IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チェンドゥ ウェンディング テクノロジー ディベロップメント シーオー.,エルティーディーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-22
(54)【発明の名称】神経障害を調節する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20240515BHJP
   A61K 31/428 20060101ALI20240515BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K31/428
A61K31/138
A61P25/00
A61P29/00
A61P9/10
A61P17/02
A61P25/28
A61P27/06
A61P27/02
A61P9/00
A61P43/00 111
A61P43/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572100
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2022094251
(87)【国際公開番号】W WO2022242766
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110560773.5
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210110224.2
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523438223
【氏名又は名称】チェンドゥ ウェンディング テクノロジー ディベロップメント シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ゼング
(72)【発明者】
【氏名】リ ゴング
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086BC84
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA40
4C086ZB11
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA21
4C206KA13
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA78
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZA33
4C206ZA36
4C206ZA40
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、神経障害を調節する方法に関する。本方法は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態:を投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害を調節する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記方法が神経炎症を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、神経炎症と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記疾患、障害、又は疾病が、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、頭蓋脳損傷、血管性認知症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記方法が神経損傷を修復する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、神経障害と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する、請求項1、2、又は5記載の方法。
【請求項7】
前記疾患、障害、又は疾病が、中枢神経系疾患、障害、又は疾病である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記中枢神経系疾患、障害、又は疾病が脳血管疾患である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記脳血管疾患が脳卒中である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記脳卒中が虚血性脳卒中である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記対象が脳卒中発作後7時間以内の対象である、請求項1~10記載の方法。
【請求項12】
前記対象が20又は20以内の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する、請求項1~10記載の方法。
【請求項13】
前記対象が15又は15以内の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する、請求項1~10記載の方法。
【請求項14】
前記対象が8~15の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する、請求項1~10記載の方法。
【請求項15】
前記対象が中等度から重度の脳卒中及び持続性神経障害を有する対象である、請求項1~14記載の方法。
【請求項16】
前記対象が前方循環系大動脈閉塞を有する対象である、請求項1~15記載の方法。
【請求項17】
前記対象が中大脳動脈のM1セグメントに閉塞の症状を有する、請求項1~16記載の方法。
【請求項18】
前記対象が中大脳動脈のM2セグメントに閉塞の症状を有する、請求項1~16記載の方法。
【請求項19】
前記対象が虚血再灌流傷害を有する対象である、請求項1~18記載の方法。
【請求項20】
前記再灌流が血管内療法によって行われる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記再灌流が血栓溶解剤の投与によって行われる、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記再灌流が血管形成術によって行われる、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記対象が虚血性非再灌流対象である、請求項1~18記載の方法。
【請求項24】
前記対象が広範囲な脳梗塞を有する対象である、請求項1~18記載の方法。
【請求項25】
前記方法が脳卒中後急性期の対象の脳組織灌流を改善する、請求項10~24記載の方法。
【請求項26】
前記方法が脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害する、請求項10~24記載の方法。
【請求項27】
前記方法が前記脳卒中後急性期の虚血状態を改善する、請求項10~24記載の方法。
【請求項28】
前記方法が虚血性ペナンブラを救済する、請求項10~24記載の方法。
【請求項29】
前記方法が前記対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させる、請求項10~24記載の方法。
【請求項30】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項10~24記載の方法。
【請求項31】
前記方法がグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害する、請求項10~24記載の方法。
【請求項32】
前記方法が脳卒中神経行動スコアを低下させる、請求項10~24記載の方法。
【請求項33】
前記方法が前記対象の神経学的欠損を改善する、請求項10~24記載の方法。
【請求項34】
前記方法が前記対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させる、請求項10~24記載の方法。
【請求項35】
前記方法が前記対象の障害率を低下させる、請求項10~24記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、前記対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善する、請求項10~24記載の方法。
【請求項37】
前記方法が認知症の発症を予防及び妨害する、請求項10~24記載の方法。
【請求項38】
前記方法が前記対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療する、請求項10~24記載の方法。
【請求項39】
前記脳卒中が出血性脳卒中である、請求項9記載の方法。
【請求項40】
前記出血性脳卒中が脳出血の状態である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記出血性脳卒中がくも膜下出血の状態である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記脳血管疾患が一過性脳虚血発作である、請求項8記載の方法。
【請求項43】
前記方法が脳卒中後急性期の前記対象の脳組織灌流を改善する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記方法が損傷した脳組織領域における局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害する、請求項42記載の方法。
【請求項45】
前記方法が前記脳卒中後急性期の虚血状態を改善する、請求項42記載の方法。
【請求項46】
前記方法が虚血性ペナンブラを救済する、請求項42記載の方法。
【請求項47】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項42記載の方法。
【請求項48】
前記方法がグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害する、請求項42記載の方法。
【請求項49】
前記方法が脳卒中神経行動スコアを低下させる、請求項42記載の方法。
【請求項50】
前記方法が前記対象の神経学的欠損を改善する、請求項42記載の方法。
【請求項51】
前記方法が前記対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させる、請求項42記載の方法。
【請求項52】
前記方法が前記対象の障害率を低下させる、請求項42記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、前記対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善する、請求項42記載の方法。
【請求項54】
前記方法が認知症の発症を予防及び妨害する、請求項42記載の方法。
【請求項55】
前記方法が前記対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療する、請求項42記載の方法。
【請求項56】
前記中枢神経系疾患、障害、又は疾病が頭蓋脳損傷である、請求項7記載の方法。
【請求項57】
前記頭蓋脳損傷が外傷性脳損傷である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項57記載の方法。
【請求項60】
前記中枢神経系疾患、障害、又は疾病が神経変性疾患である、請求項7記載の方法。
【請求項61】
前記神経変性疾患が認知症である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記認知症が血管性認知症である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記認知症がアルツハイマー病である、請求項61記載の方法。
【請求項64】
前記認知症がレビー小体型認知症である、請求項61記載の方法。
【請求項65】
前記認知症が前頭側頭型認知症である、請求項61記載の方法。
【請求項66】
前記方法が、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、前記対象の認知機能不全、特に、視空間の側面における認知機能不全を予防、治療、及び改善する、請求項61~65記載の方法。
【請求項67】
前記方法が認知症の発症を予防及び妨害する、請求項61~65記載の方法。
【請求項68】
前記方法が前記対象の脳組織灌流を改善する、請求項61~65記載の方法。
【請求項69】
前記方法が脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害する、請求項61~65記載の方法。
【請求項70】
前記方法が虚血の状態を改善する、請求項61~65記載の方法。
【請求項71】
前記方法が虚血性ペナンブラを救済する、請求項61~65記載の方法。
【請求項72】
前記方法が前記対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させる、請求項61~65記載の方法。
【請求項73】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項61~65記載の方法。
【請求項74】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項61~65記載の方法。
【請求項75】
前記方法が神経行動スコアを低下させる、請求項61~65記載の方法。
【請求項76】
前記方法が神経学的欠損を改善する、請求項61~65記載の方法。
【請求項77】
前記方法が前記対象の全体的な障害率を低下させる、請求項61~65記載の方法。
【請求項78】
前記中枢神経系疾患、障害、又は疾病が視神経症である、請求項7記載の方法。
【請求項79】
前記方法が前記対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷を阻害又は軽減する、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記方法が前記対象の神経節細胞の重度軸索損傷を阻害又は軽減する、請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記方法が、網膜神経節細胞(RGC)損傷又は神経節細胞の重度軸索損傷と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する、請求項79~80記載の方法。
【請求項82】
前記疾患、障害、又は疾病が、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症を含む、請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記視神経症が緑内障である、請求項78記載の方法。
【請求項84】
前記緑内障が原発緑内障である、請求項83記載の方法。
【請求項85】
前記原発緑内障が開放隅角緑内障である、請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記原発緑内障が閉塞隅角緑内障である、請求項84記載の方法。
【請求項87】
前記原発緑内障が特殊型の緑内障である、請求項84記載の方法。
【請求項88】
前記緑内障が続発緑内障である、請求項83記載の方法。
【請求項89】
前記緑内障が発達緑内障である、請求項83記載の方法。
【請求項90】
前記視神経症が虚血性視神経症である、請求項78記載の方法。
【請求項91】
前記虚血性視神経症が前部虚血性視神経症である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記虚血性視神経症が後部虚血性視神経症である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
前記方法が網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減する、請求項83~92記載の方法。
【請求項94】
前記方法が視機能を保護する、請求項83~92記載の方法。
【請求項95】
前記方法が二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる、請求項83~92記載の方法。
【請求項96】
前記方法が内側網膜損傷を軽減する、請求項83~92記載の方法。
【請求項97】
前記方法が網膜浮腫を低下させる、請求項83~92記載の方法。
【請求項98】
前記方法が網膜厚低下を軽減する、請求項83~92記載の方法。
【請求項99】
前記方法が網膜神経線維層の浮腫を低下させる、請求項83~92記載の方法。
【請求項100】
前記方法が網膜神経線維層の厚さを維持する、請求項83~92記載の方法。
【請求項101】
前記方法が網膜神経線維層の薄化を予防する、請求項83~92記載の方法。
【請求項102】
前記方法が視神経炎症を阻害する、請求項83~92記載の方法。
【請求項103】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項83~92記載の方法。
【請求項104】
前記方法が神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、IFN-γ、IL-1β、及びTNF-αを含む、請求項83~92記載の方法。
【請求項105】
前記方法が視神経機能低下を軽減する、請求項83~92記載の方法。
【請求項106】
前記方法が全視野網膜電図(FERG)の機能指数を改善する、請求項83~92記載の方法。
【請求項107】
前記方法がフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善する、請求項83~92記載の方法。
【請求項108】
前記方法が全体的な網膜機能を保護する、請求項83~92記載の方法。
【請求項109】
前記視神経症が視神経炎である、請求項78記載の方法。
【請求項110】
前記視神経症が視神経腫瘍である、請求項78記載の方法。
【請求項111】
前記視神経症が外傷性視神経症である、請求項78記載の方法。
【請求項112】
前記方法が前記対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷を阻害又は軽減する、請求項109~111記載の方法。
【請求項113】
前記方法が前記対象の神経節細胞の重度軸索損傷を阻害又は軽減する、請求項109~111記載の方法。
【請求項114】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項109~111記載の方法。
【請求項115】
前記方法がGFAPのI/R誘導性過剰発現を阻害する、請求項109~111記載の方法。
【請求項116】
前記方法が神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、IFN-γ、IL-1β、及びTNF-αを含む、請求項109~111記載の方法。
【請求項117】
前記中枢神経系疾患、障害、又は疾病が網膜症である、請求項7記載の方法。
【請求項118】
前記方法が前記対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷を阻害又は軽減する、請求項117記載の方法。
【請求項119】
前記方法が前記対象の神経節細胞の重度軸索損傷を阻害又は軽減する、請求項117記載の方法。
【請求項120】
前記方法が、網膜神経節細胞(RGC)損傷又は神経節細胞の重度軸索損傷と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する、請求項118~119記載の方法。
【請求項121】
前記疾患、障害、又は疾病が、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症を含む、請求項120記載の方法。
【請求項122】
前記網膜症が網膜血管閉塞疾患である、請求項117記載の方法。
【請求項123】
前記網膜血管閉塞疾患が網膜動脈閉塞である、請求項122記載の方法。
【請求項124】
前記網膜動脈閉塞が中心動脈閉塞である、請求項123記載の方法。
【請求項125】
前記網膜動脈閉塞が分枝動脈閉塞である、請求項123記載の方法。
【請求項126】
前記網膜動脈閉塞が毛様体動脈閉塞である、請求項123記載の方法。
【請求項127】
前記網膜動脈閉塞が網膜前毛細血管細動脈閉塞である、請求項123記載の方法。
【請求項128】
前記網膜血管閉塞疾患が網膜静脈閉塞である、請求項122記載の方法。
【請求項129】
前記網膜静脈閉塞が中心静脈閉塞である、請求項128記載の方法。
【請求項130】
前記網膜静脈閉塞が分枝静脈閉塞である、請求項128記載の方法。
【請求項131】
前記網膜症が未熟児網膜症である、請求項117記載の方法。
【請求項132】
前記方法が網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項133】
前記方法が視機能を保護する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項134】
前記方法が二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項135】
前記方法が内側網膜損傷を軽減する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項136】
前記方法が網膜浮腫を低下させる、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項137】
前記方法が網膜厚低下を軽減する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項138】
前記方法が網膜神経線維層の浮腫を低下させる、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項139】
前記方法が網膜神経線維層の厚さを維持する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項140】
前記方法が網膜神経線維層の薄化を予防する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項141】
前記方法が視神経炎症を阻害する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項142】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項143】
前記方法が、神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、IFN-γ、IL-1β、及びTNF-αを含む、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項144】
前記方法が視神経機能低下を軽減する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項145】
前記方法が全視野網膜電図(FERG)の機能指数を改善する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項146】
前記方法がフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項147】
前記方法が全体的な網膜機能を保護する、請求項123~127及び131記載の方法。
【請求項148】
前記疾患、障害、又は疾病が末梢神経障害である、請求項6記載の方法。
【請求項149】
前記末梢神経障害が糖尿病性末梢神経障害である、請求項148記載の方法。
【請求項150】
前記糖尿病性末梢神経障害が糖尿病性遠位対称性多発性神経障害である、請求項149記載の方法。
【請求項151】
前記糖尿病性末梢神経障害が糖尿病性単神経障害又は多発性単神経障害である、請求項149記載の方法。
【請求項152】
前記対象が、対称性症状発現、遠位四肢感覚異常、両下肢感覚異常、靴下型感覚消失、手袋型感覚消失、正中神経、尺骨神経、総腓骨神経の障害、感覚機能不全、運動機能不全、外傷に対する無感覚、及び神経障害性疼痛:からなる群から選択される症状を示す、請求項148~151記載の方法。
【請求項153】
前記糖尿病性末梢神経障害が糖尿病性有痛性末梢神経障害である、請求項149記載の方法。
【請求項154】
前記対象の睡眠が疼痛によって影響を受ける、請求項153記載の方法。
【請求項155】
前記対象が疼痛誘発性うつ病及び不安に悩まされる、請求項153又は154記載の方法。
【請求項156】
前記方法が末梢神経伝導速度を改善する、請求項148~155記載の方法。
【請求項157】
前記方法が腓腹神経の感覚神経伝導速度を有意に改善する、請求項148~156記載の方法。
【請求項158】
前記方法が、微小循環を改善すること、神経炎症を阻害すること、中枢神経系炎症を阻害すること、損傷した神経組織を修復すること、末梢神経障害の症状を長期間緩和すること、神経障害の進行を長期間制御すること、及び神経障害性疼痛の進行を長期間制御すること:からなる群から選択される前記対象に対する効果をもたらす、請求項148~155記載の方法。
【請求項159】
前記対象が哺乳動物である、請求項1~158記載の方法。
【請求項160】
前記哺乳動物が霊長類である、請求項159記載の方法。
【請求項161】
前記霊長類がヒトである、請求項160記載の方法。
【請求項162】
前記方法が、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態と組み合わせて、かつ治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態とさらに組み合わせて投与することを含む、請求項1~161記載の方法。
【請求項163】
治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態が前記対象に同時に投与される、請求項1~161記載の方法。
【請求項164】
治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態が前記対象に別々に投与される、請求項1~161記載の方法。
【請求項165】
前記治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び前記治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態が単一の医薬組成物に製剤化される、請求項1~161記載の方法。
【請求項166】
前記治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、又は前記製剤化された単一の医薬組成物が、経口剤形、静脈内剤形、皮下剤形、又は眼底注射剤形として製剤化される、請求項1~165記載の方法。
【請求項167】
前記治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、又は前記製剤化された単一の医薬組成物が、経口剤形として製剤化される、請求項1~165記載の方法。
【請求項168】
前記治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、又は前記製剤化された単一の医薬組成物が、錠剤、カプセル、シロップ、及び懸濁液;静脈内注射液、皮下注射液、筋肉内注射液、及び腹腔内注射液;クリーム、ゼリー、粉末、パッチ;吸入粉末、スプレー、懸濁液、又は直腸坐剤に製剤化される、請求項1~167記載の方法。
【請求項169】
前記治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、又は前記製剤化された単一の医薬組成物が、錠剤、カプセル、シロップ、及び懸濁液に製剤化される、請求項1~167記載の方法。
【請求項170】
前記治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、又は前記製剤化された単一の医薬組成物が錠剤に製剤化される、請求項1~167記載の方法。
【請求項171】
前記治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、又は前記製剤化された単一の医薬組成物が、前記対象に、経口、静脈内、皮下、又は筋肉内投与される、請求項1~170記載の方法。
【請求項172】
前記治療有効量のドキサゾシン、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、前記治療有効量のメトプロロール、その医薬として許容し得る塩もしくはその許容し得る形態、又は前記製剤化された単一の医薬組成物が、前記対象に、経口投与される、請求項1~170記載の方法。
【請求項173】
前記医薬として許容し得る塩が、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、又はp-トルエンスルホン酸塩から選択される、請求項1~172記載の方法。
【請求項174】
前記ドキサゾシンの医薬として許容し得る塩形態がメタンスルホン酸塩である、請求項1~173記載の方法。
【請求項175】
前記プラミペキソールの医薬として許容し得る塩形態が塩酸塩である、請求項1~173記載の方法。
【請求項176】
前記メトプロロールの医薬として許容し得る塩形態が酒石酸塩である、請求項1~173記載の方法。
【請求項177】
前記ドキサゾシンの1日投薬量が0.4mg~16mgの範囲である、請求項1~176記載の方法。
【請求項178】
前記ドキサゾシンの1日投薬量が0.5mg~8mgの範囲である、請求項1~176記載の方法。
【請求項179】
前記プラミペキソールの1日投薬量が0.03mg~4.5mgの範囲である、請求項1~176記載の方法。
【請求項180】
前記プラミペキソールの1日投薬量が0.1mg~1mgの範囲である、請求項1~176記載の方法。
【請求項181】
前記メトプロロールの1日投薬量が2mg~200mgの範囲である、請求項1~176記載の方法。
【請求項182】
前記メトプロロールの1日投薬量が10mg~100mgの範囲である、請求項1~176記載の方法。
【請求項183】
前記治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び前記治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態が、1日に1、2、3、又は4回の頻度で対象に投与される、請求項1~182記載の方法。
【請求項184】
前記治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、前記治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び前記治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態が、長時間作用型経口調製物の形態で対象に投与される、請求項1~183記載の方法。
【請求項185】
脳血管疾患を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項186】
前記脳血管疾患が脳卒中である、請求項185記載の方法。
【請求項187】
前記脳卒中が虚血性脳卒中である、請求項186記載の方法。
【請求項188】
前記対象が脳卒中発作後7時間以内の対象である、請求項185~187記載の方法。
【請求項189】
前記対象が20又は20以内の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する、請求項185~188記載の方法。
【請求項190】
前記対象が15又は15以内の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する、請求項185~188記載の方法。
【請求項191】
前記対象が8~15の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する、請求項185~188記載の方法。
【請求項192】
前記対象が中等度から重度の脳卒中及び持続性神経障害を有する対象である、請求項185~191記載の方法。
【請求項193】
前記対象が前方循環系大動脈閉塞を有する対象である、請求項185~192記載の方法。
【請求項194】
前記対象が中大脳動脈のM1セグメントに閉塞の症状を有する、請求項185~193記載の方法。
【請求項195】
前記対象が中大脳動脈のM2セグメントに閉塞の症状を有する、請求項185~193記載の方法。
【請求項196】
前記対象が虚血再灌流傷害を有する対象である、請求項185~195記載の方法。
【請求項197】
前記再灌流が血管内療法によって行われる、請求項196記載の方法。
【請求項198】
前記再灌流が血栓溶解剤の投与によって行われる、請求項196記載の方法。
【請求項199】
前記再灌流が血管形成術によって行われる、請求項196記載の方法。
【請求項200】
前記対象が虚血性非再灌流対象である、請求項185~195記載の方法。
【請求項201】
前記対象が広範囲な脳梗塞を有する対象である、請求項185~195記載の方法。
【請求項202】
前記方法が脳卒中後急性期の前記対象の脳組織灌流を改善する、請求項185~201記載の方法。
【請求項203】
前記方法が脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害する、請求項185~201記載の方法。
【請求項204】
前記方法が前記脳卒中後急性期の虚血状態を改善する、請求項185~201記載の方法。
【請求項205】
前記方法が虚血性ペナンブラを救済する、請求項185~201記載の方法。
【請求項206】
前記方法が前記対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させる、請求項185~201記載の方法。
【請求項207】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項185~201記載の方法。
【請求項208】
前記方法がグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害する、請求項185~201記載の方法。
【請求項209】
前記方法が脳卒中神経行動スコアを低下させる、請求項185~201記載の方法。
【請求項210】
前記方法が前記対象の神経学的欠損を改善する、請求項185~201記載の方法。
【請求項211】
前記方法が前記対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させる、請求項185~201記載の方法。
【請求項212】
前記方法が前記対象の障害率を低下させる、請求項185~201記載の方法。
【請求項213】
前記方法が、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、前記対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善する、請求項185~201記載の方法。
【請求項214】
前記方法が認知症の発症を予防及び妨害する、請求項185~201記載の方法。
【請求項215】
前記方法が前記対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療する、請求項185~201記載の方法。
【請求項216】
前記脳卒中が出血性脳卒中である、請求項186記載の方法。
【請求項217】
前記出血性脳卒中が脳出血の状態である、請求項216記載の方法。
【請求項218】
前記出血性脳卒中がくも膜下出血の状態である、請求項216記載の方法。
【請求項219】
前記脳血管疾患が一過性脳虚血発作である、請求項185記載の方法。
【請求項220】
前記方法が脳卒中後急性期の前記対象の脳組織灌流を改善する、請求項219記載の方法。
【請求項221】
前記方法が損傷した脳組織領域における局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害する、請求項219記載の方法。
【請求項222】
前記方法が前記脳卒中後急性期の虚血状態を改善する、請求項219記載の方法。
【請求項223】
前記方法が虚血性ペナンブラを救済する、請求項219記載の方法。
【請求項224】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項219記載の方法。
【請求項225】
前記方法がグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害する、請求項219記載の方法。
【請求項226】
前記方法が脳卒中神経行動スコアを低下させる、請求項219記載の方法。
【請求項227】
前記方法が前記対象の神経学的欠損を改善する、請求項219記載の方法。
【請求項228】
前記方法が前記対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させる、請求項219記載の方法。
【請求項229】
前記方法が前記対象の障害率を低下させる、請求項219記載の方法。
【請求項230】
前記方法が、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、前記対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善する、請求項219記載の方法。
【請求項231】
前記方法が認知症の発症を予防及び妨害する、請求項219記載の方法。
【請求項232】
前記方法が前記対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療する、請求項219記載の方法。
【請求項233】
頭蓋脳損傷を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項234】
前記頭蓋脳損傷が外傷性脳損傷である、請求項233記載の方法。
【請求項235】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項234記載の方法。
【請求項236】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項234記載の方法。
【請求項237】
神経変性疾患を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項238】
前記神経変性疾患が認知症である、請求項237記載の方法。
【請求項239】
前記認知症が血管性認知症である、請求項238記載の方法。
【請求項240】
前記認知症がアルツハイマー病である、請求項238記載の方法。
【請求項241】
前記認知症がレビー小体型認知症である、請求項238記載の方法。
【請求項242】
前記認知症が前頭側頭型認知症である、請求項238記載の方法。
【請求項243】
前記方法が、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、前記対象の認知機能不全、特に、視空間の側面における認知機能不全を予防、治療、及び改善する、請求項237~242記載の方法。
【請求項244】
前記方法が認知症の発症を予防及び妨害する、請求項237~242記載の方法。
【請求項245】
前記方法が前記対象の脳組織灌流を改善する、請求項237~242記載の方法。
【請求項246】
前記方法が脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害する、請求項237~242記載の方法。
【請求項247】
前記方法が虚血の状態を改善する、請求項237~242記載の方法。
【請求項248】
前記方法が虚血性ペナンブラを救済する、請求項237~242記載の方法。
【請求項249】
前記方法が前記対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させる、請求項237~242記載の方法。
【請求項250】
前記方法が中枢神経系炎症を阻害する、請求項237~242記載の方法。
【請求項251】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項237~242記載の方法。
【請求項252】
前記方法が神経行動スコアを低下させる、請求項237~242記載の方法。
【請求項253】
前記方法が神経学的欠損を改善する、請求項237~242記載の方法。
【請求項254】
前記方法が前記対象の全体的な障害率を低下させる、請求項237~242記載の方法。
【請求項255】
緑内障を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項256】
前記緑内障が原発緑内障である、請求項255記載の方法。
【請求項257】
前記原発緑内障が開放隅角緑内障である、請求項256記載の方法。
【請求項258】
前記原発緑内障が閉塞隅角緑内障である、請求項256記載の方法。
【請求項259】
前記原発緑内障が特殊型の緑内障である、請求項256記載の方法。
【請求項260】
前記緑内障が続発緑内障である、請求項255記載の方法。
【請求項261】
前記緑内障が発達緑内障である、請求項255記載の方法。
【請求項262】
前記方法が網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減する、請求項255~261記載の方法。
【請求項263】
前記方法が視機能を保護する、請求項255~261記載の方法。
【請求項264】
前記方法が二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる、請求項255~261記載の方法。
【請求項265】
前記方法が内側網膜損傷を軽減する、請求項255~261記載の方法。
【請求項266】
前記方法が網膜浮腫を低下させる、請求項255~261記載の方法。
【請求項267】
前記方法が網膜厚低下を軽減する、請求項255~261記載の方法。
【請求項268】
前記方法が網膜神経線維層の浮腫を低下させる、請求項255~261記載の方法。
【請求項269】
前記方法が網膜神経線維層の厚さを維持する、請求項255~261記載の方法。
【請求項270】
前記方法が網膜神経線維層の薄化を予防する、請求項255~261記載の方法。
【請求項271】
前記方法が視神経炎症を阻害する、請求項255~261記載の方法。
【請求項272】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項255~261記載の方法。
【請求項273】
前記方法が、神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、TNF-α、IL-1β、及び/又はIFN-γを含む、請求項255~261記載の方法。
【請求項274】
前記方法が視神経機能低下を軽減する、請求項255~261記載の方法。
【請求項275】
前記方法が全視野網膜電図(FERG)の機能指数を改善する、請求項255~261記載の方法。
【請求項276】
前記方法がフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善する、請求項255~261記載の方法。
【請求項277】
前記方法が全体的な網膜機能を保護する、請求項255~261記載の方法。
【請求項278】
虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項279】
前記視神経症が虚血性視神経症である、請求項278記載の方法。
【請求項280】
前記虚血性視神経症が前部虚血性視神経症である、請求項279記載の方法。
【請求項281】
前記虚血性視神経症が後部虚血性視神経症である、請求項279記載の方法。
【請求項282】
前記方法が網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減する、請求項278~281記載の方法。
【請求項283】
前記方法が視機能を保護する、請求項278~281記載の方法。
【請求項284】
前記方法が二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる、請求項278~281記載の方法。
【請求項285】
前記方法が内側網膜損傷を軽減する、請求項278~281記載の方法。
【請求項286】
前記方法が網膜浮腫を低下させる、請求項278~281記載の方法。
【請求項287】
前記方法が網膜厚低下を軽減する、請求項278~281記載の方法。
【請求項288】
前記方法が網膜神経線維層の浮腫を低下させる、請求項278~281記載の方法。
【請求項289】
前記方法が網膜神経線維層の厚さを維持する、請求項278~281記載の方法。
【請求項290】
前記方法が網膜神経線維層の薄化を予防する、請求項278~281記載の方法。
【請求項291】
前記方法が視神経炎症を阻害する、請求項278~281記載の方法。
【請求項292】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項278~281記載の方法。
【請求項293】
前記方法が神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む、請求項278~281記載の方法。
【請求項294】
前記方法が視神経機能低下を軽減する、請求項278~281記載の方法。
【請求項295】
前記方法が全視野網膜電図(FERG)の機能指数を改善する、請求項278~281記載の方法。
【請求項296】
前記方法がフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善する、請求項278~281記載の方法。
【請求項297】
前記方法が全体的な網膜機能を保護する、請求項278~281記載の方法。
【請求項298】
視神経炎を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項299】
前記方法が前記対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する、請求項298記載の方法。
【請求項300】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項298記載の方法。
【請求項301】
前記方法がGFAPのI/R誘導性過剰発現を阻害する、請求項298記載の方法。
【請求項302】
前記方法が神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む、請求項298記載の方法。
【請求項303】
視神経腫瘍を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項304】
前記方法が前記対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する、請求項303記載の方法。
【請求項305】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項303記載の方法。
【請求項306】
前記方法がGFAPのI/R誘導性過剰発現を阻害する、請求項303記載の方法。
【請求項307】
前記方法が神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む、請求項303記載の方法。
【請求項308】
外傷性視神経症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項309】
前記方法が前記対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する、請求項308記載の方法。
【請求項310】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項308記載の方法。
【請求項311】
前記方法がGFAPのI/R誘導性過剰発現を阻害する、請求項308記載の方法。
【請求項312】
前記方法が神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む、請求項308記載の方法。
【請求項313】
網膜症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項314】
前記方法が前記対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する、請求項313記載の方法。
【請求項315】
前記方法が網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する、請求項313記載の方法。
【請求項316】
前記疾患、障害、又は疾病が、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症を含む、請求項315記載の方法。
【請求項317】
前記網膜症が網膜血管閉塞疾患である、請求項313記載の方法。
【請求項318】
前記網膜血管閉塞疾患が網膜動脈閉塞である、請求項317記載の方法。
【請求項319】
前記網膜動脈閉塞が中心動脈閉塞である、請求項318記載の方法。
【請求項320】
前記網膜動脈閉塞が分枝動脈閉塞である、請求項318記載の方法。
【請求項321】
前記網膜動脈閉塞が毛様体動脈閉塞である、請求項318記載の方法。
【請求項322】
前記網膜動脈閉塞が網膜前毛細血管細動脈閉塞である、請求項318記載の方法。
【請求項323】
前記網膜血管閉塞疾患が網膜静脈閉塞である、請求項318記載の方法。
【請求項324】
前記網膜静脈閉塞が中心静脈閉塞である、請求項323記載の方法。
【請求項325】
前記網膜静脈閉塞が分枝静脈閉塞である、請求項323記載の方法。
【請求項326】
前記網膜症が未熟児網膜症である、請求項313記載の方法。
【請求項327】
前記方法が網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項328】
前記方法が視機能を保護する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項329】
前記方法が二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項330】
前記方法が内側網膜損傷を軽減する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項331】
前記方法が網膜浮腫を低下させる、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項332】
前記方法が網膜厚低下を軽減する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項333】
前記方法が網膜神経線維層の浮腫を低下させる、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項334】
前記方法が網膜神経線維層の厚さを維持する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項335】
前記方法が網膜神経線維層の薄化を予防する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項336】
前記方法が視神経炎症を阻害する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項337】
前記方法がGFAP過剰発現を阻害する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項338】
前記方法が神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害し、該炎症因子が、TNF-α、IL-1β、及び/又はIFN-γを含む、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項339】
前記方法が視神経機能低下を軽減する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項340】
前記方法が全視野網膜電図(FERG)の機能指数を改善する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項341】
前記方法がフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項342】
前記方法が全体的な網膜機能を保護する、請求項318~322及び326記載の方法。
【請求項343】
末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項344】
前記末梢神経障害が糖尿病性末梢神経障害である、請求項343記載の方法。
【請求項345】
前記糖尿病性末梢神経障害が糖尿病性遠位対称性多発性神経障害である、請求項344記載の方法。
【請求項346】
前記糖尿病性末梢神経障害が糖尿病性単神経障害又は多発性単神経障害である、請求項344記載の方法。
【請求項347】
前記対象が、対称性症状発現、遠位四肢感覚異常、両下肢感覚異常、靴下型感覚消失、手袋型感覚消失、正中神経、尺骨神経、総腓骨神経の障害、感覚機能不全、運動機能不全、外傷に対する無感覚、及び神経障害性疼痛:からなる群から選択される症状を示す、請求項343~346記載の方法。
【請求項348】
前記糖尿病性末梢神経障害が糖尿病性有痛性末梢神経障害である、請求項344記載の方法。
【請求項349】
前記対象の睡眠が疼痛によって影響を受ける、請求項348記載の方法。
【請求項350】
前記対象が疼痛誘発性うつ病及び不安に悩まされる、請求項344又は348記載の方法。
【請求項351】
前記方法が末梢神経伝導速度を改善する、請求項343~350記載の方法。
【請求項352】
前記方法が腓腹神経の感覚神経伝導速度を有意に改善する、請求項343~351記載の方法。
【請求項353】
前記方法が、微小循環を改善すること、神経炎症を阻害すること、中枢神経系炎症を阻害すること、損傷した神経組織を修復すること、末梢神経障害の症状を長期間緩和すること、神経障害の進行を長期間制御すること、及び神経障害性疼痛の進行を長期間制御すること:からなる群から選択される、請求項343~350記載の方法。
【請求項354】
神経炎症を阻害する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項355】
前記方法が神経炎症と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する、請求項354記載の方法。
【請求項356】
前記疾患、障害、又は疾病が、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、頭蓋脳損傷、血管性認知症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症を含む、請求項355記載の方法。
【請求項357】
神経損傷を修復する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項358】
対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、前記方法。
【請求項359】
前記方法が網膜神経節細胞(RGC)損傷と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する、請求項358記載の方法。
【請求項360】
前記疾患、障害、又は疾病が、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症を含む、請求項359記載の方法。
【請求項361】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、神経障害を調節するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項362】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、神経炎症を阻害するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項363】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、神経損傷を修復するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項364】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、脳血管疾患を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項365】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、頭蓋脳損傷を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項366】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、神経変性疾患を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項367】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、緑内障を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項368】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項369】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、視神経炎を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項370】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、視神経腫瘍を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項371】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、外傷性視神経症を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項372】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、網膜症を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項373】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項374】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、対象の末梢神経障害を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【請求項375】
対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、糖尿病性末梢神経障害を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その内容が引用により本明細書中に完全に組み込まれる、2021年5月21日に出願された中国発明特許出願第202110560773.5号に対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、その内容が引用により本明細書中に完全に組み込まれる、2022年1月28日に出願された中国発明特許出願第202210110224.2号に対する優先権を主張する。
【0003】
本出願は、2020年8月10日に出願された中国発明特許出願第202010794864.0号が引用により本明細書中に完全に組み込まれることを主張する。
【0004】
本出願は、2021年7月14日に出願された国際特許出願PCT/CN2021/106355号が引用により本明細書中に完全に組み込まれることを主張する。
【0005】
(技術分野)
本発明の開示は、神経障害の分野、特に、神経障害を調節する方法、とりわけ、神経障害関連の疾患、障害、又は疾病を治療、予防、及び改善する方法に関する。
【背景技術】
【0006】
(背景)
神経障害は、中枢神経障害及び末梢神経障害を含む。臨床的に一般的でかつ重篤な中枢神経障害としては、脳血管疾患(例えば、脳卒中、外傷性脳損傷)、神経変性疾患、視神経症などが挙げられる。脳血管疾患は、毎年150万件を超える死亡の原因となっており、脳卒中は、その主な臨床型のうちの1つである。脳卒中患者の約82%は、虚血性脳卒中である。臨床的な治療手段としては主に、脳血流を適時に回復させ、虚血部位の血液循環を再建し、かつ虚血性ペナンブラを救済するための、静脈内血栓溶解及び血管内介入療法が挙げられる。外傷性脳損傷は、死亡及び障害の主な原因である。2019年、米国では、TBIに関連する死亡が約61,000件あった。外傷性脳損傷(TBI)に関連する死亡は、毎日約166件ある。
【0007】
現在の臨床業務では、注射用アルテプラーゼ(Boehringer Ingelheim Pharma GmbH&Co.KG製)などの静脈内血栓溶解(IVT)が急性虚血性脳卒中の発症後3時間以内に施される。アルテプラーゼは、急性虚血性脳卒中を治療するためのFDAに承認されている唯一の薬物である。静脈内血栓溶解には厳格な時間枠制限があるので、患者の約3%しかこの治療から恩恵を受けない。現在、脳卒中患者の70%が、依然として、様々な程度の労働損失を有しており、そのうち40%超が重度の障害を負っている。同時に、静脈内血栓溶解が脳卒中から3~6カ月後の患者の死亡率を低下させることができないことを示した研究があり(EMBERSON J、LEES K R、LYDEN Pらの文献、急性虚血性脳卒中のためのアルテプラーゼによる静脈内血栓溶解の効果に対する治療の遅れ、年齢、及び脳卒中の重症度の影響:無作為化試験からの個々の患者データのメタ分析(Effect of treatment delay, age, and stroke severity on the effects of intravenous thrombolysis with alteplase for acute ischaemic stroke:a meta-analysis of individual patient data from randomised trials) [J]. Lancet, 2014, 384(9958):1929-1935.)、特に、大血管閉塞又は重症疾患を有する患者では、静脈内血栓溶解が十分な効果をもたらさない傾向にあり、再疎通率はわずか13%~18%である(GUPTA R、JOVIN T Gの文献、急性虚血性脳卒中の血管内管理:患者及び治療選択における進歩(Endovascular management of acute ischemic stroke: advances in patient and treatment selection) [J]. Expert Rev Neurother, 2007, 7(2): 143-153)。
【0008】
脳卒中を治療する主な目的の一つは、神経保護である。既に脳卒中に罹患している患者にとって、神経細胞の死を予防し、遅延させることは極めて重要であり、それにより、機能を回復させ、治療のための時間をより多く得るために、より多くの神経細胞を温存することができる。しかしながら、現在、安全でかつ効果的な神経保護剤が不足しており、神経保護は、著しく満たされていない臨床医療ニーズとなっている(Wu, S.らの文献、中国における脳卒中:疫学、予防、及び管理における進歩及び課題(Stroke in China: advances and challenges in epidemiology, prevention, and management). Lancet Neurol. 18, 394-405(2019).; Kim, A.S.、Cahill, E.、及びCheng, N.Tの文献、世界の脳卒中ベルト:世界の脳卒中負担の地理的ばらつき(Global Stroke Belt: Geographic Variation in Stroke Burden Worldwide). Stroke 46, 3564-3570(2015))。
【0009】
認知、感情障害、及び社会的機能低下症候群である認知症は、最も一般的な神経変性疾患であり、現在、全ての疾患の中で7番目に多い死因であり、世界的に、高齢者人口における障害及び依存状態の主な原因の1つである。世界保健機関(WHO)の統計によると、現在、全世界で約5500万人が認知症を抱えて暮らしており、毎年1000万人近くが新たに発症し、全世界での年間負担は、約1兆米ドルと推定されている。2050年までに、1億3500万人が認知症を有することになると推定されている。
【0010】
アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、及び前頭側頭型認知症を含む、多くのタイプの認知症がある。認知症は、脳卒中の後、又は特定の感染症、脳への反復的な物理的損傷、もしくは栄養欠乏の場合に発症することもある。異なる形態の認知症の境界は曖昧であるが、脳血管損傷が様々な認知症に存在すること多い(Gg A、Cq A、Lfa Bの文献、高齢化社会における認知症の予防:エビデンス及び生物学的根拠(Prevention of dementia in an ageing world: Evidence and biological rationale). Ageing Research Reviews, 2020, 64:101045)。
【0011】
過去40年間、認知症を治療するための多くの臨床試験は全て失敗に終わっている。現在、安全でかつ効果的な神経保護剤は、臨床において不足しており、神経保護は、著しく満たされていない臨床医療ニーズとなっている(Jca B、Gl B、Ar Bらの文献、アルツハイマー病薬開発のパイプライン: 2019(Alzheimer's disease drug development pipeline: 2019). Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions, 2019, 5:272-293; Panza F、Lozupone M、Logroscino Gらの文献、アルツハイマー病のためのアミロイド-β標的療法の批判的吟味(A critical appraisal of amyloid-β-targeting therapies for Alzheimer disease). Nature Reviews Neurology, 2019, 15(2):73-88).
