(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240514BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240514BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240514BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240514BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240514BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K38/17 100
A61K48/00
A61K35/12
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575365
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2022097854
(87)【国際公開番号】W WO2022258011
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110654827.4
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522200764
【氏名又は名称】グアンドン ファポン バイオファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG FAPON BIOPHARMA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フオ,ヨンティン
(72)【発明者】
【氏名】フ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ディー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チェ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,リーシェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ゴング,チュンシー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084DA39
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC02
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、生物医薬技術分野に属し、具体的には、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片及びその使用を提供する。当該抗体は、効率高く且つ特異的にPD-1と結合することができ、PD-1とPD-L1やPD-L2との結合を効果的に阻害することができる。したがって、当該抗体又はその抗原結合性断片、及びその関連する核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物は、PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物を製造することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖CDR領域と重鎖CDR領域を含み、重鎖CDR領域がHCDR1、HCDR2、HCDR3からなり、軽鎖CDR領域がLCDR1、LCDR2、LCDR3からなり、HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号8~10に示される如きで、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きである抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片であって、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3~5のいずれかに示される如きであることを特徴とする抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6~7のいずれかに示される如きであることを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号4、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号5、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示されるる如きであることを特徴とする請求項2に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記抗体は重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含有し、前記重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE又はIgMのうちのいずれか1種又は複数種であり、前記軽鎖定常領域はκ鎖又はλ鎖であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記抗体はキメラ抗体又は多重特異性抗体であり、前記抗原結合性断片はF(ab’)
2、Fab、scFv、Fv及びシングルドメイン抗体のうちのいずれか1種又は複数種であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片をコードし、
好ましくは、前記核酸は、前記抗体又はその抗原結合性断片の重鎖可変領域をコードする第1核酸、及び/又は、前記抗体又はその抗原結合性断片の軽鎖可変領域をコードする第2核酸を含むことを特徴とする核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を携帯することを特徴とするベクター。
【請求項8】
請求項6に記載の核酸を携帯し、請求項7に記載のベクターを含有し、又は請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片を発現できることを特徴とする細胞。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター又は請求項8に記載の細胞を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター、請求項8に記載の細胞又は請求項9に記載の医薬組成物の、PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用。
【請求項11】
被験者に有効量の請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター、請求項8に記載の細胞又は請求項9に記載の医薬組成物を摂取させることを含むことを特徴とするPD-1媒介性疾患又は病状を治療する方法。
【請求項12】
治療するための請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター、請求項8に記載の細胞又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター、請求項8に記載の細胞又は請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬技術分野に属する。さらに具体的には、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム死因子-1(PD1)はCD28ファミリーのメンバーであり、活性化B細胞、T細胞、骨髄系細胞に発現している。ヒトPD1は、2q37.3に位置する、全長9.6kbの遺伝子Pdcd1にコードされており、5つのエクソンと4つのイントロンからなり、上流に663bpのプロモーターを持つ。PD1は、55KDaのI型膜貫通タンパク質で、分子構造が細胞外領域、膜貫通領域、細胞内領域からなり、細胞外領域には1つの免疫グロブリン可変領域のIgVドメインが含まれ、細胞内領域には免疫受容体チロシン依頼性抑制モチーフ(ITIM)と免疫受容体チロシン依頼性スイッチモチーフ(ITSM)が含まれる。PD-1の細胞外領域のアミノ酸配列はCTLA-4と24%の同一性を有し、CD28と28%の同一性を有する。PD-1は、T細胞が活性化されると、主にITIMを介してチロシンホスホリパーゼSHP2を募集、下流のエフェクター分子の脱リン酸化を導く。
【0003】
PD-1はPD-L1とPD-L2という2つのリガンドがある。PD-L1とPD-L2はともにB7ホモログであり、PDL遺伝子はヒト染色体の9P24.2遺伝子座にあり、42kbの大きさであり、その分子構造は、いずれも、1つの免疫グロブリン様可変領域ドメイン、1つの定常領域様ドメイン、1つの膜貫通領域、1つの短い細胞質尾部を含む。
【0004】
PD-1はPD-L1とPD-L2に結合した後、T細胞の活性化をダウンレギュレートすることができる。PD-L1は、多くの腫瘍細胞の表面に発現し、これらの腫瘍細胞としては、肺がん、胃がん、肝臓がん、食道がん、腎がん、卵巣がん、子宮頸がん、乳がん、皮膚がん、結腸がん、膀胱がん、グリオーマ、頭頸部がん、口腔扁平上皮がんが含まれる。そして、これらのがんの周囲に、PD-L1を発現する多数のCD8+T細胞が発見され、臨床結果の統計から、腫瘍細胞上のPD-L1高発現レベルが癌患者の予後不良と関連することが示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存の抗体がPD-1と結合する親和性及び特異性は高くないという欠点及び不足を克服することであり、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片及びその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片を提供し、前記抗体は軽鎖CDR領域と重鎖CDR領域を含み、重鎖CDR領域がHCDR1、HCDR2、HCDR3からなり、軽鎖CDR領域がLCDR1、LCDR2、LCDR3からなり、HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号8~10に示される如きで、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きで、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3~5のいずれかに示されるる如きである。
【0007】
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6~7のいずれかに示される如きである。
【0008】
本発明は、さらに、前記抗体又はその抗原結合性断片に関連する核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物に関する。
【0009】
本発明は、さらに、前記抗体又はその抗原結合性断片、及びその関連する核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物のPD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用に関する。
【0010】
本発明は、さらに、PD-1媒介性疾患又は病状を治療する方法に関し、当該方法は、被験者に有効量の上記抗体又はその抗原結合性断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物を摂取させることを含む。
【0011】
本発明は、さらに、治療するための上記抗体又はその抗原結合性断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物に関する。
【0012】
本発明は、さらに、PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための上記抗体又はその抗原結合性断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】異なる濃度のPD-1-112-C2がIL-2/IFN-γ分泌に対する影響の結果図である。
【
図2】異なる濃度のPD-1-112-C2がT細胞の増殖とT細胞の細胞因子IL-2分泌に対する影響の結果図である。
【
図3】異なる濃度のPD-1-112-C2がT細胞の増殖とT細胞の細胞因子IFN-γ分泌に対する影響の結果図である。
【
図4】抗PD-1ヒト化抗体c53が腫瘍体積に対する影響の結果図である。
【
図5】抗PD-1ヒト化抗体c53がマウス生存期間に対する影響の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施例を用いて本発明をさらに説明し、実施例は本発明に対していかなる形態でも限定を構成するものではない。特に説明がない限り、本発明で採用される試薬、方法及び装置は当技術分野の通常の試薬、方法及び装置である。
【0015】
特に説明がない限り、以下の実施例で使用される試薬及び材料はいずれも市販品である。
【0016】
本発明は、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片に関し、前記抗体は軽鎖CDR領域と重鎖CDR領域を含み、重鎖CDR領域がHCDR1、HCDR2、HCDR3からなり、軽鎖CDR領域がLCDR1、LCDR2、LCDR3からなり、HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号8~10に示される如きで、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きで、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3~5のいずれかに示される如きで、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6~7のいずれかに示される如きである。
【0017】
本発明は、Kabat番号システムを用いてCDR領域を標示したが、他の方法で標示されたCDR領域も本発明の請求範囲に含まれる。
【0018】
一部の実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号4、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号5、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示される如きである。
【0019】
