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特表2024-520030自己免疫疾患を処置又は予防する方法
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  • 特表-自己免疫疾患を処置又は予防する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】自己免疫疾患を処置又は予防する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240514BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240514BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240514BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240514BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240514BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20240514BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K48/00
A61K9/127
A61K47/69
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/08
A61P37/06
A61P3/10
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K47/65
A61K47/64
A61K39/00 H
C12N15/53
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572912
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022064145
(87)【国際公開番号】W WO2022248525
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】21176003.8
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370219
【氏名又は名称】アンシス・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・グローレ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC07
4C076CC19
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC31
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF63
4C076FF68
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA32
4C085BB11
4C085BB13
4C085BB15
4C085CC32
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、T細胞エピトープ及びオキシドレダクターゼモチーフを含む免疫原性ペプチドをコードする非免疫原性mRNA、並びに対象における、例えば、1型糖尿病(T1D)、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)の処置及び/又は予防におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドをコードする非免疫原性RNAであって、前記ペプチドが、
a)オキシドレダクターゼモチーフと、
b)抗原性タンパク質のT細胞エピトープと、
c)a)とb)との間の0~7個のアミノ酸、好ましくは、0~4個のアミノ酸のリンカーと、
を含み、
前記オキシドレダクターゼモチーフa)が、以下の一般構造:
[CST]XXC-又はCXX[CST]- (配列番号1又は2)
を含み、
式中、Xが、任意のアミノ酸であり、
[CST]が、単一のセリン、スレオニン、又はシステイン残基を示し、
前記オキシドレダクターゼモチーフにおけるハイフン(-)が、リンカー若しくはT細胞エピトープのN末端、又はリンカー若しくはT細胞エピトープのC末端へのオキシドレダクターゼモチーフの結合点を示す、
非免疫原性RNA。
【請求項2】
コードされるペプチドの第1のアミノ酸が、メチオニンである、請求項1に記載の非免疫原性RNA。
【請求項3】
改変されたヌクレオチドの組込み及びdsRNAの除去によって非免疫原性となる、請求項1又は2に記載の非免疫原性RNA。
【請求項4】
改変されたヌクレオチドが、1つ又は複数のウリジンの、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドとの置き換えを含み、好ましくは、改変された核酸塩基が、改変されたウラシルである、請求項3に記載の非免疫原性RNA。
【請求項5】
改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジン又は5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3 ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、及び5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群から選択され、好ましくは、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、シュードウリジン(ψ)、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、又は5-メチル-ウリジン(m5U)である、請求項1から4のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA。
【請求項6】
改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA。
【請求項7】
非免疫原性RNAが、送達ビヒクルにおいて製剤化され、好ましくは、送達ビヒクルが、粒子、脂質、又はカチオン性脂質を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA。
【請求項8】
脂質が、非免疫原性RNAと複合体を形成する、及び/若しくはそれを封入するか、又は非免疫原性RNAが、リポソームにおいて製剤化される、請求項7に記載の非免疫原性RNA。
【請求項9】
前記オキシドレダクターゼモチーフが、配列番号24~35のうちのいずれか1つによって定義される配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA。
【請求項10】
9~50個のアミノ酸、好ましくは、9~30個のアミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドをコードする、請求項1から9のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA。
【請求項11】
前記免疫原性ペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフが、前記抗原性タンパク質におけるT細胞エピトープのN末端又はC末端の11個のアミノ酸の領域内のアミノ酸配列に天然に存在しない、且つ/又は前記T細胞エピトープが、そのアミノ酸配列に前記オキシドレダクターゼモチーフを天然に含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA。
【請求項12】
前記T細胞エピトープが、7~25個のアミノ酸、好ましくは、9~25個のアミノ酸の長さを有するMHCクラスII T細胞エピトープであるか、又はペプチドにおける前記T細胞エピトープが、7~25個のアミノ酸の長さを有するNKT細胞エピトープである、請求項1から11のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の非免疫原性RNAと、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
対象における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されるウイルスベクターに対する免疫応答から選択される疾患又は状態を処置又は予防する方法における使用のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA、又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されるウイルスベクターに対する免疫応答から選択される疾患又は状態を処置又は予防する方法であって、対象に、請求項1から12のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA、又は請求項13に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項16】
対象における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されるウイルスベクターに対する免疫応答から選択される疾患又は状態を処置又は予防するための医薬の製造のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA、又は請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
対象において細胞溶解性CD4+ T細胞を誘導する方法であって、対象に、請求項1から12のいずれか一項に記載のペプチドをコードする非免疫原性RNA、又は請求項13に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項18】
対象において細胞溶解性CD4+ T細胞を誘導するための医薬の製造のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の非免疫原性RNA、又は請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
対象が、自己免疫疾患を有する、請求項15若しくは17に記載の方法、又は請求項16若しくは18に記載の使用。
【請求項20】
自己免疫疾患が、1型糖尿病(T1D)、脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)若しくは視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)を含む群から選択される、請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項21】
前記抗原性タンパク質が、(プロ)インスリン、GAD65、GAD67、IA-2(ICA512)、IA-2(ベータ/フォグリン)、IGRP、クロモグラニン、ZnT8、及びHSP-60からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、1型糖尿病(T1D)である、請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項22】
前記抗原性タンパク質が、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、及びオリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、多発性硬化症(MS)及び/又は視神経脊髄炎(NMO)である、請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項23】
前記抗原性タンパク質が、GRP78、HSP60、60kDaシャペロニン2、ゲルゾリン、キチナーゼ-3様タンパク質1、カテプシンS、血清アルブミン、及びカテプシンDからなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)である、請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項24】
前記抗原性タンパク質が、腫瘍又はがん抗原、例えば、がん遺伝子、がん原遺伝子、ウイルスタンパク質、生存因子、又はクローンタイプ若しくはイディオタイプ決定基であり、前記疾患が、がんである、請求項15若しくは17に記載の方法、又は請求項16若しくは18に記載の使用。
【請求項25】
前記非免疫原性RNAが、MOGのT細胞エピトープ、より好ましくは、MHCクラスII T細胞エピトープYRSPFSRVV(配列番号704)、FLRVPCWKI(配列番号4)、又はFLRVPSWKI(配列番号5)を含むペプチドをコードする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記非免疫原性RNAが、配列番号778によって定義される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記非免疫原性RNAによってコードされるペプチドが、配列番号777又は707によって定義される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記非免疫原性RNAが、インスリンのT細胞エピトープを含む、好ましくは、MHCクラスII T細胞エピトープLALEGSLQK(配列番号3)を含むペプチドをコードする、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野にあり、自己抗原のT細胞エピトープ及びオキシドレダクターゼモチーフを含むペプチドをコードする非免疫原性mRNAを利用して自己免疫疾患を処置する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
抗原に対する望ましくない免疫応答の生成を予防するためのいくつかの戦略が説明されている。国際公開第2008/017517号は、所与の抗原性タンパク質のMHCクラスIIエピトープ及びオキシドレダクターゼモチーフを含むペプチドを使用した新しい戦略について説明している。これらのペプチドは、CD4+ T細胞を、細胞溶解性CD4+ T細胞(cCD4)と称される細胞溶解特性を有する細胞型へと変換する。これらの細胞は、アポトーシスをトリガーすることを通じて、ペプチドが由来する抗原を提示する抗原提示細胞(APC)を殺滅させることができる。国際公開第2008/017517号は、アレルギー及び自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病に関してこの概念を提示している。ここで、インスリンは、自己抗原として作用し得る。
【0003】
国際公開第2009101207号及びCarlierら、(2012) Plos one 7、10 e45366は、更に、抗原特異的細胞溶解性細胞についてより詳細に説明している。
【0004】
国際公開第2016059236号、同第2020099356号、及び同第2020099352号は、異なる改善された種類のオキシドレダクターゼモチーフを含む改変されたペプチドを開示している。
【0005】
アレルゲン又は抗原のMHCクラスIIエピトープを含むペプチドに加えて、国際公開第2012069568号は、NKT細胞エピトープを使用し、CD1d受容体に結合し、細胞溶解性抗原特異的NKT細胞の活性化をもたらすことの可能性について開示しており、これは、前記特異的抗原を提示するAPCを抗原特異的な様式で排除することを示している。
【0006】
国際公開第2018188730号は自己免疫疾患の処置のための非免疫原性RNAを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/017517号
【特許文献2】国際公開第2009101207号
【特許文献3】国際公開第2016059236号
【特許文献4】国際公開第2020099356号
【特許文献5】国際公開第2020099352号
【特許文献6】国際公開第2012069568号
【特許文献7】国際公開第2018188730号
【特許文献8】国際公開第188730A1号
【特許文献9】欧州特許公開第20167059056号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Carlierら、(2012) Plos one 7、10 e45366
【非特許文献2】Wardell及びLevings 2021、Nature Biotechnology volume 39、419~421頁
【非特許文献3】Riedhammer及びWeissert、2015; Front Immunol. 2015; 6: 322
【非特許文献4】Schutzら、(2000) Cancer Research 60: 6272-6275
【非特許文献5】Schuler-Thurnerら、(2002) J. Exp. Med. 195: 1279-1288
【非特許文献6】Lapointe (2001; J. Immunol. 167: 4758-4764
【非特許文献7】Cochloviusら、(1999) Int. J. Cancer、83: 547- 554
【非特許文献8】Dengielら、(2004) Eur. J. of Immunol. 34: 3644-3651
【非特許文献9】Schmidt (2003) Blood 102: 571 -576
【非特許文献10】Baskarら、(2004) J. Clin. Invest. 113: 1498-1510
【非特許文献11】Bollardら、(2004) J. Exp. Med. 200: 1623-1633
【非特許文献12】Goulmy E、Current Opinion in Immunology、vol 8、75-81、1996
【非特許文献13】Poindexterら、Journal of Immunology、154: 3880- 3887、1995
【非特許文献14】Mallone Rら、Clin Dev Immunol. 2011:513210
【非特許文献15】Zhangら、(2005) Nucleic Acids Res 33、W180-W183 (PREDBALB)
【非特許文献16】Salomon & Flower (2006) BMC Bioinformatics 7、501 (MHCBN)
【非特許文献17】Schulerら、(2007) Methods Mol. Biol.409、75-93 (SYFPEITHI)
【非特許文献18】Donnes & Kohlbacher (2006) Nucleic Acids Res. 34、W194-W197 (SVMHC)
【非特許文献19】Kolaskar & Tongaonkar (1990) FEBS Lett. 276、172-174
【非特許文献20】Guanら、(2003) Appl. Bioinformatics 2、63-66 (MHCPred)
【非特許文献21】Singh及びRaghava (2001) Bioinformatics 17、1236-1237 (Propred)
【非特許文献22】ScanProsite De Castro E.ら、(2006) Nucleic Acids Res. 34(Web Server issue):W362-W365
【非特許文献23】Matsudaら、(2008)、Curr. Opinion Immunol.、20 358-368
【非特許文献24】Godfreyら、(2010)、Nature rev. Immunol 11、197-206
【非特許文献25】Liebersら、(1996) Clin. Exp. Allergy 26、494-516
【非特許文献26】Dobson及びGiovannoni、(2019) Eur. J. Neurol. 26(1)、27-40
【非特許文献27】Berer及びKrishnamoorthy (2014) FEBS Lett. 588(22)、4207-4213
【非特許文献28】International Multiple Sclerosis Genetics Consortium Nat Genet. (2013). 45(11):1353-60
【非特許文献29】Ascherio (2013) Expert Rev Neurother. 13(12 Suppl)、3-9
【非特許文献30】Kutzelniggら、(2005). Brain. 128(11)、2705-2712
【非特許文献31】Wingerchuk 2006、Int MS J. 2006 May;13(2):42-50
【非特許文献32】Sana Iqbalら、2019、US Pharm. 2019;44(1)(Specialty&Oncology suppl):8-11
【非特許文献33】Tomazzolliら、(2006) Anal. Biochem. 350、105-112
【非特許文献34】Holmgren (2000) Antioxid. Redox Signal. 2、811-820
【非特許文献35】Jacquotら、(2002) Biochem. Pharm. 64、1065-1069
【非特許文献36】Fomenkoら、((2003) Biochemistry 42、11214-11225
【非特許文献37】Fomenkoら、(2002) Prot. Science 11、2285-2296
【非特許文献38】Vijayasaradhiら、(1995) J. Cell. Biol. 130、807-820
【非特許文献39】Copierら、(1996) J. lmmunol. 157、1017-1027
【非特許文献40】Mahnkeら、(2000) J. Cell Biol. 151、673-683
【非特許文献41】Bonifacio及びTraub (2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395-447
【非特許文献42】Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co. (A. R Gennaro編1985)
【非特許文献43】Schnelzer & Kent (1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180-193
【非特許文献44】Tamら、(2001) Biopolymers 60、194-205
【非特許文献45】Andriesら、2015、J Control Release. 217、337-344
【非特許文献46】Karikoら、2011、Nucleic Acids Res. 39、el42
【非特許文献47】Weissmanら、2013 (Methods Mol Bio. 969、43-43)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
抗原のT細胞エピトープ及びオキシドレダクターゼモチーフを含むペプチドを使用した処置の有効性を改善するために、そのようなペプチドを投与する新しい手段の探求が続いている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特に、自己免疫疾患を処置するための、抗原のT細胞エピトープ及びオキシドレダクターゼモチーフを含むペプチドを投与する新しい様式を提供する。本発明者らは、ペプチド自体を投与するのではなく、前記ペプチドをコードする非免疫原性RNAを、例えば、自己免疫疾患に罹患した患者に投与することも可能であることを発見した。マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)等の自己免疫疾患を処置するための疾患関連の自己抗原をコードする非免疫原性mRNAの投与に関する文献(例えば、Wardell及びLevings 2021、Nature Biotechnology volume 39、419~421頁において考察されている)によると、後者は、調節性T細胞(Treg)の誘導を通じて免疫抑制を誘導するが、一方でレドックス-エピトープ融合ペプチドは、前記抗原を発現する抗原提示細胞(APC)を殺滅させ、それによって前記抗原に対する免疫応答を抑制する抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞(cCD4)の作製を通じて作用すると考えられているため、これは予想外なことであった。したがって、非免疫原性mRNA送達を使用した場合に、前記細胞溶解性T細胞応答も誘導され得ることが確認されたことは、驚くべきことであった。Tregの活性化又はcCD4細胞集団の誘導は、実際に、免疫系における完全に異なる寛容経路である。更に、一方ではTregの誘導による免疫抑制を誘導することが知られているMOG自己抗原のフラグメントをコードする非免疫原性mRNAを使用し、他方では、オキシドレダクターゼモチーフに融合したMOG自己抗原の前記同じフラグメントをコードする非免疫原性mRNAを使用した、比較可能なMOG誘導型マウスEAEモデル系実験において、後者は、臨床EAE症状に対して改善された低減作用を有した。オキシドレダクターゼモチーフが、インビボでの翻訳時に、インビボで融合ペプチドとして投与された場合と同じ作用を達成するかどうかが不確かであったため、これもまた、予想外であった。
【0011】
本発明者らは、したがって、抗原に対する免疫応答を低減させるために、前記抗原のT細胞エピトープに連結されたオキシドレダクターゼモチーフを含む融合ペプチドをコードする非免疫原性mRNAを使用することの概念の根拠を提供する。
【0012】
本発明は、したがって、以下の態様に関する。
【0013】
1.対象における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されるウイルスベクターに対する免疫応答から選択される疾患又は状態を処置又は予防する方法であって、対象に、ペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与する工程を含み、前記ペプチドが、a)オキシドレダクターゼモチーフと、
b)前記疾患又は状態に関与する抗原性タンパク質のT細胞エピトープと、
c)a)とb)との間の0~7個のアミノ酸、好ましくは、0~4個のアミノ酸のリンカーと、
を含み、
前記オキシドレダクターゼモチーフa)が、以下の一般構造:
Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
を有し、
式中、Zが、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、K又はHであり、mが、1、0、又は2を含む群から選択される整数であり、
Xが、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、Rであり、
nが、0~6から、好ましくは、0~3から選択される整数、もっとも好ましくは、2であり、
本明細書に開示されるすべての一般構造において、前記オキシドレダクターゼモチーフにおけるハイフン(-)が、リンカー若しくはT細胞エピトープのN末端、又はリンカー若しくはT細胞エピトープのC末端へのオキシドレダクターゼモチーフの結合点を示す、
方法。
【0014】
2.対象において細胞溶解性CD4+ T細胞を誘導する方法であって、対象に、
a)オキシドレダクターゼモチーフと、
b)前記疾患に関与する抗原性タンパク質のT細胞エピトープと、
c)a)とb)との間の0~7個のアミノ酸、好ましくは、0~4個のアミノ酸のリンカーと、
を含むペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与する工程を含み、
前記オキシドレダクターゼモチーフa)が、以下の一般構造:
Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
を有し、
式中、Zが、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、K又はHであり、mが、1、0、又は2を含む群から選択される整数であり、
Xが、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、Rであり、
nが、0~6から、好ましくは、0~3から選択される整数であり、もっとも好ましくは、nが、2であり、
本明細書に開示されるすべての一般構造において、前記オキシドレダクターゼモチーフにおけるハイフン(-)が、リンカー若しくはエピトープのN末端、又はリンカー若しくはT細胞エピトープのC末端へのオキシドレダクターゼモチーフの結合点を示す、
方法。
【0015】
実施形態のうちのいずれか1つにおいて、mRNA翻訳機序の傾向として、追加の開始コドン(atg)が、一般に、mRNAを生成するために使用されるDNAコーディング配列の5’末端に含まれ、したがって、本明細書に開示されるコードされるペプチドに、メチオニン(M)残基を追加する。前記メチオニン残基は、いくつかの事例において、ペプチドのプロセシングに起因して、インビボで切断され得る。
【0016】
実施形態のうちのいずれか1つにおいて、本発明による非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、ペプチド又はタンパク質のジスルフィド架橋に対して低減活性を有する。
【0017】
3.対象が、自己免疫疾患を有する、態様2に記載の方法。
【0018】
4.自己免疫疾患が、1型糖尿病(T1D)、脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)若しくは視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)を含む群から選択される、態様1又は3に記載の方法。
【0019】
好ましくは、前記抗原性タンパク質は、自己抗原、アレルゲン、可溶性同種因子、グラフトによって放出される同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されるウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原、又はアレルゲンである。
【0020】
例示的な抗原は、
- MSの場合には、ミエリン抗原、ニューロン抗原、及び星状細胞由来抗原、例えば、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、ミエリン関連抗原(MAG)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、及び2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(CNPase)、S100βタンパク質、又はトランスアルドラーゼH自己抗原(Riedhammer及びWeissert、2015; Front Immunol. 2015; 6: 322)、好ましくは、MOG、MBP、PLP、及びMOBPであり得る。
- 喘息の場合には、アレルゲン、例えば、花粉、胞子、ダニ、及びペットの鱗屑に由来するものであり得る。
- がんの場合には、腫瘍又はがん関連抗原、例えば、がん遺伝子、がん原遺伝子、ウイルスタンパク質、生存因子、又はクローンタイプ若しくはイディオタイプ決定基であり得る。具体的な例としては、MAGE(黒色腫関連遺伝子)産物があり、これは、MHCクラスI決定基の状況において、腫瘍細胞によって自発的に発現され、そうしてCD8+細胞溶解性T細胞によって認識されることが示されている。しかしながら、MAGE由来の抗原、例えば、MAGE-3は、MHCクラスII決定基においても発現され、CD4+特異的T細胞が、黒色腫患者からクローニングされている(Schutzら、(2000) Cancer Research 60: 6272-6275、Schuler-Thurnerら、(2002) J. Exp. Med. 195: 1279-1288)。MHCクラスII決定基によって提示されるペプチドは、当該技術分野において公知である。他の例としては、P815肥満細胞腫及び黒色腫細胞によって発現されるgp100抗原が挙げられる(Lapointe (2001; J. Immunol. 167: 4758-4764、Cochloviusら、(1999) Int. J. Cancer、83: 547- 554)。がん原遺伝子は、腫瘍細胞において優先的に発現され、健常組織においては最小限にしか発現されない、いくつかのポリペプチド及びタンパク質を含む。サイクリンD1は、細胞周期調節因子であり、G1からSへの移行に関与する。高いサイクリンD1発現が、腎細胞癌、副甲状腺癌、及び多発性骨髄腫において示されている。残基198~212を包含するペプチドは、MHCクラスII決定基の状況で認識されるT細胞エピトープを有することが示されている(Dengielら、(2004) Eur. J. of Immunol. 34: 3644-3651)。サバイビンは、アポトーシスを阻害し、それによって、サバイビンを発現する細胞に拡大の利益を付与する因子の一例である。サバイビンは、上皮及び造血系起源のヒトがんにおいて異常に発現され、胸腺、精巣、及び胎盤を除く健常な成体組織、並びに成長ホルモンに刺激された造血系前駆体及び内皮細胞においては発現されない。興味深いことに、サバイビン特異的CD8+ T細胞は、黒色腫患者の血液において検出可能である。サバイビンは、腎臓癌、乳がん、及び多発性骨髄腫を含む広範な悪性腫瘍細胞系によって発現されるが、急性骨髄性白血病、並びに急性及び慢性リンパ性白血病においても発現される(Schmidt (2003) Blood 102: 571 -576)。アポトーシスの阻害剤の他の例は、Bcl2及びspi6である。イディオタイプ決定基は、濾胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、及び一部の形態の白血病においてB細胞によって、並びにT細胞リンパ腫及び一部のT細胞性白血病によって提示される。イディオタイプ決定基は、B細胞受容体(BCR)又はT細胞受容体(TCR)のいずれかの抗原特異的受容体の一部である。そのような決定基は、B細胞の場合はVH若しくはVL領域のいずれかの相補性決定領域(CDR)、又はT細胞の場合はベータ鎖のCDR3に対応する、受容体の超可変領域によって本質的にコードされる。受容体は、ランダムな遺伝子再配列によって作製されるため、それらは、それぞれの個体に固有である。イディオタイプ決定基に由来するペプチドは、MHCクラスII決定基において提示される(Baskarら、(2004) J. Clin. Invest. 113: 1498-1510)。いくつかの腫瘍は、ウイルス由来の抗原の発現と関連付けられている。したがって、ホジキン病の一部の形態は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来の抗原を発現する。そのような抗原は、クラスI及びクラスIIの決定基の両方において発現される。EBV抗原に特異的なCD8+細胞溶解性T細胞は、ホジキンリンパ腫細胞を排除することができる(Bollardら、(2004) J. Exp. Med. 200: 1623-1633)。抗原決定基、例えば、LMP-1及びLMP-2は、MHCクラスII決定基によって提示される。
