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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】肝癌診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
G01N33/50 D
G01N33/50 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573443
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2022095737
(87)【国際公開番号】W WO2022247939
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110593051.X
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519069268
【氏名又は名称】深▲じぇん▼市▲絵▼云生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】賈 偉
(72)【発明者】
【氏名】謝 国祥
(72)【発明者】
【氏名】陳 天▲る▼
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA02
2G045DA07
2G045DA30
2G045DA35
2G045DA78
2G045FB06
(57)【要約】
本発明は、肝癌診断装置を提供し、前記装置は、被験者の生体試料中のバイオマーカーレベルを測定して診断指標とし、前記バイオマーカーレベルは、タウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)、マルトトリオース、マルトース及び/又はラクトース、α-リノレン酸、β-アラニン、セバシン酸、2-メチルペンタン酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸のうちの1種又は複数種のレベル;及び/又は一次胆汁酸に対する二次胆汁酸の比、及び/又はグリシン結合一次胆汁酸/タウリン結合一次胆汁酸の比から選択され、前記一次胆汁酸は、コール酸、ケノデオキシコール酸から選択され、前記二次胆汁酸は、デオキシコール酸、リトコール酸、及びウルソデオキシコール酸を含む。本発明の診断装置は、肝臓癌及び肝硬変の早期診断に有用であり、患者の時間を稼ぎ、臨床治療効果を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝癌診断装置であって、
被験者の生体試料中のバイオマーカーレベルを測定して診断指標とし、前記バイオマーカーレベルは、タウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)、マルトトリオース、マルトース及び/又はラクトース、α-リノレン酸、β-アラニン、セバシン酸、2-メチルペンタン酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸のうちの1種又は複数種のレベル;及び/又は一次胆汁酸に対する二次胆汁酸の比、及び/又はグリシン結合一次胆汁酸/タウリン結合一次胆汁酸の比から選択され、前記一次胆汁酸は、コール酸、ケノデオキシコール酸から選択され、前記二次胆汁酸は、デオキシコール酸、リトコール酸、及びウルソデオキシコール酸を含む、ことを特徴とする肝癌診断装置。
【請求項2】
前記バイオマーカーレベルの測定は、被験者の生体試料を処理した後、クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法によって生体試料中のバイオマーカーの組み合わせを定量的に検出するステップを含み、前記クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法は、液体クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法、及びガスクロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の肝癌診断装置。
【請求項3】
キット、医療機器、診断モジュールを備えたコンピュータシステム、及び診断モジュールを備えた検出装置から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の肝癌診断装置。
【請求項4】
