(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ゴム補強用スチールコード
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20240515BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537241
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2021083627
(87)【国際公開番号】W WO2022135850
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/138103
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502385850
【氏名又は名称】エンベー ベカルト ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】NV Bekaert SA
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】チャン アイジュン
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA10
3B153AA11
3B153AA12
3B153AA15
3B153AA34
3B153CC52
3B153FF16
3B153GG25
3D131AA39
3D131AA40
3D131AA44
3D131AA46
3D131AA48
3D131BC51
3D131BC55
3D131DA01
3D131DA31
3D131LA28
(57)【要約】
本発明は、ゴム補強用スチールコードに関する。スチールコードは、外層と外層に取り囲まれた且つそれに隣接する内ストランドとを含む構築構造を有し、内ストランドは、N1の数及びmm単位で表されるd1の平均直径の少なくとも1つのスチールフィラメントを含み、外層は、N2の数及びmm単位で表されるd2の平均直径のスチールフィラメントを含み、内ストランドは、トルクT1を有し、且つ外層は、トルクT2を有し、T1とT2との関係が定義される。これを行うことにより、スチールコードにより補強されたゴムプライのティップ上昇問題が低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードであって、前記スチールコードが、外層と前記外層に取り囲まれた且つそれに隣接する内ストランドとを含む構築構造を有し、前記内ストランドが、N
1の数及びmm単位で表されるd
1の平均直径の少なくとも1つのスチールフィラメントを含み、前記外層が、N
2の数及びmm単位で表されるd
2の平均直径のスチールフィラメントを含み、特徴として、前記内ストランドが、トルクT
1を有し、前記外層が、トルクT
2を有し、T
1及びT
2が、下記式:
T
1=G×RT
1×π
2×D
1
2×d
1
2×N
1/16000、
T
2=G×RT
2×π
2×(D
1
2+D
2
2)×d
2
2×N
2/16000、
│T
1+T
2│<60、
を満たし、式中、
D
1が、前記内ストランドの理論直径であり、一方、D
2が、前記スチールコードの理論直径であり、D
1及びD
2が両方とも、mm単位で表され、
RT
1が、前記内ストランドの残留トーションであり、一方、RT
2が、前記外層の残留トーションであり、時計方向の場合「+」又は反時計方向の場合「-」の回転数/mで表され、
Gが、80000N/mm
2であり、
且つRT
2の絶対値が、2回転/メートル未満であり、且つRT
1の絶対値が、0.05回転/メートル以上である、スチールコード。
【請求項2】
T
1及びT
2が│T
1+T
2│<50を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
T
1及びT
2が│T
1+T
2│<40を満たすことを特徴とする、請求項2に記載のスチールコード。
【請求項4】
RT
1の絶対値が0.1回転/メートル以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項5】
RT
2の絶対値が0.05回転/メートル以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項6】
RT
2の絶対値が0.1回転/メートル以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項7】
RT
1及びRT
2が│RT
1+RT
2│<4を満たすことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項8】
前記スチールコードが2層構築構造を有し、N
1が、1、2、3、又は4であり、D
2の計算式が、以下:D
2=D
1+2×d
2であり、且つD
1の計算式が、以下:
N
1が1のとき、D
1=d
1、又は
N
1が2のとき、D
