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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】シートバックスピーカ
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240514BHJP
   A47C 7/72 20060101ALI20240514BHJP
   B60N 2/806 20180101ALI20240514BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20240514BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240514BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/72
B60N2/806
B60N2/64
B60N2/22
H04R1/02 102B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573253
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022028337
(87)【国際公開番号】W WO2022250940
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】17/333,057
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ケー・レイド
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード・カイル・スバット
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・テレンス・ヘンリー・オズワルド
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
5D017
【Fターム(参考)】
3B084JD06
3B087BD03
3B087DC06
3B087DE09
5D017AE18
(57)【要約】
シートは、シートヘッドレスト部分と、シート背もたれ部分と、スピーカアセンブリと、を備える。ラウドスピーカアセンブリは、音響出力を生成するための少なくとも1つのドライバと、シート背もたれ部分に固定され、シートの乗員の公称耳位置の下の位置に音響出力を提供するように角度が付けられた音響出口と、を含み、少なくとも1つのドライバの発射角は、公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するように音響出力を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートであって、
シートヘッドレスト部分と、
シート背もたれ部分と、
ラウドスピーカアセンブリであって、
音響出力を生成するための少なくとも1つのドライバと、
前記シート背もたれ部分に固定され、前記シートの乗員の公称耳位置の下の位置に前記音響出力を提供するように角度付けられた音響出口であって、前記少なくとも1つのドライバの角度は、前記公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するように前記音響出力を提供する、音響出口と、
を備えたラウドスピーカアセンブリと、
を備えたシート。
【請求項2】
前記音響出口が、前記シートのヒップポイントに対して前記乗員の前記公称耳位置の下方に配置され、前記一貫した周波数応答が、前記公称耳位置に提供される音響出力に対する高周波(HF)一貫性よりも高いHF一貫性によって特徴付けられる、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記シートからの前記音響出力が、前記公称耳位置に提供される前記音響出力に対するHF周波数応答のばらつきの約2分の1以下のHF周波数応答のばらつきを有する、請求項2に記載のシート。
【請求項4】
HFが少なくとも約4キロヘルツ(kHz)から約12kHzであり、LFが約1kHz以下である、請求項2に記載のシート。
【請求項5】
前記一貫した周波数応答が、前記公称耳位置に提供される音響出力に対するLF一貫性以上のLF一貫性によって更に特徴付けられる、請求項4に記載のシート。
【請求項6】
前記シートが車両シートを含み、前記ラウドスピーカアセンブリが外側位置に配置され、前記シートからの前記音響出力の前記LF一貫性が、前記公称耳位置に提供される前記音響出力の前記LF一貫性よりも大きい、請求項5に記載のシート。
【請求項7】
前記一貫した周波数応答が、前記ラウドスピーカアセンブリの周波数応答を含み、前記音響出力が、前記乗員の両耳間分離、又は前記シートを含む空間の複数の乗員間のシート間分離のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項1に記載のシート。
【請求項8】
前記位置が、前記シートのヒップポイントから測定して、前記公称耳位置の下約60ミリメートルプラス又はマイナス約50ミリメートルである、請求項1に記載のシート。
【請求項9】
前記少なくとも1つのドライバが、前記音響出口に近接して位置する、請求項1に記載のシート。
【請求項10】
前記少なくとも1つのドライバが、前記音響出口から離されている、請求項1に記載のシート。
【請求項11】
前記公称耳位置から逸脱する前記位置が、前記シートのより低い位置に座っている乗員に関連付けられたより低い位置、又は前記シートのより高い位置に座っている乗員に関連付けられたより高い位置を含む、請求項1に記載のシート。
【請求項12】
前記少なくとも1つのドライバが、前記音響出口に隣接する前記シート背もたれ部分と交差する水平面に対して下向きの発射角を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項13】
前記少なくとも1つのドライバが、前記音響出口に隣接する前記シート背もたれ部分と交差する水平面に対して上向き発射角を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項14】
垂直から約21度のリクライニング角度において、前記音響出口の中心が、前記シートのヒップポイントよりも垂直方向に約562mm~約650mm高い、請求項1に記載のシート。