前記診断モジュールは、情報取得モジュールと肝癌診断モジュールを含み、前記情報取得モジュールは、少なくとも診断指標情報を取得するために使用され、前記肝癌診断モジュールは、少なくとも、前記情報取得モジュールによって取得された診断指標情報に基づいて、被験者が肝癌又は肝硬変に罹患しているか否かを評価する操作を実行するために使用される、ことを特徴とする請求項3に記載の肝癌診断装置。
【請求項5】
前記キットは、診断指標を検出する定量検出試薬を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の肝癌診断装置。
【請求項6】
前記診断指標はアルファフェトプロテインを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の肝癌診断装置。
【請求項7】
肝癌診断用のバイオマーカーの組み合わせであって、
タウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)、マルトトリオース、マルトース及び/又はラクトース、α-リノレン酸、β-アラニン、セバシン酸、2-メチルペンタン酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸のうちの1種又は複数種を含む、ことを特徴とする肝癌診断用のバイオマーカーの組み合わせ。
【請求項8】
アルファフェトプロテインをさらに含む、ことを特徴とする請求項7に記載のバイオマーカーの組み合わせ。
【請求項9】
肝癌又は肝硬変を診断する診断製品の製造における、請求項7又は8に記載のバイオマーカーの組み合わせの使用。
【請求項10】
肝癌又は肝硬変を治療する薬物の評価における、請求項7又は8に記載のバイオマーカーの組み合わせの使用。
【請求項11】
肝癌診断方法であって、被験者の生体試料を処理した後、クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法によって生体試料中のバイオマーカーの組み合わせを定量的に検出するステップを含み、前記バイオマーカーの組み合わせは、請求項7又は8に記載のバイオマーカーの組み合わせを含み、前記クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法は、液体クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法、及びガスクロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法を含む、肝癌診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2021/5/28の中国特許出願202110593051Xの優先権を主張している。本願は、当該中国特許出願の全文を援用している。
【0002】
本発明は、生物分野に属し、具体的には、被験者の生体試料中のバイオマーカーレベルを検出指標とする肝癌診断用の装置に関し、本発明はまた、1組の肝癌診断に有用なバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0003】
肝細胞癌(HCC)は肝臓原発性悪性腫瘍であり、主に慢性肝疾患患者や肝硬変患者に発症する。現在、肝細胞癌は世界で癌による死亡原因の第3位となっており、アジアとアフリカでは肝細胞癌の発生率が最も高く、この地域ではB型肝炎とC型肝炎の罹患率が高いため、慢性肝疾患が非常に発生し、HCCまで発展しやすい。以前は、HCC患者は一般に、右上腹部の痛み、体重減少、肝代償不全などの進行した症状があることから診断されている。現在、肝臓癌の診断に一般的に使用されている臨床のゴールドスタンダードは針生検であるが、この方法には、侵襲的検査、サンプリングエラー、病理医の操作や読み取りエラーなどの大きな制限がある。肝臓癌を予測する他の方法には、HCCの早期診断率を向上させるためにルーチンスクリーニングで血清アルファフェトプロテイン(AFP)レベルを測定することが含まれる。ただし、このような技術には、感度が低く、特異性が低いなどの明らかな制限もある。HCCの脅威は今後数年間で増大し続けると予想されているため、早期肝癌のスクリーニング指標として他の生物学的マーカーを探索したり、診断のために複数の生物学的マーカーを組み合わせて肝臓癌の早期診断の感度と特異性を向上させ、患者のリスクを軽減させることが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被験者の生体試料中のバイオマーカーレベルを検出指標とし、肝癌や肝硬変に関するリスクの評価、スクリーニング及び診断など、各種の目的に利用できる、肝癌診断装置を提供する。本発明の肝癌診断装置は、様々な製品の形態を取ってもよい。本発明はまた、前記肝癌診断装置の使用方法を提供する。本発明はまた、肝癌及び肝硬変に対する予測及び診断の能力を持つ1組のバイオマーカー及びその使用を提供する。
