(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ガスを圧縮するための要素及びこのような要素を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F04C 28/28 20060101AFI20240514BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20240514BHJP
F16K 17/30 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F04C28/28 C
F04C18/16 Z
F16K17/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572780
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022063056
(87)【国際公開番号】W WO2022248252
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】マシス ウィム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ミーゲム リュック
(72)【発明者】
【氏名】ペティナーリ ダニエーレ
【テーマコード(参考)】
3H060
3H129
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060BB03
3H060CC36
3H060DC05
3H060DD02
3H060DD12
3H060DD15
3H060HH07
3H060HH15
3H129AA03
3H129AB06
3H129CC09
3H129CC13
3H129CC25
3H129CC52
3H129CC85
(57)【要約】
入口(3)及び出口(4)を有するハウジング(2)を備えた、ガスを圧縮するための要素であって、このハウジング(2)は、出口に接続された出口ポート(7)を有する圧縮室(5)を取り囲み、圧縮室(5)内にはロータ(8)が取り付けられ、圧縮室(5)が複数の作動室に分割されるようになっており、要素(1)が、出口と、圧縮室(5)内で出口ポート(7)と隣接接触していない作動室との間に通路(10)を備え、この通路(10)は、作動室と出口(4)との間の圧力差がプリセット値を超えた場合に通路(10)を開放するための過圧バルブ(11)を備え、過圧バルブ(11)は、狭窄部(14)を介して出口と流体連通している可変容積のバッファ空間(13)を取り囲むバルブ本体(12)を備え、通路(10)が開放されると、この容積が減少し、ガスがバッファ空間(13)から狭窄部(14)を通って出口に流れるようになっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮するための要素であって、
前記要素(1)は、ガスの入口(3)及び圧縮ガスの出口(4)を有するハウジング(2)を備え、
前記ハウジング(2)は、圧縮室(5)を取り囲み、前記圧縮室(5)は、前記入口(3)に接続された入口ポート(6)及び前記出口(4)に接続された出口ポート(7)を備えるハウジング(2)に設けられ、
前記圧縮室(5)は、ハウジング(2)に対して回転可能に取り付けられたロータ(8)を有し、前記ロータ(8)は、前記圧縮室(5)を、前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)に向かう方向に連続して配置され且つ相互に密閉された又はほぼ密閉された複数の作動室に分割するようになっており、
前記ロータ(8)が前記圧縮室(5)内で回転すると、前記作動室は、前記入口ポート(6)で連続的に作り出され、続いて前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)の方向に移動し、前記入口ポート(6)との流体接触が終了した後に容積が減少し、最終的に前記出口ポート(7)と隣接接触するようになっており、
前記要素(1)は、前記出口(4)を前記圧縮室(5)内の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第1の通路(10)を備え、前記第1の作動室は、前記出口ポート(7)とまだ隣接接触していないような第1の位置にあり、
前記第1の通路(10)は、前記第1の位置における前記第1の作動室内の圧力と前記出口(4)の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を超える場合に前記第1の通路(10)を開き、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値よりも低い場合に前記第1の通路(10)を閉じるように構成された第1の過圧バルブ(11)を備えており、
前記第1の過圧バルブ(11)は、狭窄部(14)を介して前記出口(4)と流体連通している可変容積の内部バッファ空間(13)を取り囲むバルブ本体(12)を含み、
前記第1の通路(10)が開くと、前記可変容積が減少し、ガスは前記内部バッファ空間(13)から前記狭窄部(14)を通って前記出口(4)へ運ばれ、且つ
前記第1の通路(10)が閉じると、前記可変容積が増加し、ガスは前記出口(4)から狭窄部(14)を通って前記内部バッファ空間(13)に運ばれる、
ように構成されていることを特徴とする要素。
【請求項2】
前記要素(1)は、前記第1の位置において、前記出口(4)を前記第1の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第2の通路を備え、
前記第2の通路は、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値を超える場合に前記第2の通路を開き、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値よりも低い場合に前記第2の通路を閉じるように構成された、第2の過圧バルブを備える、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記要素(1)が、前記出口(4)を前記圧縮室(5)内の第2の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第3の通路(15)を備え、前記第2の作動室は、前記出口ポート(7)とまだ隣接接触していないような第2の位置にあり、前記第2の作動室は、第1の作動室とは異なっており、
