IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-気相重合用熱交換器 図1a
  • 特表-気相重合用熱交換器 図1b
  • 特表-気相重合用熱交換器 図1c
  • 特表-気相重合用熱交換器 図2
  • 特表-気相重合用熱交換器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】気相重合用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C08F2/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573580
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022065432
(87)【国際公開番号】W WO2022258633
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178380.8
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ディ フェデリコ,ピエール ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】リナルディ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ボナッコルシ、ジャン ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ペンゾ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】ドリーニ,マウリツィオ
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011DA06
4J011DB13
4J011DB23
4J011EC00
4J011MA11
4J011MB01
(57)【要約】
【解決手段】 ガス流を冷却するための多管式熱交換器であって、入口チャンバと、シェル構造に封入されたチューブ束と、出口チャンバと、を含み、各チューブは、入口と、長手方向中央部と、出口と、を含み、各チューブの入口の直径d1が、前記チューブの長手方向中央部の直径d2よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-入口チャンバ(61)と、
-シェル構造内に封入されたチューブ束(62)と、
-出口チャンバ(63)と、を含み、
前記各チューブ(62)は、
-入口(621)と、
-長手方向中央部(622)と、
-出口(623)と、を含み、
前記各チューブ(62)の前記入口(621)の直径d1が、前記チューブの対応する長手方向中央部(622)の直径d2よりも大きく、前記熱交換器の前記チューブ(62)の前記入口(621)は、シェル構造内の容積から前記入口チャンバ(61)を分離するチューブシート(64)内に一体化されている、ガス流を冷却するための多管式熱交換器(6)であって、前記チューブシート(64)が前記隣接する2つのチューブの間の中間に頂点(641)を形成するように、2つの前記チューブの間の前記チューブシート(64)の上面が立体的に形成されている、ことを特徴とする多管式熱交換器(6)。
【請求項2】
前記直径d1と前記直径d2との比が、1.75:1~1.5:1、より好ましくは1.4:1~1.3:1である、請求項1に記載の熱交換器(6)。
【請求項3】
前記各チューブ(62)の前記入口(621)が円錐形状を有する、請求項1又は2のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項4】
前記各チューブ(62)の前記入口(621)の直径d1が25~45mm、好ましくは30~40mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項5】
前記チューブ(62)の前記長手方向中央部(622)の直径d2が10~30mm、好ましくは15~25mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項6】
前記チューブ束は、少なくとも500本、好ましくは500~6000本の前記チューブ(62)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項7】
前記隣接するチューブ(62)の前記中央部(622)間の距離が、チューブ軸線からチューブ軸線まで測定されて、25~45mm、好ましくは30~35mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項8】
円錐領域と前記チューブの中心軸との間の角度が、好ましくは20°~60°の範囲内であり、より好ましくは30°~50°の範囲内であり、特に45°である、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項9】
前記チューブシート(64)は、前記各チューブ(62)のための穴を含み、前記チューブ(62)は、対応する穴内に部分的に収容され、前記穴は、少なくとも部分的に前記上面に向かって先細りになっており、前記チューブ(62)の前記入口(621)を形成し、前記隣接するチューブ(62)の間に鋭利な頂点(641)を形成する、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項10】
前記チューブ(62)の内面及び/又は前記入口チャンバ(61)及び出口チャンバ(63)の表面が、ASME B46.1に基づいて決定される場合、7m未満、好ましくは3m未満、特に2m未満の表面粗さRを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項11】
オレフィンの気相重合のための装置であって、
-少なくとも1つの重合ゾーンを含む反応器(1、2)と、
-反応ガスを前記反応器(1、2)から抜き出し、前記反応ガスを前記反応器(1、2)に戻すためのリサイクルライン(3)と、
-前記反応ガスを前記リサイクルライン(3)に沿って輸送するための圧縮機(4)と、
-前記反応ガスを冷却するための熱交換器(6)と、を含み、
前記熱交換器(6)は、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱交換器である、装置。
【請求項12】