【請求項15】
前記音響出口が、前記シート背もたれ部分に対して固定されている、請求項1に記載のシート。
【請求項16】
前記シートヘッドレスト部分が、前記シート背もたれ部分に対して調節可能である、請求項1に記載のシート。
【請求項17】
前記シートヘッドレスト部分が、少なくとも、前記シートのヒップポイントに対して前記シート背もたれ部分のセクションと垂直方向に位置合わせされたセクションを有し、前記シート背もたれが、前記乗員の名目上の肩の上方に延在する、請求項16に記載のシート。
【請求項18】
前記シートが、車両運転シート、車両助手シート、娯楽会場シート、ゲーミングシート、又は家庭用娯楽シートのうちの1つである、請求項1に記載のシート。
【請求項19】
前記シート背もたれ部分が、中間部分と、前記中間部分の両側から延びる2つの側面と、を有し、前記シートに前記乗員がいない状態で、各側面における前記背もたれの前面が、前記中間部分の前面に対して角度付けられ、前記ラウドスピーカアセンブリの前記音響出口が、前記側面のうちの1つに位置する、請求項1に記載のシート。
【請求項20】
請求項1に記載のシートを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2021年5月28日付けで出願された米国特許出願第17/333,057号の優先権を主張し、その全体が、参照によって組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概してシートに関する。より詳細には、本開示は、背もたれに音響出口を有するスピーカを備えたシートに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、車両、娯楽会場、及び他の場所における従来のシートは、ユーザの支持及び快適性に焦点を当てている。場合によっては、これらのシートは、音声出力を提供するためのスピーカを一体化させる。しかしながら、これらの従来のシートは、異なるユーザ及び/又は着座位置の範囲に対して、一貫した満足のいく音響出力を提供することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10730423号明細書
【特許文献2】米国特許第10455327号明細書
【発明の概要】
【0005】
下記で言及される全ての実施例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0006】
様々な実装形態は、シート及びシートを含む車両を含む。特定の場合において、シートは、公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するために音響出力を提供するように方向付けられた音響出口を有するラウドスピーカアセンブリを含む。
【0007】
いくつかの特定の態様では、シートは、シートヘッドレスト部分と、シート背もたれ部分と、ラウドスピーカアセンブリであって、音響出力を生成するための少なくとも1つのドライバと、シート背もたれ部分に固定され、シートの乗員の公称耳位置の下の位置に音響出力を提供するように角度付けられた音響出口であって、少なくとも1つのドライバの発射角は、公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するように音響出力を提供する、音響出口と、を備えたラウドスピーカアセンブリと、を備えたシートを含む。
【0008】
更なる特定の態様では、車両は、シートヘッドレスト部分と、シート背もたれ部分と、ラウドスピーカアセンブリであって、音響出力を生成するための少なくとも1つのドライバと、シート背もたれ部分に固定され、シートの乗員の公称耳位置の下の位置に音響出力を提供するように角度付けられた音響出口であって、少なくとも1つのドライバの発射角は、公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するように音響出力を提供する、音響出口と、を備えたラウドスピーカアセンブリと、を備えたシートを含む。
【0009】
更なる特定の態様において、方法は、ラウドスピーカアセンブリにおいて音響出力を提供するステップを含む。ラウドスピーカアセンブリは、シートヘッドレスト部分及びシート背もたれ部分を有するシート内に配置される。ラウドスピーカアセンブリは、音響出力を生成するための少なくとも1つのドライバと、シート背もたれ部分に固定され、シートの乗員の公称耳位置の下の位置に音響出力を提供するように角度が付けられた音響出口と、を有する。様々な実施形態では、少なくとも1つのドライバの発射角は、公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するための音響出力を提供する。
【0010】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0011】
ある特定の態様では、乗員の公称耳位置は、乗員の予想される着座位置(又は場所)である。特定の場合には、この公称耳位置は、中央値のアメリカ人男性の耳位置に等しい。
【0012】
特定の場合には、音響出口は、シートのヒップポイントに対して乗員の公称耳位置の下方に配置され、一貫した周波数応答は、公称耳位置に提供される音響出力に対する高周波(HF)一貫性よりも大きいHF一貫性によって特徴付けられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、シートからの音響出力は、公称耳位置に提供される音響出力に対するHF周波数応答のばらつきの2分の1以下のHF周波数応答のばらつきを有する。
【0014】
特定の場合には、シートからの音響出力のHF周波数応答のばらつきは、公称耳位置に提供される音響出力に対するHF周波数応答のばらつきの約3分の1から約2分の1である。
【0015】
いくつかの実施形態では、HFは、少なくとも約4キロヘルツ(kilo-Hertz、kHz)であり、LFは、約1kHz以下である。
【0016】
ある特定の場合では、中域周波数(mid-range frequency、MF)は、約1kHz~約4kHzに等しい。ある特定の実装形態では、シートからの音響出力は、公称耳位置に提供される音響出力に対するMF周波数応答のばらつきよりも小さいMF周波数応答のばらつきを有する。
【0017】
いくつかの態様では、一貫した周波数応答は、公称耳位置に提供される音響出力に対するLF一貫性以上のLF一貫性によって更に特徴付けられる。
