(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-22
(54)【発明の名称】露出した円筒横断面を備える環状の圧延素材をリング圧延機において圧延する方法ならびに該方法を実施するリング圧延機
(51)【国際特許分類】
B21B 5/00 20060101AFI20240515BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B21B5/00
H05B6/10
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568167
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022061712
(87)【国際公開番号】W WO2022233787
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021204433.6
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ゲルハウス
(72)【発明者】
【氏名】イェンス リーメル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ランゲユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フォークト
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB28
3K059AC37
3K059AD25
3K059CD14
3K059CD62
3K059CD75
3K059CD77
(57)【要約】
本発明は、圧延素材(5)に対して予め規定された結合間隔をあけて保持され、変形加工工程中、圧延素材(5)の寸法変化に対応して追従させられるかまたは連行される少なくとも1つのインダクタ(12)を使用して、圧延工程中に圧延素材(5)を誘導加熱しながら、露出した円筒横断面を備える環状の圧延素材(5)をリング圧延機(1)において圧延する方法において、インダクタ(12)により、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界を圧延素材(5)中に直接に入力する、方法に関する。本発明はさらに、この方法を実施するリング圧延機(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延素材(5)に対して予め規定された結合間隔をあけて保持され、変形加工工程中、前記圧延素材(5)の寸法変化に対応して追従させられるかまたは連行される少なくとも1つのインダクタ(12)を使用して、圧延工程中に前記圧延素材(5)を誘導加熱しながら、露出した円筒横断面を備える環状の前記圧延素材(5)をリング圧延機(1)において圧延する方法において、前記インダクタ(12)により、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界を前記圧延素材(5)中に直接に入力する、方法。
【請求項2】
前記インダクタ(12)を、前記圧延工程中、前記圧延素材(5)の外周において位置決めし、保持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記インダクタ(12)を、少なくとも1つの運動軸線上で少なくとも1回直線運動および回転運動させることで制御して追従させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記圧延素材(5)に対する前記インダクタ(12)の実際間隔を、前記圧延工程中にセンサにより検出し、前記結合間隔を、前記実際間隔に応じて目標間隔として自動的に制御する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記圧延素材からの前記インダクタ(12)の前記実際間隔の前記センサによる検出を、接触式または非接触式に行う、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記実際間隔の前記接触式の検出は、少なくとも1つの接触ローラを用いて行うか、または前記圧延素材の外周面に係合させられる少なくとも1つのスペーサ(16)を用いて行う、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記実際間隔の前記非接触式の検出は、少なくとも1つの光学センサを用いて行う、請求項5記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記インダクタ(12)との誘導結合を、前記圧延素材(5)の回転方向において少なくとも、前記リング圧延機(1)の主ローラ(2)またはアキシャルローラユニットの手前で行う、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの前記インダクタ(12)との誘導結合を、前記圧延素材(5)の回転方向において少なくとも、前記リング圧延機(1)の主ローラ(2)またはアキシャルローラユニットの手前で行う、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記インダクタ(12)を、少なくとも2の自由度、好適には3の自由度を有する支持アーム(11)において案内する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
