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特表2024-520047特定の細孔プロファイルを有する酸化アルミニウム及び酸化セリウムの組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】特定の細孔プロファイルを有する酸化アルミニウム及び酸化セリウムの組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/10 20060101AFI20240514BHJP
   B01J 35/66 20240101ALI20240514BHJP
   B01J 35/77 20240101ALI20240514BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240514BHJP
   B01J 35/32 20240101ALI20240514BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20240514BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20240514BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240514BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240514BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B01J23/10 A
B01J35/66 ZAB
B01J35/77
B01J35/60 A
B01J35/32
B01J37/06
B01J37/34
B01J37/08
B01J37/03 Z
B01J32/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572995
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022062507
(87)【国際公開番号】W WO2022248205
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】21315093.1
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤルディデール, オーサン
(72)【発明者】
【氏名】アルル, ヴィルジニー
(72)【発明者】
【氏名】イフラー, シモン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB10A
4G169BC01A
4G169BC02A
4G169BC08A
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC69A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169CA03
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA19
4G169EA27
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC18X
4G169EC18Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169ED06
4G169FA01
4G169FB05
4G169FB08
4G169FB27
4G169FB30
4G169FB58
4G169FC02
4G169FC08
4G169FC09
(57)【要約】
本発明は、組成物であって、酸化物の形態のAl及びCeに基づくか(組成物C1)、又は酸化物の形態のAl、Ce及びLaに基づき(組成物C2)、以下の割合:- CeOの割合が3.0重量%~35.0重量%であること、- Laの割合(組成物Cについてのみ)が0.1重量%~6.0重量%であること、- Alとしての残部を有し、以下の細孔プロファイル:- 0.35~1.00mL/gである、5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積、及び- 0.15mL/g以下である、100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積であって、これらの細孔容積は、水銀ポロシメトリー法によって決定される、細孔プロファイルと、以下の特性:- 空気中で1100℃において5時間にわたる焼成後、45.0nm未満、好ましくは40.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D1100℃-5hと表される)、- 空気中で900℃において2時間にわたる焼成後、25.0nm未満、好ましくは20.0nm未満、更により好ましくは15.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D900℃-2hと表される)、及び- 30.0nm未満、好ましくは25.0nm未満の結晶子の平均サイズの増加ΔDであって、以下の式:ΔD=D1100℃-2h-D900℃-5hで計算される増加ΔDとを示し、結晶子の平均サイズは、概して28.0~30.0の2Φにおいて存在する、酸化セリウムに対応する立方晶相の回折ピーク[111]からXRDによって得られる、組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
- 酸化物の形態のAl及びCeに基づくか(組成物C1)、又は
- 酸化物の形態のAl、Ce及びLaに基づき(組成物C2)、
以下の割合:
- CeOの割合が3.0重量%~35.0重量%であること、
- Laの割合(組成物C2についてのみ)が0.1重量%~6.0重量%であること、
- Alとしての残部
を有し、以下の細孔プロファイル:
- 0.35~1.00mL/gである、5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積、及び
- 0.15mL/g以下である、100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積
であって、前記細孔容積は、水銀ポロシメトリー法によって決定される、細孔プロファイルと、以下の特性:
- 空気中で1100℃において5時間にわたる焼成後、45.0nm未満、好ましくは40.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D1100℃-5hと表される)、
- 空気中で900℃において2時間にわたる焼成後、25.0nm未満、好ましくは20.0nm未満、更により好ましくは15.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D900℃-2hと表される)、及び
- 30.0nm未満、好ましくは25.0nm未満の前記結晶子の平均サイズの増加ΔDであって、以下の式:ΔD=D1100℃-5h-D900℃-2hで計算される増加ΔD
とを示し、前記結晶子の平均サイズは、概して28.0°~30.0°の2θにおいて存在する、酸化セリウムに対応する立方晶相の回折ピーク[111]からXRDによって得られる、組成物。
【請求項2】
Ce及Alの酸化物からなるか(組成物C1)、又はCe、Al及びLaの酸化物からなる(組成物C2)、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
CeOの割合は、5.0重量%~30.0重量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
CeOの割合は、15.0重量%~25.0重量%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Alの割合は、
- 組成物C1について、65.0重量%~97.0重量%、
- 組成物C2について、59.0重量%~96.9重量%
である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アルミナに基づく結晶相を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
酸化セリウムに基づく結晶相を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
酸化セリウムに基づく前記結晶相は、純粋なCeO又はランタンを含有するCeOに対応する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1100℃-5hは、40.0nm未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
900℃-2hは、25.0nm未満、好ましくは20.0nm未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ΔDは、25nm未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
1100℃-5hは、少なくとも8.0nmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
900℃-2hは、少なくとも5.0nmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の前記細孔容積は、0.40~1.00mL/gである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の前記細孔容積は、0.40~0.80mL/gである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の前記細孔容積は、0.10mL/g以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の前記細孔容積は、0.07mL/g以下である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
以下の細孔プロファイル:
- 0.40~1.00mL/gである、5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積、及び
- 0.07mL/g以下である、100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積
によって規定される、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
80~300m/g、より具体的には90~200m/gのBET比表面積を示す、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
空気中で1100℃において5時間にわたる焼成後、40m/gよりも大きい、好ましくは45m/gよりも大きいBET比表面積を示す、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
空気中で1100℃において5時間にわたる焼成後、厳密に82.35×(Al)+11.157m/g未満のBET比表面積を示し、ここで、(Al)は、前記組成物中のAlの重量%単位での割合に対応する、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
空気中で1200℃において5時間にわたる焼成後、25~60m/gのBET比表面積を示す、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
概して厳密に0.70mL/gより大きい、好ましくは少なくとも0.80mL/g又は更に少なくとも0.90mL/gの全細孔容積を示し、前記全細孔容積は、水銀ポロシメトリー法によって決定される、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
2.50mL/g以下又は更に2.00mL/g以下の全細孔容積を示し、前記全細孔容積は、水銀ポロシメトリー法によって決定される、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
0.35g/cm~0.90g/cmのかさ密度を示す、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
0.40g/cm~0.85g/cmのかさ密度を示す、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
以下の特性:
- 2.0~15.0μmのD50、
- 0.35~0.55g/cmのかさ密度
を示す、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
20.0μm~60.0μmのD90を有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
以下の特性:
- 15.0~80.0μmのD50、
- 0.40~0.90g/cmのかさ密度
を示す、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
40.0μm~150.0μmのD90を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
0.50重量%以下又は更に0.15重量%以下のナトリウム含有量を有し、前記ナトリウム含有量は、前記組成物の総重量に対するNaOの重量として表される、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
50ppm以上のナトリウム含有量を有し、前記ナトリウム含有量は、前記組成物の総重量に対するNaOの重量として表される、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
1.00重量%以下若しくは更に0.50重量%以下又はさもなければ更に0.25重量%以下の硫酸塩含有量を有し、前記硫酸塩含有量は、前記組成物の総重量に対するSOの重量として表される、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
50ppm以上の硫酸塩含有量を有し、前記硫酸塩含有量は、前記組成物の総重量に対するSOの重量として表される、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
触媒組成物であって、
(i)請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物、並びに
(ii)任意選択的に、本発明の前記組成物以外の少なくとも1種の無機材料、及び/又は
(iii)任意選択的に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む触媒組成物。
【請求項36】
(i)請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物、並びに
(ii)本発明の前記組成物以外の少なくとも1種の無機材料、及び
(iii)任意選択的に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む、請求項35に記載の触媒組成物。
【請求項37】
(i)請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物、並びに
(ii)本発明の前記組成物以外の少なくとも1種の無機材料、及び
(iii)少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む、請求項35に記載の触媒組成物。
【請求項38】
前記無機材料(ii)は、ゼオライト、アルミナ系材料、セリア系材料、ジルコニア系材料、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物、アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物並びにそれらの組み合わせからなる群において選択される、請求項35~37のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項39】
前記PGMは、Pt、Pd、Rh及びそれらの組み合わせからなる群において選択される、請求項35~38のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項40】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群において選択される少なくとも1種の元素も含む、請求項35~39のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項41】
車両排気ガスを浄化するために使用される触媒の調製における、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項42】
触媒コンバーターの調製における、請求項35~40のいずれか一項に記載の触媒組成物の使用。
【請求項43】
請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物を調製するプロセスであって、
(a)0.5~4.0又は更に0.5~3.5のpHを有する酸性水溶液を最初から収容しているタンク内に、撹拌しながら、
(a1)- 8.0~10.0又は更に8.5~9.5の反応混合物のpHが得られるまで、アルミン酸ナトリウムの水溶液が導入されるか、又は
(a2)- 6.5~10.0又は更に7.0~8.0若しくは8.5~9.5の反応混合物のpHが得られるまで、同時に、(i)硫酸アルミニウムの水溶液、及び(ii)アルミン酸ナトリウムの水溶液が導入されるか
のいずれかであり、それにより、工程(a)の終了時、前記反応混合物のアルミニウム濃度が0.50重量%~3.0重量%である、工程、
(b)続いて、硫酸アルミニウムの水溶液及びアルミン酸ナトリウムの水溶液が同時に導入される工程であって、その導入速度は、前記反応混合物の平均pHが、工程(a)で目標とされた前記pH範囲内に維持されるようなものであり、工程(a)及び(b)の前記反応混合物の温度は、少なくとも60℃である、工程、
(c)工程(b)の終了時、前記反応混合物の前記pHが任意選択的に7.5~10.5又は更に8.0~9.0若しくは9.0~10.0の値に調整される工程、
(d)その後、前記反応混合物が濾過され、及び回収された固体が洗浄される工程、
(e)工程(d)の完了時に回収された前記固体の水中分散液が、前記分散液の粒子サイズを低減するために機械的処理又は超音波処理を受ける工程、
(f)工程(e)の終了時に得られた前記分散液にセリウムの少なくとも1種の塩が添加される工程、
(g)工程(f)の完了時に得られた前記分散液が乾燥される工程、
(h)その後、工程(g)から得られた固体が空気中で焼成される工程
を含むプロセスにおいて、
- 組成物C1及びC2について、セリウムの少なくとも1種の塩は、工程(f)で添加され、且つ工程(d)前にも添加され得、工程(f)で添加される前記セリウムの塩の割合αは、20%~100%、好ましくは50%~100%であり、αは、以下の式:α=工程(f)で添加される量/添加されるセリウムの合計量×100によって計算され、及び
- 組成物C2について、ランタンの少なくとも1種の塩は、工程(d)前又は工程(f)において添加されることを特徴とするプロセス。
【請求項44】
α=100%である、請求項43に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での焼成後にも大きい比表面積及び小さい結晶子サイズを維持する特定の細孔プロファイルを有する、酸化アルミニウムと、酸化セリウムと、任意選択的に酸化ランタンとの組成物に関する。この組成物は、それが高いかさ密度を有することも特徴とする。本発明は、前記組成物を含む触媒組成物及びその組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
車両排気ガスを浄化するための触媒は、現在、世界中のほとんどの地域(例えば、欧州、米国、日本、中国、韓国、インドなど)で施行されている汚染物質規制を満たすために、ほぼ義務になっている。触媒の機能は、CO、未燃粒子状物質(例えば、すす)、未燃炭化水素(HC)、窒素酸化物NO及びNO(NOと呼ばれる)など、健康及び環境に有害な汚染物質を除去することである。