前記熱交換器(6)の下流に配置されたバタフライ弁(7)をさらに含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記反応器は流動層反応器である、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記反応器は、マルチゾーン循環反応器であり、第1重合ゾーン(21)では、成長したポリオレフィン粒子は、急速流動又は輸送条件下で上向きに流れ、第2重合ゾーン(22)では、成長したポリオレフィン粒子は、緻密な形で下向きに流れ、前記第1重合ゾーン(21)と前記第2重合ゾーン(22)とは、相互に連結され、前記第1重合ゾーン(21)から離れたポリオレフィン粒子は、前記第2重合ゾーン(22)に入り、前記第2重合ゾーン(22)から離れたポリオレフィン粒子は、前記第1重合ゾーン(21)に入り、前記第1重合ゾーン(21)と前記第2重合ゾーン(21)を通過するポリオレフィン粒子の循環を形成する、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項15】
重合触媒の存在下、20~200℃の温度及び0.5~10MPaの圧力でオレフィンを単独重合させるか、又はオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることを含むオレフィンポリマーの製造プロセスであって、前記方法は、請求項11~14のいずれか1項に記載の装置で実施される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィンの気相重合に有用な熱交換器を提供する。本開示は、特に、チューブの入口で拡径されたチューブ束を含む熱交換器を提供する。本開示はまた、熱交換器を含むオレフィンの気相重合のための装置、及び該装置内で行われるオレフィンポリマーの製造プロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、2つのガス又は流体の間で熱を伝達するために広く使用されているシステムで、冷却及び加熱プロセスの両方に使用できる。一般的な設計は、主に製油所や高圧下で運転されるその他の大規模な化学プロセスで使用されるシェルアンドチューブ型熱交換器である。このタイプの熱交換器は、通常は、チューブ束が入った大きな圧力容器であるシェルで構成されている。これらのチューブには、冷却又は加熱される必要がある第1流体が含まれている。第2流体は、加熱又は冷却されているチューブの上を流れ、必要に応じて熱を提供したり、熱を吸収したりできる。
【0003】
熱交換器に採用できる応用分野の1つは、オレフィンの気相重合である。気相重合プロセスは、ポリオレフィンを製造するための経済的なプロセスである。このような気相重合を実施するのに適した反応器は、例えば、流動床反応器、撹拌気相反応器、又は2つの異なる相互接続された気相重合ゾーンを有するマルチゾーン循環反応器である。これらのプロセスは、通常、モノマー及びコモノマーを含む気相で行われ、多くの場合さらに、分子量調整剤又は低分子量反応生成物として窒素又はアルカンなどの重合希釈剤、又は水素などの他の気体成分も含まれる。得られる生成物は、通常、粒子状触媒固体を含む重合触媒系によって形成される固体ポリオレフィン粒子である。
【0004】
オレフィン気相重合プロセスは、反応ゾーンから多量のガスを抜き出し、重合熱を除去する熱交換器を通過させた後、重合ゾーンに戻すことを特徴とする。流動層反応器では、戻された反応ガスはさらに、ポリオレフィン粒子を流動状態に維持する働きをする。マルチゾーン循環反応器において、戻された反応ガスによって反応器ゾーン間の循環が行われる。これらすべてのプロセスを推進するために、反応ガスのリサイクルラインには通常、遠心圧縮機が装備されている。しかしながら、ポリマー粒子及び他の固体が反応ガス中に存在するため、気相重合を実施するために使用される装置、特に熱交換器は汚れやすい。
【0005】
熱交換器の表面に固体粒子(ポリマー粒子又はその他の不純物など)が堆積すると、汚れが発生し、その結果、熱効率の低下、熱流束の低下、高温側の温度上昇、及び低温側の温度低下を引き起こす。このような固体の蓄積は、堆積物の下の腐食を引き起こす可能性もあり、プロセスの効率だけでなく、使用される装置の寿命も低下する可能性がある。
【0006】
汚れの問題に対処するために、長い間、多くの努力がなされてきた。
【0007】
ポリマーを製造するための連続ガス流動層プロセスであって、モノマーを含むガス流を反応器ゾーンの流動層に通し、ポリマー粒子を反応器ゾーンから抜き出し、未反応モノマー及び固体粒子を含むガス流を冷却してその一部を凝縮し、液体と固体粒子の重量比が2:1以上である液体含有混合物を形成するプロセスは、米国第4,588,790号に開示されている。混合物は反応ゾーンに再導入され、そこで混合物中の液体が蒸発する。これにより、低速ゾーンで蓄積した湿潤凝集固体粒子の生成を回避する。
【0008】
WO 00/61278 A1は、熱交換器内での粒子の堆積、蓄積又はブルドアップを制限又は防止するための手段を備えた重合プロセス及び重合装置を提供する。これに関して、オレフィン及び触媒が供給される流動層反応器と、反応器の上部から抜き出さされたリサイクルガス流を輸送するための少なくとも1つの第1チューブ、リサイクルガス流を冷却するための少なくとも1つの熱交換器、リサイクルガス流を移動させるための少なくとも1つの圧縮機、及びリサイクルガス流を輸送して反応器の下部に導入するための少なくとも1つの第2チューブを含むリサイクル回路と、を含むオレフィン気相重合用装置であって、前記熱交換器は多管式熱交換器であり、多管式熱交換器は、入口チャンバと、水平な長手方向軸線を有しかつ水平な円筒状シェル内に封入されたチューブ束と、出口チャンバと、を順次かつ組み合わせて含み、出口チャンバは、排出穴を備え、傾斜方向に沿って円錐台状に延在する壁を有し、その円錐台の大きなベースはシェルに接続され、小さなベースは第2チューブに接続された排出穴に対応し、傾斜円錐台の下部母線は水平又は下方に傾斜している。
【0009】
KR 200406359 Y1は、発電所、製鉄所等から排出される排ガスの高熱を回収するための高温熱交換器である。内部には複数のチューブが密に設置されており、下端はソフトソケット内に固定されている。
【0010】
EP2 662459 A2は、鉄鋼生産プラントの電気炉からの生の高温排ガスを冷却するための排ガス冷却器に関するものである。各燃焼排ガス冷却器は、ガス入口チャンバ、ガス出口チャンバ、及び入口チャンバと出口チャンバの間及び入口チャンバと出口チャンバの中に延在するガス冷却管のマトリクスを有する。各ガス冷却チューブは、ガス冷却チューブへの煙ガスの流線型の流れを促進するのに有効な空気力学的に湾曲したガス加速プロファイルを含むベル状の入口端を有する。
【0011】
WO 2007/082515 A1は、チューブシートの両側にチューブが保持され、それぞれの場合にチューブシートに溶接により接合されているチューブバンドル熱交換器である。入口側チューブシートの接続部は、いずれの場合も円錐形及び/又はトランペット形の移行部品によって形成され、その断面はガス流方向に減少する。
【0012】
US 2014/0000850 A1は、被冷却流体のチャネルを有する複数の内管部分が設けられた外管部分を有する熱交換器に関するものである。外管部分には、少なくとも1つの冷却流体チャネルが設けられている。少なくとも1つの冷却流体チャネルと被冷却流体の少なくとも1つのチャネルとは熱的に接触しており、互いに流体的に分離されている。両端が開口した複数の内管部分は、上流側端部本体の対応する導通穴に端部がしっかりと固定され、下流側端部本体の対応する導通穴に他端がしっかりと固定されたチューブ束の形態を形成する。
