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特表2024-520128原材料を回収するためのポリウレタン化合物含有材料の熱分解
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】原材料を回収するためのポリウレタン化合物含有材料の熱分解
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574291
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022064853
(87)【国際公開番号】W WO2022253873
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21177501.0
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エイデン ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ベリングハウゼン ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ オーレル
(72)【発明者】
【氏名】ハーン クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ロッデンケンパー ティム
(72)【発明者】
【氏名】イェンドルツォク カロラ
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA70
4F401CA87
4F401CA90
4F401CB01
4F401CB10
4F401CB14
4F401DA01
4F401DA08
4F401DA12
4F401EA77
4F401FA01X
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA06Y
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
本発明は、工業的規模での熱分解の実施を可能にする、請求項1に記載のプロセス、及び上記プロセスでポリウレタン含有材料を含む熱分解原料を熱分解するのに使用される熱分解装置に関する。本発明によれば、より多量の熱分解原料でも、ポリウレタン含有材料の合成に再利用可能な開裂生成物を含む或る量の熱分解生成物が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程:
(a)少なくとも、
i)式(I):
【化1】
(式中、
Qは、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の数であり、かつ、
は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種のポリマー化合物を含む材料と、
ii)前記ポリマー化合物の熱的分解に影響を与える少なくとも1種の触媒と、
を含む熱分解対象材料を反応器へと導入する工程と、
(b)少なくとも工程(a)で導入された前記熱分解対象材料の材料を前記反応器内で250℃~700℃の温度にて分解して、熱分解物としての気相生成物及び非気相熱分解残渣を得る工程と、
ここで、
(i)前記分解中に、前記反応器内の酸素ガスの量は、該反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)前記分解中に、前記熱分解物は前記反応器から排出され、かつ、
(iii)前記熱分解残渣は前記反応器から排出される;
(c)排出された前記熱分解物を250℃未満の温度に冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意に、前記熱分解生成物を後処理する工程と、
を含む、熱分解プロセス。
【請求項2】
工程(b)における温度は、300℃~700℃、好ましくは400℃~600℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(b)における絶対圧力は、1.2bar以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
導入した前記熱分解対象材料を250℃~700℃に温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、該熱分解対象材料から生じる前記熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を1秒~5時間、好ましくは2分~120分とすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記反応器からの前記熱分解物の排出を、前記反応器を通過するガス流又は吸引によって、好ましくは、前記熱分解物の形成時間と、前記反応器から得られる前記熱分解物の排出時間との間の期間としての前記熱分解物の滞留時間を0.1秒~600秒、好ましくは0.5秒から300秒の間、より好ましくは0.5秒~200秒とすることによって確保することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応器からの前記熱分解物の排出を、前記反応器を通過する気体流によって確保し、前記反応器内での前記気体流の空塔速度としての流量を0.01m/秒~20m/秒の範囲とすることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行うことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
工程(b)における前記反応器内の酸素ガスの量は、いずれの場合も前記反応器内に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
不活性ガス、特に窒素、アルゴン、CO、NO、又はそれらの混合物を、前記材料が充填された前記反応器に通過させることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ポリマー化合物は、式(Ia):
【化2】
(式中、nは、0~8、特に0~4、より好ましくは0~2の数であり、かつ-は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ポリマー化合物は、少なくとも、
i1)8個~70個の炭素原子を有する、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する炭化水素単位に結合した少なくとも2個~10個、特に2個~8個、より好ましくは2個~4個のイソシアネート基を含む少なくとも1種の有機イソシアネート化合物と、
i2)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物と、
の反応によって得られることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1種の有機イソシアネート化合物は、前記炭化水素単位として、上述の炭素原子数を有し、かつ脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される単位を含むことを特徴とする、請求項15に記載のプロセス。
【請求項13】
前記有機ポリイソシアネート成分として、式(III):
【化3】
(式中、nは、0~8、特に0~4、より好ましくは0~2の数である)の少なくとも1種のポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートが選択されることを特徴とする、請求項15~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記材料を固体粒子の形態、特に、粒状混合物の形態で前記反応器へと導入することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記触媒は、無機塩、鉱物、金属酸化物、混合酸化物、粘土、及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種の化合物、好ましくはAlとMgOとの混合酸化物であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒は、塩基性触媒であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記触媒は、不均一系触媒であることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
式(I):
【化4】
(式中、
Qは、8個~70個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の数であり、かつ、
