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特表2024-520207リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法
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  • 特表-リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法 図1A
  • 特表-リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法 図1B
  • 特表-リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-22
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240515BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240515BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240515BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572644
(86)(22)【出願日】2023-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2023078661
(87)【国際公開番号】W WO2023155930
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】202211742689.6
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522152256
【氏名又は名称】北京当升材料科技股▲フン▼有限公司
【住所又は居所原語表記】BUILDING 21, ZONE 18 OF ABP, NO. 188 SOUTH 4TH RING ROAD WEST, FENGTAI DISTRICT, BEIJING 100160, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲トン▼ 俊凡
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 彦彬
(72)【発明者】
【氏名】金 玉▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】王 文波
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 学全
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲亜▼▲飛▼
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA09
5H050EA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池用の正極材料およびその製造に関する。本開示による正極材料は、5~13m/gの固有比表面積を有する。本開示による正極材料は、必要な範囲内の固有比表面積および固有細孔径を有する。この点に関して、本開示による正極材料は、優れた粒子強度、優れたLiイオン輸送能力、および電解質侵食に対する良好な耐性を有する。リチウム電池に使用すると、電池に優れたレート性能とサイクル性能を与えることができる。本発明は、前記正極材料の製造方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~13m/gの固有比表面積を有する正極材料。
【請求項2】
前記正極材料が、以下の式:
2.1nm≦R10≦2.5nm、23.0nm≦R50≦27.0nmおよび100.0nm≦R90≦160.0nm
を満たす固有細孔径を有する、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極材料の平均粒径が7.8~14.2nmであるか、または前記正極材料の圧縮密度が2.0~3.8g/cmである、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記正極材料を1.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA1.5が15%以下である;または
前記正極材料を2.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA2.5が40%以下である;または
前記正極材料を3.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA3.5が60%以下である;または
前記正極材料を4.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA4.5が100%以下である
請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質と、任意にその表面の少なくとも一部上のコーティング層とを含み、
ここで、前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質中の前記ニッケルコバルトマンガン活物質は、組成LiNiCoMnを有し、ここで、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5であり、
ここで、前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質のドーパントは、AlとZrとからなる群から選択される少なくとも一つである第一のドーパント元素M;Y、Ti、Nb、Cr、ErおよびMgからなる群より選択される少なくとも一つである第二のドーパント元素G;およびBa、V、Sr、Ta、Mo、WおよびCeからなる群から選択される少なくとも一つである第三のドーパント元素Tを含んでおり、
ここで、前記コーティング層は、B、Al、SiOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの酸化物を含む、
請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質が、組成Li1+a(NiCoMn)Oを有し、ここで、0≦a≦0.1、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5、0<d≦0.08、0<e≦0.05、0<f≦0.03、1<e/f<5、およびx+y+z+d+e+f=1である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の正極材料を製造する方法であって、該方法は、
前駆体をリチウム源と混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することによって、前記正極材料の前駆体をリチウム化に付することを含み、
前記順序化された焼成は:
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよびニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である
方法。
【請求項8】
前記酸素雰囲気は酸素を導入することによって形成され、好ましくは酸素の流量Qが1~2m/kg・hである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の焼成が350~450℃の温度で1~10時間行われ、
前記第二の焼成において、焼成温度Tが690+(1-x)500~770+(1-x)500℃であり、ここで、0.3≦x≦0.99であり;
酸素の流量Q(m/kg・h)および第二の焼成時間t(時間)が、-13.17ln(Q)+14.54≦t≦-13.17ln(Q)+16.54の関係を満たし、ここで、酸素の流量Qが1~2m/kg・hである、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(1)ニッケル塩、コバルト塩、およびマンガン塩を共沈して、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体を形成すること;
