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特表2024-520041洗浄に最適化したばねユニットを有する医療器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】洗浄に最適化したばねユニットを有する医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61B17/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572975
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022063927
(87)【国際公開番号】W WO2022248415
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021113559.1
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ダーメン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG06
4C160GG08
(57)【要約】
本発明は、医療用、詳細には、外科用の器具(1)に関し、器具(1)は、互いに対して回動可能であるように取り付けられている2つのハンドル要素(10、12)と、ばねユニット(14)であって、2つのばね端部(20、22)を有し、各ばね端部は、2つのハンドル要素(10、12)のうちの少なくとも1つが開始位置から回動されると、ばねユニット(14)は、前記ハンドル要素を開始位置に戻すように回動させることができるように、2つのハンドル要素(10、12)のうちの1つに接続されている、ばねユニット(14)と、を備えており、ばねユニット(14)は、ハンドル要素(10、12)が回動されるときに実質的に一定のばね力を提供するように構成され、詳細には、少なくとも2つの部分で形成され、第1のばね脚部(16)と第2のばね脚部(18)を備え、2つのばね端部(20、22)の少なくとも1つは、関連するハンドル要素(10、12)に形成される凹部内に突出し、詳細には、凹部とばね端部(20、22)との間の隙間が器具環境に対して密閉して封止されるように、関連するハンドル要素(10、12)に物質的に接着されている。本発明はまた、追加の独立請求項による医療用の器具の製造方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用の器具、特に、外科用の器具(1)であって、
材料として金属を有し、詳細には、全体として材料としての金属から作られており、軸受を介して、詳細には、接合部を介して、互いに相対的に回動可能に取り付けられている、2つの把持要素(10、12)と、
ばねユニット(14)であって、前記2つの把持要素(10、12)のうちの少なくとも1つが基本状態から回動するときに、前記ばねユニット(14)を介して、前記基本状態に戻る回動が可能となるように、前記2つの把持要素(10、12)のうちの1つにそれぞれ連結されている2つのばね端部(20、22)を有する、ばねユニット(14)と、を有しており、
前記ばねユニット(14)は、前記2つのばね端部(20、22)の少なくとも1つから、好ましくは、両方の前記ばね端部(20、22)から、前記軸受、詳細には、接合部に向かって延在し、前記把持要素(10、12)が回動するときに実質的に一定のばね力を提供するように構成されており、詳細には、少なくとも2つの部分で形成され、第1のばね脚部(16)及び第2のばね脚部(18)を有し、
前記2つのばね端部(20、22)の少なくとも1つは、関連する前記把持要素(10、12)に形成されるくぼみ(24)内に突出し、及び/又は、詳細には、前記くぼみ(24)と前記ばね端部(20、22)との間の隙間が、器具環境に対して密閉して封止されるように、前記関連する把持要素(10、12)に強固に接着されている、医療用の器具(1)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記ばね端部(20、22)及び前記関連する把持要素(10、12)は、詳細には、前記ばね端部(20、22)の外面と、他方の前記把持要素(10、12)に対向する前記関連する把持要素(10、12)の内面(26、28)との間の接触領域において、溶接及び/又ははんだ付けされ、詳細には、添加剤を用いてろう付けされ、及び/又は、接着されている、請求項1に記載の医療用の器具(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ばね端部(20、22)、詳細には、2つの前記ばね脚部(16、18)の少なくとも1つは、詳細には、突出した前記ばね端部(20、22)と、前記関連する把持要素(10、12)との間に、少なくとも30°、好ましくは少なくとも45°、最も好ましくは少なくとも70°、詳細には90°ちょうどのカンチレバー角度(α)を有する、請求項1又は2に記載の医療用の器具(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記ばね脚部(16、18)は、板ばね又はばね鋼線として構成され、詳細には、材料として、素材X20CR13又はDIN EN 10088での素材1.4021を有し、詳細には、全体がこの材料で作られている、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
【請求項5】
前記ばねユニット(14)は、2つの板ばね又は2つのばね鋼線の形態で2つの部分で構成され、
前記2つの部分は、遠位ばね連結部(30)を介して、詳細には、遠位フォークノーズ接続(32、34)又は遠位球体パン接続(48、50)又は遠位Y-t接続(38、40)を介して、互いに着脱可能に連結されている、請求項4に記載の医療用の器具(1)。
【請求項6】
2つの前記ばね脚部(16、18)の少なくとも1つ、詳細には、両方は、詳細には、第1の近位曲げ半径(60)、及び/又は、対向する、詳細には、より大きい遠位曲げ半径(62)を有するS字形状であり、
好ましくは、前記近位曲げ半径の接線部分の間の曲げ角度は、90°であり、及び/又は、前記遠位曲げ半径は、45°である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
【請求項7】
前記くぼみ(24)は、止まり穴又は溝又はスリット、詳細には、通路状のスリットであり、詳細には、少なくとも2mm及び/又は最大6mmの深さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
【請求項8】
