(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】α-シヌクレインタンパク質繊維コンフォマーに特異的なRNAアプタマー
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20240514BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240514BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
G01N33/53 D
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572981
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 FR2022050993
(87)【国際公開番号】W WO2022248805
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510225292
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F-75015 Paris, FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】592236245
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LARECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ブーヴィエ-ミュラー,アリックス
(72)【発明者】
【氏名】デュコンジェ,フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ブセ,リュック
(72)【発明者】
【氏名】メルキ,ロナルド
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR35
4B063QS40
(57)【要約】
本発明は、α-Syn(α-Syn)タンパク質のF-型α-Syn繊維のコンフォマーをR-型α-Syn繊維のコンフォマーから区別する能力を有することを特徴とし、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7からなる群から選択される、好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾リボ核酸(RNA)に特異的な配列を含むことを特徴する、アプタマーに関する。本発明はまた、これらのアプタマーの少なくとも1つを含む組成物またはキット、およびインビトロでのその使用に関する。本発明はまた、上記の少なくとも1つのアプタマーおよび/または組成物および/またはキットの使用を含む、シヌクレイン病の診断、ならびにシヌクレイン病の層別化、モニタリング、予後診断および有効性の評価のための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-Synタンパク質(α-Syn)のF-型α-Syn繊維のコンフォマーをR-型α-Syn繊維のコンフォマーから区別する能力を有することを特徴とし、かつ、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7からなる群から選択される、好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾リボ核酸(RNA)に特異的な配列を含むことを特徴とする、アプタマー。
【請求項2】
F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、該アプタマーの解離定数K
d(F)が、
a) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数K
d(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低い;
b) α-Synモノマーについて測定された解離定数K
d(Mono)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;
c) F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、ランダムなアプタマーの解離定数K
d(Random)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;
d) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数K
d(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低く;かつ、α-Synモノマーについて測定された解離定数K
d(Mono)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;
e) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数K
d(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低く;かつ、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、ランダムなアプタマーの解離定数K
d(Random)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;または
f) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数K
d(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低く;α-Synモノマーについて測定された解離定数K
d(Mono)より低い、好ましくは少なくとも2倍低く;かつ、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、ランダムなアプタマーの解離定数K
d(Random)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項3】
以下の少なくとも1つの解離定数K
dを有する、請求項1または2に記載のアプタマー:
a) F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数K
d(F)が、15nM未満、好ましくは10nM未満; および/または
b) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数K
d(R)が、100nM超、好ましくは150nM超。
【請求項4】
i. 該特異的配列の5'において、好ましくは、該特異的配列の5'末端に位置する、配列番号:29および配列番号:30から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列;および/または
ii. 該特異的配列の3'において、好ましくは、該特異的配列の3'末端に位置する、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列、をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアプタマー。
【請求項5】
配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39および配列番号:40からなる群から選択される、好ましくは、配列番号:34および配列番号:35から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNA配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のアプタマー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のアプタマーを少なくとも1つ含むキット。
【請求項7】
配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28からなる群から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマーから選択される少なくとも1つの追加のアプタマーをさらに含む、請求項6に記載のキットであって;
好ましくは、修飾RNAランダムな配列を含むアプタマーをさらに含むキット。
【請求項8】
該少なくとも1つの追加のアプタマーが、
i. 該特異的配列の5'において、好ましくは、該特異的配列の5'末端に位置する、配列番号:29および配列番号:30からなる群から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列;および/または
ii. 該特異的配列の3'において、好ましくは、該特異的配列の3'末端に位置する、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33からなる群から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列、
をさらに含む、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
該少なくとも1つの追加のアプタマーが、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48および配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59および配列番号:60からなる群から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNA配列を含むアプタマーから選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
-配列番号:1と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:2と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:3と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:8と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:9と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:10と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:11と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:12と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:13と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:14と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:16と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:17と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、および
-配列番号:18と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
を少なくとも含む、請求項6~9のいずれか一項に記載のキットであって;
好ましくは、修飾RNAランダムな配列を含むアプタマーをさらに含むキット。
【請求項11】
該キットが複数のアプタマーを含む場合、該アプタマーは、
a) すべてが1つの組成物に含まれているか、または
b) 隔てられた容器中のいくつかの異なる組成物に分配されている(アプタマーがそれぞれ、隔てられた容器に配置されている異なる組成物に含まれる場合を含む)、請求項6~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
該アプタマーまたは該キットのすべてのアプタマーのRNAが、RNAヌクレアーゼに対する抵抗性を増大させるように修飾され、好ましくは、該アプタマーまたは該キットのすべてのアプタマーのピリミジンのリボースが、2'位炭素にフッ素原子を担持する、請求項1~5のいずれか一項に記載のアプタマーまたは請求項6~11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
a) 生体試料中の少なくとも1つのF-型α-Syn繊維のコンフォマーの存在または非存在の検出;
b) 生体試料中のF-型α-Syn繊維のコンフォマーの量の決定;
c) 生体試料中のα-Syn繊維コンフォマー、好ましくはα-SynのF-型α-Syn繊維およびR型α-Syn繊維の分子フィンガープリントの確立;
d) F-型α-Syn繊維のコンフォマーを検出および/または認識することができる化合物/分子のスクリーニング、好ましくは、F-型α-Syn繊維のコンフォマーをR-型α-Syn繊維のコンフォマーから区別できる化合物/分子のスクリーニング;または
e) a)からd)のいずれかの組み合わせ、
のための、請求項1~5および12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアプタマー、請求項6~12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせ、のインビトロでの使用。
【請求項14】
神経変性疾患の少なくとも1つの症状を有する対象においてシヌクレイン病を診断するためのインビトロでの方法であって、
a) 該対象の生体試料を、請求項1~6および13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアプタマー、請求項7~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせと接触させること;
b) 該対象の生体試料において、少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在または非存在を検出すること、F-型α-Syn線維のコンフォマーを定量化すること、α-Syn線維コンフォマー(好ましくは、α-SynのF-型およびR型α-Syn線維)の分子フィンガープリントを確立すること、またはこれらのいずれかの組み合わせ;および
c) 工程b)の結果に基づいて、該対象においてシヌクレイン病の存在または非存在を診断すること、
を含む方法。
【請求項15】
シヌクレイン病に罹患している対象においてシヌクレイン病の層別化、シヌクレイン病の予後診断、シヌクレイン病のモニタリング、またはシヌクレイン病の処置の有効性の評価、のためのインビトロでの方法であって、
a) 該対象の生体試料を、請求項1~6および13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアプタマー、請求項7~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのキット、またはこれらの組み合わせに接触させること;
b) 該対象の生体試料において、少なくとも1つのF-型α-Syn繊維のコンフォマーの存在または非存在を検出すること、F-型α-Syn繊維のコンフォマーを定量化すること、α-Syn繊維コンフォマー(好ましくはα-SynのF型α-Syn繊維およびR型α-Syn繊維)の分子フィンガープリントを確立すること、またはこれらの組み合わせ;および
c) 工程b)に基づく、該対象における、シヌクレイン病の層別化、シヌクレイン病の予後診断、シヌクレイン病のモニタリング、シヌクレイン病の処置の有効性の評価、
を含み、
ここで、シヌクレイン病は、好ましくは、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)から選択され、より好ましくは、シヌクレイン病はDLBである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプタマーおよび神経変性疾患の分野、特にシヌクレイン病に関する。
【0002】
本発明は、アプタマーに関し、該アプタマーは、α-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質のF-型α-Syn線維の立体構造異性体(コンフォマー)をR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別する能力を有することを特徴とし、かつ配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7から選択される、好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾リボ核酸(修飾RNA)に特異的配列を含むことを特徴とする。
【0003】
本発明はさらに、これらのアプタマーの少なくとも1つを含む組成物またはキット、ならびにそれらの使用に関する。本発明はまた、神経変性疾患を診断するための方法、ならびに上記の少なくとも1つのアプタマーおよび/または上記の組成物および/またはキットの使用を含む、層別化、モニタリング、予後診断、およびシヌクレイン病処置の有効性の評価のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病またはレビー小体型認知症などの神経変性疾患の診断は、患者が経験する認知障害、運動障害および感覚障害の観察に基づいている。しかし、これらの異なる疾患の症状は、特に疾患の初期段階には非常によく似ているため、その診断は難しい。多くの場合、確定診断ができるのは、疾患が進行した段階に達しており、患者が最も重度の症状に苦しんでいる場合のみである(Gomez-Rio and al, 2016)。したがって、異なる神経変性疾患(ND)を確実に区別するための新しい診断方法を開発することが不可欠である。さらに、診断が改善されれば、患者にはより信頼性の高いモニタリングと予後診断を提供することができ、適用された処置の有効性をより適切に評価することができるようになる。
【0005】
さらに、これらの疾患に関連する運動症状は、ニューロンの損傷がすでに非常に大きい時期に、かなり遅れて現れることが多い。例えば、パーキンソン病の運動症状が出現するときには、黒質のドーパミン作動性ニューロンの50%がすでに死滅していると推定されている(Cheng and al., 2010)。したがって、運動症状が出現する前にNDの発症を検出することは、神経変性現象がまだ広範囲に及んでいない早期に治療を開始することができることから、重要である。
【0006】
NDを診断するために特に研究されているのは、遺伝学的バイオマーカーと生化学的バイオマーカーの2種類である。
【0007】
遺伝学的バイオマーカーとは、疾患の素因として同定されているゲノム中の対立遺伝子または変異のことであり得る。したがって、この種類のマーカーにより、NDを発症する確率の高い「リスクのある」集団を特定することができる。
【0008】
生化学的マーカーは、その存在および/または量が病状の進展と相関する生体分子である。例えば、パーキンソン病は、レビー小体内のα-シヌクレイン(またはα-シヌクレインまたはα-Syn)の蓄積によって組織学的に特徴づけられる(Katsuno and al.)。したがって、生化学的マーカーは疾患の出現と発症の特徴と見なされ、遺伝学的バイオマーカーはむしろ疾患を発症する因子とみなされる。生化学的マーカーを同定することで、疾患の出現を早期に検出し、より正確な診断を下し、疾患の進展をより容易に追跡し、さらに治療の有効性を正確に評価することができる。そのため、現在、患者の組織または体液(血液、血清、脳脊髄液など)に存在し、各疾患の特有のシグネチャーからなるマーカーを同定するために、多くの努力がなされている(Agrawal and Biswas, 2015; Beach, 2017)。
【0009】
中枢神経系におけるタンパク質凝集体の蓄積は、いくつかの進行性神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病およびクロイツフェルト・ヤコブ病)に共通する特徴である。特定のタンパク質の三次元のミスフォールディングは、一緒に結合する傾向を強め、このミスフォールディングを互いに伝達し合う。そして、これらのタンパク質の凝集型が徐々に蓄積し、ニューロンの正常な機能を妨害し、徐々に死に至らしめる。この型の凝集体を形成できるタンパク質のうち、α-シヌクレインタンパク質、タウタンパク質、ハンチンチンティン、β-アミロイドペプチドまたはPrPタンパク質などが挙げられる。
【0010】
これらのタンパク質の病的な三次元のコンフォメーションが、細胞間だけでなく、個体間でも伝達可能であることが証明された。このことから、「プリオン」と称される特定のタンパク質が、ウイルス、細菌および寄生虫と同様に感染性物質となり得ることが証明された。個体から個体への伝達は主にPrPタンパク質について証明されてきたが、最近の研究では、神経変性疾患に関与する他のタンパク質も同様の性質を有する可能性があることが示されている。これらのタンパク質には、α-シヌクレインタンパク質、タウタンパク質、ハンチンチンティンまたはベータアミロイドペプチドなどがある。
【0011】