【0018】
特定の実装形態では、シートは車両シートを含み、ラウドスピーカアセンブリは車外位置(例えば、外壁又はドアにより近い)に配置され、シートからの音響出力のLF一貫性は、公称耳位置に提供される音響出力のLF一貫性よりも大きい。
【0019】
特定の場合には、一貫した周波数応答は、ラウドスピーカアセンブリの周波数応答を含み、音響出力は、乗員の両耳間分離、又はシートを含む空間の複数の乗員間のシート間分離のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0020】
ある特定の実装形態では、シートは、2つのラウドスピーカアセンブリを含み、シート間の分離は、シート内の両方のラウドスピーカアセンブリによって維持される。
【0021】
いくつかの態様では、位置は、シートのヒップポイントから測定して、公称耳位置の約60ミリメートル下プラス又はマイナス約50ミリメートルである。
【0022】
ある特定の態様では、少なくとも1つのドライバは、音響出口に近接して位置する。
【0023】
場合によっては、少なくとも1つのドライバは、音響出口から分離される。特定の態様では、チャネル又は導波路は、ドライバが音響出口よりもシートの基部又はシートの中心の近くに位置するように、ドライバと出口との間に位置する。
【0024】
ある特定の態様では、公称耳位置から逸脱する位置は、シートのより低い位置に座っている乗員に関連付けられたより低い位置、又はシートのより高い位置に座っている乗員に関連付けられたより高い位置を含む。
【0025】
特定の場合では、少なくとも1つのドライバは、音響出口に隣接するシート背もたれ部分の前面と交差する水平面に対して下向き発射角を有する。これは、音響出口がヒップポイントからより遠いときに生じる。
【0026】
いくつかの実装形態では、音響出口は、音響出口に隣接するシート背もたれ部分の前面と交差する水平面に対して上向き発射角を有する。これは、音響出口がヒップポイントにより近いときに生じる。
【0027】
特定の態様では、垂直から約21度のリクライニング角度において、音響出口の中心は、シートのヒップポイントよりも垂直方向に約562mm~約650mm高い。特定の例では、21度のリクライニング角度において、音響出口の中心は、シートのヒップポイントよりも垂直方向に約562mm~約577mm高く、より特定の例では、(21度のリクライニング角度における)音響出口の中心は、シートのヒップポイントよりも垂直方向に約567mm~約572mm高い。
【0028】
他の特定の例では、21度のリクライニング角度において、音響出口の中心は、シートのヒップポイントよりも垂直方向に約642mm~約652mm高い。より特定の場合には、出口の高さ(h)は、約650mm以下であり、これらの場合のいくつかでは、約647mmに等しい。
【0029】
場合によっては、音響出口は、シート背もたれ部分に対して固定される。
【0030】
ある特定の態様では、シートヘッドレスト部分は、シート背もたれ部分に対して調節可能である。
【0031】
特定の態様では、シートヘッドレスト部分は、シートのヒップポイントに対してシート背もたれ部分のセクションと垂直方向に位置合わせされたセクションを少なくとも有する。
【0032】
特定の実装形態では、シート背もたれは、乗員の公称肩の上方に延びる。
【0033】
いくつかの場合には、シートは、車両運転シート、車両乗客シート、娯楽会場シート、ゲーミングシート、又は家庭用娯楽シートのうちの1つである。
【0034】
ある特定の実装形態では、車両乗客シートは、ライドシェア車両、リムジン、バス、又は公共輸送車両のシートである。特定の場合には、車両乗客シートは、複数の車両乗客シートのうちの1つであり、そのうちの1つ以上は、ラウドスピーカアセンブリを含む。いくつかの態様では、車両乗客シートは、通路横断構成又はハドルアラウンド構成などで互いに面して配置される。
【0035】
ある特定の態様では、シート背もたれ部分は、中間部分と、中間部分の両側から延びる2つの側面と、を有し、シートに乗員がいない状態で、各側面における背もたれの前面が、中間部分の前面に対して角度付けられ、ラウドスピーカアセンブリの音響出口が、側面のうちの1つに位置する。これらの場合のうちのある特定の場合には、音響出口は、中間部分の前面に対して内向き発射角を有する。
【0036】
いくつかの場合には、各ラウドスピーカアセンブリの音響出口は、シート背もたれ部分の中心線から、約180mm~約330mmだけ離されている。特定の場合には、各ラウドスピーカアセンブリの音響出口は、シート背もたれ部分の中心線から、より狭い場合には約200mm、より広い場合には約300mm離される。
【0037】
いくつかの場合には、車両はシートを含む。
【0038】
本概要の項に記載される特徴を含む、本開示に記載される2つ以上の特徴は、本明細書に具体的に記載されていない実装形態を形成するために組み合わされ得る。
【0039】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において記載される。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】様々な実装形態による例示的なシートの概略側面図である。
図2】様々な実装形態による、シートのある部分の斜視図である。
図3】様々な実装形態による、シートの別の部分の斜視図である。
図4】様々な実装形態によるシートの上面断面図である。
図5】様々な実装形態によるシートの部分の正面図である。
図6】様々な追加の実装形態によるシートの上面断面図である。
図7】様々な更なる実装形態による例示的なシートの概略側面図である。
図8】様々な実装形態によるシート内の音響出口位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
様々な実装形態の図面は必ずしも縮尺どおりではないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことを意図するものであり、したがって、実装形態の範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、同様の番号付けは、図面間の同様の要素を表す。
【0042】