1=2×d
1、又は
N
1が3のとき、D
1=2.155×d
1、又は
N
1が4のとき、D
1=2.414×d
1
であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項9】
前記スチールコードが3層構築構造を有し、前記内ストランドが中間層と前記中間層に取り囲まれたコア層とを含み、前記コア層が、N
cの数及びd
cの平均直径の少なくとも1つのスチールフィラメントを含み、前記中間層が、d
mの平均直径のスチールフィラメントを含み、D
2の計算式が、以下:D
2=D
1+2×d
2であり、且つD
1の計算式が、以下:
N
cが1のとき、D
1=d
c+2×d
m、又は
N
cが2のとき、D
1=2×d
c+2×d
m、又は
N
cが3のとき、D
1=2.155×d
c+2×d
m、又は
N
cが4のとき、D
1=2.414×d
c+2×d
m
であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項10】
前記内ストランド及び前記外層が、40mm未満のツイストピッチを個別に有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項11】
前記スチールコードの各スチールフィラメントが、TS≧4000-2000×d(式中、dは、個別スチールフィラメントの直径である)を満たす引張り強度TSを有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項12】
TS≧4100-2000×dであることを特徴とする、請求項11に記載のスチールコード。
【請求項13】
前記スチールコードが、1+3、1+4、1+5、1+6、1+7、2+2、2+3、2+4、2+5、2+5cc、2+6、2+7、2+7cc、2+8、3+2、3+3、3+6、3+8、3+8cc、3+9、3+9cc、4+3、4+6、1+3+8、1+4+8cc、1+4+9、1+5+10、1+5+10cc、1+6+11、1+6+12、1+6+12cc、2+5+10、2+6+12、3+8+13、3+9+15、又は4+10+16の構築構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のスチールコード。
【請求項14】
少なくとも1つのベルト層、少なくとも1つのカーカス層、少なくとも1つのトレッド層、及び一対のビード部分を含むタイヤであって、前記ベルト層及び/又は前記カーカス層が、少なくとも1つの請求項1~13のいずれか一項に記載のスチールコードを含むことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用スチールコードに関する。本発明はまた、本発明のスチールコードにより補強されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
スチールコードは、ゴム製品に十分な強度を提供しうるとともにゴムとの良好な接着性を有しうるので、スチールコードは、ゴムベルト、ゴムタイヤやホースなどのゴム製品を補強するために広く使用されている。
【0003】
タイヤの1タイプであるラジアルタイヤは、少なくとも1つのベルト層、少なくとも1つのカーカス層、少なくとも1つのトレッド層、及び一対のビード部分を含む。ラジアルタイヤは、タイヤの本願に係るベルト層、カーカス層、又はトレッド層上に異なる設計の各種構造を有する。スチールコードは、タイヤに所望の強度を提供するためにベルト層、カーカス層、及び/又はチェーファー中に適用される。スチールコード適用の異なるタイヤ部分に依存して、スチールコードは、異なる構築及び性能パラメーターで設計される。
【0004】
埋設スチールコードを有するゴムプライは、ベルト層、カーカス層、及び/又はチェーファーを作製するための一構成要素である。ゴムプライは、ある特定の長さ、幅、及び厚さの小ピースにカットすることにより処理される。ゴム引きスチールコードプライは、ゴム引きスチールコードプライの長手方向軸に対して斜めの角度でカットされるか、又はゴム引きスチールコードプライの長手方向軸に対して垂直にカットされる。続いて、すべて同一形状を有するゴムプライの小ピースは、機械により一タイヤごとに所望の長さにスプライスされる。
【0005】
カッティング後、ゴム引きスチールコードプライの小ピースの4つのコーナーの1つ又はいくつかがときには平面から上昇するということが発生する。コーナーが10ミリメートル以上などのある特定の高さを超えて上昇した場合、これにより自動機械によるスプライシングが不可能になるので、手動でしかスプライシングが行えなくなり、このため作業効率の低下を招く。これは、「ティップ上昇問題」の発生とみなされる。スチールコードが層状構築構造を有するとき、この問題は相対的により多く発生した。
【0006】