【0003】
規制は、現在、一層厳しくなっており、近い将来には更に厳格になると見込まれる。欧州のEuro7、米国のSULEV20及び中国のChina6bを参照されたい。触媒は、様々な運転条件で効率的である必要があるため、現在、実際の条件における排出物も欧州と同様にRDE(実路走行排気)制限で規制されており、これは、別の課題を追加することになる。その結果、より一層効率的な触媒を得ることが求められている。
【0004】
TWC触媒
ガソリン車の場合、排出物の制御は、炭化水素、CO及びNOxの量を同時に削減することができる、いわゆる「三元」触媒(TWC)を使用して実現される。天然ガス自動車も、エンジンがストイキモードで動作している場合、一般的にTWC触媒に依存し得る。しかしながら、ガソリンエンジンと同じ課題が予想される。更に、空燃比が広くなると見込まれるため、より大きい酸素貯蔵能(OSC)が必要になるであろう。
【0005】
GPF
いくつかの地域では、ガソリン車にもガソリンパティキュレートフィルター(GPF)が装備されており、その機能は、特に(限定されないが)ガソリン直噴エンジン技術で排出される粒子状物質の放出を減らすことである。GPFは、フィルター上にコーティングされ、且つ粒子状物質を燃焼させるための追加の酸素の要求を促進するために増加したOSCを有するTWC触媒に基づいている。したがって、改善されたOSCを示す触媒が広く必要とされている。
【0006】
DOC及びDPF
ディーゼルエンジについて、ディーゼル酸化触媒(DOC)などのいくつかの触媒を使用して、CO、HCのみならず、ある程度の粒子状物質及びNOxの酸化機能も制御することができる。現在、ディーゼルエンジンにも一般的にディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)が取り付けられており、その機能は、粒子状物質を濾過して燃焼させることである。そのため、酸化機能は、DOC及びDPFにとって重要であり、これは、DPF再生中のすすの酸化による熱応力後に酸化機能を維持するために重要である。ディーゼルエンジンのNOx排出は、NOxとNHとの間の反応を介してNOxを還元する選択的触媒還元(SCR)触媒又はリーンNOxトラップ(LNT)若しくは部分NOx吸収体(PNA)でのNOxトラップ若しくは吸着によって制御される。いずれの場合にも、NOxを効率的に除去するために酸化機能が必要である。
【0007】
上記で開示した触媒は、全ての場合(SCRを除く)において少なくとも1種の貴金属(例えば、Pt、Pd及びRh)、別名白金族金属(又はPGM)の存在も必要とする。Rh及びPdは、通常、Ptよりも高価であるため、現在ではPtの方が一般的に使用される傾向にある。PGMは、価格が高いため、触媒中のPGMの含有量を最小限に抑えることが一般的に求められている。PGM、特にPd及びPtは、アルミナの表面に分散され、酸化セリウムによって安定化されることが知られている。
【0008】
上記で開示された全ての触媒は、PGM(TWC、GPF、DOC、DPF、LNT、PNA)を分散させるために使用されるか、又はSCR触媒(例えば、通常、ゼオライトベースの又は酸化チタンと結び付けられた酸化バナジウム)と混合されるアルミナを含む。これらの全ては、酸素貯蔵能(OSC)を付与するか又は酸化を促進するセリア系材料も含む。熱安定性は、アルミナ及びセリア系材料の両方に要求される。
【0009】
したがって、少なくとも1種のPGMを含有する触媒の調製に使用することができ、OSCを示し、且つ触媒中に存在するPGMの安定化に役立つ耐熱性アルミナに基づく担体が必要とされている。本出願に関連して、「耐熱性」という用語は、高温における熱処理後に大きい比表面積及び/又は小さい粒子サイズを維持することができる担体を特徴付けるために使用される。担体の熱安定性を特徴付ける簡単且つ一般的な方法は、高温の空気中での焼成後にその比表面積を測定することを含む。別の方法は、同じ処理後にX線回折(XRD)によって粒子の粒子サイズを測定することである。「高温」という表現は、使用される触媒の性質によって異なる。一般的に、焼成温度は、ディーゼル触媒(DOC、DPF、LNT又はSCRなど)について最高約900℃であり、ガソリン又は天然ガス触媒(TWC又はGPFなど)について約1100℃、更に場合より約1200℃である。
【0010】
加えて、触媒の調製は、通常、無機材料から構成される触媒組成物の懸濁液を基材又はモノリスの上にコーティングすることを伴う。当然のことながら、低い粘度を示す高濃度懸濁液を使用することが調製にとってより好都合である。したがって、容易に取り扱うことができ、且つ高濃度で低粘度の懸濁液の調製に使用することができる耐熱性担体も必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の組成物は、これらの技術的問題を解決することを目的とする。
【0012】
国際公開第12067654号パンフレットは、アルミニウム及びセリウムの酸化物若しくはアルミニウム及びジルコニウムの酸化物又はアルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物並びに任意選択的に遷移金属、希土類及びそれらの混合物から選択されるドーパントの1種以上の酸化物を含む多孔質無機複合酸化物を開示している。請求項1に記載されているような組成物の開示は、存在しない。
【0013】
米国特許第9,611,774B2号明細書は、酸化物基準で約20%~約80%の範囲の粒子の重量パーセントで存在するセリア相を有するセリア-アルミナ粒子と、セリア-アルミナ粒子上に担持されたアルカリ土類金属成分とを含む触媒組成物を含む触媒であって、CeOは、2%のOと10%の蒸気とを含むN中で950℃において5時間にわたるエージング後、水熱的に安定であり、且つ16nm未満の平均結晶子サイズを有する結晶子の形態で存在する触媒を含む排出物処理システムを開示している。請求項1に記載されているような組成物の開示は、存在しない。
【0014】
(後に修正)
本発明は、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物に関する。この組成物は、2つの主要な実施形態:
- 酸化物の形態のAl及びCeに基づく組成物C1、
- 酸化物の形態のAl、Ce及びLaに基づく組成物C2
によるものであり、以下の割合:
- CeOの割合が3.0重量%~35.0重量%であること、
- Laの割合(組成物C2についてのみ)が0.1重量%~6.0重量%であること、
- Alとしての残部
を有し、及びそれは、以下の細孔プロファイル:
- 0.35~1.00mL/gである、5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積、及び
- 0.15mL/g以下である、100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積
であって、これらの細孔容積は、水銀ポロシメトリー法によって決定される、細孔プロファイルと、以下の特性:
- 空気中で1100℃において5時間にわたる焼成後、45.0nm未満、好ましくは40.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D1100℃-5hと表される)、
- 空気中で900℃において2時間にわたる焼成後、25.0nm未満、好ましくは20.0nm未満、更により好ましくは15.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D900℃-2hと表される)、及び
- 30.0nm未満、好ましくは25.0nm未満の結晶子の平均サイズの増加ΔDであって、以下の式:ΔD=D1100℃-5h-D900℃-2hで計算される増加ΔD
とを示し、結晶子の平均サイズは、概して28.0°~30.0°の2θにおいて存在する、酸化セリウムに対応する立方晶相の回折ピーク[111]からXRDによって得られる。
【0015】
本発明は、請求項35~40のいずれか一項に記載の触媒組成物、請求項41に記載の組成物の使用及び請求項42に記載の触媒組成物の使用にも関する。本発明は、請求項43又は44に記載の組成物を調製するプロセスに関する。
【0016】
ここで、全てのこれらの主題がより詳細に定義される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本特許出願では、本説明の継続のために、特に明記しない限り、与えられる値の範囲において限界値が含まれることが明記される。焼成が空気中で行われることも明記される。「wt%」は、重量%である。
【0018】
本発明に関連して、「粒子」という用語は、一次粒子から形成された凝集体を意味する。粒子サイズは、レーザー粒子サイズ分析計によって得られる粒子サイズの体積分布から決定される。粒子サイズ分布は、パラメータD10、D50及びD90によって特徴付けられる。これらのパラメータは、レーザー回折による測定の分野で通常の意味を有する。したがって、Dxは、粒子のx%が、この値Dx以下のサイズを有する粒子サイズ体積分布に関して決定される値を表す。したがって、D50は、分布のメジアン値に対応する。D90は、粒子の90%がD90未満のサイズを有するサイズに対応する。D10は、粒子の10%がD10未満のサイズを有するサイズに対応する。測定は、通常、粒子の水分散液で行われる。
【0019】
本発明に関連して、希土類元素は、イットリウムを含む族の元素と、57~71の原子番号を有する周期表の元素とを意味する。
【0020】
空隙率データは、水銀ポロシメトリー法によって得られる。この手法により、細孔容積(V)を細孔径(D)の関数として規定することができる。メーカーが推奨する使用説明に従い、粉末針入度計を備えたMicromeritics Autopore 9520を使用することができる。ASTM D4284-07の手順に従うことができる。これらのデータにより、5nm~100nmのサイズの細孔の範囲内の細孔容積(PV5~100nmと表される)、100nm~1000nmのサイズの細孔の範囲内の細孔容積(PV100~1000nmと表される)及び全細孔容積(TPVと表される)を決定することができる。
【0021】