前記ばねユニット(14)、詳細には、前記第1のばね脚部(16)及び/又は前記第2のばね脚部(18)が、少なくとも前記基本状態において、詳細には、前記把持要素(10、12)が互いに対して回動された全ての位置において、接続点として前記ばね端部(20、22)においてのみ前記関連する把持要素(10、12)と接触するように、前記ばねユニット(14)は、前記把持要素(10、12)に対して構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
【請求項9】
ばねユニットを備える医療用の器具、詳細には、請求項1~8のいずれか一項に記載の器具(1)を製造する方法であって、詳細には以下の順序の、
少なくとも1つのばね脚部(16、18)、詳細には、板ばね又はばね鋼線を曲げるステップ(S1)と、
前記ばね脚部(16、18)の遠位部又は遠位端を形成するステップ(S2)であって、詳細には、押圧及び/又は研削する、好ましくは、遠位の丸みを研削する、形成するステップ(S2)と、
前記少なくとも1つのばね脚部(16、18)を、把持要素(10、12)に形成される、詳細には、止まり穴又は溝の形態のくぼみ(24)に挿入するステップ(S3)と、
前記ばね脚部(16、18)を関連する前記把持要素(10、12)に対して、詳細には、前記ばね脚部(16、18)の挿入された端部の延在部を、前記医療用の器具の軸受、好ましくは、接合部へ向けて、好ましくは方向付けるステップ(S4)であって、前記軸受を介して、前記把持要素は互いに関して回動可能に取り付けられる、方向付けるステップ(S4)と、
前記ばね脚部(16、18)を前記関連する把持要素(10、12)に強固に接着させて接続するステップ(S5)であって、詳細には、溶接及び/又ははんだ付けする、強固に接着させて接続するステップ(S5)と、を備える、方法。
【請求項10】
前記強固に接着させて接続するステップ(S5)の後に、前記関連する把持要素とともに前記ばね脚部を焼き戻すステップ(S6)を備え、
及び/又は、前記関連する把持要素(10、12)とともに前記ばね脚部(16、18)を、ブラッシングするステップ(S7)、及び/又は、サンドブラストするステップを備える、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用、特に、外科用器具、好ましくは、手動で操作可能な手用器具であって、少なくとも(第1及び第2の)2つの把持要素であって、把持要素は、材料として、詳細には、金属を有し、特に好ましくは、全体として材料としての金属(例えば素材としてステンレス鋼)から作られており、軸受を介して、詳細には接合部を介して互いに相対的に回動可能に取り付けられている、少なくとも2つの把持要素と、2つの把持要素のうちの1つにそれぞれ連結されている2つのばね端部を有するばねユニット/ばね弾性アセンブリであって、2つの把持要素のうちの少なくとも1つが基本状態から(ばねユニットの弾性力に抗して)回動するときに、ばねユニットを介した基本状態に戻る回動が可能となっている/実現できる/達成できる、ばねユニット/ばね弾性アセンブリと、を有する、器具に関する。本開示はまた、医療器具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用又は外科用(手用)器具では、板ばねとして構成され、ブランチ又は把持要素と広い面積で接触する伸縮ばねが使用されている。板ばねと把持要素両方ともが、互いに対向する大きな連続面を有し、その連続面は共通の接触ベアリング表面から始まり、互いに連続的に離れていく。また、板ばねと把持要素は、締結部において異なる半径を有する半円形/円弧状の輪郭を有し、それらの間の距離を(ゼロから)連続的に増加させるとも言える。板ばねの一部の表面は把持要素の一部の表面と直接接触している一方、2つの表面は外側で互いに離れ、それらの間に非常に小さな隙間を形成し、その隙間は徐々に大きくなる。その結果、接触支持面の領域において医療器具の洗浄及び滅菌が非常に困難である。さらに、伸縮ばねと把持要素が載る領域は、接触腐食又はバイメタル腐食にさらされる。
【0003】
例えば、DE102017114260A1は、一体型の伸縮ばねが形状嵌合を介して把持要素に取り付けられる医療用手用器具を開示している。しかしながら、この器具の欠点は、精巧にフライス加工された受容部をブランチ又は把持要素に設けなければならないことである。さらに、一体型の伸縮ばねが設けられているため、手用器具が閉じられると、直線的に増加する高いばね力が生じる。このばね力は、詳細には、閉位置において、外科医などの使用者によって加えられる力を打ち消し、したがって、手動で加えられる最大力を減少させる。さらに、ばねは大幅な変形にさらされるため、連続して使用していると伸縮ばねが破損する危険性が増大する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の目的及び目標は、従来技術の欠点を回避するか、少なくとも低減することであり、詳細には、良好な洗浄性を提供し、製造が簡単で安価であり、同時に、器具の大きな移動範囲、詳細には、全体の移動範囲にわたって、把持要素を回動させるための一定の力を維持する、医療用器具、詳細には、外科用器具及び医療用器具の製造方法を提供することである。さらに、この器具は、詳細には、サイズが小さく、簡単な設計であり、取り扱いが容易で、メンテナンスが簡単となるはずである。
【0005】
医療器具に関する目的及び目標は、請求項1の特徴によって解決され、医療器具の製造方法に関する目的及び目標は、請求項9の特徴によって解決される。
【0006】
したがって、本開示は、互いに対して回動可能な2つの把持要素(ハンドルバー、ハンドルレバー、レバーアーム)と、把持要素の間に配置されるばねユニットと、を有する医療器具に関する。好ましくは、U字型又はV字型のばねユニットは、2つの(ばねの)端部を有する。2つのばね端部のそれぞれは、2つの把持要素の対応する/関連する1つに取り付けられているため、2つの把持要素の少なくとも1つが基本状態から回動すると、この基本状態に戻る回動が実現される。このことは、器具の使用者によって2つの把持要素のうちの1つが手動で回動された場合、使用者が回動したハンドル部分を離すとすぐに、ばねユニットは、回動された把持要素をその基本状態へ戻すように回動させることができることを意味する。好ましくは、器具は、把持要素を回動可能に連結するヒンジに対向するロードアームを有する。医療器具は、器具の使用時に両方の把持要素が回動するように構成されていてもよい。一方の把持要素のみが回動するように意図されている場合、他方の把持要素は、回動の間、使用者の手のカウンターサポートとしてのみ機能する。詳細には、医療器具は、近位把持部を介して作動可能である遠位有効部、例えば、クランプ部(クランプ/把持ブランチ)又は切断部(切断刃)などを有する。
【0007】