【0012】
網膜虚血再灌流(I/R)傷害は、視神経症(緑内障、虚血性視神経症、網膜血管閉塞症、及び様々な網膜症を含む)などの多くの眼疾患をもたらす細胞損傷の病態生理学的プロセスである(Khanh Vu、Dong Feng Chenの文献、「CD4+ T細胞応答は実験的虚血性網膜症における進行性神経変性を媒介する(CD4+ T-Cell Responses Mediate Progressive Neurodegeneration in Experimental Ischemic Retinopathy)」. The American Journal of Pathology 190, no. 8(August 2020): 1723-34)。網膜虚血再灌流(I/R)によって誘発される網膜神経節細胞(RGC)及び内部網膜損傷は、中高年者の視覚障害、高齢者の不可逆的な視覚障害及び失明の一般的な原因であり、これらは、著しく満たされていない医療ニーズであり、有効な治療法がない(Soares R O S、Losada D M、Jordani M Cらの文献、虚血/再灌流傷害再考:最新の薬理学的戦略の概要(Ischemia/Reperfusion Injury Revisited: An Overview of the Latest Pharmacological Strategies) [J]. International Journal of Molecular Sciences, 2019, 20(20):5034)。
【0013】
緑内障は、進行性の網膜神経節細胞(RGC)死及び典型的な視野欠損を特徴とする眼疾患群であり、これは、世界における不可逆的失明の主な原因となっている。現在、臨床的な治療レジメンは、主に、眼内圧を低下させることであり、これには、一部の緑内障患者の視機能に対する保護効果しかない。それゆえ、安全でかつ効果的なRGC神経保護を提供する新しい治療法を開発することが非常に重要である。要するに、これらの疾患に対する安全でかつ効果的な薬物が臨床においてまだ不足しており、そのため、新しい薬物及び治療法の発見が急がれている。
【0014】
網膜静脈閉塞症(RVO)は、重度の視力低下をもたらす網膜血管疾患である。RVOを有する患者は、新生血管緑内障(NVG)を発症して、完全失明に至ることもある。現在、抗VEGF薬の硝子体内注射が第一選択の治療レジメンである。しかしながら、この薬物は、半減期が短いため、治療のために頻繁に眼内注射する必要があり、このことは、眼内炎の潜在的リスクを高め、再発しやすいなどの問題を引き起こし、長期使用後の色素胞及び視細胞層の部分的萎縮を招くことになる。それゆえ、新しいRVO治療薬の発見が急がれている。
【0015】
糖尿病は、ますます蔓延している疾患であり、人間の健康及び生活の質に大きな影響を及ぼしている。2040年には、世界の20歳から79歳の糖尿病患者の数が6億4200万人に達し、世界の総人口の8.8%を占めると推定されている。糖尿病患者の最大50%が糖尿病性末梢神経障害(DPN)を発症する。DPN患者は、比較的高い看護コストを必要とし、患者は、大きな生理的、心理的、及び経済的負担を負うことになる。
【0016】
既存の治療手段及び薬物は、DPNの進行の予防及び制御、並びに有効性の点で、まだ不十分である。エパルレスタットは、ポリオール経路を介する新規のアルドース還元酵素阻害剤であり、糖尿病性末梢神経障害の症状及び末梢神経伝導速度を改善することができる。しかしながら、エパルレスタットの使用は、いくつかの副作用、特に、長期使用後のアレルギー、肝機能及び腎機能並びに消化器系の有害反応をもたらし、これにより、治療効果が乏しくなり、長期的に神経障害の進行を制御することができない(Hotta、Nigishi、Akanumaらの文献、糖尿病性末梢神経障害に対するアルドース還元酵素阻害剤エパルレスタットの長期臨床効果(Long-Term Clinical Effects of Epalrestat, an Aldose Reductase Inhibitor, on Diabetic Peripheral Neuropathy). [J]. Diabetes Care, 2006; Sato K、Yama K、Yu Mらの文献、エパルレスタットは転写調節を通じてシュワン細胞の細胞内グルタチオンレベルを増加させる(Epalrestat increases intracellular glutathione levels in Schwann cells through transcription regulation) [J]. Redox Biology, 2014; Epalrestat. Reactions Weekly, 2011, 1369(1):18-18; Fujise Y、Koda M、Kato Jらの文献、アルドース還元酵素阻害剤エパルレスタットによって引き起こされる薬物誘発性肝損傷(Drug-induced hepatic injury caused by an aldose reductase inhibitor) [J]. Kanzo, 2011, 52(6):351-355.)。現在、エパルレスタットは、米国FDAによる承認を受けていない。それゆえ、DPN患者における神経障害の進行を長期的に制御することができる薬物はまだなく、糖尿病性末梢神経障害の臨床的予防及び治療のための新しい薬物及び治療法の発見が急がれている(Zakin E、Abrams R、Simpson D Mの文献、糖尿病性神経障害(Diabetic Neuropathy) [J]. Seminars in Neurology, 2019, 39(05):560-569).
【0017】
DPN患者のかなりの数は、重度の神経障害性疼痛、すなわち、糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)を伴う。これにより、患者の生活に大きな負担がかかり、失業率の増加及びメンタルヘルス障害及び身体合併症の比率の増加につながる。糖尿病性有痛性末梢神経障害の治療法は、症状の緩和を目的としているが、現在の薬物は、患者の3分の1にしか効果がなく、痛みを完全には緩和することができずに、副作用、乏しい効力などを伴う。それゆえ、糖尿病性有痛性末梢神経障害を軽減するための潜在的な新しい治療標的を開発することが非常に重要である(Gordon S、Pallai S、Dinesh Sらの文献、有痛性糖尿病性神経障害の新しい見方(A new look at painful diabetic neuropathy) [J]. Diabetes Research and Clinical Practice, 2018, 144:177-191.)。
【0018】
ドキサゾシンは、前立腺肥大症及び高血圧症の対症療法のために臨床的に使用される。成人は、1日1回1mgの初回治療投薬量を経口投与されることが多く、1~2週間後、投薬量は、臨床応答及び忍容性に応じて調節される。維持治療投薬量は1日1回1~8mgであり、最大投薬量は1日最大16mgであり、4mgを超える投薬量は、姿勢低血圧を引き起こしやすい。
【0019】
プラミペキソールは、成人の特発性パーキンソン病の兆候及び症状を治療するために臨床的に使用され、中等度から重度の特発性レストレスレッグス症候群の症状を治療するためにも使用される。成人には、1日3回、経口投与されることが多く、初回投薬量は1日に0.375mgであり、その後、投薬量の増加が5~7日毎に行われ、最大1日投薬量は4.5mgである。維持治療投薬量は、1日に0.375mg~4.5mgである。
【0020】
メトプロロールは、臨床的には、抗不整脈薬であり、その適応症は、高血圧症、狭心症などである。高血圧症を治療するための成人用の一般的な投薬量は、100~200mg/回を1日2回である。急性心筋梗塞の治療において、この薬物は、早い段階で、すなわち、最初の数時間以内に、まず2.5~5mg/回のメトプロロールを5分おきに1回、合計3回10~15mgの投薬量で静脈内投与し(2分以内); 15分後、25~50mg/回で、6~12時間おきに1回、24~48時間経口投与し、その後、50~100mg/回で1日2回経口投与するという一般的な使用方法で投与されることが推奨されている。
【0021】
米国特許US10117868 B2号では、光誘発性網膜変性、全トランス網膜のクリアランス異常、又は活性酸素種発生を伴う眼疾患を治療するためのドキサゾシン及びメトプロロールの組成物を使用する方法が言及されている。いくつかの文献では、糖尿病マウスの初期糖尿病性網膜症(DR)に対するメトプロロール、ブロモクリプチン、及びドキサゾシンの組成物の阻害効果も報告された(Kern T S、Du Y、Tang Jらの文献、糖尿病性網膜症を阻害するためのアドレナリン作動性セロトニン及びドーパミン受容体の調節:単剤療法対併用療法(Regulation of adrenergic, serotonin and dopamine receptors to inhibit diabetic retinopathy: monotherapies versus combination therapies) [J]. Molecular Pharmacology, 2021: MOLPHARM-AR-2021-000278.)。
【発明の概要】
【0022】
(概要)
本発明は、神経障害を調節する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0023】
神経障害を調節する方法は、神経炎症を阻害するか、又は神経損傷を修復することを含む。ある実施態様において、本方法は、神経炎症を阻害することにより、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、頭蓋脳損傷、血管性認知症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症を含む、神経炎症関連疾患を治療、予防、又は改善する。
【0024】
ある実施態様において、神経障害を調節する方法は、神経障害関連疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善することをさらに含み、ここで、該疾患、障害、又は疾病は、中枢神経系疾患、障害、又は疾病、及び末梢神経障害を含み、ここで、該末梢神経障害は、糖尿病性末梢神経障害を含む。ある実施態様において、末梢神経障害を治療、予防、及び/又は改善する方法は、神経伝導速度を改善することを含む。
【0025】
ある実施態様において、糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病性遠位対称性多発性神経障害、糖尿病性単神経障害、又は多発性単神経障害である。ある実施態様において、対象は、対称的な症状を示し、対象における症候性発現は、遠位四肢感覚異常、両下肢の感覚異常、靴下型感覚消失、手袋型感覚消失、正中神経、尺骨神経、総腓骨神経の障害、感覚機能不全、運動機能不全、外傷に対する無感覚、及び神経障害性疼痛を含む。ある実施態様において、糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病性有痛性末梢神経障害である。ある実施態様において、対象の睡眠は、神経障害及び神経伝導異常によって引き起こされる疼痛によって影響を受け、対象は、疼痛又は神経障害によって引き起こされるうつ病及び不安に悩まされる。
【0026】
ある実施態様において、末梢神経障害、特に、糖尿病性末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法は、末梢神経伝導速度を改善すること、及び腓腹神経の感覚神経伝導速度を顕著に改善すること:を含む。ある実施態様において、対象に対する本方法の効果は、微小循環を改善すること、神経炎症を阻害すること、中枢神経系炎症を阻害すること、損傷した神経組織を修復すること、末梢神経障害の症状を長期間緩和すること、神経障害の進行を長期間制御すること、及び神経障害性疼痛の進行を長期間制御すること:を含む。
【0027】
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、脳血管疾患を含む。脳血管疾患は、脳卒中及び一過性脳虚血発作を含み、ここで、該脳卒中は、虚血性脳卒中及び出血性脳卒中を含み、出血性脳卒中は、脳出血及び/又はくも膜下出血の状態を含む。
【0028】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、脳卒中発作後7時間以内の対象、又は脳卒中発作後5時間以内の対象を含む。ある実施態様において、対象は、20もしくは20以内、又は15もしくは15以内、又は8~15の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する。対象はまた、持続的な神経学的欠損を伴う中等度から重度の脳卒中を有する対象であってもよい。ある実施態様において、対象は、前方循環系大動脈閉塞を有する対象である。ある実施態様において、対象は、中大脳動脈のM1又はM2セグメントに閉塞の症状を有する。
【0029】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、虚血再灌流傷害を有する対象であり、ここで、再灌流は、血管内療法による再灌流、血栓溶解剤の投与による再灌流、及び/又は血管形成術による再灌流を含む。ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、虚血非再疎通を有する対象及び/又は広範囲な脳梗塞を有する対象である。
【0030】
ある実施態様において、脳卒中、特に、虚血性脳卒中を治療、予防、又は改善する方法は、対象の急性脳組織灌流を改善すること、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害すること、急性虚血状態を改善すること、及び虚血性ペナンブラを救済すること;対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させること;中枢神経系炎症を阻害すること、及びグリア原線維酸性タンパク質(GFAP、アストロサイト活性化のマーカー)の過剰発現を阻害すること;脳卒中の神経行動スコアを低下させること、対象の神経学的欠損を改善すること、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させること、並びに対象の障害率を低下させること;記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善すること、並びに認知症の発症を予防及び妨害すること;並びに/又は対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療すること:を含む。
【0031】
ある実施態様において、一過性脳虚血発作を治療、予防、又は改善する方法は、対象の急性脳組織灌流を改善すること、損傷した脳組織領域における局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害すること、急性(脳卒中後75時間)の虚血状態を改善すること、及び虚血性ペナンブラを救済すること;中枢神経系炎症を阻害すること、及びグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害すること;脳卒中の神経行動スコアを低下させること、対象の神経学的欠損を改善すること、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させること、並びに対象の障害率を低下させること;記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善すること、並びに認知症の発症を予防及び妨害すること;並びに/又は対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療すること:を含む。
【0032】
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、頭蓋脳損傷を含み、ここで、頭蓋脳損傷は、外傷性脳損傷を含む。ある実施態様において、外傷性脳損傷を治療、予防、又は改善する方法は、中枢神経系炎症を阻害すること及び/又はGFAPの過剰発現を阻害すること:を含む。
【0033】
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、神経変性疾患を含み、神経変性疾患は、認知症を含み、ここで、認知症は、血管性認知症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、及び前頭側頭型認知症を含む。
【0034】
ある実施態様において、認知症を予防、治療、及び改善する方法は、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全、特に、視空間の側面における認知機能不全を予防、治療、及び改善すること、認知症の発症を予防及び妨害すること;対象の急性脳組織灌流を改善すること、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害すること、虚血状態を改善すること、及び虚血性ペナンブラを救済すること;対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させること;中枢神経系炎症を阻害すること、及びGFAPの過剰発現を阻害すること;並びに神経行動スコアを低下させること及び神経学的欠損を改善すること、並びに/又は対象の全体的な障害率を低下させること:を含む。
【0035】
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、視神経症を含み、ここで、視神経症は、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、及び外傷性視神経症を含む。ある実施態様において、視神経症を治療、予防、及び/又は改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減することを含む。
【0036】
ある実施態様において、緑内障は、原発緑内障、続発緑内障、及び/又は発達緑内障を含み、ここで、原発緑内障は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、及び特殊型の緑内障を含む。
【0037】
ある実施態様において、緑内障を予防、治療、及び改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減すること、視機能を保護すること、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させること;内側網膜損傷を軽減すること、網膜浮腫を低下させること、及び網膜厚低下を軽減すること;視神経線維層の浮腫を低下させること、網膜神経線維層の厚さを維持すること、及び視神経線維層の薄化を予防すること;視神経炎症及びGFAP過剰発現を阻害すること、神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及び/又はIFN-γを含む);全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善することを含め、視神経機能低下を軽減すること、並びに/又は全体的な網膜機能を保護すること:を含む。
【0038】
ある実施態様において、虚血性視神経症は、前部虚血性視神経症及び/又は後部虚血性視神経症を含む。
【0039】
ある実施態様において、虚血性視神経症を予防、治療、及び改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減すること、視機能を保護すること、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させること;内側網膜損傷を軽減すること、網膜浮腫を低下させること、及び網膜厚低下を軽減すること;視神経線維層の浮腫を低下させること、網膜神経線維層の厚さを維持すること、及び視神経線維層の薄化を予防すること;視神経炎症及びGFAP過剰発現を阻害すること、神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及び/又はIFN-γを含む);全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善することを含め、視神経機能低下を軽減すること、並びに全体的な網膜機能を保護すること:を含む。
【0040】
ある実施態様において、視神経炎を予防、治療、及び改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減すること; I/R誘発性GFAPを含むGFAPの過剰発現を阻害すること;神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及び/又はIFN-γを含む):を含む。
【0041】
ある実施態様において、視神経腫瘍を予防、治療、及び改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減すること; I/R誘発性GFAPを含むGFAPの過剰発現を阻害すること;並びに/又は神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む):を含む。
【0042】
ある実施態様において、外傷性視神経症を予防、治療、及び改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減すること; I/R誘発性GFAPを含むGFAPの過剰発現を阻害すること;並びに/又は神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む):を含む。
【0043】
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、網膜症を含む。ある実施態様において、網膜症を治療、予防、及び/又は改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減することを含む。網膜症は、網膜血管閉塞疾患及び/又は未熟児網膜症を含む。網膜血管閉塞疾患は、網膜動脈閉塞及び/又は網膜静脈閉塞を含み、ここで、網膜動脈閉塞は、中心動脈閉塞、分枝動脈閉塞、毛様体動脈閉塞、及び/又は網膜前毛細血管動脈閉塞症を含み;かつ網膜静脈閉塞は、中心静脈閉塞及び/又は分枝静脈閉塞を含む。
【0044】
ある実施態様において、網膜血管閉塞疾患及び/又は未熟児網膜症を予防、治療、及び改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減すること、視機能を保護すること、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させること;内側網膜損傷を軽減すること、網膜浮腫を低下させること及び網膜厚低下を減速させること;視神経線維層の浮腫を低下させること、網膜神経線維層の厚さを維持すること、及び視神経線維層の薄化を予防すること;視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害すること、神経細胞損傷と関連するTNF-α、IL-1β、及びIFN-γなどの炎症因子の発現レベルを阻害すること;並びに/又は全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善することを含め、視神経機能低下を軽減すること、並びに全体的な網膜機能を保護すること:を含む。
【0045】
ある実施態様において、対象は、哺乳動物を含み;ここで、哺乳動物は、霊長類、特に、ヒトを含む。
【0046】
ある実施態様において、本方法は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態と組み合わせて、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態とさらに組み合わせて投与することを含む。
【0047】
ある実施態様において、本方法は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を同時に又は個別に投与することを含む。同時に投与される場合、3つの医薬成分は、対象への投与のために単一の医薬組成物に製剤化することができる。
【0048】
ある実施態様において、上記の3つの医薬成分又は医薬組成物は、経口剤形、静脈内剤形、皮下剤形、又は眼底注射剤形、好ましくは、経口剤形に製剤化される。上記の3つの医薬成分又は医薬組成物は、錠剤、カプセル、シロップ、懸濁液;静脈内注射液、皮下注射液、筋肉内注射液、及び腹腔内注射液;クリーム、ゼリー、粉末、パッチ;並びに吸入粉末、スプレー、懸濁液、又は直腸坐剤、好ましくは、錠剤に製剤化することができる。上記の3つの医薬成分又は医薬組成物は、対象に、経口、静脈内、皮下、又は筋肉内、好ましくは、経口投与することができる。
【0049】
ある実施態様において、医薬として許容し得る塩は、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、臭化水素酸塩、もしくは硝酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、及び/又はp-トルエンスルホン酸塩から選択される。ある実施態様において、ドキサゾシンの医薬として許容し得る塩形態は、メタンスルホン酸塩である。ある実施態様において、プラミペキソールの医薬として許容し得る塩形態は、塩酸塩である。ある実施態様において、メトプロロールの医薬として許容し得る塩形態は、酒石酸塩である。
【0050】
ある実施態様において、ドキサゾシンの1日投薬量は、0.4mg~16mg、好ましくは、0.5mg~8mgの範囲であり、プラミペキソールの1日投薬量は、0.03mg~4.5mg、好ましくは、0.1mg~1mgの範囲であり、メトプロロールの1日投薬量は、2mg~200mg、好ましくは、10mg~100mgの範囲である。
【0051】
ある実施態様において、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態は、1日に1、2、3、又は4回の頻度で対象に投与される。
【0052】
ある実施態様において、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態は、長時間作用型経口調製物の形態で対象に投与される。
【0053】
本発明はまた、神経炎症を阻害する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0054】
本発明はまた、神経損傷を修復する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0055】
本発明はまた、脳血管疾患を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。脳血管疾患は、脳卒中及び一過性脳虚血発作を含み、ここで、脳卒中は、虚血性脳卒中及び出血性脳卒中を含み、かつ出血性脳卒中は、脳出血及び/又はくも膜下出血の状態を含む。
【0056】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、脳卒中発作後7時間以内の対象又は脳卒中発作後5時間以内の対象を含む。ある実施態様において、対象は、20もしくは20以内、又は15もしくは15以内、又は8~15のベースラインの米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する。対象は、持続的な神経学的欠損を伴う中等度から重度の脳卒中を有する対象であってもよい。ある実施態様において、対象は、前方循環系大動脈閉塞を有する対象である。ある実施態様において、対象は、中大脳動脈のM1又はM2セグメントに頭蓋内閉塞症の症状を有する。
【0057】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、虚血再灌流傷害を有する対象であり、ここで、再灌流は、血管内療法による再灌流、血栓溶解剤の投与による再灌流、及び/又は血管形成術による再灌流を含む。ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、虚血非再疎通を有する対象及び/又は広範囲な脳梗塞を有する対象である。
【0058】
ある実施態様において、脳卒中、特に、虚血性脳卒中を治療、予防、又は改善する方法は、対象の急性脳組織灌流を改善すること、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害すること、脳卒中後の急性(脳卒中後75時間)の虚血状態を改善すること、及び虚血性ペナンブラを救済すること;対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させること;中枢神経系炎症を阻害すること、及びグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害すること;脳卒中の神経行動スコアを低下させること、対象の神経学的欠損を改善すること、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させること、並びに対象の障害率を低下させること;記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善すること、並びに認知症の発症を予防及び妨害すること;並びに/又は対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療すること:を含む。
【0059】
ある実施態様において、一過性脳虚血発作を治療、予防、又は改善する方法は、対象の急性脳組織灌流を改善すること、損傷した脳組織領域における局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害すること、急性虚血状態を改善すること、及び虚血性ペナンブラを救済すること;中枢神経系炎症を阻害すること、及びグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害すること;脳卒中の神経行動スコアを低下させること、対象の神経学的欠損を改善すること、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させること、並びに対象の障害率を低下させること;記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善すること、並びに認知症の発症を予防及び妨害すること;並びに/又は対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療すること:を含む。
【0060】
本発明はまた、頭蓋脳損傷を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。頭蓋脳損傷は、外傷性脳損傷を含む。ある実施態様において、外傷性脳損傷を治療、予防、又は改善する方法は、中枢神経系炎症を阻害すること及び/又はGFAP過剰発現を阻害すること:を含む。
【0061】
本発明はまた、神経変性疾患を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。神経変性疾患は、認知症を含み、ここで、認知症は、血管性認知症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、及び/又は前頭側頭型認知症を含む。
【0062】
ある実施態様において、認知症を予防、治療、及び改善する方法は、記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全、特に、視空間の側面における認知機能不全を予防、治療、及び改善すること、認知症の発症を予防及び妨害すること;対象の脳組織灌流を改善すること、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害すること、虚血状態を改善すること、及び虚血性ペナンブラを救済すること; 対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させること;中枢神経系炎症を阻害すること、及びGFAPの過剰発現を阻害すること;並びに神経行動スコアを低下させること及び神経学的欠損を改善すること、並びに/又は対象の全体的な障害率を低下させること:を含む。
【0063】
本発明はまた、緑内障を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。緑内障は、原発緑内障、続発緑内障、及び/又は発達緑内障を含み、ここで、原発緑内障は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、及び特殊型の緑内障を含む。
【0064】
ある実施態様において、緑内障を予防、治療、及び改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減すること、視機能を保護すること、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させること;内側網膜損傷を軽減すること、網膜浮腫を低下させること、及び網膜厚低下を軽減すること;視神経線維層の浮腫を低下させること、網膜神経線維層の厚さを維持すること、及び視神経線維層の薄化を予防すること;視神経炎症及びGFAP過剰発現を阻害すること、神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む);全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善することを含め、視神経機能低下を軽減すること、並びに/又は全体的な網膜機能を保護すること:を含む。
【0065】
本発明はまた、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。虚血性視神経症は、前部虚血性視神経症及び/又は後部虚血性視神経症を含む。
【0066】
ある実施態様において、虚血性視神経症を予防、治療、及び改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減すること、視機能を保護すること、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させること;内側網膜損傷を軽減すること、網膜浮腫を低下させること、及び網膜厚低下を軽減すること;視神経線維層の浮腫を低下させること、網膜神経線維層の厚さを維持すること、及び視神経線維層の薄化を予防すること;視神経炎症及びGFAP過剰発現を阻害すること、神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む);全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善することを含め、視神経機能低下を軽減すること、並びに/又は全体的な網膜機能を保護すること:を含む。
【0067】
本発明はまた、視神経炎を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、視神経炎を予防、治療、及び改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減すること; GFAPの過剰発現を阻害すること(ここで、GFAPは、I/R誘発性GFAPを含む);並びに/又は神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む):を含む。
【0068】
本発明はまた、視神経腫瘍を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、視神経腫瘍を予防、治療、及び改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減すること; I/R誘発性GFAPを含むGFAPの過剰発現を阻害すること;並びに/又は神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む):を含む。
【0069】
本発明はまた、外傷性視神経症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、外傷性視神経症を予防、治療、及び改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減すること; I/R誘発性GFAPを含むGFAPの過剰発現を阻害すること;並びに/又は神経細胞損傷と関連する少なくとも1つの炎症因子の発現レベルを阻害すること(該炎症因子は、TNF-α、IL-1β、及びIFN-γを含む):を含む。
【0070】
本発明はまた、網膜症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、網膜症を治療、予防、及び/又は改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減することを含む。網膜症は、網膜血管閉塞疾患及び/又は未熟児網膜症を含む。網膜血管閉塞疾患は、網膜動脈閉塞及び/又は網膜静脈閉塞を含み、ここで、網膜動脈閉塞は、中心動脈閉塞、分枝動脈閉塞、毛様体動脈閉塞、及び/又は網膜前毛細血管動脈閉塞症を含み;かつ網膜静脈閉塞は、中心静脈閉塞及び/又は分枝静脈閉塞を含む。
【0071】
ある実施態様において、網膜血管閉塞疾患及び/又は未熟児網膜症を予防、治療、及び改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減すること、視機能を保護すること、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させること;内側網膜損傷を軽減すること、網膜浮腫を低下させること、及び網膜厚低下を軽減すること;視神経線維層の浮腫を低下させること、網膜神経線維層の厚さを維持すること、及び視神経線維層の薄化を予防すること;視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害すること、神経細胞損傷と関連するTNF-α、IL-1β、及びIFN-γなどの炎症因子の発現レベルを阻害すること;並びに全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指数を改善することを含め、視神経機能低下を軽減すること、並びに/又は全体的な網膜機能を保護すること:を含む。
【0072】
本発明はまた、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0073】
本発明はまた、末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法は、神経伝導速度を改善することを含む。
【0074】
本発明はまた、糖尿病性末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法を提供する。ある実施態様において、糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病性遠位対称性多発性神経障害、糖尿病性単神経障害、又は多発性単神経障害である。ある実施態様において、対象は、対称的な症状を示し、対象における症候性発現は、遠位四肢感覚異常、両下肢の感覚異常、靴下型感覚消失、手袋型感覚消失、正中神経、尺骨神経、総腓骨神経の障害、感覚機能不全、運動機能不全、外傷に対する無感覚、及び神経障害性疼痛を含む。ある実施態様において、糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病性有痛性末梢神経障害である。ある実施態様において、対象の睡眠は、神経障害及び神経伝導異常によって引き起こされる疼痛によって影響を受け、対象は、疼痛又は神経障害によって引き起こされるうつ病及び不安に悩まされる。
【0075】
ある実施態様において、末梢神経障害、特に、糖尿病性末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法は、末梢神経伝導速度を改善すること、及び腓腹神経の感覚神経伝導速度を顕著に改善すること:を含む。ある実施態様において、対象に対する本方法の効果は、微小循環を改善すること、神経炎症を阻害すること、中枢神経系炎症を阻害すること、損傷した神経組織を修復すること、末梢神経障害の症状を長期間緩和すること、神経障害の進行を長期間制御すること、及び神経障害性疼痛の進行を長期間制御すること:を含む。
【0076】
本発明はまた、神経障害を調節するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0077】
本発明はまた、神経炎症を阻害するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0078】
本発明はまた、神経損傷を修復するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0079】
本発明はまた、脳血管疾患を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0080】
本発明はまた、頭蓋脳損傷を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0081】
本発明はまた、神経変性疾患を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0082】
本発明はまた、緑内障を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0083】
本発明はまた、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0084】
本発明はまた、視神経炎を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0085】
本発明はまた、視神経腫瘍を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0086】
本発明はまた、外傷性視神経症を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0087】
本発明はまた、網膜症を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0088】
本発明はまた、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0089】
本発明はまた、末梢神経障害を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【0090】
