(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】量子状態読み出しの配置構成および方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/12 20230101AFI20240514BHJP
【FI】
H10N60/12 Z ZAA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573245
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 FI2021050388
(87)【国際公開番号】W WO2022248759
(87)【国際公開日】2022-12-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519394241
【氏名又は名称】アイキューエム フィンランド オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユーハ・ハーセル
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ・モットネン
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC41
4M113AC45
4M113AC50
(57)【要約】
開示されているのは、量子状態読み出しの配置構成および方法である。第1の固体量子ビットは、第1の量子状態を提供するために使用されるものとしてよく、読み出し要素は、第1の量子状態を決定するために使用され得る。読み出し要素は、読み出しアクチュエータおよび1つまたは複数の熱量計を含み、読み出し要素の散逸は、1つまたは複数の熱量計に由来する散逸によって支配されるように配置構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子状態読み出し配置構成であって、
- 第1の量子状態を提供するための第1の固体量子ビットと、
- 前記第1の量子状態を決定するための読み出し要素であって、前記読み出し要素は
○ 前記第1の量子状態の読み出しのために前記第1の固体量子ビットから読み出し信号が提供されるのを円滑にするための読み出しアクチュエータと、
○ 前記読み出し信号を受信し、前記第1の量子状態を決定するための出力信号を供給するために前記読み出し信号の少なくとも一部を熱エネルギーに変換するように配置構成されている1つまたは複数の熱量計とを備える、読み出し要素とを備え、
前記読み出し要素は、その散逸が前記第1の量子状態の前記読み出しに対して前記1つまたは複数の熱量計に由来する前記散逸によって固定してまたは調整可能に支配されるように構成される、量子状態読み出し配置構成。
【請求項2】
前記読み出しアクチュエータは、前記1つまたは複数の熱量計に結合された、線形共振器などの、共振器と、前記第1の量子状態の前記読み出しを行う共振回路を形成するための前記第1の固体量子ビットとを含み、前記共振回路は、前記共振器の固有散逸を示す第1の品質係数および前記1つまたは複数の熱量計に由来する前記散逸を示す第2の品質係数を有し、前記第2の品質係数は前記第1の品質係数より小さい、請求項1に記載の配置構成。
【請求項3】
第2の量子状態を提供するための第2の固体量子ビットと、前記第2の量子状態を決定するための第2の読み出し要素とを含み、前記第2の読み出し要素は、前記第2の量子状態を読み出すための、線形共振器などの共振器を備え、前記第1の読み出し要素の前記共振器は第1の共振周波数を有し、前記第2の読み出し共振器は前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数を有する、請求項2に記載の配置構成。
【請求項4】
前記読み出しアクチュエータは、前記第1の量子状態の読み出しのために、Stewart-McCumberパラメータβc<100を有するように構成されたジョセフソン伝送線路を備える、請求項1に記載の配置構成。
【請求項5】
前記第1の量子状態を決定するための前記出力信号は、前記熱エネルギーの大きさに基づき前記1つまたは複数の熱量計から提供される、請求項1から4のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項6】
前記第1の量子状態を決定するための前記出力信号は、前記読み出し信号を熱エネルギーに変換するタイミングに基づき前記1つまたは複数の熱量計から提供される、請求項1から5のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項7】
前記1つまたは複数の熱量計は、1つまたは複数の電子温度熱量計を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項8】
前記読み出し信号を供給するための入力信号を供給するための入力線と、前記1つまたは複数の熱量計に起因する前記第1の量子状態の減衰を抑制するために前記入力線と前記1つまたは複数の熱量計との間に結合された1つまたは複数のPurcellフィルタとを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項9】
前記1つまたは複数の熱量計に由来する散逸は調整可能である、請求項1から8のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項10】
前記1つまたは複数の熱量計に由来する前記散逸を調整するために前記1つまたは複数の熱量計に結合された調整可能なリアクタンスを備える、請求項9に記載の配置構成。
【請求項11】
第1のチップおよび1つまたは複数の第2のチップを備え、前記第1の固体量子ビットは、前記第1のチップ上に集積化され、前記1つまたは複数の熱量計は、前記1つまたは複数の第2のチップ上に集積化される、請求項1から10のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項12】
前記第1のチップおよび前記第2のチップの一方は、他方の上で反転され、前記第1の量子状態の読み出しのための前記第1のチップと前記第2のチップとの間の電気的接続は、前記第1のチップと前記第2のチップとの間のリアクタンス結合によって配置構成される、請求項11に記載の配置構成。
【請求項13】
前記1つまたは複数の熱量計は、前記第1の量子状態を決定するための前記出力信号を供給するカスケード接続された2つまたはそれ以上の熱量計を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項14】
量子状態読み出しのための方法であって、
- 前記量子状態の読み出しのために固体量子ビットの量子状態と相関する読み出し信号を供給するステップと、
- 前記量子状態の読み出しのために前記読み出し信号を1つまたは複数の熱量計で受信するステップと、
- 前記量子状態を決定するための出力信号を供給するために前記1つまたは複数の熱量計内の前記読み出し信号の少なくとも一部を熱エネルギーに変換するステップとを含み、
前記量子状態読み出しに対する散逸は、前記量子状態の前記読み出しに対して前記1つまたは複数の熱量計に由来する前記散逸によって固定してまたは調整可能に支配される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ビットの量子状態読み出し(quantum-state readout)に関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピューティングなどの、量子ビットの応用において、必要なステップは量子状態の測定である。典型的な測定は、量子状態をプローブすることを含み、検出シーケンスにおいて、結果として得られる信号は、最初にマイクロ波増幅器で増幅される。高忠実度測定を達成するために、増幅器は、非常に低い付加ノイズを有することを必要とする。さらに、特に複数の量子ビットの多重化読み出しのためには、増幅器の帯域幅は広いことが好ましい。低ノイズは、ジョセフソン効果(B.Yurkeら、Phys.Rev.A.、39、2519、1989年)に基づくパラメトリック増幅器であるジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)、または場合によっては超伝導運動インダクタンスによって特徴的に達成される。広帯域幅は、特殊なクラスのパラメトリック増幅器、すなわち高周波励起非線形マイクロ波伝送線路に基づく進行波パラメトリック増幅器(TWPA)により達成され、非線形性は一般にジョセフソン効果(O.Yaakobiら、Phys.Rev.B.、87、144301、2013年)に基づくか、あまり一般的ではないが、運動インダクタンス(M.R.Vissers、arXiv:1509.09280、2015年)に基づく。改善された代替手段が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】B.Yurkeら、Phys.Rev.A.、39、2519、1989年
【非特許文献2】O.Yaakobiら、Phys.Rev.B.、87、144301、2013年
【非特許文献3】M.R.Vissers、arXiv:1509.09280、2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、量子ビット読み出しのための改善されたスキームを提供することである。
【0005】
