(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ヘキソキナーゼ由来のペプチドおよびその治療的使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20240514BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240514BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240514BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240514BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240514BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
C07K7/06
C07K14/435 ZNA
C12N15/85 Z
A61P25/00
A61P9/10
A61P35/00
A61P3/10
A61P17/00
A61P1/16
A61P25/02
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61K38/10
A61K38/08
C12N15/12
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573058
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022064320
(87)【国際公開番号】W WO2022248615
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513246469
【氏名又は名称】インサーム(インスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】523444040
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ ペルピニャン ヴィア ドミティア
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE PERPIGNAN VIA DOMITIA
(71)【出願人】
【識別番号】518027472
【氏名又は名称】エコール プラティーク デ オート エチュード
【氏名又は名称原語表記】ECOLE PRATIQUE des HAUTES ETUDES
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】トリコー,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】アンギンベール,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ,ブノワ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA16
4C084ZA20
4C084ZA36
4C084ZA75
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA40
4H045EA21
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本発明者らは以前、ミトコンドリアVDAC1が、MAPK経路を介したシュワン細胞の脱髄、並びに坐骨神経損傷、糖尿病性ニューロパチーおよびCMT1A後のc-jun活性化を直接誘導することを実証した。彼らは、VDAC1の遮断によるミトコンドリアのカルシウム放出の減少が、invivoでの脱髄シュワン細胞の数を大幅に減少させ、糖尿病、ギラン・バレー症候群、およびシャルコー・マリー・トゥース病モデルにおける神経伝導並びに神経筋活動を改善することを発見した。本明細書において、発明者らは、欠失研究によって完了したalaスキャンを通じて、N末端HK-1ヘリックスの結合領域を正確にマッピングした。さらに、ヘリックス誘導剤として知られるα-アミノイソ酪酸(Aib)による非必須アミノ酸の置換によるヘリックスの安定化を通じて、HK由来ペプチドを最適化した。さらに、彼らは、ペプチドの効力を決定することを可能にするVDACからHKを分離するMJの能力に基づいたin-houseの細胞スクリーニングアッセイについて説明した。全体として、彼らのデータは、VDACに作用するN末端HK由来ペプチドが脱髄プロセスの研究に有望なツールであることを裏付けている。したがって、本発明は、最適化されたHK由来ペプチド、並びに末梢脱髄疾患、心筋疾患(文献10、11)、がん(文献12、13-15)、糖尿病(文献14、14-16)、狼瘡様疾患(文献17)、非アルコール性脂肪肝疾患(文献24、25)、化学誘発性神経障害(文献9)、アルツハイマー病(文献18、19)、パーキンソン病(文献20)、ハンチントン病(文献21)、ALS(文献22、23)、およびより一般的にはタンパク質凝集に関連するすべての神経変性疾患(文献28)の治療におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列:アラニン(A)-グルタミン(Q)-X
1-X
2-X
3-チロシン(Y)-チロシン(Y)-X
4(配列番号1)を含み、
X
1はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X
2はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X
3はアラニン(A)、D異性体アラニン(A
D)またはα-アミノイソ酪酸(U)であり、
X
4はフェニルアラニン(F)、ロイシン(L)またはチロシン(Y)であり、
HK由来ペプチドは配列番号95に示されるアミノ配列からなるものではなく、HK由来ペプチドは配列番号96に示されるアミノ配列を含まない、HK由来ペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列:アラニン(A)-グルタミン(Q)-X
1-X
2-X
3-チロシン(Y)-チロシン(Y)-X
4-スレオニン(T)-グルタミン酸(E)-X
5-リジン(K)(配列番号2)を含み、
X
1はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X
2はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X
3はアラニン(A)、D異性体アラニン(A
D)またはα-アミノイソ酪酸(U)であり、
X
4はフェニルアラニン(F)、ロイシン(L)またはチロシン(Y)であり、
X
5はロイシン(L)またはトリプトファン(W)である、
請求項1に記載のHK由来ペプチド。
【請求項3】
X
3がα-アミノイソ酪酸(U)である、請求項1または2に記載のHK由来ペプチド。
【請求項4】
8、9、10、11、12、13、14、15または16個のアミノ酸を含む、請求項1または3に記載のHK由来ペプチド。
【請求項5】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52および配列番号53からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、請求項1に記載のHK由来ペプチド。
【請求項6】
配列番号18、配列番号20、配列番号25、配列番号26、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、請求項5に記載のHK由来ペプチド。
【請求項7】
配列AUAU(配列番号54)または配列AU(配列番号55)が結合している、請求項1~6のいずれかに記載のHK由来ペプチド。
【請求項8】
ジペプチド3-CF
3Ph[Tz]UがHK由来ペプチドのN末端に結合しており、ジペプチド3-CF
3Ph[Tz]Uが以下の式を有する、
【化1】
請求項1~6のいずれかに記載のHK由来ペプチド。
【請求項9】
細胞膜透過配列が結合している、請求項1~8のいずれかに記載のHK由来ペプチド。
【請求項10】
前記細胞膜透過配列がtat(配列番号58)である、請求項9に記載のHK由来ペプチド。
【請求項11】
請求項1~10に記載のHK由来ペプチドを含むベクター。
【請求項12】
治療に使用するための、請求項1~10に記載のHK由来ペプチドまたは請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
末梢脱髄疾患、心筋疾患、がん、糖尿病、狼瘡様疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、化学誘発性ニューロパチー、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ALSなどの神経変性疾患の治療に使用するための、請求項1~10に記載のHK由来ペプチドまたは請求項11に記載のベクター。
【請求項14】
前記末梢脱髄疾患が、レフサム病、アベータリポタンパク血症、タンジール病、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ファブリー病、デジェリン・ソッタス症候群、シャルコー・マリー・トゥース病、圧迫麻痺を伴う遺伝性ニューロパチー(HNPP)、家族性アミロイドニューロパチー、遺伝性感覚性ニューロパチーII型(HSN II)、遺伝性ポルフィリン症、筋ジストロフィー、デジェリン・ソッタス症候群、糖尿病性ニューロパチー、免疫介在性ニューロパチー、急性運動性ニューロパチー、急性感覚性ニューロパチー、急性自律性ニューロパチー、ミラー・フィッシャー症候群、慢性多発神経障害、血管炎または末梢神経における血管の炎症に関連する末梢脱髄疾患、モノクローナル免疫グロブリン血症に関連する末梢脱髄疾患、腫瘍または新生物に関連する末梢脱髄疾患、薬剤による末梢脱髄疾患、感染症による末梢脱髄疾患、栄養バランスの崩れによる末梢脱髄疾患、腎臓疾患による末梢脱髄疾患、甲状腺機能低下症ニューロパチー、アルコールおよび毒素による末梢脱髄疾患、外傷または圧迫による末梢脱髄疾患、並びに特発性末梢脱髄疾患からなる群より選択される、請求項13に記載の用途に使用されるHK由来ペプチド。
【請求項15】
請求項1~10に記載のペプチドまたは請求項11に記載のベクターを含む医薬組成物。
【請求項16】
治療を必要とする対象における末梢脱髄疾患の治療方法であって、治療有効量の請求項1~10に記載のHK由来ペプチドまたは請求項11に記載のベクターを前記対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキソキナーゼ(HK-)由来ペプチド、および特に末梢脱髄疾患もしくは神経変性疾患またはがんを治療するための、それらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリア外膜(OMM)に存在する電位依存性アニオンチャネル(VDAC)は、ミトコンドリアとサイトゾル細胞コンパートメントとの間での、イオン(文献1)と代謝産物との交換に不可欠である(文献2)。VDACは、分子ゲート機能を提供するチャネル透過性に影響する細孔壁に垂直に横たわるN末端ヘリックスを持つβ-バレル構造を持つ膜貫通タンパク質である(文献3、4、5)。VDACのN末端ヘリックスの動きにより、細胞の恒常性に影響を与える開状態と閉状態との切り替えが可能になる。また、これはVDACの多量体化も制御し、この多量体化は、サイトゾルシトクロムCおよびカルシウムの放出によりアポトーシスを引き起こし、カスパーゼを活性化する(文献6、7)。さらに、VDACは最大200個のタンパク質に対する特権的なドッキング部位であり(文献8、9)、そのうちのいくつかは心筋疾患(文献10,11)、がん(文献12,13-15)、糖尿病(文献14、14-16)、狼瘡様疾患(文献17)、アルツハイマー病(文献18、19)、パーキンソン病(文献20)、ハンチントン病(文献21)、ALS(文献22、23)、非アルコール性脂肪肝疾患(文献24、25)、および化学誘発性ニューロパチー(文献9)を含むいくつかの病態に関与する(文献9)。したがって、VDACは治療標的を構成しており、その透過性を調節したり、パートナータンパク質への結合を破壊/強化したりできる薬剤が精査されている。VDACと相互作用することが知られているタンパク質の中で、ヘキソキナーゼ(HK)IおよびIIは主要なリガンドである。いくつかの疾患におけるこのタンパク質/タンパク質相互作用の極めて重要な役割により、HKの両アイソフォームのVDACへの結合に関与するアミノ酸が同定されている。結合部位はHKのN末端配列の最初の20アミノ酸内にあり、より正確には最初の10アミノ酸が必須である(文献23、26)。HK1とHK2のN末端領域との間には強い配列相同性が観察され、両方のHKアイソフォームの多くが細胞内のミトコンドリア外膜(OMM)に局在することが知られている。HKのミトコンドリア画分およびHK-VDAC1複合体は、神経変性疾患において大幅に減少することが判明し、神経変性疾患に関与するいくつかのミスフォールドタンパク質はVDACに結合するようである(文献27、19、28)。この状況を踏まえて、VDAC1もシュワン細胞(SC)脱髄の重要な役割を果たすことが特定された(文献29、30)。
【0003】
シュワン細胞(SC)は、末梢神経系におけるミエリン生成を担う。これらの細胞は軸索を包み込み、軸索を保護するように結合した状態を維持し、正確かつ効率的な活動電位伝達を可能にする(文献46)。残念なことに、末梢神経系(PNS)の遺伝性および後天性脱髄疾患は数多くあり、罹患する人々の数はますます増えている(文献47)。後天性脱髄疾患には、糖尿病性末梢性ニューロパチー(文献48)、薬剤関連の末梢脱髄疾患、ハンセン病、および炎症性病因による末梢脱髄疾患(文献49)が含まれるため、さらに一般的である。脱髄性末梢性ニューロパチーは糖尿病の主要な合併症であり、かなりの罹患率の原因となっている(文献50)。このニューロパチーの慢性型は、シュワン細胞の脱髄並びに軸索の喪失および/または変性を特徴とし、その結果、神経伝導速度が遅くなる(文献51、52)。さらに、糖尿病患者の少なくとも50%が、診断後25年以内に1つまたは複数の形態の糖尿病性ニューロパチーを発症することが報告されている(文献53)。
【0004】
植物ホルモンであるジャスモン酸メチル(MJ)は、HKをVDAC1(文献31)から切り離すことができ、自発的な脱髄を誘導する(文献29)。一方、シュワン細胞のVDACをサイレンシングするか、VDACに結合する神経保護薬オレソキシム(文献32、33)で治療すると、ミトコンドリアのカルシウム放出が防止され、脱髄がブロックされる(文献29)。したがって、HK/VDACの緊密な関連を回復することは、VDACの透過性が関係するいくつかの疾患を治療する魅力的な機会となる。筋萎縮性側索硬化症というこの特定の状況では、N末端HK-1由来ペプチドがin-vitroおよびin-celluloでVDACと相互作用し、VDAC/SOD1 G93A相互作用を防止することが報告されている(文献23)。さらに、遺伝性脱髄性末梢性ニューロパチーCMT4Gでは、HK1の5’非コード配列の変異により、HK1の通常のN末端が欠如した選択的スプライシングアイソフォームの発現が促進される(文献34)。CMT4G患者の末梢血単核細胞およびこの疾患を模倣するHEK293細胞では、これによりHKとVDACとの相互作用が欠如する(
図1A~C)。変異体HK1は、この疾患を模倣しているHEK293細胞において、VDACを介したミトコンドリアのカルシウム放出を遮断しない(
図2)。最後に、野生型HK1のN末端に由来するペプチドは、MJ処理後のミトコンドリアのカルシウム放出を防ぐことができるが(
図3)、変異型HK1に由来するペプチドは効果を持たない(
図3)。したがって、野生型HK1のN末端領域を含むペプチドを使用してカルシウム流出を遮断し、CMT4Gなどのいくつかの末梢神経疾患における脱髄プロセスを停止できる可能性がある。このペプチドは、VDAC透過性が関与するすべての疾患に対する治療法の提案となる可能性もある。
【0005】
