(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】涙液刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240514BHJP
A61F 7/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61F9/007 140
A61F7/00 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572987
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022064105
(87)【国際公開番号】W WO2022248498
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523443249
【氏名又は名称】ユニバーシティー カレッジ ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バックリー,シネイド
(72)【発明者】
【氏名】カレン,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】オシャーブヘイル,イオン
(72)【発明者】
【氏名】イセラ,ベネデッタ
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA01
4C099CA06
4C099NA02
4C099NA09
4C099NA10
4C099PA01
(57)【要約】
本発明は、目の感覚神経及び拡張された眼窩領域で温度受容器を活性化することによって、制御された速度で熱エネルギーを送達して自然な涙液の生成を刺激する、涙液刺激装置及び方法を提供し、熱エネルギーを変調することで、制御された状態で繰り返し涙液が生成され、眼表面を治癒することができる、自然に潤滑され、かつ栄養のある環境がもたらされる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、コントローラと、電源と、涙液生成の無意識の活性化を誘発または増加させるなど、顔の熱応答領域との間で熱エネルギーを伝達するために、前記ハウジングの周囲に配置された1つ以上のエネルギー端子と、を備える涙液刺激装置であって、前記コントローラは、連続的な加熱及び冷却相を送達するために、前記1つ以上のエネルギー端子の温度を循環させるように配置されており、前記コントローラは、0.01℃/秒~43℃/秒、より好ましくは3℃/秒~25℃/秒、及び最も好ましくは5℃/秒~20℃/秒の速度で、前記1つ以上のエネルギー端子の温度を下げるために、少なくとも1つの前記冷却相に配置される、前記涙液刺激装置。
【請求項2】
前記コントローラは、1秒~6000秒の間、より好ましくは1秒から120秒の間、及び最も好ましくは1秒から60秒の間の期間にわたり、前記加熱及び/または冷却相の1つ以上の間に、前記1つ以上のエネルギー端子で一定温度を維持するように配置される、請求項1に記載の涙液刺激装置。
【請求項3】
前記コントローラは、0℃~48℃、より好ましくは5℃~40℃、及び最も好ましくは10℃~35℃の前記1つ以上のエネルギー端子で温度を設定するように配置される、請求項1または2に記載の涙液刺激装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記熱エネルギーのサイクル周波数及び/または強度を変調するように配置される、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項5】
前記コントローラは、少なくとも1つの冷却相の少なくとも一部の間に、前記1つ以上のエネルギー端子のパルス状の温度変化を生じさせるように配置される、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記少なくとも1つの冷却相の間及び/または異なる冷却相の間の温度変化の速度を変化させるように配置される、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項7】
前記コントローラは、1時間あたり2つ以上の相、より好ましくは10分あたり2つ以上の相、及び最も好ましくは3分あたり2つ以上の相の周波数で、連続的な加熱及び冷却相の間で前記熱エネルギーを循環させるように配置される、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項8】
前記1つ以上のエネルギー端子は、熱電冷却器を備える、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項9】
前記1つ以上のエネルギー端子は、1つ以上の涙腺もしくは眼窩上孔の領域、またはそれに隣接する領域に前記熱エネルギーを加えるように配置される、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項10】
前記1つ以上のエネルギー端子に、またはそれに隣接して配置された1つ以上の温度センサを備える、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記装置をユーザに、またはユーザが着用する衣服に着脱可能に固定するように動作可能な支持体を備える、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項12】
前記支持体はヘッドバンドを備える、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項13】
前記1つ以上のエネルギー端子は、前記温度応答領域に熱エネルギーを送達するように動作可能な1つ以上のエネルギー伝達インタフェースを備える、いずれかの先行請求項に記載の涙液刺激装置。
【請求項14】
1つ以上のエネルギー端子を顔の熱応答領域に適用するステップと、前記1つ以上のエネルギー端子を介して前記熱応答領域との間で熱エネルギーを伝達して、前記熱応答領域を連続的に加熱及び冷却するステップと、を含む涙液刺激の誘発または増加方法であって、少なくとも1つの冷却相は、0.01℃/秒~43℃/秒、より好ましくは3℃/秒~25℃/秒、及び最も好ましくは5℃/秒~20℃/秒の速度で前記1つ以上のエネルギー端子の温度を下げる、前記方法。
【請求項15】
1秒~6000秒の間、より好ましくは1秒から120秒の間、及び最も好ましくは1秒から60秒の間の期間にわたり、前記加熱及び/または冷却相の1つ以上の間に、前記1つ以上のエネルギー端子を一定温度に維持することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のエネルギー端子の温度を0℃~48℃、より好ましくは5℃~40℃、及び最も好ましくは10℃~35℃に設定することを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱エネルギーのサイクル周波数及び/または強度を変調することを含む、請求項14~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの冷却相中及び/または異なる冷却相の間の温度変化の速度を変化させることを含む、請求項14~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの冷却相の少なくとも一部の間に前記熱エネルギーをパルスで送達することを含む、請求項14~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