【0013】
CH 276825 Aは、熱交換媒体がチューブを通過するためにチューブシートに固定されたチューブシート間に延在するフィンチューブ束を含む熱交換器であって、フィンチューブ束を含む熱交換器に関するものである。
【0014】
DE 10333577 A1は、粘性媒体を処理するための蒸発装置、及びポリマー溶液又は溶融物から揮発性成分を蒸発させるための方法が記載されている。蒸発装置は、蒸発装置は、有穴底部を備えた少なくとも1つの送達チャンバと、それに接続され垂直管を取り囲むシェルアンドチューブ熱交換器と、それに隣接して配置された脱気チャンバとを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
気相重合反応器内の汚れを低減する努力が行われているが、特に熱交換能力を増加させるために追加の熱交換器を設置して反応器のポリマー生産量を増加させる場合に問題が深刻になるため、不所望なポリマー粒子の蓄積による汚れの危険性を最小化する気相重合プロセス用の熱交換器を提供することが必要である。
【0016】
入口チャンバと、シェル構造内に封入されたチューブ束と、出口チャンバとを含み、各チューブは、入口と、長手方向中央部と、出口とを含み、各チューブの入口の直径d1が、チューブの対応する長手方向中央部の直径d2よりも大きい、ガス流を冷却するための多管式熱交換器が提供される。本開示の熱交換器のチューブの入口は、シェル構造内の容積から入口チャンバを分離するチューブシートに一体化されており、チューブシートが隣接する2つのチューブの間の中間に頂点を形成するように、2つのチューブの間のチューブシートの上面が立体的に形成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、直径d1と直径d2との比が、1.75:1~1.5:1、より好ましくは1.4:1~1.3:1である。
【0018】
いくつかの実施形態では、各チューブの入口は円錐形を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、各チューブの入口の直径d1は、25~45mm、好ましくは30~40mmである。
【0020】
いくつかの実施形態では、チューブの長手方向中央部の直径d2は、10~30mm、好ましくは15~25mmである。
【0021】
いくつかの実施形態では、チューブはシェル構造内に三角形の充填パターンで配置される。
【0022】
いくつかの実施形態では、チューブは、シェル構造内に正方形の充填パターンで配置される。
【0023】
いくつかの実施形態では、チューブ束は、少なくとも500本、好ましくは500~6000本のチューブを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、隣接するチューブの中央部間の距離は、チューブ軸線からチューブ軸線まで測定されて、25~45mm、好ましくは30~35mmである。
【0025】
いくつかの実施形態では、円錐領域とチューブの中心軸との間の角度が、好ましくは20°から60°の範囲内であり、より好ましくは30°から50°の範囲内であり、特に45°である。
【0026】
いくつかの実施形態では、チューブシートは、各チューブのための穴を含み、チューブ部分は対応する穴内に収容されてもよい。この穴は前記上面に向かって先細りになっており、チューブの入口を形成し、隣接するチューブの間に鋭利な頂部を形成してもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、チューブシートの上面の少なくとも一部は、チューブの軸方向に垂直な平面上に延びる穴の間の平坦な部分を含まない。
【0028】
いくつかの実施形態では、チューブシートの上面の少なくとも一部は、穴間に延びる軸方向に突出するリブを有し、その自由端に向かって徐々に細くなって頂点を形成するリブによってリブ化されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、頂点は40°~120°、より好ましくは60°~100°、特に90°の角度を制限してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、頂点は対称であってもよく、隣接する穴まで延びる各辺のスロープが形成されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、チューブは、それぞれの穴の内側でチューブシートに溶接されてもよく、この場合、チューブの前面と穴の内面との間に隅肉溶接が形成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、チューブの内面及び/又は入口チャンバ及び出口チャンバの表面は、ASME B46.1に従って決定される場合、7m未満、好ましくは3m未満、特に2m未満の表面粗さRを有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、チューブの内面及び/又は入口チャンバ及び出口チャンバの表面はステンレス鋼で作られる。
【0034】
本開示の別の実施形態は、オレフィンの気相重合のための装置を提供し、
-少なくとも1つの重合ゾーンを含む反応器と、
-反応ガスを反応器から抜き出し、反応器に戻すためのリサイクルラインと、
-反応ガスをリサイクルラインに沿って輸送するための圧縮機と、
-反応ガスを冷却するための熱交換器と、を含み、
装置に採用される熱交換器は、本開示の熱交換器である。
【0035】
いくつかの実施形態では、熱交換器は水平又は垂直に配置される。
【0036】
いくつかの実施形態では、反応器は、熱交換器の下流に配置されたバタフライ弁をさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、反応器は流動層反応器である。
【0038】
いくつかの実施形態では、反応器は、マルチゾーン循環反応器であり、第1重合ゾーンでは、成長したポリオレフィン粒子は、急速流動又は輸送条件下で上向きに流れ、第2重合ゾーンでは、成長したポリオレフィン粒子は、緻密な形で下向きに流れ、第1重合ゾーンと第2重合ゾーンとは、相互に接続され、第1重合ゾーンから離れたポリオレフィン粒子は第2重合ゾーンに入り、第2重合ゾーンから離れたポリオレフィン粒子は第1重合ゾーンに入り、第1重合ゾーンと第2重合ゾーンを通過するポリオレフィン粒子の循環を形成する。
【0039】
いくつかの実施形態では、反応器はシリーズの反応器の一部である。
【0040】