前記第3の通路(15)は、前記第2の位置における前記第2の作動室内の圧力と前記出口(4)の圧力との間の第2の圧力差が第2のプリセット値を超える場合に前記第3の通路(15)を開き、前記第2の圧力差が前記第2のプリセット値よりも低い場合に前記第3の通路(15)を閉じるように構成された第3の過圧バルブ(16)を備える、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記要素(1)は、前記第2の位置において前記出口(4)を前記第2の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第4の通路を備え、
前記第4の通路は、前記第2の圧力差が前記第2のプリセット値を超える場合に前記第4の通路を開き、前記第2の圧力差が前記第2のプリセット値よりも低い場合に前記第4の通路を閉じるように構成された、第4の過圧バルブを備える、請求項3に記載の要素。
【請求項5】
前記第1の圧力差と前記第2の圧力差は等しいか又はほぼ等しい、請求項3又は4に記載の要素。
【請求項6】
前記要素(1)は、真空ポンプ要素である、請求項1から5のいずれかに記載の要素。
【請求項7】
前記要素(1)は、スクリュー要素である、請求項1から6のいずれかに記載の要素。
【請求項8】
前記要素(1)は、液体注入要素である、請求項1から7のいずれかに記載の要素。
【請求項9】
前記第1の過圧バルブ(11)はバネ付勢式バルブである、請求項1から8のいずれかに記載の要素。
【請求項10】
前記第1の通路(10)はバルブシート(18)を備え、前記第1の過圧バルブ(11)は、前記ハウジング(2)内に取り付けられるように構成されたバルブ基部(19)を備え、前記第1の過圧バルブ(11)は、前記バルブ基部(19)に対して移動可能であり、前記バルブシート(18)と接触し、結果として前記第1の通路(10)を閉じるように構成された部分(20)を備える、請求項1から9のいずれかに記載の要素。
【請求項11】
前記バルブ基部(19)は、前記ハウジング(2)に取り外し可能に取り付けられるように構成されている、請求項10に記載の要素。
【請求項12】
前記バルブシート(18)及び/又は前記可動部分(20)は、前記第1の通路(10)を密閉するためのOリング(21)を備える、請求項10又は11に記載の要素。
【請求項13】
前記バルブシート(18)及び/又は前記可動部分(20)は、前記第1の通路(10)を密閉するための弾性材の埋め込みピースを備える、請求項10から12のいずれかに記載の要素。
【請求項14】
前記弾性材は加硫ゴムである、請求項13に記載の要素。
【請求項15】
前記狭窄部(14)は、前記バルブ基部(19)内に設けられている、請求項10から14のいずれかに記載の要素。
【請求項16】
前記狭窄部(14)は、前記第1の過圧バルブが開く又は閉じる方向に対して垂直な方向において、前記内部バッファ空間(13)の最大寸法よりも小さい最小直径を有する、請求項1から15のいずれかに記載の要素。
【請求項17】
前記狭窄部(14)の前記最小直径と前記内部バッファ空間(13)の前記最大寸法との間の最大比率は、10%を超えない、請求項16に記載の要素。
【請求項18】
前記狭窄部(14)の前記最小直径と前記内部バッファ空間(13)の前記最大寸法との間の最小比率は、4%以上である、請求項16又は17に記載の要素。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかにに記載の要素に使用するための過圧バルブ。
【請求項20】
請求項1から18のいずれかに記載の要素を備えるガスを圧縮するための装置。
【請求項21】
ガスを圧縮するための要素を制御する方法であって、
前記要素(1)は、ガスの入口(3)及び圧縮ガスの出口(4)を有するハウジング(2)を備え、
前記ハウジング(2)は、圧縮室(5)を取り囲み、前記圧縮室(5)は、前記入口(3)に接続された入口ポート(6)及び前記出口(4)に接続された出口ポート(7)を備える前記ハウジング(2)に設けられ、
前記圧縮室(5)は、ロータ(8)によって、前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)に向かう方向に、連続的な且つ相互に密閉された又はほぼ密閉された複数の作動室に分割されており、
前記ロータ(8)が前記圧縮室(5)内で回転すると、前記作動室は、前記入口ポート(6)で連続的に作り出され、続いて前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)の方向に移動し、前記入口ポート(6)との流体接触が終了した後に容積が減少し、最終的に前記出口ポート(7)と隣接接触し、
前記要素(1)は、前記出口(4)を前記圧縮室(5)内の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第1の通路(10)を備え、前記第1の作動室は、前記出口ポート(7)とまだ隣接接触していない第1の位置にあり、
前記第1の通路(10)は、前記第1の位置における前記第1の作動室内の圧力と前記出口(4)の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を超える場合に、前記第1の通路(10)内の第1の過圧バルブ(11)によって開放され、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値よりも低い場合に閉鎖され、
前記第1の通路(10)が開くと、前記第1の過圧バルブ(11)のバルブ本体(12)によって取り囲まれた内部バッファ空間(13)の可変容積が減少し、ガスは前記内部バッファ空間(13)から狭窄部(14)を通って前記出口(4)へ運ばれ、且つ
前記第1の通路(10)が閉じると、前記可変容積が増加し、ガスは前記出口(4)から前記狭窄部(14)を通って前記内部バッファ空間(13)に運ばれることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを圧縮するための要素及びそのような要素を制御するための方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、圧縮室を取り囲むハウジングを備えたガスを圧縮するための要素に関し、圧縮室は、ロータによって連続する作動室に分割され、要素は、圧縮ガスのための要素の出口と圧縮室内の第1の作動室との間に第1の通路を備え、この第1の作動室は、圧縮室の出口ポートに隣接接触しないような第1の位置にあり、第1の通路は、第1の位置にある第1の作動室内の圧力が第1のプリセット値を超える場合に第1の通路を開放するための過圧バルブを備える。
【背景技術】
