(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】微生物感染症の局所的処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/14 20170101AFI20240514BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240514BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240514BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K47/14
A61K45/00
A61P31/00
A61P43/00 121
A61K45/06
A61P29/00
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/22
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573057
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022030871
(87)【国際公開番号】W WO2022251321
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444039
【氏名又は名称】ヘネピン ライフ サイエンシズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン マーニー エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュリーベルト パトリック エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC31
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD46A
4C076DD49
4C076DD59
4C076EE23
4C076EE32
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA27
4C084MA63
4C084NA05
4C084ZA89
4C084ZB11
4C084ZB32
(57)【要約】
本開示は、感染症の局所処置のための組成物および方法を提供する。本組成物は、必要とされるゲルと組み合わせたグリセロールモノラウレートを含み、かつ、例えば、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、または原虫感染症を処置するために、局所的に投与される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル中に5~30%のGMLを含み、前記GMLおよびゲルが生物学的活性組成物を含む、組成物。
【請求項2】
非水性ゲル中に5~30%のGMLを含み、前記非水性ゲルが、プロピレングリコール、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリソルベート20および80、ポリオキシル35ひまし油、オクチルドデカノール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール400、ならびにヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシエチルセルロースまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの両方が、最大約5% w/wの濃度で使用される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
抗微生物活性を増強する作用物質をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
EDTAを含むか、または7.0より低いpHを有する、請求項4記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年5月26日に出願された米国仮特許出願第63/193,331号の恩典を主張し、その開示の全体を参照により本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
背景
一部の微生物病原体は、無傷のまたは損傷した粘膜および皮膚表面からヒト疾患を引き起こす。これらの病原体の多くは、他のヒトもしくは動物から、内部源から、または様々な環境源から獲得される。ヒトにおいて、病原体は主に、多糖、タンパク質、および核酸の複雑なネットワークを通じて宿主組織、医療機器、および他の微生物に付着した有機物の薄いフィルムと定義される、有機物のバイオフィルムとして表面に定着する。これらの微生物はまた、一部の宿主組織環境、例えば血流および粘膜分泌物において浮遊(ブロス)培養物として存在し得る。同様に、これらの潜在的病原体は、様々な非生物環境においてバイオフィルムまたは浮遊培養物のいずれかとして存在し得る。
【0003】
