(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-22
(54)【発明の名称】小火器用トリガ制御装置
(51)【国際特許分類】
F41A 19/06 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
F41A19/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568655
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 IL2022050481
(87)【国際公開番号】W WO2022238997
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523421155
【氏名又は名称】スマート シューター リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SMART SHOOTER LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】アーリック, アブシャロム
(72)【発明者】
【氏名】ギラディ, ザヒ
(57)【要約】
発射信号を受信すると(例えば、指定された標的に命中するのに最適であると決定されたタイミングで)発射物の発射を可能にするように、小火器のトリガの変位を制御するように適合された小火器用トリガ制御装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガトラベルリミッタと、前記トリガトラベルリミッタを駆動してまたは前記トリガトラベルリミッタにより、小火器のトリガの変位を予め定められた程度に制限させる、および前記小火器から発射される発射物を発射させるまで前記変位を継続させるように前記トリガを解放させる、作動手段と、を備える小火器用トリガ制御装置であり、
前記トリガトラベルリミッタが前記トリガを解放するタイミングは、発射信号の発生に対応する、小火器用トリガ制御装置。
【請求項2】
前記トリガトラベルリミッタを駆動する前記作動手段を制御して、前記小火器のトリガに対する前記トリガトラベルリミッタの動作を制御するコントローラをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記タイミングが、外部ソースから受信される発射信号によって決定される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記外部ソースが、標的の前記命中確率が十分に高いときに発射信号を提供するように構成されたスマート照準システムである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記作動手段が、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、ソレノイドアクチュエータ、圧電アクチュエータ、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるアクチュエータを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記作動手段が、モータによって制御可能に回転される半径方向に可変する凸部および凹部を有する回転可能カムシャフトアクチュエータである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記トリガトラベルリミッタが、前記小火器のトリガと接合する阻止要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記トリガトラベルリミッタが、その後部にヒンジ結合された軸受を備え、前記軸受が、前記作動手段との転動接合部にある、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記小火器の前記使用法または状態に従ってデータを提供するのに適した1つまたは複数のセンサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のセンサが、ホールセンサ、ジャイロスコープセンサ、加速度センサ、圧力センサ、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、既存の小火器グリップハンドル内に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、前記小火器の本来のグリップハンドルの代わりに、専用のグリップハンドル内に取り付けられる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、前記小火器と一体化された内蔵モジュールである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が、前記小火器の前記トリガの前に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
コントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記センサからのデータを利用して、所望の発射方向を取得し、標的に向かって発射物を発射するための前記の最適なタイミングに基づいて、発射信号を提供する、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記装置が、所望の発射方向を決定するために、前記小火器のトリガの最初の押しを検出するように適合されている、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記外部ソースの前記受信された発射信号に基づいて、前記トリガ移動の前記作動手段を制御するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項18】
前記小火器の前記使用法または状態に従ってデータを提供するのに適したセンサをさらに備え、前記センサは保守、安全、制御、ショットカウント、および故障識別の目的のうちの1つまたは複数に使用される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
小火器のトリガの変位を制御する方法であり、前記方法は、
-前記トリガの変位を予め定められた程度に制限すること;および
-発射信号を受信すると、前記トリガを解放して前記変位を継続し、それにより前記小火器から発射される発射物を発射させること、
を含む方法。
【請求項20】
前記発射信号が、標的に向けて発射物を発射するのに最適であると判断されたタイミングで受信される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小火器の分野に関する。より具体的には、本発明は、小火器用トリガ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小火器の効果的な使用は、多くの専門的な射撃訓練者、小火器技師、および小火器使用者の関心を引き、訓練方法および射撃練習を改善すること、射撃前および射撃中の安定したグリップのために小火器の構造を強化すること、最適な軌道で弾丸を発射すること、および望ましい標的に向けて最適に狙いを定めることに多大な努力を投じるという、時代の永続的な課題である。
【0003】
さらに、高度な光学スコープ/照準器等の、使用者の照準精度を改善するための強化された照準補助具が広く使用されている。近年、スマート照準システムが小火器に導入されている(例えば、デジタルディスプレイと、標的範囲、風の補正、使用者の動き等を考慮し得るコンピュータ制御の照準点とを含むスマートサイト)。
【0004】
しかしながら、正確な照準が効果的な射撃に不可欠であるいっぽうで、その効果的な射撃の結果に同様に影響を与える重要なパラメータは、指定された標的に命中する確率が最も高い最適な弾丸発射タイミング(すなわち、必要な照準方向における)である。
【0005】
人間が操作する小火器の発射機構は、通常、小火器のトリガを絞る(すなわち、当然ながら非線形の)方法で徐々に押す使用者の指によって制御され、いっぽう、発射物は、例えばシアが解放されるとき等、非常に特定の瞬間に発射される。
【0006】
したがって、小火器の使用者は、強化された照準を使用する際に小火器がいつ所望の標的に向けられたかを知ることができる。しかし、訓練された小火器の操作者にとって、指定された標的を効果的に命中させるために最適な瞬間に弾丸を発射することは困難である。これは、使用者が頻繁に疲労し、また激しいストレス下にあり、通常は銃身位置が不安定になる実際の戦闘状況にある場合に特に当てはまる。さらに、標的もまた移動している可能性があり、使用者にとって弾丸発射タイミングがさらに困難になる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、所定の時間に制御された方法で弾丸の発射をトリガすることを可能にする小火器用トリガ制御装置を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、既存の小火器を最小限の変更でまたは変更を必要とせずに改造することができる小火器のトリガ制御装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
小火器のトリガ制御装置は、小火器のトリガの変位を制御して、発射信号を受信すると発射物の発射を可能にする(すなわち、「ショット」を正確に放つ)ように適合される。本発明の一実施形態によれば、装置は、トリガの変位を所定の程度に制限し、発射信号を受信すると、トリガを解放して変位を完了し、それによって、指定された標的に命中するのに最適であると発射信号によって決定されるタイミングで、小火器から発射される発射物を発射(trigger)する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、小火器用トリガ制御装置は、トリガトラベルリミッタと、対応する作動手段(例えば、トリガトラベルリミッタアクチュエータ)とを備え、作動手段は、トリガトラベルリミッタを駆動してまたはトリガトラベルリミッタにより、トリガの変位を所定の程度に制限させるか、または(例えば、発射信号を受信すると)トリガを解放させる。