本開示によれば、このようなばねユニットは、従って、器具に設けられ、詳細には、2つのばね端部の少なくとも一方から、特に好ましくは、両方のばね端部から、把持要素の軸受、詳細には、ジョイント部、特に好ましくは、ヒンジ又は回動軸に向かって延在し、把持要素が回動するときに、詳細には、器具の閉動作全体(可能な限りの回動動作全体)にわたって、一定/不変の力/ばね力/復元力を提供するように構成される。好ましくは、変動しないばね力を実現するために、少なくとも2つの部分を有するばねユニットが器具に設けられ、このばねユニットは、少なくとも第1のばね部、詳細には、第1のばね脚部と、(別個の)第2のばね部、詳細には、第2のばね脚部と、を有し、これらのばね部は、少なくとも部分的に可動な方法で互いに接続され、詳細には、互いに結合されている。2つの脚部又は把持要素が基本状態から互いに押圧されるとき、(閉位置に回動するときの)ばねユニットのばね力は、詳細には、閉動作の全移動範囲にわたって、均一かつ均質に維持することができる。ばね力が直線的に増加することはない。この特別な設計は、器具の使用者をサポートし、最終的には、潜在的に適用可能な最大閉鎖力を増加させ、使用者の疲労を打ち消す。
【0008】
さらに、ばねユニット又はばね端部は、特別に適合された方法で把持要素に接続される。具体的には、少なくとも1つのばね端部は、把持要素に形成された関連する幾何学的な受容部/くぼみに形状適合的に挿入され、及び/又は関連する把持要素に堅固に接着される。ばね端部をくぼみに挿入することにより、ばね端部は、把持要素に対して、形状嵌合又はアンダーカットによって(及び、詳細には、回転によって)、少なくとも一方向に(及び詳細には、反対方向に)幾何学的に固定される。これにより、関連する把持要素に対するばね端部の(合計6つの自由度のうち、すなわち3つの並進自由度と3つの回転自由度のうちの)少なくとも1つ、詳細には、少なくとも2つの可能な移動自由度が、詳細には、把持要素の長手方向軸の一方向と、詳細には、長手方向ハンドル軸に垂直かつばね端部の長手方向軸に垂直な回転軸を中心とする回転に、ロックされる。
【0009】
この設計により、医療器具の構造が簡単でコスト効率が良く、洗浄・滅菌が容易であり、医療製品としての高い要求を満たすことができる。詳細には、ばねユニットは、取り外し不可能/紛失防止の方法で把持要素に取り付けられている。詳細には、ばねユニットは、全ての回動位置、詳細には、基本状態において、少なくとも1つのばね端部においてのみ、関連する把持要素と接触するので、ばね端部と把持要素の明確な接続点、詳細には受容部/くぼみにより、個々に適合した幾何学的設計が可能になる。ばね端部が、接続部分に閉じた面が形成されるように把持要素に強固に接着されていれば、良好な洗浄が保証される。詳細には、くぼみでは、2つのばね端部の少なくとも一方がくぼみ内に突出し、把持要素に強固に接着されるため、くぼみとばね端部との間に形成される隙間は、雑菌の発生を防ぐために、器具環境に対して密閉して封止されている。
【0010】
言い換えれば、ばねユニット、詳細には、ばね脚部と、少なくとも1つの把持要素は、ばね端部が把持要素又はブランチに挿入され、及び/又は、詳細には、例えば隙間などの界面に汚れが侵入又は付着しないように、強固に接着されるように構成されている。詳細には、2つのばね脚部の少なくとも一方は、ブランチに挿入され、さらに、接続点にアンダーカットのない密閉して封止された表面があるように強固に接着される。ばね端部が、関連するくぼみに挿入されると、座屈も防止される。
【0011】
従って、ばねユニットと把持要素は、別々に構成することができ、コスト効率よく製造することができ、取り付け時には互いに確実に接続される。
【0012】
詳細には、2つのばね端部の接点/接続点は、ばねユニットの簡単で効果的な洗浄又は交換を確実にするために、詳細には、工具なしで分離可能に構成することもできる。
【0013】
さらに換言すれば、2つのばね端部の少なくとも一方は、関連する把持要素に形成された対応する、詳細には、(受容部としての)相補的なくぼみ内に突出し、詳細には、長手方向ハンドル軸に沿って遠位方向に少なくとも1つのアンダーカットを形成し、及び/又は関連する把持要素に強固に接着され、詳細には、くぼみとばね端部との間の間隙が器具環境に対して密閉して封止されるような方法で、関連する把持要素に強固に接着される。
【0014】
基本状態という用語は、回動可能な把持要素の互いに対する位置を定義し、その位置には外的な(手動による)力なしにばねユニットのみによって移動する。詳細には、この基本状態は、器具の(幾何学的に決定された)最大開口位置としてもよい。
【0015】
好ましくは、ばねユニットは、少なくとも1つのばね端部から、医療器具の回動軸又は軸受に向かって、詳細には、遠位側へ延びる。詳細には、少なくとも1つのばねが、そのばね端部から回動軸又は軸受に向かって、好ましくは、遠位側へ延びる。換言すれば、ばねユニット、詳細には、少なくとも2つのばねは、2つの回動可能な把持要素の間に配置されていてもよく、これらの把持要素に沿って、回動軸又は軸受、詳細にはヒンジに向かって延在していてもよい。従って、ばねユニット又はばねは、軸受から近位に又は離れる方向に突出しない。これにより、設置スペースをさらに有効に利用することができ、人間工学がさらに改善される。外科医は、ばねユニットが不注意に手術用ドレープのような外部物体に引っ掛かったり、不注意に細胞組織のような外部物体を傷つけたりしないように、注意しなくてよくなる。ばねユニットは、詳細には、把持要素の間に配置されるか、把持要素の間(器具の長手方向軸と同様の高さ)に配置され、ある意味では、把持要素によって囲まれ、把持要素によってばねユニットを(横方向の)外側から保護する。
【0016】
詳細には、くぼみは、関連する把持要素の内側に(すなわち、他方の把持要素に対向して)設けられていてもよく、及び/又は、くぼみの長手方向軸が反対側の把持要素の方を向いていてもよい。くぼみは横方向内側に開口して、ばね端部がそこに挿入されるので、ばねユニットは紛失防止式に保持され、ばね力は、特に良好に把持要素に伝達可能である。そのため、くぼみは、把持要素の近位端ではなく、把持要素の内側に形成される。詳細には、これにより、ばねユニットと協同して、ばねユニットの設置スペース及び配置が最適化される。
【0017】
有利な実施形態は、従属請求項に記載され、以下に詳細に説明される。
【0018】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つのばね端部及び関連する把持要素は、詳細には、ばね端部の外面と、他方の把持要素に対向する関連する把持要素の内面との間の接触領域/接触境界において、溶接及び/又ははんだ付けされてもよく、詳細には、添加剤を用いてろう付けされてもよく、及び/又は接着されてもよい。これらの強固に接着された接続部は、耐久性があり、作製が容易であり、詳細には、円周状の溶接シーム又ははんだ付けシームの場合、詳細には、環境から密閉して封止された境界を表し、そこには雑菌が侵入することがなく、高温でも滅菌することができる。
【0019】