(2)前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体を、リチウム源、第一のドーパント元素を含む第一のドーパント、第二のドーパント元素を含む第二のドーパント、および第三のドーパント元素を含む第三のドーパントと混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することにより、前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体をドーピングおよびリチウム化に付すことであって、
ここで、前記順序化された焼成が、
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよび前記ニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である、ドーピングおよびリチウム化に付すこと;および
(3)前記第二の焼成生成物の表面の少なくとも一部にコーティング層を設けること;
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ニッケル塩が、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、および塩化ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記コバルト塩が、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルトおよび硫酸コバルトからなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記マンガン塩が、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガンおよび塩化マンガンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記リチウム源が、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウムおよび酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第一のドーパント元素を含む前記第一のドーパントが、第一のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第一のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第一のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第一のドーパント元素の前記塩は、前記第一のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記第二のドーパント元素を含む前記第二のドーパントが、前記第二のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第二のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第二のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第二のドーパント元素の前記塩は、前記第二のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記第三のドーパント元素を含む前記第三のドーパントが、前記第三のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第三のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第三のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第三のドーパント元素の前記塩は、前記第三のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記共沈が、沈殿剤の溶液および錯化剤の溶液の存在下で行われ、
好ましくは、前記沈殿剤が、NaOH、KOHおよびLiOHからなる群から選択される少なくとも一つであり、前記錯化剤が、アンモニア、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング層を設けることが、前記第二の焼成生成物とコーティング剤とを混合し、250~500℃での第三の焼成に付することを含み;
好ましくは、前記コーティング剤が、ホウ酸、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、ケイ酸、オルトケイ酸またはパラタングステン酸アンモニウムを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の焼成が一定温度で行われ、前記第二の焼成が一定温度で行われ、前記第三の焼成が一定温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の正極材料のリチウム電池における使用。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項に記載の正極材料を含む、リチウム電池用の正極。
【請求項17】
正極、負極、および前記正極と負極との間のセパレータを備え、前記正極が請求項1~6のいずれか一項に記載の正極材料を含む、リチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池に関し、より詳しくは、リチウムイオン電池用の正極材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は二次電池の一種であり、高い比エネルギー、高いセル電圧、長いサイクル寿命などの利点を有する。これらは、携帯電話、ラップトップなどの分野で広く使用されてきた。リチウムイオン電池の主に正極材料、セパレータ、電解質、および負極材料のような種々の構成要素は、それぞれ独自の機能を持っている。電極材料は電池の重要な構成要素であり、電気エネルギーの生成を決定し得るものである。負極材料と比較して、正極材料は電池の性能に影響を与える最も重要な要素である。これらは、リチウムイオン電池の容量とサイクル性能を直接決定し得るものである。電池の安全性と比エネルギーをさらに向上させる要求に合わせて、より最適化された正極材料を開発する必要がある。
【0003】
電池の正極材料として三元材料が提案されている。三元材料は、LiNiCo1-x-y(MはMnまたはAlである)の組成を有し得るものである。これらは、金属Mの種類に応じてNCMとNCAに分類され得る。これらは正極材料の主流の選択肢の一つとなっており、広く開発および応用されている。
【0004】
ただし、三元材料には、サイクル性能の低下やガス発生の深刻化など、潜在的な欠点がある可能性がある。一般に、電池の正極材料としては、三元材料の複数の一次粒子から構成される三元材料の二次粒子が使用される。三元材料を含む正極材料は電解質と接触する可能性がある。電池の充電中、正極材料内の三元材料は、金属イオンの溶解など、電解質との副反応を受ける可能性がある。副反応は間接的に正極材料の粒子強度の低下を引き起こし、一次粒子やその界面で亀裂が徐々に増加拡大し、さらには正極材料の粒子が破損することがある。その結果、正極材料のより多くの表面が電解質にさらされ、より多くの副反応が引き起こされる可能性がある。したがって、悪循環を形成する可能性がある。これに応じて、電池の性能、特にサイクル性能が悪影響を受ける。
【0005】
これらの問題を解決するために、現在提案されている改善策としては、主に粒径や構造形態の制御、コーティング、ドーピング、単結晶化などが挙げられる。たとえば、ドーピングは三元材料自体の粒子の強度を高めることができる。コーティングにより、電解質と三元材料との接触を制限できる。
【0006】
新しいエネルギー電気自動車や大容量蓄電システムの開発により、性能がさらに向上した二次電池の開発が進んでいる。したがって、電池のサイクル性能を向上させるために、さらなる改良を施した正極材料の開発が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池のサイクル性能を改善するために、本開示は、必要な範囲内の固有比表面積および固有細孔径を有する正極材料を提供する。本開示による正極材料は、優れた粒子強度、優れたLiイオン輸送能力、および電解質侵食に対する良好な耐性を有する。リチウム電池に使用すると、電池に優れたレート性能とサイクル性能を与えることができる。本開示は、正極材料を製造する方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様において、本開示は、5~13m/gの固有比表面積を有する正極材料を提供する。