- 移植片拒絶の場合には、移植片特異的抗原であり得、これは、移植されている組織又は器官の種類に依存することが明らかであろう。例としては、組織、例えば、角膜、皮膚、骨(骨片)、血管若しくは筋膜; 器官、例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、膵臓、若しくは消化管;、又は更には個々の細胞、例えば、膵島細胞、アルファ細胞、ベータ細胞、筋細胞、軟骨細胞、心臓細胞、脳細胞、血液細胞、骨髄細胞、腎臓細胞、及び肝臓細胞があり得る。移植片拒絶に関与する具体的な例示的な抗原は、マイナー組織適合抗原、主要組織適合抗原、又は組織特異的抗原がある。同種抗原性タンパク質が、主要組織適合抗原である場合、これは、MHCクラスI抗原又はMHCクラスII抗原のいずれかである。念頭におく重要なポイントとして、同種抗原特異的T細胞がAPCの表面の同種ペプチドを認識する機序の変動性がある。同種反応性T細胞は、MHC分子自体の同種抗原決定基、自己若しくは同種のいずれかの源のMHC分子に結合した同種抗原ペプチド、又は同種抗原由来のペプチド及び自己若しくは同種起源のMHC分子内に位置する残基の組合せのいずれかを認識し得る。マイナー組織適合抗原の例としては、HY染色体によってコードされるタンパク質に由来するもの(H-Y抗原)、例えば、Dbyがある。他の例は、例えば、Goulmy E、Current Opinion in Immunology、vol 8、75-81、1996において見出すことができる(特に、その中の表3を参照されたい)。ヒトにおいて、多数のマイナー組織適合抗原が、細胞溶解性CD8+ T細胞の使用によって、MHCクラスI決定基への提示を通じて検出されていることに留意しなければならない。しかしながら、そのようなペプチドは、MHCクラスII制限T細胞エピトープも含むタンパク質のプロセシングによって導出され、それによって、本発明のペプチドを設計する可能性を提供する。組織特異的同種抗原は、同じ手順を使用して特定することができる。この1つの例は、腎臓において発現されるが脾臓においては発現されないタンパク質に由来し、腎臓細胞に対する細胞傷害性活性を有するCD8+ T細胞を誘起することが可能な、MHCクラスI制限エピトープである(Poindexterら、Journal of Immunology、154: 3880- 3887、1995)。
【0021】
より好ましくは、前記抗原性タンパク質は、1型糖尿病(T1D)、脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)若しくは視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)に関与する自己抗原である。
【0022】
T1Dに関与する自己抗原の非限定的な例。
典拠:Mallone Rら、Clin Dev Immunol. 2011:513210。
【0023】
【表1】
【0024】
MSに関与する自己抗原の非限定的な例。
【0025】
【表2】
【0026】
RAに関与する自己抗原の非限定的な例。
【0027】
【表3】
【0028】
NMOに関与する自己抗原の非限定的な例。
【0029】
【表4】
【0030】
5.非免疫原性RNAが、改変されたヌクレオチドの組込み及びdsRNAの除去によって非免疫原性となる、態様1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
6.改変されたヌクレオチドが、RNAに媒介される自然免疫受容体の活性化を抑制する、態様5に記載の方法。
【0032】
7.改変されたヌクレオチドが、1つ又は複数のウリジンの、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドとの置き換えを含む、態様5又は6に記載の方法。
【0033】
8.改変された核酸塩基が、改変されたウラシルである、態様7に記載の方法。
【0034】
9.改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジン又は5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3 ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、及び5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群から選択される、態様7又は8に記載の方法。
【0035】
10.改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、シュードウリジン(ψ)、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、又は5-メチル-ウリジン(m5U)である、態様7から9のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
11.改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)である、態様7から10のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
12.非免疫原性RNAが、mRNAである、態様1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
13.非免疫原性RNAが、インビトロで転写されたRNAである、態様1から12のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
14.非免疫原性RNAが、対象の細胞において一過的に発現される、態様1から13のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
15.非免疫原性RNAが、樹状細胞に送達される、態様1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
16.樹状細胞が、未成熟樹状細胞である、態様15に記載の方法。
【0042】
17.非免疫原性RNAが、送達ビヒクルにおいて製剤化される、態様1から16のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
18.送達ビヒクルが、粒子を含む、態様17に記載の方法。
【0044】
19.送達ビヒクルが、脂質を含む、態様17又は18に記載の方法。
【0045】
20.脂質が、カチオン性脂質を含む、態様19に記載の方法。
【0046】
21.脂質が、非免疫原性RNAと複合体を形成する、及び/又はそれを封入する、態様19又は20に記載の方法。
【0047】
22.非免疫原性RNAが、リポソームにおいて製剤化される、態様1から21のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
23.前記オキシドレダクターゼモチーフが、以下のアミノ酸モチーフ:
(a)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは、0であり、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。そのようなモチーフの非限定的な好ましい例は、KCC、KKCC(配列番号6)、RCC、RRCC(配列番号7)、RKCC(配列番号8)、又はKRCC(配列番号9)である)、
(b)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは、1であり、Xは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はRであり、
mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。そのようなモチーフの非限定的な好ましい例は、KCXC(配列番号10)、KKCXC(配列番号11)、RCXC(配列番号12)、RRCXC(配列番号13)、RKCXC(配列番号14)、KRCXC(配列番号15)、KCKC(配列番号16)、KKCKC(配列番号17)、KCRC(配列番号18)、KKCRC(配列番号19)、RCRC(配列番号20)、RRCRC(配列番号21)、RKCKC(配列番号22)、KRCKC(配列番号23)である)、
(c)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、2であり、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2アミノ酸連結が作製され、Xは、任意のアミノ酸であり、好ましくは、少なくとも1つのXは、H、K、R、及び非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はRであり、
mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。これらのモチーフにおいて、内部X1X2アミノ酸連結は、オキシドレダクターゼモチーフ内に位置し、mは、0~3の整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1及びX2は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1及びX2は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。更なる例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸である。モチーフの別の例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、P又はYである。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2アミノ酸連結の具体的な非限定的な例は、PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH、及びRHである。この形態の特に好ましいモチーフは、[CST]XXC又はCXX[CST](配列番号1若しくは2)、HCPYC、KHCPYC、KCPYC、RCPYC、HCGHC、KCGHC、及びRCGHC(配列番号24~30に対応する)である。この形態の代替的な好ましいモチーフは、KKCPYC、KRCPYC、KHCGHC、KKCGHC、及びKRCGHC(配列番号31~35)である)、
(d)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、3であり、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチが作製され、Xは、任意のアミノ酸であり、好ましくは、少なくとも1つのXは、H、K、R、及び非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はRであり、
mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。ある特定の例において、X1、X2、及びX3は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、及びX3は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、前記モチーフにおけるX1、X2、又はX3のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸である。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチの具体的な例は、XPY、PXY、及びPYXであり、式中、Xは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、K、R、若しくはH、又は非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンであり得る。非限定的な例としては、KPY、RPY、HPY、GPY、APY、VPY、LPY、IPY、MPY、FPY、WPY、PPY、SPY、TPY、CPY、YPY、NPY、QPY、DPY、EPY、KPY、PKY、PRY、PHY、PGY、PAY、PVY、PLY、PIY、PMY、PFY、PWY、PPY、PSY、PTY、PCY、PYY、PNY、PQY、PDY、PEY、PLY、PYK、PYR、PYH、PYG、PYA、PYV、PYL、PYI、PYM、PYF、PYW、PYP、PYS、PYT、PYC、PYY、PYN、PYQ、PYD、又はPYEが挙げられる。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチの代替的な例は、XHG、HXG、及びHGXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KHG、RHG、HHG、GHG、AHG、VHG、LHG、IHG、MHG、FHG、WHG、PHG、SHG、THG、CHG、YHG、NHG、QHG、DHG、EHG、及びKHG、HKG、HRG、HHG、HGG、HAG、HVG、HLG、HIG、HMG、HFG、HWG、HPG、HSG、HTG、HCG、HYG、HNG、HQG、HDG、HEG、HLG、HGK、HGR、HGH、HGG、HGA、HGV、HGL、HGI、HGM、HGF、HGW、HGP、HGS、HGT、HGC、HGY、HGN、HGQ、HGD、又はHGEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XGP、GXP、及びGPXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KGP、RGP、HGP、GGP、AGP、VGP、LGP、IGP、MGP、FGP、WGP、PGP、SGP、TGP、CGP、YGP、NGP、QGP、DGP、EGP、KGP、GKP、GRP、GHP、GGP、GAP、GVP、GLP、GIP、GMP、GFP、GWP、GPP、GSP、GTP、GCP、GYP、GNP、GQP、GDP、GEP、GLP、GPK、GPR、GPH、GPG、GPA、GPV、GPL、GPI、GPM、GPF、GPW、GPP、GPS、GPT、GPC、GPY、GPN、GPQ、GPD、又はGPEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XGH、GXH、及びGHXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KGH、RGH、HGH、GGH、AGH、VGH、LGH、IGH、MGH、FGH、WGH、PGH、SGH、TGH、CGH、YGH、NGH、QGH、DGH、EGH、KGH、GKH、GRH、GHH、GGH、GAH、GVH、GLH、GIH、GMH、GFH、GWH、GPH、GSH、GTH、GCH、GYH、GNH、GQH、GDH、GEH、GLH、GHK、GHR、GHH、GHG、GHA、GHV、GHL、GHI、GHM、GHF、GHW、GHP、GHS、GHT、GHC、GHY、GHN、GHQ、GHD、又はGHEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XGF、GXF、及びGFXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KGF、RGF、HGF、GGF、AGF、VGF、LGF、IGF、MGF、FGF、WGF、PGF、SGF、TGF、CGF、YGF、NGF、QGF、DGF、EGF、及びKGF、GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、GLF、GFK、GFR、GFH、GFG、GFA、GFV、GFL、GFI、GFM、GFF、GFW、GFP、GFS、GFT、GFC、GFY、GFN、GFQ、GFD、又はGFEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XRL、RXL、及びRLXであり、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KRL、RRL、HRL、GRL、ARL、VRL、LRL、IRL、MRL、FRL、WRL、PRL、SRL、TRL、CRL、YRL、NRL、QRLRL、DRL、ERL、KRL、GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、及びGLF、RLK、RLR、RLH、RLG、RLA、RLV、RLL、RLI、RLM、RLF、RLW、RLP、RLS、RLT、RLC、RLY、RLN、RLQ、RLD、又はRLEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XHP、HXP、及びHPXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KHP、RHP、HHP、GHP、AHP、VHP、LHP、IHP、MHP、FHP、WHP、PHP、SHP、THP、CHP、YHP、NHP、QHP、DHP、EHP、KHP、HKP、HRP、HHP、HGP、HAF、HVF、HLF、HIF、HMF、HFF、HWF、HPF、HSF、HTF、HCF、HYP、HNF、HQF、HDF、HEF、HLP、HPK、HPR、HPH、HPG、HPA、HPV、HPL、HPI、HPM、HPF、HPW、HPP、HPS、HPT、HPC、HPY、HPN、HPQ、HPD、又はHPEであり得る。
特に好ましい例は、CRPYC、KCRPYC、KHCRPYC、RCRPYC、HCRPYC、CPRYC、KCPRYC、RCPRYC、HCPRYC、CPYRC、KCPYRC、RCPYRC、HCPYRC、CKPYC、KCKPYC、RCKPYC、HCKPYC、CPKYC、KCPKYC、RCPKYC、HCPKYC、CPYKC、KCPYKC、RCPYKC、及びHCPYKC(配列番号36~60に対応する)である)、
(e)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、4であり、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3X4(配列番号76)アミノ酸ストレッチが作製され、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、及びX4は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。ある特定の非限定的な例において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、又はX4のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸から選択される、塩基性アミノ酸である。具体的な例としては、LAVL(配列番号61)、TVQA(配列番号62)、又はGAVH(配列番号63)、及びそれらのバリアント、例えば、X1AVL、LX2VL、LAX3L、若しくはLAVX4;X1VQA、TX2QA、TVX3A、若しくはTVQX4;X1AVH、GX2VH、GAX3H、若しくはGAVX4(配列番号64~75に対応する)が挙げられ、ここで、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る)、
(f)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、5であり、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3X4X5(配列番号77)アミノ酸ストレッチが作製され、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、及びX5は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。ある特定の例において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、又はX5のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸から選択される、塩基性アミノ酸である。具体的な例としては、PAFPL(配列番号78)又はDQGGE(配列番号79)、及びそれらのバリアント、例えば、X1AFPL、PX2FPL、PAX3PL、PAFX4L、若しくはPAFPX5;X1QGGE、DX2GGE、DQX3GE、DQGX4E、若しくはDQGGX5(配列番号80~89に対応する)が挙げられ、ここで、X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然のアミノ酸であり得る)、
(g)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、6であり、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3X4X5X6(配列番号90)アミノ酸ストレッチが作製され、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。ある特定の例において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、X5、又はX6のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸から選択される、塩基性アミノ酸である。具体的な例としては、DIADKY(配列番号91)、又はそのバリアント、例えば、X1IADKY、DX2ADKY、DIX3DKY、DIAX4KY、DIADX5Y、若しくはDIADKX6(配列番号92~97に対応する)が挙げられ、ここで、X1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る)、或いは
(h)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、0~6であり、mは、0であり、C又は[CST]残基のうちの1つは、モチーフのアミノ酸残基のN末端アミド又はC末端カルボキシ基のいずれかにアセチル、メチル、エチル、又はプロピオニル基を有するように改変されている。そのようなモチーフの好ましい実施形態において、nは、2であり、mは、0であり、ここで、内部X1X2は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1及びX2は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。更なる例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくは、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸である。モチーフの別の例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、P又はYである。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2アミノ酸連結の具体的な非限定的な例は、PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH、及びRHである。好ましくは、前記改変は、モチーフの最初のシステインのN末端アセチル化をもたらす(N-アセチル-システイン))
から選択される、態様1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
25.前記オキシドレダクターゼモチーフのXn部分が、配列PYを含み、好ましくは、オキシドレダクターゼモチーフが、配列CPYC(配列番号98)を含む、態様1から24のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
26.オキシドレダクターゼモチーフのアミノ酸Zが、H、K、R、及び任意の非天然の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸の群から選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、H、K、及びRから選択される塩基性アミノ酸であり、もっとも好ましくは、Zが、H又はKである、態様1から25のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
27.前記免疫原性ペプチドが、9~50個のアミノ酸、好ましくは、9~30個のアミノ酸の長さを有する、態様1から26のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
28.前記オキシドレダクターゼモチーフが、前記抗原性タンパク質におけるT細胞エピトープのN末端若しくはC末端の11個のアミノ酸の領域内のアミノ酸配列に天然に存在しない、且つ/又は前記T細胞エピトープが、そのアミノ酸配列に前記オキシドレダクターゼモチーフを天然に含まない、態様1から27のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
29.前記抗原性タンパク質が、(プロ)インスリン、GAD65、GAD67、IA-2(ICA512)、IA-2(ベータ/フォグリン)、IGRP、クロモグラニン、ZnT8、及びHSP-60からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、1型糖尿病(T1D)である、態様1から28のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
30.前記抗原性タンパク質が、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト塩基性タンパク(MOBP)、及びオリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、多発性硬化症(MS)及び/又は視神経脊髄炎(NMO)である、態様1から28のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
31.前記抗原性タンパク質が、GRP78、HSP60、60kDaシャペロニン2、ゲルゾリン、キチナーゼ-3様タンパク質1、カテプシンS、血清アルブミン、及びカテプシンDからなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)である、態様1から28のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
32.前記抗原性タンパク質が、腫瘍又はがん抗原、例えば、がん遺伝子、がん原遺伝子、ウイルスタンパク質、生存因子、又はクローンタイプ若しくはイディオタイプ決定基であり、前記疾患が、がんである、態様1から28のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
33.ペプチドをコードする非免疫原性RNAであって、前記ペプチドが、
a)オキシドレダクターゼモチーフと、
b)抗原性タンパク質のT細胞エピトープと、
c)a)とb)との間の0~7個のアミノ酸、好ましくは、0~4個のアミノ酸のリンカーと、
を含み、
前記オキシドレダクターゼモチーフa)が、以下の一般構造:Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]を有し、式中、Zが、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、K又はHであり、より好ましくは、Kであり、mが、1、0、又は2を含む群から選択される整数であり、
Xが、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、K又はHであり、より好ましくは、Rであり、
nが、0~6、好ましくは、0~3から選択される整数、もっとも好ましくは、2であり、前記オキシドレダクターゼモチーフにおけるハイフン(-)が、リンカー若しくはT細胞エピトープのN末端、又はリンカー若しくはT細胞エピトープのC末端へのオキシドレダクターゼモチーフの結合点を示す、
非免疫原性RNA。
【0058】
34.改変されたヌクレオチドの組込み及びdsRNAの除去によって非免疫原性となる、態様33に記載の非免疫原性RNA。
【0059】
35.改変されたヌクレオチドが、RNAに媒介される自然免疫受容体の活性化を抑制する、態様34に記載の非免疫原性RNA。
【0060】
36.改変されたヌクレオチドが、1つ又は複数のウリジンの、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドとの置き換えを含む、態様34又は35に記載の非免疫原性RNA。
【0061】
37.改変された核酸塩基が、改変されたウラシルである、態様36に記載の非免疫原性RNA。
【0062】
38.改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジン又は5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3 ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、及び5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群から選択される、態様36又は37に記載の非免疫原性RNA。
【0063】
39.改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、シュードウリジン(ψ)、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、又は5-メチル-ウリジン(m5U)である、態様33から38のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0064】
40.改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)である、態様33から39のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0065】
41.非免疫原性RNAが、mRNAである、態様33から40のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0066】
42.非免疫原性RNAが、インビトロで転写されたRNAである、態様33から41のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0067】
43.非免疫原性RNAが、医薬組成物が投与される対象の細胞において一過的に発現される、態様33から42のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0068】
44.非免疫原性RNAが、医薬組成物が投与される対象の樹状細胞に送達される、態様33から43のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0069】
45.樹状細胞が、未成熟樹状細胞である、態様44に記載の非免疫原性RNA。
【0070】
46.非免疫原性RNAが、送達ビヒクルにおいて製剤化される、態様33から45のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0071】
47.送達ビヒクルが、粒子を含む、態様46に記載の非免疫原性RNA。
【0072】
48.送達ビヒクルが、脂質を含む、態様46又は47に記載の非免疫原性RNA。
【0073】
49.脂質が、カチオン性脂質を含む、態様48に記載の非免疫原性RNA。
【0074】
50.脂質が、非免疫原性RNAと複合体を形成する、及び/又はそれを封入する、態様48又は49に記載の非免疫原性RNA。
【0075】
51.非免疫原性RNAが、リポソームにおいて製剤化される、態様33から50のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0076】
52.前記ペプチドにおける前記オキシドレダクターゼモチーフが、以下のアミノ酸モチーフ:
(a)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは、0であり(例えば、配列番号733)、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kであり、そのようなモチーフの非限定的な好ましい例は、KCC、KKCC(配列番号6)、RCC、RRCC(配列番号7)、RKCC(配列番号8)、又はKRCC(配列番号9)である)、
(b)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは、1であり(例えば、配列番号734、750、及び751)、Xは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はRであり、
mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくはH、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kであり、そのようなモチーフの非限定的な好ましい例は、KCXC(配列番号10)、KKCXC(配列番号11)、RCXC(配列番号12)、RRCXC(配列番号13)、RKCXC(配列番号14)、KRCXC(配列番号15)、KCKC(配列番号16)、KKCKC(配列番号17)、KCRC(配列番号18)、KKCRC(配列番号19)、RCRC(配列番号20)、RRCRC(配列番号21)、RKCKC(配列番号22)、KRCKC(配列番号23)である)、
(c)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、2であり(配列番号723、728、735、740、745、752、757、及び758)、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内で内部X1X2アミノ酸連結が作製され、Xは、任意のアミノ酸であり、好ましくは、少なくとも1つのXは、H、K、R、及び非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はRであり、
mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。これらのモチーフは、内部X1X2アミノ酸連結が、オキシドレダクターゼモチーフ内に位置し、mは、0~3から選択される整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1及びX2は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1及びX2は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。更なる例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸である。モチーフの別の例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、P又はYである。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2アミノ酸連結の具体的な非限定的な例は、PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH、及びRHである。この形態の特に好ましいモチーフは、CPYC(配列番号98)、HCPYC、KHCPYC、KCPYC、RCPYC、HCGHC、KCGHC、及びRCGHC(配列番号24~30に対応する)である。この形態の別の好ましいモチーフは、KKCPYC、KRCPYC、KHCGHC、KKCGHC、及びKRCGHC(配列番号31~35)である)、
(d)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、3であり(配列番号724、729、736、741、746、753、759、及び760)、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチが作製され、Xは、任意のアミノ酸であり、好ましくは、少なくとも1つのXは、H、K、R、及び非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はRであり、
mは、0、1、又は2から選択される整数であり、