好適にはラジアルリング圧延機またはラジアル-アキシャルリング圧延機として、好適には請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施するリング圧延機(1)であって、少なくとも1つの駆動される主ローラ(2)と、少なくとも1つのマンドレルローラ(3)と、好適には少なくとも2つのアキシャルローラ(8)と、環状の圧延素材(5)をセンタリングする手段とを備えた、リング圧延機(1)において、
少なくとも1つのインダクタ(12)が、圧延工程中に前記圧延素材(5)に対して予め規定された結合間隔をあけて前記圧延素材(5)の外周に位置決め可能であると共に、前記圧延素材(5)の寸法変化に対応して追従可能であり、前記インダクタ(12)により、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界を前記圧延素材(5)中に誘導することができることを特徴とする、リング圧延機(1)。
【請求項12】
前記インダクタ(12)は、少なくとも2の自由度で、好適には3の自由度で可動のマニピュレータ(9)の支持アーム(11)に取り付けられている、請求項11記載のリング圧延機。
【請求項13】
前記インダクタ(12)は、当該リング圧延機(1)のアキシャル架台(10)の支持アーム(11)に取り付けられている、請求項11記載のリング圧延機。
【請求項14】
前記インダクタ(12)は、少なくとも2つのスペーサ(16)を有しており、該スペーサ(16)は、前記圧延素材(5)の外周面に係合可能であり、その際に、前記圧延素材(5)の前記外周面に対する少なくとも1つの誘導コイル(15)の所定の間隔を規定する、請求項11から13までのいずれか1項記載のリング圧延機。
【請求項15】
前記誘導コイル(15)の位置は、前記スペーサ(16)に対して変位可能である、請求項14記載のリング圧延機。
【請求項16】
前記インダクタ(12)は、前記圧延素材(5)の回転方向において少なくとも、前記主ローラ(2)または前記アキシャルローラ(8)の手前に配置されている、請求項11から15までのいずれか1項記載のリング圧延機。
【請求項17】
前記圧延素材(5)の回転方向において前記主ローラ(2)の手前と前記アキシャルローラ(8)の手前とに、各1つの前記インダクタ(12)が配置されている、請求項11から16までのいずれか1項記載のリング圧延機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延工程中に圧延素材を誘導加熱しながら、露出した円筒横断面を備える環状の圧延素材をリング圧延機において圧延する方法に関する。
【0002】
本発明は特に、様々な鋼種ならびに例えばチタンを基礎とした合金およびニッケルを基礎とした合金、銅合金およびアルミニウム合金等の特殊合金から成る、矩形横断面または成形横断面を備えた金属リングを圧延により製造する方法に関する。
【0003】
環状の圧延素材の圧延における圧延工程中の圧延素材の誘導加熱は、例えば米国特許出願公開第2012/0279268号明細書から基本的に公知である。この文献は、誘導によりワークを電気的に加熱すると同時に環状のワークを鍛造する方法に関する。この公知の方法は、約1000Hz以下の範囲の低周波の交流電流が供給されるコイルが巻き付けられた、閉じられたまたはC字形に形成された磁化可能なコアにより、ワークを部分的にまたは完全に包囲するステップを含む。またこの公知の方法は、とりわけ磁気的または磁化可能なコアによりワークを包囲することが必要とされることに基づき面倒であり、手間がかかる。
【0004】
別の従来技術は、中国特許出願公開第109590417号明細書、中国特許出願公開第109663821号明細書、および特開平1-237036号公報から公知である。
【0005】
本発明の根底を成す課題は、変形加工中のワークの熱損失を補償すると共に、圧延工程中の圧延素材の誘導加熱を特に最小限の手間で達成することが簡単に可能である、冒頭で述べた形式の方法を提供することにある。
【0006】