1時間あたり2つ以上の相、より好ましくは10分あたり2つ以上の相、及び最も好ましくは3分あたり2つ以上の相の周波数で、連続的な加熱及び冷却相の間で前記熱エネルギーを循環させるステップを含む、請求項14~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の涙腺もしくは眼窩上孔の領域、またはそれに隣接する領域に前記熱エネルギーを加えることを含む、請求項14~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上のエネルギー端子に、またはそれに隣接して配置された1つ以上の温度センサからのデータを前記コントローラに提供することを含む、請求項14~22のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
瞼を電気的及び/または物理的に操作することを含む、請求項14~20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、涙液刺激装置及び方法、特に、快適に利用することができるため、自然な涙液の不足に関連する又はこの原因となるドライアイ及びその他の状態を治療または回避するために、睡眠中に自然な涙液の規則的な供給の分泌を確保する装置及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
角膜(目の表面)が正常に機能するには、覚醒時及び睡眠中の両方で、涙液による継続的な潤滑が必要である。涙膜及び角膜が、目の焦点調節力の65%を担っている。光学的品質を維持するには、常に涙膜を自然な涙液の分泌で補わなければならない。こうしなければ涙膜が不安定になり、目の眼表面が乾燥により損傷する。
【0003】
完全な涙膜は、3つの異なる供給源からなる3つの層で構成されている:
・杯細胞からなる内側ムチン層
・涙腺からなる水液層
・マイボーム腺からなる外側脂質層
【0004】
杯細胞は、結膜に位置する。結膜とは、眼瞼の内側を覆い、強膜(白目)を被覆する組織である。涙腺は、各目に1つの腺があり、眼球の上及び眉の下に位置する。この領域には小さな副涙腺もあり、これもまた涙液の水液層に寄与する。マイボーム腺は、眼瞼の縁に沿って、まつ毛の内側に位置する。マイボーム腺は、上瞼に約40~50個、下瞼に20~25個ある。
【0005】
眼瞼への熱の適用は、マイボーム腺中の脂質を融解し、特にマイボーム腺からの分泌を改善するために使用できることが知られている。この涙液の外側脂質層は、目の表面からの内側層(水性、ムチン層)の蒸発を防ぐことにより、ドライアイの症状を改善する。
【0006】
ドライアイの個人は、様々な理由から、十分な量の涙液潤滑を有していない。これは、痛み、霧視、目の感染症及び不安を引き起こす場合がある。この状態の従来の日中の治療は、潤滑剤、抗酸化剤、抗炎症剤、刺激剤、ステロイド及び生物製剤を含む様々な作用機序による点眼液の手動での適用である。
【0007】
これら全ての日中の治療にもかかわらず、56%の患者が、ドライアイ疾患(DED)の症状は変わらない、または更に重度になると述べている。この理由の1つは、DEDが、睡眠中、最も一般的には夜間に対処されないため、涙液の補充が一般的に不可能である夜間に、眼表面の損傷が起こり得るからである。
【0008】
不十分な潤滑という問題に対処しようとする現在の治療の選択肢は、涙液置換、涙液保存及び涙液刺激に分類される。涙液置換には、人工的に配合された点眼液、軟膏またはゲルの人工的な塗布が含まれる。涙液保存には、涙点プラグ(目からの排液経路を遮断するための侵襲的なインプラント)、及び目の周りに閉鎖した湿潤環境を作り出すために装着されるモイスチャーゴーグルがある。涙液保存は主に、保存するのに十分な涙液が存在することに基づく。涙液刺激装置は、外部から侵襲的または手動で適用される電気的、薬理学的、超音波的手段によって涙液分泌腺を刺激しようとするものである。
【0009】
涙液置換には自然な涙液を使用せず、目に適用するのが難しく、適用に付随するリスクがあり、使用中視力に影響が生じる。涙液保存は、十分な量の涙液を生じさせる能力に依存しているか、または上述した涙液置換を必要とする。いくつかの方法は、侵襲的である。
【0010】
現在の涙液刺激装置は侵襲的であり、通常、体内への医療装置の導入、すなわち覚醒時に手動で行う必要がある角膜への適用、覚醒時に手動で行う必要がある鼻への適用、または外科的処置を必要とする皮膚の下への埋め込み、を含む。
【0011】
したがって、本発明の目的は、非侵襲的で、装着が快適でるため、覚醒時だけでなく睡眠中にも利用することができる涙液刺激装置及び方法を提供することによって、上述の問題に対処することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、ハウジングと、コントローラと、電源と、涙液生成の無意識の活性化を誘発または増加させるなど、顔の熱応答領域との間で熱エネルギーを伝達するために、ハウジングの周囲に配置された1つ以上のエネルギー端子と、を備える涙液刺激装置が提供され、コントローラは、連続した加熱及び冷却相を送達するために、1つ以上のエネルギー端子の温度を循環させるように配置されており、コントローラは、0.01℃/秒~43℃/秒、より好ましくは3℃/秒~25℃/秒、及び最も好ましくは5℃/秒~20℃/秒の速度で1つ以上のエネルギー端子の温度を下げるために、少なくとも1つの冷却相に配置される。
【0013】
好ましくは、コントローラは、1秒~6000秒の間、より好ましくは1秒から120秒の間、及び最も好ましくは1秒から60秒の間の期間にわたり、加熱及び/または冷却相の1つ以上の間に、1つ以上のエネルギー端子で一定温度を維持するように配置される。
【0014】
好ましくは、コントローラは、0℃~48℃、より好ましくは5℃~40℃、及び最も好ましくは10℃~35℃に1つ以上のエネルギー端子で温度を設定するように配置される。
【0015】
好ましくは、コントローラは、熱エネルギーのサイクル周波数及び/または強度を変調するように配置される。
【0016】
好ましくは、コントローラは、少なくとも1つの冷却相の間及び/または異なる冷却相の間の温度変化の速度を変化させるように配置される。
【0017】
好ましくは、コントローラは、少なくとも1つの冷却相の少なくとも一部の間に、1つ以上のエネルギー端子のパルス状の温度変化を生じさせるように配置される。
【0018】
好ましくは、コントローラは、1時間あたり2つ以上の相、より好ましくは10分あたり2つ以上の相、及び最も好ましくは3分あたり2つ以上の相の周波数で、連続的な加熱及び冷却相の間で熱エネルギーを循環させるように配置される。
【0019】
好ましくは、1つ以上のエネルギー端子は、熱電冷却器を備える。
【0020】
好ましくは、1つ以上のエネルギー端子は、1つ以上の涙腺もしくは眼窩上孔の領域、またはそれに隣接する領域に熱エネルギーを加えるように配置される。
【0021】
好ましくは、涙液刺激装置は、1つ以上のエネルギー端子に、またはそれに隣接して配置された1つ以上の温度センサを備える。
【0022】
好ましくは、ハウジングは、装置をユーザに、またはユーザが着用する衣服に着脱可能に固定するように動作可能な支持体を備える。
【0023】
好ましくは、支持体はヘッドバンドを備える。
【0024】
好ましくは、1つ以上のエネルギー端子は、温度応答領域に熱エネルギーを送達するように動作可能な1つ以上のエネルギー伝達インタフェースを備える。
【0025】
好ましくは、コントローラは、装置のフィードバック制御を実施するために、1つまたは複数のセンサからのデータを処理するように動作可能である。
【0026】
好ましくは、1つ以上のエネルギー端子は、標的領域にエネルギーを送達するように動作可能な1つ以上のエネルギー伝達インタフェースを備える。
【0027】
好ましくは、1つ以上のエネルギー伝達インタフェースは、ハウジングと一体に形成されている。
