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特表2024-520064エミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池
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  • 特表-エミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】エミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/068 20120101AFI20240514BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20240514BHJP
   H01L 21/225 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L31/06 300
H01L21/22 E
H01L21/225 Q
H01L21/225 R
H01L21/225 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573123
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2022127190
(87)【国際公開番号】W WO2023072013
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111238759.X
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523183389
【氏名又は名称】トリナ・ソーラー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRINA SOLAR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 2 Trina Road, Trina PV Park, Xinbei District, Changzhou, Jiangsu 213031, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュウ チェンファ
(72)【発明者】
【氏名】チェン イーチィー
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジーユェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン イァォ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ダミン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シュェリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン イーフェン
(72)【発明者】
【氏名】フェン ヂージァン
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA03
5F251AA16
5F251CB18
5F251CB24
5F251DA03
5F251DA20
5F251GA04
5F251GA15
5F251HA03
5F251HA06
(57)【要約】
本願は、エミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池を提供する。エミッタの製造方法は、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子をシリコンウェーハの同一領域に順次レーザドーピングするように、少なくとも2つの異なる波長のレーザをホウ素リッチ層に順次照射して、エミッタを得るステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素リッチ層におけるホウ素原子をシリコンウェーハの同一領域に順次ドープするように、少なくとも2つの異なる波長のレーザを前記ホウ素リッチ層に順次照射して、エミッタを得るステップを含む、エミッタの製造方法。
【請求項2】
少なくとも2つの異なる波長のレーザを前記ホウ素リッチ層に順次照射するステップは、第1レーザを前記ホウ素リッチ層に照射した後、第2レーザをホウ素リッチ層に照射するステップを含み、
好ましくは、前記第1レーザの波長は450nmよりも小さく、前記第2レーザの波長は450nmよりも大きい、請求項1に記載のエミッタの製造方法。
【請求項3】
少なくとも2つの異なる波長のレーザを前記ホウ素リッチ層に順次照射するステップは、第1レーザを前記ホウ素リッチ層に照射した後、第2レーザを前記ホウ素リッチ層に照射するステップを含み、
好ましくは、前記第1レーザの波長は450nmよりも大きく、前記第2レーザの波長は450nmよりも小さい、請求項1に記載のエミッタの製造方法。
【請求項4】
シリコンウェーハをテクスチャ化し、低濃度ドープエミッタ及びホウ素リッチ層を製造し、高濃度ドープ選択的エミッタ及び金属電極を製造して、選択的エミッタ電池を得るステップを含み、
前記高濃度ドープ選択的エミッタは、請求項1~3のいずれか一項に記載のエミッタの製造方法により製造されたものであり、1回目のレーザドーピングと2回目のレーザドーピングにより前記ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を前記低濃度ドープエミッタの表面の同一領域に順次パターン化ドープして、前記高濃度ドープ選択的エミッタを得て、前記高濃度ドープ選択的エミッタが前記低濃度ドープエミッタに埋め込まれる、選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項5】
前記シリコンウェーハの表面をテクスチャ化処理してシリコンウェーハ基板を得、
好ましくは、前記シリコンウェーハは、N型シリコンウェーハを含み、
好ましくは、低濃度ドープエミッタを製造するステップは、前記シリコンウェーハ基板を拡散処理し、前記シリコンウェーハ基板の正面に前記低濃度ドープエミッタを形成するステップを含み、
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタの表面濃度は、(1E18~2E20)cm-3であり、
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタの接合深さは、0.1~2μmであり、
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタのシート抵抗は、100~500Ω/sqであり、