本開示のさらなる態様によれば、2つのばね脚部のうち少なくとも1つは、詳細には、突出したばね端部と、関連する把持要素(ブランチの長手方向軸で見て、ばね端部の遠位)との間に、少なくとも30°、好ましくは、少なくとも45°、最も好ましくは、少なくとも70°、特に、90°ちょうどのカンチレバー角度を有していてもよい。また、カンチレバー角度は、把持要素の長手方向軸とばね端部の長手方向軸との間の角度を規定するとも言える。この最小の片持ち角度により、容易に清掃できるに十分な鈍角の隙間が形成されることが保証される。
【0020】
詳細には、最小隙間高さを実現するために、ばね端部の直線部分に沿ったばね端部の端面からの寸法は、少なくとも2mm、好ましくは、少なくとも5mm、特に好ましくは、少なくとも10mmである。詳細には、ばね脚部と、関連する把持要素との間に形成される隙間は、1mm、好ましくは3mm、特に好ましくは5mmの最小高さを有する。好ましくは、少なくとも基本状態における、把持要素の長手方向軸に垂直な方向における、ばね端部におけるハンドルの内面と、近位屈曲後、及び/又は、ばね脚部の(ばね端部から測定して)全長の15%にあたる長さの地点でのばねユニットの対向面との間の距離は、少なくとも1mm、好ましくは3mm、特に好ましくは5mmである。これにより、器具を容易に洗浄することができる。
【0021】
好ましくは、少なくとも1つのばね脚部は、板ばね又はばね鋼線として構成されていてもよく、詳細には、材料として、X20CR13又はDIN EN 10088での素材1.4021を有するか、全体がこの材料で作られていてもよい。ばね脚部又はばねユニット全体が、この材料で作られている場合、非常に良好な機械的特性、非常に良好な研磨性、良好な耐薬品性と満足のいく溶接性を備える良好な鍛造性が提供される。
【0022】
一実施形態によれば、ばねユニットは、2つの板ばね又は2つのばね鋼線の形態で2つの部分で構成されていてもよく、これらは遠位ばね連結部を介して、特に、遠位フォークノーズ接続又は遠位球体パン接続又は遠位Y-t接続を介して、互いに接続/結合される。板ばねは、製造が簡単で安価であり、所望の形状に簡単かつ不可逆的に曲げることができ、信頼性の高いばね力を提供することができる。一方で、ばね鋼線も、安価で、対応する成形のための機械的特性の要件を満たす。詳細には、断面が円形であるため角部がなく、洗浄が特に容易である。遠位ばね連結部を備える2部品形態では、ばね力は、器具の閉経路全体にわたって、又は把持要素がいかなる回動位置で互いに回動しても、一定のままである。一体型ばねユニットと同様に、ばね力が直線的に増加することは避けられる。
【0023】
さらなる実施形態によれば、少なくとも2つの部分からなるばねユニットの場合、2つのばね脚部の少なくとも1つ、詳細には、両方のばね脚部は、詳細には、第1の近位曲げ半径及び/又は対向する第2の遠位曲げ半径を有する、S字形状であってもよく、好ましくは、近位曲げ半径(又は部分的に円セグメントの)の接線部分の間の曲線角度/曲げ角度は、90°であり、及び/又は遠位曲げ半径は、45°である。S字形状の設計は、ばね弾性力を支持し、及び把持要素に対するばね脚部の幾何学的変化又は近似を支持し、詳細には、ばね脚部が、どのような回動位置においても、又は少なくとも把持要素の互いに対する基本状態において、把持要素と接触又は当接しないようにする。
【0024】
詳細には、くぼみは、止まり穴又は溝又はスリット、詳細には、通路状のスリットであってもよい。(概して)同じ直径のばね鋼線(圧入又はすきま嵌め、孔に通すピンと同様)を、ある既定の直径の止まり穴に挿入してもよい。板ばねをばね脚部として使用する場合、(幅よりも高さが比較的小さい)葉型/プレート状のばね端部を細長い溝に挿入することができる。例えば、それが連続した溝であれば、板ばねは、その長手方向軸に沿って挿入されるのではなく、溝の横方向に沿って挿入されてもよい。また、溝は、挿入方向にアンダーカットを有していてもよく、ばね端部は、横方向に挿入されたときに、ばね端部の長手方向軸の方向に形状嵌合が形成されるように、関連する突起を有していてもよい。さらに、くぼみは、少なくとも2mm及び/又は最大6mmの(突出したばね端部の長手方向軸の方向における)深さを有してもよい。最小の深さは、ばね脚部又はばねユニットの十分な機械的耐荷重を保証する。
【0025】
更なる態様によれば、ばねユニットは、第1及び/又は第2のばね脚部が、少なくとも基本状態において、詳細には、把持要素が互いに対して回動された全ての位置において、接続点としてばね端部においてのみ、関連する把持要素と接触するように、把持要素に対して適合されてもよい。これにより摩耗が防止され、ばねユニットと把持要素の両方の耐久性が向上する。
【0026】
好ましくは、ばねユニットは、互いに対して着脱可能に変位及び/又は回動できるように取り付けられた遠位ばね連結部を有していてもよい。
【0027】
好ましくは、くぼみ及び/又はばね端部は、ばね端部の長手方向軸を中心とするある程度の回転が阻止されるように、角形又は楕円形(円形ではない)である。詳細には、ばね端部及びくぼみは、ある単一の幾何学的自由度のみが一方向にのみ残るような形状を有し、これはさらに好ましくは、ばねユニットを損失防止方法で保持するために、例えばばねユニットによる予張力によって作用される。代替的又は付加的に、ばね端部は、把持要素に強固にも接着されていてもよい。
【0028】
好ましくは、医療器具は、多関節の分岐鉗子として構成されていてもよい。詳細には、医療器具は、多動式、詳細には、複動式の鉗子として、特に好ましくは、複動式の骨鉗子として構成されていてもよい。本明細書に開示されるばね構造は、このタイプの器具に特に適している。このような器具タイプの多動式の鉗子又は複動式の鉗子、詳細には骨鉗子は、いくつかの接合部を有し、それらは特に安定している。しかしながら、その結果、接合部はまた、内部摩擦の合計がより大きくなり(複数の接合部は、より大きな摩擦面をもたらす)、これは、より大きいばね(ユニット)の復元力を必要とする。これは、神経用のハサミ又は鉗子の伸縮ばねに対する要求とは異なる。器具タイプの複動式鉗子では、閉鎖プロセスの最初ですでにばね力がとても大きいため、ばね力が閉鎖プロセス中に増加すると特に不利である。特に、複動式骨鉗子は骨の一部を切り取るために使用され、それ自体がかなりの力を必要とする操作であるため、複動式鉗子を閉じる際に使用者により必要な手の力は、特に大きな障壁となる。把持要素のくぼみ又は受容部が、軸受、詳細には、接合部、又は回動軸に向かって角度を付けて延在していることは、これらの複動式骨鉗子にとって特に有利であり、このような構成は、ばね端部が大きなばね力のもとで抜け落ちることを確実に防止するからである。これとは対照的に、垂直な受容部又はくぼみ、すなわち、関連する把持要素の長手方向軸に対して垂直に延びる受容部、あるいは、使用者の方に延びる受容部は、大きな力が加えられたときにくぼみ又は受容部から特に押し出されやすく、器具を使用不能にし、また、患者の安全も危うくする。
【0029】