【0028】
好ましくは、1つ以上のエネルギー伝達インタフェースは、標的領域に接触することなく標的領域にエネルギーを送達するように動作可能である。
【0029】
好ましくは、1つ以上のエネルギー伝達インタフェースは、標的領域と接触中に標的領域にエネルギーを送達するように動作可能である。
【0030】
好ましくは、1つ以上のエネルギー伝達インタフェースは、1つ以上の接触パッドを備える。
【0031】
好ましくは、1つ以上の接触パッドは、変形可能な要素を含む。
【0032】
好ましくは、1つ以上のエネルギー伝達インタフェースは、熱伝達媒体を備える。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、1つ以上のエネルギー端子を顔の熱応答領域に適用するステップと、1つ以上のエネルギー端子を介して熱応答領域との間で熱エネルギーを伝達して、熱応答領域を連続的に加熱及び冷却するステップと、を含む涙液刺激の方法が提供され、少なくとも1つの冷却相は、0.01℃/秒~43℃/秒、より好ましくは3℃/秒~25℃/秒、及び最も好ましくは5℃/秒~20℃/秒の速度で1つ以上のエネルギー端子の温度を下げる。
【0034】
好ましくは、方法は、1秒~6000秒の間、より好ましくは1秒から120秒の間、及び最も好ましくは1秒から60秒の間の期間にわたり、加熱及び/または冷却相の1つ以上の間に、1つ以上のエネルギー端子を一定温度に維持することを含む。
【0035】
好ましくは、方法は、1つ以上のエネルギー端子の温度を0℃~48℃、より好ましくは5℃~40℃、及び最も好ましくは10℃~35℃に設定することを含む。
【0036】
好ましくは、方法は、熱エネルギーのサイクル周波数及び/または強度を変調することを含む。
【0037】
好ましくは、方法は、少なくとも1つの冷却相中及び/または異なる冷却相の間の温度変化の速度を変化させることを含む。
【0038】
好ましくは、方法は、少なくとも1つの冷却相の少なくとも一部の間に熱エネルギーをパルスで送達することを含む。
【0039】
好ましくは、方法は、1時間あたり2つ以上の相、より好ましくは10分あたり2つ以上の相、及び最も好ましくは3分あたり2つ以上の相の周波数で、連続的な加熱及び冷却相の間で熱エネルギーを循環させるステップを含む。
【0040】
好ましくは、方法は、1つ以上の涙腺もしくは眼窩上孔の領域、またはそれに隣接する領域に熱エネルギーを加えることを含む。
【0041】
好ましくは、方法は、1つ以上のエネルギー端子に、またはそれに隣接して配置された1つ以上の温度センサからのデータをコントローラに提供することを含む。
【0042】
好ましくは、方法は、瞼を電気的及び/または物理的に操作することを含む。
【0043】
本明細書で使用される「エネルギー」という用語は、主に熱エネルギーまたは温度変化を意味することが意図されるが、振動またはマッサージなどの機械的エネルギー、音響エネルギー、電流、電圧、及び/または周波数で変調され得る電気エネルギー、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、マイクロ波、電波及び赤外線などの電磁エネルギー、化学エネルギー、または上記のエネルギーの2つ以上の組み合わせを意味することも意図される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「熱応答領域」という用語は、人間の頭部またはその周囲、好ましくは顔の周囲、及び最も好ましくは目を取り囲んで含む眼窩領域、以下、拡張した眼窩領域にある任意の標的領域を意味することが意図され、この領域にエネルギー、例えば熱エネルギーを加えると、当該領域における細胞及び/または腺の刺激に応じて涙液生成の無意識の活性化の形態の生理学的応答が生じる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「非侵襲的」という用語は、人間の頭部の標的領域、最も好ましくは顔の眼窩領域の皮膚への、熱エネルギーなどのエネルギーの、非外科的かつ潜在的に非接触の送達を意味することが意図されており、例えば、中間熱伝達媒体を介して標的領域の間接的な冷却の形態をとってもよい。
【0046】
本明細書で使用される「電源」という用語は、電池などのような局所的な電源であって、装置に取り外し可能に接続されてもよく、または代わりに、例えば有線もしくは無線接続の手段によって、涙液刺激装置に選択的に接続されてもよい外部電源から電力を受け取る手段を意味することが意図される。
【0047】
本明細書で使用される「エネルギー端子」という用語は、装置がユーザの頭部に装着されると、ユーザの顔の温度応答領域に接触し、熱伝導により当該領域の温度を変化させるように動作可能である、装置の1つ以上の皮膚接触領域または要素を意味することが意図されており、例えば、装置のハウジングの側壁もしくは表面の一部、またはハウジングもしくはその周囲に設けられた1つ以上個別要素により定義され得る。
【0048】
本発明は、これより以下の添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図3】広範囲の熱応答性領域を描いた人間の頭部の正面図を示す。
【
図5】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第1の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図7】
図5及び6の涙液刺激装置の熱活性領域を示す。
【
図8】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第2の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図10】
図8及び9の涙液刺激装置の熱活性領域を示す。
【
図11】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第3の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図14】特定の熱応答性領域を描いた人間の頭部の横顔を示す。
【
図16】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第4の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図19】特定の熱応答性領域を描いた人間の頭部の横顔を示す。
【
図21】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第5の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図25】特定の熱応答性領域を描いた、目が開いた状態の人間の頭部の横顔を示す。
【
図29】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第6の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図32】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第7の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図35】特定の熱応答性領域を描いた人間の頭部の横顔を示す。
【
図37】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第8の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図41】特定の熱応答性領域を描いた人間の頭部の横顔を示す。
【