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタの表面が前記ホウ素リッチ層で被覆されており、
好ましくは、前記ホウ素リッチ層の厚さは、0.01~2μmであり、
好ましくは、前記高濃度ドープ選択的エミッタの表面濃度は、(3E18~1E22)cm-3であり、
好ましくは、前記高濃度ドープ選択的エミッタの接合深さは、0.2~5μmであり、
好ましくは、前記高濃度ドープ選択的エミッタのシート抵抗は、20~200Ω/sqである、請求項4に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項6】
前記高濃度ドープ選択的エミッタを製造した後、前記方法は、
前記シリコンウェーハ基板の裏面に対して、エッチング洗浄、トンネル層及びドープ多結晶シリコン層の堆積を順次行い、湿式化学洗浄、正面酸化アルミニウム層の堆積、両面パッシベーション膜層の堆積及び両面金属電極の製造を順次行うステップをさらに含む、請求項4又は5に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項7】
前記低濃度ドープ選択的エミッタを製造した後、前記方法は、
前記シリコンウェーハ基板の裏面に対して、エッチング洗浄、トンネル層の堆積、ドープ多結晶シリコン層の堆積、一次湿式化学洗浄を順次行い、高濃度ドープ選択的エミッタの製造、二次湿式化学洗浄、正面酸化アルミニウム層の堆積、両面パッシベーション膜層の堆積、両面金属電極の製造を順次行うステップをさらに含む、請求項4又は5に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項8】
ドープ多結晶シリコン層を堆積するステップは、
化学気相堆積法により真性アモルファスシリコン層を前記トンネル層の表面に堆積し、拡散法によりリンを前記真性アモルファスシリコン層内にドープしてドープアモルファスシリコン層を得るステップ、或いは、化学気相堆積法によりドープアモルファスシリコン層を前記トンネル層の表面に堆積するステップと、アニールして活性化することにより前記ドープ多結晶シリコン層を得るステップとを含み、
好ましくは、前記正面酸化アルミニウム層は、原子層堆積により製造され、
好ましくは、前記両面パッシベーション膜層は、正面パッシベーション膜層及び裏面パッシベーション膜層を含み、
好ましくは、前記正面パッシベーション膜層及び裏面パッシベーション膜層は、いずれもプラズマ化学気相堆積により製造され、
好ましくは、前記正面パッシベーション膜層は、前記正面酸化アルミニウム層の表面に堆積され、
好ましくは、前記裏面パッシベーション膜層は、前記ドープ多結晶シリコン層の表面に堆積される、請求項6又は7に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項9】
前記金属電極は、順次印刷及び焼結により製造され、
好ましくは、前記金属電極は、正面金属電極及び裏面金属電極を含み、
好ましくは、前記正面金属電極は、前記正面パッシベーション膜層及び正面酸化アルミニウム層を貫通し、前記正面金属電極は、高濃度ドープ選択的エミッタとオーミック接触を形成し、
好ましくは、前記正面金属電極の電極グリッド線の幅は、前記高濃度ドープ選択的エミッタの幅より小さく、
好ましくは、前記正面金属電極は、銀ペースト印刷又は銀アルミニウムペースト印刷の方式により製造され、
好ましくは、前記裏面金属電極は、銀ペースト印刷の方式により製造され、
好ましくは、前記裏面金属電極は、前記裏面パッシベーション膜層を貫通して前記裏面ドープ多結晶シリコン層とオーミック接触を形成する、請求項4~8のいずれか一項に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか一項に記載の選択的エミッタ電池の製造方法により製造される、選択的エミッタ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、太陽電池の技術分野に属し、例えば、エミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2021年10月25日に中国国家知識産権局に出願された、出願番号が202111238759.Xの中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本願に組み込まれる。
【0003】
太陽電池における選択的エミッタは、金属グリッド線とシリコンウェーハとの接触領域に高濃度ドープを行い、シリコンウェーハにおける非金属接触領域に低濃度ドープを行う構造である。このような構造は、金属接触領域の接触抵抗を低下させ、電池の直列抵抗を低下させるとともに、低濃度ドープ領域は、キャリア再結合を効果的に減らし、表面パッシベーションを向上させることができる。したがって、選択的エミッタ構造の製造により、電池の曲線因子及び電池の短波スペクトル応答を向上させ、最終的に電池の効率を向上させる。
【0004】
N型TOPCon電池は、パッシベーションエミッタとバックコンタクト(Passivated Emitter and Rear Cell、PERC)電池のアップグレードされた次世代製品と考えられ、太陽電池の効率を向上させることができる。正面ホウ素拡散選択的エミッタ構造は、TOPCon電池の電池効率を向上させる必須プロセスであるが、関連技術において低コストで量産可能な成熟プロセスがない。関連技術において、TOPCon電池における選択的エミッタは、二段階拡散、リバースエッチング、パターン化ホウ素源の事前堆積などにより製造されることが多いが、経済性が高くない。関連技術におけるレーザドーピングプロセスは、ホウケイ酸ガラスにおけるホウ素原子をケイ素にドープすることが困難であり、かつホウ素原子の酸化ケイ素、ケイ素への固溶度の違いにより、レーザ処理後の表面濃度が大幅に低下し、接合深さを深くすることができるが、良好なオーミック接触を形成することができない。
【0005】
CN109742172Aには、ホウ素源スピンコート及びレーザドーピングによるN型選択的エミッタ両面電池の製造方法が開示され、この製造方法は、N型シリコンウェーハをテクスチャ化することと、スピンコート法により有機ホウ素源を正面にスピンコートした後に乾燥させることと、拡散炉において拡散させて正面低濃度ドープエミッタを形成することと、レーザドーピングにより正面ホウケイ酸ガラス(BSG)に高濃度ドープ選択的エミッタを形成することと、裏面を洗浄してシリカガラス(PSG)を除去することと、裏面にリンを拡散させてリン裏面電界を形成することと、表裏面に反射防止パッシベーション膜を堆積することと、表裏面の金属電極を印刷して電池の製造を完成することと、を含む。
【0006】