は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有するポリマー化合物の熱分解によって少なくとも1個のアミノ基を有する有機化合物を得るための、熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置と、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える熱分解装置の使用であって、
前記熱分解用の加熱可能な反応器は、250℃~700℃の温度で前記反応器の温度制御に使用可能な少なくとも1つの加熱要素とともに、熱分解対象材料用の少なくとも1つの入口及び熱分解物用の少なくとも1つの別個の出口も備え、かつ、
前記計量供給装置及び前記熱分解用の加熱可能な反応器は、該計量供給装置が少なくとも1つの供給導管を介して前記反応器の熱分解対象材料用の入口に接続されるように相互に配置及び構成されており、かつ、
前記熱分解用の加熱可能な反応器及び前記熱分解物捕集器は、好ましくはガス状の熱分解物を前記熱分解物用出口から排出し、排出された前記熱分解物を前記熱分解物捕集器に導入することが可能であるように互いに流体連通しており、かつ、
少なくとも1つの熱分解物捕集器は、上記捕集器内で上記反応器から排出される前記熱分解物の温度を250℃未満に低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成するのに使用することが可能な250℃未満の温度で温度制御された少なくとも1つの冷却装置と、冷却により得られる前記熱分解生成物の捕集及び排出用の少なくとも1つの容器とを備え、かつ、
熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器、及び少なくとも1つの熱分解物捕集器は、これらが同時に作動することができるように相互に配置及び構成されている、使用。
【請求項19】
少なくとも、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、
(i)0重量%~40重量%の少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族化合物の総量と、
(ii)0重量%から35%重量%の間の1個だけのアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族化合物、好ましくはアニリンの総量と、(iii)0%から40%の間の少なくとも1個の酸素原子を有する少なくとも1個の官能基を含み、かつ窒素原子を有する官能基を含まない炭化水素化合物と、
(iii)0重量%~40重量%の少なくとも1個の酸素原子を有する少なくとも1個の官能基を含み、かつ窒素原子を有する官能基を含まない少なくとも1種の炭化水素化合物の総量と、
を含み、ここで、
(iv)(i)、(ii)、及び(iii)からの重量部の範囲内の重量割合が、(i)、(ii)、及び(iii)からの選択された重量割合と、他の成分の重量部とを合わせた合計が足して100重量%となるように選択される、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン含有材料を熱利用するための熱分解プロセス、熱分解装置の対応する使用、及びポリウレタン製造に再利用可能な種類の原材料を含む熱分解生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン含有材料は、冷却分野及び建築分野における緩衝材又は断熱材として使用されている。特に、ポリウレタン含有フォーム材料は、例えば緩衝要素、マットレス、又は断熱材として使用される。例えば冷蔵庫用又は建築における断熱材としてポリウレタン含有材料を使用する場合、使用されるのは主に硬質ポリウレタンフォームである。
【0003】
ポリウレタン含有材料を含む製品の耐用年数が終了すると、これらは新しい製品と交換され、通常は廃棄される。結果として生じるプラスチック廃棄物の総量は年々増加している。総量の約60%は焼却又は埋め立てによって処分されている。焼却すると空気中にCOが排出され、これは地球温暖化の原因となる。その低い密度は、埋め立て地にあるプラスチック廃棄物が大きな体積を占め、そこから河川及び海洋における一般的な汚染の原因となる可能性もあることを意味する。この理由から、廃棄物問題を解決することができると同時に化石資源の節約を可能にする効率的なリサイクル方法を開発することが重要である。上述の硬質ポリウレタンフォームはポリマー市場のごく僅かな部分(およそ8%)しか占めていないため、ポリウレタンのリサイクルは当初は開発の焦点ではなかった。しかしながら、プラスチック市場が成長し続けていることから、CO排出量の削減及び化石エネルギー源の節約を両立するために、今や全ての種類のポリマーに対するリサイクル技術を開発することが重要となっている。
【0004】
プラスチック廃棄物をリサイクルするプロセスは、3つのカテゴリーに大別することができる。
(1)機械的リサイクル:ここでは、プラスチック廃棄物をそのまま再度溶融させ、次いで再利用することができる。これは、ポリウレタンエラストマーには不可能である。
(2)化学的及び熱化学的リサイクル:ここでは、有用な化学原料を得るために、プラスチック廃棄物をモノマーへと解重合する又はより小さな分子へと分解する。
(3)熱的リサイクル:ここでは、プラスチック廃棄物をオフガス及び熱エネルギーに変換する。
【0005】
熱化学的リサイクルから得られた化学原料を使用して、新たな合成樹脂又は他の化学生成物を合成することができる。
【0006】
熱化学的リサイクルは熱分解と呼ばれる。大抵の場合、熱分解は、包装廃棄物に対して使用され、ドロップイン溶液の形態で、粉砕機(crackers)を用いる既知の精製プロセスにおいて或る種のリサイクルナフサとして使用される熱分解油が得られる。ポリウレタンの熱分解については殆ど知られていない。
【0007】
熱分解プロセスにおいて触媒又は添加剤を使用すると、操作温度を低下させ、反応時間を短縮し、分解効率を高め、生成物分布を制限することができ、プロセスがより効率的になる。
【0008】
Kumagaiaら(非特許文献1)は、およそ800℃で実施される軟質フォーム及び硬質フォームの熱分解について記載しており、そこではイソシアネート、ジアミン、及びポリオール由来の非常に多くのその他の断片が得られる。
【0009】
M. Blazsoら(非特許文献2)は、塩基性NHYゼオライトを使用すると、ポリオール由来の主生成物としてTHFが得られることを明らかにした。更なる容易に特定される2種の生成物はアニリン及び4-メチルアニリンであり、これらはNHYゼオライトを介してMDIの接触分解により形成する。
【0010】
特許文献1は、400℃~530℃及び減圧でウレタンからイソシアネートを熱的に製造するプロセスを開示している。常圧でのポリウレタンを用いた実験については述べられていない。
【0011】
特許文献2は、流動床中での軟質ポリウレタンフォームのジアミンへの加水分解を提案している。
【0012】
従来技術に記載された熱分解プロセスはいずれも、分析目的でマイクログラムスケールの熱分解として使用することを主な目的としているため、工業的又は商業的使用に適していない。したがって、従来技術において提示された熱分解は、いずれの場合も、工業的又は商業的使用には適さない熱分解装置で行われる。
【0013】
特に、より多量のポリウレタン含有材料を熱分解する場合には、不所望な副生成物の形成を削減することが可能な適合された触媒及び反応器を用いた新規のより選択的なプロセスが必要とされる。ポリウレタン含有材料から、ポリウレタン合成に再利用可能な高含有量の開裂生成物、特にアニリン、トルイジン、メチレンジアニリン(mMDA)、又はメチレンジアニリンポリマー(pMDA)等の芳香族アミン化合物を含む熱分解生成物が選択的に得られるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許第2410505号
【特許文献2】独国特許第2362915号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Journal of Analytical and Applied Pyrolysis 126 (2017) 337-345
【非特許文献2】J. Chromatogr. A 1271 (2013) 217- 220
【発明の概要】
【0016】
したがって、熱分解の商業的な実施のために、少なくともポリウレタン含有材料を含む熱分解対象材料を熱分解するプロセス及び上記プロセスにおいて使用可能な熱分解装置であって、これらを使用すると、比較的多量の熱分解対象材料でも、使用されるポリウレタン含有材料の総重量に対して、好ましくは40重量%超の量でポリウレタン含有材料の合成に再使用可能な開裂生成物を含む或る量の熱分解生成物が得られる、プロセス及び熱分解装置を提供することが目的であった。
【0017】
さらに、アルキレン架橋芳香族イソシアネート(例えば、メチレンジフェニルイソシアネート(MDI)又はメチレンジフェニルイソシアネートポリマー(pMDI))に基づくポリウレタン含有材料の熱分解において、アルキレン架橋芳香族単位を有する構造単位を含む芳香族アミンを可能な限り多く回収することが二次的な目的であった。
【0018】
したがって、本出願は、少なくとも以下の工程:
(a)少なくとも、
i)式(I):
【化1】
(式中、
Qは、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の数であり、かつ、
は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種のポリマー化合物を含む材料と、
ii)上記ポリマー化合物の熱的分解に影響を与える少なくとも1種の触媒と、
を含む熱分解対象材料を反応器へと導入する工程と、
(b)少なくとも工程(a)で導入された熱分解対象材料の材料を反応器内で250℃~700℃の温度にて分解して、熱分解物としての気相生成物及び非気相熱分解残渣を得る工程と、
ここで、
(i)上記分解中に、反応器内の酸素ガスの量は、反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)上記分解中に、熱分解物は反応器から排出され、かつ、
(iii)上記熱分解残渣は反応器から排出される;
(c)排出された熱分解物を250℃未満の温度に冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意に、熱分解生成物を後処理する工程と、
を含む、熱分解プロセスを提供する。
【0019】
「熱分解対象材料」という用語は、熱分解のために反応器へと導入され、そこで酸素ガスの不存在下又は低量の酸素ガスの存在下で熱処理を受ける物質の全体を指す。熱分解対象材料は、反応器への導入前は固体の形態であることが好ましい。
【0020】
「熱分解物」は、工程(b)の条件下で反応器内の気相にある(より詳細には、気体及び/又はエアロゾルの形態である)、熱分解によって形成された生成物の全体を意味するものと理解される。
【0021】
「熱分解残渣」は、工程(b)の条件下で反応器内の気相にない、熱分解によって形成される物質と熱分解対象材料の他の残渣との全体を意味するものと理解される。反応器内の熱分解残渣が固体であることを特徴とするプロセスの実施の形態が好ましい。
【0022】
「熱分解生成物」は、工程(c)において熱分解物が冷却された場合に凝縮及び/又は再昇華によって蓄積する、熱分解物からの生成物の全体を意味するものと理解される。液体である熱分解生成物は、熱分解油とも称する。
【0023】
これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解生成物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで液体の状態である場合は「液体」である。これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解生成物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで固体状態である場合は「固体」である。これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで気体として存在する場合は「気体」である。
【0024】
或る物質の化学構造が少なくとも1つの炭素-水素共有結合を含む場合、その物質は「有機」である。
【0025】
本出願において、ポリマー又はポリマー成分に対して規定される平均モル質量は、明確に別段の記載がない限り、常に重量平均モル質量Mwである。これは、原則的には、外部標準に対する測定を行うのに適切なRI検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。
【0026】
「反応器」は、熱分解対象材料からの材料の化学変換、例えば、熱的分解が起こる容積である。熱的分解の場合、これは、例えば、熱分解対象材料が入った加熱容器の容積とすることができる。
【0027】
本発明によれば、熱分解対象材料を、本発明のプロセスに従って、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器、流動床反応器、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器(entrained-flow reactor)、噴流反応器(entrainment-flow reactor)、回転管反応器、流動床反応器及びドラム反応器から選択されることを特徴とする反応器に導入することが有利である。より詳細には、好適な反応器は、好ましくは、熱分解対象材料を連続的に導入することができるものであり、特に、回転管反応器、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器(特に、内部熱交換器、好ましくは内部熱交換管を備えた連続床交換式のもの(シャフト反応器))、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転管反応器又は流動床反応器から選択される。プロセスの一実施の形態においては、非常に特に好ましい反応器は、スクリュー反応器、回転オーブン又は流動床から選択される。本発明によるプロセス及びその実施の形態において好ましい更なる反応器は、本発明の熱分解装置の実施の形態及び触媒を使用するプロセスの実施の形態において説明する(以下を参照)。
【0028】
本発明によれば、反応器に導入される熱分解対象材料は、式(I):
【化2】
(式中、
Qは、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の数であり、かつ、
は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種のポリマー化合物を含む少なくとも1種の材料を含む。
【0029】
Qは、好ましくは、脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される。
【0030】
本発明のプロセスは、式(I)による基Qが少なくとも1個の芳香族基を含む上述の種類のポリマー化合物を含む材料に特に非常に適している。式(I)の構造単位として非常に特に好ましいのは、基Qが少なくとも2個のアルキレン架橋芳香族基、好ましくは少なくとも2個のアルキレン架橋フェニル基、特に少なくとも2個のメチレン架橋フェニル基を含む構造単位である。
【0031】
本発明のプロセスの非常に特に好ましい実施の形態は、ポリマー化合物が、上記式(I)の少なくとも1つの構造単位として、式(Ia):
【化3】
(式中、nは、0~8、特に0~4、より好ましくは0~2の数であり、かつ-は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を含むことを特徴とする。
【0032】
上記材料中に存在するポリマー化合物は、好ましくは、少なくとも、
i1)8個~70個の炭素原子を有する、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する炭化水素単位に結合した少なくとも2個~10個、特に2個~8個、より好ましくは2個~4個のイソシアネート基を含む少なくとも1種の有機イソシアネート化合物と、
i2)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物と、
の反応によって得ることができる。
【0033】
更なる実施の形態において、少なくとも1種の有機イソシアネート化合物は、上記炭化水素単位として、i1)に述べた炭素原子数を有し、かつ脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される単位を含むことが好ましい。
【0034】
特に好ましくは、上記有機イソシアネート化合物として、式(II):
Q(NCO) (II)
(式中、nは、2~4、好ましくは2又は3の数であり、かつQは、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、又は8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基から選択される基である)に対応する少なくとも1種の化合物が選択される。
【0035】
上記ポリマー化合物が上記式(Ia)の実施の形態の少なくとも1つの構造単位を含む場合、上記プロセスの更なる好ましい実施の形態は、式(III):
【化4】
(式中、nは、0~8、特に0~4、より好ましくは0~2の数である)の少なくとも1種のポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートが、工程i1)において少なくとも1種の有機ポリイソシアネート化合物として選択される場合であることが判明した。
【0036】
上記工程i2)の好ましい実施の形態は、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、又はそれらの混合物から選択される場合である。
【0037】
好ましくは、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物は、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含む群から選択される。
【0038】
