臨床全般印象(CGIC)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、First-Last Names Association Test(FLN)、Telephone Dialing Test(TDT)、Memory Assessment Clinics Self-Rating Scale(MAC-S)、Symbol Digit Coding(SDC)、SDC遅延想起課題(SDC Delayed Recall Task)(DRT)、分割的注意検査(Divided Attention Test)(DAT)、Visual Sequence Comparison(VSC)、DAT Dual Task(DAT Dual)、ミニメンタルステイト試験(MMSE)、および老年期うつ病評価尺度(GDS)が挙げられる。
【0046】
[0067]用語「認知機能」は、以下の、すなわち精神安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推理能力、思考能力、判断能力、学習能力、知覚、直感、注意、および意識の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、脳の特殊、正常、または適正な生理学的活性を指す。「認知機能強化」または「認知機能改善」は、以下の、すなわち、当技術分野で適切な任意の手段により測定される、精神安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推理能力、思考能力、判断能力、学習能力、知覚、直感、注意、および意識の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、脳の特殊、正常、または適正な生理学的活性の何らかの改善を指す。「認知機能低下」または「認知機能不全」は、脳の特殊、正常、または適正な生理学的活性の何らかの減少を指す。
【0047】
[0068]別の態様において、本発明の方法は、患者の遺伝子型または特定の対立遺伝子の決定をさらに含む。1つの態様において、アポリポタンパク質E遺伝子の患者の対立遺伝子が決定される。ケトン体レベルの上昇がMCTにより誘導されたとき、非E4キャリアは、E4対立遺伝子を有する者より成績が良いことが見出された。また、E4対立遺伝子を有する者は、空腹時ケトン体レベルがより高く、レベルは2時間間隔で上昇し続けた。したがって、E4キャリアは、存在するケトン体を使用する能力を高めるより高いケトンレベルまたは薬剤を必要とする可能性がある。
【0048】
[0069]1つの態様において、本開示の医薬組成物は経口投与される。治療剤の治療的に有効な量は、所望の効果をもたらすのに十分な任意の量または用量であり得、状態の重症度および病期、患者のサイズおよび状態、ならびに当業者に容易にわかる他の要因に部分的に依存する。投与量は、単一用量として、または本明細書の他の部分で論じられているように、例えば、数週間にわたって分割される複数用量として与えることができる。
【0049】
[0070]本開示の医薬組成物は、1つの態様において、AD、AAMI等の任意の疾患関連または加齢関連認知低下の発生を治療および/または予防するのに必要とされるレベルまで血中ケトン体を増加させるのに必要とされる投与量で投与される。適当な投与量は、当業者によって決定され得る。
【0050】
[0071]1つの態様において、本開示の医薬組成物の経口投与は高ケトン血症をもたらす。高ケトン血症は、1つの態様において、グルコースの存在下でさえ脳内でエネルギーとして利用されるケトン体をもたらす。さらに、高ケトン血症は、脳血流量のかなりの(39%)増加をもたらす(Hasselbalch,S.G.ら、Changes in cerebral blood flow and carbohydrate metabolism during acute hyperketonemia、Am J Physiol、1996、270:E746~51頁)。高ケトン血症は、正常なヒトにおいて全身性低血糖と関連した認知機能障害を低減することが報告されている(Veneman,T.ら、Effect of hyperketonemia and hyperlacticacidemia on symptoms、cognitive dysfunction、and counterregulatory hormone responses during hypoglycemia in normal humans、Diabetes、1994、43:1311~7頁)。全身性低血糖は、AD、AAMI等の任意の疾患関連または加齢関連認知低下で生じるグルコース代謝の局所欠陥とは異なることを留意されたい。
