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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】再集合体ロタウイルスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/00 20060101AFI20240514BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240514BHJP
   C12N 15/46 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12N7/00 ZNA
C12N15/113 100Z
C12N15/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573626
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2022004185
(87)【国際公開番号】W WO2022255607
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070036
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519038714
【氏名又は名称】エスケー バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,テウ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
(57)【要約】
再集合体ロタウイルス(reassortant rotavirus)を製造する方法に関するものであって、再集合体ロタウイルスに対する選択圧(selective pressure)として抑制性RNAを用いた逆遺伝学プラットホームが提供され, 前記方法によって再集合の確率が飛躍的に高め、短時間と低費用で所望の再集合体ロタウイルスを製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ロタウイルスの11本の遺伝子分節中の特定遺伝子分節に対する抑制性RNAを安定的に発現する細胞株を提供するステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節のmRNA、またはこれをコーディングするDNAまたはcDNAを前記細胞株に導入するステップと、
前記細胞株を第1ロタウイルスに感染させるステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節を含む再集合体(reassortant)ロタウイルスを回収するステップと、を含む、
再集合体(reassortant)ロタウイルスを製造する方法。
【請求項2】
第1ロタウイルスが、非人間ロタウイルス、牛(bovine)ロタウイルス、猿(simian)ロタウイルス、豚(porcince)ロタウイルス、犬(canine)ロタウイルスまたは黒ヤギ(goat)ロタウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1ロタウイルスが、WC3ロタウイルス株(strain)またはその子孫(progeny)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2ロタウイルスが、人間ロタウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2ロタウイルスが、P1、P2、G1、G2、G3、G4またはG9人間ロタウイルス血清型である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2ロタウイルスが、WI79、Wa、D、WISC2、DS-1、WI78、P、HCR3A、Br(Bricout)B、ST-3、BrB-9、WI79-9、SC2-9、またはWI78-8ロタウイルス株(strain)またはその子孫(progeny)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記特定遺伝子分節が、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、およびNSP5の中から選択される蛋白質をコーディングする遺伝子分節である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記特定遺伝子分節が、VP7またはVP4をコーディングする遺伝子分節である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抑制性RNAが、miRNA、siRNAまたはshRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抑制性RNAが、配列番号3、配列番号4および配列番号5の標的部位からなる群より選択されるいずれか一つ以上を標的とするものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抑制性RNAが、miRNAであり、前記細胞株は、前記miRNAに対するpre-miRNAをコーディングする二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含むベクターが導入されたものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択されるいずれか一つ以上の配列対で形成された一つ以上の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターは、標的部位が互いに異なる2種以上のmiRNAに対するpre-miRNAをコーディングする2種以上の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む同時発現ベクターである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節のmRNAが、インビトロ転写(in vitro transcription)によって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
細胞株を第1ロタウイルスに感染させるステップ以降、継代培養を通じて前記再集合体ロタウイルスを濃化させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞株が、MRC-5、MA-104、ベロ(Vero)、BHK-21、COS-7、293T、CV-1またはTF-104細胞株である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
牛(bovine)のWC3ロタウイルスのVP7遺伝子分節に対するmiRNAを安定的に発現する細胞株を提供するステップと、
人間ロタウイルスのVP7遺伝子分節のmRNA、またはこれをコーディングするDNAまたはcDNAを前記細胞株に導入するステップと、
前記細胞株をWC3ロタウイルスに感染させるステップと、
人間ロタウイルスのVP7遺伝子分節を含む再集合体ロタウイルスを回収するステップと、を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の再集合体(reassortant)ロタウイルスを製造する方法に用いるための、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群より選択されるいずれか一つ以上の標的部位を抑制する、抑制性RNAオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
請求項1に記載の再集合体(reassortant)ロタウイルスを製造する方法に用いるための、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択されるいずれか一つ以上の配列対で形成された二本鎖DNAオリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2021年5月31日付の韓国特許出願第10-2021-0070036号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