本開示の目的及び目標は、ばねユニットを備える医療器具、詳細には、本開示の器具を製造する方法に関して、特に、この順序の以下のステップによって解決される、当該ステップは、少なくとも1つのばね脚部、詳細には、板ばね又はばね鋼線を曲げるステップと、ばね脚部の遠位部を、詳細には、押圧及び/又は研削、好ましくは丸みを遠位で研削して形成するステップと、少なくとも1つのばね脚部を、把持要素に形成される、詳細には、止まり穴又は溝の形態のくぼみに挿入するステップと、好ましくは、関連する把持要素に対してばね脚部を方向付けるステップと、ばね脚部を関連する把持要素に強固に接合する、詳細には、溶接及び/又ははんだ付けするステップ、である。本方法のこれらのステップにより、製造が容易で安価であり、洗浄が容易な、少なくとも1つの把持要素と1つのばね脚部とを有する医療器具の組立体が提供される。簡単な取り付けを含む製造は、実施が容易であり、また安価である。
【0030】
好ましくは、強固に接合するステップの後、本方法は、関連する把持要素と共にばね脚部を焼き戻すステップ、及び/又は、関連する把持要素と共にばね脚部をブラッシング及び/又はサンドブラストするステップを備えていてもよい。
【0031】
さらに、本方法は、器具の全体を組み立てるステップを含んでいてもよい。
【0032】
換言すれば、詳細には、各ブランチ(把持要素)に対して1つずつ、好ましくは2つの板ばね又は2つのばね線/ばね鋼線が、ブランチのとまり穴又は溝に挿入及び/又は溶接及び/又ははんだ付け及び/又は接着されている医療器具を提供することができる。ばねは、(少なくとも基本状態における)その接続部分以外ではブランチに対してどこにも掛からないので、良好な洗浄性又は清掃性が保証される。ばね力、フォークノーズ接続又は球体パン接続を介して遠位で接触しているばねの概念においての2部品構成のばねは、詳細には、鉗子の形態では、医療器具を閉じるときにばね力が直線的に増加しないという利点を有する。その結果、閉じる力は、実質的に一定に保たれる。
【0033】
本開示は、添付の図を参照しながら、好ましい実施形態に基づいて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ばねユニットがハンドル部に形状嵌合して強固に接着されている、第1の好ましい実施形態の医療器具の平面図。
図2図1の医療器具のばねユニットの2つの板ばねの遠位ばね連結部の詳細図。
図3】ばねユニットは遠位Y-t接続を有している、さらなる第2の好ましい実施形態の医療器具の上面図。
図4】球体パン接続の形式である、器具のさらに好ましい実施形態のばねユニットの遠位接続部の詳細図。
図5】医療器具のさらに好ましい実施形態のばねユニットの上面図。
図6図5のばねユニットが挿入された好ましい実施形態の医療器具の上面図。
図7図6のばねユニットの遠位ばね連結部の詳細図。
図8】好ましい実施形態による医療器具の製造工程のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図は概略的なものであり、本開示の理解を助けることのみを意図している。同一の要素には、同一の参照符号が付されている。異なる実施形態の特徴は、互いに入れ替えてもよい。本開示による方法に関連するあらゆる開示は、医療器具に関連するあらゆる開示が本開示による方法にも適用されるのと同様に、本開示の医療器具にも適用される。
【0036】
図1は、第1の好ましい実施形態の、基本状態にある医療器具1の部分斜視図を示す。手用器具の形態の器具1は、鉗子タイプの分岐型鉗子として構成されている。この目的のために、器具1は、ヒンジ6を介して互いに回動可能に接続される2つのレバー2、4を有する。これにより、2つのレバー2、4は、一対のはさみや把持鉗子と同様に、互いに対して回動面Sで回動することができる。レバー2、4の近位部(ヒンジ6の近位で、使用者に近づく方向)は、対応する把持要素又はハンドル10、12を有する把持部8を形成し、これらの把持部8は、長手方向の器具軸に対して互いに実質的に対称である。把持部8は、回動面Sに対しても対称である。
【0037】
第1のハンドル10と第2のハンドル12との間には、2つの部品構成の板ばねの形態の2つの部品構成のばねユニット14が設けられており、これは、ばねユニット14の第1のばね脚部16と第2のばね脚部18とを形成し、それぞれの遠位端において互いに解放可能に結合され、変位可能かつ回動可能である。
【0038】
ばね脚部16、18のそれぞれの自由ばね端部20、22は、それぞれのハンドル10、12に形成された溝の形のくぼみ内に位置し、このくぼみは、ハンドル10、12の内側に突出する対向する内面26、28に形成されている。くぼみ24は、直線状であり、長手方向の器具軸に対して互いに対称であり、(平面視して)遠位方向にわずかに斜め前方に向いている。ばね端部20、22は、くぼみ24内に突出し、したがって、板ばねの遠位外側面(ばね端部部分)、すなわち遠位方向を向く表面と、内面26又は28との間にカンチレバー角度αを形成する。これはまた、ハンドル10、12に沿った長手方向ブランチ軸又は長手方向ハンドル軸と、ばね端部20、22又はばね端部20、22に隣接するばね端部部分又はばね端部長手方向軸との間の角度に実質的に一致する。
【0039】
ばね端部20、22はまた、くぼみ24とそれぞれのばね端部との間の隙間が、器具環境に対して密閉して封止されるように、内面26、28に強固に接着、すなわち溶接されている。これにより、一方では、ばねユニット14が器具1に確実に取り付けられ、又は器具1に接続され、他方では、アクセスが困難で雑菌が住み着く可能性のある隙間やその他のかたまり部分が確実に防止される。
【0040】
ばねユニット14とハンドル10、12との形状嵌合かつ強固な結合と、ハンドル10、12からのばね端部20、22の特別なカンチレバー部分とを有する器具1のこの特別な設計は、詳細には、ばね脚部16、18とハンドルとの間の十分な距離も確保されるため、器具1のコスト効率のよい製造と、高い機械的負荷容量と、長い耐用年数と、非常に良好な洗浄性、詳細には、滅菌性とを可能にする。少なくとも約45°のカンチレバー角度αが選択されるので、ばね端部20、22とハンドル10、12との間に十分に鈍角が形成され、これもまた良好な洗浄を促進する。詳細には、くぼみ24と関連するばね端部10、12との形状嵌合は、ばねユニット14の十分な機械的な力を保証するので、器具1は耐久性があり、非常に多くの回数の旋回運動後でも機能が保証される。部品が外れてしまうことが防止される。詳細には、溶接継ぎ目は、環境に対する密閉性を確保し、接続部の機械的強度も高める。
【0041】
2枚の板ばねはDIN EN 10088に準拠した1.4021材で作られており、非常に優れた機械的特性、耐薬品性を備える研磨性、溶接性を備えている。
【0042】