使用されるポリオール(複数の場合もある)のOH価は、例えば100mg KOH/g超~800mg KOH/g未満であってもよく、使用されるポリオール(複数の場合もある)の平均OH官能価は2超である。単独のポリオールが添加される場合、OH価は上記ポリオールのOH価を示す。混合物の場合は、平均OH価が示される。この値をDIN 53240に従って決定することができる。ポリオールの平均OH官能価は、例えば2超~6未満の範囲内である。
【0039】
使用可能なポリエーテルポリオールとしては、例えば、カチオン開環によるテトラヒドロフランの重合により得ることが可能なポリテトラメチレングリコールポリエーテルが挙げられる。適切なポリエーテルポリオールとしては、二官能性又は多官能性のスターター分子へのスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及び/又はエピクロロヒドリンの付加生成物も挙げられる。ポリエーテルポリオールとともに、鎖延長剤としてのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを使用するのが通常である。
【0040】
適切なスターター分子の例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、エチレンジアミン、トルエンジアミン、トリエタノールアミン、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、及びそのようなポリオールとジカルボン酸との低分子量ヒドロキシル含有エステルである。
【0041】
使用可能なポリエステルポリオールとしては、とりわけ、ジオール及び更にトリオール及びテトラオールと、ジカルボン酸及び更にトリカルボン酸及びテトラカルボン酸との又はヒドロキシカルボン酸若しくはラクトンの重縮合物が挙げられる。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物又は対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルをポリエステルの製造に使用することも可能である。適切なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、並びに更にプロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール及び異性体、ネオペンチルグリコール、又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートである。さらに、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン、又はトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオールを使用することも可能である。
【0042】
使用可能なポリカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、コハク酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、ドデカン二酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸、クエン酸、又はトリメリト酸が挙げられる。酸源として対応する無水物を使用することも可能である。
【0043】
エステル化されるポリオールの平均官能価が2超である場合、さらに、安息香酸及びヘキサンカルボン酸等のモノカルボン酸を使用することも可能である。
【0044】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールを製造するのに共反応物として使用可能なヒドロキシカルボン酸の例としては、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。適切なラクトンとしては、カプロラクトン、ブチロラクトン、及び同族体が挙げられる。使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、ヒドロキシル含有ポリカーボネート、例えばポリカーボネートジオールが挙げられる。これらを、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、又はホスゲン等の炭酸誘導体と、ポリオール、好ましくはジオールとの反応によって、又は二酸化炭素から得ることが可能である。このようなジオールの例は、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール及びプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール及びブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、及び上述の種類のラクトン変性ジオールである。純粋なポリカーボネートジオールの代わりに、又は純粋なポリカーボネートジオールに加えて、ポリエーテルポリカーボネートジオールを使用することもできる。
【0045】
使用可能なポリエーテルエステルポリオールは、エーテル基、エステル基、及びOH基を含む化合物である。最大12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸が、ポリエーテルエステルポリオールを製造するのに適しており、好ましくは4個超~6個未満の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸が単独で又は混合物で使用される。例としては、スベリン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、ピメリン酸、及びセバシン酸、特にグルタル酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、及びイソテレフタル酸が挙げられる。使用可能なこれらの酸の誘導体としては、例えばそれらの無水物だけでなく、1個超~4個未満の炭素原子を有する低分子量の単官能性アルコールとのそれらのエステル及びモノエステルも挙げられる。
【0046】
好ましくは、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物としては、好ましくは、アジピン酸から誘導される構造単位に加えて、グルタル酸、コハク酸、及び/又はフタル酸、好ましくはグルタル酸及び/又はコハク酸から誘導される構造単位も含む少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオールが使用される。
【0047】
上記定義の式(I)又は式(Ia)の構造単位に加えて、材料のポリマー化合物は、任意に、以下の式:
【化5】
(式中、Rは、二価の炭化水素基、特に二価の芳香族炭化水素基である)のイソシアヌレート構造単位を更に含んでいてもよい。この実施の形態では、このイソシアヌレート構造単位の割合が材料の総重量の40重量%以下である場合に好ましいことが判明した。
【0048】
本発明によるプロセスの一実施の形態において、上記熱分解対象材料は、上記ポリウレタンポリマー含有材料を、それぞれの場合に熱分解対象材料の総重量に対して10.0重量%~80.0重量%、より好ましくは30.0重量%~70.0重量%の総量で含有する。
【0049】
上記ポリマー化合物を含む材料は、好ましくはフォーム、より好ましくはポリウレタンフォームである。材料がポリウレタンフォームの形態で存在する場合、これは更に、軟質ポリウレタンフォーム又は硬質ポリウレタンフォームであることが好ましい。硬質ポリウレタンフォームは、プロセスの工程a)において熱分解対象材料に導入される材料の非常に特に好ましい実施の形態である。
【0050】
上記材料が硬質ポリウレタンフォームの形態で存在する場合、好ましくは、硬質ポリウレタンフォームが、DIN 7726:1982-05に従って、10%圧縮の場合の圧縮荷重時にDIN 53421に従って測定された15kPa超の圧縮応力を有する場合に有利であることが判明した。
【0051】
熱分解対象材料の上記材料が、好ましくは固形粒子の形態(特に粒状混合物の形態)で反応器に導入される場合に有利であることが判明した。上記材料の粒状混合物は、上記材料の多数の緩い固形粒子から形成され、それらの固形粒子には更にいわゆる粒状物が含まれる。粒状物は、粉末の粒状構成要素(粒状物は緩い固形粒子である)、粉塵の粒状構成要素(粒状物は緩い固形粒子である)、顆粒の粒状構成要素(緩い固形粒子は幾つかの粒状物の凝集体である)、及びその他の粒状混合物の粒状構成要素を表す用語である。粒状混合物の流動性は、その粒状混合物が直径16.5mmの出口を有する注入試験用漏斗から自重で自由流動する能力に該当する。
【0052】
好ましくは、固形粒子、より詳細には反応器に導入される上記材料の粒状混合物の緩い固形粒子は、0.01mm~5cm、好ましくは0.1mm~5cmの中央径X50.3(体積平均)を有する。中央粒径X50.3は、篩別することによって、又はRetschのCamsizer粒度分布分析装置を使用することによって決定される。