CN112670353Aには、ホウ素ドープ選択的エミッタ電池及びその製造方法が開示され、この選択的エミッタ電池は、N型結晶シリコンと、前記N型結晶シリコンの正面に設けられた2つの正電極と、前記N型結晶シリコンの裏面に設けられた2つの負電極とを含み、前記N型結晶シリコンの裏面にSiO層が設けられ、前記SiO層にP型ドープ多結晶シリコン層が設けられる。同時に、ホウ素スラリー印刷+レーザ埋め込みの方式で選択的ホウ素SE構造を製造することが開示されている。
【0007】
CN113035976Aには、ホウ素ドープ選択的エミッタ及び製造方法、ホウ素ドープ選択的エミッタ電池が開示され、この製造方法は、テクスチャ化後のシリコンウェーハの表面に高濃度ドープ領域と低濃度ドープ領域を製造することを含み、具体的には、まず、シリコンウェーハの表面にホウ素ドープ剤を1層被覆し、ホウ素ドープ剤の被覆領域が高濃度ドープ領域のサイズ以上であり、次に、高濃度ドープ領域に位置するホウ素ドープ剤に対してレーザドーピングを行ってホウ化ケイ素を形成し、次に、ホウ化ケイ素を高温で埋め込み、高濃度ドープ領域を形成し、次に、シリコンウェーハの表面に低濃度ドープ領域を形成してホウ素ドープ選択的エミッタを得る。
【0008】
上記文献は、異なる方面から選択的エミッタの製造プロセスを改善するが、レーザドーピングプロセスにより、依然としてBSGにおけるホウ素源をP+層にドープすることが困難であり、かつレーザドーピングを使用した後、元のシリコンウェーハの表面濃度及び接合深さを同時に変更し、即ち、表面濃度を低下させ、接合深さを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第109742172号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第112670353号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第113035976号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願は、少なくとも2つの波長のレーザでシリコンウェーハの表面に対してホウ素ドープを行うことにより、シリコンウェーハの表面のホウ素ドープ濃度及び深さを効果的に調整することができるエミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様において、本願は、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子をシリコンウェーハの同一領域に順次ドープするように、少なくとも2つの異なる波長のレーザをホウ素リッチ層に順次照射して、エミッタを得るステップを含むエミッタの製造方法を提供する。
【0012】
第2態様において、本願は、シリコンウェーハをテクスチャ化し、低濃度ドープエミッタ及びホウ素リッチ層を製造し、高濃度ドープ選択的エミッタ及び金属電極を製造して、選択的エミッタ電池を得るステップを含む選択的エミッタ電池の製造方法を提供する。前記高濃度ドープ選択的エミッタは、第1態様に記載のエミッタの製造方法により製造されたものであり、1回目のレーザドーピングと2回目のレーザドーピングにより前記ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を前記低濃度ドープエミッタの表面の同一領域に順次パターン化ドープして、前記高濃度ドープ選択的エミッタを得て、前記高濃度ドープ選択的エミッタが前記低濃度ドープエミッタに埋め込まれる。
【0013】
第3態様において、本願は、第2態様に記載の選択的エミッタ電池の製造方法により製造される選択的エミッタ電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願に係る選択的エミッタ電池の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「トップ」、「ボトム」、「内側」、「外側」などの用語で示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係であり、本願を説明しやすい、又は説明を簡単にするだけに用いられ、示している装置又は部品が必ず特定の方位を有し、特定の方位構造と操作を有することを表す又は暗示することではない。また、「第1」、「第2」などの用語は、説明目的でのみ用いられており、相対的な重要性を示したり暗示したりするもの、又は示された技術的特徴の量を暗黙的に示すものとして理解されるべきではない。これにより、「第1」、「第2」で限定された特徴は、1つ又は複数の当該特徴を明示的又は暗黙的に含んでもよい。本願の説明において、特に明記されていない限り、「複数」は、2つ以上を意味する。
【0016】
なお、本願の説明において、特に明記されていない限り、用語「設置」、「つながる」、「接続」などの意味は、広義的に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、着脱可能な接続であってもよく、一体的な接続であってもよく、或いは、機械的な接続であってもよく、電気的な接続であってもよく、或いは、直接的に接続してもよいし、中間媒体を介して間接的に接続してもよく、2つの部材の内部の連通であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0017】
以下、図面を参照しながら具体的な実施形態により本願を説明する。
【0018】
本願は、エミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池を提供し、異なる波長帯のレーザに対するホウ素リッチ層の表面の応答が異なり、異なる波長のレーザのシリコンに対する熱作用の深さが異なるという特徴を利用して、少なくとも2つの波長のレーザでシリコンウェーハの表面に対してホウ素ドープを行うことにより、シリコンウェーハの表面のホウ素ドープ濃度及び深さを効果的に調整することができる。同時に、選択的エミッタ電池を製造する過程において、2つ以上の波長のレーザでパターン化レーザドーピングを順次行うことにより、レーザ領域の表面濃度及び接合深さを正確に調整して高濃度ドープ選択的エミッタを得ることができ、それにより、高濃度ドープ選択的エミッタの表面濃度を向上させるとともに、接合深さを増加させる。また、本願に係る選択的エミッタ電池の製造方法は、簡単で、操作しやすく、生産の時間コストを低減し、プロセスウィンドウを拡大させ、効率的な太陽電池製造技術の発展を推進することができる。
【0019】
第1態様において、本願は、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子をシリコンウェーハの同一領域に順次ドープするように、少なくとも2つの異なる波長のレーザをホウ素リッチ層に順次照射して、エミッタを得るステップを含むエミッタの製造方法を提供する。