本開示は、ラウドスピーカ又はラウドスピーカのセットが、シート位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を提供するためにシートに有益に展開され得るという認識に少なくとも部分的に基づく。例えば、車両シート、娯楽会場シート、ゲーミングシート、家庭用娯楽シートなどのシートは、シートの乗員の公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するために音響出力を提供するように角度が付けられた音響出口を有するラウドスピーカアセンブリを含むことができる。様々な実施形態において、各ラウドスピーカアセンブリの音響出口は、シートのシート背もたれ部分に固定される。特定の場合には、各ラウドスピーカアセンブリの音響出口は、シートのヒップポイントに対してシート乗員の公称耳位置に、又はその下方に位置する。従来のシートと比較すると、本明細書に開示されるシート及び車両は、着座位置の範囲にわたって、より一貫した、より高品質の音響出力を提供する。
【0043】
図中の共通にラベル付けされた構成要素は、例示目的のために実質的に同等の構成要素であるとみなされ、それらの構成要素の重複する説明は、明確化のために省略する。
【0044】
シート、例えば、車両シート(自動車、トラック、バス、列車、航空機、ボート、又は他の車両で使用されるシートなど)、娯楽会場シート(例えば、映画館シート、スポーツ又はコンサート会場シートなど)、ゲーミングシート、及び/又は家庭用娯楽シート(例えば、ホームシアターシート)は、音響体験を送達するための音響変換器又はスピーカを付設することができる。場合によっては、スピーカは、スピーカがシートの乗員の耳に近接するように、シート内に付設される。場合によっては、スピーカは、シートヘッドレスト又はヘッドレストウィング内に一体化される。そのようなヘッドレストスピーカは、シート乗員の耳に近いことによって、(例えば、シート間の分離及び/又は両耳間の制御、例えば、両耳間のパラメータ制御を提供することに関して)優れた音響性能を提供することができる。しかしながら、いくつかのシート(例えば、一部の車両シート)では、ヘッドレストスピーカは最良の選択ではない場合がある。例えば、機械的及び電気的な一体化は、場合によっては困難であり得る。いくつかのヘッドレストは、薄くて、あまり嵩張らないように設計されており、ヘッドレストスピーカを収容するのに十分な容積を有していない場合がある。ヘッドレストスピーカは、シート又はヘッドレストに、高い質量中心を持たせることがある(したがって、追加のシート補強材を必要とする可能性がある)。スピーカは、ヘッドレストの他の機械的構成要素と競合し得る。加えて、ヘッドレストコネクタを通してヘッドセットスピーカを配線することは、いくつかのシートにとって困難であり得る。さらに、ヘッドレストウィングは、ユーザが頭を回したときに、視界を制限し、安全上の懸念及び/又は望ましくない音響性能を引き起こす可能性がある。
【0045】
シートスピーカは、車両シートの背もたれに少なくとも部分的に一体化されてもよい。いくつかのそのようなスピーカは、背もたれの上面上に、又は別様に上面の非常に近くに、例えば、可能な限り耳の近くに配置され、シート乗員の公称耳位置に向かって音響エネルギーを放射するように構成され得る。一体化の観点から、背もたれスピーカは、場合によってはヘッドレストスピーカよりも好まれることがあり、その理由は、例えば、背もたれスピーカは、ヘッドレストスピーカよりも低い質量中心を有し、シート背もたれ内のより多くの利用可能な空間に起因してシートに一体化することがより容易であり得ることから、かつ/又はヘッドレストスピーカとは異なり、関連付けられた配線がヘッドレストポストを通過する必要がないからである。
【0046】
本明細書で説明される技術は、ヘッドレストスピーカの音響性能に匹敵するか、又は打ち負かし得るように、改善された様式で背もたれスピーカの利点を活用することを可能にする。様々な実装形態では、本明細書で説明する技術は、特に音楽再生を超える音響体験、例えば、電話をかけること、及び/又は車両内の他のシートに対して別個の音量レベルでオーディオを出力することについて、ヘッドレストスピーカに対して改善された方法で背もたれスピーカの利点を活用することができる。本明細書に開示される実施例は、公称耳位置に向けられるものと比較して、比較的低い角度で向けられた指向性を有する音響エネルギーを伝達することによって、潜在的な乗員の範囲にわたって広く許容可能な音響性能を提供する。様々な例において、音響出力は、シートのヒップポイントに対する公称耳位置の下の位置から背もたれを出る。特定の例では、音響出力は、公称耳位置から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成する。いくつかの実施例では、音響アセンブリは、筐体又は取り付け点と、1つ又は複数のラウドスピーカと、スピーカからシート背もたれに配置された出口へ音響エネルギーを伝達する1つ又は複数の音響チャネルと、を含み得る。音響アセンブリは、予想される乗員グループの公称耳位置よりも低い位置に向けられた比較的低い角度で指向性を提供するように構成される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「公称耳位置」という用語は、所与の集団のうちの典型的な男性の耳位置に基づく。そのような目的のために、「典型的な」という用語は、着座時のヘッドレスト表面及び/又はヒップポイントに関連し得る、シートに対する中央値(50番目のパーセンタイル)の耳位置を意味し得る(例えば、SAE Internationalから入手可能な、2015年11月付けの「Devices for Use in Defining and Measuring Vehicle Seating Accommodation」と題されたSURFACE VEHICLE STANDARD J826によって定義され得るような)。説明のために、本明細書で使用される対象集団は、アメリカ人成人男性である。例えば、図1における成人男性の中央値の位置は、AM50として注釈が付されている。成人男性集団の半分は耳位置が高く、あと半分は低いと予想される。
【0048】
図1は、様々な実装形態に係るシート10の側面図を示す。図2は、図1のシート10の一部の斜視図を示す。図3は、図1及び図2のシート10の一部の斜視切断図を示す。図1から図3を同時に参照する。
【0049】