【0051】
[0072]投与は、必要に応じてまたは所望に応じて、例えば、月1回、週1回、毎日、または1日1回超であってもよい。同様に、投与は、1日おき、1週間おき、または1カ月おき、2日おき、2週間おき、または2カ月おき、3日おき、3週間おき、または3カ月おき等であってもよい。投与は、1日に複数回であってもよい。通常の栄養必要量に対する補充として利用される場合、組成物は、患者に直接投与されてもよく、またはさもなければ日常の飼料もしくは食品と接触もしくは混合されてもよい。
【0052】
[0073]本明細書に提供される医薬組成物は、1つの態様において、「延長された(extended)」期間と本明細書で呼ばれることもある、「長期(long term)」消費が意図される。「長期」投与は、本明細書で使用される場合、一般に1カ月を超える期間を指す。2、3、または4カ月より長い期間は、本発明の1つの態様を含む。また、含まれるのは、5、6、7、8、9、または10カ月より長い期間を含む、より延長された期間を含む態様である。11カ月または1年を超える期間も含まれる。1、2、3年またはそれより多い年数に及ぶより長期の使用も本明細書で企図される。「定期的」は、本明細書で使用される場合、少なくとも毎週の組成物の投与または消費を指す。週2回または3回などのより頻繁な投与または消費が含まれる。また、含まれるのは、少なくとも1日1回の消費を含むレジメンである。当業者は、達成されたケトン体または特定のケトン体の血中レベルが、投与頻度の有益な尺度となり得ることを理解するであろう。本明細書に明示的に例示されているかどうかにかかわらず、測定される化合物の血中レベルを許容可能な範囲内に維持できるようにするいずれの頻度も、本明細書において有用と見なされ得る。当業者は、投与頻度が、消費または投与されている組成物の関数となり、いくつかの組成物は、測定される化合物(例えば、ケトン体)の所望の血中レベルを維持するために、より多いまたは少ない頻度の投与を必要とする場合があることを理解するであろう。
【0053】
[0074]投与は、例えば、患者における治療レジメンの一部として、定期的に実施されてもよい。治療レジメンは、患者における認知機能、記憶、および行動を強化するのに有効な量で、本開示の医薬組成物を患者に定期的に摂取させることを含み得る。定期的な摂取は、毎日または毎週、1日1回、または1日に2回、3回、4回、もしくはそれよりも多い回数であってもよい。同様に、定期投与は、1日もしく1週間おき、2日もしくは2週間おき、3日もしくは3週間おき、4日もしくは4週間おき、または5日おきもしくは5週間おきであってもよく、そのようなレジメンでは、投与は1日に複数回であってもよい。定期投与の目標は、本明細書で例示されている本開示の医薬組成物の至適用量を患者に提供することである。
【0054】
[0075]例えば、MCTを含むものなどの本発明の組成物の投与量は、例えば、AD、AAMI等の任意の疾患関連または加齢関連認知低下を有する患者において、ニューロン代謝低下の疾患に苦しむ患者の認知能力を高めるのに有効な量で投与され得る。
【0055】
[0076]1つの態様において、本発明の組成物は、体内のケトン濃度の上昇をもたらし、この態様では、組成物は、高ケトン血症を誘導するのに有効である量で投与される。1つの態様において、高ケトン血症は、脳内でエネルギーとして利用されるケトン体をもたらす。
【0056】
[0077]1つの態様において、組成物は、哺乳動物または患者において少なくとも1種類のケトン体の循環濃度を高める。1つの態様において、循環ケトン体は、D-ベータ-ヒドロキシブチレートである。循環ケトン体の量は、投与後いくつかの時点で測定することができ、1つの態様では、血中のピーク濃度に近いと予測される時点で測定されるが、予測ピーク血中濃度レベル前後で測定することもできる。これらのオフピーク時の測定量は、次いで予測ピーク時の予測レベルを反映するように場合により調整される。1つの態様において予測ピーク時は、約2時間時点である。ピーク循環血中レベルおよびタイミングは、個体の消化速度、当業者に公知の食品、飲料等の同時摂取または前もしくは後摂取を含む、当業者に公知の要因に応じて異なり得る。1つの態様において、D-ベータ-ヒドロキシブチレートの到達ピーク血中レベルは、約0.05ミリモル(mM)~約50mMである。