一部の実施形態において、前記抗体は重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含有し、前記重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE又はIgMのうちのいずれか1種又は複数種であり、前記軽鎖定常領域はκ鎖又はλ鎖である。
【0020】
一部の実施形態において、前記重鎖定常領域と軽鎖定常領域の種族はヒト、鼠又はサルから選択される。
【0021】
一部の実施形態において、前記抗体はキメラ抗体又は多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)である。
【0022】
本発明において、用語「多重特異性抗体」は、1つには拘らないない抗原又はエピトープを標的とする抗原結合タンパク質又は抗体である。
【0023】
本発明において、用語「二重特異性抗体」は、多重特異性抗原結合タンパク質又は多重特異性抗体であり、ハイブリドーマの融合又はFab’断片のライゲーションを含むがこれらに限定されない様々な方法によって産生することができる。例えば、SongsivilaiとLachmann、1990、Clin.Exp.Immunol.79:315-321;Kostelnyら、1992、J.Immunol.148:1547-1553を参照下さい。二重特異性抗原結合タンパク質又は抗体の2つの結合部位は、2つの異なるエピトープに結合し、前記エピトープは、同じあるいは異なるタンパク質標的に存在する。
【0024】
本発明において、用語「特異性結合」又は類似する表現とは、抗体又はその抗原結合性断片の予め決定された抗原におけるエピトープへの結合を指す。一般に、抗体又はその抗原結合性断片は、約10-6M未満、例えば、約10-7M未満、約10-8M未満、約10-9M未満又は約10-10M未満若しくはさらに小さい親和力(KD)で結合する。KDとは解離速度と結合速度の比(koff/kon)を指し、当該量は当業者によく知られる方法で測定することができる。
【0025】
一部の実施形態において、前記抗原結合性断片は、F(ab’)2、Fab、scFv、Fv及びシングルドメイン抗体のうちのいずれか1種又は複数種である。
【0026】
本発明において、用語「F(ab’)2」は、2本の軽鎖と、CH1とCH2ドメインの間の定常領域の部分を含む2本の重鎖とを含み、それによって2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成する。F(ab’)2断片は、2本の重鎖の間のジスルフィド結合によって一緒に保持された2つのFab'断片からなる。
【0027】
本発明において、用語「Fab」は、1本の軽鎖、CH1及び1本の重鎖の可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0028】
本発明において、用語「scFv」は、重鎖と軽鎖可変領域とがフレキシブルリンカーによって結合され、一本鎖のポリペプチド鎖(それが抗原結合領域を形成する。)が形成されるFv分子である(例えば、Birdら、Science.242:423-426(1988)及びHustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90:5879-5883(1988)を参照)。
【0029】
本発明において、用語「Fv」は、重鎖と軽鎖からの可変領域を含むが、定常領域を欠けている。
【0030】
本発明において、用語「シングルドメイン抗体」は、1つの重鎖可変領域(VHH)と2つの通常のCH2とCH3領域のみを含むが、人工的に改造された一本鎖抗体(scFv)のように容易に互いに付着したり、塊になったりさえしない。さらに重要なことは、個別にクローニングされ発現されたVHH構造は、元の重鎖抗体に相当する構造安定性及び抗原との結合活性を有し、標的抗原と結合可能であることが知られている最小単位であるということである。
【0031】
本発明は、さらに、前記抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片をコードする核酸に関する。
【0032】
好ましい実施形態において、前記核酸は、前記抗体又はその抗原結合性断片の重鎖可変領域をコードする第1核酸、及び/又は、前記抗体又はその抗原結合性断片の軽鎖可変領域をコードする第2核酸を含む。
【0033】
本発明において、核酸は、一般にRNA又はDNAであり、核酸分子は、一本鎖でもよいし二本鎖でもよいが、二本鎖DNAであることは好ましい。核酸が別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、核酸は「作動可能に連結」される。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響を与える場合に、プロモーター又はエンハンサーは前記コード配列に作動可能に連結される。それがベクターに接続される場合、DNAを使用することが好ましい。また、抗体が膜タンパク質であるため、核酸は一般にシグナルペプチド配列を備える。
【0034】
本発明は、さらに、前記核酸を携帯するベクターに関する。
【0035】
本発明において、用語「ベクター(vector)」は、ポリヌクレオチドをその中に挿入できる核酸送達ツールである。挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質をベクターが発現させることができる場合に、当該ベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターを形質転換、形質導入又はトランスフェクションによりホスト細胞に導入することで、それに携帯する遺伝物質エレメントをホスト細胞において発現することができる。ベクターは当業者に周知されており、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体(例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC))、ファージ(例えば、λファージ又はM13ファージ)、動物ウイルスなどを含むが、それらに限定されない。ベクターとして使用できる動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)を含むが、それらに限定されない。
【0036】
本発明は、さらに、細胞に関し、前記細胞は前記核酸を携帯し、前記ベクターを含有し、又は前記抗体又はその抗原結合性断片を発現することができる。
【0037】
本発明は、さらに、医薬組成物に関し、前記組成物は前記抗体又はその抗原結合性断片、前記核酸、前記ベクター又は前記細胞を含有する。
【0038】
本発明において、用語「医薬組成物」とは、活性成分の生理活性が有効であることが許される形で存在し、且つ前記組成物が投与される対象に対して容認できない毒性を有する追加の成分を含まないものである。
【0039】
一部の実施形態において、前記医薬組成物は、さらに、薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤を含む。
【0040】
本発明において、用語「薬学的に許容されるベクター」は、抗体の保管期限又は有効性を延長するための、生理学的に適合するいかなる及びあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含むことができる。
【0041】
また、前記抗体又はその抗原結合性断片、前記核酸、前記ベクター、前記細胞又は前記医薬組成物のPD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用も、本発明の請求範囲内に含まれるべきである。
【0042】
一部の実施形態において、前記医薬組成物又は薬物は注射に適した形態である。
【0043】
好ましい実施形態において、前記医薬組成物又は薬物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射による投与に適した形態である。
【0044】
[発明の効果]
【0045】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0046】
本発明に提供された抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、CHO-hPD1細胞、CHO-cyno細胞及び活性化されたPBMCと高い親和性で結合することができ、その親和性が陽性対照と比較して有意に向上し、効率高く且つ特異的にPD-1と結合することができ、リガンドPD-L1/PD-L2とCHO-hPD1との結合を効果的に阻害することができ、MLRでは、PD-1とリガンドとの結合を阻害し、PD-1シグナル伝達経路を抑制することができ、それによってT細胞の増殖とIL-2、IFN-γサイトカインの分泌を促進する。したがって、当該抗体又はその抗原結合性断片、及びその関連する核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物は、PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用の将来性が広い。
【実施例】
【0047】
実施例1 抗PD-1抗体の製造
1.イムノゲン
ヒトPD-1配列(NCBI NP 005009)を人工的に合成し、上流プライマー:5’-CCGCAAGCTTGCCGCCACCATG-3’(配列番号1)、下流プライマー:5’-CCGGAATTCTCATTAATGGTGATGGTGATGATGCTGGAACTGGCCGGCAGGTC-3’(配列番号2)で、細胞外ドメインをPCRで増幅し、Hind IIIとEcoRIによる二重消化後、pCDNA3.4A真核発現系にクローニングし、このプラスミドを293細胞にトランスフェクトし、上清を採取して精製し、ヒトPD-1組換えタンパク質(hPD-1)を得た。
【0048】
2.動物を免疫すること
125ugの濃度1.23mg/mlのhPD-1組換えタンパク質を抗原として、同量の免疫アジュバントであるフロイントアジュバント(Sigma-Aldrich F5881)と混合し、6週齢の雌性BAL b/Cマウス5匹に皮下免疫し、マウス1匹あたりの抗原免疫量は25ugであった。初回免疫後、同量のブースター免疫を週1回行った。合計5回の免疫後、尾部採血で免疫反応をモニターした。FACSスクリーニング(後述)により、十分な抗hPD-1免疫グロブリン滴定量を有するマウスを融合に用いた。抗原による腹腔内ブースター免疫の3日後、マウスを処刑し、脾臓を摘出して細胞融合を行った。
【0049】
3.抗hPD-1抗体を産生するBAL b/Cマウスの選択
抗hPD-1抗体を産生するBAL b/Cマウスを選択するために、免疫されたマウス血清をFACSでテストした。hPD-1組換えタンパク質免疫マウスからの血清希釈液を、hPD1がトランスフェクトされたCHO細胞と4℃で30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄後、0.4ug/mlのPEヤギ抗マウスIgG(Biolegend 405307)を加え、4℃で30分間インキュベートした。PBSで3回洗浄後、サンプルをBeckman Coulter社のフローサイトメーター(CytoFLEX A00-1-1102)で検出し、hPD1がトランスフェクトされたCHO細胞と結合できるかを確認し、抗hPD-1抗体を産生するBAL b/Cマウスをスクリーニングし、次に細胞融合を行った。
【0050】
4.hPD-1に対するマウスモノクローナル抗体ハイブリドーマの生成
免疫されたBAL b/Cマウスの脾臓細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させ、得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体に対してスクリーニングした。PEG 1500(Roche 10783641001)を用いて、免疫されたマウスからの脾臓細胞の単細胞懸濁液を、5分の1の数且つ免疫グロブリンを分泌しないマウス骨髄腫細胞(SP2/0、ATCC CRL1581)と細胞融合させた。融合した細胞を96ウェル細胞培養プレートに約1×105個/ウェルで広げ、インキュベーター(Panasonic MCO-18AIC)に入れ、培養条件は37℃、5%CO2であった。その後、HAT選択培地にて約1週間培養し、前記培地は、1640培地に1×ペニシリン-ストレプトマイシン二重抗生剤(Gibco 15140122)、1×HAT(Sigma CRLP-7185)及び20%ウシ胎児血清(Royacel RY-F11-01)が含まれた。1週間後、HAT培地をHT培地(1×ペニシリン-ストレプトマイシン二重抗生剤(gibco 15140122)、1×HT(gibco 11067030)及び20%ウシ胎児血清(Royacel RY-F11-01)を含む1640培地)に交換して培養し、FACSで融合プレートの細胞培養上清を検測し、hPD-1タンパク質結合可能な抗体を分泌するハイブリドーマをスクリーニングした。hPD-1タンパク質結合可能な抗体を分泌するハイブリドーマを再度プレートに敷き、再度スクリーニングした。スクリーニングされたhPD-1タンパク質抗体結合が陽性であったハイブリドーマは、限界希釈法により少なくとも2回サブクローニングした。その後、サブクローンを生体外培養で安定化させ、少量の抗体を生成してさらなる解析を行った。ハイブリドーマクローンPD1-112-C2が次の分析のために選択された。
【0051】
実施例2 抗PD-1マウスモノクローナル抗体の親和性の特性評価
常法に従って、組換え技術を用いて組換えヒトPD-1を細胞表面に発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)細胞系(CHO-hPD1)、サルPD1(Uniprot:B0LAJ2)を発現するCHO細胞系(CHO-cynoPD1)、及びマウスPD1(Uniprot:Q02242)を発現するCHO細胞系(CHO-mousePD1)を製造し、これらの細胞系は、フローサイトメトリー(FCM)で抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2の結合特性評価を測定することに使用された。
【0052】
抗PD-1マウスモノクローナル抗体とCHO-hPD1との結合を評価するために、96ウェルプレートに2×105 CHO-hPD1細胞と濃度勾配で希釈した(初期濃度が10μg/mlで、3倍勾配希釈された)抗PD-1マウスモノクローナル抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で1回洗浄し、PE標識抗マウスIgG(Fc)Ab(Biolegend)蛍光二次抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PBSに再懸濁した。その後、細胞懸濁液をCytoFlex(Beckmanフローサイトメーター)によるフローサイトメトリー解析に供し、染色の平均蛍光強度(MFI)によって細胞に結合した抗体の量を測定した。同じ方法で、この抗PD-1マウスモノクローナル抗体とCHO-cyno細胞、CHO-mousePD1(本発明では「CHO-mPD1」と略記することがある。)細胞との結合を評価した。