グリセロールモノラウレート(GML)は、抗微生物特性および抗炎症特性を有することが以前に示されている天然に存在するグリセロールベースの化合物である。本開示は、様々な微生物感染症および1つまたは複数の微生物感染症に起因する疾病の処置のための新規の必要とされるGML組成物および方法を提供する。本開示の基礎は、GMLは単独では1つまたは複数の微生物感染症に対して効果的でないが、本開示などにおいて新規の組成物が作製された場合には強く抗微生物性および抗炎症性となるという点にある。したがって、本願は、GMLに加えて他の作用物質を必要とする、組成物に基づいている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の概要
ヒトおよび他の脊椎動物の皮膚および粘膜表面におけるヒトに忍容される使用に適する状態にされた抗微生物化合物を適用するために、シンプルでかつ十分に忍容される組成物、例えばこの新規のGML組成物が必要とされる。本開示はこれに取り組むものである。
【0005】
1つの態様において、本開示は、GMLと適切なヒトに忍容される活性化因子とを含む組成物に指向しており、新規の必要とされる組成物をもたらす。この作用物質の組み合わせが有効性に必要となる。1つの態様では、適用は、適切な非水性ベースの活性化物質と混合されたGMLの使用である。1つの態様において、GMLは、約50 mg/ml~350 mg/ml(5%~35%)の濃度で組成物中に存在する。組み合わせたGMLおよび活性化物質はさらに、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシエチルセルロースのいずれか、またはそれらの組み合わせを含む。さらなる態様において、セルロース誘導体は最大5% w/wで組成物中に存在する。
【0006】
別の態様において、本開示は、GMLと必要とされる活性化ゲルとを含む組成物に指向している。1つの態様において、GMLまたはその誘導体と非水性ゲルとを含む組成物は、活性を増大させるよう約4.0~約6.0のpHを有する。1つの態様において、必要とされる活性化ゲルは、プロピレングリコール、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリソルベート20および80、ポリオキシル35ひまし油、オクチルドデカノール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール400、ならびにヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシエチルセルロースまたはそれらの組み合わせを含む。1つの態様において、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの両方が、各々最大5% w/wの濃度で組成物中に存在する。
【0007】
1つの態様において、本明細書に提供される必要とされるGML組成物は、約5~16%(w/w)の濃度のプロピレングリコール、約4~6%(w/w)の濃度のエチルアルコール、約14~16%(w/w)の濃度のジエチレングリコールモノエチルエーテル、約4~6%(w/w)の濃度のポリソルベート20、約4~6%(w/w)の濃度のポリソルベート80、約4~6%(w/w)の濃度のポリオキシル35ひまし油、約5~15%の濃度のオクチルドデカノール、約5~15%(w/w)の濃度のジメチルイソソルビド、約5~15%の濃度のポリエチレングリコール400、および最大約5%(w/w)の濃度のヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースを含む。
【0008】
1つの態様において、本組成物はセルロース誘導体を含む。さらなる態様において、本組成物はヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースを含む。なおさらなる態様において、セルロースは最大約5.0%(w/w)の濃度で存在する。
【0009】
1つの態様において、本明細書に提供されるGML組成物のpHは約4.0~約6.0である。
【0010】
いくつかの態様において、本明細書に提供される組成物は、抗微生物活性に必要とされるゲルに加えて、1つまたは複数の追加の促進剤を含む。さらなる態様において、促進剤は有機酸、キレート剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、またはそれらの組み合わせである。さらなる態様において、促進剤はキレート剤である。なおさらなる態様において、促進剤はEDTAである。
【0011】
別の態様において、本明細書に提供される必要とされるGML組成物は、抗微生物活性、抗ウイルス活性、および/または抗炎症活性を有する。例えば、1つの態様において、本明細書に提供される組成物は、例えば、ガードネレラ・ヴァギナリス(Gardnerella vaginalis)、カンジダ属(Candida)の種、および細菌性膣炎の他の微生物源などの細菌感染症、真菌感染症、またはウイルス感染症の処置のために、ヒトおよび他の脊椎動物に局所的に適用される。
【0012】
したがって、1つの態様において、本開示は、その必要のある対象において微生物感染症を処置するために必要とされる組成物および方法を提供する。1つの態様において、本方法は、その必要のある対象に、有効量の本明細書に提供される必要とされるGML組成物を局所的に投与する工程を含む。1つの態様において、本組成物は、GML、活性可溶化に必要とされる非水性ゲル、および薬学的に許容される局所用担体を含む。