【0053】
本発明のプロセスの熱分解における熱分解対象材料の計量供給及び処理性は、工程(a)における上記熱分解対象材料が、上記材料に加えて、少なくとも1つのフィラーも含むことによって簡略化することができる。上記フィラーは、熱分解の際のポリウレタンの熱的分解に触媒作用を及ぼさないことが好ましい。よって、フィラーが、好ましくはSiOから選択される、熱分解の際のポリウレタンの熱的分解に対して触媒活性を示さない少なくとも1つの金属酸化物であることが特に好ましい。
【0054】
上記材料を、フィラー、例えば砂と混合して、本発明によるプロセスの連続プロセス制御をより簡略化することが好ましい。特に、反応器内及び計量供給装置から反応器への供給における上記材料の付着が回避される。一実施の形態においては、フィラー及び上記材料を、フィラーと上記材料との体積比が少なくとも0.1:1~10:1である混合物として熱分解対象材料に供給する。
【0055】
熱分解対象材料中に少なくとも1種の触媒が存在することは必須である。この触媒は上記材料の分解反応に影響を与える。適切な触媒は、熱分解温度を低下させ、生成物のスペクトルを所望の生成物に低減し、任意で炭化を最小限に抑えることができる。効率的なプロセスのためには、安価な触媒が好ましい。
【0056】
効率的な触媒は、大掛かりな合成を必要としないため、無機塩、耐火性酸化物、鉱物及び工業用石等の簡易なイオン交換プロセスで任意にイオン交換可能な天然由来材料とすることができる。それらは容易に入手可能であるため、比較的安価である。一方、ゼオライト(ZSM-5、ゼオライト、X、Y等)等の合成触媒は、効果的ではあるが、特別に製造する必要があるため、安価ではない触媒の例である。
【0057】
触媒としての機能に加えて、触媒は熱分解における熱分解対象材料の計量供給及び処理性を簡略化することもできる。触媒を使用すると、この場合に使用するフィラーの量を低減することができる。一実施の形態においては、フィラー及び触媒の総量を、上記材料の量に対する体積比が少なくとも0.1:1~10:1である混合物として熱分解対象材料に供給する。
【0058】
特に好ましい好適な触媒として、熱分解対象材料は少なくとも1つの塩基性触媒を含むことができる。固体塩基性触媒の場合、触媒中の塩基性中心の数及び強さは、フーリエ変換赤外分光法及びCOの昇温脱離(TPD-CO)によって求める、又は標準的な滴定法を使用して求めることができる。
【0059】
熱分解反応において、少なくとも1種の触媒を、アルカリ性無機材料からなる群より選択することが好ましく、上で定義された天然由来材料の群から選択することがより好ましい。これらの無機材料は、耐火性酸化物とすることができる。耐火性酸化物は、300℃~700℃の高温で安定な金属酸化物である。触媒として機能するそのような酸化物には、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、クロム、亜鉛、スズ、及びその他の金属の酸化物、又は酸化アルミニウムと酸化マグネシウム及び/又は酸化カルシウムとの組合せが含まれる。
【0060】
結晶性無機材料には、アルミノシリケート、リン酸シリコンアルミニウム、シリカライト、スピネル、並びにその他には天然ゼオライト及び粘土が含まれる。したがって、上記触媒として特に好適なのは、無機塩、鉱物、金属酸化物、混合酸化物、粘土及びゼオライトからなる群のうち少なくとも1種の化合物である。
【0061】
特に好ましくは、触媒は、酸化物又は混合酸化物の形態の少なくとも1種のアルミニウム酸化物を含み、スピネル構造、ハイドロタルサイト構造、又はγ-Al構造で存在する。
【0062】
適切な触媒は、非常に特に好ましくは、AlとMgOとの混合酸化物である。これは更に、スピネル構造又はハイドロタルサイト構造で存在することが非常に特に好ましい。
【0063】
例えば、触媒がAl混合酸化物であり、かつハイドロカルサイト(hydrocalcite)構造で存在する場合、より高い割合のmMDAが、MDI及び/又はpMDIの熱分解からの熱分解生成物中に存在することが判明した。したがって、この触媒により、より高い割合の二環芳香族アミンを回収することが可能となる。
【0064】
均一触媒及び不均一触媒の両方を使用することができるが、本発明によるプロセスの好ましい実施の形態は、触媒が不均一触媒の形態である。触媒を好ましくは固体粒子の形態で(特に、粒状混合物の形態で)反応器に導入すると有利であることが分かった。使用する不均一触媒は、その固体粒子、より詳細にはその粒状混合物の緩い固体粒子における中央粒径である中央径X50.3(体積平均)が、0.01mm~5cm、好ましくは0.1mm~5cmであることが特に好ましい。中央粒径X50.3は、篩分けにより又はRetsch製のCamsizer粒径分析装置を使用することにより求める。
【0065】
不均一触媒を使用する場合、更に好ましい実施の形態において、触媒粒子が、上記材料の粒子より小さい又は同じ粒径を有することが特に好適であることが分かった。したがって、熱分解対象材料中に存在する触媒の中央粒径が、最大で、その熱分解対象材料中に存在する上記材料の中央粒径に対応することが好ましい。
【0066】
触媒を加える場合、触媒をフィラーと混合する、フィラー上に被覆させる又はフィラーの代わりに使用することができる。
【0067】
本発明によるプロセスにおいて使用する触媒は、炭化材料の堆積物及び他の炭素残渣を形成する傾向があるため、触媒を使用する場合は、触媒を容易に好ましくは排出して連続的に再生することのできる反応器を使用することが好ましい。したがって、固定床反応器の使用よりも、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、移動床、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転円錐反応器又は流動床反応器の使用が好ましい。
【0068】
失活した触媒(例えば、炭化により失活した)は熱分解残渣中に存在するが、反応器から熱分解残渣を排出した後、再生器に供給し、再生後に工程(b)の熱分解対象材料に加えて熱分解反応器へと導入することができる。短い接触時間、触媒と供給流中の成分との集中的な混合及び再生触媒の熱分解ゾーンへの連続的なリサイクルを可能にする反応器が最も好ましい。これは、スクリュー反応器、回転オーブン又は流動床の場合に当てはまるため、これらの反応器が特に好ましい。
【0069】
工程(a)において反応器に導入する熱分解対象材料は、工程(b)に従って少なくとも部分的に分解され、熱分解物及び熱分解残渣が形成される。
【0070】
反応器への導入後、熱分解対象材料を250℃~700℃の範囲の温度に加熱する。本発明によるプロセスの結果の特に成功した改善は、一実施の形態において、導入した熱分解対象材料を250℃~700℃で温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、この熱分解対象材料から得られる熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を、1秒~2時間、好ましくは2分~60分とすることにより達成することができる。この時間の間の反応器内の酸素ガスの温度及び含有量は、工程(b)で規定する値である。
【0071】
本発明のプロセスにおける熱分解対象材料が触媒を含む場合、この触媒は排出された熱分解残渣中に存在する。したがって、プロセスの更なる実施の形態においては、上述の排出された熱分解残渣を、そこに含有される触媒を再生する工程に供給する。
【0072】
これとは独立して、工程(b)において行う反応器からの熱分解物の排出を、反応器を通過する気体流によって又は吸引によって、及びより好ましくは、工程(a)において反応器に導入する上記材料の導入時間と、熱分解物の排出時間との間の時間としての熱分解物の滞留時間を、0.1秒~600秒、好ましくは0.5秒~300秒、より好ましくは0.5秒~200秒とすることによって確保することで良好な結果を達成することができる。
【0073】
この目的のために気体流を反応器に通過させる場合、この気体流用の気体としては、好ましくは、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物から選択される不活性ガスが特に好適である。
【0074】
気体流を使用して熱分解物を排出する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.01m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として固定床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.03m/秒~1m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として流動床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.5m/秒~2m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として噴流反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が5m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。