【0020】
本願に係るエミッタの製造方法は、異なる波長帯のレーザに対するホウ素リッチ層の表面の応答が異なり、異なる波長のレーザのシリコンに対する熱作用の深さが異なるという特徴を利用して、少なくとも2つの波長のレーザでシリコンウェーハの表面に対してホウ素ドープを行うことにより、シリコンウェーハの表面のホウ素ドープ濃度及び深さを効果的に調整することができる。
【0021】
好ましくは、少なくとも2つの異なる波長のレーザをホウ素リッチ層に順次照射するステップは、第1レーザをホウ素リッチ層に照射した後、第2レーザをホウ素リッチ層に照射するステップを含む。
【0022】
好ましくは、前記第1レーザの波長は450nmよりも小さく、例えば、440nm、420nm、400nm、380nm、350nm、320nm、300nm、280nm、250nm、220nm、200nm、180nm、150nm又は100nmであってもよく、前記第2レーザの波長は450nmよりも大きく、例えば、460nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nm又は1200nmであってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0023】
好ましくは、少なくとも2つの異なる波長のレーザをホウ素リッチ層に順次照射するステップは、第1レーザをホウ素リッチ層に照射した後、第2レーザをホウ素リッチ層に照射するステップを含む。
【0024】
好ましくは、前記第1レーザの波長は450nmよりも大きく、例えば、460nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nm又は1200nmであってもよく、前記第2レーザの波長は450nmよりも小さく、例えば、440nm、420nm、400nm、380nm、350nm、320nm、300nm、280nm、250nm、220nm、200nm、180nm、150nm又は100nmであってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0025】
本発明は、(1)波長が450nm未満のレーザ及び波長が450nmを超えるレーザで、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子をシリコンウェーハの表面の同一領域に順次ドープすること、(2)波長が450nmを超えるレーザ及び波長が450nm未満のレーザで、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子をシリコンウェーハの表面の同一領域に順次ドープすること、という2つのレーザドーピングによるエミッタの製造方法を提供する。
【0026】
第2態様において、本願は、シリコンウェーハをテクスチャ化し、低濃度ドープエミッタ及びホウ素リッチ層を製造し、高濃度ドープ選択的エミッタ及び金属電極を製造して、選択的エミッタ電池を得るステップを含む選択的エミッタ電池の製造方法を提供する。
【0027】
前記高濃度ドープ選択的エミッタは、第1態様に記載のエミッタの製造方法により製造されたものであり、1回目のレーザドーピングと2回目のレーザドーピングにより前記ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を前記低濃度ドープエミッタの表面の同一領域に順次パターン化ドープして、前記高濃度ドープ選択的エミッタを得て、前記高濃度ドープ選択的エミッタが前記低濃度ドープエミッタに埋め込まれる。
【0028】
本願は、(1)波長が450nm未満のレーザ及び波長が450nmを超えるレーザで、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタの表面の同一領域に順次パターン化ドープすること、(2)波長が450nmを超えるレーザ及び波長が450nm未満のレーザで、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタの表面の同一領域に順次パターン化ドープすること、という2つのレーザドーピングによる高濃度ドープ選択的エミッタの製造方法を提供する。
【0029】
本願に係る選択的エミッタの製造方法は、異なる波長のレーザのシリコンに対する熱作用の深さが異なるという特徴を利用して、2つ以上の波長のレーザでホウ素原子を低濃度ドープエミッタの同一領域に順次パターン化ドープすることにより、当該領域の表面濃度及び接合深さを正確に調整して高濃度ドープ選択的エミッタを得ることができ、高濃度ドープ選択的エミッタの表面濃度を向上させるとともに、接合深さを増加させ、それにより、レーザ領域が高いドープ濃度及び深い接合深さを有し、非レーザ領域が低い表面濃度及び浅い接合深さを有する選択的エミッタ構造を形成する。
【0030】
好ましくは、前記シリコンウェーハの表面をテクスチャ化処理した後、シリコンウェーハ基板を得る。
【0031】
好ましくは、前記シリコンウェーハは、N型シリコンウェーハを含む。
【0032】
好ましくは、低濃度ドープエミッタを製造するステップは、前記シリコンウェーハ基板を拡散処理し、前記シリコンウェーハ基板の正面に前記低濃度ドープエミッタを形成するステップを含む。
【0033】
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタの表面濃度は、(1E18~2E20)cm-3であり、例えば、1E18cm-3、2E18cm-3、5E18cm-3、8E18cm-3、1E19cm-3、2E19cm-3、5E19cm-3、8E19cm-3、1E20cm-3又は2E20cm-3であってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0034】
なお、本願における「E」は、科学的表記を示し、例えば、「1E18」は、1×1018を指す。
【0035】
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタの接合深さは、0.1~2μmであり、例えば、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm又は2μmであってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0036】
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタのシート抵抗は、100~500Ω/sqであり、例えば、100Ω/sq、120Ω/sq、150Ω/sq、180Ω/sq、200Ω/sq、220Ω/sq、250Ω/sq、280Ω/sq、300Ω/sq、320Ω/sq、350Ω/sq、380Ω/sq、400Ω/sq、420Ω/sq、450Ω/sq、480Ω/sq又は500Ω/sqであってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0037】