【0009】
本開示で使用される「固有比表面積」という用語は、試験材料が強度の水洗浄を受けた後に測定されるBET比表面積を指す。具体的には、試験材料の粒子を室温で固液重量比1:40で脱イオン水に添加し、500rpm/分の撹拌速度で30分間洗浄する。水洗浄後の試験材料の粒子についてBET比表面積試験を行い、そのBET比表面積を「水洗浄後比表面積」として得る。上記水洗浄およびBET比表面積試験は、隣接する二つの「水洗浄後比表面積」が基本的に変化しなくなるまで(例えば、両者の差が5%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下になるまで)繰り返される。そして、最後に測定された「水洗浄後比表面積」が正極材料の「固有比表面積」となる。
【0010】
第二の態様おいて、本開示は、上記の正極材料を製造する方法を提供し、該方法は、
【0011】
前駆体をリチウム源と混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成(程序化焼結)に付することによって、前記正極材料の前駆体をリチウム化に付することを含み、
【0012】
前記順序化された焼成は:
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよびニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である。
【0013】
第三の態様において、本開示は、リチウムバリアにおける上記正極材料の使用を提供する。
【0014】
第四の態様において、本開示は、上記正極材料を含むリチウム電池用の正極を提供する。
【0015】
第五の態様において、本開示は、正極、負極、およびこれらの間に介在するセパレータを備え、正極が上記正極材料を含む、リチウム電池を提供する。
【0016】
上記正極材料の固有比表面積および固有細孔径は、強度の水洗浄により試験材料表面の遊離物質をおよび試験材料内部の一部の物質さえも除去した後に測定される。固有比表面積および固有細孔径が必要な範囲内にある場合は、長期間の電池サイクルの後でも、本開示による正極材料が依然として制御された細孔構成を有し得ることを示している。これは、長期間の動作後でも、本開示による正極材料が、リチウムイオンを輸送させるのに適切な長さの輸送経路をなお提供することができ、長い輸送経路によって引き起こされる容量およびレート性能の損失を回避することを意味する。同時に、電解質の侵食に耐える一定の能力が維持され、多くの副反応が回避される。
【0017】
正極材料を用いるリチウム電池は、0.1Cのレートで最大223.8mAh/gの放電容量、および、1Cのレートで80サイクル後に最大93.6%の容量維持率を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示における添付図面は、すべての可能な実施形態ではなく、選択された実施形態を例示することだけを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0019】
図1】実施例1-1で得られた正極材料P1の強度の水洗浄前後のSEM画像を示す模式図である。
図2】実施例1-1で得られた正極材料P1の強度の水洗浄前後のXRDパターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、実施例を除いて、パラメータのすべての数値は、実際に数値の前に「約」が現れるかどうかにかかわらず、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0021】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有し;また、用語が本明細書で定義されており、その定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合には、本明細書で提供される定義が優先するものとする。
【0022】
一つの態様において、本開示は、ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質が5~13m/gの固有比表面積を有する正極材料を提供する。
【0023】
好ましい実施形態において、前記正極材料は、以下の式を満たす固有細孔径を有する:
2.1nm≦R10≦2.5nm、23.0nm≦R50≦27.0nm、および100.0nm≦R90≦160.0nm。
【0024】
本開示による正極材料は粒子の形態である。粒子の特性は、BET比表面積試験で特徴付けることができる。BET比表面積試験は、粒子の比表面積(BET比表面積)、細孔容積、細孔径分布、窒素吸脱着曲線を測定するために使用され得る。BET比表面積は、材料の単位質量あたりの総面積を指す。
【0025】
本開示で使用される「固有比表面積」という用語は、試験材料が強度の水洗浄を受けた後に測定されるBET比表面積を指す。具体的には、試験材料の粒子を室温で固液重量比1:40で脱イオン水に添加し、500rpm/分の撹拌速度で30分間洗浄する。水洗浄後の試験材料の粒子についてBET比表面積試験を行い、そのBET比表面積を「水洗浄後比表面積」として得る。上記水洗浄およびBET比表面積試験は、隣接する二つの「水洗浄後比表面積」が基本的に変化しなくなるまで(例えば、両者の差が5%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下になるまで)繰り返される。そして、最後に測定された「水洗浄後比表面積」が正極材料の「固有比表面積」となる。
【0026】
それに応じて、本開示で使用される「固有細孔径」という用語は、正極材料が強度の水洗浄を受けた後に測定される粒子内の各細孔の細孔径の値を指す。細孔径の値に対応するR10、R50およびR90は、正極材料の「固有細孔径」を特徴付けるために使用される。細孔径の値を小さいものから大きいものまで列挙する。そして、全ての値に対応する10%、50%、90%の位置にある細孔径をそれぞれR10、R50、R90とする。
【0027】
固有比表面積および固有細孔径は、強度の水洗浄により試験材料表面の遊離物質および試験材料内部の一部の物質を除去した後に測定される。電池内において、試験材料(正極材料)が電解質と接触する可能性があり、同様の物質の溶出が生じる可能性がある。したがって、強度の水洗浄は、正極材料の長期使用のシミュレーションとみなすことができる。この点に関して、固有比表面積と固有細孔径は、長期サイクル後の試験材料の特性、特に粒子強度とその中のLiイオンの結合強度を正確に反映している可能性がある。本開示による正極材料は、必要な範囲内の固有比表面積および固有細孔径を有し、これは、長期間の電池サイクル後であっても、本開示による正極材料が依然として制御された細孔を有し得ることを示している。これは、長期間の動作後でも、本開示による正極材料が、リチウムイオンを輸送させるのに適切な長さの輸送経路を提供でき、長い輸送経路によって引き起こされる容量およびレート性能の損失を回避できることを意味する。同時に、電解質の侵食に耐える一定の能力が維持され、多くの副反応が回避される。
【0028】
好ましい実施形態において、前記正極材料は7.8~14.2nmのD50を有する。
【0029】
好ましい実施形態において、前記正極材料は2.0~3.8g/cmの圧縮密度を有する。
【0030】
一つの実施形態において、正極材料の比表面積は圧縮後に測定される。特に、正極材料は圧力iで圧縮され、粉砕され、篩にかけられる。篩を通した正極材料の比表面積を試験する。SSAは圧縮後の正極材料の比表面積であり、SSAは圧縮前の正極材料の比表面積である。比表面積の増加率は、△SSA=(SSA-SSA)/SSAの式を用いて計算される。
【0031】
好ましい実施形態において、
圧縮圧力iが1.5トンの場合、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA1.5は15%以下であってよく;
あるいは、圧縮圧力iが2.5トンの場合、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA2.5は40%以下であってよく;
あるいは、圧縮圧力iが3.5トンの場合、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA3.5は60%以下であってよく;