米国特許第2017073888号明細書には、m+nの構築構造を形成するようにコア群とシース群とを含むスチールコードが開示されている。このスチールコードは、コア群及びシース群の残留トーション差の絶対値とコア群及びシース群間の飽和レベル差の絶対値との比をある特定の値範囲内にすることにより残留トーションを有しておらず、結果として、かかるスチールコードで補強されたゴムプライのティップ上昇は、低いか又はゼロである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主目的は、先行技術の問題を解決することである。
【0008】
本発明の他の一目的は、ゴムプライのティップ上昇問題を低減するためのスチールコードを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、改善された作業効率でタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、スチールコードが提供され、このスチールコードは、外層と外層に取り囲まれた且つそれに隣接する内ストランドとを含む構築構造を有し、内ストランドは、N1の数及びmm単位で表されるd1の平均直径の少なくとも1つのスチールフィラメントを含み、外層は、N2の数及びmm単位で表されるd2の平均直径のスチールフィラメントを含み、内ストランドは、トルクT1を有し、且つ外層は、トルクT2を有し、T1及びT2は、下記式:
T1=G×RT1×π2×D1
2×d1
2×N1/16000、
T2=G×RT2×π2×(D1
2+D2
2)×d2
2×N2/16000、
│T1+T2│<60、
を満たし、式中、D1は、内ストランドの理論直径であり、一方、D2は、スチールコードの理論直径であり、D1及びD2は両方とも、mm単位で表され、RT1は、内ストランドの残留トーションであり、一方、RT2は、外層の残留トーションであり、RT1及びRT2は両方とも、時計方向の場合「+」又は反時計方向の場合「-」の回転数/mで表され、Gは、80000N/mm2であり、RT1の絶対値は、0.05回転/メートル以上であり、且つRT2の絶対値は、2回転/メートル未満である。
【0011】
以上の式を満たす内ストランドのトルク及び外層のトルクを定義することにより、埋設されたスチールコードを有するゴムプライのティップ上昇問題の発生は低減される。
スチールコードの内ストランドのトルク及び外層のトルクは両方とも、ゴムプライのティップ上昇問題の発生に関連である。内ストランドのトルク及び外層のトルクの和が小さいほど、ゴムプライのティップ上昇問題の発生が少なくなる。
【0012】
異なる層の残留トーション及び/又はコードの残留トーションを定義する先行技術とは異なり、本発明は、ゴムプライのティップ上昇問題の発生を低減するために、外層のある特定の残留トーション及び内ストランドのある特定の残留トーションに基づいて、内ストランドのトルク及び外層のトルクを定義する。
【0013】
好ましくは、│T1+T2│<50。最も好ましくは、│T1+T2│<40。
【0014】
本発明によれば、RT1の絶対値は、好ましくは0.1回転/メートル以上である。
【0015】
好ましくは、RT2の絶対値は、0.05回転/メートル以上である。より好ましくは、RT2の絶対値は、0.1回転/メートル以上である。本発明は、RT2がこの値範囲にあるときに多く寄与する。
【0016】
ゴムプライのティップ上昇問題を低減するために、好ましくは、│RT1+RT2│<4。より好ましくは、│RT1+RT2│<2。ゴムプライのティップ上昇問題の発生は、それにより非常に低減される。
【0017】
本発明は、2つ、3つ、又はそれ以上の層の構築構造のスチールコード用である。
【0018】
D1は、内ストランドの理論直径であり、一方、D2は、スチールコードの理論直径、すなわち、外層の理論直径である。理論直径は、スチールコードの層又はストランドが円の形態であると仮定したとき、スチールコード構築構造、スチールフィラメント直径、及びスチールフィラメント数に基づいて計算される直径である。
【0019】
スチールコードが2層の構築構造を有するとき、N1は、1、2、3、又は4である。D2の計算式は、以下:D2=D1+2×d2であり、且つD1の計算式は、以下の通りである。
N1が1のとき、D1=d1、又は
N1が2のとき、D1=2×d1、又は
N1が3のとき、D1=2.155×d1、又は
N1が4のとき、D1=2.414×d1。
【0020】
スチールコードが3層の構築構造であるとき、つまり、内ストランドが中間層と中間層に取り囲まれたコア層とを含むとき、中間層は、外層に取り囲まれ、且つそれに隣接し、コア層は、Ncの数及びdcの平均直径の少なくとも1つのスチールフィラメントを含み、中間層は、dmの平均直径のスチールフィラメントを含み、D2の計算式は、以下:D2=D1+2×d2であり、且つD1の計算式は、以下の通りである。
Ncが1のとき、D1=dc+2×dm、又は
Ncが2のとき、D1=2×dc+2×dm、又は
Ncが3のとき、D1=2.155×dc+2×dm、又は
Ncが4のとき、D1=2.414×dc+2×dm。
【0021】