好ましくは、前記低濃度ドープエミッタの表面が前記ホウ素リッチ層で被覆されている。
【0038】
好ましくは、前記ホウ素リッチ層の厚さは、0.01~2μmであり、例えば、0.01μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm又は2μmであってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0039】
本願において、シリコンウェーハ基板を拡散炉に入れて拡散して低濃度ドープ選択的エミッタを製造すると同時に、拡散炉にホウ素源を供給することにより、低濃度ドープ選択的エミッタの表面にホウ素リッチ層を被覆する。また、スピンコート又はスクリーン印刷方法により、低濃度ドープ選択的エミッタ表面のホウ素リッチ層を得ることもできる。また、常圧化学気相堆積(Atmospheric Pressure Chemical Vapor Deposition、APCVD)、低圧化学気相堆積(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、LPCVD)、プラズマ強化化学気相堆積(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、PECVD)などの化学気相堆積方法により反応堆積してホウ素リッチ層を形成することもできる。
【0040】
なお、本願では、拡散炉、スピンコート装置及び気相堆積装置の構造に対して要求がない。したがって、使用シーンに応じて異なるタイプの拡散炉、スピンコート装置及び気相堆積装置を選択するか、又は拡散炉、スピンコート装置及び気相堆積装置の構造を適応的に調整することができる。
【0041】
好ましくは、前記高濃度ドープ選択的エミッタの表面濃度は、(3E18~1E22)cm-3であり、例えば、3E18cm-3、5E18cm-3、8E18cm-3、1E19cm-3、2E19cm-3、5E19cm-3、8E19cm-3、1E20cm-3、5E20cm-3、8E20cm-3、1E21cm-3、2E21cm-3、5E21cm-3、8E21cm-3又は1E22cm-3であってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0042】
好ましくは、前記高濃度ドープ選択的エミッタの接合深さは、0.2~5μmであり、例えば、0.2μm、0.5μm、0.8μm、1μm、1.2μm、1.5μm、1.8μm、2μm、2.3μm、2.5μm、2.8μm、3μm、3.2μm、3.5μm、3.8μm、4μm、4.2μm、4.5μm、4.8μm又は5μmであってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0043】
好ましくは、前記高濃度ドープ選択的エミッタのシート抵抗は、20~200Ω/sqであり、例えば、20Ω/sq、40Ω/sq、60Ω/sq、80Ω/sq、100Ω/sq、120Ω/sq、140Ω/sq、160Ω/sq、180Ω/sq又は200Ω/sqであってもよく、列挙されていない当該数値範囲内の他の数値も同様に適用される。
【0044】
好ましくは、前記高濃度ドープ選択的エミッタを製造した後、前記シリコンウェーハ基板の裏面に対して、エッチング洗浄、トンネル層及びドープ多結晶シリコン層の堆積を順次行い、湿式化学洗浄、正面酸化アルミニウム層の堆積、両面パッシベーション膜層の堆積及び両面金属電極の製造を順次行う。
【0045】
この場合、湿式化学洗浄は、前記シリコンウェーハ基板の正面の周囲にめっきされた多結晶シリコン層及びホウ素リッチ層を除去するために用いられる。
【0046】
好ましくは、前記低濃度ドープ選択的エミッタを製造した後、前記シリコンウェーハ基板の裏面に対して、エッチング洗浄、トンネル層の堆積、ドープ多結晶シリコン層の堆積、一次湿式化学洗浄を順次行い、次に、高濃度ドープ選択的エミッタの製造、二次湿式化学洗浄、正面酸化アルミニウム層の堆積、両面パッシベーション膜層の堆積、両面金属電極の製造を順次行う。
【0047】
この場合、一次湿式化学洗浄は、シリコンウェーハ基板の正面の多結晶シリコン層を除去するために用いられ、二次湿式化学洗浄は、シリコンウェーハ基板の正面のホウ素リッチ層及びレーザ損傷層を除去するために用いられる。
【0048】
本願において、高濃度ドープ選択的エミッタを製造するステップは、実際の状況に応じて調整することができ、低濃度ドープエミッタを製造した後にレーザドーピングによる高濃度ドープ選択的エミッタの製造を行ってもよく、トンネル層及びドープ多結晶シリコン層の製造を完成した後にレーザドーピングによる高濃度ドープ選択的エミッタの製造を行ってもよい。
【0049】
本発明において、トンネル層は、酸化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、窒化ケイ素層又は酸化アルミニウム層のうちのいずれか1つを含み、熱酸化又は化学気相堆積などの方式でトンネル層をシリコンウェーハ基板の裏面に堆積する。
【0050】
好ましくは、ドープ多結晶シリコン層を堆積するステップは、化学気相堆積法により真性アモルファスシリコン層を前記トンネル層の表面に堆積し、拡散法によりリンを前記真性アモルファスシリコン層内にドープしてドープアモルファスシリコン層を得るステップ、或いは、化学気相堆積法によりドープアモルファスシリコン層を前記トンネル層の表面に堆積するステップと、アニールして活性化することにより前記ドープ多結晶シリコン層を得るステップとを含む。
【0051】
本願において、低圧化学気相堆積法又はプラズマ強化化学気相堆積法により真性アモルファスシリコン層をトンネル層の表面に堆積し、次に、拡散法によりリンを前記真性アモルファスシリコン層内にドープし、高温アニールして活性化することで前記ドープアモルファスシリコン層を得てもよく、低圧化学気相堆積法又はプラズマ強化化学気相堆積法によりドープアモルファスシリコン層をトンネル層の表面に堆積し、高温アニールして活性化することで前記ドープアモルファスシリコン層を得てもよい。
【0052】
好ましくは、前記正面酸化アルミニウム層は、原子層堆積により製造される。
【0053】
好ましくは、前記両面パッシベーション膜層は、正面パッシベーション膜層及び裏面パッシベーション膜層を含む。
【0054】
好ましくは、前記正面パッシベーション膜層及び裏面パッシベーション膜層は、いずれもプラズマ化学気相堆積により製造される。
【0055】
好ましくは、前記正面パッシベーション膜層は、前記正面酸化アルミニウム層の表面に堆積される。
【0056】