本明細書で述べるように、シート10は、車両運転シート、車両乗客シート、娯楽会場シート、ゲーミングシート、及び/又は家庭用娯楽シートとすることができる。ある特定の場合には、シート10は、例えば、ゲーミングシート及び家庭用娯楽シート(例えば、ホームシアターにおける)として、複数の目的を果たすことができる。更なる場合において、シート10は、同様の構成要素及び/又は機能を含み得る、車両内の複数のシートのうちの1つとすることができる。様々なシート構成は、様々な実装形態に従って示されたシート(複数の場合もある)の態様から利益を得ることができ、とりわけ、娯楽会場のスタジアムシート、多搭乗者車両シート構成(例えば、シート(複数の場合もある)10が運転者及び/又は搭乗者のために使用される場合)、家庭用娯楽構成(例えば、1列又は複数のシート(複数の場合もある)10が配置される場合)などを含む。いくつかの例では、シート10は、ライドシェア車両、リムジン、バス、又は公共輸送車両のシートである。特定の例では、シート10は、複数の車両乗客シートのうちの1つであり、そのうちの1つ又は複数は、ラウドスピーカアセンブリを含む。いくつかの態様では、シート10のうちの2つ以上が、例えば、通路横断型構成又はハドルアラウンド構成で、互いに面して配置される。ある特定の場合には、本明細書に開示されるシート(複数の場合もある)10は、車室(又はキャブ)内などのキャビン又は他の閉鎖空間内に位置することから利益を得ることができる。このようなキャビン構成では、ある特定の音響上の利点を実現することができる。しかしながら、本明細書に開示されるシート(複数の場合もある)10の利点の多くは、他のシート構成及び他の環境において実現することができる。
【0050】
様々な実施形態において、シート10は、基部12と、基部12に(例えば、ヒンジ点16において)結合されたシート背もたれ部分14と、シート背もたれ部分14に結合されたシートヘッドレスト部分18と、を含む。ある特定の態様では、シートヘッドレスト部分18は、シート背もたれ部分14に対して調節可能である。他の場合では、シートヘッドレスト部分18は、シート背もたれ部分14に対して固定されている。シート10は、シート背もたれ部分14に固定された音響出口22を有するラウドスピーカアセンブリ20をさらに含む。ラウドスピーカアセンブリ20はまた、音響出力を生成するための音響ドライバ(例えば、電気音響変換器)24を含む。図1に示す例では、ドライバ24は、音響出口22に近接して(例えば、隣に、又は隣接して)配置される。しかしながら、この近接は必須ではない。すなわち、様々な追加の実装形態では、ドライバ24は、音響出口22から、例えば、数センチメートル(centimeter、cm)以上、物理的に離れ得る。ある特定の場合には、ドライバ24は、音響出口22から20mm、30mm、40mm、50mm、又はそれ以上離れている。特定の場合には、音響チャネル又は導波路(図示せず)がドライバ24と出口22とを接続して、ドライバ24が出口22よりもシート10の基部12の近くに位置するようにするか、又はドライバ24がシート背もたれ部分14内に、例えば、基部12とヘッドレスト部分18との間の中間点の近くに、内部に取り付けられるようにする。場合によっては、音響出口22は、グリル及び/又は背もたれの音響的に透明なカバーによって覆われる。
【0051】
様々な実施形態では、ラウドスピーカアセンブリ20は、背もたれ部分14に取り付けられた筐体21、又は取り付け板もしくは他の好適な機械的配置を含み得る。いくつかの例では、背もたれ部分14内の空隙(例えば、背もたれ部分14の緩衝要素及び/又は構造要素の内部及び/又は間の空間)は、ドライバ24の調整に影響を及ぼす音響容積として機能し得る。
【0052】
音響チャネルは、図1に概略的に示されるように、増大する断面を有してもよく、例えば、ドライバ24から遠くなるにつれて大きくなる。他の実施例では、音響チャネルは、様々な形状を有し得、減少する又は実質的に一定の断面を有し得る。
【0053】
様々な実施例では、背もたれ部分14内の音響チャネル、筐体、及び/又は空隙は、ドライバ24の指向性に影響を与え得る。そのような配置は、一般に音響アセンブリとみなされ得、本明細書における指向性への言及は、文脈が明確に別様に示さない限り、設置されたときのそのような音響アセンブリの指向性を指し得る。いくつかの実施例では、音響チャネルがドライバ24を閉塞しない(例えば、ドライバ24から耳への直接の線上において邪魔にならない)ときなど、音響アセンブリの指向性は、特に音響出力がより指向性になる中間レンジからより高い周波数において、ドライバ24の指向性と実質的に同じであり得る。したがって、様々な開示の実施例では、音響アセンブリの指向性は、ドライバ24の軸と実質的に整列され得る。
【0054】
いずれの場合でも、ラウドスピーカアセンブリ20の音響出口22は、シート背もたれ部分14内に固定され、特定の場合には、シート背もたれ部分14に対して固定される。すなわち、シート背もたれ部分14が移動(例えば、リクライニング又は傾斜、上昇又は下降)しても、音響出口22はシート背もたれ部分14に対して固定されたままである。しかしながら、ドライバ24(及びその結果として音響出口22)の発射角は、シート背もたれ部分14が傾けられる(例えば、シートヒップポイント(HP)から垂直方向に遠くに移動される)かつリクライニングされる(例えば、HPに垂直方向に近くに移動される)につれて、公称耳位置に対して変化し得ることが理解される。これらの場合のいくつかにおいて、背もたれ部分14が図1の21度の基準位置から傾けられるにつれて、発射角はより下方になり、一方、背もたれ部分14が21度の基準位置からリクライニングするにつれて、発射角はより上方になる。これは、部分的には、乗員が、リクライニング中にシート内でどのようにスライドするか、又は前にかがむ傾向があるか、及びシートが直立させられるときにどのように直立して座る傾向があるかによる。
【0055】
いくつかの他の実装形態では、ドライバ24の発射角及び/又は音響出口22の角度は、例えばドライバ24の移動並びに/又は出口22を画定する音響エンクロージャ及び/あるいは壁の調整を介して、比較的狭い範囲内で調整可能であり得る。この小さな調節は、シートが特定の角度を超えて、例えば、30度のリクライニング、40度のリクライニング、又は45度のリクライニングで、又はそれを超えてリクライニングするときに、乗員によるスライド又は前かがみを補償するのに有益であり得る。特定の例では、ドライバ24の発射角及び/又は音響出口22の角度は、シートのリクライニング角度が閾値に達することに応答して、例えば数度だけ調整するように構成される。発射角調節は、例えば、制御システムコマンドを介して、及び/又は加重調節機構を介して、自動化されることができる。