Zは、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K又はHである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。ある特定の例において、X1、X2、及びX3は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、及びX3は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、前記モチーフにおけるX1、X2、又はX3のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸である。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチの具体的な例は、XPY、PXY、及びPYXであり、式中、Xは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、K、R、若しくはH、又は非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンであり得る。非限定的な例としては、KPY、RPY、HPY、GPY、APY、VPY、LPY、IPY、MPY、FPY、WPY、PPY、SPY、TPY、CPY、YPY、NPY、QPY、DPY、EPY、KPY、PKY、PRY、PHY、PGY、PAY、PVY、PLY、PIY、PMY、PFY、PWY、PPY、PSY、PTY、PCY、PYY、PNY、PQY、PDY、PEY、PLY、PYK、PYR、PYH、PYG、PYA、PYV、PYL、PYI、PYM、PYF、PYW、PYP、PYS、PYT、PYC、PYY、PYN、PYQ、PYD、又はPYEが挙げられる。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチの代替的な例は、XHG、HXG、及びHGXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KHG、RHG、HHG、GHG、AHG、VHG、LHG、IHG、MHG、FHG、WHG、PHG、SHG、THG、CHG、YHG、NHG、QHG、DHG、EHG、及びKHG、HKG、HRG、HHG、HGG、HAG、HVG、HLG、HIG、HMG、HFG、HWG、HPG、HSG、HTG、HCG、HYG、HNG、HQG、HDG、HEG、HLG、HGK、HGR、HGH、HGG、HGA、HGV、HGL、HGI、HGM、HGF、HGW、HGP、HGS、HGT、HGC、HGY、HGN、HGQ、HGD、又はHGEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XGP、GXP、及びGPXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KGP、RGP、HGP、GGP、AGP、VGP、LGP、IGP、MGP、FGP、WGP、PGP、SGP、TGP、CGP、YGP、NGP、QGP、DGP、EGP、KGP、GKP、GRP、GHP、GGP、GAP、GVP、GLP、GIP、GMP、GFP、GWP、GPP、GSP、GTP、GCP、GYP、GNP、GQP、GDP、GEP、GLP、GPK、GPR、GPH、GPG、GPA、GPV、GPL、GPI、GPM、GPF、GPW、GPP、GPS、GPT、GPC、GPY、GPN、GPQ、GPD、又はGPEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XGH、GXH、及びGHXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KGH、RGH、HGH、GGH、AGH、VGH、LGH、IGH、MGH、FGH、WGH、PGH、SGH、TGH、CGH、YGH、NGH、QGH、DGH、EGH、KGH、GKH、GRH、GHH、GGH、GAH、GVH、GLH、GIH、GMH、GFH、GWH、GPH、GSH、GTH、GCH、GYH、GNH、GQH、GDH、GEH、GLH、GHK、GHR、GHH、GHG、GHA、GHV、GHL、GHI、GHM、GHF、GHW、GHP、GHS、GHT、GHC、GHY、GHN、GHQ、GHD、又はGHEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XGF、GXF、及びGFXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KGF、RGF、HGF、GGF、AGF、VGF、LGF、IGF、MGF、FGF、WGF、PGF、SGF、TGF、CGF、YGF、NGF、QGF、DGF、EGF、及びKGF、GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、GLF、GFK、GFR、GFH、GFG、GFA、GFV、GFL、GFI、GFM、GFF、GFW、GFP、GFS、GFT、GFC、GFY、GFN、GFQ、GFD、又はGFEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XRL、RXL、及びRLXであり、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KRL、RRL、HRL、GRL、ARL、VRL、LRL、IRL、MRL、FRL、WRL、PRL、SRL、TRL、CRL、YRL、NRL、QRLRL、DRL、ERL、KRL、GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、及びGLF、RLK、RLR、RLH、RLG、RLA、RLV、RLL、RLI、RLM、RLF、RLW、RLP、RLS、RLT、RLC、RLY、RLN、RLQ、RLD、又はRLEであり得る。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3アミノ酸ストレッチのなおも代替的な例は、XHP、HXP、及びHPXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、KHP、RHP、HHP、GHP、AHP、VHP、LHP、IHP、MHP、FHP、WHP、PHP、SHP、THP、CHP、YHP、NHP、QHP、DHP、EHP、KHP、HKP、HRP、HHP、HGP、HAF、HVF、HLF、HIF、HMF、HFF、HWF、HPF、HSF、HTF、HCF、HYP、HNF、HQF、HDF、HEF、HLP、HPK、HPR、HPH、HPG、HPA、HPV、HPL、HPI、HPM、HPF、HPW、HPP、HPS、HPT、HPC、HPY、HPN、HPQ、HPD、又はHPEであり得る。
特に好ましい例は、CRPYC、KCRPYC、KHCRPYC、RCRPYC、HCRPYC、CPRYC、KCPRYC、RCPRYC、HCPRYC、CPYRC、KCPYRC、RCPYRC、HCPYRC、CKPYC、KCKPYC、RCKPYC、HCKPYC、CPKYC、KCPKYC、RCPKYC、HCPKYC、CPYKC、KCPYKC、RCPYKC、及びHCPYKC(配列番号36~60に対応する)である)、
(e)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、4であり(配列番号725、730、737、742、747、754、761、及び762)、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3X4(配列番号76)アミノ酸ストレッチが作製され、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、及びX4は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。ある特定の非限定的な例において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、又はX4のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸から選択される、塩基性アミノ酸である。具体的な例としては、LAVL(配列番号61)、TVQA(配列番号62)、又はGAVH(配列番号63)、及びそれらのバリアント、例えば、X1AVL、LX2VL、LAX3L、若しくはLAVX4;X1VQA、TX2QA、TVX3A、若しくはTVQX4;X1AVH、GX2VH、GAX3H、若しくはGAVX4(配列番号64~75に対応する)が挙げられ、ここで、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る)、
(f)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、5であり(配列番号726、731、738、743、748、755、763、及び764)、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3X4X5(配列番号77)アミノ酸ストレッチが作製され、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、及びX5は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。ある特定の例において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、又はX5のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸から選択される、塩基性アミノ酸である。具体的な例としては、PAFPL(配列番号78)又はDQGGE(配列番号79)、及びそれらのバリアント、例えば、X1AFPL、PX2FPL、PAX3PL、PAFX4L、若しくはPAFPX5;X1QGGE、DX2GGE、DQX3GE、DQGX4E、若しくはDQGGX5(配列番号80~89に対応する)が挙げられ、ここで、X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然のアミノ酸であり得る)、
(g)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、6であり(配列番号727、732、739、744、749、756、765、及び766)、それによって、オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2X3X4X5X6(配列番号90)アミノ酸ストレッチが作製され、mは、0、1、又は2から選択される整数であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、H、K、R、及び本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHであり、もっとも好ましくは、Kである。mが、1又は2であり、Zが、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸であり、好ましくは、K又はHである、モチーフが、好ましい。X1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。ある特定の例において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、X5、又はX6のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸から選択される、塩基性アミノ酸である。具体的な例としては、DIADKY(配列番号91)、又はそのバリアント、例えば、X1IADKY、DX2ADKY、DIX3DKY、DIAX4KY、DIADX5Y、若しくはDIADKX6(配列番号92~97に対応する)が挙げられ、ここで、X1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る)、或いは
(h)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは、0~6であり、mは、0であり、C又は[CST]残基のうちの1つは、モチーフのアミノ酸残基のN末端アミド又はC末端カルボキシ基のいずれかにアセチル、メチル、エチル、又はプロピオニル基を有するように改変されている(配列番号780~789)。そのようなモチーフの好ましい実施形態において、nは、2であり、mは、0であり、ここで、内部X1X2は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1及びX2は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。更なる例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、H、K、若しくは、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸、例えば、L-オルニチンから選択される、塩基性アミノ酸である。モチーフの別の例において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、P又はYである。オキシドレダクターゼモチーフ内の内部X1X2アミノ酸連結の具体的な非限定的な例は、PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH、及びRHである。好ましくは、前記改変は、モチーフの最初のシステインのN末端アセチル化をもたらす(N-アセチル-システイン))
から選択される、態様33から51のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0077】
53.前記ペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフのXn部分が、配列PYを含み、好ましくは、オキシドレダクターゼモチーフが、配列CPYC(配列番号98)を含むか、又は以下の配列:HCPYC、KHCPYC、KCPYC、RCPYC、HCGHC、KCGHC、RCGHC、KKCPYC、KRCPYC、KHCGHC、KKCGHC、及びKRCGHC(配列番号24~35)のうちのいずれか1つを有する、態様33から52のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0078】
54.前記ペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフのアミノ酸Zが、H、K、R、及び任意の非天然の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸の群から選択される塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、H、K、及びRから選択される塩基性アミノ酸であり、もっとも好ましくは、Zが、H又はKである、態様33から53のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0079】
55.前記免疫原性ペプチドが、9~50個のアミノ酸、好ましくは、9~30個のアミノ酸の長さを有する、態様33から54のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0080】
56.前記ペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフが、前記抗原性タンパク質におけるT細胞エピトープのN末端又はC末端の11個のアミノ酸の領域内のアミノ酸配列に天然に存在しない、且つ/又は前記T細胞エピトープが、そのアミノ酸配列に前記オキシドレダクターゼ酵素モチーフを天然に含まない、態様33から55のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0081】
57.前記抗原性タンパク質が、(プロ)インスリン、GAD65、GAD67、IA-2(ICA512)、IA-2(ベータ/フォグリン)、IGRP、クロモグラニン、ZnT8、及びHSP-60からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、1型糖尿病(T1D)である、態様33から56のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0082】
58.前記抗原性タンパク質が、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト塩基性タンパク(MOBP)、及びオリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、多発性硬化症(MS)及び/又は視神経脊髄炎(NMO)である、態様33から56のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0083】
59.前記抗原性タンパク質が、GRP78、HSP60、60kDaシャペロニン2、ゲルゾリン、キチナーゼ-3様タンパク質1、カテプシンS、血清アルブミン、及びカテプシンDからなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)である、態様33から56のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0084】
60.前記抗原性タンパク質が、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)であり、前記自己免疫疾患が、視神経脊髄炎(NMO)である、態様33から56のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0085】
61.請求項1から32のいずれか一項に記載の方法における使用のための、態様33から60のいずれか1つに記載の非免疫原性RNA。
【0086】
62.態様33から60のいずれか1つに記載の非免疫原性RNAと、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【0087】
63.態様1から62のいずれか1つに記載の好ましい実施形態において、ペプチドにおけるリンカーは、少なくとも1つのアミノ酸、少なくとも2つのアミノ酸、少なくとも3つのアミノ酸、又は少なくとも4つのアミノ酸を含む。好ましくは、前記リンカーは、1~7個のアミノ酸、例えば、2~7個のアミノ酸、3~7個のアミノ酸、又は4~7個のアミノ酸を含む。
【0088】
64.態様1から63のいずれか1つに記載の別の好ましい実施形態において、ペプチドのT細胞エピトープは、そのN末端に、すなわち、リンカー又はオキシドレダクターゼモチーフにすぐに隣接して、より具体的には、リンカーが不在であるか又は1つ若しくは2つのアミノ酸しか含まない場合に、塩基性アミノ酸を含まない。より好ましくは、すべての態様において、T細胞エピトープは、そのN末端、すなわち、リンカー又はオキシドレダクターゼモチーフにすぐに隣接して、より具体的には、リンカーが不在であるか又は1つ若しくは2つのアミノ酸しか含まない場合に、塩基性アミノ酸を含まない。
【0089】
65.態様1から64のいずれか1つに記載の更なる実施形態において、ペプチドのT細胞エピトープは、そのN末端から数えて1位、2位、及び/又は3位に、すなわち、リンカー又はオキシドレダクターゼモチーフにすぐに隣接して、より具体的には、リンカーが不在であるか又は1つ若しくは2つのアミノ酸しか含まない場合に、塩基性アミノ酸を含まない。
【0090】
66.態様1から65のいずれか1つにおいて、ペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフは、前記ペプチドのN末端を形成する。代替的な実施形態セットにおいて、オキシドレダクターゼモチーフは、ペプチドのC末端を形成する。
【0091】
67.態様1から66のいずれか1つにおいて、MSについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*15:01、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01、及びHLA-DRB1*07:01からなる群から選択されるHLA HLA-DRB1*型、好ましくは、HLA-DRB1* 15:01を有する。
【0092】
68.態様1から66のいずれか1つにおいて、NMOについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*03:01及びHLA-DPB1*05:01(アジアについて)からなる群から選択されるHLA型を有する。
【0093】
69.態様1から66のいずれか1つにおいて、T1Dについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*03:01及び04:01からなる群から選択されるHLA型を有する。
【0094】
70.態様1から66のいずれか1つにおいて、RAについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*01:01、04:01、及び04:04からなる群から選択されるHLA型を有する。
【0095】
71.態様1から70のいずれか1つに記載の好ましい実施形態において、ペプチドにおける前記T細胞エピトープは、7~25個のアミノ酸の長さを有するNKT細胞エピトープであるか、又は前記T細胞エピトープは、7~25個のアミノ酸、好ましくは、9~25個のアミノ酸の長さを有するMHCクラスII T細胞エピトープである。
【0096】
72.態様1から71のいずれか1つに記載の好ましい実施形態において、ペプチドにおける前記T細胞エピトープは、7~50個のアミノ酸の長さを有するNKT細胞エピトープであるか、又は前記ペプチドは、7~50個のアミノ酸、好ましくは、9~50個のアミノ酸の長さを有するMHCクラスII T細胞エピトープを含む。
【0097】
73.本明細書に列挙される態様のいずれか1つにおいて、オキシドレダクターゼモチーフは、標準的なC-XX-[CST]又は[CST]-XX-Cオキシドレダクターゼモチーフのリピート、例えば、互いに1つ又は複数のアミノ酸で離間されていてもよい前記モチーフのリピート(例えば、CXXC X CXXC X CXXC(配列番号99))、互いに隣接しているリピート(CXXCCXXCCXXC(配列番号100))、又は特にnが0又は1でありmが0である場合における互いにオーバーラップするリピートCXXCXXCXXC(配列番号101)若しくはCXCCXCCXCC(配列番号102))の一部ではない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1図1は、7日目から28日目に毎日行った盲検での臨床EAEスコア付け(0~5)の評価を表す。0日目に、マウスにMOG35-55を注射して、EAEを誘導し、未処置のまま放置した(ビヒクル)か、又はIMCY-0189m1ψ LNP封入型mRNA若しくはMOG35-55m1ψ LNP封入型mRNAで治療的に処置した(詳細についてはTable 2(表6)を参照されたい)。各日、平均臨床スコアをそれぞれのマウス群について判定した。
図2図2は、それぞれのマウス群について、図1に示されるEAEスコアから計算したAUCを表す。有意差を、以下の通り示す:*p<0.05、**p<0.01。
図3図3は、それぞれのマウス群について、図1に示されるEAEスコアから計算したMMSを表す。有意差を、以下の通り示す:*p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、本発明は、それらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ定められる。特許請求の範囲における任意の参照符号は、その範囲を制限すると解釈されるものではない。以下の用語又は定義は、単に本発明の理解を補助するために提供されている。本明細書に具体的に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての用語は、本発明の分野の当業者が有するであろうものと同じ意味を有する。本明細書に提供される定義は、当業者によって理解されるものよりも小さい範囲を有すると解釈されるものではない。
【0100】
別途示されない限り、当業者には明らかであろうように、具体的に詳述されていないすべての方法、工程、技法、及び操作は、本質的に公知の様式で実行することができ、また実行されている。更に、例えば、標準的な教本、上記で言及されている一般的な背景技術、及びそこに引用されている更なる参考文献への参照がなされる。
【0101】
本明細書において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈により別途明確に示されない限り、単数形及び複数形の両方の参照物を含む。「任意の」という用語は、本明細書において使用される態様、特許請求の範囲、又は実施形態と関連して使用される場合、任意の単数形のもの(すなわち、いずれか)、並びに参照された前記態様、特許請求の範囲、又は実施形態のすべての組合せを指す。
【0102】
「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」という用語は、本明細書において使用される場合、「含む(including)」、「含む(includes)」、又は「含む(containing)」、「含む(contains)」、と同義であり、包括的又は拡張可能であり、追加の言及されていないメンバー、要素、又は方法工程を除外するものではない。前記用語はまた、「から本質的になる」及び「からなる」実施形態も包含する。
【0103】
端点による数値範囲の記述は、それぞれの範囲内に含まれるすべての数字及び分数、並びに記載された端点を含む。
【0104】
「約」という用語は、測定可能な値、例えば、パラメーター、量、時間範囲等に言及して本明細書において使用される場合、指定された値の±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、更により好ましくは±0.1%以下の変動を包含することを意味するが、ただし、そのような変動が開示される発明を実行するのに適している場合に限る。修飾語「約」が指す値は、それ自体も、具体的且つ好ましく開示されることを理解されたい。
【0105】
本明細書において使用される場合、「疾患の処置における使用のための組成物」において使用される「使用のための」という用語は、対応する処置の方法、及び疾患の処置のための医薬の製造のための調製物の対応する使用も同様に開示するものとする。
【0106】
「ペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、ペプチド結合によって接続された9~200個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む分子を指すが、これは、非アミノ酸構造を含み得る。
【0107】
「免疫原性ペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫原性である、すなわち、免疫応答を誘起することができるT細胞エピトープを含む、ペプチドを指す。
【0108】
本発明によるペプチドは、従来的な20種のアミノ酸若しくはそれらの改変された形態のうちのいずれかを含み得るか、或いは化学的ペプチド合成によって又は化学的若しくは酵素的改変によって組み込まれる天然に存在しないアミノ酸を含み得る。
【0109】
「抗原」という用語は、本明細書において使用される場合、高分子、典型的には、タンパク質(多糖あり若しくはなし)の構造、又は1つ若しくは複数のハプテンを含みT細胞若しくはNKT細胞エピトープを含むタンパク質組成物から作成される構造を指す。
【0110】
「抗原性タンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、1つ又は複数のT又はNKT細胞エピトープを含むタンパク質を指す。本明細書において使用される自己抗原又は自己抗原性タンパク質は、ヒト又は動物の身体内で免疫応答を誘起する、身体内に存在する同じヒト又は動物のタンパク質又はそのフラグメントを指す。
【0111】
「食物又は医薬抗原性タンパク質」という用語は、食物又は医薬製品、例えば、ワクチン中に存在する抗原性タンパク質を指す。
【0112】
「エピトープ」という用語は、抗体若しくはその一部分(Fab’、Fab2’等)、又はB細胞、若しくはT細胞、若しくはNKT細胞の細胞表面に存在する受容体によって特異的に認識及び結合され、前記結合によって、免疫応答を誘導することができる、抗原性タンパク質の1つ又はいくつかの部分(立体構造エピトープを定義し得る)を指す。
【0113】
本発明の文脈における「T細胞エピトープ」という用語は、ドミナント、サブドミナント、又はマイナーT細胞エピトープ、すなわち、Tリンパ球の細胞表面において受容体によって特異的に認識及び結合される抗原性タンパク質の一部を指す。エピトープがドミナントであるか、サブドミナントであるか、又はマイナーであるかは、エピトープに対して誘起される免疫反応に依存する。ドミナンスは、そのようなエピトープがT細胞によって認識され、タンパク質のすべての可能性のあるT細胞エピトープのなかで、それらを活性化することができる頻度に依存する。T細胞エピトープは、MHCクラスII分子によって認識されるエピトープ、又はCD1d分子によって認識されるNKT細胞エピトープであり得る。
【0114】
T細胞エピトープは、MHCクラスII分子によって認識されるエピトープであり得、典型的には、MHC II分子の溝に適合する9個のアミノ酸の配列からなる。MHCクラスII T細胞エピトープを表すペプチド配列内で、エピトープにおけるアミノ酸は、P1~P9と番号付けすることができ、エピトープのN末端側のアミノ酸は、P-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端側のアミノ酸は、P+1、P+2等と番号付けされる。MHCクラスII分子によって認識され、MHCクラスI分子によっては認識されないペプチドは、MHCクラスII制限T細胞エピトープと称される。
【0115】
抗原性タンパク質由来のT細胞エピトープの特定及び選択は、当業者に公知である。
【0116】
本発明の文脈において好適なエピトープを特定するために、抗原性タンパク質の単離されたペプチド配列を、例えば、T細胞生物学技法によって試験して、ペプチド配列がT細胞応答を誘起するかどうかを判定する。T細胞応答を誘起することが見出されたペプチド配列は、T細胞刺激活性を有するとして定義される。
【0117】
ヒトT細胞刺激活性は、例えば、T1Dを有する個体から得られたT細胞を、T1Dに関与する自己抗原に由来するペプチド/エピトープとともに培養し、例えば滴定したチミジンの細胞取り込みによって測定されるペプチド/エピトープに応答してT細胞の増殖が生じるかどうかを判定することによって、更に試験することができる。T細胞によるペプチド/エピトープに対する応答の刺激指数は、ペプチド/エピトープに応答した最大CPMを対照CPMで除算したものとして計算することができる。バックグラウンドレベルの2倍以上のT細胞刺激指数(S.I.)は、「陽性」と考えられる。陽性結果を使用して、試験したペプチド/エピトープ群のそれぞれのペプチド/エピトープの平均刺激指数を計算する。
【0118】
非天然の(又は改変された)T細胞エピトープは、任意選択で、MHCクラスII分子に対するそれらの結合親和性について、更に試験することができる。これは、異なる方式で行うことができる。例えば、可溶性HLAクラスII分子を、所与のクラスII分子にホモ接合性である細胞の溶解によって得る。後者を、親和性クロマトグラフィーによって精製する。可溶性クラスII分子を、そのクラスII分子に対する強力な結合親和性に従って産生されたビオチン標識した参照ペプチドとともにインキュベートする。クラスII結合について評価しようとするペプチドを、次いで、異なる濃度でインキュベートし、参照ペプチドをそのクラスII結合から変位させるそれらの能力を、ニュートラアビジンの添加によって計算する。
【0119】
例えば、精細マッピング技法によって、最適なT細胞エピトープを決定するために、T細胞刺激活性を有し、したがって、T細胞生物学技法によって判定された少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、ペプチドを、ペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかにおいてアミノ酸残基の付加又は欠失によって改変し、試験して、改変されたペプチドに対するT細胞反応性の変化を判定する。生来のタンパク質配列においてオーバーラップの領域が共通している2つ又はそれ以上のペプチドが、T細胞生物学技法によって判定した場合に、ヒトT細胞刺激活性を有することが見出された場合、そのようなペプチドのすべて又は一部分を含む追加のペプチドを産生することができ、これらの追加のペプチドを、同様の手順によって試験することができる。この技法に従って、ペプチドを選択し、組換え又は合成により産生させる。T細胞エピトープ又はペプチドは、ペプチド/エピトープに対するT細胞応答の強度(例えば、刺激指数)、及び個体の集団におけるペプチドに対するT細胞応答の頻度を含む、様々な因子に基づいて選択される。
【0120】
追加として、及び/又は代替として、1つ又は複数のインビトロアルゴリズムを使用して、抗原性タンパク質内のT細胞エピトープ配列を特定することができる。好適なアルゴリズムとしては、Zhangら、(2005) Nucleic Acids Res 33、W180-W183 (PREDBALB)、Salomon & Flower (2006) BMC Bioinformatics 7、501 (MHCBN)、Schulerら、(2007) Methods Mol. Biol.409、75-93 (SYFPEITHI)、Donnes & Kohlbacher (2006) Nucleic Acids Res. 34、W194-W197 (SVMHC)、Kolaskar & Tongaonkar (1990) FEBS Lett. 276、172-174、Guanら、(2003) Appl. Bioinformatics 2、63-66 (MHCPred)、並びにSingh及びRaghava (2001) Bioinformatics 17、1236-1237 (Propred)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、そのようなアルゴリズムは、MHC II分子の溝に適合するであろう1つ又は複数のオクタ又はノナペプチド配列の抗原性タンパク質内の予測、及び異なるHLA型についてこのような予測を可能にする。
【0121】
「MHC」という用語は、「主要組織適合抗原」を指す。ヒトにおいて、MHC遺伝子は、HLA(「ヒト白血球抗原」)遺伝子として知られている。一貫した慣例はないが、いくつかの文献では、HLAタンパク質分子を指すためにHLAを使用し、HLAタンパク質をコードする遺伝子を指すためにMHCを使用する。そのため、「MHC」及び「HLA」は、本明細書において使用される場合には同義である。ヒトにおけるHLA系には、マウスにおけるその同等物、すなわち、H2系がある。もっともよく研究されているHLA遺伝子は、9個のいわゆる古典的なMHC遺伝子である:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLAs DQB1、HLA-DRA、及びHLA-DRB1。ヒトにおいて、MHCは、3つの領域:クラスI、II、及びIIIに分割される。A、B、及びC遺伝子は、MHCクラスIに属し、一方で6つのD遺伝子は、クラスIIに属する。MHCクラスI分子は、3つのドメイン(アルファ1、2、及び3)を含む、細胞表面においてベータ2ミクログロブリンと会合する単一の多形性鎖から構成される。クラスII分子は、それぞれが2つの鎖(アルファ1及び2、並びにベータ1及び2)を含む2つの多形性鎖から構成される。
【0122】
MSについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*15:01、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01、及びHLA-DRB1*07:01からなる群から選択されるHLA HLA-DRB1*型、好ましくは、HLA-DRB1* 15:01を有する。
【0123】
NMOについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*03:01及びHLA-DPB1*05:01(アジアについて)からなる群から選択されるHLA型を有する。
【0124】
T1Dについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*03:01及び04:01からなる群から選択されるHLA型を有する。
【0125】
RAについて処置されている患者は、典型的には、HLA-DRB1*01:01、04:01、及び04:04からなる群から選択されるHLA型を有する。
【0126】
クラスI MHC分子は、事実上すべての有核細胞上に発現される。
【0127】
クラスI MHC分子の状況で提示されるペプチドフラグメントは、CD8+ Tリンパ球(細胞溶解性Tリンパ球又はCTL)によって認識される。CD8+ Tリンパ球は、刺激性抗原を有する細胞を溶解することができる細胞溶解性エフェクターへと成熟することが多い。クラスII MHC分子は、主として、活性化されたリンパ球及び抗原提示細胞上に発現される。CD4+ Tリンパ球(ヘルパーTリンパ球又はTh)は、通常、マクロファージ又は樹状細胞等の抗原提示細胞上に見出されるクラスII MHC分子によって提示される固有のペプチドフラグメントの認識によって活性化される。CD4+ Tリンパ球は、増殖し、抗体媒介性及び細胞媒介性応答を補助するサイトカイン、例えば、IL-2、IFN-ガンマ、及びIL-4を分泌する。
【0128】
機能性HLAは、内因性、並びに外来性、可能性として抗原性のペプチドが結合する、深い結合溝によって特徴付けられる。溝は、十分に規定された形状及び物理化学的特性によって更に特徴付けられる。HLAクラスI結合部位は、ペプチド両末端が溝の両端に固定されるという点で、閉鎖されている。それらは、保存されたHLA残基との水素結合のネットワークにも関与する。これらの拘束の観点から、結合されるペプチドの長さは、8、9、又は10個の残基に制限される。しかしながら、最大12個のアミノ酸残基のペプチドもまた、HLAクラスIに結合することができることが、示されている。異なるHLA複合体の構造を比較することにより、ペプチドが比較的直線的な拡がった構成をとるか、又は溝の外側に膨らむ中央の残基を含み得る、一般的な結合の様式が確認された。
【0129】
HLAクラスI結合部位とは対照的に、クラスII部位は、両端が開放されている。これは、ペプチドが、実際の結合領域から伸びて、それによって、両端が「突出する」ことが可能となる。クラスII HLAは、したがって、9個から25個を上回るアミノ酸残基の範囲の可変の長さのペプチドリガンドに結合することができる。HLAクラスIと同様に、クラスIIリガンドの親和性は、「定常」及び「可変」成分によって決定される。定常部分は、ここでも、HLAクラスII溝の保存された残基と、結合されるペプチドの主鎖との間で形成される水素結合のネットワークにより生じる。しかしながら、この水素結合パターンは、ペプチドのN及びC末端残基に限定されず、鎖全体に分布している。後者は、複合体を形成したペプチドの立体構造を、厳密に直鎖状の結合様式に限定するため、重要である。これは、すべてのクラスIIアロタイプに共通している。ペプチドの結合親和性を決定する第2の成分は、クラスII結合部位内のある特定の多形性の位置に起因して、可変である。異なるアロタイプは、溝内に異なる相補性ポケットを形成し、それによって、ペプチドのサブタイプ依存性選択、又は特異性をもたらす。重要なことには、クラスIIポケット内に保持されるアミノ酸残基に対する制約は、一般に、クラスIよりも「柔軟」である。異なるHLAクラスIIアロタイプ間には、はるかに高いペプチドの交差反応性が存在する。MHC II分子の溝に適合するMHCクラスII T細胞エピトープの±9個のアミノ酸(すなわち、8個、9個、又は10個)の配列は、通常、P1~P9と番号付けされる。エピトープのN末端側の追加のアミノ酸は、P-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端側のアミノ酸は、P+1、P+2等と番号付けされる。
【0130】
「NKT細胞エピトープ」という用語は、NKT細胞の細胞表面において受容体によって特異的に認識及び結合され、典型的には7個のアミノ酸の長さを有する、抗原性タンパク質の部分を指す。具体的には、NKT細胞エピトープは、CD1d分子によって結合されるエピトープである。NKT細胞エピトープは、一般的なモチーフ[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT](配列番号103)を有する。この一般的なモチーフの代替的なバージョンは、1位及び/又は7位に選択肢[FWYH]を有する、したがって、[FWYH]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYH](配列番号104)である。
【0131】
この一般的なモチーフの代替的なバージョンは、1位及び/又は7位に選択肢[FWYT]、[FWYT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYT](配列番号105)を有する。この一般的なモチーフの代替的なバージョンは、1位及び/又は7位に選択肢[FWY]、[FWY]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWY](配列番号106)を有する。
【0132】
1位及び/又は7位のアミノ酸に関係なく、一般的なモチーフの代替的なバージョンは、4位に選択肢[ILM]、例えば、[FWYH]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYH](配列番号107)、又は[FWYHT]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYHT](配列番号108)、又は[FWY]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWY](配列番号109)を有する。そのような疎水性ペプチドは、P1位及びP7位が、疎水性残基、例えば、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)によって占有されているモチーフによって特徴付けられる。P7は、しかしながら、スレオニン(T)又はヒスチジン(H)といったフェニルアラニン又はトリプトファンに対する代替的な疎水性残基を許容するという意味で、許容的である。P4位は、脂肪族残基、例えば、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、又はメチオニン(M)によって占有され、そのようなペプチドは、CD1d結合モチーフを天然に構成する疎水性残基を有し得る。いくつかの実施形態において、前記モチーフのアミノ酸残基は、通常、CD1dに結合する能力を増加させる残基との置換によって、改変されている。特定の実施形態において、モチーフは、前記一般的なモチーフとより緊密に適合するように改変されている。より具体的には、7位にF又はWを含むペプチドが、産生される。
【0133】
タンパク質におけるCD1d結合モチーフは、上述の配列モチーフの配列を、手作業、ScanProsite De Castro E.ら、(2006) Nucleic Acids Res. 34(Web Server issue):W362-W365等のアルゴリズムを使用することのいずれかによって、スキャンすることによって、特定することができる。
【0134】
「ナチュラルキラーT」又は「NKT」細胞は、非古典的なMHC複合体分子CD1dによって提示される抗原を認識する非従来的なTリンパ球の明確なサブセットを構成する。2つのNKT細胞のサブセットが、現在説明されている。不変NKT細胞(iNKT)とも称されるI型NKT細胞が、もっとも豊富に存在する。それらは、マウスの場合はValphal4及びヒトの場合はValpha24の不変アルファ鎖から作製されるアルファ-ベータT細胞受容体(TCR)の存在によって特徴付けられる。このアルファ鎖は、可変であるが数が制限されるベータ鎖と会合している。2型NKT細胞は、アルファ-ベータTCRを有するが多形性アルファ鎖を有する。しかしながら、表現型は依然として完全には定義されていないがCD1d分子の状況で提示される糖脂質によって活性化されるという特徴が共通している、他のNKT細胞サブセットが存在することは、明らかであろう。
【0135】
NKT細胞は、典型的には、NKG2D及びNK1.1を含む、ナチュラルキラー(NK)細胞受容体の組合せを発現する。NKT細胞は、自然免疫系の一部であり、これは、NKT細胞が、完全なエフェクター能力を獲得する前に拡大する必要がないという事実によって、獲得免疫系とは区別することができる。それらの媒介因子のほとんどは、事前に形成されており、転写を必要としない。NKT細胞は、細胞内病原体に対する免疫応答及び腫瘍拒絶を主として担うものであることが示されている。自己免疫疾患及び移植片拒絶の制御におけるそれらの役割もまた、提唱されている。
【0136】
認識ユニットであるCD1d分子は、ベータ-2ミクログロブリンの存在を含め、MHCクラスI分子のものに近似する構造を有する。CD1d分子は、2つのアルファ鎖によって境界が決定され、高度に疎水性の残基を含む、脂質鎖を受容する深い裂溝によって特徴付けられる。裂溝は、両極が開放されており、より長い鎖を収容することが可能である。CD1dのカノニカルリガンドは、合成アルファガラクトシルセラミド(アルファGalCer)である。しかしながら、糖脂質及びリン脂質、ミエリンにおいて見出される天然の脂質スルファチド、微生物ホスホイノシトールマンノシド、並びにアルファ-グルクロノシルセラミドを含む、多数の天然の代替的なリガンドが、説明されている。CD1dが、脂質鎖を含むリガンドのみに結合するか、又は一般的には、CD1dに埋め込まれた脂質テール及びCD1dから突出した糖残基頭部基から作製される共通の構造であることが、依然として当該技術分野における現在の見解である(Matsudaら、(2008)、Curr. Opinion Immunol.、20 358-368、Godfreyら、(2010)、Nature rev. Immunol 11、197-206)。
【0137】
「ホモログ」という用語は、本発明の状況で使用されるエピトープを参照して本明細書において使用される場合、天然に存在するエピトープとの少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有し、それによって、抗体又はB及び/若しくはT細胞の細胞表面受容体に結合するエピトープの能力を維持する、分子を指す。エピトープの特定のホモログは、多くとも3つ、より具体的には多くとも2つ、もっとも具体的には1つのアミノ酸が改変された天然のエピトープに対応する。
【0138】
「誘導体」という用語は、本発明のペプチドを参照して本明細書において使用される場合、少なくともペプチド活性部分(すなわち、オキシドレダクターゼモチーフ及び細胞溶解性CD4+ T細胞活性を誘起することができるMHCクラスIIエピトープ)を含み、それに加えて、ペプチドを安定化させること、又はペプチドの薬物動態若しくは薬力学的特性を変更することといった異なる目的を有し得る補完的部分を含む、分子を指す。
【0139】
本明細書において使用される場合、2つの配列の「配列同一性」という用語は、2つの配列をアライメントした場合に、同一なヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、それらの配列のうちの短い方におけるヌクレオチド又はアミノ酸の数で除算したものに関する。具体的には、配列同一性は、70%~80%、81%~85%、86%~90%、91%~95%、96%~100%、又は100%である。
【0140】
「ペプチドコーディングポリヌクレオチド(又は核酸)」及び「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は核酸)」という用語は、本明細書において使用される場合、適切な環境において発現されると、関連するペプチド配列又はその誘導体若しくはホモログの生成をもたらす、ヌクレオチド配列を指す。そのようなポリヌクレオチド又は核酸は、ペプチドをコードする通常の配列、並びに要求された活性を有するペプチドを発現させることができるこれらの核酸の誘導体及びフラグメントを含む。本発明によるペプチド又はそのフラグメントをコードする核酸は、哺乳動物を起源とするか又は哺乳動物に対応するペプチド又はそのフラグメント、もっとも具体的には、ヒトペプチドフラグメントをコードする、配列である。
【0141】
「オキシドレダクターゼモチーフ」、「チオールオキシドレダクターゼモチーフ」、「チオレダクターゼモチーフ」、「チオレドックスモチーフ」、又は「レドックスモチーフ」という用語は、本明細書において同義の用語として使用され、1つの分子(還元剤、水素又は電子ドナーとも称される)から別のもの(酸化剤、水素又は電子アクセプターとも称される)への電子の移動に関与するモチーフを指す。具体的には、「オキシドレダクターゼモチーフ」という用語は、公知の[CST]XXC(配列番号110)又はCXX[CST](配列番号111)モチーフを指し得るが、具体的には、配列モチーフ[CST]XnC(配列番号112)又はCXn[CST](配列番号113)を指し、ここで、nは、0、1、3、4、5、又は6を含む群から選択される整数であり、Cはシステインを表し、Sはセリンを表し、Tはスレオニンを表し、Xは任意のアミノ酸を表す。還元活性を有するために、改変されたオキシドレダクターゼモチーフに存在するシステインは、シスチンジスルフィド架橋の一部として存在しないものとする。より具体的には、前記オキシドレダクターゼモチーフは、以下の一般構造:Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-を有し、式中、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、K又はHであり、より好ましくは、Kであり、mは、1、0、及び2を含む群から選択される整数であり、
Xは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、K、H、R、及び非天然の塩基性アミノ酸を含む群から選択され、好ましくは、K又はHであり、より好ましくは、Rであり、
nは、0~6から、好ましくは、0~3から選択される整数であり、もっとも好ましくは、2である。好ましい実施形態において、前記モチーフは、[CST]-XX-C-(配列番号1)又はC-XX-[CST]-(配列番号2)を含み、式中、Xは、任意のアミノ酸である。
【0142】
「塩基性アミノ酸」という用語は、ブレンステッド・ローリー及びルイス塩基のように作用する任意のアミノ酸を指し、これには、天然の塩基性アミノ酸、例えば、アルギニン(R)、リジン(K)、若しくはヒスチジン(H)、又は
・ Fmoc-β-Lys(Boc)-OH(CAS番号219967-68-7)、L-オルニチン若しくはオルニチンと称されるFmoc-Orn(Boc)-OH(CAS番号109425-55-0)、Fmoc-β-Homolys(Boc)-OH(CAS番号203854-47-1)、Fmoc-Dap(Boc)-OH(CAS番号162558-25-0)、又はFmoc-Lys(Boc)OH(DiMe)-OH(CAS番号441020-33-3)等のリジンバリアント、
・ Fmoc-L-3Pal-OH(CAS番号175453-07-3)、Fmoc-β-HomoPhe(CN)-OH(CAS番号270065-87-7)、Fmoc-L-β-HomoAla(4-ピリジル)-OH(CAS番号270065-69-5)、又はFmoc-L-Phe(4-NHBoc)-OH(CAS番号174132-31-1)等のチロシン/フェニルアラニンバリアント、
・ Fmoc-Pro(4-NHBoc)-OH(CAS番号221352-74-5)又はFmoc-Hyp(tBu)-OH(CAS番号122996-47-8)等のプロリンバリアント、
・ Fmoc-β-Homoarg(Pmc)-OH(CAS番号700377-76-0)等のアルギニンバリアント
等であるがこれらに限定されない非天然の塩基性アミノ酸が、含まれる。
【0143】
本明細書に開示される免疫原性ペプチドは、典型的には、アレルゲン又は(自己)抗原に対する上昇した又は制御不能な免疫応答によって引き起こされる疾患を処置することにおいて使用されるものであり得る。典型的には、前記抗原性タンパク質は、自己抗原、可溶性同種因子、グラフトによって放出される同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されるウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原、又はアレルゲンである。より好ましくは、前記抗原性タンパク質は、1型糖尿病(T1D)、脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)若しくは視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)に関与する自己抗原である。
【0144】
「免疫障害」又は「免疫疾患」という用語は、免疫系の反応が、生物における機能不全又は非生理学的状況を担うか又はそれを持続させる、疾患である。とりわけ、アレルギー障害及び自己免疫疾患が、免疫障害に含まれる。
【0145】
「アレルギー疾患」又は「アレルギー障害」という用語は、本明細書において使用される場合、アレルゲンと称される特定の物質(例えば、花粉、咬傷、薬物、又は植物)に対する免疫系の過感受性反応によって特徴付けられる疾患を指す。アレルギーは、アトピー性個体患者が、感作されたアレルゲンに遭遇したときに観察される兆候及び症状を総合したものであり、これは、様々な疾患、特に、呼吸器疾患及び症状、例えば、気管支喘息の発症をもたらし得る。様々な種類の分類が存在しており、アレルギー障害は、ほとんどが、それが哺乳動物の身体のどこに生じるかに応じて異なる名称を有する。「過感受性」は、すでに感作されている抗原に曝露されたときに個体に生じる望ましくない(損傷を与える、不快感をもたらす、及び死に至ることもある)反応である;「即時型過感受性」は、lgE抗体の産生に依存し、したがって、アレルギーと同等である。
【0146】
「自己免疫疾患」又は「自己免疫障害」という用語は、生物が自身の構成要素である部分を(分子下レベルまで下がって)「自己」として認識することができないことに起因して、生物自身の細胞及び組織に対するその生物の異常な免疫応答により生じる疾患を指す。この疾患群は、器官特異的疾患及び全身性疾患という2つのカテゴリーに分割することができる。
【0147】
「アレルゲン」は、素因がある、特に、遺伝的素因がある個体(アトピー性)患者においてIgE抗体の産生を誘起する物質、通常、高分子又はタンパク質組成物として定義される。同様の定義は、Liebersら、(1996) Clin. Exp. Allergy 26、494-516において提示されている。
【0148】
「脱髄」という用語は、本明細書において使用される場合、ニューロンの軸索を包囲するミエリン鞘の損傷及び/又は分解を指し、これは、結果として、病変又はプラークの形成をもたらす。ミエリンは、脳、視神経、及び脊髄における神経線維の周囲の保護被覆として作用することが理解される。脱髄に起因して、罹患した神経に沿ったシグナル伝達が損なわれ(すなわち、遅延又は停止され)、神経学的症状、例えば、感覚、運動、認知、及び/又は他の神経学的機能における欠損が生じ得る。脱髄性疾患に罹患した患者の実際の症状は、疾患及び疾患の進行状態に応じて変動するであろう。これらとしては、霧視及び/又は複視、運動失調、クローヌス、ディサースリア、疲労、巧緻運動障害、手の麻痺、片側不全麻痺、生殖器感覚消失(genital anaesthesia)、協調運動障害(incoordination)、感覚異常(paresthesias/paraesthesia)、眼球麻痺、筋協調障害(impaired muscle coordination)、筋衰弱、感覚消失、視覚障害、神経学的症状、不安定な歩き方(歩行)、痙性対性不全麻痺(spastic paraparesis)、失禁、難聴、発話障害等を挙げることができる。
【0149】
したがって、本明細書において使用され、当該技術分野において一般に使用される、「脱髄性疾患」又は「脱髄性障害」は、ニューロンの障害、例えば、損傷、又はミエリン鞘が関与する、神経系の任意の病的状態を示す。脱髄性疾患は、中枢神経系脱髄性疾患及び末梢神経系に層別化され得る。代替的には、脱髄性疾患は、脱髄の原因に応じて分類され得る:ミエリンの破壊(脱髄性ミエリン破壊性)、又は異常及び変性ミエリン(ミエリン形成不全白質ジストロフィー)。脱髄性疾患の非限定的な例には、多発性硬化症(MS-(例えば、再発/寛解型多発性硬化症、二次進行性多発性硬化症、進行性再発型多発性硬化症、一次進行性多発性硬化症、及び急性劇症多発性硬化症)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパチー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導型中枢神経系ニューロパチー、橋中心ミエリン溶解(Central pontine myelinolysis)、ミエロパチー、例えば、脊髄癆(tabes dorsalis)、白質ジストロフィー、例えば、副腎白質ジストロフィー、白質脳症、例えば、進行性多巣性白質脳症(PML)、並びに風疹誘導型精神遅滞がある。当業者には、上述の注釈のうちのいくつかが、同一若しくは類似の分子レベルでの異常なプロセスのセット、及び/又は同一若しくは類似の(臨床)症状セットを特徴とする疾患群を示す一般的な分類名称であることが理解される。脱髄性障害を有するヒト患者は、視覚障害、麻痺、四肢脱力、振戦若しくは痙縮、耐暑性低下、発話障害、失禁、めまい、又は固有受容感覚(例えば、平衡感覚、協調運動、四肢位置感覚)障害等であるがこれらに限定されない、脱髄性障害の1つ又は複数の症状を有し得る。脱髄性障害の家族歴を有する(例えば、脱髄性障害の遺伝的素因がある)か、又は上述の脱髄性障害の軽度若しくは頻繁ではない症状を示す、ヒト(例えば、ヒト患者)は、本方法の目的で、脱髄性障害(例えば、多発性硬化症)を発症するリスクにあると考えることができる。本開示の文脈において好ましい脱髄性疾患は、多発性硬化症(MS)又は視神経脊髄炎(NMO)を含むがこれらに限定されない、MOG自己抗原によって引き起こされるか、又は抗MOG抗体が関与するものである。
【0150】
「多発性硬化症」という用語は、本明細書及び当該技術分野において「MS」と略されるが、中枢神経系に罹患する自己免疫障害を示す。MSは、若齢成人におけるもっとも一般的な非外傷性身体障害性疾患であり(Dobson及びGiovannoni、(2019) Eur. J. Neurol. 26(1)、27-40)、中枢神経系に罹患するもっとも一般的な自己免疫障害(Berer及びKrishnamoorthy (2014) FEBS Lett. 588(22)、4207-4213)であると考えられている。MSは、身体的なものから精神的なもの、精神医学的な問題までの範囲に及ぶ多数の異なる症状によって対象に現れ得る。典型的な症状としては、霧視又は複視、筋衰弱、片目の視力消失、並びに協調運動及び感覚の困難が挙げられる。ほとんどの症例において、MSは、二段階性の疾患であると考えられており、初期の炎症が、疾患の再発-寛解をもたらし、遅発する神経変性が、非再発性進行、すなわち、二次及び一次進行性MSを引き起こす。この分野において進歩がなされているが、この疾患の決定的な根本的原因はこれまでわかっておらず、150を上回る単一ヌクレオチド多型が、MS感受性と関連付けられている(International Multiple Sclerosis Genetics Consortium Nat Genet. (2013). 45(11):1353-60)。ビタミンD欠乏、喫煙、紫外線B (UVB)曝露、小児肥満、及びエプスタイン・バーウイルスによる感染が、疾患の発症に寄与することが報告されている(Ascherio (2013) Expert Rev Neurother. 13(12 Suppl)、3-9)。
【0151】
したがって、MSは、再発性(炎症が主要な特徴である)から進行性(神経変性が主要)に及ぶ範囲内に存在する単一の疾患とみなすことができる。したがって、本明細書において使用される多発性硬化症という用語は、疾患過程分類の任意の種類に属する任意のタイプの多発性硬化症を包含する。具体的には、本発明は、臨床的孤立症候群(CIS)、再発寛解性MS(RRMS)、二次進行性MS(SPMS)、一次進行性MS(PPMS)、及び更にはMSが疑われる放射線学的孤立症候群(RIS)と診断されたか、又はその疑いのある患者に対する強力な治療戦略となることが想定される。厳密にはMSの疾患過程とは考えられないが、RISは、脳及び/又は脊髄の磁気共鳴イメージング(MRI)で、MS病変部に対応し、他の診断によって明白に説明できない異常を示す対象を分類するために使用される。CISは、中枢神経系における炎症及び脱髄によって引き起こされる神経学的症状の最初のエピソード(24時間超にわたって持続すると定義される)である。RISによると、CISに分類された対象は、MSの発症が継続される場合もされない場合もあり、脳MRIでMS様病変を示している対象は、MSを発症する可能性がより高い。RRMSは、MSのもっとも一般的な疾患過程であり、MSを有する対象のうち85%が、RRMSと診断されている。RRMSと診断された患者は、本発明の観点で、好ましい患者群である。RRMSは、新しいか又は増加する神経学的症状の発作、換言すると再発又は増悪によって特徴付けられる。RRMSにおいて、前記再発には、症状の部分的若しくは完全な寛解の期間が続き、これらの寛解期間中には、疾患の進行は経験及び/又は観察されない。RRMSは、更に、活動性RRMS(再発及び/若しくは新しいMRI活動の根拠)、非活動性RRMS、RRMSの悪化(再発後の指定された期間にわたる身体障害の悪化)、又はRRMSの悪化なしとして分類される。RRMSと診断された対象の一部分は、SPMS疾患過程へと進行し、これは、神経学的機能の進行的な悪化、すなわち、経時的な身体障害の蓄積によって特徴付けられる。活動性(再発及び/若しくは新しいMRI活動)、非活動性、進行性(経時的な疾患の悪化)、又は非進行性SPMSといった、SPMSの下位分類を作製することができる。最終的に、PPMSは、初期の再発又は寛解がなく、神経学的機能の悪化、及びしたがって症状の発症以来の身体障害の蓄積によって特徴付けられる、MS疾患過程である。活動性PPMS(時折の再発及び/新しいMRI活動)、非活動性PPMS、進行性PPMS(新しいMRI活動に関係なく、経時的な疾患の悪化の根拠がある)、及び非進行性PPMSといった更なるPPMS下位群を形成してもよい。一般に、MS疾患過程は、再発及び寛解の期間の観点で、重症度(再発の場合)及び持続期間の両方に関して、実質的な対象間での変動性によって特徴付けられる。
【0152】
いくつかの疾患を改変する治療法が、MSに利用可能であり、したがって、本発明は、代替的な処置戦略として、又はこれらの既存の治療法と組み合わせて、使用することができる。活性医薬成分の非限定的な例としては、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、グラチラマー酢酸塩、グラチラマー酢酸塩、ペグインターフェロンベータ-1a、テリフルノミド、フィンゴリモド、クラドリビン、シポニモド、フマル酸ジメチル、フマル酸ジロキシメル、オザニモド、アレムツズマブ、ミトキサントロン、オクレリズマブ、及びナタリズマブが挙げられる。代替的には、本発明は、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、及び副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)等であるがこれらに限定されない、再発の管理を目的とする処置又は医薬と組み合わせて使用され得る。更に、本発明は、特定の症状の緩和を目的とする治療法と組み合わせて使用されてもよい。非限定的な例としては、膀胱の問題、消化管機能障害、鬱、めまい、空間識失調、感情変化、疲労、掻痒、疼痛、性的問題、痙縮、振戦、及び歩行困難からなる群から選択される症状を改善又は回避することを目的とする医薬が挙げられる。
【0153】
MSは、1)中枢神経系における病変の形成、2)炎症、及び3)ニューロンのミエリン鞘の分解という3つの絡み合った顕著な特徴によって特徴付けられる。従来的には、中枢神経系及び白質の脱髄性疾患と考えられていたが、より最近の報告では、皮質及び深部の灰白質の脱髄が、白質の脱髄を上回り得ることがわかってきた(Kutzelniggら、(2005). Brain. 128(11)、2705-2712)。2つの主要な仮説は、MSが分子レベルでどのようにして生じるかに関して仮定している。一般的に許容されている「外から内への仮説」は、中枢神経系へと遊走し、疾患プロセスを開始する末梢自己反応性エフェクターCD4+ T細胞の活性化に基づく。中枢神経系に入ると、前記T細胞は、APCによって局所的に再活性化され、更なるT細胞及びマクロファージを動員して、炎症性病変を構築する。注目すべきことに、MS病変は、病変の縁部に主として見出されるCD8+ T細胞及び病変のより中心部で見出されるCD4+ T細胞を含むことが示されている。これらの細胞は、脱髄、オリゴデンドロサイト破壊、及び軸索損傷を引き起こし、神経学的機能不全をもたらすと考えられている。加えて、免疫調節性ネットワークが、炎症を制限し、修復を開始するようにトリガーされ、それによって、臨床寛解によって反映される少なくとも部分的なミエリン再形成が生じる。いずれにせよ、適切な処置なしには、更なる発作により疾患進行がもたらされることが多い。
【0154】
MSの発症は、患者のMRIにおける明らかな古く不活性な病変の発生が典型的であることからわかるように、最初の臨床症状が検出されるよりもはるかに前に起こると考えられている。診断方法の開発が進んだことにより、MSは、現在では、疾患の臨床症状が出るよりも更に前に検出することができる(すなわち、前症候性MS)。本発明の文脈において、「MSの処置」及び類似の表現は、症候性及び前症候性の両方のMSの処置及びそのための処置戦略を想定する。具体的には、免疫原性ペプチド及び/又は結果として得られる細胞溶解性CD4+ T細胞が、前症候性MS患者を処置するために使用される場合、疾患は、臨床症状が部分的又は更には完全に回避され得るような早期段階で停止される。対象がインターフェロンベータに完全に応答性ではないMSもまた、「MS」という用語に包含される。免疫系によって攻撃される、疾患を引き起こす主要な抗原は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、及びオリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)である。
【0155】
「視神経脊髄炎」又は「NMO」及び「NMOスペクトル障害(NMOSD)」という用語は、「デビック病」としても知られており、白血球及び抗体が、主として視神経及び脊髄を攻撃するが、脳も攻撃し得る、自己免疫障害を指す(Wingerchuk 2006、Int MS J. 2006 May;13(2):42-50において考察されている)。視神経の損傷により、疼痛及び視力消失を引き起こす腫脹及び炎症が生じ、脊髄の損傷により、脚又は腕の衰弱又は麻痺、感覚消失、並びに膀胱及び消化管機能の問題が引き起こされる。NMOは、再発寛解性疾患である。再発期において、視神経及び/又は脊髄への新たな損傷により、身体障害の蓄積がもたらされ得る。MSとは異なり、この疾患の進行期はない。したがって、発作を予防することが、良好な長期予後に極めて重要である。抗MOG抗体と関連する症例では、抗MOG抗体が、ミエリン鞘への攻撃をトリガーし、脱髄を引き起こし得ると考えられている。症例の大半において、NMOの原因は、自己抗原に対する特異的な攻撃に起因する。対象の3分の1までもが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)と称されるミエリンの成分に対する自己抗体に関して陽性であり得る。抗MOG関連NMOを有する人物も、同様に、横断性脊髄炎及び視神経炎のエピソードを有する。
【0156】
「リウマチ性関節炎」又は「RA」という用語は、様々な関節(もっとも一般的には、手、手首、及び膝)における疼痛、腫脹、こわばり、及び機能消失を引き起こす、自己免疫性炎症性疾患である。それぞれの関節の滑膜が、炎症した状態となり、組織損傷、並びに慢性疼痛、不安定(unsteadiness)、及び変形を引き起こす。一般に、両側性/対称性の疾患進行パターンがある(例えば、両手又は両膝に罹患する)。RAはまた、眼、口、肺、及び心臓を含む、関節外部位に罹患することがある。患者は、症状の急性悪化(フレアと称される)を経験し得るが、早期介入及び適切な処置により、症状は、ある特定の期間、緩和され得る(Sana Iqbalら、2019、US Pharm. 2019;44(1)(Specialty&Oncology suppl):8-11によって考察されている)。免疫系によって攻撃されるこの疾患に関与する抗原は、多様であるが、いくつかの例としては、GRP78、HSP60、60kDaシャペロニン2、ゲルゾリン、キチナーゼ-3様タンパク質1、カテプシンS、血清アルブミン、及びカテプシンDがある。
【0157】
「1型糖尿病」(T1D)又は「糖尿病1型」(「1型真性糖尿病」若しくは「免疫媒介性糖尿病」としても知られているか、又は以前は「若年性糖尿病」若しくは「インスリン依存性糖尿病」としても知られていた)という用語は、典型的に、小児期の感受性個体において発症する自己免疫障害である。ほとんどのインスリン産生膵ベータ細胞が自己免疫機序により破壊されることが、T1D発症機序の根底にある。簡単に述べると、生物は、インスリン産生を担う膵ベータ細胞に対する免疫寛容を消失し、主として細胞に媒介される、自己抗体の産生と関連する免疫応答が誘導され、これによって、ベータ細胞の自己破壊がもたらされる。免疫系によって攻撃されるこの疾患に関与する主な抗原は、(プロ)インスリンであるが、他の例として、GAD65、GAD67、IA-2(ICA512)、IA-2(ベータ/フォグリン)、IGRP、クロモグラニン、ZnT8、及びHSP-60がある。
【0158】
「治療有効量」という用語は、患者において所望される治療又は予防作用をもたらす、本発明のペプチドをコードする非免疫原性RNA分子又はその誘導体の量を指す。例えば、疾患又は障害に関連して、これは、疾患又は障害の1つ又は複数の症状をある程度低減させ、より具体的には、部分的又は完全にのいずれかで、疾患又は障害と関連するか又はその原因である生理学的又は生化学的パラメーターを正常に戻す、量である。典型的には、治療有効量は、正常な生理学的状況の改善又は回復をもたらすであろう、本発明の非免疫原性RNA又はその誘導体の量である。
【0159】
RNAは、好ましくは、塩化ナトリウムを含む好適な緩衝液におけるRNAの筋肉内注射を通じて投与される。
【0160】
「天然の」という用語は、ペプチドに言及する場合、配列が、天然に存在するタンパク質(野生型又は突然変異体)のフラグメントと同一であるという事実に関する。それとは対照的に、「人工」という用語は、天然に存在しない配列を指す。人工配列は、天然に存在する配列内の1つ若しくは複数のアミノ酸の変更/欠失/挿入等の限定された改変によって、又は天然に存在する配列のN若しくはC末端のアミノ酸の付加/除去によって、天然の配列から得られる。
【0161】