本願において、正面パッシベーション膜層は、SiNxパッシベーション膜層、酸化ケイ素パッシベーション膜層又はSiOxNyパッシベーション膜層のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0057】
好ましくは、前記裏面パッシベーション膜層は、前記ドープ多結晶シリコン層の表面に堆積される。
【0058】
本願において、裏面パッシベーション膜層は、SiNxパッシベーション膜層、酸化ケイ素パッシベーション膜層又はSiOxNyパッシベーション膜層のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0059】
好ましくは、前記金属電極は、順次印刷及び焼結により製造される。
【0060】
好ましくは、前記金属電極は、正面金属電極及び裏面金属電極を含む。
【0061】
好ましくは、前記正面金属電極は、前記正面パッシベーション膜層及び正面酸化アルミニウム層を貫通し、前記正面金属電極は、高濃度ドープ選択的エミッタとオーミック接触を形成する。
【0062】
好ましくは、前記正面金属電極の電極グリッド線の幅は、前記高濃度ドープ選択的エミッタの幅より小さい。
【0063】
好ましくは、前記正面金属電極は、銀ペースト印刷又は銀アルミニウムペースト印刷の方式により製造される。
【0064】
好ましくは、前記裏面金属電極は、銀ペースト印刷の方式により製造される。
【0065】
好ましくは、前記裏面金属電極は、前記裏面パッシベーション膜層を貫通して前記裏面ドープ多結晶シリコン層とオーミック接触を形成する。
【0066】
第3態様において、本願は、第2態様に記載の選択的エミッタ電池の製造方法により製造される選択的エミッタ電池を提供する。
【実施例1】
【0067】
本実施例は、以下のステップ(1)~ステップ(8)を含む図1に示す選択的エミッタ電池の製造方法を提供する。
【0068】
ステップ(1)では、N型シリコンウェーハの表面に対してテクスチャ化洗浄処理を行って、シリコンウェーハ基板1を得た。
【0069】
ステップ(2)では、シリコンウェーハ基板1を拡散処理するときにホウ素源を添加することにより、シリコンウェーハ基板1の正面に、表面濃度が1E19cm-3、接合深さが1μm、シート抵抗が300Ω/sqである低濃度ドープエミッタ2を形成し、低濃度ドープエミッタ2の表面に厚さが0.1μmのホウ素リッチ層を形成した。
【0070】
ステップ(3)では、まず、波長が325nmの紫外線レーザでホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2にパターン化ドープし、次に、波長が532nmのグリーンレーザでホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2の同一領域にパターン化ドープして、表面濃度が2E20cm-3、接合深さが3μm、シート抵抗が90Ω/sqである高濃度ドープ選択的エミッタ3を得た。
【0071】
ステップ(4)では、シリコンウェーハ基板1の裏面をエッチングし、裏面の周囲めっきを除去し、再び研磨してテクスチャ化し、表面を洗浄した。
【0072】
ステップ(5)では、熱酸化の方式によりシリコンウェーハ基板1の裏面に酸化ケイ素トンネル層7を成長させ、次に、600℃の堆積温度で、化学気相堆積法により酸化ケイ素トンネル層7の表面に厚さが120nmの真性アモルファスシリコン層を堆積し、次に、拡散法により真性アモルファスシリコン層内にリンをドープし、950℃の温度でアニールして活性化することで、ドープ多結晶シリコン層8を得て、次に、湿式化学洗浄を行って、シリコンウェーハ基板1の正面多結晶シリコン層及び正面ホウ素リッチ層を除去した。
【0073】
ステップ(6)では、プラズマ化学気相堆積法により低濃度ドープエミッタ2の表面に、正面酸化アルミニウム層4及び正面パッシベーション膜層5を順次堆積し、正面パッシベーション膜層5は、SiNxパッシベーション膜層であり、正面酸化アルミニウム層4及びSiNxパッシベーション膜層の総厚さは、80nmである。
【0074】
ステップ(7)では、プラズマ化学気相堆積法によりドープ多結晶シリコン層8の表面に、厚さが75nmの裏面パッシベーション膜層9を堆積し、裏面パッシベーション膜層9は、SiNxパッシベーション膜層である。
【0075】
ステップ(8)では、順次銀アルミニウムペーストで印刷し、焼結して正面金属電極6を得て、正面金属電極6の電極グリッド線の幅が高濃度ドープ選択的エミッタ3の幅より小さく、順次銀ペーストで印刷し、焼結して裏面金属電極10を得ることにより、前記選択的エミッタ電池を得た。
【実施例2】
【0076】
本実施例は、以下のステップ(1)~ステップ(8)を含む図1に示す選択的エミッタ電池の製造方法を提供する。
【0077】
ステップ(1)では、N型シリコンウェーハの表面に対してテクスチャ化洗浄処理を行って、シリコンウェーハ基板1を得た。
【0078】
ステップ(2)では、シリコンウェーハ基板1に対して拡散処理を行って、シリコンウェーハ基板1の正面に表面濃度が1E18cm-3、接合深さが2μm、シート抵抗が500Ω/sqである低濃度ドープエミッタ2を形成し、次に、スピンコート法によりホウ素源を低濃度ドープエミッタ2の表面に塗布し、乾燥後、厚さが2μmのホウ素リッチ層を形成した。
【0079】
ステップ(3)では、まず、波長が1064nmの赤外線レーザでホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2にパターン化ドープし、次に、波長が325nmの紫外線レーザでホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2の同一領域にパターン化ドープして、表面濃度が3E18cm-3、接合深さが5μm、シート抵抗が200Ω/sqである高濃度ドープ選択的エミッタ3を得た。
【0080】
ステップ(4)では、シリコンウェーハ基板1の裏面をエッチングし、裏面の周囲めっきを除去し、再び研磨してテクスチャ化し、表面を洗浄した。
【0081】
ステップ(5)では、450℃の温度で、化学気相堆積法によりシリコンウェーハ基板1の裏面に酸化ケイ素トンネル層7と、厚さが100nmのドープアモルファスシリコン層を順次積層して製造し、900℃の温度でアニールして活性化することで、ドープ多結晶シリコン層8を得て、次に、湿式化学洗浄を行って、シリコンウェーハ基板1の正面多結晶シリコン層及び正面ホウ素リッチ層を除去した。
【0082】
ステップ(6)では、プラズマ化学気相堆積法により低濃度ドープエミッタ2の表面に、酸化アルミニウム層及び正面パッシベーション膜層5を順次堆積し、正面パッシベーション膜層5は、SiNxパッシベーション膜層であり、酸化アルミニウム層及びSiNxパッシベーション膜層の総厚さは、85nmである。