本明細書において、発明者らは、VDAC、特にVDAC1に対する向上した安定性および親和性を有する最適化されたHK由来ペプチドを開発した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、アミノ酸配列:QX1X2X3YYX4(配列番号1)を含むHK由来ペプチドに関し、
X1はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X2はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X3はアラニン(A)、D異性体アラニン(AD)またはα-アミノイソ酪酸(U)であり、
X4はフェニルアラニン(F)、ロイシン(L)またはチロシン(Y)である。
【0007】
特に、本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A-C】患者の血液の末梢血単核球(PBMC)内、および野生型HKまたはCMT4G変異HK(または何もなし-対照)を発現するHEK293細胞内で、HKと免疫共沈降するVDAC1の量。A.CMT4G患者または対照の末梢血からPBMCを遠心分離によって収集し、洗浄し、洗剤溶液で溶解してタンパク質を抽出した。Gタンパク質と結合したセファロースビーズを使用して、HKを特異的モノクローナル抗体で沈殿させた。洗浄後、免疫共沈降したタンパク質を、VDAC1に対するポリクローナル抗体を使用したSDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングによって分析した。免疫共沈降したVDAC1の量を、細胞溶解物中のタンパク質の量に対して正規化した。B.各アイソフォームのN末端配列に対するエクソン1および2、ならびに代替エクソンT3およびT4の寄与を示す、ヒトHK1の主要アイソフォームおよび選択的にスプライシングされたAlT2アイソフォームの配列。Hantke, J. et al.2009を参照。C.HEK293細胞を、野生型(wt)Flagタグ付きヒトHK1またはCMT4G変異型Flagタグ付きヒトHK1を発現するプラスミドでトランスフェクトした。48時間後、細胞を洗浄し、洗剤溶液で溶解してタンパク質を抽出した。Gタンパク質と結合したセファロースビーズを使用して、HKをモノクローナル抗Flag抗体で沈殿させた。洗浄後、免疫共沈降したタンパク質を、SDS-PAGEおよびVDAC1に対するポリクローナル抗体を使用したウェスタンブロッティングによって分析した。免疫共沈降したVDAC1の量を、細胞溶解物中のタンパク質の量に対して正規化した。
【
図2】野生型HKまたはCMT4G変異HK(または何もなし-対照)を過剰発現するHEK293細胞におけるミトコンドリアカルシウムプローブの蛍光強度。HEK293細胞を、ミトコンドリアマトリックス中のカルシウムを検出する蛍光プローブであるmito-GCaMP2を発現するプラスミド単独で(対照)、または野生型Flagタグ付きヒトHK1もしくはCMT4G変異型Flagタグ付きヒトHK1を発現するプラスミドと一緒にトランスフェクトした。48時間後、細胞を洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定し、DAPIで処理して核を検出した。GFP蛍光は、LSM700 Zeiss共焦点顕微鏡を使用して記録され、各写真のバックグラウンド値に対して正規化された。
【
図3】ジャスモン酸メチル(MJ、6mM)、および野生型HK1のN末端ペプチド(HK1-Ntペプチド)または変異型HK1のN末端ペプチド(HKmut-Ntペプチド)で処理したHEK293細胞におけるミトコンドリアのカルシウムプローブの蛍光強度のタイムラプス記録。HEK293細胞にmito-GCaMP2を発現するプラスミドをトランスフェクトした。48時間後、ライブイメージング用に設計されたZeiss Axio-observerを使用して細胞をイメージングし、MJ(6mM)および/または5mMのペプチドで処理した。ペプチド配列:野生型HK1ペプチドAc-MIAAQLLAYYFTELKGRKKRRQRRRPPQ-NH2(配列番号90)、CMT4G変異HK1ペプチドAc-MGQICQRESATAAEKGRKKRRQRRRPPQ-NH2(配列番号91)および対照ペプチドAc-GRKKRRQRRRPPQ-NH2(配列番号92)。
【
図4】VDACへの結合を最適化するために設計されたペプチドライブラリ1~6。1aおよび2aは、alaスキャン、欠失、最適化および安定化アッセイに供されたペプチドのイニシャル配列を表す。nLは、メチオニンの非酸化性代替物であるノルロイシンを表す。tat配列は青色で強調表示され、NHK1認識配列は赤色で表示され、先頭に配列番号が付けられる。
【
図5】ミトコンドリア内およびサイトゾル内のmitoGCaMP2(A)およびGCaMP2(B)それぞれの蛍光レベルの経時的定量化。mitoGCaMP2(A)およびGCaMP2(B)プローブでトランスフェクトされたHEK-293細胞の蛍光レベルの定量化。対照(丸)は、MJおよび化合物の可溶化に使用される希釈剤0.1DMSOおよび5%EtOHで細胞を処理したときのミトコンドリアの蛍光レベルを表す。MJは6mMで、化合物1aは33μMで試験された。二元配置分散分析とそれに続くTukeysの多重比較検定(N=3の独立した実験)を使用した統計分析。結果を平均値±SEMとして表す。**p<0.01、****p<0.0001、nsは有意差がないことを示し、A.Uは任意単位である。
【
図6A-D】
図6は、化合物1aおよび2aに対するalaスキャン研究(A、B)および欠失研究(C、D)の効果を示す。すべての化合物は10μMでスクリーニングアッセイによりテストされた(N=5の独立した実験)。alaスキャン置換は太字で表示される。化合物1a(AおよびCは濃灰色プロット)または2a(BおよびDは濃灰色プロット)と他の化合物との間の一元配置分散分析とそれに続くダネットの多重比較検定を示す統計分析。青色プロットは、alaスキャン研究によりVDACとの相互作用に関与する重要なアミノ酸が明らかになった化合物、または欠失研究により活性の重大な損失が生じた化合物を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。特記しない場合、統計検定は有意ではない(白色プロット)。結果を平均値±SDとして表す。A.Uは任意単位である。
【
図7A-B】化合物3c(A)および4d(B)におけるVDAC相互作用に関与するアミノ酸に対する等価体置換の組み合わせの影響。置換は太字で表示される。化合物3cおよび4dを10μM(濃灰色プロット)および3μM(薄灰色プロット)でテストした以外は、全ての化合物を3μMでテストした(N=3の独立した実験)。3μMの化合物3cまたは4dと他の化合物との間の一元配置分散分析とそれに続くダネットの多重比較検定を示す統計分析。赤色プロットは、等価体置換の組み合わせが活性の最も顕著な増加をもたらした化合物を表す。*p<0.05、**p<0.01。特記しない場合、統計検定は有意ではない。結果を平均値±SDとして表す。A.Uは任意単位である。
【
図8A-C】A)7fで導入されたN末端修飾の構造。3cまたは5x配列におけるヘリコジェニックAib(U)の導入の効果。修飾されたアミノ酸は太字で示されている。すべての化合物を10μM(A)および3μM(B)でテストした。対照条件(点線)は、MJおよび化合物の可溶化に使用される希釈剤0.1DMSOおよび5%EtOHで細胞を処理したときのミトコンドリアの蛍光レベルを表す。MJ(線)は、6mMのMJのみで細胞を処理したときのミトコンドリアの蛍光レベルを表す。一元配置分散分析を使用した統計分析と、それに続く3cまたは5xと他の化合物間のダネット多重比較検定(N=3の独立した実験)(10μMを濃灰色、3μMを薄灰色で示す)。赤色プロットは、活性の大幅な増加を示すペプチドに対応する。結果を平均値±SDとして表す。*p<0.05、***p<0.001。nsは有意差がないことを示し、A.Uは任意単位である。
【
図9】活性の向上を示す、VDACを介したミトコンドリアCa
2+流出におけるSAR最適化研究の効果。グラフは、スクリーニングアッセイにおける化合物1a、5x、および7gの代表的な用量反応曲線を示す。IC
50を各化合物について示す(N=3の独立した実験)。結果を均値±SDとして表す。A.Uは任意単位である。
【
図10】ラット血清に対するNHKI由来配列(3c’、7a’、7d’、7f’-g’の安定性の研究(N=3の独立した実験)。すべてのペプチドは、37℃で24時間インキュベートした後、25%(v/v)のラット血清および水の存在下、66.6μmol/Lの濃度で試験された。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図11】血清を補充した培地中で培養した坐骨神経外植片に対するNHKI由来ペプチド3c、5x、7dおよび7gの効果。(A)収集され、4%PFAで直ちに固定された無傷の坐骨神経のミエリン(緑色)と、陰性対照と呼ばれるFBSを補充した培地で培養された坐骨神経外植片を示す代表的なCARS画像。(B)NHKI由来ペプチドを3μM含みFBSを添加した培地で24時間培養した坐骨神経外植片のミエリン(緑色)を示す代表的なCARS画像。すべての神経を縦断面図で表す。健康なミエリン鞘(白色矢印)、ランヴィエ結節(白色星)、およびミエリン球(オレンジ色矢印)を示す。スケールバー:20μm。(C)無傷の神経(白色プロット)、陰性対照(薄灰色プロット)、3cおよびその類似体7d(青色プロット)、5xおよびその類似体7g(赤色プロット)における損傷した線維の割合を示すグラフ。(N=3の独立した実験)。結果を平均値±SDとして表す。一元配置分散分析およびそれに続くダネットの多重比較検定を使用した統計分析。*p<0.05、**p<0.01。nsは有意差がないことを示す。
【
図12】AAV9は、標的細胞における抗脱髄ペプチドの発現を持続する効率的な方法を表す。HEK293細胞に対照AAV9またはAAV9-HKペプチドを感染させたか、あるいは感染させなかった。2日後、ミトコンドリア内のカルシウムで蛍光を発する蛍光色素Rhod-2とともに細胞をインキュベートした。15分後、感染細胞をジャスモン酸メチル(6mM)とともにインキュベートし、非感染細胞をジャスモン酸メチル(6mM)+5zペプチド(5μM)とともに40分間インキュベートした。Rhod-2色素をイメージングする写真を5分ごとに撮影した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、欠失研究によって完了したalaスキャンを通じて、N末端HK-1ヘリックスの結合領域を正確にマッピングした。さらに、ヘリックス誘導剤として知られるα-アミノイソ酪酸(Aib)による非必須アミノ酸の置換によってヘリックスを安定化させることを通じて、HK由来ペプチドを最適化した。さらに、彼らは、ペプチドの効力を決定することを可能にするVDACからHKを分離するMJの能力に基づいたin-houseの細胞スクリーニングアッセイについて説明した。全体として、彼らのデータは、VDACに作用するN末端HK由来ペプチドが脱髄プロセスの研究に有望なツールであることを裏付けている。
【0010】
<本発明のペプチド>
本発明は、アミノ酸配列:アラニン(A)-グルタミン(Q)-X1-X2-X3-チロシン(Y)-チロシン(Y)-X4(配列番号1)、を含むHK由来ペプチドに関し、
X1はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X2はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X3はアラニン(D)-異性体アラニン(AD)またはα-アミノイソ酪酸(U)であり、
X4はフェニルアラニン(F)、ロイシン(L)またはチロシン(Y)である。
【0011】
本明細書で使用される「ヘキソキナーゼ」(HK)という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、ヘキソース(六炭糖)をリン酸化してヘキソースリン酸を形成する酵素を指す。キソキナーゼIおよびIIはヘキソキナーゼの2つのアイソフォームであり、VDACの主要なリガンドである。
【0012】
本明細書で使用される場合、「VDAC」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、電位依存性陰イオン選択的チャネルタンパク質1を指す。VDACは、ミトコンドリア外膜の主要成分であり、ミトコンドリア外膜を横切る代謝産物およびイオンの交換を促進し、ミトコンドリアの機能並びに細胞の生理および分化を調節している可能性がある。このタンパク質は細胞膜内に多量体チャネルも形成し、アポトーシスおよび経膜電子輸送に関与している可能性がある。選択的スプライシングにより、複数の転写産物の変異が生じる。VDACには、その透過性を制御する多数の結合パートナー、特にヘキソキナーゼ(HK)がある。HKがVDACに結合すると、特にカルシウムに対する細孔の透過性が低下する。VDACには、VDAC1、VDAC2およびVDAC3の3つのVDACアイソフォームが含まれる。
【0013】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、タンパク質ファミリーに属する化学物質に対応する。ペプチドはいくつかのアミノ酸の混合物で構成されている。関与するアミノ酸の数に応じて、ペプチドは2つのアミノ酸で構成されるジペプチド、3つのアミノ酸で構成されるトリペプチドなどに分類される。10個以上のアミノ酸から構成されるペプチドをポリペプチドと呼ぶ。したがって、本発明のペプチドはポリペプチドとみなすことができる。
【0014】
本発明によるペプチドは、従来の自動ペプチド合成法または組換え発現によって生成することができる。タンパク質を設計および作製するための一般原理は、当業者にはよく知られている。
【0015】
本発明のペプチドは、従来の技術に従って溶液中または固体支持体上で合成することができる。さまざまな自動シンセサイザーが市販されており、Stewart and Young; Tam et al., 1983、Merrifield, 1986、およびBarany and Merrifield, Gross and Meienhofer, 1979に記載されている既知のプロトコルに従って使用できる。本発明のペプチドは、例示的なペプチド合成装置を使用する固相技術によって合成することもできる。自動ペプチド合成または組換え法によって生成された任意のタンパク質の純度は、逆相HPLC分析を使用して測定できる。各ペプチドの化学的信頼性は、当業者に周知の任意の方法によって確立され得る。自動ペプチド合成の代替として、選択したタンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、適切な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトし、本明細書において以下に記載する発現に適した条件下で培養する、組換えDNA技術を使用することもできる。組換え法は、より長いポリペプチドを生成するために特に好ましい。様々な発現ベクター/宿主系を利用して、ペプチドまたはタンパク質コード配列を含有および発現させることができる。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物、酵母発現ベクターで形質転換された酵母(Giga-Hama et al., 1999)、ウイルス発現ベクターに感染した昆虫細胞系(例えば、バキュロウイルス、Ghosh et al., 2002を参照)、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)でトランスフェクトされた、または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド;例えば、Babe et al., 2000を参照)で形質転換された植物細胞系、または動物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、哺乳動物のタンパク質発現を最適化するための様々な技術を知っており、Kaufman、2000; Colosimo et al., 2000が例示される。