再集合体ロタウイルス(reassortant rotavirus)を製造する方法に関するものであって、再集合体ロタウイルスに対する選択圧(selective pressure)として抑制性RNAを用いた逆遺伝学プラットホームが提供される。
【背景技術】
【0003】
ロタウイルスは、全世界的に乳幼児および小児で胃腸炎を誘発する最もありふれた原因で、毎年、全世界的に5才以下で約1億人がロタウイルス胃腸炎を病んで約60万人が死亡する。死亡は主に開発途上国で発生するが、開発途上国や先進国での有病率は同様である。したがって、ロタウイルス胃腸炎を予防してロタウイルス感染による死亡率を下げるためにはワクチン開発が何よりも重要である。
【0004】
ロタウイルスは、11本のdsRNA分節(segment)から構成された遺伝体を有しているので、ある細胞に様々なウイルス株(strain)が同時感染する場合、互いに異なる株のRNA分節が入り混じった再集合体ウイルス(reassortant virus)が生成されることがある。例えば、人には病毒性がない牛(bovine)ロタウイルスのRNA分節と、人にロタウイルス胃腸炎を誘発する人間ロタウイルスのRNA分節とが混ざった再集合体ウイルスが生成されることがある。このような牛-人間(bovine-human)再集合体ウイルスのうち、人に対する病毒性を示すVP4をコーディングする分節は、牛(bovine)ロタウイルスのRNA分節であり、中和エピトープを多く含むVP7をコーディングする分節は、人間ロタウイルスのRNA分節からなる再集合体ウイルスの場合、人に病毒性がないため胃腸炎を誘発することはないが、人間ロタウイルスに対する中和抗体の形成を誘導することができ、人間ロタウイルスに対するワクチンとして用いることができる。その例が、牛と人間で分離されたロタウイルスを再集合して弱毒化した5価ワクチンであるロタテック(Rotateq(登録商標))である。
【0005】
再集合体ウイルスを製造する一般的な方法は、一つの細胞株に二種類のロタウイルスを同時感染させて再集合体ウイルスを得ることであるが、逆遺伝学(reversegenetics)方法を適用して再集合が起こる確率をより高めることができる。逆遺伝学方法は、再集合させようとする遺伝子のmRNAまたはmRNAに転写可能なDNAを細胞に過量注入すると共に、ヘルパーロタウイルス(helper rotavirus)を細胞に感染させ、注入されたmRNAとヘルパーロタウイルスの遺伝子が再集合するように誘導する方法である。
【0006】
しかし、逆遺伝学を用いて再集合が起こる確率を高めても、再集合体ウイルスは、野生型(WT)ウイルスに比べて非常に数が少なく弱毒化しており、選択圧(selective pressure)を加えなければ継代が進行するほどますます比率が減少することになって、所望の再集合体ウイルスを分離して救済(rescue)することが非常に難しい。したがって、成功的な再集合体ロタウイルスを得るためには適切な選別(selection)過程が必須的に導入されなければならない。
【0007】
現在、選別過程に用いられる方法は、交替させる遺伝子(例えば、牛ロタウイルスのVP7遺伝子)の蛋白質には特異的に結合して中和させるが、交替された遺伝子(例えば、人間ロタウイルスのVP7遺伝子)の蛋白質には結合しない単クローン中和抗体を用いる方法である(例えば、米国特許4,571,385号)。しかし、前記単クローン中和抗体を用いる方法は、中和抗体の確保に多くの時間と費用が要求され、ロタウイルス菌株は、互いに配列、機能および構造が類似する遺伝子で構成されるので、特定菌株の蛋白質にだけ特異的な中和抗体を確保し難いという問題があって、選択圧を加えられる別途の技術に対する研究開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、再集合体ロタウイルスを製造する方法に関するものであって、再集合体ロタウイルスに対する選択圧として抑制性RNAを用いた逆遺伝学プラットホームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一例としては、第1ロタウイルスの11本の遺伝子分節中の特定遺伝子分節に対する抑制性RNAを安定的に発現する細胞株を提供するステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節のmRNA、またはこれをコーディングするDNAまたはcDNAを前記細胞株に導入するステップと、
前記細胞株を第1ロタウイルスに感染させるステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節を含む再集合体ロタウイルスを回収するステップと、を含む、
再集合体ロタウイルスを製造する方法を提供する。
【0010】
他の例としては、前述した再集合体ロタウイルスを製造する方法に用いるための、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群より選択されるいずれか一つ以上の標的部位を抑制する抑制性RNAオリゴヌクレオチドを提供する。
【0011】
他の例として、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群より選択されるいずれか一つ以上の標的部位を抑制する抑制性RNAオリゴヌクレオチドを含む、前述した再集合体ロタウイルスを製造する方法に用いるための組成物を提供する。
【0012】
他の例としては、前述した再集合体ロタウイルスを製造する方法に用いるための、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択されるいずれか一つ以上の配列対で形成された二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを提供する。
【0013】
他の例として、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択されるいずれか一つ以上の配列対で形成された二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、前述した再集合体ロタウイルスを製造する方法に用いるための組成物を提供する。
【0014】
他の例として、前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、野生型WC3ロタウイルスの生産が抑制された細胞株製造用組成物を提供する。
【0015】
他の例として、前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、牛ロタウイルスのVP7蛋白質の生成が抑制された細胞株製造用組成物が提供される。
【0016】
他の例として、前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが導入された、野生型WC3ロタウイルスの生産が抑制された細胞株を提供する。
【0017】
他の例として、前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが導入された、牛ロタウイルスのVP7蛋白質の生成が抑制された細胞株が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るロタウイルス再集合(reassortment)方法は、逆遺伝学方法を用いるので、一つの細胞株に二種類のロタウイルスを同時感染させて再集合体ウイルスを得る古典的な方法に比べて、再集合の確率が飛躍的に高いため、所要時間を非常に短縮できると期待される。また、再集合体ウイルスを選別(selection)するとき、単クローン中和抗体を用いないため、単クローン中和抗体を確保するのにかかる費用と時間を減らすことができる。したがって、本発明を用いて既存の方法に比べて短時間と低費用で所望の再集合体ロタウイルスを製造することができ、これをワクチンとして活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a図1aないし図1cは、WC3ロタウイルスのVP7遺伝子(配列番号1)とBrb9ロタウイルスのVP7遺伝子(配列番号2)の核酸配列の整列結果を示す。灰色の陰影は二つの遺伝子の核酸が異なる部位を示し、下線と太字は本願の一実施例によって選択した標的部位3ヶ所を示す。
図1b図1aないし図1cは、WC3ロタウイルスのVP7遺伝子(配列番号1)とBrb9ロタウイルスのVP7遺伝子(配列番号2)の核酸配列の整列結果を示す。灰色の陰影は二つの遺伝子の核酸が異なる部位を示し、下線と太字は本願の一実施例によって選択した標的部位3ヶ所を示す。