【0083】
ステップ(7)では、プラズマ化学気相堆積法によりドープ多結晶シリコン層8の表面に、厚さが65nmの裏面パッシベーション膜層9を堆積し、裏面パッシベーション膜層9は、SiNxパッシベーション膜層である。
【0084】
ステップ(8)では、順次銀アルミニウムペーストで印刷し、焼結して正面金属電極6を得て、正面金属電極6の電極グリッド線の幅が高濃度ドープ選択的エミッタ3の幅より小さく、順次銀ペーストで印刷し、焼結して裏面金属電極10を得ることにより、前記選択的エミッタ電池を得た。
【実施例3】
【0085】
本実施例は、以下のステップ(1)~ステップ(8)を含む図1に示す選択的エミッタ電池の製造方法を提供する。
【0086】
ステップ(1)では、N型シリコンウェーハの表面に対してテクスチャ化洗浄処理を行って、シリコンウェーハ基板1を得た。
【0087】
ステップ(2)では、シリコンウェーハ基板1を拡散処理するときにホウ素源を添加することにより、シリコンウェーハ基板1の正面に、表面濃度が2E20cm-3、接合深さが0.1μm、シート抵抗が100Ω/sqである低濃度ドープエミッタ2を形成し、低濃度ドープエミッタ2の表面に厚さが0.01μmのホウ素リッチ層を形成した。
【0088】
ステップ(3)では、シリコンウェーハ基板1の裏面をエッチングし、裏面の周囲めっきを除去し、再び研磨してテクスチャ化し、表面を洗浄した。
【0089】
ステップ(4)では、熱酸化の方式によりシリコンウェーハ基板1の裏面に酸化ケイ素トンネル層7を成長させ、次に、600℃の堆積温度で、化学気相堆積法により酸化ケイ素トンネル層7の表面に厚さが120nmの真性アモルファスシリコン層を堆積し、次に、拡散法により真性アモルファスシリコン層内にリンをドープし、900℃の温度でアニールして活性化することで、ドープ多結晶シリコン層8を得て、次に、湿式化学洗浄を行って、シリコンウェーハ基板1の正面の多結晶シリコン層及び正面ホウ素リッチ層を除去した。
【0090】
ステップ(5)では、波長が325nmの紫外線レーザでホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2にパターン化ドープし、次に、波長が1064nmの赤外線レーザでホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2の同一領域にパターン化ドープして、表面濃度が1E22cm-3、接合深さが0.2μm、シート抵抗が20Ω/sqである高濃度ドープ選択的エミッタ3を得て、次に、湿式化学洗浄を行って、シリコンウェーハ基板1の正面のホウ素リッチ層及びレーザ損傷層を除去した。
【0091】
ステップ(6)では、プラズマ化学気相堆積法により低濃度ドープエミッタ2の表面に、酸化アルミニウム層及び正面パッシベーション膜層5を順次堆積し、正面パッシベーション膜層5は、SiNx-酸化ケイ素パッシベーション膜層であり、酸化アルミニウム層及びSiNx-酸化ケイ素パッシベーション膜層の総厚さは、130nmである。
【0092】
ステップ(7)では、プラズマ化学気相堆積法によりドープ多結晶シリコン層8の表面に、厚さが65nmの裏面パッシベーション膜層9を堆積し、裏面パッシベーション膜層9は、SiNxパッシベーション膜層である。
【0093】
ステップ(8)では、順次銀アルミニウムペーストで印刷し、焼結して正面金属電極6を得て、正面金属電極6の電極グリッド線の幅が高濃度ドープ選択的エミッタ3の幅より小さく、順次銀ペーストで印刷し、焼結して裏面金属電極10を得ることにより、前記選択的エミッタ電池を得た。
【0094】
実施例1~3では、2つの波長のレーザでホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2の表面の同一領域に順次パターン化ドープし、実施例1及び実施例3では、いずれも波長が450nm未満のレーザ及び波長が450nmを超えるレーザで、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2の表面の同一領域に順次パターン化ドープし、実施例2では、波長が450nmを超えるレーザ及び波長が450nm未満のレーザで、ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2の表面の同一領域に順次パターン化ドープする。実施例1~3では、いずれもレーザ領域の表面濃度及び接合深さを正確に制御して高濃度ドープ選択的エミッタ3を得ることができ、高濃度ドープ選択的エミッタ3の表面濃度を向上させ、接合深さを増加させる効果を達成する。したがって、本発明は、異なる波長帯のレーザに対するホウ素リッチ層の表面の応答が異なるという特徴を利用して、2つ以上の波長のレーザでホウ素原子を低濃度ドープエミッタ2の同一領域に順次パターン化ドープすることにより、レーザ領域の表面濃度及び接合深さを正確に調整して高濃度ドープ選択的エミッタ3を得ることができ、それにより、高濃度ドープ選択的エミッタ3の表面濃度を向上させるとともに、接合深さを増加させることを実現する。
【0095】
本願に係るエミッタ、選択的エミッタ電池の製造方法及び選択的エミッタ電池によれば、異なる波長帯のレーザに対するホウ素リッチ層の表面の応答が異なり、異なる波長のレーザのシリコンに対する熱作用の深さが異なるという特徴を利用して、少なくとも2つの波長のレーザでシリコンウェーハの表面に対してホウ素ドープを行うことにより、シリコンウェーハの表面のホウ素ドープ濃度及び深さを効果的に調整することができる。同時に、選択的エミッタ電池を製造する過程において、2つ以上の波長のレーザでパターン化レーザドーピングを順次行うことにより、レーザ領域の表面濃度及び接合深さを正確に調整して高濃度ドープ選択的エミッタを得ることができ、それにより、高濃度ドープ選択的エミッタの表面濃度を向上させるとともに、接合深さを増加させることができる。また、本願に係る選択的エミッタ電池の製造方法は、簡単で、操作しやすく、生産の時間コストを低減し、プロセスウィンドウを拡大させ、効率的な太陽電池製造技術の発展を推進することができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素リッチ層におけるホウ素原子をシリコンウェーハの同一領域に順次ドープするように、少なくとも2つの異なる波長のレーザを前記ホウ素リッチ層に順次照射して、エミッタを得るステップを含む、エミッタの製造方法。
【請求項2】
少なくとも2つの異なる波長のレーザを前記ホウ素リッチ層に順次照射するステップは、第1レーザを前記ホウ素リッチ層に照射した後、第2レーザをホウ素リッチ層に照射するステップを含み、
記第1レーザの波長は450nmよりも小さく、前記第2レーザの波長は450nmよりも大きい、請求項1に記載のエミッタの製造方法。
【請求項3】