【0056】
特定の実装形態では、音響出口22は、シート10の乗員30(例示的な公称乗員、AM50が示されている)の公称耳位置28の下の位置26に(ドライバ24から軸(a)に沿って)音響出力を提供するように角度が付けられている。いくつかの実装形態では、位置26は、公称耳位置28の下約60ミリメートル±約50ミリメートルである。
【0057】
ある特定の実装形態では、ドライバ24の(音響出口22から測定した)発射角(α)は、公称耳位置28から逸脱する位置の範囲にわたって一貫した周波数応答を達成するための音響出力を提供する。ある特定の場合では、公称耳位置から逸脱する位置の範囲は、シートのより低い位置に座っている乗員に関連付けられたより低い位置、又はシートのより高い位置に座っている乗員に関連付けられたより高い位置を含む。位置の範囲(Range)は、図1の非限定的な例に示され、場合によっては、95パーセンタイルの成人男性(注釈AM95)の予想される耳位置から5パーセンタイルの成人女性(注釈AF05)の予想される耳位置に及ぶ。AM95は、AM50よりも約60ミリメートル(mm)高い場所を示し、AF05は、AM50よりも約116mm低い場所を示す。
【0058】
様々な実施形態において、ドライバ24の発射角(α)は、図1に示されるように、21度の基準リクライニング角度にある間、シート背もたれ部分14と交差する水平面に対して測定され得る。(音響出口22を介した出力としての)ドライバ24の発射角(α)は、ある場合には約5度~約15度に等しく、追加の場合には約7度~約13度に等しく、追加の場合には約8度~約12度に等しく、追加の場合には約10度~11度にできる。特定の例では、ドライバ24の発射角(α)は約10.8度に等しい。ドライバ24のこの発射角(α)は、数度から約+/-10度までの範囲であり得る背もたれ角度変動とともに変動し得ることが理解される。いずれの場合も、ドライバ24(及び対応する音響出口22)の発射角(α)は、音響出力を乗員30の耳の下の位置26に向ける。ドライバ24の周りの音響チャネルは、様々な実装形態において、例えば約+/-15度の公差でフレア状にされ得ることが理解される。
【0059】
これらの場合のいくつかにおいて、図1の例に示されるように、音響出口22は、シート10のヒップポイント(HP)に対して乗員30の公称耳位置28の下方に位置する。(21度のリクライニング角度における)特定の例では、図1の距離(h)によって示されるように、音響出口22の中心は、シート10のHPよりも垂直方向に約562mm~約650mm高い。より具体的な例では、音響出口22の中心は、シート10のHPよりも垂直方向に約562mm~約577mm高い。更なる特定の例では、音響出口22の中心は、シート10のHPよりも垂直方向に約567mm~約572mm高い。ドライバ24の発射角(α)が約10度~約11度である図1に示すような特定の例では、音響出口22の中心は、シート10のHPよりも垂直方向に約567mm高い。
【0060】
場合によっては、音響出力の一貫した周波数応答は、ドライバ24の発射角(α)と、例えば乗員30の公称耳位置28に対する出口22の位置と、の両方の関数である。例えば、一貫した周波数応答は、公称耳位置28に提供される音響出力に対する高周波数(HF)一貫性よりも大きいHF一貫性によって特徴付けることができる。特定の例では、シート10からの音響出力は、公称耳位置28に提供される音響出力に対するHF周波数応答のばらつきの約2分の1以下のHF周波数応答のばらつきを有する。更なる特定の場合において、シート10からの音響出力のHF周波数応答のばらつきは、公称耳位置28に提供される音響出力に対するHF周波数応答のばらつきの約3分の1から約2分の1である。例示的な例において、シート10からの音響出力のHF周波数応答のばらつきは、いくつかの場合において約12dBSPL/V以下であり、更なる場合において約10dBSPL/V以下であり、さらに更なる場合において約5dBSPL/V以下であることが見出された。これらのHF周波数応答のばらつきは、公称耳位置に提供される音響出力に対する以下のHF周波数応答のばらつき、すなわち、それぞれ、15dBSPL/V、15dBSPL/V、及び10dBSPL/Vと比較された。
【0061】
ある特定の実装形態では、シート10からの音響出力は、公称耳位置28に提供される音響出力に対する中域周波数(MF)の周波数応答のばらつきよりも小さいMF周波数応答のばらつきを有する。特定の例では、シート10からのこのMF周波数応答のばらつきは、公称耳位置28に提供される音響出力に対するMF周波数応答のばらつきよりも約10パーセント~20パーセント小さい。更に別の実装形態では、シート10からの音響出力の一貫した周波数応答は、公称耳位置28に提供される音響出力に対するLF一貫性以上のLF一貫性によって更に特徴付けられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、HFは、約4キロヘルツ(kHz)以上であり、約20kHzより上までわたる場合があり、LFは、約1kHz以下である。中域周波数は、約1kHz~約4kHzに等しくすることができる。
【0063】
いくつかの例示的な実装形態では、「一貫した周波数応答」は、ラウドスピーカアセンブリ20の周波数応答を含み、乗員30の両耳間分離、又はシート10を含む空間の複数の乗員(例えば、車両内の複数の乗員、又はホームシアターもしくは娯楽会場の複数の乗員)間のシート間分離のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。2つのラウドスピーカアセンブリ(例えば、左右のラウドスピーカアセンブリ20)を有するシートでは、シート間の分離は、シート10内の両方のラウドスピーカアセンブリ20によって維持される。
【0064】
いくつかの場合では(例えば、図2図3及び図5に見られるように)、シート10は、左右のラウドスピーカアセンブリなどの少なくとも2つのラウドスピーカアセンブリ20を含む。これらの場合のいくつかでは、シート10は、車内ラウドスピーカアセンブリ(車両キャビンの中心に近い)及び車外ラウドスピーカアセンブリ(車両の外壁又はドアに近い)を有する車両シートである。様々な実施形態によれば、車外位置に位置決めされたラウドスピーカアセンブリ20について、シート10からの音響出力のLF一貫性は、公称耳位置28に提供される音響出力のLF一貫性よりも大きい。
【0065】