【0012】
別の態様において、装置は、小火器のトリガに対するその動作を制御するために、トリガトラベルリミッタと閉関係(closed relationship)にある作動手段を制御するマイクロコントローラを備え、例えば、その変位を所定の程度に制限し、発射信号を受信したときに最適であると決定されたタイミングでそれを解放して、その変位を完了し、したがって小火器から発射される発射物を発射させる。
【0013】
さらに別の態様では、最適なタイミングは、外部ソースから受信された発射信号によって決定される。例えば、外部ソースは、標的の命中確率が十分に高いときに発射信号を提供するように構成されたスマート照準システムであってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、作動手段は、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、ソレノイドアクチュエータ、圧電アクチュエータ、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるアクチュエータを備える。
【0015】
別の態様によれば、作動手段は、モータによって制御可能に回転される半径方向に可変する凸部および凹部を有する回転可能カムシャフトアクチュエータである。
【0016】
さらなる態様において、トリガトラベルリミッタは、小火器のトリガと接合する。本発明の一実施形態によれば、トリガトラベルリミッタは、小火器のトリガの後部と接合するように適合された(例えば、ピンの形態であり得る)阻止要素を備える。
【0017】
別の態様では、トリガトラベルリミッタは、その後部にヒンジで連結された軸受を備え、軸受は、作動手段との転動接合部(rolling interface)にある。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、装置は、1つまたは複数のその構成要素に取り付けられた1つまたは複数のセンサをさらに備える。例えば、その1つまたは複数のセンサは、ホールセンサ、ジャイロスコープセンサ、加速度センサ、圧力センサ、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、装置は、阻止要素がトリガの後側から作動されるように取り付けられる。例えば、装置は、既存の小火器のグリップハンドル内に、小火器の本来のグリップハンドルに取って代わる専用のグリップハンドル内に取り付けられてもよく、または、新しい小火器と一体化された内蔵モジュールとして提供されてもよい。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、装置は、阻止要素がトリガの前側から作動されるように設置される。例えば、装置は、小火器のトリガの前に取り付けられてもよく、一方、阻止要素は、トリガの後側と接合するように構成される。
【0021】
別の態様では、装置は、センサからのデータを利用して、所望の発射方向を取得し、標的に向かって発射物を発射するための最適なタイミングに基づいて発射信号を提供することができるコントローラをさらに備える。
【0022】
さらに別の態様では、装置は、所望の発砲方向を決定するために小火器のトリガの最初の押し(press)を検出するように適合される。
【0023】
さらなる態様では、装置は、外部ソースの受信された発射信号に基づいてトリガ移動の作動手段を制御するように構成されたコントローラをさらに備える。
【0024】
さらなる態様において、装置は、小火器の使用または状態に従ってデータを提供するのに適したセンサをさらに備え、前記センサは、保守、安全、制御、ショットカウント、および故障識別の目的のうち1つまたは複数の目的で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の上記および他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の例示的かつ非限定的な本発明の好ましい実施形態の詳細な説明を通してより良く理解されるであろう。
【0026】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一実施形態による、小火器用トリガ制御装置を概略的に示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の一実施形態による、スマート照準手段および小火器と共に利用される小火器用トリガ制御装置を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による、小火器が取り付けられた小火器用トリガ制御装置を概略的に示す。
【
図3】
図3A~
図3Cは、アイドル状態、阻止状態、および発射状態にある