図43】人間の頭部への使用に適用された、本発明の第9の実施形態による涙液刺激装置の概略的な側面図を示す。
【
図46】本発明による涙液刺激装置の作業構成要素の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ここで添付の図面を参照すると、
図1及び
図2は、人間の目Aの構成要素部分を示しており、上述したとおり、無意識の涙液の生成に関与する熱受容体経路の一部を定義することができる、多数の細胞及び腺を示している。
図1は、クラウス腺B、ウルフリング腺C、涙腺D、杯細胞E、ポポフ腺F、及びマイボーム腺Gを示す。
図2は、角膜H及びマイボーム腺Gを示す。
【0051】
以下で詳細に説明するように、
図3及び
図4に概略的に示されている、人間の頭部の熱応答領域Rへの熱エネルギーの制御された適用を利用して、目に必要な潤滑を提供するために、無意識の涙液の生成を生じさせるまたは増大させることができることが判明した。これは、特に睡眠中に、涙液産生の減少または欠如を引き起こす様々な症状に苦しむ人たちに適用され、このような症状の治療に用いることができる。熱応答領域Rに送達される熱エネルギーの種類及び形式は、ある期間中に送達され、ならびに/または適用頻度、強度、適用期間、加熱及び冷却のサイクル、温度変化の速度等において変調されるなど、様々であってもよく、以下で詳細に説明されるように、同時に、連続的に、またはそれ以外で、領域R内の1つ以上の特定の部位に送達されてもよい。熱エネルギーは、ユーザが目を開けた状態または閉じた状態で、ユーザが起きている間または寝ている間に送達され得るが、本発明は、特に、目が閉じている睡眠中にエネルギー送達を可能にすることを意図している。
【0052】
ここで
図5~
図7を参照すると、全体的に10と示された、本発明による涙液刺激装置の第1の実施形態が示されており、この涙液刺激装置は、例えば自己保持性がありかつ快適に着用できるように、好ましくは少なくとも部分的に、伸縮性または弾性及び柔軟性のある素材から形成されたヘッドバンドの形態で提供される。これにより、ユーザは目を開けた状態で示されているが、装置10は睡眠中に装着することができる。装置10は、他の手段、例えば、マイクロニードル、接着剤、吸引パッド、ベルクロ、磁石などによって、所望の位置に保持されてもよい。装置10は、好ましくは異なる頭部の大きさに調節可能であり、すなわち、延伸性、展性があるか、または任意の適切な手段(図示せず)を介してサイズの調節が可能である。装置10は、所定の位置に保持するために、耳、鼻、髪の生え際、皮膚の質感または骨の構造を使用してもよい。
図5及び
図6に示される例示的な実施形態の装置10は、眼窩領域に隣接する眉のライン上に位置するように形状及び寸法が決められるが、無論以下に記載されるさらなる実施形態によって詳述されるように、あらゆる他の適切な形状であってもよい。
【0053】
装置10は、
図3及び
図4に示される熱応答領域R内にある標的領域に熱エネルギーを送達するように配置されており、特に、眉毛のライン周囲の標的領域を加熱及び冷却するように配置されている。装置10は、好ましくは、ただし排他的にではなく、涙腺からの経路(眼窩、すなわち目がまっすぐ前方を見ているときの虹彩の内側を始点として、そこから30mm延伸した部分)を被覆するように、眼窩上孔で耳に向かって熱エネルギーを加えるように配置されている。特に、装置10は、涙腺を覆う及び/またはそれに隣接する皮膚の領域に熱エネルギーを加えるために、少なくとも1つの目、及び好ましくは両目の上で涙腺(
図1に示す位置)を覆うように位置するように配置されており、涙腺は、涙液生成を刺激するうえで最も有効な熱応答領域であることが判明している。装置10のアクティブな冷却領域またはエネルギー端子(複数可)は、
図7に示されている。これは、任意の他の適切な形態、例えば、複数の個別の加熱及び/または冷却領域であり得る、例示的な加熱及び冷却領域であることが理解されるであろう。付加的及び/または代替的な標的領域は、以下に記載する後続の実施形態に開示されている。また、この例示的な実施形態は、標的領域に送達されるエネルギーの唯一の形態として、連続的な加熱及び冷却の形態の熱エネルギーを利用するが、1つ以上の付加的な形態のエネルギーを送達できることも理解されたい。したがって、加熱、冷却または熱エネルギーへの言及は、それらを包含すると理解されるべきである。
【0054】
図46は、装置10が備え得るハードウェア構成要素の一例示的な組み合わせの概略図を示しているが、装置10の動作の以下の説明から、これは非限定的な例であり、必要な動作機能を達成するために利用できる多くの代替的な構成要素(図示せず)及び組み合わせが存在することを理解されたい。図示された実施形態では、
図46で概略的に示されたすべての構成要素が装置10のヘッドバンドに完全に収容されているが、1つ以上の構成要素、例えばバッテリの形態の電源が、装置10の外部に配置及び/またはそれに着脱可能に取り付けられ得ることも想定される。さらに、刺激装置10は、専用のまたは完全に収容された装置10として示されているが、本発明の刺激装置10は、他のフォームファクタで、例えばユーザが着用する他の物品、例えば眼鏡、かつら、宝飾品、帽子、フェイスマスク、または頭もしくはその周囲に着用する他の物品にはめ込まれる及び/または支持されるように提供され得ることも想定される。
【0055】
この例示的な実施形態の装置10は、コントローラ14を含むハウジング12を備え、コントローラ14には、装置10の自律的な動作の能力を提供するために制御アルゴリズムがプログラムされている。装置10はさらに、バッテリ16の形態の電源と、コントローラ14に電力を供給するバッテリ管理モジュール18とを備える。バッテリ16は、熱的、動的またはその他に関わらず、使用済みのエネルギーから回収されたエネルギーによって置換または増強することができると想定される。コントローラ14は、少なくとも1つのペルチェ素子20及び好ましくは、後述するような様々な形態で提供され得るエネルギー伝達インタフェース22を備える、少なくとも1つのエネルギー端子を動作させる。実際には、装置10はそれぞれの目の上の熱応答領域を刺激するために、好ましくは少なくとも1対のペルチェ素子20を含む。各ペルチェ素子20を動作させるために、ペルチェドライバ22が含まれる。エネルギー伝達インタフェース22は、例えば、熱応答領域の加熱及び冷却を容易にするために、ヘッドバンドの皮膚接触面を含むか、またはその面に隣接して配置されてもよい。エネルギー伝達インタフェース22は、ペルチェ素子20からの熱エネルギーの、制御され、かつ標的が定められた送達を達成するために、固体、ゲルなどの液体、及び/または空気などの気体といった1つ以上のエネルギー伝達媒体を備えてもよい。機械的受容器、温度受容器及びその他の神経は、皮膚に固体/液体界面が存在しない場合、さらに敏感であるため、ガス界面は、標的領域の皮膚でこれらの活性化を高めることができる場合がある。コントローラ14は、目及び眼窩領域の感覚神経における適切な受容体の活性化によって自然な涙液を生み出すために、制御された速度及び/または物理的な移動でエネルギーの生成及び適用を行うように動作可能である。このエネルギーを変調することにより、制御された状態で涙液が繰り返し生成される。これにより、眼表面を、特に睡眠中、つまり一般的に一晩中治癒することができる、自然に潤滑され、かつ栄養のある環境が提供される。
【0056】