【0003】
圧縮室がロータによって連続する作動室に分割されているガスを圧縮するための要素は、回転容積式要素とも呼ばれ、一般に、ロータの繰り返される回転に伴って圧縮室内の作動室が連続的に、
-圧縮室の入口ポートに形成され、
-その後、入口ポートから出口ポートに向かう方向に移動し、入口ポートからガスを吸い込み、
-ロータがさらに回転すると、入口ポートとの流体接触がある瞬間に終了し、
-最終的に出口ポートに隣接接触する状態になり、出口ポートを通して圧縮ガスを圧縮室から排出する、
という原理に従って作動する。
【0004】
スクリュー圧縮機要素又はスクリュー真空ポンプ要素のような回転容積式要素では、入口ポートとの流体接触が終了する瞬間と、作動室が出口ポートと隣接接触する瞬間との間で、作動室の総容積が減少する。
【0005】
このような容積の減少により、圧縮室内の作動室の内圧が上昇する。
【0006】
これにより、圧縮室の内圧比は、作動室が出口ポートと隣接接触する直前の瞬間における作動室の減少した全容積によって決定される。
【0007】
これに関連して、「圧縮室の内圧比」とは、圧縮室の出口ポートの圧力と圧縮室の入口ポートの圧力の比を指す。
【0008】
しかしながら、この内圧上昇は、必ずしも要素を横切る所望の圧力比に対応するとは限らない。
【0009】
これに関連して、「要素を横切る圧力比」とは、圧縮ガスのための要素の出口での圧力と、ガスのための要素の入口での圧力の比を指す。
【0010】
一方で要素の入口と圧縮室の入口ポートとの間の圧力損失と、他方で圧縮室の出口と要素の出口との間の圧力損失とを要約すると、内部圧力の上昇と所望の圧力上昇との不一致が、以下のように明らかになる。すなわち、
-圧縮室の内圧比が要素を横切る所望の圧力比よりも高い場合の、ガスの過圧縮、
-圧縮室の内圧比が要素を横切る所望の圧力比より低い場合の、ガスの圧縮不足、
である。
【0011】
ガスがそれぞれ入口ポート又は出口ポートを介してのみ要素の圧縮室に流入することができる又はそこから流出することができる場合、内圧比は、さらに、ロータと、入口ポート及び出口ポートを備える圧縮室の内部幾何形状によって固定される。
【0012】
しかしながら、要素を横切る圧力比は固定されておらず、要素の周囲要因に依存する。
【0013】
例えば、圧縮機要素の場合、要素の入口でのガスの圧力は、通常、要素の周囲大気圧に固定されるが、出口での圧縮ガスの圧力は、圧縮ガスの圧力に関する圧縮ガスの使用者の要求に従って変化する場合がある。
【0014】
真空ポンプ要素の場合、要素の出口での圧縮ガスの圧力は、通常、要素の周囲大気圧に固定されるが、入口でのガスの圧力は、真空ポンプ要素の入口に接続された空間における通常大気圧以下の圧力に関する使用者の要求に従って変化する場合がある。
【0015】
その結果、要素の周囲要因に依存して、同じ要素に対して過圧縮又は圧縮不足が現れる場合がある。
【0016】
この周囲要因は経時的に変わる場合もあり、このことは、例えば、最初の瞬間に過圧縮が存在し、他方で、別の第2の瞬間に圧縮不足が存在する状況が生じる可能性さえあることを意味する。
【0017】
過圧縮には、ガスが強く圧縮され過ぎるという欠点があり、これはガスを圧縮するためにエネルギーが浪費されることを意味する。
【0018】
さらに、過圧縮の場合、ガスは、圧縮室内で、出口ポートでの急激な、場合によっては強い圧力降下にさらされ、これは衝撃及びそれに関連する要素の損傷を引き起こす可能性がある。
【0019】
特開昭62-65087、米国特許第5,674,063号、及び米国公開第2012/0039737号には、要素の周囲雰囲気とスクリュー真空ポンプ要素の圧縮室の第1の作動室との間に過圧バルブを有する通路を備えたスクリュー真空ポンプ要素が記載されており、この第1の作動室は、圧縮室の出口ポートにまだ隣接接触していないような第1の位置にある。
【0020】
第1の位置にある第1の作動室内のガスの圧力が既に大気圧を超えている場合、過圧バルブが開き、このガスは、第1の作動室が出口ポートに隣接接触する前であっても、通路を通って周囲大気に運ばれるので、圧縮室の更なる過圧縮とそれに関連するエネルギーの浪費が回避される。
【0021】
特開昭61-65087の過圧バルブはバネ付勢式バルブであり、米国公開第2012/0039737号の過圧バルブは重量式バルブである。
【0022】
要素が第1の位置で第1の作動室内で過圧縮されることなく作動する場合、特開昭61-65087のバネ付勢式バルブは、バルブの可動部をバルブシートに押し付けるバネによって通路を閉じた状態に保つ。
【0023】
このようなバネ付勢式バルブのバネがバルブの可動部をバルブシートに押し付ける力が小さほど、バネ付勢式バルブは過圧縮時に容易かつ迅速に開放される。しかし、これは、バネ付勢式バルブが閉位置に戻るのがより難しく、より遅いという欠点を有する。
【0024】
要素が第1の作動室内で過圧縮されずに第1の位置で作動している場合、米国公開第2012/0039737号の重量式バルブは、その重量でバルブシートに押し付けられるバルブの可動部によって通路を閉じた状態に保つ。
【0025】
バルブの可動部がバルブシートを押す重量が小さいほど、過圧縮時に重量式バルブは開きやすくなる。しかし、これは、重量式バルブが閉位置に戻るのがより難しく、より遅いという欠点を有する。
【0026】
特開昭61-65087又は米国公開第2012/0039737号の真空ポンプ要素の周囲の雰囲気の圧力変動の結果として、バネ付勢式過圧バルブ又は重量式過圧バルブは、閉位置と開位置との間で振動し及びガタつき始め、これは、要素における振動及び騒音公害を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開昭61-65087号公報
【特許文献2】米国特許第5,674,063号明細書
【特許文献3】米国出願公開第2012/0039737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上記及び/又は他の欠点の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この目的のため、本発明は、ガスを圧縮するための要素に関し、要素は、ガスの入口及び圧縮ガスの出口を有するハウジングを備え、
ハウジングは、圧縮室を取り囲み、圧縮室は、入口に接続された入口ポート及び出口に接続された出口ポートを備えるハウジングに設けられ、
圧縮室は、ハウジングに対して回転可能に取り付けられたロータを有し、ロータは、圧縮室を、入口ポートから出口ポートに向かう方向に連続して配置され且つ相互に密閉された又はほぼ密閉された複数の作動室に分割するようになっており、