圧延中の温度管理は、特に放射による熱損失に抗することが望ましい。圧延時の圧延素材の大きさの増大もしくはリングの直径の増大に伴い、表面積が増大し、このことは、熱損失の増大につながる。本発明により、このような熱損失を補償したい。
【0007】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する方法ならびに請求項11記載の特徴を有するリング圧延機により解決される。
【0008】
本発明の1つの観点によれば、本方法は、圧延素材に対して予め規定された一定の結合間隔をあけて保持され、変形加工工程中、圧延素材の寸法変化に対応して追従させられるかまたは連行される少なくとも1つのインダクタの使用を含み、この場合、このインダクタにより、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界が圧延素材中に直接に入力される。
【0009】
導電性のコアによる圧延素材の包囲または圧延素材の部分的な包囲は、本発明による方法では想定されておらず、不要である。その代わりに、少なくとも1つのインダクタが、圧延素材に対して比較的小さな間隔をあけて位置決めされ、圧延工程中はそこに保持される。圧延素材中への交番磁界の誘導と、これに付随する圧延素材の加熱とを可能にするように設定されたこの間隔は、本出願において結合間隔と称される。
【0010】
インダクタは、扁平なコイル、またはC字形もしくはL字形に形成されたコイルとして形成されていてよい。
【0011】
インダクタは、好適には圧延工程中、圧延素材の外周において位置決めされ、保持される。両側が開いた円筒リングの形の、好適には成形横断面を有する圧延素材は、変形加工工程中に寸法が変化させられる。環状の圧延素材の直径は拡大し、リングの高さは減少し、リングの幅も同様に減少する。これに相応して、本発明では、インダクタを、圧延素材の寸法変化に対応して、圧延素材に対して一定の結合間隔をあけて追従させることが想定されている。
【0012】
基本的に、インダクタは支持アームに取り付けられていてよく、支持アームは、例えばリング圧延機のアキシャルローラ用のローラ架台と共に、環状の圧延素材の直径拡大に追従することができる。支持アームは、例えばローラ架台に取り付けられていてよい。
【0013】
択一的に、インダクタは、少なくとも1つのマニピュレータにより、所定の運動軸線上で少なくとも1回直線運動および/または回転運動させられることで制御されて追従させられる、ということが想定されていてよい。このことは特に、少なくとも1つのインダクタが配置されていてよい多軸式の産業用ロボットにより実現され得る。
【0014】
本発明による方法の1つの有利な変化形では、圧延素材に対するインダクタの実際間隔が、圧延工程中にセンサにより検出され、結合間隔が、実際間隔に応じて目標間隔として自動的に制御される、ということが想定されている。このような制御は、このために設けられたリング圧延機の制御ユニットにより実施され得る。択一的に、この制御を別個の制御ユニットにより行うこともできる。
【0015】
好適には、圧延素材からのインダクタの実際間隔のセンサによる検出は、接触式または非接触式に行われる。実際間隔を接触式に検出する場合、このことは、例えばインダクタに直接に取り付けられていてよい少なくとも1つの接触ローラを用いて行うことができる。
【0016】
本発明による方法の1つの好適な変化形では、インダクタの、圧延素材からの間隔は、圧延工程中に圧延素材に当接するスペーサにより規定される、ということが想定されている。
【0017】
択一的または追加的に、少なくとも1つの光学センサを用いた、実際間隔の非接触式の検出が想定されていてもよい。
【0018】
本発明による方法の1つの好適な変化形では、少なくとも1つのインダクタとの誘導結合を、圧延素材の回転方向において少なくとも、リング圧延機の主ローラまたはアキシャルローラユニットの手前で行う、ということが想定されており、これにより、圧延素材の加熱はその都度、圧延素材に主ローラが係合する直前に、またはアキシャルローラユニットが係合する直前に行われる。本発明は、1つまたは複数のインダクタが、リング圧延機の任意の個所で圧延素材の周囲に設けられていてよい、ということを意味する。
【0019】
さらに、リング圧延機がラジアル-アキシャルリング圧延機として形成されている場合には、少なくとも2つのインダクタを、例えば圧延素材の回転方向において少なくとも、リング圧延機の主ローラの手前かつアキシャルローラユニットの手前で圧延素材の周囲に位置決めすることができる、ということが想定されていてよい。
【0020】
既に上述したように、インダクタが、好適には少なくとも2の自由度、好適には3の自由度を有する支持アームにおいて案内されると有利である。好適には、インダクタは、直線的に摺動可能にも、回転可能にも案内される。
【0021】
本発明に基づき、インダクタは、圧延工程中、半径の増大におよび円筒形の圧延素材の回転軸線の変位に伴い、連行される。