更なる実施形態は、重合触媒の存在下、20~200℃の温度及び0.5~10MPaの圧力でオレフィンを単独重合させるか、又はオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることを含むオレフィンポリマーの製造プロセスであって、本開示の装置で実施される、プロセスを提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、5m/s~25m/s、好ましくは15m/s~20m/sの反応ガス流速で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1a図1aは、本開示の熱交換器を概略的に示す。
図1b図1bは、本開示の熱交換器の詳細を概略的に示す。
図1c図1cは、本開示の熱交換器の詳細を概略的に示す。
図2図2は、オレフィンポリマーの製造プロセスを実施するための本開示の流動床反応器及び熱交換器を含む装置を概略的に示す。
図3図3は、オレフィンポリマーの製造プロセスを実施するための、本開示のマルチゾーン循環反応器及び熱交換器を含む装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、ガス流を冷却するための熱交換器であって、熱交換器は、入口チャンバと、シェル構造内に封入されたチューブ束と、出口チャンバとを含む熱交換器を提供する。各チューブは、入口と、長手方向中央部と、出口とを含む。したがって、本開示の熱交換器は、ワンパス直管熱交換器である。このような熱交換器の一般的な概念は、当業者にはよく知られている。冷却対象のガスが通過するチューブは、循環する冷却媒体によって完全に囲まれている。機械的安定性を提供するために、本開示の熱交換器のチューブは、好ましくは、循環冷却媒体が充填されたシェル構造内の容積から入口チャンバ及び出口チャンバを分離するチューブシートに固定的に接続される。好ましくは、チューブの端部は、チューブシートに固定的に接続される前に、チューブシート上の穴を通過する。
【0044】
特に気相重合プロセスでは、小さなポリマー粒子や他の固体が、熱交換器のチューブを通過する冷却対象のガス流に混入する可能性がある。これらの固体粒子は熱交換器内に蓄積し、機器を汚す可能性がある。したがって、本開示の熱交換器は、固体粒子が蓄積し、重合し、成長し、最終的に熱交換器を詰まらせる可能性があるデッドゾーンを回避するように設計されている。
【0045】
デッドゾーンを回避するために、各チューブの入口の直径d1は、各チューブの長手方向中央部の直径d2よりも大きい。このようにして、ガス流に混入した固体粒子は容易に管内に掃き出され、さらなる重合と成長のために反応器に戻されまる。本開示の好ましい実施形態では、直径d1と直径d2との比は1.75:1~1.5:1であり、より好ましくは1.4:1~1.3:1である。さらに好ましい実施形態では、各チューブの入口は円錐形状を有し、円錐形状ゾーンとチューブの中心軸との間の角度は、好ましくは20°~60°の範囲内であり、より好ましくは30°~50°の範囲内であり、特に45°である。チューブの入口部の円錐形状は、研削工具、好ましくは円錐形状を有する回転研削工具を利用して製造することができる。好ましい円錐状の入口を有するチューブを製造するために、回転砥石の円錐角度は、好ましくは40°~120°の範囲内、より好ましくは60°~100°の範囲内、特に90°である。チューブの入口のスロープは、固体粒子がその表面で止まることができず、チューブ内に押し流されるように特に設計されている。
【0046】
より好ましい実施形態では、各チューブの入口の直径d1は、25mm~45mm、より好ましくは30mm~40mmである。本開示の範囲内の直径は内径であり、チューブの入口については、チューブの入口の周囲によって定義される円の中心を通り、その終端がその円内に位置する任意の直線セグメントとして定義される。好ましくは、各チューブの長手方向中央部の直径d2、すなわち各チューブの長手方向中央部の内径は、上記のように10mm~30mm、より好ましくは15mm~25mmであり、チューブの中央部の最も広い範囲に定められている。好ましくは、チューブの長手方向中央部は一定の直径を有する。
【0047】
本開示の熱交換器のチューブは、シェル構造内に封入された束の形で配置されている。チューブは、空間を効率的に利用できると同時に、冷却媒体が管の周囲を通過するのに十分な空間を提供する方法で、前記チューブ束内に配置され得る。好ましい実施形態では、チューブは規則的に、より好ましくは正方形の充填パターン又は三角形の充填パターンで配置される。特に好ましい実施形態では、チューブはシェル構造内に三角形の充填パターンで配置される。これにより、熱交換器シェル内の使用可能な空間を最適に利用することができるが、効率的な冷却効果を得ることができる。本開示の好ましい実施形態では、シェル構造内に封入されたチューブ束は、少なくとも500本のチューブ、より好ましくは500~6000本のチューブを含む。
【0048】
冷却すべきガス流と冷却媒体との間の効率的な熱伝達を可能にするためには、ガス流が通過しやすいチューブの周囲を冷却媒体が流れることが必要であるが、熱交換器の全体の大きさをあまり大きくする必要がなく、施工コストを低減することができる。本開示の過程において、冷却媒体が占める空間を規定するチューブの外側間の距離が5mm以上であれば、効率的な熱伝達が可能であることを見出した。従って、隣接するチューブの中央部間の距離は、チューブ軸線からチューブ軸線まで測定して、それぞれ25~45mm、好ましくは30~35mmであり、その軸線はチューブの長手方向に沿ってチューブの中心を通る。
【0049】
本開示の熱交換器のチューブの入口は、シェル構造内の容積から入口チャンバを分離するチューブシート内に一体化されている。好ましくは、チューブの入口は円錐状であり、チューブシート材を部分的に除去して形成されており、両チューブの間のチューブシートの上面が立体的に形成されている。チューブシートは、隣接する2つのチューブの間の中間に頂点を形成する。対応して形成されたチューブシートは、ガス流中に存在するあらゆる固体をチューブ内に導くことを可能にし、ポリマー粒子がチューブシート上に蓄積されることを回避する。
【0050】
本開示の範囲では、チューブシートの「上面」は、上流に面するチューブシートの表面を表す。これにより、チューブシートの上面は、シェル構造内の容積とは反対側を向いており、ガス流、特にガス流中の固体にさらされる。
【0051】
チューブシートは、各チューブのための孔を備え、チューブはそれぞれの穴に部分的に収容され、穴は上面に向かって先細りになり、チューブの入口を形成し、隣接するチューブの間に鋭利な頂点を形成する。頂点は対称であってもよく、40°~120°、より好ましくは60°~100°、特に90°の角度を限定してもよい規定する。これにより、頂点の各辺は、穴内に延び、穴内に収容された対応するチューブに至るスロープを形成してもよい。これにより、穴のスロープによって入口を形成してもよい。
【0052】
この穴は、この穴に収容されたチューブの先端を越える高さから上面に向かって先細りになっていてもよい。
【0053】