【0005】
以下、本発明で使用される名詞及び略語を説明する。
【0006】
本発明で使用されている名詞「診断」は、説明しやすくするように使用されているが、臨床基準によって定義される「診断」行為に限定されるものではないことが理解されるべきである。本発明に記載の「診断」には、臨床基準によって定義される「診断」行為に加えて、本発明による診断指標を評価することによって価値ある結論をもたらすすべてのプロセス及び行為が含まれる。目的及び使用方式としては、例えば、健康診断における一般的なスクリーニングに適用されるような、被験者の肝癌又は肝硬変のリスクレベルの評価、リスクの高い集団に対する定期的な監視、肝硬変又は肝癌の治療薬や肝硬変又は肝癌の潜在的な治療薬の治療効果の評価、肝硬変又は肝癌のリスクをもたらす可能性のある物質又は治療手段の評価などが含まれるが、これらに限定されない。以上で例示の目的で挙げたものは、本発明に記載の「診断」の範囲に含まれる。
【0007】
したがって、本発明の前記診断装置は、被験者の肝癌又は肝硬変の早期評価、健康診断における一般的なスクリーニング、臨床診断、及び薬物評物を含むがこれに限定されない目的で使用され、個別に使用して対応する結論を得ることができ、又は他の検出装置又は検出指標(例えば、アルファフェトプロテイン)と組み合わせて診断することができる。実施例によれば、本発明の診断装置をアルファフェトプロテインと組み合わせて使用することにより、臨床診断の精度及び信頼性を向上できることが示されている。
【0008】
本発明では、診断指標は、原データを計算して得られた比を含み、本明細書では、「/」で示される。例えば、タウロケノデオキシコール酸/グリシンケノデオキシコール酸は、タウロケノデオキシコール酸とグリシンケノデオキシコール酸との比であり、当業者の一般的な理解では、同一の試料、同一の検出方法及び同一の単位に基づく2つの物質の値の比である。
【0009】
本明細書の他の部分に別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「1つ」及び「該」は、内容がこれとは異なる意味を明示的に示していない限り、複数の言及対象を含む。例えば、「成分」が記載される場合、1又は複数の成分の組み合わせ等が含まれる。
本明細書の他の部分に別段の定義がない限り、本発明で使用される略語は以下の意味を有する。
HCC:肝細胞癌
CLD:慢性肝疾患
HBV:B型肝炎ウイルス
CA:コール酸
TCA:タウロコール酸
TCDCA:タウロケノデオキシコール酸
GCA:グリココール酸
DCA:デオキシコール酸
LCA:リトコール酸
CDCA:ケノデオキシコール酸
UDCA:ウルソデオキシコール酸
GCDCA:グリコケノデオキシコール酸
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の技術的解決手段によって達成される。
【0011】
本発明の第1態様では、被験者の生体試料中のバイオマーカーレベルを測定して診断指標とし、前記バイオマーカーレベルは、タウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)、マルトトリオース、マルトース及び/又はラクトース、α-リノレン酸、β-アラニン、セバシン酸、2-メチルペンタン酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸のうちの1種又は複数種のレベル;及び/又は一次胆汁酸に対する二次胆汁酸の比、及び/又はタウリン結合一次胆汁酸に対するグリシン結合一次胆汁酸の比から選択され、前記一次胆汁酸は、コール酸、ケノデオキシコール酸から選択され、前記二次胆汁酸は、デオキシコール酸、リトコール酸、及びウルソデオキシコール酸を含む、肝癌診断装置を提供する。
【0012】
以上の診断指標は、単独で、又は組み合わせて使用することができ、例えば、特定実施例として、前記バイオマーカーレベルは、タウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)のうちの1種又は複数種のレベルであり、特定実施例として、前記一次胆汁酸に対する二次胆汁酸の比は、デオキシコール酸/コール酸、リトコール酸/ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸/ケノデオキシコール酸から選択されてもよく、特定実施例として、タウリン結合一次胆汁酸に対するグリシン結合一次胆汁酸の比は、タウロケノデオキシコール酸/グリコケノデオキシコール酸から選択されてもよい。
【0013】