したがって、コントローラ14は、好ましくは、様々な構成要素、特にペルチェ素子(複数可)20を自律的に動作させるように適合されており、これによりユーザによる何らかの入力を必要とすることなく、使用期間中、特に睡眠中に装置10を使用することができる。したがって、コントローラ14で実行されるアルゴリズムは、装置10に所望する動作を行わせるために、関連データを入力として利用し、装置10のそれぞれの構成要素に適切な制御出力を提供するように動作可能である。アルゴリズムは、フィードバック制御を組み込むように動作可能であり、これにより装置10の動作が、後述するように、様々な外部パラメータに適合し、特に温度フィードバック制御が提供される。無論、装置10のユーザによる制御は可能であり、例えば、スマートフォンSなどで、Bluetooth(商標)などの有線もしくは無線接続、近距離無線通信(NFC)などを介してローカルに、またはクラウドCを介してリモートで達成されてもよいことを理解すべきである。この接続により、医療専門家などは、装置10の動作及びユーザの状態に関するデータにリモートでアクセスしたり、またはこれらをモニタリングしたりすることもでき、これにより医療専門家は、当該フィードバックに基づいて、患者をモニタリング及び/または治療プログラムを変更することができる。
【0057】
装置10の熱活性領域を定義するエネルギー伝達インタフェース22に関連する熱伝達媒体は、例えばヘッドバンドを形成する材料層の間に捕捉され得る、流体の不透過性リザーバのような適切な筐体(図示せず)内に収容されてもよい。無論、エネルギー端子は、エネルギーを生成し、例えば機械的エネルギー、電磁エネルギー、化学エネルギーなどを送達するように動作可能であってもよいペルチェ素子20にエネルギーを送達する、代替または追加手段を含んでもよく、それぞれの場合で、エネルギー伝達インタフェース22が適切に選択されるか、または特定の場合においては省略されてもよい。エネルギー伝達インタフェース22は、例えば、光を標的領域に向けるために、光導波路(図示せず)の形態をとる場合がある。エネルギー伝達インタフェース22は、標的領域と直接接触するように、または接触せずに配置され、例えば比較的短い距離でエネルギーを標的領域に送達するように動作可能であってもよい。ただし、装置10をユーザの顔または頭部に適用する際、ペルチェ素子20が熱応答領域の皮膚になるべく近づけて配置することが好ましい。例示的な配置では、ペルチェ素子20を覆う装置10の皮膚接触材料は、429W/mK以上かつ1mm以下の厚さの熱伝導率を有し、熱伝達を最大化するため、ペルチェセル(複数可)20の隣接表面に密着するものの、ハウジング12の形状に合致するまたはこれを補完するのが好ましい。適切な材料の例は銀及びアルミナであるものの、特に眼窩皮膚に対して同じく生体適合性がある、他の任意の代替物を採用してもよい。
【0058】
装置10は、さらに温度センサ24を備え、この温度センサは、ペルチェ素子20及び/もしくはエネルギー伝達インタフェース22の温度ならびに/または環境もしくはユーザの皮膚の周囲温度に関する情報を、コントローラ14で実行されるアルゴリズムに提供するように動作可能である。温度センサ24は、好ましくはペルチェ素子20の「加熱」及び「冷却」側の双方の温度をモニタリングするように配置されており、例えば、この目的のために2つの専用の温度センサを備え得る。温度センサ24は、好ましくはペルチェ素子20によって加えられる必要な温度のアンダーシュート及び/またはオーバーシュートを低減するために、ペルチェ素子20の可能な限り近くに配置される。LED26などの任意のインジケータは、装置10に関するステータス信号またはその他の基本的な情報が、ユーザに提供されることを可能にする。装置10は、好ましくは通信モジュール28も備え、これは、装置10を接続できるように、好ましくはコントローラを、例えばスマートフォンSなどの外部インタフェースから接続できるようにするために、無線通信できることが好ましい。充電ステーション30も示されており、これは装置10の一部を構成しないものの、既知の方法でバッテリ16が再充電できるように、装置10と適合してもよい。充電は、装置10における外部電力ソケットの要件を回避するために、無線で達成されてもよい。
【0059】
装置10はさらに、1つ以上の物理的及び/または環境的条件、例えば局所体温、涙腺活動、心拍数、ホルモンレベル、空気温度及び/または湿度、運動、配向、睡眠サイクル、1つ以上の外部情報源などに関する情報を提供するように動作可能な1つ以上のセンサ(図示せず)を追加で備えてもよく、センサは、装置10の自律的なフィードバック制御を可能にするため、コントローラ14と通信することができる。例えば装置10は、例えばペルチェ素子20から発生した熱エネルギーを放散させる1つ以上のヒートシンクを備えてもよく、装置10は潜在的に、ユーザの頭部の位置によって決定される装置10の向きに応じて、この熱エネルギーを最も適切なヒートシンクに導くように動作可能であり得る。例えば、ユーザが枕などに対して頭部の片側で横たわっている場合、装置10の当該側にヒートシンクを利用することは適切でないまたは有効でない場合があり、これにより、コントローラ14は、装置10の、熱をより容易に逃がすことができる反対側の露出した側のヒートシンクを選択するように作動可能であり得る。無論、追加の意思決定機能を、コントローラ14で実行されるアルゴリズムによって提供及び制御してもよい。
【0060】
本発明の涙液刺激装置10は、特に新たに刺激された涙液の蒸発を防ぐため、さらに接触もしくは他の刺激物から保護するために、入射光を低減するために、及び/または目の周囲の一貫した温度を維持するために、瞼を閉じた状態に保持するための1つ以上のシステム(図示せず)を含んでもよい。これは、機能不全の瞼が睡眠中に完全に閉じないことを意味する夜間性兎眼の治療にも有益である。
【0061】
装置10は、表面間の潤滑性が低い場合に、瞼の内面に沿って瞼が目(角膜)に張り付くのを防止するため、瞼をマッサージするための1つ以上のシステム(図示せず)も含んでもよい。装置10は、例えば目領域への電気刺激の形態を取り得る、角膜へのエネルギー変調のアクセスを可能にするため、瞼を部分的に開いた状態に維持するための1つ以上のシステム(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0062】
装置10は、例えば、潤滑不足が問題となるときに瞼が張り付くのを防止し、角膜/眼球表面への改善されたエネルギーの伝達を容易にするために、機械的手段または電気的手段のいずれかによって瞼を操作するように適合され得る。瞼の操作は、刺激を受けたばかりの涙液を眼表面全体で動かすために、または瞼を閉じたままにして刺激を受けた涙液の蒸発を低減させるためにも使用することができる。瞼を動かす機械的手段は、例えば外側の瞼と接触する材料を含むことができ、適切な機械的及び/または電気的手段(図示せず)、例えば1つ以上のサーボ、圧電アクチュエータなどによって動かすことができる。瞼を操作する電気的手段は、瞼の筋肉の収縮及び弛緩に関与する神経の電気刺激によっても達成され得る。
【0063】
使用時、
図7に示す装置10のアクティブな加熱及び冷却領域が正しく配置されるように、ユーザは、
図5及び
図6に示すような装置10を適用する。装置10は、手動で起動されてもよく、またはユーザが装置10を装着していること及び/もしくは寝ていることを検出するために、1つ以上のセンサ(図示せず)からのデータを利用することで、装置10の起動をトリガしてもよい。代替的に、装置10は、予め設定された時刻の間、または予め設定された期間の間動作するようにプログラムされてもよい。一旦作動すると、装置10は熱エネルギーを標的領域に非侵襲的に送達し、コントローラ14は、涙液生成の無意識の活性化を引き起こすような当該エネルギーを変調するように動作可能である。エネルギー変調は、温度受容器、機械受容器、ポリモーダル受容器、神経または腺などの異なる場所で涙液を分泌するために神経経路に影響を与えることで、涙液分泌に作用し得る。これらの受容器は、標的領域の様々な領域に位置し、装置10、特に