この文脈において、ペプチドフラグメントは、典型的にはエピトープスキャニングの状況において、抗原から生成されることが認識される。偶然にも、このようなペプチドは、それらの配列内に、T細胞エピトープ(MHCクラスIIエピトープ又はCD1d結合エピトープ)を含み得、それらの近傍に、本明細書に定義される改変されたオキシドレダクターゼモチーフを有する配列を含み得る。代替的には、前記エピトープと前記オキシドレダクターゼモチーフとの間には、多くとも11個のアミノ酸、多くとも7個のアミノ酸、多くとも4個のアミノ酸、多くとも2個のアミノ酸のアミノ酸配列が存在し得るか、又は更には0個のアミノ酸が存在してもよい(換言すると、エピトープ及びオキシドレダクターゼモチーフ配列が、互いにすぐに隣接している)。好ましい実施形態において、そのような天然に存在するペプチドは、除外される。
【0162】
アミノ酸は、本明細書において、それらの完全な名称、それらの三文字の略語、又はそれらの一文字の略語で言及される。
【0163】
アミノ酸配列のモチーフは、Prositeの形式に従って、本明細書では記述される。モチーフは、配列の特定の部分におけるある特定の配列変動性を説明するために使用される。「X」という符号は、任意のアミノ酸が許容される位置に使用される。選択肢は、所与の位置に関して許容されるアミノ酸を角括弧(「[]」)間に列挙することによって示される。例えば、[CST]は、Cys、Ser、又はThrから選択されるアミノ酸を示す。選択肢として除外されるアミノ酸は、波括弧(「{ }」)間に列挙することによって示される。例えば、{AM}は、Ala及びMetを除く任意のアミノ酸を示す。モチーフ内の異なるエレメントは、任意選択で、ハイフン(-)によって互いに分離される。本明細書に開示されるモチーフの文脈において、開示される一般的なオキシドレダクターゼモチーフは、典型的には、モチーフ外の異なるエレメントとの接続を形成しないハイフンが付随する。これらの「オープンな」ハイフンは、モチーフの、免疫原性ペプチドの別の部分、例えば、リンカー配列又はエピトープ配列との物理的接続の位置を示す。例えば、「Zm-C-Xn-[CST]-」形式のモチーフは、[CST]が、免疫原性ペプチドの他の部分に接続されるアミノ酸であり、Zが、免疫原性ペプチドの末端アミノ酸であることを示す。好ましい物理的接続は、ペプチド結合である。モチーフ内の同一なエレメントの反復は、そのエレメントの後ろに、括弧に入れた数値又は数値範囲を置くことによって示すことができる。これに関して、「Xn」は、n個の「X」を指す。例えば、X(2)は、X-X又はXXに対応し、X(2, 5)は、2、3、4、又は5個のXアミノ酸に対応し、A(3)は、A-A-A又はAAAに対応する。アミノ酸間で区別を行うために、オキシドレダクターゼモチーフの外側のものは、外部アミノ酸と称され、オキシドレダクターゼモチーフ内のものは、内部アミノ酸と称される。別途示されない限り、Xは、任意のアミノ酸、具体的には、L-アミノ酸、より具体的には、20個の天然に存在するL-アミノ酸のうちの1つを表す。
【0164】
T細胞エピトープ、例えば、MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープ(若しくはCD1d結合ペプチドエピトープ)及び還元活性を有する改変されたペプチドモチーフ配列を含むペプチドをコードする非免疫原性RNAは、それぞれ、抗原提示細胞に対する抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞、細胞溶解性NKT細胞の集団を生成することができる。
【0165】
したがって、そのもっとも広い意味で、本発明は、免疫反応をトリガーする能力を有する抗原(自己又は非自己)の少なくとも1つのT細胞エピトープ(MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープ)と、ペプチドジスルフィド結合に対する還元活性を有する改変されたオキシドレダクターゼ配列モチーフとを含むペプチドをコードする非免疫原性RNAに関する。T細胞エピトープ及び改変されたオキシドレダクターゼモチーフ配列は、ペプチドにおいて互いにすぐに隣接していてもよく、又は任意選択で、1つ若しくは複数のアミノ酸(いわゆるリンカー配列)によって分離していてもよい。任意選択で、ペプチドは、更に、エンドソーム標的化配列及び/又は追加の「フランキング」配列を含む。
【0166】
非免疫原性RNAは、免疫反応をトリガーする能力を有する抗原(自己又は非自己)のT細胞エピトープ、及び改変されたオキシドレダクターゼモチーフを含む、ペプチドをコードする。ペプチドにおけるモチーフ配列の還元活性は、スルフヒドリル基を還元するその能力について、例えば、インスリンの可溶性が還元時に変更されるインスリン可溶性アッセイにおいて、又は蛍光標識化されたインスリン等の基質を用いて、アッセイすることができる。そのようなアッセイの例は、蛍光性ペプチドを使用しており、Tomazzolliら、(2006) Anal. Biochem. 350、105-112に記載されている。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらが、ジスルフィド架橋によって互いに共有結合的に結合されると、自己消光性となる。本発明によるペプチドによって還元されると、還元された個々のペプチドは、再度蛍光性となる。
【0167】
改変されたオキシドレダクターゼモチーフは、T細胞エピトープのアミノ末端側又はT細胞エピトープのカルボキシ末端側に位置し得る。
【0168】
還元活性を有するペプチドフラグメントは、グルタレドキシン、ヌクレオレドキシン、チオレドキシン、及び他のチオール/ジスルフィドオキシドレダクターゼを含む、小さなジスルフィド還元酵素であるチオレダクターゼにおいて見出される(Holmgren (2000) Antioxid. Redox Signal. 2、811-820、Jacquotら、(2002) Biochem. Pharm. 64、1065-1069)。それらは、多機能性であり、遍在性であり、多数の原核生物及び真核生物において見出される。それらは、例えば、Fomenkoら、((2003) Biochemistry 42、11214-11225、Fomenkoら、(2002) Prot. Science 11、2285-2296)(Xは、任意のアミノ酸を表す)、並びに国際公開第2008/017517号(1位及び/又は4にシステインを含む)から周知の保存された活性ドメインコンセンサス配列内のレドックス活性システインを通じて、タンパク質(例えば、酵素)上のジスルフィド結合に対する還元活性を発揮することが知られている。したがって、モチーフは、CXX[CST](配列番号111)又は[CST]XXC(配列番号110)のいずれかである。そのようなドメインは、より大きなタンパク質、例えば、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼCにおいても見出される。本発明は、更なる効力及び活性を求めて、前記モチーフを再設計した。
【0169】
「システイン」、「C」、「セリン」、「S」、及び「スレオニン」、「T」という用語は、本明細書に開示されるオキシドレダクターゼモチーフに存在するアミノ酸残基に関して使用される場合、それぞれ、天然に存在するシステイン、セリン、又はスレオニンアミノ酸を指す。異なって明確に示されない限り、前記用語は、したがって、化学的に改変されたシステイン、セリン、及びスレオニン、例えば、モチーフのアミノ酸残基のN末端アミド又はC末端カルボキシ基のいずれかに、アセチル、メチル、エチル、又はプロピオニル基を有するように改変されたものを除外する。
【0170】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドにおいて、オキシドレダクターゼモチーフは、エピトープがMHC溝に適合したときに、オキシドレダクターゼモチーフがMHC結合溝の外側にとどまるように位置付けられる。オキシドレダクターゼモチーフは、ペプチド内でエピトープ配列にすぐに隣接している[換言すると、モチーフとエピトープとの間にゼロ個のアミノ酸のリンカー配列がある]か、又は5個以下のアミノ酸のアミノ酸配列を含むリンカーによってT細胞エピトープから分離されている。より具体的には、リンカーは、1個、2個、3個、4個、又は5個のアミノ酸を含む。特定の実施形態は、エピトープ配列と改変されたオキシドレダクターゼモチーフ配列との間に0個、1個、2個、又は3個のアミノ酸のリンカーを有するペプチドである。ペプチドリンカーとは別に、他の有機化合物を、ペプチドの部分を互いに(例えば、改変されたオキシドレダクターゼモチーフ配列をT細胞エピトープ配列に)連結させるためのリンカーとして使用することができる。
【0171】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、T細胞エピトープ及びオキシドレダクターゼモチーフを含む配列のN末端側又はC末端側に、追加の短いアミノ酸配列を更に含み得る。そのようなアミノ酸配列は、一般に、本明細書において「フランキング配列」と称される。フランキング配列は、エピトープとエンドソーム標的化配列との間、及び/又は改変されたオキシドレダクターゼモチーフとエンドソーム標的化配列との間に位置付けられ得る。エンドソーム標的化配列を含まないある特定のペプチドにおいて、短いアミノ酸配列が、ペプチドにおける改変されたオキシドレダクターゼモチーフ及び/又はエピトープ配列のN末端側及び/又はC末端側に存在してもよい。より具体的には、フランキング配列は、1~7個のアミノ酸の配列、もっとも具体的には、2個のアミノ酸の配列である。
【0172】
本発明のある特定の実施形態において、非免疫原性RNAは、1つのT細胞エピトープ配列及び単一のオキシドレダクターゼモチーフ配列を含むペプチドをコードする。代替的には、オキシドレダクターゼモチーフは、T細胞エピトープ配列のN末端及びC末端の両方に提供されてもよい。
【0173】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドに想定される他の変動性としては、それぞれのエピトープ配列が、改変されたオキシドレダクターゼモチーフの前及び/又は後にあるT細胞エピトープ配列のリピート(例えば、「オキシドレダクターゼモチーフ-エピトープ」のリピート又は「オキシドレダクターゼモチーフ-エピトープ-オキシドレダクターゼモチーフ」のリピート)を含むペプチドが挙げられる。本明細書において、オキシドレダクターゼモチーフは、すべてが同じ配列を有し得るが、これは、必須ではない。
【0174】
典型的には、本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、1つのT細胞エピトープしか含まない。以下に記載されるように、タンパク質配列内のT細胞エピトープは、機能性アッセイ及び/又は1つ若しくは複数のインシリカ予測アッセイによって特定することができる。T細胞エピトープ配列におけるアミノ酸は、MHCタンパク質の溝に結合する位置又はCD1d分子に結合する位置に従って番号付けされる。ペプチド内に存在するMHCクラスII T細胞エピトープは、典型的には、7~30個のアミノ酸、好ましくは、9~30個のアミノ酸、例えば、9~25個のアミノ酸、なおもより具体的には、9~16個のアミノ酸からなり、なおももっとも具体的には、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、又は16個のアミノ酸からなる。ペプチド内に存在するNKT細胞エピトープは、典型的には、7~30個のアミノ酸、例えば、7~25個のアミノ酸、なおもより具体的には、7~16個のアミノ酸からなり、なおももっとも具体的には、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、又は16個のアミノ酸からなる。
【0175】
より具体的な実施形態において、T細胞エピトープは、9個、10個、又は11個のアミノ酸の配列からなる。更に具体的な実施形態において、T細胞エピトープは、MHCクラスII分子によってT細胞に提示されるエピトープ[MHCクラスII制限T細胞エピトープ]である。典型的には、T細胞エピトープ配列は、MHC IIタンパク質の裂溝に適合するオクタペプチド、又はより具体的にはノナペプチド配列を指す。
【0176】
より具体的な実施形態において、T細胞エピトープは、7個、8個、又は9個のアミノ酸の配列からなる。更に具体的な実施形態において、T細胞エピトープは、CD1d分子によって提示されるエピトープ[NKT細胞エピトープ]である。典型的には、NKT細胞エピトープ配列は、CD1dタンパク質に結合しそれによって提示される、7個のアミノ酸のペプチド配列を指す。
【0177】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドのT細胞エピトープは、タンパク質の天然のエピトープ配列に対応し得るか又はその改変されたバージョンであり得るかのいずれかであるが、ただし、改変されたT細胞エピトープが、天然のT細胞エピトープ配列と同様に、MHC裂溝内に結合するか又はCD1d受容体に結合するその能力を保持することを条件とする。改変されたT細胞エピトープは、MHCタンパク質又はCD1d受容体に対して、天然のエピトープと同じ結合親和性を有し得るが、低下した親和性を有してもよい。具体的には、改変されたペプチドの結合親和性は、もともとのペプチドの10分の1を下回らず、より具体的には、5分の1を下回らない。本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、タンパク質複合体に対して安定化作用を有する。したがって、ペプチド-MHC又はCD1d複合体の安定化作用は、改変されたエピトープのMHC又はCD1d分子に対する親和性の低下を補う。
【0178】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドにおいて、ペプチド内のT細胞エピトープ及び還元性化合物を含む配列は、MHCクラスII決定基内でのプロセシング及び提示のためのペプチドの後期エンドソームへの取り込みを促進するアミノ酸配列(又は別の有機化合物)に更に連結されてもよい。後期エンドソーム標的化は、タンパク質の細胞質尾部に存在する、十分に特定されたペプチドモチーフに対応するシグナルによって媒介される。後期エンドソーム標的化配列は、MHCクラスII分子による抗原由来のT細胞エピトープのプロセシング及び効率的な提示を可能にする。そのようなエンドソーム標的化配列は、例えば、gp75タンパク質(Vijayasaradhiら、(1995) J. Cell. Biol. 130、807-820)、ヒトCD3ガンマタンパク質、HLA-BM 11(Copierら、(1996) J. lmmunol. 157、1017-1027)、DEC205受容体の細胞質尾部(Mahnkeら、(2000) J. Cell Biol. 151、673-683)内に含まれる。エンドソームへの分類シグナルとして機能するペプチドの他の例は、Bonifacio及びTraub (2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395-447の概説に開示されている。代替的には、配列は、タンパク質由来のサブドミナント又はマイナーT細胞エピトープのものであってもよく、これは、抗原に対するT細胞応答を弱めることなく、後期エンドソームへの取り込みを促進する。後期エンドソーム標的化配列は、効率的な取り込み及びプロセシングのために、抗原由来のペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかに位置付けることができ、また、フランキング配列、例えば、最大10個のアミノ酸のペプチド配列を通じて連結され得る。標的化目的でマイナーT細胞エピトープを使用する場合、後者は、典型的には、抗原由来のペプチドのアミノ末端に位置付けられる。
【0179】
代替的には、本発明は、CD1d分子に結合する能力を付与する疎水性残基を含む、本明細書に定義されるNKTエピトープを含むペプチドをコードする非免疫原性RNAの産生に関する。投与すると、そのようなRNAは、(未成熟)樹状細胞へと標的化され、それが後期エンドソームへと指向されるペプチドに翻訳され、そこで、CD1dにロードされ、APCの表面上に提示される。
【0180】
したがって、本発明は、抗原性タンパク質のペプチドをコードする非免疫原性RNA及び特異的免疫反応を誘起することにおけるその使用を想起する。これらのペプチドは、それらの配列内に、すなわち、多くとも10個、好ましくは、7個以下のアミノ酸によって分離された、還元性化合物及びT細胞エピトープを含む、タンパク質のフラグメントに対応し得る。代替的には、またほとんどの抗原性タンパク質については、本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、N末端又はC末端で抗原性タンパク質のT細胞エピトープに(それに直接的に隣接するか、又は多くとも10個、より具体的には多くとも7個のアミノ酸のリンカーを用いてのいずれかで)連結された、還元性化合物、より具体的には、本明細書に記載される還元性の改変されたオキシドレダクターゼモチーフを含む。更に、天然に存在する配列と比較して、タンパク質のT細胞エピトープ配列及び/又は改変されたオキシドレダクターゼモチーフは、改変されていてもよく、並びに/又は1つ若しくは複数のフランキング配列及び/若しくは標的化配列が、導入(若しくは改変)されていてもよい。したがって、本発明の特徴が目的の抗原性タンパク質の配列内に見出され得るかどうかに応じて、非免疫原性RNAは、「人工」又は「天然に存在する」配列を含み得るペプチドをコードする。
【0181】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、長さが実質的に変動し得る。ペプチドの長さは、9個、10個、又は11個のアミノ酸で変動し得る、すなわち、2個のアミノ酸(CC)の最小限のオキシドレダクターゼモチーフに隣接して、それぞれ、7個、8個、又は9個のアミノ酸から、最大12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、又は最大50個のアミノ酸のNKT細胞又はMHCクラスII T細胞エピトープからなる。
【0182】
具体的な実施形態において、本発明の非免疫原性RNAによってコードされる完全なペプチドは、9個のアミノ酸から、最大20個、25個、30個、40個、50個、75個、又は100個のアミノ酸からなる。例えば、本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、40個のアミノ酸のエンドソーム標的化配列、約2個のアミノ酸のフランキング配列、2~約11個のアミノ酸の本明細書に記載されるオキシドレダクターゼモチーフ、4~7個のアミノ酸のリンカー、及び最小7個、8個、又は9個のアミノ酸のT細胞エピトープペプチドを含み得る。より具体的には、還元性化合物が、本明細書に記載される改変されたオキシドレダクターゼモチーフである場合、エンドソーム標的化配列を含まず、任意選択でリンカーによって接続されたエピトープ及び改変されたオキシドレダクターゼモチーフを含む(人工又は天然の)配列(本明細書において、「エピトープ-改変されたオキシドレダクターゼモチーフ」配列と称される)の長さは、極めて重要である。「エピトープ-改変されたオキシドレダクターゼモチーフ」は、より具体的には、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、又は19個のアミノ酸の長さを有する。そのような9個、10個、11個、12個、13個、又は14~19個のアミノ酸のペプチドは、任意選択で、サイズの重要性が低いエンドソーム標的化シグナルに連結され得る。後期エンドソーム標的化は、タンパク質の細胞質尾部に存在する、十分に特定されたペプチドモチーフ、例えば、ジロイシンベースの[DE]XXXL[LI](配列番号110)若しくはDXXLL(配列番号111)モチーフ(例えば、DXXXLL(配列番号112))、チロシンベースのYXX0(配列番号113)モチーフ、又はいわゆる酸性クラスターモチーフに対応する、シグナルによって媒介される。0という符号は、かさ高い疎水性側鎖を有するアミノ酸残基、例えば、Phe、Tyr、及びTrpを表す。後期エンドソーム標的化配列は、MHCクラスII又はCD1d分子による抗原由来のT細胞エピトープのプロセシング及び効率的な提示を可能にする。
【0183】
上記に詳述されるように、具体的な実施形態において、本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、T細胞エピトープ配列に連結された本明細書に記載される還元性の改変されたオキシドレダクターゼモチーフを含む。
【0184】
更に具体的な実施形態において、本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、それらの天然の配列内にレドックス特性を有するアミノ酸配列を含まないT細胞エピトープを含むペプチドである。
【0185】
しかしながら、代替的な実施形態において、T細胞エピトープは、エピトープのMHC裂溝又はCD1d分子への結合を確実にする任意のアミノ酸配列を含み得る。抗原性タンパク質の目的のエピトープが、改変されたオキシドレダクターゼモチーフ、例えば、本明細書に記載されるものを、そのエピトープ配列内に含む場合、本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、(裂溝内に埋め込まれているエピトープ内に存在する改変されたオキシドレダクターゼモチーフとは対照的に)結合したオキシドレダクターゼモチーフが還元活性を確実にし得るように、N末端又はC末端でエピトープ配列に連結された本明細書に記載されるオキシドレダクターゼモチーフの配列及び/又は別の還元性配列を含む。
【0186】
したがって、T細胞エピトープ及びモチーフは、すぐに隣接しているか、又は互いに分離されておりオーバーラップしない。「すぐに隣接している」又は「分離されている」の概念を評価するために、MHC裂溝又はCD1d分子に適合する7個、8個、又は9個のアミノ酸配列を判定し、このオクタペプチド又はノナペプチドと改変されたオキシドレダクターゼモチーフとの間の距離を、判定する。
【0187】
一般に、本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、天然ではなく(したがって、タンパク質のフラグメントはそのようなものではない)、T細胞エピトープに加えて、本明細書に記載される改変されたオキシドレダクターゼモチーフを含む人工のペプチドであり、それによって、改変されたオキシドレダクターゼモチーフは、最大7個、もっとも具体的には最大4個又は最大2個のアミノ酸からなるリンカーによって、T細胞エピトープから分離されている。
【0188】
オキシドレダクターゼモチーフ及びMHCクラスII T細胞エピトープを含むペプチド(又はそのようなRNAを含む組成物)を哺乳動物に投与(すなわち、注射)すると、ペプチドが、抗原由来のT細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を誘起し、表面受容体の還元を通じてT細胞に更なるシグナルを提供することが、これまでに示されている。この最適を上回る活性化の結果として、T細胞は、T細胞エピトープを提示する細胞に対する細胞溶解特性、並びにバイスタンダーT細胞に対する抑制特性を獲得する。本発明は、ペプチド自体ではなく、そのようなペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与することによって、この原理を更に進める。
【0189】
加えて、オキシドレダクターゼモチーフ及びNKT細胞エピトープを含むペプチド(又はそのようなペプチドを含む組成物)を哺乳動物に投与(すなわち、注射)すると、ペプチドが、抗原由来のT細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を誘起し、CD1d表面受容体への結合を通じてT細胞に更なるシグナルを提供することが、示されている。この活性化の結果として、NKT細胞は、T細胞エピトープを提示する細胞に対する細胞溶解特性を獲得する。本発明は、ペプチド自体ではなく、そのようなペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与することによって、この原理を更に進める。
【0190】
このようにして、本発明に記載されるそのようなペプチドをコードする非免疫原性RNA又はRNAを含む組成物は、ヒトを含む哺乳動物の直接的な免疫付与に使用することができる。本発明は、したがって、本発明のそのようなペプチドをコードする非免疫原性RNA又は医薬として使用するためのそのようなRNAを含む組成物を提供する。したがって、本発明は、本発明による1つ若しくは複数のペプチドをコードする非免疫原性RNA又はそのようなRNAを含む組成物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、治療方法を提供する。
【0191】
本発明は、細胞溶解特性が付与された抗原特異的T細胞を、本明細書に記載される小さなペプチドをコードするRNAを用いた免疫付与によって誘起することができる、方法を提供する。(i)抗原由来のT細胞エピトープをコードする配列、及び(ii)レドックス特性を有するコンセンサス配列を含み、任意選択で、効率的なMHCクラスII提示又はCD1d受容体結合のためのペプチドの後期エンドソームへの取り込みを促進する配列も更に含む、ペプチドが、細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞を誘起することが、見出されている。本発明は、ペプチド自体ではなく、そのようなペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与することによって、この原理を更に進める。
【0192】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドの特性は、(自己)免疫反応の処置及び予防において、特に関心が持たれている。
【0193】
本明細書に記載されるペプチドをコードする非免疫原性RNA又はそのようなRNAを含む組成物は、医薬として、より具体的には、哺乳動物、より具体的にはヒトにおける免疫障害の予防又は処置のための医薬の製造に使用される。
【0194】
本発明は、免疫障害の処置又は予防の、そのような処置又は予防を必要とする哺乳動物における方法であって、本明細書に記載されるペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与する工程を含む、方法を記載する。本方法は、免疫障害の症状を低減させるように、免疫障害に罹患しているか又はそのリスクにある前記哺乳動物に、治療有効量の本発明のペプチドをコードする非免疫原性RNA、そのホモログ、又は誘導体を投与する工程を含む。ヒト並びに愛玩動物及び家畜動物といった動物の両方の処置が、想定される。ある実施形態において、処置しようとする哺乳動物は、ヒトである。上記で言及された免疫障害は、具体的な実施形態において、アレルギー疾患及び自己免疫疾患から選択される。
【0195】
本明細書に記載されるペプチドをコードする非免疫原性RNA、又は本明細書に定義されるそのようなRNAを含む医薬組成物は、好ましくは、皮下又は筋肉内投与を通じて投与される。
【0196】
一実施形態において、RNA又はそれを含む医薬組成物は、肘と肩との中間にある上腕の側部領域において、皮下(SC)注射され得る。2回以上の別個の注射が必要とされる場合、それらは、両腕に同時に投与することができる。
【0197】
一実施形態において、RNA又はそれを含む医薬組成物は、上腕の側部領域、好ましくは、腕の三角筋において、筋肉内(IM)注射され得る。2回以上の別個の注射が必要とされる場合、それらは、両腕に同時に投与することができる。
【0198】
本発明によるペプチドをコードする非免疫原性RNA又はそのようなRNAを含む医薬組成物は、治療有効用量で投与される。
【0199】
本発明の非免疫原性RNAによってコードされるペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフは、以下の一般式:
Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-によって定義され、本明細書に記載される態様において定義されるように、前記オキシドレダクターゼモチーフにおけるハイフン(-)は、リンカー若しくはエピトープのN末端、又はリンカー若しくはT細胞エピトープのC末端へのオキシドレダクターゼモチーフの結合点を示す。
【0200】
好ましい実施形態において、前記オキシドレダクターゼモチーフは、CC又はCXCであり、式中、Xは、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は非天然の塩基性アミノ酸であり得る。好ましくは、CXCモチーフにおけるXは、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、CXCモチーフにおけるXは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は限定されないが、
・ Fmoc-β-Lys(Boc)-OH(CAS番号219967-68-7)、L-オルニチン若しくはオルニチンとも称されるFmoc-Orn(Boc)-OH(CAS番号109425-55-0)、Fmoc-β-Homolys(Boc)-OH(CAS番号203854-47-1)、Fmoc-Dap(Boc)-OH(CAS番号162558-25-0)、又はFmoc-Lys(Boc)OH(DiMe)-OH(CAS番号441020-33-3)等のリジンバリアント、
・ Fmoc-L-3Pal-OH(CAS番号175453-07-3)、Fmoc-β-HomoPhe(CN)-OH(CAS番号270065-87-7)、Fmoc-L-β-HomoAla(4-ピリジル)-OH(CAS番号270065-69-5)、又はFmoc-L-Phe(4-NHBoc)-OH(CAS番号174132-31-1)等のチロシン/フェニルアラニンバリアント、
・ Fmoc-Pro(4-NHBoc)-OH(CAS番号221352-74-5)又はFmoc-Hyp(tBu)-OH(CAS番号122996-47-8)等のプロリンバリアント、
・ Fmoc-β-Homoarg(Pmc)-OH(CAS番号700377-76-0)等のアルギニンバリアント
といった非天然の塩基性アミノ酸である。
【0201】
CXCモチーフの具体的な例は、CHC、CKC、CRC、CGC、CAC、CVC、CLC、CIC、CMC、CFC、CWC、CPC、CSC、CTC、CYC、CNC、CQC、CDC、及びCECである。これらの例示的なCXCモチーフのうちのいずれか1つには、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)が先行してもよく、ここで、mは、0~3の整数、好ましくは、0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。そのようなモチーフの好ましい例は、KCHC、KCKC、KCRC、KCGC、KCAC、KCVC、KCLC、KCIC、KCMC、KCFC、KCWC、KCPC、KCSC、KCTC、KCYC、KCNC、KCQC、KCDC、KCEC、HCHC、HCKC、HCRC、HCGC、HCAC、HCVC、HCLC、HCIC、HCMC、HCFC、HCWC、HCPC、HCSC、HCTC、HCYC、HCNC、HCQC、HCDC、HCEC、RCHC、RCKC、RCRC、RCGC、RCAC、RCVC、RCLC、RCIC、RCMC、RCFC、RCWC、RCPC、RCSC、RCTC、RCYC、RCNC、RCQC、RCDC、及びRCEC(配列番号114~170)である。
【0202】
好ましい実施形態において、前記オキシドレダクターゼモチーフは、CX2C(配列番号171)、すなわち、CXXC、典型的には、CX1X2Cであり、式中、X1及びX2は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1及びX2は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、前記モチーフにおけるX1又はX2のうちの少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0203】
前記ZmCX1X2CモチーフにおけるX1X2アミノ酸連結の具体的な例は、PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH、及びRHである。
【0204】
これらの例示的なCX1X2Cモチーフのうちのいずれか1つには、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)が先行してもよく、ここで、mは、0~3の整数、好ましくは、0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0205】
ZmCX1X2Cモチーフの具体的な例は、HCX1X2C、KHCX1X2C、KCX1X2C、RCX1X2C、HCX1X2C、KCX1X2C、RCX1X2C、KKCX1X2C、KRCX1X2C、KHCX1X2C、KKCX1X2C、及びKRCX1X2C(配列番号172~183に対応する)である。
【0206】
ZmCXXCモチーフのより具体的な例は、CPYC(配列番号98)、HCPYC、KHCPYC、KCPYC、RCPYC、HCGHC、KCGHC、RCGHC、KKCPYC、KRCPYC、KHCGHC、KKCGHC、及びKRCGHC(配列番号24~35)である。
【0207】
好ましい実施形態において、前記オキシドレダクターゼモチーフは、CX3C(配列番号184)、すなわち、CXXXC、典型的には、CX1X2X3Cであり、式中、X1、X2、及びX3は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、及びX3は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、前記モチーフにおけるX1、X2、又はX3のうちの少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0208】
CXXXCモチーフの具体的な例は、CXPYC、CPXYC、及びCPYXCであり、Xは、任意のアミノ酸であり得、より好ましくは、
CXPYC、例えば:CKPYC、CRPYC、CHPYC、CGPYC、CAPYC、CVPYC、CLPYC、CIPYC、CMPYC、CFPYC、CWPYC、CPPYC、CSPYC、CTPYC、CCPYC、CYPYC、CNPYC、CQPYC、CDPYC、及びCEPYC(配列番号185~205);又は
CPXYC、例えば:CPKYC、CPRYC、CPHYC、CPGYC、CPAYC、CPVYC、CPLYC、CPIYC、CPMYC、CPFYC、CPWYC、CPPYC、CPSYC、CPTYC、CPCYC、CPYYC、CPNYC、CPQYC、CPDYC、CPEYC、及びCPLYC(配列番号206~227);又は
CPYXC、例えば:CPYKC、CPYRC、CPYHC、CPYGC、CPYAC、CPYVC、CPYLC、CPYIC、CPYMC、CPYFC、CPYWC、CPYPC、CPYSC、CPYTC、CPYCC、CPYYC、CPYNC、CPYQC、CPYDC、CPYEC、及びCPYLC(配列番号228~249)である。
【0209】
CXXXCモチーフの更なる具体的な例は、CXHGC、CHXGC、及びCHGXCであり、Xは、任意のアミノ酸であり得、より好ましくは、CXHGC、例えば:CKHGC、CRHGC、CHHGC、CGHGC、CAHGC、CVHGC、CLHGC、CIHGC、CMHGC、CFHGC、CWHGC、CPHGC、CSHGC、CTHGC、CCHGC、CYHGC、CNHGC、CQHGC、CDHGC、CEHGC、及びCKHGC(配列番号250~271);又は
CGXHC、例えば:CGKHC、CGRHC、CGHHC、CGGHC、CGAHC、CGVHC、CGLHC、CGIHC、CGMHC、CGFHC、CGWHC、CGPHC、CGSHC、CGTHC、CGCHC、CGYHC、CGNHC、CGQHC、CGDHC、CGEHC、及びCGLHC(配列番号272~293);又は