組換えタンパク質の生産に有用な哺乳動物細胞には、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、COS細胞(COS-7など)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、および293細胞が含まれるが、これらに限定されない。細菌、酵母および他の無脊椎動物におけるペプチド基質または融合ポリペプチドの組換え発現のための例示的なプロトコルは当業者に公知であり、以下に簡単に説明される。米国特許第6,569,645号;米国特許第6,043,344号;米国特許第6,074,849号;および米国特許第6,579,520号は、ペプチドの組換え生成の具体例を提供しており、これらの特許は、それらの教示について参照により本明細書に明示的に組み込まれる。組換えタンパク質を発現させるための哺乳類宿主系も当業者にはよく知られている。宿主細胞株は、発現されたタンパク質を処理する特定の能力、またはタンパク質活性を提供するのに有用な特定の翻訳後修飾を生成する能力に基づいて選択され得る。ポリペプチドのそのような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質の「プレプロ」型を切断する翻訳後プロセシングも、正しい挿入、フォールディングおよび/または機能にとって重要である可能性がある。CHO、HeLa、MDCK、293、WI38などのさまざまな宿主細胞は、そのような翻訳後活性のための特異的な細胞機構および特徴的な機構を有しており、導入された外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするために選択され得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、キラルアミノ酸のD立体異性体およびL立体異性体である天然または非天然アミノ酸を指す。アミノ酸および、例えばペプチジル構造に存在するような対応するアミノ酸残基の両方を指すことが理解される。天然アミノ酸および非天然アミノ酸は当技術分野でよく知られている。一般的な天然アミノ酸には、アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)およびバリン(Val、V)が含まれるが、これらに限定されない。一般的でなく非天然のアミノ酸には、α-アミノイソ酪酸(Aib、U)、アリルグリシン(AllylGly)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン、ビフェニルアラニン(Bip)、シトルリン(Cit)、4-グアニジノフェニルアラニン(Phe(Gu))、ホモアルギニン(hArg)、ホモリシン(hLys)、2-ナフチルアラニン(2-Nal)、オルニチン(Orn)、シクロヘキシルアラニン(Cha、Fx)およびペンタフルオロフェニルアラニンが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明のHK由来ペプチドは、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個のアミノ酸を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明のHK由来ペプチドは、アミノ酸配列:アラニン(A)-グルタミン(Q)-ロイシン(L)-ロイシン(L)-アラニン(A)-チロシン(Y)-チロシン(Y)-フェニルアラニン(F)(配列番号95)からなるものではない。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明のHK由来ペプチドは、アラニン(A)-アラニン(A)-グルタミン(Q)-ロイシン(L)-ロイシン(L)-アラニン(A)-チロシン(Y)-チロシン(Y)-フェニルアラニン(F)-スレオニン(T)-グルタミン酸(E)-ロイシン(L)-リシン(K)(配列番号96)からなるものではなく、この配列を含まない。
【0020】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、アミノ酸配列:アラニン(A)-グルタミン(Q)-X1-X2-X3-チロシン(Y)-チロシン(Y)-X4-スレオニン(T)-グルタミン酸(E)-X5-リジン(K)(配列番号2)、を含み、
X1はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X2はロイシン(L)またはトリプトファン(W)であり、
X3はアラニン(A)、D異性体アラニン(AD)、またはα-アミノイソ酪酸(U)であり、
X4はフェニルアラニン(F)、ロイシン(L)またはチロシン(Y)であり、
X5はロイシン(L)またはトリプトファン(W)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、X3はα-アミノイソ酪酸(U)である。
【0022】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、表1のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0023】
【0024】
【0025】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、配列番号18、配列番号20、配列番号25、配列番号26、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0026】
さらに、本発明者らは、HK由来ペプチドの安定性を高めるために、N末端に融合されたAUAUパッチまたは3-CF
3-Ph[Tz]Aibの重要性を実証した(
図7を参照)。本発明者らは、HK由来ペプチドの安定性を高めるために、2番目のアラニンをα-アミノイソ酪酸で置換することが重要であることも実証した。
【0027】
本発明者らは以前の研究で、N末端キャッピングとしての3-CF
3Ph[Tz]Uジペプチドが膜内へのペプチド挿入を促進することを示した(
図4AおよびDasら、Chemistry、2017年12月24日を参照)。
【0028】
本明細書で使用する場合、3-CF3Ph[TZ]Uジペプチドという用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、2-メチル-2-{4-[(3-トリフルオロメチル)フェニル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1イル}プロパン酸を指し、これは式C16H16F3N3Oとして表される、α-アミノイソ酪酸と結合した1,4-二置換-1,2,3-トリアゾールとしても知られる。
【0029】
【0030】
いくつかの実施形態では、配列AUAU(配列番号54)またはAU(配列番号55)がHK由来ペプチドに結合される。
【0031】
いくつかの実施形態では、配列AUAU(配列番号54)またはAU(配列番号55)が、HK由来ペプチドのN末端に結合される。
【0032】
いくつかの実施形態では、配列AUAU(配列番号54)またはAU(配列番号55)が、HK由来ペプチドのC末端に結合される。
【0033】
いくつかの実施形態では、ジペプチド3-CF3Ph[Tz]Uは、HK由来ペプチドのN末端に結合される。
【0034】
いくつかの実施形態では、細胞膜透過配列がHK由来ペプチドに結合される。
【0035】
本明細書で使用する「細胞膜透過配列」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、本発明のペプチドの細胞への取り込み(intake)および吸収(uptake)を促進する短い配列を指す。ペプチドの起源に基づいて、CPPはキメラ、タンパク質由来および合成に分類される。細胞膜透過配列には、ペネトラチン(penetratin)、オクタアルギニン(R8)、tat、トランスポータン(Transportan)およびゼントリー(Xentry)が含まれるが、これらに限定されない。ペネトラチンは、ショウジョウバエのアンテナペディアホメオドメインに由来する、第一世代の細胞膜透過ペプチドである。ペネトラチンは、マクロピノサイトーシス経路を通じて哺乳動物細胞の細胞膜の障壁を克服し、生物学的に活性な形態で分子積荷を効率的に送達する。tatペプチドは、ヒト免疫不全ウイルスの転写活性化因子(tat)に由来する。TATはアルギニンが豊富なペプチドであり、細胞膜および安定化DNAに直接浸透する。トランスポータンは、ガラニンとマストパランに由来するキメラCPPである。ゼントリーは、B型肝炎ウイルスのXタンパク質のN末端領域に由来する短いペプチドである。ゼントリーは、シンデカン-4を侵入の入り口として使用して接着細胞に浸透する。ホートンペプチドは、ミトコンドリアに侵入できる合成細胞膜透過性ペプチドである。MPPの配列は、細胞膜およびミトコンドリア膜の両方を通過するのに重要であることが知られている、2つの特性、すなわちHorton et al, Chem Biol. 2008年(文献58)で説明される正電荷および親油性を示すように設計された。
【0036】
いくつかの実施形態では、細胞膜透過配列がHK由来ペプチドのN末端またはC末端に結合する。
【0037】
いくつかの実施形態では、細胞膜透過配列は、表2の配列からなる:
【0038】
【0039】
いくつかの実施形態では、細胞膜透過配列はtat(配列番号58)である。
【0040】
いくつかの実施形態では、配列AUAU(配列番号54)またはAU(配列番号55)がHK由来ペプチドのN末端に結合し、細胞膜透過配列がHK由来ペプチドのC末端に結合する。
【0041】
いくつかの実施形態では、配列AUAU(配列番号54)またはAU(配列番号55)がHK由来ペプチドのC末端に結合し細胞膜透過配列がHK由来ペプチドのN末端に結合する。
【0042】
いくつかの実施形態では、ジペプチド3-CF3Ph[Tz]UがHK由来ペプチドのN末端に結合し、細胞膜透過配列がHK由来ペプチドのC末端に結合する。
【0043】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、配列番号18、配列番号20、配列番号25、配列番号26、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、ジペプチド3-CF3Ph[Tz]UがHK由来ペプチドのN末端に結合する。
【0044】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、配列番号18、配列番号20、配列番号25、配列番号26、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、配列AUAU(配列番号54)または配列AU(配列番号55)がHK由来ペプチドのN末端に結合する。
【0045】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、配列番号18、配列番号20、配列番号25、配列番号26、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、ここで、ジペプチド3-CF3Ph[Tz]UがHK由来ペプチドのN末端に結合し、細胞膜透過配列がHK由来ペプチドのC末端に結合する。
【0046】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、配列番号18、配列番号20、配列番号25、配列番号26、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、配列AUAU(配列番号54)または配列AU(配列番号55)がHK由来ペプチドのN末端に結合し、細胞膜透過配列がHK由来ペプチドのC末端に結合する。
【0047】
いくつかの実施形態では、HK由来ペプチドは、配列番号18、配列番号20、配列番号25、配列番号26、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、配列AUAU(配列番号54)または配列AU(配列番号55)がHK由来ペプチドのC末端に結合し、細胞膜透過配列がHK由来ペプチドのN末端に結合する。
【0048】
いくつかの実施形態では、細胞膜透過配列はtat(配列番号58)である。
【0049】
第2の態様では、本発明は、本発明のHK由来ペプチドを含むベクターに関する。
【0050】
典型的には、ペプチドはベクターと結合して送達され得る。本発明のHK由来ペプチドは、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターなどの適切なベクターに含まれる。したがって、本発明のさらなる目的は、本発明のペプチドを含むベクターに関する。典型的には、ベクターはウイルスベクターであり、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ポリオーマウイルス、または感染性ウイルスである。いくつかの実施形態では、ベクターはAAVベクターである。本明細書で使用される場合、「AAVベクター」という用語は、アデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味し、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10およびその変異型を含むがこれに限定されない。AAVベクターは、好ましくはrep遺伝子および/またはcap遺伝子の全体もしくは一部が欠失するが、機能的な隣接ITR配列を保持する、1つ以上のAAV野生型遺伝子を有することができる。レトロウイルスは、大量の外来遺伝物質を移入し、広範囲の種および細胞型に感染し、特殊な細胞株内にパッケージされ、その遺伝子を宿主ゲノムに組み込むことができることから、遺伝子送達ベクターとして選択される可能性がある。レトロウイルスベクターを構築するには、目的の遺伝子をコードする核酸を、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入し、複製欠損ウイルスを生成する。ビリオンを産生するために、gag、polおよび/またはenv遺伝子を含むがLTRおよび/またはパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株が構築される。cDNAを含む組換えプラスミドが、レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列とともにこの細胞株に導入されると(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)、パッケージング配列により、組換えプラスミドのRNA転写物は、ウイルス粒子にパッケージされることが可能になり、その後に培地に分泌される。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地を収集し、必要に応じて濃縮し、遺伝子導入に使用する。レトロウイルスベクターは、さまざまな種類の細胞に感染できる。レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、およびenvに加えて、調節機能または構造機能を持つ他の遺伝子を含む。複雑性が高まると、潜伏感染の過程のように、ウイルスはライフサイクルを調節できるようになる。レンチウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV1、HIV2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重に弱毒化することによって生成されており、たとえば、遺伝子env、vif、vpr、vpu、nefが削除されており、ベクターは生物学的に安全である。レンチウイルスベクターは当技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,013,516号および第5,994,136号を参照し、どちらも参照により本明細書に組み込まれる。一般に、ベクターはプラスミドベースまたはウイルスベースであり、外来核酸の組み込み、選択、および宿主細胞への核酸の導入に必須の配列を保持するように構成されている。目的のベクターのgag、polおよびenv遺伝子も当技術分野で知られている。したがって、関連する遺伝子が選択されたベクターにクローン化され、目的の標的細胞を形質転換するために使用される。非分裂細胞に感染することができる組換えレンチウイルスにおいて、適切な宿主細胞は、revおよびtatと同様に、パッケージング機能、すなわち、gag、polおよびenvを担持する2つ以上のベクターでトランスフェクトされ、このレンチウイルスは米国特許第5,994,136号に記載され、かつこの特許は参照により本明細書に組み込まれる。これは、ウイルスgagおよびpol遺伝子をコードする核酸を提供できる第1のベクター、ならびにパッケージング細胞を産生するウイルスenvをコードする核酸を提供できる別のベクターを記載する。異種遺伝子を提供するベクターをそのパッケージング細胞に導入すると、目的の外来遺伝子を運ぶ感染性ウイルス粒子を放出するプロデューサー細胞が得られる。envは、好ましくは、ヒトおよび他の種の細胞の形質導入を可能にする両種指向性エンベロープタンパク質である。典型的には、本発明の核酸分子またはベクターは、「制御配列」を含み、制御配列は、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを集合的に指し、これらは集合的にレシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写および翻訳を担う。選択されたコード配列が適切な宿主細胞内で複製、転写、翻訳できる限り、これらの制御配列のすべてが常に存在する必要はない。別の核酸配列は「プロモーター」配列であり、本明細書では通常の意味でDNA調節配列を含むヌクレオチド領域を指し、調節配列は、RNAポリメラーゼに結合することができると共に下流(3'方向)コード配列の転写を開始することができる遺伝子に由来する。転写プロモーターは、「誘導性プロモーター」(プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される。)、「抑制性プロモーター」(プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される。)、および「構成的プロモーター」を含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。