図2の装置の上面図を概略的に示す。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態による、小火器のトリガの前に取り付けられた小火器用トリガ制御装置を備えた小火器を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書の全体において、「標的」という用語は、射撃する目標を示す。標的は、現実世界の物体または表面であり得、または、特定の物体に接続されていない現実世界の領域/方向(例えば、射撃方向)であり得る。例えば、小火器のトリガをロックボタンまたは専用ボタンとして使用し、射撃方向の捕捉(標的ロックに類似する)を取得し得る。
【0028】
本発明は、小火器のトリガの変位(例えば、トリガがその使用者によって押される場合に)を制御するように適合された小火器用トリガ制御装置に関し、例えば、発射信号を受信すると(例えば、指定された標的に命中するのに最適であると決定されたタイミングで)発射物の発射を可能にする。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、小火器用トリガ制御装置は、トリガの変位を所定の程度に制限し、その変位を完了するためにトリガを解放し、したがって、例えばスマート照準装置から発信され得る発射信号を受信すると、小火器から発射される発射物を発射することができる。
【0030】
本明細書で言及される「小火器」という用語は、その使用者によって標的に向けられ、使用者が小火器の発射トリガを押すことによって発射物(例えば、弾丸)を発射するように引き金が引かれるように設計された人力式武器として読まれるべきである。さらに、本明細書で言及される「トリガ」という用語は変位可能な要素として読まれるべきであり、ここで、変位可能な要素は、一定の程度まで(例えば、小火器の使用者または電子トリガ装置によって)変位され、一定の変位点(例えば、その程度の終点)で、そこから変位可能な要素のさらなる変位が小火器から発射される発射物をトリガする。
【0031】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、特定の実施形態または例を示すことによって示される添付の図面を参照する。これらの実施形態は、組み合わされてもよく、他の実施形態が利用されてもよく、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の変更が行われてもよい。
【0032】
図1Aは、本発明の一実施形態による、小火器用トリガ制御装置1を概略的に示す。装置1は、トリガトラベルリミッタ2と、トリガトラベルリミッタ2を駆動してまたはトリガトラベルリミッタ2により、小火器30のトリガ31の変位を所定の程度に制限させ、および、小火器30から発射される発射物を発射するまでトリガ31を解放させて変位を継続させる作動手段3とを備える。トリガトラベルリミッタ2がトリガ31を解放するタイミングは、所望の発射方向に対応して決定され得、それに基づいて、発射信号が、装置1または外部ソースのいずれかによって生成される。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、発射信号は、ディスクリートライン、メッセージ、またはタイムスタンプを含むがこれらに限定されない、異なる方法で実装され得る。「発射信号」という用語は、いかなる特定の形態も意味しないことを強調しておく。したがって、それ自体は信号ではない場合がある(通常、「0」および「1」状態を有するディスクリートラインを使用するものとして理解される)。本発明は、発射信号の全ての適切な形態に適用される。例えば、発射信号は、照準装置(例えば、
図1Bのスマート照準手段20等)と作動手段との間で転送される発射タイミングのタイムスタンプであり得る。
【0034】
図1Bは、本発明の実施形態による、スマート照準手段20および小火器30と共に利用される小火器用トリガ制御装置10の例示的な構成を概略的に示す。装置10は、リアルタイムマイクロコントローラ11等のコントローラを備え、このコントローラは、(例えば、小火器30の使用者によって押されたときに)小火器トリガ31が移動する範囲を制限し、有線/無線通信手段を備える通信モジュール14を介して発射信号を受信すると、小火器トリガ31を解放してその移動を完了させ、したがって小火器30から発射される発射物を発射するために、トリガトラベルリミッタ13を作動させるトリガトラベルリミッタアクチュエータ12を制御するように適合される。
【0035】
スマート照準手段20は、小火器30から即座に発射されたであろう弾丸の予想軌道に対する指定標的(すなわち、小火器30の使用者が、照準手段20を決定された標的または領域に「ロック」することによって選択される)の位置を監視し、任意選択的に表示するように構成されたポインティングエイドである。スマート照準手段は、小火器30の位置決めおよび安定性、標的範囲、弾道計算、風速等の静的および動的パラメータを考慮してもよく、それによって、指定された標的に命中する高い確率を有し得る小火器30から発射される弾丸の最適タイミングを決定してもよい。スマート照準手段20の一例は、米国特許第10,097,764号に開示されているような照準システムである。
【0036】
装置10は、例えば、以下のような異なるシーケンスで起動され得る。