【0013】
1つの態様において、本明細書に開示される組成物は、スポンジ、ワイプ、またはスワブを使用して局所的に適用される。
【0014】
1つの態様において、対象は細菌感染症を有する。さらなる態様において、細菌感染症は、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus));ストレプトコッカス属(Streptococcus)(例えば、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)もしくはストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae));エシェリキア・コリ(Escherichia coli);ガードネレラ属(Gardnerella)(例えば、ガードネレラ・ヴァギナリス);他の潜在的な膣病原体、例えばバクテロイデス属(Bacteroides)の種;アトポビウム属(Atopobium)の種;モビルンカス属(Mobiluncus)の種;ナイセリア・ゴノルホエアエ(Neisseria gonorrhoeae);クラミジア属(Chlamydia)(例えば、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis))、またはトリコモナス・ヴァギナリス(Trichomonas vaginalis)である。
【0015】
別の態様において、本明細書に提供されるGML組成物の1つで処置される対象は、真菌感染症を有する。さらなる態様において、真菌感染症はカンジダ(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))である。
【0016】
別の態様において、本開示の方法は、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および抗細菌剤からなる群より選択される第2の活性物質を投与する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
表の簡単な説明
表1は、ガードネレラ・ヴァギナリスおよびカンジダ・アルビカンス微生物の成長に対する様々な濃度の必要とされるGML-ゲル組成物の効果を示している。これらの実験において、ブタ膣粘膜(PVM;ヒト膣粘膜の優れたモデル)の5 mm径の切片を、2 mlの成長培地中で24時間(カンジダ・アルビカンス)または48時間(ガードネレラ・ヴァギナリス)インキュベートする。次いで、100または50μlの必要とされるGML-ゲル組成物を添加し、さらに24時間培養を継続する。次いで、微生物の1ミリリットルあたりの数(CFU/ml)±標準偏差を3つ組のサンプルから決定する。カンジダ・アルビカンスの出発種菌はおよそ10
4/mlであり;ガードネレラ・ヴァギナリスの出発種菌はおよそ8.0×10
5/mlであった。CFU/mlが非常に大きくなる可能性があるため、それをlog
10 CFU/mlで表すのが通例である。これが同表に報告されているものである。
注:
*はスチューデントt検定によりp<0.05で対照と有意に異なることを示している。
【0018】
詳細な説明
グリセロールモノラウレート(GML)は、抗微生物特性および抗炎症特性を有することが以前に示されている天然に存在するグリセロールベースの化合物である。本開示は、様々な微生物感染症および1つまたは複数の微生物感染症に起因する疾病の処置のための新規の必要とされるGML組成物および方法を提供する。本開示の基礎は、GMLが、単独では1つまたは複数の微生物感染症に対して効果的でないが、本開示などにおいて新規の組成物が作製された場合には強く抗微生物性および抗炎症性となるという点にある。したがって、本願は、GMLに加えて他の作用物質を必要とする、組成物に基づいている。
【0019】
本開示は、局所用GML組成物と、例えば局所投与による同組成物を用いる処置方法の両方を提供する。提供される組成物および方法は、1つの態様において、例えば、対象、例えばヒトの皮膚または粘膜表面への有効量のGML組成物の送達を促進することにより局所的に感染症を処置するために使用される。本開示の組成物の刺激性が、以前に用いられていた抗微生物化合物の局所製剤と比較して低いために、本組成物は、局所的な自己投与に関してより高い患者コンプライアンスを達成する。
【0020】
「抗微生物」という用語は、微生物の成長または病原性作用を防ぐ上で、阻害する上で、または停止させる上で有効であることを意味する。「微生物」は、任意の細菌、ウイルス、真菌、または原虫を意味する。1つの態様において、本開示の製剤は、以下の微生物の1つまたは複数の成長を防ぐため、阻害するため、または停止させるために使用される:スタフィロコッカス・オーレウス、ストレプトコッカス属(例えば、S.ピオゲネス(S. pyogenes)、S.アガラクティカエもしくはS.ニューモニアエ)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、ガードネレラ・ヴァギナリス、エンテロバクテリアカエ(Enterobacteriacae)(例えば、エシェリキア・コリ)、バクテロイデス属の種、クラミジア・トラコマティス、ナイセリア・ゴノルホエアエ、アトポビウム属の種、モビルンカス属の種、カンジダ属の種、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、またはトリコモナス・ヴァギナリス。