ロータが圧縮室内で回転すると、作動室は、入口ポートで連続的に作り出され、続いて入口ポートから出口ポートの方向に移動し、入口ポートとの流体接触が終了した後に容積が減少し、最終的に出口ポートと隣接接触するようになっており、
要素は、出口を圧縮室内の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第1の通路を備え、第1の作動室は、出口ポートとまだ隣接接触していないような第1の位置にあり、
第1の通路は、第1の位置における第1の作動室内の圧力と出口の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を超える場合に第1の通路を開き、第1の圧力差が第1のプリセット値よりも低い場合に第1の通路を閉じるように構成された第1の過圧バルブを備えており、
第1の過圧バルブは、狭窄部を介して出口と流体連通している可変容積の内部バッファ空間を取り囲むバルブ本体を含み、
第1の通路が開くと、可変容積が減少し、ガスは内部バッファ空間から狭窄部を通って出口へ運ばれ、且つ
第1の通路が閉じると、可変容積が増加し、ガスは出口から狭窄部を通って内部バッファ空間に運ばれる、
ように構成されていることを特徴とする。
【0030】
これに関連して、「狭窄部」とは、ガス流に対する断面積特性が、内部バッファ空間のガス流に対する断面積特性よりも小さい構造を指す。
【0031】
可変容積を有する内部バッファ空間、及び内部バッファ空間と出口との間の狭窄部は、第1の過圧バルブの開放又はさらなる開放運動が軽減されるという利点を有する。
【0032】
結局のところ、狭窄部を介して内部バッファ空間を要素の出口と流体連通させることにより、過圧バルブが開いて内部バッファ空間の可変容積が減少する場合に、内部バッファ空間内のガスの圧力が一時的に出口のガスの圧力よりもより強く上昇することになる。
【0033】
この内部空間内のガスの一時的により強い圧力上昇は、内部バッファ空間内のガスに、過圧バルブのさらなる開放に対する反作用力を発揮するようにさせる。
【0034】
狭窄部を介して内部バッファ空間を要素の出口と流体連通させることは、内部バッファ空間内のガスの圧力が、要素の出口の圧力の変動に左右されないようにすることになる。
【0035】
その結果、過圧バルブが振動し始める可能性が低いことになり、及び、ガタつく可能性が低いことになり、及び、要素内の振動及び騒音公害が軽減される又は解消されることにさえなる。
【0036】
本発明による要素の好ましい実施形態では、要素は、上記第1の位置において、出口を第1の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第2の通路を備え、第2の通路は、第1の圧力差が第1のプリセット値を超えたる場合に第2の通路を開き、第1の圧力差が第1のプリセット値よりも低い場合に第2の通路を閉じるように構成された第2の過圧バルブを備える。
【0037】
第1の通路及び第2の通路の各々に過圧バルブを設けることにより、第1の作動室内の圧力に起因する又は要素の出口の圧力変動に起因する負荷及びそれに関連する振動が、2つの過圧バルブに分割され、これは、要素内の振動及び騒音公害を減少する、あるいは除去する。
【0038】
本発明による要素の次の好ましい実施形態では、要素は、出口を圧縮室内の第2の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第3の通路を備え、第2の作動室は、出口ポートとまだ隣接接触していないような第2の位置にあり、第2の作動室は、第1の作動室とは異なっており、第3の通路は、第3の過圧バルブを備え、第3の過圧バルブは、上記第2の位置における第2の作動室内の圧力と出口の圧力との間の第2の圧力差が第2のプリセット値を超える場合に第3の通路を開き、第2の圧力差が第2のプリセット値よりも低い場合に第3の通路を閉じるように構成されている。
【0039】
第1の通路及び/又は第2の通路に加えて第3の通路が存在するので、出口ポートとまだ流体連通していない様々な作動室からの過圧縮ガスを圧縮室から出口に運ぶことができる。
【0040】
その結果、圧縮室内の過圧縮ガスは、様々な場所で圧縮室から出口に運ぶことができる。
【0041】
これは、要素の周囲要因が変わりやすく、その結果、ガスの過圧縮が最初に起こる圧縮室内の位置も変わりやすい場合に特に有利である。
【0042】
本発明による要素のより好ましい実施形態では、要素は、上記第2の位置において出口を第2の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第4の通路を備え、第4の通路は、第2の圧力差が第2のプリセット値を超える場合に第4の通路を開き、第2の圧力差が第2のプリセット値よりも低い場合に第4の通路を閉じるように構成された第4の過圧バルブを備える。
【0043】
第3の通路及び第4の通路の各々に過圧バルブを設けることにより、第2の作動室内の圧力に起因する又は要素の出口の圧力変動に起因する負荷及びそれに関連する振動が、2つの過圧バルブに分割され、これは、要素内の振動及び騒音を低減する、あるいは除去する。
【0044】
好ましくは、第1の圧力差と第2の圧力差は等しいか又はほぼ等しい。
【0045】
このように、本発明による要素内の全ての過圧バルブに同一又は類似のバルブが使用され、例えば、要素内の全ての過圧バルブに同一のバネ、その結果として同一のバネ強度を有するバネ付勢式バルブが使用される。
【0046】
これにより、1種類のバルブが必要とされるので、要素の修理又はメンテナンスが容易になる。
【0047】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、要素は真空ポンプ要素である。
【0048】
真空ポンプ要素に関して、出口は、出口の下流の出口システムを横切る通常制限された圧力降下によって増加した大気圧に等しい出口圧力を有し、その結果、この出口圧力にも真空ポンプ要素の過圧バルブがさらされる。
【0049】
その結果、このような真空ポンプ要素では、同一の標準的な過圧バルブを使用することができるが、圧縮機要素に関して、ユーザーが定めた及び場合によっては変動する要素の出口の圧縮ガスの最終圧力に従って、1又は複数の過圧バルブを特に選択する必要がある。
【0050】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、要素はスクリュー要素である。
【0051】
スクリュー要素では、圧縮空間内のロータはスクリューロータである。通常、スクリュー要素の圧縮空間は、逆ピッチの2つの噛み合いスクリューロータをまさに有する。