チューブは、それぞれの穴内に部分的に収容されてもよく、チューブは穴全体を通って延びない。チューブシートの上面とチューブの先端との間に隙間が設けられている。チューブを穴内に固定するために、チューブをチューブシートに溶接してもよい。一実施形態では、隅肉溶接シームは、チューブの前端と穴の内面との間に形成されてもよい。隅肉溶接は、粒子がチューブ内に滑り込む傾斜面を形成してもよい。一実施形態では、隅肉溶接は、チューブシートに形成された頂点へのスロープの連続部を形成してもよい。
【0054】
必要に応じて、ガス流に接触するチューブシートの上面の少なくとも一部は、チューブの軸方向に垂直な平面内に延びる平坦部を含まない。
【0055】
隣接する2つのチューブの間の上面に頂点が形成されているので、固体粒子は頂点を形成するスロープから摺動して熱交換器のチューブ内に導かれる。これにより、上面に固体粒子が蓄積されることを防止することができる。これにより、サイクロンなどの気固体分離器を設置しなくても、信頼性の高い気相重合装置に熱交換器を配置することができる。ガス/固体分離器は、触媒などの固体粒子が装置から取り除かれるため、材料の損失を引き起こす可能性がある。さらに、ガス/固体分離器を含むこのような装置は、反応器からガス/固体分離器によって混入され、装置から取り除かれる可能性があるので、小さなサイズのポリマー粒子を重合するのに適していない。したがって、本開示の熱交換器を提供することにより、装置の操作の自由度が高まる。これにより、リサイクルラインを通る小粒子の循環により、リサイクルラインへの小粒子の混入を軽減するという要件が軽減される。いくつかの実施形態では、リサイクルラインはサイクロンを備えていない。特に、リサイクルラインは、圧縮機及び/又は熱交換器の上流にサイクロンを備えていなくてもよい。
【0056】
本開示の過程では、ガス流と接触するチューブの部分に一定の仕上げを施すことによって、ガス流をさらに改善することができることもわかった。好ましい実施形態では、チューブの内面及び/又は接続手段の表面は、ASME B46.1に従って決定される場合、7m未満、好ましくは3m未満、特に2m未満の表面粗さRを有する。これにより、チューブの内面又は接続手段上に存在する固体粒子のガス流中への蓄積を低減することができ、これにより、熱交換器を一定かつ均一なガス流が通過することが可能となる。特定の表面粗さを達成するのに適した材料はステンレス鋼であり、さらに気相重合の反応条件に耐え得る不活性材料を提供することを見出した。したがって、好ましい実施形態では、チューブの内面及び/又は接続手段の表面がステンレス鋼である。この点で特に好ましい材料はAISI 304ステンレス鋼である。
【0057】
本開示の好ましい実施形態では、熱交換器は、反応ガスと接触する表面に、例えば熱交換器の要素同士を溶接するための突起に起因する突起を有しておらず、その高さは1.5mmを超える。
【0058】
本開示の熱交換器は、多くの用途で使用することができるが、特にオレフィン気相重合プロセスで使用するように設計されている。従って、他の実施形態では、本開示は、本開示の熱交換器を用いてオレフィンの気相重合を行うための装置を提供する。この装置は、好ましくは、少なくとも1つの重合ゾーンを含む反応器と、反応ガスを反応器から抜き出し、反応ガスを反応器に戻すためのリサイクルラインと、反応ガスをリサイクルラインに沿って輸送するための圧縮機と、反応ガスを冷却するための熱交換器と、を含む。
【0059】
熱交換器は、リサイクルラインのさまざまな位置に配置されてもよい。熱交換器は、水平又は垂直に配置されてもよい。好ましい実施形態では、熱交換器は垂直に配置される。
【0060】
好ましい実施形態では、本開示の反応器は、熱交換器の下流に配置されたバタフライ弁をさらに含む。バタフライ弁は、ガス流の流量を制御するためのさらなる器具として利用することができ、これによりリサイクルライン内で可変の圧力降下を確立することができ、一方、装置自体は本開示の趣旨に沿って汚れのリスクが低い。
【0061】
反応ガス流中の固体粒子の存在を最小化するために、リサイクル回路はまた、圧縮機及び熱交換器の上流にサイクロンを備え、固体粒子の輸送を最小化することができる。
【0062】
好ましい実施形態では、本開示の反応器は流動層反応器である。流動層反応器は、ポリオレフィン粒子層内で重合が発生する反応器であり、反応ガス混合物を、通常は分配ガス流機能を有するガス分配格子の下で反応器の下端の反応器内に供給し、流動層反応器の頂部で再びガスを引き出すことにより、ポリオレフィン粒子層は流動層状態を維持する。次いで、反応ガス混合物は、圧縮機及び熱交換器を備えた循環ラインを介して反応器の下端に戻され、重合熱を除去する。反応ガス混合物の流速は、第1に、重合領域内に存在する微細なポリマー粒子層を流動化させるために、第2に、重合熱を効果的に除去するために、十分に高くなければならない。適切なリアクタは、例えば、WO 2007/071527 A1に記載されている。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、本開示の反応器はマルチゾーン循環反応器であり、第1重合ゾーンでは、成長したポリオレフィン粒子は急速流動又は輸送条件下で上向きに流れ、第2重合ゾーンでは、成長したポリオレフィン粒子は緻密な形で下向きに流れ、第1重合ゾーンと第2重合ゾーンとは相互に連結され、第1重合ゾーンから離れたポリオレフィン粒子は第2重合ゾーンに入り、第2重合ゾーンから離れたポリオレフィン粒子は第1重合ゾーンに入り、第1重合ゾーンと第2重合ゾーンを通過するポリオレフィン粒子の循環を形成する。この反応器内で重合を行うことにより、ポリマー特性、特に分子量分布を良好に制御することができることを見出した。
【0064】
マルチゾーン循環反応器は、例えば、WO 97/04015 A1及びWO 00/02929 A1に記載されており、2つの互いに連結された重合ゾーン、成長したポリオレフィン粒子が急速流動又は輸送条件下で上方に流れる上昇管、及び成長したポリオレフィン粒子が重力により緻密な形で下方に流れる下降管を有する。上昇管から出たポリオレフィン粒子は、上昇管に入り、上昇管から出たポリオレフィン粒子は、上昇管に再導入されることにより、ポリマーが交互に複数回通過する2つの重合ゾーンの間にポリマーの循環が確立される。重合反応器は、固体/ガス分離器が下降管の上方に配置され、上昇管からのポリオレフィンと反応ガス混合物とを分離する。成長したポリオレフィン粒子は下降管に入り、上昇管で分離された反応ガス混合物は、ガス循環ラインを介して重合反応器に再導入される1つ又は複数の点に連続的に循環される。好ましくは、リサイクルガスの主要部をライザー管の底部に循環させる。リサイクルラインには遠心圧縮機と重合熱を除去するための熱交換器が設置されている。好ましくは、触媒を供給するためのライン、又は上流の反応器から来るポリオレフィン粒子を供給するためのラインが上昇管に配置され、ポリマー排出システムが下降管の底部に配置される。補給モノマー、コモノマー、水素及び/又は不活性成分の導入は、上昇管及び下降管に沿って異なる点で生じ得る。
【0065】