図7に示すような熱活性領域は、特定の受容器または受容器群にエネルギーを加えるように構成されてもよい。例えば装置10は、眼窩領域、とりわけ涙腺、瞼の皮膚、鼻の皮膚及び内粘膜、ならびに瞼が開いたもしくは閉じた状態の角膜の上またはその周囲の皮膚の受容器を標的にしてもよい。したがって標的領域は、眉、額、鼻領域、眼窩領域、眼窩領域に隣接するこめかみ、鼻の外側及び/もしくは内側、ならびに頬骨または上記の任意の組み合わせであり得る。装置10は、好ましくは、以下に詳述するように、指定された期間中連続的な熱エネルギーサイクルを生成するように動作可能である。エネルギーの追加形態の適用は、一定であるか変調されているかにかかわらず、温度受容器、機械受容器、ポリモーダル受容器、神経自体または腺などの異なる場所で涙液を分泌するために神経経路に影響を与えることで、涙液分泌の作用を支援してもよい。
【0064】
装置10、特にコントローラ14は、標的領域に熱エネルギーを送達するように、かつ使用中、必要な細胞及び/または腺を刺激して涙液分泌に影響を与えるように、エネルギープロファイルを変調または変更するように動作可能である。例えばコントローラ14は、熱応答標的部位における温度を変調するために、ペルチェ素子20の温度を変調するようにプログラムされ得る。しかし変調パラメータは、例えば適用されているエネルギーの形態、生理学的条件、睡眠状態などに応じて変化し、1つ以上のセンサ(図示せず)からのフィードバックに基づいて、自律的に変更され得る。熱エネルギーと組み合わせてマッサージなどの機械的エネルギーが加えられている場合、マッサージの頻度及び強度は変調され得る。電磁エネルギーが加えられている場合、周波数、波長及び/または強度が変化し得る。エネルギーが加えられる時間の長さも、エネルギーが加えられない間の介在期間の長さと同様に、変調され得る。
【0065】
装置10は、全使用期間を網羅するプログラム、例えば一晩中または睡眠中のプログラムが上位レベルに含まれる、階層制御スキームを動作してもよい。したがってプログラムとは、装置10が1回の治療セッションでの使用が意図されている、完全な期間である。すべてのプログラムは、睡眠時間に加えて覚醒時間にも関連している。例えば装置10は、睡眠中または覚醒時に純粋に涙液分泌を生成するために使用されてもよく、以下では涙液分泌プログラムの動作と呼ぶが、同様に睡眠を促すために使用されてもよく、以下では睡眠促進プログラムの動作と呼ぶ。睡眠促進プログラムは、例えば涙液分泌を刺激することなく、または涙液分泌を刺激する前に、熱、マッサージなどを適用することによって装着者を簡単にリラックスさせるために、涙液分泌の有無にかかわらず動作してもよい。しかし装置10の主な使用用途は、夜間または睡眠中に涙液分泌を生じさせることのみであると想定される。各プログラムは複数の相を含む一方、各相は複数の「単位操作」を定義してもよい。各動作ユニットは、以下で説明するように、複数の個別サイクルを含んでもよい。コントローラ14上で実行されるアルゴリズムは、それぞれのプログラムに対して適切な制御スキームを実装し、1つ以上のセンサまたは他のソースから受信したデータに基づいてフィードバック制御を組み込むようにプログラムされている。
【0066】
階層制御スキームの最下層には、装置10によって実装され得る数々の異なる熱エネルギーサイクルがある。1つのサイクル内の、異なる定義されたエネルギーレベル及びエネルギー変化の速度は、休息中の体のエネルギーまたは装置10からのエネルギー入力などの要因によって影響され得る。エネルギーサイクルは、熱エネルギーを、定義された速度で定義された開始レベルにすることと、その後定義された速度でエネルギーを変化させることと、新たなエネルギーレベルで定義された期間保持することと、定義された速度で定義された終了エネルギーレベルまで変化させることとから成り得る。エネルギー変化の速度は、様々なプロファイルであってもよく、例えば、正弦波、線形及び階段状のプロファイルが挙げられるが、これらに限定されない。エネルギーサイクルは、定義された期間中定義されたエネルギーレベルに保持されるサイクルによって制御されるエネルギー源、及び/または定義された期間中電源が切れるサイクルによって制御され得るエネルギー源から成り得る保持サイクルも含んでもよい。
【0067】
特に驚くべきことに、連続的な加熱及び冷却相における、熱エネルギーの熱応答性領域への周期的な適用が、涙液生成を刺激するうえで特に効果的であることが判明し、とりわけ、冷却相中の温度変化の速度の増加が、涙液刺激に顕著かつ驚くべき影響を与えることが判明した。特に、温度応答標的部位における冷却相中の温度変化の速度が0.01℃/秒~43℃/秒、さらに好ましくは3℃/秒~25℃/秒、最も好ましくは5℃/秒~20℃/秒であると、顕著な涙液生成につながることが発見された。この温度受容器の急速な冷却は、顕著かつ完全な涙液刺激を引き起こすために、温度受容器を驚くべきレベルまで刺激する。冷却相が完了すると、装置10は、コントローラ14の動作下で、熱応答領域を加熱するために、ペルチェセル(複数可)20を利用する。これは特に、装置10によって実施される直後の冷却相に関して、温度受容器の感度をリセットするために、刺激された温度受容器を特定の速度で正確なベースライン温度に戻す効果を有する。温度受容器をこのベースライン温度に戻すことに加えて、加熱相は、閉じ込められたマイボーム分泌物を加熱し、これを流動させて腺を一掃することで、閉塞したマイボーム腺を一掃するように作用することができ、これにより全体的な涙液品質がさらに向上する。さらに、冷却相中の温度変化速度の上昇は、涙液による角膜の均一なコーティングと、装置10により急速に冷却された瞼との直接接触による角膜の冷却との両方により、涙液刺激の達成における装置10の作用を増強する、いわゆる「まばたき応答」が活性化される。一研究では、装置10を適用した場合のまばたきの速度は、ビデオ解析を用いて測定すると、5℃/秒の冷却速度を用いたとき、1分あたり平均20回のまばたきから1分あたり平均45回のまばたきまで2倍以上となった。
【0068】
温度変化の速度及び適用される絶対温度を正確に制御することにより、通常の生物学的機能の間に受ける周囲温度に対する温度受容器の応答を効果的に再訓練するために、温度受容器に定期的な入力が与えられる。したがって装置10は、損傷した温度受容器を修復または再訓練するように動作可能である。
【0069】
涙液刺激装置10の有効性は、Topcon Healthcareによって供給されるMyah(商標)を用いて評価され、これは、検眼の分野で使用される眼科検査及びスクリーニング装置であり、涙液刺激の複数のインジケータ、特に涙液メニスカス高(TMH)に関するデータを提供するものである。
【0070】
Myah(商標)を用いた試験では、以下の試験プロトコルが採用された。
【0071】
A.涙液メニスカス高(TMH)のベースラインの測定値は、被験者が座った位置で、顎をMyah(商標)の顎保持部に置き、額をMyahの額ストラップに当て、Myah(商標)装置の中をまっすぐに見ることで読み取られる。
【0072】
B.Myah(商標)のオペレータは、画面上のメニューから「TMH」測定オプションを選択する。次にオペレータは、被験者が静止している間にMyah(商標)を調節し、涙液メニスカス上にMyah(商標)の十字線の焦点を合わせる(下部メニスカスは、目の底部で測定する)。
【0073】
C.試験中の目のTMHに焦点を合わせるには、Myah(商標)のジョイスティックを精密移動する。
【0074】
D.オペレータがTMHに焦点を合わせたら、Myah(商標)のジョイスティックのボタンが押され、TMHの画像が撮影される。
【0075】
E.画像はその後、Myah(商標)のインタフェースを用いて解析される。画像は、Myah(商標)のソフトウェアによって最適化され、涙液メニスカスが強調される。拡大画像上でTMHの上下端が特定され、Myah(商標)がTMHを算出する。