【0053】
結果は表1に示すように、データから、抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2は、いずれも比較的高い親和性でCHO-hPD1細胞及びCHO-cyno細胞と結合することができ、同時にマウスモノクローナル抗体はすべてCHO-mousePD1細胞と結合しないことが示された。
【0054】
【0055】
実施例3 抗PD-1抗体と活性化されたPBMCとの結合
新鮮なヒト末梢血単核球(PBMC)は、PHA(Sigma)の刺激下で、リンパ球が活性化して増殖され、3日目にPD1を最も多く発現させることができ、PD-1抗体と活性化されたリンパ球が自然に発現するPD1との結合実験を行うことができる。
【0056】
新鮮なヒト末梢血から、リンパ単離液による勾配遠心方法でPBMCを獲得し、1×106細胞/mlの密度に調整してT75に接種し、同時に最終濃度1μg/mlのPHA-L(Sigma)を加えてリンパ球の増殖を刺激し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で3日間放置した後、細胞懸濁液を取って、遠心分離によって上清を除去し、緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、96ウェルU-プレートに2×105細胞/ウェルで加え、続いて30μg/mlから3倍勾配希釈された合計10個の濃度勾配の抗PD1抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、300gで5分間遠心分離し、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSに再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリーで分析し、PBMCに結合した抗体の量を検出した。
【0057】
結果は表1に示すように、抗PD1抗体は活性化されたリンパ球に高い親和性で結合した。
【0058】
実施例4 抗PD-1マウスモノクローナル抗体の結合特異性
抗PD-1マウスモノクローナル抗体は、PD-1に対する抗体の結合の特異性を確認するために、4つの異なるCD28ファミリーメンバータンパク質と結合させた。標準的なELISA法を用いて、濃度1μg/mlのPD-1、CD28、CTLA-4、ICOS(ACRO)をELISAプレートに固定化し、濃度10μg/mlの抗ヒトPD-1マウスモノクローナル抗体を加え、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗マウスIgGを二次抗体(Sigma)として用いた。TMBで発色し、終止した後、OD450値をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0059】
結果は表2に示すように、抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2は、いずれもPD-1に特異的に結合するが、CD28ファミリーの他のメンバーには結合しない。
【0060】
【0061】
実施例5 バイオレイヤー干渉(BLI)法での抗ヒトPD-1マウスモノクローナル抗体の親和性測定
ForteBio(Octet Qke)親和性測定:濃度5μg/mlのPD-1-his(ACRO)組換えタンパク質をHISIKバイオセンサーに120秒間ロードし、次にロードしたセンサーを標準緩衝液(PBST、PBS+0.02% Tuween20)で120秒間平衡化し、その後センサーを抗PD-1マウスモノクローナル抗体希釈液の中に移し180秒間放置して結合速率を測定し、その後標準緩衝液に移し20分間放置して解離速率を測定した。最終的な解析は動力学モデルを用いて行った。
【0062】
データ処理の結果は表3に示す。
【0063】
【0064】
実施例6 抗PD-1マウスモノクローナル抗体のリガンドPD-L1/PD-L2とCHO-hPD1との結合に対する阻害
フローサイトメトリーで、抗PD-1マウスモノクローナル抗体が、リガンドと、トランスフェクトしたCHO細胞の表面で安定に発現したPD-1への結合を阻害する能力を解析した。実験に使用したリガンドタンパク質は、組み換えPD-L1/PD-L2細胞外セグメントにヒトIgG1 Fcセグメントを融合したタンパク質:PD-L1-hFc(ACRO)、PD-L2-hFc(ACRO)であった。
【0065】
CHO-PD1細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、密度を2×106細胞/mlに調整し、100μl/ウェルの細胞懸濁液を96ウェルU-プレートに加え、300gで5分間遠心分離後、上清を除去した。
【0066】
その後のプロセスは、2つの阻害モードで実施できる。モード1では、細胞ウェルに濃度3μg/mlのPD-L1-hFc/PD-L2-hFcを加え、4℃で30分間インキュベートした後、30μg/mlから3倍勾配希釈された合計10個の濃度勾配の抗PD-1マウスモノクローナル抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした。モード2では、細胞ウェルに、30μg/mlから3倍勾配希釈された合計10個の濃度勾配の抗PD-1マウスモノクローナル抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、濃度3μg/mlのPD-L1-hFc/PD-L2-hFcタンパク質を加え、4℃で30分間インキュベートした。
【0067】
細胞を300gで5分間遠心分離し、緩衝液で1回洗浄した後、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSで再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリー分析で細胞に結合したリガンドタンパク質の量を検出し、PD-1抗体結合阻害のIC50値を算出した。
【0068】
結果は表4に示すように、抗PD-1マウスモノクローナル抗体:PD-1-112-C2は、二つのモードのいずれにおいても、PD-L1/PD-L2と細胞CHO-PD1との結合を有効に阻害することができる。
【0069】
【0070】
実施例7 抗PD-1抗体のSEBで刺激されたPBMC細胞のサイトカイン放出に対する影響
本実施例では、夜通し培養した末梢血単核球(PBMC)を、スーパー抗原である黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)の添加によって刺激したときの、抗PD-1抗体の存在下又は非存在下でのサイトカイン分泌の影響について検出した。
【0071】
新鮮な末梢血単核球(PBMC)を10%FBS含有X-VIVO 15培地(LONZA)に再懸濁し、T25フラスコに加え、37℃、5%CO2で夜通し培養した。翌日、懸濁細胞を採取し、遠心分離後、新鮮なX-VIVO(10%FBSを含有する。)培地に再懸濁し、最終濃度200ng/mlのSEBスーパー抗原(Toxin technology)を添加した後、96ウェルフラットプレートに1ウェルあたり1×105細胞を添加し、同時に濃度の異なる抗PD-1抗体を添加した。さらにアイソタイプコントロール抗体(mIgG1アイソタイプコントロール抗体(Biolegend);hIgG4アイソタイプコントロール抗体(Biolegend))を設置し、抗体対照ウェルはなかった。3日後、サンプルウェルからサンプルを採取し、IL2/IFN-γ Human Uncoated ELISA Kit(eBioscience)キットを用いてIL-2/IFN-γレベルを測定した。
【0072】
濃度の異なるPD-112-C2がIL-2/IFN-γ分泌に対する影響の結果は
図1に示し、抗PD-1抗体は濃度依存的にIL-2/IFN-γ分泌を向上させた。これらの結果は、SEBスーパー抗原で刺激されたPBMCでは、抗PD-1抗体であるPD-1-112-C2がT細胞によるサイトカイン分泌をさらに促進することが分かる。
【0073】
実施例8 抗PD-1抗体の混合リンパ球反応における影響
混合リンパ球反応(MLR)において、抗PD-1抗体存在の有無は、PD1シグナルが阻害された状況でのT細胞の増殖状況とT細胞のサイトカイン分泌レベルを証明することができる。
【0074】
CD14 MicroBeads,human(Miltenyi)を用いて新鮮なPBMCからCD14+単球(monocyte)を単離し、GM-CSF/IL-4の存在下で6日間誘導した後、TNF-αを添加して、3日間後DCの成熟を誘導した。実験当日、EasySep(商標) Human T Cell Enrichment Kit(StemCell)を用いてPBMC中のT細胞を精製し、1×104のDC細胞と1×105のT細胞を混合培養し、濃度勾配の異なる抗PD-1抗体を混合細胞に添加し、さらにアイソタイプコントロール抗体(mIgG1アイソタイプコントロール抗体及びhIgG4アイソタイプコントロール抗体(Biolegend))を設置し、抗体対照ウェルはなかった。3日間の混合培養後、上清を採取してIL-2を検出し、もう2日間の培養後、上清を採取してIFN-γを検出した。
【0075】
濃度の異なるPD-1-112-C2がT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIL-2分泌に対する影響の結果は
図2に示し、濃度の異なるPD-1-112-C2がT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIFN-γ分泌に対する影響の結果は
図3に示す。
図2及び
図3の結果から、抗PD-1抗体であるPD-1-112-C2は、MLR実験では、抗体濃度依存的にPD1のリガンドへの結合を阻害し、PD1シグナル伝達経路を阻害することができ、それによってT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIL-2、IFN-γ分泌を促進することが分かる。
【0076】
実施例9 抗PD-1マウスモノクローナル抗体のヒト化
上記で得られた抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2(そのHCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号8~10に示される如きで、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きで、重鎖可変領域配列は配列番号14に示される如きで、軽鎖可変領域配列は配列番号15に示されるる如きである。)をヒト化し、その具体的な方法は以下である。
【0077】
ヒトPD-1配列(NCBI NP 005009)を人工的に合成し、PCDNA3.4A真核発現系にクローニングし、このプラスミドを293細胞にトランスフェクトし、上清を採取して精製し、ヒトPD-1組換えタンパク質を得た。得られたヒトPD-1組換えタンパク質を雌性BAL b/Cマウスに皮下免疫し、免疫したBAL b/Cマウスの脾細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させ、次に得られたハイブリドーマを抗原特異性抗体についてスクリーニングした。スクリーニングされたhPD-1タンパク質抗体結合が陽性であったハイブリドーマを、限界希釈法により少なくとも2回サブクローニングした後、安定したサブクローニングを体外培養して少量の抗体を生成し、さらにスクリーニングした後にPD-1-112-C2クローニングを得た。
配列番号8:TYYMY
配列番号9:GINPSNGGTNFNEKFKS
配列番号10:RDSNYDGGFDY
配列番号11:RASKSVSTSGYSYMH
配列番号12:LAYHLES
配列番号13:QHSWELPIT
配列番号14:
QVQLQQPGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTTYYMYWVKQRPGQGLEWIGGINPSNGGTNFNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTLTVSS
配列番号15:
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLAYHLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQHSWELPITFGSGTKLEIKR
【0078】
配列番号14と配列番号15を参照して、Germlineデータベース中から非CDR領域に最も適合しているヒト化テンプレートを選択した。その中、抗体重鎖のテンプレートはIGHV1であり、抗体軽鎖のテンプレートはIGKV1であり、抗体の構造安定性に影響を与えない、抗体と抗原の結合に影響を与えない、グリコシル化やリン酸化などのタンパク質修飾部位を導入しない、酸化やアミノ化などの部位を導入しない、構造安定性を高めるという原則に基づき、重鎖のヒト化配列はVH1-5、軽鎖のヒト化配列はVL1-3と設計し、同時に、軽鎖は最も同一性の高いIGKV7-3*01を別のグループのヒト化設計テンプレートとし、ヒト化配列VL-4を設計した。軽重鎖のペアリング形式はよく見られるペアリング形式であるIGHV1/IGKV2と設計し、ヒト化抗体を得た。
【0079】
各ヒト化抗体の軽鎖と重鎖のアミノ酸配列に基づいて遺伝子を合成し、Hind III(NEB)とEcoRI(NEB)で二重切断した後、遺伝子断片をT4 DNAリガーゼ(TAKARA 2011A)を用いてHind III(NEB)/EcoRI(NEB)消化部位を介してPCDNA3.4A発現ベクター(Invitrogen)に挿入した。発現ベクターとトランスフェクション試薬PEI(Poly science,Inc. Cat. No.23966)で1:2の割合でHEK293細胞(Life Technologics Cat. NO.11625019)をトランスフェクトし、CO2インキュベーターで5~7日間インキュベートした。発現した抗体を遠心分離により回収し、常法に従って抗体精製を行い、本発明の抗PD-1ヒト化抗体(c11、c21、c31、c41、c51、c12、c22、c32、c42、c52、c43、c53、c44、c54)を得た。ここで、3つの抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)のアミノ酸配列は表5に示す。
【0080】
【0081】