本発明の診断指標はアルファフェトプロテインをさらに含んでもよく、本発明の実施例では、本発明の診断指標がアルファフェトプロテインと併用する場合、健常者、慢性肝疾患、肝硬変及び肝癌を予測又は区別する場合、アルファフェトプロテインを単独で使用する場合よりも優れた診断効果が得られることを実証している。
【0014】
本発明の肝癌診断装置は、被験者として哺乳類、例えばヒトを使用してもよく、使用される生体試料は、尿試料及び血液試料であってもよく、血液試料を使用する場合、末梢血の全血、血漿又は血清を使用することができる。本発明では、検出試料おして被験者の末梢血の血清が使用される。
【0015】
前記バイオマーカーレベルの測定は、定量検出の目的で、被験者の生体試料を処理した後、クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法によって生体試料中のバイオマーカーの組み合わせを定量的に検出するステップを含んでもよく、前記クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法は、液体クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法、及びガスクロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法を含む。
【0016】
本発明の診断装置は、種々の製品形態を取ってもよく、例示的には、キット、医療機器、診断モジュールを備えたコンピュータシステム、及び診断モジュールを備えた検出装置から選択されてもよい。当業者に知られているように、前記医療機器、キットなどは、定義が現地政府の関連法律法規及び政策の規定に関連しており、国・地域によって分類方法及び意味が異なる。本発明に記載の医療機械、キットなどの名称は、単に本発明の診断マーカーの適用形態を説明するものであって、厳密な法規制の定義に基づく意味ではない。本発明の目的と一致する限り、前記医療機器、キットは、関連する政府部門によって登録された医療製品であってもよく、当業者が一時的に利用する方法及び形式で使用する製品又は製品の組み合わせであってもよい。
特定実施例として、本発明の前記診断装置は、
(1)検出対象の検出サンプルを受容するモジュールと、
(2)診断マーカーの発現レベルのデータを検出するモジュールと、
(3)診断指標であるバイオマーカーの発現レベルをデータベースに入力することによってリスクスコアを生成するモジュールと、を含み、前記データベースは、検出試料及び検出方法に関連する対照発現プロファイルを含み、前記対照発現プロファイルは、検出された診断マーカーのカットオフ値として表現可能な、検出試料及び検出方法に基づいて予め得られるものである。リスク評価は、被検試料中のバイオマーカーの発現レベルを予め設定されたカットオフ値と比較して行うものであり、カットオフ値よりも高いと、検出対象にリスクがあると考えられる。
【0017】
以下、キット及びコンピュータシステムを例にして、本発明の診断装置について例示的に説明する。
【0018】
(1)キット
特定実施例として、本発明の診断装置は、キットの形態をとってもよく、前記キットは、診断指標を検出する定量検出試薬を含む。例示的には、例えば、実施例に記載された定量検出試薬、内部標準物質、生物学的試料抽出試薬、及び検出結果を統計し評価するために使用できるソフトウェアをさらに含んでもよい。前記ソフトウェアは、コンピュータに組み込まれて実行され得る。
【0019】
(2)コンピュータシステム
特定実施例として、本発明の診断装置は、診断モジュールを備えたコンピュータシステム、及び診断モジュールを備えた検出装置であってもよく、前記診断モジュールは、情報取得モジュール及び肝癌診断モジュールを含み、前記情報取得モジュールは、少なくとも診断指標情報を取得するために使用され、前記肝癌診断モジュールは、少なくとも、前記情報取得モジュールによって取得された診断指標情報に基づいて、被験者が肝癌又は肝硬変に罹患しているか否かを評価する操作を実行するために使用される。
【0020】
本発明の第2態様では、タウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)、マルトトリオース、マルトース及び/又はラクトース、α-リノレン酸、β-アラニン、セバシン酸、2-メチルペンタン酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸のうちの1種又は複数種を含む、肝癌診断用のバイオマーカーの組み合わせを提供する。これらのバイオマーカー又はこれらの組み合わせは、任意にアルファフェトプロテインと併用してもよく、それによって、診断効果を高めることができる。