【0052】
スクリュー要素内の圧縮室は、入口ポートから出口ポートまでの軸方向において、1又は複数のスクリューロータのピッチに応じて複数の作動室にさらに分割される。
【0053】
このピッチに基づいて、第1の通路のこの軸方向における正しい位置を決定して、第1の通路を、出口ポートとまだ流体接触していない圧縮室内の作動室で終端させることができる。
【0054】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、要素は液体注入要素である。
【0055】
液体注入要素は、要素の圧縮室内に液体が注入される要素である。
【0056】
注入された液体は、ロータと圧縮室の壁との間のクリアランスの密閉を保証し、圧縮室内の作動室は、摩擦に起因する要素のエネルギー損失を引き起こす可能性がある、及び/又はロータ及び/又は圧縮室の壁の損傷につながる可能性がある、ロータと圧縮室の壁とが互いに接触することなく、相互に密閉又はほぼ密閉されるようになっている。
【0057】
さらに、注入された液体は、圧縮室内のガスの冷却に使用することができ、このガスは、圧縮時の圧縮熱のためにこの冷却がなければ加熱されることになる。この冷却により、ガスの過圧縮による要素内の高温ピークから要素を保護することができる。また、圧縮室内のガスの圧縮は、同じ圧力上昇に対して圧縮室内のガスの温度上昇が少ない場合、よりエネルギー効率よく行われる。
【0058】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の過圧バルブはバネ付勢式バルブである。
【0059】
これに関連して、「バネ付勢式バルブ」とは、第1の過圧バルブを閉じるために、第1の過圧バルブが別個のバネを備えること、及び/又は、第1の過圧バルブが少なくとも部分的にバネ性材料から作られていることを指す。
【0060】
バネ又はバネ性材料のバネ力は、第1の過圧バルブと流体連通している第1の作動室内の圧力と出口の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を下回る場合に第1の過圧バルブを閉じる。
【0061】
本発明による要素の次の好ましい実施形態では、第1の通路はバルブシートを備え、第1の過圧バルブは、ハウジングに取り付けられるように構成されたバルブ基部を備え、第1の過圧バルブは、バルブ基部に対して移動可能であり、バルブシートと接触し、結果として第1の通路を閉じるように構成された可動部分を備える。
【0062】
バルブ基部は、ハウジング内の第1の過圧バルブのしっかりした取り付けを保証し、一方、可動部分は、第1の通路を開閉できるように第1の過圧バルブに柔軟性を与える。
【0063】
本発明による要素のより好ましい実施形態では、バルブ基部はハウジングに取り外し可能に取り付けられるように構成されている。
【0064】
その結果、要素の第1の過圧バルブは、交換、メンテナンス、修理のために容易に取り外すことができる。
【0065】
さらに、その結果、要素は、第1の位置における第1の作動室内の圧力と出口の圧力との間の第1の圧力差の特に所望の値より上で第1の通路を開く、特に変更された第1の過圧バルブを設置することによって、容易に変更することができる。
【0066】
本発明による要素の次のより好ましい実施形態では、バルブシート及び/又は可動部分は、第1の通路を密閉するためのOリングを備える。
【0067】
このようなOリングは、製造が容易でかなり信頼性の高い構成要素であり、容易に取り付けること及び交換することができる。
【0068】
代替的に又は追加的に、バルブシート及び/又は可動部分は、第1の通路を密閉するための弾性材の埋め込みピースを備えることができる。
【0069】
このような弾性材の埋め込みピースは、一般に、別個のOリングよりも頑丈であり、引き裂きなどの損傷を受けにくい。
【0070】
好ましくは、弾性材は加硫ゴムである。
【0071】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、狭窄部はバルブ基部に設けられている。
【0072】
その結果、狭窄部は要素のハウジング内に流路として一体化される必要がない。
【0073】
狭窄部を要素のハウジングに流路として組み込むと、ハウジングの複雑な機械加工が必要となる可能性があり、ハウジングの機械的強度が低下することもある。
【0074】
本発明による要素の次の好ましい実施形態では、狭窄部は、第1の過圧バルブが開閉する方向に対して垂直な方向において、内部バッファ空間の最大寸法よりも小さい最小直径を有する。
【0075】
好ましくは、狭窄部の最小直径と内部バッファ空間の最大寸法との間の最大比率は10%を超えない。
【0076】
この最大比率は、第1の過圧バルブの開放又はさらなる開放運動がある程度まで軽減されることを保証する。
【0077】
本発明による要素のより好ましい実施形態では、狭窄部の最小直径と内部バッファ空間の最大直径との間の最小比率は、4%以上である。
【0078】
この最小比率は、第1の過圧バルブの開放又はさらなる開放運動が、この運動が軽減されるにもかかわらず、ある程度まで起こり得ることを保証する。
【0079】
さらに、本発明は、本発明による要素の上述の実施形態のうちの1つによる要素に使用するための過圧バルブに関する。
【0080】
このような過圧バルブが、本発明による要素の上述の実施形態について説明したような利点をもたらすことは言うまでもない。
【0081】
さらに、本発明は、本発明による要素の上述の実施形態のうちの1つによる要素を備えるガスを圧縮するための装置に関する。
【0082】
このような装置が、本発明による要素の上述の実施形態の利点と同じ利点をもたらすことは言うまでもない。
【0083】
最後に、本発明は、ガスを圧縮するための要素を制御する方法にも関し、
要素は、ガスの入口及び圧縮ガスの出口を有するハウジングを備え、
ハウジングは、圧縮室を取り囲み、圧縮室は、入口に接続された入口ポート及び出口に接続された出口ポートを備えるハウジングに設けられ、
圧縮室は、ロータによって、入口ポートから出口ポートに向かう方向に、連続的な且つ相互に密閉された又はほぼ密閉された複数の作動室に分割されており、
ロータが圧縮室内で回転すると、作動室は、入口ポートで連続的に作り出され、続いて入口ポートから出口ポートの方向に移動し、入口ポートとの流体接触が終了した後に容積が減少し、最終的に出口ポートと隣接接触し、
要素は、出口を圧縮室内の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第1の通路を備え、第1の作動室は、出口ポートとまだ隣接接触していない第1の位置にあり、