【0052】
いくつかの実施形態では、ベクターはAAV9またはAAVrh10である。
【0053】
<治療方法>
シュワン細胞による末梢神経軸索周囲のミエリン鞘の形成は、活動電位の迅速な伝播に不可欠である。いくつかの末梢性ニューロパチーには、病理学的生理機能として脱髄のプロセスがある。本発明者らは以前、ミトコンドリアVDAC1が、MAPK経路を介したシュワン細胞の脱髄、並びに坐骨神経損傷、糖尿病性ニューロパチーおよびCMT1A後のc-jun活性化を直接誘導することを実証した。彼らは、VDAC1の遮断によるミトコンドリアのカルシウム放出の減少が、invivoでの脱髄シュワン細胞の数を大幅に減少させ、糖尿病、ギラン・バレー症候群、およびシャルコー・マリー・トゥース病モデルにおける神経伝導並びに神経筋活動を改善することを発見した。
【0054】
したがって、HK/VDACの緊密な関係を回復することは、異なる末梢脱髄疾患およびVDAC透過性が関与する他のすべての疾患に対して魅力的な機会となる。
【0055】
すなわち、本発明は、医薬として使用するための本発明のHK由来ペプチドまたはベクターに関する。
【0056】
言い換えれば、本発明は、治療に使用するための本発明のHK由来ペプチド又はベクターに関する。
【0057】
より具体的には、本発明は、末梢脱髄疾患の治療に使用するための本発明のHK由来ペプチドまたはベクターに関する。
【0058】
言い換えれば、本発明は、治療有効量の本発明のHK由来ペプチド又は本発明のベクターを対象に投与することを含む、治療を必要とする対象における末梢脱髄疾患の治療方法に関する。
【0059】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)を指す。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。典型的には、対象は、末梢神経系に影響を与える疾患に罹患しているか、罹患する可能性がある。典型的には、対象は末梢脱髄疾患に罹患しているか、罹患する可能性がある。
【0060】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療する」という用語は、治癒的または疾患を修飾する治療、および予防的(prophylactic)または予防的(preventive)な治療の両方を指し、疾患に罹患するリスクがある対象もしくは疾患に罹患している疑いのある対象、および病気にかかっているか、または疾患もしくは医学的状態に苦しんでいると診断された対象の治療、並びに臨床的再発の抑制も含む。治療は、障害または再発性障害の1つまたは複数の症状について予防、治癒、発症の遅延、重症度の軽減、もしくは改善するために、またはそのような治療がない場合に予想される以上に被験者の生存を延長するために、医学的障害を有する対象または最終的に障害を発症する可能性のある対象に施されてもよい。「治療レジメン」とは、病気の治療パターン、例えば、治療中に使用される投薬パターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメンおよび維持レジメンを含み得る。「導入レジメン」または「導入期間」という語句は、疾患の初期治療に使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、治療レジメンの初期期間中に対象に高レベルの薬剤を提供することである。導入レジメンでは、(部分的または全体的に)「ローディングレジメン」を採用する場合があり、これには、医師が維持レジメン中に採用するよりも多量の薬剤を投与すること、医師が維持レジメン中に薬剤を投与するよりも頻繁に薬剤を投与すること、またはその両方が含まれる場合がある。「維持レジメン」または「維持期間」という語句は、疾患の治療中に対象を維持するため、例えば、対象を長期間(数月または数年)に渡って寛解状態に保つために、使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、連続療法(例えば毎週、毎月、毎年などの一定の間隔で薬物を投与すること)、または断続的療法(例えば、中断された治療、断続的な治療、再発時の治療、または特定の所定の基準を達成したときの治療[例えば、疾患の発現など])を採用し得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、患者に治療効果を与えるために必要な活性薬剤(すなわち、本発明のペプチド)の最小量を意味する。例えば、患者に対する「活性薬剤の治療有効量」は、患者に影響を与える疾患に関連する病理学的症状、疾患の進行もしくは身体状態の改善を誘発、促進、または引き起こす活性薬剤の量である。本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。特定の患者に対する具体的な治療上有効な用量レベルは、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事;使用した特定の化合物の投与時間、投与経路、排泄速度;治療期間;使用される特定のポリペプチドと組み合わせて、またはそれと同時に使用される薬物;および医療分野でよく知られている同様の要因を含むさまざまな要因によって異なる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「末梢脱髄疾患」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、軸索およびグリア細胞、特に末梢神経系(PNS)におけるシュワン細胞(SC)に対する実質的な損傷を伴う一連の疾患を指す。末梢脱髄疾患によって示される多種多様な形態は、それぞれ同様に多種多様な原因に固有に起因する可能性がある。例えば、末梢脱髄疾患は、遺伝的に発生することもあり(「遺伝性末梢脱髄疾患」)、全身疾患に起因することもあり、または毒性物質もしくは感染因子によって誘発されることもある(「後天性末梢脱髄疾患」)。
【0063】
本発明の方法は、末梢神経節ニューロン、交感神経ニューロン、感覚ニューロン、並びに有髄運動および感覚ニューロンを含む末梢神経の調節に影響を与える末梢脱髄疾患の治療または予防に広く適用可能である。
【0064】
特に、本発明の方法は、例えば目の神経、内耳および聴神経、ならびに有髄運動および感覚ニューロンを救出するように設計された治療に有用である。特に、本発明の方法は、末梢神経の脱髄を予防するのに特に適している。
【0065】
本発明のペプチドは、遺伝性末梢脱髄疾患の治療に適している。
【0066】
遺伝性末梢脱髄疾患は、世代から世代へと伝わる遺伝子異常によって引き起こされる。これらのいくつかについては、遺伝的欠陥がわかっており、診断および出生前カウンセリングのために検査が利用可能である。特に、遺伝性末梢脱髄疾患の診断は、通常、特に家族歴が陽性である場合、ニューロパチー症状の早期発症により示唆される。最近の遺伝的進歩以前は、筋電図検査および神経生検における神経伝導の顕著な低下という典型的な所見によって診断が裏付けられていた。神経生検の典型的な所見は、いわゆるたまねぎ様構造の存在を含み、これは神経線維の脱髄と再髄鞘化が繰り返されていることを示す。末梢神経脱髄に直接的または間接的に関連する遺伝性ニューロパチーがいくつかある。例としては、リフサム病、アベータリポタンパク血症、タンジール病、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病、ファブリー病、圧迫麻痺を伴う遺伝性ニューロパチー(HNPP)、家族性アミロイドニューロパチー、遺伝性感覚性ニューロパチーII型(HSN II)、遺伝性ポルフィリン症、先天性筋ジストロフィー1Aなどの筋ジストロフィー、およびデジェリン・ソッタス(Dejerine-Sottas)症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかの実施形態では、遺伝性脱髄疾患はシャルコー・マリー・トゥース(CMT)病である。
【0068】
CMT疾患は、最も一般的な遺伝性神経疾患である。これは、末梢神経の部分的な脱髄およびそれに伴う軸索および前角細胞の変性による筋肉の衰弱および萎縮を特徴とする。過去15年間で、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)の遺伝的基盤に関する知識が大幅に増加し、現在60以上の遺伝子が知られている。定期的に更新されるリストは、http://www.molgen.ua.ac.be/CMTMutations/Home/IPN.cfmで閲覧できる。常染色体優性遺伝が一般的であり、フリードライヒ運動失調などの、関連する中枢神経系変性疾患もよく見られる。いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、シャルコー・マリー・トゥース病4G型および1A型の治療に使用することができる。
【0069】
本発明のペプチドは、後天性末梢脱髄疾患の治療にも適している。
【0070】
後天性末梢脱髄疾患は、当技術分野においてその一般的な意味を有し、糖尿病性ニューロパチー、免疫介在性ニューロパチー;急性および慢性の運動性ニューロパチー;急性および慢性の感覚性ニューロパチー;急性および慢性の自律神経系神経障害;注視麻痺、協調運動障害および不安定な歩行が見られるミラー・フィッシャー症候群を含むが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、糖尿病性ニューロパチーの治療に使用される。糖尿病は、ニューロパチーの最も一般的な既知の原因である。糖尿病患者の約50%に症状が現れる。ほとんどの場合、ニューロパチーは主に感覚性であり、手と足の痛みと感覚喪失を伴う。しかし、一部の糖尿病患者は、慢性脱髄性ニューロパチー、1つもしくは複数の神経の衰弱を引き起こす単神経炎もしくは多発性単神経炎、または脚の衰弱、炎症、壊死および膿瘍を引き起こす腰仙神経叢障害または筋萎縮症を患っている。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、免疫介在性ニューロパチーの治療に使用される。免疫系の主な機能は、外部から侵入する感染性微生物から体を守ることである。しかし場合によっては、免疫系が体に反抗し、自己免疫疾患を引き起こすこともある。免疫系は、Tリンパ球を含む数種類の白血球(これらも免疫応答を制御する);および「抗体」と呼ばれる特殊なタンパク質を分泌するBリンパ球または形質細胞で構成される。時々、未知の理由で、免疫系が誤って末梢神経などの身体の部分を攻撃することがある。「これが「自己免疫性」末梢性ニューロパチーである。攻撃される末梢神経の部分と免疫反応の種類に応じて、いくつかの異なるタイプがある。例えば、本発明の方法は、ギラン・バレー症候群(GBS)の治療に適している。突然または急速に発症する急性神経障害である。ギラン・バレー症候群は、発症後数日または数週間以内に麻痺および呼吸不全に進行することがある。ニューロパチーは、免疫系が運動神経と感覚神経のミエリン鞘を破壊することで引き起こされる。多くの場合、感染、ワクチン接種または外傷が先行しており、それが自己免疫反応を引き起こすものと考えられている。この病気は自然治癒し、6~8週間以内に自然に回復する。しかし、回復は不完全であることがよくある。
【0073】
本発明のペプチドによって治療され得る別の後天性末梢脱髄疾患は、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)である。CIDPは、ギラン・バレー症候群の慢性的でより緩徐な形態であると考えられている。この病気は、再発と呼ばれる発作を繰り返すか、段階的または着実に進行する。GBSと同様に、抗体とTリンパ球によるミエリン鞘の破壊があるようである。しかし、CIDPには特別な検査がないため、診断は臨床的および検査室の特徴に基づいて行われる。
【0074】
末梢神経に対する抗体を伴う慢性多発神経障害は、本発明のペプチドが使用できる別の後天性末梢脱髄疾患である。いくつかの種類の慢性ニューロパチーでは、神経の特定の成分に対する抗体が同定されている。これらには、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)に対する抗体に関連する脱髄性末梢疾患、ガングリオシドGM1またはGDlaに対する抗体に関連する運動性ニューロパチー、および抗スルファチドまたはGD1bガングリオシド抗体に関連する感覚性ニューロパチーが含まれる。このような場合の抗体は、神経内のタンパク質(糖タンパク質)または脂質(糖脂質またはガングリオシド)に結合しているオリゴ糖または糖様分子に結合する。
【0075】