CHGXC、例えば:CHGKC、CHGRC、CHGHC、CHGGC、CHGAC、CHGVC、CHGLC、CHGIC、CHGMC、CHGFC、CHGWC、CHGPC、CHGSC、CHGTC、CHGCC、CHGYC、CHGNC、CHGQC、CHGDC、CHGEC、及びCHGLC(配列番号294~315)である。
【0210】
CXXXCモチーフの更なる具体的な例は、CXGPC、CGXPC、及びCGPXCであり、Xは、任意のアミノ酸であり得、より好ましくは、CXGPC、例えば:CKGPC、CRGPC、CHGPC、CGGPC、CAGPC、CVGPC、CLGPC、CIGPC、CMGPC、CFGPC、CWGPC、CPGPC、CSGPC、CTGPC、CCGPC、CYGPC、CNGPC、CQGPC、CDGPC、CEGPC、及びCKGPC(配列番号316~337);又は
CGXPC、例えば:CGKPC、CGRPC、CGHPC、CGGPC、CGAPC、CGVPC、CGLPC、CGIPC、CGMPC、CGFPC、CGWPC、CGPPC、CGSPC、CGTPC、CGCPC、CGYPC、CGNPC、CGQPC、CGDPC、CGEPC、及びCGLPC(配列番号338~359);又は
CGPXC、例えば:CGPKC、CGPRC、CGPHC、CGPGC、CGPAC、CGPVC、CGPLC、CGPIC、CGPMC、CGPFC、CGPWC、CGPPC、CGPSC、CGPTC、CGPCC、CGPYC、CGPNC、CGPQC、CGPDC、CGPEC、及びCGPLC(配列番号360~381)である。
【0211】
CXXXCモチーフの更なる具体的な例は、CXGHC、CGXHC、及びCGHXCであり、Xは、任意のアミノ酸であり得、より好ましくは、CXGHC、例えば:CKGHC、CRGHC、CHGHC、CGGHC、CAGHC、CVGHC、CLGHC、CIGHC、CMGHC、CFGHC、CWGHC、CPGHC、CSGHC、CTGHC、CCGHC、CYGHC、CNGHC、CQGHC、CDGHC、CEGHC、及びCKGHC(配列番号382~403);又は
CGXFC、例えば:CGKFC、CGRFC、CGHFC、CGGFC、CGAFC、CGVFC、CGLFC、CGIFC、CGMFC、CGFFC、CGWFC、CGPFC、CGSFC、CGTFC、CGCFC、CGYFC、CGNFC、CGQFC、CGDFC、CGEFC、及びCGLFC(配列番号404~425);又は
CGHXC、例えば:CGHKC、CGHRC、CGHHC、CGHGC、CGHAC、CGHVC、CGHLC、CGHIC、CGHMC、CGHFC、CGHWC、CGHPC、CGHSC、CGHTC、CGHCC、CGHYC、CGHNC、CGHQC、CGHDC、CGHEC、及びCGHLC(配列番号426~447)である。
【0212】
CXXXCモチーフの更なる具体的な例は、CXGFC、CGXFC、及びCGFXCであり、Xは、任意のアミノ酸であり得、より好ましくは、CXGFC、例えば:CKGFC、CRGFC、CHGFC、CGGFC、CAGFC、CVGFC、CLGFC、CIGFC、CMGFC、CFGFC、CWGFC、CPGFC、CSGFC、CTGFC、CCGFC、CYGFC、CNGFC、CQGFC、CDGFC、CEGFC、及びCKGFC(配列番号448~469);又は
CGXFC、例えば:CGKFC、CGRFC、CGHFC、CGGFC、CGAFC、CGVFC、CGLFC、CGIFC、CGMFC、CGFFC、CGWFC、CGPFC、CGSFC、CGTFC、CGCFC、CGYFC、CGNFC、CGQFC、CGDFC、CGEFC、及びCGLFC(配列番号470~491);又は
CGFXC、例えば:CGFKC、CGFRC、CGFHC、CGFGC、CGFAC、CGFVC、CGFLC、CGFIC、CGFMC、CGFFC、CGFWC、CGFPC、CGFSC、CGFTC、CGFCC、CGFYC、CGFNC、CGFQC、CGFDC、CGFEC、及びCGFLC(配列番号492~513)である。
【0213】
CXXXCモチーフの更なる具体的な例は、CXRLC、CRXLC、及びCRLXCであり、Xは、任意のアミノ酸であり得、より好ましくは、CXRLC、例えば:CKRLC、CRRLC、CHRLC、CGRLC、CARLC、CVRLC、CLRLC、CIRLC、CMRLC、CFRLC、CWRLC、CPRLC、CSRLC、CTRLC、CCRLC、CYRLC、CNRLC、CQRLC、CDRLC、CERLC、及びCKRLC(配列番号514~535);又は
CRXLC、例えば:CRKLC、CRRLC、CRHLC、CRGLC、CRALC、CRVLC、CRLLC、CRILC、CRMLC、CRFLC、CRWLC、CRPLC、CRSLC、CRTLC、CRCLC、CRYLC、CRNLC、CRQLC、CRDLC、CRELC、及びCRLLC(配列番号536~557);又は
CRLXC、例えば:CRLKC、CRLRC、CRLHC、CRLGC、CRLAC、CRLVC、CRLLC、CRLIC、CRLMC、CRLFC、CRLWC、CRLPC、CRLSC、CRLTC、CRLCC、CRLYC、CRLNC、CRLQC、CRLDC、CRLEC、及びCRLLC(配列番号558~579)である。
【0214】
CXXXCモチーフの更なる具体的な例は、CXHPC、CHXPC、及びCHPXCであり、Xは、任意のアミノ酸であり得、より好ましくは、CXHPC、例えば:CKHPC、CRHPC、CHHPC、CGHPC、CAHPC、CVHPC、CLHPC、CIHPC、CMHPC、CFHPC、CWHPC、CPHPC、CSHPC、CTHPC、CCHPC、CYHPC、CNHPC、CQHPC、CDHPC、CEHPC、及びCKHPC(配列番号580~601);又は
CHXPC、例えば:CHKPC、CHRPC、CHHPC、CHGPC、CHAPC、CHVPC、CHLPC、CHIPC、CHMPC、CHFPC、CHWPC、CHPPC、CHSPC、CHTPC、CHCPC、CHYPC、CHNPC、CHQPC、CHDPC、CHEPC、及びCHLPC(配列番号602~623);又は
CHPXC、例えば:CHPKC、CHPRC、CHPHC、CHPGC、CHPAC、CHPVC、CHPLC、CHPIC、CHPMC、CHPFC、CHPWC、CHPPC、CHPSC、CHPTC、CHPCC、CHPYC、CHPNC、CHPQC、CHPDC、CHPEC、及びCHPLC(配列番号624~645)である。
【0215】
これらの例示的なCXXXCモチーフのうちのいずれか1つには、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)が先行してもよく、ここで、mは、0~3の整数、好ましくは、0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0216】
好ましい実施形態において、前記オキシドレダクターゼモチーフは、CX4C(配列番号646)、すなわち、CXXXXC、典型的には、CX1X2X3X4Cであり、式中、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、及びX4は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、又はX4のうちの少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0217】
CXXXXCモチーフの具体的な例は、CLAVLC、CTVQAC、又はCGAVHC、及びそれらのバリアント、例えば、CX1AVLC、CLX2VLC、CLAX3LC、又はCLAVX4C;CX1VQAC、CTX2QAC、CTVX3AC、又はCTVQX4C;CX1AVHC、CGX2VHC、CGAX3HC、又はCGAVX4C(配列番号647~660)であり、式中、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0218】
これらの例示的なCXXXXCモチーフのうちのいずれか1つには、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)が先行してもよく、ここで、mは、0~3の整数、好ましくは、0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0219】
好ましい実施形態において、前記オキシドレダクターゼモチーフは、CX5C(配列番号661)、すなわち、CXXXXXC、典型的には、CX1X2X3X4X5Cであり、式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、及びX5は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、又はX5のうちの少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0220】
CXXXXXCモチーフの具体的な例は、CPAFPLC又はCDQGGEC、及びそれらのバリアント、例えば、CX1AFPLC、CPX2FPLC、CPAX3PLC、CPAFX4LC、又はCPAFPX5C;CX1QGGEC、CDX2GGEC、CDQX3GEC、CDQGX4EC、又はCDQGGX5C(配列番号662~673)であり、式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る。これらの例示的なCXXXXXCモチーフのうちのいずれか1つには、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)が先行してもよく、ここで、mは、0~3の整数、好ましくは、0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0221】
好ましい実施形態において、前記オキシドレダクターゼモチーフは、CX6C(配列番号674)、すなわち、CXXXXXXC、典型的には、CX1X2X3X4X5X6Cであり、式中、X1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る。好ましくは、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、X5、及びX6は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態において、前記モチーフにおけるX1、X2、X3、X4、X5、又はX6のうちの少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0222】
CXXXXXXCモチーフの具体的な例は、CDIADKYC又はそのバリアント、例えば、CX1IADKYC、CDX2ADKYC、CDIX3DKYC、CDIAX4KYC、CDIADX5YC、若しくはCDIADKX6C(配列番号675~681)であり、式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ個別に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸であり得る。
【0223】
これらの例示的なCXXXXXXCモチーフのうちのいずれか1つには、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)が先行してもよく、ここで、mは、0~3の整数、好ましくは、0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書に定義される非天然の塩基性アミノ酸である。
【0224】
そのようなオキシドレダクターゼモチーフの特に好ましい例は、C[KHR]C、CX[KHR]XC、CXX[KHR]C、C[KHR]XXC、[KHR]CC、[KHR]CXC、[KHR]XXXC、CC[KHR]、CXC[KHR]、CXXXC[KHR]、[KHR]CC[KHR]、[KHR]CXC[KHR]、[KHR]CXXXC[KHR]、[KHR]C[KHR]C、C[KHR]C[KHR]、[KHR]CXX[KHR]C、[KHR]CX[KHR]XC、[KHR]C[KHR]XXC、CXX[KHR]C[KHR]、CX[KHR]XC[KHR]、C[KHR]XXC[KHR](配列番号682~703)等である。
【0225】
サンプル中のクラスII制限CD4 + T細胞を検出するための診断用インビトロ方法が、更に開示される。この方法では、サンプルを、MHCクラスII分子及び本発明による非免疫原性RNAによってコードされるペプチドの複合体と接触させる。CD4+ T細胞は、サンプル中での複合体と細胞との結合を測定することによって検出され、ここで、複合体と細胞との結合は、サンプルにおけるCD4 + T細胞の存在を示す。複合体は、ペプチドとMHCクラスII分子との融合タンパク質であり得る。代替的には、複合体におけるMHC分子は、四量体である。複合体は、可溶性分子として提供されてもよく、又は担体に結合していてもよい。
【0226】
サンプル中のNKT細胞を検出するための診断用インビトロ方法が、更に開示される。この方法では、サンプルを、CD1d分子及び本発明による非免疫原性RNAによってコードされるペプチドの複合体と接触させる。NKT細胞は、サンプル中での複合体と細胞との結合を測定することによって検出され、ここで、複合体の結合は、ペプチドとCD1d分子との融合タンパク質であり得る。
【0227】
したがって、具体的な実施形態において、本発明の処置及び予防の方法は、本明細書に記載されるペプチドをコードする非免疫原性RNAの投与を含み、ここで、ペプチドは、処置しようとする疾患(例えば、上記に記載されるもの等)において役割を果たす抗原性タンパク質のT細胞エピトープを含む。更に具体的な実施形態において、使用されるエピトープは、ドミナントエピトープである。
【0228】
好ましい実施形態において、本明細書に記載される非免疫原性RNAは、担体又は送達ビヒクル、例えば、ナノ粒子製剤、特に、リポプレックス製剤、例えば、国際公開第188730A1号に開示されるものにおいて製剤化された状態で投与される。したがって、本明細書に記載される非免疫原性RNA分子は、本明細書に記載されるように、担体又は送達ビヒクル、例えば、ナノ粒子又はナノ粒子製剤、特に、リポプレックス製剤において製剤化されて存在してもよい。
【0229】
一実施形態において、全身投与後に、非免疫原性RNA分子を、抗原提示細胞、例えば、脾臓内の樹状細胞(DC)へと送達する送達ビヒクルが、使用され得る。例えば、粒子の正味の電荷がゼロに近いか又は負である、規定の粒径を有するナノ粒子RNA製剤、例えば、電荷を持たないか又は負に荷電したRNA及びリポソームのリポプレックス、例えば、DOTMA及びDOPE又はDOTMA及びコレステロールを含むリポプレックスは、全身投与後に、RNAの脾臓DCへの実質的な送達をもたらす。ナノ粒子における正電荷の負電荷に対する電荷比が、1.4:1以下である、及び/又はナノ粒子のゼータ電位が、0以下である、ナノ粒子RNA製剤が、特に好ましい。一実施形態において、ナノ粒子における正電荷の負電荷に対する電荷比は、1.4:1~1:8、好ましくは、1.2:1~1:4、例えば、1:1~1:3、例えば、1:1.2~1:2、1:1.2~1:1.8、1:1.3~1:1.7、特に、1:1.4~1:1.6、例えば、約1:1.5である。一実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、-5以下、-10以下、-15以下、-20以下、又は-25以下であり、様々な実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、-35以上、-30以上、又は-25以上である。一実施形態において、ナノ粒子は、0mV~-50mV、好ましくは、0mV~-40mV、又は-10mV~-30mVのゼータ電位を有する。一実施形態において、正電荷は、ナノ粒子中に存在する少なくとも1つのカチオン性脂質によって寄与され、負電荷は、RNAによって寄与される。一実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも1つのヘルパー脂質を含む。ヘルパー脂質は、中性又はアニオン性脂質であり得る。
【0230】
一実施形態において、ナノ粒子は、DOTMA及びDOPEを、10:0~1:9、好ましくは、8:2~3:7、より好ましくは、7:3~5:5のモル比で含むリポプレックスであり、DOTMAにおける正電荷のRNAにおける負電荷に対する電荷比は、1.8:2~0.8:2、より好ましくは、1.6:2~1:2、更により好ましくは、1.4:2~1.1:2、更により好ましくは、約1.2:2である。一実施形態において、ナノ粒子は、DOTMA及びコレステロールを、10:0~1:9、好ましくは、8:2~3:7、より好ましくは、7:3~5:5のモル比で含むリポプレックスであり、DOTMAにおける正電荷のRNAにおける負電荷に対する電荷比は、1.8:2~0.8:2、より好ましくは、1.6:2~1:2、更により好ましくは、1.4:2~1.1:2、更により好ましくは、約1.2:2である。
【0231】
一実施形態において、ナノ粒子は、DOTAP及びDOPEを、10:0~1:9、好ましくは、8:2~3:7、より好ましくは、7:3~5:5のモル比で含むリポプレックスであり、DOTMAにおける正電荷のRNAにおける負電荷に対する電荷比は、1.8:2~0.8:2、より好ましくは、1.6:2~1:2、更により好ましくは、1.4:2~1.1:2、更により好ましくは、約1.2:2である。
【0232】
一実施形態において、ナノ粒子は、DOTMA及びDOPEを、2:1~1:2、好ましくは、2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、DOTMAにおける正電荷のRNAにおける負電荷に対する電荷比は、1.4:1以下である。
【0233】
一実施形態において、ナノ粒子は、DOTMA及びコレステロールを、2:1~1:2、好ましくは、2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、DOTMAにおける正電荷のRNAにおける負電荷に対する電荷比は、1.4:1以下である。
【0234】
一実施形態において、ナノ粒子は、DOTAP及びDOPEを、2:1~1:2、好ましくは、2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、DOTAPにおける正電荷のRNAにおける負電荷に対する電荷比は、1.4:1以下である。
【0235】
一実施形態において、本発明による非免疫原性RNAは、F12又はF5リポソーム、好ましくは、F12リポソームにおいて製剤化される。「F12」という用語は、本明細書において使用される場合、DOTMA及びDOPEを、2:1のモル比で含むリポソーム、及びそのようなリポソームを使用して形成された、RNAとのリポプレックスを示す。「F5」という用語は、本明細書において使用される場合、DOTMA及びコレステロールを、1:1のモル比で含むリポソーム、及びそのようなリポソームを使用して形成された、RNAとのリポプレックスを示す。
【0236】
本明細書において使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、粒子を、特に核酸の全身的な、特に非経口での投与に好適なものにする直径、典型的には、1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する、任意の粒子を指す。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、600nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、400nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約50nm~約1000nm、好ましくは、約50nm~約400nm、好ましくは、約100nm~約300nm、例えば、約150nm~約200nmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約200~約700nm、約200~約600nm、好ましくは、約250~約550nm、特に、約300~約500nm又は約200~約400nmの範囲の直径を有する。
【0237】
本明細書において使用される場合、「ナノ粒子製剤」という用語又は類似の用語は、少なくとも1つのナノ粒子を含む任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、ナノ粒子製剤は、ナノ粒子の均一な集合体である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子製剤は、分散液又はエマルションである。一般に、分散液又はエマルションは、少なくとも2つの非混和性材料をあわせた場合に形成される。
【0238】
「リポプレックス」又は「核酸リポプレックス」、特に、「RNAリポプレックス」という用語は、本明細書において使用される場合、脂質及び核酸、特に、RNAの複合体を指す。リポプレックスは、中性の「ヘルパー」脂質も含むことが多いカチオン性リポソームを、核酸と混合すると、自発的に形成される。
【0239】
本開示が、電荷、例えば、正電荷、負電荷、若しくは中性電荷、又はカチオン性化合物、負の化合物、若しくは中性化合物に言及する場合、これは、一般に、言及された電荷が、選択されたpH、例えば、生理学的pHにおいて存在することを意味する。例えば、「カチオン性脂質」という用語は、選択されたpH、例えば、生理学的pHにおいて、正味の正電荷を有する脂質を意味する。「中性脂質」という用語は、脂質が正味の正電荷も負電荷も有さず、選択されたpH、例えば、生理学的pHにおいて、非荷電又は中性両性イオンの形態で存在し得ることを意味する。「生理学的pH」とは、本明細書において、約7.5のpHを意味する。
【0240】
本明細書に開示される使用が企図されるナノ粒子担体、例えば、脂質担体には、例えば、核酸と複合体を形成するか、又は核酸が封入(enclosed)若しくは封入(encapsulated)された小胞を形成することによって、核酸、例えば、RNAを会合させることができる、任意の物質又はビヒクルを含み得る。これは、ネイキッド核酸と比較して、核酸の安定性の増加をもたらし得る。特に、血液中での核酸の安定性が、増加し得る。カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、及び正電荷を有する他の物質は、負に荷電した核酸と複合体を形成し得る。これらのカチオン性分子を使用して、核酸と複合体を形成し、それによって、例えば、それぞれ、いわゆるリポプレックス又はポリプレックスを形成することができ、これらの複合体は、核酸を細胞内に送達することが示されている。
【0241】
本明細書に開示される使用のためのナノ粒子核酸調製物は、様々なプロトコールによって、様々な核酸複合体形成化合物から、得ることができる。脂質、ポリマー、オリゴマー、又は両親媒性物質が、典型的な複合体形成剤である。一実施形態において、複合体形成化合物は、プロタミン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、又はヒストンからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。プロタミンは、カチオン性担体剤として有用である。「プロタミン」という用語は、アルギニンが豊富であり、様々な動物(魚類等)の精子細胞において体細胞性ヒストンの代わりに特にDNAと会合していることが見出されている、比較的低分子量の様々な強塩基性タンパク質のうちのいずれかを指す。具体的には、「プロタミン」という用語は、強塩基性であり、水中に可溶性であり、熱によって凝固せず、加水分解によって主としてアルギニンをもたらす、魚の精子において見出されるタンパク質を指す。精製された形態において、それらは、インスリンの長時間作用製剤において、及びヘパリンの抗凝固作用を中和するために、使用される。本発明によると、「プロタミン」という用語は、本明細書において使用される場合、生来の供給源又は生物学的供給源から得られるか又はそれに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列、例えば、そのフラグメント、及び前記アミノ酸配列又はそのフラグメントの多量体形態を含むことを意味する。更に、この用語は、人工的であり、特定の目的のために特に設計され、生来の供給源又は生物学的供給源から単離することができない、(合成された)ポリペプチドを包含する。本明細書に開示される使用されるプロタミンは、硫酸化プロタミン又はプロタミン塩酸塩であり得る。好ましい実施形態において、本明細書に記載されるナノ粒子の産生に使用されるプロタミン供給源は、等張塩溶液中、10mg/ml(1ml当たり5000ヘパリン中和単位)を上回るプロタミンを含む、プロタミン5000である。
【0242】
リポソームは、小胞形成脂質、例えば、リン脂質の1つ又は複数の二重層を有することが多い、顕微鏡サイズの脂質小胞であり、薬物を封入することができる。多ラメラ小胞(MLV)、小単ラメラ小胞(SUV)、大単ラメラ小胞(LUV)、立体的に安定化されたリポソーム(SSL)、多胞小胞(MV)、及び大型多胞小胞(LMV)、並びに当該技術分野において公知の他の二重層形態を含むがこれらに限定されない、異なるタイプのリポソームを、本開示の文脈において利用することができる。リポソームのサイズ及びラメラ性は、調製の様式に依存し、使用しようとする小胞のタイプの選択は、好ましい投与様式に依存するであろう。単層から構成されるラメラ相、六方晶相及び逆六方晶相、立方晶相、ミセル、逆ミセルを含む、脂質が水性媒体中に存在し得る、超分子組織化の他の形態がいくつか存在する。これらの相はまた、DNA又はRNAとの組合せで得ることができ、RNA及びDNAとの相互作用が、相状態に実質的に影響を及ぼし得る。記載される相は、本明細書に開示されるナノ粒子核酸製剤において存在し得る。
【0243】
核酸及びリポソームから核酸リポプレックスを形成するために、リポソームを形成する任意の好適な方法を、それが想定された核酸リポプレックスをもたらす限り、使用することができる。リポソームは、標準的な方法、例えば、逆蒸発法(REV)、エタノール注入法、脱水-再水和法(DRV)、超音波処理、又は他の好適な方法を使用して、形成され得る。
【0244】
リポソーム形成後、リポソームは、実質的に均一なサイズ範囲を有するリポソーム集団を得るように、サイズ決定することができる。
【0245】
二重層形成脂質は、典型的には、2つの炭化水素鎖、特に、アシル鎖、及び極性又は非極性のいずれかの頭部基を有する。二重層形成脂質は、天然に存在する脂質、又はリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチド酸、ホスファチジルイノシトール、及びスフィンゴミエリンを含む合成起源のもののいずれかから構成され、ここで、2つの炭化水素鎖は、典型的には、約14~22個の炭素原子の長さであり、変動する不飽和度を有する。本明細書に開示される組成物における使用に好適な他の脂質としては、糖脂質並びにステロール、例えば、コレステロール及びその様々なアナログが挙げられ、これらは、リポソームにおいても使用することができる。
【0246】
カチオン性脂質は、典型的には、親油性部分、例えば、ステロール、アシル、又はジアシル鎖を有し、全体として正味の正電荷を有する。脂質の頭部基は、典型的には、正電荷を有する。カチオン性脂質は、好ましくは、1~10価の正電荷、より好ましくは、1~3価の正電荷、より好ましくは、1価の正電荷を有する。カチオン性脂質の例としては、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジミリストイルオキシプロピル-1,3-ジメミミドロキシエチル(dimemymydroxyethyl)アンモニウム(DMRIE)、及び2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-Ν,Ν-ジメチル-1-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)が挙げられるが、これらに限定されない。DOTMA、DOTAP、DODAC、及びDOSPAが、好ましい。DOTMAが、もっとも好ましい。
【0247】
加えて、本明細書に記載されるナノ粒子は、好ましくは、構造安定性等の観点で、中性脂質を更に含む。中性脂質は、核酸-脂質複合体の送達効率の観点から、適切に選択され得る。中性脂質の例としては、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、ステロール、及びセレブロシドが挙げられるが、これらに限定されない。DOPE及び/又はDOPCが、好ましい。DOPEが、もっとも好ましい。カチオン性リポソームが、カチオン性脂質及び中性脂質の両方を含む事例において、カチオン性脂質の中性脂質に対するモル比は、リポソームの安定性等の観点で、適切に決定され得る。一実施形態によると、本明細書に記載されるナノ粒子は、リン脂質を含み得る。リン脂質は、グリセロリン脂質であり得る。グリセロリン脂質の例としては、次の3つのタイプの脂質が挙げられるが、これらに限定されない:(i)双性イオン性リン脂質、これには、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、卵黄ホスファチジルコリン、天然の形態、部分的に水素化された形態、若しくは完全に水素化された形態でのダイズ由来のPC、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、スフィンゴミエリン(SM)が含まれる、(ii)負に荷電したリン脂質、これには、例えば、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジパルミトイル(dipalmipoyl)PG、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、メトキシ-ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(mPEG-DSPE)の場合等、コンジュゲートが双性イオン性リン脂質を負に荷電するようにする合成誘導体が含まれる、並びに(iii)カチオン性リン脂質、これには、例えば、そのホスホモノエステルがO-メチル化されてカチオン性脂質を形成したホスファチジルコリン又はスフィンゴミエリンが含まれる。
【0248】
核酸の脂質担体への会合は、例えば、核酸が、担体の間質空間を充填し、その結果担体が核酸を物理的に捕捉するようになること、又は共有結合、イオン結合、若しくは水素結合によって、又は非特異的結合による吸着を用いて、生じ得る。
【0249】
一実施形態において、自己抗原のT細胞エピトープに連結されたオキシドレダクターゼモチーフを含む本明細書に記載されるペプチドをコードする非免疫原性RNAは、対象に投与される。RNAの翻訳産物が、対象の細胞において形成され得、この産物は、自己抗原を標的とする自己反応性T細胞に対する寛容性を誘導するために免疫系に提示され得る。
【0250】
代替的には、本発明は、自己抗原のT細胞エピトープに連結されたオキシドレダクターゼモチーフを含む本明細書に記載されるペプチドを発現する非免疫原性RNAが、細胞、例えば、エキソビボの抗原提示細胞、例えば、患者から採取された抗原提示細胞に導入され、細胞、任意選択でエキソビボでクローン増殖させた細胞が、同じ患者に移植して戻される、実施形態を想定する。トランスフェクトした細胞は、当該技術分野において公知の任意の手段を使用して、好ましくは、滅菌形態で、静脈内、腔内、又は腹腔内投与によって、患者に再導入され得る。好適な細胞としては、抗原提示細胞が挙げられる。抗原提示細胞は、好ましくは、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、間葉間質細胞、上皮細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞であり、もっとも好ましくは、樹状細胞である。したがって、本発明は、自己免疫疾患を処置するための方法であって、本明細書に記載される非免疫原性RNAを発現する単離された抗原提示細胞を必要とする対象に投与する工程を含む、方法も含む。細胞は、対象にとって、自家、同種、同系、又は異種であり得る。「核酸」という用語は、本明細書において使用される場合、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、例えば、cDNA、mRNA、組換えで産生された分子及び化学的に合成された分子を含むことが意図される。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。本発明によると、RNAは、インビトロで転写されたRNA(IVT RNA)又は合成RNAを含む。本発明によると、核酸は、好ましくは、単離された核酸である。更に、本明細書に記載される核酸は、組換え分子であり得る。
【0251】
「単離された核酸」という用語は、本明細書において使用される場合、核酸が、(i)インビトロで、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅されたか、(ii)クローニングによって組換え産生されたか、(iii)例えば、切断及びゲル電気泳動による分離によって精製されたか、又は(iv)例えば、化学的合成によって合成されたことを意味する。核酸は、例えば、DNA鋳型からインビトロ転写によって調製することができるRNAの形態で、細胞への導入、すなわち、細胞のトランスフェクションに利用され得る。RNAは、配列を安定化させること、キャッピング、及びポリアデニル化によって、適用前に更に改変されてもよい。
【0252】
「DNA」という用語は、本明細書において使用される場合、デオキシリボヌクレオチド残基を含む分子、好ましくは、完全又は実質的にデオキシリボヌクレオチド残基から構成される分子を指す。「デオキシリボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位のヒドロキシル基が欠如したヌクレオチドに関する。「DNA」という用語は、単離されたDNA、例えば、部分的又は完全に精製されたDNA、本質的に純粋なDNA、合成DNA、及び組換えで生成されたDNAを含み、1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は変更によって天然に存在するDNAとは異なる、改変されたDNAを含む。そのような改変は、DNAの末端又は内部等への、例えば、DNAの1つ又は複数のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド材料の付加を含み得る。DNA分子におけるヌクレオチドは、非標準的ヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチド又は化学的に合成されたヌクレオチドも含み得る。これらの変更されたDNAは、アナログ又は天然に存在するDNAのアナログと称され得る。
【0253】
「RNA」という用語は、本明細書において使用される場合、リボヌクレオチド残基を含む分子、好ましくは、完全又は実質的にリボヌクレオチド残基から構成される分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば、部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えで産生されたRNA、並びに1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は変更が天然に存在するRNAとは異なる、改変されたRNAを含む。そのような改変は、RNAの末端又は内部等への、例えば、RNAの1つ又は複数のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド材料の付加を含み得る。RNA分子におけるヌクレオチドは、非標準的ヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチド若しくは化学的に合成されたヌクレオチド、又はデオキシヌクレオチドも含み得る。これらの変更されたRNAは、アナログ又は天然に存在するRNAのアナログと称され得る。本発明によると、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を含み、好ましくはそれに関し、DNAを鋳型として使用して産生され得るペプチド又はタンパク質をコードする転写産物に関する。mRNAは、典型的には、5’非翻訳領域(5’-UTR)、タンパク質又はペプチドコーディング領域、及び3’非翻訳領域(3’-UTR)を含む。mRNAは、細胞及びインビトロにおいて制限された半減期を有する。好ましくは、mRNAは、DNA鋳型を使用してインビトロ転写によって産生される。本発明の一実施形態において、RNAは、インビトロ転写又は化学的合成によって得られる。インビトロ転写手法は、当業者に公知である。例えば、市販入手可能な様々なインビトロ転写キットが存在する。