【0076】
F.被験者はその後、座った位置から動かずに頭部をMyah(商標)から外し、本発明の装置10が眼窩領域の温度応答領域に配置され、装置10によって所定の温度アルゴリズムが実行される。
【0077】
G.所定の温度アルゴリズムが完了すると、被験者は装置10を取り外し、上記のステップA~Eに従ってTMHが再び測定される。
【0078】
Myah(商標)を使用して試験した装置10の例示的な熱エネルギーサイクルには、装置10の熱活性領域、つまりペルチェセル(複数可)20と直接熱伝達を行う領域を、定義された変化速度である6℃/秒で、37℃から20℃にすることが含まれた。2つの試験を通して、冷却相におけるこの温度変化の速度は、0.21mm及び0.15mmのTMHの増加を示した。
【0079】
装置10により行われ、Myah(商標)を使用して評価された温度サイクルまたはシーケンスの別の実施例は、4℃/秒の変化速度で、2.5秒間の35℃から25℃への温度低下、その後0.2℃/秒の変化速度で、10秒間の25℃から23℃への温度低下、その後2℃/秒で、35℃までの温度上昇を含み、このサイクルをさらに2回繰り返した。これにより、TMHが0.16mm増加した。
【0080】
試験した更なるシーケンスは、6℃/秒の変化速度で、1.5秒間の35℃から26℃への温度低下、その後0.3℃/秒の変化速度で、9秒間の26℃から23℃への温度低下、その後23℃で18秒間保持した後、2秒間の2.5℃/秒の速度で35℃まで加熱する加熱相を含み、3回の試験でTMHが0.12mm、0.18mm及び0.19mm増加した。
【0081】
試験した別のシーケンスは、2℃/秒の変化速度で、5秒間の35℃から25℃への温度低下、その後1℃/秒の変化速度で、5秒間の25℃から20℃への温度低下、その後1℃/秒の速度で、5秒間の35℃までの加熱を採用し、このサイクルをさらに9回繰り返して、THMが0.25mm増加した。
【0082】
上記の試験は、16℃~19℃の範囲の環境温度を有する位置で実施され、装置10は、指定された速度で既定の温度変化を達成するために、試験中の参加者の皮膚上に配置された。
【0083】
上記の試験は例示的であり、所望の結果を達成するか、または特定のケースを治療するために、多数の代替サイクル、シーケンス、温度及び速度の変更を採用してもよいことが理解されるであろう。例えば、反射性涙液の涙液分泌、その後基礎涙液を制御するために、シーケンスは、1℃/秒の速度で35℃まで加熱し、120秒間保持する加熱相を含んでもよい。その後冷却相で、25℃/秒の速度で10℃まで冷却し、20秒間保持する。その後さらなる加熱相で、2℃/秒の速度で35℃まで加熱し、60秒間保持する。その後冷却相で、15℃/秒の速度で20℃まで冷却し、20秒間保持する。その後2℃/秒の速度で35℃まで加熱し、60秒間保持する。その後15℃/秒の速度で20℃まで冷却し、20秒間維持する。
【0084】
制御スキームの次の階層には段階があり、涙液分泌のためのプログラム及び睡眠促進のためのプログラムは、様々な段階、例えば、ユーザが物理的及び/または精神的にリラックスする時間を有する、リラックスのための第1の段階から成り得る。第2または睡眠前の段階は、睡眠時間の直前の期間である。第3または睡眠の段階は、睡眠のみに充てることが意図された期間を定義し、第4または睡眠後の段階は、起床直後を定義する。
【0085】
段階は、単位操作の1つ以上から構成されている。各段階は、複数の単位操作を任意の順序で有することができる。涙液分泌の単位操作は、睡眠の円滑化の単位操作とは異なってもよい。涙液分泌のための単位操作は、まばたきを模倣するなど、何度も連続的に行ってもよい。睡眠促進中の涙液分泌の単位操作は、目を閉じた状態の涙を模倣するなど連続的であってもよく、これは、特に夜間の睡眠中に目を長時間に閉じている間の目の潤滑として定義されるが、起きている間も可能である。単位操作は、あくびを模倣して、集中的、誇張的、かつ連続的な涙を生成するための洗い流しを定義してもよく、これは、より頻繁で激しいエネルギー変動によって達成され得る。さらなる単位操作は、目のマイボーム腺のマイバムの一貫性と、皮膚のすべての腺のすべての油分の一貫性とを維持するための維持単位操作として定義されてもよく、これは、以前の2つまたは任意の「単位操作」の温度の低下の影響を受ける場合がある。単位操作は、標的ゾーン内の異なる位置で1つ以上の同時サイクルによって、または異なる周波数間隔でエネルギー源によって形成されるパターンである。実施例は、装置10の熱活性領域全体のエネルギー波または勾配パターンであり、例えば、装置10の熱活性領域で生成される水平、垂直及び/または対角線の延伸、同心円、複数の交互のパルスなどである。
【0086】
上述したように、装置10は、睡眠、目、脳活動、レム睡眠、睡眠パターンなどに関するマーカを測定するために使用され得るセンサ(図示せず)を有してもよい。このデータは、涙液分泌及び睡眠/リラックスの促進のためのプログラムに通知するために使用され得る。データは、気候面、運動量、体の水分補給、薬剤使用量、食品/サプリメント、その他の影響、例えばコンタクトレンズ、ホルモン、読書時間、運転時間、画面を見る時間、兆候及び症状の記録など、ドライアイ及び睡眠の理解を改善するために使用され得る。この情報は、医療専門家などに提供され、適切にレビューされ得る。
【0087】
上記のサイクル数及び他の変数を、センサ(図示せず)または(例えば、温度、涙液生成、湿気もしくはインジケータのその他の変化、日々の活動、コンピュータ使用量、運動、前夜の睡眠時間、睡眠またはその日の環境条件に基づいた)他のソースもしくはデータポイントからのフィードバックによって制御され得る。装置10は、涙液生成のレベルを直接的または間接的に検出し、リアルタイムにまたは追跡ベースで制御システムを調整するように動作可能な、閉鎖ループまたは半閉ループモードで動作してもよい。
【0088】
図5~
図13に示される装置10は、有効性を実証するためにサンプル群のユーザを試験し、例示的な制御スキームを使用した。試験のために目は閉じた状態にした。20℃の設定値を、20秒間エネルギー端子に適用した。涙液メニスカスはリザーバとして機能し、角膜前涙液膜に涙液を供給する。大部分の涙液は、眼球結膜と上下両瞼の縁との接合部に位置する涙液により形成される、メニスカス内に含まれる。0.25mm未満の涙液メニスカス高は、ドライアイを示唆する。試験結果は、装置10の使用後に涙液メニスカス高が68%増加したことを示した。
【0089】
本発明による涙液刺激装置には、多数のフォームファクタが提供されてもよく、他の様々な要素に加えて、例えば、特定の用途、ユーザ設定、制御スキーム、熱及び任意の他のエネルギーが送達される標的領域に適合するように設計することができる。
図5~
図13は、装置10の実施例を示し、これは、ヘッドバンドのフォームファクタのバリエーションであり、眼窩領域に隣接する眉に沿って熱応答標的領域に熱エネルギーを加えるように設計されており、装置10が目を被覆していないため、睡眠中またはユーザが覚醒中に使用され得る。
【0090】
図14及び
図15は、眉及び額を含む拡大された標的領域を示しており、
図16~
図18は、この標的領域に熱エネルギーを送達するように設計された装置10の実施形態を概略的に示しており、
図18は、装置10の熱活性領域を強調している。熱活性領域が、機械的または他の形態のエネルギーの送達も含み得ることが理解されるべきであり、「熱活性領域」という用語は、全体を通して、これらの代替形態のエネルギーを潜在的に包含すると解釈されるべきである。前述の実施形態と同様に、このバージョンの装置10は、睡眠中及びユーザが覚醒中に使用され得る。
【0091】