配列番号3:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKSRVTMTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTVTVSS
【0082】
配列番号4:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMYWVRQAPGQGLEWIGGINPSNGGTNYAEKFKGRVTLTVDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTVTVSS
【0083】
配列番号5:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNYAQKFQGRATMTVDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTVTVSS
【0084】
配列番号6:
DIQLTQSPSSLSASVGDRATITCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLAYHLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSVQPEDFATYYCQHSWELPITFGQGTKLEIKR
【0085】
配列番号7:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLAYHLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSWELPITFGQGTKLEIKR
【0086】
実施例10 抗PD-1ヒト化抗体の親和性の特性評価
1、実験方法
組換え技術を利用して組換えヒトPD-1を細胞表面に発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)細胞系(CHO-hPD1)と、サルPD1を発現するCHO細胞系(CHO-cynoPD1)との両細胞系をフローサイトメトリー(FCM)による抗PD-1ヒト化候補モノクローナル抗体(c22、c43、c53)の結合特性評価に用いる。具体的な方法は以下の通りである。
【0087】
抗ヒト化抗体のCHO-hPD1への結合を評価するために、96ウェルプレートに2×105 CHO-hPD1細胞及び濃度勾配で希釈した(初期濃度が30μg/mlで、3倍勾配希釈された。)ヒト化抗体を加え、4℃で30分間インキュベートし、細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で1回洗浄した後、PE標識抗ヒトIgG(Fc)Ab(Biolegend)蛍光二次抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PBSに再懸濁した。その後、細胞懸濁液をCytoFlex(Beckmanフローサイトメーター)によるフローサイトメトリー解析に供し、染色の平均蛍光強度(MFI)によって細胞に結合した抗体の量を測定した。同じ方法で、この抗ヒト化抗体とCHO-cyno細胞を評価した。
【0088】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の親和性の特性評価は表6に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、いずれもCHO-hPD1細胞及びCHO-cynoPD1細胞に高い親和性で結合することがが分かる。
【0089】
【0090】
実施例11 抗PD-1ヒト化抗体と活性化されたPBMCとの結合
1、実験方法
新鮮なヒト末梢血単核球(PBMC)は、PHA(Sigma)の刺激下で、リンパ球が活性化して増殖され、3日目にPD1を最も多く発現させることができ、抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)と活性化されたリンパ球が自然に発現するPD1との結合実験を行うことができる。具体的な方法は以下の通りである。
【0091】
新鮮なヒト末梢血から、リンパ単離液による勾配遠心法によってPBMCを獲得し、1×106 cells/mlの密度に調整してT75に接種し、同時に最終濃度1μg/mlのPHA-L(Sigma)を加えてリンパ球の増殖を刺激し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で3日間培養した後、細胞懸濁液を除去し、遠心分離によって上清を除去し、緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、96ウェルU-プレートに2E5/ウェルで加え、次に濃度勾配の異なるヒト化抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、300gで5分間遠心分離し、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSに再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリーで分析し、PBMCに結合した抗体の量を検出した。
【0092】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体と活性化されたPBMCとの結合能力の測定結果は表6に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体は活性化リンパ球に高い親和性で結合することが分かる。
【0093】
本発明の抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)は、実施例2と3の抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2(表1)と比較して、CHO-hPD1細胞、CHO-cyno細胞及び活性化されたPBMCとの結合能力がそれと同等である。
【0094】
実施例12 抗PD-1ヒト化抗体の結合特異性
1、実験方法
本発明の抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)は、PD-1に対する抗PD-1ヒト化抗体の結合の特異性を確認するために、4つの異なるCD28ファミリーメンバータンパク質と結合させた。標準的なELISA法を用いて、濃度1μg/mlのPD-1(Acro)、CD28(Acro)、CTLA-4(Acro)、ICOSをELISAプレートに固定化し、濃度10μg/mlのヒト化抗体を加え、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ヒトIgG(Fab)を二次抗体とした。TMBで発色し、終止した後、OD450値をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0095】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の結合特異性の結果を表7に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体はいずれもPD-1に特異的に結合するが、CD28ファミリーの他のメンバーには結合しないことが分かる。
【0096】
【0097】
実施例13 抗PD-1ヒト化抗体の親和性測定
1、実験方法
ForteBio(Octet Qke)親和性測定:濃度5μg/mlのPD-1-his組換えタンパク質をHISIKバイオセンサーに120秒間ロードし、次にロードしたセンサーを標準緩衝液(PBST、PBS+0.02% Tuween20)で120秒間平衡化し、その後センサーを抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)希釈液の中に移し180秒間放置して結合速率を測定し、その後標準緩衝液に移し20分間放置して解離速率を測定した。最終的な解析、データ処理は動力学モデルを用いて行った。陽性対照としてOpdivo(ABA0333)を用いた。
【0098】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の親和性の測定結果を表8に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体はいずれもPD-1と高い親和性で結合することが分かる。
【0099】
本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、実施例5中の抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2(表3)と比較して、親和性がそれと同等である。本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、陽性対照Opdivo(表3)と比較して、親和性は有意に向上する。
【0100】
【0101】
実施例14 抗PD-1ヒト化抗体のリガンドPD-L1/PD-L2とCHO-hPD1との結合に対する阻害
1、実験方法
フローサイトメトリーで、抗PD-1ヒト化抗体が、リガンドと、トランスフェクトしたCHO細胞の表面で安定に発現したPD-1への結合を阻害する能力を解析した。実験に使用したリガンドタンパク質は、組み換えPD-L1/PD-L2細胞外セグメントにmouse IgG1 Fcセグメントを融合したタンパク質:PD-L1-mFc、PD-L2-mFcであった。
【0102】
CHO-PD1細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、密度を2×106 cells/mlに調整し、100μl/ウェルの細胞懸濁液を96ウェルU-プレートに加え、300gで5分間遠心分離後、上清を除去した。細胞ウェルに、濃度0.2μg/mlのPD-L1-mFc/PD-L2-mFcを加え、4℃で30分間インキュベートした後、濃度勾配で希釈した抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)を加え、4℃で30分間インキュベートした。
【0103】
細胞を300gで5分間遠心分離し、緩衝液で1回洗浄した後、PE標識ヤギ抗マウスIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSで再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリー分析で細胞に結合したリガンドタンパク質の量を検出し、PD-1抗体結合阻害のIC50値を算出した。
【0104】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の親和性の測定結果は表9に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体はいずれもPD-L1/PD-L2と細胞CHO-PD1との結合を有効的に阻害することができることが分かる。
【0105】
【0106】
実施例15 抗PD-1ヒト化抗体の混合リンパ球反応における影響
1、実験方法
混合リンパ球反応(MLR)において、抗PD-1ヒト化抗体存在の有無は、PD1シグナルが阻害された状況でのT細胞の増殖状況とT細胞のサイトカイン分泌レベルを証明することができる。具体的な方法は以下である。
【0107】
CD14 MicroBeads,human(Miltenyi)を用いて新鮮なPBMCからCD14+単球(monocyte)を単離し、GM-CSF/IL-4の存在下で6日間誘導した後、TNF-αを添加して、3日間後DCの成熟を誘導した。実験当日、EasySep(商標) Human T Cell Enrichment Kit(StemCell)を用いてPBMC中のT細胞を精製し、1×104 cells/ウェルのDC細胞と1×105 cells/ウェルのT細胞を混合培養し、濃度勾配の異なる抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)を混合細胞に添加し、さらにアイソタイプコントロール抗体を設置し、抗体対照ウェルはなかった。3日間の混合培養後、上清を採取してIL-2を検出し、もう2日間の培養後、上清を採取してIFN-γを検出した。
【0108】
3、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の混合リンパ球反応における影響の結果は表10に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、MLR実験では、PD1のリガンドへの結合を阻害し、PD1シグナル伝達経路を阻害することができ、それによってT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIL-2、IFN-γ分泌を促進することが分かる。
【0109】
【0110】
実施例16 抗PD-1ヒト化抗体のマウス結腸がん細胞に対する体内抗腫瘍効果評価
1、実験方法
実験目的:抗PD-1ヒト化抗体(c53)のマウス結腸がん細胞(MC38細胞)に対する体内抗腫瘍活性を測定し、同時にアイソタイプコントロール群(Isotype)、陽性対照群(Sintilimab)を設置した。
【0111】
実験材料:hPD1ノックインマウス、雌性、6~8週齢(C57BL/6バックグラウンド、ソース:北京維通達生物技術有限公司);MC38細胞(国家実験細胞共享資源プラットフォーム);FBS(Gibco,10091-148)、0.25%トリプシン-EDTA(Gibco,25200056)、DMSO(Sigma、D2650)、DPBS(Hyclone、SH30028.02)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco、15140122)、DMEM高糖培地(Gibco、11965084)。ウシ胎児血清(Gibco)、グルタミン(Gibco)。
【0112】
機器設備:電子天秤(上海舜宇恒平科学儀器有限公司、JA12002)、ノギス(上海美耐特実業有限公司、MNT-150T)、顕微鏡(重慶奥特光学儀器有限公司、BDS200)、医療用遠心分離機(湖南湘儀実験室開発有限公司、L530R)、デジタル表示式恒温水槽(普瑞斯機械有限公司、HH-S)、炭酸ガスインキュベーター(日本松下健康医療器械株式会社、MCO-18AC)、2人用縦型ウルトラクリーンテーブル(無錫易浄化設備有限公司、SW-CJ-VS2)。
【0113】
実験手順:
細胞培養:MC38細胞を10%ウシ胎児血清、1%グルタミン及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(1:1)を含有するDMEM高糖培地に培養した。
【0114】
接種:対数増殖期のMC38細胞を収集し、細胞濃度を3×106/mLに調整した。40匹の雌性hPD1マウスに、MC38細胞を0.1mL/マウス、即ち3×105/マウスとなるように皮下接種した。
【0115】