【0254】
RNAの安定性及び転写効率は、必要に応じて改変することができる。例えば、RNAの安定化作用を有する及び/又は翻訳効率を増加させる1つ又は複数の改変によって、RNAは、安定化し得、その翻訳が増加し得る。本発明により使用されるRNAの発現を増加させるために、それは、コーディング領域、すなわち、発現されるペプチド又はタンパク質をコードする配列内で、好ましくは、発現されるペプチド又はタンパク質の配列を変更することなく、GC含量を増加させてmRNA安定性を増加させ、コドン最適化を行い、したがって、細胞における翻訳を増強させるように、改変させることができる。
【0255】
「改変」という用語は、本明細書において使用されるRNAの文脈において、前記RNAに天然に存在しないRNAの任意の改変を含む。一実施形態において、RNAは、キャッピングされていない5’-三リン酸を有さない。そのようなキャッピングされていない5’-三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処置することによって達成することができる。RNAは、その安定性を増加させる及び/又は細胞傷害性を減少させるために、改変されたリボヌクレオチドを有し得る。例えば、一実施形態において、RNAにおいて、5-メチルシチジンは、部分的又は完全に、好ましくは完全に、シチジンと置換される。代替的に、又は追加として、一実施形態において、RNAにおいて、シュードウリジンは、部分的又は完全に、好ましくは完全に、ウリジンと置換される。
【0256】
一実施形態において、「改変」という用語は、5’-キャップ又は5’-キャップアナログを有するRNAを提供することに関する。「5’-キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端において見出されるキャップ構造を指し、一般的には、通常とは異なる5’と5’との三リン酸連結によってmRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態において、このグアノシンは、7位においてメチル化されている。「従来的な5’-キャップ」という用語は、天然に存在するRNA 5’-キャップ、好ましくは、7-メチルグアノシンキャップ(m7 G)を指す。本発明の文脈において、「5’-キャップ」という用語は、RNAキャップ構造に類似する5’-キャップアナログを含み、これは、そこにRNAが結合した場合に、RNAを安定化させ、且つ/又は好ましくはインビボ及び/若しくは細胞におけるRNAの翻訳を増強させる能力を有するように、改変されている。
【0257】
RNAは、更なる改変を含んでもよい。例えば、本発明において使用されるRNAの更なる改変は、天然に存在するポリ(A)尾部の伸長若しくは短縮、又は5’若しくは3’-非翻訳領域(UTR)の変更、例えば、前記RNAのコーディング領域に関連しないUTRの導入、例えば、既存の3’-UTRと、グロビン遺伝子、例えば、アルファ2-グロビン、アルファ1-グロビン、ベータ-グロビン、好ましくはベータ-グロビン、より好ましくはヒトベータ-グロビンに由来する3’-UTRの1つ若しくは複数、好ましくは、2つのコピーとの交換、若しくはその挿入であり得る。
【0258】
マスクされていないポリ-A配列を有するRNAは、マスクされたポリ-A配列を有するRNAよりも効率的に翻訳される。「ポリ(A)尾部」又は「ポリ-A配列」という用語は、典型的には、RNA分子の3’末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関し、「マスクされていないポリ-A配列」は、RNA分子の3’末端にあるポリ-A配列が、ポリ-A配列のAで終わり、ポリ-A配列の3’末端、すなわち下流に位置するA以外のヌクレオチドが続かないことを意味する。更に、約120塩基対の長いポリ-A配列は、RNAの最適な転写安定性及び翻訳効率をもたらす。
【0259】
したがって、本発明により使用されるRNAの安定性及び/又は発現を増加させるために、それは、好ましくは10~500個、より好ましくは30~300個、更により好ましくは65~200個、特に100~150個のアデノシン残基の長さを有するポリ-A配列とともに存在するように、改変され得る。特に好ましい実施形態において、ポリ-A配列は、およそ120個のアデノシン残基の長さを有する。本発明により使用されるRNAの安定性及び/又は発現を更に増加させるために、ポリ-A配列は、マスクされていなくてもよい。
【0260】
RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を排除するために必要とされる期間に関する。本発明の文脈において、RNAの半減期は、前記RNAの安定性を示す。RNAの半減期は、RNAの「発現の持続期間」に影響を及ぼし得る。長い半減期を有するRNAは、長期間発現されるであろうと予測することができる。当然ながら、本発明によると、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を減少させることが所望される場合、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を増加させる上述のエレメントの機能を妨害するようにRNAを改変することが可能である。本発明により投与しようとするRNAは、非免疫原性である。
【0261】
「非免疫原性RNA」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば、哺乳動物に投与したときに、RNA分子自体に対する免疫系による応答を誘導しないか、又は非免疫原性RNAを非免疫原性にする改変及び処置に供されていないという点のみが異なる同じRNAによって誘導されていたであろうものよりも弱い応答を誘導する、RNAを指す。前記用語は、しかしながら、細胞溶解性CD4+ T細胞の発生及び成熟に対して誘起される間接的な免疫応答を除外するものではない。1つの好ましい実施形態において、非免疫原性RNAは、RNAに媒介される自然免疫受容体の活性化を抑制する改変されたヌクレオチドをRNAに組込み、二本鎖RNA(dsRNA)を除去することによって、非免疫原性となる。改変されたヌクレオチドの組込みによって非免疫原性RNAを非免疫原性にするために、任意の改変されたヌクレオチドを、それがRNAの免疫原性を低下又は抑制する限りは使用することができる。RNAに媒介される自然免疫受容体の活性化を抑制する改変されたヌクレオチドが、特に好ましい。一実施形態において、改変されたヌクレオチドは、1つ又は複数のウリジンの、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドとの置き換えを含む。一実施形態において、改変された核酸塩基は、改変されたウラシルである。一実施形態において、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジン又は5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U),ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3 ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、及び5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群から選択される。
好ましい実施形態において、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドの構造は、N(1)-メチルシュードウリジン(m1ψ)である。
【0262】
T7 RNAポリメラーゼを使用したインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中、酵素の非従来的な活性に起因して、二本鎖RNA(dsRNA)を含む、有意な量の異常な産物が、産生される。dsRNAは、炎症性サイトカインを誘導し、エフェクター酵素を活性化し、タンパク質合成の阻害をもたらす。dsRNAは、例えば、非多孔質又は多孔質C-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリックスを使用してイオンペア逆相HPLCによって、RNA、例えば、IVT RNAから除去することができる。代替的には、dsRNAを特異的に加水分解するがssRNAは加水分解せず、それによって、dsRNA混入物をIVT RNA調製物から排除することができる、大腸菌(E. coli)RNaselllを使用した酵素ベースの方法を、使用することができる。更に、dsRNAは、セルロース材料を使用することによって、ssRNAから分離することができる。一実施形態において、RNA調製物を、セルロース材料と接触させ、dsRNAがセルロース材料に結合することを許容するがssRNAがセルロース材料に結合することは許容しない条件下において、ssRNAをセルロース材料から分離させる。本明細書において使用される場合、「除去する」又は「除去」という用語は、第1の物質、例えば、非免疫原性RNAの集団が、第2の物質、例えば、dsRNAの集団の近傍から分離されているという特徴を指し、第1の物質の集団は、必ずしも第2の物質が欠如しているわけではなく、第2の物質の集団は、必ずしも第1の物質が欠如しているわけではない。しかしながら、第2の物質の集団の除去によって特徴付けられる第1の物質の集団は、第1及び第2の物質の分離されていない混合物と比較して、測定できるほどに低い含量の第2の物質を有する。
【0263】
核酸は、物理的、化学的、又は生物学的手段によって、宿主細胞に移入され得る。核酸を宿主細胞に導入するための物理的な方法としては、リン酸カルシウム沈降、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が挙げられる。
【0264】
目的の核酸を宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNAベクター及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特に、レトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞に挿入するためにもっとも広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス等に由来し得る。核酸を宿主細胞に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。インビトロ及びインビボにおいて送達ビヒクルとして使用するための好ましいコロイド系は、リポソーム(すなわち、人工膜小胞)である。そのような系の調製及び使用は、当該技術分野において周知である。
【0265】
「コードする」とは、定義されたヌクレオチド配列又は定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び高分子の合成の鋳型として作用する、核酸における特定のヌクレオチド配列の固有の特性を指す。したがって、核酸は、核酸の発現(翻訳及び任意選択で転写)が、細胞又は他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。「発現」という用語は、本発明によりそのもっとも一般的な意味で使用され、例えば、転写及び/又は翻訳による、RNA及び/又はペプチド若しくはポリペプチドの産生を含む。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は、特に、ペプチド又はポリペプチドの産生に関する。これはまた、核酸の部分的な発現も含む。更に、発現は、一過的であってもよく、又は安定であってもよい。
【0266】
本発明の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列における遺伝子コードがRNAに転写されるプロセスに関する。続いて、RNAは、タンパク質に翻訳され得る。本発明によると、「転写」という用語は、「インビトロ転写」を含み、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特に、mRNAが、無細胞系において、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、インビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、クローニングベクターが、転写産物の生成に適用される。これらのクローニングベクターは、一般に、転写ベクターとして指定され、本発明によると、「ベクター」という用語に包含される。本発明によると、本発明において使用されるRNAは、好ましくは、インビトロで転写されたRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得ることができる。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモーターであり得る。RNAポリメラーゼの具体的な例は、T7、T3、及びSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7又はSP6プロモーターによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特に、cDNAのクローニング、及びインビトロ転写に適切なベクターにそれを導入することによって、得ることができる。cDNAは、RNAの逆転写によって得ることができる。
【0267】
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖が、アミノ酸配列のアセンブリを誘導し、ペプチド又はポリペプチドを作製する、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。本発明によると、核酸、例えば、ペプチド又はタンパク質をコードするRNAが、インビトロ又は対象に存在し得る細胞に取り込まれるか又は導入、すなわち、トランスフェクト若しくは形質導入されると、前記ペプチド又はタンパク質の発現をもたらすことが、好ましい。細胞は、コードされるペプチド若しくはタンパク質を、細胞内(例えば、細胞質及び/若しくは核内)で発現し得るか、コードされるペプチド若しくはタンパク質を分泌し得るか、又はそれを表面上に発現し得る。
【0268】
本発明によると、「を発現する核酸」及び「をコードする核酸」といった用語、又は類似の用語は、本明細書において互換可能に使用され、特定のペプチド又はポリペプチドに関して、核酸が、適切な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、前記ペプチド又はポリペプチドを産生するように発現され得ることを意味する。
【0269】
「移入すること」、「導入すること」、「トランスフェクトすること」、又は「形質導入すること」といった用語は、本明細書において互換可能に使用され、核酸、特に、外因性又は異種核酸、例えば、RNAの、細胞への導入に関する。本発明によると、細胞は、インビトロに存在してもよく又はインビボに存在してもよく、例えば、細胞は、器官、組織、及び/又は生物の一部を形成してもよい。本発明によると、トランスフェクションは、一過的であってもよく、又は安定であってもよい。トランスフェクションのいくつかの適用について、トランスフェクトされた遺伝子材料が一過的にだけ発現されれば、十分である。トランスフェクションプロセスにおいて導入される核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないため、外来核酸は、有糸分裂を通じて希釈されるか、又は分解されるであろう。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞系は、希釈の速度を大幅に低減させる。トランスフェクトされた核酸が、実際に細胞及びその娘細胞のゲノム内にとどまることが所望される場合、安定なトランスフェクトが起こる必要がある。RNAは、細胞にトランスフェクトされて、そのコードされるタンパク質を一過的に発現してもよい。
【0270】
本明細書に記載される薬剤は、任意の好適な医薬組成物の形態で投与され得る。「医薬組成物」という用語は、治療的に有効な薬剤又はその塩を、好ましくは、薬学的賦形剤、例えば、緩衝剤、保存剤、及び張度調節剤と一緒に含む、製剤に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物の個体への投与によって、疾患又は障害を処置又は予防するのに有用である。医薬組成物はまた、当該技術分野において、医薬製剤としても公知である。医薬組成物は、局所的又は全身的に投与され得る。
【0271】
「全身投与」という用語は、治療的に有効な薬剤が、十分な量で個体の身体に広く分布し、生物学的作用を生じるような、治療的に有効な薬剤の投与を指す。本発明によると、投与が非経口投与によって行われることが好ましい。
【0272】
「非経口投与」という用語は、治療的に有効な薬剤の、それが消化管を通過しないような投与を指す。「非経口投与」という用語には、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、又は動脈内投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0273】
本発明の方法はまた、好ましくは、対象に、免疫阻害性化合物を更に提供する工程を含む。免疫阻害性化合物がペプチド又はポリペプチドである場合、それは、免疫阻害性化合物又は免疫阻害性化合物をコードする核酸、例えば、RNAを投与することによって、対象に提供され得る。免疫阻害性化合物は、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン27(IL-27)、インターロイキン35(TL-35)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、誘導性T細胞共刺激因子リガンド(ICOSL)、B7-H4、CD39、CD73、FAS、FAS-IL、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ2(IDO2)、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)/レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ(RALDH)、アルギナーゼ1(ARG1)、アルギナーゼ2(ARG2)、一酸化窒素シンターゼ(NOS2)、ガレクチン-1、ガレクチン-9、セマフォリン4 A、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。更に、本明細書に記載される組成物は、そのような免疫阻害性化合物、又はそのような免疫阻害性化合物をコードする核酸、例えば、RNAを含み得る。
【0274】
本発明による医薬組成物は、一般に、「薬学的有効量」で、「薬学的に許容される調製物」において、適用される。
【0275】
「薬学的有効量」という用語は、単独で又は更なる用量と一緒に、所望される反応又は所望される作用を達成する量を指す。特定の疾患の処置の事例において、所望される反応は、好ましくは、疾患の過程の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅延させること、特に、疾患の進行を妨害又は逆転させることを含む。疾患の処置における所望される反応はまた、前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防でもあり得る。本明細書に記載される組成物の有効量は、処置しようとする状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズ、及び体重を含む患者の個々のパラメーター、処置の期間、付随する治療法のタイプ(存在する場合)、具体的な投与経路、並びに類似の因子に依存するであろう。したがって、本明細書に記載される組成物の投与される用量は、様々なそのようなパラメーターに依存し得る。患者における反応が、初回用量では不十分であった場合、より高い用量(又は異なる、より局在化された投与経路によって達成される効果的により高い用量)を、使用してもよい。
【0276】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない材料の無毒性を指す。
【0277】
本発明の医薬組成物は、塩、緩衝剤、保存剤、担体、及び任意選択で他の治療剤を含み得る。好ましくは、本発明の医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む。
【0278】
「賦形剤」という用語は、活性成分ではない医薬組成物中のすべての物質、例えば、結合剤、滑沢剤、増量剤、界面活性剤、保存剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、又は着色剤を示すことを意図する。
【0279】
「希釈剤」という用語は、希釈する薬剤及び/又は薄める薬剤に関する。更に、「希釈剤」という用語は、流体、液体、又は固体懸濁液及び/又は混合媒体のうちのいずれか1つ又は複数を含む。
【0280】
「担体」という用語は、1つ又は複数の適合性のある固体又は液体充填剤又は希釈剤に関し、これらは、ヒトへの投与に好適である。「担体」という用語は、活性成分の適用を促進するために活性成分と組み合わされる、天然又は合成の有機又は無機成分に関する。好ましくは、担体成分は、滅菌の液体、例えば、水又は油であり、これには、鉱油、動物、又は植物に由来するもの、例えば、ピーナツ油、ダイズ油、ゴマ油、ヒマワリ油が含まれる。塩類溶液、並びに水溶性デキストロース及びグリセリン溶液もまた、水性担体化合物として使用することができる。
【0281】
治療的使用のための薬学的に許容される担体又は希釈剤は、医薬分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co. (A. R Gennaro編1985)に記載されている。好適な担体の例としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール、及び水が挙げられる。薬学的担体、賦形剤、又は希釈剤は、意図される投与経路及び標準的な医薬業務に関連して選択され得る。本発明の医薬組成物は、担体、賦形剤、又は希釈剤として、又はそれに加えて、任意の好適な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、及び/又は可溶化剤を含み得る。好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、フリーフローラクトース、ベータ-ラクトース、トウモロコシ甘味剤、天然及び合成のゴム、例えば、アカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。好適な滑沢剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。保存剤、安定化剤、色素、及び更には香味剤が、医薬組成物中に提供され得る。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁化剤もまた、使用され得る。一実施形態において、組成物は、水性組成物である。水性組成物は、任意選択で、溶質、例えば、塩を含み得る。一実施形態において、組成物は、凍結乾燥組成物の形態である。凍結乾燥組成物は、それぞれの水性組成物を凍結乾燥させることによって得ることができる。本発明は、以下の図面及び実施例によって更に例証され、これらは、本発明の範囲を制限すると解釈されるものではない。
【0282】
非免疫原性RNAによってコードされるペプチドは、インビトロ及びインビボ方法において、T細胞エピトープの存在について試験することができ、インビトロアッセイにおいてそれらの還元活性について試験することができる。最終的な品質管理として、ペプチドは、インビトロアッセイにおいて試験して、ペプチドが、改変されたオキシドレダクターゼモチーフを有するペプチドにおいても存在するエピトープ配列を含む抗原を提示する抗原提示細胞に対するアポトーシス経路を介して、細胞溶解性であるCD4+ T細胞又はNKT細胞を生成することができるかどうかを検証することができる。本明細書に開示されるそのようなペプチドは、組換えDNA技法を使用して、細菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞において、生成することができる。ペプチドの限定された長さを考慮して、それらを、化学的ペプチド合成によって調製してもよく、その場合、ペプチドは、異なるアミノ酸を互いに連結させることによって調製される。化学的合成は、例えば、D-アミノ酸、天然に存在しない側鎖を有するアミノ酸、又は改変された側鎖を有する天然のアミノ酸等を含めるのに特に好適である。
【0283】
化学的ペプチド合成方法は、十分に説明されており、ペプチドは、企業、例えば、Applied Biosystems社及び他の企業から、注文することができる。
【0284】
ペプチド合成は、固相ペプチド合成(SPPS)、又は対照的には溶液相ペプチド合成のいずれかとして行うことができる。もっとも知られているSPPS方法は、t-Boc及びFmoc固相化学反応である。
【0285】
ペプチド合成中、いくつかの保護基が使用される。例えば、ヒドロキシル及びカルボキシル官能基を、t-ブチル基によって保護し、リジン及びトリプトファンを、t-Boc基によって保護し、アスパラギン、グルタミン、システイン、及びヒスチジンを、トリチル基によって保護し、アルギニンを、pbf基によって保護する。適切な場合、そのような保護基を、合成の後にペプチドに残してもよい。もともとKent(Schnelzer & Kent (1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180-193)によって説明されており、例えば、Tamら、(2001) Biopolymers 60、194-205において考察されている、SPPSの範囲を超えるタンパク質合成を達成する大きな可能性をもたらすライゲーション戦略(2つの保護されていないペプチドフラグメントの化学選択的カップリング)を使用して、ペプチドを互いに連結させて、より長いペプチドを形成することができる。100~300個の残基のサイズを有する多数のタンパク質の合成が、この方法によって成功している。合成ペプチドは、SPPSにおける大きな進歩に起因して、生化学、薬理学、神経生物学、酵素学、及び分子生物学の研究分野において、これまで以上に重要な役割を果たし続けている。
【0286】
代替的には、ペプチドは、コーディングするヌクレオチド配列を含む適切な発現ベクターにおいて本発明のペプチドをコードする核酸分子を使用することによって、合成することができる。そのようなDNA分子は、自動化DNA合成装置及び遺伝子コードの周知のコドン-アミノ酸の関連性を使用して、容易に調製することができる。そのようなDNA分子はまた、オリゴヌクレオチドプローブ及び従来的なハイブリダイゼーション手法を使用して、ゲノムDNAとして、又はcDNAとして、得ることができる。そのようなDNA分子は、好適な宿主、例えば、細菌、例えば、大腸菌、酵母細胞、動物細胞、又は植物細胞におけるDNAの発現及びポリペプチドの産生のために適合された、プラスミドを含む発現ベクターに組み込まれ得る。
【0287】
目的のペプチドの物理的及び化学的特性(例えば、可溶性、安定性)は、ペプチドが、治療用組成物における使用に好適であるかどうかを判定するために、試験される。典型的には、これは、ペプチドの配列を調節することによって最適化される。任意選択で、ペプチドは、当該技術分野において公知の技法を使用して、合成の後に改変され得る(化学的改変、例えば、官能基の付加/欠失)。
【0288】
標準的なオキシドレダクターゼモチーフ及びMHCクラスII T細胞エピトープを含むペプチドの作用機序は、上記に引用されたPCT出願国際公開第2008/017517号及び本発明者らの刊行物において開示されている実験データにより実証される。標準的なオキシドレダクターゼモチーフ及びCD1d結合NKT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの作用機序は、上記に引用されたPCT出願第2012/069568号及び本発明者らの刊行物において開示されている実験データにより実証される。
【0289】
本発明は、抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞(MHCクラスIIエピトープを含む本明細書に開示される免疫原性ペプチドを使用する場合)、又は抗原特異的細胞溶解性NKT細胞(CD1d分子に結合するNKT細胞エピトープを含む本明細書に開示される免疫原性ペプチドを使用する場合)を、インビボ又はインビトロのいずれかにおいて、本明細書に記載されるオキシドレダクターゼモチーフに連結されたT細胞エピトープ(それぞれ、MHCクラスII又はNKTエピトープ)を含むペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与することによって生成するための方法を提供する。
【0290】
本発明は、抗原特異的CD4+ T細胞又はNKT細胞の産生のためのインビボ方法について説明する。特定の実施形態は、動物(ヒトを含む)を、本明細書に開示されるペプチドをコードする非免疫原性RNAで免疫付与し、次いで、免疫付与した動物からCD4+ T細胞又はNKT細胞を単離することによって、CD4+ T細胞又はNKT細胞を産生させるか又は単離するための方法に関する。本発明は、APCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の産生のためのインビトロ方法について説明する。本発明は、APCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞及びNKT細胞を生成するための方法を提供する。
【0291】
一実施形態において、末梢血細胞の単離、インビトロでの本明細書に記載されるペプチドによる細胞集団の刺激、及び刺激された細胞集団の拡大、より具体的には、IL-2の存在下におけるものを含む、方法が、提供される。本発明による方法は、多数のCD4+ T細胞が産生され、抗原性タンパク質に特異的なCD4+ T細胞を生成することができる(抗原特異的エピトープを含むペプチドを使用して)という利点を有する。
【0292】
代替的な実施形態において、CD4+ T細胞は、インビボで、すなわち、対象への免疫原性ペプチド又は本明細書に記載されるそのようなペプチドをコードする非免疫原性RNAの注射及びインビボで生成された細胞溶解性CD4+ T細胞の回収によって、生成することができる。
【0293】
本発明の方法によって得ることができるAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞は、免疫療法のための哺乳動物への投与に、アレルギー反応の予防及び自己免疫疾患の処置において、特に関心が高い。同種及び自家の両方の細胞の使用が、想定される。
【0294】
細胞溶解性CD4+ T細胞集団は、本明細書に以下に記載されるように得られる。
【0295】
一実施形態において、本発明は、結果として、
(i)サイトカイン産生の増加、
(ii)接触依存性及び可溶性因子依存性の抗原提示細胞の排除の増加を含むがこれらに限定されない増加した活性を有する、特定のNKT細胞を拡大させる手段を提供する。結果は、したがって、細胞内病原体、自己抗原、好ましくは、1型糖尿病(T1D)、脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)若しくは視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)に関与する自己抗原に対するより効率的な応答である。
【0296】
本発明はまた、体液又は器官において要求される特性を有するNKT細胞の特定に関する。本方法は、NK1.1、CD4、NKG2D、及びCD244の発現を含む、それらの表面表現型を利用したNKT細胞の特定を含む。細胞を、次いで、CD1d分子によって提示され得るペプチドとして定義されるNKT細胞エピトープと接触させる。細胞を、次いで、IL-2又はIL-15又はIL-7の存在下において、インビトロで拡大させる。
【0297】
本明細書に記載される抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞は、医薬として使用され得、より具体的には、養子細胞療法、より具体的には急性アレルギー反応及び自己免疫疾患、例えば、1型糖尿病(T1D)、脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)若しくは視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)の再発の処置における使用のためのものであり得る。単離された細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞又は細胞集団、より具体的には、記載されるように生成される抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞集団は、(自己)免疫障害の予防又は処置のための医薬の製造のために使用される。単離又は生成された細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞を使用することによる処置の方法が、開示される。
【0298】
国際公開第2008/017517号において説明されているように、APCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞は、細胞の発現特徴に基づいて、天然のTreg細胞とは区別することができる。より具体的には、細胞溶解性CD4+ T細胞集団は、天然のTreg細胞集団と比較して、以下の特徴のうちの1つ又は複数を示す:
活性化されたときの、CD103、CTLA-4、Fasl、及びICOSを含む表面マーカーの発現の増加、CD25の中間発現、CD4、ICOS、CTLA-4、GITRの発現、及びCD127(IL7-R)の低い発現又は発現がないこと、CD27の発現がないこと、転写因子T-bet及びegr-2(Krox-20)の発現があるが、転写抑制因子Foxp3の発現はないこと、IFN-ガンマの高い産生、並びにIL-10、IL-4、IL-5、IL-13、又はTGF-ベータがないか又は少量であること。
【0299】
更に、細胞溶解性T細胞は、CD45RO及び/又はCD45RAを発現し、CCR7、CD27を発現せず、高レベルのグランザイムB及び他のグランザイム並びにFasリガンドを提示する。
【0300】
国際公開第2008/017517号において説明されるように、APCに対する細胞溶解性NKT細胞は、細胞の発現特徴に基づいて、非細胞溶解性NKT細胞とは区別することができる。より具体的には、細胞溶解性CD4 + NKT細胞集団は、非細胞溶解性NKT細胞集団と比較して、以下の特徴のうちの1つ又は複数を示す:NK1.I、CD4、NKG2D、及びCD244の発現。
