(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】腸オルガノイド製造用培地組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240514BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240514BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240514BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 35/38 20150101ALI20240514BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/02
A61P1/04
A61P1/00
A61K35/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572875
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2022017750
(87)【国際公開番号】W WO2023191225
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2022-0039992
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519427985
【氏名又は名称】オルガノイドサイエンシーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ORGANOIDSCIENCES, LTD.
【住所又は居所原語表記】(SAMPYEONG-DONG, KOREA PAPERLESS TRADE CENTER), 6F, 338 PANGYO-RO, BUNDANG-GU, SEONGNAM-SI, GYEONGGI-DO, 13493, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョギョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,スヒ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ウンソ
(72)【発明者】
【氏名】タク,ジ・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン‐ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン‐イル
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR72
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4B065CA46
4C087AA01
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4C087BB50
4C087MA65
4C087NA20
4C087ZA66
4C087ZA68
(57)【要約】
本発明は、腸オルガノイド製造用培地組成物に関する。また、本発明は、前記培地組成物で培養するステップを含む腸オルガノイドの製造方法、および前記製造方法で製造された腸オルガノイドに関する。本発明の腸オルガノイド製造用培地は、腸オルガノイドの増殖を促進し、腸オルガノイドの幹細胞能を保持させることができる。したがって、前記培地は、優れた品質の腸オルガノイドを多い量で製造することに活用されることができ、前記培地で製造された腸オルガノイドは、腸関連疾患の予防または治療製剤、または腸関連疾患の動物実験モデルに対する代替案などとして活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HGFおよびNRG1を含む、腸オルガノイド製造用培地組成物。
【請求項2】
前記腸オルガノイドは、PTK7(チロシンプロテインキナーゼ様7)を発現するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、基本培地(basal media)をさらに含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記基本培地は、DMEM、MEM、BME、RPMI1640、F-10、F-12、α-MEM、GMEM、IMDM、DMEM/F12またはアドバンスト(Advanced)DMEM/F12である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、ゲンタマイシン(Gentamicin)、アムホテリシン(Ampotericin)およびストレプトマイシン(Streptomycin)からなる群より選択される一つ以上の抗生剤をさらに含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、IGF1をさらに含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の培地組成物で個体から分離した腸由来細胞を培養するステップを含む、腸オルガノイドの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法で製造された、腸オルガノイド。