図2は、遠位から近位に向かう方向から見た、遠位フォークノーズ接続の形態の図1の器具1の遠位ばね連結部30を詳細に示す。第1のばね脚部16の自由遠位端は、ノーズ32を有し、このノーズは、長手方向の器具軸に案内されて、長手方向に変位可能かつ回動可能に、2つのプロング又はアーム36又は側壁を有するフォーク34の間に囲まれている。このようにして、遠位ばね連結部30は、器具1が回動するときの動きに追従することができ、ばね力は、回動経路全体にわたって一定のままである。取り付けも容易である。2つの遠位端は、その予張力により、ノーズ32とフォーク34が、係合し、互いに弾性的に押し付けられるという点で、互いに着脱可能に結合される。ある程度は、ばねで予張されたヒンジが、ばね連結部30として遠位端に作られる。
【0043】
図3は、さらなる第2の好ましい実施形態の医療器具1を示す。第1の実施形態とは対照的に、ばねユニット14及び関連するくぼみ24は、異なるように構成されている。詳細には、2つのばね脚部16、18は、板ばねとしてではなく、S字形のばね鋼線として構成され、このばね鋼線は、止まり穴として構成されたくぼみ24に挿入される。さらに、遠位連結部30は、Y形の遠位端部分/Y部分38を有するY-t形接続として構成され、このY部分38は、t形の遠位端部分t部分40とかみあい、着脱可能に接触して連結される。Y部分38は、第2のばね脚部18全体と同様に、その2つの平行なYアーム42において円形の断面を有する。Yアーム42は、湾曲した分岐部44で収束している。t部分40は、第1のばね脚部16の長手方向軸線に垂直な円形断面を有するクロスピース46を有し、これにより、t形状又はX形状の部分がある程度形成され、この部分はY部分とかみ合う形で接触している。両方のばね脚部16、18は、互いに対して予張力が付与されている。詳細には、図3のこの実施形態では、クロスピース46は、2つのYアーム42に対して遠位側に配置されているので、クロスピース46は、遠位方向においてY部分38のための一種のストッパを形成する。換言すれば、ばね脚部16は、2つのYアーム42の間で2つのクロスピース46の近位側に収容される。予張力により、詳細には、2つのハンドル10、12が一緒に押圧されるとき、Y部分38は、遠位方向に押圧されるが、ばね脚部16に対して横切る方向に延びる2つのクロスピース46によって阻止される。他方、t部分40はY部分38のフォークに保持されるので、2つのばね脚部16、18は、互いに取り外し可能に結合され、回動経路全体にわたって一定のばね力を提供する。
【0044】
Y-t接続を有するこの実施形態は、ばね鋼線で作られ、S字形に(不可逆的に)曲げられるか、それらの長手方向軸に沿ってそのような形状を有する2つのばね脚部16、18の良好な弾性曲げを可能にすると同時に、遠位ばね連結部30において確実な(取り外し可能な)接続を提供する。この設計は、特に製造コストに優れている。
【0045】
図4は、ばねユニット14の遠位部分、ここではさらに好ましい実施形態のばね連結部30の詳細図である。図4の遠位ばね連結部30は、図3のY-t接続の代わりに器具1に使用することができる。図3の第2の実施形態のばね連結部30とは対照的に、図4のばね連結部は、Y-t接続の代わりに、第1のばね脚部16に形成された遠位球体48と、第2のばね脚部18に形成されたパン(浅い皿状)50とを有する球体パン接続を有する。具体的には、球体48は、パン50のシェル形状の受容部においてばねで予張力がかけられ、遠位端と遠位端の間に(ばねユニット14の予張力に抗して)着脱可能な接続部または連結部が形成される。この特別な連結は、ハンドル10、12が基本状態から回動されるとき、2つのばね脚部16、18が移動の自由により最初に遠位側に押され、弾性的に変形することを意味する。しかしながら、球体48とパン50とによって(球体)結合部が形成されているので、遠位端部と遠位端部は互いに向かって移動し、回動することができ、その結果、閉鎖方向への閉鎖動作のような回動動作の間、ばね力は均一なままであるか、または実質的に一定のばね力が達成される。
【0046】
図5は、さらに好ましい設計によるばねユニット14を示し、このばねユニット14は、まだハンドルに接続されていない(及び、予張力がかかっていない)。ばね脚部16、18は、遠位端部を除いて互いに対称である。近位ばね端部20、22は、第1の近位曲げ半径60(詳細には、半径R6)を備える屈曲部を有し、この屈曲部は、(図5では、第2のばね脚部18で見られる)90°を通る右方向屈曲部である。短い直線部分(詳細には、9mmの長さ)の後、より大きな遠位曲げ半径62(詳細には、R17で、概して又はちょうど3倍大きい曲げ半径)を備える45°の曲げ角度βの周りに左方向屈曲部(図5に見られるように、第2のばね脚部18)が続く。この後、直線部分が続き、この直線部分の遠位端部分はわずかに左に曲がり(詳細には、約5°)、端部に球状の丸みを有する。
【0047】
第1のばね脚部16は、第2のばね脚部18と対称のS字形状であるが、その遠位端にパン形状のへこみ52を有し、それのパン/シェル形状の受容部は、第2のばね脚部18に向かって、又は遠位球状丸みに向かって開口している。第2のばね脚部18の球状の遠位端は、この受容部に挿入される。非予張状態における長手方向器具軸に垂直な方向の回動面Sにおける最大寸法56は、詳細には、長手方向器具軸の方向の回動面Sにおける最大寸法の約1.3倍である。長手方向器具軸に垂直な方向の回動面Sにおけるばね端部20のカンチレバー部の寸法58は、最大寸法56の約20%である。詳細には、カンチレバー部の寸法58は、11mmである。詳細には、ばね端部20、22は、カンチレバー部の寸法58の約3分の1又は2分の1、詳細には、5mmにわたって延びる直線部を有する。
【0048】
図6及び図7は、さらなる好ましい実施形態による医療器具1の遠位ばね連結部30の領域における上面図及び詳細上面図を示す。医療器具1は、多関節分岐鉗子として構成され、鉗子の形態の遠位能動部64を有する。図5のばねユニット14が、この器具に挿入されている。具体的には、2つのばね端部20、22は、内面26、28において、ハンドル10、12のくぼみ(図示せず)内に突出している。
【0049】
カンチレバー角度αは、第1の実施形態よりも大きく、約80°である。近位曲げ半径60は、各部においてばね端部20、22に隣接する。その結果、ハンドル10、12の内側に規定された隙間が設けられ、この隙間は高い最小サイズを有し、S字形ばね鋼線の円形断面による丸みと曲げ半径60の丸みによって良好な清掃性を確保する。さらに、この器具1は、製造が容易で安価である。
【0050】
図8は、好ましい実施形態による器具1の製造方法のフローチャートを示す。この実施形態では、この方法は、本開示による器具1を製造する。
【0051】
最初のステップS1では、第1及び第2のばね脚部16、18の両方が、正しい形状に曲げられる。詳細には、ばね脚部16、18は、ばね鋼線又は板ばねの形状であり、(設計図に従って)S字形に曲げられる。
【0052】
ステップS2において、2つのばね脚部16、18の遠位部が形成され、これらは後に遠位で結合される。具体的には、第1のばね脚部16の自由端は、平らなスプーン形状又はパン形状の構造/パン52が形成されるように押圧され、これによりカップ形状の受容部が形成される。第2のばね脚部18の他方の遠位端は、球状の丸み54を作るために遠位で研削される。