本発明のペプチドはまた、血管炎または末梢神経における血管の炎症に関連する末梢脱髄疾患を治療するために使用することもできる。末梢脱髄疾患は、末梢神経における血管の炎症である血管炎によって引き起こされることもある。それは末梢神経の経路に沿って小さな「卒中(stroke)」を引き起こし、神経に限定される場合もあれば、皮膚の発疹を含んだり、他の臓器に影響を及ぼしたりと、全身性である場合もある。関節リウマチ、狼瘡、結節性動脈周囲炎またはシェーグレン症候群などのいくつかのリウマチ性疾患は全身性血管炎と関連しており、末梢神経に影響する場合もある。血管炎は、病変の分布と重症度に応じて、多発性神経炎、単神経炎または多発性単神経炎を引き起こす可能性がある。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、モノクローナル免疫グロブリン血症に関連する末梢脱髄疾患の治療に適している。モノクローナル免疫グロブリン血症では、骨髄またはリンパ器官内のB細胞または形質細胞の単一クローンが増殖して良性または悪性腫瘍を形成し、抗体を分泌する。「モノクローナル」というのは、抗体の単一クローンが存在するためである。そして、「免疫グロブリン血症(Gammopathy)」は抗体の別名である免疫グロブリンに対応する。場合によっては、抗体は神経成分と反応し、他の場合に、抗体の断片がアミロイド沈着を形成する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、腫瘍または新生物に関連する末梢脱髄疾患の治療に適している。ニューロパチーは、腫瘍細胞による神経への直接浸潤、または腫瘍の間接的な影響が原因である可能性がある。後者は腫瘍随伴性ニューロパチーと呼ばれる。いくつかのタイプが説明されている。例えば、本発明の方法は、肺がんに関連する感覚性ニューロパチーを管理するために使用することができる。同様に、本発明の方法は、多発性骨髄腫に関連する末梢脱髄疾患を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ワルデンストロム大球血症、慢性リンパ球性白血病またはB細胞リンパ腫に関連する末梢脱髄疾患の治療に適している。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、局所照射の結果であるか、または化学療法剤によって引き起こされる末梢脱髄疾患を伴うがんの患者の治療のための治療プロトコルの一部として使用される。感覚性および/または運動性ニューロパチーを引き起こすことが知られている化学療法剤には、シスプラチン、タキソールなどと共に、血液悪性腫瘍や肉腫の治療に使用される抗悪性腫瘍薬であるビンクリスチンが含まれる。神経毒性は用量に関連しており、腸の運動性の低下、および特に手足の遠位筋における末梢性ニューロパチー、起立性低血圧、並びに膀胱の無緊張として現れる。同様の問題がタキソールとシスプラチンについても報告されている(MoUman, J. E., 1990, New Eng Jour Med. 322:126-127)が、シスプラチン関連の神経毒性は神経成長因子(NGF)で軽減できる(Apfel, S. C. et al. 1992、Annals of Neurology 31:76-80)。神経毒性は神経毒性物質の除去後に可逆的な場合があるが、回復は非常に遅いプロセスになる可能性がある(Legha, S.、1986、Medical Toxicology 1:421-427; Olesen, et al、1991、Drug Safety 6:302- 314)。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、クロロキン、FK506(タクロリムス)、ペルヘキシリン、プロカインアミドおよびジメルジンなどの薬物によって引き起こされる末梢脱髄疾患の治療に適している。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、感染によって引き起こされる末梢脱髄疾患の治療に適している。末梢脱髄疾患は、末梢神経の感染によって引き起こされる可能性がある。末梢脱髄疾患を引き起こすウイルスには、ゆっくりと進行する感覚神経障害を引き起こすAIDSウイルスすなわちHIV-I、急速に進行する麻痺性ニューロパチーを引き起こすサイトメガロウイルス、帯状疱疹を引き起こす帯状疱疹ウイルス、運動性ニューロパチーを引き起こすポリオウイルスなどがある。B型またはC型肝炎感染は、血管炎性ニューロパチーを伴うことがある。ニューロパチーを引き起こす細菌感染症には、斑状の感覚性ニューロパチーを引き起こすハンセン病、および急速に進行する麻痺性神経障害を引き起こすジフテリアなどがある。ニューロパチーを引き起こす他の感染症には、スピロヘータによって引き起こされるライム病、寄生虫によって引き起こされるトリパノソーマ症が含まれる。どちらも一般に多巣性ニューロパチーを伴う。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、栄養の不均衡によって引き起こされる末梢脱髄疾患の治療に適している。たとえば、ビタミンB12、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB6(ピリドキシン)またはビタミンEの欠乏は、末梢神経軸索の変性を伴う多発性神経障害を引き起こす可能性がある。これは、食生活の乱れ、または胃もしくは腸からの栄養素の吸収能力の低下が原因である可能性がある。さらに、ビタミンB6の大量摂取は末梢脱髄疾患を引き起こす可能性があり、本発明のペプチドはそのような場合の解毒プログラムの一部として使用することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、腎臓疾患で生じる末梢脱髄疾患の治療に適している。慢性腎不全は、末梢神経軸索の変性を伴う主に感覚性の末梢性ニューロパチーを引き起こす可能性がある。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、甲状腺機能低下症神経障害の治療に適している。甲状腺機能低下症は、軸索変性を伴い痛みを生じる感覚性多発神経障害と関連することがある。単神経障害または多発性単神経障害は、腫れた組織による末梢神経の圧迫によって発生することもある。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、アルコールおよび毒素によって引き起こされる末梢脱髄疾患の治療に適している。特定の毒素は末梢性ニューロパチーを引き起こす可能性がある。鉛の毒性は、運動性ニューロパチーに関連し;ヒ素および水銀は感覚性ニューロパチーを引き起こし;タリウムは感覚性および自律性ニューロパチーおよび自律神経障害を引き起こす可能性があり、いくつかの有機溶剤および殺虫剤も同様に多発神経障害を引き起こす可能性がある。アルコールは神経に直接有毒であり、アルコール乱用は神経障害の主な原因である。本発明のペプチドは、いくつかの実施形態では、より広範な解毒プログラムの一部として使用することができる。さらに別の実施形態では、本発明のペプチドは、薬物によって引き起こされる末梢脱髄疾患の治療に使用することができる。いくつかの薬物は神経障害を引き起こすことが知られている。それらには、とりわけ、腎盂腎炎に使用されるニトロフラントイン、不整脈におけるアミオダロン、アルコール依存症におけるジスルフィラム、AIDSにおけるddCおよびddl、並びにハンセン病の治療に使用されるダプソンが含まれる。上記のように、本発明のペプチドは、いくつかの実施形態では、より広範な解毒プログラムの一部として使用することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、外傷または圧迫によって引き起こされる末梢脱髄疾患の治療に適している。局所的なニューロパチーは、外部からの圧力、または腱および他の組織を覆うことによる神経の圧迫によって生じることがある。これらの中で最もよく知られているのは、手首の圧迫によって生じる手根管症候群、および脊椎から出る際の神経根の圧迫によって生じる頸椎または腰部神経根症(坐骨神経痛)である。他の一般的な神経圧迫部位には、肘、脇の下および膝の裏が含まれる。
【0085】
本発明のペプチドは、様々な特発性末梢脱髄疾患の治療にも有用である。「特発性」という用語は、末梢脱髄疾患の原因が見つからない場合に使用される。これらの場合、末梢脱髄疾患はその症状、すなわち感覚性、運動性または感覚運動性の突発性多発神経障害に従って分類される。
【0086】
VDAC細孔は、多くの疾患に関与するタンパク質の特別なドッキング部位であり、パートナータンパク質との結合を破壊または強化できる薬剤の治療標的となっている。活性化されるシグナル伝達経路の上流でこのチャネルを遮断することは、心筋疾患(文献10、11)、がん(文献12、13-15)、糖尿病(文献14、14-16)、狼瘡様疾患(文献17)、非アルコール性脂肪肝疾患(文献24、25)、化学誘発性ニューロパチー(文献9)、アルツハイマー病(文献18、19)、パーキンソン病(文献20)、ハンチントン病(文献21)、ALS(文献22、23)、およびより一般的にはタンパク質凝集に関連するすべての神経変性疾患(文献28)との闘いにおいて重要である。
【0087】
したがって、本発明は、心筋疾患、がん、糖尿病、狼瘡様疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、化学誘発性ニューロパチー、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病(文献1)またはALSなどの神経変性疾患の治療に使用するための本発明のHK由来ペプチドまたは本発明のベクターにも関する。
【0088】
本明細書で使用する「狼瘡様疾患」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、特発性全身性エリテマトーデスに類似した臨床的、組織学的および免疫学的特徴を有する障害を指す。
【0089】
本明細書で使用する場合、「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、肝臓における脂肪の蓄積によって引き起こされる症状を指す。NAFLDの主な段階は、単純性脂肪肝(脂肪症);肝臓が炎症を起こした非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);持続的な炎症により肝臓とその近くの血管の周囲に瘢痕組織が生じる線維症、および長年の炎症の後に発生する最も重度の段階であり、肝臓が縮小して瘢痕化して塊状になる肝硬変である。
【0090】
本明細書で使用する「神経変性疾患」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、ニューロンの死を含む、ニューロンの構造または機能の進行性の喪失である神経変性を伴う疾患を指す。筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病を含む多くの神経変性疾患は、神経変性プロセスの結果として発生する。このような病気は不治の病であり、進行性の変性および/またはニューロン細胞の死をもたらす。研究が進むにつれて、これらの疾患を細胞内レベルで相互に関連付ける多くの類似点が明らかになる。これらの類似点の発見は、多くの病気を同時に改善できる治療の進歩への希望をもたらす。異型タンパク質凝集および誘導細胞死を含むさまざまな神経変性疾患の間には、多くの類似点がある(Rubinsztein DC (2006). Nature. 443 (7113): 780-6 and Bredesen DE, et al (2006). Nature. 443 (7113): 796-802)。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、タンパク質凝集に関連する疾患である(文献28)。
【0091】
経変性疾患には、アルツハイマー病、特に化学誘発性ニューロパチー、アルツハイマー病(文献18、19)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS)、骨および/または前頭側頭のパジェット病を伴う封入体ミオパチー認知症(IBMPFD)、前頭側頭葉変性症、シヌクレオパチー、ハンチントン病およびパーキンソン病、アミロイド血管症を含むアミロイド症、17番染色体に関連するパーキンソン病を伴う前頭側頭型認知症を含むタウオパチー、タンパク質封入体を伴う神経筋疾患、ならびにダウン症候群を含む発達性疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、化学誘発性ニューロパチー、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病もしくはALSを治療するか、または少なくともその重症度を軽減するために使用することができる。
【0093】
本明細書で使用される「糖尿病」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、慢性高血糖を特徴とする一般的な代謝障害を指す。糖尿病は、心臓病、脳卒中、末梢性ニューロパチー、腎臓病、失明、切断のリスクが高まることと関連している。糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病の3つの主な種類がある。以前の研究では、VDAC1阻害によりβ細胞機能が回復し、糖尿病マウスの高血糖が予防されることが実証された。
【0094】
本明細書で使用される「がん」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、体の他の部分に浸潤または拡散する可能性のある異常な細胞増殖を指す。がん細胞は、アポトーシスを避けるなど、正常細胞と異なるいくつかの特徴を共有している。アポトーシス調節の欠陥、あるいはアポトーシスの回避さえも、がんの特徴である。VDAC1は、エネルギー、代謝、アポトーシスの重要な調節因子としての役割を果たしているため、抗がん治療のユニークな標的となる(文献8)電位依存性アニオンチャネル1は、正常細胞におけるレベルと比較して、多くの種類のがんで高度に発現されている(文献8)。本発明のペプチドは、ヘキソキナーゼなどの抗アポトーシスタンパク質のVDACへの結合を妨害し、それによりアポトーシスの誘導を可能にすることにより、がんの治療に適している。
【0095】
本発明によれば、がんは、副腎皮質がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳および中枢神経系のがん、乳がん、キャッスルマン病、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胆嚢がん、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキン病疾患、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭および下咽頭がん、肝臓がん、肺がん、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔がんおよび中咽頭がん、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、下垂体がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、膣がん、外陰がん、子宮がんからなる群より選択され得る。
【0096】
<医薬組成物>
本発明のペプチドは、医薬組成物中で使用または調製され得る。
【0097】
別の態様では、本発明は、本発明のペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0098】
本発明は、末梢髄鞘形成疾患、心筋疾患、がん、糖尿病、狼瘡様疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、または化学誘発性ニューロパチー(文献9)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ALSなどの神経変性疾患の治療に使用するための本発明のペプチドまたは本発明のベクターを含む医薬組成物に関する。
【0099】
典型的には、本発明のペプチドは、薬学的に許容される賦形剤、および場合により生分解性ポリマーなどの徐放性マトリックスと組み合わせて、治療用組成物を形成することができる。
【0100】
本明細書で使用される場合、「薬学的に」または「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物、特にヒトに適切に投与された場合に、有害な反応、アレルギー反応、または他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物を指す。薬学的に許容される担体または賦形剤とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、または任意の種類の製剤補助剤を指す。