【請求項9】
請求項8に記載の腸オルガノイドを含む、腸疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
前記腸疾患は、炎症性腸疾患、炎症性腸疾患による潰瘍および炎症性腸疾患による瘻孔からなる群より選択される一つ以上である、請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
前記炎症性腸疾患は、放射線性大腸炎、放射線性直腸炎、虚血性大腸炎、ベーチェット大腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎および潰瘍性直腸炎からなる群より選択される一つ以上である、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項12】
前記瘻孔は、痔瘻および腸皮瘻からなる群より選択される一つ以上である、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項13】
請求項8に記載の腸オルガノイドを利用して薬物の効能を評価する、方法。
【請求項14】
前記薬物は、腸疾患の予防または治療用薬剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項8に記載の腸オルガノイドを含む、薬物効能評価システム。
【請求項16】
請求項8に記載の腸オルガノイドを利用して薬物をスクリーニングする、方法。
【請求項17】
前記薬物は、腸疾患の予防または治療用薬剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項8に記載の腸オルガノイドを含む、薬物スクリーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸オルガノイド製造用培地組成物に関する。また、本発明は、前記培地組成物で培養するステップを含む腸オルガノイドの製造方法、および前記製造方法で製造された腸オルガノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、特有の分化能力(multi-potency)と自己再生(self-renewal)特徴を有していることにより、これを不治の病の治療、疾病モデリング、組織または器官の移植などに多様に活用するための研究が弛まず進められている。特に、幹細胞を適切な3次元試験管環境で培養する場合、生体内器官と類似した構造および組織特性を有する細胞塊が形成されるという事実が明らかになり、このような細胞塊は、オルガノイドと命名される。
【0003】
オルガノイドの作製技術は、理論的に幹細胞だけで殆どすべての種類の臓器を作製することができるため、多様な疾病の治療剤開発に活用されると期待されている。オルガノイドは、2次元で作った細胞組織より新薬の安全性と効能を試験するのにさらに効果的であり得、損傷されるか、十分に発達されていない臓器に移植されることで、状態を改善するのに活用することができるとされている。これにより、最近、再生医学観点でもオルガノイド関連研究がより活発になる傾向にあり、様々な分野にオルガノイドを広く利用することができると見込まれている。
【0004】
しかし、オルガノイドの製造および培養技術は、まだ研究初期段階水準であって、培地添加物質の組み合わせまたは割合を確立するなど、各器官に対して特異的な培地組成物およびこれを活用したオルガノイドの製造方法に対する多様な研究および開発が依然として要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、優れた品質の腸オルガノイドを効率的に製造するための多様な研究を進めた。その結果、多様な培地成分のなかでも、腸オルガノイドの増殖促進および幹細胞能保持を極大化させ得る特定組み合わせを確認し、その効果を実験的に立証することにより、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において開示されたそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用されることができる。すなわち、本発明において開示された多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、後述された具体的な叙述によって、本発明の範疇が制限されるものと認められない。
【0007】
また、本明細書において、特に定義されない用語に対しては、本発明の属する技術分野において通常的に使用される意味を有するものと理解されなければならない。また、文脈上特に定義しない場合であれば、単数は複数を含み、複数は単数を含む。
【0008】
本発明の一様態は、HGFおよびNRG1を含む、腸オルガノイド製造用培地組成物を提供する。
【0009】
本発明の培地組成物は、腸オルガノイドの増殖を促進して数多くの腸オルガノイドを形成させることができ、形成された殆どの腸オルガノイドが幹細胞能(stemness)を保持することができるようにする。このように培養して調製される腸オルガノイドは、再生治療剤、細胞治療剤、薬物スクリーニング、薬物評価などの多様な分野で適用されることができる。
【0010】