【0021】
「抗細菌」または「抗真菌」は、細菌もしくは真菌の成長の阻害もしくは停止、細菌もしくは真菌疾患の重症度もしくは発症可能性の減少、細菌もしくは真菌の死の誘導、またはそれぞれの細菌もしくは真菌の病原性作用の減少もしくは阻害を表す。「殺細菌」は、「抗細菌」と言い換え可能に使用される。
【0022】
「抗ウイルス」は、ウイルス感染症もしくはウイルス複製の阻害、ウイルスに曝露された対象がウイルス疾患にかかる可能性の減少、またはウイルス疾患の重篤度の減少を表す。
【0023】
「抗原虫」は、原虫感染症もしくは原虫複製の阻害、ウイルスに曝露された対象が原虫疾患にかかる可能性の減少、または原虫疾患の重篤度の減少を表す。
【0024】
「有効量」という用語は、非限定的に、微生物の殺傷または微生物の感染症、成長、もしくは毒性の阻害が含まれる、有益または所望の抗微生物活性をもたらすのに十分な量を表す。
【0025】
「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、および「処置する(treating)」という用語は、有益または所望の結果、例えば臨床的結果を得るためのアプローチを表す。本開示において、有益または所望の結果には、微生物の成長の阻害もしくは抑制または微生物の殺傷;微生物が細胞もしくは対象に感染する1つもしくは複数のプロセスの阻害;微生物感染により引き起こされる疾患もしくは状態の阻害もしくは改善;またはそれらの組み合わせが含まれ得る。「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、および「処置する(treating)」という用語はまた、感染症の予防を表す。いくつかの態様において、本開示の製剤は、膣微生物感染症を処置するために使用される。
【0026】
「予防」は、感染症もしくは疾患の完全な防止、またはその感染症もしくは疾患の症状の発症の防止;感染症もしくは疾患またはその症状の発現の遅延;または後に発症する感染症もしくは疾患またはその症状の重篤度の減少を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語には、ヒトおよび他の動物が含まれる。対象は、1つの態様において、ヒトである。
【0028】
「局所」は、任意の皮膚または粘膜表面への組成物の適用を表す。「皮膚表面」は、一般に表皮細胞の層および真皮細胞の層を含む、脊椎動物の身体の保護的外被を表す。「粘膜表面」は、口腔、膣、直腸、胃腸、および鼻表面が含まれるがこれらに限定されない、粘液を分泌する器官または体腔を裏張りする組織を表す。1つの態様において、本開示の製剤は、膣領域に局所的に投与される。
【0029】
「薬学的に許容される活性増強物質」という用語は、過度の毒性も刺激もアレルギー反応もない皮膚または粘膜表面に適用され得る物質、希釈剤、またはビヒクルを表す。この作用物質はGMLの活性に必要とされ、したがって本組成物の一部である。
【0030】
「促進剤」という用語は、組成物に添加された場合に、その組成物の抗微生物特性を増強するまたはそれに寄与する効果を有する化合物、物質、液体、粉末、または混合物を表す。促進剤は、非限定的に、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、ギ酸、安息香酸、およびシュウ酸が含まれる有機酸であり得る。促進剤は、別の態様において、キレート剤であり、1つの態様において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメルカプロール、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホン酸(DMPS)、αリポ酸(ALA)、またはそれらの組み合わせから選択される。別の態様において、促進剤は、抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、またはそれらの組み合わせから選択される。本開示において使用される抗生剤には、例えば、アミノグリコシド、カルバセフェム、セファロスポリン、糖ペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、サルファアミド、およびテトラサイクリンが含まれる。抗真菌剤には、非限定的に、アゾールクラス、ポリエンクラス、もしくはエキノキャニン(echinocanin)クラスのそれら、ヌクレオシドアナログ、アリルアミン、グリセオフルビン、トルナフタート、またはセレニウム化合物が含まれる。抗ウイルス剤には、例えばかつ非限定的に、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アバカビル、エノホビル(enofovir)、ラミブジン、エムトリシタビン、ジドブジン、テノホビル、エファビレンツ、ラルテグラビル、エンフビルジド(enfuvirdide)、マラビロク、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターフェロン、オセルタミビル、およびザナミビルが含まれる。