「比表面積」という用語は、Brunauer-Emmett-Teller法により、窒素吸着によって決定されるBET比表面積を意味する。この方法は、定期刊行物“The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)”に記載された。標準ASTM D3663-03の推奨事項に従うことができる。別段の指示がない限り、所定の温度及び所定の時間の焼成は、示された時間にわたる定常温度段階での空気中の焼成に対応する。
【0022】
更に、溶液の濃度又は元素Al、Ce及びLa(存在する場合)の組成の割合は、酸化物当量の重量パーセントとして示されることが明記される。したがって、これらの濃度又は割合の計算のために、以下の酸化物が使用される:AlについてAl、CeについてCeO、LaについてLa。例えば、アルミニウム濃度が2.0重量%である硫酸アルミニウム水溶液は、2.0重量%のAl当量を含む溶液に対応する。同様に、92.0重量%のAl及び8.0重量%のCeを含む組成物は、92.0重量%のAl及び8.0重量%のCeOに対応する。
【0023】
組成物は、酸化物の形態のAl及びCe(組成物C1)又は酸化物の形態のAl、Ce及びLa(組成物C2)に基づく。一実施形態によれば、組成物C1は、Ce及びAlの酸化物からなる。別の実施形態によれば、組成物C2は、Ce、Al及びLaの酸化物からなる。
【0024】
第1に、組成物は、その成分の割合によって規定される。それらの割合は、組成物の総重量に対する重量基準で示される。したがって、組成物C1及びC2について、CeOの割合は、3.0重量%~35.0重量%又は5.0重量%~30.0重量%又は更に6.0重量%~25.0重量%である。この割合は、10.0重量%~25.0重量%又は更に15.0重量%~25.0重量%であり得る。CeOの割合は、20.0重量%未満であり得る。
【0025】
組成物C2について、Laの割合は、0.1重量%~6.0重量%、又は更に0.5重量%~6.0重量%、又は更に1.0重量%~5.0重量%であり、この割合は、組成物の総重量に対するLaの重量として表される。
【0026】
Alの割合は、100%までの残部に対応する。組成物C1について、Alの割合は、65.0重量%~97.0重量%である。組成物C2について、Alの割合は、59.0重量%~96.9重量%である。Alは、組成物の主成分である。
【0027】
次に、組成物は、物理化学的特性間の折り合いよっても規定される。アルミナに基づく製品の熱安定性は、一般的に、その細孔容積に部分的に関連する。全細孔容積を増加させることにより、熱安定性は、一般的に、増加する。しかし、全細孔容積の増加は、通常、かさ密度の大幅な低下をもたらし、水性媒体中の生成物の懸濁液の粘度の増加も引き起こす。特定の空隙率及び高いかさ密度などの特定の特性を組み合わせることにより、粉末として容易に取り扱うことができ、且つ高負荷で低粘度の懸濁液の調製に使用することができる熱的に安定な担体を得ることが可能であることが発見された。したがって、組成物は、以下の細孔プロファイルによって特徴付けられる:
- 0.35~1.00mL/g、より具体的には0.40~1.00mL/g又は更により具体的には0.40~0.80mL/gである、5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積、及び
- 0.15mL/g以下、より具体的には0.10mL/g以下又は更に0.07mL/g以下である、100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積。
【0028】
組成物は、以下の細孔プロファイルによって規定することもできる:
- 0.40~1.00mL/gである、5nm~100nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積、及び
- 0.07mL/g以下である、100nm~1000nmのサイズを有する細孔の範囲の細孔容積。
【0029】
更に、組成物は、大きい比表面積を示し得る。これは、80~300m/g、より具体的には90~200m/gのBET比表面積を有し得る。この比表面積は、100m/g以上であり得る。この比表面積は、100~200m/gであり得る。
【0030】
組成物は、高い熱安定性を更に有する。これは、1空気中で100℃において5時間にわたる焼成後、40m/g~110m/g、好ましくは45m/g~110m/gのBET比表面積を有し得る。この比表面積は、通常、厳密に82.35×(Al)+11.157m/g未満であり、ここで、(Al)は、組成物中のAlの重量%単位での割合に対応する。例として、80.0重量%のAlの割合では、焼成により、82.35×80.0%+11.157=77.037m/gの値になる。
【0031】
組成物は、高い熱安定性を更に有する。これは、空気中で1200℃において5時間にわたる焼成後、25~60m/gのBET比表面積を有し得る。
【0032】
通常、組成物は、通常、厳密に0.70mL/gよりも大きい全細孔容積を有する。この全細孔容積は、有利には、少なくとも0.80mL/g又は更に少なくとも0.90mL/gであり得る。この全細孔容積は、通常、2.50mL/g以下又は更に2.00mL/g以下である。
【0033】
組成物は、0.35g/cm~0.90g/cm、より具体的には0.40g/cm~0.85g/cmのかさ密度を有し得る。粉末のこのかさ密度は、この粉末が占める体積に対する特定の量の粉末の重量に対応する。
かさ密度(g/mL)=(粉末の質量(g))/(粉末の体積(mL))
【0034】
このかさ密度は、以下で説明する方法によって決定することができる。最初に、注ぎ口のない約25mLのメスシリンダーの容積を正確に決定する。これを行うために、空のメスシリンダーの重量を測定する(風袋T)。次いで、蒸留水をメスシリンダーに縁まで注ぐが、縁を超えないようにする(メニスカスなし)。蒸留水で満たしたメスシリンダーを秤量する(M)。その結果、メスシリンダーに入っている水の質量は、以下の通りである。
E=M-T
【0035】
メスシリンダーの校正された体積は、Vメスシリンダー=E/(測定温度での水の密度)に等しい。水の密度は、例えば、20℃の測定温度で0.99983g/mLに等しい。
【0036】
粉末形態の組成物は、シリンダーの縁に到達するまで、漏斗を使用して、空の乾いたメスシリンダー内に慎重に注ぎ入れる。スパチュラを使用して、余分な粉末を平らにする。充填中に粉末を圧縮するか又は突き固めてはならない。その後、粉末を含むメスシリンダーを秤量する。
かさ密度(g/mL)=(アルミナ粉末を含むメスシリンダーの質量-風袋T(g))/(Vメスシリンダー(mL))
【0037】
組成物は、2.0μm~80.0μmのD50を有し得る。これは、150.0μm以下、より具体的には100.0μm以下のD90を有し得る。これは、1.0μm以上のD10を有し得る。
【0038】
組成物が結晶子であることにも留意されたい。これは、X線ディフラクトグラムによって示され得る。組成物は、アルミナに基づく結晶子相を含む。そのような相は、デルタ相、シータ相、ガンマ相又はこれらの相の少なくとも2つの混合であり得る。
【0039】
組成物C2は、好ましくは、ランタンを含む相、特に以下の相LaAlO又はLaAl1118のXRD回折パターンを含まない。これらの最後の2つの相は、国際回折データセンターのそれぞれの参照番号であるICDD 01-070-4111及びICDD 00-033-0699によって識別することができる。
【0040】
組成物は、酸化セリウムに基づく結晶相も含む。この相は、純粋なCeO又はランタンを含むCeOに対応し得る。この相は、28.0°~30.0°の回折線2θを示す。
【0041】
28.0°~30.0°の2θに存在する、酸化セリウムに対応する立方晶相の回折ピーク[111]から結晶子の平均サイズを決定することができる。組成物は、実際に、
- 空気中で1100℃において5時間にわたる焼成後、45.0nm未満、好ましくは40.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D1100℃-5hと表される)、
- 空気中で900℃において2時間にわたる焼成後、25.0nm未満、好ましくは20.0nm未満、更により好ましくは15.0nm未満の結晶子の平均サイズ(D900℃-2hと表される)、及び
- 30.0nm未満、好ましくは25.0nm未満の結晶子の平均サイズの増加ΔDであって、以下の式:ΔD=D1100℃-5h-D900℃-2hで計算される増加ΔD
を示す。
【0042】
平均サイズD1100℃-5hは、通常、少なくとも8.0nmである。同様に、平均サイズD900℃-2hは、通常、少なくとも5.0nmである。
【0043】
結晶子の平均サイズDは、X線回折によって測定される。これは、28.0°~30.0°の回折線2θの幅からScherrerの式を使用して計算されるコヒーレント領域のサイズに対応する。Scherrerの式によれば、Dは、式(I)で与えられる。
【数1】
D:平均結晶子サイズ、
k:0.9に等しい形状係数、
λ(ラムダ):入射ビームの波長(CuKα1光源についてλ=1.5406オングストローム)、
B:最大強度の半分で測定される線の広がり(ラジアン)、
θ:ブラッグ角(ラジアン)
【0044】
通常、Bを決定するために、機器に起因する広がりが考慮される。
【0045】
式(II)において、機器による広がりは、Binstrであり、以下の通りである。
【数2】
D:平均結晶子サイズ、
k:0.9に等しい形状係数、
λ(ラムダ):入射ビームの波長(CuKα1光源についてλ=1.5406オングストローム)、
obs:回折ピークの半値全幅(ラジアン)、
instr:機器の線の広がり(ラジアン)、
θ:ブラッグ角(ラジアン)であり、
instrは、使用する機器及び2θ(シータ)角に依存する。
【0046】
組成物は、通常、粉末形態である。粉末としての組成物は、以下の2つの特定の実施形態に従って特徴付けることができる。
- 第1の実施形態によれば、組成物は、2.0~15.0μm又は更に4.0~12.0μmのD50を有する。D90は、20.0μm~60.0μm又は更に25.0μm~50.0μmであり得る。第1の実施形態によれば、D50が2.0~15.0μmである場合、かさ密度は、0.35~0.55g/cmであり、