図2及び図3に示すような特定の例では、シート背もたれ部分14は、中間部分34と、中間部分36の両側40、42から延びる2つの側面36、38と、を有する。シート10に乗員30がいない場合では、各側面36、38における背もたれ部分14の前面32は、中間部分36の前面32に対して傾斜している。これらの場合、各ラウドスピーカアセンブリ20の音響出口(複数の場合もある)22は、側面36、38のうちの1つに位置する。
【0066】
特定の例では、図2に示すように、音響出口22は、中間部分36の前面32に対して内向き発射角を有する。更なる例では、図5のシート10の上面断面図に示されるように、2つのドライバ構成におけるドライバ24は、背もたれ部分14を二等分する中心線から測定されるとき、約5度~約15度の内向き(横方向)発射角(β)を有することができる。特定の場合には、横方向発射角(β)は、約8度~約12度に等しく、より特定の場合には、約10度に等しい。図8に関して本明細書でさらに説明されるように、内向き発射角は、ドライバ24の垂直位置決めに基づいて変動することができ、例えば、より大きい(h)値は、より低い内向き発射角に関連付けられる。
【0067】
本明細書で述べたように、様々な実施形態によれば、シートヘッドレスト部分18は、シート背もたれ部分14に対して調節可能である。例えば、図1図2及び図5はそれぞれ、シート背もたれ部分14に対して調整可能なシートヘッドレスト部分18の構成を示す。例えば、シートヘッドレスト部分(複数の場合もある)18は、シート背もたれ部分14に対して垂直に移動させることができ、特定の場合には、厳密に垂直ではない方向にスライドするように構成することができる。図2に示す構成のような特定の場合には、シートヘッドレスト部分18は、シート10のヒップポイント(HP)に対してシート背もたれ部分14のセクション46と垂直方向に位置合わせされたセクション44を少なくとも有する。ある場合には、シート背もたれ14のセクション46は、シートヘッドレスト部分18のセクション44と垂直方向に重なる。図1図3(並びに図7及び図8)に示す構成などの追加の実装形態では、シート背もたれ14(例えば、セクション46)は、乗員30(図1)の名目上の肩48の上方に延びる。
【0068】
図5は、図1図4に示したシートの変形例を示す。特に、図5のシート10aは、シート10aのヘッドレスト部分18aに取り付けられたラウドスピーカアセンブリ20aを含んで示されている。これらの場合、ヘッドレスト部分18a内のラウドスピーカアセンブリ20aは、外向きの発射角を有する出口22aとともに配置され、背もたれ部分14内のラウドスピーカアセンブリ20bは、内向きの発射角を有する出口22bとともに配置される。これらの場合のいくつかにおいて、背もたれ部分14内のラウドスピーカアセンブリ20bは、上向きの発射角を有し、図1図4のいずれかを参照して説明したように、公称耳位置の垂直方向下方に配置される。いくつかの例では、ヘッドレスト部分18aと同様のヘッドレスト部分の追加の特徴は、特許文献1に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。シート内の乗員の着座位置及び音響パラメータの更なる説明は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、特許文献2(「Binaural Measurement System」)に見出すことができる。
【0069】
図6は、図5のシート10aの一部の上面断面図である。この例に示されるように、背もたれ部分14内のラウドスピーカアセンブリ20bは、背もたれ部分14を二等分する中心線(CL)から測定されるとき、約5度~約15度の内向き(横方向)発射角(β)を有する。特定の場合において、横方向発射角(β)は、約14度~約34度に等しく、より特定の場合において、約20度~約28度に等しく、更なる特定の場合において、約24度に等しい。図8に関して本明細書でさらに説明されるように、内向き発射角は、ドライバ24の垂直位置決めに基づいて変動することができ、例えば、より大きい(h)値は、より低い内向き発射角に関連付けられる。
【0070】
図7は、様々な実施形態によるシート10cの変形例を示す。この構成では、シート10cは、名目上の乗員30の肩48の上方の位置でシート24cに取り付けられた少なくとも1つのドライバ24c(例えば、シート10cの各側に1つずつ2つのドライバ)を含む。この場合、ドライバ24cは、名目上の乗員30の耳の下の位置26に音響出力を向けるために、水平に対して下向きの発射角(α)を有する。これらの場合、背もたれ14は、名目上の乗員30の肩48の上方に延在することができ、ヘッドレスト18の少なくとも一部は、背もたれ14のセクション間に挟まれる。これらの場合のいくつかにおいて、ヘッドレスト18は、(例えば、高さ又は角度において)調節可能であるが、他の場合において、ヘッドレスト18は、(例えば、「ミイラ」スタイルシートにおいて)固定される。いずれの場合でも、下向き発射角(α)は、名目上の乗員30の耳の下の位置26に音響出力を送達し、シート10c内の位置の範囲(Range)にわたって一貫した周波数応答を提供するように構成される。ある場合には、発射角(α)は、約13度~約23度(又は、水平に対して、約-13度~約-23度)に等しい。より特定の場合には、発射角(α)は、約-15度から約-21度に等しい。更なる特定の場合において、発射角(α)は、約-18度に等しい。特定の実施形態によれば、出口22の高さ(h)は、例えば、図1のシート10と比較して、本明細書に記載の上向き発射構成よりも大きい。すなわち、シート10cなどの下向き(又は負の)発射角(α)を有する様々な実装形態では、出口22の高さ(h)は、約642mm~約652mmに等しい。より特定の場合には、出口の高さ(h)は約650mm未満であり、特定の場合には、約647mmに等しい。
【0071】