熱量測定に基づく読み出しスキームが提案され、1つまたは複数の熱量計が読み出しプロセスで生成される信号を検出するために使用される。熱量測定では、検出されるべき信号は、一部または全部、熱エネルギーに変換され、熱量計はこの熱エネルギーに比例し得る、電気信号などの出力信号を生成する。量子ビットの読み出しの場合、熱量計に供給されるべき信号は、量子ビット、ここでは固体量子ビット、の量子状態と相関している読み出し信号である。読み出し信号が量子ビットから供給されるのを円滑にすることを目的として、読み出しアクチュエータ(readout actuator)が第1の量子状態の読み出しに使用され得る。量子状態は読み出し信号と相関させることができ、それにより後者は量子状態の決定のための量子状態に関する情報を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、量子状態読み出し配置構成は、第1の量子状態を提供するための第1の固体量子ビットと、第1の量子状態を決定するための第1の読み出し要素とを備える。読み出し要素は、第1の量子状態の読み出しのために第1の固体量子ビットから読み出し信号が提供されるのを円滑にするための読み出しアクチュエータを含み得る。第1の量子状態の読み出しのための読み出し信号が供給されたときに、読み出し要素は、読み出し信号を受信し、読み出し信号の少なくとも一部を、第1の量子状態を決定するための出力信号を供給する熱エネルギーに変換するように配置構成された1つまたは複数の熱量計(本明細書では「熱量計」ともいう)を備える。それによって、量子ビットは、量子ビットに対する読み出し信号の、熱量計内の熱エネルギー吸収が量子状態に依存するように熱量計に結合され得る。これは、量子状態の読み出しのために量子ビットおよび熱量計が一体化された配置構成を提供する。重要なのは、熱量計が読み出し要素から分離されていないが、その一部として配置構成されていることである。したがって、別個の読み出し要素が、読み出し配置構成の各量子ビットに対して提供され得る。読み出し配置構成は、複数の固体量子ビットを含み得るので、量子ビットの各々は、その量子状態を決定するために、専用の読み出し要素、または1つまたは複数の熱量計の専用のセットに結合され得る。
【0007】
重要なことは、量子状態の読み出しについて、読み出し要素の散逸は、熱量計に由来する散逸によって支配され得ることである。熱量計を含む、読み出し要素は、たとえば、熱量計の固有散逸および/または読み出しアクチュエータに関する熱量計の結合を構成することによってしかるべく構成され得る。読み出し要素の散逸は、第1の量子状態の読み出しに対して1つまたは複数の熱量計に由来する散逸によって固定してまたは調整可能に支配され得る。熱量計に由来する散逸は、ここでは熱量計の固有散逸だけでなく、量子状態の読み出しに対して読み出し要素にどのように見えるかをも意味する。これに対応して、熱量計などの、本明細書において参照される任意のソースに由来する散逸は、量子状態の読み出しに対する前記ソースに関連する有効散逸とみなされ得る。量子状態の読み出しに対する、読み出し要素の散逸は、次いで、熱量計および読み出しアクチュエータを含むか、または少なくとも実質的にそれらからなる、読み出し要素における異なるソースからのそのような有効散逸の合計である。したがって、熱量計は、読み出しアクチュエータ、または読み出し要素の残りの部分に比べて、読み出し要素の散逸に大きく寄与するように配置構成され得る。読み出し要素の残り部分、すなわち、熱量計を除いた読み出し要素の散逸は、読み出しを円滑にするための読み出し要素における信号伝送のための伝送線路に由来する散逸を含み得る。本開示の目的に関して、そのような散逸は、読み出しアクチュエータに由来する散逸の一部とみなされるものとしてよく、したがって読み出し要素の散逸は、熱量計および読み出しアクチュエータに由来する全散逸に対応する。読み出し要素は、固有のレベルの散逸を有するものとしてよく、さらに、多くの応用において、読み出し速度および読み出しシステムの安定性などの望ましい特性を有するための散逸の最適なレベルがあり得る。開示されているように、この配置構成は、読み出し要素の散逸が、読み出しのための熱量計へのエネルギー吸収を最大化しながら最適化され得るように設計され得る。
【0008】
読み出し要素の散逸は、少なくとも2つの方法で熱量計に由来する散逸によって支配され得る。第一に、読み出し要素は、熱量計に由来する散逸が、読み出しアクチュエータに由来する散逸に比べて大きく固定されるように配置構成され得る。代替的方法として、熱量計に由来する散逸は、読み出しアクチュエータに由来する散逸に関して、選択後に前者を後者に比べて大きくできるように調整可能であってよい。これらの目的のために、熱量計の固有散逸および/または熱量計と読み出しアクチュエータとの間の結合は、それぞれ、固定されるか、または調整可能であってもよい。
【0009】
固体量子ビット、および特に超伝導量子ビットの最新技術はJPAまたはTWPAに依存しているので、開示された熱検出配置構成は、これらと比較され得る。以下で詳述されるように、開示された配置構成を熱検出とともに使用する効果の多くは、量子ビット数の増大とともに読み出しをスケーリングすることの潜在的可能性に、またより多くの統合ソリューションを実現するものとして、関係する。
【0010】
この配置構成の一般的効果は、熱量計が、簡単な方式で、所望の周波数帯域に適応するように構成可能であり得ることである。従来技術では、帯域幅要件は、数千個のジョセフソン接合と数十平方ミリメートルから数百平方ミリメートルの範囲内の物理的サイズからなる、比較的かさばるのが特徴であるTWPAにより典型的には対処され得る。対照的に、熱量計の能動要素は、読み出し信号の少なくとも一部を熱エネルギーに変換し、第1の量子状態を決定するための出力信号を供給するように、100平方マイクロメートルよりも小さいものとしてよい。これは、特に統合された読み出しソリューションの文脈において、量子ビットシステムのスケールアップを可能にするために使用され得る。開示されているような統合配置構成のさらなる効果は、確かに、典型的な増幅器配置構成と比較して、量子ビット回路の製造技術と親和性が高い熱量計の使用を可能にすることである。
【0011】
さらなる注目点は、典型的なTWPAの消費電力が、RF(無線周波数)またはマイクロ波の「ポンプトーン(pump tone)」として提供される-70dBm~-60dBmにある点である。これは既存の量子ビットシステムにおいては必ずしも制限的でなく、統合ソリューションにおいては局所的加熱を通じて制限が設定し得る。対照的に、本開示による熱量計、またはそのポンプ電力は、-70dBM未満、たとえば-90dBm以下の読み出し電力を使用するように配置構成され得る。一実施形態において、熱量計に対する読み出し電力は、-126dBm以下、たとえば-132~126dBm、すなわち典型的なTWPAの読み出し電力よりも約6桁小さくてもよい。
【0012】
読み出しに必要な感度を考慮すると、TWPAは、典型的には、位相不感モードで動作し、標準的な量子限界は、増幅器の付加ノイズに対応するノイズ温度Te=hf/(2kb)によって定義されるような達成可能な最小分解能を設定する。原理的には、パラメトリック増幅器は、制約条件が適用されないいわゆるスクイーズド(位相感応)モードで動作させることができる。しかしながら、TWPAによる広帯域動作では、スクイーズの条件は実際には取得困難である。熱量計については、純粋な振幅検出器としての性質上、そのような基本的な制約は適用されない。
【0013】
一実施形態において、読み出しアクチュエータは、線形共振器などの共振器を含むか、またはそれからなる。これは、第1の量子状態の読み出しのための共振回路を形成するために1つまたは複数の熱量計および第1の固体量子ビットに結合され得る。共振回路は、共振器の固有散逸を示す第1の品質係数を有し得る。典型的には、この固有散逸は、共振器における誘電損失などの非理想性に起因することがあり、これは結果として、たとえば、共振器上および/または共振器を支持する基板上の自然表面酸化物から生じ得る。第1の品質係数は、共振器の幾何学的および/または製造詳細に対して特徴的であり得る。共振回路は、また、1つまたは複数の熱量計に由来する散逸を示す第2の品質係数を有し得る。第2の品質係数は、熱量計のインピーダンスおよび熱量計と共振器との結合に依存することがあり、いずれか一方または両方が調整可能であり得る。これは、熱量計のパラメータおよび熱量計を共振器に結合するための結合要素を選択することによって構成され得る。一実施形態において、第2の品質係数は、第1の品質係数より小さく、読み出し要素は、それに応じて構成され得る。これは、共振器が読み出しアクチュエータとして使用されるときに読み出し要素の散逸が熱量計に由来する散逸によって支配されることを可能にする。
【0014】
本明細書において参照される品質係数は、第1の量子状態の読み出しのための共振回路の品質係数として理解され得る。これらは、共振回路の品質係数として表されているが、読み出し要素および/または共振器の品質係数としても考えられ得る。共振回路の品質係数は、当技術分野においてQ値としても知られている。
【0015】
一般に、本開示について、量子状態読み出し配置構成は、入力線(これは、読み出し線としても提供され、参照され得るが、わかりやすくために、ここでは大部分は「入力線」と称される)を含み、この入力線に、1つまたは複数の読み出し要素が、量子ビットの量子状態の読み出しのために、それぞれの量子ビットとともに結合され得る。これに対応して、読み出し要素、すなわち共振回路は、また、読み出し要素(またはその読み出しアクチュエータ)を入力線に結合することに由来する第3の品質係数も有し得る。これによって、第3の品質係数は、対応する量子ビットとともに読み出し要素を入力線に結合することを記述するための外部品質係数とみなされ得る。しかしながら、第3の品質係数は、入力線に結合される読み出し要素および/または量子ビットの数に依存していないか、または実質的に依存していないものとしてよい。これは、読み出し要素/量子ビットが入力線とのみ効果的に相互作用し、入力線に結合された他の読み出し要素/量子ビットとは相互作用しないので可能である。この目的のために、異なる読み出し要素の共振器は、異なる周波数において調整されてもよい。入力線のインピーダンスは、それに結合された読み出し要素および/または量子ビットの数に実質的に依存しないものとしてよい。一実施形態において、第2の品質係数は、少なくとも実質的に第3の品質係数と同じになるように配置構成されてもよく、これは、量子状態の読み出しのための配置構成の散逸を最適化するために使用され得る。たとえば、2つの品質係数のうち高い方は、小さい方よりも最大で50%大きいものとしてよい。一実施形態において、その数はわずか10パーセントである。