【0101】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所または直腸投与のための本発明の医薬組成物において、有効成分は、単独で、または別の有効成分と組み合わせて、単位投与形態で、従来の医薬担体と混合して動物や人間に投与され得る。適切な単位投与形態には、錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒および経口懸濁液または溶液などの経口経路形態、舌下および口腔投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下腔内および鼻腔内投与形態、並びに直腸投与形態が含まれる。好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤として薬学的に許容される賦形剤(vehicles)を含む。これらは、場合によって、滅菌水または生理食塩水を加えることで、注射用溶液の構成を可能にする、特に等張性、滅菌、生理食塩水(リン酸一ナトリウムもしくはリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムの塩化物など、またはこれら塩の混合物)または乾燥、特に凍結乾燥組成物であり得る。注射可能な使用に適した薬学的形態は、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、または水性プロピレングリコールを含む配合物;および滅菌注射用溶液または分散液を即時に調製するための滅菌粉末を含む。いずれの場合も、形態は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性がなければならない。製造および保管の条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対抗するように保存されなければならない。本発明の阻害剤を遊離塩基または薬理学的に許容される塩として含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物、並びに油中で調製することもできる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤には微生物の増殖を防ぐ防腐剤が含まれる。本発明の阻害剤は、中性または塩の形態で組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)を含み、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することもできる。担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物および植物油を含む溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤の組成物、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン中で使用することで、もたらされ得る。
【0102】
無菌注射液は、上に列挙した他の成分のいくつかとともに、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込み、必要に応じてさらに濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌賦形剤(vehicles)に、様々な滅菌された活性成分を組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と、任意の追加の所望の成分との粉末を予め無菌濾過されたその溶液から生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。製剤化の際、溶液は、投与製剤と適合する方法で、治療上有効な量で投与される。製剤は、上述の注射用溶液の種類などの様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。例えば、水溶液での非経口投与の場合、溶液は必要に応じて適切に緩衝され、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用できる滅菌水性媒体は、本開示を考慮すれば当業者には既知である。投与量の多少の変動は、治療を受ける被験者の状態に応じて、必然的に発生する。いずれにせよ、投与責任者は個々の被験者に適切な用量を決定する。
【0103】
本発明は、以下の図および実施例によってさらに説明される。しかしながら、これらの例および図は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0104】
[実施例1]
<材料と方法>
SAR研究(トランケーションおよびAla-スキャン)で使用したペプチド1a~6rは、Proteomic Solutions(Saint-Marcel、フランス)から購入した。ペプチド7a~g、3c’、5x’、7a’~g’は、自動マイクロ波ペプチド合成装置CEM Liberty One(CEM Corporation)で合成した。アミノ酸およびRink Amide MBHA 樹脂はIris Biotech(ドイツ)から購入し、Rink Amide MBHA LL樹脂はSigma-Aldrich/Novabiochem(セントルイス、ミズーリ州、米国)から購入した。Oxyma pureおよびDICはIris Biotech(マルクトレドヴィッツ、ドイツ)から入手した。HOBt、DIEAおよびTISはSigma-Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から入手し、ジクロロメタンとアセトニトリルはVWR Chemicals(米国ペンシルベニア州ラドナー)から入手した。DMFはCarlo Erba Reagents(ヴァル・ド・ルイユ、フランス)から入手し、ピペリジンはAcros Organics(イルキルヒ、フランス)から入手し、無水酢酸はProlabo(パリ、フランス)から入手した。ラット血清とジメチルスルホキシドは、Sigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州、米国)から購入した。エラスターゼ(ブタ膵臓由来、EC 3.4.21.36)はPromega(マディソン、ウィスコンシン州、米国)から購入した。
【0105】
〔固相ペプチド合成〕
すべてのペプチドは、CEM Liberty Oneマイクロ波支援ペプチド合成機でのFmoc法を使用した標準的な固相ペプチド合成によって調製された。使用した樹脂は、0.1mmolスケールで12~16ペプチド残基(化合物3c’、5x’、7a’~f’)を合成するためのRink Amide MBHA(100~200メッシュ、ローディング0.67mmol/g)、および0.033mmolまたは0.055mmolスケールでの25~29ペプチド残基(化合物5x、7a~f)のためのRink Amide MBHA LL(100~200メッシュ、ローディング0.36mmol/g)であった。DIC/Oxyma(DMF中0.5M/2M)を、5倍過剰の各保護アミノ酸を含むカップリング試薬として使用した。Fmoc-Arg(Pbf)-OHカップリングの場合、二重カップリングを行った。20%ピペリジンのDMF溶液をFmoc基の脱保護に使用した。樹脂を反応容器内でDMF中で一晩膨潤させ、次いでマイクロ波照射下で伸長プロセスを実行した(1mLのDIC+0.5mLのOxyma pure、70℃(25W)で10分間)。脱保護サイクルは、DMF中の20%ピペリジン溶液を用いて実施した(7mLを75℃で30秒間、次に7mLを70℃で3分間)。N末端部分でさらなる修飾/追加のアミノ酸が必要な場合(化合物7a、7b、7d、7e、7f)、樹脂を2つまたは3つに分割した。合成の完了後、ペプチド結合樹脂を15mLのDMFで2回、および15mLのDCMで2回洗浄した。最後に、側鎖の脱保護および樹脂からのペプチドの切断を行い、TFA/水/トリイソプロピルシラン(95/2.5/2.5)で2~3時間処理することによってペプチドを樹脂から切断した。トリフルオロ酢酸溶液を減圧下で蒸発させ、続いてジエチルエーテル沈殿させ、ジエチルエーテルで洗浄して、粗ペプチドを白色粉末として得た。類似体をC18カラムでのRP-HPLCによって精製し、生成物の同一性をLCMSによって確認した。ペプチドの純度は、すべてのペプチドについて95%以上の純度であることがわかった。
【0106】
〔分析用HPLC〕
Thermo Fisher Scientific LC-MSデバイス、エレクトロスプレーイオン化源を備えるLCQフリートに接続されたAccela HPLCおよび3Dイオントラップアナライザー(コーン電圧は30V)でペプチドを分析した。使用したカラムはPhenomenex BioZen(商標)2.6μmペプチドXB-C18(LCカラム50×2.1mm)で、0.1%ギ酸水溶液(溶媒A)および0.1%ギ酸アセトニトリル溶液(溶媒B)で溶出し、溶出勾配:0~2分、20%B;2~5分、20~90%B;5-6分、90%B;7~10分、20%B、流速0.5mL/min、10μL注入とした。
【0107】
〔HPLC精製〕
Breezeソフトウェアによって操作され、214nmおよび254nmに設定されたWaters 2487可変吸光度検出器を備えたWaters 1525クロマトグラフィーシステムを使って、セミ分取HPLCによりペプチドを精製した。GRACE Vydac C-18カラム(250×10mm、5μm)を使用し、流速は3mL/minであった。ペプチドの極性に応じて2つの精製勾配を実行した。
【0108】
方法A.0.1%ギ酸水溶液(バッファーA)および0.1%ギ酸アセトニトリル(バッファーB)で、A/B(90:10)からA/B(50:50)まで30分間、次にA/B(90:10)で5分間、続いてA/B(90:10)で2分間のアイソクラティック勾配で、粗ペプチドを溶出させた。
【0109】
方法B.0.1%ギ酸水溶液(バッファーA)および0.1%ギ酸アセトニトリル(バッファーB)でA/B(80:20)からA/B(30:70)まで30分間、次にA/B(90:10)で5分間、続いてA/B(90:10)で2分間のアイソクラティック勾配で、粗ペプチドを溶出させた。
【0110】
〔CD分光法〕
円二色性(CD)実験は、Jasco J815分光偏光計で記録した。MeOHまたはpH7のDPBS中で、1mmの光路長CDキュベットを使用し、20℃で、190~260nmの波長範囲にわたってスペクトルを得た。0.2nmステップかつ2nmの帯域幅で、1.0秒の応答で連続スキャンモードを使用した。各三回のスキャンの平均からスペクトラムを得ることで信号対雑音比を改善した。サンプルスペクトルからバックグラウンドを差し引くことによってベースラインを補正した。アルファヘリックス含量は、次の方程式を使用して決定した:%ヘリシティ=([θ]obs x 100)/(-39500 x (1-2.57)/N)、ここで、[θ]obsは220nmでの平均残留楕円率であり、Nはペプチド結合の数である。
【0111】
〔NMR立体構造解析〕
NMRサンプルは、NHKI類似体(3c’、7c’、7d’、および7g’)をpH6.8のPBS(10%D2O)に最終濃度2mMになるまで溶解することによって調製した。必要に応じて、微量の0.1MNaOHまたはHCl溶液を使用してpHを調整した。溶解性に問題がある場合には、最大10%のDMSOを追加した。化合物3c’、7d’、および7f’は、40%TFE(PBS、10%D2O、pH6.8)の存在下で研究した。化学シフトはトリメチルシリルプロパン酸(TSP)を参照した。
【0112】
すべてのスペクトルは、モンペリエ大学(UM)の「Laboratoire de Mesures Physiques (LMP)」にある5mm三重共鳴凍結プローブ(1H、13C、15N)を備えたBruker Avance 600 AVANCE III分光計に記録した。同核2DスペクトルDQF-COSY、TOCSY (DIPSI2)、ROESY、およびNOESYは通常、256~400実数(t1)×2048(t2)複素数データポイントのデータ行列として、States-TPPI法を使用した位相感応モードで記録し;t1増分ごとに1.0~1.5秒の回復遅延を伴う8~48回のスキャン、および両次元で6009Hzのスペクトル幅を使用した。混合時間は、TOCSY実験では80ミリ秒、ROESY/NOESY実験では150ミリ秒であった。スペクトルはTopspin(Bruker Biospin)で処理し、Linux(登録商標)ステーション上のTopspinまたはNMRview 64で視覚化した。F1ドメインでのシフト正弦二乗乗算と線形予測によるアポダイゼーションの後、行列を1024(t1)×2048(t2)点までゼロフィルした。
【0113】
〔タンパク質分解安定性アッセイ〕
1mg/mLのエラスターゼのストック溶液を、Tris.HCl緩衝液(50mM、pH8、0.5mM CaCl2を含む)中で調製した。ストック溶液を、42μLのTris.HCl緩衝液中の658μLのストック溶液で0.94mg/mLに希釈した。すべてのペプチドをDMSOに溶解し、6.66mmol/Lのストック溶液を調製した。さらに希釈したペプチド溶液(0.666mmol/L)を、630μLのTris.HCl緩衝液pH8中の70μLのストック溶液で調製した。1.5mLエッペンドルフに、890μLのTris.HCl pH8を導入し、続いて100μLのペプチド溶液(0.666mmol/L)を加え、分解前に37℃で15分間インキュベートした。次いで、10μLのエラスターゼ溶液(0.94mg/mL)を添加した。反応混合物を1000rpmで振盪しながら37℃で4時間までインキュベートした。アリコート(50μL)をさまざまな時点で採取し、450μLのMeOHで反応停止し、4℃で20分間(14000rpm)遠心分離した。上清を注射バイアルに移し、0.1%ギ酸水溶液および0.1%ギ酸アセトニトリルの溶出プログラムを使用してLC-MSによって分析した(分析データのセクションを参照)。残りのペプチドおよび切断産物の相対濃度は、HPLCクロマトグラム/MSトレースの対応するピークの積分によって算出された。対照ペプチド溶液は酵素を用いずに調製された。対照ペプチド溶液の加水分解は、化合物5x’を除き、Tris緩衝液中37℃で4時間後も安定であることがわかった。すべてのタンパク質分解実験を3回繰り返して実行した。
【0114】
〔構造計算〕
1H化学シフトは古典的な手順に従って割り当てられた。NOEクロスピークは、NMRViewソフトウェア内で統合され、割り当てられた。メチレン対プロトン間のNOEピークの体積を1.8Åの基準として使用した。すべての制約の下限を1.8Åに固定し、上限を強い相関、中程度の相関、弱い相関に対してそれぞれ2.7、3.3、および5.0Åに固定した。前述のように、未解決の芳香族、メチレン、およびメチルプロトンのシグナルに対して上限の擬似原子補正を適用した。AMBER 16を使用した構造計算を、クッキング、一般化ボルン陰的溶媒モデルを使用した模擬アニーリングの2段階で実行した。クッキングステージを1000Kで実行し、100個の初期ランダム構造を生成した。シミュレートされたアニーリング計算を20ps(20000ステップ、長さ1fs)の間で実行した。まず、温度を急速に上昇させ、最初の5000ステップでは1000Kに維持し、次にシステムを5001ステップから18000ステップまで1000Kから100Kに徐々に冷却し、最後に残りの2000ステップで温度を0Kに下げた。最初の3000ステップでは、距離拘束の力定数を2.0から20kcal・mol-1・Åまで徐々に増加させた。シミュレーションの残りの部分(ステップ3001~20000)では、力定数を20kcal・mol-1・Åに維持した。0.3Åを超える違反のない20個の最低エネルギー構造がペプチド構造を代表すると考えられた。MOLMOLおよびPyMOLを使用して表現と定量分析を実行した。
【0115】
〔ラット血清におけるin-vitro代謝安定性〕
分解前に、ラット血清のタンパク質含有量をブラッドフォードアッセイによって測定したところ、108mg/mLであることがわかった。各ペプチドについて、DMSO中のストック溶液を6.66mmol/Lの濃度で調製した。溶液70μLを取り出し、630μLのMilliQ水に加えてペプチド水溶液(0.666mmol/L)を調製した。0.666mmol/Lのペプチド溶液50μLを添加する前に、325μLのMilliQ水および37℃で約10~15分間プレインキュベートした125μLの非希釈ラット血清を反応させた。混合物を1000rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした。異なる時点(0分、5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、5時間、7時間、24時間、48時間)でアリコート(25μL)を採取し、225μLのMeOHで酵素反応を停止させ、すべての血清タンパク質を沈殿させた。エッペンドルフチューブを4℃で20分間直接遠心分離(14000rpm)し、沈殿したタンパク質をペレット化することで除去した。上清を注射バイアルに移し、0.1%ギ酸水溶液および0.1%ギ酸アセトニトリル溶出プログラムを使用してLC-MSによって分析した(分析データのセクションを参照)。残りのペプチドおよび切断産物の相対濃度は、HPLCクロマトグラム/MSトレースの対応するピークの積分によって計算された。