図8は、様々な実施形態による乗員30を有するシート50の一部の概略図である。この図では、背もたれ部分14におけるラウドスピーカアセンブリ20からの出口の位置に関する3つの変形例が示されている。例えば、第1の位置(i)は、第1の上向き発射角(例えば、図1図2図3、及び図6に示されるような)を伴う変換器(図示せず)を有する出口22を図示し、第2の位置(ii)は、第2の上向き発射角を伴う変換器を有する出口22を図示し、第3の位置(iii)は、下向き発射角又はほぼ垂直発射方向(例えば、図4及び7に示されるような)のいずれかを伴う変換器を有する出口22を図示する。音響出口22は、出口22に隣接するシート背もたれ部分14の前面32に対して上向きの発射角を有するものとして様々な実施形態において説明されているが(例えば、位置(i)及び/又は(ii)において)、特定の追加の実施形態において、音響出口22は、出口22に隣接するシート背もたれ部分14の前面32に対して下向きの発射角を有する(例えば、位置(iii)において)。これらの場合、位置(iii)は、公称耳位置28とほぼ同じ高さ、又は公称耳位置28のわずかに上に位置することができる(図7に示すように)。追加の出口22の位置は、単に例として、シート50に星印で示されている。特定の非限定的な例では、位置(i)及び/又は位置(ii)において、中心線(CL)から出口22までの間隔(d1)は、約270mm~約330mmに等しく、いくつかの特定の例では、約300mmである。更なる非限定的な例では、位置(iii)において、中心線(CL)から出口22までの間隔(d2)は、約180mm~約220mmに等しく、特定の例では、約200mmである。
【0072】
図1から図8に示されたラウドスピーカの位置及び向きの組み合わせは、慣習的なシートバックスピーカよりも、個人の範囲にわたって良好な音響性能を提供し得る。ラウドスピーカは、背の低い個人の耳位置により近くなり得るが、ラウドスピーカの向きは、背の高い個人の耳位置がラウドスピーカ(又は音響アセンブリ)の指向性とより一致することを意味する。
【0073】
したがって、乗員の身長及び耳位置が変化すると、ラウドスピーカからの距離と、ラウドスピーカ及び/又は音響アセンブリの指向性との位置合わせとの間にトレードオフが生じる。多くの異なる乗員が異なる時間に車両シートを使用し得るので、車両シートの設計者は乗員の耳位置を知らないので、これは利点を提供する。したがって、本明細書で説明される実施例によるシートバックスピーカは、乗員の耳がどこに位置するかを知らないために有益であり、乗員の耳位置にかかわらず、例えば、誰がシートを使用するかにかかわらず、実質的に等しい音響性能を提供し得る。
【0074】
更に、背の高い個人の耳位置は、ラウドスピーカからより遠いが、車両のルーフ又はヘッドライナにより近くなり得、ヘッドライナ(及び/又はルーフ)からの音響補強から利益が得られ得る。加えて、背の高い個人の肩は、ラウドスピーカの正面により近く位置決めされ得、また、音響補強を提供し得る。完全を期すために、比較的背の低い人は、耳位置がラウドスピーカにより近くなり得、したがって音響補強を必要としない場合がある。したがって、ラウドスピーカは、本明細書で説明される実施例のうちのいくつかに従って、背もたれのより低く適切に位置決めされ得る。
【0075】
開示されたシステムにおけるある特定の構成要素は、図示されていない場合があるが、様々な追加の機能を可能にすることが理解される。例えば、システムは、電源、プロセッサ、メモリ、送信機/受信機などの通信構成要素、ネットワーク接続機器(Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、セルラ又は近距離通信(near field communication、NFC)機器を含むがこれらに限定されない)、及び位置識別構成要素(例えば、GPSシステム)を含むがこれらに限定されない追加の電子機器を含むことができる。加えて、本明細書に開示されるシステムは、ダイヤル、ボタン、タッチスクリーンなどを含む触覚入力などの1つ又は複数の従来の入力を含む、ユーザ相互作用を可能にする1つ又は複数のインターフェースを含むことができる。更なるインターフェースは、「スマート」ファブリックと称することができる、センシング/インターフェース構成要素が組み込まれたファブリックを含むことができる。インターフェースはまた、ユーザが音声コマンドを使用して調整を行うことができるように、音声コマンドインターフェースを含むことができる。インターフェースはまた、ユーザがジェスチャ(例えば、手を振る、うなずくなど)を用いて調節を行うことができるように、ジェスチャベースのインターフェースを含むことができる。
【0076】
図中の共通にラベル付けされた構成要素は、例示目的のために実質的に同等の構成要素であるとみなされ、それらの構成要素の重複する説明は、明確化のために省略する。様々な実装形態に従って記載した数値範囲及び値は、そのような範囲及び値の単なる例であり、これらの実装形態を限定することを意図するものではない。場合によっては、「およそ」という用語は、値を修正するために使用され、これらの場合、この値+/-測定誤差などの誤差のマージンを示すことができる。この誤差のマージンは、最大1パーセント~3パーセントの範囲であり得る。
【0077】
様々な実装形態では、互いに「連結」されているとして説明される構成要素は、1つ以上のインターフェースに沿って接合することができる。いくつかの実装形態では、これらのインターフェースは、別個の構成要素間の接合部を含むことができ、他の場合には、これらのインターフェースは、強固に及び/又は一体的に形成された相互接続部を含み得る。すなわち、いくつかの場合では、互いに「連結された」構成要素は同時に形成されて、単一の連続部材を画定することができる。しかしながら、他の実装形態では、これらの連結された構成要素は、別個の部材として形成され得、その後、既知のプロセス(例えば、はんだ付け、締結、超音波溶接、接合)によって接合され得る。様々な実装形態では、「連結された」と記載される電子構成要素は、これらの電子構成要素が互いにデータを通信することができるように、従来の有線及び/又は無線手段を介してリンクさせることができる。更に、所与の構成要素内の下位構成要素は、従来の経路を介してリンクされていると考えることができるが、必ずしも図示されない。
【0078】
複数の実装形態を説明してきた。それにもかかわらず、本明細書に記載される本発明の概念の範囲から逸脱することなく追加の改変を行うことができ、したがって、他の実装形態も以下の特許請求の範囲の範疇にあることが理解される。
【符号の説明】
【0079】
10,10a,10c,50 シート、14 シート背もたれ部分、18 シートヘッドレスト部分、20,20a,20b ラウドスピーカアセンブリ、22 音響出口、24,24c ドライバ、28 公称耳位置、30 乗員、32 前面、34 中間部分、36,38 側面、HP ヒップポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】