- 第2の実施形態によれば、組成物は、15.0~80.0μm又は更に20.0~60.0μmのD50を有する。D90は、40.0μm~150.0μm又は更に50.0μm~100.0μmであり得る。第2の実施形態によれば、D50が15.0~80.0μmである場合、かさ密度は、0.40~0.90g/cmであり得る。
【0047】
D50及びD90は、体積による粒子サイズ分布からレーザー粒子サイズ分析装置によって決定され、測定は、水中の粒子の分散液で行われる。
【0048】
D10は、通常、少なくとも0.5μmである。
【0049】
組成物は、少量の残留成分も含み得る。組成物は、残留ナトリウムを含み得る。残留ナトリウムの含有量は、0.50重量%以下又は更に0.15重量%以下であり得る。ナトリウム含有量は、50ppm以上であり得る。この含有量は、50~900ppm又は更に100~800ppmであり得る。この含有量は、組成物の総重量に対するNaOの重量として表される。したがって、残留ナトリウム含有量が0.15%である組成物について、混合酸化物100gあたり0.15gのNaOが存在すると考えられる。この濃度範囲内のナトリウム含有量を決定する方法は、当業者に公知である。例えば、組成物は、酸性条件で温浸することができ、温浸は、任意選択的に、マイクロ波の支援を受け、組成物が完全に溶解した後、誘導結合プラズマ分光法によって酸性溶液が滴定される。
【0050】
組成物は、残留硫酸塩を含み得る。残留硫酸塩の含有量は、1.00重量%以下若しくは更に0.50重量%以下又はさもなければ更に0.25重量%以下であり得る。硫酸塩含有量は、50ppm以上であり得る。この含有量は、100~2500ppm又は更に400~1000ppmであり得る。この含有量は、組成物の総重量に対する硫酸塩の重量として表される。したがって、残留硫酸塩含有量が0.50%である組成物について、組成物100gあたり0.50gのSOが存在すると考えられる。この濃度範囲内の硫酸塩含有量を決定する方法は、当業者に公知であり、例えばナトリウム滴定と同じ方法を適用することができる。
【0051】
組成物は、ナトリウム及び硫酸塩以外の不純物、例えばケイ素、チタン又は鉄に基づく不純物も含み得る。各不純物の割合は、通常、0.10重量%未満又は更に0.05重量%未満である。
【0052】
組成物の使用
本発明の組成物は、触媒の分野、特に車両排気ガスを浄化するために使用される触媒の調製に使用され得る。本発明による組成物は、その役割が自動車排気ガスを処理することである触媒コンバーターの調製に使用され得る。触媒コンバーターは、組成物から調製され、担体上に堆積した少なくとも1つも触媒活性コーティング層を含む。触媒コンバーターの役割は、化学反応により、排気ガスのある種の汚染物質、特に一酸化炭素、未燃炭化水素及び窒素酸化物を、環境に対して害が少ない生成物に変換することである。
【0053】
本発明の組成物は、触媒組成物の調製のためにも使用され得る。触媒組成物は、通常、
(i)本発明の組成物、並びに
(ii)任意選択的に、本発明の組成物以外の少なくとも1種の無機材料、及び/又は
(iii)任意選択的に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む。
【0054】
一実施形態によれば、触媒組成物は、
(i)本発明の組成物、並びに
(ii)本発明の組成物以外の少なくとも1種の無機材料、及び
(iii)任意選択的に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む。
【0055】
別の実施形態によれば、触媒組成物は、
(i)本発明の組成物、並びに
(ii)本発明の組成物以外の少なくとも1種の無機材料、及び
(iii)少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む。
【0056】
本発明の組成物以外の無機材料は、ゼオライト、アルミナ系材料、セリア系材料、ジルコニア系材料、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物、アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物並びにそれらの組み合わせからなる群において選択される。
【0057】
無機材料は、ゼオライトであり得る。ゼオライトは、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI及びそれらの組み合わせからなる群において選択することができる。ゼオライトは、Cu、Fe、Ce及びそれらの組み合わせなどの少なくとも1種の触媒金属でイオン交換され得る。
【0058】
無機材料は、セリア系材料であり得る。セリア系材料は、酸化セリウム、セリウムと、セリウム以外の少なくとも1種の希土類元素との混合酸化物及びセリウムと少なくとも1種のアルカリ土類元素との複合酸化物からなる群において選択することができる。希土類元素又はアルカリ土類元素の割合は、通常、1.0重量%~30.0重量%であり、この割合は、セリア系材料全体に対する酸化物として表される。セリア系材料の例は、以下の参考文献:欧州特許第1435338号B1明細書、米国特許第8,435,919号明細書、欧州特許第3218307B1号明細書、欧州特許第1435338号明細書に見ることができる。
【0059】
無機材料は、アルミナ系材料であり得る。アルミナ系材料は、アルミナ;ケイ素、ジルコニウム、希土類金属、アルカリ土類金属からなる群において選択される少なくとも1種の元素の酸化物によって安定化されたアルミナ;アルミニウム水和物及びそれらの組み合わせからなる群において選択することができる。アルミナ系材料は、より具体的には、アルミナ又は酸化ランタンによって安定化されたアルミナであり得る。安定化元素の割合は、通常、1.0重量%~10.0重量%であり、この割合は、アルミナ系材料全体に対する酸化物として表される。アルミナ系材料の例は、以下の参考文献:米国特許出願公開第2017/0129781号明細書、米国特許第4,301,037号明細書に見ることができる。
【0060】
無機材料は、ジルコニア系材料であり得る。ジルコニア系材料は、ジルコニア並びにイットリウム、ランタン、プラセオジム、セリウム及びそれらの組み合わせからなる群において選択される元素の少なくとも1種の酸化物によって安定化されたジルコニアからなる群において選択することができる。ジルコニア系材料の例は、以下の参考文献:欧州特許第1735242B1号明細書、欧州特許第1729883B1号明細書及び欧州特許第2646370B1号明細書に見ることができる。
【0061】
無機材料は、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物であり得る。セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物は、セリウム及びジルコニウムの混合酸化物並びにセリウム、ジルコニウム及びセリウム以外の少なくとも1種の希土類元素の混合酸化物の群において選択することができる。セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物の例は、以下の参考文献:欧州特許第1527018B1号明細書、欧州特許第3009403B1号明細書、欧州特許第0863846B1号明細書、欧州特許第2454196B1号明細書、欧州特許第1603667B1号明細書、国際公開第2016037059号パンフレットに見ることができる。
【0062】
無機材料は、アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物であり得る。アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物は、アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの混合酸化物並びにアルミニウム、セリウム、ジルコニウム及びセリウム以外の少なくとも1種の希土類元素の混合酸化物の群において選択することができる。そのような混合酸化物の例は、以下の参考文献:国際公開第2018/115436号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0336864号明細書、米国特許出願公開第2013/0017947号明細書に見ることができる。
【0063】
白金族金属(PGM)は、周期表のVIII族の群において選択される元素である。白金族金属は、より具体的には、Pt、Pd、Rh及びそれらの組み合わせからなる群において選択され得、通常、選択される。
【0064】
触媒組成物は、当業者に公知である当分野の通常の技術によって調製される。例えば、前記触媒組成物を調製するプロセスは、以下の工程を含む:(a)本発明の組成物及び本発明の組成物以外の無機材料を含有する水性媒体中で懸濁液を調製する工程、(b)工程(a)の懸濁液を湿式粉砕する工程、(c)任意選択的に、懸濁液を少なくとも1種のPGMの水溶液と接触させる工程、(d)得られた懸濁液を担体、例えばモノリス又はフィルター上にコーティングする工程、(e)空気中で乾燥及び/又は焼成する工程。代替として、プロセスは、工程(c)を含まず、PGMは、工程(a)前に、インシピエントウェットネス含浸法などの任意の公知の技術によって本発明の組成物上に導入される。
【0065】
このプロセスによる触媒組成物の調製の例は、欧州特許第2969191号明細書の実施例1に対応する。本発明の組成物は、標準的なインシピエントウェットネス技術を使用して硝酸Pd溶液で含浸される。Pd含浸粉末は、脱イオン水中に入れられ、硝酸Pt溶液が添加される。酸の添加によりpHが4まで下げられた後、スラリーは、粉砕され、粉砕されたスラリーは、乾燥され、空気中で450℃において2時間にわたって焼成される。調製の別の例は、欧州特許第3281697号明細書の実施例1に示されている。
【0066】
触媒組成物は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群において選択される少なくとも1種の元素も含み得る。この元素は、通常、酸化物の形態である。この元素は、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属であり得る。この元素は、マグネシウム、バリウム又はストロンチウムなどのアルカリ土類金属であり得る。この元素は、触媒組成物中に様々な形態で存在し得る:
- 一実施形態によれば、これは、本発明の組成物上に存在し、例えばそれに含浸される。含浸プロセスの例は、以下の工程を含む:(a)本発明の組成物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩とを接触させる工程、(b)混合物を乾燥する工程、及び(c)乾燥した混合物を任意選択的に空気中で焼成する工程。調製の例は、米国特許第9,611,774B2号明細書の実施例1に対応し、本発明の組成物は、酢酸バリウム溶液で含浸され、この混合物は、110℃で乾燥され、720℃で2時間にわたって焼成され、
- 別の実施形態によれば、これは、本発明の組成物以外の無機材料中に存在し得る。典型的には、これは、アルミナ系材料又はセリア系材料中に存在する。
【0067】
例として、限定するものではないが、触媒組成物の例を以下に示す:
- 本発明の組成物;セリウム、ジルコニウム及び少なくとも1種の希土類元素の少なくとも1種の混合酸化物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のPGM、例えば白金+パラジウム+ロジウムの組み合わせを含む、TWC又はGPF触媒として使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;アルミニウム、セリウム、ジルコニウム及びセリウム以外の少なくとも1種の希土類元素の少なくとも1種の混合酸化物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のPGM、例えばパラジウム+ロジウムの組み合わせを含む、TWC又はGPF触媒として使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;セリウム、ジルコニウム及び少なくとも1種の希土類元素の少なくとも1種の混合酸化物;少なくとも1種のPGM、例えばパラジウム+ロジウムの組み合わせを含む、TWC又はGPF触媒として使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のゼオライト;少なくとも1種のPGM、例えば白金+パラジウムの組み合わせを含む、DOCとして使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;少なくとも1種のゼオライト;少なくとも1種のPGM、例えば白金+パラジウムの組み合わせを含む、DOCとして使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のPGM、例えば白金を含む、DPFとして使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;酸化銅又は酸化鉄を含む少なくとも1種のゼオライト;べーマイトを含む、SCRとして使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;セリウムとバリウムとの少なくとも1種の複合酸化物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のPGM、例えば白金+パラジウムの組み合わせを含む、LNTとして使用され得る触媒組成物、
- 本発明の組成物;セリウムとバリウムとの少なくとも1種の複合酸化物;少なくとも1種のPGM、例えば白金+パラジウムの組み合わせを含む、LNTとして使用され得る触媒組成物。
【0068】
調製プロセス
本発明は、本発明の組成物を調製するプロセスであって、
(a)0.5~4.0又は更に0.5~3.5のpHを有する酸性水溶液を最初から収容しているタンク内に、撹拌しながら、
(a1)- 8.0~10.0又は更に8.5~9.5の反応混合物のpHが得られるまで、アルミン酸ナトリウムの水溶液が導入されるか、又は
(a2)- 6.5~10.0又は更に7.0~8.0若しくは8.5~9.5の反応混合物のpHが得られるまで、同時に、(i)硫酸アルミニウムの水溶液、及び(ii)アルミン酸ナトリウムの水溶液が導入されるか
のいずれかであり、それにより、工程(a)の終了時、反応混合物のアルミニウム濃度が0.50重量%~3.0重量%である、工程、
(b)続いて、硫酸アルミニウムの水溶液及びアルミン酸ナトリウムの水溶液が同時に導入される工程であって、その導入速度は、反応混合物の平均pHが、工程(a)で目標とされたpH範囲内に維持されるようなものであり、工程(a)及び(b)の反応混合物の温度は、少なくとも60℃である、工程、
(c)工程(b)の終了時、反応混合物のpHが任意選択的に7.5~10.5又は更に8.0~9.0若しくは9.0~10.0の値に調整される工程、
(d)その後、反応混合物が濾過され、及び回収された固体が洗浄される工程、
(e)工程(d)の完了時に回収された固体の水中分散液が、分散液の粒子サイズを低減するために機械的処理又は超音波処理を受ける工程、
(f)工程(e)の終了時に得られた分散液にセリウムの少なくとも1種の塩が添加される工程、
(g)工程(f)の完了時に得られた分散液が乾燥される工程、
(h)その後、工程(g)から得られた固体が空気中で焼成される工程
を含むプロセスにおいて、
- 組成物C1及びC2について、セリウムの少なくとも1種の塩は、工程(f)で添加され、且つ工程(d)前にも添加され得、工程(f)で添加されるセリウムの塩の割合αは、20%~100%、好ましくは50%~100%であり、αは、以下の式:α=工程(f)で添加される量/添加されるセリウムの合計量×100によって計算され、及び
- 組成物C2について、ランタンの少なくとも1種の塩は、工程(d)前又は工程(f)において添加されることを特徴とするプロセスにも関する。
【0069】
工程(a)
工程(a)では、0.5~4.0又は更に0.5~3.5のpHを有する酸性水溶液を最初から収容しているタンク内に、撹拌しながら、
(a1)- 8.0~10.0又は更に8.5~9.5の反応混合物のpHが得られるまで、アルミン酸ナトリウムの水溶液が導入されるか、又は
(a2)- 6.5~10.0又は更に7.0~8.0若しくは8.5~9.5の反応混合物のpHが得られるまで、同時に、(i)硫酸アルミニウムの水溶液、及び(ii)アルミン酸ナトリウムの水溶液が導入されるか
のいずれかであり、それにより、工程(a)の終了時、反応混合物のアルミニウム濃度は、0.50重量%~3.0重量%である。
【0070】
タンク内に最初から収容されている酸性水溶液のpHは、0.5~4.0又は更に0.5~3.5である。この溶液は、鉱酸、例えば硫酸、塩酸又は硝酸の希薄水溶液からなり得る。
【0071】
酸性水溶液は、アルミニウムの硝酸塩、塩化物又は硫酸塩などの酸性アルミニウム塩の水溶液からなり得る。好ましくは、この溶液のアルミニウム濃度は、0.01重量%~2.0重量%若しくは更に0.01重量%~1.0重量%又はさもなければ更に0.10重量%~1.0重量%である。好ましくは、酸性水溶液は、硫酸アルミニウムの水溶液である。この溶液は、硫酸アルミニウムを水に溶解するか、予め形成された水溶液を水で希釈することによって調製される。硫酸アルミニウムの存在によって得られる水溶液のpHは、通常、0.5~4.0又は更に0.5~3.5である。
【0072】
工程(a)は、2つの実施形態(a1)又は(a2)に従って行われる。実施形態(a1)によれば、アルミン酸ナトリウムの水溶液が撹拌しながら導入される。実施形態(a2)によれば、(i)硫酸アルミニウムの水溶液、及び(ii)アルミン酸ナトリウムの水溶液が撹拌しながら同時に導入される。
【0073】
好ましくは、アルミン酸ナトリウムの水溶液は、析出したアルミナを含まない。アルミン酸ナトリウムは、好ましくは、1.20以上、例えば1.20~1.40のNaO/Al比を有する。
【0074】
アルミン酸ナトリウムの水溶液は、15.0重量%~35.0重量%、より具体的には15.0重量%~30.0重量%又は更に20.0重量%~30.0重量%のアルミニウム濃度を有し得る。硫酸アルミニウムの水溶液は、1.0重量%~15.0重量%、より具体的には5.0重量%~10.0重量%のアルミニウム濃度を有し得る。
【0075】
工程(a)の完了時、反応混合物のアルミニウム濃度は、0.50重量%~3.0重量%である。
【0076】
この工程(a)では、溶液の導入時間は、通常、2分~30分である。
【0077】
工程(a)において、アルミン酸ナトリウムの水溶液の導入は、反応混合物のpHを上げる効果を有する。
【0078】
特に実施形態(a1)では、アルミン酸ナトリウムの水溶液は、例えば、少なくとも1本の導入カニューレから反応媒体に直接導入することができる。特に実施形態(a2)では、2つの溶液は、例えば、少なくとも2本の導入カニューレから反応媒体に直接導入することができる。これらの2つの実施形態(a1)及び(a2)では、導入された溶液を反応混合物中に効率的に混合するために、溶液は、好ましくは、反応器の十分に撹拌されたゾーン、例えば撹拌ローターに近いゾーンに導入される。実施形態(a2)では、溶液が少なくとも2本の導入カニューレから導入される場合、2つの溶液が反応混合物に導入される注入場所は、溶液が前記混合物中で効率的に希釈されるように分配される。したがって、例えば、反応混合物への溶液の注入場所が正反対になるように、2本のカニューレをタンク内に配置することができる。
【0079】
工程(b)
工程(b)では、硫酸アルミニウムの水溶液及びアルミン酸ナトリウムの水溶液が同時に導入され、この溶液の導入速度は、反応混合物の平均pHを、工程(a)で目標とされたpH範囲内に維持するように調節される。したがって、平均pHの目標値は、
- 工程(a)で実施形態(a1)に従った場合、8.0~10.0又は更に8.5~9.5、又は
- 工程(a)で実施形態(a2)に従った場合、6.5~10.0又は更に7.0~8.0若しくは8.5~9.5
である。
【0080】
「平均pH」という用語は、工程(b)中に連続的に記録される反応混合物のpH値の算術平均を意味する。
【0081】
好ましくは、アルミン酸ナトリウムの水溶液は、反応混合物の平均pHが目標値に等しくなるように調節される流量で硫酸アルミニウムの水溶液と同時に導入される。pHを調節するのに役立つアルミン酸ナトリウムの水溶液の流量は、工程(b)の過程で変動し得る。
【0082】