あるいは、圧縮圧力iが4.5トンの場合、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA4.5は100%以下であってよい。
【0032】
好ましい実施形態において、前記正極材料は、ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質と、任意にその表面の少なくとも一部上のコーティング層とを含んでもよい。一つの実施形態において、ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質中のニッケルコバルトマンガン活物質は、組成LiNiCoMnを有してもよく、ここで、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5であり、x、yおよびzの値は、組成中のすべての元素の価数の代数和をゼロにし、ここで、ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質のドーパントは、AlとZrからなる群から選択される少なくとも一つである第一のドーパント元素M;Y、Ti、Nb、Cr、ErおよびMgからなる群より選択される少なくとも一つである第二のドーパント元素G;およびBa、V、Sr、Ta、Mo、WおよびCeからなる群から選択される少なくとも一つである第三のドーパント元素T、を含むことができる。一つの実施形態において、コーティング層は、B、Al、SiOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの酸化物を含む。
【0033】
本開示による正極材料は、より高い粒子強度を得るために、順序化された焼成のステップを含む、ニッケルコバルトマンガン活物質のドーピングおよびリチウム化を行うことによって得られる。いかなる理論にも固執するつもりはないが、ドーパント元素が粒子の骨格に部分的に組み込まれ、格子構造が安定化し、それによって粒子の強度が増加すると考えられる。同時に、コーティング層がある場合には、正極材料と電解質との界面反応を抑制または緩和し、電解質による正極材料の腐食を抑制または緩和することができる。さらに重要なことは、ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質が正極材料の骨格を形成することである。これにより、本開示による正極材料は、必要な範囲内の固有比表面積および固有細孔径を有するようになる。したがって、複数回の電池サイクルの後でも、制御された細孔構成が維持される可能性がある。このような正極材料は、良好なレート性能および良好なサイクル安定性の特性を有し得る。
【0034】
好ましい実施形態において、前記ニッケルコバルトマンガン活物質の組成において、0.6≦x≦0.94、0.03≦y≦0.2、0.03≦z≦0.2である。
【0035】
一つの実施形態において、前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質は、組成Li1+a(NiCoMn)Oを有してもよく、ここで、0≦a≦0.1、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5、0<d≦0.08、0<e≦0.05、0<f≦0.03、1<e/f<5、およびx+y+z+d+e+f=1、である。
【0036】
別の態様において、本開示は、上記の正極材料を製造する方法を提供し、該方法は、
前駆体をリチウム源と混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することによって、前記正極材料の前駆体をリチウム化に付することを含み、
前記順序化された焼成は:
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよびニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である。
【0037】
一つの実施形態において、上記の正極材料を製造するための前記方法は、以下の(1)~(3)を含み得る:
(1)ニッケル塩、コバルト塩、およびマンガン塩を共沈して、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体を形成すること;
(2)前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体を、リチウム源、第一のドーパント元素を含む第一のドーパント、第二のドーパント元素を含む第二のドーパント、および第三のドーパント元素を含む第三のドーパントと混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することにより、前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体をドーピングおよびリチウム化に付し、
前記順序化された焼成は:
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよび前記ニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99であること;および
(3)前記第二の焼成生成物の表面の少なくとも一部にコーティング層を設けること。
【0038】
前記ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩は、リチウム電池正極材料または正極材料前駆体を製造する分野で一般に使用されるニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩であってよい。非限定的な例として、前記ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩は、それぞれニッケル、コバルトおよびマンガンの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであってよい。例えば、前記ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、および塩化ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つであってよく;前記コバルト塩は、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、および硫酸コバルトからなる群から選択される少なくとも一つであってよく;前記マンガン塩は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、および塩化マンガンからなる群から選択される少なくとも一つであってよい。
【0039】
一つの実施形態において、前記ニッケル塩、コバルト塩、およびマンガン塩は、溶液の形態で使用される。対応する金属元素に基づいて、前記溶液は、0.01~5モル/L、好ましくは0.5~3モル/L、より好ましくは1~2モル/L、例えば、0.01モル/L、0.1モル/L、0.5モル/L、1モル/L、2モル/L、3モル/L、4モル/L、5モル/Lの濃度を有し得る。
【0040】
共沈は、沈殿剤の溶液および錯化剤の溶液の存在下で操作され得る。好ましくは、共沈は連続的に操作することができる。
【0041】
一つの実施形態において、前記沈殿剤は、NaOH、KOH、及びLiOHからなる群から選択される少なくとも一つであり得る。好ましくは、前記沈殿剤の溶液は、0.02~10モル/L、例えば、0.05モル/L、0.1モル/L、0.5モル/L、約1モル/L、5モル/Lまたは10モル/Lの濃度を有し得る。
【0042】
前記錯化剤は、水溶液中で前記ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩からNi、Co、およびMnと錯体を形成することができる任意の化合物であり得る。一つの実施形態において、前記錯化剤は、アンモニウムイオン供与体、エタノールアミン系錯化剤、およびカルボン酸塩系錯化剤からなる群から選択される少なくとも一つであり得る。好ましくは、前記錯化剤はアンモニウムイオン供与体であり、好ましくはアンモニア、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つであり、より好ましくはアンモニアである。一つの変形例では、前記錯化剤の溶液は、0.01~15モル/L、例えば、0.01モル/L、0.1モル/L、0.5モル/L、1モル/L、5モル/L、10モル/Lまたは15モル/Lの濃度を有してよい。
【0043】