図1c図1aないし図1cは、WC3ロタウイルスのVP7遺伝子(配列番号1)とBrb9ロタウイルスのVP7遺伝子(配列番号2)の核酸配列の整列結果を示す。灰色の陰影は二つの遺伝子の核酸が異なる部位を示し、下線と太字は本願の一実施例によって選択した標的部位3ヶ所を示す。
図2図2は、本願の一実施例に係る、WC3ロタウイルスのVP7遺伝子から選別されたmiRNA標的部位の配列、前記標的部位に結合(混成化)可能なmiRNAに対するpre-miRNAをコーディングするDNA配列を含む上部鎖(top strand)とその相補体である下部鎖(bottom strand)、および前記二本鎖が4ntオーバーハング(overhang)を有するように結合させて形成されたdsDNAオリゴを示す。
図3図3は、本願の一実施例に係る、WC3 VP7遺伝子を標的とする三重(triple)miRNA発現ベクターの模式図である。
図4図4は、本願の一実施例に係る、Brb9 VP7 mRNA製作のためのDNA鋳型のデザイン模式図である。
図5図5は、本願の一実施例に係るP1(Passage 1)ウイルスの再集合の確認のためのRT-PCR結果である。
図6図6は、本願の一実施例に係るP1(Passage 1)をプラーク分離(plaque isolation)により分離した10本のクローンの再集合の確認のためのRT-PCR結果である。Lane 1ないし10は各単一クローンを示し、WはWC3ウイルスRNA(PCR陰性対照群)を示し、GはG4ウイルスRNAを示し(PCR陽性対照群)、Mは100bp DNA ladderを示す。
図7図7は、本願の一実施例に係る逆遺伝学方法で製造されたG4再集合体ウイルスストック(図6で確認された6番と8番クローンを、MA-104細胞株で培養して確保した再集合体ウイルスストック)のプラーク形成を示す。
図8図8は、RT-PCRを用いたG4再集合体ウイルスストックの再集合の確認結果を示す。Lane 1およびLane 2は、それぞれ図6で確認された6番と8番クローンをMA-104細胞株で培養して確保した再集合体ウイルスのRNAを鋳型として行ったRT-PCR産物を示し、Lane 3は、WC3ウイルスRNA(陰性対照群)を鋳型として行ったRT-PCR産物を示し、Land 4は、Brb9合成DNAおよびWC3ウイルスRNAの混合物を鋳型として行ったRT-PCR産物(PCR反応対照群)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一側面により、第1ロタウイルスの11本の遺伝子分節中の特定遺伝子分節に対する抑制性RNAを安定的に発現する細胞株を提供するステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節のmRNA、またはこれをコーディングするDNAまたはcDNAを前記細胞株に導入するステップと、
前記細胞株を第1ロタウイルスに感染させるステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節を含む再集合体ロタウイルスを回収するステップと、を含む、
再集合体ロタウイルスを製造する方法が提供される。
【0021】
一具現例として、第1ロタウイルスは、非人間ロタウイルスであってもよく、例えば、牛(bovine)ロタウイルス、猿(simian)ロタウイルス、豚(porcince)ロタウイルス、犬(canine)ロタウイルスまたは黒ヤギ(goat)ロタウイルスであってもよい。好ましい例として、牛(bovine)のWC3ロタウイルス株(strain)またはその子孫(progeny)であってもよい。
【0022】
一具現例として、第2ロタウイルスは、人間(human)ロタウイルスであってもよく、例えば、P1、P2、G1、G2、G3、G4またはG9人間ロタウイルス血清型であってもよい。また、第2ロタウイルスは、WI79、Wa、D、WISC2、DS-1、WI78、P、HCR3A、Br(Bricout)B、ST-3、BrB-9、WI79-9、SC2-9、またはWI78-8ロタウイルス株またはその子孫であってもよい。
【0023】
一具現例として、前記特定遺伝子分節は、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、およびNSP5の中から選択される蛋白質をコーディングする遺伝子分節であってもよく、好ましい例として、VP7またはVP4をコーディングする遺伝子分節であってもよい。
【0024】
一具現例として、抑制性RNAは、miRNA、siRNAまたはshRNAであってもよい。
【0025】
一具現例として、抑制性RNAは、発現を抑制しようとする前記特定遺伝子分節の互いに異なる標的部位を標的とする2以上の抑制性RNAであってもよく、前記2以上の抑制性RNAは、それぞれのベクターに含まれるか一つのベクター内に含まれて細胞株に導入されてもよい。
【0026】
一具現例として、抑制性RNAは、配列番号3、配列番号4および配列番号5の標的部位からなる群より選択される一つ以上を標的とすることができる。
【0027】
一具現例として、抑制性RNAは、miRNAであり、前記細胞株は、前記miRNAに対するpre-miRNAをコーディングする二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含むベクターが導入されたものであってもよい。
【0028】
一具現例として、前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択される一つ以上の配列対で形成された一つ以上の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0029】
一具現例として、前記ベクターは、恒常性プロモーター(constitutive promoter)を含んでもよい。
【0030】
一具現例として、前記ベクターは、標的部位が異なる2種以上のmiRNAに対するpre-miRNAをコーディングする2種以上の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む同時発現ベクターであってもよい。
【0031】
一具現例として、前記第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節のmRNAは、インビトロ転写(in vitro transcription)によって得られたものであってもよい。
【0032】
一具現例として、前記再集合体ロタウイルスの製造方法は、細胞株を第1ロタウイルスに感染させるステップ以降、継代培養を通じて前記再集合体ロタウイルスを選別するステップをさらに含んでもよい。
【0033】
一具現例として、前記細胞株は、MRC-5、MA-104、ベロ(Vero)、BHK-21、COS-7、293T、CV-1またはTF-104細胞株であってもよい。
【0034】
一具現例として、前記再集合体ロタウイルスの製造方法は、牛(bovine)のWC3ロタウイルスのVP7遺伝子分節に対するmiRNAを安定的に発現する細胞株を提供するステップと、
人間ロタウイルスのVP7遺伝子分節のmRNA、またはこれをコーディングするDNAまたはcDNAを前記細胞株に導入するステップと、
前記細胞株をWC3ロタウイルスに感染させるステップと、
人間ロタウイルスのVP7遺伝子分節を含む再集合体ロタウイルスを回収するステップと、を含む方法であってもよい。
【0035】
本発明の他の側面により、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群より選択されるいずれか一つ以上の標的部位を抑制する抑制性RNAオリゴヌクレオチドが提供される。
【0036】
一具現例として、前記抑制性RNAは、miRNA、siRNAまたはshRNAであってもよい。
【0037】
他の具現例として、前記抑制性RNAは、miRNAまたは前記miRNAに対するpre-miRNAであってもよい。
【0038】
本発明の他の側面により、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択されるいずれか一つ以上の配列対で形成された二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが提供される。
【0039】
一具現例として、前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、前述した再集合体(reassortant)ロタウイルスを製造する方法に用いるためのものである。
【0040】