【0021】
本発明はまた、上記肝癌診断用のバイオマーカーの定量検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有益な技術的効果
本発明は、その検出指標を検出することにより肝癌及び肝硬変患者の予測及び診断を可能とする、特定の検出指標を有する肝癌検出装置を提供する。本発明の検査装置が採用した検出指標は、優れた区別能力を有し、単独で使用することができ、あるいは複数の指標を組み合わせて検出することにより、検出効果の信頼性を高めることができ、また、肝硬変と肝癌を区別することもできる。臨床で一般的な肝癌検出指標であるアルファフェトプロテインと併用すると、アルファフェトプロテインの診断効果が著しく向上する。
【0023】
本発明の目的、技術的解決手段及び効果をより明確かつ明確にするために、以下、図面と組み合わせて、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書に記載された特定実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するために使用されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例5の診断図である。
図2】実施例6の診断図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の特定実施例及び図面を参照して、本発明の技術的解決手段について詳細に説明する。明らかに、本部分で説明される特定実施例は、本発明の技術的解決手段を実施するための実施例の一部にすぎず、全ての実施例として理解されるべきではない。本部分に記載の特定実施例は、本発明を解釈するためにのみ使用され、本発明を限定するためには使用されないことが理解されるべきである。本部分の実施例に基づいて、当業者がその示唆に基づいて、創造的な労働を行わずに得ることができる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属するものとする。
【0026】
実施例におけるランダムフォレストモデルは深▲セン▼市絵雲生物科技有限公司製のLiveForestソフトウェアを使用して得られ、このソフトウェア著作権登録番号2018SR227394、ソフトウェア名称:メタボロミクスに基づく慢性肝疾患機械学習診断システムV1.0.である。
実施例1 バイオマーカーの検討
【0027】
本実施例の被験者は計1755名であった。訓練セットとテストセットにおいて、超高速液体クロマトグラフィー技術を用いて、健常者422例、肝穿刺生検により慢性肝疾患(CLD)と確定診断された患者433例、及び肝組織病理検査によりHCCと確定診断された患者900例の空腹時(12時間)血清/血漿標本中の胆汁酸、脂肪酸、有機酸、糖類やアミノ酸などの代謝物の含有量を検出し、また、対応する臨床指標の検出を行った。本発明における試験試料は、地元の倫理委員会によって承認され、すべての被験者からインフォームドコンセントを得られる。
【0028】
(1)血清試料の採取及び調製
空腹静脈血5mLを採取し、プラスチック遠心分離管に入れた。
血清調製
1) 血清調製管を5回ゆっくり反転した。
2) 室温(摂氏約25度)で、試験管ラックに試験管を1.5時間垂直に放置した。
3) 試験管を2500rpmの回転数で10分間(摂氏4度)遠心分離した。
4) 凍結保存管1本ごとに血清0.5mlを入れるように、上澄み(約2.5ミリリットル)をピペッターでプラスチック遠心分離管(eppendorf、1.5ml遠心分離管)に分注した。
5) 遠心分離管にサンプル番号を記入した。
6) さっと摂氏-80度の冷蔵庫に入れた。
【0029】
(2)血清臨床指標検査
LH750血液分析装置とSynchron DXC800臨床システム(Beckman Coulter、米国)を使用して、製造元の試験プログラムに基づく血液学的及び生化学的検査を実施した。化学発光免疫分析装置(LUMO、Shinova Systems、上海、中国)を使用して血液中のヒアルロン酸とラミニンの検出を行った。血液凝固機能測定装置(STAGO Compact、Diagnostica Stago、フランス)を用いて血液凝固機能の検査を行った。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応システム(LightCycler 480、Roche、米国)を用いて血液HBV-DNA検査を行った。
【0030】
(3)血清試料のコール酸検出
試料調製