【0053】
ステップS1とS2の順序は決定的なものではないので、これら2つのステップを逆の順序で行ってもよい。
【0054】
これに続いて、2本のばね脚部16、18を、ハンドル10、12それぞれに形成された止まり穴状のくぼみ24に挿入するステップS3が行われ、その結果、ばね脚部16、18と関連するハンドル10、12との間に、形状嵌合の接続部が形成される。
【0055】
次いで、ステップS4において、2つのばね脚部16、18は、関連するハンドル10、12に対して位置合わせされる。詳細には、遠位の球状丸みは、この時点で既に相補的なパン52に緩く挿入されていてもよく、2つのばね脚部16、18は、正しい位置合わせを確実にするために、互いに対して予張力をかけることができる。
【0056】
この位置合わせされた位置で、ばね脚部は、ステップS5で強固に接着される。本ケースでは、ばね脚部は、特に充填材を用いて、関連する把持要素に溶接される。具体的には、ばね端部20、22とくぼみ24との間に形成される隙間が密閉して封止されるように、ばね端部20、22の周囲又は端部部分においてハンドル10、12上に円周状の溶接シームが形成される。
【0057】
強固に接着して接続するステップS5の後、ばね脚部16、18と関連する把持要素10、12を焼き戻すステップS6が行われる。特に、器具1全体又はすべての構成部品が焼き戻される。
【0058】
ステップS7では、ハンドル10、12とばねユニット14をブラッシングし、特に、ハンドル10、12とばね脚部16、18の接続個所をサンドブラストして滑らかな表面にする。
【0059】
最後に、ステップS8に続いて、器具1の全体的な組み立てが行われる。
【符号の説明】
【0060】
1 医療器具
2 第1のレバー
4 第2のレバー
6 ヒンジ
8 把持部
10 第1の把持要素
12 第2の把持要素
14 ばねユニット
16 第1のばね脚部
18 第2のばね脚部
20 第1のばね端部
22 第2のばね端部
24 くぼみ
26 第1の内面
28 第2の内面
30 遠位ばね連結部
32 ノーズ
34 フォーク
36 フォークアーム
38 Y部
40 t部
42 Y部
44 Y分岐部
46 クロスピース
48 球体
50 パン
52 へこみ
54 屈曲端部
56 寸法
58 カンチレバー部の寸法
60 (第1の)近位曲げ半径
62 (第2の)遠位曲げ半径
S 回動面
α カンチレバー角度
β 屈曲角度
S1 ばね脚部を曲げるステップ
S2 遠位端部を形成するステップ
S3 ばね脚部を挿入するステップ
S4 ばね脚部をハンドルに対向させて方向付けるステップ
S5 強固に接着して接続するステップ
S6 焼き戻すステップ
S7 ブラッシングステップ
S8 取付けステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用の器具であって、
材料として金属を有し、軸受を介して、互いに相対的に回動可能に取り付けられている、2つの把持要素と
ばねユニットであって、前記2つの把持要素のうちの少なくとも1つが基本状態から回動するときに、前記ばねユニットを介して、前記基本状態に戻る回動が可能となるように、前記2つの把持要素のうちの1つにそれぞれ連結されている2つのばね端部を有する、ばねユニットと、を有しており、
前記ばねユニットは、前記2つのばね端部の少なくとも1つから、前記軸受に向かって延在し、前記把持要素が回動するときに実質的に一定のばね力を提供するように構成されており
記2つのばね端部の少なくとも1つは、関連する前記把持要素に形成されるくぼみ内に突出し、及び/又は、前記関連する把持要素に強固に接着されている、医療用の器具。
【請求項2】
少なくとも1つの前記ばね端部及び前記関連する把持要素は、溶接及び/又ははんだ付けされ、及び/又は、接着されている、請求項1に記載の医療用の器具。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ばね端部は、詳細には、突出した前記ばね端部(20、22)と、前記関連する把持要素(10、12)との間に、少なくとも30°、好ましくは少なくとも45°、最も好ましくは少なくとも70°、詳細には90°ちょうどのカンチレバー角度(α)を有する、請求項1に記載の医療用の器具。
【請求項4】
少なくとも1つのばね脚部は、板ばね又はばね鋼線として構成されている、請求項1に記載の医療用の器具。
【請求項5】
前記ばねユニットは、2つの板ばね又は2つのばね鋼線の形態で2つの部分で構成され、
前記2つの部分は、遠位ばね連結部を介して、互いに着脱可能に連結されている、請求項4に記載の医療用の器具。
【請求項6】
2つのばね脚部の少なくとも1つは、近位曲げ半径、及び/又は、対向する遠位曲げ半径を有するS字形状である、請求項1に記載の医療用の器具。
【請求項7】
前記くぼみは、止まり穴又は溝又はスリットである、請求項1に記載の医療用の器具。
【請求項8】
前記ばねユニットが、少なくとも前記基本状態において、接続点として前記ばね端部においてのみ前記関連する把持要素と接触するように、前記ばねユニットは、前記把持要素に対して構成されている、請求項1に記載の医療用の器具。
【請求項9】
ばねユニットを備える医療用の器具、詳細には、請求項1に記載の器具を製造する方法であって
なくとも1つのばね脚部を曲げるステップと
前記ばね脚部の遠位部又は遠位端を形成するステップと
前記少なくとも1つのばね脚部を、把持要素に形成されるくみに挿入するステップと、
記ばね脚部を関連する前記把持要素に強固に接着させて接続するステップと、を備える、方法。
【請求項10】
前記強固に接着させて接続するステップの後に、前記関連する把持要素とともに前記ばね脚部を焼き戻すステップを備え、
及び/又は、前記関連する把持要素とともに前記ばね脚部を、ブラッシングするステップ、及び/又は、サンドブラストするステップを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのばね端部は、前記くぼみと当該ばね端部との間の隙間が、器具環境に対して密閉して封止されるように、前記関連する把持要素に強固に接着されている、請求項1に記載の医療用の器具。
【請求項12】
前記少なくとも1つのばね端部及び前記関連する前記把持要素は、当該ばね端部の外面と、他方の前記把持要素に対向する前記関連する把持要素の内面との間の接触領域において、溶接及び/又ははんだ付けされ、及び/又は、接着されている、請求項2に記載の医療用の器具。
【請求項13】
前記少なくとも1つのばね脚部は、材料として、素材X20CR13又はDIN EN 10088での素材1.4021を有している、請求項4に記載の医療用の器具。
【請求項14】
前記ばねユニットの前記2つの部分は、前記遠位ばね連結部として、遠位フォークノーズ接続又は遠位球体パン接続又は遠位Y-t接続を介して、互いに着脱可能に連結されている、請求項5に記載の医療用の器具。
【請求項15】