【0075】
工程(b)における熱分解における分解に対する本発明の条件として、反応器内の温度は250℃~700℃であり、反応器内の酸素ガスの量は、反応器内に存在する気体の総体積に対して、0体積%~2.0体積%である。
【0076】
本発明によると、この酸素ガスの量は、上記熱分解対象材料の上記材料を充填した反応器を、不活性ガス、特に、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物で満たすことによって確立される。不活性ガスを、酸素ガス以外の反応性ガス、特に、メタン、気体状HO、水素ガス、又はこれらの混合物から選択される気体と追加的に混合することもできる。
【0077】
反応器への熱分解対象材料の導入による酸素ガスの侵入を最小限に抑えるために、熱分解対象材料を工程(a)において導入する前に、例えば、反応器の上流の貯蔵容器内で、例えば、ストリッピングガスを用いたストリッピングによって酸素ガスを追い出すことによって、熱分解対象材料から酸素ガスを除去することができる。例えば、不活性ガス、より詳細には、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物を、貯蔵容器内でストリッピングガスとして上から又は下から(好ましくは上から)フリットを介して容器内に通過させ、そして酸素ガスを追い出すように熱分解対象材料に通過させることができる。
【0078】
プロセスの更に好ましい実施の形態においては、工程(b)における絶対圧力は、1.2bar以下である。
【0079】
本発明によるプロセスの好ましい実施の形態においては、工程(b)における温度は、300℃~700℃、好ましくは400℃~600℃である。
【0080】
本発明によるプロセスの更に好ましい実施の形態においては、工程(b)における反応器内の酸素ガスの量は、いずれの場合も反応器内に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下である。
【0081】
本発明によるプロセスの非常に好ましい実施の形態において、第一に、工程(b)における温度は300℃~700℃、より好ましくは400℃~600℃であり、第二に、反応器内の酸素ガスの量は、それぞれの場合に反応器内に存在するガスの総体積に対して0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下である。さらに、第三に、工程(b)における絶対圧力が1.2bar以下であることが更に極めて好ましい。
【0082】
プロセスの好ましい実施の形態は、連続プロセス制御を提供する。このために、連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行う。
【0083】
工程(c)に従って得られた熱分解生成物を、標準的な分離方法、例えば蒸留又は選択的凝縮を使用して後処理し、それにより(i)を得ることができる。
【0084】
本発明のプロセスを、適切に構成された熱分解装置を用いて実施することができる。したがって、本発明は、式(I):
【化6】
(式中、
Qは、8個~70個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の数であり、かつ、
は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有するポリマー化合物の熱分解によって少なくとも1個のアミノ基を有する有機化合物を得るための、熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置と、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える熱分解装置の使用であって、
上記熱分解用の加熱可能な反応器は、250℃~700℃の温度で反応器の温度制御に使用可能な少なくとも1つの加熱要素とともに、熱分解対象材料用の少なくとも1つの入口及び熱分解物用の少なくとも1つの別個の出口も備え、かつ、
計量供給装置及び熱分解用の加熱可能な反応器は、計量供給装置が少なくとも1つの供給導管を介して上記反応器の熱分解対象材料用の入口に接続されるように相互に配置及び構成されており、かつ、
熱分解用の加熱可能な反応器及び熱分解物捕集器は、好ましくはガス状の熱分解物を上記熱分解物用出口から排出し、排出された熱分解物を熱分解物捕集器に導入することが可能であるように互いに流体連通しており、かつ、
少なくとも1つの熱分解物捕集器は、上記捕集器内で上記反応器から排出される熱分解物の温度を250℃未満に低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成するのに使用することが可能な250℃未満の温度で温度制御された少なくとも1つの冷却装置と、冷却により得られる熱分解生成物の捕集及び排出用の少なくとも1つの容器とを備え、かつ、
熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器、及び少なくとも1つの熱分解物捕集器は、これらが同時に作動することができるように相互に配置及び構成されている、使用を更に提供する。
【0085】
プロセスの説明において述べるポリマー化合物も、熱分解に好ましいポリマー化合物とみなされる。
【0086】
本発明によれば、特にアニリン、トルイジン、メチレンジアニリン(mMDA)、ポリメリックメチレンジアニリン(pMDA)、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1個のアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族アミノ化合物を回収するのに上記熱分解装置を使用することが好ましい。
【0087】
上記熱分解装置の加熱可能な反応器に使用される加熱ユニットは、例えば加熱素子、例えば、加熱コイル若しくは加熱プレート、又は気体流を加熱し、加熱した気体流を反応器へと導入する装置とすることができる。
【0088】
好ましい実施の形態においては、反応器は、気体源への少なくとも1つの接続であって、反応器内の好ましくは空塔速度としての流量が0.01m/秒~20m/秒である気体流が、調整器、例えばバルブを介して、反応器を通って熱分解物捕集器へと流れる、接続を追加的に含む。反応器として固定床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.03m/秒~1m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として流動床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.5m/秒~2m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として噴流反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が5m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。
【0089】
気体源からの気体流は、上述の通り反応器に導入する前に、例えば、加熱ユニットによって加熱してもよい。
【0090】
熱分解装置の熱分解物捕集器は、この捕集器内で、上記反応器から排出された熱分解物の温度を50℃未満まで(より好ましくは30℃未満まで)低下させて、熱分解生成物を形成させるのに使用することができる冷却装置を備えることが好ましい。これには、熱交換器の原理に従って作動する冷却ユニットが特に好適である。ここで、熱分解物捕集器を、熱分解物中に存在する熱分解生成物の構成要素を選択的に凝縮する選択的凝縮器として装備することができる。
【0091】
本発明によると、「流体連通」は、システムの部分を互いに接続し、それを介して、任意の物質状態であり得る物質を1つのプラント構成要素から次の構成要素へと輸送することができる装置の一部を意味するものと理解され、例えば、管の形態での供給導管である。
【0092】
本発明によるプロセス及び本発明による装置は、上記の目的の達成に寄与し、プロセスの工程(c)において、熱分解生成物として、少なくとも、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、
(i)0重量%~40重量%の少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族化合物の総量と、
(ii)0重量%から35%重量%の間の1個だけのアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族化合物、好ましくはアニリンの総量と、
(iii)0重量%~40重量%の少なくとも1個の酸素原子を有する少なくとも1個の官能基を含み、かつ窒素原子を有する官能基を含まない少なくとも1種の炭化水素化合物の総量と、