【0016】
一般に、入力線に由来する散逸は、読み出し要素の散逸とは別のもの、たとえば、外部散逸として考えられ得る。
【0017】
一実施形態において、この配置構成は、1つまたは複数の第2の量子状態を提供するための1つまたは複数の第2の固体量子ビットと、それに対応して、(対応する)第2の量子状態を決定するための1つまたは複数の第2の読み出し要素とを備える。第2の読み出し要素は、第2の量子状態を読み出すための、線形共振器などの共振器を備え得る。第1の読み出し要素の共振器は第1の共振周波数を有し、第2の読み出し共振器は第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数を有する。これは、複数の量子ビットが単一の入力線を通してアドレス指定されることを可能にする。いくつかの量子ビットは、読み出し信号を供給するための入力信号(本明細書ではプローブ信号とも称される)を、異なる共振周波数に対応する周波数成分を有する周波数コムとして供給することによって同時にアドレス指定され得る。代替的に、入力信号は、時間領域で切り替わる単一周波数トーンを含むか、またはそれからなるものとしてよい。本明細書において参照されている第1および第2の共振周波数は、それぞれ、第1および第2の量子状態を読み出すための共振回路の共振周波数として理解され得る。異なる第2の読み出し要素の共振器のいずれかまたはすべてが、互いおよび第1の共振周波数に関して異なる共振周波数を有し得る。
【0018】
一実施形態において、読み出しアクチュエータは、ジョセフソン伝送線路(JTL)を含むか、またはそれからなる。JTLは、第1の量子状態の読み出しのために、Stewart-McCumberパラメータβc<100を有するように構成され得る。これは、JTLが読み出しアクチュエータとして使用されるときに読み出し要素の散逸が熱量計に由来する散逸によって支配されることを可能にする。
【0019】
一実施形態において、第1の量子状態を決定するための出力信号は、熱エネルギーの大きさに基づき1つまたは複数の熱量計から提供される。これに対応して、読み出しは、熱量計内に吸収されたエネルギーが量子状態に比例する読み出し信号の分数となるように配置構成され得る。
【0020】
一実施形態において、第1の量子状態を決定するための出力信号は、読み出し信号を熱エネルギーに変換するタイミングに基づき1つまたは複数の熱量計から提供される。これに対応して、読み出しは、エネルギー吸収のタイミングが量子状態に依存するように配置構成され、これは量子ビットの状態が何であるかを決定するために利用され得る。
【0021】
一実施形態において、1つまたは複数の熱量計は、1つまたは複数の電子温度熱量計を含むか、またはそれからなる。これは、熱量計が低い熱容量を与えられることを可能にし、次いで、量子状態を決定するための応答を改善することを可能にし得る。
【0022】
一実施形態において、配置構成、または読み出し要素は、読み出し信号を供給するための入力信号を供給するための入力線と、1つまたは複数の熱量計に起因する第1の量子状態の減衰を抑制するために入力線と1つまたは複数の熱量計との間に結合された1つまたは複数のPurcellフィルタとを備える。これは、量子ビットに対するデコヒーレンス時間を延長することを可能にするために使用され得る。
【0023】
一実施形態において、1つまたは複数の熱量計に由来する散逸は、調整可能である。これは、必要な場合に散逸がオン/オフされることを可能にするために使用され得る。たとえば、読み出し配置構成は、固体量子ビットの量子進化において熱量計に由来する散逸を減少させる、たとえば最小にするように構成され得る。代替的に、またはそれに加えて、読み出し配置構成は、量子状態の読み出しのための熱量計に由来する散逸を増大させる、たとえば最大にするように構成され得る。
【0024】
一実施形態において、配置構成、または読み出し要素は、1つまたは複数の熱量計に由来する散逸を調整するために1つまたは複数の熱量計に結合された調整可能なリアクタンスを備える。これは、熱量計に起因する散逸が読み出しアクチュエータに結合する仕方を変更することを可能にするので、読み出し要素の散逸を調整する効果的な方法を提供するとみなされる。
【0025】
一実施形態において、配置構成は、第1のチップおよび1つまたは複数の第2のチップを備える。第1の固体量子ビットは、第1のチップ上に集積化され、1つまたは複数の熱量計は、1つまたは複数の第2のチップ上に集積化される。これは、量子ビット回路および読み出し回路の層スタックを分離することを可能にし、それによって読み出し配置構成の製造および設計に柔軟性をもたらす。たとえば、量子ビットおよび読み出し要素は、別々に最適化され得る専用製造段階から取得され得る。また、量子ビットチップ上のより少ない製造工程を必要とすることによって量子ビットのデコヒーレンスを低減し、それによって汚染を回避することを可能にする。
【0026】
一実施形態において、第1のチップおよび第2のチップの一方は、他方の上で反転され、量子状態の読み出しのための第1のチップと第2のチップとの間の電気的接続は、第1のチップと第2のチップとの間のリアクタンス結合によって配置構成される。これは、熱量計を利用する読み出しのための2つの別個のチップを結合する効果的な方法を可能にする。
【0027】
一実施形態において、1つまたは複数の熱量計は、第1の量子状態を決定するための出力信号を供給するカスケード接続された2つまたはそれ以上の熱量計を含むか、またはそれからなる。これは、後置増幅段の要件を緩和することを可能にする。
【0028】
本明細書において説明されているように、読み出し信号は、読み出し信号が量子状態の決定のために量子状態に関する情報を含むように量子状態と相関することができる。読み出し信号は、入力信号を量子状態と相関させることによって提供され得る。そのような入力信号(「プローブ信号」とも称される)は、したがって、量子状態をプローブして読み出し信号を供給するために使用され得る。それに対応して、開示されている配置構成は、cQED(回路量子電気力学)読み出し配置構成であってよい。読み出し信号に対する入力信号を供給するために、この配置構成は、マイクロ波源などの、信号源を含み得る。
【0029】
しかしながら、たとえば、読み出し信号を供給するために量子状態と相関するフラクソンを生成する、他の代替的形態もある。これに対応して、開示されている配置構成は、SFQ(単一磁束量子)読み出し配置構成であってもよい。フラクソンを利用するために、その配置構成は、信号源としてフラクソン源を含み得る。読み出し配置構成は、それによって、読み出し配置構成内のフラクソン伝搬が第1の量子状態の影響を受けるように配置構成され得る。一例として、フラクソンは、量子状態に応じて読み出し要素内を伝搬するか、または伝搬せず、および/またはフラクソン伝搬のタイミングは、量子状態に依存してもよい。フラクソンは、たとえば、上で説明されているように、JTLが読み出しアクチュエータとしてまたはその一部として使用されるときに、読み出し信号を供給するために利用され得る。単一磁束量子技術は、量子状態を読み出すために異なる方法で使用され得る。読み出しは、量子状態に対して直接的にまたは間接的に関係する磁束を検出することに基づくものとしてよい。読み出し信号は、ジョセフソン伝送線路内を伝搬するフラクソンであってもよい。量子状態は、また、フラクソンが量子状態に応じて放出されるかまたは放出されないことに基づき決定されてもよい。代替的またはそれに加えて、量子状態は、放出されたフラクソンのタイミング情報に基づき決定され得る。
【0030】
本開示は、ここでは配置構成に関して提示されているが、代替的に、デバイスまたは装置として提供されてもよい。
【0031】
本開示において示されている、コンポーネントに対する面積のサイズは、チップ上に集積化されたときに注目しているコンポーネントが占有する面積を指すものとしてよい。
【0032】
第2の態様によれば、量子状態読み出しのための方法が提供される。方法は、量子状態の読み出しのために固体量子ビットの量子状態と相関する読み出し信号を供給することを含み得る。これは、量子状態の読み出しのために読み出し信号を1つまたは複数の熱量計で受信することを含み得る。これは、量子状態を決定するための出力信号を供給するために、1つまたは複数の熱量計内の読み出し信号の少なくとも一部を熱エネルギーに変換することを含み得る。量子状態読み出しに対する散逸は、量子状態の読み出しに対して1つまたは複数の熱量計に由来する散逸によって固定してまたは調整可能に支配され得る。共振器またはJTLなどの、読み出しアクチュエータを含む読み出し要素と、および1つまたは複数の熱量計が、この目的に合わせて構成され得る。第1の態様およびその実施形態の文脈において説明された任意の効果、手順、および構造は、第2の態様の文脈においても容易に適用可能である。
【0033】
上で説明されている態様および実施形態は、互いの任意の組合せで使用され得ることは理解されるべきである。これらの態様および実施形態のいくつかは、本発明のさらなる実施形態を形成するために一緒に組み合わされてもよい。
【0034】