α-シヌクレイン(α-Syn)線維は、「シヌクレイン病」の名称でグループ化されている特定のNDに罹患している患者の脳内のタンパク質凝集体の中に見出される。これらの疾患には、特に以下のものを含む:パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)。α-Syn線維は何千ものミスフォールドしたタンパク質の繰り返しから構成されている。α-Syn線維は、ミスフォールドしたα-Synタンパク質が、それが別のタンパク質と結合する際に、その誤ったコンフォメーションを伝達するという伝播メカニズムに従って、タンパク質の連続的な動員によって形成される。最近、異なる構造コンフォメーションを有するいくつかの形態のα-Syn線維が単離され、それらが異なる病態を引き起こす可能性が示された(Peelaerts and al., 2015; Rey and al., 2019)。これらの異なるコンフォメーションはコンフォマーと称される。これらのコンフォマーの中で、F型、R型、91型および65型のα-Syn繊維のコンフォマーを挙げることができる(Bousset and al., 2013; Makky and al., 2016)。F型、65型および91型のα-Syn繊維のコンフォマーは円筒状をしており、R-型繊維のコンフォマーは平らなリボン状をしており、91型および65型繊維はねじられているが、らせんピッチが異なっている。固体状態のNMRおよび原子間力顕微鏡により分析することにより、これら4つの繊維コンフォマー間の構造的差異が明らかになった。したがって、これらの繊維コンフォマーの長さは平均1~2μmであり、幅は15~20nm程度であり、F-型α-Syn繊維のコンフォマーが最も狭く、65繊維コンフォマーが最も広い。これらの高さは5~7nm程度であり、R-型α-Syn繊維のコンフォマーが最も低く、繊維コンフォマー65が最も高い。最後に、65繊維コンフォマーおよび91繊維コンフォマーは、F型およびR型α-Syn繊維のコンフォマーとは異なり、高さが周期的に変化する。他の分析でも、4つの繊維コンフォマーは異なる機械的性質を有することが示された。したがって、F-型α-Syn繊維のコンフォマーは最も硬く、曲げ強度測定値はRコンフォマーより4倍大きく、65繊維コンフォマーおよび91繊維コンフォマーより2倍大きい。α-Syn繊維コンフォマーは、プロテイナーゼKを用いたタンパク質分解による分析によっても互いに区別することができる。それらの構造的な違いは、1つのコンフォマーごとに異なる分解プロファイルをもたらす。これらのプロファイルは、各コンフォマーに特異的なバーコード(またはフィンガープリント)に匹敵する(
図1の分解プロファイルの例を参照(Landureau and al., 2021)。さらに、F-型α-Syn線維のコンフォマーにおけるタンパク質の全形態は、R-型コンフォマーよりもタンパク質分解に対してより抵抗性がある(Fenyi and al., 2021)。
【0012】
様々な研究では、これらの異なるα-Syn線維コンフォマーが、異なるシヌクレイン病の特異的なマーカーになりうることを示唆している。ラット動物モデルによって、F型またはR型線維コンフォマーを動物の脳に注入すると、2つの異なる表現型が生じることが証明された。特に、F-型α-Syn線維のコンフォマーはこのモデルにおいてより大きな運動障害を引き起こし、R-型α-Syn線維のコンフォマーはレビー小体や神経突起型の沈着をより多く引き起こすことが示された(Peelaerts and al., 2015)。より最近の研究では、PDまたはSMA患者から得られた線維コンフォマーはR-型線維コンフォマーに似ているのに対し、DLB患者から得られた線維コンフォマーはF-型線維コンフォマーに似ていることが示されている(Van der Perren and al., 2020)。
【0013】
そのため、これらのマーカーを効率的、特異的、高感度、高信頼性で検出できる方法を開発することが不可欠である。
【0014】
血漿または脳脊髄液(CSF)中のα-Synを定量化できる抗体がいくつか開発されている(WO2007/011907; Perrin and al., 2003; Vaikath and al., 2019)。しかし、これらの抗体のほとんどは、タンパク質の特定のコンフォメーションに対して特異的ではない。その結果、これらの抗体はタンパク質を測定することはできるが、凝集体の形態のタンパク質の量を測定することができないため、診断の観点からは有用ではない。モノマー型のタンパク質と比較して、凝集型のタンパク質を特異的に認識する新しい抗体が開発されている (Vaikath and al., 2015)。しかし、これらの抗体は特定の繊維型に特異的ではない。一方、複数の抗体を用いて複数のバイオマーカーを同時に定量することは常に困難であり、コストもかかる。
【0015】
このような状況において、アプタマーは有利な可能性を提供する。アプタマーは、抗体に匹敵する性質を有する核酸構造である。これらは一般的に、SELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化)と称される指示された分子進化の過程によって得られる。1990年代にSELEXが発見されて以来、アプタマーの使用は多くの応用(診断、精製、治療など)で実験的に検証されてきた。さらに、抗VEGFアプタマー(Macugen(登録商標))は、眼の黄斑変性症の治療薬として、すでに販売認可を受けている。
【0016】
いくつかの研究により、α-Synを認識するDNAアプタマーが同定された。あるDNAアプタマー(M5-15と命名)はα-Synのモノマー型に対して選択された。しかしながら、このアプタマーはα-Synのオリゴマー型や繊維型にも非特異的に結合する(Tsukakoshi and al., 2010)。第2の研究により、α-Synのモノマー型および線維型からオリゴマー型を識別できる第2のDNAアプタマー(T-SO508)を得ることができた。しかし、追加の試験では、このアプタマーはアミロイド-βのオリゴマー型も同じ等級の親和性で認識することが示された(Kdは約100nM;Tsukakoshi and al., 2012)。アプタマーF5R1とF5R2は、DNA化学にもおいても2019年にZhengらによって選択された。これらはα-Synをそれぞれ2.4および3.07nMのkdで認識する(Zheng and al., 2018; Ren and al., 2019)。DNA化学における他のアプタマーもDerosaと共同研究者らによって選択されている(WO201979887)。これらの異なるアプタマーはいずれも、異なるα-Syn繊維コンフォマーを識別する能力について評価されていない。
【0017】
様々な神経変性疾患の診断におけるα-Syn線維、特にF型α-Syn線維およびR型α-Syn線維のコンフォマーの重要性を考慮すると、様々なα-Syn線維のコンフォマー、特にF型およびR型α-Syn線維のコンフォマーを区別できる分子の開発が不可欠である。
【0018】
本発明はこのニーズに応えることができる。
【0019】
本発明の開示
本発明に関連して、本発明者らは、α-Syn繊維の特定のコンフォマーを特異的に認識することができるリボ核酸(RNA)アプタマーを開発した。本発明者らは、実際に、異なるα-Syn繊維コンフォマーに対して異なる親和性を有するRNAアプタマーを選択して単離した。
【0020】
本発明者らは特に、驚くべきことに、開発されたアプタマーが、先行技術に記載されているα-Synに対するDNAアプタマーとは異なり、F-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別できることを示した。
【0021】
データでは、特に、本発明者らによって開発されたアプタマーがF-型α-Syn線維のコンフォマーに対して強い親和性を有することを示している(解離定数Kdは5~10nM)。一方、意外なことに、これらのアプタマーは、R-型α-Syn線維のコンフォマーに対する親和性は非常に低いか、またはゼロである。本発明者らはまた、これらのアプタマーが天然型(モノマー型、非繊維型)のα-Synタンパク質を少なくとも10倍低い親和性で認識することを実証した。驚くべきことに、本発明者らは、これらのアプタマーの混合物を用いて、患者の試料に適用可能なハイスループットシークエンシングによってこれらの繊維コンフォマーを効果的に識別する方法を開発した。
【0022】
データでは、これらのアプタマーが異なるα-Syn線維の特異的で高感度な検出のためのツールであることが示されている。したがって、本発明は、神経変性疾患を診断するための効果的で信頼性の高い方法、分子をスクリーニングするための方法、ならびに神経変性疾患分野における研究のためのツールを提供する。
【0023】
したがって、本発明は、α-Syn(α-Syn)タンパク質のF-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-シン線維のコンフォマーから区別する能力を有することを特徴とし、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7から選択される、好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾リボ核酸(RNA)に特異的配列を含むことを特徴とするアプタマーに関する。好ましい実施態様によれば、RNAは、RNAヌクレアーゼに対する抵抗性を増加させるように、好ましくは、アプタマーのピリミジンのリボースを修飾することによって、2'位の炭素上にフッ素原子を担持するように修飾される。
【0024】
本発明はさらに、これらのアプタマーの少なくとも1つを含む組成物またはキット、ならびにそれらの使用に関する。本発明はまた、神経変性疾患を診断するための方法、層別化、モニタリング、予後診断およびシヌクレイン病処置の有効性の評価のための方法であって、少なくとも1つのアプタマーおよび/または上記の組成物および/またはキットの使用を含む方法に関する。
【発明の概要】
【0025】
本発明の詳細な説明
本発明の内容
本発明は、α-Synタンパク質(α-Syn)のF-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別する能力を有することを特徴とし、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7から選択される、好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される、配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾リボ核酸(RNA)に特異的配列を含むことを特徴とするアプタマーに関する。
【0026】
本発明によるアプタマーの一実施態様によれば、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(F)は、
a) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低い;
b) α-Synモノマーについて測定された解離定数Kd(Mono)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;
c) F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、ランダムなアプタマーの解離定数Kd(Random)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;
d) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低く;かつ、α-Synモノマーについて測定された解離定数Kd(Mono)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;
e) R-型α-Syn繊維のコンフォマーついて測定された解離定数Kd(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低く;かつ、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、ランダムなアプタマーの解離定数Kd(Random)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;または
f) R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(R)より低い、好ましくは少なくとも10倍低い;α-Synモノマーについて測定された解離定数Kd(Mono)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い;かつ、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、ランダムなアプタマーの解離定数Kd(Random)より低い、好ましくは少なくとも2倍低い。
【0027】
本発明によるアプタマーの一実施態様によれば、少なくとも1つの解離定数Kdは以下の通りである:
a) F型α-Syn線維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(F)は、15nM未満、好ましくは10nM未満であり;および/または
b) R-型α-Syn線維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(R)は100nMを超え、好ましくは150nMを超える。
【0028】
本発明はさらに、
i. 特異的配列の5'において、好ましくは、該特異的配列の5'末端に位置する、配列番号:29および配列番号:30から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列および/または
ii. 特異的配列の3'において、好ましくは、該特異的配列の3'末端に位置する、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列、
をさらに含む、前記アプタマーに関する。
【0029】
本発明はさらに、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39および配列番号:40から選択される、好ましくは、配列番号:34および配列番号:35から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNA配列を含む、前記アプタマーに関する。
【0030】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのアプタマーを含むキットに関する。
【0031】
本発明によるキットの一実施態様によれば、キットは、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16および配列番号:17、配列番号:、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマーから選択される少なくとも1つの追加のアプタマーをさらに含み;
該キットは、好ましくは、修飾RNAランダムな配列を含むアプタマーをさらに含む。
【0032】
本発明によるキットの一実施態様によれば、少なくとも1つの追加のアプタマーは、
i. 特異的配列の5'において、好ましくは、該特異的配列の5'末端に位置する、配列番号:29および配列番号:30から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列;および/または
ii. 特異的配列の3'において、好ましくは、該特異的配列の3'末端に位置する、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する修飾RNAプライマー配列、
をさらに含む。
【0033】
本発明はまた、少なくとも1つの追加のアプタマーが、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48および配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59および配列番号:60から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNA配列を含むアプタマーから選択される、前記キットに関する。
【0034】
本発明によるキットの一実施態様によれば、キットは、少なくとも以下のアプタマーを含み:
-配列番号:1と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:2と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:3と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:8と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:9と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:10と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:11と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:12と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:13と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:14と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:16と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、
-配列番号:17と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー、および
-配列番号:18と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー;
該キットは、好ましくは、修飾RNAランダムな配列を含むアプタマーをさらに含む。
【0035】
本発明によるキットは、好ましくは、前記キットが複数のアプタマーを含む場合、前記アプタマーは:
a)すべてが1つの組成物に含まれているか、または
b)隔てられた容器中のいくつかの異なる組成物に分配されている(アプタマーがそれぞれ、隔てられた容器に配置されている異なる組成物に含まれる場合を含む)、
ことを特徴とする。
【0036】
本発明はさらに、前記アプタマーまたは前記キットであって、前記アプタマーまたは前記キットのすべてのアプタマーのRNAが、RNAヌクレアーゼに対する抵抗性を増大させるように修飾され、好ましくは、前記アプタマーまたは前記キットのすべてのアプタマーのピリミジンのリボースが、2'位の炭素のにフッ素原子を担持する、アプタマーまたはキットに関する。
【0037】
本発明はまた、
a) 生体試料中のF型α-Syn繊維の少なくとも1つのコンフォマーの存在または非存在の検出;
b) 生体試料中のF型α-Syn繊維のコンフォマーの量の決定;
c) 生体試料中のα-Syn繊維コンフォマー、好ましくはα-SynのF-型およびR型α-Syn繊維の分子フィンガープリントの確立;
d) F-型α-Syn繊維のコンフォマーを検出および/または認識することができる化合物/分子のスクリーニング、好ましくは、F-型α-Syn繊維のコンフォマーをR型α-Syn繊維のコンフォマーから区別できる化合物/分子のスクリーニング;または
e) a)~d)のいずれかの組み合わせ、
のための、本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせの使用、のインビトロでの使用に関する。
【0038】
本発明は、神経変性疾患の少なくとも1つの症状を有する対象においてシヌクレイン病を診断するためのインビトロでの方法であって、
a) 前記対象の生体試料を、本発明の少なくとも1つのアプタマー、本発明の少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせと接触させること;
b) 前記対象の生体試料において、F-型α-Syn線維の少なくとも1つのコンフォマーの存在または非存在を検出すること、F-型α-Syn線維のコンフォマーを定量化すること、α-Syn線維のコンフォマー(好ましくは、α-SynのF-型およびR型α-Syn線維)の分子フィンガープリントを確立すること、またはこれらのいずれかの組み合わせ;および
c) 工程b)の結果に基づいて、前記対象においてシヌクレイン病の存在または非存在を診断すること、
を含む方法に関する。
【0039】
本発明はまた、シヌクレイン病に罹患している対象において、シヌクレイン病の層別化、シヌクレイン病の予後診断、シヌクレイン病のモニタリング、またはシヌクレイン病処置の有効性の評価のためのインビトロでの方法であって、
a) 前記対象の生体試料を、本発明の少なくとも1つのアプタマー、本発明の少なくとも1つのキット、またはこれらの組み合わせと接触させること;
b) 前記対象の生体試料において、F-型α-Syn繊維の少なくとも1つのコンフォマーの存在または非存在を検出すること、F-型α-Syn繊維のコンフォマーを定量化すること、
α-Syn繊維コンフォマー(好ましくはα-SynのF型およびR型α-Syn繊維)の分子フィンガープリントを確立すること、またはこれらの組み合わせ;および
c) 前記工程b)に基づいて、前記対象において、シヌクレイン病を層別化すること、シヌクレイン病の予後診断を行うこと、シヌクレイン病をモニタリングすること、シヌクレイン病の処置の有効性を評価すること、
を含み、
ここで、シヌクレイン病は、好ましくは、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)から選択され、より好ましくは、シヌクレイン病はDLBである、方法に関する。
【0040】
定義
「α-シヌクレイン」または「α-Syn」または「α-syn」または「α-シヌクレイン」または「a-シヌクレイン」とは、ヒトの脳に多く存在するシヌクレインファミリーのホスホタンパク質を意味する。心臓、筋肉およびその他の組織にも少量見出される。脳内では、α-Synは主にシナプス前終末の神経細胞(ニューロン)の末端に見出される。ヒトα-シヌクレインタンパク質の参照タンパク質配列は、P37840.1下でで参照されるNCBI配列である。
【0041】
生理的状態では、α-Synタンパク質は2つの形態で存在する。可溶性である場合と膜に結合している場合である。サイトゾル中の可溶性状態では、α-Synは無秩序な構造をしている(Fauvet and al., 2012)。脂質膜の存在下では、α-SynのN末端部分は、脂質膜内に埋め込まれるα-らせん構造をとる(Eliezer and al., 2001)。α-Synは、大きな直径の膜(少なくとも100nm)に結合すると、大きくて細長いらせんの形状をとる(Trexler and Rhoades, 2009)。逆に、小さな小胞(したがって曲率が高い)と相互作用する場合、α-Synは2つの小さなαらせんからなる構造をとる(Chandra and al., 2003)。
【0042】