少なくとも2つの異なる波長のレーザを前記ホウ素リッチ層に順次照射するステップは、第1レーザを前記ホウ素リッチ層に照射した後、第2レーザを前記ホウ素リッチ層に照射するステップを含み、
記第1レーザの波長は450nmよりも大きく、前記第2レーザの波長は450nmよりも小さい、請求項1に記載のエミッタの製造方法。
【請求項4】
シリコンウェーハをテクスチャ化し、低濃度ドープ選択的エミッタ及びホウ素リッチ層を製造し、高濃度ドープ選択的エミッタ及び金属電極を製造して、選択的エミッタ電池を得るステップを含み、
前記高濃度ドープ選択的エミッタは、請求項1に記載のエミッタの製造方法により製造されたものであり、1回目のレーザドーピングと2回目のレーザドーピングにより前記ホウ素リッチ層におけるホウ素原子を前記低濃度ドープ選択的エミッタの表面の同一領域に順次パターン化ドープして、前記高濃度ドープ選択的エミッタを得て、前記高濃度ドープ選択的エミッタが前記低濃度ドープ選択的エミッタに埋め込まれる、選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項5】
前記シリコンウェーハの表面をテクスチャ化処理してシリコンウェーハ基板を得、
且つ/又は、前記シリコンウェーハは、N型シリコンウェーハを含み、
且つ/又は、低濃度ドープ選択的エミッタを製造するステップは、前記シリコンウェーハ基板を拡散処理し、前記シリコンウェーハ基板の正面に前記低濃度ドープ選択的エミッタを形成するステップを含み、
且つ/又は、前記低濃度ドープ選択的エミッタの表面濃度は、(1E18~2E20)cm-3であり、
且つ/又は、前記低濃度ドープ選択的エミッタの接合深さは、0.1~2μmであり、
且つ/又は、前記低濃度ドープ選択的エミッタのシート抵抗は、100~500Ω/sqであり、
且つ/又は、前記低濃度ドープ選択的エミッタの表面が前記ホウ素リッチ層で被覆されており、
記ホウ素リッチ層の厚さは、0.01~2μmであり、
且つ/又は、前記高濃度ドープ選択的エミッタの表面濃度は、(3E18~1E22)cm-3であり、
且つ/又は、前記高濃度ドープ選択的エミッタの接合深さは、0.2~5μmであり、
且つ/又は、前記高濃度ドープ選択的エミッタのシート抵抗は、20~200Ω/sqである、請求項4に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項6】
前記高濃度ドープ選択的エミッタを製造した後、前記方法は、
前記シリコンウェーハの裏面に対して、エッチング洗浄、トンネル層及びドープ多結晶シリコン層の堆積を順次行い、湿式化学洗浄、正面酸化アルミニウム層の堆積、両面パッシベーション膜層の堆積及び両面金属電極の製造を順次行うステップをさらに含む、請求項4に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項7】
前記低濃度ドープ選択的エミッタを製造した後、前記方法は、
前記シリコンウェーハの裏面に対して、エッチング洗浄、トンネル層の堆積、ドープ多結晶シリコン層の堆積、一次湿式化学洗浄を順次行い、高濃度ドープ選択的エミッタの製造、二次湿式化学洗浄、正面酸化アルミニウム層の堆積、両面パッシベーション膜層の堆積、両面金属電極の製造を順次行うステップをさらに含む、請求項4に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項8】
ドープ多結晶シリコン層を堆積するステップは、
化学気相堆積法により真性アモルファスシリコン層を前記トンネル層の表面に堆積し、拡散法によりリンを前記真性アモルファスシリコン層内にドープしてドープアモルファスシリコン層を得るステップ、或いは、化学気相堆積法によりドープアモルファスシリコン層を前記トンネル層の表面に堆積するステップと、アニールして活性化することにより前記ドープ多結晶シリコン層を得るステップとを含み、
且つ/又は、前記正面酸化アルミニウム層は、原子層堆積により製造され、
且つ/又は、前記両面パッシベーション膜層は、正面パッシベーション膜層及び裏面パッシベーション膜層を含み、
記正面パッシベーション膜層及び裏面パッシベーション膜層は、いずれもプラズマ化学気相堆積により製造され、
且つ/又は、前記正面パッシベーション膜層は、前記正面酸化アルミニウム層の表面に堆積され、
且つ/又は、前記裏面パッシベーション膜層は、前記ドープ多結晶シリコン層の表面に堆積される、請求項6又は7に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項9】
前記金属電極は、順次印刷及び焼結により製造され、
且つ/又は、前記金属電極は、正面金属電極及び裏面金属電極を含み、
記正面金属電極は、前記正面パッシベーション膜層及び正面酸化アルミニウム層を貫通し、前記正面金属電極は、高濃度ドープ選択的エミッタとオーミック接触を形成し、
且つ/又は、前記正面金属電極の電極グリッド線の幅は、前記高濃度ドープ選択的エミッタの幅より小さく、
且つ/又は、前記正面金属電極は、銀ペースト印刷又は銀アルミニウムペースト印刷の方式により製造され、
且つ/又は、前記裏面金属電極は、銀ペースト印刷の方式により製造され、
且つ/又は、前記裏面金属電極は、前記裏面パッシベーション膜層を貫通して裏の前記ドープ多結晶シリコン層とオーミック接触を形成する、請求項8に記載の選択的エミッタ電池の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の選択的エミッタ電池の製造方法により製造される、選択的エミッタ電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
本願において、低圧化学気相堆積法又はプラズマ強化化学気相堆積法により真性アモルファスシリコン層をトンネル層の表面に堆積し、次に、拡散法によりリンを前記真性アモルファスシリコン層内にドープし、高温アニールして活性化することで前記ドープ多結晶シリコン層を得てもよく、低圧化学気相堆積法又はプラズマ強化化学気相堆積法によりドープアモルファスシリコン層をトンネル層の表面に堆積し、高温アニールして活性化することで前記ドープ多結晶シリコン層を得てもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
ステップ(4)では、熱酸化の方式によりシリコンウェーハ基板1の裏面に酸化ケイ素トンネル層7を成長させ、次に、600℃の堆積温度で、化学気相堆積法により酸化ケイ素トンネル層7の表面に厚さが120nmの真性アモルファスシリコン層を堆積し、次に、拡散法により真性アモルファスシリコン層内にリンをドープし、900℃の温度でアニールして活性化することで、ドープ多結晶シリコン層8を得て、次に、湿式化学洗浄を行って、シリコンウェーハ基板1の正面の多結晶シリコン層を除去した。
【国際調査報告】