さらなる理解を提供し、本明細書の一部をなすように含まれる添付図面は、例を例示し、説明とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。図面の説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】様々な例示による読み出し要素またはその一部を例示する図である。
【
図1b】様々な例示による読み出し要素またはその一部を例示する図である。
【
図1c】様々な例示による読み出し要素またはその一部を例示する図である。
【
図1d】様々な例示による読み出し要素またはその一部を例示する図である。
【
図2】断面図でもあり得る、一例による配置構成を示す側面図である。
【
図3b】配置構成に対する電力吸収の一例を例示する図である。
【
図4】様々な例による配置構成を例示する図である。
【
図5】様々な例による配置構成を例示する図である。
【
図6】様々な例による配置構成を例示する図である。
【
図7】様々な例による配置構成を例示する図である。
【
図8】様々な例による配置構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
類似の参照番号は、添付図面において同等の、または少なくとも機能的に同等の部品を指定するために使用される。
【0037】
添付図面に関連して以下で提示される詳細な説明は、例の一説明として意図されており、例が製作されるか、または利用され得る形態のみを表すものとしては意図されていない。しかしながら、同じ、または同等の機能および構造は、異なる例によって達成され得る。
【0038】
開示されるのは、読み出し要素および量子状態読み出し配置構成(または量子状態読み出し装置/デバイス、本明細書では単に「読み出し配置構成」とも称される)である。
【0039】
図1a~
図1dは、量子状態を提供するための固体量子ビット(本明細書では単に「量子ビット」と称される)に結合されたときに、量子状態を決定するための読み出し要素100またはその一部の例を示す。読み出し要素は、図に例示されているように、結合点120を通して量子状態に直接的または間接的に結合され得る。一般に、本開示により、そのような読み出し要素は、1つまたは複数の熱量計110(本明細書では「熱量計」とも称される)を含む。熱量計は、散逸要素であり、その固有散逸は固定または調整可能であり得る。たとえば、これらは固定もしくは調整可能な抵抗を有する抵抗器、または固定もしくは調整可能なインピーダンスを有するインピーダンス要素として例示され得る。これに対応して、熱量計は、調整可能な抵抗および/またはインピーダンスを有し得る。読み出し要素は、また、熱量計に由来する散逸を調整するために熱量計に結合されている1つまたは複数の固定および/または調整可能なリアクタンスを有し得る。これは、回路の別の部分において観測可能な熱量計の散逸が変更されることを可能にする。読み出し配置構成は、高周波(RF)回路として形成され、したがって熱量計は、RF回路内の散逸負荷として表され得る。熱量計は、フォノン温度熱量計を含むか、またはそれからなるものとしてよい。しかしながら、一実施形態において、熱量計は、また、電子温度熱量計を含むか、またはそれからなるものとしてよい。一般に、熱量計は、量子状態を決定するための熱検出器として動作するように構成され得る。
【0040】
基本的スキームは、熱量計に吸収されるエネルギーが量子ビットの状態に比例した読み出し信号の一部となるように読み出しを編成することである。この方法で、読み出し要素は、吸収されたエネルギーの量に基づき、すなわち熱エネルギーの大きさに基づき、量子状態を決定するように構成され得る。別の実施形態では、エネルギー吸収のタイミングは、量子状態に依存させることができ、読み出し要素は、このタイミングに基づき量子状態を決定するように構成され得る。
【0041】
読み出し要素は、読み出し信号が熱量計に供給されるように構成される。読み出し信号は、量子状態が読み出し信号から決定され得る方式で量子ビットの量子状態と相関するように量子ビットから提供され得る。読み出し要素は、読み出しアクチュエータを含むものとしてよく、これは、量子状態を決定するために相関方式で量子ビットから熱量計に読み出し信号を供給することを円滑にし得る。量子読み出しの技術分野の当業者には知られているように、または以下に示されているように、このような読み出しアクチュエータは、複雑で巧妙な仕掛けである必要はないが、異なる解決方法によって異なる効果が提供され得る。読み出し信号は、電流信号または電磁波信号などの電気および/または磁気信号であってもよい。読み出し信号は、パルス信号であってもよい。
【0042】
量子状態の読み出しの場合、熱量計の速度および/またはエネルギー分解能の両方が、読み出しに必要な十分な速度で小エネルギー読み出し信号の検出を円滑にするように最適化され得る。理想的熱量計のエネルギー分解能の熱力学的限界εは、2πkb*T2*Cの平方根として書かれるものとしてよく、ここで、Cは熱量計の熱容量であり、kbはボルツマン定数であり、Tは熱量計の温度である(電子温度熱量計の場合、これはフォノンの典型的な格子温度の代わりに、電子温度であってもよい)。熱時定数はτ=C/Gと書かれるものとしてよく、ここで、Gは熱コンダクタンスであり、これは、熱的効果によって制限される場合に、検出速度に対するスケールを設定し得る。したがって、εおよびτの両方を最小にすることは、熱容量Cを最小にすることを伴い得る。これに対応して、本開示については、熱量計は、超低熱容量Cを有し得る、ナノ熱量計を含むか、またはそれからなるものとしてよい。典型的な実施形態では、ε/hfは、1(たとえば1~10)またはそれ以下(hはプランク定数であり、fは量子ビット読み出しの周波数である)のオーダーであり得る。熱量計は、熱速度が1/(2πτ)>10kHzに従うように構成され、改善された検出率をもたらし得る。熱量計は、近接誘導温度依存インダクタンスに依存するナノ熱量計および/または超伝導体-絶縁体-常伝導体もしくは超伝導体-絶縁体-常伝導体-絶縁体-超伝導体(SINIS)トンネル接合に基づくナノ熱量計を含むか、またはそれからなるものとしてよい。特に、これらの例はどれも、電子温度熱量計として使用され得る。一般に、熱量計は、量子状態を決定するための低い熱容量を有し得る。これは、電子がフォノンから脱結合されたナノスコピックおよび/またはメゾスコピック構造における電子温度を検出することに基づく熱量計で達成され得る。近接ベースの超伝導-常伝導金属接合および超伝導体-絶縁体-常伝導体接合に基づく熱量計は、熱検出器として使用され得る。いくつかの実施形態において、電子温度依存インピーダンス変化がRF技術で記録され得る。
【0043】
量子ビットと読み出し要素、それにより熱量計との結合は、リアクタンス的に実行され得るが、これはキャパシタンス的および/またはインダクタンス的を含む。これは、キャパシタンス要素、たとえばコンデンサ、および/または相互インダクタンスなどのリアクタンス要素を使用することを伴い得る。
図1a~
図1dにおける例示は、熱量計を読み出し要素、量子ビット、および/または量子ビットを含む回路の任意のコンポーネントに結合する方法を示すと解釈され得る。量子ビットそれ自体に加えて、回路は、読み出し要素への量子ビットの結合をさらに定めるコンデンサなどの1つまたは複数のさらなる結合要素を含むことができる。したがって、以下では、「量子ビット回路」は単に量子ビットを指すこともある。一例として、
図1aに例示されているように、熱量計を量子ビット回路に結合することは、キャパシタンス的に実行され得る。この目的のために、コンデンサなどのキャパシタンス要素Cは、たとえば直列接続で、量子ビット回路、またはその結合点120と熱量計110との間に配置構成され得る。他の例では、
図1bに例示されるように、結合は、たとえば2つのインダクタンス要素の相互インダクタンスMを通じて、インダクタンス的に実行され得る。熱量計110は、第1の回路に配置されるものとしてよく、これは第1のインダクタンス要素と第2のインダクタンス要素との間の相互インダクタンスを通じて、量子ビット、またはその結合点120を有する別の第2の回路に結合される第1のインダクタンス要素と、第2のインダクタンス要素とを有する。
【0044】
本開示による熱量計は、読み出し要素それ自体の一部として配置構成されるものとしてよく、読み出し要素は単一の量子ビット専用であってよい。これに対応して、熱量計は、量子状態を決定するためのただ1つの量子ビットに結合されるように配置構成され得る。熱量計は、読み出し信号を受信し、量子状態を決定するための出力信号を供給するために読み出し信号の少なくとも一部を熱エネルギーに変換するように配置構成される。出力信号は、電流および/もしくは電圧信号ならびに/または電磁波信号などの電気および/または磁気信号であってもよい。たとえば、量子状態を直接的に示す電気信号であってもよい。重要なことに、読み出し要素の散逸は、熱量計に由来する散逸によって支配されるように配置構成され得る。読み出し要素は、量子ビット、読み出しアクチュエータ、および出力信号を供給するための熱量計を結合するための1つまたは複数の伝送線路を備え得る。しかしながら、熱量計は、読み出しアクチュエータおよびこれらの伝送線路、または読み出し要素の残り部分に由来する散逸よりも大きい散逸(読み出しのために読み出し要素から見える)を提供するように配置構成され得る。読み出し要素の伝送線路は、読み出しアクチュエータの一部とみなされ得る。伝送線路に由来する散逸は、読み出しアクチュエータに由来する散逸の一部とみなされ得る。これに対応して、読み出し要素の散逸は、熱量計および読み出しアクチュエータに由来する散逸を含むか、または少なくとも実質的にそれからなる。
【0045】