血清100μlを1.5mL遠心分離管に取り、メタノール150μL(内部標準物質、50nM重水素化-CA(コール酸)、重水素化-UDCA(ウルソデオキシコール酸)、重水素化-LCA(リトコール酸)を含む)を加えた。10分間ボルテックス振とうさせて、均一に混合し、10分間静置後、摂氏4度、13500回転数で20分間遠心分離し、上澄みをUPLC-TQMS(超高速液体クロマトグラフィー-トリプル四重極質量分析)分析を行った。
分析機器試験:UPLC-TQMS:二元溶媒コントローラと試料制御チャンバを備えたウォーターズ超高速液体クロマトグラフィーシステム(ウォーターズ社、米国)を用いた。デュアルエレクトロスプレーイオン源を備えたWaters XEVOトリプル四重極質量分析計(ウォーターズ社、米国)を用いた。
クロマトグラフィー条件:UPLC BEH C18カラム(100mm×2.1mm、1.7μm)を用いた。カラム温度45℃;移動相A:水(0.1%ギ酸)、B:アセトニトリル(0.1%ギ酸、);流速0.4mL/min、注入量5μL;グラジエント溶出条件:0~1min(5% B)、1~5min(5~25% B)、5~15.5min(25~40% B)、15.5~17.5min(40~95% B)、17.5~19min(95% B)、19~19.5min(95~5% B)、19.6~21min(5% B)。
質量分析条件:エレクトロスプレーイオン源はマイナスイオンスキャンモード(ESI-)を用い、具体的な条件は以下の通りである。キャピラリ電圧1.2kV、コーン電圧55V、抽出コーン電圧4V、イオン源温度150℃、脱溶媒ガス温度550℃、逆コーン気流50L/h、脱溶媒ガス650L/h、低質量領域分解能4.7、高質量領域分解能15、多重反応検出モードでのデータ収集。
【0031】
(4)血清試料の遊離脂肪酸の検出
試料調製:血清30μLを採取し、イソプロピルアルコール/n-ヘキサン/2Mリン酸(40:10:1)500μL及び同位体標識C19:0-d37内部標準物質溶液(5μg/mL)10μLを加え、2minボルテックス混合し、室温で20min静置した。n-ヘキサン400μL、水300μLを加え、2minボルテックス混合し、12000rpmで5min遠心分離し、上澄み400μLを採取し、残りの液にn-ヘキサン400μLを加え、2minボルテックス混合し、12000rpmで5min遠心分離し、上澄み400μLを採取した。上澄みを併せて、室温で真空乾燥させた。乾燥した遠心分離管にメタノール80μLを加えて再溶解し、分析した。
分析機器試験:UPLC-TQMS:二元溶媒コントローラと試料制御チャンバを備えたウォーターズ超高速液体クロマトグラフィーシステム(ウォーターズ社、米国)を用いた。デュアルエレクトロスプレーイオン源を備えたWaters XEVOトリプル四重極質量分析(ウォーターズ社、米国)を用いた。
クロマトグラフィー条件:UPLC BEH C18カラム(100mm×2.1mm、1.7μm)を用いた。カラム温度40℃;移動相A:水、移動相B:アセトニトリル/イソプロパノール(体積比8:2)。流速0.4mL/min、注入量5μL;グラジエント溶出条件:0~2min:70% B、2~5min:70%~75% B、5~10min:75%~80% B、10~13min:80%~90% B、13~16min:90%~100% B、16~21min:100% B、21~22.5min:100%~70% B、22.5~24min:70% B。総分析時間は24minであった。
質量分析条件:エレクトロスプレーイオン源はマイナスイオンスキャンモード(ESI-)を用い、具体的な条件は以下の通りである。キャピラリ電圧2.5kV、コーン電圧55V、抽出コーン電圧4V、イオン源温度120℃、脱溶媒ガス温度450℃、逆コーン気流50L/h、脱溶媒ガス650L/h、低質量領域分解能4.7、高質量領域分解能15、検出器電圧2390V、走査時間0.35s、走査時間間隔0.02s、質量電荷比範囲:m/z 50~1000。ロック質量数は554.2615であった。
【0032】
(5)血清試料のアミノ酸の検出
試料調製:血清40μLを採取し、メタノールアセトニトリル混合溶媒(1:9、v:v)500μLを加え、2minボルテックス振とうさせた。遠心分離管に入れて-20℃で10min放置し、蛋白沈殿を促進し、12000rpm、4℃で15min遠心分離した。上澄み20μLを採取し、室温で真空乾燥した。乾燥した遠心分離管にメタノール水混合溶媒(1:1、v:v、内部標準物質として1μg/mLのジクロロフェニルアラニンを含む)100μLを加えて再溶解し、分析した。
分析機器試験:UPLC-TQMS:二元溶媒コントローラと試料制御チャンバを備えたウォーターズ超高速液体クロマトグラフィーシステム(ウォーターズ社、米国)を用いた。デュアルエレクトロスプレーイオン源を備えたWaters XEVOトリプル四重極質量分析(ウォーターズ社、米国)を用いた。