本発明はまた、糖尿病性末梢神経障害を治療、予防、又は改善するための医薬品の調製における医薬組成物の使用を提供し、ここで、該使用は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0091】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、アカゲザルの中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルにおける閉塞位置(中大脳動脈のM1セグメントの遠位端)を示している。図1の左図:中大脳動脈が動脈瘤クリップによってクリップされる位置は、中大脳動脈のM1セグメントの遠位端及びM2セグメントの近位端である。図1右図:中大脳動脈が動脈瘤クリップによってクリップされている。
【0092】
図2図2は、アカゲザルにおけるMCAO再灌流から3~4時間後の血管造影を示している。A: MCAO再灌流が成功したことを示すMRA画像; B: MCAOが再灌流されなかったことを示すMRA画像 ;C: MCAO再灌流が成功したことを示すCTA画像; D: MCAOが再灌流されなかったことを示すCTA画像。黒矢印は、中大脳動脈閉塞の位置を示し、白アスタリスクは、MCAOの手術側を示している。
【0093】
図3図3は、アカゲザルにおける中大脳動脈閉塞(MCAO)の方法を示している。前頭側頭野で開頭を行って、外側溝を開き、内頸動脈の分岐部の起点から中大脳動脈(MCA)を露出させ、眼窩前頭枝と遠位端のMCAのM1及びM2セグメントとを示した。A:中大脳動脈のM1セグメント遠位端とM2セグメント近位端に位置する中大脳動脈閉塞の模式図。B:遠位中大脳動脈における血行再建の完了を示す90分の中大脳動脈閉塞後の再灌流から3~4時間後の磁気共鳴血管造影(MRA)及びコンピュータ断層撮影血管造影(CTA)。C:高シグナルを有する梗塞/浮腫領域を示す90分の中大脳動脈閉塞後の再灌流から3~4時間後(すなわち、薬物投与前)の磁気共鳴拡散強調画像(DWI)。ここで、2つの群の梗塞/浮腫容積は、同程度であった。NSは、「差が統計的に有意ではない」ことを意味する。
【0094】
図4図4は、アカゲザルにおける90分の中大脳動脈閉塞(MCAO)再灌流モデルの試験プロセス、薬物投与、及び様々な指標の検出のスケジュールを示している。
【0095】
図5図5は、アカゲザルにおける90分の中大脳動脈閉塞後の脳卒中の5時間後から28日間連続で経口投与したとき、DOX+PMP+MTPがMCAO再灌流脳の梗塞/浮腫容積を有意に低下させたことを示している。A:梗塞領域を示す90分の中大脳動脈閉塞後の再灌流から3~4時間後の磁気共鳴拡散強調画像(DWI)。2つの群におけるDWIによって定量された脳浮腫/脳梗塞領域の平均容積は、それぞれ、8.98±1.14cm3及び8.17±0.85cm3であり、薬物投与前の浮腫/梗塞容積に関して、2つの群の間に統計的な差は見られなかった。NSは、「差が統計的に有意ではない」ことを意味する。B:脳卒中後28日以内の各々の時点での磁気共鳴DWI及びT2 FLAIRによって測定された脳浮腫/脳梗塞容積の動的変化。MCAOアカゲザルのDOX+PMP+MTP処置は、75時間後、7日目、14日目、及び28日目の手術側(右側)の脳組織の浮腫/梗塞容積の有意な低下を示した(プラセボ群と比較して、*p<0.05、**p<0.01)。C:プラセボ及びDOX+PMP+MTP処置された90分の中大脳動脈閉塞の再灌流後3~4時間の代表的なMRA画像及び28日目の代表的なT2 FLAIR画像。T2 FLAIR画像は、側頭葉、前頭葉、頭頂葉、及び後頭葉の領域の病変を示した、28日目の1匹の動物の様々なレベルの画像である。中大脳動脈再灌流が脳卒中後に両群の動物で形成され、脳浮腫/脳梗塞領域が、脳卒中から28日後、プラセボ処置されたアカゲザルよりもDOX+PMP+MTP処置されたアカゲザルで有意に小さかったことが分かる。
【0096】
図6図6は、アカゲザルにおける90分の中大脳動脈閉塞後の脳卒中の5時間後から28日間連続で経口投与したとき、DOX+PMP+MTPが梗塞/浮腫容積を有意に低下させ、神経行動機能を有意に改善したことを示している。A: 90分の中大脳動脈閉塞の再灌流から3~4時間後の代表的なMRA及びDWI画像、並びに処置から28日以内の様々な時点におけるT2 FLAIR画像。中大脳動脈再灌流が脳卒中後に両群の動物で形成され、両群における薬物投与前の浮腫/梗塞容積が同程度であったことが分かる。脳浮腫/脳梗塞領域は、薬物投与から28日以内の様々な時点で、プラセボ処置されたアカゲザルよりもDOX+PMP+MTP処置されたアカゲザルで有意に小さかった。B:薬物投与から28日以内のNHPSS観察の結果。DOX+PMP+MTPは、MCAOアカゲザルの神経行動スコアを有意に低下させ、脳卒中動物の神経学的欠損を有意に改善することができた(p<0.01)。
【0097】
図7図7は、アカゲザルの90分の中大脳動脈虚血再灌流モデルにおける脳卒中後30日目の脳壊死周囲領域の脳組織におけるGFAPタンパク質発現の定量的解析を示している。A)非手術側の側頭葉及び中心前回の対応領域の脳組織におけるGFAPタンパク質の免疫組織化学染色の代表的画像; B)プラセボ群; C): DOX+PMP+MTP群における手術側の側頭葉及び中心前回の壊死周囲領域の脳組織におけるGFAPタンパク質の免疫組織化学染色の代表的な画像(×400); D)脳卒中から30日後のプラセボ群及びDOX+PMP+MTP群における非手術側の対応領域の脳組織並びに手術側の側頭葉及び中心頭回の壊死周囲領域の脳組織におけるGFAPタンパク質の発現。データは、平均±SDとして提示した。**非手術側の対応領域の脳組織と比べて、p<0.01; ##プラセボ群と比べて、p<0.01。
【0098】
図8図8は、急性網膜虚血/再灌流傷害(I/R)を有するアカゲザルの準備、並びに薬物投与及び様々な指標の検出のスケジュールの模式図を示している。
【0099】
図9図9は、アカゲザル網膜組織のサンプリング、薄切、及び網膜神経節細胞(RGC)計数の模式図である。
【0100】
図10図10は、アカゲザル視神経頭部及び網膜層のスペクトル領域-光干渉断層撮影(SD-OCT)画像を示している。(A)正常なサルの乳頭周囲の代表的なSD-OCT画像。同心SD-OCTスキャンは、正常な眼の網膜細胞層を示している。(B)光干渉断層撮影(OCT)によって測定されたアカゲザルの9室網膜EDTRS領域の厚さの模式図。
【0101】
図11図11は、薬物投与前及び薬物投与後D63におけるスペクトル領域-光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定されたアカゲザルのEDTRS領域の網膜厚の代表的な画像を示している。
【0102】
図12図12(A)は、虚血性損傷のないアカゲザルの明順応3.0 ERG波形を示しており、ここで、1はOD右眼、2はOS左眼である;(B)は、虚血性損傷のないアカゲザルのフラッシュVEP波形を示している。
【0103】
図13図13は、DOX+MTP+PMP群における63日間の治療がアカゲザルの網膜I/R傷害後のRGC生存率を有意に改善したことを示している;(A~F)網膜I/R後D63におけるI/R対照群、DOX+MTP+PMP群、及びDOX+MTP+BRM群の各々からの1匹の代表的な動物のI/R傷害を受けた右眼(OD)及び左眼(OS非虚血対照眼)のOCT画像;(G~L)同じ眼からの網膜スライスのBrn3a免疫組織化学の代表的顕微鏡写真、Brn3a:黄色の免疫標識RGC、倍率(×200)。(M)薬物投与による治療から63日後の各々の群のアカゲザルのRGC生存率(**I/R対照群のI/R眼と比較して、p<0.01); ##OS非虚血対側眼と比較して、p<0.01;ここで、I/R対照群(N=3)、I/R+DOX+MTP+PMP群(N=3)、I/R+DOX+MTP+BRM群(N=3)、I/R+DOX+MTP群(N=3)、I/R+DOX群(N=3)、及びI/R+PMP群(N=1)(注: BRMはブロモクリプチンである)。
【0104】
図14図14は、63日間(D63)治療されたDOX+MTP+PMP群のアカゲザルの網膜におけるGFAPタンパク質の発現がI/R対照群のI/R眼におけるその発現よりも有意に低かったことを示している;(A~C)I/R対照群からの及びDOX+MTP+PMP群の各々からの1匹の代表的な動物のI/R傷害を受けた右眼(OD)及びこれらの動物のうちの1匹の左眼(非虚血対照眼)からの網膜スライスのGFAP免疫組織化学の代表的顕微鏡写真、GFAP:黄色の免疫標識アストロサイト、倍率(×200)。(D)治療63日目(D63)の網膜虚血/再灌流傷害を有するアカゲザルにおけるGFAPタンパク質の発現(**I/R対照群と比較して、p<0.01)、ここで、OS非虚血対照眼において、n=7。
【0105】
図15図15は、薬物投与後のアカゲザルの各々の群における炎症因子(IFN-γ、IL-1β、TNF-α)の状態を示している(**OS非虚血対照眼と比較して、p<0.01)。
【0106】
図16図16は、ウィスコンシン装置及び実験の模式図を示している。
【0107】
図17図17は、アカゲザルの180分の中大脳動脈閉塞モデルにおいて脳卒中から約7時間後に60日間連続で経口投与したとき、DOX+PMP+MTPがMCAO再灌流アカゲザル脳の梗塞/浮腫容積を有意に低下させたことを示している。A: 180分の中大脳動脈閉塞の再灌流から3~4時間後(すなわち、投与前)の核磁気共鳴拡散強調画像(DWI)は、右前頭葉、頭頂葉、及び側頭葉における異常な高シグナルを示し、これは、臨床患者の中大脳動脈の虚血性梗塞の場合と類似していた。プラセボ群の5匹のアカゲザル及びDOX+PMP+MTP群の4匹のアカゲザルのDWIによって定量された浮腫/梗塞領域の平均容積は、それぞれ、14.61±2.63cm3及び13.43±3.14cm3であり、薬物投与前の浮腫/壊死容積に関して、2つの群の間に統計的な差は見られなかった。NSは、「差が統計的に有意ではない」ことを意味する。B:プラセボ群と比較して、DOX+PMP+MTP群の手術側(右側)の脳組織における浮腫/壊死容積は、再灌流後75時間、7日目、14日目、及び28日目に有意に減少した(p<0.05又はp<0.01)。C:プラセボ群及びDOX+PMP+MTP群における180分の中大脳動脈閉塞後の再灌流から3~4時間後の代表的MRA画像及び28日目の代表的なT2 FLAIR画像。T2 FLAIR画像は、側頭葉、前頭葉、頭頂葉、及び後頭葉の領域の病変を示した、28日目の1匹の動物の様々なレベルの画像であった。中大脳動脈再灌流が脳卒中後に両群の動物で形成され、脳浮腫/脳梗塞領域が、脳卒中から28日後、プラセボ処置されたアカゲザルよりもDOX+PMP+MTP処置されたアカゲザルで有意に小さいことが分かった。
【0108】
図18図18は、アカゲザルの180分の中大脳動脈閉塞再灌流モデルにおいて脳卒中から約7時間後に60日間連続で経口投与したとき、DOX+PMP+MTPが脳組織の灌流欠損領域及び非灌流領域の容積を有意に低下させたことを示している。A: DSCは、正常な動物において灌流欠損を示さなかった。再灌流から75時間後、プラセボ群のアカゲザルは、顕著な非灌流領域、CBF及びCBVの減少、並びにMTT及びTTPの増加を示した。DOX+PMP+MTP群の灌流欠損領域は、プラセボ群のものよりも有意に小さかった。B: 180分の中大脳動脈閉塞再灌流から75時間後にDSCによって測定された非灌流領域の容積解析。プラセボ群と比較して、DOX+PMP+MTPは、MCAOアカゲザルの非灌流領域の容積を有意に低下させることができた(p<0.05)。図中の非灌流領域の容積の単位は、ピクセル値(ピクセル2)として表され、これは、式: rCBV非灌流領域の容積(cm3)=ピクセル値(ピクセル2)÷1000×0.2によって、容積(cm3)に換算される。CBV画像で測定された非灌流領域(虚血コア領域)の容積は、17031±6355ピクセル2(3.41±1.27cm3に換算される)であり、手術側(右側)のCBV画像で測定された非灌流領域の容積は、4747±3210ピクセル2(0.95±0.64cm3に換算される)であった。C: 180分の中大脳動脈閉塞再灌流から75時間後にDSCによって測定された非灌流領域の容積解析。プラセボ群と比較して、DOX+PMP+MTPは、MCAOアカゲザルの非灌流領域の容積を有意に低下させた(p<0.05)。図中の非灌流領域の容積単位は、cm3として表した。
【0109】
図19図19は、アカゲザルの180分の中大脳動脈閉塞再灌流モデルにおいて脳卒中後約7時間から60日間の連続治療でDOX+PMP+MTPを経口投与してから28日以内のNHPSS観察の結果を示している。プラセボ群と比較して、DOX+PMP+MTPは、MCAOアカゲザルの神経行動スコアを有意に低下させ、脳卒中動物の神経学的欠損を有意に改善することができた(p<0.01)。
【0110】
図20図20は、モデル化当日のRVOアカゲザルの代表的なFP及びFFA画像を示している。FP及びFFA画像は、左眼の視神経円板周囲の上枝静脈のレーザー光凝固によるRVOアカゲザルモデルの作成の成功を示した。FPは、静脈の白色化を伴って、かつ血液の逆流なしで、網膜における明白な静脈拡張及び蛇行を示した。FFAは、静脈閉塞の領域の近傍における充満遅延及び蛍光漏出を示した。
【0111】
図21図21は、薬物投与から7日目のプラセボ群及びDOX+MTP+PMP群のRVOアカゲザルの代表的なFP及びFFA画像を示している。A)プラセボ群のFP及びFFA画像は、上網膜分枝静脈の充満遅延、火炎出血、静脈拡張、蛇行、及び閉塞部位周囲の広い領域の毛細血管蛍光漏出を示した; B)上網膜分枝静脈の充満遅延、火炎出血(プラセボ群よりもわずかに軽度)、静脈拡張、蛇行、及び閉塞部位周囲の毛細血管蛍光漏出が処置から7日目のDOX+MTP+PMP群で観察され、これは、プラセボ群のものよりも有意に軽度であった。
【0112】
図22図22は、各々の群における上網膜分枝静脈の閉塞部位周囲の網膜厚の変化を示している。A)薬物投与から0日目及び14日目のプラセボ群における閉塞部位周囲の網膜厚の変化の代表的な画像; B)薬物投与から0日目及び14日目のDOX+MTP+PMP群における閉塞部位周囲の網膜厚の変化の代表的な画像;及びC)プラセボ群及びDOX+MTP+PMP群における14日目の閉塞部位周囲の網膜浮腫厚の変化。データは、平均±SDとして提示した。プラセボ群と比べて、*p<0.05。
【0113】
図23図23は、薬物投与から42日目のプラセボ群及びDOX+MTP+PMP群のRVOアカゲザルのRNFL厚の変化を示している。データは、平均±SDとして提示した。*プラセボ群と比べて、p<0.05。
【0114】
図24図24は、プラセボ群(n=4、7本の異常神経)、DOX+PMP+MTP処置群(n=4、17本の異常神経)、PMP処置群(n=3、8本の異常神経)、DOX+MTP処置群(n=3、9本の異常神経)、DOX+PMP処置群(n=2、6本の異常神経)、及びエパルレスタット群(n=4、13本の異常神経)を含む、各々の群における58日間の薬物投与の結果としての糖尿病性末梢神経障害を有するアカゲザルの感覚伝導速度の変化の個別データを示している。
【0115】
図25図25は、プラセボ群(n=4、7本の異常神経)、DOX+PMP+MTP処置群(n=4、17本の異常神経)、PMP処置群(n=3、8本の異常神経)、DOX+MTP処置群(n=3、9本の異常神経)、DOX+PMP処置群(n=2、6本の異常神経)、及びエパルレスタット群(n=4、13本の異常神経)を含む、糖尿病性末梢神経障害を有するアカゲザルの感覚神経伝導速度に対する各々の群における58日間の薬物投与の効果を示している。
【0116】
図26図26は、プラセボ群(n=4、7本の異常神経)、DOX+PMP+MTP処置群(n=4、8本の異常神経)、PMP処置群(n=3、5本の異常神経)、DOX+MTP処置群(n=3、6本の異常神経)、DOX+PMP処置群(n=2、2本の異常神経)、及びエパルレスタット群(n=4、7本の異常神経)を含む、各々の群における58日間の薬物投与の結果としての糖尿病性末梢神経障害を有するアカゲザルの腓腹感覚神経伝導速度の変化の個別データを示している。
【0117】
図27図27は、プラセボ群(n=4、7本の異常神経)、DOX+PMP+MTP処置群(n=4、8本の異常神経)、PMP処置群(n=3、5本の異常神経)、DOX+MTP処置群(n=3、6本の異常神経)、DOX+PMP処置群(n=2、2本の異常神経)、及びエパルレスタット群(n=4、7本の異常神経)を含む、糖尿病性末梢神経障害を有するアカゲザルの腓腹感覚神経伝導速度に対する各々の群における58日間の薬物投与の効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0118】
(詳細な説明)
(定義)
いくつかの用語が、本出願の説明、実施例、及び特許請求の範囲において使用されている。本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、別途定義されない限り、本出願が属する技術分野の当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。
【0119】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、限定されないが、哺乳動物を含む、動物を指す。哺乳動物は、霊長類又は非霊長類、例えば、サル、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、又はこれらのトランスジェニック種を含む。ある実施態様において、対象は、ヒトである。
【0120】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はその随伴症状が発生するのを遅延させ、及び/もしくは妨害すること、対象が疾患、障害、又は疾病を発症するのを妨害すること、或いは対象が疾患、障害、又は疾病を発症するリスクを低下させることを含むが、これらに限定されない。
【0121】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、疾患、障害、もしくは疾病、又はそれに付随する1以上の症状を緩和又は排除すること、或いは疾患、障害、又は疾病の原因を緩和又は根絶することを含むが、これらに限定されない。
【0122】
本明細書で使用される場合、「軽減する」、「緩和する」、又は「改善する」という用語は、疾患、障害、又は疾病の1以上の症状(例えば、脳浮腫)を緩和することを含むが、これらに限定されない。これらの用語は、活性成分に関連する副作用の軽減を指す場合もある。予防剤又は治療剤から対象が得る有益な効果が、症状、疾患、又は疾病の治癒をもたらさないこともある。
【0123】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、疾患、障害、又は疾病の予防、治療、及び/又は改善を指し、これには、(a)疾患、障害、もしくは疾病が発生するのを停止又は遅延させること、又は疾患、障害、もしくは疾病の発生リスクを低下させること、及び(b)疾患、障害、又は疾病の増悪を停止させること、疾患、障害、又は疾病の発生を遅延させ、又は軽減すること;及び(c)疾患、障害、又は疾病の重症度を低下させ、疾患、障害、又は疾病の退行を引き起こすことが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、本明細書に記載される又は当技術分野で公知の方法によって、対象の体に化合物もしくは医薬成分/組成物を送達するか、又はそれを送達させる行為を指す。化合物又は医薬成分/組成物を投与することは、対象の体に送達されることになる化合物又は医薬成分/組成物を処方することを含む。例示的な投与の形態としては、錠剤、カプセル、シロップ、懸濁液などの経口剤形;静脈内(IV)注射液、筋肉内(IM)注射液、皮下(SC)注射液、又は腹腔内(IP)注射液などの注射剤形;クリーム、ゼリー、粉末、又はパッチを含む、経表皮剤形;口腔剤形;吸入粉末、スプレー、懸濁液、及び直腸坐剤が挙げられる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、当技術分野で認識されている用語である。ある実施態様において、この用語は、特定の治療レジメンの標的を排除し、低下させ、又は維持するのに必要又は十分な量を指す。有効量は、治療されている疾患又は疾病、投与されている特定の標的コンストラクト、対象の大きさ、又は疾患もしくは疾病の重症度などの因子によって変わり得る。当業者又は医師は、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効量を経験的に決定することができる。ある実施態様において、インビボ使用のための治療剤の治療有効量は、投与様式及び投与方法;並びに薬剤に加えて薬物に組み込まれる任意の他の材料:を含む、多くの因子によって決まる可能性が高い。インビトロ又はインビボ試験を用いて、最適な投薬量範囲の決定を助けることができる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、その値がどのように測定又は決定されるかによって一部決まる、当業者によって決定される特定の値の許容誤差を指す。ある実施態様において、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、1、2、3、又は4標準偏差以内であることを意味する。ある実施態様において、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、所与の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内にあることを意味する。
【0127】
一連の値が本明細書に記載されている場合、その範囲内の全ての値及び部分範囲を網羅することが意図される。例えば、「1~5mg」又は「約1mg~約5mg」は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、1~2mg、1~3mg、1~4mg、1~5mg、2~3mg、2~4mg、2~5mg、3~4mg、3~5mg、及び4~5mgを網羅することが意図される。
【0128】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」という用語は、包含的で開放的な意味で使用され、追加の要素が示された要素に加えて含まれてもよいことを意味する。本明細書で使用される「などの」、「例えば」という用語は、非限定的であり、例示のみを目的とする。「含む」及び「含むが、これらに限定されない」は、互換的に使用される。
【0129】
この文脈において、「A及び/又はB」などの表現で使用される「及び/又は」という用語は、AとBの両方; A又はB; A(単独);及びB(単独)を包含することが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの表現で使用される「及び/又は」という用語は、以下の実施態様の各々を包含することが意図される: A、B、及びC; A、B又はC; A又はC; A又はB; B又はC; A及びC; A及びB; B及びC; A(単独); B(単独);及びC(単独)。
【0130】
本明細書で使用される場合、1以上の要素のリストについての「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト中の任意の1以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと解釈されるべきであるが、要素のリスト中に具体的に記載された各々の要素の少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、要素のリスト中の要素の任意の組合せを除外するものではない。この定義はまた、要素が、「少なくとも1つ」という語句によって言及された要素のリスト中の具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、これらの具体的に特定された要素に加えて任意に存在することを許容する。したがって、非限定的な例として、一実施態様において、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は同等に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は同等に、「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、任意に1つよりも多くを含む、少なくとも1つを指すことができ、Aを指し、かつBは存在せず(及び任意に、B以外の要素を含み);別の実施態様において、任意に1つよりも多くを含む、少なくとも1つを指し、Bを指し、Aは存在せず(及び任意に、A以外の要素を含み);さらに別の実施態様において、任意に1つよりも多くを含む、少なくとも1つを指し、Aを指し、任意に1つよりも多くを含む、少なくとも1つを指し、Bを指し(及び任意に他の要素を含み);などである。
【0131】
(1.神経障害を調節する方法)
本発明は、神経障害を調節する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0132】
神経障害は、中枢神経系及び末梢神経系の損傷、疾患、又は機能不全を含む、1以上の神経の損傷、疾患、又は機能不全を指す。これは、通常、灼熱感もしくは電撃痛、しびれ、チクチク感、筋力低下、又は萎縮として現れ、これは、通常、退行性であり、かつ通常、損傷、感染症、疾患、薬物、毒素、又はビタミン欠乏症によって引き起こされる。
【0133】
本発明による神経障害の調節は、その予防、治療、及び/又は改善を含む。神経障害の予防、治療、及び/又は改善は、(a)神経障害の発生を妨害するかもしくは遅延させること、又は神経障害の発生のリスクを低下させること、(b)神経障害の悪化を妨害するか、神経障害の発症を遅延させるかもしくは軽減すること;及び(c)神経障害の重症度を低下させ、神経障害の退行を引き起こすことを含むが、これらに限定されない。
【0134】
ある実施態様において、本発明の神経障害を調節する方法は、神経炎症を阻害することに関する。神経炎症は、通常、神経を冒す様々な炎症性病変を指す。神経炎症は、認知症の重要な病態の1つであり、これは、白質病変、海馬損傷、及びAβ沈着などの病理学的プロセスを引き起こし、その後、血管性認知症及びアルツハイマー病などの認知障害関連疾患の発症をもたらす。
【0135】
ある実施態様において、本発明は、神経炎症を阻害する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、本方法は、神経炎症と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する。神経炎症関連疾患としては、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、頭蓋脳損傷、血管性認知症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、及び未熟児網膜症:が挙げられる。
【0136】
本発明者らは、網膜I/R発作を有する対象の網膜組織における炎症因子TNF-α、IL-1β、及びIFN-γの発現レベルが、正常レベル(すなわち、網膜I/R発作を有さない対象の網膜組織における炎症因子の発現レベル)の少なくとも5倍、少なくとも7倍、及びさらには10倍であることを見出した。理論的制約なしに、サイトカインは、神経炎症の過程で重要な役割を果たしている。IFN-γ、IL-1β、TNF-α、及びIL-6などの炎症促進性サイトカインは、神経炎症の過程に関与しており、神経炎症のバイオマーカーとみなすことができる。
【0137】
本発明者らはまた、網膜I/R傷害又は虚血性脳卒中に起因する神経炎症を有する対象の網膜及び脳組織の損傷領域におけるGFAPの発現が正常発現(すなわち、神経炎症を有さない対象の組織におけるGFAPの発現)と比較して有意に増加していること、及び過剰発現したGFAPがルーチンの免疫組織化学染色によって決定され得ることを見出した。アストロサイトのバイオマーカーであるグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の発現増加も神経炎症のマーカーの1つとみなされる(Li M、Li Z、Yao Yらの文献、アストロサイト由来インターロイキン-15は細胞性免疫の伝播を介して虚血性脳損傷を悪化させる(Astrocyte-derived interleukin-15 exacerbates ischemic brain injury via propagation of cellular immunity). Proc Natl Acad Sci U S A, 2017, 114(3): E396-E405.)。GFAPは、アストロサイト特異的な中間フィラメントタンパク質であり、その発現は、CNS白質及び血液脳関門の完全性の維持を含む、アストロサイトの正常な機能に必要なものである。ほとんどのアストロサイトは、通常の状況では十分なGFAPを発現しておらず、ルーチンの免疫組織化学的方法によって染色することができないことは注目に値する。
【0138】
さらに、神経炎症は、白質病変、海馬損傷、及びAβ沈着などの病理学的プロセスを引き起こし、血管性認知症及びアルツハイマー病などの認知障害関連疾患の発症をもたらす(Chen Y H、Lin R R、Tao Q Qの文献、神経炎症におけるP2X7Rの役割及びアルツハイマー病への関与(The role of P2X7R in neuroflammation and implications in Alzheimer's disease) [J]. Life Sciences, 2021, 271: 119187.)。
【0139】
ある実施態様において、本発明の神経障害を調節する方法は、神経損傷を修復することを含む。神経損傷は、通常、神経組織の損傷を指す。ある実施態様において、本発明は、神経損傷を修復する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0140】
ある実施態様において、本発明の方法は、神経障害と関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する。神経障害関連疾患、障害、又は疾病は、神経障害によって引き起こされる疾患、障害、もしくは疾病、及び/又は神経障害をその症状の1つとして有する疾患、障害、もしくは疾病を含むが、これらに限定されない。
【0141】
ある実施態様において、疾患、障害、又は疾病は、末梢神経障害を含む。末梢神経は、嗅覚神経及び視神経、自律神経、並びにこれらの神経節以外の脳神経及び脊髄神経を指す。末梢神経疾患は、末梢神経系の構造的又は機能的損傷に起因する疾患を指す。末梢神経は、感覚求心性神経と運動求心性神経に機能的に分けられる。ある実施態様において、末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法は、神経伝導速度を改善し、特に、腓腹神経の感覚神経伝導速度を有意に改善し、それにより、糖尿病性末梢神経障害及び神経障害性疼痛の進行を効果的に制御及び緩和する。
【0142】
ある実施態様において、末梢神経障害は、虚血性末梢神経障害、免疫関連炎症によって引き起こされる末梢神経障害(Bourque PR、Chardon JW、Massie Rの文献、自己免疫末梢性神経障害(Autoimmune peripheral neuropathies). Clin Chim Acta. 2015 Sep 20; 449:37-42.)、及び外傷によって引き起こされる末梢神経障害(Menorca RM、Fussell TS、Elfar JCの文献、末梢神経外傷:損傷及び回復のメカニズム(Peripheral Nerve Trauma: Mechanisms of Injury and Recovery)。Hand Clin. 2013;29(3):317-330)を含む。虚血性末梢神経障害は、一般的なタイプの多発性神経炎であり、その最も一般的な原因は、動脈硬化及び血管炎である(Blaes Fの文献、末梢血管炎性神経障害の診断及び治療オプション(Diagnosis and therapeutic options for peripheral vasculitic neuropathy). Ther Adv Musculoskelet Dis. 2015;7(2):45-55).
【0143】
ある実施態様において、末梢神経障害は、糖尿病性末梢神経障害である。糖尿病性末梢神経障害(DPN)は、高い罹患率及び高い障害率を有する慢性糖尿病性微小血管合併症である。DPNは、初期には、四肢のしびれ、痛覚過敏、足潰瘍、壊疽、及び他の重篤な病変などの、神経学的機能障害及び低神経感受性を引き起こし得る。患者の切断率は80%を超えることがあり、少なくとも約20%が、神経障害性疼痛、すなわち、糖尿病性末梢神経障害疼痛(DPNP、糖尿病性有痛性末梢神経障害としても知られる)を発症する。ある実施態様において、本発明は、糖尿病性末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0144】
ある実施態様において、疾患、障害、又は疾病は、中枢神経系疾患、障害、又は疾病を含む。ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、脳血管疾患、頭蓋脳損傷、神経変性疾患、視神経症、及び/又は網膜症を含む。
【0145】
(1.1 脳血管疾患)
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、脳血管疾患である。ある実施態様において、脳血管疾患を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。
【0146】
脳血管疾患は、種々の原因によって生じる脳血管疾患の一般的な用語である。脳卒中は、虚血性脳卒中及び出血性脳卒中を含む、脳血管疾患の主な臨床型であり、突然発症、限局性又はびまん性脳機能障害の急速な発生という共通の臨床的特徴を有する、器質的脳損傷によって引き起こされる脳血管疾患群である。ある実施態様において、脳血管疾患は、脳卒中及び/又は一過性脳虚血発作を含む。
【0147】
(1.1.1 脳卒中)
ある実施態様において、脳血管疾患は、脳卒中である。脳卒中(脳溢血としても知られる)は、突然発症、限局性又はびまん性脳機能障害の急速な発生を共通の臨床的特徴として有する、中枢神経系の血流障害によって引き起こされる疾患であり、器質的脳損傷によって引き起こされる脳血管疾患群である。その潜在的原因としては、塞栓症、出血、及び血栓症が挙げられる。脳卒中患者の約82%は、虚血性脳卒中である。虚血性脳卒中の主な治療手段は、脳血流を直ちに回復させること、虚血領域の血液循環を再確立すること、及び虚血性ペナンブラを救済することである。現在、ペナンブラは、虚血性脳卒中の発症後3時間以内の静脈内血栓溶解療(IVT)によって救済することができる。しかしながら、低い血管再灌流率、再灌流によって引き起こされる傷害、及び再灌流後の出血の症状の可能性が原因で、脳卒中患者の70%は、依然として、様々な程度の労働損失を有する。
【0148】
理論的制約なしに、脳卒中発作を有する対象の神経細胞は、初期には、脳損傷の影響から逃れることが難しく、脳組織の再建及び修復の後期には、様々なグリア細胞及び免疫細胞の環境的な支援に依存する。脳虚血再灌流(I/R)傷害は、神経細胞死をもたらす、グリア細胞の増殖及び活性化、神経炎症、並びにサイトカインカスケード反応を伴い、これは、脳卒中の重要な病理学的メカニズムと考えられている。アストロサイトは、血液脳関門の重要な構成細胞であり、脳卒中後、アストロサイトは、グルタミン酸及び乳酸の取り込み増加によって膨張し、虚血領域の血管を圧迫し、不十分な血管灌流の状態を悪化させる。アストロサイトのバイオマーカーであるグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の発現増加は、神経炎症のマーカーとみなされ、様々な炎症促進性サイトカインの発現が同時に増加し、I/R傷害を悪化させる。既に脳卒中に罹患している患者にとって、神経細胞の死を予防し、遅延させることは極めて重要であり、それにより、機能を回復させ、治療のための時間をより多く得るために、より多くの神経細胞を温存することができる。
【0149】
ある実施態様において、脳卒中は、虚血性脳卒中及び/又は出血性脳卒中を含む。ある実施態様において、脳卒中は、虚血性脳卒中である。虚血性脳卒中は、脳への血流の閉塞によって引き起こされるタイプの脳卒中を指す。閉塞の最も一般的な潜在的条件は、アテローム性動脈硬化と呼ばれる、血管の内膜における脂肪沈着物又は血塊の発生である。これらの血塊は、2種類の閉塞を引き起こす。1つは、脳血管内に血栓を形成して、血管を閉塞させることである。もう1つは、脳外で形成された血栓又はプラーク片が、通過するには小さすぎる血管を閉塞させるまで、脳血管に侵入する場合を指す。閉塞の第二の重要な原因は、心房細動と呼ばれる不整脈である。心房細動は、心臓内で血塊を形成させ、脳に移動させる。虚血性脳卒中の他の原因としては、脳出血、血栓症、動脈又は静脈解離、心停止、及び医原性の原因、例えば、脳血管の外科的損傷又は脳もしくは心臓の手術が挙げられる。虚血性脳卒中は、全脳卒中症例の約83%を占める。
【0150】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、脳卒中発作後7時間以内の対象である。脳卒中に対する現在の臨床治療は、投与ウィンドウが非常に狭く、投与時間及び投与条件にかなりの制限があることに留意すべきである。例えば、頭蓋内出血の可能性を事前に排除するための適切なイメージングの後、急性虚血性脳卒中症状の発症後4.5時間以内に、静脈内血栓溶解(IVT)薬が投与される必要があり、これは、医薬品の臨床使用に重大な不都合をもたらしている。しかしながら、本発明者らは、虚血性脳卒中を治療、予防、及び/又は改善するための方法が、脳卒中の発症後7時間以内の対象に適用された場合にもなお有益な効果をもたらすことを見出した。ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、脳卒中発作後5時間以内の対象である。
【0151】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、20もしくは20以内、又は15もしくは15以内、又は8~20、又は15~20の間、又は8~15の間、又は8の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を有する。ある実施態様において、対象は、持続的な神経学的欠損を伴う中等度から重度の脳卒中を有する対象である。米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)は、脳梗塞の程度を評価するために推奨される。NIHSSのベースライン評価は、発症時の脳卒中の重症度を反映することができ、治療後の効果を定期的に評価することもできる。NIHSSは、0~42の範囲である。スコアが高いほど、脳卒中の重症度が高い(Adams HP Jr、Davis PH、Leira ECらの文献、ベースラインNIH脳卒中スケールスコアは脳卒中後の転帰を強く予測する:急性脳卒中治療におけるOrg 10172の試験(TOAST)に関する報告(Baseline NIH Stroke Scale score strongly predicts outcome after stroke: A report of the Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment (TOAST)). Neurology. 1999 Jul;53(1):126-131.)。
【0152】
例えば: 0~1は、正常又はほぼ正常であることを意味し、1~4は、軽症脳卒中/軽度脳卒中を意味し; 5~15は、中等症脳卒中を意味し; 15~20は、中等症~重症脳卒中を意味し; 20~42は重症脳卒中を意味する。NIHSSベースラインが1点増加する毎に、予後が良好である確率は17%低下する。16を超えるベースラインスコアを有する患者は、死亡する可能性が高い。血管内療法(EVT)を受けた患者は、通常、≧15~20のNIHSSスコアを有し、片側不全麻痺に加えて神経学的異常を有し、中等症又は重症脳卒中を有すると考えられる(Brott TG、Adams HP Jr、Olinger CPらの文献、急性脳梗塞の測定:臨床検査スケール(Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale). Stroke 1989; 20: 864-70.)。
【0153】
ある実施態様において、対象は、前方循環系大動脈閉塞を有する対象である。ある実施態様において、対象は、前方循環系大動脈閉塞によって引き起こされる急性虚血性脳卒中を有する対象である。ある実施態様において、対象のNIHSSスコアは、8~20(8と20を含む)である。ある実施態様において、対象は、中等度から重度の神経学的障害を伴う。前方循環系大動脈閉塞は、中大脳動脈閉塞又は内頸動脈閉塞を指し、その大部分は、中大脳主幹動脈閉塞であり、いくつかは、内頸動脈のサイフォンセグメント閉塞によって引き起こされる大脳梗塞である。本方法を75時間連続薬物投与のために対象に適用することにより、脳浮腫/脳梗塞の容積が低下し、虚血コア領域の容積が低下し、1~2カ月後の対象における良好な神経学的予後(例えば、2又は3へのNIHSSスコアの低下)を伴って、虚血状態が顕著に改善され得、かつ対象の神経学的欠損が改善され得る。本方法を実施しなかった対象のNIHSSスコア(例えば、脳卒中から1カ月後のスコアは、約6である)と比較して、本方法を実施した対象のNIHSSスコアは、約50%又は約70%も低下し得る。
【0154】
ある実施態様において、対象は、前方循環系大動脈閉塞、特に、中大脳動脈のM1又はM2セグメントにおける閉塞の症状を有する対象である。ある実施態様において、対象は、中大脳動脈のM1セグメントにおける閉塞の症状を有する。中大脳動脈は、ヒトの虚血性脳卒中が通常生じる部位であることに留意すべきである。M1セグメントが閉塞すると、浮腫のピーク時に、顕著な正中線シフトを伴って、半球の約40%の浮腫/梗塞容積(中大脳動脈のM1セグメントの閉塞から1.5時間後の再灌流)及び/又は半球容積の約70%の浮腫/梗塞容積(中大脳動脈M1セグメントの閉塞から3時間後の再灌流)が示される。脳卒中から28日後の梗塞領域は、側頭葉及び海馬などの認知及び記憶関連の脳領域を含み、これは、患肢の長期的な神経学的損傷障害及び/又は長期的な認知低下につながる可能性がある。本発明者らは、虚血性脳卒中を治療、予防、及び/又は改善する方法が、この種の重度の障害を引き起こす脳浮腫/脳梗塞を有する対象に使用された場合、例えば、脳卒中発症から約7時間後に治療が経口投与された場合にもなお有益な効果をもたらすことを見出した。
【0155】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、虚血再灌流傷害を有する対象であり、ここで、再灌流は、血管内療法による再灌流及び/又は血栓溶解剤の投与による再灌流を含む。血管内療法には:動脈血栓溶解、機械的血栓除去、及び緊急血管形成を含む(中国脳卒中学会、中国急性虚血性脳卒中血管内治療ガイドライン2018(Chinese Stroke Association, Chinese Guidelines for Endovascular Treatment of Acute Ischemic Stroke 2018)[J]. Chinese Journal of Stroke, 2018, 013(007): 706-729).