異常なフォールディングが起こると、α-Synはβシートに富んだ「病的な」コンフォメーションと称されるコンフォメーションをとることができる。これらの病的なコンフォメーションは、シヌクレイン病において細胞内沈着の形態で見出される線維状凝集体(「線維状α-Syn」または「α-Syn線維」と称される)を形成する強い傾向がある(El-Agnaf and al., 1998a)。「繊維状α-Syn」または「α-Syn繊維」または「α-Syn繊維状凝集体」または「α-Syn凝集体」とは、多数のミスフォールドしたα-Synタンパク質繰り返し(特に、25から数百のミスフォールドしたα-Synタンパク質繰り返し)からなる繊維(または凝集体、または集合体)を意味する。したがって、ミスフォールドしたα-Synタンパク質(異常な/病的な/非ネイティブフォールディングを有する)の数コピー(25から数百)の集合体である。これらのα-Syn線維は、ミスフォールドしたα-Synタンパク質が別のタンパク質と結合する際に、その誤ったコンフォメーションを伝達するという伝播メカニズムにしたがって、α-Synタンパク質の連続的な動員によって形成される。これらの不溶性線維は、シヌクレイン病、例えば、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)多系統萎縮症(MSA)として知られる特定の病態を特徴とするレビー小体に見出される。
【0043】
異なる構造的コンフォメーションを有するいくつかの形態のα-Syn線維が単離され、それらが異なるシヌクレイン病を誘発することが証明されている。これらの異なるコンフォメーションはα-Syn線維コンフォマーと称されている。
【0044】
α-Synタンパク質は、1つまたはそれ以上の翻訳後修飾、例えば、官能基の付加(例えば、アセチル化、アルキル化、ビオチン化、カルボキシル化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイニル化(phosphopantetheinylation)、リン酸化、リボシル化、硫酸化、セレン化、アミド化、およびこれらのいずれかの組み合わせ)、ペプチド基またはタンパク質基の付加(但し、後者については、付加されるタンパク質がα-Synタンパク質ではない;ペプチド基またはタンパク質の付加は、例えば、ユビキチン化、NEDD化、SUMO化、ウルミル化など、およびこれらのいずれかの組み合わせから選択される)、アミノ酸の化学的性質の変化(例えば、シトルリン化、脱アミド化など、およびこれらのいずれかの組み合わせから選択される)、構造的変化(例えば、ジスルフィド架橋形成などから選択される)およびここれらのいずれかの組み合わせから選択されるものを受け得る。
【0045】
「α-Synコンフォマー(立体構造異性体)」または「α-Syn繊維コンフォマー(立体構造異性体)」とは、異常なフォールディングを有するα-Synタンパク質の凝集体によって形成される特定の構造的/空間的配置(コンフォメーション)を意味する(すなわち、線維状のα-Synによってとられる特定の構造的配置)。F型、R型、65型および91型のα-Syn線維のコンフォマーなど、さまざまなα-Syn線維のコンフォマーが同定されている。F型、65型および91型のα-Syn線維のコンフォマーは円筒状をしており、R-型線維コンフォマーは平らなリボン状をしており、91型線維および65型線維はねじれているが、らせんピッチは異なっている。これらの繊維内では、α-Synタンパク質の少なくとも1つのコピーが、上記で定義されている1つまたはそれ以上の翻訳後修飾を含んでいることがある。
【0046】
「F繊維」または「F-型α-Syn繊維のコンフォマー」または「α-SynF-型繊維のコンフォマー」とは、プロテイナーゼKによってタンパク質分解が行われる間に9本のバンドを生成する(例えば、
図1(Landureau and al., 2021))、その曲げ剛性が約5.8 10
-26 N.m
2である、円筒形であるα-Synタンパク質の凝集体を意味する。
【0047】
「R線維」または「R-型α-Syn線維のコンフォマー」または「α-SynR-型線維のコンフォマー」とは、扁平なリボン状をしているα-Synタンパク質の集合体を意味する。R型線維はF型線維よりも扁平である。プロテイナーゼKによってタンパク質分解が行われる間に3本のバンドを形成し(例えば、
図1(Landureau and al., 2021))、約1.4 10
-26 N.m
2の曲げ剛性を有する。
【0048】
「65繊維」または「65繊維コンフォマー」または「65α-Syn繊維コンフォマー」とは、きついねじれの形状をしているα-Synタンパク質の集合体を意味する。これらは約2.710-26 N.m2の曲げ剛性を有する。
【0049】
「91繊維」、「91繊維コンフォマー」または「91α-Syn繊維コンフォマー」とは、ゆるやかなねじれの形状をしているα-Synタンパク質の集合体を意味する。これらはプロテイナーゼKによってタンパク質分解が行われる間に7つのバンドを形成し(例えば、
図1(Landureau and al., 2021))、約2.410
-26 N.m
2の曲げ剛性を有する。
【0050】
これらの異なる型の繊維は、固体状態NMR分析、原子間力顕微鏡、電子顕微鏡、タンパク質分解の制御、繊維によるX線の回折、チオフラビンTまたは抗体などのリガンドの固定など、当業者に知られている様々な分子・構造的分析技術を用いて区別することができる。これらの技術により、特に、F、R、65および91線維コンフォマーの長さは平均1~2μm、幅は約15~20nmであり、F-型α-Syn線維のコンフォマーが最も狭く、65線維コンフォマーが最も広いことが示された。その高さは5~7nm程度であり、R-型α-Syn繊維のコンフォマーが最も低く、65型が最も高い。最後に、65および91線維コンフォマーは、F型およびR型α-Syn線維のコンフォマーとは異なり、高さが周期的に変化する。あるいは、分子および構造的解析技術と組み合わせて、これらの異なる型の繊維コンフォマーは、原子間力顕微鏡法などの当業者に公知の異なる機械的分析技術を用いて、その機械的性質によって区別することができる。特に、これらの機械的分析により、4つの型の繊維がそれぞれ異なる機械的特性を有することが証明された。したがって、F-型α-Syn繊維のコンフォマーは最も剛性が高く、曲げ強度の測定値はR繊維のコンフォマーより4倍大きく、65繊維および91繊維コンフォマーより2倍大きい。α-Syn繊維コンフォマーは、プロテアーゼ分解プロファイルによって互いに区別することもできる(特に、α-Syn繊維コンフォマーは他の型のα-Syn繊維コンフォマーと区別できる)。その構造的違いは、コンフォマーごとに異なる分解プロファイルをもたらす。これらのプロファイルは、各コンフォマーに特異的なバーコード(またはフィンガープリント)に匹敵する(
図1の分解プロファイルの例を参照)。さらに、F-型α-Syn線維のコンフォマーにおけるタンパク質の全形態は、R-型コンフォマーよりもタンパク質分解に対して抵抗性がある(Fenyi and al., 2021)。
【0051】
これらの繊維の中で、α-Synタンパク質の少なくとも1つのコピーは、上記で定義される1つまたはそれ以上の翻訳後修飾を含み得る。
【0052】
「α-Synオリゴマー」または「オリゴマー形態のα-Syn」とは、鎖の形態(すなわち、2~24個のα-Synタンパク質を含む、互いに結合/会合したα-Synタンパク質の配列)で提示される、α-Synタンパク質のタンパク質のいくつかのコピー(2~24個)を含む集合体を意味する。α-Synオリゴマーは、α-Synのコピー数が少ない(ピエリら、2016年)という点でα-Syn繊維から区別される。したがって、α-Synオリゴマーは、α-Synタンパク質を2~約20コピー含む。α-Synオリゴマーは、25個未満のα-Synモノマー含むため、本発明の意味におけるα-Syn繊維ではない。
【0053】
「α-Synモノマー」または「モノマー形態のα-Syn」は、遊離形態で存在するα-Synタンパク質の分子、すなわちα-Synタンパク質の別の分子に結合/会合していない分子を意味する。したがって、α-Synモノマーは、α-Synタンパク質の単一コピーを含む。したがって、α-Synモノマーは、α-Synタンパク質のオリゴマーおよび凝集体/繊維から区別される。モノマー中のα-Synタンパク質の単一コピーは、それにもかかわらず、上述したように、1つまたはそれ以上の翻訳後修飾を含み得る。
【0054】
「アプタマー」とは、所定のリガンド(リガンドは「標的」と称される)、特にタンパク質の性質に特異的に結合する能力を与える三次元構造をとるオリゴヌクレオチド(すなわち、核酸鎖のセグメント)を意味する。アプタマーが標的に特異的に結合するといわれるのは、標的と構造的に無関係な化合物に対して本質的に親和性がない場合である。好ましくは、タンパク質標的の場合、標的と化合物の間の配列同一性が60%未満、好ましくは70%未満、さらに好ましくは80%未満である場合、タンパク質化合物は本発明による標的と構造的な関係を持たないと言われる。好ましくは、本発明によれば、アプタマーは、特に、化合物に対するアプタマーの解離定数が10-6mol/lより大きい場合、好ましくは10-7mol/lより大きい場合、本発明による化合物に対して本質的に親和性を有さないと言われる。解離定数は、特に、標準的な条件下で、当業者に周知のScatchardおよびLineweaver Burk表現を用いて決定することができる。
【0055】
アプタマーは一般に、数ヌクレオチド~数十ヌクレオチド、例えば15~100ヌクレオチド(好ましくは20~90ヌクレオチド、より好ましくは30~80ヌクレオチド、より好ましくは40~70ヌクレオチド、より好ましくは50~60ヌクレオチド)を含む。アプタマーは、主として、当業者に公知の技術(化学的または酵素的合成など)を用いて合成的に製造される。アプタマーは一般に、SELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化)と称される指示された分子進化の過程によって選択/同定される。
【0056】
アプタマーは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(すなわち、天然のDNAまたはRNAのヌクレオチドではないヌクレオチド)を含み得る。これらの修飾ヌクレオチドは、特に、ヌクレアーゼによる分解に対するアプタマーの抵抗性を高めるために使用することができる。これは、一般にヌクレアーゼに対してDNAアプタマーよりも感受性が高いRNAアプタマーにとって特に有利である。少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むRNAは修飾RNAと称される。
【0057】
アプタマーはまた、その核酸配列を構成するヌクレオチドに加えて、少なくとも1つの追加の基を含み得る。したがって、アプタマーの核酸は、少なくとも1つの追加の基と結合することができる。
【0058】
「修飾RNA」とは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むRNAを意味する。修飾RNAは特に、核酸の骨格の全部または一部が、特にヌクレアーゼの作用による加水分解に対して抵抗性を有するように修飾されたRNAである。RNAは、その全体が修飾されてもよく(すなわち、それを構成する各ヌクレオチドが修飾される)、一部が修飾されてもよい(すなわち、それを構成するヌクレオチドの一部のみが修飾される)。RNAが部分的に修飾されている場合、プリン類の全部または一部および/またはピリミジン類の全部または一部が修飾されることを選択することが可能である。
【0059】
RNA(および/またはヌクレオチド)の修飾は、当業者には周知であり、特に、メチル化によるリボースの2'位の炭素上のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;ホスホジエステル(PO)のホスホロチオエート(PS)による置き換え(したがって、これはホスホロチオエート骨格と称される);ロック核酸(LNA)型構造の使用、すなわち、C3'-エンド(N型)コンフォメーションでリボースをロックするためのメチレン架橋の形成;ペプチド核酸(PNA)型構造の使用、すなわち糖-ホスフェート骨格のペプチド型骨格への置き換え;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される。
【0060】
「追加の基」とは、アプタマーの核酸配列の一部を形成しない、いずれかの型および性質の化学基を意味する。追加の基は、特に、放射性同位体、最大100個の炭素原子を含む有機分子、ナノ粒子、タンパク質(特に糖タンパク質)、炭水化物、脂質、ポリヌクレオチド、およびこれらのいずれかの組み合わせから選択され得る。追加の基は、好ましくは、検出可能なマーカー、薬理学的化合物、それが結合する核酸の薬物動態特性を修飾することができる化合物(ポリエチレングリコール(PEG)など)およびこれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0061】
検出可能なマーカーはどのような型であてもよく、特にフルオロフォア(例えばフルオレセインまたはルシフェラーゼ)、放射性同位元素(特にシンチグラフィーに適合したもの、例えば99mTc)、抗体によって認識可能な標識(例えばc-Mycタンパク質またはポリヒスチジンタグ)、親和性タグ(例えばビオチン)、酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)、造影剤などである。
【0062】
薬理学的化合物はまた、任意の型であってもよい。特に、抗癌化学療法剤(細胞増殖抑制剤または細胞診薬(cytological agent)など)、抗体、毒素、ホルモン、酵素、抗ウイルス化合物、抗生物質化合物、抗真菌化合物、抗菌化合物などである。
【0063】
「アプタマーの特異的/標的配列」または「アプタマーの特異的/標的配列」とは、アプタマーのリガンド(標的)に特異的な、プタマーの配列の一部(セクション/領域/部分)、すなわち、特定のアプタマーに特有である配列を意味する。アプタマーの特異的配列は、アプタマーごとに異なる(したがって、アプタマー中に存在する可能性のある定常配列とは対照的に、可変配列である)。したがって、アプタマーの特異的配列は、アプタマーにも存在する可能性のあるプライマー配列(または「定常性」配列、または「非特異的な」配列)と区別される。
【0064】
「アプタマーのプライマー配列」または「アプタマーの定常配列」とは、使用される選択法(SELEXなど)の同じセッション(同じ実施)によって同定/選択されたすべてのアプタマーに存在する、アプタマーの配列の一部(セクション/領域/部分)を意味する。これは一般に、SELEX中のPCR工程に使用されるプライマーの配列である。したがって、アプタマーは一般的に2つのプライマー配列を含み、一方は特異的/標的配列の5'にあり、他方は特異的/標的配列の3'にあるため、PCRによる増幅が可能である。したがって、アプタマーのプライマー配列はアプタマーに特有ではない。
【0065】
「ランダムな配列」とは、対照として使用され、当業者によって無作為(ランダム)に設計された配列を意味する(すなわち、それを構成するヌクレオチドは無作為(ランダム)に組み立てられている)。ランダムな配列は、好ましくは、アプタマーと同じ長さを有する。ランダムな配列は、該当する場合、好ましくは、アプタマーと同じ「定常」配列(「プライマー」;好ましくは3'および/または5')を有する。この場合、定常配列はアプタマーのランダムな配列のフレームを作製することで(したがって、定常配列はランダムなアプタマーのランダム配列の5'および/または3'である)、完全な配列が定常配列(ランダムなアプタマーの配列と同一または異なる、好ましくは同一)を有する、本発明によるアプタマーの配列と同じ長さを有するランダムなアプタマーを形成する。
【0066】
「線維状α-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質の少なくとも2つのコンフォマーを区別/識別する能力」とは、分子(例えばアプタマー)が、α-Syn繊維コンフォマー(F-型、R-型、91-型および61-型繊維コンフォマーなど)の少なくとも1つに、少なくとも1つの他のα-Syn繊維コンフォマーよりも有意に高い親和性で(すなわち、より低い解離定数で)結合することを可能にする性質を意味する。特に、分子が少なくとも2つのα-Syn線維コンフォマーを区別できるのは、分子が一方のα-Syn線維コンフォマーに対して、他方のα-Syn線維コンフォマーと比較して有意に強い親和性を有する場合である。言い換えれば、分子は、あるα-Syn線維コンフォマーに対する結合能力が、少なくとも1つの他のα-Syn線維コンフォマーに対する結合能力よりも有意に大きい場合、少なくとも2つのα-Syn線維コンフォマーを区別することができる。例えば、分子は、1つのα-Syn線維コンフォマーに対する解離定数が、少なくとも1つの他のα-Syn線維コンフォマーに対する解離定数よりも有意に低いとき、少なくとも2つのα-Syn線維コンフォマーを区別することができる。
【0067】
この分子は、特に、F-型α-Syn線維のコンフォマー(に対する結合能力)がR-型α-Syn線維のコンフォマー(に対する結合能力)よりも有意に高い親和性を有する場合、少なくともα-Synタンパク質のF-型α-Syn線維のコンフォマーをα-Synタンパク質のR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別することができる。したがって、「α-Synタンパク質のF-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別/識別する能力」とは、ある分子がF-型α-Syn線維のコンフォマーに、R-型α-Syn線維のRコンフォマーよりも有意に高い親和性で(すなわち、より低い解離定数で)結合することを可能にする性質を有すること意味する。例えば、前記分子は、F-型α-Syn線維のコンフォマーに対するその平均(測定/計算)解離定数が、R-型α-Syn線維のコンフォマーに対するその平均(測定/計算)解離定数よりも有意に低い場合に、F-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別することができる。特に、分子がF-型α-Syn線維のコンフォマーには結合できるが、R-型α-Syn線維のコンフォマーには結合できない場合、分子はF-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別することができる。
【0068】
特に、分子は、α-Synタンパク質のF-型α-Syn線維のコンフォマーを、α-Synタンパク質の他の線維コンフォマー(R-型α-Syn線維のコンフォマーに加えて、65線維コンフォマーおよび91線維コンフォマーなど)からさらに区別することができ;および/または、分子は、特に、α-Synタンパク質のF-型α-Syn線維のコンフォマーを、α-Synタンパク質の他の形態(α-Synモノマーおよび/またはα-Synオリゴマーなど)からさらに区別することができる。「α-Synタンパク質のF-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別/識別する能力」という用語に対する上記の定義は、F-型α-Syn線維のコンフォマーを65α-Syn線維のコンフォマーから区別する能力、F-型α-Syn線維のコンフォマーを91α-Syn線維のコンフォマーから区別する能力、F-型α-Syn線維のコンフォマーをα-Synモノマーから区別する能力、およびF-型α-Syn線維のコンフォマーをα-Synオリゴマーから区別する能力に準用される。
【0069】
「平衡解離定数」または「Kd」または「Kd」とは、2つの分子間(例えばアプタマーとα-Synタンパク質の繊維の間)の親和性を評価できる定数を意味する。この親和性は、2分子間の物理化学的相互作用(静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性力)の性質、形状、数に基づいている。Kd値が低いほど、2分子間の結合親和性は高い。Kdの単位はM(mol/l)であり、nMまたはpMで表されることも多い。
【0070】
当業者に周知である、解離定数を決定/測定するためのいくつかの技術、例えば、ELISA、ゲル遅延度試験、濾過、クロマトグラフィー、熱泳動、「プル-ダウン」試験、平衡透析、分析的超遠心、表面プラズモン共鳴(SPR)、スペクトル試験、等温滴定熱量測定(ITC)、ニトロセルロース膜濾過などである。特に、平衡解離定数は、標準的な条件下で、当業者によく知られているScatchardおよびLineweaver Burk表現を用いて決定することができる。
【0071】
「神経変性疾患」または「ND」とは、ニューロンの死を主な原因とする病状を意味する。NDは、ニューロンの機能障害および進行性の死を特徴とする、緩徐に進行する慢性疾患であるという共通点を有する、非常に多様な臨床症状を伴う一群の病態である(Gao and Hong, 2008)。この神経変性によって引き起こされる障害は、運動障害、認知障害または感覚障害であり得る。これらの障害は疾患が進行するにつれて悪化し、患者をますます困難にする。NDの頻度は年齢とともに著しく増加する。しかし、高齢化の進行により、NDに罹患する人の数はここ数十年で大幅に増加しており、今後も着実に増加すると予想されている(Heemels, 2016)。例えば、世界保健機関(WHO)は現在、世界の認知症患者数を5,000万人と推定しており、2050年には2億5,000万人になると予測している(World Alzheimer Report, 2019; Naqvi, 2017)。NDは、患者の自律性の喪失を進行させる極めて障害の多い病態である。
【0072】
最もよく知られているNDは以下の通りである:アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)。特に、シヌクレイン病を含む。
【0073】
「シヌクレイン病」または「α-シヌクレイン病」または「アルファ-シヌクレイン病」とは、ニューロン、神経線維またはグリア細胞におけるα-Synタンパク質の凝集体の異常な蓄積を特徴とする神経変性疾患を意味する。α-シヌクレイン病は、運動障害、認知障害および行動変化により示される慢性かつ進行性の病態である。シヌクレイン病には、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)が含まれる。これら3つの疾患では特に、逆説性睡眠、自律神経失調症、非対称性パーキンソン症候群の行動障害の発生を有する。シヌクレイン病には、様々な神経軸索ジストロフィーのようなまれな状態も含まれる。