を含み、
(iv)(i)、(ii)、及び(iii)からの重量部の範囲内の重量割合が、(i)、(ii)、及び(iii)からの選択された重量割合と、他の成分の重量割合とを合わせた合計が足して100重量%となるように選択される、組成物を提供する。
【0093】
好ましい実施の形態において、(i)での組成物は、0重量%~40重量%の式(IV):
【化7】
(式中、nは、0~8、特に0~4、より好ましくは0~2の数である)の化合物を含む。
【0094】
更なる好ましい熱分解生成物は、(ii)1個だけのアミノ基を有する芳香族化合物よりも多くの(i)少なくとも2個のアミノ基を有する芳香族化合物を含む。
【0095】
好ましい実施の形態において、(ii)での組成物は、0重量%から35重量%の間のアニリン、トルイジン、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する芳香族アミノ化合物の総量を含む。
【0096】
別の好ましい実施の形態において、熱分解生成物が0重量%から40重量%の間の少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族化合物の総量を含むことが更に有利である。
【0097】
好ましい実施の形態において、(iii)での組成物は、0重量%から40重量%の間の少なくとも1個の酸素原子を有する少なくとも1個の官能基を含み、かつ窒素原子を有する官能基を含まない炭化水素化合物を含む。これらの炭化水素化合物は更に、300g/mol以下、特に250g/mol以下のモル質量を有する化合物から選択されることが特に好ましい。より好ましくは、上記炭化水素化合物は、アセトン、ジメチルジオキサン、プロペン、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、又はテトラプロピレングリコールから選択される。
【0098】
要約すると、限定されるものではないが、本発明の以下の態様1~態様30は更なる実施の形態とみなされるべきであり、それらの特徴は本発明の上記の詳細な説明に従って解釈されるべきである。
【0099】
1. 少なくとも以下の工程:
(a)少なくとも、
i)式(I):
【化8】
(式中、
Qは、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の数であり、かつ、
は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種のポリマー化合物を含む材料と、
ii)上記ポリマー化合物の熱的分解に影響を与える少なくとも1種の触媒と、
を含む熱分解対象材料を反応器へと導入する工程と、
(b)少なくとも工程(a)で導入された熱分解対象材料の材料を反応器内で250℃~700℃の温度にて分解して、熱分解物としての気相生成物及び非気相熱分解残渣を得る工程と、
ここで、
(i)上記分解中に、反応器内の酸素ガスの量は、反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)上記分解中に、熱分解物は反応器から排出され、かつ、
(iii)上記熱分解残渣は反応器から排出される;
(c)排出された熱分解物を250℃未満の温度に冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意に、熱分解生成物を後処理する工程と、
を含む、熱分解プロセス。
【0100】
2. 反応器は、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器、流動床反応器、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転管反応器、及びドラム反応器から選択される、特に、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器(特に、好ましくは内部熱交換管を備えた連続床交換式のもの(シャフト反応器))、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転管反応器又は流動床反応器から選択されることを特徴とする、態様1に記載のプロセス。
【0101】
3. 工程(b)における温度は、300℃~700℃、好ましくは400℃~600℃であることを特徴とする、態様1又は2に記載のプロセス。
【0102】
4. 工程(b)における絶対圧力は、1.2bar以下であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0103】
5. 導入した熱分解対象材料を250℃~700℃に温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、該熱分解対象材料から生じる熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を1秒~5時間、好ましくは2分~120分とすることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0104】
6. 反応器からの熱分解物の排出を、反応器を通過するガス流又は吸引によって、好ましくは、熱分解物の形成時間と、反応器から得られる熱分解物の排出時間との間の期間としての熱分解物の滞留時間を0.1秒~600秒、好ましくは0.5秒から300秒の間、より好ましくは0.5秒~200秒とすることによって確保することを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0105】
7. 反応器からの熱分解物の排出を、反応器を通過する気体流によって確保し、反応器内での気体流の空塔速度としての流量を0.01m/秒~20m/秒の範囲とすることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0106】
8. 反応器内の熱分解残渣は固体であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0107】
9. 連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行うことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0108】
10. 工程(b)における反応器内の酸素ガスの量は、いずれの場合も反応器内に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0109】
11. 不活性ガス、特に窒素、アルゴン、CO、NO、又はそれらの混合物を、上記材料が充填された反応器に通過させることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0110】
12. 不活性ガスを、酸素ガス以外の反応性ガス、特に、メタン、気体状HO、水素ガス、又はこれらの混合物から選択される気体と追加的に混合し得ることを特徴とする、態様11に記載のプロセス。
【0111】
13. ポリウレタン材料のポリマー化合物が、以下の式:
【化9】
(式中、Rは、二価の炭化水素基、特に二価の芳香族炭化水素基である)のイソシアヌレート構造単位を更に含むことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0112】
14. ポリマー化合物は、式(Ia):
【化10】
(式中、nは、0~8、特に0~4、より好ましくは0~2の数であり、かつ-は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を含むことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0113】
15. ポリマー化合物は、少なくとも、
i1)8個~70個の炭素原子を有する、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する炭化水素単位に結合した少なくとも2個~10個、特に2個~8個、より好ましくは2個~4個のイソシアネート基を含む少なくとも1種の有機イソシアネート化合物と、
i2)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物と、
の反応によって得られることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0114】
16. 少なくとも1種の有機イソシアネート化合物は、上記炭化水素単位として、上述の炭素原子数を有し、かつ脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される単位を含むことを特徴とする、態様15に記載のプロセス。
【0115】
17. 上記有機イソシアネート成分として、式(II):
Q(NCO) (II)