第1の通路は、第1の位置における第1の作動室内の圧力と出口の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を超える場合に、第1の通路内の第1の過圧バルブによって開放され、第1の圧力差が第1のプリセット値よりも低い場合に閉鎖され、
第1の通路が開くと、第1の過圧バルブのバルブ本体によって取り囲まれた内部バッファ空間の可変容積が減少し、ガスは内部バッファ空間から狭窄部を通って出口へ運ばれ、且つ
第1の通路が閉じると、可変容積が増加し、ガスは出口から狭窄部を通って内部バッファ空間に運ばれることを特徴とする。
【0084】
このような方法が、本発明による要素の上述の実施形態の利点と同じ利点をもたらすことは言うまでもない。
【0085】
本発明の特徴をよりよく示すために、以下、本発明による要素の好ましい実施形態は、非制限的に例示的に添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図3】
図2でF3として示される部分をより詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
使用されている用語は、例示的に好ましい実施形態を説明することのみを意図しており、特許請求の範囲に定義される保護範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0088】
「a/an」又は「the」が先行する単数形で用語を表現することは、他に定義される場合を除き、本発明においてこれらの用語が複数形で存在し得ることを排除するものではない。
【0089】
以下、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」又は「第4の」は、様々な作動室、位置、通路、過圧バルブ又はプリセット値を指すために使用されるが、これらの作動室、位置、通路、過圧バルブ又はプリセット値は、これらの用語に限定されない。これらの用語は、作動室、位置、通路、過圧バルブ又はプリセット値の種類を区別するために使用されているに過ぎない。以下、「第1の」、「第2の」、「第3の」又は「第4の」のような用語が使用される場合、これらの用語は、特定の順序又は順番を意味するものではない。その結果として、第1の作動室、位置、通路、過圧バルブ又はプリセット値は、その場合に例示の実施形態の範囲を超えることなく、例えば、第2又は第3の作動室、位置、通路、過圧バルブ又はプリセット値として同様に容易に指定することができる。また、より多くの第1、第2、第3又は第4の作動室、位置、通路、過圧バルブ又はプリセット値が存在し得ることも言及されるべきである。
【0090】
図1は、ガスを圧縮するための要素1を示し、この要素1は、ガスの入口3と圧縮ガスの出口4とを有するハウジング2を備える。
【0091】
図2は、
図1の線II-IIによる要素1の断面を示す。
【0092】
この断面は、ハウジング2が圧縮室5を取り囲んでいることを示し、圧縮室5は、入口3に流体連通状態で接続する入口ポート6と、出口4に流体連通状態で接続する出口ポート7とを備える。
【0093】
圧縮室5には、ロータ8がハウジング2に対して回転可能に取り付けられており、ロータ8は、圧縮室5を、入口ポート6から出口ポート7に向かう方向に連続して配置され、ほぼ相互に密閉された複数の作動室に分割するようになっている。
【0094】
この場合、ロータ8はスクリューロータとして設計されている。換言すれば、要素1はスクリュー要素である。
【0095】
この場合、本発明では必須ではないが、ロータ8は、軸受9によってハウジング2に回転可能に取り付けられている。
【0096】
圧縮室5内でロータ8が回転すると、作動室8は入口ポート6に連続して形成され、その後入口ポート6から出口ポート7に向かう方向に移動し、入口ポート6との流体接触が終了した後に容積が減少し、最終的に出口ポート7に隣接接触する。
【0097】
要素1は、出口4を圧縮室5の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第1の通路10を備え、第1の作動室は、出口ポート7とまだ隣接接触していないような第1の位置にある。
【0098】
第1の通路10は、第1の位置における第1の作動室内の圧力と出口4の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を超える場合に第1の通路10を開き、この第1の圧力差が第1のプリセット値よりも低い場合に第1の通路10を閉じるように構成された第1の過圧バルブ11を備える。
【0099】
第1の過圧バルブ11は、狭窄部14を介して出口4と流体連通している可変容積の内部バッファ空間13を取り囲むバルブ本体12を含む。
【0100】
第1の通路10が開くと、内部バッファ空間13の可変容積が減少し、内部バッファ空間13からのガスが狭窄部14を通って出口4に運ばれる。
【0101】
第1の通路10が閉じると、内部バッファ空間13の可変容積は増加し、出口4からのガスは狭窄部14を通って内部バッファ空間13に運ばれる。
【0102】
要素1は、この第1の作動室が第1の位置にある場合に、出口4を圧縮室5の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第2の通路(
図2には示されていない)を備えることができる。
【0103】
第1の通路10と同様に、第2の通路は第2の過圧バルブを備えることができ、この第2の過圧バルブにより、第1の圧力差が第1のプリセット値を超えると第2の通路が開き、この第1圧力差が第1プリセット値より低くなると第2の通路が閉じる。
【0104】
本発明の枠組みにおいて、出口4が1又は複数の過圧バルブを有する3以上の通路を介して第1の位置にある第1の作動室と流体連通することができることは排除されない。
【0105】
この場合、一般的には本発明では必須ではないが、要素1は、出口4を圧縮室5内の第2の作動室と流体連通させることができるように構成された第3の通路15を備え、第2の作動室は、出口ポート7とまだ隣接接触していない第2の位置にあり、この第2の作動室は、第1の作動室とは異なっている。
【0106】
第3の通路15は、第3の過圧バルブ16を備え、第3の過圧バルブ16は、第2の位置における第2の作動室内の圧力と出口4の圧力との間の第2の圧力差が第2のプリセット値を超える場合に第3の通路15を開き、この第2の圧力差が第2のプリセット値よりも低い場合に第3の通路15を閉じる。
【0107】
要素1は、第2の位置において出口4を第2の作動室と流体連通させることができるように構成された第4の通路(