【0074】
「診断」とは、対象における疾患、または疾患の非存在の同定/決定を意味する。診断には、例えば、疾患の原因(病因)と影響(症状)を、特に観察および/または測定に基づいて、さまざまなツールを用いて行う探索が含まれる。神経変性疾患の場合、診断ツールには、患者が経験する認知障害、運動障害、感覚障害の観察、遺伝学的および/または生化学的バイオマーカーの検出/定量が含まれる。遺伝学的バイオマーカーとは、NDの素因として同定されたゲノムの対立遺伝子または変異であり得る。この型のマーカーにより、NDを発症する可能性の高い「リスクのある」集団を同定することができる。生化学的マーカーは、その存在および/または量が病状の進展と相関する生体分子である(例えば、シヌクレイン病ではα-シヌクレインの蓄積)。
【0075】
「層別化」とは、対象を疾患の重症度/重篤度によって下位群に区切り/分類することを意味する。異なる下位群には、特に、健康な対象の下位群と、疾患の進展/進行段階に従って分類された、疾患に罹患している対象の異なる下位群が含まれる。また、症状の種類によって対象を層別化することも可能である。発症の段階や症状は、さまざまなツールを用いて実施される観察および/または測定に基づいて決定することができる。神経変性疾患の場合、層別化ツールは診断にも使用されるツールを含む。
【0076】
「予後診断」とは、対象における疾患の進行リスクの予測/決定/評価を意味する。予後診断は、特に、対象の状態の将来的な進展、改善または治癒の可能性の評価を含む。予後診断は、さまざまなツールを用いて実施される観察および/または測定に基づいて決定することができる。神経変性疾患の場合、予後徴候(prognostic)ツールは、対象の診断または層別化にも使用されるツールを含む。
【0077】
「モニタリング」とは、対象における疾患の進行の判定/評価を意味する。モニタリングは、観察および/または測定に基づいて実施することができ、異なるツールを用いて、異なる時間間隔で実施される。その間隔は定期的であっても不定期であってもよい。その頻度は疾患に依存し、疾患の進行段階にも依存する。それは、数日(例えば、重症/進行/重篤な段階の病気の場合、および/または急速に進行する病気の場合、および/または増悪期の場合)から数年(例えば、早期、軽度または中等度の段階の病気の場合、および/または緩徐に進行する疾患の場合)の程度であり得る。神経変性疾患の場合、モニタリングツールは、疾患の診断または予後診断、または対照の層別化にも使用されるツールを含む。
【0078】
「処置の有効性の評価」とは、処置を受けた対象の臨床状態の決定を意味する。処置は、例えば、疾患の素因がある場合の予防的なものである場合もあれば、例えば診断された疾患の場合の治療的なものである場合もある。処置の有効性は、例えば、異なる時間間隔で対象の状態を決定することによって評価することができる。特に、対象の状態は、処置の最初の摂取の前に評価し、その後、この最初の摂取の後(例えば、処置の各新しい摂取の後)、規則的な(または不規則な)時間間隔で評価することができる。これらの異なる間隔で評価された対象の状態を比較することで、変化の可能性を特定することができる。治癒的処置の場合、患者の状態の改善、悪化の非存在、または悪化が、処置がない場合に予想される状態より小さい場合は、該処置が有効であることを示し、一方、患者の状態の悪化が、処置がない場合に予想される状態と少なくとも等しい場合は、該処置が有効でないことを示す。予防的処置の場合、処置がない場合に予想される疾患の出現がないこと、または予想される疾患の出現が遅いこと、および/または予想される出現より重症でないことは、該処置が有効であることを示し、処置がない場合に予想される疾患の出現が早いこと、および予想される仕官の出現より重症であることは、該処置が有効でないことを示す。患者の状態は、さまざまなツールを用いて実施される観察および/または測定に基づいて評価することができる。神経変性疾患の場合、処置の有効性を評価するためのツールは、疾患の診断、予後診断またはモニタリング、または対照の層別化にも使用されるツールを含む。
【0079】
「神経変性疾患の段階」、「神経変性疾患の進展段階」または「神経変性疾患の進行(advancement)段階」とは、対象が罹患している症状の重症度、および対象の生活様式および/またはクオリティ・オブ・ライフに及ぼす影響/結果によって決定される神経変性疾患の段階を意味する。これらの段階は4つある。例えば、
【0080】
-段階1(または第1段階)では、これは、軽度の疾患または軽度の段階と称される。
【0081】
-段階2(または第2段階)では、これは、中等度の疾患または中等度の段階と称される。
【0082】
-段階3(または第3段階)では、これは、重度の疾患または重度の段階と称される。
【0083】
-段階4(または第4段階)では、これは、非常に重度の疾患または非常に重度の段階と称される。この段階では、クオリティ・オブ・ライフはかなり損なわれている。
【0084】
「悪化」または「悪化段階」とは、神経変性疾患に罹患している対象において、神経変性疾患の臨床徴候が増加する期間を意味する。
【0085】
「対象」または「患者」とは、ヒト個体またはヒト以外の動物を意味する。対象は、例えば、神経変性疾患に罹患する可能性のあるヒトまたは動物、あるいはそのような疾患に罹患しているヒトまたは動物である。対象は、好ましくはヒトである。対象は、小児(16歳以下のヒト対象)または成人(16歳を超えるヒト対象)であり得る。「健康な対象」とは、当該疾患に罹患していない対象を意味する。本発明の文脈において、健康な対象とは、好ましくは、いかなる神経変性疾患にも罹患していない対象であり、より好ましくは、いかなる疾患にも罹患していない対象である。「参照対象」とは、既知の段階で既知の神経変性疾患(特に、シヌクレイン病、特に、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)または多系統萎縮症(MSA))に罹患している対象を意味する。
【0086】
対象からの「生体試料」または「試料」とは、この対象から得られた臓器または組織全体またはその一部、流体またはその画分、細胞または細胞成分、ならびにそれから調製されたホモジネート、溶解物または抽出物を意味する。特に、「生体試料」または「試料」は、好ましくは、ニューロンおよび/またはα-Synタンパク質を含み得る任意の組織(好ましくは、その一部または画分)であり、これには、非限定的な態様で、中枢神経系(CNS)の試料、例えば、脳試料または脊髄の試料、唾液腺、消化器系(例えば、結腸)、脳脊髄液、血漿、血液などが含まれる。
【0087】
生体試料は、当業界で公知のいかなる技法によっても、以前に取得されたものであってもよい。これらの技術には、例えば、手術(例えば、定位手術など)、穿刺、摘出、切除、生検が含まれる。「切除」とは、組織の多かれ少なかれ広い部分または深い部分、好ましくは組織の異常または成長を切断(切除)することからなる外科的処置を意味する。切除は、癌または疑わしい腫瘍を除去および/または分析するために行われる。切除は、癌または疑わしい腫瘍を摘出および/または分析するために行われる。本明細書における用語「生検」とは、分析のために採取される細胞または組織の試料を意味する。この分野では、いくつかのタイプの生検法が知られ、実施されている。最も一般的なタイプには、(1)組織の試料のみを採取する切開生検;(2)腫瘍塊を完全に摘出することで治療および診断の操作を行う切除生検(または外科的生検);および(3)太い針または細い針を用いて組織試料を採取する針生検が含まれる。生検には、塗抹または掻爬などの他のタイプもあり、試料を採取するために使用することもできる。したがって、試料は、例えば、外植(explant)、切除、生検などである。試料は、好ましくは、定位脳手術のような低侵襲的な操作によって採取される。
【0088】
「同一性」または「配列同一性」とは、2つのポリペプチドもしくはアミノ酸間、または2つの核酸分子もしくはオリゴヌクレオチド間の正確な配列一致を意味する。本発明の提示の文脈で言及される同一性パーセンテージは、比較される配列の最適な全体的アライメントの後に決定され、したがって、1つまたはそれ以上の付加、欠失、切り詰め(truncation)および/または置換を含み得る。この同一性パーセンテージは、当業者によく知られた任意の配列解析法によって計算することができる。同一性パーセンテージは、比較される配列の全長にわたる全体的なアライメントの後に決定される。手作業以外に、Needleman and Wunsch (1970)アルゴリズムを用いて全体の配列アライメントを決定することも可能である。
【0089】
特に、ヌクレオチド配列については、配列の比較は、例えばNeedle softwareなど、当業者に周知の任意のソフトウェアを使用して実施することができる。使用されるパラメーターは、特に以下の通りである:「Gap Open」は10.0に等しく、「Gap Extend」は0.5に等しく、EDNAFULLマトリックス(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)。
【0090】
アミノ酸配列の場合、配列の比較は、例えばNeedle softwareなど、当業者に周知の任意のソフトウェアを用いて実施することができる。使用されるパラメーターは、特に以下の通りである:「Gap Open」は10.0に等しく、「Gap Extend」は0.5に等しく、BLOSUM62マトリックス。
【0091】
例示として、本明細書で使用される「少なくとも80%の配列同一性」は、特に、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を示す。
【0092】
アプタマー
本発明の文脈において、本発明者らは、α-Syn線維の特定のコンフォマーを特異的に認識することができる修飾リボ核酸(RNA)アプタマーを開発した。本発明者らは実際に、異なるα-Syn線維コンフォマーに対して異なる親和性を有する修飾RNAアプタマーを選択し、単離した。
【0093】
本発明者らは特に、驚くべきことに、開発されたアプタマーが、先行技術に記載されているα-Synに対するDNAアプタマーとは異なり、F-型α-Syn線維のコンフォマーをR-型α-Syn線維のコンフォマーから区別できることを示した。
【0094】
このデータは特に、本発明者らが開発したアプタマーがF-型α-Syn線維のコンフォマーに強い親和性を有することを示している(解離定数Kdは5~10nM)。一方、予想外なことに、これらのアプタマーは、R-型α-Syn線維のコンフォマー、ならびに65および91α-Syn線維のコンフォマーには非常に低い親和性を有するか、全く親和性がない。本発明者らはまた、これらのアプタマーが天然型(モノマー、非繊維状形態)のα-Synタンパク質を少なくとも10倍低い親和性で認識することを証明した。驚くべきことに、本発明者らはこれらのアプタマーの混合物を使用する方法を開発し、患者サンプルに適用可能なハイスループットシークエンシングによって、これらのフ繊維コンフォマーを効果的に識別することを可能にした。
【0095】
このデータでは、これらのアプタマーが異なるα-Syn線維を特異的かつ高感度に検出するためのツールであることを示している。したがって、本発明は、神経変性疾患の効果的で信頼性の高い診断法、分子のスクリーニング法、および神経変性疾患分野の研究ツールを提供する。
【0096】
アプタマーにはいくつかの利点がある:1)抗体に匹敵する、標的に対する認識親和性および特異性を有する;2)オリゴヌクレオチドであるため、多数の分子生物学技術(定量PCR、チップ、ローリングサークル増幅、ハイスループットシークエンシング、など)に使用できる;3)インビトロでの合成または増幅が容易である;4)多数の化合物と容易に結合できる;5)免疫原性が低い;6)保管中に変性の問題が生じない;7)温度変化に強い;8)抗体よりも有意に安価である。
【0097】
したがって、本発明は、α-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質の少なくとも2つの繊維コンフォマーを区別する能力を有することを特徴とし、配列番号:1(アプタマーN30の特異的配列)、配列番号:2(アプタマーN124の特異的配列)、配列番号:3(アプタマーN3の特異的配列)、配列番号:4(アプタマー4F02の特異的配列)、配列番号:5(アプタマー4F03の特異的配列)、配列番号:6(アプタマーF124の特異的配列)および配列番号:7(アプタマーP65の特異的配列)から選択される;好ましくは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4および配列番号:5から選択される;より好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾リボ核酸(RNA)に特異的な配列を含む、または本質にそれからなる、またはそれからなることを特徴とする、アプタマーに関する。
【0098】
特に、本発明は、α-Syn(α-Syn)タンパク質のF-型α-Syn繊維のコンフォマーをR-型α-Syn繊維から区別する能力を有することを特徴とし、配列番号:1(アプタマーN30の特異的配列)、配列番号:2(アプタマーN124の特異的配列)、配列番号:3(アプタマーN3の特異的配列)、配列番号:4(アプタマー4F02の特異的配列)、配列番号:5(アプタマー4F03の特異的配列)、配列番号:6(アプタマーF124の特異的配列)および配列番号:7(アプタマーP65の特異的配列)から選択される;好ましくは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4および配列番号:5から選択される;より好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される、配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾リボ核酸(RNA)に特異的な標的/配列を含む、または実質的にそれからなる、またはそれからなることを特徴とする、アプタマーに関する。
【0099】
好ましい実施態様によれば、アプタマーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7から選択される;好ましくは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4および配列番号:5から選択される;より好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される配列と少なくとも86%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むか、または本質的にそれから含むか、またはそれからなる。好ましくは、アプタマーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7から選択される;好ましくは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4および配列番号:5から選択される;より好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される修飾RNAに特異的な配列と、少なくとも87%の同一性、より好ましくは少なくとも88%の同一性、より好ましくは少なくとも89%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも91%の同一性、より好ましくは少なくとも92%の同一性、より好ましくは少なくとも93%の同一性、より好ましくは少なくとも94%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性、を有する修飾RNAに特異的な配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。特に好ましくは、アプタマーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7から選択される;好ましくは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4および配列番号:5から選択される;より好ましくは、配列番号:1および配列番号:2から選択される修飾RNAに特異的な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0100】
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6および配列番号:7の配列を以下の表1に示す。
【0101】
【0102】
一実施態様によれば、本発明によるアプタマーはまた、F-型α-Syn繊維をα-Synモノマーから区別する能力を有する。代替の実施形態または組み合わによれば、本発明によるアプタマーはまた、F-型α-Syn繊維のコンフォマーを65α-Syn繊維および/または91α-Syn繊維コンフォマーから区別する能力を有する。代替の実施形態または組み合わせによれば、本発明によるアプタマーはまた、F-型α-Syn繊維のコンフォマーをα-Synオリゴマーから区別する能力を有する。したがって、一実施態様によれば、本発明によるアプタマーは、F-型α-Syn繊維のコンフォマーを、R-型α-Syn繊維のコンフォマー、ならびに65α-Syn繊維コンフォマー、91α-Syn繊維コンフォマー、α-Synオリゴマーおよびα-Synモノマーから区別する能力を有する。したがって、有利な実施態様によれば、本発明によるアプタマーは、F-型α-Syn繊維のコンフォマーに特異的である。一実施態様によれば、本発明によるアプタマーは、R-型α-Syn繊維のコンフォマー、ならびに65α-Syn繊維コンフォマー、91α-Syn繊維コンフォマーおよびα-Synモノマーに対して親和性を有しない。
【0103】
好ましい実施態様によれば、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、本発明によるアプタマーの解離定数Kd(F)は、R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(R)よりも低く(好ましくは著しく低い)、好ましくは少なくとも10倍低く、より好ましくは少なくとも11倍低く、より好ましくは少なくとも12倍低く、より好ましくは少なくとも13倍低く、より好ましくは少なくとも14倍低く、より好ましくは少なくとも15倍低く、より好ましくは少なくとも20倍低く、より好ましくは少なくとも25倍低く、より好ましくは少なくとも30倍低く、より好ましくは少なくとも40倍低く、より好ましくは少なくとも50倍低く、より好ましくは少なくとも100倍低く、より好ましくは少なくとも200倍低く、より好ましくは少なくとも300倍低く、より好ましくは少なくとも400倍低く、より好ましくは少なくとも500倍低く、より好ましくは少なくとも600倍低く、より好ましくは少なくとも700倍低く、より好ましくは少なくとも800倍低く、より好ましくは少なくとも900倍低く、より好ましくは少なくとも1000倍低い。特に好ましい実施態様によれば、R-型α-Syn繊維のコンフォマーに対する本発明によるアプタマーの親和性は、解離定数Kd(R)を、解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定/決定することができないほど低い。
【0104】
代替の好ましい実施態様、または上記の好ましい実施態様との組み合わせによれば、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、本発明によるアプタマーの解離定数Kd(F)は、α-Synモノマーについて測定された解離定数Kd(Mono)よりも低く(好ましくは、著しく低い)、好ましくは少なくとも2倍低く、好ましくは少なくとも3倍低く、好ましくは少なくとも4倍低く、好ましくは少なくとも5倍低く、好ましくは少なくとも6倍低く、好ましくは少なくとも7倍低く、好ましくは少なくとも8倍低く、好ましくは少なくとも9倍低く、より好ましくは少なくとも10倍低く、より好ましくは少なくとも11倍低く、さらに好ましくは少なくとも12倍低く、より好ましくは少なくとも13倍低く、より好ましくは少なくとも14倍低く、より好ましくは少なくとも15倍低く、より好ましくは少なくとも20倍低く、より好ましくは少なくとも25倍低く、より好ましくは少なくとも30倍低く、より好ましくは少なくとも40倍低く、より好ましくは少なくとも50倍低く、より好ましくは少なくとも100倍低く、より好ましくは少なくとも200倍低く、より好ましくは少なくとも300倍低く、より好ましくは少なくとも400倍低く、より好ましくは少なくとも500倍低く、より好ましくは少なくとも600倍低く、より好ましくは少なくとも700倍低く、より好ましくは少なくとも800倍低く、より好ましくは少なくとも900倍低く、より好ましくは少なくとも1000倍低い。特に好ましい実施態様によれば、α-Synモノマーに対する本発明によるアプタマーの親和性は、解離定数Kd(mono)を、解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定/決定することができないほど低い。
【0105】
代替の好ましい実施形態によれば、または上記の好ましい実施形態の1つまたはそれ以上と組み合わせによれば、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、本発明によるアプタマーの解離定数Kd(F)は、65α-Syn繊維コンフォマーついて測定された解離定数Kd(65)よりも低く(好ましくは、著しく低い)、好ましくは少なくとも2倍低く、好ましくは少なくとも3倍低く、好ましくは少なくとも4倍低く、好ましくは少なくとも5倍低く、好ましくは少なくとも6倍低く、好ましくは少なくとも7倍低く、好ましくは少なくとも8倍低く、好ましくは少なくとも9倍低く、より好ましくは少なくとも10倍低く、より好ましくは少なくとも11倍低く、より好ましくは少なくとも12倍低く、より好ましくは少なくとも13倍低く、より好ましくは少なくとも14倍低く、より好ましくは少なくとも15倍低く、より好ましくは少なくとも20倍低く、より好ましくは少なくとも25倍低く、より好ましくは少なくとも30倍低く、より好ましくは少なくとも40倍低く、より好ましくは少なくとも50倍低く、より好ましくは少なくとも100倍低く、より好ましくは少なくとも200倍低く、より好ましくは少なくとも300倍低く、より好ましくは少なくとも400倍低く、より好ましくは少なくとも500倍低く、より好ましくは少なくとも600倍低く、より好ましくは少なくとも700倍低く、より好ましくは少なくとも800倍低く、より好ましくは少なくとも900倍低く、より好ましくは少なくとも1000倍低い。特に好ましい実施態様によれば、65α-Syn繊維コンフォマーに対する本発明によるアプタマーの親和性は、解離定数Kd(65)が、解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定/決定することができないほど低い。