【0116】
対照ペプチド溶液はラット血清を含めずに調製された。すべてのペプチド対照溶液は、37℃の水中で48時間にわたって安定であることが判明した。すべての血清安定性実験を3回繰り返して実行した。
【0117】
〔細胞培養とトランスフェクション〕
HEK-293細胞はATCC(American type culture collection, USA)から購入した。それらを、10%熱不活化FBS(Gibco、Thermo Fisher Scientific、フランス)および1%PS(Gibco、Thermo Fisher Scientific、フランス)を添加したDMEM(Gibco、Thermo Fisher Scientific、フランス)中で5%CO2、37℃の加湿インキュベーター内で培養した。
【0118】
ペプチドスクリーニングアッセイおよびライブイメージング実験では、メーカーの推奨に従って、jet-PRIME試薬(Polyplus-transfection S.A.、フランス)を使用して細胞にmitoGCaMP2およびGCaMP2プラスミドをトランスフェクトした。これら2つのプラスミドは、それぞれミトコンドリアを標的とするGCaMP2タンパク質とサイトゾルを標的とするGCaMP2タンパク質を発現する。
【0119】
〔ライブイメージング〕
mitoGCaMP2またはGCaMP2プラスミドのいずれかをトランスフェクトしたHEK-293細胞に対してライブイメージング実験を実行した。ウェルあたり500,000個の細胞を6ウェルマイクロプレート(NUNC、参照番号153066、Thermo Fisher Scientific、フランス)の10%FBSおよび1%PSを添加した1mlのDMEMに播種した。播種から48時間後、メーカーのプロトコルに従って、jet-PRIME試薬を使用して、2μgのmitoGCaMP2またはGCaMP2プラスミドを細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、マイクロプレートを、37℃、5%CO2の加湿チャンバーを備えたビデオ顕微鏡下に置いた。次に、6mMの予熱したMJ(37℃)を、33μMのペプチド1aを含むDMEM1mlを含むか、または含まず、赤色フェノールを含まず、10%FBSおよび1%PSが添加され、0.15%DMSOおよび5%エタノールを含むウェルに添加した。並行して、赤色フェノールを含まず、10%FBS、1%PS、0.1%DMSOおよび5%EtOHを含むDMEM1mlのみを含むウェルを対照条件として使用した。ペプチド1aの有無にかかわらず、MJを添加したときに、ライブイメージングの取得を開始した。対照条件として、0.1%DMSOおよび5%EtOHを含み、10%FBSおよび1%PSを添加し、赤色フェノールを含まないDMEM1mlの添加後に画像取得を開始した。倒立型Zeiss Axio Observer Z1(Zeiss、フランス)と20x/0.4対物レンズ(Zeiss、フランス)を使用して30分間2分ごとに動画を取得した。各条件について、3つの独立した実験を実行した。全体として、Zenソフトウェア(Zen 2.3 lite、Zeiss、フランス)およびImageJソフトウェア(バージョン1.52o、NIH、米国)を使用して、条件ごとに5つのROIを分析した。結果を、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.0.1)を使用して、平均値±SEMとして表す。
【0120】
〔スクリーニングアッセイ〕
設計された化合物の活性を、mitoGCaMP2でトランスフェクトされたHEK-293細胞で評価した。ウェル当たり40,000個の細胞を、10%FBSおよび1%PSを添加したDMEM200μl中のポリ-D-リジン(参照番号655946、Greiner Bio-One、フランス)でコーティングした96ウェルマイクロプレートに播種した。播種から24時間後、メーカーの推奨に従って、jet-PRIME試薬(Polyplus-transfection S.A.、フランス)を使用して、細胞をウェルあたり50ngのmitoGCaMP2プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、マイクロプレートリーダーCLARIOstar(登録商標)(BMG Labtech、フランス)を使用して蛍光の最初の測定を実行した。この測定値は、トランスフェクション時のミトコンドリアへのCa2+の基底レベルを表した。100μlのPBSで洗浄した後、0.1%DMSOおよび5%EtOHを含むPBS中の、最終濃度6mMの予熱した(37℃)MJおよび所定の最終濃度の化合物の混合物とともに、細胞をインキュベートした。細胞インキュベーター内で35分後、マイクロプレートリーダーCLARIOstar(登録商標)を使用して蛍光の2回目の測定を実行した。この測定値は、ペプチド活性に応じたミトコンドリアCa2+のレベルを表した。化合物を、マイクロプレートごとに3回、各ペプチドについて3回または5回の独立した実験でテストした。用量効果曲線については、化合物をマイクロプレートごとに3回、および3回の独立した実験でテストした。結果を2回目と1回目の測定値間の比として表し、これは0.1%DMSOおよび5%EtOHを含むPBSのみを含む化合物を含まない条件に対して正規化されている。結果をGraphPad Prism software (version 8.0.1)を使用したヒストグラムプロットおよび用量反応曲線の平均±SDとして表す。
【0121】
〔研究に使用したマウス〕
すべてのマウス実験は、ラングドック・ルシヨン地方の「動物実験委員会」および「最高研究省」(認可2017032115087316および2016091313354892)によって承認された。すべての手順は、動物処置に関するフランスの規制(フランス法令2013-118および2020-274)および動物福祉の保護に関する欧州連合の特定のガイドライン(指令2010/63/EU)に従って実行した。マウスは、湿度40~60%、周囲温度21~22℃、12時間暗所、12時間明所のサイクルで維持した。マウス実験は、Janvier Labs(フランス)から購入した12週齢のC57BL6/Jで実施した。
【0122】
〔坐骨神経外植片培養とCARSイメージング〕
12週齢のC57BL6/Jマウスをペントバルビタール(54.7mg/ml、100mg/kg、Centravet、フランス)を使用して安楽死させた。まず、坐骨神経を収集し、PBSで洗浄し、神経上膜を除去した。次に、5mm長の神経を、24ウェルマイクロプレート(NUNC、Thermo Fisher Scientific、フランス)内のDMEM500μl中に入れ、DMEMは0.1%DMSOを含む3μMの化合物を含む10%FBSと共に、または単独で1%PSを含み、さらに、加湿チャンバー内で37℃、5%CO2でインキュベートした。陰性対照は、化合物を含まない坐骨神経外植片培養物から構成された(1%PSを補充したDMEMのみ、10%FBSおよび0.1%DMSOを含むかまたは含まない)。無傷の坐骨神経を収集し、直ちに4%PFAで固定したものは、CARSイメージング用の健康なミエリン鞘の対照として用いた。24時間培養した後、坐骨神経外植片をPBSで3回洗浄し、4%PFA水溶液(電子顕微鏡科学、サーモフィッシャーサイエンティフィック、フランス)中で室温で1時間固定した。すべてのCARS画像を、遅延線で補完されたOPO(Zeiss、フランス)に接続された2光子顕微鏡LSM 7 MPで取得した。20倍の水浸対物レンズ(W Plan Apochromat DIC VIS-IR、Zeiss、フランス)を画像取得に使用した。各取得は3つの独立した実験で行なった。各実験では、Zenソフトウェア(Zen 2.3 lite、Zeiss、フランス)を使用して、条件ごとに3つのROIを使用して、フィールドごとに損傷した線維の割合を定量化した。結果を平均値±SDとして表す。
【0123】
〔統計分析〕
データはExcel(Microsoft Office Standard 2016)およびGraphPad Prism(バージョン8.0.1)ソフトウェア(Graphpadソフトウェア)で分析し、図の凡例に示すように平均±SDまたはSEMとして表した。平均値間の統計的差異を、図の凡例に示すように、一元配置分散分析の後にダネットの多重比較検定を使用するか、二元配置分散分析の後にテューキーの多重比較検定を使用して検定した。値間の差異は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001で有意であると見なされる。nsは、有意差がないことを示す。
【0124】
<結果>
〔ペプチドの合成1~7〕
alaスキャンを可能にするペプチドライブラリ1、2、欠失研究に使用した3、4、および最適化の最初のラウンドに使用した5は、Proteomic Solutionsで購入した。ペプチドライブラリ6および7は、Rinkアミド樹脂を使用した固相Fmoc/tBu法によって合成された伸長が完了した後、TFAを使用してペプチドを樹脂から切断し、各合成ペプチドの収率がx%~x%の範囲で、HPLC/MS分析で判断した場合の純度が少なくとも95%の目的の化合物を得た。ライブラリー7’のペプチドを除くすべてのペプチド1~7には、in cellulo結合アッセイ中にペプチドの内部移行を確実にするために使用されるTat細胞膜透過ペプチドが含まれている。VDAC認識に対するTatの効果を評価するために、TatをHKフラグメントのC末端またはN末端に配置した(
図4)。
【0125】
〔結合アッセイ〕
ペプチドの生物学的スクリーニングは、時間および用量依存的にミトコンドリアVDACのHK-1に結合および分離するジャスモン酸メチル(MJ)の能力に基づいている(文献16、20)。この目的のために、我々はin celluloスクリーニングアッセイを開発し、この研究では、細胞質VDACおよびHK25を発現するHEK293細胞が、細胞質Ca2+感知プローブであるGCaMP2、またはミトコンドリアマトリックスを対象とする同じプローブであるmitoGCaMP2をトランスフェクトされる。これらのプローブの使用により、上述のとおりin vivoで示されたように、細胞質およびミトコンドリアのCa2+レベルをリアルタイムでモニタリングすることが可能となった。VDACからHKを除去するMJを使用することで、細胞内のmitoGCaMP2蛍光の低下とGCaMP2蛍光の増加を通じて測定されるミトコンドリア外へのCa2+放出が誘導された。NHKI配列を模倣する化合物は、MJの存在下でこの放出を遮断し、VDACへの結合を通じてミトコンドリアと細胞質の蛍光レベルを維持する。一方、VDACの活性が低い化合物は、MJの添加で観察されるように、蛍光のミトコンドリアでの減少と細胞質での増加をもたらす。
【0126】
このアッセイを検証するために、mitoGCaMP2またはその細胞質型GCaMP2をトランスフェクトしたHEK-293細胞のタイムラプスイメージングを実施した。ミトコンドリアまたはサイトゾル内のCa2+の基底レベルは、治療前の少なくとも30分間は安定していた。MJによる処理(T=0)が、少なくとも30分間、mitoGCaMP2蛍光の有意な減少を誘導したことは(
図5A)、ミトコンドリアからのCa2+流出を示す。
【0127】
一方で、同じ時間枠で、GCaMP2蛍光が大幅に増加したことは(
図5B)、ミトコンドリアのCa2+放出と同時に細胞質Ca2+が増加したことを示す。MJ処理によって誘導された蛍光変化は、NHK-1配列を模倣するペプチド1a(
図5AのMJ+ペプチド1aの条件)またはサイトゾル(
図5BのMJ+ペプチド1aの条件)によって遮断され、このペプチドが、時間の経過とともにVDACを介してミトコンドリアカルシウムの放出を遮断できたことを示す。
【0128】
したがって、このin celluloシステムは、VDACを介したミトコンドリアCa2+放出に対する化合物の活性を測定するための関連アッセイを構成する。このアッセイを使用して、化合物1aおよび2aのIC50はそれぞれ15.6±2μMおよび13.9±3.1μMと測定された(データは示さず)。これらのデータに沿って、これらの条件を使用して10μMでの新しいペプチド活性をスクリーニングした。N末端またはC末端におけるTatペプチドの位置は、NHKIペプチドの活性に影響を与えなかった。
【0129】
〔ペプチド1aおよび2aにおけるalaスキャン〕
VDAC認識に関与するペプチド1aおよび2aのアミノ酸を同定するために、両方のペプチドに対してalaスキャンを実行した。我々は、すべてのアミノ酸がアラニン送達シリーズ1b-mおよび2b-mで置換された各ペプチドの12の誘導体を合成した(
図6A、6B)。シリーズ1およびシリーズ2でN末端またはC末端におけるTatの位置がそれぞれ異なる2つのシリーズを、上記の結合アッセイを使用して10μM濃度でテストした。2つのシリーズは同等に挙動する。実際、化合物1e-f、1i、2e-f、および2iでのNHK1におけるロイシン6、7およびフェニルアラニン11のアラニンによる置換は、VDACに対する親和性の低下を引き起こす。化合物1lでロイシン14をアラニンに置換する、同様の低下が引き起こされるが、これは対応する化合物2lでは見られない。
【0130】
〔ペプチド1a、2aの欠失研究〕
このalaスキャンは、VDACへの適切な結合に有用な最小限の配列を同定するために、NHK1配列の欠失研究によって遂行された(
図6C、6D)。N末端欠失は、1aに基づく7つのペプチド3a~gの合成を通じて検査され、C末端欠失は、2aに由来するペプチドの同等のセット4a~gによって調査された。2つのシリーズは10μMの濃度でテストされた。化合物3a~cによって証明されるように、残基1~3に及ぶNHK1のN末端部分は必須ではないと思われる。alaスキャンの結果を確認すると、化合物3f~gにおけるロイシン6および7の欠失は、VDACとの相互作用に有害である。化合物4a~cで証明されているように、化合物2aの最後の3つのC末端アミノ酸(ELK)を欠失させると、蛍光の低下が誘導された。驚くべきことに、化合物4dは、VDACに対して顕著な親和性を保持しており、フェニルアラニン11がVDACとの相互作用における重要な役割を果たしていることが改めて強調される。したがって、alaスキャン研究と欠失研究との組み合わせによって証明されるように、NHK1ペプチドの疎水性配列AQLLAYYF(配列番号89)は、VDACとの相互作用の核を構成する。
【0131】
〔結合の最適化〕
したがって、VDACとの相互作用に関与すると疑われるアミノ酸を等価体対応物に置換することを目的とする2番目の最適化のために、配列を短縮したペプチド3cおよび4dを保持した。こうして、化合物3cは、スレオニンが持つヒドロキシル部分の重要性を研究するために、NHK1配列の12位の固有のスレオニンがチロシン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびバリンで置換された新しい一連の化合物5a~hを提供する。同じシリーズでは、ベータ分岐アミノ酸または芳香族アミノ酸の影響を評価するために、ロイシン14がバリン、イソロイシン、フェニルアラニン、およびトリプトファンに置き換えられた。同じ置換を化合物4dのロイシン6および7に適用し、ロイシン、トリプトファンおよびチロシンをフェニルアラニン11の代用物として使用した(データは示さず)。
【0132】
5a~dのスレオニン12置換は、負に荷電したアスパラギン酸が導入された場合には効率的ではなく、有害ですらあった(5b)。逆に、トリプトファンによるロイシンの置換は、化合物5hおよび6dによって示されるように、VDACとの相互作用をわずかに増強したが、ロイシン7が置換された6hではより有意なレベルであった。最後に、化合物5hのロイシン14をトリプトファンに置換すると、活性が大幅に向上した。したがって、NHK1とVDACの相互作用は主に疎水性残基によって媒介され、アミノ酸の疎水性スケールに従って最も疎水性の残基と考えられるトリプトファンがそのような相互作用を強化する(文献35、36)。
【0133】
これらの結果を活用するために、ポジティブな効果をもたらす修飾を化合物5i-zおよび6l-rを提供するように組み合わせ、3μMでテストし、それぞれ3cおよび4dと比較した(