図2には示されていない)を備えることができる。
【0108】
第1の通路15と同様に、第4の通路は第4の過圧バルブを備えることができ、この第4の過圧バルブは、第2の圧力差が第2のプリセット値を超える場合に第4の通路を開き、第2の圧力差が第2のプリセット値より低い場合に第4の通路を閉じる。
【0109】
本発明の枠組みにおいて、出口4が1つ又は複数の過圧バルブを有する3以上の通路を介して第2の位置にある第2の作動室と流体連通することができることは排除されない。
【0110】
本発明の枠組みにおいて、要素が、出口4を圧縮室5内の少なくとも1つの作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの通路をさらに備え、この少なくとも1つの作動室が、出口ポート7とまだ隣接接触していないような第3の位置にあり、この少なくとも1つの作動室が、第1及び第2の作動室とは異なることも排除されない。
【0111】
この場合、第1の過圧バルブ11及び第3の過圧バルブ16は、ばね付勢式バルブとして設計されており、第1の過圧バルブ11及び第3の過圧バルブ16は、それぞれ第1又は第2の位置にある第1又は第2の作動室内のガスの圧力と出口4の圧力との間の第1又は第2の圧力差がそれぞれ第1又は第2のプリセット値を下回る場合に、バネ17のバネ力によってそれぞれ閉じられる。
【0112】
本発明の枠組みにおいて、上記通路のうちの1つの上記過圧バルブのうちの1つがバネを備えていないが、少なくとも部分的にバネ性又は弾性材で構成されており、このバネ性又は弾性材が、通路が流体接触している圧縮室の作動室内の圧力と出口の圧力との間の圧力差がプリセット値を下回る場合にこの過圧バルブを閉じるために十分なバネ力を提供することができることは排除されない。
【0113】
本発明の枠組みにおいて、要素内の過圧バルブのうちの1つが、例えば重量式バルブのような異なるタイプのバルブであることも排除されない。
【0114】
この場合、第1の通路10及び第3の通路15はバルブシート18を備え、第1の過圧バルブ11及び第3の過圧バルブ16は、ハウジング2に取り付けられるように構成されたバルブ基部19をそれぞれ備える。
【0115】
第1の過圧バルブ11及び第3の過圧バルブ16は、バルブ基部19に対して移動可能な可動部分20を備え、可動部分20は、バルブシートと接触し、結果として第1の通路10又は第3の通路15をそれぞれ閉じるように構成されている。
【0116】
ここで、可動部分20は、第1の通路10をシールするためのOリング21を備える。
【0117】
本発明の枠組みにおいて、Oリング21がバルブシート18に設けられること、又は、可動部品20及びバルブシート18の両方がOリングを備えること、又は、可動部分20及び/又はバルブシート18が複数のOリングを備えることは排除されない。
【0118】
本発明の枠組みにおいて、上述のOリングの代替手段又は追加手段として、可動部分20及び/又はバルブシート18が、第1の通路10又は第3の通路15をシールするための弾性材の埋め込みピースを備えることも排除されない。好ましくは、この弾性材の埋め込みピースは、加硫ゴムで作られている。
【0119】
この場合、狭窄部14はバルブ基部19に設けられている。
【0120】
この場合、狭窄部14は、要素1のハウジング2ではなく、全体としてバルブ基部19内に設けられる。
【0121】
しかしながら、本発明の枠組みにおいて、狭窄部が少なくとも部分的にハウジング2に設けられることは排除されない。
【0122】
図3は、
図2でF3として特定されている部分における第1の過圧バルブ11をより詳細に示す。
【0123】
本発明は、例示的に説明され、図示された実施形態に限定されるものではなく、本発明による要素は、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を超えることなく、あらゆる形状及びサイズで実施することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 要素
2 ハウジング
3 入口
4 出口
5 圧縮室
7 出口ポート
8 ロータ
10 通路
11 過圧バルブ
12 バルブ本体
13 バッファ空間
14 狭窄部
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮するための要素であって、
前記要素(1)は、ガスの入口(3)及び圧縮ガスの出口(4)を有するハウジング(2)を備え、
前記ハウジング(2)は、圧縮室(5)を取り囲み、前記圧縮室(5)は、前記入口(3)に接続された入口ポート(6)及び前記出口(4)に接続された出口ポート(7)を備えるハウジング(2)に設けられ、
前記圧縮室(5)は、ハウジング(2)に対して回転可能に取り付けられたロータ(8)を有し、前記ロータ(8)は、前記圧縮室(5)を、前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)に向かう方向に連続して配置され且つ相互に密閉された又はほぼ密閉された複数の作動室に分割するようになっており、
前記ロータ(8)が前記圧縮室(5)内で回転すると、前記作動室は、前記入口ポート(6)で連続的に作り出され、続いて前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)の方向に移動し、前記入口ポート(6)との流体接触が終了した後に容積が減少し、最終的に前記出口ポート(7)と隣接接触するようになっており、
前記要素(1)は、前記出口(4)を前記圧縮室(5)内の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第1の通路(10)を備え、前記第1の作動室は、前記出口ポート(7)とまだ隣接接触していないような第1の位置にあり、
前記第1の通路(10)は、前記第1の位置における前記第1の作動室内の圧力と前記出口(4)の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を超える場合に前記第1の通路(10)を開き、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値よりも低い場合に前記第1の通路(10)を閉じるように構成された第1の過圧バルブ(11)を備えており、
前記第1の過圧バルブ(11)は、狭窄部(14)を介して前記出口(4)と流体連通している可変容積の内部バッファ空間(13)を取り囲むバルブ本体(12)を含み、
前記第1の通路(10)が開くと、前記可変容積が減少し、ガスは前記内部バッファ空間(13)から前記狭窄部(14)を通って前記出口(4)へ運ばれ、且つ