【0031】
「セルロース誘導体」という用語は、任意のセルロースベースの化合物を表し、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または酢酸セルロースが含まれ得る。
【0032】
「バイオフィルム」という用語は、相互に付着し、表面上で成長する微生物、通常は細菌、の凝集体を表す。バイオフィルム内の微生物細胞は典型的に、細胞外高分子物質として公知の細胞外マトリクスを生成する。しばしば、このマトリクス、および凝集体自体の密度が、バイオフィルム内の細菌の抗生物質耐性を有意に増大させる。バイオフィルムは、膣粘膜を含む体表面のあらゆる感染に関与し得る。
【0033】
1つの態様において、本開示はGMLを含む局所組成物を提供する。GMLは単独では限定的な抗微生物活性しか有さず、これが、必要とされる組成物においてゲルが存在する理由である。さらなる態様において、組成物はGMLおよびゲルを含む。ゲルは、1つの態様において、セルロース誘導体を含む。本明細書に提供される局所組成物は、1つの態様において、薬学的に許容される局所的な組成物成分を含む。
【0034】
1つの態様において、本明細書に提供される組成物はモノグリセリドGMLを含む。GMLは、化学式C15H30O4を有する、ラウリン酸の誘導体であるグリセロールの脂肪酸エステルである。GMLはまた、当技術分野においてラウリン酸グリセリルまたはモノラウリンとしても公知である。本開示の適用において、GML単独では抗微生物剤としての使用に不十分である。したがって、本組成物は、有効成分の必須成分として非水性ゲルの使用を必要とする。
【0035】
GMLは、RおよびSの両方の光学異性体を含む複数の形態ならびに1/3位においておよび2位においてラウリン酸を有する形態で合成され得る。本明細書に提供される組成物は、1つの態様において、GMLのR異性体を含む。別の態様において、本明細書に提供される組成物はGMLのS異性体を含む。さらに別の態様において、異性体のラセミ混合物が組成物中に提供される。
【0036】
同様に、局所組成物は、1/3位にラウリン酸を有するGML、2位にラウリン酸を有するGML、またはその組み合わせを含み得る。各形態のRおよびS異性体、ならびにそれらのラセミ混合物が、本開示における使用に適する。
【0037】
1/3位においてラウリン酸を有するGMLの化学構造は、以下である:
グリセロールモノラウレート(GML) 1/3位。
【0038】
2位においてラウリン酸を有するGMLの化学構造は、以下である:
グリセロールモノラウレート(GML) 2位。
【0039】
ゲル組成物中のGMLの量は、処置される症例/疾患および処置される対象の特徴にしたがい調整され得る。組成物中のGMLの量は、例えば、感染症または疾病の性質に;投与部位に;対象の病歴に;対象の体重、年齢、性別、および処置される表面積に;ならびに対象が何らかの他の薬物を投与されているかに依存して、異なり得る。
【0040】
1つの態様において、必要とされるゲルは局所組成物中に存在する。これは、約5~16%(w/w)の濃度のプロピレングリコール、約4~6%(w/w)の濃度のエチルアルコール、約14~16%(w/w)の濃度のジエチレングリコールモノエチルエーテル、約4~6%(w/w)の濃度のポリソルベート20、約4~6%(w/w)の濃度のポリソルベート80、約4~6%(w/w)の濃度のポリオキシル35ひまし油、約5~15%の濃度のオクチルドデカノール、約5~15%(w/w)の濃度のジメチルイソソルビド、約5~15%の濃度のポリエチレングリコール400、および最大約5%(w/w)の濃度のヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、の組成を有し得る。
【0041】
いくつかの態様において、局所組成物は1つまたは複数の促進剤(例えば低pHまたはキレート剤)を含む。さらなる態様において、促進剤は有機酸、キレート剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原虫剤、またはそれらの組み合わせである。さらなる態様において、促進剤はキレート剤である。なおさらなる態様において、促進剤はEDTAである。
【0042】
促進剤は、1つの態様において、EDTAである。さらなる態様において、本明細書に提供されるGML組成物は約0.00005M、約0.0005M、約0.005または約0.05Mの濃度のEDTAを含む。別の態様において、キレート剤は約0.00005M~約0.05M、約0.0005M~約0.005M、または約0.005~約0.05Mの濃度で組成物中に存在する。
【0043】
1つの態様において、組成物のpHは約3.5~約7.0である。さらなる態様において、組成物のpHは約4.0~約6.0である。なおさらなる態様において、組成物のpHは約4.0~約4.5である。
【0044】
1つの態様において、組成物は溶液である。別の態様において、組成物はゲルである。別の態様において、組成物は固体、半固体、発泡体、ワックス、クリーム、またはローションである。
【0045】
1つの態様において、本開示は、その必要のある対象において微生物感染症を処置する方法を提供する。微生物感染症は、1つの態様において、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、もしくは原虫感染症、またはそれらの組み合わせである。