クロマトグラフィー条件:UPLC BEH C18カラム(100mm×2.1mm、1.7μm)を用いた。カラム温度40℃;移動相A:水(0.1%ギ酸)、B:アセトニトリル(0.1%ギ酸、);流速0.4mL/min、注入量5μL;グラジエント溶出条件:0~0.5min(1% B)、0.5~9min(1~20% B)、9~11min(20~75% B)、11~16min(75~99% B)、16~16.5min(99% B)。
質量分析条件:エレクトロスプレーイオン源はマイナスイオンスキャンモード(ESI-)を用い、具体的な条件は以下の通りである。キャピラリ電圧3.0、コーン電圧55V、抽出コーン電圧4V、イオン源温度150℃、脱溶媒ガス温度450℃、逆コーン電圧気流50L/h、脱溶媒ガス800L/h、低質量領域分解能4.7、高質量領域分解能15、多重反応検出モードでのデータ収集。
【0033】
(6)血清試料のトリグリセリドの検出
血清トリグリセリドの測定は酵素比色法を用いて行われた。
【0034】
(7)肝臓生検
すべての患者は超音波ガイド下肝生検を受けた。「7点」ベースラインサンプリング法を用いて、腫瘍の12時、3時、6時及び9時の位置で癌と癌傍肝組織との接合部から1:1の割合で試料を採取した。腫瘍の内部から少なくとも1つの塊を採取した。腫瘍縁部から≦1cm(癌近傍)と>1cm(癌近傍)の範囲内の肝組織からそれぞれ1つの塊を採取し、10%ホルマリンで12~24時間固定化し、パラフィンで包埋し、組織切片にヘマトキシリン-イオシン染色とMasson染色を行った。病理評価は復旦大学上海医学院の3人の病理専門家がそれぞれ盲検法で独立に評価し、結果はフィッシャー・カッパ検定で一致性を検証した。評価結果がフィッシャー・カッパ検定に合格しなかった場合、一致した結果を得るために、試料の再分析を行った。
【0035】
(8)バイオインフォマティクス方法
本発明では、健常者422名、CLD患者433名、及びHCC患者900名を、70%及び30%の割合で訓練セット及びテストセットに無作為に分けた。訓練セットでは、健常者HCC患者、CLD患者、及びHCC患者を区別するために、単一因子ウィルコクソン順位和検定とLASSOを用いてバイオマーカー候補の選別と同定を行い、ランダムフォレストモデルを用いて変数候補を評価しモデルを構築した後、テストセットと独立検証セットでそれぞれ以上のモデルを検証した。
以上の研究により、タウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリシンケノデオキシコール酸、リノレライン酸(C18:2n6t)、マルトトリオース、マルトース及び/又はラクトース、α-リノレン酸、β-アラニン、セバシン酸、2-メチル吉草酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸ののうちの1種又は複数種のレベルを含むバイオマーカーが予測及び診断能力を有し、また、一次胆汁酸に対する二次胆汁酸の比、及び/又はグリシン結合一次胆汁酸/タウリン結合一次胆汁酸比の比も予測及び診断能力を有することを発見し、前記一次胆汁酸は、コール酸、ケノデオキシコール酸から選択され、前記二次胆汁酸はオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸を含む。
実施例2 診断マーカー濃度の定量的検出
【0036】
検出対象診断マーカーの標準品溶液の濃度と、対応する検出対象診断マーカー及び検出対象診断マーカーと同様な安定同位体内部標準物質との面積比について検量線をプロットし、同位体内部標準物質を用いて定量的に測定した。また、試料に同位体内部標準物質を添加することにより、試料の検出過程の品質管理を行った。
検出方法は、実施例1を参照する。
実施例3 健常対照とHCCの区別
【0037】
訓練セットにおけるHCC患者630例と健常者296例、テストセットにおけるHCC患者270例と健常者126例について、実施例1で得られたバイオマーカーを利用して訓練セットで訓練されたバイオマーカーの組み合わせのランダムフォレストモデルを利用して、上記被験者がHCCに罹患する可能性を出力することができ、また、ROC分析におけるヨウデン最適点から最適なカットオフ値を特定することにより、HCC患者と健常者を区別するためのこのモデルの総合的能力を評価することができる。テストセットについてテストを行った結果を表1及び表2に示す。
【表1】
【表2】
実施例4 肝硬変とHCCの区別
【0038】