本発明によれば、スチールコードは、1+3、1+4、1+5、1+6、1+7、2+2、2+3、2+4、2+5、2+5cc、2+6、2+7、2+7cc、2+8、3+2、3+3、3+6、3+8、3+8cc、3+9、3+9cc、4+3、4+6、1+3+8、1+4+8cc、1+4+9、1+5+10、1+5+10cc、1+6+11、1+6+12、1+6+12cc、2+5+10、2+6+12、3+8+13、3+9+15、又は4+10+16の構築構造を有する。
【0022】
本発明は、非常に高い引張り強度のスチールフィラメントを有するスチールコードに有益である。好ましくは、スチールコードの各スチールフィラメントは、TS≧4000-2000×d(式中、dは、個別スチールフィラメントの直径である)、より好ましくはTS≧4100-2000×dを満たすTSの引張り強度を有する。
【0023】
内ストランド及び外層は、個別に、40mm未満のツイストピッチを有し、代替的に、内ストランドは、300mm超のツイストピッチを有し、一方、外層は、40mm未満のツイストピッチを有する。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、タイヤが提供される。タイヤは、少なくとも1つのベルト層、少なくとも1つのカーカス層、少なくとも1つのトレッド層、及び一対のビード部分を含み、ベルト層及び/又は前記カーカス層は、少なくとも1つのスチールコードを含み、このスチールコードは、外層と外層に取り囲まれた且つそれに隣接する内ストランドとを含む構築構造を有し、内ストランドは、N1の数及びd1の平均直径の少なくとも1つのスチールフィラメントを含み、外層は、N2の数及びd2の平均直径のスチールフィラメントを含み、内ストランドは、トルクT1を有し、且つ外層は、トルクT2を有し、T1及びT2は、下記式:
T1=G×RT1×π2×D1
2×d1
2×N1/16000、
T2=G×RT2×π2×(D1
2+D2
2)×d2
2×N2/16000、
│T1+T2│<60、
を満たし、式中、D1は、内ストランドの理論直径であり、一方、D2は、スチールコードの理論直径であり、D1及びD2は両方とも、mm単位で表され、RT1は、内ストランドの残留トーションであり、一方、RT2は、外層の残留トーションであり、RT1及びRT2は両方とも、時計方向の場合「+」又は反時計方向の場合「-」の回転数/mで表され、Gは、80000N/mm2であり、RT1の絶対値は、0.05回転/メートル以上であり、且つRT2の絶対値は、2回転/メートル未満である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ゴムプライのティップ上昇の測定を記載する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
スチールコード用スチールフィラメントは、ワイヤロッドから作製される。
【0027】
ワイヤロッドは、表面上に存在する酸化物を除去するために、機械的脱スケーリング及び/又はH2SO4若しくはHCl溶液での化学酸洗により最初にクリーニングされる。次いで、ワイヤロッドは、水で濯がれ、乾燥される。次いで、乾燥ワイヤロッドは、直径を第1の中間直径まで低減するために、第1の一連の乾式伸線操作に付される。
【0028】
この第1の中間直径では、たとえば、約3.0~3.5mmでは、乾式伸線スチールフィラメントは、パテンティングと呼ばれる第1の中間熱処理に付される。パテンティングは、約1000℃の温度まで最初にオーステナイト化し、続いて約600~650℃の温度でオーステナイトからパーライトに相変態させることを意味する。その時点で、スチールフィラメントは、さらなる機械的変形が可能な状態である。
【0029】
その後、スチールフィラメントは、第2のいくつかの直径低減ステップで、第2の中間直径まで第1の中間直径からさらに乾式伸線される。第2の直径は、典型的には1.0mm~2.5mmの範囲内である。
【0030】
この第2の中間直径では、スチールフィラメントは、第2のパテンティング処理に付される。すなわち、約1000℃の温度で再びオーステナイト化し、その後、600~650℃の温度でクエンチしてパーライトへの変態を可能にする。
【0031】
第1及び第2の乾式伸線ステップでの合計低減があまり大きくない場合、第2の中間直径までワイヤロッドから直接伸線操作を行うことが可能である。
【0032】
この第2のパテンティング処理後、スチールフィラメントには、通常、黄銅コーティングが設けられる。すなわち、スチールフィラメント上に銅をメッキしてから銅上に亜鉛上をメッキする。黄銅コーティングを形成するために、熱拡散処理が適用される。代替的に、スチールフィラメントには、銅、亜鉛、及び第3の合金成分のコバルト、チタン、ニッケル、鉄、又は他の既知金属を含む三元合金コーティングが設けられうる。
【0033】
次いで、黄銅被覆又は三元合金被覆スチールフィラメントは、湿式伸線機械を利用して、最終的な一連の断面低減に付される。最終製品は、0.70重量パーセント超、0.80重量パーセント以上、さらには0.90重量パーセント超の炭素含有率を有し、典型的には3000MPa超の引張り強度(TS)を有し、且つゴム製品の補強に適合化されたスチールフィラメントである。