-装置10は、標的が照準手段20によって「ロックオン」されると、トリガ31の移動を制限し、照準手段20からの発射信号を受信すると、トリガ31を解放する。
-装置10は、標的が照準手段20によって「ロックオン」され、かつ小火器の使用者がトリガ31を押し始め、照準手段20からの発射信号を受信したときに解放するときにのみ、トリガ31の移動を制限する。
-装置10は、小火器の使用者がトリガ31を押し始めるときを検出すると、トリガ31の移動を制限し、照準手段20からの発砲信号を受信すると、トリガを解放する。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、装置10の動作プロセスは、以下の手順を含んでもよい。
-照準手段20は、1つまたは複数の標的または領域を「ロック」する(例えば、ロックは、使用者によって開始され得るか、または照準手段20によって自動的に実行され得る)。
-マイクロコントローラ11は、トリガ31の移動を制限するために(例えば、ライフルのトリガのさらなる移動がライフルのハンマー/ピンを解放して発射物の雷管をノックする程度まで)トラベルリミッタ13を作動させるようにトラベルリミッタアクチュエータ12に指示する。
-使用者は、常にトリガを押し、指定された標的に向けて小火器を照準する。
-最適な発射物の発射タイミングを決定する照準手段20からの発射信号を受信すると、マイクロコントローラ11は、トリガ31のさらなる移動を可能にするためにトラベルリミッタ13を解放するようにトラベルリミッタアクチュエータ12に指示し、それによって、最適なタイミングで小火器30から発射物を発射する。
【0038】
装置10の構成要素を動作させるために必要な電力は、電源モジュール15(例えば、充電式/使い捨て電池を含むか、または、小火器上の照準手段20に設置されるか、若しくは小火器の使用者によって運ばれるような外部電源によって供給される)によって供給される。
【0039】
装置10は、装置10が取り付けられる小火器の使用法または状態に従ってデータを提供するのに適した1つまたは複数のセンサ16をさらに備える。例えば、センサ(例えば、ホールセンサ、加速度センサ等)のうちの少なくとも1つを使用して、トリガ31がトリガトラベルリミッタ13と係合したことを検出することができ、これは、使用者が指定された標的を撃つ意図を示唆し、トラベルリミッタアクチュエータ12の瞬間位置も示唆する。センサ16の読み取りから収集されたデータは、マイクロコントローラ11に送られ、マイクロコントローラ11は、それに応じて、トラベルリミッタアクチュエータ12の動作を制御する。本発明の実施形態によれば、(例えば、小火器30の使用者がトラベルリミッタ13に係合するトリガ31を押していることを検出することにより、指定された標的上に照準手段20をロックするために)センサ16から収集されたデータは、通信モジュール14を介して照準手段20に送信(submit)され得る。
【0040】
センサ16の使用は、トリガリミッタ13の閉ループ制御、ショットカウント、誤動作識別、および安全機能(例えば、発射信号が照準手段20によって送信されないときに望ましくない標的への発射を防止する)等の装置10の有用な機能を提供し得る。例えば、ジャイロ及び加速度計センサ(火災衝撃を検出するために使用され得る)とトリガ位置センサとの組み合わせは、正確なショットカウンタを作成し、訓練中に(例えば、適切なトリガ押下について)フィードバックをオペレータに提供し、(トリガが押下されたときに武器が発砲していないことを知ることによって)武器の故障を検出する等のために使用され得る。
【0041】
図1Bの装置10は、照準手段20等の外部ソースからの発射信号の受信に依存して、トリガ31を解放してその動きを完了させ、それによって最適なタイミングで小火器30から発射物を発射するものとして示されている。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、装置10は、独立して、発射のための最適タイミングを決定してもよい。
【0042】
例えば、マイクロコントローラ11は、センサ16(例えば、加速度計センサ、ジャイロスコープセンサ等)を利用して、使用者がトリガ31を押し始める(例えば、トリガ31に取り付けられた圧力または変位センサによって、その押しが検出される)瞬間の小火器30の瞬間位置および姿勢を取得し、このイベントは、「標的ロック」として捕捉されている。発射の最適なタイミング(すなわち、「標的」の命中確率が所定の閾値を上回る)がマイクロコントローラ11によって決定され(例えば、小火器が取得された「標的ロック」の位置および姿勢に最も近いとき)、そのいっぽうで、マイクロコントローラ11は、トラベルリミッタアクチュエータ12にトラベルリミッタ13を解放するように指示し、これにより小火器30から発射物が発射される。
【0043】
トリガ31の変位を制御し得る1つの様式は、その後ろに阻止手段を配置することによるものであり、その変位は、トリガ31のさらなる移動が発射物を発射する小火器の構成要素を作動させる点で、使用者の指によって引かれるトリガ31の移動を制限するように制御される。
【0044】