本明細書において使用される用語「オルガノイド(organoid)」は、3D立体構造を有する細胞塊を意味する。動物などから収集、取得、採取せず人工的な培養過程を通じて製造したものであって、縮小し且つ単純化されたバージョンの器官と定義される。本発明によるオルガノイドは、腸オルガノイドであってよく、前記腸オルガノイドは、小腸オルガノイド、十二指腸オルガノイド、大腸オルガノイド、直腸オルガノイドまたは結腸オルガノイドであってよいが、これに制限されない。
【0011】
本明細書において使用される用語「HGF」は、肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor)を意味し、そのタンパク質配列などに対する情報は、公知になっているデータベース(NCBI Reference Sequence:NP_000592、NP_001010931、NP_001010932、NP_001010933、NP_001010934)などを通じて確認することができる。前記HGFは、本発明の培地組成物に1~100ng/mlの濃度、より具体的に50ng/mlの濃度で含まれることができるが、これに制限されない。
【0012】
本明細書において使用される用語「NRG1」は、NRG1遺伝子によってコードされるニューレグリン1(Neuregulin 1)タンパク質を意味する。そのタンパク質配列などに対する情報は、公知になっているデータベース(NCBI Reference Sequence:NP_001153467、NP_001153468、NP_001153471、NP_001153473、NP_001153474)などを通じて確認することができる。前記NRG1は、本発明の培地組成物に50~150ng/mlの濃度、より具体的に100ng/mlの濃度で含まれることができるが、これに制限されない。
【0013】
本発明においては、前記HGFおよびNRG1を含む培地で腸オルガノイドを培養する場合、腸オルガノイドの増殖が促進され、取得できる腸オルガノイドの数が顕著に増加し、同時に、形成された殆どのオルガノイドが幹細胞能を保持するなどの腸オルガノイドの製造効果に優れることを確認した。
【0014】
具体的に、本発明による腸オルガノイドは、PTK7(チロシンプロテインキナーゼ様7:Tyrosine-protein kinase-like 7)を発現するものであってよい。
【0015】
本明細書において使用される用語「PTK7(チロシンプロテインキナーゼ様7:Tyrosine-protein kinase-like 7)」は、幹細胞マーカーとして使用される遺伝子を意味し、PTK7を発現する腸オルガノイドは、高い自己再生(self-renewal)および再播種(re-seeding)能力を有するなどの幹細胞能を示すと知られている(Stem Cell Reports.2015 Dec 8;5(6):979-987.)。
【0016】
また、本発明の腸オルガノイド製造用培地組成物は、IGF1をさらに含むことができる。
【0017】
本明細書において使用される用語「IGF1」は、IGF1遺伝子によってコードされるインスリン様成長因子1(insulin like growth factor 1)タンパク質を意味する。そのタンパク質配列などに対する情報は、公知になっているデータベース(NCBI Reference Sequence:NP_000609.1、NP_001104753.1、NP_001104754.1、NP_001104755.1、XP_016874748.1、XP_016874750.1、XP_016874751.1、XP_016874752.1)などを通じて確認することができる。前記IGF1は、本発明の培地組成物に50~100ng/mlの濃度、より具体的に100ng/mlの濃度で含まれることができるが、これに制限されない。
【0018】
前記HGF、NRG1およびIGF1の入手経路は、特に制限されない。例えば、市販される物質を使用するか、当業界に公知になっている方法によって遺伝子(タンパク質)組換え技術を使用して製造することができる。
【0019】
本発明において、前記腸オルガノイドは、7継代以上培養されるか、9継代以上培養されるか、または15継代以上培養されるものであってよい。また、前記腸オルガノイドは、20継代以上培養されるものであってよい。
【0020】
本明細書において使用される用語「継代」は、細胞またはオルガノイドを健康な状態に持続的に長期培養するために細胞の代を引き続き培養する方法において、培養容器を取り替えることまたは細胞群を分けて培養することを意味する。1継代は、1回培養容器を取り替えるか、または1回細胞群を分けて培養することであり、20継代は、20回培養容器を取り替えるか、または20回細胞群を分けて培養することである。継代が増加するほど数多くのオルガノイドを取得することができるが、既存の当業界において使用されていた培養培地は、継代が増加するほどオルガノイドを構成する細胞が死滅して長期間の培養が不可能となる問題点があった。本発明によるHGFおよびNRG1を含む培地組成物は、腸オルガノイドを20継代以上長期培養することができる。本明細書において、前記「継代」は、「世代」と相互交換的に使用され得る。
【0021】