D-ベータ-ヒドロキシブチレートの血中レベルが約0.05~約50mMに上昇しているかどうかを決定する別の方法は、約5mg/dL~約160mg/dLの範囲のD-ベータ-ヒドロキシブチレート尿中排泄の測定値による。他の態様において、ピーク血中レベルは、約0.1~約50mM、約0.1~約20mM、約0.1~約10mM、約0.1~約5mMに上昇し、より好ましくは約0.15~約2mM、約0.15~約0.3mM、および約0.2~約5mMに上昇するが、上記で論じられたように、例えば製剤および宿主に応じて、変動が必然的に生じるであろう。他の態様において、D-ベータ-ヒドロキシブチレートの到達ピーク血中レベルは、少なくとも約0.05mM、少なくとも約0.1mM、少なくとも約0.15mM、少なくとも約0.2mM、少なくとも約0.5mM、少なくとも約1mM、少なくとも約1.5mM、少なくとも約2mM、少なくとも約2.5mM、少なくとも約3mM、少なくとも約4mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM、少なくとも約20mM、少なくとも約30mM、少なくとも約40mM、および少なくとも約50mMとなるであろう。
【0057】
[0078]本発明の組成物の化合物、すなわち、ニューロン代謝低下に起因する認知機能の低下の治療または予防に有効な量でケトン体濃度を上昇させることができる化合物の投与の有効量は、当業者に明らかであろう。本明細書で上記に論じられたように、そのような有効量は、開示された血中ケトンレベルに照らして決定することができる。ケトン体濃度を上昇させることができる化合物がMCTである場合、MCT用量は、1つの態様ではMCT約0.05g/kg/日~約10g/kg/日の範囲内である。他の態様において、用量は、MCT約0.25g/kg/日~約5g/kg/日の範囲内となろう。他の態様において、用量は、MCT約0.5g/kg/日~約2g/kg/日の範囲内となろう。他の態様において、用量は、約0.1g/kg/日~約2g/kg/日の範囲内となろう。他の態様において、MCTの用量は、少なくとも約0.05g/kg/日、少なくとも約0.1g/kg/日、少なくとも約0.15g/kg/日、少なくとも約0.2g/kg/日、少なくとも約0.5g/kg/日、少なくとも約1g/kg/日、少なくとも約1.5g/kg/日、少なくとも約2g/kg/日、少なくとも約2.5g/kg/日、少なくとも約3g/kg/日、少なくとも約4g/kg/日、少なくとも約5g/kg/日、少なくとも約10g/kg/日、少なくとも約15g/kg/日、少なくとも約20g/kg/日、少なくとも約30g/kg/日、少なくとも約40g/kg/日、および少なくとも約50g/kg/日である。
【0058】
[0079]本明細書に記載されているように、本組成物は、投与を必要とする対象に投与するための液体製剤として提供される。該組成物は、開示されたMCT化合物とは異なる他の治療剤または予防剤と有利には組み合わせることができ、および/または組み合わせて使用することができる。多くの場合、対象組成物と併用した投与は、そのような薬剤の有効性を強化する。例えば、化合物は、抗酸化物、グルコース利用の効率性を強化する化合物、およびそれらの混合物と併用して有利には使用することができる。
【0059】
[0080]MCTの日用量は、哺乳動物の体重(BW)1kgあたりのMCTのグラム単位で測定することもできる。MCTの日用量は、約0.01g/kg~約10.0g/kg哺乳動物BWにわたり得る。好ましくは、MCTの日用量は、約0.1g/kg~約5g/kg哺乳動物BWである。より好ましくは、MCTの日用量は、約0.2g/kg~約3g/kg哺乳動物である。さらにより好ましくは、MCTの日用量は、約0.5g/kg~約2g/kg哺乳動物である。
【実施例
【0060】
[0081]以下の例は例示的な目的のみで提供され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
一般的な材料および方法
[0082]実施例によれば、本開示の例示的な液体エマルションは、必要に応じておよび当業者に理解されるように変更を加えて図1に示された手順に従って作成することができる。
【0061】
[0083]実施例によれば、使用され得る粒径試験方法は次の通りである。
手順
1. バックグラウンド測定を、純水分散液(milliQ-HO)を用いて行う
2. エマルション試料をボルテックスし、減衰率(obscuration)が最適範囲(5~15)内になるまでアリコートをピペットで分散液に添加する。必要な容量は典型的には粒径に応じて10~100μLであり、粒径が小さいほど多くの容量を必要とする。添加前にピペットの先端の外側をキムワイプで拭いて、蒸発により先端の外側に何らかの沈着物が形成されるのを避ける。