【0022】
本発明の別の観点は、好適には上述の方法を実施するように形成されたリング圧延機に関する。リング圧延機は、好適にはラジアルリング圧延機またはラジアル-アキシャルリング圧延機として形成されていて、少なくとも1つの駆動される主ローラと、少なくとも1つのマンドレルローラと、好適にはさらに少なくとも2つの、好適には円錐ローラとしてのアキシャルローラと、環状の圧延素材をセンタリングする手段とを含む。本発明によるリング圧延機は、少なくとも1つのインダクタが、圧延工程中に圧延素材に対して予め規定された結合間隔をあけて圧延素材の外周に位置決め可能であると共に、一定の結合間隔を保つために、圧延素材の寸法変化に対応して追従可能である、という点において優れており、この場合、インダクタにより、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界を圧延素材中に誘導することができる。アキシャルローラのうちの少なくとも1つは、駆動されるローラとして形成されていてよい。
【0023】
リング圧延機は、ラジアルリング圧延機として形成されていてよいか、またはラジアル-アキシャルリング圧延機として形成されていてよい。後者の場合にのみ、本発明によるリング圧延機械は、アキシャルローラを含む。
【0024】
圧延素材をセンタリングする手段として、圧延工程中に圧延素材の外周面に当接するセンタリングローラを備えた旋回アームが設けられていてよい。
【0025】
本発明によるリング圧延機の1つの好適な変化形では、インダクタは、少なくとも2の自由度で、好適には3の自由度で可動のマニピュレータの支持アームに取り付けられている、ということが想定されている。
【0026】
本発明によるリング圧延機の1つの別の有利な変化形では、インダクタは、圧延素材の回転方向において少なくとも、主ローラまたはアキシャルローラの手前に配置されている、ということが想定されている。
【0027】
択一的に、圧延素材の回転方向において主ローラの手前とアキシャルローラの手前とに、各1つのインダクタが配置されている、ということが想定されていてよい。
【0028】
本発明は、3つ以上のインダクタが圧延素材の周囲に設けられていてよい、ということを意味する。
【0029】
以下に、図示の実施例を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【0031】
図示のリング圧延機1は、駆動される主ローラ2と圧延台4とを含む。符号5で示す圧延素材は、閉じられたリングとして、もしくは両側が開いた円筒として形成されている。圧延素材5は、矩形の横断面輪郭を有しており、圧延台4に載置される。圧延素材5は、主ローラ2とマンドレルローラ3との間で時計回り方向に、壁厚さを減じつつ半径方向に圧延されると同時に、高さを減じつつ軸線方向に圧延される。このとき圧延素材5は、旋回アーム6に取り付けられたセンタリングローラ7により、リング圧延機1においてセンタリングされる。軸線方向において、圧延素材5は2つのアキシャルローラ8により圧延される。アキシャルローラ8は、円錐ローラとして形成されており、アキシャル架台10に支持されている。アキシャル架台10は、圧延工程時に、半径の拡大により変位する圧延素材5の中心点に対して移動可能もしくは調節可能であり、しかも圧延素材5に対して半径方向に移動可能もしくは調節可能である。
【0032】
説明した実施例では、アキシャル架台10に支持アーム11が取り付けられており、支持アーム11の、支持アーム11から離反する方向で圧延素材5に対して半径方向内側に向けられた端部に、インダクタ12が配置されている。既に上述したように、インダクタ12は択一的には、リング圧延機1の周囲に設置された産業用ロボットのジョイントアームに取り付けられていてもよい。
【0033】
図3から判るように、インダクタ12は、ベースプレート13上に配置された変圧器ユニット14ならびに誘導コイル15を含む。変圧器ユニット14は、空冷ケーブルおよび/または水冷ケーブルを介してコンデンサキャビネット(図示せず)に接続されており、周波数変換器の出力電圧に誘導電圧を電気的に適合させるために働く。周波数変換器は、4~10kHzの周波数範囲で動作する。ベースプレート13にはさらに2つのスペーサ16が配置されており、これらのスペーサ16の間に誘導コイル15が位置している。スペーサ16は、圧延素材5の回転軸線に対して平行に延びる接触ローラとして形成されており、接触ローラのローラヘッド17は、圧延工程中、圧延素材5に係合して保持される。スペーサ16は水冷式である。冷媒が通流する前述のスペーサ16用に、冷却媒体接続部18が設けられている。
【0034】