本明細書において使用される用語「培地」は、インビトロ(in vitro)で細胞またはオルガノイドの成長、生存、拡張または分化を可能にする栄養物質の混合物を意味し、当業界において使用される適切な通常の培地をすべて含む。細胞またはオルガノイドの種類によって当業界の技術的水準で培地の種類と培養条件を選択することができる。前記培地は、炭素源、窒素源および微量元素を含む細胞培養用基本培地(basal media)であってよく、具体的な例として、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地:Dulbecco´s Modified Eagle´s Medium)、MEM(最少必須培地:Minimal essential Medium)、BME(イーグル基礎培地:Basal Medium Eagle)、RPMI1640、F-10、F-12、α-MEM(α-最少必須培地:α-Minimal essential Medium)、GMEM(グラスゴー最少必須培地:Glasgow´s Minimal essential Medium)、IMDM(イフコフ改変ダルベッコ培地:Iscove´s Modified Dulbecco´s Medium)、DMEM/F12(ダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F-12:Dulbecco´s Modified Eagle Medium/Nutrient Mixture F-12)またはアドバンスト(Advanced)DMEM/F12であってよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
オルガノイド製造方法に対する当業界の従来技術は、成分がそれぞれ異なる最小2種類の培養培地を使用している。例として、培養初期には、オルガノイドを形成させ、サイズなどを成長させるための成長培地を使用し、以後、前記成長培地を除去した後にオルガノイドの数を増加させるための拡張培地を使用した。しかし、互いに異なる成分の培養培地を2種類以上使用する既存のオルガノイド製造方法は、費用が多くかかり、製造工程が複雑になる短所があった。
【0023】
また、オルガノイドは、その特性上、培養条件によって製造結果が顕著に変わる特徴を有する。培養条件の例として、培養日、培養温度、培養培地、培養基質などの培養条件がオルガノイドの特性を決定する重要な要因であり、その中でも培地条件が幹細胞に多様なシグナル伝達経路を調節することで、オルガノイドが所望の組織または器官と類似した特性を有するように成長させるのに最も大きい役割を遂行する。
【0024】
本発明においては、実際の組織と形態および機能が非常に類似し、特に、増殖能および幹細胞能が増加して、再生治療剤、薬物スクリーニング、薬物評価などに活用することができる程度で十分な数の腸オルガノイドを取得することができる特定培地条件は、HGFおよびNRG1を含むものであることを確認した。さらに、前記培養培地を使用する場合には、2種類以上の培養培地を使用せず、1種類の培養培地のみを使用しても、腸オルガノイドの形成、成長および拡張を成功的に誘導することができることを確認した。
【0025】
本明細書において、「製造用」は、「培養用」と同じ意味で相互交換的に使用することができる。したがって、前記腸オルガノイドの製造用培地組成物は、腸オルガノイドの培養用培地組成物であってよく、また腸オルガノイドの形成用培地組成物であってよく、また腸オルガノイドの拡張用培地組成物であってよい。このとき、前記「形成用」は、腸由来細胞で腸オルガノイドを形成することを意味し、腸の固有の機能を遂行することができるように器官または組織特性を示すことを意味する。また、前記「拡張用」は、形成された腸オルガノイドの数を増加させることで、目的とする用途で使用できる十分な量を取得するためのものであって、2世代以上の継代培養が可能であることを意味する。
【0026】
本発明において、前記培地組成物は、抗生剤をさらに含むものであってよく、前記抗生剤は、当業界で細胞またはオルガノイドの培養に使用される適切な通常の抗生剤をすべて含む。具体的な例として、ゲンタマイシン(gentamicin)、アムホテリシン(ampotericin)、ペニシリン(penicillin)およびストレプトマイシン(streptomycin)からなる群より選択される一つ以上であってよいが、これに制限されない。
【0027】
本発明の他の一様態は、前記培地組成物で個体から分離した腸由来細胞を培養するステップを含む、腸オルガノイドの製造方法を提供する。
【0028】
本発明による腸オルガノイドの製造方法において、各用語は、特に言及しない限り、前記腸オルガノイドの製造用培地組成物において説明したところと同じ意味を有する。
【0029】
本明細書において使用される用語「個体」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物などを制限なく含むことができる。前記非ヒト動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、犬、牛、馬、豚、齧歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどであってよい。本明細書において、前記「個体」は、「対象体」または「患者」と相互交換的に使用されることができる。
【0030】