例えば、装填されたカートリッジを打撃して弾丸を発射させるために、ライフル銃のトリガがさらに変位してシアを付勢し、コックされたハンマーが解放される時点で、武装状態にある(armed)ライフル銃(すなわち、シアがコックされた位置でハンマーを捕捉する武装状態)のトリガを一時的に阻害するのに対して、発射信号は照準手段20から受信されると(すなわち、弾丸を発射するための最適なタイミング)、その阻害手段が移動してトリガをさらに変位させ、次いで、弾丸を発射する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、提案されたトリガ制御装置は、小火器の既存の/交換用のグリップハンドル(すなわち、多くの場合、小火器のトリガのすぐ後ろに位置する本質的に中空の筐体である)に取り付けられ、したがって、小火器の簡単な改造で提案された装置を利用することが可能となる。
【0046】
図2は、本発明の実施形態による、小火器30が取り付けられた小火器用トリガ制御装置200を概略的に示す。明確にするために、
図2は、そのトリガ31およびグリップハンドルを有する小火器30の操作可能な部分のみを示す。装置200は、小火器30の元のグリップハンドルと本質的に同様に設計された交換グリップハンドル202を備え、小火器30への同様の取付手段、例えばボルト203および対応するドリル等を備えてもよい。グリップハンドル202は、トラベルリミッタアクチュエータ12、トラベルリミッタ13、及び装置200の電気/電子構成要素が統合される回路220(例えば、
図1のマイクロコントローラ11、通信モジュール14、及び電源モジュール15)を収容し得る。
図2は、通信モジュール14の接続ワイヤ214と、照準手段20(図示せず)への接続装置200とをさらに示す。
【0047】
図2のトラベルリミッタアクチュエータ12は、トラベルリミッタ13の後部にヒンジ結合された軸受213aと接合する、半径方向に可変する凸部/凹部を有する回転可能カムシャフトアクチュエータ212を備え、カムシャフトアクチュエータ212の制御された回転(すなわち、電源15によって回転モータ212aに供給される電流を制御するマイクロコントローラ11による)は、軸受213aに様々な凸部/凹部を導入することが出来、したがって、トラベルリミッタ13の軸方向移動を制御し、したがって、トラベルリミッタ13の前部にねじ込まれたピン213等のリミッタ13の阻止要素(例えば、ピン、アーム等の形態の)がトリガ31の後ろに突出する程度を制御し、それによってトリガ31の変位を制限または解放する(
図3A~
図3Cにさらに示される)。
【0048】
使用者の指によってトリガ31に加えられる圧力にかかわらず、カムシャフトアクチュエータ212と軸受213aとの間の転動可能な接合部(interface)は、それらの間の接合部の負荷を低減することを可能にする。さらに、カムシャフトアクチュエータ212の凸部/凹部は、「発射信号」を受信すると、トラベルリミッタ13およびトリガ31が後方への変位を継続する速度を決定するために、適切な傾斜を有するように成形され得る。さらに、モータ212aの回転速度は、同じ目的のために調整され得、トリガ31の正確な制御を提供する。
【0049】
ブロックピン213は、トラベルリミッタ13にねじ込まれ、したがって、トリガ31の後部201に対するその凸部の調整を可能にし、それによって、装置200を複数の異なる小火器設計に適合させることができる。この設計により、リミッタ13がトリガ31を制限する正確な点を、例えば、異なる小火器のデザイン間で、および武器の製造公差、その状態等に起因して変化し得る様々なシア-ハンマーのラッチ構成に従って較正することが可能となる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、ブロックピン213の調整機構は、ブロックピン213をねじと同様にトラベルリミッタ13の内外に回転させることによって実施することができる。このような調整機構は、ピンがトラベルリミッタ13に押し込まれたときにのみ回転する(例えば、数ミリメートルだけ)ことを可能にする「プッシュツーローテーション(push-to-rotate)」機構を実装することによって、さらに強化することができる。このような強化は、現場状況におけるブロックピン213の偶発的な回転を回避するのに役立つ。
【0051】
図2に示すように、複数の異なるタイプの小火器を、トリガ機構または他の内部構造の変更を必要とせずに、装置200により改造し得る。
【0052】
当業者であれば、狭い放電時間窓で動作するのに適した、高速かつ反復的な方法で、トリガ31に対してトラベルリミッタ13を制御するために同様に使用される、電磁/油圧/空気圧/ソレノイド/圧電アクチュエータ12による複数の異なる作動構成のトラベルリミッタ13を容易に認識するであろう。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、装置200には、ピン213とトラベルリミッタ13との間に取り付けられたOリング等のシール手段が設けられ、これは、ブロックピン213が(射撃中にトリガ31によって、または上述の較正中に使用者によって)押されたときに、機構内への水または固体粒子の侵入を防止する。