投与:接種日を0日目(D0)として記録し、7日目に腫瘍体積に応じてマウスを8匹ずつランダムに3群に分け、投与を開始した(MC38腫瘍モデル投与量、方式及び頻度は表11に示す)。
【表11】
【0116】
記録:D7から腫瘍体積を測定・記録し、続いて腫瘍の長径と短径をノギスを用いて週2回測定した。腫瘍体積は式:(1/2)×長径×(短径)2で算出した。各マウスが実験の終点に達した時点で(腫瘍体積が2000mm3を超えると善性終点に達した。)、マウスを頸椎脱臼法で処刑し、生存曲線を記録した。
【0117】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の腫瘍体積に対する効果の結果は表12及び
図4に示す。抗PD-1ヒト化抗体(c53)は、Isotype群と比較して、MC38腫瘍モデルの腫瘍増殖に対して有意な腫瘍抑制作用(TGI=104.44%、腫瘍が完全に消失したマウスは7匹である。)を有し、Sintilimab群の抗腫瘍効果(TGI=105.81%、腫瘍が完全に消失したマウスは7匹である。)と同程度であったことが分かる。
【0118】
抗PD-1ヒト化抗体がマウスの生存期間に対する影響の結果は
図5に示し、抗PD-1ヒト化抗体(c53)は、Isotype群と比較して、マウスの生存期間を有意に延長させることができたことが分かる。
【0119】
【0120】
以上の結果から、本発明に提供される抗PD-1ヒト化抗体(c53)は、MC38細胞の生長を有意に抑制し、マウスの生存期間を効果的に延長することができ、マウスの結腸がんの治療に有意な有効性を有することが示される。
【0121】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であり、本発明の実施形態は上記の実施例に限定されず、本発明の趣旨と原理を逸脱せずに行われる他の変更、修正、置換、組み合わせ、簡素化は、いずれも同等な置換形態として、本発明の請求範囲に含まれるものとする。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬技術分野に属する。さらに具体的には、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム死因子-1(PD1)はCD28ファミリーのメンバーであり、活性化B細胞、T細胞、骨髄系細胞に発現している。ヒトPD1は、2q37.3に位置する、全長9.6kbの遺伝子Pdcd1にコードされており、5つのエクソンと4つのイントロンからなり、上流に663bpのプロモーターを持つ。PD1は、55KDaのI型膜貫通タンパク質で、分子構造が細胞外領域、膜貫通領域、細胞内領域からなり、細胞外領域には1つの免疫グロブリン可変領域のIgVドメインが含まれ、細胞内領域には免疫受容体チロシン依頼性抑制モチーフ(ITIM)と免疫受容体チロシン依頼性スイッチモチーフ(ITSM)が含まれる。PD-1の細胞外領域のアミノ酸配列はCTLA-4と24%の同一性を有し、CD28と28%の同一性を有する。PD-1は、T細胞が活性化されると、主にITIMを介してチロシンホスホリパーゼSHP2を募集、下流のエフェクター分子の脱リン酸化を導く。
【0003】
PD-1はPD-L1とPD-L2という2つのリガンドがある。PD-L1とPD-L2はともにB7ホモログであり、PDL遺伝子はヒト染色体の9P24.2遺伝子座にあり、42kbの大きさであり、その分子構造は、いずれも、1つの免疫グロブリン様可変領域ドメイン、1つの定常領域様ドメイン、1つの膜貫通領域、1つの短い細胞質尾部を含む。
【0004】
PD-1はPD-L1とPD-L2に結合した後、T細胞の活性化をダウンレギュレートすることができる。PD-L1は、多くの腫瘍細胞の表面に発現し、これらの腫瘍細胞としては、肺がん、胃がん、肝臓がん、食道がん、腎がん、卵巣がん、子宮頸がん、乳がん、皮膚がん、結腸がん、膀胱がん、グリオーマ、頭頸部がん、口腔扁平上皮がんが含まれる。そして、これらのがんの周囲に、PD-L1を発現する多数のCD8+T細胞が発見され、臨床結果の統計から、腫瘍細胞上のPD-L1高発現レベルが癌患者の予後不良と関連することが示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存の抗体がPD-1と結合する親和性及び特異性は高くないという欠点及び不足を克服することであり、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片及びその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片を提供し、前記抗体は軽鎖CDR領域と重鎖CDR領域を含み、重鎖CDR領域がHCDR1、HCDR2、HCDR3からなり、軽鎖CDR領域がLCDR1、LCDR2、LCDR3からなり、HCDR1のアミノ酸配列は配列番号8に示される如きで、HCDR3のアミノ酸配列は配列番号10に示される如きで、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きで、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3~5のいずれかに示されるる如きである。
【0007】
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6~7のいずれかに示される如きである。
【0008】
本発明は、さらに、前記抗体又はその抗原結合性断片に関連する核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物に関する。
【0009】
本発明は、さらに、前記抗体又はその抗原結合性断片、及びその関連する核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物のPD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用に関する。
【0010】
本発明は、さらに、PD-1媒介性疾患又は病状を治療する方法に関し、当該方法は、被験者に有効量の上記抗体又はその抗原結合性断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物を摂取させることを含む。
【0011】
本発明は、さらに、治療するための上記抗体又はその抗原結合性断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物に関する。
【0012】
本発明は、さらに、PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための上記抗体又はその抗原結合性断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】異なる濃度のPD-1-112-C2がIL-2/IFN-γ分泌に対する影響の結果図である。
【
図2】異なる濃度のPD-1-112-C2がT細胞の増殖とT細胞の細胞因子IL-2分泌に対する影響の結果図である。
【
図3】異なる濃度のPD-1-112-C2がT細胞の増殖とT細胞の細胞因子IFN-γ分泌に対する影響の結果図である。
【
図4】抗PD-1ヒト化抗体c53が腫瘍体積に対する影響の結果図である。
【
図5】抗PD-1ヒト化抗体c53がマウス生存期間に対する影響の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施例を用いて本発明をさらに説明し、実施例は本発明に対していかなる形態でも限定を構成するものではない。特に説明がない限り、本発明で採用される試薬、方法及び装置は当技術分野の通常の試薬、方法及び装置である。
【0015】
特に説明がない限り、以下の実施例で使用される試薬及び材料はいずれも市販品である。
【0016】
本発明は、抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片に関し、前記抗体は軽鎖CDR領域と重鎖CDR領域を含み、重鎖CDR領域がHCDR1、HCDR2、HCDR3からなり、軽鎖CDR領域がLCDR1、LCDR2、LCDR3からなり、HCDR1のアミノ酸配列は配列番号8に示される如きで、HCDR3のアミノ酸配列は配列番号10に示される如きで、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きで、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3~5のいずれかに示される如きで、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6~7のいずれかに示される如きである。
【0017】
本発明は、Kabat番号システムを用いてCDR領域を標示したが、他の方法で標示されたCDR領域も本発明の請求範囲に含まれる。
【0018】
一部の実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3に示される如きで、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号4に示される如きで、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号5に示される如きで、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示される如きである。
【0019】
一部の実施形態において、前記抗体は重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含有し、前記重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE又はIgMのうちのいずれか1種又は複数種であり、前記軽鎖定常領域はκ鎖又はλ鎖である。
【0020】
一部の実施形態において、前記重鎖定常領域と軽鎖定常領域の種族はヒト、鼠又はサルから選択される。
【0021】
一部の実施形態において、前記抗体はキメラ抗体又は多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)である。
【0022】
本発明において、用語「多重特異性抗体」は、1つには拘らないない抗原又はエピトープを標的とする抗原結合タンパク質又は抗体である。
【0023】
本発明において、用語「二重特異性抗体」は、多重特異性抗原結合タンパク質又は多重特異性抗体であり、ハイブリドーマの融合又はFab’断片のライゲーションを含むがこれらに限定されない様々な方法によって産生することができる。例えば、SongsivilaiとLachmann、1990、Clin.Exp.Immunol.79:315-321;Kostelnyら、1992、J.Immunol.148:1547-1553を参照下さい。二重特異性抗原結合タンパク質又は抗体の2つの結合部位は、2つの異なるエピトープに結合し、前記エピトープは、同じあるいは異なるタンパク質標的に存在する。
【0024】
本発明において、用語「特異性結合」又は類似する表現とは、抗体又はその抗原結合性断片の予め決定された抗原におけるエピトープへの結合を指す。一般に、抗体又はその抗原結合性断片は、約10-6M未満、例えば、約10-7M未満、約10-8M未満、約10-9M未満又は約10-10M未満若しくはさらに小さい親和力(KD)で結合する。KDとは解離速度と結合速度の比(koff/kon)を指し、当該量は当業者によく知られる方法で測定することができる。
【0025】
一部の実施形態において、前記抗原結合性断片は、F(ab’)2、Fab、scFv、Fv及びシングルドメイン抗体のうちのいずれか1種又は複数種である。
【0026】
本発明において、用語「F(ab’)2」は、2本の軽鎖と、CH1とCH2ドメインの間の定常領域の部分を含む2本の重鎖とを含み、それによって2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成する。F(ab’)2断片は、2本の重鎖の間のジスルフィド結合によって一緒に保持された2つのFab'断片からなる。
【0027】
本発明において、用語「Fab」は、1本の軽鎖、CH1及び1本の重鎖の可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0028】
本発明において、用語「scFv」は、重鎖と軽鎖可変領域とがフレキシブルリンカーによって結合され、一本鎖のポリペプチド鎖(それが抗原結合領域を形成する。)が形成されるFv分子である(例えば、Birdら、Science.242:423-426(1988)及びHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.90:5879-5883(1988)を参照)。
【0029】
本発明において、用語「Fv」は、重鎖と軽鎖からの可変領域を含むが、定常領域を欠けている。
【0030】
本発明において、用語「シングルドメイン抗体」は、1つの重鎖可変領域(VHH)と2つの通常のCH2とCH3領域のみを含むが、人工的に改造された一本鎖抗体(scFv)のように容易に互いに付着したり、塊になったりさえしない。さらに重要なことは、個別にクローニングされ発現されたVHH構造は、元の重鎖抗体に相当する構造安定性及び抗原との結合活性を有し、標的抗原と結合可能であることが知られている最小単位であるということである。
【0031】
本発明は、さらに、前記抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片をコードする核酸に関する。
【0032】
好ましい実施形態において、前記核酸は、前記抗体又はその抗原結合性断片の重鎖可変領域をコードする第1核酸、及び/又は、前記抗体又はその抗原結合性断片の軽鎖可変領域をコードする第2核酸を含む。
【0033】
本発明において、核酸は、一般にRNA又はDNAであり、核酸分子は、一本鎖でもよいし二本鎖でもよく、二本鎖DNAであることは好ましい。核酸が別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、核酸は「作動可能に連結」される。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響を与える場合に、プロモーター又はエンハンサーは前記コード配列に作動可能に連結される。それがベクターに接続される場合、DNAを使用することが好ましい。また、抗体が膜タンパク質であるため、核酸は一般にシグナルペプチド配列を備える。
【0034】
本発明は、さらに、前記核酸を携帯するベクターに関する。
【0035】