前記分離した腸由来細胞は、小腸または大腸の腸組織を切断する過程と酵素分解過程を通じて分離されるものであってよい。具体的に、前記切断は、物理的な切断または機械的な切断をすべて含み、当業界に知られている一般的な組織の切断方法で遂行されることができる。また、前記酵素分解は、当業界に知られている一般的な酵素分解条件で遂行されることができ、例として、ディスパーゼ(dispase)II、DNA分解酵素(DNase)Iおよびコラーゲン分解酵素(collagenase)IIからなる群より選択された一つ以上の酵素を使用して遂行されることができる。
【0031】
本発明において、前記培養は、20継代以上培養するものであってよく、前記1継代は、1~10日間遂行されるものであってよい。
【0032】
本発明のまた他の一様態は、前記腸オルガノイドの製造方法で製造された、腸オルガノイドを提供する。
【0033】
本発明による腸オルガノイドにおいて、各用語は、特に言及しない限り、前記腸オルガノイドの製造用培地組成物において説明したところと同じ意味を有する。
【0034】
本発明による腸オルガノイドは、幹細胞能を保持しており、ヒトの腸と非常に類似した組織学的構成および機能を有しているため、生体内に投与される場合、腸の損傷された部位に生着されて、これを再生させることができる。したがって、前記腸オルガノイドは、クローン病、潰瘍性大腸炎、ベーチェット腸炎、直腸炎などの炎症性腸疾患、または前記炎症性腸疾患による潰瘍または瘻孔などの腸関連疾患の予防または治療製剤として使用されることができ、また、腸関連疾患の動物実験モデルに対する代替案として使用されることができる。
【0035】
本明細書において使用される用語「治療」は、本発明による腸オルガノイドの移植または投与によって腸関連症状が好転するか、または完治されるすべての行為を意味する。また、用語「予防」は、本発明による腸オルガノイドの移植または投与によって腸関連症状を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0036】
本発明のまた他の一様態は、前記腸オルガノイドを含む、腸疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0037】
本発明による薬学組成物において、各用語は、特に言及しない限り、前記腸オルガノイドの製造用培地組成物において説明したところと同じ意味を有する。
【0038】
本発明による薬学組成物は、再生治療剤または細胞治療剤組成物であってよい。
【0039】
本明細書において使用される用語「再生治療剤」は、損傷された人体細胞、組織または臓器を代替するか、または再生することで、正常機能を修復するか、または新たに作り出す治療剤を意味する。本明細書において使用される用語「細胞治療剤」は、再生治療剤の1種類であって、生きている自己(autologus)、同種(allogenic)または異種(xenogenic)細胞を予防、治療または診断などの目的で製造した医薬品を意味する。前記細胞治療剤は、損傷されるか、または欠損された細胞または組織の再生用途で使用されることができ、損傷されるか、または欠損された細胞または組織の機能および形態を修復させるために使用されることができる。
【0040】
本発明による薬学組成物は、腸オルガノイドを有効量で含み、腸疾患の予防または治療を必要とする対象体に投与されることができる。
【0041】
本発明の薬学組成物が予防または治療することができる腸疾患には、例えば、炎症性腸疾患、炎症性腸疾患による潰瘍および炎症性腸疾患による瘻孔(fistula)からなる群より選択される一つ以上であってよいが、これに制限されるものではない。また、前記炎症性腸疾患は、放射線性大腸炎(radiation colitis)、放射線性直腸炎(radiation proctitis)、虚血性大腸炎(ischemic colitis)、ベーチェット腸炎(Intestinal Behcet´s Disease)、クローン病(Crohn´s disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)および潰瘍性直腸炎(ulcerative proctitis)からなる群より選択される一つ以上であってよいが、これに制限されるものではない。また、前記潰瘍および瘻孔は、炎症性腸疾患によって発生する合併症であって、前記瘻孔は、痔瘻(Anal fistula)および腸皮瘻(enterocutaneous fistula)からなる群より選択される一つ以上であってよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
一方、前記有効量は、「治療有効量」または「予防有効量」であってよい。用語「治療有効量」は、薬物または治療剤が単独でまたは他の治療剤と組み合わされて使用される場合に、疾患症状の重症度減少、疾患症状のない期間の頻度および持続期間の増加、または疾患苦痛による損傷または障害の防止を示すことができる任意の量を意味する。用語「予防有効量」は、個体で腸疾患の発生または再発を抑制する任意の量を意味する。前記有効量の水準は、対象体の重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られている要素などによって決定できる。
【0043】