本発明のまた別の側面により、前述した抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、野生型WC3ロタウイルスの生産が抑制された細胞株製造用組成物が提供される。
【0041】
また、前述した抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、牛ロタウイルスのVP7蛋白質の生成が抑制された細胞株製造用組成物が提供される。
【0042】
本発明のまた別の側面により、前述した抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが導入された、野生型WC3ロタウイルスの生産が抑制された細胞株が提供される。
【0043】
また、前述した抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが導入された、牛ロタウイルスのVP7蛋白質の生成が抑制された細胞株が提供される。
【0044】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本願に記載されたものと類似するか同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料を説明する。
【0045】
異に定義されない限り、本願で使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。また、本願に使用される用語および関する定義は、単に説明を目的として用いられ、制限しようとするものではないことが理解されるべきである。
【0046】
本願に使用される単数形態は、文法的対象中の一つまたは一つ以上(つまり、少なくとも一つ)を称すために本願で使用される。例えば、「要素」は一つの要素または一つ以上の要素を意味する。
【0047】
本願に使用された「約」は、一般的に与えられた値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内を意味する。
【0048】
本明細書に記載された、「(所定の成分を)含む」とは、記載された成分以外の成分を包含可能なこと(comprising)、または記載された成分を必須的に含む(consisting essentiallyof)ことを意味する。
【0049】
本願の一例としては、ロタウイルスの特定遺伝子に対する抑制性RNAを常時発現する細胞株を用いた逆遺伝学方法によって、目的とする再集合体ロタウイルスを製造する方法を提供する。
【0050】
逆遺伝学方法は、再集合させようとする遺伝子のmRNAまたはmRNAに転写可能なDNAを細胞に過量注入すると共に、ヘルパーロタウイルス(helper rotavirus)を細胞に感染させ、注入されたmRNAとヘルパーロタウイルスの遺伝子が再集合するように誘導する方法である。後述する本願の一実施例では、ヘルパーウイルスとして、牛のWC3ロタウイルス株を用い、再集合させるために注入する遺伝子は人間G4ロタウイルス株であるBrB9(Bricout B 9)のRNA分節9番であるVP7を用いており、前記ヘルパーウイルスと注入遺伝子との再集合結果物として、WC3/Brb9-VP7再集合体ウイルスを製造した例を示すが、これは、本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0051】
本願で、ロタウイルスの特定遺伝子に対する抑制性RNAを常時発現する細胞株は、目的の再集合体ロタウイルスを選別して分離するための選択圧(selective pressure)を提供する。特に、従来の単クローン中和抗体を用いて選択圧を加える方法は、中和抗体の確保に多くの時間と費用が要求され、ロタウイルス菌株は、互いに配列、機能および構造が類似する遺伝子で構成されるので、特定菌株の蛋白質のみに特異的な中和抗体を確保し難いという問題があるが、本発明は、抑制性RNAの標的配列が短く(約21bp)、類似の菌株の遺伝子間でも互いに異なる部分を容易に見つけることができ、選択圧を加えることが容易であり、いくつかの標的部位を用いる場合、より強い選択圧を加えることができ、ロタウイルスの特定遺伝子に対する抑制性RNAを常時発現する細胞株を容易に製作できるというメリットがある。
【0052】
好ましい一具現例として、本願の再集合体ロタウイルス製造方法は、以下のステップを含む。
第1ロタウイルスの11本の遺伝子分節中の特定遺伝子分節に対する抑制性RNAを安定的に発現する細胞株を提供するステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルス由来の遺伝子分節のmRNA、DNAまたはcDNAを前記細胞株に導入するステップと、
前記細胞株を第1ロタウイルスに感染させるステップと、
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節を含む再集合体ロタウイルスを回収するステップ。
【0053】
一例として、前記特定遺伝子が1種の遺伝子の場合、このように製造された再集合体ロタウイルスは、11本の遺伝子分節中の前記特定遺伝子分節に対応する遺伝子分節は第2ロタウイルス由来のものであり、その他の残りの10本の遺伝子分節は第1ロタウイルス由来のものから構成される。
【0054】
他の例として、特定遺伝子がn種の遺伝子の場合、このように製造された再集合体ロタウイルスは、11本の遺伝子分節中の前記n種の特定遺伝子分節に対応する遺伝子分節は第2ロタウイルス由来のものであり、その他の残り(11-n本)の遺伝子分節は第1ロタウイルス由来のものから構成される。
【0055】
ロタウイルスは、一般的に11本の遺伝子分節、つまり構造蛋白質VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、およびVP7をそれぞれコーディングする6本の遺伝子分節と、非構造蛋白質NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、およびNSP5をそれぞれコーディングする5本の遺伝子分節で構成される。この中で、VP7とVP4は、表面に存在する構造蛋白質であって、ウイルスの血清型(serotype)を決め、特にVP7はG血清型を決め、VP4はP血清型を決める。したがって、ロタウイルスの血清型はG型とP型を共に表記し、G型は、血清型と遺伝型とが同一であるので、血清型を数字で表記し(例えば、G1、G2、G3)、P型は、血清型と遺伝型とが同一でないため、血清型は数字で表記し、遺伝子型は[]中に数字で表記するか(例えば、P1A[8]、P1B[4])または遺伝型だけを単独で表記することもある(例えば、P[8]、P[4])。
【0056】
一具体例として、第1ロタウイルスは、非人間ロタウイルスであり、第2ロタウイルスは、人間ロタウイルスであってもよい。これは、非人間ロタウイルスが人間で減少した毒性を示すことがあるというアイディアに基づいたものである。しかし、本発明がこれに制限されることはなく、第1ロタウイルスおよび第2ロタウイルスの両方が非人間ロタウイルスであるか、いずれも人間ロタウイルスであってもよい。
【0057】
好ましい一具体例として、第1ロタウイルスは、非人間ロタウイルス、例えば、牛(bovine)、猿(simian)ロタウイルス、豚(porcince)ロタウイルス、犬(canine)ロタウイルスまたは黒ヤギ(goat)ロタウイルスであってもよい。牛ロタウイルスの例としては、ロタウイルス株NCDV、WC3またはUKなどが挙げられ、猿ロタウイルスの例としては、リーサス(rhesus)猿ロタウイルス(RRV)株TUCH、MMU 18006またはMMU17959、ベルベット猿(vervet monkey)ロタウイルス株SA11、または豚尾猿(pig-tailed macaque)ロタウイルス株PTRV(Macaca nemestrina)またはYK-1(macaques)などが挙げられるが、これに制限されない。
【0058】
好ましい他の具体例として、第2ロタウイルスは、人間ロタウイルスであってもよく、これらは任意のP血清型またはG血清型を有してもよいが、好ましくは、病気を主に起こす血清型であるP1、P2、G1、G2、G3、G4またはG9血清型であってもよい。G1血清型の人間ロタウイルスとしては、ロタウイルス株WI79、Wa、Dなどが挙げられ、G2血清型の人間ロタウイルスとしては、ロタウイルス株WISC2またはDS-1などが挙げられ、G3血清型の人間ロタウイルスとしては、ロタウイルス株WI78、PまたはHCR3Aなどが挙げられ、G4血清型の人間ロタウイルスとしては、ロタウイルス株Br(Bricout)BまたはST-3などが挙げられ、G9血清型の人間ロタウイルスとしては、ロタウイルス株WI61などが挙げられ、P1血清型の人間ロタウイルスとしては、ロタウイルス株WI79、WI78、WI61またはWaなどが挙げられ、P2血清型の人間ロタウイルスとしては、ロタウイルス株DS-1などが挙げられるが、これに制限されない。