3. 測定は3回の反復サブ測定として行い、結果を3回のサブ測定の平均として報告する。
4. 分散ユニットの撹拌速度=3000rpm
材料の光学特性(Matersizerソフトウェアのデータベースから選択)
脂質:屈折率1.6;吸収:0.1
分散液(milliQ-HO):屈折率1.33;吸収:0.1
使用機器:Hydro 2000S分散ユニットを備えたMastersizer 2000;Malvern
測定時間
試料測定時間:10秒
バックグラウンド測定時間:10秒
試料測定スナップ:10000
バックグラウンド測定スナップ:10000
測定サイクル
測定サイクル数:3
測定間の遅延:10秒
3回の測定から平均結果を作出
結果算出モデル
汎用モデル
算出感度:普通(デフォルト)
[0084]実施例によれば、使用され得る分析試験方法は次の通りである。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
実施例1-ホスホリポン90G、Kolliphor RH40、Capmul PG-8エマルション
[0085]様々な態様において、本開示の液体組成物は、ホスホリポン90G(ダイズレシチン)、Kolliphor RH40(PEG-40硬化ヒマシ油)、およびCapmul PG-8(モノカプリル酸プロピレングリコール)などのエマルション形成剤の組み合わせを用いて製剤化することができる。
【0065】
[0086]そのような製剤の例示的な製造方法を全体として図1に示し、以下の表に要約する。
【0066】
【表4】
【0067】
[0087]例示的なエマルション形成剤濃度を図2に示し、安定性結果を以下の表および図3に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
[0088]図3の右下隅の丸で囲まれた部分に示された組み合わせおよび濃度は、最も安定な製剤であることが見出されたことが判明した。ホスホリポン90G、Kolliphor RH40、およびCapmul PG-8の均等な混合も極めて安定していた。Ultra Turrax乳化により調製したホスホリポン90G、Kolliphor RH40、Capmul PG-8エマルションの粒径進化を図4に示し、ホスホリポン90G、Kolliphor RH40、Capmul PG-8エマルション(Silversonおよび高圧ホモジナイザー乳化により調製)の粒径進化を図5に示す。1カ月間の安定性試験下のホスホリポン90G、Kolliphor RH40、Capmul PG-8エマルションの外観を図6に示す。
【0070】
[0089]例示的な製剤の化学的安定性を以下に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
[0090]カプリル酸は、50%トリカプリリン、2%ホスホリポン90G、2% Kolliphor RH40、2% Capmul PG-8例では検出されなかった。カプリル酸は、Capmul PG-8がない例のいずれにおいても検出されなかった。
【0073】
[0091]知見の要約を以下に示す。
【0074】
【表7】
【0075】
[0092]全体として、50%トリカプリリン、4%ホスホリポン90G、2% Kolliphor RH40および50%トリカプリリン、2%ホスホリポン90G、2% Kolliphor RH40、2% Capmul PG-8は両方とも、1カ月時点で極めて良好な物理的安定性を有する。カプリル酸は、1カ月時点の50%トリカプリリン、2%ホスホリポン90G、2% Kolliphor RH40、2% Capmul PG-8試料で検出された。50%トリカプリリン、2.67%ホスホリポン90G、1.33% Kolliphor RH40における4%への総乳化剤濃度の低下は、初期粒径に軽い影響しか与えなかった。
【0076】
[0093]他の実施例では、Kolliphor RH40濃度の影響を調査した。Kolliphor含量は、レシチン-kolliphor比を上げるおよび/または総乳化剤含量を減らすことによって低下させた。結果を以下に示す。
【0077】
【表8】
【0078】
実施例2-Citremならびに脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドエマルション
[0094]様々な態様において、本開示の液体組成物は、Citremならびに脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのようなエマルション形成剤の組み合わせを用いて製剤化することができる。調製したエマルションは、以下を含む:クエン酸緩衝液、pH6中、20%トリカプリリン、0.8% Citrem、0.5%モノグリセリド(異なる供給業者からの乳化剤を使用して2つの製剤を作成);milliQ-H20、pH6中、20%トリカプリリン、0.8% Citrem、0.5%モノグリセリド;およびmilliQ-H20、pH6中、20%トリカプリリン、0.8% Citrem、0.5%モノグリセリド。例示的な粒径分布を図7に示す。
【0079】
[0095]実施例3-追加の成分組み合わせ
[0096]安定性およびMCT濃度を改善するために追加の調査を行った。結果を以下に示す。
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
[0097]40%トリカプリリン、3.2% 90G、1.6% Citrem、2.5%グリセロール;40%トリカプリリン、2.13% 90G、1.07% Citrem、2.5%グリセロール;40%トリカプリリン、2.13% 90G、1.07% RH40;40%トリカプリリン、2.13% 90G、1.07% RH40、2.5%グリセロール;40%トリカプリリン、4.8% 90G、2.5%グリセロール、1%オレイン酸ナトリウム、0.4% RH40、pH8;50% TC、4% 90G、2% RH40;40%トリカプリリン、2.13% 90G、1.07% RH40;40%トリカプリリン、2.13% 90G、1.07% RH40、2.5%グリセロール;20% TC、2.4% 90G、2.5%グリセロール、0.5%オレイン酸ナトリウム、0.2% RH40;40% TC、3.2% 90G、1.6% Citrem、2.5%グリセロール;および40% TC、3.2% 90G、1.6% RH40を含む追加の製剤を調査した。
【0083】
[0098]比較実施例4:レシチン、オレイン酸ナトリウム、グリセロール乳化剤
[0099]他の態様において、本開示の例示的な液体製剤は、異なるMCT濃度でエマルション形成剤(レシチン、オレイン酸ナトリウムおよびグリセロールなどの)比の組み合わせから調製することができる。製剤はSilverson vs高圧均質化によって調製した。
【0084】
【表11】
【0085】
[00100]エマルションはかなり安定であるが、25℃で12カ月間の安定性の要件を満たす可能性は低い。オレイン酸ナトリウムは、pH7でわずかな不安定化作用があった。全体として、安定性結果に基づきこれらの製剤はさらに追求されなかった。
【0086】
[00101] Silversonミキサーにより調製した製剤の安定性結果を、図8(20%トリカプリリン、2.4%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)、図9(20%トリカプリリン、2.4%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の視覚的安定性結果)、図10(20%トリカプリリン、1.6%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)、図11(20%トリカプリリン、6.0%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)、図12(20%トリカプリリン、6.0%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の視覚的安定性結果)、および図13(20%トリカプリリン、4.0%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)に示す。
【0087】
[00102]高圧均質化により調製した製剤の安定性結果を、図14(20%トリカプリリン、2.4%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)、図15(20%トリカプリリン、2.4%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の視覚的安定性結果)、図16(20%トリカプリリン、1.6%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)、図17(20%トリカプリリン、6.0%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)、図18(20%トリカプリリン、6.0%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の視覚的安定性結果)、および図19(20%トリカプリリン、4.0%レシチン、異なるグリセロール、異なるオレイン酸の安定性結果)に示す。