【0054】
図3Aは、本発明の一実施形態による、アイドル状態の装置200の上面図を概略的に示す。このアイドル状態では、トリガ31は押されておらず、その後部201はブロックピン213と接触しておらず、したがって、軸受213aはカムシャフト212と連通していない。
【0055】
図3Aはさらに、カムシャフト212の、阻止状態用の凸部301および発射用の凹部302、ならびにその制限用の凸部303を示し、制限用の凸部303は、
図3Aのアイドル状態、
図3Bの阻止状態、および
図3Cの発射状態の間で装置200をシフトさせる間に、2つのストッパ304の間の制限用凸部303の制限された移動によってカムシャフト212の回転を制限するために利用される。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、カムシャフト212は、カムシャフト212を強制的にそのアイドル状態にするための戻しばね(図示せず)をさらに備え、装置200のデフォルト状態として構成し得、また、装置200の故障の場合にも有用であり、例えば、装置200によって影響を受けない小火器30の手動操作を可能にする。
【0057】
図3Bは、本発明の実施形態による、阻止状態にある装置200の上面図を概略的に示し、ここで、トリガ31は、後部201がピン213に係合し、トラベルリミッタ13を後方に押し、したがって、軸受213aがカムシャフト212の阻止状態用の凸部301と接合する(すなわち、マイクロコントローラ11がモータ212aを作動させてカムシャフト212を回転させ、凸部301を軸受213aに面するように回転させて保持する)ように、後方に移動するために小火器30の使用者によって押され、したがって、トラベルリミッタ13がさらに後方に移動することを阻止し、したがって、後部201が発射閾値線305を通過することを阻止する。線305の実際の位置は、トリガ機構の構造と、発射点を画定するその対応する幾何学的形状とによって決定される。トリガ31をさらに後方に移動させると、シア-ハンマー配置が作動し、小火器30から弾丸が発射される。
【0058】
図3Bは、本発明の一実施形態による、トリガ31が押された、阻止状態にある装置200の上面図を概略的に示す。
【0059】
図3Cは、本発明の実施形態による、アイドル状態の小火器用トリガ制御装置200を概略的に示し、マイクロコントローラ11(
図1)は、モータ212a(
図2)を作動させてカムシャフト212をさらに回転させ、発射用凹部302を軸受213aに面するように回転させ、トラベルリミッタ13のさらなる後方移動、したがってトリガ31のさらなる後方移動を可能にし、小火器30からの弾丸発射をもたらす。
【0060】
当然ながら、
図3A~
図3Cのカムシャフト212は、特定の周囲輪郭を有するものとして示されているが、当業者であれば、特定の用途のために、また、様々な考慮事項に起因して、代替の輪郭を選択し得、例えば、阻止状態(
図3B)から発射状態(
図3C)へのより短い移行を可能にするために、凸部301に対してより急勾配の凹部302を選択することができる。
【0061】
さらに、軸方向に延在/後退するブロックピン213の代わりに回転可能なブロックカムシャフトディスク(図示せず)を採用する等、異なる作動構成を選択し得る。
【0062】
さらに、装置200は、トリガ機構の外部に取り付けられるものとして示されているが、いくつかの実施形態によれば、
図1Bの装置10は、新規の/改造された小火器と一体化された内蔵モジュールとして容易に実現され得、小火器の本来の設計に対し干渉を最小限にすることが可能となる。例えば、小火器のグリップハンドルが中空でないか、または異なる用途(例えば、取り外し不可能なグリップを有する拳銃または武器)に利用される場合である。
【0063】
図4は、本発明の別の実施形態による、小火器のトリガ31の前に取り付けられた小火器用トリガ制御装置10を備える拳銃401を概略的に示す。この実施形態では、装置10は、(図中に点線の形態で概略的に示されるように)照準手段20内に一体化される。図に示すように、照準手段20は、トリガ31の前方(例えば、この特定の拳銃401ではグリップハンドル402がマガジン403に収容されているので、拳銃401の銃身の下方)に取り付けられている。この実施形態では、阻止トラベルリミッタは、トリガ31の後部と接合するように後方に延びる阻止アーム413の形態である。この実施形態では、阻止アーム413の遠位端は、
図1~
図3に関して上述したようにトリガ31の変位を制御するため等に、トリガ31の後方下部を制限するように(すなわち、
図2のブロックピン213と同様の動作方法で)適合される。
【0064】
本発明の実施形態を例示として説明してきたが、本発明は、特許請求の範囲を超えることなく、多くの変形、修正、および適合を伴って実施され得ることが理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガトラベルリミッタと、前記トリガトラベルリミッタを駆動してまたは前記トリガトラベルリミッタにより、小火器のトリガの変位を予め定められた程度に制限させる、および前記小火器から発射される発射物を発射させるまで前記変位を継続させるように前記トリガを解放させる、作動手段と、を備える小火器用トリガ制御装置であり、