【0156】
ある実施態様において、本発明の方法は、対象(例えば、発症後3時間以内)において、急性脳卒中に対する静脈内rt-PA血栓溶解の投与方法と組み合わせて使用することができ、これにより、対象の神経学的予後をより良好に改善することができる。
【0157】
ある実施態様において、対象が急性脳卒中発症後に静脈内rt-PA血栓溶解の時間ウィンドウを逃した場合、本発明の方法を使用することができ、本発明の方法は治療時間ウィンドウを延長することができ、それにより、静脈内血栓溶解の時間ウィンドウを超えて訪れる対象に血管内再灌流療法の機会を与えることができる。
【0158】
ある実施態様において、対象は、急性脳卒中発症後に静脈内rt-PA血栓溶解の時間ウィンドウを逃し、血管内療法(例えば、脳卒中発症から6~16時間後の大血管(頸動脈/中大脳動脈M1セグメント)の閉塞性虚血性脳卒中を有する対象に血栓除去及び再灌流を行うこと)を採用し、本発明の方法は、この血管内療法と組み合わせて対象に適用することができる。
【0159】
ある実施態様において、急性脳卒中発症後、対象に静脈内rt-PA血栓溶解を投与し、同時に、大血管閉塞又は重度の疾病のため、血管内治療(例えば、脳卒中発症後6時間以内、又は8時間以内、又は6~16時間以内に対象に血栓除去及び再灌流を行うこと)の方法を採用する。本発明の方法は、上記の静脈内血栓溶解法及び血管内治療法と組み合わせて、対象に適用することもできる。本発明の方法は、良好な安全性を有し、出血のリスクを引き起こしたり、悪化させたりすることがなく、そのため、静脈内血栓溶解及び血管内介入療法と組み合わせて対象に適用することができる。
【0160】
ある実施態様において、虚血性脳卒中発作の対象は、虚血性非再灌流対象、例えば、静脈内rt-PA血栓溶解を施されていない、及び/又は血管内療法で再灌流されていない対象である。ある実施態様において、虚血性脳卒中発作を有する対象は、悪性中大脳動脈梗塞とも呼ばれる大脳梗塞を有する対象である。
【0161】
悪性中大脳動脈梗塞とも呼ばれる大脳半球梗塞(Large Hemispheric Infarction:LHI)は、ヒトにおいて死亡又は障害をもたらす重大な疾患である。そのような患者は、典型的な臨床症状を有しており、テント切痕ヘルニアが原因で死亡することが多い。ある実施態様において、本発明の方法は、MRAイメージングによって確認される前方循環系大血管(例えば、中大脳動脈のM1セグメント)の閉塞から3時間後に再灌流される対象を治療する。ある実施態様において、本発明の方法は、その浮腫/梗塞容積が浮腫のピーク時(脳卒中から75時間後)に半球容積の約70%を占めて、大脳梗塞を形成している対象を治療する。対象における本発明の方法の28日間連続使用によって、対象の脳浮腫/脳梗塞容積が顕著に低下し、虚血コア領域の容積が顕著に低下し、75時間での虚血状態が顕著に改善され得、かつ対象の神経学的障害が改善され得る。本方法で治療された対象のNIHSSスコアは、本方法で治療されなかった対象と比較して、約50%又は約70%も低下し得る。
【0162】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、脳卒中、特に、虚血性脳卒中の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。理論的制約なしに、本方法において投与される医薬成分は、神経を保護し、梗塞コア領域の拡大を予防するために、神経炎症の阻害、抗酸化ストレス、及び虚血の改善などの複数のメカニズムを兼ね備えている。特に、本発明の脳卒中を予防、治療、及び/又は改善する方法は、脳卒中後急性期(すなわち、脳卒中発症後75時間)の対象の脳組織灌流を改善し、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害し、急性期(脳卒中後75時間)の虚血状態を改善し、及び虚血性ペナンブラを救済し;対象の脳浮腫/脳梗塞容積を顕著に低下させ;中枢神経系炎症を阻害し、及びグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害し;対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療し;脳卒中の神経行動スコア(例えば、NIHSS)を低下させ、対象の神経学的欠損を改善し、特に、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させ、対象の障害率を低下させ;並びに/又は記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善し、並びに認知症の発症を妨害する。
【0163】
ある実施態様において、脳卒中を治療、予防、又は改善する方法は、脳卒中後急性期(脳梗塞後75時間)の対象の脳組織灌流を改善し、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害し、急性虚血状態を改善し、及びペナンブラを救済する。局所脳虚血は、中心壊死領域及び末梢虚血性ペナンブラからなり、壊死領域では、脳細胞が死滅し、虚血性ペナンブラでは、側副血行により多数の神経細胞が生存している。虚血性ペナンブラの血流を短時間で速やかに回復させることができる場合、この領域の脳損傷は可逆的であり、神経細胞が生存して、その代謝機能を回復することができる。有利なことに、本発明の方法で治療された脳卒中発作を有する対象の急性期(脳卒中後75時間)の脳組織の非灌流領域(すなわち、虚血コア領域)の容積は、本発明の方法で治療されていない脳卒中発作を有する対象と比較して、少なくとも70%低下する。
【0164】
ある実施態様において、脳卒中を治療、予防、又は改善する方法は、対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させる。脳浮腫/壊死の容積は、脳血液供給障害によって引き起こされる局所的な脳虚血及び低酸素性壊死の容積を指す。虚血性脳卒中は、梗塞部位の顕著な細胞死及び明白な炎症反応を特徴とする。脳浮腫容積は、脳の細胞内又は細胞外空間における過剰な液体貯留の容積を指す。有利なことに、本発明者らは、3.0TのGE MRIを用いて、脳卒中後3~4時間、72~75時間、7日目、14日目、及び28日目の対象の浮腫/梗塞の軌跡を動的に観察した。MRIの撮像シーケンスには、T1WI、T2 FLAIR、DWI、MRA、CTAが含まれる。これらの中で、T1WIは、脳の解剖学的構造を示すこと、灰白質領域と白質領域を区別すること、出血と虚血を診断することなどができ、T2 FLAIR及びDWIは、浮腫/壊死容積を定量することができ、T2 FLAIRは、組織内の水分含量の増加を示唆することができ、炎症、虚血、浮腫、及び他の病変を示すために使用される。本発明において、MRA画像は、本発明の方法で治療されて、28日間連続投与された脳卒中発作後の対象、特に、3時間及び1.5時間の大前循環血管(中大脳動脈M1セグメント)の閉塞後に再灌流され、かつ中等度を上回る神経学的障害を有する対象のT2 FLAIR脳浮腫/脳梗塞容積が、本方法で治療されなかった脳卒中発作を有する対象のT2 FLAIRと比較して、少なくとも30%(脳卒中から75時間後)、少なくとも40%(脳卒中から7日後)、又は50%近くも(脳卒中から28日後)低下したことを示している。
【0165】
ある実施態様において、脳卒中を治療、予防又は改善する方法は、中枢神経系炎症、特に、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害する。理論に制約されることなく、本発明者らは、脳卒中発作を有する対象の脳組織の梗塞周囲領域におけるGFAPの発現が対側の正常脳組織における発現と比較して顕著に増加していることを見出した。有利なことに、本発明の方法は、虚血性脳卒中発作によって引き起こされる神経炎症を有する対象の脳組織の損傷領域におけるGFAP発現の増加を顕著に阻害する。
【0166】
ある実施態様において、脳卒中を治療、予防、又は改善する方法は、脳卒中対象の神経行動スコア(例えば、NIHSS)を低下させ、対象の神経学的障害を改善し、特に、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させ、並びに対象の障害率を低下させる。神経学的欠損は、神経構造の欠損後の症状を指し、欠損症状は、神経構造が障害された後の正常機能の弱化又は消失を指す。有利なことに、本発明の方法で治療された脳卒中発作を有する対象のNIHSSスコアは、本発明の方法で治療されていない脳卒中発作を有する対象のNIHSSスコアと比較して、少なくとも40%(脳卒中発症から14日後)、少なくとも50%(脳卒中発症から28日後)、又は60%も低下し得る。同時に、本発明者は、本方法で治療されなかった対象は、脳卒中から3カ月後に長期的な神経学的障害及び不能を有し、対象の対側の手機能は、前大脳回の病変、例えば、母指と示指の対置可能な指運動の喪失のために障害され、両手でピーナッツの皮を剥くという細かいタスクを完遂することができなくなることを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された対象者は、脳卒中から3カ月後の患側の手機能が正常であり、母指と示指の対向指運動には影響がなく、そのため、両手でピーナッツの皮を剥くという細かいタスクを完遂することができる。
【0167】
認知障害、さらには認知症は、脳卒中後、又は特定の感染症、脳への反復的な物理的損傷、もしくは栄養欠乏の場合に発症する可能性がある。ある実施態様において、本発明の脳卒中を予防、治療、及び/又は改善する方法は、記憶、視空間、及び理解判断、特に、視空間における認知機能不全を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善し、並びに認知症の発症を予防及び防止する。視空間機能不全は、患者が自分自身及び自分の物の位置を正確に判断することができないことに起因する機能不全であり、以下のような症状が現れることが多い:患者は、車を駐車するときに、駐車スペースが見つけることができない;患者は、帰宅するときに、誤った方向判断のために道に迷う;患者は、テーブルクロスを敷くときに、テーブルクロスとテーブルの角の位置を正しく判断することができないため、テーブルクロスをテーブルに合わせることができない;患者は、コンロの上に鍋を正確に置くことができず、鍋を地面に落とす;患者は、立体画像を正確に写すことができず、ひどい場合には、簡単な図面を描くことさえできない;患者は着衣が困難で、衣服の上部と下部、左部と右部を区別することができず、衣服とズボンを逆に着用する。有利なことに、脳卒中から3カ月後の空間的遅延応答実験において、本発明の方法で治療された脳卒中発作を有する対象は全て、遅延1秒、5秒、10秒、及び30秒課題試験に首尾良く合格したが、本発明の方法で治療されていない脳卒中発作を有する対象は、遅延1秒課題試験にしか合格しなかったか、又は遅延1秒課題試験を完了することさえできなかった。
【0168】
ある実施態様において、脳卒中は、出血性脳卒中である。出血性脳卒中は、脳卒中症例の約17%を占める。これは、脆弱な血管が破裂し、周囲の脳に出血することによって引き起こされる。血液がたまり、周囲の脳組織を圧迫する。2つの一般的なタイプの出血性脳卒中は、脳内出血とくも膜下出血である。出血性脳卒中は、弱化した血管の破裂によって引き起こされる。血管破裂の潜在的な原因としては、高血圧によって血管破裂が生じる高血圧性出血、又は他の潜在的な血管の弱化の原因、例えば、脳動脈瘤、動静脈奇形(AVM)、もしくは海綿状血管奇形を含む、脳血管奇形破裂が挙げられる。出血性脳卒中はまた、梗塞血管の弱化をもたらす虚血性脳卒中の出血性変化、又は中枢神経系の異常に脆弱な血管を含む原発性もしくは転移性腫瘍の出血によって引き起こされる場合もある。出血性脳卒中はまた、脳血管への直接的な外科的損傷などの医原性の原因による場合もある。動脈瘤は、血管の弱い領域の膨隆である。治療が間に合わない場合、動脈瘤は、破裂して脳内に出血するまで、弱化し続ける可能性がある。動静脈奇形(AVM)は、異常に形成された血管の集まりである。海綿状血管奇形は、静脈異常であり、それにより、静脈の構造の弱化が生じ、かつ出血が生じる場合もある。これらの血管のいずれか1つが破裂することがあり、それにより、脳出血が生じる場合もある。出血性脳卒中は、物理的外傷によって引き起こされる場合もある。
【0169】
ある実施態様において、出血性脳卒中は、脳出血の状態及び/又はくも膜下出血の状態を含む。脳内出血は、脳実質内の非外傷性出血を指す。頭蓋内血管が破裂し、血液がくも膜下腔に流入し、これをくも膜下出血と呼ぶ。これは、外傷性症例と自然発症症例に分けられ、自然発症症例はさらに、原発性と続発性に分けられる。原発性くも膜下出血は、大脳基底部又は大脳表面の血管の病変(例えば、先天性動脈瘤、脳血管奇形、高血圧性脳動脈硬化症によって引き起こされる微細動脈瘤など)が破裂し、血液がくも膜下腔に流入する症例であり、これは、急性脳卒中の約10%を占め;続発性くも膜下出血は、大脳内血腫が脳組織に侵入し、血液がくも膜下腔に流入する症例である。
【0170】
(1.1.2 一過性脳虚血発作)
ある実施態様において、脳血管疾患は、一過性脳虚血発作である。一過性脳虚血発作(TIA)は、局所的な脳虚血又は網膜虚血によって引き起こされる一過性の神経学的欠損である。その臨床症状は、通常、1時間以下、最大でも24時間持続し、軽症又は警告的脳卒中を伴う。心臓手術を受けた人は、一過性脳虚血発作を特に起こしやすい。
【0171】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、一過性脳虚血発作の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。特に有利なことに、本発明の一過性脳虚血発作を予防、治療、及び/又は改善する方法は、脳卒中後急性期(脳卒中後75時間)の対象の脳組織灌流を改善し、脳組織の損傷領域における局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害し、急性期の虚血状態を改善し、及びペナンブラを救済し;中枢神経系炎症を阻害し、及びグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害し;対象の中枢神経系に対する虚血の破壊的効果を治療し;脳卒中の神経行動スコア(例えば、NIHSS)を低下させ、対象の神経学的欠損を改善し、特に、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させ、並びに対象の障害率を低下させ;並びに/又は記憶、視空間、及び理解判断の側面を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善し、並びに認知症の発症を予防及び妨害する。
【0172】
ある実施態様において、一過性脳虚血発作を治療、予防、又は改善する方法は、脳卒中後急性期(脳卒中後75時間)の対象の脳組織灌流を改善し、脳組織の損傷領域における局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害し、急性虚血状態を改善し、及びペナンブラを救済する。有利なことに、本発明の方法で治療された一過性脳虚血発作を有する対象の脳の非灌流領域(すなわち、虚血コア領域)の容積は、本発明の方法で治療されていない一過性脳虚血発作を有する対象と比較して、少なくとも70%低下する。
【0173】
ある実施態様において、一過性脳虚血発作を治療、予防、又は改善する方法は、中枢神経系炎症、特に、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害する。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、一過性脳虚血発作を有する対象の脳組織におけるGFAPの発現が対側の正常脳組織における発現と比較して顕著に増加していることを見出した。有利なことに、本発明の方法は、一過性脳虚血発作によって引き起こされる神経炎症を有する対象の脳組織の損傷領域におけるGFAP発現の増加を顕著に阻害する。
【0174】
ある実施態様において、一過性脳虚血発作を治療、予防、又は改善する方法は、脳卒中対象の神経行動スコア(例えば、NIHSS)を低下させ、対象の神経学的障害を改善し、特に、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させ、並びに対象の障害率を低下させる。有利なことに、本発明の方法で治療された一過性脳虚血発作を有する対象のNIHSSスコアは、本発明の方法で治療されていない一過性脳虚血発作を有する対象のNIHSSスコアと比較して、少なくとも40%(脳卒中後14日)、少なくとも50%(脳卒中後28日)、又は60%も低下し得る。
【0175】
ある実施態様において、本発明の一過性脳虚血発作の予防、治療、及び/又は改善する方法は、記憶、視空間、及び理解判断、特に、視空間における認知機能不全を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善し、並びに認知症の発症を予防及び防止する。有利なことに、空間的遅延応答実験において、本発明の方法で治療された一過性脳虚血発作を有する対象は全て、遅延1秒、5秒、10秒、及び30秒課題試験に首尾よく合格したが、本発明の方法で治療されていない一過性脳虚血発作を有する対象は、遅延1秒課題試験にしか合格しなかったか、又は遅延1秒課題試験を完了することさえできなかった。
【0176】
(1.2 頭蓋脳損傷)
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、頭蓋脳損傷である。ある実施態様において、本発明は、頭蓋脳損傷を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0177】
頭蓋脳損傷は、頭蓋骨及び脳に対する任意の外傷を指す。ある実施態様において、頭蓋脳損傷は、外傷性脳損傷である。外傷性脳損傷(TBI)は、非変性性、非再生性の外的な機械的力によってもたらされる脳の損傷を指し、これは、意識の低下又は変容を伴う、認知的、生理的、及び心理社会的機能の永続的又は一時的な障害をもたらし得る。外傷性脳損傷は、脳の働き方に影響を及ぼす損傷である。これは、頭部への衝突、強打、もしくは振動、又は穿通性頭部損傷(例えば、銃撃)によって引き起こされ得る。外傷性脳損傷は、主に:軽度TBI又は脳震盪;中等度TBI;及び重度TBIの3種類に分けられる。TBIは、通常、一次損傷に端を発し、その後、二次損傷へと徐々に発展する。二次的な病因には、虚血性変化、炎症カスケード反応、酸化ストレスなどが含まれ、これらにより、一時的又は永続的な神経学的欠損がもたらされ得る。虚血の改善、神経炎症の阻害、及び酸化ストレスへの抵抗は、TBIの神経保護及び修復の重要なメカニズムである(Galgano M、Toshkezi G、Qiu Xらの文献、外傷性脳損傷:現在の治療戦略及び今後の取り組み(Traumatic Brain Injury: Current Treatment Strategies and Future Endeavors) [J]. Cell Transplantation, 2017, 26(7): 1118-1130.)。
【0178】
理論に束縛されるわけではないが、外傷性脳損傷を有する対象の神経細胞は、初期には、脳損傷の影響から逃れることが難しく、脳組織の再建及び修復の後期には、様々なグリア細胞及び免疫細胞の環境的な支援に依存する。再灌流(I/R)傷害は、グリア細胞の増殖及び活性化、神経炎症、並びにサイトカインカスケード反応を伴い、これにより、神経細胞死がもたらされる。アストロサイトのバイオマーカーであるグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の発現増加は、神経炎症のマーカーとみなされ、様々な炎症促進性サイトカインの発現が同時に増加し、I/R傷害を悪化させる。既に脳卒中に罹患している患者にとって、神経細胞の死を予防し、遅延させることも極めて重要であり、それにより、その機能を回復させ、治療のための時間をより多く得るために、より多くの神経細胞を温存することができる。
【0179】
理論に束縛されるわけではないが、本出願の発明者らは、本方法において投与される医薬成分が、神経を保護し、梗塞コア領域の拡大を予防するために、神経炎症の阻害、抗酸化ストレス、及び虚血の改善などの複数のメカニズムを兼ね備えていることを見出した。有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、外傷性脳損傷の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。特に有利なことに、本発明の外傷性脳損傷を予防、治療、及び/又は改善する方法は、中枢神経系炎症、特に、GFAPの過剰発現を阻害する。
【0180】
(1.3 神経変性疾患)
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、神経変性疾患である。ある実施態様において、本発明は、神経変性疾患を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0181】
神経変性疾患は、神経及び他の組織を慢性的かつ進行性に損傷する原因不明の疾患群である。多くの変性疾患は、発生、発達、成熟、及び老化期の神経などの組織における一連の複雑な分子生物学的障害の結果であり、したがって、構造的及び機能的変化を示し得る。変性プロセスは、神経細胞全体(細胞体、核、軸索先端)を冒すことがあり、ミエリン鞘などの他の構成要素に影響を及ぼすこともある。
【0182】
ある実施態様において、神経変性疾患は、認知症を含み、ここで、認知症は、血管性認知症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、及び/又は前頭側頭型認知症を含む。認知障害及びさらには認知症は、脳卒中後、又は特定の感染症、脳への反復的な物理的損傷、もしくは栄養欠乏の場合に発症する可能性がある。異なる形態の認知症の境界は曖昧であるが、脳血管損傷が様々な認知症に存在すること多い。ある実施態様において、認知症は、血管性認知症を含む。
【0183】
ある実施態様において、認知症は、アルツハイマー病を含む。アルツハイマー病(AD)は、中枢神経系の変性疾患であり、これは、高齢期及び准高齢期に発生し、進行性の認知機能不全及び行動障害を特徴とする。その臨床症状は、記憶障害、失語症、失行症、失認症、視空間能力の障害、抽象的思考及び計算の障害、性格及び行動の変化などである。ADは、老人性認知症の最も一般的なタイプであり、老人性認知症の約50%~70%を占める。
【0184】
ある実施態様において、認知症は、レビー小体型認知症を含む。レビー小体型認知症(DLB)は、神経変性疾患である。その臨床症状は、変動する認知障害、パーキンソン症候群、及び顕著な症状として幻視を伴う精神症状である。病理学的特徴の変化は、大脳皮質におけるレビー小体の目に見える存在である。
【0185】
ある実施態様において、認知症は、前頭側頭型認知症を含む。前頭側頭型認知症は、中年及び高齢患者における人格変化、発話障害、及び異常行動の認知症症候群の緩徐な発症を指す。神経画像検査により、前頭側頭葉の萎縮が示される。この疾患は、神経変性認知症の一般的な原因であり、全認知症患者の約1/4を占める。
【0186】
理論的制約なしに、サイトカインは、神経炎症のプロセスにおいて重要な役割を果たしている。IFN-γ、IL-1β、TNF-α、及びIL-6などの炎症促進性サイトカインは、神経炎症のプロセスに関与している。さらに、IFN-γとTNF-αは、共同でNOレベルを増加させ、ドーパミン作動性ニューロンの死に関与し、したがって、アルツハイマー病の発症を促進する。アストロサイトのバイオマーカーであるグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の発現増加は、神経炎症のマーカーとみなされている。神経炎症は、白質病変、海馬損傷、及びAβ沈着などの病理学的プロセスを引き起こし、その後、血管性認知症及びアルツハイマー病などの認知障害関連疾患の発症をもたらす。それゆえ、神経炎症は、様々な認知症及び神経変性変化の発病において重要な役割を果たしている。
【0187】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、認知症の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。理論に束縛されるわけではないが、本方法において投与される医薬成分は、神経炎症の阻害、抗酸化ストレス、及び虚血の改善などの複数のメカニズムを兼ね備えており、神経損傷と神経炎症の悪循環を断ち切って、神経を保護する。
【0188】
特に有利なことに、本発明による認知症を予防、治療、及び/又は改善する方法は、記憶、視空間、及び理解判断、特に、視空間の側面における認知機能不全を含む、対象の認知機能不全を予防、治療、及び改善し、並びに認知症の発症を予防及び妨害する。有利なことに、空間的遅延応答実験において、本発明の方法で治療された認知障害を有する対象は全て、遅延1秒、5秒、10秒、及び30秒課題試験に首尾よく合格したが、本発明の方法で治療されていない認知障害を有する対象は、遅延1秒課題試験にしか合格しなかったか、又は遅延1秒課題試験を完了することさえできなかった。
【0189】
より有利なことに、本発明の認知症の予防、治療、及び/又は改善する方法はまた、対象の脳組織灌流を改善し、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害し、虚血を改善し、及びペナンブラを救済し;対象の脳浮腫/脳梗塞容積を顕著に低下させ;中枢神経系炎症を阻害し、特に、GFAP過剰発現を阻害し;神経行動スコア(例えば、NIHSS)を顕著に低下させ、及び神経学的欠損を改善し、並びに/又は対象の全体的な障害率を低下させる。
【0190】
ある実施態様において、認知症を治療、予防、又は改善する方法は、対象の脳組織灌流を改善し、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害し、虚血を改善し、及びペナンブラを救済する。有利なことに、本発明の方法で治療された認知障害を有する対象の脳の非灌流領域(すなわち、虚血コア領域)の容積は、本発明の方法で治療されていない認知障害を有する対象と比較して、少なくとも70%低下する。
【0191】
ある実施態様において、認知症を治療、予防、又は改善する方法は、対象の脳浮腫/脳梗塞容積を低下させる。3.0TのGE MRIを用いて、脳卒中後3~4時間、72~75時間、7日目、14日目、及び28日目の対象の浮腫/梗塞の軌跡を動的に観察する。有利なことに、本発明者らは、本発明の方法を用いて60日間連続投与された対象、特に、大きい前循環血管(中大脳動脈M1セグメント)の3時間閉塞後に再灌流され、かつ中等度を上回る神経学的障害を有する対象のT2 FLAIR脳浮腫/脳梗塞容積が、本方法で治療されなかった認知障害を有する対象のT2 FLAIRと比較して、少なくとも30%(脳卒中後72時間)、少なくとも40%(脳卒中後7日)、又は50%近くも(脳卒中後28日)低下することをMRAイメージングにより確認した。
【0192】
ある実施態様において、認知症を治療、予防、又は改善する方法は、中枢神経系炎症、特に、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害する。理論に制約されるわけではないが、本発明者らは、脳卒中によって引き起こされる認知障害を有する対象の脳組織の梗塞周囲領域におけるGFAPの発現が対側の正常脳組織における発現と比較して顕著に増加していることを見出した。有利なことに、本発明の方法は、神経炎症による認知障害を有する対象の脳組織障害領域におけるGFAP発現の増加を顕著に阻害する。
【0193】
ある実施態様において、認知症を治療、予防、又は改善する方法は、神経行動スコア(例えば、NIHSS)を顕著に低下させ、神経学的欠損を改善し、特に、対象の患肢の手指機能及び四肢強度を改善し、及び回復させ、並びに対象の全体的な障害率を低下させる。有利なことに、60日間の連続薬物投与のために本発明の方法で治療された対象、特に、中等度以上の重篤な神経学的障害を伴う3時間の前循環大血管(中大脳動脈のM1セグメント)閉塞後に再灌流を有することをMRAイメージングによって確認することができた対象のNIHSSスコアは、本方法で治療されなかった認知障害を有する対象のNIHSSスコアと比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は70%近くも低下し得る。本発明者らは、本方法で治療されなかった認知障害を有する対象が脳卒中発症から3カ月後に長期的な神経学的障害及び不能を発症し、対象の前大脳回が侵され、その結果、対側の手機能の障害、例えば、母指と示指の対置可能な指運動の喪失がもたらされ、細かいタスクを完遂することができなくなることを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された認知症対象は、脳卒中発症から3カ月後の患側の手機能が正常であり、母指と示指の対向指運動には影響がなく、両手で細かいタスクを完遂することができる。
【0194】
(1.4 視神経症)
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、視神経症であり、これは、緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を含む。視神経症は、網膜ニューロンの生存及び機能に影響を及ぼし、かつ眼の網膜から脳への視覚信号の伝達機能に影響を及ぼす、視神経の損傷又は疾患を指す。
【0195】
ある実施態様において、視神経症を予防、治療、及び/又は改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減することを含む。
【0196】
ある実施態様において、本発明は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、本方法は、網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷に関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する。網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷に関連する疾患としては:緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、及び未熟児網膜症が挙げられる。
【0197】
(1.4.1 緑内障)
ある実施態様において、視神経症は、緑内障である。本発明は、緑内障を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0198】
緑内障は、進行性の網膜神経節細胞(RGC)死及び典型的な視野欠損を特徴とする眼疾患群であり、これは、世界における不可逆的失明の主な原因となっている。この疾患に関連する主なリスク因子は、虚血、グリオーシス、炎症、興奮毒性、及び酸化ストレスである。現在、眼内圧を低下させることが、緑内障患者の視機能を保護するのに部分的に唯一効果的である。それゆえ、安全でかつ効果的なRGC神経保護を提供するための新しい治療法を開発することが非常に重要である。対象は、原発開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、続発緑内障、正常眼圧緑内障、又は先天性緑内障を含む緑内障と診断される。緑内障は、正常な眼内圧又は高い眼内圧を有し得る。
【0199】
ある実施態様において、緑内障は、原発緑内障、続発緑内障、及び/又は発達緑内障を含む。続発緑内障は、眼の他の疾患又は全身性疾患などの明白な原因を有するタイプの緑内障を指す。発達緑内障は、胚形成期及び発達期における眼球角の異形成又は異常発達によって引き起こされるタイプの緑内障であり、これは、出生前後並びに乳児期及び幼児期、並びに思春期及び小児期に発症する。
【0200】
原発緑内障は、18歳以上の人に見られる主なタイプの緑内障であり、これは、通常、両側性であるが、両眼は、異なる時期に発症することがあり、異なる重症度を有することが多い。原発緑内障は、2つのカテゴリー:閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障に分けられる。このタイプの緑内障の病因メカニズムは、徐々に理解されてきているが、長い研究の末、いまだ解明されていない。これを続発緑内障と区別するために、慣例的に原発緑内障と呼ばれている。
【0201】
ある実施態様において、原発緑内障は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、及び/又は特殊型の緑内障を含む。原発開放隅角緑内障は、視神経損傷及び開放前房隅角を伴う一群の症候群であり、眼内圧が上昇することもあれば、時として正常範囲にあることもある。原発閉塞隅角緑内障は、既に存在する虹彩の形状が原因で前房隅角が末梢虹彩組織によって機械的に遮断され、それにより、房水流出の妨害及び眼内圧の上昇がもたらされるタイプの緑内障を指す。
【0202】
「特殊型の緑内障」という用語は、まだ原発性であるが、閉塞隅角緑内障及び開放隅角緑内障とは異なる、独特なタイプの緑内障を指し、これには、高ひだ虹彩(high-pleated iris)緑内障、悪性緑内障、正常眼内圧緑内障、色素性緑内障、及び落屑緑内障がある。
【0203】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、緑内障の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。特に有利なことに、本発明の緑内障を予防、治療、及び/又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させ;内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減し;視神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚みを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防し;視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害し、神経細胞損傷に関連するIFN-γ、IL-1β、及びTNF-αなどの炎症因子の発現レベルを阻害し;並びに全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善すること、及び/又は全体的な網膜機能を保護することを含め、視神経機能低下を軽減する。
【0204】
ある実施態様において、緑内障を治療、予防、又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる。有利なことに、本発明の方法で治療された緑内障対象の網膜神経節細胞数の平均損失率は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2つの成分のみを投与された対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された対象)は、網膜神経節細胞数の平均損失率を20%、又はわずか15%しか低下させない。
【0205】
ある実施態様において、緑内障を治療、予防、又は改善する方法は、視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害する。アストロサイトは、正常網膜における主要なグリア細胞であり、これは、血液網膜バリア及びRGCの健全性の維持に重要な役割を果たしている。アストロサイトのバイオマーカーであるGFAPの発現増加は、神経炎症の兆候及び網膜変性のマーカーとみなされている。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、緑内障対象の網膜組織におけるGFAPの発現が、過剰発現と考えられる、正常発現(すなわち、緑内障を有さない対象の網膜組織におけるGFAPの発現)の約5倍増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された緑内障対象の網膜組織におけるGFAPの発現は、過剰発現の50%以下、40%以下、又は30%近くにさえ低下する。
【0206】
ある実施態様において、緑内障を治療、予防、又は改善する方法は、少なくとも1つの炎症因子の発現レベルの増加を阻害し、ここで、該炎症因子は、IFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αを含む。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、緑内障を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルが正常レベル(すなわち、緑内障を有さない対象の網膜組織における炎症因子の発現レベル)と比較して顕著に増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された緑内障対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルは、正常レベル近くに低下する。
【0207】
ある実施態様において、緑内障を治療、予防、又は改善する方法は、内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減する。有利なことに、本発明の方法で治療された緑内障対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない緑内障対象)と比較して、少なくとも70%、又は少なくとも80%も低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された緑内障対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された緑内障対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された緑内障対象)は、網膜EDTRS領域の平均厚さの低下を約30%、もしくは20%、もしくは10%、もしくは5%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。より有利なことに、本発明の方法で治療された非緑内障対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない非緑内障対象)と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は70%近くも低下する。
【0208】
ある実施態様において、緑内障を治療、予防、又は改善する方法は、網膜神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚さを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防する。本発明者らは、網膜乳頭周囲神経線維層(RNFL)の薄化を含む、ヒト原発開放隅角緑内障の重要な眼科的特徴を示す、自然発症緑内障のアカゲザルの眼の表現型を観察した(Louis R Pasqualeらの文献、華南のアカゲザルコロニーにおける原発開放隅角緑内障様特徴の発達(Development of Primary Open Angle Glaucoma-Like Features in a Rhesus Macaque Colony From Southern China). [J]. Transl Vis Sci Technol. 2021 Aug 2; 10(9): 20)。有利なことに、本発明の方法で治療された緑内障対象における網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない緑内障対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された緑内障対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された緑内障対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された緑内障対象)は、網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下を約30%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。
【0209】
ある実施態様において、視神経機能低下を軽減する緑内障を治療、予防又は改善する方法は、全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善すること、及び全体的な網膜機能を保護することを含む。有利なことに、本発明の方法で治療された緑内障対象の全視野網膜電図(FERG)の明順応3.0 ERG応答のa-波及びb-波の振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない緑内障対象)と比較して、約30%、もしくは50%、もしくは100%、もしくは150%、又は200%近くにさえ増加する。より有利なことに、本発明の方法で治療された緑内障対象のフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)のN2-P2振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない緑内障対象)と比較して、約100%、もしくは200%、もしくは300%、もしくは400%、又は500%近くにさえ増加する。
【0210】
(1.4.2 虚血性視神経症)
ある実施態様において、視神経症は、虚血性視神経症である。本発明は、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0211】
虚血性視神経症は、視神経の栄養血管の急性循環によって引き起こされる。臨床的に、これは、前部虚血性視神経症と後部虚血性視神経症に分けることができる。臨床症状は、視神経円板の腫脹を伴う、突然の、孤立した、通常は痛みを伴わない視力障害である。前部虚血性視神経症は、後毛様体動脈循環障害によって引き起こされる視神経円板への血液供給不足に起因する視神経円板の急性虚血及び浮腫を伴う疾患である。後部虚血性視神経症は、後篩状板から視神経交差までの視神経血管に急性循環障害が生じ、虚血性不全のために視神経機能が損傷される疾患である。
【0212】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、虚血性視神経症の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。特に有利なことに、本発明の虚血性視神経症を予防、治療、及び/又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び視神経症に伴う二次的ニューロン損傷の重症度を低下させ;内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減し;視神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚みを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防し;視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害し、神経細胞損傷に関連するIFN-γ、IL-1β及び/又はTNF-αなどの炎症因子の発現レベルを阻害し;並びに全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善すること、並びに/又は全体的な網膜機能を保護することを含め、視神経機能低下を軽減する。
【0213】
ある実施態様において、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び視神経症に関連する二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる。有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症を有する対象の網膜神経節細胞数の平均損失率は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない虚血性視神経症を有する対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された虚血性視神経症を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPという2つの医薬成分のみを投与された虚血性視神経症を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された虚血性視神経症を有する対象)は、網膜神経節細胞数の平均損失率を20%、又はわずか15%しか低下させない。
【0214】
ある実施態様において、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害する。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、虚血性視神経症を有する対象の網膜組織におけるGFAPの発現が、過剰発現と考えられる、正常発現(すなわち、虚血性視神経症を有さない対象の網膜組織におけるGFAPの発現)の約5倍増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症の対象の網膜組織におけるGFAPの発現は、過剰発現の50%以下、40%以下、又は30%近くにさえ低下する。
【0215】
ある実施態様において、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、少なくとも1つの炎症因子の発現レベルの増加を阻害し、ここで、炎症因子は、IFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αを含む。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、虚血性視神経症を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルが、正常レベル(すなわち、虚血性視神経症を有さない対象の網膜組織における炎症因子の発現レベル)と比較して顕著に増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルは、正常レベル近くに低下する。
【0216】
ある実施態様において、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減する。有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症の対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない虚血性視神経症を有する対象)と比較して、少なくとも70%、又は少なくとも80%も低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された虚血性視神経症を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された虚血性視神経症を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された虚血性視神経症を有する対象)は、網膜EDTRS領域の平均厚さの低下を約30%、もしくは20%、もしくは10%、もしくは5%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。より有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症を有さない対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない虚血性視神経症を有さない対象)と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は70%近くも低下する。