本発明において、用語「ベクター(vector)」は、ポリヌクレオチドをその中に挿入できる核酸送達ツールである。挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質をベクターが発現させることができる場合に、当該ベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターを形質転換、形質導入又はトランスフェクションによりホスト細胞に導入することで、それに携帯する遺伝物質エレメントをホスト細胞において発現することができる。ベクターは当業者に周知されており、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体(例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC))、ファージ(例えば、λファージ又はM13ファージ)、動物ウイルスなどを含むが、それらに限定されない。ベクターとして使用できる動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)を含むが、それらに限定されない。
【0036】
本発明は、さらに、細胞に関し、前記細胞は前記核酸を携帯し、前記ベクターを含有し、又は前記抗体又はその抗原結合性断片を発現することができる。
【0037】
本発明は、さらに、医薬組成物に関し、前記組成物は前記抗体又はその抗原結合性断片、前記核酸、前記ベクター又は前記細胞を含有する。
【0038】
本発明において、用語「医薬組成物」とは、活性成分の生理活性が有効であることが許される形で存在し、且つ前記組成物が投与される対象に対して容認できない毒性を有する追加の成分を含まないものである。
【0039】
一部の実施形態において、前記医薬組成物は、さらに、薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤を含む。
【0040】
本発明において、用語「薬学的に許容されるベクター」は、生理学的に適合するいかなる及びあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含むことができる。
【0041】
また、前記抗体又はその抗原結合性断片、前記核酸、前記ベクター、前記細胞又は前記医薬組成物のPD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用も、本発明の請求範囲内に含まれるべきである。
【0042】
一部の実施形態において、前記医薬組成物又は薬物は注射に適した形態である。
【0043】
好ましい実施形態において、前記医薬組成物又は薬物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射による投与に適した形態である。
【0044】
[発明の効果]
【0045】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0046】
本発明に提供された抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、CHO-hPD1細胞、CHO-cyno細胞及び活性化されたPBMCと高い親和性で結合することができ、その親和性が陽性対照と比較して有意に向上し、効率高く且つ特異的にPD-1と結合することができ、リガンドPD-L1/PD-L2とCHO-hPD1との結合を効果的に阻害することができ、MLRでは、PD-1とリガンドとの結合を阻害し、PD-1シグナル伝達経路を抑制することができ、それによってT細胞の増殖とIL-2、IFN-γサイトカインの分泌を促進する。したがって、当該抗体又はその抗原結合性断片、及びその関連する核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物は、PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用の将来性が広い。
【実施例】
【0047】
実施例1 抗PD-1抗体の製造
1.イムノゲン
ヒトPD-1配列(NCBINP005009)を人工的に合成し、上流プライマー:5’-CCGCAAGCTTGCCGCCACCATG-3’(配列番号1)、下流プライマー:5’-CCGGAATTCTCATTAATGGTGATGGTGATGATGCTGGAACTGGCCGGCAGGTC-3’(配列番号2)で、細胞外ドメインをPCRで増幅し、HindIIIとEcoRIによる二重消化後、pCDNA3.4A真核発現系にクローニングし、このプラスミドを293細胞にトランスフェクトし、上清を採取して精製し、ヒトPD-1組換えタンパク質(hPD-1)を得た。
【0048】
2.動物を免疫すること
125ugの濃度1.23mg/mlのhPD-1組換えタンパク質を抗原として、同量の免疫アジュバントであるフロイントアジュバント(Sigma-AldrichF5881)と混合し、6週齢の雌性BALb/Cマウス5匹に皮下免疫し、マウス1匹あたりの抗原免疫量は25ugであった。初回免疫後、同量のブースター免疫を週1回行った。合計5回の免疫後、尾部採血で免疫反応をモニターした。FACSスクリーニング(後述)により、十分な抗hPD-1免疫グロブリン滴定量を有するマウスを融合に用いた。抗原による腹腔内ブースター免疫の3日後、マウスを処刑し、脾臓を摘出して細胞融合を行った。
【0049】
3.抗hPD-1抗体を産生するBALb/Cマウスの選択
抗hPD-1抗体を産生するBALb/Cマウスを選択するために、免疫されたマウス血清をFACSでテストした。hPD-1組換えタンパク質免疫マウスからの血清希釈液を、hPD1がトランスフェクトされたCHO細胞と4℃で30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄後、0.4ug/mlのPEヤギ抗マウスIgG(Biolegend405307)を加え、4℃で30分間インキュベートした。PBSで3回洗浄後、サンプルをBeckmanCoulter社のフローサイトメーター(CytoFLEXA00-1-1102)で検出し、hPD1がトランスフェクトされたCHO細胞と結合できるかを確認し、抗hPD-1抗体を産生するBALb/Cマウスをスクリーニングし、次に細胞融合を行った。
【0050】
4.hPD-1に対するマウスモノクローナル抗体ハイブリドーマの生成
免疫されたBALb/Cマウスの脾臓細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させ、得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体に対してスクリーニングした。PEG1500(Roche10783641001)を用いて、免疫されたマウスからの脾臓細胞の単細胞懸濁液を、5分の1の数且つ免疫グロブリンを分泌しないマウス骨髄腫細胞(SP2/0、ATCCCRL1581)と細胞融合させた。融合した細胞を96ウェル細胞培養プレートに約1×105個/ウェルで広げ、インキュベーター(PanasonicMCO-18AIC)に入れ、培養条件は37℃、5%CO2であった。その後、HAT選択培地にて約1週間培養し、前記培地は、1640培地に1×ペニシリン-ストレプトマイシン二重抗生剤(Gibco15140122)、1×HAT(SigmaCRLP-7185)及び20%ウシ胎児血清(RoyacelRY-F11-01)が含まれた。1週間後、HAT培地をHT培地(1×ペニシリン-ストレプトマイシン二重抗生剤(gibco 15140122)、1×HT(gibco11067030)及び20%ウシ胎児血清(RoyacelRY-F11-01)を含む1640培地)に交換して培養し、FACSで融合プレートの細胞培養上清を検測し、hPD-1タンパク質結合可能な抗体を分泌するハイブリドーマをスクリーニングした。hPD-1タンパク質結合可能な抗体を分泌するハイブリドーマを再度プレートに敷き、再度スクリーニングした。スクリーニングされたhPD-1タンパク質抗体結合が陽性であったハイブリドーマは、限界希釈法により少なくとも2回サブクローニングした。その後、サブクローンを生体外培養で安定化させ、少量の抗体を生成してさらなる解析を行った。ハイブリドーマクローンPD1-112-C2が次の分析のために選択された。
【0051】
実施例2抗PD-1マウスモノクローナル抗体の親和性の特性評価
常法に従って、組換え技術を用いて組換えヒトPD-1を細胞表面に発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)細胞系(CHO-hPD1)、サルPD1(Uniprot:B0LAJ2)を発現するCHO細胞系(CHO-cynoPD1)、及びマウスPD1(Uniprot:Q02242)を発現するCHO細胞系(CHO-mousePD1)を製造し、これらの細胞系は、フローサイトメトリー(FCM)で抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2の結合特性評価を測定することに使用された。
【0052】
抗PD-1マウスモノクローナル抗体とCHO-hPD1との結合を評価するために、96ウェルプレートに2×105CHO-hPD1細胞と濃度勾配で希釈した(初期濃度が10μg/mlで、3倍勾配希釈された)抗PD-1マウスモノクローナル抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で1回洗浄し、PE標識抗マウスIgG(Fc)Ab(Biolegend)蛍光二次抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PBSに再懸濁した。その後、細胞懸濁液をCytoFlex(Beckmanフローサイトメーター)によるフローサイトメトリー解析に供し、染色の平均蛍光強度(MFI)によって細胞に結合した抗体の量を測定した。同じ方法で、この抗PD-1マウスモノクローナル抗体とCHO-cyno細胞、CHO-mousePD1(本発明では「CHO-mPD1」と略記することがある。)細胞との結合を評価した。
【0053】
結果は表1に示すように、データから、抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2は、いずれも比較的高い親和性でCHO-hPD1細胞及びCHO-cyno細胞と結合することができ、同時にマウスモノクローナル抗体はすべてCHO-mousePD1細胞と結合しないことが示された。
【0054】
【0055】
実施例3抗PD-1抗体と活性化されたPBMCとの結合
新鮮なヒト末梢血単核球(PBMC)は、PHA(Sigma)の刺激下で、リンパ球が活性化して増殖され、3日目にPD1を最も多く発現させることができ、PD-1抗体と活性化されたリンパ球が自然に発現するPD1との結合実験を行うことができる。
【0056】
新鮮なヒト末梢血から、リンパ単離液による勾配遠心方法でPBMCを獲得し、1×106細胞/mlの密度に調整してT75に接種し、同時に最終濃度1μg/mlのPHA-L(Sigma)を加えてリンパ球の増殖を刺激し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で3日間放置した後、細胞懸濁液を取って、遠心分離によって上清を除去し、緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、96ウェルU-プレートに2×105細胞/ウェルで加え、続いて30μg/mlから3倍勾配希釈された合計10個の濃度勾配の抗PD1抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、300gで5分間遠心分離し、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSに再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリーで分析し、PBMCに結合した抗体の量を検出した。
【0057】
結果は表1に示すように、抗PD1抗体は活性化されたリンパ球に高い親和性で結合した。
【0058】
実施例4抗PD-1マウスモノクローナル抗体の結合特異性
抗PD-1マウスモノクローナル抗体は、PD-1に対する抗体の結合の特異性を確認するために、4つの異なるCD28ファミリーメンバータンパク質と結合させた。標準的なELISA法を用いて、濃度1μg/mlのPD-1、CD28、CTLA-4、ICOS(ACRO)をELISAプレートに固定化し、濃度10μg/mlの抗ヒトPD-1マウスモノクローナル抗体を加え、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗マウスIgGを二次抗体(Sigma)として用いた。TMBで発色し、終止した後、OD450値をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0059】
結果は表2に示すように、抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2は、いずれもPD-1に特異的に結合するが、CD28ファミリーの他のメンバーには結合しない。
【0060】
【0061】
実施例5バイオレイヤー干渉(BLI)法での抗ヒトPD-1マウスモノクローナル抗体の親和性測定
ForteBio(OctetQke)親和性測定:濃度5μg/mlのPD-1-his(ACRO)組換えタンパク質をHISIKバイオセンサーに120秒間ロードし、次にロードしたセンサーを標準緩衝液(PBST、PBS+0.02%Tuween20)で120秒間平衡化し、その後センサーを抗PD-1マウスモノクローナル抗体希釈液の中に移し180秒間放置して結合速率を測定し、その後標準緩衝液に移し20分間放置して解離速率を測定した。最終的な解析は動力学モデルを用いて行った。
【0062】
データ処理の結果は表3に示す。
【0063】
【0064】
実施例6抗PD-1マウスモノクローナル抗体のリガンドPD-L1/PD-L2とCHO-hPD1との結合に対する阻害
フローサイトメトリーで、抗PD-1マウスモノクローナル抗体が、リガンドと、トランスフェクトしたCHO細胞の表面で安定に発現したPD-1への結合を阻害する能力を解析した。実験に使用したリガンドタンパク質は、組み換えPD-L1/PD-L2細胞外セグメントにヒトIgG1Fcセグメントを融合したタンパク質:PD-L1-hFc(ACRO)、PD-L2-hFc(ACRO)であった。
【0065】
CHO-PD1細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、密度を2×106細胞/mlに調整し、100μl/ウェルの細胞懸濁液を96ウェルU-プレートに加え、300gで5分間遠心分離後、上清を除去した。
【0066】
その後のプロセスは、2つの阻害モードで実施できる。モード1では、細胞ウェルに濃度3μg/mlのPD-L1-hFc/PD-L2-hFcを加え、4℃で30分間インキュベートした後、30μg/mlから3倍勾配希釈された合計10個の濃度勾配の抗PD-1マウスモノクローナル抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした。モード2では、細胞ウェルに、30μg/mlから3倍勾配希釈された合計10個の濃度勾配の抗PD-1マウスモノクローナル抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、濃度3μg/mlのPD-L1-hFc/PD-L2-hFcタンパク質を加え、4℃で30分間インキュベートした。