前記第1の通路(10)が閉じると、前記可変容積が増加し、ガスは前記出口(4)から狭窄部(14)を通って前記内部バッファ空間(13)に運ばれる、
ように構成されていることを特徴とする要素。
【請求項2】
前記要素(1)は、前記第1の位置において、前記出口(4)を前記第1の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第2の通路を備え、
前記第2の通路は、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値を超える場合に前記第2の通路を開き、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値よりも低い場合に前記第2の通路を閉じるように構成された、第2の過圧バルブを備える、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記要素(1)が、前記出口(4)を前記圧縮室(5)内の第2の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第3の通路(15)を備え、前記第2の作動室は、前記出口ポート(7)とまだ隣接接触していないような第2の位置にあり、前記第2の作動室は、第1の作動室とは異なっており、
前記第3の通路(15)は、前記第2の位置における前記第2の作動室内の圧力と前記出口(4)の圧力との間の第2の圧力差が第2のプリセット値を超える場合に前記第3の通路(15)を開き、前記第2の圧力差が前記第2のプリセット値よりも低い場合に前記第3の通路(15)を閉じるように構成された第3の過圧バルブ(16)を備える、請求項1に記載の要素。
【請求項4】
前記要素(1)は、前記第2の位置において前記出口(4)を前記第2の作動室と流体連通させることができるように構成された少なくとも1つの第4の通路を備え、
前記第4の通路は、前記第2の圧力差が前記第2のプリセット値を超える場合に前記第4の通路を開き、前記第2の圧力差が前記第2のプリセット値よりも低い場合に前記第4の通路を閉じるように構成された、第4の過圧バルブを備える、請求項3に記載の要素。
【請求項5】
前記第1の圧力差と前記第2の圧力差は等しいか又はほぼ等しい、請求項3に記載の要素。
【請求項6】
前記要素(1)は、真空ポンプ要素である、請求項1に記載の要素。
【請求項7】
前記要素(1)は、スクリュー要素である、請求項1に記載の要素。
【請求項8】
前記要素(1)は、液体注入要素である、請求項1に記載の要素。
【請求項9】
前記第1の過圧バルブ(11)はバネ付勢式バルブである、請求項1に記載の要素。
【請求項10】
前記第1の通路(10)はバルブシート(18)を備え、前記第1の過圧バルブ(11)は、前記ハウジング(2)内に取り付けられるように構成されたバルブ基部(19)を備え、前記第1の過圧バルブ(11)は、前記バルブ基部(19)に対して移動可能であり、前記バルブシート(18)と接触し、結果として前記第1の通路(10)を閉じるように構成された部分(20)を備える、請求項1に記載の要素。
【請求項11】
前記バルブ基部(19)は、前記ハウジング(2)に取り外し可能に取り付けられるように構成されている、請求項10に記載の要素。
【請求項12】
前記バルブシート(18)及び/又は前記可動部分(20)は、前記第1の通路(10)を密閉するためのOリング(21)を備える、請求項10に記載の要素。
【請求項13】
前記バルブシート(18)及び/又は前記可動部分(20)は、前記第1の通路(10)を密閉するための弾性材の埋め込みピースを備える、請求項10に記載の要素。
【請求項14】
前記弾性材は加硫ゴムである、請求項13に記載の要素。
【請求項15】
前記狭窄部(14)は、前記バルブ基部(19)内に設けられている、請求項10に記載の要素。
【請求項16】
前記狭窄部(14)は、前記第1の過圧バルブが開く又は閉じる方向に対して垂直な方向において、前記内部バッファ空間(13)の最大寸法よりも小さい最小直径を有する、請求項1に記載の要素。
【請求項17】
前記狭窄部(14)の前記最小直径と前記内部バッファ空間(13)の前記最大寸法との間の最大比率は、10%を超えない、請求項16に記載の要素。
【請求項18】
前記狭窄部(14)の前記最小直径と前記内部バッファ空間(13)の前記最大寸法との間の最小比率は、4%以上である、請求項16に記載の要素。
【請求項19】
請求項1に記載の要素に使用するための過圧バルブ。
【請求項20】
請求項1に記載の要素を備えるガスを圧縮するための装置。
【請求項21】
ガスを圧縮するための要素を制御する方法であって、
前記要素(1)は、ガスの入口(3)及び圧縮ガスの出口(4)を有するハウジング(2)を備え、
前記ハウジング(2)は、圧縮室(5)を取り囲み、前記圧縮室(5)は、前記入口(3)に接続された入口ポート(6)及び前記出口(4)に接続された出口ポート(7)を備える前記ハウジング(2)に設けられ、
前記圧縮室(5)は、ロータ(8)によって、前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)に向かう方向に、連続的な且つ相互に密閉された又はほぼ密閉された複数の作動室に分割されており、
前記ロータ(8)が前記圧縮室(5)内で回転すると、前記作動室は、前記入口ポート(6)で連続的に作り出され、続いて前記入口ポート(6)から前記出口ポート(7)の方向に移動し、前記入口ポート(6)との流体接触が終了した後に容積が減少し、最終的に前記出口ポート(7)と隣接接触し、
前記要素(1)は、前記出口(4)を前記圧縮室(5)内の第1の作動室と流体連通させることができるように構成された第1の通路(10)を備え、前記第1の作動室は、前記出口ポート(7)とまだ隣接接触していない第1の位置にあり、
前記第1の通路(10)は、前記第1の位置における前記第1の作動室内の圧力と前記出口(4)の圧力との間の第1の圧力差が第1のプリセット値を超える場合に、前記第1の通路(10)内の第1の過圧バルブ(11)によって開放され、前記第1の圧力差が前記第1のプリセット値よりも低い場合に閉鎖され、
前記第1の通路(10)が開くと、前記第1の過圧バルブ(11)のバルブ本体(12)によって取り囲まれた内部バッファ空間(13)の可変容積が減少し、ガスは前記内部バッファ空間(13)から狭窄部(14)を通って前記出口(4)へ運ばれ、且つ
前記第1の通路(10)が閉じると、前記可変容積が増加し、ガスは前記出口(4)から前記狭窄部(14)を通って前記内部バッファ空間(13)に運ばれることを特徴とする方法。
【国際調査報告】