【0106】
代替の好ましい実施態様によれば、または上記の実施態様の1つまたはそれ以上との組み合わせによれば、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、本発明によるアプタマーの解離定数Kd(F)は、91α-Syn繊維コンフォマーについて測定された解離定数Kd(91)よりも低く(好ましくは、著しく低い)、好ましくは少なくとも2倍低く、好ましくは少なくとも3倍低く、好ましくは少なくとも4倍低く、好ましくは少なくとも5倍低く、好ましくは少なくとも6倍低く、好ましくは少なくとも7倍低く、好ましくは少なくとも8倍低く、好ましくは少なくとも9倍低く、より好ましくは少なくとも10倍低く、より好ましくは少なくとも11倍低く、より好ましくは少なくとも12倍低く、より好ましくは少なくとも13倍低く、より好ましくは少なくとも14倍低く、より好ましくは少なくとも15倍低く、より好ましくは少なくとも20倍低く、より好ましくは少なくとも25倍低く、より好ましくは少なくとも30倍低く、より好ましくは少なくとも40倍低く、より好ましくは少なくとも50倍低く、より好ましくは少なくとも100倍低く、より好ましくは少なくとも200倍低く、より好ましくは少なくとも300倍低く、より好ましくは少なくとも400倍低く、より好ましくは少なくとも500倍低く、より好ましくは少なくとも600倍低く、より好ましくは少なくとも700倍低く、より好ましくは少なくとも800倍低く、より好ましくは少なくとも900倍低く、より好ましくは少なくとも1000倍低い。特に好ましい実施態様によれば、91α-Syn繊維コンフォマーに対する本発明によるアプタマーの親和性は、解離定数Kd(91)を、解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定/決定することができないほど低い。
【0107】
代替の好ましい実施態様によれば、または上記実施態様の1つまたは以上との組み合わせによれば、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、本発明によるアプタマーの解離定数Kd(F)は、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された、ランダムなアプタマー(すなわち、修飾RNAのランダムな配列を含むアプタマーであって、好ましくは以下の「組成物およびキット」の項で定義されるもの)の解離定数Kd(Random)よりも低く(好ましくは、著しく低い)、好ましくは少なくとも2倍低く、好ましくは少なくとも3倍低く、好ましくは少なくとも4倍低く、好ましくは少なくとも5倍低く、好ましくは少なくとも6倍低く、好ましくは少なくとも7倍低く、好ましくは少なくとも8倍低く、好ましくは少なくとも9倍低く、より好ましくは少なくとも10倍低く、より好ましくは少なくとも11倍低く、より好ましくは少なくとも12倍低く、より好ましくは少なくとも13倍低く、より好ましくは少なくとも14倍低く、より好ましくは少なくとも15倍低く、より好ましくは少なくとも20倍低く、より好ましくは少なくとも25倍低く、より好ましくは少なくとも30倍低く、より好ましくは少なくとも40倍低く、より好ましくは少なくとも50倍低く、より好ましくは少なくとも100倍低く、より好ましくは少なくとも200倍低く、より好ましくは少なくとも300倍低く、より好ましくは少なくとも400倍低く、より好ましくは少なくとも500倍低く、より好ましくは少なくとも600倍低く、より好ましくは少なくとも700倍低く、より好ましくは少なくとも800倍低く、より好ましくは少なくとも900倍低く、より好ましくは少なくとも1000倍低い。特に好ましい実施態様によれば、F-型α-Syn繊維のコンフォマーに対するランダムなアプタマーの親和性は、解離定数Kd(random)を、解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定/決定することができないほど低い。
【0108】
有利には、F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて、特に解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定された解離定数Kd(F)は、50nM未満、より好ましくは40nM未満、より好ましくは30nM未満、より好ましくは25nM未満、より好ましくは20nM未満、より好ましくは18nM未満、より好ましくは16nM未満、より好ましくは14nM未満、より好ましくは13nM未満、より好ましくは12nM未満、より好ましくは11nM未満、より好ましくは10nM未満、より好ましくは9nM未満、より好ましくは8nM未満、より好ましくは7nM未満である。
【0109】
有利には、R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて、特に解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定した解離定数Kd(R)は、100nMを超え、より好ましくは150nMを超え、より好ましくは200nMを超え、より好ましくは300nMを超え、より好ましくは400nMを超え、より好ましくは500nMを超え、より好ましくは600nMを超え、より好ましくは700nMを超え、より好ましくは800nMを超え、より好ましくは900nMを超え、より好ましくは1000nMを超える。特に好ましい実施態様によれば、R-型α-Syn繊維のコンフォマーに対する本発明によるアプタマーの親和性は、解離定数Kd(R)を、解離定数を決定するための通常の方法(上記の定義のセクションに列挙されているものなど)を用いて測定/決定することができないほど低い。
【0110】
好ましい実施態様によれば、本発明によるアプタマーは、以下の少なくとも1つの解離定数Kdを有する:
a)F-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(F)は、15nM未満、好ましくは10nM未満であり;および/または
b)R-型α-Syn繊維のコンフォマーについて測定された解離定数Kd(R)は、100nMを超え、好ましくは500nMを超える。
【0111】
アプタマーの解離定数Kdは、例えば、解離定数を決定するための通常の方法を用いて測定され、好ましくは、上記の定義のセクションに列挙されているものから選択され、より好ましくは濾過によって、さらに好ましくはニトロセルロース膜上での濾過によって測定される。
【0112】
好ましい実施態様によれば、本発明によるアプタマーは、
i. 前記特異的配列の5'において、好ましくは、該特異的配列の5'末端に位置する、配列番号:29(5'における、アプタマーNのプライマー配列P72)および配列番号:30(5'における、アプタマー4F、F、RおよびPのプライマー配列P73)から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列5';および/または
ii. 前記特異的配列の3'において、好ましくは、該特異的配列の末端3'に位置する、配列番号:31(3'におけるプライマーPiRT)、配列番号:32(3'における、24ntsの配列G)および配列番号:33(3'におけるPiRT-G;プライマーPiTR + 配列Gの組み合わせ)と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列3'、
をさらに含む。
【0113】
上記実施態様i.によれば、アプタマーは、「プライマー5'-特異的配列」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態である。配列番号:31のプライマーに関連する上記実施態様ii.によれば、アプタマーは、「特異的配列-プライマー3'」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態である。配列番号:31のプライマーに関して上記実施態様ii.と組み合わせた実施形態i.によれば、アプタマーは、「プライマー5'-特異的配列-プライマー3'」(修飾RNAの配列の5'-3'方向)の形態であり、後者の形態を以下「アプタマーの完全な配列」(または「アプタマーの組み合わせ配列」)と称する。
【0114】
配列番号:29~配列番号:33の配列を以下の表2に示す。
【0115】
【0116】
特に有利な実施態様によれば、本発明によるアプタマーは、配列番号:34(プライマー5'および3'を有するが配列Gを有しない、アプタマーN30の完全な配列)、配列番号:35(アプタマーN124の完全な配列)、配列番号:36(アプタマーN3の完全な配列)、配列番号:37(アプタマー4F02の完全な配列)、配列番号:38(アプタマー4F03の完全な配列)、配列番号:39(アプタマーF124の完全な配列)および配列番号:40(アプタマーP65の完全な配列)から選択される、好ましくは、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:37および配列番号:38から選択される;より好ましくは、配列番号:34および配列番号:35から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAの完全な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0117】
好ましい実施態様によれば、アプタマーは、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39および配列番号:40から選択される;好ましくは、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:37および配列番号:38から選択される;より好ましくは、配列番号:34および配列番号:35から選択される、配列と、少なくとも86%の同一性を有する修飾RNAの完全な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。好ましくは、アプタマーは、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39および配列番号:40から選択される;好ましくは、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:37および配列番号:38から選択される;より好ましくは、配列番号:34および配列番号:35から選択される完全修飾RNA配列と、少なくとも87%の同一性、より好ましくは少なくとも88%の同一性、より好ましくは少なくとも89%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも91%の同一性、より好ましくは少なくとも92%の同一性、より好ましくは少なくとも93%の同一性、より好ましくは少なくとも94%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する修飾RNAの完全な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。特に好ましくは、アプタマーは、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39および配列番号:40から選択される;好ましくは、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:37および配列番号:38から選択される;より好ましくは、配列番号:34および配列番号:35から選択される修飾RNAの完全な配列を含むか、または本質的にそれからなる、またはそれからなる。
【0118】
配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39および配列番号:40を以下の表3に示す。
【0119】
【0120】
本発明によるアプタマーは、上記で定義されている完全な配列「プライマー5'-特異的配列-プライマー3'」の3'において、好ましくは、アプタマーの3'末端に位置する、配列番号:32と少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列3'をさらに含み得る。本実施態様によれば、アプタマーは、「プライマー5'-特異的配列-プライマー3'-配列G」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態であり、この形態は、以下、「完全なアプタマー配列G」(組み合わせアプタマー配列G)と称する。
【0121】
好ましい実施態様によれば、本発明によるアプタマーのRNA(すなわち、アプタマーの特異的配列、プライマー5'および/または3'の配列、アプタマーの完全な配列、およびアプタマーの完全な配列Gを含む上記の任意のアプタマー)は、RNAヌクレアーゼに対する抵抗性を増大させるように修飾されている。有利には、本発明によるアプタマーのRNAは、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;ホスホジエステル(PO)のホスホロチオエート(PS)基による置き換え(したがって、これはホスホロチオエート骨格と称する);ロック核酸(LNA)型構造の使用、すなわちリボースをC3'-エンド(N型)コンフォメーションにロックするためのメチレン橋の形成;ペプチド核酸(PNA)型構造の使用、すなわち、糖-ホスフェート骨格をペプチド型骨格に置き換えること;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されている。本発明によるアプタマーのRNAは、好ましくは、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されテイル。本発明によるアプタマーの特に好ましい実施態様によれば、ピリミジンのリボースは、2'位の炭素にフッ素原子を担持する。
【0122】
したがって、好ましくは、本発明によるアプタマーの修飾RNAは、ピリミジンヌクレオチドのリボースが2'位の炭素にフッ素原子を担持するRNAであり、好ましくは、プリンヌクレオチドのリボースが変化していないRNAである(したがって、それは2'フルオロピリミジンRNA(2'F-PyRNA)である)。
【0123】
一実施態様によれば、本発明によるアプタマーは、上記の「定義」の部分で定義されている少なくとも1つの追加の基をさらに含む。追加の基は、アプタマーの任意のヌクレオチドに追加することができる。追加の基は、好ましくは、アプタマーの末端3'、またはアプタマーの末端5'、またはアプタマーの末端3'および末端5'に位置する。
【0124】
組成物およびキット
本発明者らは、F-型α-Syn線維のコンフォマーに対して強い親和性を有するアプタマーを開発した(解離定数Kdは5~10nM)。一方、予想外に、これらのアプタマーは、R-型α-Syn線維のコンフォマーならびに65α-Syn線維および91α-Syn線維に対しては非常に親和性が低いか、全く親和性がない。本発明者らはまた、これらのアプタマーが天然型(モノマー、非繊維状形態)のα-Synタンパク質を少なくとも10倍低い親和性で認識することを証明した。驚くべきことに、本発明者らは患者の試料に適用可能なハイスループットシークエンシングによって、これらの繊維コンフォマーを効果的に識別することを可能にする、これらのアプタマーの混合物を用いる方法を開発した。
【0125】
したがって、本発明は、本発明による少なくとも1つのアプタマー(上記で定義されている)を含むか、または本質的にそれからなる組成物に関する。
【0126】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1つのアプタマー(上記で定義されている)を含むか、または本質的にこれからなるキットに関する。
【0127】
一実施態様によれば、組成物またはキットは、配列番号:8(アプタマーN0の特異的配列)、配列番号:9(アプタマーN1の特異的配列)、配列番号:10(アプタマーN2の特異的配列)、配列番号:11(アプタマーN4の特異的配列)、配列番号:12(アプタマーN5の特異的配列)、配列番号:13(アプタマーN15の特異的配列)、配列番号:14(アプタマーN20の特異的配列)、配列番号:15(アプタマーN37の特異的配列)、配列番号:16(アプタマーN62の特異的配列)および配列番号:17(アプタマーN73の特異的配列)、配列番号:18(アプタマーN164の特異的配列)、配列番号:19(アプタマー4F01の特異的配列)、配列番号:20(アプタマー4F04の特異的配列)、配列番号:21(アプタマー4F05の特異的配列)、配列番号:22(アプタマーR01の特異的配列)、配列番号:23(アプタマーR02の特異的配列)、配列番号:24(アプタマーR03の特異的配列)、配列番号:25(アプタマーR04の特異的配列)、配列番号:26(アプタマーR05の特異的配列)、配列番号:27(アプタマーR84の特異的配列)および配列番号:28(アプタマーP91の特異的配列)から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列をさらに含むか、または本質的にそれからなる、またはそれからなるアプタマーから選択される少なくとも1つの追加のアプタマーを含み;
該組成物またはキットは、好ましくは、修飾RNAランダムな配列を含む少なくとも1つのアプタマーをさらに含む。
【0128】
好ましい実施態様にいれば、前記追加のアプタマーは、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28から選択される配列と少なくとも86%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。好ましくは、前記追加のアプタマーは、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28から選択される配列と、少なくとも87%の同一性、より好ましくは少なくとも88%の同一性、より好ましくは少なくとも89%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも91%の同一性、より好ましくは少なくとも92%の同一性、より好ましくは少なくとも93%の同一性、より好ましくは少なくとも94%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。特に好ましくは、前記追加のアプタマーは、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28から選択される修飾RNAに特異的な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0129】
配列番号8~28を以下の表4に示す。
【0130】
【0131】
一実施態様によれば、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマーは、
i. 前記特異的配列の5'において、好ましくは、該特異的配列の末端5'に位置する、配列番号:29(5'における、アプタマーNのプライマー配列P7)および配列番号:30(5'における、アプタマー4F、F、RおよびPのプライマー配列P73)から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性有する修飾RNAのプライマー配列5';および/または
ii. 前記特異的配列の3'において、好ましくは、該特異的配列の末端3'に位置する、配列番号:31(3'におけるプライマーPiRT)、配列番号:32(3'における24ntsの配列G)および配列番号:33(3'におけるPiRT-G;プライマーPiTR + 配列Gの組み合わせ)から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列3'、
をさらに含む。
【0132】
上記実施態様i.によれば、追加のアプタマーは、「プライマー5'-追加のアプタマーの特異的配列」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態である。配列番号:31のプライマーに関連する上記実施態様ii.によれば、追加のアプタマーは、「追加のアプタマーの特異的配列-プライマー3'」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態である。配列番号:31のプライマーに関して上記実施態様ii.と組み合わせた実施態様i.によれば、追加のアプタマーは「プライマー5'-追加のアプタマーの特異的配列-プライマー3'」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態であり、後者の形態を以下「追加のアプタマーの完全な配列」(または追加のアプタマーの組み合わせ配列)と称する。
【0133】
配列番号:29~配列番号:33の配列は、上記の表2に示されている。
【0134】