【0059】
代案として、第1ロタウイルスまたは第2ロタウイルス、または両方は、従来の公知された再集合体ウイルスであってもよく、例えば、BrB-9(GenBank Accession No.GU565093)、WI79-9(GenBank Accession No.GU565060)、SC2-9(GenBank Accession No.GU565071)、WI78-8(GenBank Accession No.GU565082)、またはWI79-4(GenBank Accession No.GU565049)であってもよいが、これに制限されない。
【0060】
本願で、抑制性RNAは、標的遺伝子の発現を配列特異的に抑制ないし減少可能な核酸分子をいう。抑制性RNAは、標的遺伝子またはそのmRNAに結合(混成化)して転写および/または発現を抑制ないし減少させるために、標的遺伝子またはそのmRNAに十分相補的であってもよい。抑制性RNAは、RNAi(RNA interference)を通じて標的遺伝子の転写および/または発現を抑制ないし減少させる。好ましい具体例として、抑制性RNAは、siRNA(short interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)またはmiRNA(microRNA)であってもよい。
【0061】
RNAiとは、短い長さ(通常、12~21mer)の二本鎖RNA(dsRNA)によって配列特異的に遺伝子発現が抑制される現象をいう。これらのdsRNAは、これと相補的な標的mRNAを選択的に分解することによって標的遺伝子の転写および/または蛋白質合成を中断させることができる。したがって、RNAiは、所望の遺伝子を沈黙(silencing)させるために幅広く用いられる。RNAiを起こす代表的な小さい(small)RNAであるsiRNAとmiRNAは、dsRNA-特異的なエンドヌクレアーゼ(endonuclease)であるRNase IIIグループに属するダイサー(dicer)酵素がdsRNA前駆体を切り出す過程で生成される。
【0062】
siRNAは、約21個のヌクレオチドで構成されたdsRNAであって、約19個の塩基対と3'側に存在する2個のヌクレオチド突出部位(overhang)で構成される。この3'突出部位は、RNAi過程で中間媒介体として機能する。siRNAは、トランスポゾン(transposon)、ウイルスまたは生体内の遺伝子から長さが長いdsRNAが作られるか、外部で人為的にdsRNAを細胞内に注入した時に生成される。以降、siRNAは、単一鎖に分離され、RISC(RNA induced silencing complex)に含まれることになり、RISCに統合された以後、標的mRNAに相補的な対を成すが、標的mRNAとの相補性程度によってmRNAを切断および分解するか、mRNA翻訳を抑制することになる。siRNAを用いたRNAiは、試験管内で標的塩基配列に対するdsRNAを直接細胞に核酸伝達感染(transfection)させることによって、特定核酸配列による遺伝子発現抑制効果を示すことができる。
【0063】
shRNAを用いたRNAiの場合、合成dsRNAを直接注入する代わりに、ヘアピン構造の単一鎖RNAを転写するプラスミドDNAを用いる。細胞中に注入されたDNAから転写されたshRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターで調節されるプラスミドが標的細胞の核で短いヘアピン(short hairpin)形態の単一鎖RNAに転写した後、エクスポーチン-5(exportin-5)によって細胞質に移動し、ダイサー(dicer)による処理過程を経てsiRNAに変換される。
【0064】
miRNAは、細胞内で自然に作られるが、蛋白質を生成する遺伝情報を有していないRNAである。miRNAの形成過程は、以下の通りである。核で遺伝子によってpri-miRNA(primary miRNA)に転写した後、ドロシャ(drosha)によって切断され、短いヘアピン(short hairpin)形態のpre-miRNA(precursor miRNA)となり、以降、エクスポーチン-5(exportin-5によって核で細胞質に移動する。細胞質内でpre-miRNAは、ダイサー(dicer)酵素によって3'側に2nt突出部位(overhang)構造を有する約~22ntのdsRNAに切断され、以降、RISCに含まれた後、単一鎖の成熟(mature)miRNAに転換し、標的mRNAに相補的な対を成すが、標的mRNAとの相補性程度によってmRNAを切断および分解するか、mRNA翻訳を抑制することになる。
【0065】
一例として、本願の抑制性RNAは、操作された(engineered)miRNAであってもよく、標的部位と完全に相補的であるので(fully complement)、標的mRNAを切断することができる。操作されたmiRNAは、細胞内で安定的に発現できるように、これをコーディングするDNAを含むベクターを通じて細胞内に導入することができる。「安定的発現」とは一時的発現に対比されることであり、目的とする核酸が常時発現、恒常的発現、または永久的発現することをいう。
【0066】
好ましい具体例として、本願の抑制性RNAが操作されたmiRNAであり、前記miRNAに対する操作されたpre-miRNAをコーディングする二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含むベクターを通じて細胞に導入することができる。前記ベクターは、細胞に導入された後、転写されてpre-miRNAを発現するが、pre-miRNAは、内因性pre-miRNA構造と類似のヘアピン形態のステムループ構造を形成し、前述したようなmiRNAの発現および作用機作を通じて成熟した形態のmiRNAに転換し、標的mRNAを切断および分解して標的遺伝子の発現を抑制することができる。
【0067】
一例として、前記pre-miRNAをコーディングする二本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、以下のように構成されてもよい。(i)ベクターにクローニングするための5'末端突出部位(overhang);(ii)標的部位に相補的なアンチセンス配列(つまり、成熟miRNA配列)コーディング部位;(iii)末端ループ(terminal loop)構造を形成するためのスペーサ配列;(iv)ステム構造を形成するための、部位(ii)に相補的な配列コーディング部位(つまり、標的部位に対するセンス配列);および(v)ベクターにクローニングするための3'末端の突出部位(overhang)。選択的に、部位(iv)は、遺伝子発現抑制効率をより高めるために、一部ヌクレオチド(例えば、約2nt)が結実して、短い内部ループ(internal loop)を形成することができる。
【0068】
また、前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、前記のように構成された上部鎖(top strand)とその相補体である下部鎖(bottom strand)で形成されてもよい。
【0069】
一例として、本願のベクターは、抑制性RNAを安定的に発現するために、恒常性プロモーター(constitutive promoter)を含んでもよい。前記プロモーターは、RNAポリメラーゼII依存性プロモーターであってもよい。その以外にも、ベクターは、通常の発現調節配列を含んでもよい。例えば、アダプターまたはリンカー、エンハンサー、選別マーカー(例えば、抗生剤耐性マーカー)、複製可能単位、ポリアデニル化(polyA)信号配列、精製用タグまたは原核細胞または真核細胞またはウイルスの遺伝子の 発現を調節又は発現を誘導することが知られている他の他の配列およびこれらの様々な組み合わせなどを適切に含んでもよい。
【0070】