誘導コイルと変圧器ユニットとスペーサ16とは、ベースプレートに、直線的にも回動可能にも変位することができるように配置されている。上述のように、圧延素材5の半径は圧延工程中に拡大し、その結果、誘導コイル15と圧延素材5との間の間隔が増大する可能性があるため、スペーサ16と誘導コイル15との間の、大幅な直線的な変位が想定されている。この変位により、圧延素材に対する誘導コイル15の間隔を一定に保つことができる、ということが保証されている。
【0035】
インダクタ12を、圧延工程全体にわたり圧延素材5の外周に対して一定の狭い結合間隔をあけて案内し、保持することができるようにするために、さらに支持アーム11が、アキシャル架台10と共に圧延素材に対して半径方向に摺動可能である。圧延工程中に、一方では圧延素材5の高さが減じられ、他方では圧延素材5の直径が拡大させられるため、支持アーム11は、少なくとも圧延素材5に対して半径方向に変位させられねばならない。
【0036】
図3に示す誘導コイル15は、環状の圧延素材5の下面の一部の下側に延びる、ほぼL字形の横断面輪郭を有している。本発明に基づき、誘導コイルは、別の幾何学形状を有していてもよい。誘導コイル15が環状の圧延素材5の下面の下側に延びるということは必須ではない。
【符号の説明】
【0037】
1 リング圧延機
2 主ローラ
3 マンドレルローラ
4 圧延台
5 圧延素材
6 旋回アーム
7 センタリングローラ
8 アキシャルローラ
9 マニピュレータ
10 アキシャル架台
11 支持フレーム
12 インダクタ
13 ベースプレート
14 変圧器ユニット
15 誘導コイル
16 スペーサ
17 ローラヘッド
18 冷却媒体接続部
【手続補正書】
【提出日】2022-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延工程中に圧延素材を誘導加熱しながら、露出した円筒横断面を備える環状の圧延素材をリング圧延機において圧延する方法に関する。
【0002】
本発明は特に、様々な鋼種ならびに例えばチタンを基礎とした合金およびニッケルを基礎とした合金、銅合金およびアルミニウム合金等の特殊合金から成る、矩形横断面または成形横断面を備えた金属リングを圧延により製造する方法に関する。
【0003】
環状の圧延素材の圧延における圧延工程中の圧延素材の誘導加熱は、例えば米国特許出願公開第2012/0279268号明細書から基本的に公知である。この文献は、誘導によりワークを電気的に加熱すると同時に環状のワークを鍛造する方法に関する。この公知の方法は、約1000Hz以下の範囲の低周波の交流電流が供給されるコイルが巻き付けられた、閉じられたまたはC字形に形成された磁化可能なコアにより、ワークを部分的にまたは完全に包囲するステップを含む。またこの公知の方法は、とりわけ磁気的または磁化可能なコアによりワークを包囲することが必要とされることに基づき面倒であり、手間がかかる。
【0004】
別の従来技術は、中国特許出願公開第109590417号明細書、中国特許出願公開第109663821号明細書、および特開平1-237036号公報から公知である。
【0005】
請求項1の上位概念に記載の方法ならびに請求項7の上位概念に記載のリング圧延機は、欧州特許出願公開第3385005号明細書から公知である。
【0006】
本発明の根底を成す課題は、変形加工中のワークの熱損失を補償すると共に、圧延工程中の圧延素材の誘導加熱を特に最小限の手間で達成することが簡単に可能である、冒頭で述べた形式の方法を提供することにある。
【0007】
圧延中の温度管理は、特に放射による熱損失に抗することが望ましい。圧延時の圧延素材の大きさの増大もしくはリングの直径の増大に伴い、表面積が増大し、このことは、熱損失の増大につながる。本発明により、このような熱損失を補償したい。
【0008】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する方法ならびに請求項11記載の特徴を有するリング圧延機により解決される。
【0009】
本発明の1つの観点によれば、本方法は、圧延素材に対して予め規定された一定の結合間隔をあけて保持され、変形加工工程中、圧延素材の寸法変化に対応して追従させられるかまたは連行される少なくとも1つのインダクタの使用を含み、この場合、このインダクタにより、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界が圧延素材中に直接に入力される。
【0010】
導電性のコアによる圧延素材の包囲または圧延素材の部分的な包囲は、本発明による方法では想定されておらず、不要である。その代わりに、少なくとも1つのインダクタが、圧延素材に対して比較的小さな間隔をあけて位置決めされ、圧延工程中はそこに保持される。圧延素材中への交番磁界の誘導と、これに付随する圧延素材の加熱とを可能にするように設定されたこの間隔は、本出願において結合間隔と称される。
【0011】