特に有利な実施態様によれば、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマーは、配列番号:41(プライマー5'および3'を有するか配列Gを有しないアプタマーN0の完全な配列)、配列番号:42(アプタマーN1の完全な配列)、配列番号:43(アプタマーN2の完全な配列)、配列番号:44(アプタマーN4の完全な配列)、配列番号:45(アプタマーN5の完全な配列)、配列番号:46(アプタマーN15の完全な配列)、配列番号:47(アプタマーN20の完全な配列)、配列番号:48(アプタマーN37の完全な配列)、配列番号:49(アプタマーN62の完全な配列)および配列番号:50(アプタマーN73の完全な配列)、配列番号:51(アプタマーN164の完全な配列)、配列番号:52(アプタマー4F01の完全な配列)、配列番号:53(アプタマー4F04の完全な配列)、配列番号:54(アプタマー4F05の完全な配列)、配列番号:55(アプタマーR01の完全な配列)、配列番号:56(アプタマーR02の完全な配列)、配列番号:57(アプタマーR03の完全な配列)、配列番号:58(アプタマーR04の完全な配列)、配列番号:59(アプタマーR05の完全な配列)、配列番号:60(アプタマーR84の完全な配列)および配列番号:61(アプタマーP91の完全な配列)から選択される配列と少なくとも85%の同一性を有する完全修飾RNA配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなるアプタマーから選択される。
【0135】
好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの追加のアプタマーは、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59、配列番号:60および配列番号:61から選択される配列と少なくとも86%の同一性を有する修飾RNAの完全な配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。好ましくは、前記追加のアプタマーは、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59、配列番号:60および配列番号:61から選択される完全修飾RNA配列と、少なくとも87%の同一性、より好ましくは少なくとも88%の同一性、より好ましくは少なくとも89%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも91%の同一性、より好ましくは少なくとも92%の同一性、より好ましくは少なくとも93%の同一性、より好ましくは少なくとも94%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する完全修飾RNA配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。特に好ましくは、前記少なくとも追加のアプタマーは、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59、配列番号:60および配列番号:61から選択される完全修飾RNA配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0136】
配列番号:41~61の配列を以下の表5に示す。
【0137】
【0138】
本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマーは、上記で定義されている完全な配列「プライマー5'-追加のアプタマー特異的配列-プライマー3'」の3'において、好ましくは、前記追加のアプタマーの3'末端に位置する、配列番号:32と少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列3'をさらに含み得る。本実施態様によれば、前記追加のアプタマーは、「プライマー5'-追加の特異的アプタマー配列-プライマー3'-配列G」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態であり、この形態を、以下、「追加のアプタマーの完全な配列G」(または追加のアプタマーの組み合わせ配列G)と称する。
【0139】
好ましい実施態様によれば、本発明による組成物または本発明によるキットの本発明による少なくとも1つのアプタマーのRNAは、RNAヌクレアーゼに対する抵抗性を高めるように修飾されれている。有利には、本発明による組成物またはキットの本発明による少なくとも1つのアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのっ本発明によるすべてのアプタマーのRNA)は、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;ホスホジエステル(PO)のホスホロチオエート(PS)基への置き換え(したがって、これはホスホロチオエート骨格と称する);ロック核酸(LNA)型構造の使用、すなわちリボースをC3'-エンド(N型)コンフォメーションにロックするためのメチレン架橋の形成;ペプチド核酸(PNA)型構造の使用、すなわち、糖-ホスフェート骨格をペプチド型骨格に置き換えること;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されている。
【0140】
本発明による組成物またはキットの本発明による少なくとも1つのアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットの本発明によるすべてのアプタマーのRNA)は、好ましくは、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されている。特に好ましい実施態様によれば、本発明による組成物またはキットの本発明による少なくとも1つのアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットの本発明によるすべてのアプタマーのRNA)は、ピリミジンヌクレオチドのリボースが2'位の炭素にフッ素原子を担持するるように修飾されている。したがって、好ましくは、本発明による組成物またはキットの本発明によるアプタマーの修飾RNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットの本発明によるすべてのアプタマーの修飾RNA)は、ピリミジンヌクレオチドのリボースが2'位の炭素にフッ素原子を担持するRNAであり、好ましくは、プリンヌクレオチドのリボースが変化していないものである(したがって、それは2'フルオロ-ピリミジンRNA(2'F-PyRNA)である)。
【0141】
好ましい実施態様によれば、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマーのRNAは、RNAヌクレアーゼに対する抵抗性を高めるように修飾されている。有利には、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべての追加のアプタマーのRNA)は、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換; ホスホジエステル(PO)のホスホロチオエート(PS)基への置き換え(したがって、これはホスホロチオエート骨格と称される);ロック核酸(LNA)型構造の使用、すなわちリボースをC3'-エンド(N型)コンフォメーションにロックするためのメチレン架橋の形成;ペプチド核酸(PNA)型構造の使用、すなわち、糖-ホスフェート骨格をペプチド型骨格に置き換えること;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されている。
【0142】
本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべての追加のアプタマーのRNA)は、好ましくは、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されている。特に好ましい実施態様によれば、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべての追加のアプタマーのRNA)は、ピリミジンヌクレオチドのリボースが2'位の炭素にフッ素原子を担持するるように修飾されている。したがって、好ましくは、本発明による組成物またはキットの追加のアプタマーの修飾RNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべての追加のアプタマーの修飾RNA)は、そのピリミジンヌクレオチドのリボースが2'位の炭素にフッ素原子を担持するRNAであり、好ましくは、プリンヌクレオチドのリボースが変化していないRNAである(したがって、それは2'フルオロ-ピリミジンRNA(2'F-PyRNA)である)。
【0143】
有利には、本発明による組成物またはキットのすべての追加のアプタマーのRNAは、上記で定義されているように修飾されている。特に好ましくは、本発明による組成物または本発明によるキットの少なくとも1つの追加のアプタマー(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべての追加のアプタマー)のRNAは、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つのアプタマー(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべてのアプタマー)のRNAと同じ方法で修飾されている。
【0144】
好ましい実施態様によれば、本発明による組成物またはキットは、少なくとも以下のアプタマーを含むか、または本質的にそらからなるか、またはそれからなり:
-配列番号:1(アプタマーN30の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:2(アプタマーN124の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:3(アプタマーN3の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:8(アプタマーN0の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:9(アプタマーN1の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:10(アプタマーN2の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:11(アプタマーN4の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:12(アプタマーN5の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号: 13 (アプタマーN15の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:14(アプタマーN20の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:16(アプタマーN62の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、
-配列番号:17(アプタマーN73の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー、および
-配列番号:18(アプタマーN164の特異的配列)と少なくとも85%の同一性を有する修飾RNAに特異的配列を含むアプタマー;
前記キットまたは組成物は、好ましくは、修飾RNAのランダムな配列を含む少なくとも1つのアプタマーをさらに含む。
【0145】
実際、本発明者らは、このようなアプタマーのアソートメントを使用すると、α-Synタンパク質の異なるコンフォマーを含む生体試料のための、特定の分子フィンガープリント(特徴的なシグネチャー、あるいは特徴的なプロフィール)を得ることができることを示した。この特定の分子フィンガープリントは、神経変性疾患、特にシヌクレイン病の診断、予後診断、層別化またはモニタリングに使用することができる。
【0146】
特に好ましい実施態様によれば、本発明による組成物またはキットは、配列:配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17および配列番号:18と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAに特異的な配列を含むアプタマー(すなわち、アプタマーのアソートメント/混合物)を含むか、またま本質的にそれからなるか、またはそれからなり;
前記キットまたは組成物は、好ましくは、修飾RNAのランダムな配列を含む少なくとも1つのアプタマーをさらに含む。
【0147】
一実施態様によれば、本発明による組成物またはキットのアプタマーのアソートメントの少なくとも1つのアプタマーは、
i. 前記特異的配列の5'において、好ましくは、該特異的配列の末端5'に位置する、配列番号:29(5'における、アプタマーNのプライマー配列P72)および配列番号:30(5'における、アプタマー4F、F、RおよびPのプライマー配列P73)から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列5';および/または
ii. 前記特異的配列の3'において、好ましくは、該特異的配列の末端3'に位置する、配列番号:31(3'におけるプライマーPiRT)、配列番号:32(3'における24ntsの配列G、論文の128頁を参照)および配列番号:33(3'におけるPiRT-G;プライマーPiTR + 配列 Gの組み合わせ)から選択される配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列3'、
をさらに含む。
【0148】
したがって、特に有利な実施態様によれば、本発明による組成物またはキットは、少なくとも、配列:配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:49、配列番号:50および配列番号:51と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%未満の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAの完全な配列を含むアプタマー(すなわち、アプタマーのアソートメント/混合物)を少なくとも含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなり;
前記キットまたは組成物は、好ましくは、修飾RNAのランダムな配列を含む少なくとも1つのアプタマーをさらに含む。
【0149】
本発明による組成物またはキットのアプタマーのアソートメントからの少なくとも1つのアプタマーは、上記で定義されている完全な配列「プライマー5'-特異的アプタマーアソートメント配列-プライマー3」の3'において、好ましくは、前記アソートメントのアプタマーの末端3'に位置する、配列番号:32と少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのプライマー配列3'をさらに含み得る。本実施態様によれば、前記アソートメントのアプタマーは、「プライマー5'-特異的アプタマーアソートメント配列-プライマー3'-配列G」(修飾RNA配列の5'-3'方向)の形態であり、この形態は、以下、「完全アソートメントアプタマー配列G」(または組み合わせアソートメントアプタマー配列G)と称する。
【0150】
一実施態様によれば、本発明による組成物またはキットは、配列番号:62(Scr-1)および配列番号:63(Scr-2)から選択される配列、好ましくは配列番号:63と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも86%の同一性、好ましくは少なくとも87%の同一性、好ましくは少なくとも88%の同一性、好ましくは少なくとも89%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%の同一性、好ましくは少なくとも92%の同一性、好ましくは少なくとも93%の同一性、好ましくは少なくとも94%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも96%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、好ましくは少なくとも98%の同一性、好ましくは少なくとも99%の同一性、好ましくは100%の同一性を有する修飾RNAのランダムな配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる少なくとも1つのアプタマー(「ランダムなアプタマー」と称されるアプタマー)をさらに含む。
【0151】
表6は、配列番号:62および配列番号:63の配列を示す。
【0152】
【0153】
好ましい実施態様によれば、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つのランダムなアプタマーのRNAは、RNAヌクレアーゼに対する抵抗性を高めるように修飾されている。有利には、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つのランダムなアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべてのランダムなアプタマーのRNA)は、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'位の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;ホスホジエステル(PO)のホスホロチオエート(PS)基への置き換え(したがって、これはホスホロチオエート骨格と称される);ロック核酸(LNA)型構造の使用、すなわちリボースをC3'-エンド(N型)コンフォメーションにロックするためのメチレン架橋の形成;ペプチド核酸(PNA)型構造の使用、すなわち、糖-ホスフェート骨格をペプチド型骨格に置き換えること;およびこれらの任意の組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されている。
【0154】
本発明による組成物またはキットの少なくとも1つのランダムなアプタマーのRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべてのランダムなアプタマーのRNA)は、好ましくは、リボースの2'位の炭素のOH官能基のメチル化による修飾;リボースの2'の位置の炭素のOH官能基のO-メトキシエチル基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のアミノ基による置換;リボースの2'位の炭素のOH官能基のハロゲン(特にフッ素)による置換;およびこれらのいずれかの組み合わせ、から選択される少なくとも1つの修飾によって修飾されている。特に好ましい実施形態によれば、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つのランダムなアプタマーのRNAは(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべてのランダムなアプタマーのRNA)、ピリミジンヌクレオチドのリボースが2'位の炭素にフッ素原子を担持するように修飾されている。したがって、好ましくは、本発明による組成物またはキットのランダムなアプタマーの修飾RNAは、ピリミジンヌクレオチドのリボースが2'位の炭素にフッ素原子を担持するRNAであり、好ましくは、プリンヌクレオチドのリボースが変化していないRNAである(したがって、それは2'フルオロ-ピリミジンRNA(2'F-PyRNA)である)。
【0155】
有利には、本発明による組成物またはキットのすべてのランダムなアプタマーのRNAは、上記で定義されているように修飾されている。特に好ましくは、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つのランダムなアプタマー(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべてのランダムなアプタマー)のRNAは、本発明による組成物またはキットの少なくとも1つのアプタマーおよび/または本発明による組成物またはキットの少なくとも1つの追加のアプタマー(上記で定義)のRNA(好ましくは、本発明による組成物またはキットのすべてのアプタマーおよび/または本発明による組成物またはキットのすべての追加のアプタマー)と同じ方法で修飾されている。
【0156】
一実施態様によれば、本発明によるキットは、該キットが複数のアプタマーを含む場合、前記アプタマーは、
a)すべてが1つの組成物に含まれているか、または
b)隔てられた容器中のいくつかの異なる組成物に分配されている(アプタマーがそれぞれ、隔てられた容器に配置されている異なる組成物に含まれる場合を含む)、ことを特徴とする。
【0157】
一実施態様によれば、本発明によるキットは、使用するための説明書をさらに含む。
【0158】
本発明による組成物またはキットは、賦形剤(例えば、担体、溶媒、希釈剤、アジュバント、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、吸収剤、ならびにこれらの任意の組み合わせから選択される)、緩衝液(例えば、Tris、Hepes、ホスフェート、ナトリウム、およびこれらの任意の組み合わせから選択される)、二価イオンの溶液(例えば、マグネシウムイオン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、およびこれらのいずれかの組み合わせから選択される)、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、およびこれらの任意の組み合わせから選択される)、ヌクレオチドなど、およびこれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。キットの場合、賦形剤、緩衝液、二価イオン溶液、酵素、ヌクレオチドなどは、それぞれ隔てられた容器に配置された異なる組成物に含まれてもよく、隔てられた容器に配置された異なる組成物中に一対以上混合されてもよく、またはすべてが同じ組成物中に含まれてもよい。また、キットの1つまたはそれ以上のアプタマーと混合することもできる。
【0159】
賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、生理食塩水、サッカライド溶液(例えば、グルコース、トレハロース、スクロース、デキストロースなど)、乳酸リンゲル、アルコール、油、ゼラチン、炭水化物、例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロースなどが挙げられる(例えば、Remingtonの最新版を参照: 例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro, Lippincott, Williams & Wilkinsの最新版を参照)。
【0160】
本発明による組成物またはキットは、F-型および/またはR-型α-Syn線維のコンフォマーの増幅(インビトロ)に必要な化合物をさらに含み得る。繊維コンフォマーの増幅は、当業者に公知の任意の技術によって実施することができる。このような技術は、特に、例えば、Fenyiら、2019に記載のタンパク質ミスフォールディング環状増幅(PMCA)法を含む。したがって、本発明による組成物またはキットは、α-Syn繊維コンフォマーの増幅に適合した緩衝液(例えば、Tris、Tris-HCl、Hepes、KCl、およびこれらのいずれかの組み合わせから選択される)、および/またはα-Synモノマーなどをさらに含み得る。
【0161】
使用
本発明の文脈において、本発明者らは、F-型α-Syn線維のコンフォマーを他のα-Synおよびα-Synモノマーから区別することができる修飾リボ核酸(RNA)アプタマーを開発した。
【0162】
データは特に、これらのアプタマーが異なるα-Syn線維を特異的かつ高感度に検出するツールであることを示している。したがって、本発明は、分子のスクリーニングを実施するのに有用であるだけでなく、神経変性疾患の分野における研究のためのツールでもあるアプタマーを提供する
【0163】
したがって、本発明は、
a) 生体試料中の少なくとも1つのF型α-Syn繊維のコンフォマーの存在または非存在の検出;
b) 生体試料中のF型α-Syn繊維のコンフォマーの定量化(すなわち、その量の決定);
c) 生体試料中のα-Syn繊維コンフォマー、好ましくはα-SynのF-型およびR型α-Syn繊維の分子フィンガープリントの確立;
d)F-型α-Syn繊維のコンフォマーを検出および/または認識することができる化合物/分子のスクリーニング、好ましくは、F-型α-Syn繊維のコンフォマーをR型α-Syn繊維のコンフォマーから区別できる化合物/分子のスクリーニング;または
e) a)からd)のいずれかの組み合わせ、
のための、本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つの組成物、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせ、のインビトロでの使用。
【0164】
a)生体試料中の少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在または非存在の検出のためのインビトロでの使用は、好ましくは、以下の工程を含む:
1. 生体試料を、本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つの組成物、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせと接触させる工程;
2. 試料中に固定されたアプタマーの存在または非存在を検出する工程;
3. 生体試料中の少なくとも1つのα-Synコンフォマー、好ましくはF-型α-Syn線維のコンフォマーの量および/または存在もしくは非存在を決定する工程。
【0165】
検出方法は特に、ELISA技術、ゲル遅延試験、濾過(特にニトロセルロース膜上での濾過)、クロマトグラフィー、熱泳動、「プルダウン」試験、平衡透析、分析用超遠心、表面プラズモン共鳴(SPR)、スペクトル試験、等温滴定熱量測定(ITC)、PCR、定量PCR、シークエンシング(特にハイスループットシークエンシング)、DNAチップなどを使用することができる。
【0166】
b) 生体試料中のF-α-Syn繊維のコンフォマーの定量化(すなわち、その量の決定)のためのインビトロでの使用は、好ましくは以下の工程を含む:
1. 生物学的試料を、本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つの組成物、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせと接触させる工程;
2. 試料中に固定されたアプタマーの量を定量化する工程;
3. 生体試料中の少なくとも1つのα-Synコンフォマー、好ましくはF-型α-Syn線維のコンフォマーの量を決定する工程。
【0167】
定量法は特に、ELISA技術、ゲル遅延試験、濾過(特にニトロセルロース膜上での濾過)、クロマトグラフィー、熱泳動、「プルダウン」試験、平衡透析、分析用超遠心、表面プラズモン共鳴(SPR)、スペクトル試験、等温滴定熱量測定(ITC)、PCR、定量PCR、ハイスループットシークエンシング、DNAチップなどを使用することができる。
【0168】
c) α-Syn繊維コンフォマー、好ましくはα-SynのF型およびR型α-Syn繊維の分子フィンガープリント(すなわち、特徴的なシグネチャーまたは特徴的なプロフィール)を確立するためのインビトロでの使用は、好ましくは以下の工程を含む:
1. 生体試料を、本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つの組成物、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせと接触させる工程;
2. 試料中に固定されたアプタマーの量を定量化する工程;
3. 生体試料中のα-Synのα-Syn繊維コンフォマー、好ましくはF型およびR型α-Syn繊維の分子フィンガープリントを確立すること。
【0169】
α-Synコンフォマー、特にF-型α-Syn線維のコンフォマーの分子フィンガープリントを確立するための方法は、特にELISA技術、ゲル遅延試験、濾過(特にニトロセルロース膜濾過)、クロマトグラフィー、熱泳動、「プルダウン」試験、平衡透析、分析用超遠心、表面プラズモン共鳴(SPR)、スペクトル試験、等温滴定カロリマーからなる、 熱泳動、「プルダウン」試験、平衡透析、分析的超遠心分離、表面プラズモン共鳴(SPR)、分光学的試験、等温滴定熱量測定(ITC)、PCR、定量PCR、ハイスループットシークエンシング、DNAチップなどを含む。
【0170】
分子フィンガープリントを確立するための使用の状態において、好ましくは、少なくとも2つのアプタマーを含む本発明による組成物またはキット、特に、上記で定義されているアプタマーのアソートメントを含む組成物またはキットが選択される。
【0171】
d) F-型α-Syn線維のコンフォマーを検出および/または認識することができる化合物/分子のスクリーニングのためのインビトロでの使用は、好ましくは以下の工程を含む:
1.少なくとも1つの化合物/分子を、F-型α-Syn線維のコンフォマーの試料、および本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つの組成物、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせと接触させる工程;
2.試料中に固定されたアプタマーの量を定量化する工程;
3.工程2の定量化に基づいて、F-型α-Syn線維のコンフォマーに結合する(したがって、アプタマー親和性の喪失を誘導する)化合物の能力を決定する工程。
【0172】
定量法は特に、ELISA技術、ゲル遅延試験、濾過(特にニトロセルロース膜上での濾過)、クロマトグラフィー、熱泳動、「プルダウン」試験、平衡透析、分析用超遠心、表面プラズモン共鳴(SPR)、スペクトル試験、等温滴定熱量測定(ITC)、PCR、定量PCR、ハイスループットシークエンシング、DNAチップなどを使用することができる。
【0173】
一実施態様によれば、本発明によるインビトロでの使用(すなわち、a)生体試料中の少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在または非存在の検出、b)生体試料中のF-型α-Syn線維のコンフォマーの定量化、c)生体試料中のα-Syn線維のコンフォマーの分子フィンガープリントの確立、d)F-型α-Syn線維のコンフォマーを検出および/または認識することができる化合物/分子のスクリーニング、およびこれらのいずれかの組み合わせのための上記の使用)は、工程1)の前に実施される工程1')[生体試料中のF-型および/またはR-型α-Syn線維のコンフォマーまたはF-型α-Syn線維のコンフォマーの試料を(インビトロで)増幅させる]をさらに含む。繊維コンフォマーの増幅は、当業者に公知の任意の技法によって作製することができる。このような技術は、例えば、Fenyiら、2019に記載されているような、特にタンパク質ミスフォールディング環状増幅(PMCA)法を含む。
【0174】
方法
本発明者らは、本発明によるアプタマーが、神経変性疾患、特にシヌクレイン病の診断、予後診断、層別化またはモニタリングのためのツールとして、あるいは処置の有効性を評価するためのツールとして使用できることを示した。
【0175】
このデータは特に、様々なアプタマーのアソートメントを使用することにより、α-Synタンパク質の異なるコンフォマーを含む生体試料について、特定の分子フィンガープリント(特徴的なシグネチャー、あるいは特徴的なプロファイル)を得ることができることを示している。この特定の分子フィンガープリントにより、神経変性疾患、特にシヌクレイン病を互いに区別することができる。
【0176】
したがって、本発明は、神経変性疾患の少なくとも1つの症状を有する対象においてシヌクレイン病を診断するためのインビトロでの方法であって、
a)前記対象の生体試料(試料(A)と称する)を、本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つの組成物、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせと接触させること;
b)前記対象の生体試料において、少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在または非存在を検出すること、F-型α-Syn線維のコンフォマーを定量化すること、α-Syn線維のコンフォマー(好ましくは、α-SynのF-型およびR型α-Syn線維)の分子フィンガープリントを確立すること、またはこれらのいずれかの組み合わせ;および
c) 工程b)の結果に基づいて、前記対象においてシヌクレイン病の存在または非存在を診断すること、
を含む方法に関する。
【0177】
好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在が検出された場合、および/またはシヌクレイン病に特有の分子フィンガープリントが得られた場合、該対象はシヌクレイン病に罹患している。
【0178】
一実施態様によれば、本方法は、工程a)の前に実施される工程a')[前記対象からの生体試料(試料(A)と称する)中のF-型および/またはR-型α-Syn線維のコンフォマーを(インビトロで)増幅させる]をさらに含む。繊維コンフォマーの増幅は、当業者に公知の任意の技術によって実施することができる。このような技術は、例えば、Fenyi and al., 2019に記載の、特にタンパク質 ミスフォールディング環状増幅(PMCA)法を含む。
【0179】
代替の実施形態によれば、または上述の実施形態との組み合わせによれば、本方法は、工程b)と工程c)との間に実施される工程b')[参照対象の1つまたはそれ以上の生体試料(複数可)における、少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在または非存在の検出、F-型α-Syn線維のコンフォマーの定量化、α-Syn線維のコンフォマー(好ましくは、α-SynのF型およびR型α-Syn線維)の分子フィンガープリントの確立、またはこれらのいずれかの組み合わせ]をさらに含む。参照対象は、好ましくは、シヌクレイン病に罹患している少なくとも一人の参照対象、および任意で少なくとも一人の健康な参照対象を含む。シヌクレイン病に罹患している参照対象からの試料として、特に、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)または多系統萎縮症(MSA)に罹患している対象からの試料を使用することができる。工程b')では、異なるシヌクレイン病に罹患している参照対象からの複数の試料を使用することができる。本実施態様によれば、工程b')と工程c)との間で行われる工程b'')[工程b)およびb')における、検出されたF-型α-Syn繊維のコンフォマー、定量化されたF-型α-Syn繊維のコンフォマー、および/または得られたF-型α-Syn繊維のコンフォマーの分子フィンガープリントを比較する]をさらに含むことができる。この場合、工程c)は、工程b'')の比較に基づく対象のシヌクレイン病の診断を含む。工程b')の比較で、工程b)の結果がシヌクレイン病に罹患している参照対象の参照試料(異なる参照試料によれば、同じ原理でシヌクレイン病の間のより正確な診断が可能である)についての工程b')の結果に匹敵する場合には、シヌクレイン病に罹患していると診断され、健康な参照対象の参照試料についての工程b')の結果に匹敵する場合には、シヌクレイン病に罹患していないと診断される。
【0180】
したがって、本発明による方法は、上述の工程a')、a)、b)およびc)、または上述の工程a)、b)、b')およびc)、または上述の工程a')、a)、b)、b')およびc)、または上述の工程a)、b)、b')、b'')およびc)、または上述の工程a')、a)、b)、b')、b'')およびc)を含むことができる。
【0181】
本発明は、シヌクレイン病に罹患している対象においてシヌクレイン病の層別化、シヌクレイン病の予後診断、シヌクレイン病のモニタリング、またはシヌクレイン病処置の有効性の評価のためのインビトロでの方法であって、
a) 前記対象の生体試料(試料(A)と称する)を、本発明による少なくとも1つのアプタマー、本発明による少なくとも1つの組成物、本発明による少なくとも1つのキット、またはこれらのいずれかの組み合わせに接触させること;
b) 前記対象の生体試料において、少なくとも1つF-型α-Syn繊維ののコンフォマーの存在または非存在を検出すること、F-型α-Syn繊維のコンフォマーを定量化すること、α-Syn繊維コンフォマー(好ましくはα-SynのF型およびR型α-Syn繊維)の分子フィンガープリントを確立すること、またはこれらの組み合わせ;および
c) 前記工程b)に基づいて、前記対象において、シヌクレイン病を層別化すること、シヌクレイン病の予後診断を行うこと、シヌクレイン病をモニタリングすること、シヌクレイン病の処置の有効性を評価すること、
を含み、
ここで、シヌクレイン病は、好ましくは、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)から選択され、より好ましくは、シヌクレイン病はDLBである、方法に関する。
【0182】
好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在が検出された場合、および/またはシヌクレイン病に特有の分子フィンガープリントが得られた場合、シヌクレイン病が悪化しているか、シヌクレイン病の予後診断が否定的であるか、シヌクレイン病が進行しているか、シヌクレイン病の処置が効果的でないか、またはあまり効果がない。
【0183】
一実施態様によれば、本方法は、工程a)の前に実施される工程a')[前記対象からの生体試料(試料(A)と称する)中のF-型および/またはR-型α-Syn線維のコンフォマーを(インビトロで)増幅させる]をさらに含む。繊維コンフォマーの増幅は、当業者に公知の任意の技術によって実施することができる。このような技術は、例えば、Fenyi and al., 2019に記載されているような、特にタンパク質ミスフォールディング環状増幅(PMCA)法を含む。
【0184】
代替の実施形態によれば、または上述の実施形態との組み合わせによれば、インビトロでの予後診断および/または層別化の方法は、工程b)と工程c)との間で行われる工程b')[参照対象の1つまたはそれ以上の生体試料中の少なくとも1つのF-型α-Syn繊維のコンフォマーの存在または不在の検出、F-型α-Syn繊維のコンフォマーの定量化、α-Syn繊維(好ましくはF型およびR型α-Syn繊維)の分子フィンガープリントの確立、またはこれらのいずれかの組み合わせ]をさらに含む。参照対象は、好ましくは、層別化予後診断/段階/レベルが既知のシヌクレイン病に罹患している少なくとも一人の対象(好ましくは、層別化予後診断/段階/レベルが既知のシヌクレイン病に罹患している少なくとも1人の参照対象、シヌクレイン病は、参照対象および検査/予後対象とで同一である)、および任意で少なくとも1人の健康な参照対象、を含む。
【0185】
シヌクレイン病に罹患している参照対象からの試料として、特に、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)または多系統萎縮症(MSA)に罹患している対象からの試料を使用することができる。工程b')では、異なるシヌクレイン病に罹患している参照対象からのいくつかの試料を使用することができる。工程b')では、好ましくは、同じシヌクレイン病に罹患しているが、異なる層別化予後診断/段階/レベルが知られている参照対象からのいくつかの試料を使用することができる。本実施形態によれば、前記方法は、工程b')と工程c)との間で行われる工程b''[工程b)およびb')における、検出されたF-型α-Syn繊維のコンフォマー、定量化されたF-型α-Syn繊維のコンフォマー、および/または得られたF-型α-Syn繊維のコンフォマーの分子フィンガープリントを比較する]をさらに含むことができる。この場合、工程c)は、工程b'')の比較に基づく対象におけるシヌクレイン病の予後診断および/または層別化を含む。工程b')の比較で、工程b')の結果が参照対象の参照試料について工程b')で得られた結果と同等であることが示された場合には、当該対象は、層別化予後診断/段階/レベルが既知ので同じシヌクレイン病に罹患している参照対象に、匹敵する予後診断を有し、および/または匹敵する層別化段階/レベルである(異なる参照試料によれば、異なる段階間の予後診断および/またはより正確な層別化が同じ原理で実行できる可能性がある)。工程b)の結果で、参照対象または健康な参照対象の参照試料について工程b')で得られたものよりも、F線維の検出が多いか、F-型α-Syn線維の量が多いか、またはF線維が豊富な分子フィンガープリントが得られたと示される場合には、該対象は、層別化予後診断/段階/レベルが既知の同じシヌクレイン病に罹患している参照対象または健康な参照対象よりも、予後診断が否定的であり、および/またはより進行した(より重篤な)層別化段階/レベルであると層別化される。逆に、工程b)の結果で、参照対象の参照試料ついて工程b')で得られたものよりも、F線維の検出が低いか、F-型α-Syn線維の量が少ないか、またはF線維の分子フットプリントが不良であることを示される場合には、該対象は、層別化予後診断/段階/レベルが既知ので同じシヌクレイン病に罹患している参照対象よりも、良好な予後診断を有し、および/または、より進行していない(重篤ではない)層別化段階/レベルであると層別化される。
【0186】
したがって、本発明による方法は、上述の工程a')、a)、b)およびc)、または上述の工程a)、b)、b')およびc)、または上述の工程a')、a)、b)、b')およびc)、または上述の工程a)、b)、b')、b'')およびc)、または上述の工程a')、a)、b)、b'')、b''')およびc)を含むことができる。
【0187】
代替の実施形態によれば、または上記の実施実施形態との組み合わせによれば、シヌクレイン病に罹患している対象における、シヌクレイン病の層別化、シヌクレイン病の予後診断、シヌクレイン病のモニタリング、またはシヌクレイン病処置の有効性の評価のためのインビトロでの方法は、工程b)と工程c)との間に実施される工程b')[試験される対象の第2の生体試料(試料(B)と称する)における、少なくとも1つのF-型α-Syn線維のコンフォマーの存在または非存在の検出、F-型α-Syn線維のコンフォマーの定量化、α-Syn線維のコンフォマー(好ましくは、α-SynのF型およびR型α-Syn線維)の分子フィンガープリントの確立、またはこれらのいずれかの組み合わせ]をさらに含む。前記第2の試料(B)は、好ましくは、試料(A)の後、例えば、2回目の訪問(試料(A)は、その後、1回目の訪問の間に得られたもの)の間に得られ/採取され、好ましくは、前記試料(B)は、試料(A)の少なくとも24時間後、より好ましくは、試料(A)の少なくとも48時間後、より好ましくは試料(A)の少なくとも72時間後、より好ましくは試料(A)の少なくとも7日後、より好ましくは試料(A)の少なくとも10日後、より好ましくは試料(A)の少なくとも15日後、より好ましくは試料(A)の少なくとも1ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも2ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも3ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも4ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも5ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも6ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも7ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも8ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも9ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも10ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも11ヶ月後、より好ましくは試料(A)の少なくとも12ヶ月後で得られる。より好ましくは、前記試料(B)は、試料(A)の7日後と6ヶ月後との間に得られ、より好ましくは、前記試料(B)は、試料(A)の10日後と5ヶ月後との間に得られ、より好ましくは、15日後と4ヶ月後との間に得られ、より好ましくは、21日後と3ヶ月後との間に得られ、より好ましくは、30日後と60日後との間に得られ、より好ましくは、40日後と50日後との間に得られる。本実施態様によれば、本方法は、工程b')と工程c)との間に実施される工程b'')[工程b(従って、対象の試料(A)について)および工程b')(従って、対象の試料(B)について)における、検出されたF-型α-Syn線維のコンフォマー、定量化されたF-型α-Syn線維のコンフォマー、および/または得られたF-型α-Syn線維のコンフォマーの分子フィンガープリントを比較する]をさらに含むことができる。この場合、工程c)は、工程b'')での比較に基づく、対象におけるシヌクレイン病の層別化、シヌクレイン病の予後診断、シヌクレイン病のモニタリング、シヌクレイン病の処置効果の評価を含む。工程b')での比較で、工程b)の結果が工程b')で得られたものに匹敵することが示される場合、該対象は、不変/匹敵する層別化段階/レベルにあるとして層別化されるか、該対象は不変/匹敵する予後診断を有するか、該対象においてシヌクレイン病がほとんど進行しないか(安定である)、またはシヌクレイン病の処置が合理的に有効である。