読み出し要素は、第1の量子状態を読み出すための読み出し信号を熱量計に提供するための入力信号を供給するために読み出し配置構成の入力線が結合され得るフィーダー線を含み得る。入力線は、伝送線路として配置構成されてよく、これを通して入力信号が各々それ専用の量子ビットに結合された1つまたは複数の読み出し要素に供給され得る。信号源は、入力信号を入力線を通して1つまたは複数の読み出し要素に供給するために入力線に結合され得る。入力線は、これによって、複数の量子ビットに使用される共通バスとみなされてよく、その各々は実際の読み出しを実行するそれ自体の読み出し要素とともに入力線に結合され得る。他方で、読み出し要素は、入力線から取得され得る、入力信号の受信後に単一量子ビットの読み出しを実行するための専用要素として提供され得る。
【0046】
一実施形態において、読み出しアクチュエータは、線形共振器(ここでは「共振器」とも称され、共振器は読み出し共振器とも称されてよい)などの、1つまたは複数の共振器(場合によっては上で説明されている伝送線路を含む)を含むか、またはそれらからなる。共振器はフィーダー線に結合され、上述の1つまたは複数の伝送線路は第1の量子状態を読み出すために読み出し信号を供給するフィーダー線を含むか、またはそれからなるものとしてよい。共振器は、第1の量子状態の読み出しのための共振回路を形成するために1つまたは複数の熱量計および第1の固体量子ビットに結合され得る。共振回路は、共振器の固有散逸を示す第1の品質係数を有し、これは共振器の固有品質係数に対応し得る。共振回路は、また、量子状態の読み出しのための1つまたは複数の熱量計に由来する散逸を示す、第1の品質係数よりも小さい、第2の品質係数を有する。この散逸は、熱量計を読み出しアクチュエータに結合することにも依存し得るので熱量計の固有散逸よりも小さくなり得る。ここで重要な散逸は、量子状態の読み出しのための共振回路から見える散逸である。共振器は、線形RF共振器などのRF共振器であってもよい。重要なことに、本開示によれば、熱量計、およびそれに由来する読み出し要素の散逸は、対応する量子ビットに結合された共振器のうちの1つの共振器に対応する共振回路の一部として配置構成され得る。
【0047】
図1cおよび
図1dは、読み出しアクチュエータが、線形(RF)共振器などの1つまたは複数の共振器130を備える例を例示している。共振器は、各々共振周波数を有し、これは固定されるかまたは調整可能であってよい。読み出しのための読み出し要素の散逸は、熱量計の抵抗および熱量計を量子ビットに結合するパラメータの両方に依存し得る。熱量計110は、リアクタンス的に共振器130に結合されるものとしてよく、これはキャパシタンス的および/またはインダクタンス的を含む。これは、キャパシタンス要素、たとえばコンデンサ、および/または相互インダクタンスなどのリアクタンス要素を使用することを伴い得る。
図1cのように、熱量計110は、共振器130にキャパシタンス的に結合され得る。この目的のために、コンデンサなどのキャパシタンス要素Cは、熱量計110と共振器130との間に配置構成され得る。同様に、熱量計110は、共振器130を通して量子ビットにキャパシタンス的に結合され得る。この目的のために、コンデンサなどのキャパシタンス要素Cは、たとえば直列接続で、量子ビット、またはその結合点120と熱量計110との間に配置構成され得る。両方の場合において、キャパシタンス要素Cは、たとえば例示されているように、熱量計110と共振器130との間に、たとえば直列接続で配置され得る。別の例では、
図1dに例示されるように、共振器と熱量計との間の結合は、たとえば2つのインダクタンス要素の相互インダクタンスMを通じて、インダクタンス的に実行され得る。同様に、量子ビットと熱量計との間の結合は、共振器を通じてインダクタンス的に、たとえば2つのインダクタンス要素の相互インダクタンスMを通じて実行され得る。両方の場合において、熱量計110は、第1の回路に配置されるものとしてよく、これは第1のインダクタンス要素と第2のインダクタンス要素との間の相互インダクタンスを通じて、(量子ビット、またはその結合点120を有し得る)別の第2の回路に結合される第1のインダクタンス要素と、第2のインダクタンス要素とを有する。例示されているように、共振器130は、たとえば直列接続で、たとえば量子ビットまたはその結合点120と第2のインダクタンス要素との間の、第2の回路に配置され得る。
【0048】
読み出し要素または読み出しアクチュエータは、各量子ビットに対して単一の専用共振器を含み得る。
【0049】
読み出し配置構成は、(第1の)量子状態を提供するための(第1の)固体量子ビットと、量子状態を決定するための読み出し要素とを含み得る。読み出し要素は、本明細書において説明されている任意の読み出し要素、またはそれらの組合せであってよい。配置構成は、また、読み出し要素と量子ビットとの間の付加的リアクタンス結合を含んでいてもよい。配置構成は、また、読み出し信号を供給するための信号源を含み得る。信号源は、たとえば、マイクロ波源またはフラクソン源であってもよい。信号源は、連続源および/またはパルス源、たとえば、連続マイクロ波源および/またはパルスマイクロ波源であってもよい。信号源は、読み出し信号を供給するために入力信号を提供し得る。信号源は、入力信号を入力線に供給するように配置構成され得る。入力線は、読み出し信号を供給するために入力信号を1つまたは複数の読み出し要素に向けるように配置構成されてもよい。読み出し信号は、入力信号を量子ビットの量子状態と相関させることによって供給され得る。この目的のために、読み出し要素、または読み出しアクチュエータが利用され得る。
【0050】
当然のことながら、量子状態読み出し配置構成は、1つまたは複数の追加の量子状態を提供するための1つまたは複数の追加の固体量子ビットを含み得る。読み出し配置構成は、第1の固体量子ビットおよび1つまたは複数の追加の固体量子ビットが別個の読み出し要素に結合されるように対応する数の読み出し要素を備え得る。熱量計は、読み出し要素の一部であるので、各量子ビットは、その量子状態を決定するための1つまたは複数の熱量計のそれ専用セットに関連付けられ得る。1つまたは複数の信号源が、読み出し配置構成全体に使用されるように配置構成され得る。
【0051】
量子ビットは、任意の種類の固体量子ビット、たとえば超伝導量子ビットを含むか、またはそれからなるものとしてよい。これらは、たとえば、電荷量子ビット、フラックス量子ビットまたは位相量子ビットを含み得る。本開示を考慮すると、それらの総数は上限なく何でもよい。単純な読み出し配置構成であっても、量子ビットの数は10以上であり得、具体的な応用については、この数は、たとえば100以上であってもよい。
【0052】
読み出し配置構成は、読み出し信号を供給するために入力信号を提供する1つまたは複数の読み出し要素のフィーダー線に結合され得る、1つまたは複数の入力線を含み得る。いくつかの実施形態において、単一の入力線が、読み出し配置構成のすべての読み出し要素に使用され得る。入力線は、読み出し信号を供給するために入力信号を提供する1つまたは複数の信号源に結合されてもよい。
【0053】
読み出し配置構成は、読み出し要素および量子ビットが、たとえばその上に集積化されることによって提供される1つまたは複数のチップを備え得る。(第1の)読み出し要素100は、(第1の)固体量子ビットと同じ物理的チップ上に完全にまたは部分的に含まれ得る。読み出し要素100は、また、対応する量子ビットに関して1つまたは複数の別個のチップ上に含まれ得る。これに対応して、読み出し要素は、読み出し要素に対応する量子ビットが配置構成される1つまたは複数の量子ビットチップと異なり得る1つまたは複数の読み出しチップ上に、部分的にまたは完全に配置構成され得る。特に、熱量計は、1つまたは複数の読み出しチップ上に集積化され得るが、代替的にまたはそれに加えて、共振器などの、読み出しアクチュエータもその上に集積化され得る。読み出しチップおよび量子ビットチップは、1つまたは複数のガルバニック電気的接続部によって、たとえば、ワイヤボンディングまたはフリップチップボンディングによって、量子状態の読み出しのための電気的接続を形成するように結合され得る。ガルバニック電気的接続部は、たとえばバンプボンドによって形成され得る。これらは超伝導であってもよく、これは追加の効率をもたらし得ることが分かっている。読み出しチップおよび量子ビットチップは、また、リアクタンス結合、またはチップ間リアクタンス結合によって、量子状態を読み出すための電気的接続を形成するために結合され得る。これは、RF電界および/または磁界を通して2つのチップ間に配置構成されたリアクタンスにより配置構成され得る。リアクタンスは、インダクタンスおよび/またはキャパシタンス、たとえばキャパシタンス要素、コンデンサなどの1つまたは複数のリアクタンス要素、および/またはインダクタンス要素、たとえば相互インダクタンスによって提供され得る。
【0054】
図2は、第1のチップ210と第2のチップ220とを含む読み出し配置構成200の一例を例示している。第1のチップ210は読み出しチップであり、第2のチップ220は量子ビットチップであってもよいし、またその逆であってもよい。第1チップは、第2チップの上に部分的または完全に位置決めされ得る。第1のチップは、たとえば、ガルバニック電気的接続および/またはリアクタンス結合によって、量子状態の読み出しのための電気的接続を形成するために、第2のチップに対向するように反転されてもよい。読み出し配置構成は、2つのチップ210、220の間に、量子状態の読み出しのための支持を提供しおよび/またはガルバニック電気的接続などの電気的接続を形成するように配置構成され得る1つまたは複数の要素230を備え得る。その用途に応じて、1つまたは複数の要素は、バンプボンドなど、導電性であるか、または非導電性であってもよい。ガルバニック電気的接続の代替として、またはそれに加えて、読み出し配置構成は、量子状態の読み出しのための電気的接続を形成するために、上で説明されているように、1つまたは複数のリアクタンス要素C、Mを含み得る。