一つの実施形態において、ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩の溶液、沈殿剤の溶液、および錯化剤の溶液がそれぞれ反応系に連続的に供給され、ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩はモル比がx:y:zであり、x、yおよびzは上で定義したとおりである。共沈は、例えば50~90℃、好ましくは60~80℃の温度;pH9~13、好ましくは10~12、および濃度2~8g/Lの錯化剤の溶液の条件下で行うことができる。ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩の溶液、沈殿剤の溶液および錯化剤の溶液の供給速度は、供給速度が所定の範囲内に反応系のpHを維持する要件を満たすことができる限り、広い範囲で選択することができる。好ましくは、共沈は撹拌しながら行うことができる。好ましくは、撹拌速度は約100~1000r/分、好ましくは約400~800r/分、たとえば、100r/分、200r/分、300r/分、400r/分、500r/分、600r/分、700r/分、または800r/分である。
【0044】
共沈の生成物は、エージング、分離、洗浄および乾燥を受けて、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体を得ることができる。関連操作は、当技術分野における任意の従来の方法で実行することができる。
【0045】
共沈のステップで得られたニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体は、ドーピングおよびリチウム化を受けることができ、これは、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体を、リチウム源、第一のドーパント元素を含む第一のドーパント、第二のドーパント元素を含む第二のドーパント、および第三のドーパント元素を含む第三のドーパントと混合し、順序化された焼成に付することを含む。
【0046】
リチウム源は、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、および酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一つであり得る。第一のドーパント元素を含む第一のドーパントは、第一のドーパント元素の酸化物であってもよく、第二の焼成条件下で第一のドーパント元素の酸化物に変換され得る第一のドーパント元素の塩であってもよい。前記第一のドーパント元素の塩は、第一のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。第二のドーパント元素を含む第二のドーパントは、第二のドーパント元素の酸化物であってもよく、第二の焼成条件下で第二のドーパント元素の酸化物に変換され得る第二のドーパント元素の塩であってもよい。前記第二のドーパント元素の塩は、第二のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。第三のドーパント元素を含む第三のドーパントは、第三のドーパント元素の酸化物であってもよく、第二の焼成条件下で第三のドーパント元素の酸化物に変換され得る第三のドーパント元素の塩であってもよい。前記第三のドーパント元素の塩は、第三のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。リチウム源、第一のドーパント、第二のドーパント、および第三のドーパントは、(1+a):d:e:fのモル比で使用することができ、a、d、eおよびfは上記で定義されている。
【0047】
ドーピングおよびリチウム化の前記ステップにおいて、前記混合は、ボールミル粉砕、せん断、粉砕、ブレンドなどによって操作され得る。好ましくは、前記混合は1~4時間操作され得る。
【0048】
次に、混合後の混合物を順序化された焼成に付してもよい。順序化された焼成は、酸素雰囲気下で操作されてもよい。酸素雰囲気は、酸素を導入することにより形成することができ、酸素の流量Qは1~2m/kg・hとすることができる。
【0049】
一つの実施形態において、前記順序化された焼成は、第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得、焼成温度Tで第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含む。好ましくは、前記第一の焼成は、300~500℃、好ましくは350~450℃の温度、例えば、300℃、350℃、400℃、450℃または500℃の温度で、1~10時間、好ましくは4~8時間、例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間または8時間行うことができる。
【0050】
好ましくは、前記第二の焼成において、焼成温度Tは、670+(1-x)500~780+(1-x)500℃であってよく;好ましくは690+(1-x)500~770+(1-x)500℃;例えば、700+(1-x)500℃、710+(1-x)500℃、720+(1-x)500℃、730+(1-x)500℃、740+(1-x)500℃、750+(1-x)500℃または760+(1-x)500℃であり、ここで、上で定義したとおり、xはニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量であり、0.3≦x≦0.99である。
【0051】
一つの実施形態において、酸素の流量Q(単位:m/kg・h)および第二の焼成時間t(単位:時間)は、-13.17ln(Q)+14.54≦t≦-13.17ln(Q)+16.54の関係を満たすことができる。好ましくは、-13.17ln(Q)+14.54≦t≦-13.17ln(Q)+16.54である。たとえば、t=-13.17ln(Q)+15、t=-13.17ln(Q)+15.5、t=-13.17ln(Q)+16、またはt=-13.17ln(Q)+16.5である。
【0052】
第二の焼成により、主に2価のニッケルが酸化される。したがって、焼成時間が短すぎると酸化反応が不十分となり、二価のニッケルが過剰となる場合がある。したがって、Li/Niの著しい乱れが生じ、得られる正極材料の性能が低下する可能性がある。焼成時間が長すぎると、結晶化が著しく進行する場合がある。したがって、得られる正極材料のサイクル性能が低下したり、コストが上昇したりする可能性がある。この点において、適切な焼成時間は、焼成中の酸素流量に基づいて決定されるものとする。その結果、二価ニッケルの酸化を制御し、Li層中の二価ニッケルの含有量を減らし、Li/Niの乱れを抑制し、正極材料の過度の結晶化を回避することができる。最終的には、正極材料を含むリチウムイオン電池の充放電容量、レート性能、およびサイクル性能が向上する可能性がある。
【0053】
前記第一の焼成は、一定温度で行ってもよいし、可変温度で行ってもよい。例えば、前記第一の焼成は、300~500℃から選択される温度で1~10時間、好ましくは4~8時間維持することから構成され得る。あるいは、前記第一の焼成は、300~500℃から選択される二つ以上の温度の間で(例えば、一定速度、好ましくは1~10℃/分の速度、例えば1℃/分、2℃/分、4℃/分、5℃/分、7℃/分または10℃/分での加熱および冷却)、合計時間1~10時間、好ましくは4~8時間、加熱および冷却することを含んでもよい。変形例では、加熱と冷却の間に温度を維持するステップがあってもよい。
【0054】
前記第二の焼成は、一定温度で行ってもよいし、可変温度で行ってもよい。例えば、前記第二の焼成は、670+(1-x)500~780+(1-x)500℃から選択される焼成温度T、酸素流量Qで、時間t(時間)(-13.17ln(Q)+14.54~-13.17ln(Q)+16.54)行ってよい。あるいは、前記第二の焼成は、670+(1-x)500~780+(1-x)500℃から選択される2以上の温度の間で(例えば、一定速度で、好ましくは1~10℃/分の速度、例えば1℃/分、2℃/分、4℃/分、5℃/分、7℃/分、10℃/分で、加熱および冷却)、合計時間t(時間)(-13.17ln(Q)+14.54~-13.17ln(Q)+16.54まで)、加熱および冷却することを含んでもよい。変形例では、加熱と冷却の間に温度を維持するステップがあってもよい。
【0055】
本開示において、前記第一および第二の焼成に必要な温度までの加熱速度については特別な制限はない。好ましくは、速度は1~10℃/分、例えば1℃/分、2℃/分、4℃/分、5℃/分、7℃/分または10℃/分であり得る。
【0056】