【0088】
[00103]実施例5-バイオバーデン低減方法
[00104]本開示の製剤のバイオバーデン低減のための方法を以下に示す。
【0089】
【表12】
【0090】
[00105]開発プロセスの一部として、一連のバイオバーデン低減対策をその有効性および製造プロセスに組み入れる可能性について評価した。行った様々な試験の詳細を以下に要約する。
【0091】
[00106]濾過
[00107]バイオバーデン低減ステップとしての濾過の組み入れは、汚染微生物数(存在する場合)を低減する最も簡単な方法として使用することができる。フィルター適合性試験をPall Filtrationによって行い、選択したフィルターの微生物保持の評価を行った。これらの試験は、選択した製剤がフィルター媒体のタイプに感受性であること、および好ましい媒体タイプは微生物を保持しないことを裏付けた。
【0092】
[00108]乾熱
[00109]加熱は、汚染微生物数を低減する一般に受け入れられている方法である。微生物の増殖を制御するのに一般に使用される加熱条件の評価を例示的な製剤で試みた。試した全ての温度条件が、製品のPSDプロファイルに有意な崩壊を示し、加熱はバイオバーデン制御に実行可能ではないことを裏付けた。この観察は、開発試験で観察された昇温による製品の劣化と相関する。
【0093】
[00110]ガンマ線照射
[00111]ガンマ線照射は、構成部分を滅菌し、天然材料中の汚染微生物数を低減する一般に受け入れられている方法である。例示的な製剤を様々な線量で照射し、次いで製品性能に対する照射の影響を評価した。この試験は、10kG線量が汚染微生物数の6 logの低下を達成する上で有効であり、試験した製品の重要な品質特質に対する影響はないことを裏付けた。
【0094】
[00112]以下の表は、トリカプリリンおよび代表的な製剤(「製剤2」50%トリカプリリン、2.67%ホスホリポン90G、1.33% Kolliphor RH 40、50mMリン酸緩衝液 pH6.8)に対する様々な線量のガンマ線照射の影響を示す。
【0095】
【表13-1】
【0096】
【表13-2】
【0097】
【表13-3】
【0098】
[00113]ガンマ線照射の前または後で製剤2に微生物は検出されなかった。生物学的インジケーターストリップから得られた結果は、試験した全ての線量でバイオバーデンの6-logの低下が達成されたことから、ガンマ線照射は成功したことを裏付けた。
【0099】
[00114]10kGyで照射した製剤試料の生理化学的評価は、外観の変化、アッセイ、関連物質プロファイル、粒径分布またはpHに変化がないことを裏付けた。照射した試料は、評価した全ての線量について一次容器および密閉に対するガンマ線照射からの負の影響がないことも示した。すなわち、照射の結果密封が脆くなることは観察されなかった。
【0100】
[00115]15および25kGyで照射した試料も、外観、アッセイおよびpHに対する変化がないことを示したが、関連物質プロファイルおよび粒径分布はこれらの線量で影響を受けた。この点で、ガンマ線照射試料の粒径分布は保持試料より影響を受けると思われる。結果を図20に示す。
【0101】
[00116]実施例6-例示的な製剤および比較製剤
[00117]本開示の以下の製剤および比較製剤を、必要に応じておよび当業者に理解されるように変更され得る図1の一般的方法論に従って調製した。
【0102】
【表14-1】
【0103】
【表14-2】
【0104】
【表15】
【0105】
【表16】
【0106】
【表17】
【0107】
[00118]実施例7-長期安定性
[00119]本開示の以下の製剤および比較製剤を、必要に応じておよび当業者に理解されるように変更され得る図1の一般的方法論に従って調製した。例示的な長期安定性結果を以下の表に示す。
【0108】
【表18】
【0109】
【表19】
【0110】
【表20-1】
【0111】
【表20-2】
【0112】
【表21】
【0113】
【表22】
【0114】
【表23】
【0115】
【表24】
【0116】
【表25】
【0117】
【表26】
【0118】
[00120]実施例8-香味剤