【0055】
読み出し配置構成は、cQED読み出し配置構成などの配置構成であってよく、熱量計は、量子状態の読み出しのために散逸要素として共振器に結合される。熱量計に由来する散逸に対応する損失レベルは、品質係数Qcによって定量化されるものとしてよく、これは、共振器の固有損失、たとえば、誘電損失など、読み出し要素の固有損失を支配する形で配置構成され得る。この固有損失レベルは、Qc<QiまたはQc<<Qiとなるように、品質係数Qiによって定量化され得る。これは、読み出しアクチュエータに対する品質係数とみなされてよく、これは読み出し要素の任意の伝送線路に関連する任意の損失も含み得る。cQEDの原理によれば、共振器の共振周波数fiは量子ビット状態に依存し得る。状態依存共振周波数は、量子状態|0>または|1>に対して、それぞれ、fi,|0>またはfi,|1>と表されるものとしてよく、iは注目している量子ビットに対するインデックスを示す。読み出しは、周波数fi,|0>またはfi,|1>のいずれかに対応する周波数fgの、RFパルスなどの、RF信号を供給することによって実行され得る。ここで、「対応する」は、RFパルスの周波数が量子ビット状態依存共振器周波数をプローブすることができるように周波数fi,|0>またはfi,|1>に十分に近いことであると理解され得る。読み出しアクチュエータは、プローブ周波数fgが共振周波数に対応する場合に量子状態を決定するために読み出し信号が熱量計によって吸収され得るような1つまたは複数の共振器を備えるか、またはそれらからなるように配置構成され得る。これは、熱量計による読み出し信号の実質的に完全な吸収、または閾値を超える吸収を伴い得る。吸収を最適化するために、読み出し配置構成は、外部品質係数Qeによって損失レベルが定量化され得る入力線を有し得る。一実施形態において、Qe~~Qcである。したがって、吸収は、量子状態|0>または|1>に対して選択的であり得る。異なる量子ビットは、異なる共振周波数を有するものとしてよく、これは単一の入力線を通して複数の量子ビットをアドレス指定することを可能にする。いくつかの量子ビットが、異なる共振周波数に対応する周波数成分を有する周波数コムとしてプローブ信号を構成することによって同時にアドレス指定され得る。代替的に、読み出し信号は、時間領域で切り替わる単一周波数トーンfiからなるものとしてよい。一般に、読み出し配置構成は、異なる量子ビットに対して異なる共振周波数を有する多重化読み出し配置構成であってよい。
【0056】
読み出しの忠実度は、読み出し信号のエネルギーに依存するものとしてよく、これは共振器内の光子数として表され得る。光子数が増加するにつれて、上限(分散限界の有効性を破る)が、望まれない量子ビット遷移を励起し始める信号レベルとして設定され得る。適切な条件下では、本明細書において開示されているような熱検出器を使用することで、光子を共振器内に蓄積する代わりに熱的に蓄積することが可能であり得、これはより大きな読み出し振幅をもたらし得る。
【0057】
図3aは、一例による、cQED読み出し配置構成などの配置構成300を例示する。この配置構成は、本明細書において開示されている読み出し配置構成のいずれかを例示するものと考えられ、読み出し要素は共振器を含む。
【0058】
配置構成300は、1つまたは複数の読み出し要素100および固体量子ビット310を含み、各量子ビットは、それ自身の指定された読み出し要素を有し得る。読み出し素子は、本明細書において説明されている読み出し要素、たとえば
図1a~
図1dに例示されている読み出し要素のいずれかによるものとしてよい。量子ビットは、たとえば、指示接続および/またはキャパシタンス接続C(i)によって、読み出し要素にリアクタンス的に結合されてもよく、iは、量子ビットのインデックスを示すものとしてよく、接続の強さは異なる量子ビットに対して同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
配置構成300は、読み出し信号を供給するために入力信号を供給する1つまたは複数の入力線320を備え得る。読み出し要素は、たとえばリアクタンス的に、入力線に結合され得る。これは、インダクタンス接続および/またはキャパシタンス接続C(j)を通して実行されるものとしてよく、jは、読み出し要素量子ビットのインデックスを示すものとしてよく、接続の強さは異なる読み出し要素量子ビットに対して同じであっても異なっていてもよい。各量子ビットがそれ専用の読み出し要素を有する場合、読み出し要素jのインデックスは、当然ながら、量子ビットiのインデックスに対応するものとしてよい。この配置構成は、入力信号を供給するための1つまたは複数の信号源330を備え得る。入力信号は周波数fgを有し得る。入力線は、信号源とともに、入力信号に対して入力インピーダンスZを働かせ得る。
【0060】
例示されているように、異なる読み出し要素130の共振器は、互いに異なり得る、共振周波数f1、f2を有する。上で示されているように、これは、例示されているように、たとえば、単一の入力線320が複数の量子ビット310に使用されるときに、様々な効果を有し得る。特に、複数の量子ビットに対して単一の入力線を使用することは、複数の量子ビットに対する同時読み出しを可能にすることに留意されたい。
【0061】
図3bは、たとえば
図3aによる、読み出し配置構成に対する電力吸収の一例を例示している。上のグラフでは、量子状態に依存する電力吸収の一例が例示されている。電力吸収スペクトルは、量子ビットの異なる量子状態(|0>または|1>)に対して異なる、共振周波数のところにピーク340を有する。しかしながら、異なる量子ビットに対する読み出し要素が各々異なる共振周波数(f
1およびf
2)を有する共振器を有するときに、ピークも、この共振周波数に従ってシフトされ、たとえば、共振周波数に対するピークの有無に基づき、電力吸収スペクトルから特定の量子ビットの量子状態が決定されることを可能にする。最大の忠実度を得るために、f
1,|0>、f
1,|1>、f
2,|0>および/またはf
2,|1>に対応する周波数を有する読み出し信号が使用されてよい。
【0062】
前の例とは対照的に、
図4は、単一の熱量計が複数の量子ビットの読み出しに利用される配置構成400を例示している。この場合、熱量計は、読み出しシステム全体の検出器として機能する。
【0063】
固体量子ビットについては、量子ビットのコヒーレンスを潜在的に制限する要因は、読み出し共振器を通って入力線に至る際の減衰である。これを緩和するために、熱量計は、Purcellフィルタに結合され、量子ビット周波数での緩和を抑制することができる。Purcellフィルタは、また、多重化量子ビット読み出しに存在するオフレゾナンス駆動効果の影響を抑制するためにも使用され得る。読み出し配置構成、または読み出し要素は、熱量計に由来する散逸に起因する量子ビットの量子状態の減衰を抑制するために、1つまたは複数のPurcellフィルタを備え得る。
図5aおよび
図5bにおいて、この目的のための読み出し配置構成500の例が例示されている。これらの例では、読み出し配置構成500、またはその読み出し要素は、少なくとも周波数f
Pに対して、1つまたは複数のPurcellフィルタ510を備える。Purcellフィルタは読み出し要素の一部であり得るので、f
Pは、量子状態を決定するために読み出し要素に結合された特定の量子ビットに固有のものとなるように配置構成され得る。したがって、Purcellフィルタは、量子ビットの量子状態の減衰が抑制され得るように量子ビット周波数からデチューンされたバンドパスフィルタであってもよい。
【0064】
Purcellフィルタは、量子ビットおよび/または入力線320にリアクタンス的に結合され得る。これは、キャパシタンス結合および/またはインダクタンス結合を含む。入力線に対する量子ビットの量子状態の減衰を抑制するために、Purcellフィルタ510は、熱量計110と入力線320との間に結合され得る。Purcellフィルタは、読み出し要素の入力のところで、フィーダー線に直接的に結合され得る。これらは、したがって、外部結合、特に入力線への結合のために読み出し要素の第1の信号変更コンポーネントとして提供され得る。また、Purcellフィルタは、例示されているように、たとえば、キャパシタンス結合などのリアクタンス結合によって、熱量計に直接的に結合され得る。
図5Aに例示されているように、量子ビット310、および任意選択で、共振器130は、(直列接続の順序で)入力線320とPurcellフィルタ510との間、またはPurcellフィルタと熱量計との結合された組合せの間に結合され得る。代替的に、
図5bに例示されているように、Purcellフィルタ510、またはPurcellフィルタと熱量計との結合された組合せは、(直列接続の順序で)入力線320と量子ビット310、および任意選択で共振器130の間に結合され得る。
【0065】
任意の散逸は量子コヒーレンスに悪影響を及ぼし得るので、上で示されているように、熱量計に由来する散逸を調整可能な方式で配置構成することが有益であり得る。この目的のために、熱量計の固有散逸および/または熱量計を読み出しアクチュエータに結合することは、調整可能であってよい。これは、熱量計に由来する散逸が、たとえば、読み出しイベントの状況において、必要に応じて増大されるか、またはオンにされることを可能にする。これは、また、前記散逸が量子ビットの量子進化中に減少させられるか、またはオフにされることも可能にする。
図6a~