【0067】
細胞を300gで5分間遠心分離し、緩衝液で1回洗浄した後、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSで再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリー分析で細胞に結合したリガンドタンパク質の量を検出し、PD-1抗体結合阻害のIC50値を算出した。
【0068】
結果は表4に示すように、抗PD-1マウスモノクローナル抗体:PD-1-112-C2は、二つのモードのいずれにおいても、PD-L1/PD-L2と細胞CHO-PD1との結合を有効に阻害することができる。
【0069】
【0070】
実施例7抗PD-1抗体のSEBで刺激されたPBMC細胞のサイトカイン放出に対する影響
本実施例では、夜通し培養した末梢血単核球(PBMC)を、スーパー抗原である黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)の添加によって刺激したときの、抗PD-1抗体の存在下又は非存在下でのサイトカイン分泌の影響について検出した。
【0071】
新鮮な末梢血単核球(PBMC)を10%FBS含有X-VIVO15培地(LONZA)に再懸濁し、T25フラスコに加え、37℃、5%CO2で夜通し培養した。翌日、懸濁細胞を採取し、遠心分離後、新鮮なX-VIVO(10%FBSを含有する。)培地に再懸濁し、最終濃度200ng/mlのSEBスーパー抗原(Toxintechnology)を添加した後、96ウェルフラットプレートに1ウェルあたり1×105細胞を添加し、同時に濃度の異なる抗PD-1抗体を添加した。さらにアイソタイプコントロール抗体(mIgG1アイソタイプコントロール抗体(Biolegend);hIgG4アイソタイプコントロール抗体(Biolegend))を設置し、抗体対照ウェルはなかった。3日後、サンプルウェルからサンプルを採取し、IL2/IFN-γHumanUncoatedELISAKit(eBioscience)キットを用いてIL-2/IFN-γレベルを測定した。
【0072】
濃度の異なるPD-112-C2がIL-2/IFN-γ分泌に対する影響の結果は
図1に示し、抗PD-1抗体は濃度依存的にIL-2/IFN-γ分泌を向上させた。これらの結果は、SEBスーパー抗原で刺激されたPBMCでは、抗PD-1抗体であるPD-1-112-C2がT細胞によるサイトカイン分泌をさらに促進することが分かる。
【0073】
実施例8抗PD-1抗体の混合リンパ球反応における影響
混合リンパ球反応(MLR)において、抗PD-1抗体存在の有無は、PD1シグナルが阻害された状況でのT細胞の増殖状況とT細胞のサイトカイン分泌レベルを証明することができる。
【0074】
CD14MicroBeads,human(Miltenyi)を用いて新鮮なPBMCからCD14+単球(monocyte)を単離し、GM-CSF/IL-4の存在下で6日間誘導した後、TNF-αを添加して、3日間後DCの成熟を誘導した。実験当日、EasySep(商標)HumanTCellEnrichmentKit(StemCell)を用いてPBMC中のT細胞を精製し、1×104のDC細胞と1×105のT細胞を混合培養し、濃度勾配の異なる抗PD-1抗体を混合細胞に添加し、さらにアイソタイプコントロール抗体(mIgG1アイソタイプコントロール抗体及びhIgG4アイソタイプコントロール抗体(Biolegend))を設置し、抗体対照ウェルはなかった。3日間の混合培養後、上清を採取してIL-2を検出し、もう2日間の培養後、上清を採取してIFN-γを検出した。
【0075】
濃度の異なるPD-1-112-C2がT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIL-2分泌に対する影響の結果は
図2に示し、濃度の異なるPD-1-112-C2がT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIFN-γ分泌に対する影響の結果は
図3に示す。
図2及び
図3の結果から、抗PD-1抗体であるPD-1-112-C2は、MLR実験では、抗体濃度依存的にPD1のリガンドへの結合を阻害し、PD1シグナル伝達経路を阻害することができ、それによってT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIL-2、IFN-γ分泌を促進することが分かる。
【0076】
実施例9抗PD-1マウスモノクローナル抗体のヒト化
上記で得られた抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2(そのHCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号8~10に示される如きで、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きで、重鎖可変領域配列は配列番号14に示される如きで、軽鎖可変領域配列は配列番号15に示されるる如きである。)をヒト化し、その具体的な方法は以下である。
【0077】
ヒトPD-1配列(NCBINP005009)を人工的に合成し、PCDNA3.4A真核発現系にクローニングし、このプラスミドを293細胞にトランスフェクトし、上清を採取して精製し、ヒトPD-1組換えタンパク質を得た。得られたヒトPD-1組換えタンパク質を雌性BALb/Cマウスに皮下免疫し、免疫したBALb/Cマウスの脾細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させ、次に得られたハイブリドーマを抗原特異性抗体についてスクリーニングした。スクリーニングされたhPD-1タンパク質抗体結合が陽性であったハイブリドーマを、限界希釈法により少なくとも2回サブクローニングした後、安定したサブクローニングを体外培養して少量の抗体を生成し、さらにスクリーニングした後にPD-1-112-C2クローニングを得た。
配列番号8:TYYMY
配列番号9:GINPSNGGTNFNEKFKS
配列番号10:RDSNYDGGFDY
配列番号11:RASKSVSTSGYSYMH
配列番号12:LAYHLES
配列番号13:QHSWELPIT
配列番号14:
QVQLQQPGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTTYYMYWVKQRPGQGLEWIGGINPSNGGTNFNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTLTVSS
配列番号15:
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLAYHLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQHSWELPITFGSGTKLEIKR
【0078】
配列番号14と配列番号15を参照して、Germlineデータベース中から非CDR領域に最も適合しているヒト化テンプレートを選択した。その中、抗体重鎖のテンプレートはIGHV1であり、抗体軽鎖のテンプレートはIGKV1であり、抗体の構造安定性に影響を与えない、抗体と抗原の結合に影響を与えない、グリコシル化やリン酸化などのタンパク質修飾部位を導入しない、酸化やアミノ化などの部位を導入しない、構造安定性を高めるという原則に基づき、重鎖のヒト化配列はVH1-5、軽鎖のヒト化配列はVL1-3と設計し、同時に、軽鎖は最も同一性の高いIGKV7-3*01を別のグループのヒト化設計テンプレートとし、ヒト化配列VL-4を設計した。軽重鎖のペアリング形式はよく見られるペアリング形式であるIGHV1/IGKV2と設計し、ヒト化抗体を得た。
【0079】
各ヒト化抗体の軽鎖と重鎖のアミノ酸配列に基づいて遺伝子を合成し、HindIII(NEB)とEcoRI(NEB)で二重切断した後、遺伝子断片をT4DNAリガーゼ(TAKARA2011A)を用いてHindIII(NEB)/EcoRI(NEB)消化部位を介してPCDNA3.4A発現ベクター(Invitrogen)に挿入した。発現ベクターとトランスフェクション試薬PEI(Polyscience,Inc.Cat.No.23966)で1:2の割合でHEK293細胞(LifeTechnologicsCat.NO.11625019)をトランスフェクトし、CO2インキュベーターで5~7日間インキュベートした。発現した抗体を遠心分離により回収し、常法に従って抗体精製を行い、本発明の抗PD-1ヒト化抗体(c11、c21、c31、c41、c51、c12、c22、c32、c42、c52、c43、c53、c44、c54)を得た。ここで、3つの抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)のアミノ酸配列は表5に示す。
【0080】
【0081】
配列番号3:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKSRVTMTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTVTVSS
【0082】
配列番号4:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMYWVRQAPGQGLEWIGGINPSNGGTNYAEKFKGRVTLTVDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTVTVSS
【0083】
配列番号5:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNYAQKFQGRATMTVDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRRDSNYDGGFDYWGQGTTVTVSS
【0084】
配列番号6:
DIQLTQSPSSLSASVGDRATITCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLAYHLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSVQPEDFATYYCQHSWELPITFGQGTKLEIKR
【0085】
配列番号7:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLAYHLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSWELPITFGQGTKLEIKR
【0086】
実施例10抗PD-1ヒト化抗体の親和性の特性評価
1、実験方法
組換え技術を利用して組換えヒトPD-1を細胞表面に発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)細胞系(CHO-hPD1)と、サルPD1を発現するCHO細胞系(CHO-cynoPD1)との両細胞系をフローサイトメトリー(FCM)による抗PD-1ヒト化候補モノクローナル抗体(c22、c43、c53)の結合特性評価に用いる。具体的な方法は以下の通りである。
【0087】
抗ヒト化抗体のCHO-hPD1への結合を評価するために、96ウェルプレートに2×105CHO-hPD1細胞及び濃度勾配で希釈した(初期濃度が30μg/mlで、3倍勾配希釈された。)ヒト化抗体を加え、4℃で30分間インキュベートし、細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で1回洗浄した後、PE標識抗ヒトIgG(Fc)Ab(Biolegend)蛍光二次抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PBSに再懸濁した。その後、細胞懸濁液をCytoFlex(Beckmanフローサイトメーター)によるフローサイトメトリー解析に供し、染色の平均蛍光強度(MFI)によって細胞に結合した抗体の量を測定した。同じ方法で、この抗ヒト化抗体とCHO-cyno細胞を評価した。
【0088】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の親和性の特性評価は表6に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、いずれもCHO-hPD1細胞及びCHO-cynoPD1細胞に高い親和性で結合することがが分かる。
【0089】
【0090】
実施例11抗PD-1ヒト化抗体と活性化されたPBMCとの結合
1、実験方法
新鮮なヒト末梢血単核球(PBMC)は、PHA(Sigma)の刺激下で、リンパ球が活性化して増殖され、3日目にPD1を最も多く発現させることができ、抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)と活性化されたリンパ球が自然に発現するPD1との結合実験を行うことができる。具体的な方法は以下の通りである。
【0091】
新鮮なヒト末梢血から、リンパ単離液による勾配遠心法によってPBMCを獲得し、1×106cells/mlの密度に調整してT75に接種し、同時に最終濃度1μg/mlのPHA-L(Sigma)を加えてリンパ球の増殖を刺激し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で3日間培養した後、細胞懸濁液を除去し、遠心分離によって上清を除去し、緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、96ウェルU-プレートに2E5/ウェルで加え、次に濃度勾配の異なるヒト化抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした後、300gで5分間遠心分離し、細胞を緩衝液で1回洗浄し、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSに再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリーで分析し、PBMCに結合した抗体の量を検出した。
【0092】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体と活性化されたPBMCとの結合能力の測定結果は表6に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体は活性化リンパ球に高い親和性で結合することが分かる。
【0093】
本発明の抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)は、実施例2と3の抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2(表1)と比較して、CHO-hPD1細胞、CHO-cyno細胞及び活性化されたPBMCとの結合能力がそれと同等である。