【0034】
タイヤの補強に適合化されたスチールフィラメントは、典型的には0.05mm~0.60mm、たとえば、0.10mm~0.40mmの範囲内の最終直径を有する。ワイヤー直径の例は、0.10mm、0.12mm、0.15mm、0.175mm、0.18mm、0.20mm、0.22mm、0.245mm、0.28mm、0.30mm、0.32mm、0.35mm、0.38mm、0.40mmである。より良好には、スチールフィラメントの直径は、0.10mm~0.50mmの範囲内である。
【0035】
いくつかのスチールフィラメントは、外層と外層に取り囲まれた且つそれに隣接する内ストランドとを含む構築構造を有するスチールコードを形成するために、既存のスチールコード作製プロセス、すなわち、ケーブリング又はバンチングプロセスにより加撚される。
【0036】
スチールコードの構築構造に基づいて、内ストランドのトルク、外層のトルク、内ストランドの残留トーション、及び外層の残留トーションを本発明の式に従って設定する。既存の残留トーション制御方法により、たとえば、加撚後、フォールスツイスター又はストレートナーを用いて、内ストランドのあらかじめ決められた残留トーション及び外層のあらかじめ決められた残留トーションを実現可能である。
【実施例】
【0037】
表1に本発明及び参照の性能をまとめる。
【0038】
【0039】
以上の表のスチールコードのスチールフィラメントはすべて、TS≧4100-2000×d(式中、dは、個別スチールフィラメントの直径である)を有する。
【0040】
図1は、ティップ上昇値の測定を示す。スチールコード110が埋設されたゴムプライからカットされた小ピース100は、決定された長さ、幅、及び厚さを有する。ゴムプライの厚さは、タイヤ中のスチールコードの適用モードに従って設定可能であり、たとえば、ゴムプライの厚さは、スチールコードの直径+1.1mmであり、一方、ゴムプライの幅及び長さは両方とも、1メートルである。小ピース100の4つのコーナー105の2つが上昇する。値Tは、小ピースの厚さ方向から測定される。2つの上昇コーナー105の2つのT値の大きい方がゴムプライのティップ上昇値である。ティップ上昇値が10mm超の場合、それはティップ上昇問題の発生とみなされる。
【0041】
スチールフィラメントの直径及びスチールコードの残留トーションの測定方法は、GB/T33159-2016に明確に記載されている。
【0042】
内ストランドの残留トーション及び外層の残留トーションは、以下のように測定される。
a)溶融によりスチールコードサンプルの2つの端(「第1の端」及び「第2の端」)にフレアがないようにして、約1.2mの長さのスチールコードサンプルを準備し、2つのクランプ(「第1のクランプ」及び「第2のクランプ」)が設置されたラックを準備し(2つのクランプは、1mの距離で同一水平レベルに配置される)、
b)第1のクランプ及び第2のクランプによりスチールコードサンプルをクランプし(第1のクランプは、スチールコードサンプルの第1の端の近くにあり、且つスチールコードサンプルの第1の端から第1のクランプまでの長さは、約5cm~7cm(「スチールコードの逆進長さ」)であり、
c)第1のクランプを開いてスチールコードサンプルの残留トーションを解放し、その際、スチールコードサンプルを第1のクランプでクランプされるべき部分から上方向に曲げてスチールコードの逆進長さが水平レベルにほとんど垂直になるようにし(「曲げ部分」)、新たに発生するトーションを解放することがないように曲げ操作がスチールコードサンプルに対していかなるトーションも発生しないことを確認し、
d)第1の端をカットし、第2のクランプによりクランプされたスチールコードサンプルの部分まで曲げ部分の長さに沿って外層のスチールフィラメントを剥離し、第1のクランプにより内ストランドをクランプして、その際、外層のスチールフィラメントの剥離がかかる操作を可能にするのに十分であるようにし、外層の曲げ部分及び内ストランドの曲げ部分が別々の群として剥離操作時に水平レベルに常に垂直であることを確認し、
e)外層の曲げ部分を解放して外層の曲げ部分の回転数を観測及び記録し、これを外層の残留トーションRT
2とし、次いで、内ストランドの曲げ部分を解放して内ストランドの曲げ部分の回転数を観測及び記録し、これを内ストランドの残留トーションRT
1とし、残留トーションの記録は、0.05回転/m(回転度の18°に対応する)の単位とし、時計方向の場合「+」又は反時計方向の場合「-」で、曲げ部分の回転が第2のクランプの方向に対面するとき、観測を行う。
図2a-2bは、残留トーションの例を示し、
図2aは、反時計方向に残留トーション0.05、0.25、0.5、0.75、及び1.0の例を示し、
図2bは、時計方向に残留トーション0.15、0.25、0.5、0.75、及び1.0の例を示す。
【0043】
表1から、本発明のスチールコードは、ティップ上昇問題を有しておらず、参照スチールコードと比較してティップ上昇に関してより良好な性能を有することは明らかである。
【国際調査報告】