miRNAは、標的配列によってRNAi効果の効率性が決められるが、ここ数年間数多くのmiRNAの塩基配列とそれによるRNAi効率を調査したデータベースに基づいて、functional miRNAをデザイン可能なアルゴリズムが開発され、様々なウェッブサイト(www.ambion.com、www.oligoengine.com、www.vectorcorea.com)を通じてサービスされている。しかし、アルゴリズムを通じて決められたmiRNAが必ず標的mRNAを効果的に分解できるわけではなく、効率的な抑制のために、一つの標的部位だけでは不充分なこともあるので、一遺伝子当り2ヶ所以上の標的部位を選定してmiRNAを製造することが遺伝子抑制実験の成功確率を高めることができる。
【0071】
そのため、本願のベクターは、標的部位が異なる2種以上のmiRNAに対するpre-miRNAをコーディングする2種以上の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドをそれぞれ含む2以上のベクターであるか、または、標的部位が異なる2種以上のmiRNAに対するpre-miRNAをコーディングする2種以上の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む同時発現ベクターであってもよい。
【0072】
ベクターとしては、当業界の公知されたプラスミドベクター、例えば、pcDNA(Invitorgen社)、またはウイルスベクターを用いてもよいが、これに制限されない。細胞への導入は当業界の公知された方法、例えば、リン酸カルシウム法、または各種のトランスフェクション試薬(例えば、オリゴフェクタミン(oligofectamine)、リポフェクタミン(lipofectamine)、またはリポフェクチン(lipofection)など)を用いた方法によって適切に行うことができる。
【0073】
本願の一実施例に係る非制限的な例示として、抑制性RNAは、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群より選択される一つ以上の標的部位を標的とすることができる。
【0074】
前記三つの標的部位は、第1ロタウイルスと第2ロタウイルスの塩基配列の間で互いに相同性(%)が低い塩基配列部位だけを選別して選定されたものであり、他の標的部位をターゲットにする抑制性RNAを用いる場合、配列相同性(%)が高くなり標的部位に対する発現抑制効果がより低くなるか、効果がないこともある。
【0075】
本願の一実施例に係る非制限的な例示として、二本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択される一つ以上の配列対で形成された一つ以上の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0076】
本願で第1ロタウイルスの11本の遺伝子分節中の特定遺伝子分節に対する抑制性RNAを安定的に発現する細胞株は、ロタウイルスに対して高い感受性を有する細胞であってもよい。例えば、前記細胞株は、MRC-5、MA-104、ベロ(Vero)、BHK-21、COS-7、293T、CV-1またはTF-104細胞株であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0077】
一方、本願の再集合体ウイルス製造方法で、第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節のmRNA、DNAまたはcDNAを前記細胞株に導入される。
【0078】
第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスの遺伝子分節のmRNAが細胞に導入される場合、前記mRNAは、当業界の公知された方法によって合成されるか、またはインビトロ転写(in vitro transcription)によって得られてもよい。この場合、天然ロタウイルスのmRNAが5'末端にキャップ構造を有しており、ゲノムの複製と翻訳に影響を与えるという点を考慮して、得られたmRNAをキャッピング(capping)することが好ましい。
【0079】
代案として、第1ロタウイルスの前記特定遺伝子分節に対応する第2ロタウイルスのRNA分節をコーディングするDNAまたはcDNAが細胞に導入される場合、一般的には、T7 RNA重合酵素によって認識されるT7プロモーターを用いてもよい。しかし、その以外にも多様なRNA重合酵素によって認識されるプロモーターを用いてもよく、例えば、T3 RNA重合酵素またはSp6 RNA重合酵素などが挙げられるが、これに制限されない。前記DNAまたはcDNAは公知のベクターを用いて導入されてもよい。例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを用いる場合、公知されたT7発現ベクターを用いてもよく、市販のpBluescriptII SK(+/-)(Stratagene社)、pCRII(Invitrogen社)、pGEM(Promega社)、pET(Novagene社)、pcDNA(Invitorgen社)などが挙げられるが、これに制限されない。また、前記のようにDNAまたはcDNAが細胞に導入される場合、これを細胞に導入する前または後に、RNA重合酵素を発現する核酸コンストラクトを導入することができ、好ましくは、RNA重合酵素を供給するために用いる核酸コンストラクト内にキャッピング酵素をコーディングする配列が発現可能な状態で含まれてもよい。
【0080】
第2ロタウイルスの遺伝子分節が細胞に導入された後、前記細胞は、ヘルパーウイルスとして第1ロタウイルスに感染する。ヘルパーウイルスは、天然に存在する野生型ウイルスであってもよいが、これに制限されず、天然に存在する変異型ウイルスまたは人為的に遺伝子変更を施した組換えウイルスも可能である。好ましい具体例として、感染を促進するためにトリプシンまたはキモトリプシンの存在下で感染を行ってもよい。
【0081】
本願の再集合体ウイルス製造方法は、細胞株を第1ロタウイルスに感染させるステップ以降、継代培養を通じて前記再集合体ロタウイルスを濃化させるステップをさらに含んでもよい。
【0082】
本願の方法は、ロタウイルスの特定遺伝子に対する抑制性RNAを常時発現する細胞株を用いるために、これによって再集合体ロタウイルスを選別して分離するための選択圧(selective pressure)が加わる。具体的には、本願の細胞は、抑制性RNAによって第1ロタウイルスの特定遺伝子分節のmRNA量が低下しており、これに対応する第2ロタウイルスの特定遺伝子分節は過量導入された状態であるので、ウイルスの複製および組立て過程で、第2ロタウイルスの特定遺伝子分節のmRNAが第1ロタウイルスの特定遺伝子分節のmRNAの代わりに用いられ、再集合体ウイルスが発生する確率が増加する。また、継代が続くことにつれて細胞が発現するmiRNAによってヘルパーウイルス(例えば、野生型WC3ウイルス)は継続的に複製することが阻害されるが、再集合体ウイルスは影響を受けないため再集合体ウイルスを濃化することができる。
【0083】
再集合体ウイルスの回収は、培養後の培養液および/または細胞破砕液を回収することにより行うことができる。選択的に、回収された培養液および/または細胞破砕液をまた他の宿主細胞(第2宿主細胞、第3宿主細胞)に添加(接種)することによってウイルスを再感染させて継代培養した後、回収することができる。ウイルスの回収は、プラーク分離(plaque isolation)を通じて行うことができ、回収された組換えウイルスは、必要に応じて精製することができる。例えば、遠心分画、密度勾配遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどを適切に組み合わせてウイルスの精製を行うことができる。
【0084】
本願の一実施例に係る例示は、
牛(bovine)のWC3ロタウイルスのVP7遺伝子分節に対するmiRNAを安定的に発現する細胞株を提供するステップと、
人間ロタウイルスのVP7遺伝子分節のmRNA、またはこれをコーディングするDNAまたはcDNAを前記細胞株に導入するステップと、
前記細胞株をWC3ロタウイルスに感染させるステップと、
人間ロタウイルスのVP7遺伝子分節を含む再集合体ロタウイルスを回収するステップと、を含む、再集合体ウイルスの製造方法を提供し、各ステップに対する具体的な説明は前述した通りである。
【0085】
本発明は、さらに、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群より選択されるいずれか一つ以上の標的部位を抑制する抑制性RNAオリゴヌクレオチドに関するものである。好ましい具体例として、前記抑制性RNAは、miRNA、siRNAまたはshRNAであってもよい。好ましい他の具現例として、前記抑制性RNAは、miRNAまたは前記miRNAに対するpre-miRNAであってもよい。