(式中、nは、2~4、好ましくは2又は3の数であり、かつQは、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、又は8個~70個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基から選択される基である)に対応する少なくとも1種の化合物が選択されることを特徴とする、態様15又は16に記載のプロセス。
【0116】
18. 対応する式(I)において、かつ態様18については式(II)においても、Qが、少なくとも2個のアルキレン架橋芳香族基、好ましくは少なくとも2個のアルキレン架橋フェニル基、特に2個のメチレン架橋フェニル基を含むことを特徴とする、態様1~17のいずれか1つに記載のプロセス。
【0117】
19. 有機ポリイソシアネート成分として、式(III):
【化11】
(式中、nは、0~8、特に0~4、より好ましくは0~2の数である)の少なくとも1種のポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートが選択されることを特徴とする、態様15~18のいずれか1つに記載のプロセス。
【0118】
20. 少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、又はそれらの混合物、好ましくは、アジピン酸から誘導される構造単位に加えて、グルタル酸、コハク酸、及び/又はフタル酸、好ましくはグルタル酸及び/又はコハク酸から誘導される構造単位も含む少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオールから選択されることを特徴とする、態様15~19のいずれか1つに記載のプロセス。
【0119】
21. 材料が、熱分解対象材料中に、硬質ポリウレタンフォームとして、好ましくはDIN 7726:1982-05に従って、10%圧縮の場合の圧縮荷重時にDIN 53421に従って測定された15kPa超の圧縮応力を有する硬質ポリウレタンフォームとして存在することを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0120】
22. 上記材料を固体粒子の形態、特に、粒状混合物の形態で反応器へと導入することを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0121】
23. 反応器に導入する上記材料の固体粒子、より詳細には粒状混合物の緩い固体粒子が、0.01mm~5cmの中央径X50.3(体積平均)を有することを特徴とする、態様22に記載のプロセス。
【0122】
24. 触媒が、無機塩、鉱物、金属酸化物、混合酸化物、粘土、及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種の化合物、好ましくはAlとMgOとの混合酸化物であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0123】
25. 触媒が塩基性触媒であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0124】
26. 触媒が不均一触媒であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0125】
27. 上記熱分解対象材料が、該熱分解対象材料の総重量に対する総量で、10.0重量%~80.0重量%、より好ましくは30.0重量%~70.0重量%の上記材料を含有することを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0126】
28. 式(I):
【化12】
(式中、
Qは、8個~70個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の数であり、かつ、
は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有するポリマー化合物の熱分解によって少なくとも1個のアミノ基を有する有機化合物を得るための、熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置と、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える熱分解装置の使用であって、
上記熱分解用の加熱可能な反応器は、250℃~700℃の温度で反応器の温度制御に使用可能な少なくとも1つの加熱要素とともに、熱分解対象材料用の少なくとも1つの入口及び熱分解物用の少なくとも1つの別個の出口も備え、かつ、
計量供給装置及び熱分解用の加熱可能な反応器は、計量供給装置が少なくとも1つの供給導管を介して上記反応器の熱分解対象材料用の入口に接続されるように相互に配置及び構成されており、かつ、
熱分解用の加熱可能な反応器及び熱分解物捕集器は、好ましくはガス状の熱分解物を上記熱分解物用出口から排出し、排出された熱分解物を熱分解物捕集器に導入することが可能であるように互いに流体連通しており、かつ、
少なくとも1つの熱分解物捕集器は、上記捕集器内で上記反応器から排出される熱分解物の温度を250℃未満に低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成するのに使用することが可能な250℃未満の温度で温度制御された少なくとも1つの冷却装置と、冷却により得られる熱分解生成物の捕集及び排出用の少なくとも1つの容器とを備え、かつ、
熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器、及び少なくとも1つの熱分解物捕集器は、これらが同時に作動することができるように相互に配置及び構成されている、使用。
【0127】
29. 特にアニリン、トルイジン、メチレンジアニリン(mMDA)、ポリメリックメチレンジアニリン(pMDA)、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1個のアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族アミノ化合物を回収するのに熱分解装置を使用することを特徴とする、態様28に記載の使用。
【0128】
30. 少なくとも、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、
(i)0重量%~40重量%の少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族化合物の総量と、
(ii)0重量%から35%重量%の間の1個だけのアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族化合物、好ましくはアニリンの総量と、(iii)0重量%から40重量%の間の少なくとも1個の酸素原子を有する少なくとも1個の官能基を含み、かつ窒素原子を有する官能基を含まない炭化水素化合物と、
(iii)0重量%~40重量%の少なくとも1個の酸素原子を有する少なくとも1個の官能基を含み、かつ窒素原子を有する官能基を含まない少なくとも1種の炭化水素化合物の総量と、
を含み、ここで、
(iv)(i)、(ii)、及び(iii)からの重量部の範囲内の重量割合が、(i)、(ii)、及び(iii)からの選択された重量割合と、他の成分の重量部とを合わせた合計が足して100重量%となるように選択される、組成物。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0129】
a)熱分解対象材料の準備:
硬質ポリウレタンフォームを、表1に示される成分から標準的プロセスによって製造した。
【0130】
【表1】
【0131】
様々な熱分解対象材料P1~P3を準備するのに、1gの細砕した硬質ポリウレタンフォームを、4gの表2に列挙される触媒粉末の1つと均質に混合した。熱分解対象材料P4は、比較として触媒を含まなかった。
【0132】
【表2】
【0133】
b)熱分解の手順
硬質ポリウレタンフォームの熱分解を、Nが貫流された25mlの容量を有する固定床反応器内で500℃にて実施した。
【0134】
反応器内の窒素ガス流の流速(空塔速度)は0.07m/秒であった。表1による熱分解対象材料を反応器に導入した。導入されたポリウレタン材料の滞留時間は30分であった。反応器を500℃に加熱し、次いでこの温度で30分間保持した。反応器の下流には、得られた熱分解ガスから液体成分を分離するのに3つの凝縮器が設置されていた。得られた炭化材料の含有量を熱分解後の触媒粉末の秤量によって決定した。3つの凝縮器の下流のガスをオンラインIRによって特性評価した。油の形態で得られた熱分解生成物の成分をGC-FIDによって決定した。これをSupelcoのSPB50カラムを備えたAgilent 7890Aを使用して行った。熱分解油をアセトンで1:50又は1:100に希釈した。
【0135】
【表3】
【0136】
触媒C2を含む熱分解生成物P2を使用して、500℃での熱分解実験及び470℃での熱分解実験を行った。得られたアミンの分布を比較した(表4を参照)。これにより、470℃で熱分解生成物中により多くのメチレンジアニリン(mMDA)が得られることが明らかになった。
【0137】
【表4】
【国際調査報告】