【0046】
本開示に記載されるGML局所組成物は、現時点で承認されている抗微生物組成物よりも低刺激性であり、したがって当技術分野で現在使用されている他の抗微生物組成物と比較してよりも好ましい患者コンプライアンス率をもたらす。
【0047】
1つの態様において、微生物感染症を処置する方法は、有効量の本明細書に記載されるGML組成物の1つまたは複数を、対象の少なくとも1つの皮膚または粘膜表面に適用する工程を含む。
【0048】
いくつかの態様において、本組成物は、ワイプ、スポンジ、スワブ、または他の物質に適用されるかまたはそれらに染み込まされ、その後に各物質を用いて対象の皮膚または粘膜表面に適用される。「スワブ」という用語は、液体、ゲル、ワックス、クリーム、もしくはローションを皮膚もしくは粘膜表面に適用するのに適した物質、または液体、ゲル、ワックス、クリーム、もしくはローションを皮膚もしくは粘膜表面に適用する行為、または液体、ゲル、ワックス、クリーム、ローション、もしくは流体を皮膚もしくは粘膜表面から回収する行為を表す。いくつかの態様において、この物質は、ホルダー、例えばスティック、ワイヤー、ロッド、またはアプリケーターに装着される。さらなる態様において、ホルダーに装着される物質は、その一端または両端に装着される。いくつかの態様において、ワイプ、スポンジ、スワブ、または他の物質は、本組成物を事前充填されるまたは本組成物と共に梱包される。
【0049】
GMLおよび必要とされるゲルは、直接的な微生物毒性;脊椎動物細胞への感染性微生物の侵入の阻害;微生物の成長の阻害;ビルレンス因子、例えば毒素の生産もしくは作用の阻害;脊椎動物細胞の安定化;またはそうでなければ感染プロセスを増強する炎症性もしくは免疫刺激性メディエーターの誘導の阻害、が含まれるがこれらに限定されない様々な機構の1つまたは複数を通じて、微生物感染を阻害する。
【0050】
細菌は、環境の変化に応答し適応するおよびビルレンス因子を生産する2成分シグナル伝達系を使用する。学説に束縛されることを望まないが、GMLおよび必要とされるゲルは、細菌の細胞膜との相互作用を通じて、直接的または間接的のいずれかで、細菌のシグナル伝達に干渉すると考えられる。1つの態様において、GMLおよび必要とされるゲルの殺細菌効果は、少なくとも一部、細菌の細胞膜における相互作用を媒介する。細菌の細胞膜に対するGMLおよび必要とされるゲルの効果と同様、本組成物は、ウイルスの脂質エンベロープをかく乱することにより特定のウイルスを不活性化させることが示された。
【0051】
1つの態様において、本明細書に記載される方法は、膣微生物感染症患者を処置するために使用される。さらなる態様において、膣微生物感染症は、外陰膣カンジダ症(VVC)または細菌性膣炎(BV)である。BVを有する女性は骨盤炎症性疾患、子宮内膜症、および膣カフ蜂窩織炎のリスクがあり、BVを有する妊娠女性は低出生体重児、早期陣痛、早期分娩、および絨毛膜羊膜炎のさらなるリスクがある。VVCまたはBV患者において、通常ラクトバシルス属(Lactobacillus)の種によって支配されている膣フローラは、他の細菌および/または真菌種が支配するよう変化する。一般にガードネレラ・ヴァギナリスおよび嫌気性細菌がBVに関連し、カンジダ属の種、通常はC.アルビカンスがVVCに関連する。したがって、1つの態様において、本明細書に提供される方法は細菌感染症患者を処置するために使用される。さらなる態様において、感染症はガードネレラ・ヴァギナリスまたはカンジダ感染症である。
【0052】
いくつかの態様において、本明細書に提供される局所組成物の1つまたは複数で処置される対象は、ウイルス感染症を有する。さらなる態様において、ウイルス感染症は以下のウイルスまたはウイルスのクラスの1つまたは複数により引き起こされる:インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス2)、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス)。
【0053】
いくつかの態様において、本明細書に提供される局所組成物の1つまたは複数で処置される対象は、真菌感染症または原虫感染症を有する。さらなる態様において、真菌感染症はカンジダ属の種(例えば、C.アルビカンス)により引き起こされる。さらなる態様において、原虫感染症はトリコモナス・ヴァギナリスにより引き起こされる。
【0054】
細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、または原虫感染症を同定および診断する方法は一般に当業者に公知である。本明細書に開示される製剤が感染症を処置するために有用であるかどうかを評価するため、当業者に公知の方法が用いられ得る。例えば、処置前および処置後のBV感染症は、膣細胞の顕微鏡試験により評価され得る。
【0055】
1つの態様において、1つまたは複数の微生物を含むバイオフィルムを除去するまたは死滅させるための方法が提供される。バイオフィルムは膣感染症に関与し得る。1つの態様において、本方法は、局所組成物を、それをバイオフィルムに直接適用することにより投与する工程を含む。
【国際調査報告】