前記第二の焼成後は、例えば室温まで自然冷却するなどの冷却操作を行ってもよい。第二の焼成生成物は、上述のドープされたニッケルコバルトマンガン活物質である。
【0057】
一つの実施形態においては、第二の焼成生成物の表面の少なくとも一部にコーティング層が設けられる。コーティング層は、B、Al、SiOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの酸化物を含むことができる。コーティング層を設けるステップは、第二の焼成生成物をコーティング剤と混合し、250~500℃で第三の焼成を行うことを含んでもよい。コーティング層を設ける際の混合は、ボールミル、せん断、粉砕、ブレンディング等により行うことができる。第二の焼成生成物とコーティング剤とを、例えば1:0.01~0.1のモル比で混合する。好ましくは、前記混合は1~4時間操作され得る。コーティング剤は、第三の焼成の条件下でコーティング層となり得る材料であればよい。これには、例えば、ホウ酸、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、ケイ酸、オルトケイ酸、またはパラタングステン酸アンモニウムが含まれ得る。
【0058】
前記第三の焼成は、一定温度で行ってもよいし、可変温度で行ってもよい。例えば、前記第三の焼成は、250~500℃から選択される温度で1~24時間、好ましくは6~12時間維持することから構成され得る。あるいは、前記第三の焼成は、300~500℃から選択される二つ以上の温度の間で(例えば、一定速度、好ましくは1~10℃/分の速度、例えば1℃/分、2℃/分、4℃/分、5℃/分、7℃/分または10℃/分で加熱および冷却)、合計時間1~24時間、好ましくは6~12時間加熱および冷却することを含んでもよい。変形例では、加熱と冷却の間に温度を維持するステップがあってもよい。前記第三の焼成の必要温度までの昇温速度には特に制限はない。好ましくは、速度は1~10℃/分、例えば1℃/分、2℃/分、4℃/分、5℃/分、7℃/分または10℃/分であり得る。
【0059】
前記第三の焼成生成物は、本開示による正極材料である。任意に、前記第三の焼成生成物を冷却し、篩にかけ、鉄不純物を除去してもよい。
【0060】
本願発明者は、驚くべきことに、正極材料に複数のドーパント元素を含有させ、その製造時に順序化された焼成に付すると、得られる正極材料の格子構造が安定し、粒子強度が向上する可能性があることを研究中に見出した。前記正極材料は、リチウム電池に、レート性能やサイクル安定性の向上など、より優れた電気化学的性能を与える可能性がある。
【0061】
本開示による正極材料は、リチウムイオン電池などの二次電池に使用することができる。リチウムイオン電池は、負極、正極、セパレータ、および電解質を備えることができる。
【0062】
前記正極は、正極集電体上に正極材料層を含み、前記正極材料層は本開示による正極材料を含む。前記正極材料層は、バインダーおよび導電剤をさらに含んでもよい。バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等からなる群から選択される樹脂材料が挙げられる。導電剤としては、炭素系材料または導電性ポリマーが挙げられる。炭素系材料は、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、炭素繊維、ナノチューブ、グラフェン、およびカーボンブラックを含み得る。導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどが挙げられる。集電体は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、銅、錫、または当業者に知られている他の導電性材料のうちの少なくとも一つを含むことができる。いくつかの変形例では、集電体は、炭素コーティングされたアルミニウム箔など、プレコーティングされていてもよい。
【0063】
本発明における負極の組成は特に限定されない。それは、リチウム金属シートなどの当技術分野で一般に使用される負極であってもよい。
【0064】
本発明におけるセパレータの組成は特に限定されない。それは、当該技術分野で一般的に使用されるセパレーターであり得る。例えば、セパレータは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンからなる多孔質膜であってもよい。
【0065】
前記電解質としては、非水電解質などの従来の各種電解質を使用することができる。前記非水電解質は、電解質リチウム塩を非水溶媒に溶解させた溶液である。当業者に知られている任意の従来の非水電解質を使用することができる。例えば、前記電解質は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)および六フッ化ケイ酸リチウム(LiSiF)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記非水溶媒は、直鎖状エステル、環状エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。前記直鎖状エステルは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、およびジプロピルカーボネート(DPC)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記環状エステルは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびビニレンカーボネート(VC)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【実施例
【0066】
本発明の特徴および利点は、以下の実施例から明らかである。実施例は説明を目的とするものであり、決して本発明を限定するものではない。
【0067】
試験方法
【0068】
1.BET比表面積と細孔径の試験
BET比表面積試験は、米国Micromeritics社のTristarII3020分析装置を用いて行われた。サンプルの前処理は温度300℃、脱ガス時間1時間の条件で行った。サンプルのBET比表面積および細孔径は、BET式に従って計算された。
【0069】
2.圧力下における比表面積の変化試験
3gのサンプルにそれぞれ0トン、1.5トン、2.5トン、3.5トン、4.5トンの圧力を加えて圧縮サンプルを得た。圧力下での比表面積の変化を特徴付けるために使用するために、圧縮サンプルのそれぞれについて上記のBET比表面積の試験を繰り返し、さまざまな圧力下での比表面積データを取得した。
【0070】
3.電池性能の試験
3.1電池サンプルの製造:
得られた正極材料と導電性カーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比95%:2.5%:2.5%で混合した。混合物に、N-メチルピロリドン(NMP)を撹拌しながら加えて、均一なスラリーを形成した。スラリーをアルミ箔上に塗布し、ブレードで平らにし、乾燥させ、ロールプレスで平らにし、100MPaの圧力で直径12mm、厚さ120μmの正極板に打ち抜き、次に真空乾燥炉で120℃で12時間乾燥させた。
【0071】
コイン電池を、水分含有量と酸素含有量が両方とも5ppm未満に制御されたAr保護雰囲気下のグローブボックス内で組み立てた。上記で得られた電極板を正極として用いた。直径17mm、厚さ1mmのLi金属シートを負極として使用した。セパレータとしては、厚さ25μmのポリエチレンの多孔質フィルムを使用した。電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1の混合物に1.0モル/LのLiPFを溶解させた溶液を用いた。電池シェルとしては、2025コイン電池用の電池シェルを使用した。組み立て後、活化化されていない半電池が得られた。
【0072】
3.2電池サンプルの性能評価:
(1)初期サイクル効率
組み立てたリチウムイオン電池サンプルを室温(25℃)、電流密度0.1C(1C=200mA/g)で試験し、初回サイクル時の充電比容量と放電比容量の値を求めた。初期サイクル効率は、最初のサイクルにおける充電比容量に対する最初のサイクルにおける放電比容量の比として計算した。
【0073】
(2)サイクル性能
電池の活性化:
組み立て後に得られたコイン電池サンプルを2時間放置した。開路電圧が安定した後、カットオフ電圧4.3Vまで0.1Cの定電流密度で充電し、定電圧で30分間充電した後、0.1Cの定電流でカットオフ電圧3.0Vまで放電した。続いて再度同様に充放電を行い、電池を活性化させた。
【0074】