図6cにおいて、調整可能な散逸を有する熱量計の例が例示されている。これらの熱量計はどれも、本明細書において提供される他の例と併せて使用され、たとえば、Purcellフィルタおよび調整可能熱量計の両方を含む読み出し要素が提供され得る。調整可能な熱量計は、出力信号を供給するためのインピーダンスおよび/または抵抗などの1つまたは複数の散逸要素112を備え得る。調整可能な熱量計は、熱量計の入力620に関して散逸要素の結合を調整するように構成され得る。読み出し要素において、そのような入力は、読み出し信号を受信するための読み出しアクチュエータに結合され、これは散逸要素と読み出しアクチュエータとの結合も調整し、それに対応して量子状態を決定するために熱量計から読み出し要素に由来する散逸を調整する。特に、調整可能な熱量計は、結合を、それによって散逸を、1つまたは複数のSQUID(超伝導量子干渉素子)ループを縫うようにして通り抜ける磁束を通して実効インダクタンスを調整する制御電流I
ctrlによって調整するように構成され得る。この目的のために、調整可能な熱量計は、たとえばガルバニック電気的接続および/またはキャパシタンス接続などの、リアクタンス接続によって、散逸要素に結合された1つまたは複数のSQUIDループ610を備え得る。
図6aに例示されているように、SQUIDループは、熱量計の入力620に直接的に、またはガルバニックで、接続され得る。例示されているように、散逸要素は、SQUIDループにキャパシタンス結合され得る。代替的に、
図6aおよび
図6bに例示されているように、SQUIDループは、たとえば相互インダクタンスMを通じて、入力にリアクタンス的に結合され得る。この目的のために、SQUIDループは、別個の回路内に配置されていてもよく、散逸要素を含み得る。散逸要素は、相互インダクタンスMに、ガルバニックで(
図6cのように)、またはリアクタンス的に、たとえばキャパシタンス的に(
図6bのように)接続されてもよい。
【0066】
一実施形態において、読み出しアクチュエータは、(第1の)量子状態の読み出しのために(第1の)固体量子ビットから供給されるべき読み出し信号を容易にするためのジョセフソン伝送線路(JTL、場合によっては、上で説明されているような他の伝送線路を含む)を含むか、またはそれからなるものとしてよい。量子状態読み出し配置構成は、それによって、単一磁束量子(SFQ)読み出し配置構成として構成され得る。量子状態の情報は、JTL内を伝搬する、フラクソンパルスなどの、フラクソンに変換され得る。読み出し配置構成は、フラクソン源を含み得る。これは、また、少なくともJTLと、および任意選択で、(第1の)量子状態に対する量子状態依存フラクソン伝搬を組み込んださらなるSFQ回路要素からなるSFQベースの読み出しシステムを含んでいてもよい。任意のSFQフラクソン源が、フラクソン源として使用され得る。他の実施形態と同様に、量子状態を決定するための出力信号は、熱エネルギーの大きさおよび/または読み出し信号を熱エネルギーに変換するタイミングに基づき、熱量計に対して提供され得る。後者については、タイミングは、伝搬するフラクソンパルスのタイミング情報に対応し得る。特に、読み出し配置構成は、伝搬するフラクソンの存在を単独で量子状態を示すものとして利用するように構成され得る。
【0067】
JTLは、量子ビットの読み出しのために弾道モードで動作するように配置構成され得る。これは、量子ビットに生じる損失を最小限に抑えることを可能にする。JTLは、また、量子ビットの読み出しのために過減衰モードで動作するように配置構成され得る。モードに関係なく、フラクソンのエネルギーは、安定動作を可能にする読み出し配置構成によって散逸されるように配置構成され得る。熱量計は、JTLを終端するための散逸負荷として使用することができる。熱量計は、したがって、JTLを安定化する役割と、フラクソンを検出するための読み出し要素の一部として機能する役割の二重の役割を有するものとしてよい。読み出し信号としての、フラクソン、またはSFQパルスは、エネルギー分解能基準が著しく低下し得る分散読み出しに対する読み出しパルスよりもなおいっそう高いエネルギーを有することになり得る。一例として、そのような読み出し信号は、数十から数千の数になり得る、光子を含むか、またはそれらからなり得る。読み出し信号は、数GHz、たとえば1~10GHz、具体例では5GHz程度の周波数を有する光子を含むか、またはそれらからなるものとしてよい。
【0068】
図7aおよび
図7bは、JTL710を含むか、またはそれからなる読み出しアクチュエータを伴う量子状態読み出し配置構成700の例を例示している。熱量計110に関係するものなど、読み出し配置構成の他の特徴は、上で説明されている例のどれかよるものとしてよい。たとえば、読み出し配置構成の熱量計110は、たとえば、本明細書において提示されている例のいずれかによる、調整可能な散逸を有し得る。
【0069】
上述のように、読み出し配置構成700は、固体量子ビットを含む。
図7aおよび
図7bでは、量子ビットそれ自体は、例示されていないが、読み出し信号を供給するためのアセンブリ720は例示されている。アセンブリは、量子ビットを含む。それに加えて、アセンブリは、量子ビットの量子状態を読み出し信号に変換することを開始することを円滑にするように構成されたアクチュエータ、および/または量子ビットの量子状態を読み出し信号に変換することを開始するように構成されているアクチュエータを備え得る。入力信号および/または読み出し信号は、1つもしくは複数のフラクソン、または1つもしくは複数のフラクソンパルスを含むか、またはそれらからなるものとしてよい。JTL710は、量子ビット、またはアセンブリ720、と熱量計110との間に(直列接続の順序で)結合されてもよい。JTLは、キャパシタンス接続および/またはインダクタンス接続などの、ガルバニック電気的接続および/またはリアクタンス接続によって熱量計に結合され得る。
図7aは、JTL710がガルバニック電気的接続によって熱量計に結合される一例を例示している。
図7bは、JTL710がインダクタンス接続によって熱量計に結合される一例を例示している。これは、たとえば、JTLと熱量計110を備える別個の回路730との間の相互インダクタンスを通じて配置構成され得る。別個の回路は、相互インダクタンスを通じて結合を円滑にするためのインダクタンス要素740を含み得る。
【0070】
重要なことは、JTLが、(第1の)量子状態の読み出しのために、Stewart-McCumberパラメータβc<100を有するように構成され得ることである。JTLに由来する散逸は、たとえば、JTLのジョセフソン接合および/またはSQUIDループ(ジョセフソン接合を含む)に対する構造の「プラズマ共鳴」の品質係数によって記述され得る。そのような品質係数は、1に近い値になるように設定され得る。これはStewart-McCumberパラメータによって定量化され得、これはβc=2πIc(Re(Zc))2CJJ/Φ0と書かれるものとしてよく、Icはジョセフソン接合の臨界電流であり、Re(Zc)は読み出し素子またはJTLから見えるような熱量計のインピーダンスの実部であり、CJJはジョセフソン接合のキャパシタンスであり、Φ0は磁束の量子である。JTLは、十分な熱量計誘起散逸を可能にするためにβc<100となるように構成され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、βc<50またはβc<10とすることによって、性能がさらに最適化され得る。追加の著しい効果が、βc<1で得られ、これは厳密に過減衰の構成を提供することができる。この配置構成では、JTL内を伝搬するフラクソンのエネルギーは、熱量計内で散逸され得る。これは、一方では、フラクソンが反射されるのを防ぎ、他方では、フラックス量子の熱量検出を可能にする。
【0071】
上で開示されている内容により、熱量計は、量子回路に結合され、量子ビット依存読み出し信号は、熱量計に結合され、熱量計の温度を上昇させ得る。熱量計は、こうして、熱検出器となる。
【0072】
図8は、共振器ベースの読み出しスキームと併せて例示されているとは言え、開示されている実施形態のいずれかにより、量子状態を決定するための熱検出器としての熱量計を有する読み出し配置構成800のいくぶんより詳細な例を例示している。これに対応して、分割線840より上の部分は、本開示に従って、固体量子ビット310、読み出しアクチュエータ、および任意選択で信号源330を備える任意の適用可能なセットアップと交換され得ることは理解されるべきである。
【0073】
熱量計110は、出力信号を供給するために、抵抗要素などの、1つまたは複数の散逸要素810を備える。熱量計は、また、インダクタンスL+および/またはキャパシタンスC+を有し得る。この目的のために、熱量計は、1つまたは複数のキャパシタンスおよび/またはインダクタンス要素を備え得る。読み出し配置構成は、対応する量子状態を決定する出力信号を取得するために各読み出し素子から出力プローブ信号を供給するための1つまたは複数の出力プローブ820を備え得る。1つの出力プローブが、1つまたは複数の量子ビットに使用され得る。出力プローブ信号は、パルス信号および/またはマイクロ波信号であってもよい。出力プローブ信号を熱量計に伝送するための任意の伝送線路を含む、出力プローブは、出力プローブ信号に対してインピーダンスZ+を加え得る。
【0074】
出力信号を供給するために読み出し信号の少なくとも一部を熱エネルギーに変換することに対応する、読み出し信号の量子ビット状態依存吸収は、散逸素子110において、出力プローブ信号の位相および/または振幅を変調する熱量計のインダクタンスL+を増大させ得る。出力プローブ信号は、共振周波数1/(2π*sqrt(L+*C+))に等しいか、または近い周波数f+を有してもよく、「sqrt(L+*C+)」は、L+*C+の平方根を表す。共振周波数は、量子ビット310の周波数スケール、および任意選択で、読み出し共振器130の周波数スケールより低くなるように構成され得る。
【0075】