図6)。一連の化合物5i~zおよび6l~rでは、化合物3cおよび4dがベンチマークとして機能する。参照濃度を10μMから3μMに下げると、VDACを部分的に閉じた状態に維持できるようになり、カルシウム流出を遮断する化合物をよりよく区別できるトリプトファンによる疎水性ロイシン6または7の個々の置換は中程度の親和性の増加を伴ったが、化合物5x、5z、および6qで示されるように、単一のペプチドにおける2つの置換を組み合わせるとより大きな効果が得られた。それにもかかわらず、フェニルアラニン11の置換の分析はそれほど明白ではないが、5l、6qのロイシンまたは5t、5m、6m、6oのチロシンはこの位置に同様に収容される。最後に、トリプトファンによるロイシン14の置換も、化合物5l、5t、5x、および5zに有益な効果をもたらす。
【0134】
〔らせん折りの強化による結合の最適化〕
我々が導入した最後の修正は、NHK1配列で採用されているらせん折りを検討することを目的としていた(文献37)。この目的のために、ペプチドシリーズ7を送達するHK-1配列のN末端側に、いずれもα-ヘリックス誘導物質であるアラニンおよびα-アミノイソ酪酸(Aib、U)を交互に配置した配列を導入した。さらに、この修飾は、タンパク質分解による切断に対する化合物の感受性を低下させることが期待される。ioさらに、疎水性相互作用が適切なVDAC相互作用を条件付けたため、以前の研究で膜内へのペプチド挿入を強化することが示されたN末端キャッピングとして(文献38)、3-CF
3Ph[Tz]Uジペプチドを導入した(
図8A)。
【0135】
シリーズ7a~gは、スクリーニングアッセイで10μMおよび3μMでテストされた(
図8A~B)。このシリーズの中で、10μMで試験した場合、7b、7d、7f、および7gは化合物3cおよび5xよりも有意に高い活性を示したが(
図8A)、3μMでは7fと7gのみが依然として有意に高い活性を示した(
図8B)。したがって、それらの活性を正確に定義するために、7fおよび7gをスクリーニングアッセイで用量反応方式テストした(データは示さず)。それらのIC
50は、それぞれ2.6±0.6μMおよび1.7±0.2μMと評価された。このSAR研究を要約すると、HKのAQLLAYYF配列(配列番号36)には、HKとの相互作用に関与する重要な残基が含まれる。より具体的には、ロイシン6、7およびフェニルアラニン11で構成される疎水性パッチが相互作用を支配し、トリプトファンによるそれらの置換が相互作用を強化した。さらに、スクリーニングアッセイで化合物1a、5x、および7gに対して行われた用量反応実験で示されるように、最適化のさまざまなステップにより、VDACを介したミトコンドリアCa
2+流出に対する活性が10倍増加する(
図9)。さらに、異なる一連の化合物のヘリカルホイール投影により、VDAC相互作用に関与する残基はヘリックスの同じ面に配置された(データは示さず)。
【0136】
〔円二色性〕
PBS緩衝液中の化合物3c、5x、7a~fを円二色性により分析した。化合物3c、5x、7aは構造化されていないが、化合物7b~fは、α-ヘリックスで部分的に構造化されたペプチドと一致する約210および220nm負の最大値を示す(データは示さず)。NHK1ペプチドの構造におけるN末端に導入されたAibの寄与を評価するために、Tat配列を含まない化合物3c’、7a’、7b’、および7c’を合成した(データは示さず)。PBS溶液中では、化合物7b’および7c’で観察されるように、NHK配列のN末端に導入されたAU反復配列により、化合物がらせんとして徐々に折りたたまれることが可能になる(データは示さず)。PBS溶液ではCDスペクトルが対象の波長範囲全体に拡張できないため、メタノール中で分析を実行した。化合物3cは、PBS中でランダムコイル構造をとりながら、メタノールのコスモトロピック効果によりらせんとして折り畳まれ始める。それにもかかわらず、3つのAibを含む化合物7d’がシリーズの中で最も構造化されているため、配列に導入されたAibの量に応じてフォールディングに関してPBSで観察された傾向が確認された(データは示さず)。
【0137】
〔タンパク質分解安定性アッセイ〕
Tatは、NHK1由来ペプチドなどの生物活性カーゴの送達に適切なCPPであることが示されているが、血清安定性が低いため、その使用は制限されている(文献39、40)。実際、Tat配列の血清中での半減期は6分未満である(文献41、42)。さらに、血清はさまざまな切断部位を識別できない酵素の混合物で構成されている。予備実験では、25%ラット血清中のペプチド3cの溶液により、5分後に3cの10%だけが残るため、この不安定性が確認された(データは示さず)。さらに、複数の切断部位により生成される断片が多すぎるため、その濃度はLC-MS装置の検出限界を下回り、同定が不可能になる。したがって、一般に、好ましい切断部位を同定するには、定義済みのタンパク質分解酵素を使用する方が便利である。
【0138】
私たちの研究室で利用可能な酵素の中のセリンエンドペプチダーゼエラスターゼ(EC 3.4.21.36)は、血清と同様に膵臓に存在し、AQLLAYYF配列(配列番号:89)に存在する2つのアミノ酸であるP1位のアラニンとロイシンに対する顕著な一次特異性を考慮して選択され、この配列は、VDAC認識のために無傷のままである必要があるが、TATには存在しない(文献43、44)。したがって、NHK1配列はVDACへの適切な結合に重要であるため、我々は、Tatを含まないNHK1配列の研究に焦点を当て、化合物3c’、5x’、7a’および7d’-f’をpH8のTris.HCl緩衝液中で2時間かけてエラスターゼに曝露した(データは示さず)。
【0139】
この一連の化合物のうち、最初の最適化ステップ後に最も高い活性を誘導したNHKI配列を含むペプチド3c’および5x’は、30分未満で完全に分解された。これらのペプチドの7c’および7e’のN末端にAUAUパッチを追加しても、代謝安定性の改善には効果がなかった(データは示さず)。ただし、7a’および7d’のAibによる8位のアラニン置換により、エラスターゼに対する安定性が向上する。さらに、N末端がトリアゾール誘導体でキャップされた化合物7f’は、8位のアラニンが保存されているにもかかわらず、最も安定な化合物であった(データは示さず)。半減期が短縮された化合物(3c’、5x’、7c’、および7e’)にはこのアラニンが含まれていたため、エラスターゼの主な切断部位がアラニン8のC末端にあったことは注目に値する。したがって、酵素フラグメントはエラスターゼ特異性に従っており、8位のアラニンをAibに置き換えると安定性が向上した。
【0140】
この安定化がより複雑な媒体中で維持されるかどうかを検証するために、エラスターゼに対して最も高い安定性を示す化合物7a’、7d’および7f’、並びにアラニンの代わりに8位にAibを有する7f’の類似体である化合物7g’を数百のペプチダーゼを含むラット血清中でテストした(文献43)。化合物3c’および5x’は参照として用いた(
図10)。
【0141】
エラスターゼで得られたデータによれば、化合物3c’はラット血清中に存在するタンパク質分解酵素によって容易に処理され、1時間後には8%のみが残った(
図10)。化合物7f’は同等の速度で消失し、これは、ペプチドをトリアゾール基でキャッピングするだけでは血清中で十分ではないことを示唆する。しかし、8位のアラニンを7gのAibで置換すると、24時間後も化合物の54%が維持された。化合物7a’は時間の経過とともにより遅い分解を示し、24時間のインキュベーション後に約65%の化合物が残存したが、N末端にAUAUパッチを含む7a’の類似体である7d’は、75%の化合物の残存という最高の血清ペプチダーゼ耐性を示した。(
図10)。酵素フラグメントは、高分解能タンデム質量分析法によって同定された。
【0142】
結論として、これらの安定性研究は、8位のアラニンがNHKI由来ペプチドの酵素的切断の優先部位であると思われることを示した。実際、8位にAibを付加すると、血清プロテアーゼに対するNHKIの安定性が向上した。この安定性は、N末端を3-CF3-Ph[Tz]U誘導体またはAUAUパッチでキャッピングすることによってさらに強化された。
【0143】
〔坐骨神経外植片培養物に対するex vivo活性〕
次に、我々は、VDAC1(文献44、45、9)を介したミトコンドリアのCa2+放出を含む機構を通じてシュワン細胞が脱髄する坐骨神経外植片培養物に対するNHKI由来化合物の活性をテストした。コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)非線形顕微鏡を使用して、坐骨神経外植片における無傷のミエリンを画像化および定量化した。このイメージング方法は特定の標識を必要とせず、ミエリン鞘の分析に適する(文献47,48)。CARSを使用して画像化された無傷の坐骨神経では、SCによって生成されたミエリン鞘は、ランヴィエ絞輪を除いて(
図11)、軸索を囲む連続した線を形成する(
図11)。細胞培養培地中で神経をインキュベートしてから24時間後、球の形成を特徴とする自発的脱髄が起こる(
図11)。画像化された線維の総数に対する損傷した線維、つまり球形成を示す線維の割合を測定することによって脱髄を定量化した。
【0144】
最初の実験セットでは、スクリーニングアッセイの最も活性な化合物、つまり7dおよび7g、および対照として使用した関連化合物3cおよび5xを、培地中で血清を含まない3μMでテストした(データは示さず)。無血清培地中で24時間後、化合物3cは陰性対照と同じ割合の損傷線維を示したが、他のすべての化合物は損傷線維のレベルを有意に減少させた(データは示さず)。以前の実験と一致して、最適化された化合物7dおよび7gは、参照化合物3cおよび5xよりも大幅に活性が高かった。さらに、これらの最適化された化合物は、無傷の神経と同じミエリン鞘パターンを顕著に示した(データは示さず)。無血清培地条件で得られた結果は、最適化された化合物がミトコンドリアのCa2+放出の遮断に対する活性を増強しているため、スクリーニングアッセイから得られた結果と相関する。
【0145】
次の一連の実験では、血清を添加した培地中で同じ化合物を3μMで試験した(
図11A~C)。A試験したすべての化合物の中で、化合物7dおよび7gによる治療のみが神経線維損傷を有意に減少させ、これらのペプチドが脱髄を阻止するのに有効であり、効果を発揮するのに十分な期間血清中で安定していることを示す。注目すべきことに、これらの2つの化合物は、無傷の神経と同様のレベルでミエリン鞘を有意に保存することができた(
図11A~C)。
【0146】
結論として、以上の結果は化合物7dおよび7gのより高いタンパク質分解安定性、つまりAUAUパッチまたはN末端のトリアゾール部分と組み合わせて使用される8位のA8U置換のポジティブな効果を確認した。
【0147】
<考察>
HK1およびHK2に結合したVDAC1の構造に基づく2つの分子モデルが提案された(文献46、47)。どちらのモデルも細孔の上部に位置するHKを持つ同様の形状をしており、チャネルを閉じている。HKN末端ヘリックスを構成する25残基は、N末端VDACヘリックスとバレルの壁の間に挟まれている。HK2のセリンを無極性ロイシンに変異させると、変異体の安定性およびVDACへの結合が増加した。Alaスキャンと欠失研究とを組み合わせることで、AQLLAYYF配列(配列番号89)とそのロイシンおよびフェニルアラニンがVDAC相互作用において極めて重要であることを同定することができる。これら3つのアミノ酸をトリプトファンなどのより疎水性の高いものに置換すると、VDACとの相互作用が強化され、疎水性と結合能力との関係の仮説が裏付けられた(文献48)。HKのN末端配列はらせん構造をとっており(文献37)、我々は、ロイシン6、7およびフェニルアラニン11がヘリックスの同じ面に位置する疎水性パッチを構成する可能性を考慮した。そこで、HK配列にAibなどのヘリックス誘導因子を加えることにより、ヘリックス構造を強化することを試みた。予想通り、このような置換はヘリックス構造を誘導し、ヘリックス構造は緩衝液よりもメタノールのような有機溶媒中でより顕著であり、細孔への結合親和性の増加を伴う。それにもかかわらず、この結果は、水で満たされた細孔内のN末端ヘリックスを塞ぐ分子モデルに関しては直観に反したものであった。実際、ポリンチャネルはほとんどが正に帯電しているが、負に帯電した残基E66、E73、K74、D78、E189、E203は、VDACの細胞質露出ループ上に位置し、HKの結合に必須であることが確認されているが(文献49)、結合に関与するHKのN末端領域の残基についてほとんど知られていない(文献50)。実際、VDACとの適切な相互作用に不可欠なHKのN末端ヘリックスは、大部分が疎水性残基で構成されており、荷電したVDAC残基に直接結合することができない。それにもかかわらず、さまざまな研究では、HK結合の重要な残基としてE73が強調されており(文献51)、これはHK1結合を無効にするE73Q変異によって裏付けられている。E73はβ-バレルの外面の異常な位置にあり、膜の方向を向いている(文献52、3、4)。E73は、光親和性アプローチによって、コレステロールおよびニューロステロイドへの特別な結合部位であることも同定された(文献53)。この場合、VDACへのステロイドの結合はそのコンダクタンス容量に影響を与えないが、ステロイド結合部位がチャネル二量体化またはヘキソキナーゼ媒介シグナル伝達に関与している可能性が高いことを示唆する。コレステロール負荷がVDACへのHK結合に影響を与えるという証拠により、コレステロールヒドロキサム酸誘導体であるオレソキシムの開発が行われた。最近、疎水性の高いオレソキシムが水で満たされたVDAC細孔に入らず、タンパク質脂質界面で相互作用することが示された(文献54)。したがって、脂質二重層内に挿入されていると考えられるHKヘリックスについても示唆されているように(文献50)、疎水性3-CF3-Ar[Tz]タグを持つ化合物7fは、VDACのβバレルの疎水性外部と相互作用する同様の挙動を示す可能性がある。さらに、化合物7fに存在するものと同様の分子パターンを特徴とするさまざまな小分子は、VDAC-1と相互作用することができ、それらの結合はマイクロスケール熱泳動によって測定された(文献55、56)。この研究で開発した疎水性の安定化ヘリックスの性質により、膜とVDACの間の膜界面でのヘリックスの直接相互作用が促進される。したがって、電気生理学的測定によって裏付けられたモデルで最近提案されているように、HKヘリックスは、HK/VDAC相互作用を開始する膜アンカーとして定義できる(文献57)。この文脈において、このようなヘリックスは、VDACインターフェイス上のNHK1配列を正しく配置できる架橋プローブの開発ツールとして機能する。
【0148】
[実施例2]
HKペプチド5zを発現するAAV9ウイルス(AAV9-HKペプチド)を作製した。HEK293細胞に対照AAV9またはAAV9-HKペプチドを感染させたか、あるいは感染させなかった。2日後、ミトコンドリア内のカルシウムで蛍光を発する蛍光色素Rhod-2とともに細胞をインキュベートした。15分後、感染細胞をジャスモン酸メチル(6mM)とともにインキュベートし、非感染細胞をジャスモン酸メチル(6mM)+5zペプチド(5μM)とともに40分間インキュベートした。Rhod-2色素をイメージングする写真を5分ごとに撮影した。
【0149】
ジャスモン酸メチルは、以前の実験で非感染細胞に見られた減少と同様に、対照ウイルスに感染した細胞のミトコンドリアにおいてRhod-2蛍光の減少を誘導した。5zペプチドを発現するウイルスに感染した細胞、または5zペプチドで処理した細胞では減少は起こらなかった(
図12)。
【0150】
これは、5zペプチドを発現するAAV9ウイルスが、ペプチド5zのように、ジャスモン酸メチルの存在下でミトコンドリアのカルシウム放出を防止することを示している。AAV9の発現は、標的細胞における抗脱髄ペプチドの発現を持続する効率的な方法となる。
【0151】
<参考文献>
本出願全体を通じて、さまざまな参考文献が本発明に関係する最先端技術を説明している。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。
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【配列表】
【国際調査報告】