2つの溶液の導入時間は、10分~2時間又は更に30分~90分であり得る。溶液又は2つの溶液の導入の流量は、一定であり得る。
【0083】
工程(a)及び(b)の反応混合物の温度は、少なくとも60℃である必要がある。この温度は、60℃~95℃であり得る。このようにするために、工程(a)でタンクに最初に含まれる溶液は、溶液の導入を開始する前に予熱することができる。工程(a)及び(b)でタンクに導入される溶液は、予め予熱することもできる。
【0084】
工程(c)
工程(c)において、反応混合物のpHは、塩基性又は酸性水溶液を添加することにより、任意選択的に7.5~10.5又は更に8.0~9.0若しくは9.0~10.0の値に調整される。
【0085】
pHを調整するために使用され得る酸性水溶液は、鉱酸、例えば硫酸、塩酸又は硝酸の水溶液からなり得る。酸性水溶液は、アルミニウムの硝酸塩、塩化物又は硫酸塩などの酸性アルミニウム塩の水溶液からなり得る。
【0086】
pHを調整するために使用され得る塩基性水溶液は、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はアンモニア水溶液からなり得る。塩基性水溶液は、アルミン酸ナトリウムなどの塩基性アルミニウム塩の水溶液からなり得る。好ましくは、アルミン酸ナトリウムの水溶液が使用される。
【0087】
好ましくは、pHは、以下を停止することによって調整される:
(c1)- 硫酸塩水溶液の導入及びアルミン酸ナトリウムの水溶液の導入を目標pHに到達するまで継続すること、又は代わりに、
(c2)- アルミン酸ナトリウム水溶液の導入及び硫酸アルミニウム水溶液の導入を目標pHに到達するまで継続すること。
【0088】
一実施形態によれば、硫酸アルミニウムの水溶液の導入が停止され、アルミン酸ナトリウムの水溶液の導入は、8.0~10.5、好ましくは9.0~10.0の目標pHに到達するまで継続される。工程(c)の継続時間は、可変であり得る。この継続時間は、5分~30時間であり得る。
【0089】
工程(d)
工程(d)では、反応混合物が濾過される。反応混合物は、通常、スラリーの形態である。フィルター上に回収された固体は、水で洗浄され得る。これを行うために、少なくとも50℃の温度を有する温水を使用することができる。
【0090】
工程(e)
工程(e)では、工程(d)の完了時に回収された固体の水中の分散液は、分散液の粒子サイズを小さくするために機械的処理又は超音波処理を受ける。粉砕前のこの分散液のpHは、任意選択的に、5.0~8.0に調整することができる。これを行うために、例えば硝酸溶液を使用することができる。
【0091】
機械的処理又は超音波処理前の分散液の粒子のD50は、通常、10.0μm~40.0μm又は更に10.0μm~30.0μmである。機械的処理又は超音波処理後の固体の粒子のD50は、好ましくは、1.0μm~15.0μm又は更に2.0μm~10.0μmである。
【0092】
機械的処理は、粒子を分割するために、分散液に機械的応力又は剪断力を加えることを含む。機械的処理は、例えば、ボールミル、高圧ホモジナイザー又はローターとステーターとを含む粉砕系などにより行うことができる。実験室スケールでは、Microcer又はLabstar Zetaボールミルを使用することができ、これらの両方は、Netzsch社から販売されている(詳細については、https://www.netzsch-grinding.com/fr/produits-solutions/broyage-humide/broyeurs-de-laboratoire-serie-mini/を参照されたい)。実施例に記載されている粉砕系を使用することができる。ボールミルについて、例えば、イットリウムで安定化された酸化ジルコニウムビーズを使用することができる。例えば、ZetaBeads Plus0.2mmボールを使用することができる。
【0093】
超音波処理は、少なくとも一部には、分散液に音波を照射することを含む。液体媒体を通して伝播する音波は、キャビテーション現象を誘発し、これにより粒子を分割することができる。実験室スケールでは、13mmのプローブを備えたSonics Vibracell VC750ジェネレーターを備えた超音波システムを使用することができる。継続時間及び供給される電力は、目標のD50を達成するように調整される。
【0094】
機械的処理又は超音波処理は、バッチモードで又は連続的に行うことができる。
【0095】
工程(f):
工程(f)では、セリウムの少なくとも1種の塩は、工程(e)の終了時に得られた分散液に添加される。この工程において、アンモニア水溶液を添加して、pHを好ましくは5.0~8.0の値に上げることも想定することができる。セリウムの塩は、塩化セリウム、酢酸セリウム及び硝酸セリウムからなる群において選択することができる。セリウムの塩は、好ましくは、Ce(III)の塩である。
【0096】
セリウムの塩は、工程(d)前に、例えば工程(a)において、例えば硫酸アルミニウムを含む溶液中に添加され得る。工程(f)で添加されるセリウムの塩の割合αは、20%~100%、好ましくは50%~100%であり、αは、以下の式:α=工程(f)で添加される量/添加されるセリウムの合計量×100によって計算される。好ましくは、α=100%であり、これは、セリウムの塩が、工程(e)の終了時に得られる分散液に工程(f)でのみ添加されることを意味する。
【0097】
組成物C2について、工程(d)前又は工程(f)において、工程(e)の終了時に得られる分散液にランタンの少なくとも1種の塩が添加され得る。
【0098】
セリウム及びランタンの塩は、水溶液の形態で導入することが好都合である。
【0099】
工程(g)
工程(g)において、工程(f)からの分散液は、好ましくは、噴霧によって乾燥される。
【0100】
噴霧乾燥は、制御された粒子サイズ分布を有する粒子を与えるという利点を有する。この乾燥方法は、優れた生産効率も提供する。これは、チャンバー内を循環する高温ガスの流れ(例えば、熱風の流れ)内の液滴のミストとして分散液を噴霧することを含む。噴霧の品質は、液滴のサイズ分布を制御し、その結果、乾燥粒子のサイズ分布を制御する。噴霧は、それ自体公知の任意の噴霧装置を使用して行うことができる。噴霧装置には、タービン及びノズルの2つの主なタイプが存在する。本プロセスにおいて実施され得る様々な噴霧技術に関して、「Spray-Drying」という名称のMastersによる標準マニュアル(second edition,1976,published by George Godwin,London)を特に参照することができる。当業者が変更することができる運転パラメータは、特に、噴霧装置に入る分散液の流量及び温度、高温ガスの流量、圧力、湿度及び温度である。ガスの入口温度は、通常、100℃~800℃である。ガスの出口温度は、通常、80℃~150℃である。
【0101】
工程(g)の完了時に回収される粉末のD50は、通常、2.0μm~80.0μmである。このサイズは、噴霧装置を出る液滴のサイズ分布に関連する。噴霧器の蒸発能力は、通常、チャンバーのサイズに関連する。したがって、実験室スケール(Buechi B 290)では、D50は、2.0~15.0μmであり得る。より大きいスケールでは、D50は、15.0~80.0μmであり得る。
【0102】
工程(h)
工程(h)では、工程(g)から得られた固体は、空気中で焼成される。焼成は、前の工程で添加された成分を酸化物に変換し、組成物の結晶性を向上させることを目的とする。焼成温度は、通常、500℃~1000℃、より具体的には800℃~1000℃である。焼成時間は、通常、1時間~10時間である。
【0103】
焼成温度が高すぎると、比表面積及び平均結晶子サイズの両方に影響があることを考慮して、焼成温度と焼成時間との間のバランスを、成分を酸化物に変換して組成物の結晶性を向上させるように調整する必要がある。実施例1で示される焼成条件は、そのような優れたバランスを提供するため、使用することができる。
【0104】
工程(f)から得られた分散液が乾燥及び焼成の両方を行うための熱処理を受ける同じ装置において、2つの工程(g)及び(h)が行われることが想定され得る。
【0105】
好ましくは、工程(h)の完了時(すなわち焼成の終了時)に回収される混合酸化物は、通常、2.0μm~80.0μmのD50を有する。これは、通常、150.0μm以下、より具体的には100.0μm以下のD90を有する。
【0106】
第1の実施形態によれば、工程(h)の終了時、D50は、2.0~15.0μm又は更に4.0~12.0μmであり得る。D90は、20.0μm~60.0μm又は更に25.0μm~50.0μmであり得る。この実施形態は、むしろ工程(f)が例えばBuechi B290噴霧装置を使用して実験室スケールで行われる場合に行われ得る。
【0107】
第2の実施形態によれば、工程(h)の終了時、D50は、15.0~80.0μm又は更に20.0~60.0μmであり得る。D90は、40.0μm~150.0μm又は更に50.0μm~100.0μmであり得る。この実施形態は、むしろ工程(f)がより大きいスケールで行われる場合に行われ得る。
【0108】
プロセスは、固体の粒子サイズを調整するために、前の工程で得られた固体を粉砕する最終工程も含み得る。ナイフミル、エアジェットミル、ハンマーミル又はボールミルを使用することができる。好ましくは、粉砕された製品は、通常、2.0μm~15.0μmのD50を有する。D90は、20.0μm~60.0μm又は更に25.0μm~50.0μmであり得る。
【0109】
本発明の組成物は、粉末の形態である。
【0110】
本発明の組成物の調製に関する更なる詳細は、以下の例示的な実施例で見られるであろう。
【実施例
【0111】
比表面積の測定:
本説明の継続のために、用語「比表面積」は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法から確立された標準ASTM D 3663-03に従って窒素吸着によって測定されるBET比表面積を意味する。比表面積は、例えば、MicromeriticsのTristar II 3020装置を使用して、メーカーが推奨する使用説明に従って自動的に決定する。サンプルは、真空下において(例えば50mmHgの圧力に到達するまで)250℃で90分間前処理する。この処理により、表面に物理吸着した揮発性化学種(例えば、HOなど)を除去することができる。