【0217】
ある実施態様において、虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、網膜神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚さを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防する。有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症の対象における網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない虚血性視神経症を有する対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された虚血性視神経症を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された虚血性視神経症を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された虚血性視神経症を有する対象)は、網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下を約30%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。
【0218】
ある実施態様において、視神経機能低下を軽減する虚血性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善すること、並びに全体的な網膜機能を保護することを含む。有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症を有する対象の全視野網膜電図(FERG)の明順応3.0 ERG応答のa-波及びb-波の振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない虚血性視神経症を有する対象)と比較して、約30%、もしくは50%、もしくは100%、もしくは150%、又は200%近くにさえ増加する。より有利なことに、本発明の方法で治療された虚血性視神経症を有する対象のフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)のN2-P2振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない虚血性視神経症を有する対象)と比較して、約100%、もしくは200%、もしくは300%、もしくは400%、又は500%近くにさえ増加する。
【0219】
(1.4.3 視神経炎、視神経腫瘍、及び外傷性視神経症)
ある実施態様において、視神経症は、視神経炎である。視神経炎は、通常、視神経を冒す様々な炎症性病変を指す。ある実施態様において、視神経症は、視神経腫瘍である。視神経腫瘍は、視神経に発生する腫瘍であり、2つの一般的なタイプは、視神経膠腫及び視神経髄膜腫である。ある実施態様において、視神経症は、外傷性視神経症である。外傷性視神経症は、外力による視神経の衝撃損傷を指し、これは、視力の部分的又は全体的喪失をもたらす可能性がある。
【0220】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。特に有利なことに、本発明の視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を予防、治療、及び/又は改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害し、又は緩和し;グリア原線維酸性タンパク質(GFAP、神経炎症マーカー)(ここで、GFAPは、I/Rによって誘発され得る)の過剰発現を顕著に阻害し;並びに神経細胞損傷に関連するIFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αなどの炎症因子の発現を阻害する。
【0221】
ある実施態様において、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減する。有利なことに、本発明の方法で治療された視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象の網膜神経節細胞数の平均損失率は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2つの成分のみを投与された視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象)は、網膜神経節細胞数の平均損失率を20%、又はわずか15%しか低下させない。
【0222】
ある実施態様において、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の過剰発現を阻害し、ここでGFAPは、I/R誘発性であり得る。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象の網膜組織におけるGFAPの発現が、過剰発現と考えられる、正常発現(すなわち、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有さない対象の網膜組織におけるGFAPの発現)の約5倍増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象の網膜組織におけるGFAPの発現は、過剰発現の50%以下、40%以下、又は30%近くにさえ低下する。
【0223】
ある実施態様において、本発明の視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を治療、予防、又は改善する方法は、少なくとも1つの炎症因子の発現レベルの増加を阻害する。炎症因子は、主に、炎症反応に関与する種々のサイトカインを指す。ある実施態様において、炎症因子は、IFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αを含む。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルが、正常レベル(すなわち、視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有さない対象の網膜組織における炎症因子の発現レベル)と比較して顕著に増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された視神経炎、視神経腫瘍、及び/又は外傷性視神経症を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルは、正常レベル近くに低下する。
【0224】
(1.5 網膜症)
ある実施態様において、中枢神経系疾患、障害、又は疾病は、網膜症を含む。網膜症は、網膜に生じる疾患である。網膜は、視力形成の初期部位及び多くの失明性眼疾患の病理学的部位である。本発明は、網膜症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0225】
ある実施態様において、網膜症を予防、治療、及び/又は改善する方法は、対象の網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷を阻害又は軽減することを含む。ある実施態様において、本方法は、網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷に関連する疾患、障害、又は疾病を治療、予防、又は改善する。網膜神経節細胞(RGC)損傷又は重度軸索損傷に関連する疾患としては:緑内障、虚血性視神経症、視神経炎、視神経腫瘍、外傷性視神経症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、及び未熟児網膜症が挙げられる。
【0226】
(1.5.1 網膜血管閉塞疾患)
ある実施態様において、網膜症は、網膜血管閉塞症を含む。本発明は、網膜血管閉塞疾患を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法を提供する。
【0227】
網膜血管閉塞症は、網膜動脈閉塞症又は網膜静脈閉塞症に分けられ、これらは、高度の網膜虚血又は出血の状態を引き起こす可能性があり、一般的な眼底血管疾患である。網膜動脈閉塞症又は網膜静脈閉塞症は、高度の網膜の虚血、浮腫、又は出血を引き起こす可能性がある。主な症状は、中心視力の減少又は視野の特定部位の欠損である。これには、複雑な原因があり、網膜の炎症、網膜の低灌流、高血圧、動脈硬化、高血液粘度、異常な血行動態などと密接な関係がある。
【0228】
理論的制約なしに、網膜虚血/再灌流傷害は、グリア活性化、神経炎症、及びサイトカインカスケード反応を伴い、神経変性及び網膜細胞死をもたらし、神経細胞死の主な初期因子と考えられている。アストロサイトは、正常網膜における主要なグリア細胞であり、これは、血液網膜バリア及びRGCの健全性の維持に重要な役割を果たしている。アストロサイトのバイオマーカーであるグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の発現増加は、神経炎症の兆候及び網膜変性のマーカーとみなされている。同時に、IFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αなどの様々な炎症性サイトカインの発現増加は、I/R傷害を悪化させる。理論的制約なしに、I/R傷害によって引き起こされるGFAP増殖及びRGCアポトーシスの標的阻害、様々な炎症促進性サイトカインの増加の阻害、並びにI/R後の網膜変性の改善は、疾患治療において非常に重要な役割を果たしている。
【0229】
ある実施態様において、網膜血管閉塞症疾患は、網膜静脈閉塞症を含む。網膜静脈閉塞症(RVO)は、正常網膜組織における静脈還流の遮断によって引き起こされ、糖尿病性網膜症に次いで2番目である一般的な網膜血管疾患である。罹患した眼は、合併症が原因の視力障害及び失明すら起こしやすい。静脈閉塞の位置によって、これは、中心網膜静脈閉塞症、半中心網膜静脈閉塞症、及び分枝網膜静脈閉塞症に分けられる。中心網膜静脈閉塞症の閉塞部分は、主に、視神経円板の篩状板領域又は後篩状板における中心網膜静脈の主幹部に位置し、これは、高度の網膜静脈拡張及び広範な出血を特徴とする。分枝網膜静脈閉塞症は、動脈硬化を有する患者により多く見られる。閉塞は、側頭枝、特に、上側頭枝に多く見られる。閉塞部位の動脈は、主に、静脈の前に位置する。これは、静脈の第1枝から第3枝までの動脈と静脈の交差点に生じる。
【0230】
網膜静脈閉塞症は、重度の視力低下をもたらす網膜血管疾患である。その原因としては、結果的に、視神経円板の篩状板又はその後方での中心網膜静脈の圧迫、静脈血流停止、血栓症に至る静脈血管内皮損傷をもたらす、中心網膜動脈のアテローム性動脈硬化症が挙げられる。閉塞の位置に応じて、これは、中心網膜静脈閉塞症(CRVO)と分枝網膜静脈閉塞症(BRVO)に分けることができる。ほとんどの患者は、大量の眼底出血、静脈蛇行、綿毛斑、黄斑浮腫、及び視神経円板浮腫を示す。同時に、中心網膜静脈閉塞症を有する患者は、完全失明をもたらす新生血管緑内障(NVG)を発症する。
【0231】
ある実施態様において、網膜血管閉塞症疾患は、網膜動脈閉塞症を含む。網膜動脈閉塞症は、急性発作及び視力の重大な損傷を伴う眼底疾患である。冒される血管の源及び等級に応じて、これは、網膜中心動脈閉塞症、分枝網膜動脈閉塞症、ヘキサデカノール閉塞症、及び網膜前毛細血管細動脈閉塞症に分けることができる。中心網膜動脈閉塞症は、中心網膜動脈が部分的に又は完全に閉塞し、患者に突然の失明又は突然の視力低下をもたらす、急性眼科疾患を指す。分枝網膜動脈閉塞症は、閉塞が分枝網膜動脈に生じる疾患を指す。これは、側頭側に、特に、上側頭枝動脈閉塞症により多く見られる。視力及び眼底変化の予後は、動脈閉塞の部位及び程度によって決まる。ヘキサデカノール閉塞症は、眼科における稀少重症疾患である。救済が間に合わない場合、これは、視力を深刻に脅かし、失明に至ることさえある。ヘキサデカノールは、短後毛様体動脈、長後毛様体動脈、及び前毛様体動脈から構成され、これらは、脈絡膜、網膜の外層、及び視神経の一部を除く眼球全体に栄養を与える働きをする。網膜前毛細血管細動脈閉塞症は、灰白色のビーズの小さい小片、すなわち、綿毛斑によって示現し、糖尿病、高血圧、及び動脈硬化などの全身疾患の存在下で起こる。
【0232】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、網膜血管閉塞疾患、特に、網膜動脈閉塞疾患及び網膜静脈閉塞疾患の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。特に有利なことに、本発明の網膜血管閉塞疾患を予防、治療、及び/又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させ;内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減し;視神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚みを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防し;視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害し、神経細胞損傷に関連するIFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αなどの炎症因子の発現レベルを阻害し;並びに全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善することを含め、視神経機能低下を軽減し、並びに全体的な網膜機能を保護する。
【0233】
ある実施態様において、網膜血管閉塞疾患を治療、予防、又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる。有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞疾患を有する対象の網膜神経節細胞数の平均損失率は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない網膜血管閉塞疾患を有する対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)は、網膜神経節細胞数の平均損失率を20%、又はわずか15%しか低下させない。
【0234】
ある実施態様において、網膜血管閉塞疾患を治療、予防、又は改善する方法は、視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害する。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、網膜血管閉塞疾患を有する対象の網膜組織におけるGFAPの発現が、過剰発現と考えられる、正常発現(すなわち、網膜血管閉塞疾患を有さない対象の網膜組織におけるGFAPの発現)の約5倍増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞疾患を有する患者の網膜組織におけるGFAPの発現は、過剰発現の50%以下、40%以下、又は30%近くにさえ低下する。
【0235】
ある実施態様において、網膜血管閉塞疾患を治療、予防、又は改善する方法は、少なくとも1つの炎症因子の発現レベルの増加を阻害し、ここで、炎症因子は、IFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αを含む。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、網膜血管閉塞症疾患を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルが、正常レベル(すなわち、網膜血管閉塞疾患を有さない対象の網膜組織における炎症因子の発現レベル)と比較して顕著に増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞疾患を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルは、正常レベル近くに低下する。
【0236】
ある実施態様において、網膜血管閉塞疾患を治療、予防、又は改善する方法は、内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減する。有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞疾患を有する対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない網膜血管閉塞疾患を有する対象)と比較して、少なくとも70%、又は少なくとも80%も低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)は、網膜EDTRS領域の平均厚さの低下を約30%、もしくは20%、もしくは10%、もしくは5%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。より有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞疾患を有さない対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない網膜血管閉塞症疾患を有さない対象)と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は70%近くも低下する。
【0237】
ある実施態様において、網膜血管閉塞疾患を治療、予防又は改善する方法は、網膜神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚さを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防する。有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞疾患を有する対象の網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない網膜血管閉塞疾患を有する対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された網膜血管閉塞疾患を有する対象)は、網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下を約30%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。
【0238】
ある実施態様において、視神経機能低下を軽減する網膜血管閉塞疾患を治療、予防、又は改善する方法は、全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善すること、並びに全体的な網膜機能を保護することを含む。有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞疾患を有する対象の全視野網膜電図(FERG)の明順応3.0 ERG応答のa-波及びb-波の振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない網膜血管閉塞疾患を有する対象)と比較して、約30%、もしくは50%、もしくは100%、もしくは150%、又は200%近くにさえ増加する。より有利なことに、本発明の方法で治療された網膜血管閉塞を有する対象のフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)のN2-P2振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない網膜血管閉塞疾患を有する対象)と比較して、約100%、もしくは200%、もしくは300%、もしくは400%、又は500%近くにさえ増加する。
【0239】
(1.5.2 未熟児網膜症)
ある実施態様において、網膜症は、未熟児網膜症を含む。未熟児網膜症(ROP)を有するほとんどの小児は、妊娠期間32週未満及び出生時体重1500g未満で、高濃度酸素を吸入した既往のある未熟児、又は成長遅滞のある低出生時体重児である。ROPは、乳児の失明の重要な原因であり、これは、白色瞳孔の兆候をもたらす重要な眼疾患の1つでもある。低出生時体重を伴う早産及び高濃度酸素の吸入は、既知の病原因子であり、これは、血管化が不十分な網膜における酸素に応答した血管収縮及び血管増殖によって引き起こされる。
【0240】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、未熟児網膜症の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。特に有利なことに、本発明の未熟児網膜症を予防、治療、及び/又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させ;内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減し;視神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚さを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防し;視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害し、神経細胞損傷に関連するIFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αなどの炎症因子の発現レベルを阻害し;並びに全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善することを含め、視神経機能低下を軽減し、並びに全体的な網膜機能を保護する。
【0241】
ある実施態様において、未熟児網膜症を治療、予防、又は改善する方法は、網膜神経節細胞(RGC)の損失を軽減し、視機能を保護し、及び二次的ニューロン損傷の重症度を阻害し、又は低下させる。有利なことに、本発明の方法で治療された対象の網膜神経節細胞数の平均損失率は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない未熟児網膜症を有する対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された未熟児網膜症を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された未熟児網膜症を有する対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された未熟児網膜症を有する対象)は、網膜神経節細胞数の平均損失率を20%、又はわずか15%しか低下させない。
【0242】
ある実施態様において、未熟児網膜症を治療、予防、又は改善する方法は、視神経炎症及びGFAP過剰発現を顕著に阻害する。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、未熟児網膜症を有する対象の網膜組織におけるGFAPの発現が、過剰発現と考えられる、正常発現(すなわち、未熟児網膜症を有さない対象の網膜組織におけるGFAPの発現)の約5倍増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された未熟児網膜症の対象の網膜組織におけるGFAPの発現は、過剰発現の50%以下、40%以下、又は30%近くにさえ低下する。
【0243】
ある実施態様において、未熟児網膜症を治療、予防、又は改善する方法は、少なくとも1つの炎症因子の発現レベルの増加を阻害し、ここで、炎症因子は、IFN-γ、IL-1β、及び/又はTNF-αを含む。理論に束縛されるわけではないが、本発明者らは、未熟児網膜症を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルが、正常レベル(すなわち、未熟児網膜症を有さない対象の網膜組織における炎症因子の発現レベル)と比較して顕著に増加することを見出した。有利なことに、本発明の方法で治療された未熟児網膜症を有する対象の網膜組織における炎症因子の発現レベルは、正常レベル近くに低下する。
【0244】
ある実施態様において、未熟児網膜症を治療、予防、又は改善する方法は、内側網膜損傷を軽減し、網膜浮腫を低下させ、及び網膜厚低下を軽減する。有利なことに、本発明の方法で治療された未熟児網膜症を有する対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない未熟児網膜症を有する対象)と比較して、少なくとも70%、又は少なくとも80%も低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された未熟児網膜症を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された未熟児網膜症の対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された未熟児網膜症を有する対象)は、網膜EDTRS領域の平均厚さの低下を約30%、もしくは20%、もしくは10%、もしくは5%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。より有利なことに、本発明の方法で治療された未熟児網膜症を有さない対象の網膜EDTRS領域の平均厚さの低下は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない未熟児網膜症のない対象)と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は70%近くも低下する。
【0245】
ある実施態様において、未熟児網膜症を治療、予防、又は改善する方法は、網膜神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚さを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防する。有利なことに、本発明の方法で治療された未熟児網膜症を有する対象の網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない未熟児網膜症を有する対象)と比較して、少なくとも80%低下し、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された未熟児網膜症を有する対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された未熟児網膜症を有する対象)及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された未熟児網膜症を有する対象)は、網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下を約30%しか低下させないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえある。
【0246】
ある実施態様において、視神経機能低下を軽減する未熟児網膜症を治療、予防、又は改善する方法は、全視野網膜電図(FERG)及びフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)の機能指標を改善すること、並びに全体的な網膜機能を保護することを含む。有利なことに、本発明の方法で治療された未熟児網膜症を有する対象の全視野網膜電図(FERG)の明順応3.0 ERG応答のa-波及びb-波の振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない未熟児網膜症を有する対象)と比較して、約30%、もしくは50%、もしくは100%、もしくは150%、又は200%近くにさえ増加する。より有利なことに、本発明の方法で治療された未熟児網膜症を有する対象のフラッシュ視覚誘発電位(FVEP)のN2-P2振幅は、対照群(すなわち、本発明の方法で治療されていない未熟児網膜症を有する対象)と比較して、約100%、もしくは200%、もしくは300%、もしくは400%、又は500%近くにさえ増加する。
【0247】
(1.6 糖尿病性末梢神経障害)
ある実施態様において、末梢神経障害は、糖尿病性末梢神経障害(DPN)である。ある実施態様において、糖尿病性末梢神経障害を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を投与することを含む、方法が提供される。
【0248】
ある実施態様において、糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病性遠位対称性多発性神経障害(DSPN)又は糖尿病性単神経障害又は多発性単神経障害である(Zakin E、Abrams R、Simpson DMの文献、糖尿病性神経障害(Diabetic Neuropathy). Semin Neurol. 2019 Oct; 39(5):560-569.)。糖尿病性単神経障害又は多発性単神経障害を有する患者は、正中神経、尺骨神経、及び総腓骨神経が侵されることが多く、潜行性の発作を伴うことが多いが、急性発症を伴うこともあり、主に、神経支配された領域の感覚及び運動機能不全を示す。
【0249】
糖尿病性遠位対称性多発性神経障害(DSPN)は、糖尿病患者の約50%を占める、最も一般的なタイプのDPNである。トロント糖尿病性神経障害コンセンサスグループ(Toronto Diabetic Neuropathy Consensus Group)は、DSPNを「慢性的な高血糖曝露及び心血管リスク共変量の結果として生じる代謝及び微小血管の変化に起因する左右対称で長さ依存性の感覚運動性多発性神経障害」と定義している。DSPNを有する患者は、2つの主な臨床症状、すなわち、足潰瘍をもたらす外傷に対する無感覚と極めて痛みが強い神経障害性疼痛を有する。ある実施態様において、DSPN患者は、左右対称の症状を示し、患者における症候性発現は、遠位四肢感覚異常、両下肢感覚異常、靴下型感覚消失、手袋型感覚消失、正中神経、尺骨神経、総腓骨神経の障害、感覚機能不全、運動機能不全、外傷に対する無感覚、及び神経障害性疼痛を含む。
【0250】
筋電図(EMG)は、糖尿病性末梢神経障害を有する患者における様々なタイプの神経機能不全を評価するために広く使用されており、EMGは、神経機能の客観的かつ定量的な診断を提供することができる。神経電気生理学的研究により、感覚神経伝導は、5~10年間糖尿病を有する患者において遅くなること、すなわち、これらの糖尿病患者は、糖尿病性末梢神経障害を伴うことが証明されている。糖尿病性末梢神経障害を有する患者において、感覚神経伝導速度(SCV)異常の程度及び割合は、通常、運動神経伝導速度(MCV)異常よりも重度であり、患者の神経学的異常は、上肢よりも下肢で重度である(中国糖尿病学会神経合併症グループ、糖尿病性神経障害の診断及び治療に関する専門家のコンセンサス(Neurocomplications Group of Chinese Diabetes Society, Expert consensus on diagnosis and treatment of diabetic neuropathy)(2021年版). Chinese Journal of Diabetes, 2021, 13(06):540-557)。
【0251】
有利なことに、本出願の発明者らは、本方法が、末梢神経障害、特に、糖尿病性末梢神経障害の予防、治療、及び/又は改善において有益な効果を有することを見出した。ある実施態様において、本方法は、末梢神経伝導速度を改善し、腓腹神経の感覚覚神経伝導速度を顕著に改善し;微小循環を改善し、神経炎症を阻害し、中枢神経系炎症を阻害し、損傷した神経組織を修復し、末梢神経障害の症状を長期間緩和し、神経障害の進行を長期間制御し、及び神経障害性疼痛の進行を長期間制御する。
【0252】
特に有利なことに、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、末梢神経伝導速度を改善し、特に、腓腹神経の感覚神経伝導速度を顕著に改善する。薬物投与後、本発明の方法で治療されたDSPN対象の感覚神経伝導速度は、平均で少なくとも4.3m/s、又はさらには4.6m/s改善される。対照的に、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていないDSPN対象)、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された対象)、及び2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された対象、又はDOX+PMPの2成分のみを投与された対象)の感覚神経伝導速度は、薬物投与前後で顕著には変化せず、薬物投与後に減少さえする。有利なことに、DSPN対象の異常な腓腹感覚神経において、本発明の方法による治療後、該神経の最大75%が効果的に改善され、効果的改善率は、陽性薬物対照群のものよりも高い。
【0253】
有利なことに、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、微小循環を改善し、脳組織梗塞周囲の局所脳血液量(rCBV)の低下を阻害し、対象の脳組織灌流を改善し、脳浮腫及び脳組織病変を改善し、及び脳組織壊死を低下させることができる。理論的制約なしに、本方法は、糖尿病性末梢神経障害を有する患者の脳容積の低下を阻害することにより、該患者の微小循環を改善し、神経組織の虚血及び低酸素状態、並びに微小循環障害によって引き起こされる神経構造及び機能の傷害を緩和する。MRIスキャンのDSC-PWIシーケンスの結果を用いて、脳微小循環を判断することができる。これらの中で、脳血流量(CBF)は、単位時間に所与の量の脳組織血管構造を通過する血液の流れを指し、値が小さいほど、脳血流は少なく;脳血液量(CBV)は、一定量の脳組織血管構造内に存在する血液量を指し、値が小さいほど、脳組織の血液量は少なく;平均通過時間(MTT)は、造影剤が脳組織を通過する平均時間を指し、ピーク到達時間(TTP)は、造影剤が脳領域でそのピークに達するまでの時間を指す。相対脳血流量(rCBF)の顕著な減少、相対脳血液量(rCBV)の顕著な減少、相対平均通過時間(rMTT)の延長、及び相対ピーク到達時間(rTTP)の延長がある場合、これは、患者の微小循環障害及び不十分な灌流を示すものである。相対脳血液量(rCBV)の回復又は増加は、患者の微小循環の改善を示す。DSC-PWIの結果は、臨床患者のための高感度でかつ正確な脳微小循環情報を提供することができる(LI Yongli、YAN Fengshan、DOU Sheweiらの文献、脳虚血患者の脳微小循環評価における動脈プロトンスピン標識と動的磁化率造影灌流イメージングの臨床的比較応用(Clinical comparative application of arterial proton spin labeling and dynamic magnetic susceptibility contrast-enhanced perfusion imaging in the evaluation of cerebral microcirculation in patients with cerebral ischemia)、Journal of Zhengzhou University:医学版、2013(4): 4; JING Yanping、LUO Bin、GAO Zhengrongらの文献、虚血性脳血管疾患におけるDSC-PWIの応用価値(Application value of DSC-PWI in ischemic cerebrovascular diseases)、Journal of Chinese Physician, 2020, 22(3): 6)。有利なことに、本発明の方法で治療された微小循環障害を有する対象の脳の非灌流領域(すなわち、虚血コア領域)の容積は、本発明の方法で治療されていない微小循環障害を有する対象と比較して、少なくとも70%低下する。
【0254】
有利なことに、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、脳組織におけるGFAPタンパク質の過剰発現の阻害として現れる、神経炎症、特に、中枢神経系炎症を阻害することもできる。本発明者らは、脳微小循環障害を有する対象の脳梗塞周囲の組織におけるGFAPの発現量が、過剰発現と考えられる、正常発現レベル(すなわち、微小循環障害を有さない対象の脳組織におけるGFAPの発現)の約3~4倍増加することを見出した。理論的制約なしに、本方法は、脳組織におけるGFAPの過剰発現を阻害することにより、神経炎症を阻害し、異常なグルコース代謝によって引き起こされる酸化ストレスレベルの増加を阻害し、血管内皮及び血液脳関門の炎症及び傷害を修復し、並びに糖尿病性神経障害を緩和する。有利なことに、本発明の方法で治療された脳微小循環障害を有する対象の脳組織におけるGFAP発現は、過剰発現の50%以下、又は40%以下にさえ低下する。
【0255】
有利なことに、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、損傷した神経組織を修復することもできる。特に有利なことに、本発明の方法は、視神経線維層の浮腫を低下させ、網膜神経線維層の厚さを維持し、及び視神経線維層の薄化を予防することができる。理論的な制約なしに、本方法は、視神経線維層の厚さを維持することにより、神経線維の浮腫、変性、及び壊死を軽減し、神経細胞の構造及び機能を維持し、損傷した神経細胞を保護し、並びに損傷した神経組織を修復する。本発明の方法で治療された対象の網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下は、プラセボ群(すなわち、本発明の方法で治療されていない対象)と比較して、少なくとも80%低下することができ、一方、1成分対照群(すなわち、1つの医薬成分のみを投与された虚血性視神経症を有する緑内障対象)、2成分対照群(すなわち、DOX+MTPの2成分のみを投与された虚血性視神経症を有する緑内障対象)、及び3成分対照群(すなわち、本発明とは異なる3成分薬DOX+MTP+BRMを投与された虚血性視神経症を有する緑内障対象)は、網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さの低下を約30%しか低下させることができないか、又は該低下を低下させる代わりに該低下を増加させることさえできる。
【0256】
有利なことに、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、長期にわたって末梢神経障害の症状を緩和し、長期にわたって神経障害の進行を制御し、及び薬物投与中に良好な安全性を示す。理論に束縛されるわけではないが、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、脳微小循環を改善し、中枢神経系炎症を阻害し、及び損傷した神経組織を修復することにより、末梢神経障害を長期間緩和し、及びその進行を制御する。有利なことに、本発明の方法は、肝酵素レベルの上昇並びに消化管関連の毒作用及び副作用を引き起こさず、神経障害の進行を長期間緩和及び制御する効果を有することができる。
【0257】
ある実施態様において、糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)である。DSPN患者の約20%は、神経障害性疼痛(有痛性DSPN)、すなわち、DPNPを有し、有痛性DSPN患者と呼ばれる。これらの患者で最もよく見られる神経学的症状は、灼熱感、「電気ショック」型疼痛、及び激痛である。ある実施態様において、患者の睡眠は、痛みの影響を受け、疼痛誘発性うつ病及び不安に悩まされる。患者の半数以上が自分の痛みを「激しい」と評価し、患者は、多くの場合、症状が夜間によりひどいと報告する。4分の3もの患者が睡眠障害に悩まされ、糖尿病性有痛性末梢神経障害を有する患者は、うつ病及び不安の症状を有する可能性もより高いと予測される。
【0258】
有利なことに、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、長期にわたって神経障害性疼痛の進行を制御し、及び神経障害性疼痛の症状を緩和することができる。理論に束縛されるわけではないが、本発明の糖尿病性末梢神経障害を予防、治療、及び/又は改善する方法は、脳微小循環を改善し、中枢神経系炎症を阻害し、及び損傷した神経組織を修復することにより、中枢神経障害と末梢神経障害の両方から保護し、上記のメカニズムに基づいて、DPNPを治療し、及び対象の神経障害性疼痛を緩和することができる。理論的制約なしに、本方法は、GFAPタンパク質の過剰発現を阻害し、神経炎症を阻害し、損傷した神経細胞を修復し、及び患者の神経障害性疼痛及び他の症状を緩和することができる。理論的制約なしに、末梢中枢神経系及び中枢神経系(CNS)の構造及び機能の保護は、DPNP患者の疼痛症状の緩和を示唆する。
【0259】
(2.医薬組成物)
ある実施態様において、本発明は、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を含む、神経障害を調節するための医薬組成物に関する。
【0260】
「医薬組成物」という用語は、対象への投与後に特定の疾患に対して治療効果又は予防効果を有することが通常期待される、特定の医薬用途又は生物学的用途を有する種々の物質の組合せを指す。医薬組成物は、特定の活性成分(生物学的活性物質)のみを含有することができるか、又は様々な目的のために従来の医薬として許容し得る担体とともに提供することができるかのいずれかである。本出願における「組成物」という用語は、その広い意味に従って解釈されるべきである。本発明の医薬組成物の一実施態様として、例えば、それを、例えば、特定の活性成分(及び任意に、医薬として許容し得る担体)を一緒に混合することにより、個々の成分の区別できない混合物の形態で提供することができる。本発明の医薬組成物の別の実施として、本発明の「医薬組成物」を、各々の所定の活性成分を個別包装して小分けにし、その後、これらの小さい独立した包装物をより大きい容器中で一緒に組み合わせて収容することにより提供することもできる。
【0261】
ある実施態様において、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態は、単一の医薬組成物に製剤化される。
【0262】
「活性成分」及び「生物学的活性物質」という用語は、疾患又は疾病(例えば、糖尿病性網膜症)の治療のための、対象において作用する、生物学的、生理学的、又は薬学的に機能する分子及び他の作用物質を指す。これらの用語は、「医薬として許容し得る担体」、「賦形剤」、「添加剤」などの用語に関連して使用される。「活性成分」(又は「生物学的活性物質」)は、医薬として許容し得る塩及びそのプロドラッグを含むが、これらに限定されない。これらの試薬は、酸、塩基、又は塩であってもよく;これらは、中性分子、極性分子、又は水素結合が可能な分子複合体であってもよく;かつこれらは、対象に投与されたときに生物活性化される、エーテル、エステル、アミドなどの形態のプロドラッグであってもよい。
【0263】
「その許容し得る形態」という用語は、活性成分(例えば、ドキサゾシン分子)の医薬として許容し得る水和物、溶媒和物、同位体標識化合物、光学異性体、幾何異性体、互変異性体、異性体の混合物、及び/又はプロドラッグを含むが、これらに限定されない。溶媒和物としては、水和物、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
【0264】
本発明の特定の活性成分の「その許容し得る形態」には、活性成分の同位体標識化合物、又はその光学異性体、幾何異性体、互変異性体、もしくは異性体の混合物から形成される医薬として許容し得る塩、又はそのプロドラッグがさらに含まれる。
【0265】
様々な活性成分又は医薬として許容し得る塩への言及は全て、同じ活性成分又は塩の様々な結晶形態(例えば、非晶質、多形物質など)を含むことが理解されるべきである。
【0266】
本明細書で使用される「ドキサゾシン」という用語は、英語名Doxazosin(DOXと略される)及びIUPAC名(RS)-2-[4-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル]-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン(分子式: C23H25N5O5、分子量: 451.475g/mol)を有する以下の分子を指す:
【化1】
【0267】
本発明は、ドキサゾシンの同位体標識化合物、又はその光学異性体、幾何異性体、互変異性体、もしくは異性体の混合物、又はそのプロドラッグ(すなわち、上記の分子がインビボ反応によって得られる化合物)も含む。
【0268】
ドキサゾシンは、血管平滑筋細胞膜上のα1受容体へのノルエピネフリン(交感神経終末から放出される)の結合を阻害する選択的α1受容体拮抗薬であり、本態性高血圧症を治療するために使用されることが多い。
【0269】
本発明の医薬組成物は、ドキサゾシン又はその医薬として許容し得る塩を活性成分として含有することができる。ある実施態様において、ドキサゾシンの塩形態は、メタンスルホン酸塩である。
【0270】
本明細書で使用される「プラミペキソール」という用語は、英語名Pramipexole(PMPと略される)及びIUPAC名(S)-N6-プロピル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2,6-ジアミン(分子式: C10H17N3S、分子量: 211.324g/mol)を有する以下の分子を指す:
【化2】
【0271】
本発明は、プラミペキソールの同位体標識化合物、又はその光学異性体、幾何異性体、互変異性体、もしくは異性体の混合物、又はそのプロドラッグ(すなわち、上記の分子がインビボ反応によって得られる化合物)も含む。
【0272】
プラミペキソールは、ドーパミン受容体D2/D3作動薬として作用する抗ヒスタミン薬であり、主に、単独で(レボドパなしで)又はレボドパと組み合わせて、パーキンソン病の治療に臨床的に使用される。プラミペキソールは、「ミラペックス」、「ミラペキシン」、「シフロール」などと呼ばれることもある。
【0273】
本発明の医薬組成物は、プラミペキソール又はその医薬として許容し得る塩を活性成分として含有することができる。ある実施態様において、プラミペキソールの塩形態は、塩酸塩である。ある実施態様において、本発明は、プラミペキソールの二塩酸塩を含む。ある実施態様において、本発明は、プラミペキソール水和物の形態を含む。ある実施態様において、本発明は、プラミペキソールの一水和物を含む。
【0274】
本明細書で使用される「メトプロロール」という用語は、英語名Metoprolol(MTPと略される)及びIUPAC名(RS)-1-[4-(2-メトキシエチル)フェノキシ]-3-[(プロパ-2-イル)アミノ]プロパ-2-オール(分子式: C15H25NO3、分子量: 267.37 g/mol)を有する以下の分子を指す:
【化3】
【0275】
本発明は、メトプロロールの同位体標識化合物、又はその光学異性体、幾何異性体、互変異性体、もしくは異性体の混合物、又はそのプロドラッグ(すなわち、上記の分子がインビボ反応によって得られる化合物)も含む。
【0276】
メトプロロールは、高血圧症及び狭心症の治療に一般的に使用される選択的アドレナリン作動性β1受容体遮断薬である。本発明の医薬組成物は、メトプロロール又はその医薬として許容し得る塩を活性成分として含有することができる。ある実施態様において、メトプロロールの塩形態は、酒石酸塩である。
【0277】