これらの装置10のための例示的な制御スキームは、眼窩領域における快適性及び忍容性のために、冷却によって、局所的な温度を0.01~43℃、より好ましくは37℃~20℃にすることを含んでもよい。装置10は、熱活性領域を定義するシリコン及び/または空気の熱伝達媒体の形態の熱エネルギーインタフェースを含んでもよい。6℃/秒の変化速度で、37℃から20℃に温度が低下すると、瞼の皮膚の冷温度受容器を活性化するために必要な温度低下がもたらされる。温度低下の量は、(温度受容器が刺激に慣れて応答しなくなることを防ぐために)変化させることができる。例えば1分あたり1~60サイクルなど、サイクルの頻度が変化してもよいように、サイクルの期間は長さも変化してもよい。完全なサイクルの期間は、任意の適切な長さであってもよく、より少ない頻度で、すなわち1時間に1回以下で発生してもよい。また、完全なサイクルは、任意の適切な期間、例えば1秒未満であってもよい。
【0092】
図19及び
図20は、鼻に関する標的領域を示し、
図21~
図24は、概して110として示される、この標的領域にエネルギーを加えるための、本発明による涙液刺激装置の代替的な実施形態を示す。この代替的実施形態では、同様の構成要素には同様の参照番号が与えられており、特に明記しない限り、同様の機能を実行する。装置110は、レンズを備えない従来の眼鏡の対と同様に、こめかみに取り付けられたフレームの形状で提供され、熱活性領域は、ブリッジ40と、ブリッジ40に従属する鼻パッド42の形状の一対の接触パッドとによって定義される。装置110のハードウェア構成要素は、フレームと一体に形成されたハウジング112内に設けられていてよいが、フレームに固定された外部に配置された筐体、またはフレームから離して配置されかつ適切に接続された筐体に均等に配置することができ、エネルギー端子及びエネルギー伝達インタフェースのみがフレーム上またはフレーム内に配置され、ブリッジ40及び鼻パッド42は、エネルギー伝達インタフェースを定義する。所望のエネルギー伝達プロファイルを達成するために、任意の適切なエネルギー伝達媒体、例えば、装置110から標的領域への熱エネルギー伝達を最大化するための高熱伝導性材料を、ブリッジ40及び鼻パッド42上に設けてもよい。適切な材料は、熱伝導性シリコン、または熱伝導性要素を封入するシリコンである。装置110は、目を開けた状態または閉じた状態で使用できるように設計されている。
【0093】
図25~
図28は、瞼が開いているときに、また
図27及び
図28に示すように閉じているときに、瞼の温度受容器が活性化される場合があるため、瞼が開いているまたは閉じているときに、瞼を含むさらなる標的領域を示す。
図29~
図31には、ヘッドバンドのフォームファクタ装置10の代替的な配置が示されており、これは、装着時に目を塞ぐように形成及び寸法が決められているため、例えば、睡眠中に限られないものの、目が完全に閉じられた状態で装着されることが意図されている。
図31は、装置10の熱活性領域を強調しており、これは、瞼にエネルギーを加えて目のための接触パッドを効果的に定義するために、目を覆うように形成及び寸法が決められる2つの個別のセクションとして設けられている。装置10の熱活性領域には、無論、追加のエネルギー送達ゾーンが提供されてもよい。ハウジング12は、装置10の、熱活性領域を定義するエネルギー端子及びエネルギー伝達インタフェース以外のハードウェア構成要素を含む。
【0094】
装置10は、0℃~43℃の冷却に影響を与えるように制御されてもよい。涙液分泌については、好ましい温度低下範囲は、16.5秒間で40℃~0℃である。マイバムの保守については、好ましい温度範囲は38.5℃~43℃であるものの、より高い温度が有益であることが判明した。瞼以外の部位の他の皮膚の油腺については、好ましい温度範囲はマイバムに類似している。温度低下の量は、(温度受容器が刺激に慣れて応答しなくなることを防ぐために)変化させることができる。温度低下速度は、0.01℃/秒~43℃/秒、より好ましくは3℃/秒~25℃/秒、最も好ましくは5℃/秒~20℃/秒である。温度低下速度は、(温度受容器が刺激に慣れて応答しなくなることを防ぐために)変化させることができる。この変化は、1つのサイクル内の1つの冷却相内及び/または別々の冷却相間にあってもよい。サイクルの持続時間は、1分あたり1~60回など、長さが変化してもよい。完全な1つのサイクルの持続時間も、より少ない頻度で、すなわち、1時間に1回以下で生じてもよい。完全なサイクルは、1秒未満であってもよい。
【0095】
図32~
図34は、概して210として示される、本発明による涙液刺激装置のさらなる代替的な実施形態を示す。この代替的実施形態では、同様の構成要素には同様の参照番号が与えられており、特に明記しない限り、同様の機能を実行する。装置210は、ブリッジ240によって接続された、鼻に取り付けられた一対の接触パッド244の形態で提供される。装置210のハードウェア構成要素は、ブリッジ240及び/またはパッド244内に設けられていてよいが、外部に配置された筐体、またはパッド244から離して配置されかつ適切に接続された筐体に均等に配置することができ、エネルギー端子及びエネルギー伝達インタフェースのみが目パッド244に配置され、エネルギー伝達インタフェースを定義する。所望のエネルギー伝達プロファイルを達成するために、例えば、熱エネルギー伝達を容易にし、パッド244が瞼及びその周囲の皮膚に密着することを可能にする高熱伝導性ゲルなどの、任意の適切なエネルギー伝達媒体を目パッド244に設けてもよい。装置210は、目を閉じた状態での使用が意図されている。しかし、パッド244は透明であってもよいため、パッド244を通した観察を可能にするために、目が開いた状態で使用することができる。パッド244を、透明なゲルなどの透明なエネルギー伝達媒体を含む、透明な外側のバリアまたはエンベロープで形成することができる。このような配置は、本明細書に記載された他の実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0096】
図35及び
図36には、目と頭部の両側のこめかみとの間のさらなる標的領域が示されている。
図37~
図40は、概して310で示される、この標的領域にエネルギーを送達するように適合させた、本発明による涙液刺激装置の代替実施形態を示す。この代替的実施形態では、同様の構成要素には同様の参照番号が与えられており、特に明記しない限り、同様の機能を実行する。装置310は、頭部の側部及び後部の周りに延在するフレームの形態で設けられており、熱活性領域は、こめかみパッド342の形態の一対の接触パッドによって定義されている。
【0097】
図41及び
図42は、頬の周りのさらなる標的領域を示している。
図43~
図45は、概して410として示される、本発明による涙液刺激装置の代替的な実施形態を示す。この代替的実施形態では、同様の構成要素には同様の参照番号が与えられており、特に明記しない限り、同様の機能を実行する。装置410は、頭部の側部及び後部の周りならびに鼻のブリッジにわたって延在するフレームの形態で設けられており、熱活性領域は、頬パッド442の形態の一対の接触パッドによって定義されている。
【0098】
上記の各実施形態について、
図46に概略的に示されている装置10の構成要素の説明は、上述した様々な動作モードに加えて適用されることが理解されよう。
【0099】
したがって、本発明の涙液刺激装置10;110;210;310;410は、
図3及び4に示すように、目の感覚神経及び拡張された眼窩領域の温度受容器を活性化することによって、制御された速度で熱エネルギーを送達して自然な涙液の生成を刺激する、効果的な手段を提供する。エネルギーを変調することで、特に温度変化の速度を制御する手段により、特に睡眠中に、制御された状態で繰り返し涙液が生成され、眼表面を治癒することができる、自然に潤滑され、かつ栄養のある環境が確立される。
【国際調査報告】