訓練セットにおけるHCC患者630例と肝硬変患者303例、テストセットにおけるHCC患者270例と肝硬変患者130例について、実施例1で得られたバイオマーカーのうち訓練セットで訓練されたバイオマーカーの組み合わせのランダムフォレストモデルを利用して、上記被験者がHCCに罹患する可能性を出力することができ、また、ROC分析におけるヨウデン最適点から最適なカットオフ値を特定し、HCC患者と肝硬変患者を区別するためのモデルの総合的能力を評価することができる。テストセットについてテストを行った結果を表3及び表4に示す。
【表3】
【表4】
実施例5 バイオマーカーの組み合わせであるタウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)による健常群とHCC群の区別
【0039】
訓練セットにおけるHCC患者630例と健常者296例、テストセットにおけるHCC患270者例と健常者126例について、訓練セットで訓練された上記のバイオマーカーの組み合わせのランダムフォレストモデルを利用して、上記被験者がHCCに罹患する可能性を出力することができ、また、ROC分析におけるヨウデン最適点から最適なカットオフ値を見つけることにより、HCC患者と健常者の区別に対するこのモデルの総合的能力を評価することができる。結果を図1及び表5に示す。訓練セットでは、ROC曲線下面積と95%信頼区間は1.000(95%CI 0.999~1.000)、最適なカットオフ値は0.078、最適なカットオフ値での感度と特異性パーセンテージはそれぞれ99.7%と100%である。テストセットでは、ROC曲線下面積と95%信頼区間は1.000(95%CI 0.999~1.000)、最適なカットオフ値は0.078、最適なカットオフ値での感度と特異度はそれぞれ99.2%と100%であった。前記対象測定マーカーのレベルの場合、これらの測定値をランダムフォレストモデルに導入したところ、個体のスコア閾値が0.078より大きければ、その個体はHCCのリスクが高いことを示し、個体のスコア閾値が0.078未満であれば、その個体はHCCのリスクが低いことを示している。
【表5】
実施例6 バイオマーカーの組み合わせであるタウロコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリココール酸、リノレイジン酸(C18:2n6t)によるCLD群とHCC群の区別
【0040】
訓練セットにおけるHCC患者630例とCLD患者303例、テストセットにおけるHCC患者303例とCLD患者130例について、訓練セットで訓練されたバイオマーカーの組み合わせのランダムフォレストモデルを利用して、上記被験者がHCCに罹患する可能性を出力することができ、また、ROC分析におけるヨウデン最適点から最適なカットオフ値を特定することにより、HCC患者とCLD患者の区別に対するこのモデルの総合的能力を評価することができる。結果を図2及び表6に示す。訓練セットではROC曲線下面積と95%信頼区間は0.912(95%CI 0.874-0.946)、最適なカットオフ値は-0.502、最適なカットオフ値での感度と特異性パーセンテージはそれぞれ83.6%と90.6%であった。テストセットではROC曲線下面積と95%信頼区間は0.918、最適なカットオフ値は-0.502、最適なカットオフ値での感度と特異性パーセンテージはそれぞれ81.8%と80.4%であった。前記対象測定マーカーのレベルの場合、これらの測定値をランダムフォレストモデルに導入したところ、個体のスコア閾値が-0.502より大きければ、その個体はHCCのリスクが高いことを示し、個体のスコア閾値が-0.502未満であればその個体はHCCのリスクが低いことを示している。
【表6】
実施例7
【0041】
肝癌診断方法であって、被験者の生体試料を上記の実施例のように処理した後、クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法によって、生体試料中のバイオマーカーの組み合わせを定量的に検出するステップを含み、前記バイオマーカーの組み合わせは、上記の実施例により有効性が実証されたバイオマーカーの組み合わせを含み、前記クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法包は、上記の実施例における前記液体クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法、及びガスクロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法を含む。
図1
図2
【図
【図
【図
【図
【図
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【国際調査報告】