本発明の組成物に含まれる活性成分(ドキサゾシン、プラミペキソール、及びメトプロロール)は、それらの医薬として許容し得る塩に置き換えられてもよい。化合物の「医薬として許容し得る塩」という用語は、医薬として許容され、かつ親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。本明細書で使用される医薬として許容し得る塩は、医薬として許容し得る酸又は塩基とともに形成される塩である。医薬として許容し得る酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、ピロリン酸、臭化水素酸、又は硝酸などの無機酸、及びクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ベンゼンスルホン酸、又はp-トルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。医薬として許容し得る塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム又はカリウム)及びアルカリ土類金属(例えば、カルシウム又はマグネシウム)の水酸化物、並びにアルキルアミン、アリールアミン、又はヘテロ環式アミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0278】
医薬として許容し得る塩は、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から従来の化学的方法によって合成することができる。典型的には、これらの塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、水中又は有機溶媒中又はこれら2つの混合物中で、化学量論的量の好適な塩基又は酸と反応させることにより調製することができる。通常、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。塩のリストは、レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版(Mack Publishing Company, 1990)に見出すことができる。例えば、塩としては、本発明の化合物の塩酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0279】
本発明の医薬組成物中のドキサゾシン(又はその医薬として許容し得る塩)、プラミペキソール(又はその医薬として許容し得る塩)、及びメトプロロール(又はその医薬として許容し得る塩)の含有量は、実際の必要に応じて調整することができる。例えば、医薬組成物中の各々の薬物の含有量又は比率は、医薬組成物の投与様式(経口又は注射など)に応じて変化させることができる。
【0280】
本出願の医薬組成物において、ドキサゾシン又はその医薬として許容し得る塩の重量を基準(=1)として使用する場合、メトプロロール又はその医薬として許容し得る塩とドキサゾシン又はその医薬として許容し得る塩との重量比は、通常、0.3:1~400:1の範囲であり、例えば、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、12.5:1、又は15:1以上、好ましくは、1:1、1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、12.5:1、又は15:1以上であってもよく、かつ350:1、300:1、250:1、200:1、150:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、又は20:1以下、好ましくは、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、又は20:1以下であってもよく;同様に、ドキサゾシン又はその医薬として許容し得る塩の重量を基準(=1)として使用する場合、プラミペキソール又はその医薬として許容し得る塩とドキサゾシン又はその医薬として許容し得る塩との重量比は、通常、0.003:1~10:1の範囲であり、例えば、0.004:1、0.005:1、0.006:1、0.007:1、0.008:1、0.009:1、0.01:1、0.015:1、0.02:1、0.03:1、0.04:1、0.05:1、0.06:1、0.07:1、0.08:1、0.1:1、又は0.2:1以上、好ましくは、0.005:1、0.006:1、0.007:1、0.008:1、0.009:1、0.01:1、0.015:1、0.02:1、0.03:1、0.04:1、0.05:1、0.06:1、0.07:1、0.08:1、又は0.1:1以上であってもよく、かつ9:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、0.9:1、0.6:1、0.5:1、0.4:1、又は0.3:1以下、好ましくは、1:1、0.9:1、0.6:1、0.5:1、又は0.4:1以下であってもよい。
【0281】
(3.医薬剤形)
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物は、原薬(例えば、均質な混合物又は各々の成分の個別のパッケージ)の形態で提供することができる。他の実施態様において、本発明の医薬組成物は、所望に応じて医薬として許容し得る担体を添加することにより、様々な医薬剤形(製剤)に製剤化することができる。この目的のために、様々な液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料を「医薬として許容し得る担体」として使用することができる。本出願において、「医薬として許容し得る」という語句は、合理的な医学的判断の範囲内で、本明細書中の組成物の他の成分と適合性があり、かつ過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒト及び動物の組織と接触させるのに好適である化合物、組成物、ポリマー、及び他の材料を指す。ある好ましい実施態様において、医薬として許容し得る担体は、発熱物質を含まない。医薬として許容し得る担体として使用され得る材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)マルトデキストリン;(6)ゼラチン;(7)タルク粉末;(8)ココアバター及び坐剤ワックスなどの補助材料;(9)ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのジオール;(11)グリセロール、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)非発熱性水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エタノール;(20)リン酸緩衝溶液;及び(21)医薬調製物中で使用される他の非毒性の適合物質:が挙げられる。
【0282】
本発明の医薬組成物は、必要に応じて、経口投与、非経口投与(皮下、筋肉、皮質、及び静脈内投与を含む)、気管支投与、鼻投与などに好適な剤形に製剤化することができる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与に好適な剤形(製剤)に製剤化される。
【0283】
固体担体を使用する場合、調製物は、錠剤の形態、硬質ゲルカプセル中の粉末もしくは顆粒の形態、又は糖ロゼンジもしくはインゴットの形態であることができる。固体担体としては、接着剤、充填剤、錠剤滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの従来の賦形剤を挙げることができる。必要な場合、錠剤は、従来の技法によってコーティングすることができる。液体担体を使用する場合、調製物は、シロップ、エマルジョン、軟質ゲルカプセル、注射用滅菌担体、水性もしくは非水性液体懸濁液の形態であってもよく、又は使用前に水もしくは他の好適な担体で復元された乾燥品あることができる。液体調製物は、懸濁化剤、乳化剤、湿潤剤、非水性担体(食用油を含む)、防腐剤、並びに着香剤及び/又は着色剤などの従来の添加剤を含むことができる。非経口投与の場合、担体は、通常、少なくとも大部分の滅菌水を含むが、生理食塩水溶液、グルコース溶液などを使用することもできる。注射用懸濁液を使用することもでき、そのような場合には、従来の懸濁化剤を使用することができる。従来の防腐剤、緩衝剤試薬などを非経口剤形に添加することもできる。
【0284】
非経口注射に好適な剤形としては、生理的に許容し得る滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液、又はエマルジョン、及び滅菌注射溶液又は分散液用の滅菌粉末を挙げることができる。好適な水性及び非水性担体、希釈剤、及び溶媒の例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、これらの好適な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、並びに注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。
【0285】
これらの医薬剤形は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などの、様々な賦形剤を含有することもできる。微生物の影響の阻害は、種々の抗微生物剤及び抗真菌剤(例えば、p-ヒドロキシベンゾエート、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって保証することができる。砂糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることもできる。注射用医薬剤形の吸収は、吸収遅延試薬(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゲル)を使用することにより延長することができる。
【0286】
本発明はまた、好適な量の化合物又はその医薬として許容し得る塩を含有する単位剤形、例えば、錠剤、カプセル、丸薬、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液又は懸濁液、並びに経口溶液又は懸濁液、及び油-水エマルジョンで、ヒト及び動物に投与するための医薬組成物を提供する。医薬として治療活性のある化合物及びその塩は、単位用量形態又は複数用量形態で製剤化及び投与される。本発明で使用される単位用量は、当技術分野で公知である、ヒト及び動物対象に好適で、かつ独立して包装された物理的に独立した単位を指す。各々の単位用量は、所望の薬物担体、担体、又は希釈剤と関連して、所望の治療効果をもたらすのに十分な所定数の治療活性化合物を含有する。単位用量形態の例としては、アンプル及びシリンジ、並びに個々に包装された錠剤又はカプセルが挙げられる。単位用量形態は、小分けして又は複数回に分けて投与してもよい。多用量形態は、別々の単位用量形態で投与されるように単一の容器に包装された複数の同一の単位用量形態である。多用量形態の例としては、バイアル、錠剤、もしくはカプセル、又はパイントもしくはガロンボトルが挙げられる。それゆえ、多用量形態は、包装中で分離されていない複数の単位用量である。
【0287】
ある実施態様において、医薬組成物は、長時間作用型調製物である。ある実施態様において、長時間作用型調製物は、持続放出製品であってもよい。持続放出製品の好適な例としては、本発明で提供される化合物を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、フィルム又はマイクロカプセルなどの有体物の形態である。持続放出マトリックスの例としては、イオン性電気浸透パッチ、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニル-エチルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロレリンからなる注射用マイクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸などのポリマーは、100日よりも長い分子の放出を可能にし、一部のハイドロゲルは、比較的短期間、タンパク質を放出する。カプセル化された化合物が長期間インビボに留まると、該化合物は、37℃の湿潤環境への曝露の結果として、変性又は凝集し、結果として、生物活性が失われ、その構造が変化する可能性がある。関与するメカニズムに応じて、合理的な戦略を安定性のために設計することができる。例えば、凝集機構がチオジスルフィド交換の分子間S-S結合によって形成されることが分かった場合、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、含水率を制御し、適切な添加剤を利用し、及び特殊なポリマーマトリックス組成物を開発することにより、安定化を達成することができる。ある実施態様において、医薬組成物は、長時間作用型の経口調製物である。
【0288】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、及び顆粒が挙げられる。そのような固形剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性賦形剤(又は担体)(例えば、クエン酸ナトリウム又は第二リン酸カルシウム)と混合され、以下のもの:(a)充填剤又は配合剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸);(b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゲル、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアラビアゴム);(c)保湿剤(例えば、グリセリン);(d)崩壊剤(例えば、寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はキャッサバデンプン、アルギン酸、特定の合成ケイ酸塩、炭酸ナトリウム);(e)溶液遮断剤(例えば、パラフィンワックス);(f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);(g)湿潤剤(例えば、ヘキサデカノール及びグリセロールモノステアレート);(h)吸着剤(例えば、カオリン及びベントナイト)、並びに(i)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、又はこれらの混合物が含まれてもよい。
【0289】
例えば、ラクトース、高分子量ポリエチレングリコールなどを賦形剤として用いて、同様のタイプの固形組成物を軟質充填及び硬質充填ゲルカプセルの充填剤として使用することもできる。
【0290】
固形剤形(例えば、錠剤、糖衣丸薬、カプセル、丸薬、及び顆粒)は、コーティング及びシェル(例えば、腸管コーティング及び当技術分野で公知の他のもの)を用いて調製することができる。これらは、遮光剤を含有していてもよく、また、腸管の一部で遅延した様式で放出される活性化合物又は様々な活性化合物の組成物であってもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。活性成分はまた、マイクロカプセル化された形態であってもよく、適切な場合、上記の賦形剤のうちの1つ又は複数を有していてもよい。
【0291】
経口投与用の液体剤形としては、医薬として許容し得るエマルジョン、溶液、分散液、シロップ、及びエリキシルが挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、不活性希釈剤(例えば、水又は他の溶媒)、可溶化剤及び乳化剤(例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミド)、油(具体的には、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフランアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、又は当技術分野で一般的に使用されるこれらの物質の混合物を含むことができる。
【0292】
これらの不活性希釈剤に加えて、医薬剤形は、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、芳香剤(fragrance agent)、着香剤、及び芳香剤(aromatizing agent)を含むことができる。
【0293】
活性化合物に加えて、懸濁液は、エトキシル化イソオクタデカノール、ポリエチレンオキシドソルビトール、ソルビタンエステル、微結晶繊維、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天-寒天、アストラガルスガム、又はこれらの物質の混合物などの懸濁化剤を含有していてもよい。
【0294】
本発明の医薬剤形としては、軟膏、粉末、スプレー、及び吸入剤を挙げることもできる。活性成分は、滅菌条件下で、生理的に許容し得る担体及び任意の所望の防腐剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合される。
【0295】
医薬組成物及び医薬剤形中の活性成分の量は、所望に応じて、当業者によって適切に決定されることができ、例えば、各々の活性成分は、典型的には、治療有効量で医薬組成物又は剤形中に存在する。
【0296】
例えば、本発明の医薬組成物は、経口剤形(好ましくは、1日1回、2回、3回、もしくは4回の経口剤形)、静脈内剤形、皮下剤形、又は筋肉内剤形に製剤化することができる。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、長時間作用型の経口調製物として製剤化される。
【0297】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与剤形である。本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、1日1回、2回、3回、又は4回の経口投与用の剤形である。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、長時間作用型の持続放出経口調製物である。
【0298】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与剤形である。本発明のさらに好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、1日1回の経口剤形である。
【0299】
(4.投与様式)
本発明の治療方法は、「組合せ療法」又は「組合せ治療」としても知られる、複数の活性成分の組合せ投与を含む。「組合せ投与」又は「組合せ療法」は、本発明の様々な活性成分が有益な効果を提供するように一緒に作用するような該活性成分の投与を意味する。組合せの有益な効果は、活性成分の組合せによって生じる薬物動態学的側面又は薬力学的側面の組合せ効果を含むが、これらに限定されない。これらの活性成分の組合せ投与は、通常、指定された期間(通常、医師の判断によって、数分、数時間、数日、又は数週間)をかけて完了される。「組合せ投与」又は「組合せ療法」は、活性成分を逐次に投与すること、すなわち、活性成分の各々を異なる時点で投与することを含むこと、及び活性成分を実質的に同時に投与すること、又は活性成分の少なくとも2つを投与することも含むことが意図される。実質的に同時の投与は、例えば、一定の比率の各々の活性成分を含有する単一のカプセルを宿主に投与するか、又は各々の活性成分の1つを含有する複数のカプセルを宿主に投与することにより達成することができる。各々の活性成分の逐次的な又は実質的に同時の投与は、限定されないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、眼内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収を含む、任意の好適な経路によって影響され得る。活性成分は、同じ経路によって又は異なる経路によって投与することができる。例えば、選択された組合せ中の第一の活性成分を静脈内注射で投与することができ、一方、組合せ中の他の活性成分を経口投与することができる。或いは、例えば、全ての活性成分を経口投与することができ、又は全ての活性成分を静脈内投与することができる。これらの活性成分の投与順序は、厳密には限定されない。
【0300】
「組合せ投与」又は「組合せ療法」は、他の生物学的活性成分及び非薬物療法(例えば、外科的又は機械的療法)と組み合わせた上記の活性成分のさらなる投与も含む。組合せ療法が非薬物療法をさらに含む場合、活性成分と非薬物療法の組合せ作用によって生じる有益な効果がもたらされる限り、非薬物療法を任意の適切な時点で実施することができる。例えば、適切な場合、非薬物治療を一時的に中止した後でも活性成分の投与から有益な効果を得ることができ、ここで、中止は、数日間、又は数週間でさえあってもよい。
【0301】
所望の効果を達成するために、通常、治療有効量の本発明の医薬組成物もしくは剤形又は個々の活性成分を対象に投与することが必要である。
【0302】
ある実施態様において、本発明の方法は、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態と組み合わせて、さらに治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態と組み合わせて、対象に投与することを含む。
【0303】
ある実施態様において、本発明の方法は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を同時に投与することを含む。
【0304】
ある実施態様において、本発明の方法は、対象に、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態を別々に投与することを含む。
【0305】
本発明のいくつかの実施態様において、体重約60kgの正常な成人に対して、本発明の医薬剤形又は医薬組成物を経口投与する場合、ドキサゾシンの日用量範囲は、0.4mg~16mg、例えば、0.4mg~15mg、0.4mg~13mg、0.4mg~12mg、0.4mg~10mg、0.4mg~8mg、0.4mg~6mg、0.4mg~5mg、0.4mg~4mg、0.5mg~16mg、0.5mg~15mg、0.5mg~13mg、0.5mg~12mg、0.5mg~10mg、0.5mg~8mg、0.5mg~6mg、0.5mg~5mg、0.5mg~4mg、1mg~15mg、1mg~13mg、1mg~12mg、1mg~10mg、1mg~8mg、1mg~6mg、1mg~5mg、1mg~4mg、1.5mg~16mg、1.5mg~15mg、1.5mg~13mg、1.5mg~12mg、1.5mg~10mg、1.5mg~8mg、1.5mg~6mg、1.5mg~5mg、1.5mg~4mg、2mg~16mg、2mg~15mg、2mg~13mg、2mg~12mg、2mg~10mg、2mg~8mg、2mg~6mg、2mg~5mg、2mg~4mgなどである。本発明の好ましい実施態様において、ドキサゾシンの日用量は、約2mgであり得る。本発明の別の好ましい実施態様において、ドキサゾシンの日用量は、約8mgである。
【0306】
本発明のいくつかの実施態様において、体重約60kgの正常な成人に対して、本発明の医薬剤形又は医薬組成物を経口投与する場合、プラミペキソールの日用量範囲は、0.03mg~4.5mg、例えば、0.03mg~4.2mg、0.03mg~4mg、0.03mg~3.5mg、0.03mg~3mg、0.03mg~2.5mg、0.03mg~2mg、0.03mg~1.5mg、0.03mg~1mg、0.05mg~4.5mg、0.05mg~4.2mg、0.05mg~4mg、0.05mg~3.5mg、0.05mg~3mg、0.05mg~2.5mg、0.05mg~2mg、0.05mg~1.5mg、0.05mg~1mg、0.1mg~4.5mg、0.1mg~4.2mg、0.1mg~4mg、0.1mg~3.5mg、0.1mg~3mg、0.1mg~2.5mg、0.1mg~2mg、0.1mg~1.5mg、0.1mg~1mg、0.2mg~4.5 mg、0.2~4.2mg、0.2mg~4mg、0.2mg~3.5mg、0.2mg~3mg、0.2mg~2.5mg、0.2mg~2 mg、0.2~1.5mg、0.2mg~1.0mg、0.5mg~4.5mg、0.5mg~4.2mg、0.5mg~4mg、0.5mg~3.5mg、0.5mg~3mg、0.5mg~2.5mg、0.5mg~2mg、0.5mg~1.5mg、0.5mg~1mg、1mg~4mg、1mg~3mg、1mg~2.5mgなどである。本発明の好ましい実施態様において、プラミペキソールの日用量は、約0.0625mgである。本発明の別の好ましい実施態様において、プラミペキソールの日用量は、約0.125mgである。
【0307】
メトプロロールの日用量範囲は、2mg~200mg、例えば、2.5mg~200mg、例えば、5mg~200mg、好ましくは、5mg~100mgであり得る。本発明のいくつかの実施態様において、体重約60kgの正常な成人に対して、本発明の医薬剤形又は医薬組成物を経口投与する場合、メトプロロールの日用量範囲は、2mg~180mg、2mg~160mg、2mg~150mg、2mg~130mg、2mg~120mg、2mg~100mg、2mg~80mg、2mg~60mg、2mg~50mg、2mg~40mg、5mg~180mg、5mg~160mg、5mg~150mg、5mg~130mg、5mg~120mg、5mg~100mg、5mg~80mg、5mg~60mg、5mg~50mg、5mg~40mg、10mg~180mg、10mg~160mg、10mg~150mg、10mg~130mg、10mg~120mg、10mg~100mg、10mg~80mg、10mg~60mg、10mg~50mg、10mg~40mg、15mg~200mg、15mg~180mg、15mg~160mg、15mg~150mg、15mg~130mg、15mg~120mg、15mg~100mg、15mg~80mg、15mg~60mg、20mg~200mg、20mg~180mg、20mg~160mg、20mg~150mg、20mg~130mg、20mg~120mg、20mg~100mg、20mg~80mg、20mg~60mgなどであり得る。本発明の好ましい実施態様において、メトプロロールの日用量範囲は、10mg~100mgである。本発明の別の好ましい実施態様において、メトプロロールの日用量は、約20mgである。本発明の別の好ましい実施態様において、メトプロロールの日用量は、約100mgである。
【0308】
上記の日用量は、周期的かつ連続的に、例えば、2時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、又は約24時間毎に1回投与することができる。好ましくは、日用量は、対象に、1日に1回、2回、3回、もしくは4回、又は持続放出錠剤として投与することができる。上記3つの活性成分の1日経口用量は全く異なり、これは、各々の活性成分のインビボでの薬物動態によって決定される。
【0309】
ある実施態様において、治療有効量のドキサゾシン、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、治療有効量のプラミペキソール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態、及び治療有効量のメトプロロール、医薬として許容し得る塩又はその許容し得る形態は、1日1回、2回、3回、又は4回の頻度で対象に投与される。
【0310】
本発明の医薬組成物を、点滴、筋肉内注射などに好適な他の剤形に製剤化する場合、各々の活性成分の用量範囲は、上で与えられた経口用量範囲とは異なっていてもよく、これは、インビボ及びインビトロの実験と併せ、様々な投与経路の異なる薬物動態学的特性を考慮して、当業者又は医師が合理的に決定できることが当業者によって理解されるであろう。
【0311】
(5.対象)
本発明の好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、哺乳動物、霊長類対象、及び特に、ヒト対象において使用される。
【0312】
過去数十年にわたり、神経保護は、1,000を超える細胞実験及び虚血再灌流ラット/マウスモデルなどの齧歯類において有効であることが証明されてきたが、主に小動物の脳とヒトの脳と間の解剖学的構造の違いのために、臨床試験では効果がなく、成功しなかった(Cook DJ、Teves L、Tymianski Mの文献、しわのある霊長類脳におけるPSD-95阻害剤を用いた脳卒中の治療(Treatment of stroke with a PSD-95 inhibitor in the gyrencephalic primate brain). Nature. 2012 Feb 29; 483(7388):213-7.)。
【0313】
本発明の実施例では、アカゲザルにおける90分の中大脳動脈閉塞(MCAO)再灌流モデルを用いて、組成物の神経障害調節効果及び保護効果、特に、脳卒中に対する治療効果を評価する。霊長類モデルとして、MCAOアカゲザルモデルには、以下の利点がある:
(1)アカゲザルは、明白な脳溝を有し、その脳容積と構造は、ヒトの皮質、皮質下部、及び白質の解剖学的構造と類似しており、これらは、標準化された検査によって、認知障害、運動障害、及び感覚障害について評価することができる。
(2)アカゲザルは、長期間生存することができ、複数回の動的MRI検査を受けることができる。脳卒中後の虚血、浮腫、及び壊死などの脳の変性と壊死の軌跡を、再灌流後3~4時間、72~75時間、7日目、14日目、及び28日目に動的に観察する。MRIの撮像シーケンスには、T1WI、T2FLAIR、DWI、MRA、及びDSCが含まれる。これらの中で、T1WIは、脳の解剖学的構造を示すこと、灰白質領域と白質領域を区別すること、出血と虚血を診断することなどができ、T2 FLAIR及びDWIは、浮腫/壊死容積を定量することができ、T2 FLAIRは、組織内の水分含量の増加を示唆することができ、炎症、虚血、浮腫、及び他の病変を示すために使用される。脳梗塞後、炎症反応が直ちに起こり、それに伴って、水分含量が増加する。それゆえ、T2 FLAIRの異常な高シグナルは、脳梗塞及び炎症の存在を示す。DSCは、急性虚血性脳卒中後の脳組織灌流状態及び脳虚血領域に対する感受性応答を示すことができ、脳組織の虚血コア領域の容積を定量的に評価することができる。MRIは、虚血性ペナンブラ範囲及び浮腫/梗塞容積を定量することができ、その結果は、高い一貫性をもって、ヒトに適用することができる。
(3)前循環大血管の中大脳動脈は、ヒトの虚血性脳卒中が頻繁に発生する部位である。本発明では、アカゲザルの90分のMCAO再灌流モデルが使用され、M1セグメントが閉塞部位として選択される。モデル動物は、浮腫のピーク時に半球の約40%の浮腫/梗塞容積を示し、顕著な正中線シフトを示す。そのような重篤な脳浮腫/脳梗塞モデルを用いて神経障害に対する調節効果を評価する慣例は、より多くの臨床患者に使用されるように変えることができる。再灌流から3~4時間後のMRAスキャンは、血管が再灌流されているかどうか及び側副血行が形成されているかどうかを正確に示すことができる。さらに、DWI画像は、臨床患者のものと同様の中大脳動脈の虚血性梗塞病変及び定量的な浮腫容積を示す。これは、モデルの成功の基準として使用され、モデルのばらつきを低下させることができる。
(4)本研究では、非ヒト霊長類脳卒中スケール(NHPSS)がアカゲザルの神経学的欠損を定量化するために使用される。NHPSSは、米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)に類似したスコアの組合せである。
【0314】
本発明の実施例では、組成物の神経障害調節効果を評価するために、アカゲザルの180分の中大脳動脈閉塞(MCAO)再灌流モデルが使用される。180分のMCAO再灌流モデルは、組成物の神経保護効果を評価し、認知機能を予防及び改善するための認知機能不全モデルとして使用することができる。上述の90分のMCAO再灌流モデルの利点に加えて、180分のMCAO再灌流モデルは、ベースライン時(すなわち、群分け及び薬物投与前)に、90分のMCAO再灌流モデルよりも広範囲の浮腫/梗塞を形成することができる。このモデル動物は、長期にわたる明白な認知低下をもたらし得る浮腫のピーク時に半球の約70%を占める浮腫/梗塞容積を示し、認知機能の予防及び改善における神経保護剤の有効性を評価するために使用することができる。以下に記載される本発明の180分のMCAO再灌流モデルの実施例では、学習及び記憶能力、視空間能力、並びに理解及び判断能力を含む、サルの認知機能が空間的遅延応答試験によっても評価される。
【0315】
アカゲザルの汎網膜虚血/再灌流傷害モデルは、ヒトのI/R傷害、特に、網膜神経血管単位の神経変性傷害における機序及び治療戦略に対する重要な洞察を提供する。本発明の実施例では、アカゲザルの汎網膜虚血/再灌流傷害モデルが使用される。現在、一般的に使用されているモデルは、ラット/マウスの急性眼内圧(IOP)上昇再灌流モデルであるが、霊長類モデルの利点は、(1)重要な損傷部位である黄斑がアカゲザルに存在すること;(2)網膜血管パターン:アカゲザルの網膜血管の形態はヒトのものと同じである;及び(3)アカゲザルは眼が大きく、前房と硝子体の容積がヒトの眼の容積に近く、そのため、新たな介入をヒトに適用する機会をさらに提供することにある(Pasquale, L. R.らの文献、華南のアカゲザルコロニーにおける原発開放隅角緑内障様特徴の流行(The Prevalence of Primary Open-Angle Glaucoma-Like Features in a Rhesus Macaque Colony from Southern China). Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 61, 1436-1436(2020); Morgan, J. E.の文献、緑内障における視神経頭部構造:軸索損傷のメディエーターとしてのアストロサイト(Optic nerve head structure in glaucoma: Astrocytes as mediators of axonal damage). Eye 14, 437-444(2000); Tang, Y.らの文献、CSF-1受容体抗体による網膜免疫微小環境の治療的標的化は虚血性視神経症後の視機能回復を促進する(Therapeutic Targeting of Retinal Immune Microenvironment With CSF-1 Receptor Antibody Promotes Visual Function Recovery After Ischemic Optic Neuropathy). Front. Immunol. 11, 585918(2020)).
【0316】
それゆえ、本発明では、アカゲザルの汎網膜虚血/再灌流傷害モデルを用いて、I/R傷害後の網膜神経細胞のアポトーシス及び網膜変性の軌跡を調べ、眼底撮影(FP)と光干渉断層撮影(OCT)により、網膜厚及び網膜神経線維層(RNFL)の変化を含む、アカゲザルのI/R傷害後7日目(D7)、21日目(D21)、35日目(D35)、及び63日目(D63)の網膜構造に対する効果を定量的かつ動的に評価し、フラッシュ視覚誘発電位(FVEP)及び全視野網膜電図(FERG)により、視神経伝導機能及び全体的な網膜機能を動的に評価すると同時に、組成物が、RGC細胞のアポトーシス、網膜グリオーシス、及び炎症を阻害して、I/R後の網膜機能の喪失を予防することができるかどうかを評価する。
【0317】
本発明の実施例では、末梢神経障害に対する組成物の有効性及び安全な許容範囲を評価するために、自然発症糖尿病性DPNアカゲザルモデルも使用される。霊長類モデルは、アカゲザルが、生理学、生化学、及びシステム生物学において、ヒトとよく似ているという利点を有し、自然発症DPNアカゲザルの疾患の特徴は、臨床ヒトDPN患者のものとよく似ていることが分かっている。1989年に、Cornblathら(Cornblath D R、Hillman M A、Striffler J Sらの文献、糖尿病サルの末梢神経障害(Peripheral neuropathy in diabetic monkeys) [J]. Diabetes, 1989, 38(11):1365-1370.; Cornblath D R、Dellon A L、Mackinnon S E.の文献、アカゲザルの自然発症糖尿病:神経生理学的研究(Spontaneous diabetes mellitus in a rhesus monkey: Neurophysiological studies) [J]. Muscle & Nerve, 1989, 12(3):233-235.)は、自然発症糖尿病性DPNアカゲザルモデルが、非糖尿病アカゲザルと比較して、運動及び感覚神経伝導速度の顕著な低下を示し、その病因及び臨床的特徴がヒト患者のものと類似していることを報告している。さらに、現在の研究で一般的に使用されているDPN動物モデルのほとんどは齧歯類であり、例えば、虚血再灌流、神経切離、STZ(ストレプトゾトシン)誘導単独、トランスジェニック技術などを用いて、種々のラット及びマウスのモデルが作製されている。しかしながら、DPNの病因は多くの段階を含む複雑なものであるので、これらの動物モデルにおける神経機能の障害が患者のDPNの経過を正確に反映することは困難である。それゆえ、自然発症糖尿病性DPNアカゲザルモデルは、DPN研究及び新薬開発のための重要な研究手段を提供し、他の動物モデルよりも正確な結論を提供することができる。
【0318】
当業者は、本明細書に記載される本発明の様々な態様を、本出願の主題及び思想から逸脱することなく、当業者に明らかなように、様々な様式で別々に組み合わせることができることを理解するであろう。この組合せも本出願の範囲に含まれる。例えば、本発明に関与する特定の成分の量の範囲は、本明細書で言及された任意の下限と任意の上限との任意の組合せを含み、かつ各々の具体例における成分の特定の含有量によって形成される任意の範囲も上限又は下限の組合せとして含み;これらの範囲は全て、本発明の範囲に包含される。さらに、本明細書に記載される本発明の特徴の各々は、本発明の他の任意の特徴と組み合わせることができ、そのような組合せも本発明の開示の範囲内である。本出願の具体的な実施例は、添付の図面を参照して、以下で詳細に説明されている。
【実施例
【0319】
(実施例)
(1.実施例1)
本発明者らは、アカゲザルの90分の中大脳動脈虚血再灌流モデルを用いて、脳卒中後の浮腫/梗塞容積の低下及び神経学的欠損の改善に対する効果を含む、中枢神経障害、特に、虚血性脳卒中に対するドキサゾシン(DOX)、プラミペキソール(PMP)、及びメトプロロール(MTP)の組合せの予防、治療、及び/又は改善効果を評価した。評価指標は、以下を含む:
(1)3.0T GE MRIを用いて、再灌流後3~4時間、72~75時間、7日目、14日目、及び28日目の浮腫/梗塞の軌跡を動的に観察する。MRIの撮像シーケンスには、T1WI、T2 FLAIR、DWI、MRA、及びCTAが含まれる。これらの中で、T1WIは、脳の解剖学的構造を示すこと、灰白質領域と白質領域を区別すること、出血と虚血を診断することなどができ、T2 FLAIR及びDWIは、浮腫/壊死容積を定量することができ、T2 FLAIRは、組織内の水分含量の増加を示唆することができ、炎症、虚血、浮腫、及び他の病変を示すために使用される。
(2)脳卒中から3~4時間後のMRA及びCTAスキャンは、血管が再灌流されているかどうか及び側副血行が形成されているかどうかを正確に示すことができる。さらに、DWI画像は、臨床患者のものと同様の中大脳動脈の虚血性梗塞病変及び定量的な浮腫容積を示す。これらは、モデル成功の基準として使用され、モデルのばらつきを低下させることができる。組成物を脳卒中から5時間後に投与する設計は、予防的投与よりも良好に臨床診察へと転換することができる。
【0320】
(1.1 実験材料)
試験製品1:
名称又は略称(英語名):メシル酸ドキサゾシン(DOX)
純度: 99.6%HPLC
Zhejiang Xinsaike Pharmaceutical Co., Ltd製
試験製品2:
名称又は略称(英語名): Pramipexole 2HCL Monohydrate(PMP)
純度: 99.55%HPLC
Shanghai Ziqi Biotechnology Co., Ltd製
試験製品3
名称又は略称(英語名):メトプロロール酒石酸塩(MTP)
純度: 100%HPLC
Sun Pharmaceutical Industries Ltd., India製
【0321】
(1.2 具体的な実験スキーム)
(1.2.1 実験動物)
12匹の5~7歳の健康なアカゲザルを選択した。アカゲザル(Macaca mulatta)(アカゲザル(Rhesus Macaque))は、一般グレード、体重:6~9kgで、Primed Primate Research Centerより提供された。
【0322】
試験期間中の給餌環境:通常グレード。温度: 18~26℃。相対湿度: 40%~70%。換気: 100%新鮮な空気を用いて、1時間に8回以上の空気交換(空気循環なし)。照明時間:自動照明、12時間毎に明暗を交互に繰り返す。動物ケージ: 850*900*2365mmの二重層ステンレス製ケージ。給餌密度: 1ケージに1匹。全ての操作は、Primed Primate Research CenterのIACUC委員会による審査及び承認を受けていた。
【0323】
(1.2.2 アカゲザルの90分の中大脳動脈閉塞(MCAO)再灌流モデルの作成)
アカゲザルMCAOモデルを開頭手術によって作成した(図1及び図2)。サルを手術前の少なくとも8時間絶食させたが、水を飲むことはでき、10mg/kgのプロポフォール及び2%のイソフルランで麻酔した後、その頭部を剃毛し、手術領域の皮膚を滅菌した。動物を恒温手術用ベッドに仰向けに寝かせた。皮膚を右頭頂部から耳にかけて切開して、頭蓋骨を露出させた。頭蓋骨に電動ドリルで穴を開け、4×5cmのサイズの骨フラップを骨鉗子で取り除いて、硬膜を露出させた。硬膜を切開した後、中大脳動脈を手術用顕微鏡下で脳の外側溝に沿って探し、中大脳動脈のM1遠位端とM2枝を決定し、そこで、中大脳動脈を動脈瘤クリップで90分間結紮し、その後、動脈瘤クリップを取り外し、再灌流のために血液供給を回復させた。硬膜、筋肉、及び皮膚を縫合し、滅菌した。
【0324】
脳の磁気共鳴血管造影(MRA)及びCT血管造影(CTA)をMCAOから3~4時間後(再灌流後)のアカゲザルで実施した。アカゲザルの中大脳動脈が再灌流されているかどうかは、血管造影画像によって判定した。図2A及び図2Cに示すように、両側中大脳動脈が明白に視認でき、再灌流が成功していると判定された(図3を参照)。図2B及び図2Dに示すように、対側と比較して、手術側の中大脳動脈は、視認できなかった。そして、再灌流は形成されていないと判定された。さらに、再灌流から3~4時間後のDWI画像を図3Cに示し、臨床患者の中大脳動脈の虚血性梗塞と類似した、右前頭葉、頭頂葉、及び側頭葉における異常な高シグナルを示した。この実施例で選択された12匹の動物は、アカゲザルの90分のMCAO閉塞後の再灌流によって形成されたものである。
【0325】
(1.2.3 群分け及び薬物投与)
90分の閉塞後の再灌流によって形成された12匹のアカゲザルモデル動物を、再灌流から3~4時間後の浮腫容積について、DWIにより定量し、群分けした。DWIは、水分子の拡散特性を反映することができる唯一の画像法である。その高シグナルは、水分子の拡散移動が制限されている梗塞領域を反映し、変化は、虚血からわずか2時間後に生じる場合があり、T2イメージングによって発見することができない初期の脳浮腫を発見することができる。それゆえ、DWIによる浮腫/梗塞領域容積の定量が群分けの基礎となる。12匹のMCAOアカゲザルをモデル対照群(6匹)とDOX+PMP+MTP群(6匹)に分けた。これら2つの群のDWIによって定量された浮腫/梗塞領域の平均容積は、8.98±1.14cm3と8.17±0.85cm3であった。これら2つの群の間に統計学的な差はなかった。結果を図3に示した。
【0326】
投与群の動物に、脳卒中から約5時間後(すなわち、動脈の動脈瘤結紮を実施する時点を脳卒中発作の時点とする)に経口投与し、間隔を空けて1日に2~4回、28日間連日投与した。以下を、各々の投与の投薬量及び様式とした:
モデル対照群:空のカプセルを投与。
DOX+PMP+MTP処置群: DOX: 0.266mg/kg~0.532mg/kg; PMP: 0.002~0.004mg/kg; MTP: 1.667mg/kg。
【0327】
(1.2.4 試験手順)
MRIスキャンを、MCAO再灌流後3~4時間、72~75時間、7日目、14日目、及び28日目に実施して、脳浮腫/脳梗塞容積を測定し、神経行動スコアリング(NHPSS)を実施した。具体的な実験設計を図4に示す。
【0328】
(1.3 観察指標及びモニタリング方法)
(1.3.1 主な有効性指標)
(1.3.1.1 3.0T GE 750w MRIによる脳組織スキャン及び脳浮腫/脳梗塞容積の定量)
アカゲザルを5~10mg/kgのプロポフォール及び2%のイソフルランで麻酔した後、これらに、非ヒト霊長類用のカスタマイズされたヘッドコイルを用いる3.0T GE 750w MRI装置での頭部スキャンを受けさせた。スキャンシーケンスには: T1WI、T2FLAIR、DWI、及び3D-TOFが含まれた。スキャンは、大脳皮質、小脳、及び側頭葉を含む、脳組織全体をカバーする。T2 FLAIRのスキャンパラメータは: TE 120ms、TR 8000ms、マトリックス288×288、層厚: 1.5mm、FOV 14cm、分解能: 273μm×273μm×1500μmであり; DWIのスキャンパラメータは: TE 85ms、TR 7000ms、b=1000s、マトリックス140×140、層厚: 2.0mm、FOV 14cm、分解能: 1094μm×1094μm×2000μmであった。これら2つのシーケンスを用いて、梗塞容積を測定した。
【0329】
GE MRIのAdvantage Workstation 4.7を画像処理に使用した。各々のスキャン層画像において、手術側の脳組織の高シグナル領域の境界を関心領域(ROI)として手動で描出した。ソフトウェアがROIの面積を自動計算し、この面積をこの層における脳梗塞の面積とした。脳梗塞容積の計算方法:梗塞容積V=t×(A1+A2+A3...An)。tをスキャン層の厚さとし、Aを各々の層の脳梗塞面積とした。
【0330】
(1.3.1.2 NHPSS神経行動スコア)
非ヒト霊長類脳卒中スケール(NHPSS)を動物の神経学的欠損の定量的評価に使用した。41点は、重度の両側神経損傷を示し、0点は、正常を示す。検出時点は: MCAO後16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日目、7日目、14日目、及び28日目であった。
【0331】
脳虚血手術後のサルの神経行動評価は、単盲検法で実施した。すなわち、動物は、実験設計者によって群別にマークされ、神経行動を採点する試験者は、動物の群分けを知らなかった。採点後、採点者は、採点結果を設計者に提出し、設計者は盲検解除されて、各々の試験群の各々の動物の得点を入手した。
【0332】
脳梗塞の程度を評価するために、米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)が推奨されている。NIHSSのベースライン評価は、発症時の脳卒中の重症度を反映することができ、かつ治療後の効果を定期的に評価することもできる。NIHSSは、0~42の範囲である。スコアが高いほど、脳卒中の重症度が高い。
【0333】
非ヒト霊長類脳卒中スケール(NHPSS)は、米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)に類似したスコアの組合せである。既に、NHPSSとNIHSSの得点指標が実質的に一致していることを示す文献もある(Brott TG、Adams HP Jr、Olinger CPらの文献、急性脳梗塞の測定:臨床検査スケール(Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale). Stroke 1989; 20: 864-70; A S E Kの文献、脳卒中スケールの臨床的解釈と使用(Clinical interpretation and use of stroke scales). The Lancet Neurology, 2006, 5(7):603-612.)