用語「投与」は、関連技術分野における通常の技術者にとって公知になっている多様な方法および伝達システムのうち任意のものを使用して組成物を対象体に物理的に導入することを意味する。本発明の薬学組成物のための投与経路は、例えば、粘膜下投与、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経口投与経路、例えば、注射または注入による投与経路を含むが、これに制限されるものではない。また、前記投与は、カテーテルのような装置を利用した非外科的投与が可能であり、疾患部位切開後に注入または移植などの外科的投与方法のいずれも可能である。本発明の組成物のための投与回数は、例えば、単回、複数回、または一つ以上の延長された期間にわたって遂行されることができる。
【0044】
本発明の薬学組成物は、対象体の年齢、性別、体重によって変わり、具体的に対象体の症状によって前記薬学組成物を一日単回~数回投与するか、または数日~数ヶ月間隔で投与することができる。また、その投与量は、本発明の薬学組成物に含まれた腸オルガノイドが5×105個/cm2~5×106個/cm2の細胞数で投与されるように調節することができるが、これに制限されるものではなく、投与経路、疾病の重症度、性別、体重、年齢などによって増減されることができる。
【0045】
本発明の薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常的に使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでよい。組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤は、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アラビアガム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油であってよいが、これに制限されない。
【0046】
本発明の薬学組成物は、他の治療剤と併用して投与されることができる。この場合、本発明の薬学組成物と他の治療剤は、同時に、順次に、または個別的に投与されることができる。前記他の治療剤は、腸疾患の予防、治療および改善効果を有する化合物、タンパク質などの薬物であってよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
また、本発明の薬学組成物は、他の治療剤と同時に、順次に、または個別的に投与されるように剤形化されることができる。例えば、腸オルガノイドおよび他の治療剤は、一つの製剤に同時に投与されてよく、または別個の製剤に同時に、順次にまたは個別的に投与されてよい。同時に、順次にまたは個別的に投与するために、本発明の薬学組成物に含まれる腸オルガノイドおよび他の治療剤は、それぞれ別途の容器に分離させて剤形化するか、または同じ容器で共に剤形化してよい。また、本発明の薬学組成物に含まれる腸オルガノイドおよび他の治療剤は、薬学的有効量、投与時間、投与間隔、投与経路、治療期間などが互いに同一であるか、または異なってよい。
【0048】
本発明の他の一様態は、腸疾患の予防または治療を必要とする対象体に前記腸オルガノイドを投与するステップを含む、腸疾患の予防または治療方法を提供する。
【0049】
本発明による腸疾患の予防または治療方法において、各用語は、特に言及しない限り、前記腸オルガノイドの製造用培地組成物および前記腸疾患の予防または治療用薬学組成物において説明したところと同じ意味を有する。
【0050】
本発明による腸疾患の予防または治療方法において、前記腸オルガノイドは、他の治療剤と同時に、順次に、または個別的に対象体に投与されてよい。
【0051】
前記「同時」投与は、腸オルガノイドおよび他の治療剤を一つの製剤に一度に投与することを意味する。または、腸オルガノイドおよび他の治療剤を別途の製剤に一度に投与することを意味し、この場合、腸オルガノイドおよび他の治療剤の投与経路は、互いに異なってよい。
【0052】
前記「順次」投与は、腸オルガノイドおよび他の治療剤を比較的連続的に投与することを意味し、投与間隔に消耗する時間として可能な最小限の時間を許諾する。
【0053】
前記「個別的」投与は、腸オルガノイドおよび他の治療剤を、一定時間間隔を置いて投与することを意味する。前記腸オルガノイドおよび他の治療剤の投与方法は、対象体の治療効能、副作用などを考慮して、当業界の医師または専門家が適切に選択することができる。
【0054】
本明細書において使用される単語は、単数または複数の意味を含む。例えば、「成分」は、一つの成分または一つ以上の成分を意味する。
【発明の効果】
【0055】
本発明の腸オルガノイド製造用培地は、腸オルガノイドの増殖を促進し、腸オルガノイドの幹細胞能を保持させることができる。したがって、前記培地は、優れた品質の腸オルガノイドを多い量で製造することに活用されることができ、前記培地で製造された腸オルガノイドは、腸関連疾患の予防または治療製剤、または腸関連疾患の動物実験モデルに対する代替案などとして活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】互いに異なる成分の培地で製造された腸オルガノイドの様子を示すイメージである。「All」は、HGF、NRG1およびIGF1を含む培地、「-HGF」は、HGFを除いて、NRG1およびIGF1を含む培地、「-NRG1」は、NRG1を除いて、HGFおよびIGF1を含む培地、「-IGF1」は、IGF1を除いて、HGFおよびNRG1を含む培地を意味する(下記