【0301】
本明細書に記載されるペプチド又はそのようなペプチドをコードする非免疫原性RNAは、生きた動物、典型的にはヒトに投与されると、バイスタンダーT細胞に対して抑制活性を発揮する特定のT細胞を誘起するであろう。
【0302】
特定の実施形態において、本発明の細胞溶解性細胞集団は、FasL及び/又はインターフェロンガンマの発現によって特徴付けられる。特定の実施形態において、本発明の細胞溶解性細胞集団は、更に、グランザイムBの発現によって特徴付けられる。
【0303】
この機序はまた、本明細書に記載される非免疫原性RNAによってコードされるペプチドが、ある特定の抗原の特定のT細胞エピトープを含むとはいえ、前記ペプチドによって活性化されるT細胞の近傍にあるMHCクラスII分子又はCD1d分子によって同じ機序を通じて提示された場合、同じ抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫反応によって誘起される障害の予防又は処置に、又はある特定の状況において、他の異なる抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫反応によって誘起される障害の処置にさえも、使用することができること(バイスタンダー作用)を意味し、また、実験結果によりそれが示される。
【0304】
更に、抗原特異的である、すなわち、抗原特異的免疫応答を抑制することができる、上述の特徴を有する細胞型の単離された細胞集団が、開示される。
【0305】
本発明は、本発明による1つ又は複数のペプチドをコードする1つ又は複数の非免疫原性RNA種を含み、薬学的に許容される担体を更に含む、医薬組成物を提供する。上記に詳述されるように、本発明はまた、医薬としての使用のための組成物、又は組成物を使用して免疫障害について哺乳動物を処置する方法、並びに免疫障害の予防又は処置のための医薬の製造のための組成物の使用に関する。医薬組成物は、例えば、(自己)免疫障害、特に、空気伝搬性アレルギー及び食物アレルギー、並びにアレルギー起源の疾患を処置又は予防するのに好適なワクチンであり得る。
【0306】
活性成分を単独で投与することは、可能であるが、それらは、典型的には医薬製剤として提示される。本明細書に記載される獣医学用及びヒト用の両方の使用のための製剤は、上述のように少なくとも1つの活性成分を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と一緒に含む。本発明は、活性成分として、本明細書に記載される1つ又は複数のペプチドをコードする非免疫原性RNAを、薬学的に許容される担体と混合して含む、医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性成分、例えば、処置又は予防の方法に関して以降に示されるものを含む。任意選択で、組成物は、他の治療成分を更に含む。好適な他の治療成分、並びにそれらが属するクラスに応じたそれらの通常の投薬量は、当業者に周知であり、(自己)免疫障害を処置するために使用される他の公知の薬物から選択され得る。
【0307】
本発明による非免疫原性RNAは、部分的、全身的、経口(固体形態又は吸入)、直腸、鼻内、局所(眼内、頬側、及び舌下を含む)、腟内、並びに非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、髄腔内、及び硬膜外を含む)を含む、異なる経路を通じて投与することができる。好ましい投与経路は、例えば、レシピエントの状態又は処置しようとする疾患により変動し得る。本明細書に記載されるように、担体は、最適には、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で、「許容」される。製剤は、経口、直腸、鼻内、局所(頬側及び舌下を含む)、腟内、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、髄腔内、及び硬膜外を含む)投与に好適なものが挙げられる。
【0308】
MHCクラスII T細胞エピトープを含む本明細書に記載されるペプチドをコードする非免疫原性RNAは、(未成熟)樹状細胞に送達され、樹状細胞が表面上にペプチドを提示し、APCとなる。これらの細胞は、(1)MHC-クラスII依存性同種活性化の後にAPCアポトーシスを誘導し、インビトロ及びインビボで示されるように、樹状細胞及びB細胞の両方に影響を及ぼし、(2)接触依存性機序によって、バイスタンダーT細胞を抑制する、細胞溶解性CD4+ T細胞を誘導する。細胞溶解性CD4+ T細胞は、国際公開第2008/017517号において詳細に考察されているように、天然及び適応Tregのいずれとも区別され得る。
【0309】
CD1d分子に結合する能力を付与する疎水性残基を含む本明細書に記載されるペプチドをコードする非免疫原性RNA。投与すると、RNAは、(未成熟)樹状細胞に取り込まれ、後期エンドソームへと指向され、そこで、CD1dにロードされ、APCの表面上に提示される。CD1d分子によって提示されると、コードされるペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフは、NKT細胞を活性化する能力を強化し、細胞溶解性NKT細胞となる。前記コードされるペプチドは、サイトカイン、例えば、lFN-ガンマの産生を活性化し、これが、CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞を含む他のエフェクター細胞を活性化するであろう。CD4+及びCD8+ T細胞のいずれも、国際公開第2012/069568号において詳細に考察されているように、抗原を提示する細胞の排除に関与し得る。
【0310】
本発明は、ここで、以下の実施例を用いて例示され、これらは、限定する意図をまったく有することなく提供されている。更に、本明細書に記載されるすべての参考文献は、参照により本明細書に明示的に含まれる。
【実施例
【0311】
(実施例1)
材料及び方法
フローサイトメトリー分析
蛍光活性化細胞分取(FACS)表面及び細胞内抗体は、eBioscience社又はBD Pharmingen社から購入し、製造業者のプロトコールに従って使用することができる。使用される抗体は、以下であり得る:CD11b、CD11c、CD19、CD4、CD40L、CD49b、CD69、CD8、CD86、CD90.1、IFNγ、及びIL-17A。異なる器官に由来する単一細胞懸濁液を、細胞外マーカーに関して、4℃で30分間染色する。IFΝγ、1L-17A、及びCD40Lの細胞内サイトカイン染色のために、細胞を、記載されるように単離し、更に、MOG35-55ペプチド(濃度15μg/ml)、モネンシン(GolgiStop、BD-Bioscience社)、及びブレフェルジンAを含む培養培地において、37℃、5% CO2で6時間刺激する。生-死染色(生存性色素eFluor(登録商標)506、eBioscience社)及び細胞表面マーカーの染色を行った後、細胞を、BD Biosciences社から得たCytofix/Cytoperm及びPerm/Wash緩衝液を製造業者のプロトコールに従って使用して透過処理する。細胞を、4℃で30分間、細胞内抗体とともにインキュベートし、Perm/Washで2回洗浄した後、FACS分析を行う。サンプルを、FACS Canto IIで取得し、FlowJo(Tree Star社)ソフトウェアを使用することによって分析する。
【0312】
インビボ生物発光イメージング(BLI)
脾臓細胞における非免疫原性mRNAの翻訳効率を、Xenogen IVIS Spectrumインビボイメージングシステム(Caliper Life Sciences社)を使用して調査する。非免疫原性LUC-mRNAのRNA-LPX免疫付与の6時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後に、マウスに、D-ルシフェリンの水性溶液(250μl、PBS中1.6mg)(BD Biosciences社)を腹腔内注射する。5分後に、脾臓からのシグナル強度を、目的の領域(ROI)におけるインビボ生物発光によって定義及び測定し、IVIS Living Image 4.0ソフトウェアを使用して全発光量(光子/秒)で定量する。取得時間は、4ビニングで1分間である。生きたマウスの生物発光イメージング中、マウスは、2.5%の用量のイソフルラン/酸素混合物で麻酔した。生きた動物の放出された光子のLUCシグナル強度は、黒色がもっとも弱く白色がもっとも強力な生物発光シグナルであるグレースケール画像として表示される。マウスの画像を、IVIS Living Imageソフトウェアを使用して分析する。
【0313】
磁気活性化細胞分取(MACS)
CD4+ T細胞は、MACS(Miltenyi Biotec社)を製造業者の説明書に従って使用して、陽性選択によってマウス脾臓及びリンパ節から単離することができる。CD4+ T細胞を、CD4(L3T4)マイクロビーズを使用して精製する。
【0314】
骨髄由来のDC(BMDC)の生成
骨髄(BM)細胞を、マウスの大腿骨及び脛骨から抽出し、10% FBS(Biochrom社)、1%ピルビン酸ナトリウム100x(Gibco社)、1%MEM NEAA 100x(Gibco)、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社)、50μΜ 2-メルカプトエタノール(Life Technologies社)、及び1000U/ml樹状細胞(DC)分化因子顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(Peprotech社)を補充したRPMI 1640+GlutaMAX-I培地(Gibco)中、37℃で組織培養フラスコにおいて培養する。6日目に、2×106個のDC/mlを、37℃で3時間、MOG35-55ペプチド(15μg/ml)とともに事前インキュベートし、次いで、96ウェルプレートにおいて、総体積200μlの培地中で、T細胞と共培養する。
【0315】
適応T細胞移入及びインビボ増殖アッセイ
増殖研究について、マウスから得られた濃縮したCD4+ T細胞を、CTVで製造業者の説明書に従って標識し(CellTrace Violet細胞増殖キット、Thermo Fisher Scientific社)、計数し、7×106個の細胞を、200μlのPBS中、麻酔下のナイーブマウスのレシピエントマウスの後眼窩静脈叢に静脈内注射する。翌日、マウスに、野生型MOG35-55エピトープ又はIMCY-0189をコードする非免疫原性mRNAを10、20、又は40μgで用いて免疫付与を行う(以下の配列を参照されたい)。対照マウスには、20μgの非免疫原性の無関係のmRNA又は生理食塩水のいずれかを受容させる。細胞移入から4日後に、マウスを殺処分し、細胞を、フローサイトメトリーによって増殖に関して分析する。
【0316】
ELISA
マウスIFN-aの検出は、RNA-免疫付与の6時間後に、マウス血清において標準的なELISAアッセイを製造業者の説明に従って使用して、ELISA(PBL)によって行うことができる。
【0317】
脾臓、LN、及びCNS浸潤物の単離
すべての細胞ベースの分析は、脾臓、リンパ節、及びCNS器官の単一細胞懸濁液において行うことができる。簡単に述べると、脾臓及びLNを、1mg/mlのコラゲナーゼD及び0.1mg/mlのDNaselとともに15分間インキュベートし、次いで、PBSですすぎながら70μm細胞ストレーナーを通して潰す。赤血球溶解(低張溶解緩衝液:1gのKHCO3及び8.25gのNH4Clを1LのH2O及び200μlの0.5M EDTA中に溶解)を、脾細胞の単一細胞懸濁液に行う。PBSでの更なる洗浄工程の後、細胞を、Vi-Cell細胞計数装置で計数する。
【0318】
CNS浸潤物を脳及び脊髄から単離するために、マウスを、ケタミン-ロンプンで麻酔し、0.9% NaClを使用して左心室から灌流する。脳及び脊髄を、手作業で摘出し、小片に切断し、コラゲナーゼD(1mg/ml)及びDNase I(0.1mg/ml)を含むPBS++(カルシウム及びマグネシウムを含むPBS、Gibco社)において、37℃で20分間消化させる。消化させた組織を、次いで、組織片をシリンジで吸引し、15mlのfalconチューブの壁部に再度押し出すことによって、手作業でホモジナイズする。これを、組織片が見えなくなるまで最大10回行う。単一細胞懸濁液を、70% Percoll中に再懸濁させ、30:37 Percoll勾配で層化する。最終的なPercoll勾配は、30:37:70%であり、300gで40分間、室温で遠心分離する。70%及び37% Percollの相間にある単核細胞の層を、2% FCS/PBSで洗浄した後、更なる分析を行う。
【0319】
(実施例2)
脾細胞の活性化に関する非免疫原性mRNAの試験
脾細胞の活性化及び使用した非免疫原性mRNAの翻訳効率を分析するために、マウスに、上述のようにF12リポソームと複合体を形成したルシフェラーゼ-mRNA(10μg)を、後眼窩静脈叢に静脈内注射することができる。ルシフェラーゼ活性を、例えば、RNA-LPX注射の6時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後にインビボイメージングによって評価する。非免疫原性mRNAでのマウスの免疫付与は、LUC-mRNAの持続的な高い翻訳をもたらすはずである。結果として、LUCタンパク質発現は、一般的に、mRNA免疫付与の最大72時間後まで、検出することができる。
【0320】
更に、非免疫原性mRNAでのマウスの免疫付与は、未処置対照マウスと同様に、活性化マーカー、DC上のCD86及びリンパ球上のCD69の上方調節をもたらさないはずである。非免疫原性LUC-mRNAで免疫付与したマウスにおいて、IFNaも、mRNA免疫付与の6時間後に血液中に検出されないはずである。
【0321】
(実施例3)
非免疫原性mRNAの特徴付け
治療的適用において、非免疫原性mRNAを使用して、特定の疾患関連抗原を樹状細胞に送達して、免疫活性化を伴わない抗原提示を確実に行う。N(1)-メチルシュードウリジン(m1ψ)をmRNAに組み込むことにより、細胞におけるタンパク質発現が増強され、哺乳動物細胞株、並びにマウスにおいてインビボでのmRNAの免疫原性が低減されることが、示されている(Andriesら、2015、J Control Release. 217、337-344)。この作用は、エンドソームToll様受容体3(TLR3)の活性化及び下流の自然免疫シグナル伝達を回避するmRNAの能力の増加に依存する可能性がもっとも高い(Andriesら、2015)。更に、インビトロ転写中、mRNAへの組込みにヌクレオシドウリジンの代わりにN(1)-メチルシュードウリジン(m1ψ)を使用するために、合成mRNAのHPLC精製もまた、行うことができる。これにより、更なる免疫活性化が排除され、ヌクレオシドが改変されたタンパク質をコードするmRNAの翻訳が改善される(Karikoら、2011、Nucleic Acids Res. 39、el42)。HPLC精製により、残りの二本鎖mRNA混入物が、mRNAのインビトロ転写後に除去され、インターフェロンシグナル伝達及び炎症性サイトカインを誘導しないmRNAが得られる(Karikoら、2011)。ヌクレオシド精製mRNAの精製のための代替的な方法は、セルロース精製である(欧州第20167059056号)。
【0322】
治療適用に使用されるmRNAが、実際に非免疫原性であるかどうかを調査するために、バイオアナライザー及びドットブロット分析を行って、mRNAの完全性及び純度を確認することができる。
【0323】
mRNAの品質管理のためのドットブロット分析
インビトロで転写された改変されておりHPLCにより精製されたmRNAを、ドットブロットによって二本鎖mRNA(dsRNA)について分析する。1μgの異なるmRNAコンストラクトを、NYTRAN SPC膜(GE Healthcare社)にロードし、ブロッキングし、次いで、dsRNAの検出のために、J2抗体(SCICONS English and Scientific Consulting社)とともにインキュベートする。二次抗体として、抗マウスHRP抗体(Jackson ImmunoResearch社)を使用し、膜を、BioRad ChemiDocで分析する。
【0324】
(実施例4)
2つのシステインの間に異なる数のアミノ酸を含むオキシドレダクターゼモチーフを有する免疫原性ペプチド(C-XN-C)及びそれをコードする非免疫原性RNAの設計。
IMCY-0443及びIMCY-0189ペプチドを、設計した(Table 1(表5))。それらは、オキシドレダクターゼモチーフ(H)CPYC(配列番号34及び35)、リンカーGW、マウスミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)MHCII T細胞エピトープYRSPFSRVV(配列番号36)、及びフランキング配列HLYR(配列番号705)を含む。IMCY-0443及びIMCY-0189のバリアントもまた、配列が、オキシドレダクターゼモチーフの2つのシステイン間に異なる数のアミノ酸を有するように改変されている様式で、設計した(Table 1(表5))。塩基性アミノ酸(K又はR)を、バリアントのオキシドレダクターゼモチーフのN末端又は内部に付加した。システイン残基の代わりにアラニンを有する対照ペプチドもまた、合成した(いわゆるAA対照)。IMCY-0017(MHCII T細胞エピトープYRSPFSRVV-配列番号704を含む野生型MOG35-55ペプチドに対応する)、IMCY-0069(古典的なオキシドレダクターゼモチーフHCPYC(配列番号24)及び改変されたプレプロインスリンエピトープを含むペプチド)、並びにIMCY-0257(古典的なオキシドレダクターゼモチーフHCPYC(配列番号24)及びDBY抗原エピトープを含むペプチド)もまた、対照として設計した(Table 1(表5))。
【0325】
【表5】
【0326】
ペプチドをコードする非免疫原性mRNAの生成
IMCY-0189及びIMCY-0017(野生型MOG35-55)をコードする、ウリジンの代わりにN(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む非免疫原性mRNA(m1ψ mRNAと略される)を、以下のように生成した。
【0327】
インビトロ転写のためのDNA鋳型の生成
インビトロ転写のためのDNA鋳型を、ギブソンアセンブリ方法を使用して、pmRVacベクターに以下のコーディング配列を挿入することによって生成した:
- IMCY-0189m1ψ mRNA(配列番号768-DNA配列)については、
【0328】
【化1】
【0329】
ペプチド:M-HCPYC-GWYRSPFSRVVHLYR(配列番号767)をコード
- MOG35-55m1ψ mRNA(配列番号769- DNA配列)については、
【0330】
【化2】
【0331】
ペプチド:MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号720)をコード
- IMCY-0098m1ψ mRNA(配列番号790-DNA配列)については、
【0332】
【化3】
【0333】
ペプチド:M-HCPY-CSLQPLALEGSLQKRG(配列番号791)をコード
- IMCY-0141m1ψ mRNA(配列番号792-DNA配列)については、
【0334】
【化4】
【0335】
ペプチド:M-KHCPYC-VRYFLRVPSWKITLFKK(配列番号793)をコード
【0336】
pmRVacベクターは、T7プロモーター配列、コザック配列を有する5’ UTR、3’ UTR、110ntのセグメント化されたポリA、及びランオフ転写のためのSapI制限酵素部位を含む。挿入部位は、UTRの間であった。ギブソンアセンブリ反応産物を、大腸菌に形質転換させ、カナマイシンを含むLBに播種した。結果として得られたコロニーを、PCRによってスクリーニングして、陽性挿入事象を特定した。PCR陽性クローンを、制限消化及びサンガーシーケンシングによって更に評価した。正しいプラスミドを、LB培地で培養し、エンドトキシン不含のプラスミドミディプレップキットを使用して精製した。プラスミドDNAの濃度及び純度を、UV-Vis分光測色計で測定し、次いで、SapI制限酵素を使用して直鎖状にした。
【0337】
mRNA合成
Cap1 mRNAを、T7インビトロ転写方法、並びに後続の酵素キャッピング及びメチル化によって生成した。キャッピングされていないインビトロRNA転写産物を産生させるために、直鎖状DNA鋳型を、T7 RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド三リン酸(NTP)、及びマグネシウム含有緩衝液と混合して、インビトロ転写反応を設定した。反応混合物を、37℃で2時間インキュベートした。N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を、インビトロ転写において、UTPの代わりに使用した。
【0338】
Cap1 mRNAを、ワクシニアキャッピング系を使用して産生させた。キャッピングされていない転写産物を加熱によって変性させた後、ワクシニアキャッピング酵素、2’-Oメチルトランスフェラーゼ、GTP、S-アデノシルメチオニン(SAM)、及びキャッピング緩衝液を添加して、キャッピング反応を設定した。反応混合物を、37℃で1時間インキュベートした。続いて、鋳型DNAを、DNase I処置によって除去した。
【0339】
キャッピングされた転写産物を、磁気ビーズを使用して更に精製した。単離されたmRNAを、酸性緩衝液で溶出させ、-80℃で保管した。mRNAの濃度及び純度を、UV-Vis分光測色計で測定した。mRNAの完全性を、変性アガロースゲル分析によって測定した。mRNAシーケンシングを使用して、mRNA分子を特定した。
【0340】
mRNAはまた、HPLC又はセルロース処置によって更に精製することができる。HPLC精製については、Weissmanら、2013 (Methods Mol Bio. 969、43-43)のプロトコールを適合させ、mRNAの溶出を、38%-70%の緩衝液Bの勾配を用いて行う。すべての生成されたmRNAについて、品質管理(バイオアナライザー及びドットブロット分析)を行って、mRNAの純度及び完全性を確認した。
【0341】
脂質ナノ粒子(LNP)へのmRNAの封入
脂質(イオン化可能カチオン性脂質SM-102、ヘルパー脂質DSPC、コレステロール、及びPEG化脂質PEG2000-DMG)を、最適なモル比で、エタノール中に溶解させた。mRNAを、クエン酸ナトリウムの酸性化緩衝液中で、所望される濃度まで希釈した。マイクロ流体ミキサーを使用して脂質をmRNAと混合することによって、LNPを産生させた。続いて、LNPを、透析カセットにおいて、スクロースを有するTris-HCl緩衝液に対して、透析した。
【0342】
透析の後に、LNPを、0.22μmのフィルターに通し、-80℃で保管した。RiboGreenアッセイを使用して、LNP中のmRNAを定量した。粒径及び表面電荷を、動的光散乱及びZetasizerデバイスを使用したゼータ電位によって判定した。エンドトキシンレベルを、カイネティッククロモジェニックTALアッセイによって測定した。
【0343】
LNP分散液を、20mM Tris、87mg/mLスクロース、10.7mM酢酸ナトリウム、pH7.5において調製した。
【0344】
(実施例5)
マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)発症に対するペプチドをコードする非免疫原性RNAの投与の作用
マウス及び投薬の群
C57BL/6雌性マウス(The Jackson Laboratory社、0日目時点で9週齢)を使用した。マウスは、研究の開始前に7日間順応させた。マウスを、Table 2(表6)に従って3つの群(1群当たり16匹)に割り当てた。マウスの分配は、研究の開始時点で群全体にわたって類似の平均体重を達成するようなバランスの取れた様式で行った。
【0345】
【表6】
【0346】
マウスにおけるEAEの誘導
EAEを、すべてのマウスにおいて、以下の通り誘導させた:
0日目、0時間:MOG35-55/CFAでの免疫付与
0日目、2時間:百日咳毒素の注射
1日目、0時間:百日咳毒素の2回目の注射(初回免疫付与の24時間後)
【0347】
マウスには、Hooke Kit(商標)MOG35-55/CFA Emulsion PTX、カタログ番号EK-2110(Hooke Laboratories社、Lawrence MA)のエマルション成分(MOG35-55を含む)を背中の部位2か所に皮下注射した。注射の第1の部位は、上背部、ネックラインのおよそ1cm尾側であった。第2の部位は、下背部、尾部の付け根のおよそ2cm頭蓋骨側であった。注射体積は、それぞれの部位で0.1mLであった。
【0348】
エマルションの注射から2時間以内に、及びエマルションの注射から24時間後に再度、キットの百日咳毒素成分を、腹腔内投与した。
【0349】
RNAの調製及び処置
EAEモデルにおける防御免疫性を判定するために、マウスを、疾患誘導後7日目及び10日目に、10.2(7日目)又は4.8(10日目)μgのTable 1(表5)に提示される非免疫原性のLNPに封入されたMOG35-55(IMCY-0017)又はIMCY-0189ペプチドをコードするm1ψ RNAで処置した。mRNAは、酸素-イソフルランヴェポライザー(2.5%イソフルラン)を使用して麻酔下において、尾静脈に静脈内注射した。
【0350】
群1:ビヒクル(Tris緩衝液)
25匹のマウスのための調製(16匹のマウスの注射)
2000μlの20mM Tris緩衝液を調製し、尾静脈に静脈内注射した(7日目は1×85μL/マウス、10日目は1×40μL/マウス)。
【0351】
群2:MOG35-55mRNA/LNP(MOG35-55_m1ψ)
25匹のマウスのための調製(16匹のマウスの注射)
LNP/mRNA溶液のバイアルを、室温で10分間解凍し、5秒間ボルテックスし、4つのバイアルをプールして、2000μLのストックを120μg/mLで得た。mRNAを、次いで、尾静脈に静脈内注射した(7日目は1×85μL/マウス、10日目は1×40μL/マウス)。
【0352】
群3:IMCY-0189 mRNA/LNP(IMCY-0189_m1ψ)
25匹のマウスのための調製(16匹のマウスの注射)
LNP/mRNA溶液のバイアルを、室温で10分間解凍し、5秒間ボルテックスし、4つのバイアルをプールして、2000μLのストックを120μg/mLで得た。mRNAを、次いで、尾静脈に静脈内注射した(7日目は1×85μL/マウス、10日目は1×40μL/マウス)。
【0353】
リードアウト
EAEスコアを、リードアウトとして使用した。7日目から研究の終了まで、動物を、毎日スコア付けする。スコア付けを行う人物は、それぞれのマウスの処置及び前のスコアのいずれも認識していない(盲検でのスコア付け)。EAEは、0から5のスケールでスコア付けする。臨床兆候が、以下に定義されるスコアの2つの間に入る場合は、中間のスコアを割り当てる。
【0354】
【表7】
【0355】
統計学的分析
曲線下面積(AUC)及び平均最大スコア(MMS)のデータを、処置群とビヒクル群とをそれぞれ比較する対応のないt検定を行うことによって分析した。有意差を、以下の通り示す:*p<0.05、**p<0.01。
【0356】
結果
EAEスコア付け
EAE発症を、すべての群の臨床EAEリードアウトをビヒクル群と比較することによって評価した。EAEスコア付け、AUC(曲線下面積)、及びMMS(平均最大スコア)を、図1、2、及び3に提示する。
【0357】
ビヒクル群(陰性対照)のマウスは、このモデルの予測範囲内でEAEを発症した。この群の4匹のマウスは、重度のEAEに起因して死亡した。
【0358】
IMCY-0189m1ψ又はMOG35-55m1ψのいずれかで処置したマウスは、いずれも、疾患の発症の遅延(図1)及びEAEスコアから計算されるAUCの統計的に有意な低減を示した(図2)。これらの群のそれぞれにおいて、5匹のマウスが死亡した。IMCY-0189m1ψ処置はまた、ビヒクル対照群と比較して、統計学的に有意なMMS低減も誘導した。MOG35-55m1ψ処置は、いずれの統計学的に有意なMMS低減も誘導しなかった。本発明者らは、IMCY-0189m1ψが、マウスEAE処置において、MOG35-55m1ψよりも良好であると結論付ける。
図1
図2
図3
【配列表】
2024520030000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドをコードする非免疫原性RNAであって、前記ペプチドが、
a)オキシドレダクターゼモチーフと、
b)抗原性タンパク質のT細胞エピトープと、
c)a)とb)との間の0~7個のアミノ酸、好ましくは、0~4個のアミノ酸のリンカーと、
を含み、
前記オキシドレダクターゼモチーフa)が、以下の一般構造:
[CST]XXC-又はCXX[CST]- (配列番号1又は2)
を含み、
式中、Xが、任意のアミノ酸であり、
[CST]が、単一のセリン、スレオニン、又はシステイン残基を示し、
前記オキシドレダクターゼモチーフにおけるハイフン(-)が、リンカー若しくはT細胞エピトープのN末端、又はリンカー若しくはT細胞エピトープのC末端へのオキシドレダクターゼモチーフの結合点を示す、
非免疫原性RNA。
【請求項2】
コードされるペプチドの第1のアミノ酸が、メチオニンである、請求項1に記載の非免疫原性RNA。
【請求項3】
改変されたヌクレオチドの組込み及びdsRNAの除去によって非免疫原性となる、請求項1又は2に記載の非免疫原性RNA。
【請求項4】
改変されたヌクレオチドが、1つ又は複数のウリジンの、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドとの置き換えを含み、好ましくは、改変された核酸塩基が、改変されたウラシルである、請求項3に記載の非免疫原性RNA。
【請求項5】
改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジン又は5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3 ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、及び5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群から選択され、好ましくは、改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、シュードウリジン(ψ)、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、又は5-メチル-ウリジン(m5U)である、請求項4に記載の非免疫原性RNA。
【請求項6】
改変された核酸塩基を含むヌクレオシドが、N(1)-メチル-シュードウリジン(m1ψ)である、請求項4に記載の非免疫原性RNA。
【請求項7】
非免疫原性RNAが、送達ビヒクルにおいて製剤化され、好ましくは、送達ビヒクルが、粒子、脂質、又はカチオン性脂質を含む、請求項1に記載の非免疫原性RNA。
【請求項8】
脂質が、非免疫原性RNAと複合体を形成する、及び/若しくはそれを封入するか、又は非免疫原性RNAが、リポソームにおいて製剤化される、請求項7に記載の非免疫原性RNA。
【請求項9】
前記オキシドレダクターゼモチーフが、配列番号24~35のうちのいずれか1つによって定義される配列を含む、請求項1に記載の非免疫原性RNA。
【請求項10】
9~50個のアミノ酸、好ましくは、9~30個のアミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドをコードする、請求項1に記載の非免疫原性RNA。
【請求項11】
前記免疫原性ペプチドにおけるオキシドレダクターゼモチーフが、前記抗原性タンパク質におけるT細胞エピトープのN末端又はC末端の11個のアミノ酸の領域内のアミノ酸配列に天然に存在しない、且つ/又は前記T細胞エピトープが、そのアミノ酸配列に前記オキシドレダクターゼモチーフを天然に含まない、請求項1に記載の非免疫原性RNA。
【請求項12】
前記T細胞エピトープが、7~25個のアミノ酸、好ましくは、9~25個のアミノ酸の長さを有するMHCクラスII T細胞エピトープであるか、又はペプチドにおける前記T細胞エピトープが、7~25個のアミノ酸の長さを有するNKT細胞エピトープである、請求項1に記載の非免疫原性RNA。
【請求項13】
請求項1に記載の非免疫原性RNAと、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
対象における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性同種因子、アレルゲン曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されるウイルスベクターに対する免疫応答から選択される疾患又は状態を処置又は予防する方法における使用のための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象において細胞溶解性CD4+ T細胞を誘導するための組成物であって、請求項1に記載のペプチドをコードする非免疫原性RNA、又は請求項13に記載の医薬組成物を含む、組成物
【請求項16】
対象が、自己免疫疾患を有する、請求項15に記載の組成物
【請求項17】
自己免疫疾患が、1型糖尿病(T1D)、脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)若しくは視神経脊髄炎(NMO)、又はリウマチ性関節炎(RA)を含む群から選択される、請求項16に記載の組成物
【請求項18】
前記抗原性タンパク質が、(プロ)インスリン、GAD65、GAD67、IA-2(ICA512)、IA-2(ベータ/フォグリン)、IGRP、クロモグラニン、ZnT8、及びHSP-60からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、1型糖尿病(T1D)である、請求項16に記載の組成物
【請求項19】
前記抗原性タンパク質が、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、及びオリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)からなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、多発性硬化症(MS)及び/又は視神経脊髄炎(NMO)である、請求項16に記載の組成物
【請求項20】
前記抗原性タンパク質が、GRP78、HSP60、60kDaシャペロニン2、ゲルゾリン、キチナーゼ-3様タンパク質1、カテプシンS、血清アルブミン、及びカテプシンDからなる群から選択され、前記自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)である、請求項16に記載の組成物
【請求項21】
前記抗原性タンパク質が、腫瘍又はがん抗原、例えば、がん遺伝子、がん原遺伝子、ウイルスタンパク質、生存因子、又はクローンタイプ若しくはイディオタイプ決定基であり、前記疾患が、がんである、請求項15に記載の組成物
【請求項22】
前記非免疫原性RNAが、MOGのT細胞エピトープ、より好ましくは、MHCクラスII T細胞エピトープYRSPFSRVV(配列番号704)、FLRVPCWKI(配列番号4)、又はFLRVPSWKI(配列番号5)を含むペプチドをコードする、請求項19に記載の組成物
【請求項23】
前記非免疫原性RNAが、配列番号778によって定義される、請求項19に記載の組成物
【請求項24】
前記非免疫原性RNAによってコードされるペプチドが、配列番号777又は707によって定義される、請求項19に記載の組成物
【請求項25】
前記非免疫原性RNAが、インスリンのT細胞エピトープを含む、好ましくは、MHCクラスII T細胞エピトープLALEGSLQK(配列番号3)を含むペプチドをコードする、請求項18に記載の組成物
【国際調査報告】