【0334】
NHPSSに従って、神経学的欠損の改善を、脳卒中後16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日目、7日目、14日目、及び28日目に動的に評価した。NHPSSスコアは、意識状態、防御応答、把握反射、四肢の動き、歩行、回転運動、運動遅延、平衡感覚、外界への応答、及び顔面筋力の包括的スコアからなる。総得点は、41点であり、0点は、正常な行動を表し、41点は、重度の両側神経損傷を表す。具体的なNHPSSスコアリング項目を表1に示す(Roitberg B、Khan N、Tuccar Eらの文献、カニクイザルにおける慢性虚血性脳卒中モデル:行動学的、神経画像学的、及び解剖学的研究(Chronic ischemic stroke model in cynomolgus monkeys: Behavioral, neuroimaging and anatomical study) [J]. Neurological Research, 2003, 25(1):68-78.)。
表1 脳虚血を有するサルの神経行動スコア表(NHPSS)
【表1】
【0335】
以下は、米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)の採点指標である。
1. 意識レベル(LOC)
1a: LOC応答
【表2】
1b: LOC質問
【表3】
1c: LOC指示
【表4】
2.視線
【表5】
3.視野
【表6】
4.顔面神経麻痺
【表7】
5.上肢運動
【表8】
6.下肢の動き
【表9】
7.四肢運動失調
【表10】
8.感覚
【表11】
9.言語
【表12】
10.構音障害
【表13】
11.無視
【表14】
【0336】
(1.3.1.3 梗塞周囲領域におけるGFAP発現の免疫組織化学的定量)
アカゲザルの90分の中大脳動脈虚血再灌流における脳卒中から30日後、プラセボ群の1匹の動物とDOX+PMP+MTP群の1匹の動物をペントバルビタール麻酔下で安楽死させた。解剖後、脳組織全体を取り出し、4%パラホルムアルデヒドで72時間以上固定した。脳組織を手術側の大脳半球の梗塞領域から採取し、また、脳組織を非手術側の大脳半球の対応領域から採取した。14枚の冠状脳スライス(厚さ4mm)を、MSM-2500脳マトリックスを用いて調製した。側頭葉及び中心前回における脳梗塞周囲の領域を、GFAP免疫組織化学染色用に、順次、脱水し、ワックス処理し、包埋し、切削した(スライス3枚、5μm/スライス)。パラフィンスライスをルーチンに脱ワックス処理し、その後、抗原修復のために20分間、EDTA熱水浴に供し、その後、室温まで冷却し;その後、PBS洗浄し、3%H2O2とともに室温で20分間インキュベートし; PBS洗浄後、正常ヤギ血清を滴加し、37℃で20分間密封した。その後、一次抗体(GFAP、1:250)を滴加し、4℃で一晩インキュベートした。PBS洗浄後、反応促進液を滴加し、37℃で20分間インキュベートし; PBS洗浄後、二次抗体を滴加し、37℃で20分間インキュベートし; PBS洗浄後、DAB発色剤を滴加し、顕微鏡下で制御しながら、室温で発色させ、蒸留水を用いて、発色を停止させた。ヘマトキシリンの再染色を2分間行い、その後、アルコールで脱水し、キシレンで透明にし;中性ガムで密封した。陰性対照を各々の実験で設定し、PBS溶液を一次抗体の代わりに使用した。他の工程は、全く同じであった。GFAPタンパク質を定量するために、3枚の免疫組織化学スライスを光学顕微鏡下で採取した。2つの梗塞周辺領域を各々のスライスについて選択し、画像を200倍の視野下で収集した。Image Pro plus 6.0形態解析ソフトを用いて、6つの梗塞周辺領域におけるGFAPタンパク質発現を定量した。
【0337】
(1.3.2 脳卒中アカゲザルの世話)
MCAOアカゲザルを、手術後すぐに、神経ICUに移し、その心拍数、血中酸素飽和度、血圧、心電図、尿量、及び体温を定期的にモニタリングした。生化学的及び血液学的検査を、MCAO手術から3時間後(MRI検査前)、手術から16時間後、27時間後、48時間後、72時間後、96時間後、7日後(7日目)、14日後(14日目)、及び28日後(28日目)に実施した。頭蓋内圧又は脳浮腫を軽減する薬物は、試験で使用しなかった。
【0338】
この試験で選択された12匹のMCAOアカゲザルは、28日間の試験期間中に死亡せず、12匹の動物全てが生存した。
【0339】
(1.3.3 データ処理)
統計解析ソフトにより、定量的データを平均値±標準偏差として表した。一元配置分散分析を脳梗塞容積及び神経学的欠陥症状スコアに利用した。P<0.05を有意差と定義した。
【0340】
(1.4 実験結果及び考察)
(1.4.1 対象における脳卒中後の様々な時点での脳浮腫/脳梗塞容積及び脳組織に対する効果)
各々の群の対象における脳卒中後の様々な時点での脳浮腫/脳梗塞容積の変化を図5に示す。
【0341】
モデル対照群(N=6)において、再灌流から3~4時間後の手術側(右側)のDWI脳浮腫/脳梗塞の平均容積は、8.98±1.14cm3であり、脳梗塞後75時間以内に浮腫のピークに達したときの脳浮腫/脳梗塞の平均容積は、21.57±4.31cm3であり、浮腫容積は、半球容積の約40%を占め、正中線シフトが顕著であった。MRI画像検査は、手術側(右側)の前頭葉、頭頂葉、及び側頭葉に病変を示した。脳卒中後7日目(D7)に、T2 FLAIR脳浮腫/脳梗塞の平均容積は、20.60±6.45cm3であり、同時に、前頭葉領域の一部の脳組織は、壊死性液状化病変を示した。脳卒中後14日目(D14)から28日目(D28)にかけて、脳組織の浮腫/梗塞の容積は、それぞれ、10.34±3.91cm3及び7.93±3.39cm3にまで徐々に減少し、同時に、液状化壊死領域及び梗塞領域と健常(左側)脳組織の間の境界がより明瞭であることが分かった。
【0342】
DOX+PMP+MTP処置群(N=6): 6匹のMCAOアカゲザルに、脳卒中から約5時間後、連続28日間経口投与し、手術側(右側)の脳組織の浮腫/梗塞容積が、脳卒中後75時間、7日目、14日目、及び28日目に有意に減少した(p<0.05)。脳卒中後75時間及び7日目(D7)の浮腫のピーク時のT2 FLAIR脳浮腫/脳梗塞の平均容積は、13.86±3.63cm3及び11.62±3.63cm3であり、脳卒中後14日目(D14)及び28日目(D28)のT2 FLAIR脳浮腫/脳梗塞の平均容積は、5.83±2.24cm3及び4.34±1.20cm3であった。
【0343】
上記のデータは、脳卒中から5時間後、連続28日間投与した場合、3種の薬物を含有する組成物が90分のMCAO再灌流アカゲザルモデルにおいて脳浮腫/脳梗塞容積を有意に低下させることができることを示した。
【0344】
(1.4.2 対象における脳卒中後の様々な時点でのNHPSS神経行動スコアに対する効果)
各々の群の対象における脳卒中後の様々な時点でのNHPSS神経行動スコアの変化を図6に示した。
【0345】
モデル対照群(N=6): NHPSSスコアは、脳卒中後24時間、72時間、及び7日目(D7)に、15.4±2.9、12.0±1.6、及び7.4±2.6であり、これらは、主に、弱い防御応答、健常な四肢と比較した対側(患側)の上肢及び下肢の筋力減少、頭上に持ち上げることができないほどの患腕の衰弱、餌を掴むことができないほどの患指の神経学的欠損、動作緩慢、並びにバランスを取る能力及び回転運動する能力の著しい低下を示した。脳卒中後14日目(D14)及び28日目(D28)のNHPSSスコアは、徐々に低下し、これらは、それぞれ、3.6±1.8及び1.8±0.4であり、28日目(D28)のMCAOアカゲザルの患側(左側)の手指の細かい機能及び腕力は、健側(右側)のものよりも依然としてわずかに劣っていた。
【0346】
DOX+PMP+MTP群(N=6):脳卒中後24時間、72時間、及び7日目(D7)のNHPSSスコアは、10.3±3.1、5.3±2.4、及び2.7±1.9であり、これらは、同じ時点のモデル対照群のものよりも有意に低かった(p<0.05又はp<0.01)。脳卒中後14日目(D14)及び28日目(D28)のNHPSSスコアは、それぞれ、1.2±0.4及び0.7±0.5であった。
【0347】
上記のことから分かるように、DOX+PMP+MTP処置群は、脳卒中から5時間後に投与した場合、MCAOアカゲザルの神経行動スコアを有意に低下させ、脳卒中動物の神経学的欠損を有意に改善し、モデル対照群よりも有意に早く患肢の手指機能及び四肢強度を回復させ、イメージングの結果は、NHPSSスコアと高度に相関した。
【0348】
(1.4.3 GFAPタンパク質発現に対する効果)
結果を図7に示す。プラセボ群では、脳梗塞周囲領域の脳組織GFAPタンパク質発現が脳卒中から30日後に有意に増加し、非手術側の大脳半球の対応する領域におけるGFAPタンパク質発現と比較して3~4倍有意に増加し(p<0.01)、GFAPタンパク質発現は、9.79±1.93であり、同時に、反応性アストロサイトの形態変化が観察され、その細胞体は、肥大し、腫脹し、かつより多くの突起を有していた。
【0349】
プラセボ群と比較して、DOX+PMP+MTP群の脳梗塞周囲領域の脳組織GFAP発現は、脳卒中後30日目に有意に減少し(p<0.01)、GFAP発現は、4.21±0.75であった。30日間のDOX+PMP+MTP組成物による処置は、脳卒中アカゲザルの梗塞周囲領域の脳組織におけるGFAPタンパク質発現の増加を有意に阻害し、神経炎症を阻害した。
【0350】
(1.5 安全性の許容範囲)
DOX、PMP、及びMTPの安全な用量範囲及び有毒な副作用は公知である。一般的に使用されるDOX錠の投薬量は、1日2回、4~8mg/回である。PMPの推奨される個別用量は、1日に0.375mg~4.5mgである。特発性パーキンソン病を治療するための初期用量は、1日に0.375mgであり、その後、用量を5~7日毎に1回に増加させ、最大用量は、1.5mgである。日用量が1.5mgよりも大きい場合、眠気の発生率が増加する。MTPの推奨用量は、100~200mg/日であり、必要に応じて、300mg/日又は400mg/日に達することがある。既知の有害反応は、低血圧である。
【0351】
この試験において、アカゲザルの投薬量に基づいて計算されたヒトの投薬量は、推奨される投薬量の最大値よりも低く、そのため、理論的には、本発明のDOX+PMP+MTPの併用は、非常に良好な安全性を有する。
【0352】
上記の実験の間、頭蓋内出血などの薬物投与に関連した有害事象は、DOX+PMP+MTP群の6匹全ての動物において、薬物投与期間の全体を通して、磁気共鳴検査で見られず、これにより、本発明のDOX+PMP+MTPの併用は、良好な安全性を有することがさらに確認された。
【0353】
(2.実施例2)
本発明者らは、網膜虚血/再灌流(I/R)アカゲザルモデルを用いて、視神経症及び網膜症、特に、虚血性視神経症の予防、治療、及び/又は改善におけるドキサゾシン+プラミペキソール+メトプロロールの医薬組成物、ドキサゾシン+メトプロロール+ブロモクリプチンの組成物、ドキサゾシン+メトプロロールの組成物、ドキサゾシン単独、及びプラミペキソール単独の効果を評価した。
【0354】
主な有効性指標: 1)眼底撮影(FP)と光干渉断層撮影(OCT)を用いて、網膜厚及び神経線維層(RNFL)厚の変化を含む、アカゲザルの網膜I/R傷害後D7、D21、D35、及びD63の網膜構造に対する効果を定量的かつ動的に評価し; 2)フラッシュ視覚誘発電位(FVEP)及び全視野網膜電図(FERG)を用いて、視神経伝導機能及び全体的な網膜機能を動的に評価し;かつ3)免疫組織化学を用いて、網膜神経節細胞(RGC)の数とグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)の発現を定量し、定量的蛍光リアルタイムPCRを用いて、網膜I/R傷害後D63の虚血性網膜症における炎症因子発現を検出した。
【0355】
(2.1 実験材料)
試験製品1:
名称又は略称(英語名):メシル酸ドキサゾシン(DOX)
純度: 99.6%HPLC
Zhejiang Xinsaike Pharmaceutical Co., Ltd製
試験製品2:
名称又は略称(英語名):プラミペキソール2HCL一水和物(PMP)
純度: 99.55%HPLC
Shanghai Ziqi Biotechnology Co., Ltd製
試験製品3
名称又は略称(英語名):メトプロロール酒石酸塩(MTP)
純度: 100%HPLC
Sun Pharmaceutical Industries Ltd., India製
試験製品4
名称又は略称(英語名):メシル酸ブロモクリプチン(BRM)
仕様: 2.5mg/錠
Gedeon Richter Ltd製。ブロモクリプチンメシル酸塩の初期臨床用量は、1日2~3回、1.25mgであった。ブロモクリプチンメシル酸塩錠の通常用量は、1日4~16錠(10~40mgのブロモクリプチンメシル酸塩)である。
【0356】
(2.2 具体的な実験スキーム)
(2.2.1 実験動物)
23匹の4~6歳の健康なアカゲザルを選択した。アカゲザル(Macaca mulatta)(アカゲザル(Rhesus Macaque))は、一般グレードで、Primed Primate Research Centerより提供された。実験期間中の給餌環境グレード:通常グレード。温度: 18~26℃。相対湿度: 40%~70%。換気: 100%新鮮な空気を用いて、1時間に8回以上の空気交換(空気循環なし)。照明時間:自動照明、12時間毎に明暗を交互に繰り返す。動物ケージ: 850*900*2365mmの二重層ステンレス製ケージ。給餌密度: 1ケージに1匹。動物が関与する全ての手順は、眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVOの声明に準拠し、全ての操作は、Primed Primate Research CenterのIACUC委員会による審査及び承認を受けていた。
【0357】
(2.2.2 網膜虚血/再灌流傷害(I/R)アカゲザルモデル)
急性汎網膜虚血/再灌流傷害(I/R)を有するアカゲザルの作製を図8に示す。8mg/kgの化合物ケタミンによる麻酔の後、片側網膜虚血を右眼で誘導し、一方、対側眼は、非虚血対照としての役割を果たした。1滴のトロピカミド点眼液(Santen Pharmaceutical)を右眼に添加し、アカゲザルを散瞳のために暗室に入れた。右眼の瞳孔が6mmよりも大きくなったら、モデル化のために、前房に水を入れて加圧する準備が整った。0.9%塩化ナトリウム注射液(Sichuan Kelun Pharmaceutical Co., Ltd)を250ml輸液バッグ(Sichuan Kangning Medical Equipment Co., Ltd.)に注入し、輸液チューブの端に30G針(BD Microlance(登録商標), BD)を接続し、針を右眼の前房に挿入して、0.9%滅菌生理食塩水を注入した。生理食塩水バッグが1.9mまで上昇すると、アカゲザルの眼内圧(IOP)が急性的に140mmHgまで上昇し、虚血が90分間持続した。角膜浮腫を観察することにより、それを網膜虚血の誘導が成功したサインと考えた。虚血が終了した後、生理食塩水リザーバーをゆっくりと下げ、眼から針を引き抜き、IOPを回復させて、網膜再灌流を形成させた。
【0358】
(2.2.3 群分け及び投与)
急性網膜I/Rを有する23匹のアカゲザルを6つの群に分けた: I/R対照群(n=6)、I/R+DOX+MTP+PMP群(n=6)、I/R+DOX+MTP群(n=3)、I/R+DOX+MTP+BRM群(n=3)、I/R+DOX群(n=3)、及びI/R+PMP群(n=2)。各々の投与群の動物に、網膜I/R傷害(眼から針を引き抜くことをI/R傷害の開始点と考えた)から4~5時間後に、連続63日間経口投与し、一部の動物は、実験後に病理検査を完了するために安楽死させた。
【0359】
以下は、各々の投与の投薬量及び頻度であった:
I/R対照群:果実を投与した。
I/R+DOX+PMP+MTP群: DOX: 0.266~0.532mg/kg; PMP: 0.002~0.004mg/kg; MTP: 1.667mg/kg; 1日2~3回。
I/R+DOX+MTP群: DOX: 0.266~0.532mg/kg; MTP: 1.667~3.33mg/kg; 1日2~3回。
I/R+DOX群: 0.266~0.532mg/kg、1日2~3回。
I/R+PMP群: 0.002~0.004mg/kg、1日2~3回。
I/R+DOX+MTP+BRM群:比率: DOX: 0.266~0.532mg/kg; MTP: 1.667mg/kg; BRM: 0.03mg/kg、1日2~3回。
表2 試験薬及びその用量
【表15】
注:サルの用量は、体表面積法又はインビボ薬物濃度曝露を用いて、ヒトの用量に用量換算することができる。
【0360】
(2.3 観察指標及びモニタリング方法)
(2.3.1 FP/OCTによる網膜厚/網膜神経線維層厚の検査)
モデル化の前に、両眼を、それぞれ、I/R傷害後7日目(D7)、21日目(D21)、35日目(D35)、及び63日目(D63)に、Kowa VX-20眼底カメラとHeidelberg SPECTRALIS plus OCTでスキャンした。右眼は、I/R傷害を受けた眼であり、左眼は、非虚血対照眼であった。
【0361】
方法:アカゲザルを8mg/kgの化合物ケタミンの筋肉内注射によって麻酔した。1~2滴の複合トロピカミド点眼液を散瞳のために両眼に添加した。散瞳後、光の下で、瞳孔が6mmよりも大きい場合、眼底を検査することができた。右眼と左眼を開瞼器で順次開き、視神経円板を用いて位置を合わせ、眼底カメラ(Kowa VX-20, Japan)を用いて、眼底の写真撮影を行い、その後、OCT検査を行った。網膜9室マップのEDTRS領域の厚さ及び各々の四分円の網膜神経線維層(RNFL)の厚さを、OCTを用いて測定した。解析方法を図10に示した。RNFLの平均厚さは、360度にわたって測定された厚さの値を平均することにより計算した。各々の領域の厚さは、装置販売業者の指示に従って、側頭(T; 315度~45度)、上側頭(TS; 45度~90度)、下側頭(TI; 90度~135度)、鼻(N; 135度~225度)、上鼻(NS; 225度~270度)、及び下鼻(NI; 270度~315度)の測定値を平均することにより計算した。
【0362】
(2.3.2 FERG及びFVEPによる視神経伝導機能及び全体的な網膜機能の動的評価)
急性網膜虚血は、視細胞を含め、神経網膜損傷を引き起こす可能性があり、その機能は、FERG及びFVEPによって評価することができる。フラッシュ視覚誘発電位(FVEP)及び全視野網膜電図(FERG)を、眼の電気生理学的装置(Roland Consult Stasche & Finger GmbH, Ganzfeld Q450 SC)を用いて、I/R傷害後7日目(D7)、21日目(D21)、及び63日目(D63)に動的に行った。全ての検出パラメータを、国際視覚臨床電気生理学会(ISCEV)の最新の基準を参照して設定した。
【0363】
方法:麻酔方法は、FP/OCT検査での麻酔方法と同じであり、電極と接続される必要がある部位は、75%アルコールで滅菌した。瞼を開瞼器で開き、電極が設置される位置が後頭転子から2~3cmであり、参照電極が設置される位置が額の中央であり、接地電極が設置される位置が尾の付け根であることを記録し、非検眼を覆い、右眼の後に左眼という順序でFVEPを記録した。FVEP記録の後、眼を複合トロピカミド点眼薬で十分に散瞳させ、接地電極を額の中央に接続し、参照電極を両眼の外眼角に設置した。ベノキシルを眼表面麻酔に使用した後、2滴のヒドロキシメチルセルロースナトリウム点眼液を角膜接触電極に滴下し、その後、この電極を角膜と完全に接触するように両眼に入れた。明順応3.0 ERG、明順応30HZ振動電位を順次記録した。ERGを検出する記録電極は、環状角膜電極であり、参照電極と接地電極は、針状電極(アカゲザル)であった。VEP電極は、針状電極であった。各々の電極のインピーダンスは、5KΩ未満であった。
【0364】
(2.3.3 免疫組織化学検査及び部分網膜神経節細胞数)
I/R対照群(n=3、6眼)、I/R+DOX+MTP+PMP群(n=3、6眼)、I/R+DOX+MTP群(n=3、6眼)、I/R+DOX+MTP+BRM群(n=3、6眼)、I/R+DOX群(n=3、6眼)、及びI/R+PMP群(n=1、2眼):を含む、16匹のアカゲザルを網膜I/R傷害後63日目(D63)に安楽死させた。
【0365】
方法:眼球を取り出し、F.A.A固定溶液に入れた。72時間後、眼球を取り出し、網膜を図10(赤い囲み)に示されている範囲に従って切断した。視神経円板と黄斑部を含む長方形(約0.8cm×1.6cm)の眼球壁組織を免疫組織化学染色用に採取した。サンプリングされた網膜を包埋し、その後、薄切した。黄斑の窩を、約100枚のスライス(5μm/スライス)になるように、10ラウンドに分けて(10スライス/ラウンド)、50μm毎に(すなわち、各ラウンド)、約0.5mm=500μmで連続的に薄切し、1枚のスライスをBrn-3a染色及びGFAPタンパク質染色用に連続的に採取し、8~10枚の免疫組織化学的スライスを神経節細胞の計数及びGFAPタンパク質の定量用に採取した。窩から1.5mm以内の側頭神経節細胞と鼻神経節細胞の数を各々のスライスについてカウントした。操作の流れを図9に示す。RGCの数を各々のスライスについて計算した。虚血損傷眼(OD)の網膜のRGCの数を、同じアカゲザルの対側非虚血眼(OS)の網膜のRGCの数で差し引き、その結果を対側眼(OS)のRGCの数で割って、RGC損失の割合を得た。定量手順は全て、二重盲検条件下で2名の研究者によって行われた。
【0366】
(2.3.4 定量的蛍光リアルタイムPCRによる虚血性網膜症における炎症因子発現の検出)
方法:網膜組織から全RNA抽出キット(Foregene社製)を用いてRNAを抽出し、その吸光度値を測定した。2ugの全RNAを逆転写反応の鋳型として使用し、表3のプライマー、EvaGreen Express 2×qPCR MasterMix-No Dye蛍光色素(abm)、及び内部参照としてのβ-アクチンを用いて、相対定量PCR検出を行った。反応条件: 95℃で10分間の事前変性; 95℃で10秒間、60℃で30秒間を合計40サイクル;融解曲線(60℃から95℃まで上昇し、温度は15秒毎に0.3℃ずつ上昇)。Primer Premier 5.0ソフトウェアをプライマー設計に使用し、プライマーは、Shanghai Sangon Bioengineering Technology Service Co., Ltdにより合成された。
表3 プライマー配列
【表16】
【0367】
(2.3.5 統計解析)
結果は全て、平均値±SEMとして表した。統計解析は、Graphpad Prism(8.0バージョン)を用いて、両側T検定によって行った。p<0.05を統計的有意とみなした。
【0368】
(2.4 実験結果及び考察)
(2.4.1 網膜神経節細胞に対する効果)
組織病理学的Brn3a免疫組織化学検査を網膜I/R傷害後63日目(D63)に実施して、網膜神経節細胞(RGC)の数を評価した。各々の群の結果を図13に示す。虚血障害のないOS眼と比較して、63日目(D63)のI/R対照群のI/R眼(N=3)におけるRGC細胞の平均損失は、75.7±7.5%であった。I/R対照群と比較して、I/R眼が63日間処置されたI/R+DOX+MTP+PMP群(N=3)は、網膜神経節細胞(RGC)の生存率の有意な増加を示し(p<0.01)、RGC細胞の平均損失は、13.4±5.5%であった。
【0369】
I/R+DOX+MTP+BRM群、I/R+DOX+MTP群、I/R+DOX群、及びI/R+PMP群のI/R眼におけるRGC細胞の平均損失は、それぞれ、73.3±6.0%、60.0±14.6%、63.9±14.1%、及び60.0%であり、I/R対照群との統計的有意差はなかった。
【0370】
(2.4.2 GFAPタンパク質発現に対する効果)
結果を図14に示す。非虚血OS対照眼(N=7)における網膜GFAPタンパク質発現は、2.04±0.13と定量され、GFAP染色は、RGC及び神経線維層でのみ観察された。非虚血OS対照眼と比較して、I/R対照群のI/R眼(N=3)における網膜GFAPタンパク質発現は、10.66±1.41(p<0.01)にまで有意に増加し、シグナルは、内網状層に達した。I/R対照群のI/R眼と比較して、I/R+DOX+MTP+PMP群(N=3)は、処置から63日後のI/R眼におけるGFAPタンパク質過剰発現を有意に阻害し(p<0.01)、GFAPは、3.29±0.36と定量された。
【0371】
上記のことから分かるように、処置から63日後、DOX+MTP+PMP群は、網膜I/R傷害後の神経節細胞(RGC)の生存率を有意に改善し、I/Rによって誘発される網膜組織のGFAPタンパク質発現増加を有意に阻害し、神経炎症を阻害した。同時に、実験データから、DOX+MTP+BRM群、DOX+MTP群、DOX群、及びPMP群は、網膜神経節細胞に対する保護が弱いことが示された。
【0372】
(2.4.3 網膜厚の変化)
OCTを用いて、I/R傷害後の9室マップにおける網膜のEDTRS領域の平均厚さの定量解析の結果を、表4、図10、及び図11に示す。モデル化前の場合と比較して、I/R対照群のI/R眼(N=6)の網膜EDTRS領域の平均厚さは、7日目(D7)、21日目(D21)、35日目(D35)、及び63日目(D63)に有意に減少し(p<0.05)、63日目(D63)に78±24ミクロン減少し、網膜の全層で重度の変性と重度の構造的損傷を示した。I/R対照群と比較して、I/R+DOX+MTP+PMP群(N=6)は、I/R眼の網膜EDTRS領域の厚さの低下が有意に妨げられた(p<0.01)。網膜EDTRS領域の平均厚さは、7日目(D7)、21日目(D21)、35日目(D35)、及び63日目(D63)に、それぞれ、7±6ミクロン、19±13ミクロン、21±15ミクロン、及び21±19ミクロン減少した。
【0373】
さらに、モデル化前の場合と比較して、I/R+DOX+MTP+BRM群、I/R+DOX+MTP群、I/R+DOX群、及びI/R+PMP群の網膜EDTRS領域の平均厚さは、各々の時点で有意に減少し、各々の時点での減少の大きさは、I/R対照群のものと統計的な差がなかった。
【0374】
(2.4.4 神経線維層(RNFL)の厚さの変化)
OCT定量の結果を表5及び図10に示す。
【0375】
モデル化前の場合と比較して、I/R対照群のI/R眼は、主に、7日目(D7)に、網膜NFL層及びRGC層における浮腫、その後、21日目(D21)、35日目(D35)、及び63日目(D63)に、網膜RNFL厚の漸次薄化を示し、かつ63日目(D63)には、網膜神経線維層(RNFL)の全体的な平均厚さが平均32±17ミクロン減少した。I/R対照群のI/R眼と比較して、I/R+DOX+MTP+PMP群は、網膜RNFLが処置から63日目(D63)に有意に減少するのを防ぎ(p<0.05)、63日目(D63)に平均5±4ミクロン減少した。
【0376】
さらに、I/R対照群のI/R眼と比較して、I/R+DOX+MTP+BRM群、I/R+DOX+MTP群、I/R+DOX群、及びI/R+PMP群の平均網膜RNFL全体厚は、7日目(D7)、21日目(D21)、35日目(D35)、及び63日目(D63)に有意に減少し、各々の時点での減少の大きさは、I/R対照群のものと統計的な差がなかった。
【0377】
(2.4.5 全視野網膜電図(FERG)検出の結果)
I/Rは、様々な網膜疾患においてニューロン損傷及び視覚障害を誘発する。明順応3.0 ERG応答は、a-波振幅がそのピークに達するときの異常度が視細胞の機能を反映し、b-波振幅がピークに達するときの異常度が錐体細胞の機能を反映するものであった。結果を表6に示す。明順応3.0 ERG応答のa-波振幅とb-波振幅はどちらも、I/R対照群(N=6)において、I/R傷害後D7及びD21で減少し、この群の未受傷眼OSと比較して、網膜機能は、63日目(D63)にある程度回復したが、依然として有意に減少していた。試験期間中、未受傷眼では明らかな変化が見られなかった。
【0378】
I/R対照群と比較して、明順応3.0 ERG応答のa-波振幅とb-波振幅は、DOX+MTP+PMP群(N=6)において、I/R損傷後7日目(D7)及び21日目(D21)に有意に増加した(p<0.05)。この組成物は、I/R傷害後の網膜機能の減少を有意に阻害した。I/R対照群と比較して、明順応3.0 ERG応答のa-波振幅とb-波振幅はどちらも、損傷後の各々の時点のI/R+DOX+MTP+BRM群(N=3)において有意に減少し、有意差がなかった。網膜機能は、63日目(D63)にやや回復したが、依然として減少していた。
【0379】
(2.4.6 光学的視覚誘発電位(FVEP)検出の結果)
FVEPは、網膜神経節細胞から脳の後頭部視覚皮質までの視覚信号の視覚経路全体の伝導機能を反映する。結果を表7に示す。
【0380】
I/R対照群のI/R眼(N=4)のP2振幅は、この群の非受傷眼と比較して、21日目(D21)及び63日目(D63)に減少した。I/R対照群と比較して、I/R+DOX+MTP+PMP群のI/R眼(N=4)のP2振幅(N2-P2)は、薬物投与後21日目(D21)及び63日目(D63)に有意に増加した(p<0.05)。この組成物は、網膜機能を有意に改善した。
【0381】
(2.4.7 アカゲザル網膜のI/R傷害後の炎症因子に対する効果)
結果を図15に示す。虚血性損傷のない対照眼(N=6)と比較して、I/R対照群のI/R眼(N=3)の63日目(D63)の結果は、網膜I/Rによって誘導されるTNF-α、IL-1β、及びIFN-γレベルの有意な上方調節を示した(p<0.01又はp<0.05)。I/R対照群のI/R眼と比較して、DOX+MTP+PMP群(N=3)は、網膜I/Rによって誘導されるTNF-α、IL-1β、及びIFN-γの発現レベルの増加を有意に減少させ(p<0.05)、非虚血対照群と比較して、発現レベルに有意差が見られなかった。
【0382】
上記のことから、DOX+MTP+PMP組成物は、アカゲザルにおける汎網膜I/R傷害後のRGC細胞損失及びGFAP過剰発現を防ぎ、網膜I/Rによって引き起こされるTNF-α、IL-1β、及びIFN-γ発現レベルの増加を有意に低下させ、網膜厚を維持し、ニューロン損傷を低下させ、FERG及びFVEP破壊を含む、I/Rによって引き起こされる視神経機能低下を緩和し、網膜の全体的な機能を維持することが示された。
表4 アカゲザルにおける網膜虚血-再灌流(I/R)後の9室網膜EDTRS領域の平均厚さに対する効果
【表17】
表5 アカゲザルにおける網膜虚血-再灌流(I/R)後の網膜神経線維層の全体的な平均厚さに対する効果
【表18】
表6 アカゲザルにおける網膜虚血-再灌流(I/R)後のFERGに対する効果
【表19】
表7 アカゲザルにおける網膜虚血-再灌流(I/R)後のFERGに対する効果
【表20】
【0383】
(3.実施例3)
本発明者らは、アカゲザルにおける180分の中大脳動脈M1閉塞後の再灌流によって引き起こされる認知機能不全のモデルを用いて、神経変性疾患に対するドキサゾシン(DOX)、プラミペキソール(PMP)、及びメトプロロール(MTP)の組合せの予防、治療及び/又は改善効果を評価した。アカゲザルの中大脳動脈のM1セグメントにおける180分の閉塞後の再灌流は、長期にわたる明白な認知低下をもたらし得る浮腫のピーク時に半球の約70%を占める浮腫/梗塞容積を示して、より広い範囲の梗塞を形成することができ、かつ認知機能の予防及び改善における神経保護剤の有効性を評価するために使用することができる。評価指標は、以下を含む:
1) 3.0TのGE MRIを用いて、再灌流後3~4時間、72~75時間、7日目、14日目、及び28日目の浮腫/梗塞の軌跡を動的に観察する; MRIの撮像シーケンスには、T1WI、T2 FLAIR、DWI、MRA、及びDSCが含まれ、ここで、T1WIは、脳の解剖学的構造を示すこと、灰白質領域と白質領域を区別すること、出血と虚血を診断することなどができ、T2 FLAIR及びDWIは、浮腫/壊死容積を定量することができ、T2 FLAIRは、組織内の水分含量の増加を示唆することができ、炎症、虚血、浮腫、及び他の病変を示すために使用される; DSCは、急性虚血性脳卒中後の脳組織灌流状態と脳虚血領域に対する感受性応答を示すことができ、脳組織の虚血コア領域の容積を定量的に評価することができる;
2)脳卒中から3~4時間(180分の虚血後再灌流)後にMRA検査を行うこと、これは、血管が再灌流されているかどうか及び側副血行が形成されているかどうかを正確に示し、ここで、DWIは、脳卒中から3~4時間後の臨床患者のものと同様の前循環中大脳動脈の虚血性梗塞病変を示し、これらは、モデル成功の基準として使用され、モデルのばらつきを低下させる;
3)組成物を脳卒中から7時間後に投与する設計を利用する。この設計は、予防的投与よりも良好に臨床診察へと転換することができる;
4)NHPSSに従って、脳卒中後16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日目、7日目、14日目、21日目、及び28日目の神経学的欠損の改善を動的に評価する;並びに
5)脳卒中から3カ月後に空間的遅延応答試験を実施して、認知機能不全の改善を評価する。
【0384】
(3.1 実験材料)
実験材料は、実施例1.1に記載されているものと同じであった。
【0385】
(3.2 具体的な実験スキーム)
(3.2.1 実験動物)
Primed Primate Research Centerより提供された、一般グレード、体重: 6~9kgの5~7歳の9匹の健康なアカゲザル(Macaca mulatta)(アカゲザル(Rhesus Macaque))を選択した。実験期間中の給餌環境グレード:通常グレード。温度: 18~26℃。相対湿度: 40%~70%。換気: 100%新鮮な空気を用いて、1時間に8回以上の空気交換(空気循環なし)。照明時間:自動照明、12時間毎に明暗を交互に繰り返す。動物ケージ: 850*900*2365mmの二重層ステンレス製ケージ。給餌密度: 1ケージに1匹。全ての操作は、Primed Primate Research CenterのIACUC委員会による審査及び承認を受けていた。
【0386】
(3.2.2 アカゲザルの180分の中大脳動脈閉塞再灌流モデル(MCAO)の作成)
MCAOモデルを作成する方法は、実施例3の中大脳動脈のM1セグメントを結紮する時間を180分としたことを除き、実施例1.2.2に記載されているものと同じであった。
【0387】
(3.2.3 群分け及び投与)
アカゲザルにおける180分のMCAO後の再灌流によって形成された9匹のモデル動物を選択し、再灌流から3~4時間後の浮腫についてDWIにより定量し、群分けした。9匹のアカゲザルを180分のMCAO再灌流から3~4時間後に3.0T GEMIによってスキャンした。両側中大脳動脈が磁気共鳴血管造影(MRA)及びCT血管造影(CTA)によって明白に視認でき、再灌流が成功していると判定された(図17を参照)。9匹のMCAOアカゲザルをモデル対照群(5)とDOX+PMP+MTP群(4)に分けた。これら2つの群のDWIによって定量された浮腫/梗塞領域の平均容積は、14.61±2.63cm3及び13.43±3.14cm3であった。これら2つの群の間に統計学的な差はなかった。
【0388】
投与群の動物に、脳卒中から約7時間後(すなわち、動脈の動脈瘤結紮を実施する時点を脳卒中発作の時点とする)に経口投与し、間隔を空けて1日に2~4回、連日60日間投与した。以下を、各々の投与の投薬量及び様式とした:
モデル対照群(プラセボ群):空のカプセルを投与。
DOX+PMP+MTP処置群: DOX: 0.266mg/kg~0.532mg/kg; PMP: 0.002~0.004mg/kg; MTP: 1.667mg/kg~3.334mg/kg。
【0389】
(3.2.4 試験手順)
MRIスキャンを、MCAO-180分の再灌流後3~4時間、72~75時間、7日目、14日目、及び28日目に実施して、脳浮腫/脳梗塞容積を測定し、神経行動スコアリング(NHPSS)を実施した。同時に、長期的な神経学的欠損を調べるために、空間的遅延応答試験を脳卒中から3カ月後に用いて、認知機能を評価した。
【0390】
(3.3 観察指標及びモニタリング方法)
(3.3.1 主な有効性指標)
(3.3.1.1 脳組織スキャン及び脳浮腫/脳梗塞容積の定量)
実施例1.3.1.1に記載されているもとの同じ。
【0391】
(3.3.1.2 NHPSS神経行動スコア)
実施例1.3.1.2に記載されているもとの同じ。
【0392】
(3.3.1.3 脳組織微小循環及び感受性応答脳虚血領域の灌流の定量的評価)
動的磁化率造影磁気共鳴イメージング(MRI-DSC)は、静脈内ボーラス注射を介して投与された常磁性造影剤が被検組織を初めて通過するときに、急速スキャニングシーケンス撮像を用いて一連の動態画像を得る検査法である。これは、組織微小血管の分布及び血液灌流を反映した機能的MRI撮像技術であり、虚血性脳血管疾患を有する患者にとって、治療レジメンを選択し、治療の有効性を判定するための重要な画像基盤を提供する。
【0393】
MRI-DSCイメージングは、ワークステーションによる後処理、解析、及び脳血流動態パラメータの計算の後に、局所血液供給を反映する4つの主要な指標をもたらすことができる: 1)局所脳血液量(rCBV)は、一定量の脳組織血管構造内に存在する血液量を指す。2)局所脳血流量(rCBF)は、単位時間に一定量の脳組織血管構造を通過する血液の流れを指す。値が小さいほど、脳組織の血液量は少ない。3)局所平均通過時間(rMTT)は、血液が血管構造を流れるときに、造影剤が毛細血管を通過するのにかかる時間(血液が動脈から流入して、静脈から流出するのにかかる時間)を指す。この値が大きいことは、微小循環が円滑でないことを示す。4)局所ピーク到達時間(rTTP)は、造影剤が脳のROIでピークに達するのにかかる時間を指す。この値が大きいほど、造影剤のピークが脳組織に到達するのが遅くなる。脳卒中から75時間後、虚血コア領域の容積をMRI-DSCイメージングで定量して、虚血を改善することの治癒的効果を評価した。
【0394】
CBVとCBFが有意に減少し、MTTとTTPが有意に延長した領域を非灌流領域(虚血コア領域)として選択した(図18、CBV、CBF、MTT、及びTTPの暗い領域を参照)。GE磁気共鳴用のAdvantage Workstation 4.7ワークステーションソフトウェアを用いて、スキャンしたCBVの各々の層の非灌流領域の面積を決定し、各々の層の虚血領域の面積を合計し、その合計に層の厚さを掛けることにより、脳虚血容積を得ることができた(Wintermark M、Sesay M、Barbier Eらの文献、脳灌流イメージング技術の比較概要(Comparative overview of brain perfusion imaging techniques).[J]. Journal of Neuroradiology, 2005, 32(9):294-314.; Shih L C、Saver J L、Alger J Rらの文献、不可逆的梗塞コア組織を同定する灌流加重磁気共鳴イメージング閾値(Perfusion-Weighted Magnetic Resonance Imaging Thresholds Identifying Core, Irreversibly Infarcted Tissue) [J]. Stroke, 2003, 34(6):1425-1430.; Oppenheim C、Peeters A、Cosnard Gらの文献、MRから得られたどの灌流パラメータが超急性期脳卒中における梗塞成長の最良の予測因子となるか? 相対測定と定量測定の比較研究(Which MR-derived perfusion parameters are the best predictors of infarct growth in hyperacute stroke? Comparative study between relative and quantitative measurements).[J]. Radiology, 2002, 223(2):361-370.; JING Yanping、LUO Bin、GAO Zhengrongらの文献、虚血性脳血管疾患におけるDSC-PWIの応用価値(Application value of DSC-PWI in ischemic cerebrovascular diseases) [J], Journal of Chinese Physician, 2020, 22(3): 6)。
【0395】
(3.3.1.4 認知機能検査)
サルの認知機能を、学習及び記憶能力、視空間能力、並びに理解及び判断する能力を含む、空間的遅延応答試験によって評価した(Bo、Zhang、Feiらの文献、慢性フェンサイクリジン処置はアカゲザルの空間作業記憶を障害する(Chronic phencyclidine treatment impairs spatial working memory in rhesus monkeys). Psychopharmacology, 2019.; Buccafusco J Jの文献、サルの作業記憶遅延応答課題 -- 脳科学における行動分析法(Working Memory Delayed Response Tasks in Monkeys -- Methods of Behavior Analysis in Neuroscience) [J]. CRC Press, 2009.)