インダクタは、扁平なコイル、またはC字形もしくはL字形に形成されたコイルとして形成されていてよい。
【0012】
インダクタは、圧延工程中、圧延素材の外周において位置決めされ、保持される。両側が開いた円筒リングの形の、好適には成形横断面を有する圧延素材は、変形加工工程中に寸法が変化させられる。環状の圧延素材の直径は拡大し、リングの高さは減少し、リングの幅も同様に減少する。これに相応して、本発明では、インダクタを、圧延素材の寸法変化に対応して、圧延素材に対して一定の結合間隔をあけて追従させることが想定されている。
【0013】
基本的に、インダクタは支持アームに取り付けられていてよく、支持アームは、例えばリング圧延機のアキシャルローラ用のローラ架台と共に、環状の圧延素材の直径拡大に追従することができる。支持アームは、例えばローラ架台に取り付けられていてよい。
【0014】
択一的に、インダクタは、少なくとも1つのマニピュレータにより、所定の運動軸線上で少なくとも1回直線運動および/または回転運動させられることで制御されて追従させられる、ということが想定されていてよい。このことは特に、少なくとも1つのインダクタが配置されていてよい多軸式の産業用ロボットにより実現され得る。
【0015】
本発明による方法では、圧延素材に対するインダクタの実際間隔が、圧延工程中にセンサにより検出され、結合間隔が、実際間隔に応じて目標間隔として自動的に制御される、ということが想定されている。このような制御は、このために設けられたリング圧延機の制御ユニットにより実施され得る。択一的に、この制御を別個の制御ユニットにより行うこともできる。
【0016】
本発明に基づき、圧延素材からのインダクタの実際間隔のセンサによる検出は、少なくとも2つの接触ローラまたはスペーサを用いて接触式に行われ、この場合、インダクタの、圧延素材からの間隔は、圧延工程中に圧延素材に当接するスペーサにより規定される。
【0017】
追加的に、少なくとも1つの光学センサを用いた、実際間隔の非接触式の検出が想定されていてもよい。
【0018】
本発明による方法の1つの好適な変化形では、少なくとも1つのインダクタとの誘導結合を、圧延素材の回転方向において少なくとも、リング圧延機の主ローラまたはアキシャルローラユニットの手前で行う、ということが想定されており、これにより、圧延素材の加熱はその都度、圧延素材に主ローラが係合する直前に、またはアキシャルローラユニットが係合する直前に行われる。本発明は、1つまたは複数のインダクタが、リング圧延機の任意の個所で圧延素材の周囲に設けられていてよい、ということを意味する。
【0019】
さらに、リング圧延機がラジアル-アキシャルリング圧延機として形成されている場合には、少なくとも2つのインダクタを、例えば圧延素材の回転方向において少なくとも、リング圧延機の主ローラの手前かつアキシャルローラユニットの手前で圧延素材の周囲に位置決めすることができる、ということが想定されていてよい。
【0020】
既に上述したように、インダクタが、好適には少なくとも2の自由度、好適には3の自由度を有する支持アームにおいて案内されると有利である。好適には、インダクタは、直線的に摺動可能にも、回転可能にも案内される。
【0021】
本発明に基づき、インダクタは、圧延工程中、半径の増大におよび円筒形の圧延素材の回転軸線の変位に伴い、連行される。
【0022】
本発明の別の観点は、好適には上述の方法を実施するように形成されたリング圧延機に関する。リング圧延機は、好適にはラジアルリング圧延機またはラジアル-アキシャルリング圧延機として形成されていて、少なくとも1つの駆動される主ローラと、少なくとも1つのマンドレルローラと、好適にはさらに少なくとも2つの、好適には円錐ローラとしてのアキシャルローラと、環状の圧延素材をセンタリングする手段とを含む。本発明によるリング圧延機は、少なくとも1つのインダクタが、圧延工程中に圧延素材に対して予め規定された結合間隔をあけて圧延素材の外周に位置決め可能であると共に、一定の結合間隔を保つために、圧延素材の寸法変化に対応して追従可能である、という点において優れており、この場合、インダクタにより、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界を圧延素材中に誘導することができる。アキシャルローラのうちの少なくとも1つは、駆動されるローラとして形成されていてよい。
【0023】
リング圧延機は、ラジアルリング圧延機として形成されていてよいか、またはラジアル-アキシャルリング圧延機として形成されていてよい。後者の場合にのみ、本発明によるリング圧延機械は、アキシャルローラを含む。
【0024】
圧延素材をセンタリングする手段として、圧延工程中に圧延素材の外周面に当接するセンタリングローラを備えた旋回アームが設けられていてよい。
【0025】