前記近位曲げ半径の接線部分の間の曲げ角度は、90°であり、及び/又は、前記遠位曲げ半径は、45°である、請求項6に記載の医療用の器具。
【請求項16】
前記挿入するステップの後に、前記ばね脚部を関連する前記把持要素に対して、前記ばね脚部の挿入された端部の延在部を、前記医療用の器具の軸受、好ましくは、接合部へ向けて、方向付けるステップであって、前記軸受を介して、前記把持要素は互いに関して回動可能に取り付けられる、方向付けるステップを備える、請求項9に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
最後に、ステップS8に続いて、器具1の全体的な組み立てが行われる。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
医療用の器具、特に、外科用の器具(1)であって、
材料として金属を有し、詳細には、全体として材料としての金属から作られており、軸受を介して、詳細には、接合部を介して、互いに相対的に回動可能に取り付けられている、2つの把持要素(10、12)と、
ばねユニット(14)であって、前記2つの把持要素(10、12)のうちの少なくとも1つが基本状態から回動するときに、前記ばねユニット(14)を介して、前記基本状態に戻る回動が可能となるように、前記2つの把持要素(10、12)のうちの1つにそれぞれ連結されている2つのばね端部(20、22)を有する、ばねユニット(14)と、を有しており、
前記ばねユニット(14)は、前記2つのばね端部(20、22)の少なくとも1つから、好ましくは、両方の前記ばね端部(20、22)から、前記軸受、詳細には、接合部に向かって延在し、前記把持要素(10、12)が回動するときに実質的に一定のばね力を提供するように構成されており、詳細には、少なくとも2つの部分で形成され、第1のばね脚部(16)及び第2のばね脚部(18)を有し、
前記2つのばね端部(20、22)の少なくとも1つは、関連する前記把持要素(10、12)に形成されるくぼみ(24)内に突出し、及び/又は、詳細には、前記くぼみ(24)と前記ばね端部(20、22)との間の隙間が、器具環境に対して密閉して封止されるように、前記関連する把持要素(10、12)に強固に接着されている、医療用の器具(1)。
(項目2)
少なくとも1つの前記ばね端部(20、22)及び前記関連する把持要素(10、12)は、詳細には、前記ばね端部(20、22)の外面と、他方の前記把持要素(10、12)に対向する前記関連する把持要素(10、12)の内面(26、28)との間の接触領域において、溶接及び/又ははんだ付けされ、詳細には、添加剤を用いてろう付けされ、及び/又は、接着されている、項目1に記載の医療用の器具(1)。
(項目3)
少なくとも1つの前記ばね端部(20、22)、詳細には、2つの前記ばね脚部(16、18)の少なくとも1つは、詳細には、突出した前記ばね端部(20、22)と、前記関連する把持要素(10、12)との間に、少なくとも30°、好ましくは少なくとも45°、最も好ましくは少なくとも70°、詳細には90°ちょうどのカンチレバー角度(α)を有する、項目1又は2に記載の医療用の器具(1)。
(項目4)
少なくとも1つの前記ばね脚部(16、18)は、板ばね又はばね鋼線として構成され、詳細には、材料として、素材X20CR13又はDIN EN 10088での素材1.4021を有し、詳細には、全体がこの材料で作られている、項目1~3のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
(項目5)
前記ばねユニット(14)は、2つの板ばね又は2つのばね鋼線の形態で2つの部分で構成され、
前記2つの部分は、遠位ばね連結部(30)を介して、詳細には、遠位フォークノーズ接続(32、34)又は遠位球体パン接続(48、50)又は遠位Y-t接続(38、40)を介して、互いに着脱可能に連結されている、項目4に記載の医療用の器具(1)。
(項目6)
2つの前記ばね脚部(16、18)の少なくとも1つ、詳細には、両方は、詳細には、第1の近位曲げ半径(60)、及び/又は、対向する、詳細には、より大きい遠位曲げ半径(62)を有するS字形状であり、
好ましくは、前記近位曲げ半径の接線部分の間の曲げ角度は、90°であり、及び/又は、前記遠位曲げ半径は、45°である、項目1~5のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
(項目7)
前記くぼみ(24)は、止まり穴又は溝又はスリット、詳細には、通路状のスリットであり、詳細には、少なくとも2mm及び/又は最大6mmの深さを有する、項目1~6のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
(項目8)
前記ばねユニット(14)、詳細には、前記第1のばね脚部(16)及び/又は前記第2のばね脚部(18)が、少なくとも前記基本状態において、詳細には、前記把持要素(10、12)が互いに対して回動された全ての位置において、接続点として前記ばね端部(20、22)においてのみ前記関連する把持要素(10、12)と接触するように、前記ばねユニット(14)は、前記把持要素(10、12)に対して構成されている、項目1~7のいずれか一項に記載の医療用の器具(1)。
(項目9)
ばねユニットを備える医療用の器具、詳細には、項目1~8のいずれか一項に記載の器具(1)を製造する方法であって、詳細には以下の順序の、
少なくとも1つのばね脚部(16、18)、詳細には、板ばね又はばね鋼線を曲げるステップ(S1)と、
前記ばね脚部(16、18)の遠位部又は遠位端を形成するステップ(S2)であって、詳細には、押圧及び/又は研削する、好ましくは、遠位の丸みを研削する、形成するステップ(S2)と、
前記少なくとも1つのばね脚部(16、18)を、把持要素(10、12)に形成される、詳細には、止まり穴又は溝の形態のくぼみ(24)に挿入するステップ(S3)と、
前記ばね脚部(16、18)を関連する前記把持要素(10、12)に対して、詳細には、前記ばね脚部(16、18)の挿入された端部の延在部を、前記医療用の器具の軸受、好ましくは、接合部へ向けて、好ましくは方向付けるステップ(S4)であって、前記軸受を介して、前記把持要素は互いに関して回動可能に取り付けられる、方向付けるステップ(S4)と、
前記ばね脚部(16、18)を前記関連する把持要素(10、12)に強固に接着させて接続するステップ(S5)であって、詳細には、溶接及び/又ははんだ付けする、強固に接着させて接続するステップ(S5)と、を備える、方法。
(項目10)
前記強固に接着させて接続するステップ(S5)の後に、前記関連する把持要素とともに前記ばね脚部を焼き戻すステップ(S6)を備え、
及び/又は、前記関連する把持要素(10、12)とともに前記ばね脚部(16、18)を、ブラッシングするステップ(S7)、及び/又は、サンドブラストするステップを備える、項目9に記載の方法。
【国際調査報告】