特に好ましい実施形態では、本開示の反応器はシリーズの反応器の一部である。好ましくは、このシリーズは、第1気相装置と、それに続く第2気相装置とを含む。
【0066】
本開示の他の実施形態は、重合触媒の存在下、20~200℃の温度及び0.5~10MPaの圧力でオレフィンを単独重合させるか、又はオレフィンと1つ又は複数の他のオレフィンとを共重合させることを含む、オレフィンポリマーの製造プロセスであって本開示の装置内で実施されるプロセスを提供する。
【0067】
本開示のプロセスは、限定されるものではないが、オレフィン、特に1-オレフィン、すなわち末端二重結合を有する炭化水素の重合に特に適している。非極性オレフィン化合物が好ましい。特に好ましい1-オレフィンは、直鎖状又は分岐状のC~C12-1-アルケン、特にエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンなどの直鎖状又は分岐状のC~C10-1-アルケン又は4-メチルーペンテンなどの直鎖状又は分岐状のC~C10-1-アルケン;1,3-ブタジエン、1,4-ヘキセン、1,7-オクテンなどの共役及び非共役ジエンである。種々の1-オレフィンの混合物を重合することもできる。好適なオレフィンはまた、二重結合が1種以上の環系を有してもよい環構造の一部であるオレフィンを含む。例は、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンもしくはメチルノルボルネン、又は5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエンもしくはエチルノルボルナジエンなどのジエンである。
【0068】
この装置は、エチレン又はプロピレンの単独重合又は共重合に特に適しており、エチレンの単独重合又は共重合に特に好ましい。プロピレン重合における好ましいコモノマーは、40重量%までのエチレン、1-ブテン及び/又は1-ヘキセン、好ましくは0.5重量%~35重量%のエチレン、1-ブテン及び/又は1-ヘキセンである。エチレン重合におけるコモノマーとしては、C~C-1-アルケン、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び/又は1-オクテンを多くとも20重量%、より好ましくは0.01重量%~15重量%、特に0.05重量%~12重量%使用することが好ましい。エチレンを0.1重量%~12重量%の1-ヘキセン及び/又は1-ブテンと共重合させる重合が特に好ましい。
【0069】
本開示のプロセスは、0.5MPa~10MPa、好ましくは1.0MPa~8MPa、特に1.5MPa~4MPaの圧力で実施することができ、これらの圧力は、本開示で与えられるすべての圧力と同様に、絶対圧力、つまりMPa(abs)の寸法を持つ圧力であると理解する必要がある。重合は、好ましくは30℃~160℃、特に好ましくは65℃~125℃の温度で行われ、この範囲の上部の温度が比較的高密度及び比較的高い温度のエチレンコポリマーを製造するのに好ましい。この範囲の下限は、より密度の低いエチレンコポリマーを製造するのに好ましい。
【0070】
このプロセスはまた、循環する反応ガス混合物の一部を露点以下に冷却し、反応器に液相及び気相として別々に戻すか、又は反応ガスを冷却するために蒸発エンタルピーを追加的に利用するために2相混合物として一緒に戻す凝縮モード又は超凝縮モードで行うことができる。本開示のプロセスは、凝縮モード又は超凝縮モードで運転される場合には、流動層反応器内で行われることが好ましい。
【0071】
本開示の好ましい実施形態では、重合は、窒素のような不活性ガス、又はメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサンのような炭素数1~10のアルカン、又はこれらの混合物の存在下で行われる。不活性ガスとしては、窒素ガス又はプロパンを用いることが好ましく、適当であれば他のアルカンと組み合わせて用いることが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、重合は、重合希釈剤としてのC~Cアルカンの存在下で行われ、特にエチレンの単独重合又は共重合の場合には、プロパンの存在下で行われることが最も好ましい。次いで、反応器内の反応ガス混合物は、重合されるオレフィン、すなわち主モノマーと、1つ又は複数の任意のコモノマーとをさらに含む。本開示の好ましい実施形態では、反応ガス混合物は、30~99体積%、より好ましくは40~95体積%、特に45~85体積%の不活性成分の含有量を有する。本開示の他の好ましい実施形態では、特に主要モノマーがプロピレンである場合、不活性希釈剤は添加されないか、又は少量しか添加されない。反応ガス混合物は、帯電防止剤又は水素のような分子量調節剤などの追加の成分をさらに含んでもよい。反応ガス混合物の成分は、ガス形態又は液体形態で気相重合反応器又はリサイクルラインに供給され、その後、反応器又はリサイクルライン内で蒸発することができる。
【0072】
一般的に使用されているあらゆるオレフィン重合触媒を用いてオレフィンの重合を行うことができる。これは、チーグラー触媒又はチーグラーナッタ触媒、酸化クロムをベースとしたフィリップス触媒、又はシングルサイト触媒を使用して、重合を実行できることを意味する。本開示の目的において、シングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物に基づく触媒である。さらに、これらの触媒の2種以上の混合物を用いてオレフィンを重合することもできる。このような混合触媒は一般にハイブリッド触媒と呼ばれる。これらのオレフィン重合用触媒の製造及び使用は周知である。
【0073】
好ましい触媒は、好ましくはチタン又はバナジウムの化合物、マグネシウムの化合物、及び場合により担体材料として電子供与体化合物及び/又は粒子状無機酸化物を含むチーグラー型のものである。
【0074】
チーグラー型触媒は通常、助触媒の存在下で重合される。好ましい助触媒は、元素周期律表の第1、2、12、13又は14族の金属の有機金属化合物、特に第13族の金属の有機金属化合物、特に有機アルミニウム化合物である。好ましい助触媒は、例えば、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド、有機金属ハロゲン化物である。
【0075】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウム又は亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハロゲン化物、アルミニウムアルキル、シリコンアルキル、シリコンアルコキシド及びシリコンアルキルハロゲン化物を含む。より好ましくは、有機金属化合物は、アルキルアルミニウム及びアルキルマグネシウムを含む。さらにより好ましくは、有機金属化合物はアルキルアルミニウム、最も好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物、又はアルキル基がハロゲン原子、例えば塩素又は臭素で置換されたこのタイプの化合物を含む。このようなアルミニウムアルキルの例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウムもしくはジエチルアルミニウムクロリド、又はそれらの混合物である。