【0086】
本発明は、さらに、配列番号6および配列番号7、配列番号8および配列番号9、および配列番号10および配列番号11からなるグループから選択されるいずれか一つ以上の配列対で形成された二本鎖DNAオリゴヌクレオチド;前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、野生型WC3ロタウイルスの生産が抑制された細胞株製造用組成物;前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、牛ロタウイルスのVP7蛋白質の生成が抑制された細胞株製造用組成物;前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが導入された、野生型WC3ロタウイルスの生産が抑制された細胞株;および前記抑制性RNAオリゴヌクレオチドまたは二本鎖DNAオリゴヌクレオチドが導入された、牛ロタウイルスのVP7蛋白質の生成が抑制された細胞株を提供し、これらは前述したような再集合体ウイルスの製造方法に用いられてもよい。
【実施例
【0087】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明を以下の実施例によってより具体的に説明することにする。しかし、これらは、本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものではない。下記に記載された実施例は、発明の本質的な要旨から外れない範囲で変形可能であることは当業者らにとって自明である。
【0088】
実施例1.WC3野生型ロタウイルスでVP7遺伝子の転写および発現抑制のための標的部位の選別
WC3/Brb9-VP7再集合体ウイルス(reassortant virus)製作のためにロタウイルスに対して高い感受性を有する細胞に形質転換を起こし、再集合体されない牛(bovine)WC3野生型(wild type)ウイルス生産を抑制可能な安定した細胞株(stable cell line)の構築を行った。前記形質転換は、WC3ウイルスのVP7遺伝子を標的とするRNAi(RNA interference)技術を用いた。
【0089】
具体的には、WC3ロタウイルスのVP7遺伝子内でWC3に特異的であり、人間ロタウイルスであるBrB9のVP7には特異性を示さないmiRNA標的部位3ヶ所を選定した。本願で構築しようとする安定した細胞株は、これらの標的部位に対するmiRNAを常時発現するように意図される。前記miRNA(成熟形態)は、RNAi標的部位に対して完全に相補的なアンチセンス配列に該当する21bpの短い干渉(short interfering)RNA類型であり、これらは、WC3 VP7遺伝子の転写と発現を抑制することになる。miRNA選別時に、RNAi発現のために用いたベクターシステムで提供するInvitrogen社のStealth RNAiTM Pre-Designed siRNAs web-tool(www.invitrogen.com/rnaiexpress)を用いた。WC3 VP7遺伝子は、GenBank AY050272(配列番号1)を、Brb9 VP7遺伝子は、GenBank GU565090(配列番号2)を参考にした。図1は、WC3 VP7遺伝子(配列番号1)とBrb9 VP7遺伝子(配列番号2)の核酸配列の整列結果を示す。図1に示されているように、WC3 VP7遺伝子(配列番号1)とBrb9 VP7遺伝子(配列番号2)の核酸配列の相同性は、74.3%(1062bpのうち、789bp一致)であるが、標的部位の部分はこれより低い相同性を示す部分から選別した。具体的に、図1で標的部位として選別した3ヶ所を下線を引いた太字で表示しており、5'から3'方向に順に標的部位1(配列番号3)は71.4%15/21、標的部位2(配列番号4)は66.7%14/21、および標的部位3(配列番号5)は61.9%(13/21の配列相同性を有する。
【0090】
実施例2.miRNA発現ベクターの製作
実施例1で選別した3ヶ所のmiRNA標的部位に対するmiRNAを発現させるために、これのpre-miRNAをコーディングする配列をそれぞれmiRNA発現ベクターであるpcDNA6.2-GW/EmGFP-miR(Invitrogen社)にそれぞれ製造社のマニュアルに従い、クローニングした。このために、まず各標的部位に結合可能なmiRNAに対するpre-miRNAが転写可能なDNA配列と、これに相補的な配列を4ntのオーバーハング(overhang)を有するようにデザインおよび合成してアニーリング(annealing)し、dsDNAオリゴを製作した(表1および図2)。
【0091】
【表1】
【0092】
その後、製造社のマニュアルに従い、4ntオーバーハングを有するdsDNAオリゴと線形化したpcDNA6.2-GW/EmGFP-miRベクター(Invitrogen)を連結(ligation)し、E.coliに形質転換した後、コロニーを選別して配列を分析して完成されたmiRNA発現プラスミドを得ており、それぞれpcDNA-GFP/mr1、pcDNA-GFP/mr2、およびpcDNA-GFP/mr3と命名した。
【0093】
実施例3.三重(triple)miRNA発現ベクターの製作
一つのベクターで3個のmiRNAが同時に転写可能な発現ベクターをデザインし、製作社のマニュアルに従い、クローニングした。まず、pcDNA-GFP/mr1をBamHIとXhoI制限酵素で切断し、約151bpの挿入断片(insert fragment)を精製した。pcDNA-GFP/mr2は、BglIIとXhoI制限酵素で切断し、約5.6kbのベクター断片を精製した。挿入断片とベクター断片とを連結(ligation)し、E.coliに形質転換した後、コロニーを得て配列分析した後、完成された二重(dual)miRNA発現ベクターを製作した。その後、二重miRNA発現ベクターをBamHIとXhoI制限酵素で切断し、約250bpの挿入断片2を精製し、pcDNA-GFP/mr3をBglIIとXhoI制限酵素で切断し、約5.6kbのベクター断片2を精製した。挿入断片2とベクター断片2とを連結し、E.coliに形質転換した後、コロニーを得て配列分析した後、完成された三重(triple)miRNA発現ベクターを製作した。製作した三重miRNA発現ベクターをDraI制限酵素で切断し、EmGFP断片を除去した後、再び連結してGFP遺伝子がない三重miRNA発現ベクターを製作してpcDNA-Tri-miRNAと命名した(図3)。
【0094】
実施例4.三重(triple)miRNAを安定的に発現する細胞株の製作およびWC3感染阻害テスト
三重miRNAが安定して(stable)発現する細胞株を得るために、TF-104(African green monkey epithelial cell line)細胞株に前記pcDNA-Tri-miRNAプラスミドをトランスフェクションし、ベクター内に含まれたブラストサイジン(blasticidin)抗生剤抵抗性遺伝子を用いてmiRNAを発現する単一細胞を選別した。抗生剤であるブラストサイジンS(Blasticidin S)をトランスフェクションした細胞に10~20ug/mlの濃度で処理して、トランスフェクションされていない細胞の成長を阻害し、トランスフェクションされた細胞を選別する過程を数回繰り返してブラストサイジンに抵抗性がある単一細胞コロニーのうち44個のコロニーを拡張継代して44個のクローンを確保した。
【0095】
24-ウォールプレートに前記各クローンおよび野生型(WT)TF-104細胞を90%コンフルエンシでプレーティングし、WC3ウイルスをウォール当り100pfu、1pfu感染させた。感染後、3日と5日後に細胞変性効果(CPE:Cytopathic effect)を比較して、WT TF-104に比べて感染が阻害したクローンを選別した。その結果、表2に示しているように、6、13、14、19、31、44番クローンが、WC3感染を効果的に阻害しており、特に44番クローンが最も阻害効果が大きいことが分かった。
【0096】
【表2】
【0097】
WC3ウイルスを感染させた6、13、14、19、31、44クローンの培地を除去し、EMEM、10%FBS、10ug/mlのブラストサイジン培地に取り替え、拡張継代培養を行い、ウイルスに感染していない細胞を救済(rescue)し、それぞれTK6r、TK13r、TK14r、TK19r、TK31r、TK44rと命名した。
【0098】