前記トリガトラベルリミッタが前記トリガを解放するタイミングは、
弾丸の発射が指定された標的に高確率で命中することを示している制御システムから受信した発射信号の発生に対応する、小火器用トリガ制御装置。
【請求項2】
前記トリガトラベルリミッタを駆動する前記作動手段を制御して、前記小火器のトリガに対する前記トリガトラベルリミッタの動作を制御するコントローラをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記タイミングが、外部ソースから受信される発射信号によって決定される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記外部ソース
が、発射信号を提供するように構成されたスマート照準システムである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記作動手段が、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、ソレノイドアクチュエータ、圧電アクチュエータ、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるアクチュエータを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記作動手段が、モータによって制御可能に回転される半径方向に可変する凸部および凹部を有する回転可能カムシャフトアクチュエータである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記トリガトラベルリミッタが、前記小火器のトリガと接合する阻止要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記トリガトラベルリミッタが、その後部にヒンジ結合された軸受を備え、前記軸受が、前記作動手段との転動接合部にある、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記小火器の
使用法または状態に従ってデータを提供するのに適した1つまたは複数のセンサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のセンサが、ホールセンサ、ジャイロスコープセンサ、加速度センサ、圧力センサ、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、既存の小火器グリップハンドル内に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、前記小火器の本来のグリップハンドルの代わりに、専用のグリップハンドル内に取り付けられる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、前記小火器と一体化された内蔵モジュールである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が、前記小火器の前記トリガの前に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
コントローラをさらに備え、前記コントローラは、
前記1つまたは複数のセンサからのデータを利用して、所望の発射方向を取得し、標的に向かって発射物を発射するための前記の最適なタイミングに基づいて、発射信号を提供する、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記装置が、所望の発射方向を決定するために、前記小火器のトリガの最初の押しを検出するように適合されている、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記外部ソースの前記受信された発射信号に基づいて、前記トリガ移動の前記作動手段を制御するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項18】
前記小火器の
使用法または状態に従ってデータを提供するのに適したセンサをさらに備え、前記センサは保守、安全、制御、ショットカウント、および故障識別の目的のうちの1つまたは複数に使用される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
小火器のトリガの変位を制御する方法であり、前記方法は、
-前記トリガの変位を予め定められた程度に制限すること;および
-発射信号を受信すると、前記トリガを解放して前記変位を継続し、それにより前記小火器から発射される発射物をトリガすること、
を含み、
前記発射信号が、弾丸の発射が指定された標的に高確率で命中することを示している制御システムから受信される、方法。
【請求項20】
前記発射信号が、標的に向けて発射物を発射するのに最適であると判断されたタイミングで受信される、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】