【0076】
また、好ましくは、無機担体にクロム化合物を塗布した後、350~1000℃の範囲の温度で触媒前駆体を活性化することにより、6価未満のクロムを6価状態に変換することにより製造されるフィリップス型クロム触媒である。クロム以外に、マグネシウム、カルシウム、ホウ素、アルミニウム、リン、チタン、バナジウム、ジルコニウム、亜鉛などの他の元素を用いることができる。特に、チタン、ジルコニウム又は亜鉛を用いることが好ましい。上記の要素の組み合わせも可能である。触媒前駆体は、活性化前又は活性化中にフッ化物をドープすることができる。フィリップス型触媒の担体としては、これも当業者には公知であるが、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(シリカゲル)、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、又はそれらの混合酸化物もしくはコゲル、又はリン酸アルミニウムが挙げられる。さらに適切な担体材料は、例えばホウ素、アルミニウム、ケイ素又はリン元素の化合物を用いて細孔表面積を修飾することによって得ることができる。シリカゲルを使用することが好ましい。好ましくは球状又は粒状のシリカゲルであり、前者も噴霧乾燥可能である。活性化されたクロム触媒は、続いて予備重合又は予備還元することができる。予備還元は、通常、コバルト又は水素を活性化剤中で250~500℃、好ましくは300~400℃で行う。
【0077】
本開示の別の好ましい実施形態では、重合は、重合反応器カスケードの一部である気相反応器での重合であり、重合反応器カスケードの他の気相反応器での1つ又は複数の重合も、本開示に従った重合であり得る。重合反応器の適切な組み合わせは、流動層反応器の後にマルチゾーン循環反応器を接続すること、マルチゾーン循環反応器の後に流動層反応器を接続すること、2つ又は3つの流動層反応器のカスケード接続すること、及び1つ又は2つの循環反応器の後に1つ又は2つの流動層反応器を接続することを含む。
【0078】
反応器内の固体粒子の蓄積をさらに最小化し、同時に高い反応回転率を達成するために、本開示のプロセスにおける反応ガス流の速度を調整することができる。好ましい実施形態では、このプロセスは、5m/s~25m/s、より好ましくは15m/s~20m/sの反応ガス流速でで行われる。
【0079】
さらに好ましい態様では、重合ゾーンにおける流動速度が0.3~1.5m/s、好ましくは0.5~1.2m/sである。
【0080】
図1aは、本開示の熱交換器を概略的に示す。
【0081】
図1aに示す熱交換器(6)は、入口チャンバ(61)と、シェル構造内に封入されたチューブ束(62)と、出口チャンバ(63)とを有する。入口チャンバ(61)及び出口チャンバ(63)は、チューブシート(64)、(65)によって冷却媒体が充填されたシェル構造から分離されている。
【0082】
図1b及び1cは、本開示の熱交換器の詳細を概略的に示す。
【0083】
図1bは、熱交換器(6)を通る3つのチューブ(62)の入口の断面を概略的に示す。チューブ(62)の円錐状入口(621)及びチューブ(62)の長手方向中央部(622)の上部エリアが示されている。チューブ(62)は、チューブ(62)の上端でチューブシート(64)に固定的に接続されることにより、熱交換器(6)内に固定される。チューブ(62)の円錐状入口(621)は、2つのチューブ(62)の間のチューブシート(64)の上面が立体的に形成され、隣接する2つのチューブ(62)の間の中間に頂点(641)が形成されるように、チューブシート材料を部分的に除去することによって形成される。図1bに示すように、チューブ(62)の端部をチューブ(62)に溶接して隅肉溶接シーム(642)を形成することができる。特に、隅肉溶接は、チューブ(62)の先端からチューブシートに形成された各穴の内面まで延びてもよい。隅肉溶接シーム(642)は、頂点(641)へのスロープの連続部を形成してもよい。これにより、チューブの先端に固体粒子が蓄積されることを防止することができる。
【0084】
図1cは、熱交換器(6)を通る3つのチューブ(62)の出口の断面を概略的に示す。チューブ(62)の均一な出口(623)及びチューブ(62)の長手方向中央部(622)の下部エリアが示されている。チューブ(62)は、チューブ(62)の下端部でチューブシート(65)に固定的に接続されることにより、熱交換器(6)内に固定される。チューブ(62)の出口(623)は、チューブシート(65)の下面よりやや下に配置されている。
【0085】
図2は、オレフィンポリマーの製造プロセスを実施するための本開示の流動床反応器及び熱交換器を含む装置を概略的に示す。
【0086】
流動層反応器(1)は、ポリオレフィン粒子の流動層(11)と、ガス分配格子(12)と、反応器の流動層部分の直径よりも大きい直径を有する減速ゾーン(13)とを含む。ポリオレフィン床は、反応器(1)の底部に設置されたガス分配格子(12)を通して供給されるガスの上向きの流れによって流動状態に保たれる。リサイクルライン(3)を介して減速ゾーン(13)の上部から出る反応ガスのガス流は、可変ガイドベーン(5)を備える圧縮機(4)によって圧縮され、熱交換器(6)に移送され、そこで冷却され、その後、ガス分配格子(12)の下の点で流動層反応器(1)の底部に再循環される。リサイクルライン(3)は、熱交換器(6)の下流に位置するバタフライ弁(7)をさらに含む。補給モノマー、分子量調節剤、及び任意の不活性ガス及び/又はプロセス添加剤は、様々な位置で、例えばコンプレッサー(4)の上流のライン(8)を介して反応器(1)に供給することができる。
【0087】
流動層反応器(1)は、流動層反応器(1)の上部ゾーンにガス分配格子(12)を接続する循環回路(14)を介してポリオレフィン粒子の連続空気循環を有する。循環回路(14)は、沈降管(15)と空気輸送管(16)とを含む。沈降管(15)は、その上部開口部とガス分配格子(12)に組み込まれており、好ましくは実質的に垂直に配置されている。ガス分配グリル(12)は、沈降管(15)に向かって下向きに傾斜することにより、重力によるポリオレフィン粒子の沈降管(15)への進入を促進するようにテーパー形状が付与されている。沈降管(15)の上部開口部は、好ましくは、ガス分配格子(12)に対して中心位置にある。圧縮機(4)の下流で熱交換器(6)の上流の点で、ポリオレフィン粒子を空気輸送管(16)を介して輸送するためのライン(17)を介して供給されたキャリアガスが、ガスリサイクルラインから取り出される。ポリオレフィン粒子は流動層反応器(1)から排出導管(9)を通って沈降管(15)から排出される。
【0088】