【0094】
実施例12抗PD-1ヒト化抗体の結合特異性
1、実験方法
本発明の抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)は、PD-1に対する抗PD-1ヒト化抗体の結合の特異性を確認するために、4つの異なるCD28ファミリーメンバータンパク質と結合させた。標準的なELISA法を用いて、濃度1μg/mlのPD-1(Acro)、CD28(Acro)、CTLA-4(Acro)、ICOSをELISAプレートに固定化し、濃度10μg/mlのヒト化抗体を加え、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ヒトIgG(Fab)を二次抗体とした。TMBで発色し、終止した後、OD450値をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0095】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の結合特異性の結果を表7に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体はいずれもPD-1に特異的に結合するが、CD28ファミリーの他のメンバーには結合しないことが分かる。
【0096】
【0097】
実施例13抗PD-1ヒト化抗体の親和性測定
1、実験方法
ForteBio(OctetQke)親和性測定:濃度5μg/mlのPD-1-his組換えタンパク質をHISIKバイオセンサーに120秒間ロードし、次にロードしたセンサーを標準緩衝液(PBST、PBS+0.02%Tuween20)で120秒間平衡化し、その後センサーを抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)希釈液の中に移し180秒間放置して結合速率を測定し、その後標準緩衝液に移し20分間放置して解離速率を測定した。最終的な解析、データ処理は動力学モデルを用いて行った。陽性対照としてOpdivo(ABA0333)を用いた。
【0098】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の親和性の測定結果を表8に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体はいずれもPD-1と高い親和性で結合することが分かる。
【0099】
本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、実施例5中の抗PD-1マウスモノクローナル抗体PD-1-112-C2(表3)と比較して、親和性がそれと同等である。本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、陽性対照Opdivo(表3)と比較して、親和性は有意に向上する。
【0100】
【0101】
実施例14抗PD-1ヒト化抗体のリガンドPD-L1/PD-L2とCHO-hPD1との結合に対する阻害
1、実験方法
フローサイトメトリーで、抗PD-1ヒト化抗体が、リガンドと、トランスフェクトしたCHO細胞の表面で安定に発現したPD-1への結合を阻害する能力を解析した。実験に使用したリガンドタンパク質は、組み換えPD-L1/PD-L2細胞外セグメントにmouseIgG1Fcセグメントを融合したタンパク質:PD-L1-mFc、PD-L2-mFcであった。
【0102】
CHO-PD1細胞を緩衝液(3%BSAを含有するPBS)で再懸濁し、密度を2×106cells/mlに調整し、100μl/ウェルの細胞懸濁液を96ウェルU-プレートに加え、300gで5分間遠心分離後、上清を除去した。細胞ウェルに、濃度0.2μg/mlのPD-L1-mFc/PD-L2-mFcを加え、4℃で30分間インキュベートした後、濃度勾配で希釈した抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)を加え、4℃で30分間インキュベートした。
【0103】
細胞を300gで5分間遠心分離し、緩衝液で1回洗浄した後、PE標識ヤギ抗マウスIgG蛍光抗体(Biolegend)を加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心分離で1回洗浄し、PBSで再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメトリー分析で細胞に結合したリガンドタンパク質の量を検出し、PD-1抗体結合阻害のIC50値を算出した。
【0104】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の親和性の測定結果は表9に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体はいずれもPD-L1/PD-L2と細胞CHO-PD1との結合を有効的に阻害することができることが分かる。
【0105】
【0106】
実施例15抗PD-1ヒト化抗体の混合リンパ球反応における影響
1、実験方法
混合リンパ球反応(MLR)において、抗PD-1ヒト化抗体存在の有無は、PD1シグナルが阻害された状況でのT細胞の増殖状況とT細胞のサイトカイン分泌レベルを証明することができる。具体的な方法は以下である。
【0107】
CD14MicroBeads,human(Miltenyi)を用いて新鮮なPBMCからCD14+単球(monocyte)を単離し、GM-CSF/IL-4の存在下で6日間誘導した後、TNF-αを添加して、3日間後DCの成熟を誘導した。実験当日、EasySep(商標)HumanTCellEnrichmentKit(StemCell)を用いてPBMC中のT細胞を精製し、1×104cells/ウェルのDC細胞と1×105cells/ウェルのT細胞を混合培養し、濃度勾配の異なる抗PD-1ヒト化抗体(c22、c43、c53)を混合細胞に添加し、さらにアイソタイプコントロール抗体を設置し、抗体対照ウェルはなかった。3日間の混合培養後、上清を採取してIL-2を検出し、もう2日間の培養後、上清を採取してIFN-γを検出した。
【0108】
3、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の混合リンパ球反応における影響の結果は表10に示す。結果から、本発明の抗PD-1ヒト化抗体は、MLR実験では、PD1のリガンドへの結合を阻害し、PD1シグナル伝達経路を阻害することができ、それによってT細胞の増殖及びT細胞のサイトカインIL-2、IFN-γ分泌を促進することが分かる。
【0109】
【0110】
実施例16抗PD-1ヒト化抗体のマウス結腸がん細胞に対する体内抗腫瘍効果評価
1、実験方法
実験目的:抗PD-1ヒト化抗体(c53)のマウス結腸がん細胞(MC38細胞)に対する体内抗腫瘍活性を測定し、同時にアイソタイプコントロール群(Isotype)、陽性対照群(Sintilimab)を設置した。
【0111】
実験材料:hPD1ノックインマウス、雌性、6~8週齢(C57BL/6バックグラウンド、ソース:北京維通達生物技術有限公司);MC38細胞(国家実験細胞共享資源プラットフォーム);FBS(Gibco,10091-148)、0.25%トリプシン-EDTA(Gibco,25200056)、DMSO(Sigma、D2650)、DPBS(Hyclone、SH30028.02)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco、15140122)、DMEM高糖培地(Gibco、11965084)。ウシ胎児血清(Gibco)、グルタミン(Gibco)。
【0112】
機器設備:電子天秤(上海舜宇恒平科学儀器有限公司、JA12002)、ノギス(上海美耐特実業有限公司、MNT-150T)、顕微鏡(重慶奥特光学儀器有限公司、BDS200)、医療用遠心分離機(湖南湘儀実験室開発有限公司、L530R)、デジタル表示式恒温水槽(普瑞斯機械有限公司、HH-S)、炭酸ガスインキュベーター(日本松下健康医療器械株式会社、MCO-18AC)、2人用縦型ウルトラクリーンテーブル(無錫易浄化設備有限公司、SW-CJ-VS2)。
【0113】
実験手順:
細胞培養:MC38細胞を10%ウシ胎児血清、1%グルタミン及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(1:1)を含有するDMEM高糖培地に培養した。
【0114】
接種:対数増殖期のMC38細胞を収集し、細胞濃度を3×106/mLに調整した。40匹の雌性hPD1マウスに、MC38細胞を0.1mL/マウス、即ち3×105/マウスとなるように皮下接種した。
【0115】
投与:接種日を0日目(D0)として記録し、7日目に腫瘍体積に応じてマウスを8匹ずつランダムに3群に分け、投与を開始した(MC38腫瘍モデル投与量、方式及び頻度は表11に示す)。
【表11】
【0116】
記録:D7から腫瘍体積を測定・記録し、続いて腫瘍の長径と短径をノギスを用いて週2回測定した。腫瘍体積は式:(1/2)×長径×(短径)2で算出した。各マウスが実験の終点に達した時点で(腫瘍体積が2000mm3を超えると善性終点に達した。)、マウスを頸椎脱臼法で処刑し、生存曲線を記録した。
【0117】
2、実験結果
抗PD-1ヒト化抗体の腫瘍体積に対する効果の結果は表12及び
図4に示す。抗PD-1ヒト化抗体(c53)は、Isotype群と比較して、MC38腫瘍モデルの腫瘍増殖に対して有意な腫瘍抑制作用(TGI=104.44%、腫瘍が完全に消失したマウスは7匹である。)を有し、Sintilimab群の抗腫瘍効果(TGI=105.81%、腫瘍が完全に消失したマウスは7匹である。)と同程度であったことが分かる。
【0118】
抗PD-1ヒト化抗体がマウスの生存期間に対する影響の結果は
図5に示し、抗PD-1ヒト化抗体(c53)は、Isotype群と比較して、マウスの生存期間を有意に延長させることができたことが分かる。
【0119】
【0120】
以上の結果から、本発明に提供される抗PD-1ヒト化抗体(c53)は、MC38細胞の生長を有意に抑制し、マウスの生存期間を効果的に延長することができ、マウスの結腸がんの治療に有意な有効性を有することが示される。
【0121】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であり、本発明の実施形態は上記の実施例に限定されず、本発明の趣旨と原理を逸脱せずに行われる他の変更、修正、置換、組み合わせ、簡素化は、いずれも同等な置換形態として、本発明の請求範囲に含まれるものとする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖CDR領域と重鎖CDR領域を含み、重鎖CDR領域がHCDR1、HCDR2、HCDR3からなり、軽鎖CDR領域がLCDR1、LCDR2、LCDR3からなり
、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は順に配列番号11~13に示される如きである抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片であって、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3~5のいずれかに示される如きであることを特徴とする抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6~7のいずれかに示される如きであることを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3
に示される如きで、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号6に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号4
に示される如きで、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示される如きで、又は前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号5
に示される如きで、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に示されるる如きであることを特徴とする請求項2に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記抗体は重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含有し、前記重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE又はIgMのうちのいずれか1種又は複数種であり、前記軽鎖定常領域はκ鎖又はλ鎖であることを特徴とする請求項
1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記抗体はキメラ抗体又は多重特異性抗体であり、前記抗原結合性断片はF(ab’)
2、Fab、scFv、Fv及びシングルドメイン抗体のうちのいずれか1種又は複数種であることを特徴とする請求項
1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
請求項
1に記載の抗PD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片をコードし、
好ましくは、前記核酸は、前記抗体又はその抗原結合性断片の重鎖可変領域をコードする第1核酸、及び/又は、前記抗体又はその抗原結合性断片の軽鎖可変領域をコードする第2核酸を含むことを特徴とする核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を携帯することを特徴とする
、ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを含有
することを特徴とする
、細胞。
【請求項9】
請求項
1に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター又は請求項8に記載の細胞を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項
1に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター、
又は請求項8に記載の細
胞の、PD-1媒介性疾患又は病状を治療するための薬物の製造における使用。
【請求項11】
PD-1媒介性疾患又は病状を治療するため
の請求項9に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】