活性化された電池サンプルは、電流密度1C、電圧範囲3.0~4.3V、温度45℃で、指定された回数(80サイクルなど)の充放電サイクルを受けた。容量維持率を計算するために、各サイクルでの放電比容量を得た。容量維持率=特定サイクルでの放電比容量/初期放電比容量100%。
【0075】
(3)レート性能
活性化された電池サンプルを、3.0~4.3Vの電圧範囲および室温で、それぞれ0.1C、0.2C、0.33C、0.5C、および1Cの電流速度で充電および放電サイクルに付して、異なるレートでの放電比容量を取得した。
【0076】
(4)リチウムイオン輸送係数
リチウムイオン輸送係数はEIS試験により試験した。具体的には、不活性化した電池サンプルを2時間放置し、0.1Cの定電流密度でカットオフ電圧4.3Vまで充電し、定電圧で30分間充電し、0.1Cの定電流で3.0Vのカットオフ電圧まで放電し、次に0.1Cの定電流密度で4.3Vのカットオフ電圧まで充電して、充分に充電された電池サンプルを得た。これを、周波数範囲100kHz~0.01Hz、振幅10mVでEIS試験に付した。次の式に従って、Zreをω-1/2に当てはめた直線の傾き、すなわちσが得られる:
Zre=Rs+Rct+σω-1/2、および
ω=2πf
ここで、Zreは試験から得られたインピーダンスパターンの実数部、Rsは溶液抵抗、Rctは電荷輸送に対する抵抗、ωは角周波数、fは試験周波数、σはワールブルグ係数である。
【0077】
材料バルクにおけるLi+拡散係数は、次のリチウムイオン拡散係数計算式に従って計算した。
Li =R/(2Aσ
ここで、Rは理想気体定数、Tは絶対温度、Aは電極の断面積、nは電子輸送数、Fはファラデー定数、Cは電極内のリチウムイオンの濃度である。
【0078】
実施例1-1
【0079】
(1)ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体の製造
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、および硫酸マンガンをモル比90:6:4で水に溶解して、混合塩の2モル/L溶液を形成した。沈殿剤の溶液としては、8モル/Lの水酸化ナトリウム溶液を使用した。錯化剤溶液としては、6モル/Lのアンモニア溶液を使用した。混合塩溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液をそれぞれオートクレーブに供給し、反応温度60℃、pH11.3、アンモニア濃度6g/Lとなるように供給速度を制御した。共沈は、600rpmの撹拌速度で操作した。80時間の反応後、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体が得られた。ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体をエージング、分離、洗浄、乾燥させて使用できる状態にした。
【0080】
(2)ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質の製造
前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体、リチウム源としての水酸化リチウム、第一のドーパントとして酸化アルミニウム、第二のドーパントとして酸化タングステン、および第三のドーパントとして炭酸ストロンチウムを、ミキサーで0.99:1.03:0.007:0.002:0.001のモル比で混合した。混合物を焼成炉内で順序化された焼成に供した。酸素を1.33m/kg・hの流量で導入しながら、混合物を室温から300℃まで3時間一定速度で加熱し、300℃で2時間保持して、第一の焼成を完成した。その後、混合物を780℃まで6時間かけて一定速度で加熱し、780℃で12時間保持して第二の焼成を完了した。最後に、混合物を室温まで自然冷却して、ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質を得た。ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質を冷却し、粉砕し、篩分けし、使用できるようにした。
【0081】
(3)正極材料の製造
ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質とコーティング剤としてのホウ酸を、高速ミキサー中で1:0.01のモル比で混合した。混合物を焼成炉内で350℃、10時間で第三の焼成をして、組成Li1.03(Ni0.896Co0.057Mn0.037Al0.007Zr0.002Sr0.001)O/Bを有する正極材料P1を得た。正極材料P1を冷却し、篩い分けして鉄不純物を除去し、使用に供した。
【0082】
上述のように、得られた正極材料P1を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表1-2に示す。
【0083】
同時に、得られた正極材料P1を強度に水洗浄し、SEMおよびXRD試験を行った。結果をそれぞれ図1図2に示す。
【0084】
図1は、実施例1-1で得られた正極材料P1の強度の水洗浄前後のSEM画像を示す模式図であり、Aは強度の水洗浄前のSEM画像、Bは強度の水洗浄後のSEM画像である。図1に示すように、実施例1-1の正極材料P1のSEM画像は、強度の水洗浄前後でほとんど差がなく、強度の水洗浄が実施例1-1の正極材料P1の構造に大きな影響を与えていないことがわかった。
【0085】
図2は、実施例1-1で得られた正極材料P1の強度の水洗浄前後のXRDパターンを示す模式図であり、Aは強度の水洗浄前のXRDパターン、Bは強度の水洗浄後のXRDパターンである。図2に示すように、実施例1-1で得られた正極材料P1の強度の水洗浄前後のXRDパターンは基本的に同一であり、強度の水洗浄が実施例1-1の正極材料P1の構造に大きな影響を与えていないことが示された。これは、SEM画像から得られた結果と一致していた。
【0086】
同時に、上述したように、得られた正極材料P1を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表1-3に示す。
【0087】
実施例1-2
【0088】
実施例1-1の材料および処理条件を表1-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例1-1と同様にして、正極材料P2を得た。
【0089】
正極材料P2の組成は、Li1.03(Ni0.896Co0.057Mn0.037Al0.006Nb0.0030.001)O/Bであった。
【0090】
上述したように、得られた正極材料P2を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表1-2に示す。
【0091】
上述のように、得られた正極材料P2を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表1-3に示す。
【0092】
比較例1-1
【0093】
実施例1-1の材料および処理条件を表1-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例1-1と同様にして、正極材料P3を得た。
【0094】
正極材料P3の組成は、Li1.03(Ni0.896Co0.057Mn0.037Zr0.005La0.0040.001)O/Bであった。
【0095】
上述したように、得られた正極材料P3を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表1-2に示す。
【0096】
上述のように、得られた正極材料P3を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表1-3に示す。
【0097】
比較例1-2
【0098】
実施例1-1の材料および処理条件を表1-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例1-1と同様にして、正極材料P4を得た。
【0099】
正極材料P4の組成は、Li1.03(Ni0.896Co0.057Mn0.037Al0.007Zr0.002Sr0.001)O/Bであった。
【0100】
上述のように、得られた正極材料P4を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を測定した。結果を表1-2に示す。
【0101】
上述のように、得られた正極材料P4を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表1-3に示す。