【0188】
工程b)の結果で、工程b')で得られたものよりもF線維の検出が多いか、F-型α-Syn線維の量が多いか、またはF線維が豊富な分子フィンガープリントが示された場合には、該対象はより進行した(より重度の)層別化段階/レベルにあるとして層別化されるか、該対象の予後診断がより否定的であるか、対象のシヌクレイン病が進行している(悪化(worsened)、悪化(aggravated))か、シヌクレイン病の処置が効果的でないか、またはあまり効果的でない。逆に、工程b)の結果で、工程b')で得れれ結果よりもF線維の検出が低いか、F-型α-Syn線維の量が少ないか、またはF線維の分子フィンガープリントが少ないと示された場合には、該対象は、あまり進行していない段階/レベルの層別化(重篤度が低い)にあると層別化されるか、該対象の予後診断が良好であるか、該対象のシヌクレイン病が改善している(深刻ではなく、後退しているだろう)か、シヌクレイン病の処置が効果的である。
【0189】
上述の実施態様による方法はまた、工程a)の前に実施される工程a')[試料(A)および/または試料(B)中のF-型および/またはR-型α-Syn繊維のコンフォマーを(インビトロで)増幅させる]を含み得る。繊維コンフォマーの増幅は、当業者に公知の任意の技術によって実施することができる。このような技術は、例えば、Fenyi and al., 2019に記載の、特にタンパク質ミスフォールディング環状増幅(PMCA)法を含む。
【0190】
したがって、本発明による方法は、上述の工程a')、a)、b)およびc)、または上述の工程a)、b)、b')およびc)、または上述の工程a')、a)、b)、b')およびc)、または上述の工程a)、b)、b')、b'')およびc)、または上述の工程a')、a)、b)、b')、b'')および c)を含むことができる。
【0191】
以下に示す実施例は、本発明を説明するためのものであり、限定的なものとはみなされない。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【
図1】分単位の異なる時間(各パネルの上部に表示されている1分、5分または15分;Landureau and al., 2021)における、プロテイナーゼK(PK)によるタンパク質分解制御後に得られたF型α-Syn繊維のコンフォマー(左パネル)、R型α-Syn繊維のコンフォマー(中パネル)および91型α-Syn繊維のコンフォマー(右パネル)のバーコード/分子フィンガープリントの代表例。
【0193】
【
図2】α-SynのF、R、65、91繊維に対する28個のアプタマー候補およびそれらに関連するランダムな配列のスクリーニングの結果:結合したままの関連ランダムな配列(Scr1-GまたはScr2-G)の量に対する、ニトロセルロース膜上に結合したままのオリゴヌクレオチドの量の間の比。グラフは、結合したままの関連ランダムな配列(Scr1-GまたはScr2-G)の量に対する、ニトロセルロース膜上に結合したままのオリゴヌクレオチドの量の間の比を示している。
【0194】
【
図3】F型またはR型α-Syn線維に対するアプタマーN30-Gの親和性の測定。
【0195】
【
図4】α-Synまたはα-Synモノマーの「アミロイド-β」型線維または線維P110に対するアプタマーN30-Gの親和性の測定。
【0196】
【
図5】F型またはR型α-Syn線維に対するアプタマーN124-Gの親和性の測定。
【0197】
【
図6】α-Synまたはα-Synモノマーの「アミロイド-β」型線維または線維P110に対するアプタマーN124-Gの親和性の測定。
【0198】
【
図7】アプタマーN30-GによるF型α-Syn線維のSp6カラムでの分離による検出。
【0199】
【
図8】ハイスループットシークエンシングによる混合物のアプタマー頻度の分析によるコンフォマーの存在の分子フィンガープリントの代表例。
【0200】
【
図9】15個のオリゴヌクレオチドの頻度の進化をシークエンシングすることによる、培地中のFコンフォマーまたはRコンフォマーの存在の分子フィンガープリント。14個のアプタマー(Nと称する)および対照配列(Scr-2(スクランブル2)と称する)の混合物を、F繊維コンフォマーまたはR繊維コンフォマーを含む培地(それぞれFn1~Fn3およびRn1~Rn3の条件)または繊維なし環境(条件0n1~0n4)中でインキュベートした。本図面は、混合物中の各アプタマーの頻度の進化を、混合物中の初期頻度と比較して示している。この分析により、各コンフォマーの特定のシグネチャーを明らかにすることができる。
【実施例】
【0201】
実施例1:特異的α-Synコンフォマーアプタマーの設計および開発
1.1. 材料および方法
1.1.1. SELEX
【0202】
異なるα-シヌクレイン繊維コンフォマー、特に「F」および「R」コンフォマーと称されるコンフォマーに対して、いくつかのSELEXを行った。F線維コンフォマーは円筒状の外観を有するのに対し、R線維コンフォマーはリボン状である。齧歯類では、それぞれF繊維コンフォマーまたはR繊維コンフォマーを注射したら、2つの異なる形態のシヌクレイン病:パーキンソン病および多系統萎縮症、を発症することが示された。
【0203】
RNA化学において、すべてのピリミジンがリボースの2'位がフッ素基によって修飾されているアプタマーの選択を行った。この化学修飾は、リボヌクレアーゼ(RNAse)による分解に対するRNAの抵抗性を著しく高めることが知られている。
【0204】
これらのSELEX中に、アプタマーの認識特異性を特定のコンフォマー型に向けさせ、アプタマーがα-Synのモノマー型に対してほとんど親和性を有しないことを確保するために、対抗選択工程を行った。例えば、F繊維コンフォマーに特異的なアプタマーを選択するために、1015の異なるオリゴヌクレオチドのライブラリーをモノマー型またはR繊維コンフォマーとともに事前にインキュベートした。これらのコンフォメーションに対して親和性を有しないオリゴヌクレオチドのみを、F繊維コンフォマーに対する選択に使用した。このタイプの対抗選択の目的は、F繊維コンフォマーに対しては親和性を有するが、他の形態のタンパク質に対しては親和性を有しないアプタマーを単離することであった。
【0205】
ライブラリーの試料をハイスループットシークエンシングによって分析した。これらのSELEXから28の候補を選択した(下表7)。これらの候補の親和性を、ニトロセルロースでの濾過によってスクリーニングした。
【0206】
1.1.2. 候補アプタマーの親和性試験
10nMの各候補アプタマー(ヒートショックによりP32放射性標識したオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしたもの)を、イゲパルを0.1%含有するTs1X(HEPES (pH 7.6) 10mM、NaCl 150mM、KCl 5mM、CaCl2 1.5mM、MgCl2 1mM)の溶液中で1μMのα-Syn繊維コンフォマーとインキュベートし、オリゴヌクレオチドに対してssDNAを5-1の割合で(すなわち、1.7μg/mlのレベルで)添加した。37°Cで30分間インキュベートした後、各混合物25μLをニトロセルロース膜上に三回堆積させ、次に濾過する。次に、Ts1Xで2回の洗浄を行う。ニトロセルロース膜上に保持されているオリゴヌクレオチドの量は、該膜を光刺激性リンスクリーンにさらすことによって定量化する。
【0207】
1.1.3. 候補アプタマーの解離定数の決定および先行技術のアプタマーとの比較
アプタマーの親和性は、標的の濃度を一定にしたままアプタマーの濃度を変化させることによって形成される複合体の量を測定する第2の方法を用いて評価した。これらの測定中、標的濃度はアプタマー濃度に比べて非常に高いと考えられるため、遊離標的の量と比較してアプタマーに結合した標的の量を無視することが可能である。候補と標的との間の相互作用が「特異的」の型である場合、最初に存在する候補の濃度の関数として形成される複合体の量の曲線は双曲線であり、飽和を示さなければならない。そうすると、標的に対するアプタマーの親和性定数、BmaxおよびKdを計算することができる。
【0208】
候補アプタマーの親和性は、α-synに対して選択されたと文献に記載されているアプタマーとも比較した。2010年と2012年に塚越らによりそれぞれ選択されたアプタマーM5-15およびT-SO508を選択した(塚越ら, 2010, 2012)。これらのDNA化学アプタマーは、それぞれα-synのモノマーとオリゴマーを認識するように選択した。68nMのkdのα-Synオリゴマーを認識するT-SO508は、Aβ40オリゴマー(25nMのkd)にも親和性を有することが示された。また、DNA化学においてもアプタマーF5R1およびF5R2が選択され、Zhengらによって2019年に選択されていた(Zheng and al., 2018; Ren and al., 2019)。これらはそれぞれ2.4および3.07nMのkdでα-Synを認識する。最後に、DNA化学アプタマーTau 3146も試験した。このアプタマーは、「Non-SELEX」と称される迅速な方法によって単離し、その際、モノマーアイソフォームTau 441に対して、選択間の増幅を伴わない3回の連続選択を行った(Lisi and al., 2018)。アプタマーTau 3146は、アイソフォームTau 441、Tau 381、Tau 352、Tau 383にそれぞれ13±3nM、116±6nM、84±6nM、49±4nMのkdsで結合できることが示された。
【0209】
これらのアプタマーはすべてDNA化学のものであるため、同じ化学で同等の長さのランダムな配列を比較する必要がある。実験室でPCRのプライマーとして使用されているDNA配列を対照として選択した。このプライマーは「Scr_DNA」と名付け、87ヌクレオチドのサイズを持ち、文献から選択したDNAアプタマーの配列と匹敵するのもである(以下の表7)。
【0210】
【0211】
候補アプタマーおよび文献にあるアプタマーの親和性は、FおよびRα-syn線維のコンフォマーに加えて、異なる「アミロイド」型線維(Tau1N3R線維およびAβ40線維)に対しても測定した。α-Syn繊維「P110」に対する候補アプタマーの親和性も測定した。この繊維は、アミノ酸番号110から切断されたα-Synタンパク質から作製した(したがって、C末端ドメインの30アミノ酸が欠落している)。
【0212】
10nMのオリゴヌクレオチド(アプタマー)(RNA2'F化学オリゴヌクレオチドの場合はP32で放射性標識したSpG-LNAに、DNAオリゴヌクレオチドの場合はP32で直接標識したSpG-LNAにヒートショックでハイブリダイズしたもの)を、Igepalを0.1%含有するTs1Xの溶液中の250nMのタンパク質に与え、ssDNAをオリゴヌクレオチドに対して5-1の割合(すなわち、0.135μg/ml~17.325μg/ml)で添加した。37℃で30分間インキュベートした後、各混合物25μLをニトロセルロース膜に堆積させ、次に、濾過する。次に、Ts1Xで2回の洗浄を行う。ニトロセルロース膜上に保持されているオリゴヌクレオチドの量を、該膜を光刺激性リンスクリーンに曝露させることによって定量化する。KdおよびBmaxは、候補に対する標的上の結合部位が1つのみであると仮定し、標的に対する候補の(特異的および非特異的)総親和性を分析する非線形回帰モデルを用いて、Prismソフトウェアを用いて計算した。
【0213】
測定は、F型およびR型のα-Syn線維については三重に(異なる日に3回の独立した実験)、その他の線維(Tau1N3R、Aβ40線維、P110線維)およびα-Syn単量体については二重に行った。
【0214】
1.1.4. Sp6カラム親和性試験
P32で放射性標識したオリゴヌクレオチド(2'F-PyRNA配列の場合はP32で標識したSpG-LNAに、DNA配列の場合は直接標識にSpG-LNAに対してハイブリダイゼーションにより)を、Ts1X、Igepal 0.1%中で、250nMのタンパク質(F繊維またはα-Synモノマー)と混合した。37℃で30分間インキュベートした後、25μLの混合物を、あらかじめ緩衝液をTs1Xに変えたSp6カラムに堆積させた。堆積物の最初の遠心分離後、カラムをTs1Xで2回洗浄した。最後に2%SDS溶液で洗浄することによってカラムを溶出させた。次に、画分を24ウェルプレートに堆積させ、光刺激性蛍光体スクリーン上で数時間暴露させた。暴露分析により、各条件の各画分の定量化が可能になった。
【0215】
1.1.5. ハイスループットシークエンシング(FootBal-Seq)による混合物のアプタマー頻度分析による分子フィンガープリンティング
14のアプタマー(Nと称する)および対照配列(Scr-2(スクランブル2)と称する)の混合物を、F繊維コンフォマーまたはR繊維コンフォマーを含有する培地(それぞれ条件Fn1~Fn3およびRn1~Rn3)または繊維を含まない環境(条件0n1~0n4)でインキュベートした。混合物を排除カラムで濾過し、3回の洗浄後にカラムに保持された配列を2%SDSで溶出させた。フェノール-クロロホルム抽出後、オリゴヌクレオチド混合物をRT-PCRで増幅させた。この工程の間、配列は「アダプター」配列によって拡張され、ハイスループットシークエンシングが可能になった。アガロースゲル電気泳動による精製後、混合物をハイスループットシークエンシングにより配列決定した。
【0216】
1.2. 結果
1.2.1. Selexにより選択したアプタマー
以下の表8は、成功した候補の配列である。
【0217】
【0218】
1.2.2. 異なるα-Synコンフォマーに対する候補アプタマーの親和性
図2では、アプタマーN3、N30、N124、4F01、4F02、4F03、4F05、F124およびP65がランダムな配列よりもはるかに多量にF-型α-Syn線維のコンフォマーに結合したままであることを示されている。特に、候補N3-G、N30-GおよびN124-Gは、Scr2-Gよりも平均3.5倍多くF-型α-Syn線維に結合している。
【0219】
本データではさらに、アプタマーN3、N30、N124、4F01、4F02、4F03、4F05、F124およびP65が、他のコンフォーマー(R、91および61;
図2)よりもはるかに多量にF-型α-Syn線維のコンフォマーに結合したままであることが示されている。これらの結果は、アプタマーN3、N30、N124、4F01、4F02、4F03、4F05、F124およびP65がF-型α-Syn線維のコンフォマーを他のα-Synコンフォマーから区別できることを示している。
【0220】
1.2.3. 候補アプタマーの解離定数の決定および先行技術のアプタマーとの比較
各親和性試験の代表的な結果を、アプタマーN30については
図3および
図4に、アプタマーN124については
図5および
図6に示す。アプタマーが、関連するランダムな配列と比較してタンパク質に有意に結合すると判定された場合、Prismによって計算されるK
dおよびB
maxの計算値をグラフに示す。
【0221】
以下の表9~表12は、繊維の型ごとに、実施したすべての二重または三重実験から、各アプタマーおよび各タンパク質について計算したKdおよびBmaxの平均値をまとめたものである。
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
変動係数はパーセンテージとして示し、値の標準偏差とその平均の間の比率ある。「再現性」カラムは、アプタマーと標的との間の結合が測定された実験の数を示す。記号「-」とは、実験が行われていないことを意味する。試験したアプタマーの結合がそれに関連するランダムな配列の結合より有意に大きくない場合、用語「結合なし」が示されている。
【0227】
データでは、F繊維に対する親和性の測定は、再現性が非常に高いことを示している:アプタマーN30-G、N124-G、T-SO508およびF5R1は、各実験において10nM未満のKdでF-型α-Syn繊維に結合する。アプタマーT-SO508およびF5R1は、各実験においてR-型α-Syn繊維にも結合するが、アプタマーN30-GおよびN124-Gは、関連するランダムな配列と比較して、R-型α-Syn繊維に有意に高い結合は示してない。アプタマーM5-15、F5R2およびTau 3146は、F繊維にもR-型α-Syn繊維にも結合していない(関連するランダムな配列よりも有意に高い結合はない)。
【0228】
したがって、データでは、試験したアプタマーの中でアプタマーN30-GおよびN124-GのみがF繊維をR繊維から区別できることを示している。
【0229】
先行技術のアプタマーは、2つの線維を匹敵する親和性で認識するか(アプタマーT-S0508およびF5R1)、R-型α-Syn線維もF-型α-Syn線維(M5-15、F5R2およびTau 3146)も認識できない。
【0230】
アプタマーT-SO508およびF5R1は、F繊維に対するKdが低く、R繊維に対するBmaxが高い(ファクター2の差)。しかし、Kdが2倍違うだけでは、2つの型の繊維を確実に識別するには不十分である。
【0231】
図4および
図6はさらに、アプタマーN30およびN124がα-Synモノマーに対して親和性を有しないことを示している。
【0232】
同様に、アプタマーN30およびN124はアミロイドβ線維を有意に認識しないことがデータから明らかになっている(
図4および
図6、表9)。
【0233】
これらのすべてのデータでは、アプタマーN30およびN124がFα-Syn繊維に対して非常に特異的な親和性を有することを示している。実際、アプタマーN30およびN124は、再現性のある特定の方法で、Fα-Syn線維をRα-Syn線維から区別できるだけでなく、α-Synモノマーおよび他のタイプの線維、例えばアミロイドβ線維からも区別できる。
【0234】
1.2.4. Sp6カラム親和性試験
F繊維コンフォマーまたはモノマーに対するアプタマーN30-Gの親和性を、排除カラム(Biorad社製Sp6)での濾過により試験した。アプタマーN30-Gの能力をアプタマーT-SO508の能力と比較した。配列Scr2-GおよびScr_DNAを対照として使用した。
【0235】
検出テストの結果を
図7に示す。このデータでは、これらの結果が再現可能であることを示している。オリゴヌクレオチドをF-型α-Syn繊維に与えた場合、N30-Gの16.7%、Scr2-Gの2.1%、T-SO508の3.9%、Scr_DNAの3.0%が、2%SDSでSp6カラムを洗浄した画分に溶出されたことが観察された。これは、N30-GがF-型α-Syn繊維に対する保持が、関連するランダムな配列よりも約8倍、T-SO508よりも4倍が良いことを意味する。これらの結果は、N30-GがF型線維を認識する能力をさらに確認するものであり、またT-SO508と比較して優れていることを示すものである。
【0236】
データでは、N30-Gをモノマーに与えた場合、オリゴヌクレオチドの1.1%しか2%SDS溶出画分に溶出されなかったことを示している。これは、N30-GがF-型α-Syn線維をモノマーよりも約16倍よく認識することを意味する。興味深いことに、2% SDSで溶出された画分は、T-SO508がF-型α-Syn線維に与えた場合でも、モノマーに与えた場合でも同様であった(それぞれ3.9%および3.8%)。これらの結果は、T-SO508はF-型α-Syn線維およびモノマーを区別しないことを示している。
【0237】
1.2.5. FootBal-Seqによる診断用分子フィンガープリントの取得
本発明者らは、培地中の繊維コンフォマーの存在を診断するための、アプタマーの混合物を使用する新しい診断方法を開発した(
図8)。開発した28個のアプタマーのうち14個を選択し、対照配列と同様に等モル量で混合した。この混合物を、繊維を含まないか、または繊維コンフォマーFまたは繊維コンフォマーRを含む培地中でインキュベートした。次に、混合物をSp6排除カラムに堆積させた。増幅および精製の後、混合物をハイスループットシークエンシングによって配列決定した。混合物中の各配列の割合を開始時の割合と比較する。
【0238】
図9では、混合物中の各アプタマーの頻度の進化を、混合物中の初期頻度と比較して示している。この分析により、各コンフォマーの特定のシグネチャーを明らかにすることができる。例えば、F繊維コンフォマーについては他の配列と比較してN30、N73およびN15が強力に濃縮されており、R繊維コンフォマーについては配列N30、N124、N5、N73およびN15が濃縮されている。
【0239】
したがって、データでは、F繊維コンフォマーおよびR繊維コンフォマーに対する特定のシグネチャーを強調している(
図9)。
【0240】
これらの結果は患者の試料で確認した。これらのデータでは、そのようなアプタマーの混合物を使用して患者の生体試料からシグネチャーを取得でき、それによって神経変性疾患の診断が可能になるとのことを確認した。この混合物により、特に、患者がシヌクレイン病に罹患しているか、または別のタイプの神経変性疾患に罹患しているかを判断することが可能になる。シヌクレイン病の場合も同様の検査でどちらであるかを判定することができる。
【0241】
参考文献
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