【0112】
水銀による空隙率の測定(Hgポロシメトリー)
測定は、水銀ポロシメトリー装置を使用して行う。この場合、メーカーが推奨する使用説明に従い、粉末針入度計を備えたMicromeritics Autopore IV 9520装置を使用した。以下のパラメータを使用した:使用した針入度計:3.2ml(Micromeriticsのリファレンス:針入度計タイプNo.8)、キャピラリー容積:0.412ml、最大圧力(「ヘッド圧力」):4.68psi、接触角:130°、水銀の表面張力:485ダイン/cm、水銀の密度:13.5335g/ml。測定の開始時、50mmHgの減圧が5分間サンプルにかけられる。平衡時間は、以下の通りである:低圧範囲(1.3~30psi):20秒-高圧範囲、(30~60000psi):20秒。測定前に、表面に物理吸着した揮発性化学種(例えば、HOなど)を除去するために、サンプルを200℃で120分間処理する。この測定から細孔容積を推定することができる。
【0113】
X線回折:銅線源(CuKα1、λ=1.5406オングストローム)を備えたX線回折計X’Pert Proを使用した。
【0114】
粒子サイズの測定(D10、D50、D90)
粒子サイズ測定を行うために、Malvern Mastersizer 2000又は3000レーザー回折粒子サイズ分析計を使用する(この装置に関する詳細は、https://www.malvernpanalytical.com/fr/products/product-range/mastersizer-range/mastersizer-3000に記載されている)。使用されるレーザー回折技術は、分散粒子のサンプルをレーザー光線が通過する間に散乱される光の強度を測定することを含む。レーザー光線がサンプルを通過し、散乱光の強度が角度の関数として測定される。その後、ミー散乱理論を使用して粒子サイズを計算するために、回折強度が解析される。測定により、体積に基づくサイズ分布を得ることができ、そこからパラメータD10、D50及びD90が推定される。
【0115】
実施例1:実施形態(a1)による、α=100%である、本発明による酸化アルミニウム及び酸化セリウムの組成物(80重量%のAl-20重量%のCeO)の調製
撹拌されている反応器内に157kgの脱イオン水を入れ、85℃に加熱する。この温度を、工程(a)~(c)を通して維持する。8.3重量%のアルミナ(Al)の濃度を有する13.8kgの硫酸アルミニウム溶液を、撹拌ローターに近い導入カニューレから920gの溶液/分の流量で導入する。導入完了時、反応器中のpHは、2.6付近であり、アルミニウム濃度は、0.7重量%のアルミナ(Al)である。その後、硫酸アルミニウム溶液の導入を停止する。
【0116】
工程(a):24.9重量%のアルミナ(Al)の濃度を有し、NaO/Alモル比が1.27であるアルミン酸ナトリウム溶液を690gの溶液/分の流量において、撹拌ローター近くの2本目の導入カニューレから、9.0のpHに到達するまで導入する。その後、導入を停止する。この際、反応混合物のアルミニウム濃度は、2.10重量%のアルミナ(Al)である。
【0117】
工程(b)では、硫酸アルミニウム溶液の導入が570gの溶液/分の流量で再び開始され、アルミン酸ナトリウム溶液は、9.0の値でpHを維持するように調整された流量において、撹拌されている反応器に同時に導入される。この工程を45分間継続する。
【0118】
工程(c)では、硫酸アルミニウム溶液の導入を停止し、アルミン酸ナトリウム溶液の添加を、pH9.5に到達するまで320gの溶液/分の流量で継続する。アルミン酸ナトリウム溶液の添加を停止する。
【0119】
工程(d)では、反応スラリーを真空フィルターに注ぐ。濾過工程の終了時、ケーキを65℃の脱イオン水で洗浄する。
【0120】
工程(e)では、ケーキを脱イオン水中に再分散させて、約9重量%の濃度の酸化物(Al)を有する懸濁液を得る。69重量%の濃度の硝酸溶液を懸濁液に添加して、6付近のpHを得る。懸濁液をメーカーNetzschのLME20ブランドのボールミルに通す。ミルの運転条件は、5ミクロンのD50が得られるように調整する。
【0121】
工程(f)では、約29重量%の酸化物(CeO)の濃度で硝酸セリウム溶液を調製する。20重量%のCeO/(CeO+Al)の質量比が得られるように、この溶液を、工程(e)から得られた懸濁液に撹拌しながら添加する。
【0122】
工程(g)では、工程(f)から得られた懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末を得る。
【0123】
工程(h)では、噴霧乾燥された粉末を空気中で940℃において2時間にわたって焼成する(3℃/分の昇温速度)。この焼成中に観察された質量の減少は、47重量%である。
【0124】
実施例2:実施形態(a1)による、α=60%である、本発明による酸化アルミニウム及び酸化セリウムの組成物(80重量%のAl-20重量%のCeO)の調製
撹拌されている反応器内に157kgの脱イオン水を入れ、85℃に加熱する。この温度を、工程(a)~(c)を通して維持する。8.3重量%のアルミナ(Al)の濃度を有する36.3kgの硫酸アルミニウム溶液と、29.0重量%のセリア(CeO)の濃度を有する3.2kgの硝酸セリウム溶液とからなる酸混合物を調製する。
【0125】
13.8kgの酸混合物を、撹拌ローターに近い導入カニューレから920gの溶液/分の流量で導入する。導入完了時、反応器中のpHは、2.6付近であり、アルミニウム濃度は、0.62重量%のアルミナ(Al)である。その後、酸混合物の導入を停止する。
【0126】
工程(a):24.9重量%のアルミナ(Al)の濃度を有し、NaO/Alモル比が1.27であるアルミン酸ナトリウム溶液を690gの溶液/分の流量において、撹拌ローター近くの2本目の導入カニューレから、9.0のpHに到達するまで導入する。その後、導入を停止する。
【0127】
工程(b)では、酸混合物の導入が570gの溶液/分の流量で再び開始され、アルミン酸ナトリウム溶液は、9.0の値でpHを維持するように調整された流量において、撹拌されている反応器に同時に導入される。この工程を45分間継続する。
【0128】
工程(c)では、酸混合物の導入を停止し、アルミン酸ナトリウム溶液の添加を、pH9.5に到達するまで320gの溶液/分の流量で継続する。アルミン酸ナトリウム溶液の添加を停止する。
【0129】
工程(d)では、反応スラリーを真空フィルターに注ぐ。濾過工程の完了後、ケーキを65℃の脱イオン水で洗浄する。
【0130】
工程(e)では、ケーキを脱イオン水中に再分散させて、約9重量%の濃度の酸化物(Al)を有する懸濁液を得る。69重量%の濃度の硝酸溶液を懸濁液に添加して、6付近のpHを得る。懸濁液をメーカーNetzschのLME20ブランドのボールミルに通す。ミルの運転条件は、5.1ミクロンのD50が得られるように調整する。
【0131】
工程(f)では、約29重量%の酸化物(CeO)の濃度で硝酸セリウム溶液を調製する。20重量%のCeO/(CeO+Al)の質量比が得られるように、この溶液を、工程(e)から得られた懸濁液に撹拌しながら添加する。
【0132】
工程(g)では、工程(f)から得られた懸濁液を噴霧乾燥して、乾燥粉末を得る。
【0133】
工程(h)では、噴霧乾燥された粉末を空気中で940℃において2時間にわたって焼成する(3℃/分の昇温速度)。
【0134】
比較実施例3:α=0%である、20%の酸化セリウムを含有する、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの組成物(80重量%のAl-20重量%のCeO)の調製
撹拌されている反応器内に157kgの脱イオン水を入れ、85℃に加熱する。この温度を、工程(a)~(c)を通して維持する。8.3重量%のアルミナ(Al)の濃度を有する31.6kgの硫酸アルミニウム溶液と、29.0重量%のセリア(CeO)の濃度を有する7.9kgの硝酸セリウム溶液とからなる酸混合物を調製する。
【0135】
13.8kgの酸混合物を、撹拌ローターに近い導入カニューレから920gの溶液/分の流量で導入する。導入完了時、反応器中のpHは、2.7付近であり、アルミニウム濃度は、0.54重量%のアルミナ(Al)である。その後、酸混合物の導入を停止する。
【0136】
工程(a):24.9重量%のアルミナ(Al)の濃度を有し、NaO/Alモル比が1.27であるアルミン酸ナトリウム溶液を690gの溶液/分の流量において、撹拌ローター近くの2本目の導入カニューレから、9.0のpHに到達するまで導入する。その後、導入を停止する。この際、反応混合物のアルミニウム濃度は、1.60重量%のアルミナ(Al)であある。
【0137】
工程(b)では、酸混合物の導入が570gの溶液/分の流量で再び開始され、アルミン酸ナトリウム溶液は、9.0の値でpHを維持するように調整された流量において、撹拌されている反応器に同時に導入される。この工程を45分間継続する。
【0138】
工程(c)では、酸混合物の導入を停止し、アルミン酸ナトリウム溶液の添加を、pH9.5に到達するまで320gの溶液/分の流量で継続する。アルミン酸ナトリウム溶液の添加を停止する。
【0139】
工程(d)では、反応スラリーを真空フィルターに注ぐ。濾過完了後、ケーキを65℃の脱イオン水で洗浄する。
【0140】
工程(e)では、ケーキを脱イオン水中に再分散させて、約9重量%の濃度の酸化物(Al)を有する分散液を得る。69重量%の濃度の硝酸溶液を懸濁液に添加して、6付近のpHを得る。懸濁液をメーカーNetzschのLME20ブランドのボールミルに通す。ミルの運転条件は、5.4ミクロンのD50が得られるように調整する。
【0141】
次の工程では、工程(e)から得られた懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末を得る。
【0142】
次の工程では、噴霧乾燥した粉末を空気中940℃で2時間焼成する(3℃/分の昇温速度)。この焼成中に観察された質量の減少は、46.3重量%である。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
見られるように、本発明のプロセスにより、900℃及び1100℃で小さい結晶子サイズの組成物を得ることが可能になる。
【国際調査報告】