図3は、オレフィンポリマーの製造プロセスを実施するための、本開示のマルチゾーン循環反応器及び熱交換器を含む装置を概略的に示す。
【0089】
マルチゾーン循環反応器(2)は、第1反応ゾーンとしての上昇管(21)と、第2反応ゾーンとしての下降管(22)とを含む。ポリオレフィン粒子は、上昇管(21)と下降管(22)を繰り返し通過する。上昇管(21)内ではポリオレフィン粒子が急速流動状態で上向きに流れ、下降管(22)内では重力によりポリオレフィン粒子が下向きに流れる。上昇管(21)と下降管(22)とは、相互接続ベンド(23)及び(24)によって適切に相互接続されている。
【0090】
上昇管(21)を通って流れた後、ポリオレフィン粒子及び反応ガス混合物は上昇管(21)を出て、固体/ガス分離ゾーン(25)に運ばれる。この固体/ガスの分離は、例えばサイクロンのような遠心分離機などの従来の分離器を使用して行うことができる。分離ゾーン(25)からポリオレフィン粒子は下降管(22)へと移動する。上昇管(21)の反応ガス混合物が下降管(22)に入るのを防止するための遮断流体を、ライン(26)を介して下降管(22)の頂部に供給することができる。
【0091】
分離ゾーン(25)を出た反応ガス混合物は、上昇管(21)の急速流動状態を確立するために可変案内羽根(5)を含む圧縮機(4)を備えたリサイクルライン(3)を介して上昇管(21)の底部にリサイクルされる。リサイクルライン(3)は、熱交換器6)と、熱交換器(6)の下流のバタフライ弁(7)とをさらに含む。補充モノマー、補充コモノマー、及び任意に不活性ガス及び/又はプロセス添加剤を、反応器(2)の様々な位置で、例えばライン(8)を介してリサイクルライン(3)に供給することができる。圧縮機(4)と熱交換器(6)との間では、ライン(27)が分岐しており、リサイクルガスの一部を、下降管(22)から上昇管(21)にポリオレフィン粒子を送るための相互接続ベンド(24)に送る。
【0092】
下降管(22)の底部には、下降管(22)から相互接続ベンド(24)を通って上昇管(21)へ入るポリオレフィン粒子の流れを調整するための調整可能な開口部を有するバタフライ弁(28)が装備されている。バタフライ弁(28)の上方では、リサイクルライン(3)からライン(26)、(29)を通って供給されるある量のリサイクルガス混合物の量が、バタフライ弁(28)を通るポリオレフィン粒子の流れを促進する定量ガスとして下降管(22)に導入される。ポリオレフィン粒子は、マルチゾーン循環反応器(2)から排出導管(9)を介して下降管(22)から排出される。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-入口チャンバ(61)と、
-シェル構造内に封入されたチューブ束(62)と、
-出口チャンバ(63)と、を含み、
前記各チューブ(62)は、
-入口(621)と、
-長手方向中央部(622)と、
-出口(623)と、を含み、
前記各チューブ(62)の前記入口(621)の直径d1が、前記チューブの対応する長手方向中央部(622)の直径d2よりも大きく、前記熱交換器の前記チューブ(62)の前記入口(621)は、チューブシート(64)内に一体化されて、シェル構造内の容積から前記入口チャンバ(61)を分離している、ガス流を冷却するための多管式熱交換器(6)であって、前記チューブシート(64)が前記隣接する2つのチューブの間の中間に頂点(641)を形成するように、2つの前記チューブの間の前記チューブシート(64)の上面が立体的に形成されている、ことを特徴とする多管式熱交換器(6)。
【請求項2】
前記直径d1と前記直径d2との比が1.75:1~1.5:1、より好ましくは1.4:1~1.3:1であり、かつ/または前記各チューブ(62)の前記入口(621)の直径d1が25~45mm、好ましくは30~40mmである、請求項1に記載の多管式熱交換器(6)。
【請求項3】
前記各チューブ(62)の前記入口(621)が円錐形状を有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の熱交換器(6)。
【請求項4】
前記隣接するチューブ(62)の前記中央部(622)間の距離が、チューブ軸線からチューブ軸線まで測定されて、25~45mm、好ましくは30~35mmであり、および/または、円錐領域と前記チューブの中心軸との間の角度が、好ましくは20°~60°の範囲内であり、より好ましくは30°~50°の範囲内であり、特に45°である、請求項1または2に記載の熱交換器(6)。
【請求項5】
前記チューブシート(64)は、前記各チューブ(62)のための穴を含み、前記チューブ(62)は、対応する穴内に部分的に収容され、前記穴は、少なくとも部分的に前記上面に向かって先細りになっており、前記チューブ(62)の前記入口(621)を形成し、前記隣接するチューブ(62)の間に鋭利な頂点(641)を形成する、請求項1または2に記載の熱交換器(6)。
【請求項6】
前記チューブ(62)の内面および/または前記入口チャンバ(61)および出口チャンバ(63)の表面が、ASME B46.1に基づいて決定される場合、7m未満、好ましくは3m未満、特に2m未満の表面粗さRを有する、請求項1または2に記載の熱交換器(6)。
【請求項7】
オレフィンの気相重合のための装置であって、
-少なくとも1つの重合ゾーンを含む反応器(1、2)と、
-反応ガスを前記反応器(1、2)から抜き出し、前記反応ガスを前記反応器(1、2)に戻すためのリサイクルライン(3)と、
-前記反応ガスを前記リサイクルライン(3)に沿って輸送するための圧縮機(4)と、
--前記反応ガスを冷却するための熱交換器(6)と、を含み、
前記熱交換器(6)は、請求項1または2に記載の熱交換器である、装置。
【請求項8】
前記反応器は流動層反応器である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記反応器は、マルチゾーン循環反応器であり、第1重合ゾーン(21)では、成長したポリオレフィン粒子は、急速流動または輸送条件下で上向きに流れ、第2重合ゾーン(22)では、成長したポリオレフィン粒子は、緻密な形で下向きに流れ、前記第1重合ゾーン(21)と前記第2重合ゾーン(22)とは、相互に連結され、前記第1重合ゾーン(21)から離れたポリオレフィン粒子は、前記第2重合ゾーン(22)に入り、前記第2重合ゾーン(22)から離れたポリオレフィン粒子は、前記第1重合ゾーン(21)に入り、前記第1重合ゾーン(21)と前記第2重合ゾーン(21)を通過するポリオレフィン粒子の循環を形成する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
重合触媒の存在下、20~200℃の温度および0.5~10MPaの圧力でオレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることを含むオレフィンポリマーの製造プロセスであって、前記方法は、請求項7~9のいずれか1項に記載の装置で実施される、プロセス。

【国際調査報告】