図2~5においても同一)。
【
図2】互いに異なる成分の培地で製造された腸オルガノイドの数を示すグラフであって、30日以内の短期培養結果に関する。
【
図3】互いに異なる成分の培地で製造された腸オルガノイドの数を示すグラフであって、37日~55日の長期培養結果に関する。
【
図4】互いに異なる成分の培地で製造された腸オルガノイドの幹細胞能を示すグラフであって、PTK遺伝子を発現する腸オルガノイドの割合に関する。前記腸オルガノイドは、計55日(5継代8日)間培養された。
【
図5】互いに異なる成分の培地で製造された腸オルガノイドの幹細胞能を示すグラフであって、腸オルガノイドの物体領域(Object Area)に関する。
図5Aは、腸オルガノイドの物体領域(Object Area)を示すイメージであり、
図5Bは、前記
図5Aに示された物体領域(Object Area)を測定した結果を示すグラフである。前記腸オルガノイドは、計55日(5継代8日)間培養された。
【
図6】HGF、NRG1およびIGF1を含む培地(「All」)で培養されたオルガノイドの遺伝学的安定性検査のうち一つである核型分析(Karyotyping)結果を示すイメージである。7継代、9継代、15継代または20継代培養されたオルガノイドに対して核型を分析した。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明しようとする。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されない。
【0058】
実施例1.腸オルガノイド製造用培地組成物の製造
腸オルガノイドを効率的に培養するための培地組成物を開発するために、基本培地としてアドバンスト(Advanced)DMEM F/12を使用し、HGF、NRG1またはIGF1を含んでいるか否かによって、次のように実験群を分けた。ここで、HGFは50ng/ml、NRG1は100ng/ml、IGF1は100ng/mlで使用した。
(1)「All」:HGF、NRG1およびIGF1を含む
(2)「-HGF」:HGFを除いて、NRG1およびIGF1を含む
(3)「-NRG1」:NRG1を除いて、HGFおよびIGF1を含む
(4)「-IGF1」:IGF1を除いて、HGFおよびNRG1を含む
【0059】
以後、内視鏡を通じて採取した患者の腸組織または手術を通じて得た腸組織を洗浄液で3回以上洗浄した。洗浄した腸組織に対して、37℃、15分間1X TrypLEで処理し、DPBSに混合した0.1% BSA(ウシ血清アルブミン:bovine serum albumin)を腸組織にさらに処理してピペッティングすることで、腸幹細胞が含まれたクリプト(Crypt)を分離した。分離したクリプトを70μm cell strainerに通過させた後、遠心分離した。以後、前記取得したクリプトを細胞外基質(コラーゲン)とともに1:1で混合して3次元形態で培養し、1継代当たり4~7日間、計7継代間3次元培養した。
【0060】
実施例2.培地組成物造成によるオルガノイドの培養結果
下記実施例2-1~2-4を通じて、前記培地組成物を構成する多様な成分のうちから、如何なる成分がオルガノイドの培養に最も効果的且つ必須的であるかを確認した。
【0061】
実施例2-1.製造されたオルガノイド数の比較
前記実施例1によって各培地成分で製造された腸オルガノイドの数を比較した。本実施例においては、再生治療剤、薬物スクリーニング、薬物評価などの目的で使用できる程度に十分な数のオルガノイドが製造されるか否かを分析した。
【0062】
その結果、
図1~3から見られるように、NRG1を含まない培地(「-NRG1」)を使用する場合には、オルガノイドが培養開始後4日までのみ成長し、培養開始後13日が経過するとこれ以上成長せず、すべて死滅することを確認した。
【0063】
また、HGFを含まない培地(「-HGF」)を使用する場合には、オルガノイドが培養開始後55日(5継代8日)までの長時間にわたって成長が可能であるが、製造されるオルガノイドの数はすべての成分を含む培地(「All」)に比べて約1/10程度に減少することを確認した。一方、
図1のイメージでは、「-HGF」の場合、培養開始30日後から培養開始55日まで対照群である「All」よりオルガノイドの数がさらに増加するように見える。しかし、「-HGF」で撮影されたオルガノイドの殆どは、死滅されたものであって、イメージ撮影後に遂行した継代培養時に死滅および分化されたオルガノイドをウォッシュアウト(wash-out)し、生存したオルガノイドの数だけ測定して、グラフで示した(
図2および3)。
【0064】
また、IGF1を含まない培地(「-IGF1」)を使用する場合には、オルガノイドが培養開始後55日(5継代8日)までの長時間にわたって成長が可能であり、製造されるオルガノイドの数は、すべての成分を含む培地(「All」)と類似した程度であることを確認した。
【0065】
前記結果は、培養時に腸オルガノイドの増殖を促進して、数多くの腸オルガノイドを確保するためには、NRG1およびHGFが必須成分であることを示唆する。
【0066】
実施例2-2.幹細胞マーカー発現量の比較