本発明によるリング圧延機の1つの好適な変化形では、インダクタは、少なくとも2の自由度で、好適には3の自由度で可動のマニピュレータの支持アームに取り付けられている、ということが想定されている。
【0026】
本発明によるリング圧延機の1つの別の有利な変化形では、インダクタは、圧延素材の回転方向において少なくとも、主ローラまたはアキシャルローラの手前に配置されている、ということが想定されている。
【0027】
択一的に、圧延素材の回転方向において主ローラの手前とアキシャルローラの手前とに、各1つのインダクタが配置されている、ということが想定されていてよい。
【0028】
本発明は、3つ以上のインダクタが圧延素材の周囲に設けられていてよい、ということを意味する。
【0029】
以下に、図示の実施例を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【0031】
図示のリング圧延機1は、駆動される主ローラ2と圧延台4とを含む。符号5で示す圧延素材は、閉じられたリングとして、もしくは両側が開いた円筒として形成されている。圧延素材5は、矩形の横断面輪郭を有しており、圧延台4に載置される。圧延素材5は、主ローラ2とマンドレルローラ3との間で時計回り方向に、壁厚さを減じつつ半径方向に圧延されると同時に、高さを減じつつ軸線方向に圧延される。このとき圧延素材5は、旋回アーム6に取り付けられたセンタリングローラ7により、リング圧延機1においてセンタリングされる。軸線方向において、圧延素材5は2つのアキシャルローラ8により圧延される。アキシャルローラ8は、円錐ローラとして形成されており、アキシャル架台10に支持されている。アキシャル架台10は、圧延工程時に、半径の拡大により変位する圧延素材5の中心点に対して移動可能もしくは調節可能であり、しかも圧延素材5に対して半径方向に移動可能もしくは調節可能である。
【0032】
説明した実施例では、アキシャル架台10に支持アーム11が取り付けられており、支持アーム11の、支持アーム11から離反する方向で圧延素材5に対して半径方向内側に向けられた端部に、インダクタ12が配置されている。既に上述したように、インダクタ12は択一的には、リング圧延機1の周囲に設置された産業用ロボットのジョイントアームに取り付けられていてもよい。
【0033】
図3から判るように、インダクタ12は、ベースプレート13上に配置された変圧器ユニット14ならびに誘導コイル15を含む。変圧器ユニット14は、空冷ケーブルおよび/または水冷ケーブルを介してコンデンサキャビネット(図示せず)に接続されており、周波数変換器の出力電圧に誘導電圧を電気的に適合させるために働く。周波数変換器は、4~10kHzの周波数範囲で動作する。ベースプレート13にはさらに2つのスペーサ16が配置されており、これらのスペーサ16の間に誘導コイル15が位置している。スペーサ16は、圧延素材5の回転軸線に対して平行に延びる接触ローラとして形成されており、接触ローラのローラヘッド17は、圧延工程中、圧延素材5に係合して保持される。スペーサ16は水冷式である。冷媒が通流する前述のスペーサ16用に、冷却媒体接続部18が設けられている。
【0034】
誘導コイルと変圧器ユニットとスペーサ16とは、ベースプレートに、直線的にも回動可能にも変位することができるように配置されている。上述のように、圧延素材5の半径は圧延工程中に拡大し、その結果、誘導コイル15と圧延素材5との間の間隔が増大する可能性があるため、スペーサ16と誘導コイル15との間の、大幅な直線的な変位が想定されている。この変位により、圧延素材に対する誘導コイル15の間隔を一定に保つことができる、ということが保証されている。
【0035】
インダクタ12を、圧延工程全体にわたり圧延素材5の外周に対して一定の狭い結合間隔をあけて案内し、保持することができるようにするために、さらに支持アーム11が、アキシャル架台10と共に圧延素材に対して半径方向に摺動可能である。圧延工程中に、一方では圧延素材5の高さが減じられ、他方では圧延素材5の直径が拡大させられるため、支持アーム11は、少なくとも圧延素材5に対して半径方向に変位させられねばならない。
【0036】
図3に示す誘導コイル15は、環状の圧延素材5の下面の一部の下側に延びる、ほぼL字形の横断面輪郭を有している。本発明に基づき、誘導コイルは、別の幾何学形状を有していてもよい。誘導コイル15が環状の圧延素材5の下面の下側に延びるということは必須ではない。
【符号の説明】
【0037】
1 リング圧延機
2 主ローラ
3 マンドレルローラ
4 圧延台
5 圧延素材
6 旋回アーム
7 センタリングローラ
8 アキシャルローラ
9 マニピュレータ
10 アキシャル架台
11 支持フレーム
12 インダクタ
13 ベースプレート
14 変圧器ユニット
15 誘導コイル
16 スペーサ
17 ローラヘッド
18 冷却媒体接続部