【0396】
改良型ウィスコンシン装置(図16に示す)を空間的遅延応答試験に使用した。サルが注意深く見つめる中、餌を2つの容器のうちの1つにランダムに入れ、その上に蓋をし、その後、サルの視界を遮るためにバッフルを下げた。一定時間遅れて、動物に餌の入った容器を選ばせた。動物は、正しい選択をして餌を得るために、餌がどの容器に入っているかを記憶しなければならなかった。遅延時間は、それぞれ、1秒、5秒、10秒、及び30秒であった。脳卒中から3カ月後、モデル対照群(N=3)及びDOX+PMP+MTP群(N=3)からの6匹の動物を1日に30回試験した。動物が2日間続けて試験で80%以上の正答率を得た場合、遅延時間を順次延長した。治癒効果の指標は、認知機能指標、すなわち、異なる遅延時間で完了した試験の正答率及び記憶が到達し得る最長の時間間隔であった。
【0397】
先行研究において、本発明者らは、空間的遅延応答試験を完了するために、5~7歳の10匹の健康なアカゲザルを選択し、全ての動物の最長遅延時間は≧30秒であった。間隔時間が30秒以上になると、動物の不注意が試験の精度に影響を及ぼすため、本実施例において、本発明者らは、最大遅延30秒の試験を選択した。
【0398】
(3.3.2 アカゲザルの世話)
実施例1.3.2に記載されているものと同じ。
【0399】
(3.3.3 データ解析)
実施例1.3.3に記載されているものと同じ。
【0400】
(3.4 実験結果及び考察)
(3.4.1 脳浮腫/脳梗塞容積に対する効果)
結果を図17に示す。
【0401】
モデル対照群(N=5):再灌流から3~4時間後の手術側(右側)のDWIは、14.61±2.63cm3という脳浮腫/脳梗塞の平均容積を示した。脳卒中後のT2 FLAIRは、浮腫のピークが75時間後に達し、29.77±2.82cm3という脳浮腫/脳梗塞の平均容積を示した。浮腫の容積は、半球容積の約70%を占め(成体アカゲザルの全脳容積は約90cm3である)、正中線シフトが顕著であった。MRI画像検査は、手術側(右側)の前頭葉、頭頂葉、側頭葉、及び後頭葉に病変を示した。脳卒中後7日目(D7)に、T2 FLAIRは、脳浮腫/脳梗塞の平均容積が25.91±4.2cm3であり、脳組織の浮腫/梗塞の容積が脳卒中後14日目(D14)から28日目(D28)にかけて徐々に減少することを示し、これらは、それぞれ、16.87±3.60cm3、12.02±3.71cm3であった。さらに、D28では、脳組織の壊死領域の境界がより明瞭になり、壊死領域には、側頭葉及び海馬領域などの認知及び記憶関連脳領域が含まれていた。さらに、脳の前回の病変(involvement)が原因で、対側手の機能、特に、母指と示指の対向指運動の機能に影響が及んだ。
【0402】
DOX+PMP+MTP投与群(N=4):再灌流から3~4時間後の手術側(右側)のDWIは、13.43±3.14cm3という脳浮腫/脳梗塞の平均容積を示した。4匹のMCAOアカゲザルに、脳卒中から約7時間後に薬物を経口投与し、60日間連続処置した。モデル対照群と比較して、手術側(右側)の脳組織の浮腫/梗塞容積は、脳卒中後75時間、7日目、14日目、及び28日目に有意に減少した(p<0.05又はp<0.01)。脳卒中後75時間及び7日目(D7)のT2 FLAIR脳浮腫/脳梗塞の平均容積は、17.56±5.95cm3及び15.05±5.17cm3であり、脳卒中後14日目(D14)及び28日目(D28)のT2 FLAIR脳浮腫/脳梗塞の平均容積は、8.16±2.12cm3及び5.92±2.01cm3であった。
【0403】
(3.4.2 脳虚血コア領域の容積の定量的評価)
結果を図18に示す。
【0404】
正常動物の脳に対するMRI-DSCスキャンにより、左及び右半球のCBF、CBV、MTT、及びTTPの灌流状態は同じであり、虚血はないことが示された。
【0405】
モデル対照(プラセボ)群の4匹の動物は、脳卒中から75時間後にDSCスキャンを受け、手術側(右側)に明らかな非灌流領域が観察された。CBV画像で測定された非灌流領域(虚血コア領域)の容積は、17031±6355ピクセル2(換算後3.41±1.27cm3)であった。
【0406】
DOX+PMP+MTP処置群の4匹の動物は、脳卒中から75時間後にDSCスキャンを受けた。手術側(右側)のCBV画像で測定された非灌流領域の容積は、4747±3210ピクセル2(換算後0.95±0.64cm3)であった。非灌流領域の容積は、モデル対照群の容積よりも有意に小さく(P<0.05)、これは、DOX+PMP+MTPが脳卒中から75時間後の虚血コア領域の容積を有意に低下させ、脳卒中後急性期の虚血状態を有意に改善することを示した。
【0407】
上記のピクセル値(ピクセル2)を、式: rCBV非灌流領域の容積(cm3)=ピクセル値(ピクセル2)÷1000×0.2によって、容積(cm3)に換算した。
【0408】
換算式の説明: GE MRIのAdvantage Workstation 4.7を画像処理に使用した。各々のスキャン層画像において、手術側の脳組織の高シグナル領域の境界を関心領域(ROI)として手動で描出した。このソフトウェアは、ROIの面積を自動的に計算し、その単位は、ピクセル2であった。単位がcm2である場合、数値は、単位がピクセル2である場合の数値よりも1000倍大きかった。それゆえ、換算式では、ピクセル値(ピクセル2)を1000で割った。スキャン画像の各々の層の層厚は、0.2cmであり、各々の層のROI面積に層厚を掛けることにより、脳梗塞の容積を得た。それゆえ、換算式では、各々の層のROI面積に0.2を掛けることにより、脳梗塞の容積を得た。
【0409】
(3.4.3 NHPSS神経行動スコアに対する効果)
結果を図19に示した。
【0410】
モデル対照群(N=5): NHPSSスコアは、脳卒中後24時間、72時間、及び7日目(D7)に、16.8±1.8、16.0±1.4、及び10.4±1.3であり、これらは、主に、弱い防御応答、健常な四肢と比較した対側(患側)の上肢及び下肢の筋力減少、頭上に持ち上げることができないほどの患腕の衰弱、患手の動作緩慢、並びにバランスを取る能力及び回転運動する能力の著しい低下を示した。脳卒中後14日目(D14)から28日目(D28)までのNHPSSスコアは、徐々に減少し、これらは、それぞれ、6.4±0.9及び6.2±1.3であり、28日目(D28)のMCAOアカゲザルの患側(左側)の手指の細かい機能及び腕力は、健側(右側)のものよりも依然として劣っていた。脳卒中から3カ月後、5匹の動物は、患手の母指と示指の対向指運動を喪失し、両手で協調的にピーナッツの皮を剥くという細かいタスクを完遂することができなかった。
【0411】
DOX+PMP+MTP群(N=4):脳卒中後24時間、72時間、及びD7のNHPSSスコアは、14.3±2.9、11.5±1.9、及び6.0±1.8であり、これらは、同じ時点のモデル対照群のものよりも有意に低かった(p<0.05又はp<0.01)。脳卒中後14日目(D14)から28日目(D28)までのNHPSSスコアは、それぞれ、4.0±0.8及び2.5±1.3であった。
脳卒中から3カ月後、4匹の動物は、患手の母指と示指の対向指運動に関して影響を受けておらず、両手でピーナッツの皮を剥くという細かいタスクを完遂することができた。
【0412】
(3.4.4 認知能力に対する効果)
結果を表8に示す。
【0413】
モデル対照群の3匹のアカゲザルは、脳卒中から3カ月後に空間的遅延応答試験を受け、その認知能力が顕著に減少した。これらの動物のうちの2匹は、1秒遅延試験の正答率が0%で試験を不合格となり、記憶、視空間、及び理解判断を含む、その認知能力が顕著に障害されていることが示唆された。同時に、患側(右側)の、重要な認知機能関連領域である、海馬及び側頭葉皮質の大規模な壊死を、28日目(D28)の動物のうちの2匹のMRIスキャンで観察することができた。残りの1匹の動物は、1秒遅延試験に合格することができたが、5秒遅延試験には不合格であった(正答率63%)。
【0414】
DOX+PMP+MTP群の3匹の動物は、脳卒中から3カ月後の空間的遅延応答試験において、1秒、5秒、10秒、及び30秒の遅延課題試験を首尾良く完了し、脳卒中後60日間のDOX+PMP+MTP処置は、脳卒中動物の認知能力を有意に改善することができることが示唆された(モデル対照群に対して、P<0.05)。
【0415】
アカゲザルにおける180分の中大脳動脈閉塞の再疎通による認知機能不全のモデルにおけるDOX+PMP+MTP組成物の60日間の経口投与は、脳浮腫/脳梗塞容積及び神経行動スコアを有意に低下させ、記憶、視空間、及び理解判断を含む、認知機能を有意に改善し、かつ認知症の進行を予防及び妨害することができた。
【0416】
(3.4.5 安全性の許容範囲)
DOX、PMP、及びMTPの安全な用量範囲及び有毒な副作用は公知である。一般的に使用されるDOX錠の投薬量は、1日2回、4~8mg/回である。PMPの推奨される個別用量は、1日に0.375mg~4.5mgである。特発性パーキンソン病を治療するための初期用量は、1日に0.375mgであり、その後、用量を5~7日毎に1回に増加させ、最大用量は、1.5mgである。日用量が1.5mgよりも大きい場合、眠気の発生率が増加する。MTPの推奨用量は、100~200mg/日であり、必要に応じて、300mg/日又は400mg/日に達することがある。既知の有害反応は、低血圧である。
【0417】
この試験において、アカゲザルの投薬量に基づいて計算されたヒトの投薬量は、推奨される投薬量の最大値よりも低く、そのため、理論的には、本発明のDOX+PMP+MTPの併用は、非常に良好な安全性を有する。
【0418】
上記の実験の間、頭蓋内出血などの薬物投与に関連した有害事象は、DOX+PMP+MTP群の4匹全ての動物において、薬物投与期間の全体を通して、磁気共鳴イメージング検査で見られず、これにより、本発明のDOX+PMP+MTPの併用は、良好な安全性を有し、出血のリスクを引き起こしたり、悪化させたりしないことがさらに確認された。臨床応用において、本発明の治療方法は、対象を治療するための静脈内rt-PA血栓溶解又は/及び血管内治療と組み合わせることができる。
表8 アカゲザルにおける空間的遅延応答試験の結果
【表21】
【0419】
(4.実施例4)
本発明者らは、レーザー光凝固法を用いて、網膜静脈閉塞症(RVO)アカゲザル動物モデルを作製し、網膜静脈閉塞症の予防、治療、及び/又は改善における医薬組成物の効果を評価するために、網膜及び網膜神経線維層(RNFL)の構造の変化を観察して、網膜浮腫の程度を低下させ、及び視神経を保護する際のドキサゾシン+プラミペキソール+メトプロロールの医薬組成物の効果を評価した。
【0420】
(4.1 実験材料)
実験材料は、実施例2.1に記載されているものと同じであった。
【0421】
(4.2 具体的な実験スキーム)
(4.2.1 実験動物)
Primed Primate Research Centerより提供された、一般グレードの4~6歳の6匹の健康なアカゲザル(Macaca mulatta)(アカゲザル(Rhesus Macaque))を選択した。実験期間中の給餌環境グレード:通常グレード。温度: 18~26℃。相対湿度: 40%~70%。換気: 100%新鮮な空気を用いて、1時間に8回以上の空気交換(空気循環なし)。照明時間:自動照明、12時間毎に明暗を交互に繰り返す。動物ケージ: 850*900*2365mmの二重層ステンレス製ケージ。給餌密度: 1ケージに1匹。動物が関与する全ての手順は、眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVOの声明に準拠し、全ての操作は、Primed Primate Research CenterのIACUC委員会による審査及び承認を受けていた。
【0422】
(4.2.2 レーザーによるRVOアカゲザル動物モデルの作製)
3~5歳の6匹の健康な雄アカゲザルを、まず細隙灯、眼底検査、OCT検査、及び眼底蛍光血管造影に供し、眼障害がないことを確認した後、アカゲザルの左眼の視神経円板周囲の上幹静脈を、レーザーの黄色光を用いて閉鎖して、RVOモデルを作成し、眼底蛍光血管造影を直ちに行って、RVOの形成を確認した。検査を、手術から7日、14日、及び42日後に行った。
【0423】
モデル化方法:塩酸ケタミン(20mg/kg)とデクスメデトミジン(0.015mg/kg)の筋肉内注射による麻酔の後、1滴の複合トロピカミド点眼液を散瞳のために両眼に添加した。両眼を十分に散瞳させた後、アカゲザルをレーザー(Vitra 532nm、Quantel Medical)の前にうつ伏せに寝かせ、その頭をヘッドフレームに固定し、モデル化される眼に対して、手持ち式の眼底検査鏡(Area Centralis, Volk Optical社)を使用し、細隙灯(TOKA TSL-5, Wenzhou Raymond Photoelectricity Tech. Co., Ltd.)を調節して、サルの網膜構造を調べた。レーザー光凝固は、上網膜分枝静脈の遠位端(視神経円板の端から約2視神経円板直径)から開始し、徐々に近位端へと移動し、レーザー閉塞長は、約1視神経円板直径であった。成功は、血管が白くなること、血液の逆流がないこと、及び静脈の遠位端が蛇行状に拡張することを特徴とした。手術後、眼底撮影と血管造影を行って、上網膜分枝静脈が完全に閉塞していることを確認した。結果を図20に示す。
【0424】
(4.2.3 群分け及び投与)
6匹のアカゲザルの左眼にレーザー光凝固により作成したRVOモデルが成功していることをFFAにより検討した。RVOアカゲザルモデルは、手術後に、網膜出血、嚢胞性浮腫、及び灌流領域がないことなどの典型的な兆候を示し、これらは、臨床患者のものと同様であった。これらを、手術から3~5時間後に、2つの群に分け、連続42日間経口投与した。組成物の投薬量と頻度は、次の通りであった:
プラセボ群(n=3、3眼):果実を投与した。
DOX+PMP+MTP群(n=3、3眼): DOX: 0.266~0.532mg/kg; PMP:0.002~0.004mg/kg; MTP: 1.667mg/kg; 1日2~3回。
【0425】
(4.3 観察指標及びモニタリング方法)
(4.3.1 主な有効性指標)
主な有効性指標は、以下を含む:(1)閉塞部位周囲の網膜浮腫のOCT定量評価;(2)視神経円板周囲の神経線維層(RNFL)の厚さの変化のOCT定量評価;(3)網膜出血、静脈蛇行、拡張、綿毛斑、硬滲出、視神経円板浮腫、血管鞘形成などのFP検査;(4)網膜血管の蛍光漏出、網膜の非灌流領域、網膜毛細血管の減少などのFFA検査。
【0426】
検出頻度:モデル化前及びモデル化直後、モデル化から7日後、14日後、及び42日後。
【0427】
検出方法: FP法及びOCT法に関する記載は、実施例2の網膜厚/網膜神経線維層厚のFP/OCT検査のもの同じであった。
【0428】
FFA眼底フルオレセイン血管造影の具体的な工程は、次の通りであった:動物に麻酔をかけた後、下肢の皮膚を滅菌し、足関節に近い下肢背側の静脈に4mlの生理食塩水を含むシリンジを貫通させ、血液の逆流を確認した後、それを、急速注入のために3mlの20%フルオレセインナトリウムと置き換え、その後、異なる時間及び部位における血管造影写真を撮影した。
【0429】
(4.3.2 統計解析)
結果は全て、統計処理により、平均±SDとして表した。統計解析は、Graphpad Prism(8.0版)を用いて、両側T検定により行い、p<0.05を統計的有意とみなした。
【0430】
(4.4 実験結果及び考察)
(4.4.1 FP及びFFA検査の結果)
FP及びFFAをモデル化直後に行い、その結果、RVOアカゲザルモデルが左眼の視神経円板周囲の上枝幹静脈におけるレーザー光凝固によってうまく作成されることが示され;眼底カラー写真により、網膜における明らかな静脈拡張及び蛇行と、静脈の白色化と、血液の逆流がないこととが示され; FFPフルオレセイン血管造影により、静脈閉塞領域付近での充満遅延と蛍光漏出が示された。図20を参照されたい。
【0431】
プラセボ群:投与7日目(モデル化D7)に、非灌流領域及び閉塞部位周囲辺の網膜炎状出血、静脈拡張、及び広い領域の毛細血管蛍光漏出がプラセボ群でのFP及びFFA検査により観察され、これは、RVO患者のものと同様であった。
【0432】
DOX+MTP+PMP群: RVOアカゲザルの処置7日目に、網膜閉塞部位周囲の毛細血管の蛍光漏出(これは、プラセボ群のものよりも明らかに軽度である)、及び網膜炎状出血(プラセボ群のものよりも軽度である)を観察することができた。図21を参照されたい。
【0433】
(4.4.2 閉塞部位周囲の網膜浮腫のOCT定量評価)
結果を図22に示す。
【0434】
投与14日目に、上網膜分枝静脈閉塞部位の網膜浮腫は、プラセボ群で重度であり、その厚さは、モデル化前の厚さと比較して、平均229±11μm増加し;プラセボ群と比較して、DOX+MTP+PMP群は、14日間の処置の後、上網膜分枝静脈の閉塞部位周囲の網膜浮腫を有意に低下させ(p<0.05)、その厚さは、モデル化前の厚さと比較して、平均160±24μm増加した。
【0435】
(4.4.3 網膜神経線維層(RNFL)のOCT定量評価)
結果を図23に示す。
【0436】
投与42日目に、プラセボ群(N=3)の網膜神経線維層(RNFL)の平均厚さは、モデル化前のものと比較して、10±4μm減少した。プラセボ群と比較して、DOX+MTP+PMP群(N=3)は、投与42日目のRNFLの減少を有意に阻害し(p<0.05)、RNFLの平均厚さは、モデル化前のものと比較して、わずか2±2μmしか減少しなかった。
【0437】
上記のことから、RVOアカゲザルの42日間のDOX+MTP+PMP処置は、閉塞部位でのRVO誘導性網膜浮腫を有意に低下させ、網膜構造を保護し、RNFLの低下を阻害し、かつ視神経に対する保護効果を示すことが示された。
【0438】
(5.実施例5)
本発明者らは、自然発症性糖尿病性末梢神経障害を有するアカゲザル実験モデルに対する58日間の処置を通じて、神経電気生理学的検査(筋電図)-神経伝導機能検査を用いて、糖尿病性末梢神経障害に対するドキサゾシン+プラミペキソール+メトプロロールの医薬組成物の有効性及び安全性許容範囲を評価した。本実験では、エパルレスタットを陽性対照として使用した。
【0439】
(5.1 実験材料)
表9 試験薬及びその用量
【表22】
注:サルの用量は、体表面積法又はインビボ薬物濃度曝露法を用いて、ヒトの用量に用量換算することができる。
試験製品1:
名称又は略称(英語名):メシル酸ドキサゾシン(DOX)
純度: 98%HPLC
Shanghai Ziqi Biotechnology Co., Ltd.製
試験製品2:
名称又は略称(英語名):プラミペキソール2HCL一水和物(PMP)
純度: 99.55%HPLC
Shanghai Ziqi Biotechnology Co., Ltd.製
試験製品3
名称又は略称(英語名):メトプロロール酒石酸塩(MTP)
純度: 98%HPLC
Aladdin(Shanghai) Reagent Co., Ltd.製
陽性対照薬
名称又は略称:エパルレスタット
バッチ番号: RS20200323
物理的及び化学的性質:白色粉末
純度: 98%
TOKYO CHEMICAL INDUSTRY CO., LTD.製
【0440】
(5.2 具体的な実験スキーム)
(5.2.1 実験動物)
動物種:アカゲザル(Rhesus monkeys)、アカゲザル(Macaca mulatta)(アカゲザル(Rhesus Macaque))
グレード:通常グレード。アカゲザルは、身体検査、2回の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の検査、寄生虫検査、サルモネラ菌検査、赤痢菌検査、及びB型ウイルス検査を含む検査の前に、隔離して適格性を確認した。
動物識別:首輪にアラビア数字が刻印されたステンレス製ナンバープレート及び胸のタトゥー。
供給元: Ya'an Primed Biotechnology Co., Ltd.(Primed Primate Research Center)
生産免許番号: SCXK(Sichuan) 2019-027
検査システムは、AAALACの要件に従った。
【0441】
(5.2.2 実験の選択基準)
自然発症DPNを有する合計20匹のアカゲザルを実験用に選択した。選択基準は、次の通りであった:
1) 13~25歳の20匹の雄又は雌(40~75歳のヒト成人に相当する); 13匹の雄; 7匹の雌。
2)3~7年の糖尿病経過:空腹時血糖(FPG):年齢をマッチさせた対照(4.1±0.3mmol/L)に対して、5mmol/L超;
3)慢性感覚運動性遠位対称性神経障害(DSPN):
【0442】
神経筋電図(EMG)を神経生理学的検査に使用して、電気信号を伝導する太い末梢有髄線維神経の能力を評価した。これらを、少なくとも6カ月間神経損傷が持続している、遠位対称性糖尿病性末梢多発性神経障害(DNPの一般的なタイプ)として選択し、診断した。神経の検出には: 1)感覚神経伝導機能:正中神経(左側及び右側)、尺骨神経(左側及び右側)、腓腹神経(左側及び右側)、浅腓骨神経(左側及び右側);及び2)運動神経伝導機能:正中神経(左側及び右側)、尺骨神経(左側及び右側)、総腓骨神経(左側及び右側)が含まれた。本試験における神経伝導速度異常(SNCV)の基準は、糖尿病性末梢神経障害WHO国際共同研究(WHOPNTF)のDPN基準と一致していた。
【0443】
下の表10に示されている基準に適合するものを神経伝導異常とした:
表10 神経伝導異常の基準
【表23】
【0444】
比較のために、下の表11は、健常アカゲザル(非糖尿病)の神経伝導速度の基準値(20匹の年齢をマッチさせた健常アカゲザルの測定平均値からのデータ)を示している。
表11 年齢をマッチさせた非糖尿病サル対照の神経機能パラメータ
【表24】
【0445】
(5.2.3 群分け及び投与)
自然発症DPNを有する20匹のアカゲザルを6つの群に分けた。具体的な群分けを下の表12に示す。表13は、各々の群の自然発症DPNを有する被験アカゲザルの神経筋電図における神経伝導パラメータの異常検出を提供している(表10の基準に従って判断した)。
表12 DPNアカゲザルの群分け及び基礎データ
【表25】
表13 ベースライン期間-各々の群の自然発症DPNを有する被験アカゲザルの神経筋電図における異常検出
【表26】
【0446】
本試験には、DOX+PMP+MTP群(n=4)、エパルレスタット群(n=4)、DOX+MTP群(n=3)、PMP群(n=3)、DOX+PMP群(n=2)、及びプラセボ群(n=4)が含まれた。各々の群の投与スキームは、下記のものであり、ここで、投与経路は、経口投与であった。ベースライン期間は1カ月間とし、その後、58日間、連続経口投与して、神経伝導速度に対する58日間の処置の効果及び神経機能の連続的悪化を低下させる能力を評価した。以下は、群分け及び投薬量情報であった:
DOX+PMP+MTP群: 4匹の動物
D0~D14: DOX+PMP+MTP: 0.133+0.002+0.833mg/kg、1日2回
D15~D28: DOX+PMP+MTP: 0.133+0.002+1.667mg/kg、1日2回
D29~D58: DOX+PMP+MTP: 0.266+0.004+1.667mg/kg、1日2回
エパルレスタット群: 4匹の動物;用量は、2.5mg/kg(40~80mgの臨床等価用量に相当)であり、D0~D58に1日1回、1~2週目は1日1回、3~8週目は1日2回投与した。
DOX+MTP群: 3匹の動物
D0~D28: DOX+MTP: 0.266mg/kg+1.667mg/kg、1日2回
D29~D58: DOX+MTP: 0.53mg/kg+3.3mg/kg、1日2回
PMP群: 3匹の動物
D0~D58: 0.004mg/kg、1日2回
DOX+PMP群: 2匹の動物
D0~D28: 0.133mg/kg+0.002mg/kg、1日2回
D29~D58: 0.266mg/kg+0.004mg/kg、1日2回
プラセボ群: 4匹の動物、飲料水又は果物を与え、58日間連続観察した。
投与経路:食餌誘発性投与。
投薬量の計算:毎回計量される体重に従って、次週の投薬量を計算する。
【0447】
(5.3 観察指標及び観察方法)
(5.3.1 主な有効性指標)
(5.3.1.1 神経筋電図)
検出方法:化合物ケタミンを筋肉内注射した。麻酔後、受信電極、参照電極、及びアース線を準備した四肢の皮膚に貼り付け、指定部位を刺激電極を用いて刺激した。画像が安定するまで電流を増加させ、その後、保存し、刺激電極と受信電極の間の距離(感覚伝導)又は2つの刺激点間の距離(運動伝導)を測定した。検出中、環境を静かに保つべきであり、検出環境の温度を20℃~25℃に制御すべきであった。試験者は、二重盲検である必要があり、動物の投与情報を知らなかった。
試験項目:表14を参照されたい。
検出頻度:投与前に1回及び投与後(投与58日)に1回。
検出機器: Haishen NDI-092型筋電図/誘発電位装置。
表14 筋電位検出の指標
【表27】
【0448】
(5.3.2 その他の有効性指標)
(5.3.2.1 糖脂質代謝指標及び血液生化学指標)
血液サンプルの収集方法:表15を参照されたい。具体的には:動物を採血作業の前日に一晩絶食させ、翌日08:00に、麻酔なしで、前腕静脈から採血した。
表15 サンプル収集及び処理情報
【表28】
検出指標及び検出方法:表16を参照されたい
検出頻度:投与前に1回及び投与から58日後に1回
検出機器: Roche cobas6000分析装置シリーズC501モジュールを検出に使用した。
表16 血液生化学的検出項目
【表29】
【0449】
(5.3.2.2 臨床症状の観察)
観察回数: 1日1回。
観察内容:皮膚、被毛、眼、耳、鼻、口、胸部、腹部、尿生殖部、四肢等など、及び呼吸、運動、排尿、排便、及び行動の変化。
【0450】
(5.3.3 データ処理)
結果は、個別データの形で表した。Microsoft Office Excel 2016ソフトウェアをデータ処理及び統計解析に使用した。測定データは「平均値±SD」で表した。投与前の最新データをベースライン値と考え、投与前後の指標を反復測定により統計解析し、P<0.05は、差が統計的に有意であることを意味した。
【0451】
(5.4 実験結果及び考察)
(5.4.1 神経機能の改善に対する効果)
(5.4.1.1 感覚神経伝導速度に対する効果)
糖尿病性末梢神経障害を有するアカゲザルの感覚神経伝導速度に対する被験薬の効果を評価するために、表13において「異常」と表示されている感覚神経を、投与前(ベースライン)及び投与後58日目(D58)に筋電図による測定に供した。結果を表17並びに図24及び図25に示す。
【0452】
プラセボ群(n=4):投与後、各々の神経の伝導速度に有意な変化は観察されず、これにより、このモデルが比較的安定していることが証明された。ベースラインに対するD58における7本の異常神経の伝導速度測定値の変化は、-0.4±1.0m/sであった。
【0453】
エパルレスタット群(n=4):ベースライン値と比較して、58日間投与された異常な伝導速度を有する13本の神経は、SCVが有意に増加して、その恩恵を受け、平均増加は4.2±4.0m/sであり、これは、プラセボ群と比較して、極めて有意に増加していた(プラセボ群に対して、P<0.01)。
【0454】
DOX+PMP+MTP群(n=4):ベースライン値と比較して、58日間投与された異常な伝導速度を有する17本の神経は、SCVが有意に増加して、その恩恵を受け、平均増加は4.3±3.4m/s(ベースライン値に対して、P<0.05)であり、これは、プラセボ群と比較して、極めて有意に増加していた(プラセボ群に対して、P<0.01)。
【0455】
さらに、プラセボ群と比較して、感覚神経伝導速度異常の有意な改善は、DOX+MTP群、PMP群、及びDOX+PMP群で観察されず、プラセボ群と比較して、統計的に有意な差はなかった(プラセボ群に対して、P>0.05)。
表17 糖尿病性末梢神経障害を有するアカゲザルの感覚神経伝導速度に対する58日間の投与の効果
【表30】
注:*ベースライン値に対して、p<0.05。変化の値=投与終了-ベースライン値。
【0456】
(5.4.1.2 腓腹神経の感覚伝導速度に対する効果)
DPNを有する患者における感覚神経伝導速度(SCV)異常の程度及び割合は、運動神経伝導速度(MCV)異常の程度及び割合よりも重度であり、患者の神経学的異常は、通常、上肢よりも下肢(腓腹神経)で重度であった。DPNアカゲザルの疾患表現型の特徴は、DPN患者のものと類似していた。それゆえ、投与から58日後のDPNアカゲザルの腓腹神経の感覚伝導速度が改善されるかどうかの評価を主要な有効性指標とした。DPNアカゲザルの「異常な」腓腹神経の感覚伝導速度に対する被験薬の効果の結果を、表18、図26、及び図27に示す。ベースラインと比較して、投与から58日後、正常に戻っているかもしくは2~5m/s増加している神経伝導速度を効果があると診断し、又は5m/sを超えて増加しているものを有意に効果があると判定した。
【0457】
プラセボ群(n=4):投与後の各々の神経において有意な伝導速度の変化は観察されず、ベースライン値と比べた投与から58日後の7本の異常神経の伝導速度(SCV)測定値の平均変化は、-0.4±1.0m/sであり、このモデルが比較的安定していることが示された。ベースラインと比較して、0/7の神経が効果的であった。
【0458】
エパルレスタット群(n=4):ベースライン値と比較して、7本の異常神経の腓腹神経の感覚神経伝導速度(SCV)は、投与から58日後に、平均3.2±3.9m/s増加し、これは、プラセボ群と比較して、有意に増加していた(プラセボ群に対して、P<0.05)。ベースラインと比較して、4/7の神経を伝導速度が効果的に改善していると判定した。
【0459】
DOX+PMP+MTP(n=4):ベースライン値と比較して、投与から58日後の8本の異常腓腹神経の感覚神経伝導速度(SCV)は有意に増加し、平均増加は4.6±3.9m/s(ベースライン値に対して、P<0.05)であり、これは、プラセボ群と比較して、極めて有意に増加していた(プラセボ群に対して、P<0.01)。ベースラインと比較して、6/8(75%)の神経を伝導速度が効果的に改善していると判定した。
【0460】
さらに、プラセボ群と比較して、腓腹部感覚神経伝導速度の異常の有意な改善は、DOX+MTP群、PMP群、及びDOX+PMP群で観察されず、プラセボ群と比較して、統計的に有意な差はなかった(プラセボ群に対して、P>0.05)。
表18 DNPアカゲザルの腓腹感覚神経伝導速度に対する58日間の投与の効果
【表31】
注:*ベースライン値に対して、p<0.05。変化の値=投与終了-ベースライン値。
【0461】
(5.4.1.3 運動神経伝導速度に対する効果)
本試験に登録されたDPNアカゲザルの各々の群において運動神経伝導速度(MCV)が異常な神経の数は少なく、統計的基準を満たさなかった。それゆえ、運動神経伝導速度に対する効果を本試験では検討しなかった。さらに、DPNを有する患者における感覚神経伝導速度(SCV)異常の程度及び割合は、通常、運動神経伝導速度(MCV)異常の程度及び割合よりも重度であるため、SCVの効果が薬力学的試験でより重要であった。
【0462】
(5.4.2 組成物の安全性)
DOX、PMP、及びMTPの安全な用量範囲及び有毒な副作用は公知である。一般的に使用されるDOX錠の投薬量は、1日2回、4~8mg/回である。PMPの推奨される個別用量は、1日に0.375mg~4.5mgである。特発性パーキンソン病を治療するための初期用量は、1日に0.375mgであり、その後、用量を5~7日毎に1回に増加させ、最大用量は、1.5mgである。日用量が1.5mgよりも大きい場合、眠気の発生率が増加する。MTPの推奨用量は、100~200mg/日であり、必要に応じて、300mg/日又は400mg/日に達することがある。既知の有害反応は、低血圧である。
【0463】
この試験において、アカゲザルの投薬量に基づいて計算されたヒトの投薬量は、推奨される投薬量の最大値よりも低く、そのため、理論的には、本発明のDOX+PMP+MTPの併用は、非常に良好な安全性を有する。
【0464】
上記の実験の間、薬物投与に関連した有害事象(血液生化学的指標及び臨床所見を含む)は、DOX+PMP+MTP群の動物において、薬物投与期間の全体を通して見られず、これにより、本発明のDOX+PMP+MTPの併用は、良好な安全性を有することがさらに確認された。
【0465】
(5.4.3 結果の考察)
上記の実験結果から、58日間の経口投与のための3つの薬物(DOX+PMP+MTP)の併用は、自然発症DPNを有するアカゲザルモデルにおいて、神経伝導速度、特に、腓腹神経感覚神経伝導速度を有意に改善し、DPNの進行を制御及び緩和し、かつ投与期間中の良好な安全性を示すことができ、有効性の強度は、一般に使用される第一選択の臨床薬であるエパルレスタットのものに匹敵することが示された。
【0466】
(6.実施例6)
医薬組成物の例: 10kgのサルに対して、1.3mgのメシル酸ドキサゾシン(DOX)原薬粉末、0.02mgの塩酸プラミペキソール(PMP)原薬粉末、及び8.3mgのメトプロロール酒石酸塩(MTP)原薬粉末を均一に混合して、医薬組成物例を得た。この医薬組成物は、動物を飼養するための餌に入れて直接混合することができ、又は適当な賦形剤もしくは添加剤と混合した後に、経口錠剤へと調製することができた。
【0467】
本明細書中で言及される全ての特許開示及び特許出願は、各々の個々の特許開示又は特許出願が引用により組み込まれることが具体的かつ個別的に示されるのと同じ程度まで引用により本明細書中に組み込まれる。
【0468】
本発明の好ましい実施態様が本明細書に示され、説明されてきたが、これらの実施態様が例としてのみ提供されることが当業者には明らかであろう。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定し、それにより、これらの特許請求の範囲及びその等価物の範囲内の方法及び構造を包含することが意図される。
【0469】
(引用による組込み)
様々な刊行物が本明細書で引用されており、その開示は、引用により本明細書中に完全に組み込まれる:
【表32】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024520206000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【国際調査報告】