前記実施例1によって各培地成分で製造された腸オルガノイドにおいて、幹細胞マーカー遺伝子の発現量を比較した。本実施例においては、長期間(計55日、5継代8日)の培養にもオルガノイドが幹細胞能を保持するか否かを分析し、これのために幹細胞マーカーとしてPTK7(チロシンプロテインキナーゼ様7:Tyrosine-protein kinase-like 7)を使用した。PTK7を発現する腸オルガノイドは、高い自己再生(self-renewal)および再播種(re-seeding)能力を有することが知られている(Stem Cell Reports.2015 Dec 8;5(6):979-987)。
【0067】
【0068】
その結果、前記表1および
図4から見られるように、HGFを含まない培地(「-HGF」)を使用する場合には、製造された総オルガノイドのうちからPTK7を発現するオルガノイドの割合が約75.4%であることを確認した。一方、IGF1を含まない培地(「-IGF1」)を使用する場合には、製造された総オルガノイドのうちからPTK7を発現するオルガノイドの割合が約93.6%であって、製造された殆どのオルガノイド幹細胞能を依然として保持していることを確認した。
【0069】
一方、NRG1を含まない培地(「-NRG1」)を使用する場合には、オルガノイドが成長せずにすべて死滅するため、幹細胞マーカーの発現量を分析していない。
【0070】
前記結果は、長期間の培養にも一般細胞に分化されず、依然として幹細胞能(stemness)を示す腸オルガノイドを確保するためには、HGFが必須培地成分であることを示唆する。
【0071】
実施例2-3.分化程度の比較
前記実施例1によって各培地成分で製造された腸オルガノイドの分化程度を比較した。
【0072】
本実施例においては、長期間(計55日、5継代8日)の培養時にオルガノイドが幹細胞能を喪失し、一般細胞に分化されるか否かを分析した。これのために、オルガノイドのサイズ(周り)を意味する物体領域(Object Area)を測定し、基本的に物体領域(Object Area)が増加する場合、オルガノイドが成長すると分析することができるが、下記条件では、一般細胞に分化されたと判断した。幹細胞能を保持するオルガノイドは、3次元のスフェア(sphere)形態で増殖するが、分化しながら3次元構造の出芽型(Budding)形態をなすようになり、完全に分化する場合、2次元形態で培養容器に付いて付着して成長するようになる。2次元形態で培養容器に付着されたオルガノイドは、3次元のスフェア形態のオルガノイドよりそのサイズがさらに大きく測定されるので、物体領域(Object Area)が一定基準以上増加する場合、オルガノイドの分化が誘導されたものと判断した。このとき、物体領域(Object Area)は、Biotek装備の分析プログラムを通じて測定した。
【0073】
その結果、前記
図5のAおよびBから見られるように、HGFを含まない培地(「-HGF」)を使用する場合には、製造されたオルガノイドの物体領域(Object Area)がすべての成分を含む培地(「All」)に比べて約1.5倍程度に増加した。すなわち、HGFを含まない培地は、他の培地に比べて腸オルガノイドを幹細胞から一般細胞に分化させる程度が高さを確認した。ただし、2次元形態で培養容器に付着されて成長する腸オルガノイドは、放射形を示す凝集体(aggregate)に分化することにより、物体領域(Object Area)が限りなく増加することはない(
図5のAにおいて、「-HGF」イメージの左側下段は凝集体を示す)。
【0074】
一方、IGF1を含まない培地(「-IGF1」)を使用する場合には、製造されたオルガノイドの物体領域(Object Area)がすべての成分を含む培地(「All」)と類似した。すなわち、IGF1を含まない培地は、他の培地に比べて腸オルガノイドを幹細胞から一般細胞に分化させる程度が低いことを確認した。
【0075】
一方、NRG1を含まない培地(「-NRG1」)を使用する場合には、オルガノイドが成長せずにすべて死滅するため、物体領域(Object Area)を分析していない。
【0076】
前記結果は、長期間の培養にも一般細胞に分化されずに、依然として幹細胞能を示す腸オルガノイドを確保するためには、HGFが必須培地成分であることを示唆する。
【0077】
以上、実施例2-1~2-3の結果を総合した結果、数多くの腸オルガノイドを確保し、また製造された腸オルガノイドが長期培養されても、幹細胞能を保持するためには、腸オルガノイド製造用培地組成物にHGFおよびNRG1が必須的な成分として含まれなければならないことを確認することができる。
【0078】
実施例2-4.核型分析(Karyotyping)結果
本発明による培養培地の遺伝学的安定性を確認するために、培養基間中に一定継代ごとにオルガノイドの核型分析(Karyotyping)を進行した。
【0079】
具体的に、7継代、9継代、15継代または20継代の培養が進行されているオルガノイドに対して、当業界に知られている方法によって核型分析を遂行した。
【0080】
図6は、すべての成分を含む培地(「All」)で培養されたオルガノイドの検査結果を示すものである。7継代、9継代、15継代または20継代培養されたオルガノイドで染色体の数的および構造的異常または遺伝子改変がないことを確認し、腫瘍に転換されなかったことを確認した。
【0081】
前記結果は、HGF、NRG1およびIGF1を含む培地は、培養されたオルガノイドに遺伝的に否定的な影響を及ぼさず、遺伝学的安定性を保持しながら長期培養が可能であることを示唆する。
【国際調査報告】