実施例5.G4 Brb9 VP7 mRNAの製作
再集合に用いられる人間ロタウイルスG4 Brb9のVP7遺伝子は、インビトロ転写(in vitro transcription)過程とキャッピング(capping)過程を経てmRNAに作った後、mRNAを形質導入する方式で行った。プラスミドDNA形態にすぐに形質導入することもできるが、この場合、効率的な転写のために一般的にT7プロモーターを用いる。T7プロモーターは特異的でかつ強力であり、細胞質(cytosol)でも転写が可能であるため、プラスミドが核内まで伝達されず、細胞質に留まっても転写されるというメリットがあるが、これのためにT7ポリメラーゼを発現可能な発現ベクターを、まず細胞に形質導入しなければならないという点と、細胞質で転写されたRNAは、キャッピングできないため不安定であるというデメリットを有している。Brb9 VP7遺伝子の再集合効率を高めるためには、ウイルスmRNAと同一の形態のキャッピングされている形態が有利であるので、本実施例ではプラスミドDNAを形質導入する方法の代わりに、試験管内でウイルスmRNAと同一の形態で転写を行い、このmRNAを導入する方式を選択した。
【0099】
G4 Brb9のVP7遺伝子のmRNAをインビトロ転写するためのDNA鋳型をデザインした。ロタウイルスの3’UTR配列は、翻訳過程で重要であるので、正確な部分で転写が始まって終わらなければならない。T7プロモーターの転写開始点は非常に正確な方であるが、終了地点はT7ターミネーターが存在しても、多少ヘテロジニアス(heterogeneous)であるため、T7ターミネーターの前にデルタ感染ウイルス(HDV)リボザイム配列を導入して、VP7遺伝子が終わる位置で正確に切られるようにデザインした(配列番号12および図4参照)。デザインされたDNA鋳型を合成し、EcoRI/BamHI制限酵素で切断して、pUC57ベクターにクローニングし、pUC57-T7-Brb9-VP7と命名した。
【0100】
mMESSAGE mMACHINEキット(Ambion)およびpUC57-T7-Brb9-VP7 DNA鋳型を用いて、製作者のマニュアルに従い、インビトロ転写および5’キャッピング過程を通じてBrb9 VP7 mRNAを製作した。
【0101】
実施例6.G4 Brb9 VP7 mRNAトランスフェクションおよびWC3ウイルス感染
インビトロ転写されたG4 Brb9 VP7 mRNAを、実施例4で得られたTK14r細胞株にリポゾーム(リポフェクタミン2000;Thermo Fisher)トランスフェクションした。トランスフェクション過程は、製作社のマニュアルで提供する通常の方法を用いた。トランスフェクション後、4時間37℃、5%CO培養器で細胞を培養し、この後、完全成長培地(10%FBS含有EMEM)に培地を交換した。
【0102】
24時間トランスフェクションを行った後、培地を感染培地(0.5μg/mlのトリプシン含有無血清EMEM)に交替して、トリプシン(Sigma、T0303、10μg/ml)を用いて、37℃で30分間活性化したWC3(ATCC VR-2102)ウイルスをMOI 1.0で細胞に感染させた。感染させた後、細胞は37℃、5%CO培養器で48時間インキュベーションして細胞変性効果(CPE)を確認した。
【0103】
TK14r細胞は、miRNAを用いてWC3のVP7遺伝子の転写と発現を抑制し、感染した細胞内でWC3 VP7 mRNA量は低下しており、BrB9 VP7 mRNAは、過量導入された状態であるので、ウイルスの複製および組立て過程で、BrB9 VP7のmRNAが、WC3 VP7 mRNAの代わりに用いられ、再集合体ウイルスが発生する確率が増加する。また、継代が続くことにつれて細胞が発現するmiRNAによって、WC3 WTウイルスは継続的に複製することが阻害されるが、再集合体ウイルスは影響を受けないため再集合体ウイルスが濃化する。
【0104】
実施例7.WC3/Brb9 VP7再集合体ウイルスの確認
前述した過程を通じてCPEが発生した細胞を3回凍結-融解(freezing-thawing)し、細胞破片(cell debris)を除去した後、上澄み液を確保し、これをPassage 0(P0)にした。P0をTK14r細胞株またはMA-104細胞株に再感染させた後、48時間後に細胞を3回凍結-融解して細胞破片を除去した後、上澄み液を確保し、これをPassage 1(P1)にした。
【0105】
組換えした試料内の再集合を確認するために、WC3 VP7、BrB9 VP7、並びにWC3 VP4を特異的に検出可能なプライマーセットを製作し、交差反応性(cross activity)または偽陽性(false positive)および偽陰性(false negative)結果は確認されないことを確認した(表3)。
【0106】
【表3】
【0107】
前記プライマ-を用いて試料内の再集合を確認するためにRT-PCR反応を行った。WC3 VP7、BrB9 VP7、並びにWC3 VP4は、それぞれ422bp、406bp、394bpサイズのRT-PCR産物に増幅され、用いたRT-PCR条件は、以下の通りである(表4)。
【0108】
【表4】
【0109】
TK14r細胞株またはMA-104細胞株にP0試料を感染させた後に得られた二種類のP1試料でウイルスRNAを抽出してRT-PCRを行った。5回の試みで、2回目はTK14r細胞株を用いてP1を製造しており(図5、Lane 1、4)、3回目はMA-104細胞株を用いてP1を製造した(図5、Lane 2、3、5)。その結果、4回目と5回目の試みから得られた、P1でBrB9 VP7特異的な約400bp大きさのバンドを確認した(図5、Lane 4とLane 5)。
【0110】
VP4の場合、バックボーンウイルスであるWC3に共通にあるもので、RT-PCRを行う際には内部対照群(internal control)の意味で使用された。BrB9 VP7がWC3ウイルスに再集合された場合、試料からBrB9 VP7とWC3 VP4信号が同時に確認され、WCVP7は検出されてはならない。したがって、4回目と5回目は成功的にBrB9 VP7がWC3ウイルスに再集合されたことを確認した。
【0111】
実施例8.再集合体ウイルスの分離
P0、P1ステップのウイルスは、単一クローンでなく混合したクローンとして存在するので、再集合された単一クローンウイルスを分離するために、図5のLane 4に該当するP1試料を用い、プラーク分離(plaque isolation)を行った。形成されたプラークを目視で観察するために、ニュートラルレッド(neutral red)で細胞断層を染めてウイルスの増殖を確認した。
【0112】
60~100個のプラークをピッキング(picking)して分析し、再集合体プラークを見つけるために一連の過程を3回以上持続的に繰り返した。プラークピッキング過程は、以下の通りである。1)顕微鏡または目視で再集合体プラーク候補に表示する。2)ピッキングする個数だけEMEM(無血清)をe-チューブにそれぞれ300ulずつ分注する。3)滅菌したチップでピッキングして2)に入れる。4)-70℃保管するか、トリプシン(T0303、1ug/mL)を添加して感染に用いる。プラーク分析を行った後、確認された10個のプラークを分離した。プラーク分離した単一クローンは、TK14r細胞株(24well、1×10E5/well)に感染した後、3日間培養またはCPEが確認されるまで培養した後、収穫する。収穫した試料からviral RNAを抽出し、それを鋳型としてRT-PCR分析方法を用いて再集合されたウイルスであるか分析した。その結果、6番クローンと8番クローンが再集合されたクローンと確認された(図6参照)。G4再集合体プラークと確認された6番と8番クローンを、MA-104細胞株で培養して再集合体ウイルスストック(stock)を確保した(図7および図8参照)。
【0113】
以上の説明から、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的な思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施可能であることが理解できるはずである。したがって、前述した実施例はあらゆる面で例示的なものであって限定的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味および範囲、並びにその等価の概念から導出されるすべての変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024520113000001.app
【国際調査報告】