一実施形態において、熱量計の出力のプロービングは、多重化され得る。この目的のために、読み出し配置構成は、複数の量子ビットに対応し得る、複数の熱量計の出力をプローブするための、周波数多重化出力プローブ線を備え得る。一実施形態において、読み出し配置構成が入力信号を供給するための信号源を備える場合、信号源は、また、出力プローブ信号を供給するために熱量計にも結合され得る。これは、必要なRF線などの伝送線路の数を減らすことを可能にする。読み出し配置構成および信号源は、また、入力信号を出力プローブ信号として印加するようにも構成され得る。
【0076】
この読み出し配置構成は、また、出力信号を増幅するために、熱量計110、および任意選択で、出力プローブに結合された1つまたは複数の増幅器830を備え得る。一般に、これは、熱量計の出力信号が十分に高く、読み出しチェーンの後続の要素において容易に検出され得る場合に、より容易な信号処理を可能にし得る。一実施形態において、熱量計は、少なくとも部分的に、カスケード接続され、第2の熱量計は第1の熱量計の出力信号を読み取るように構成される。これは、後置増幅段の要件、すなわち増幅器830の要件を緩和することを可能にする。このようにして、熱検出器としての熱量計は、電力増幅のための電力利得を提供するように構成され得る。RF結合熱量計の例では、伝送されるかまたは反射された出力信号および/または出力プローブ信号は、第2の熱量計によって吸収され得る。
【0077】
図9は、一例による方法を例示している。方法900は、量子状態読み出しに使用され得る。これは、量子状態の読み出しのために固体量子ビットの量子状態と相関する読み出し信号を供給することを含み得る。読み出し信号は、上で説明されている例のいずれかにより、たとえば、マイクロ波信号またはフラクソンを含むか、またはそれからなるものとしてよい。読み出し信号は固体量子ビットによって与えられる量子状態をプローブすることによって供給されるものとしてよく、これは読み出し信号が量子状態の読み出しのために供給されることを引き起こす。プロービングは、たとえば、信号源を利用することによって実行され得る。入力信号は、量子ビットからの読み出し信号を供給するために提供され得る。これは、たとえば入力線を通して1つまたは複数の読み出し要素に供給され得る。読み出し信号を供給することは、フラクソンなどの、読み出し信号を量子ビットから1つまたは複数の熱量計に伝送することを円滑にすることも含み得る。この方法は、量子状態の読み出しのために読み出し信号を1つまたは複数の熱量計で受信すること920を含み得る。この方法は、量子状態を決定するための出力信号を供給するために、1つまたは複数の熱量計内の読み出し信号を、部分的にまたは完全に、熱エネルギーに変換すること930を含み得る。この方法では、量子状態読み出しに対する散逸は、1つまたは複数の熱量計に由来する散逸によって支配されるように配置構成され得る。この目的のために、本明細書において開示されている例のいずれかにより示されているように、具体的に構成された読み出し配置構成が提供され得る。
【0078】
上で説明されているような配置構成は、ソフトウェア、ハードウェア、アプリケーションロジック、またはソフトウェア、ハードウェア、およびアプリケーションロジックとの組合せにおいて実装され得る。アプリケーションロジック、ソフトウェア、または命令セットは、様々な従来のコンピュータ可読媒体のいずれか1つに保持され得る。「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータなどの、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって、またはそれらと接続して使用するために命令を収容し、記憶し、通信し、伝搬し、または搬送することができる任意の媒体または手段であってよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータなどの、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって、またはそれらと接続して使用するために命令を収容するか、または記憶することができる任意の媒体または手段であり得るコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。これらの例は、本明細書において説明される様々なプロセスに関係する情報を記憶することができる。この情報は、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、RAM、および同様のものなどの1つまたは複数のメモリに記憶され得る。1つまたは複数のデータベースが、実施形態を実施するために使用される情報を記憶することができる。データベースは、本明細書に列挙されている1つもしくは複数のメモリまたは記憶装置デバイスに収められるデータ構造(たとえば、レコード、テーブル、配列、フィールド、グラフ、ツリー、リスト、および同様のもの)を使用して編成され得る。データベースは、サーバなどのローカルおよび/またはリモートデバイスを含む1つまたは複数のデバイス上に配置されてもよい。実施形態に関して説明されているプロセスは、実施形態のデバイスおよびサブシステムのプロセスによって収集されおよび/または生成されたデータを1つまたは複数のデータベースに記憶するための適切なデータ構造を含むことができる。
【0079】
実施形態の全部または一部は、コンピュータおよび/またはソフトウェア技術の当業者によって理解されるように、実施形態の教示に従ってプログラムされた、1つまたは複数の汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、および同様のものを使用して実施され得る。適切なソフトウェアは、ソフトウェア技術の当業者によって理解されるように、実施形態の教示に基づき当業者であるプログラマによって容易に作成され得る。それに加えて、実施形態は、電気技術分野の当業者によって理解されるように、特定用途向け集積回路を作成することによって、または従来のコンポーネント回路の適切なネットワークを相互接続することによって、実装され得る。したがって、実装形態は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の特定の組合せに限定されない。
【0080】
本明細書において説明される異なる機能は、異なる順序で、および/または互いに同時に実行され得る。
【0081】
本明細書において与えられる任意の範囲またはデバイスの値は、別段の指示のない限り、求める効果を失うことなく拡張されるかまたは変更され得る。また、明示的に禁止されていない限り、いかなる例も他の例と組み合わされ得る。
【0082】
本発明の主題は構造的機能および/または活動に固有の言語で説明されているが、付属の請求項で定められている本発明の主題は、上で説明された特定の機能または活動に必ずしも限られないことは理解されるであろう。むしろ、上で説明されている特定の特徴および活動は、請求項を実装する例として開示されており、他の同等の特徴および活動は、請求項の範囲内にあることを意図されている。
【0083】
上で説明されている便益および利点は、一実施形態に関係し得るか、またはいくつかの実施形態に関係し得ることは理解されるであろう。これらの実施形態は、述べられた問題のどれかもしくはすべてを解決する実施形態または述べられた利益および利点のどれかもしくはすべてを有する実施形態に限定されない。「1つの(an)」項目への参照はそれらの項目のうちの1つまたは複数を指すものとしてよいことはさらに理解されるであろう。
【0084】
「含むまたは備える(comprising)」という言い回しは、本明細書において、識別された方法、ブロック、または要素を含むことを意味するために使用されるが、そのようなブロックまたは要素は排他的リストを含むものではなく、方法または装置は追加のブロックまたは要素を含み得ることを意味するために使用される。
【0085】
「第1」、「第2」、および同様のものなどの数記述子は、本文中では、単に、さもなければ類似の名称を有する部品を区別する方法として使用される。数記述子は、任意の特定の構造における優先、製造、または出現の順序などの、特定の順序を示すものとして解釈されるべきではない。
【0086】
「複数」などの表現は、本文中では、それによって言及される実体が複数であること、すなわち実体の数が2つまたはそれ以上であることを示すためのものである。
【0087】
本発明は、特定の種類の装置および/または方法と併せて説明されているけれども、本発明は、特定の種類の装置および/または方法に限定されないことは理解されるべきである。本発明は、多数の例、実施形態、および実装形態に関連して説明されてきたが、本発明は、そのように限定されるものではなく、請求項の範囲に収まる、様々な修正形態、および等価な配置構成を対象とするものである。様々な例は、特定の詳しさで、または1つもしくは複数の個別の実施形態を参照しつつ、上で説明されているけれども、当業者であれば、本明細書の範囲から逸脱することなく開示されている例に多くの改変を加えることも可能であろう。
【符号の説明】
【0088】
100 読み出し要素
110 熱量計
120 結合点
130 共振器
200 読み出し配置構成
210 第1のチップ
220 第2のチップ
230 要素
300 配置構成
310 固体量子ビット
320 入力線
330 信号源
340 ピーク
400 配置構成
500 読み出し配置構成
510 Purcellフィルタ
610 SQUIDループ
620 入力
700 量子状態読み出し配置構成
710 JTL
720 アセンブリ
730 回路
800 読み出し配置構成
810 散逸要素
820 出力プローブ
830 増幅器
840 分割線
900 方法
【国際調査報告】