[00121]本開示の液体医薬製剤の味および全体的な嗜好性を改善するために追加の調査を行った。様々な甘味剤および香味剤を調査した。結果を以下に示す。
【0119】
[00122]甘味剤
[00123]3つのレベルのスクラロース(0.025%、0.05%、および0.1%)および3つのレベルのステビア(0.1%、0.2%、および0.3%)を比較した。香味剤が勝るため、スクラロースとステビアの間に明らかな甘味剤の違いは同定されなかった。しかし、スクラロースはより低い濃度で使用することができるため、わずかに好ましい(すなわち、0.05%~0.1%スクラロースは十分なレベルの甘みをもたらすことが見出された)。
【0120】
[00124]香味剤
[00125]種々の香味剤を比較した(0.1%スクラロース濃度で)。濃度は製造者の推奨および初期試験に基づき選択した。
【0121】
【表27】
【0122】
[00126]油溶性香味剤は、本開示の液体医薬製剤に味の改善および全体的な嗜好性をもたらすことが予想外に見出された。
[00127]実施例9-リード製剤選択
[00128]上記の製剤および比較製剤調製に基づき、以下のリード製剤を選択した。
【0123】
【表28】
【0124】
[00129]リード製剤選択の理論的根拠:
・主因の物理的および化学的安定性
・トリカプリリン濃度の範囲およびグリセロールの有無、ならびに選択した賦形剤の組み合わせ(これらの要因はPKプロファイルに影響を与える可能性があるため)
・全てのリード製剤は、比較的速い消化プロファイルを示す。
・Citrem製剤は、物理的および化学的に安定であるが、いくつかの製造関連問題をもたらし得る(粒径が濾過、GC分析によって影響される可能性がある)。
・オレイン酸ナトリウム製剤は温度感受性であることが示されており、いくつかの製造および保存関連の制約をもたらす可能性がある。それにもかかわらず、これらは、PKおよび忍容性の観点から興味深いバリエーションを提供し得る異なる賦形剤の組み合わせとなるため、選択された主力候補として該製剤を依然として選択した。
【0125】
[00130]図21A~21Jは、示されているリード製剤AC-OLE-1~AC-OLE-10の様々な時点の粒径分布を示す。
[00131]実施例11-リード製剤のpK試験
[00132]実施例10のリード製剤(AC-OLE-1~AC-OLE-10)を健康なボランティアに投与して、本開示の液体製剤の薬物動態作用を調査した。
【0126】
[00133]調査は、いくつかの試験施設およびサイクルを含むことになる。東施設および各サイクルでは、リード製剤(最大4つ)のうちのいくつかが、部分的または完全なクロスオーバーデザインで最大20名の健康なボランティアで試験されるであろう。各サイクルが完了したら、血液パラメーターが分析されるであろう。
【0127】
[00134]図22A(総ケトン(BHB+AcA)のCmax)、および総ケトン(BHB+AcA)の曲線下面積(AUC)として算出される図22B(総ケトン(BHB+AcA)のAUC)に示されているように、全てのリード製剤は700μMを上回る総ケトンCmaxを示し、ほとんどが1000μMを上回る(および先行製剤AC-1202に概ね匹敵する)。
【0128】
[00135]本明細書に引用された全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物および特許出願が参照により組み込まれると具体的におよび個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
[00136]本発明は、例示的な態様を参照して記載されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得、その要素に対して同等物が代用され得ることが当業者に理解されるであろう。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を教示に適合させるように多くの変更形態がなされ得る。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図された最良の形態として開示された特定の態様に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある全ての態様を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図21F
図21G
図21H
図21I
図21J
図22A
図22B
【国際調査報告】