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延素材(5)に対して予め規定された結合間隔をあけて保持され、変形加工工程中、前記圧延素材(5)の寸法変化に対応して追従させられるかまたは連行される少なくとも1つのインダクタ(12)を使用して、圧延工程中に前記圧延素材(5)を誘導加熱しながら、露出した円筒横断面を備える環状の前記圧延素材(5)をリング圧延機(1)において圧延する方法
であって、前記インダクタ(12)により、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界を前記圧延素材(5)中に直接に入力する、方法
において、
前記圧延素材(5)に対する前記インダクタ(12)の実際間隔を、前記圧延工程中にセンサにより検出し、前記結合間隔を、前記実際間隔に応じて目標間隔として自動的に制御し、前記圧延素材からの前記インダクタ(12)の前記実際間隔の前記センサによる検出を、接触式に行い、前記実際間隔の前記接触式の検出は、少なくとも2つの接触ローラを用いて行うか、または前記圧延素材の外周面に係合させられる少なくとも2つのスペーサ(16)を用いて行うこと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記インダクタ(12)を、前記圧延工程中、前記圧延素材(5)の外周において位置決めし、保持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記インダクタ(12)を、少なくとも1つの運動軸線上で少なくとも1回直線運動および回転運動させることで制御して追従させる、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの前記インダクタ(12)との誘導結合を、前記圧延素材(5)の回転方向において少なくとも、前記リング圧延機(1)の主ローラ(2)またはアキシャルローラユニットの手前で行う、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの前記インダクタ(12)との誘導結合を、前記圧延素材(5)の回転方向において少なくとも、前記リング圧延機(1)の主ローラ(2)またはアキシャルローラユニットの手前で行う、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
前記インダクタ(12)を、少なくとも2の自由度、好適には3の自由度を有する支持アーム(11)において案内する、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
好適にはラジアルリング圧延機またはラジアル-アキシャルリング圧延機として、好適には請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法を実施するリング圧延機(1)であって、少なくとも1つの駆動される主ローラ(2)と、少なくとも1つのマンドレルローラ(3)と、好適には少なくとも2つのアキシャルローラ(8)と、環状の圧延素材(5)をセンタリングする手段とを備え
ており、少なくとも1つのインダクタ(12)が、圧延工程中に前記圧延素材(5)に対して予め規定された結合間隔をあけて前記圧延素材(5)の外周に位置決め可能であると共に、前記圧延素材(5)の寸法変化に対応して追従可能であり、前記インダクタ(12)により、好適には4~10kHzの周波数を有する交番磁界を前記圧延素材(5)中に誘導することができる
、リング圧延機(1)
において、
前記インダクタ(12)は、少なくとも2つのスペーサ(16)を有しており、該スペーサ(16)は、前記圧延素材(5)の外周面に係合可能であり、その際に、前記圧延素材(5)の前記外周面に対する少なくとも1つの誘導コイル(15)の所定の間隔を規定しており、前記誘導コイル(15)の位置は、前記スペーサ(16)に対して変位可能であること
を特徴とする、リング圧延機(1)。
【請求項8】
前記インダクタ(12)は、少なくとも2の自由度で、好適には3の自由度で可動のマニピュレータ(9)の支持アーム(11)に取り付けられている、請求項
7記載のリング圧延機。
【請求項9】
前記インダクタ(12)は、当該リング圧延機(1)のアキシャル架台(10)の支持アーム(11)に取り付けられている、請求項
7記載のリング圧延機。
【請求項10】
前記インダクタ(12)は、前記圧延素材(5)の回転方向において少なくとも、前記主ローラ(2)または前記アキシャルローラ(8)の手前に配置されている、請求項
7記載のリング圧延機。
【請求項11】
前記圧延素材(5)の回転方向において前記主ローラ(2)の手前と前記アキシャルローラ(8)の手前とに、各1つの前記インダクタ(12)が配置されている、請求項
7記載のリング圧延機。
【国際調査報告】