【0102】
比較例1-3
【0103】
実施例1-1の材料および処理条件を表1-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例1-1と同様にして、正極材料P5を得た。
【0104】
正極材料P5の組成は、Li1.03(Ni0.896Co0.057Mn0.037Al0.007Zr0.002Sr0.001)O/Bであった。
【0105】
上述のように、得られた正極材料P5を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表1-2に示す。
【0106】
上述のように、得られた正極材料P5を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表1-3に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
実施例2-1
【0111】
(1)ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体の製造
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、および硫酸マンガンを65:15:20のモル比で水に溶解して、混合塩の1.7モル/L溶液を形成した。沈殿剤の溶液としては、8モル/Lの水酸化ナトリウム溶液を使用した。錯化剤の溶液としては、13モル/Lのアンモニア溶液を使用した。混合塩溶液、沈殿剤溶液、および錯化剤溶液をそれぞれオートクレーブに供給し、反応温度40℃、pH11.6、アンモニア濃度6g/Lとなるように供給速度を制御した。共沈は、600rpmの撹拌速度で操作した。80時間の反応後、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体を得た。ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体をエージング、分離、洗浄、乾燥させて使用できる状態にした。
【0112】
(2)ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質の製造
前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体、リチウム源としての水酸化リチウム、第一のドーパントとして酸化ジルコニウム、第二のドーパントとして酸化イットリウム、および第三のドーパントとして炭酸タングステンを、ミキサーで1.05:0.99:0.006:0.002:0.002のモル比で混合した。混合物を焼成炉内で順序化された焼成に供した。酸素を1.33m/kg・hの流量で導入しながら、混合物を室温から300℃まで3時間一定速度で加熱し、300℃で2時間保持して、第一の焼成を完了した。その後、混合物を780℃まで6時間かけて一定速度で加熱し、780℃で12時間保持して、第二の焼成を完了した。最後に、混合物を室温まで自然冷却して、ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質を得た。ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質を冷却し、粉砕し、篩分けし、使用できるようにした。
【0113】
(3)正極材料の製造
ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質と、コーティング剤としてのホウ酸および水酸化アルミニウムを、高速ミキサー中で1/0.01/0.01のモル比で混合した。混合物を焼成炉内で450℃で10時間、第三の焼成に付して、組成Li1.03(Ni0.648Co0.152Mn0.200Zr0.0060.0020.002)O/B+Alを有する正極材料P6を得た。正極材料P6を冷却し、篩い分けして鉄不純物を除去し、使用できるようにした。
【0114】
上述のように、得られた正極材料P6を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表2-2に示す。
【0115】
上述のように、得られた正極材料P6を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表2-3に示す。
【0116】
実施例2-2
【0117】
実施例2-1の材料および処理条件を表2-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例2-1と同様にして、正極材料P7を得た。
【0118】
正極材料P7の組成は、Li1.03(Ni0.648Co0.152Mn0.200Nb0.003Sr0.002)O/B+Alであった。
【0119】
上述のように、得られた正極材料P7を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表2-2に示す。
【0120】
上述のように、得られた正極材料P7を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表2-3に示す。
【0121】
比較例2-1
【0122】
実施例2-1の材料および処理条件を表2-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例2-1と同様にして、正極材料P8を得た。
【0123】
正極材料P8の組成は、Li1.03(Ni0.648Co0.152Mn0.200Ti0.0050.004Sr0.001)O/B+Alであった。
【0124】
上述のように、得られた正極材料P8を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表2-2に示す。
【0125】
上述のように、得られた正極材料P8を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表2-3に示す。
【0126】
比較例2-2
【0127】
実施例2-1の材料および処理条件を表2-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例2-1と同様にして、正極材料P9を得た。
【0128】
正極材料P9の組成は、Li1.03(Ni0.648Co0.152Mn0.200Zr0.0060.0020.002)O/B+Alであった。
【0129】
上述のように、得られた正極材料P9を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表2-2に示す。
【0130】
上述のように、得られた正極材料P9を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表2-3に示す。
【0131】
比較例2-3
【0132】
実施例2-1の材料および処理条件を表2-1に示す材料および処理条件に置き換えた以外は実施例2-1と同様にして、正極材料P10を得た。
【0133】
正極材料P10の組成は、Li1.03(Ni0.648Co0.152Mn0.200Zr0.0060.0020.002)O/B+Alであった。
【0134】
上述したように、得られた正極材料P10を強度に水洗浄し、固有比表面積および固有細孔径を試験した。結果を表2-2に示す。
【0135】
上述のように、得られた正極材料P10を用いてリチウムイオン電池サンプルを製造し、性能評価を行った。結果を表2-3に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
【0139】
上記の実施例に示すように、比較例1-1は、実施例1-1、1-2と比較して、使用するドーパント元素を変更したものである。それに応じて、比較例1-1で得られた正極材料は、実施例1-1および1-2の正極材料よりも大きい固有比表面積および固有細孔分布(R10、R50、R90)を有していた。それに応じて、サイクル性能も低下し、80サイクル後の容量維持率はわずか88.6%であった。一方、比較例1-1で得られた正極材料は、イオン安定性が十分な層状構造を有していないため、粒界にクラックが生じやすく、圧縮強度が著しく低下した。したがって、初期サイクル容量は比較的良好であったが、高電流レートではサイクル性能が低下した。比較例1-2は、実施例1-1および実施例1-2のものと同じドーパント系を含んでいたが、焼成ステップに使用した温度が低すぎた。これは、不完全な結晶相の形成、Li+を輸送させるためのチャネルの構築の不備、Li+輸送数の低下、および容量の不十分な利用につながった。比較例1-3では、減少した酸素流量を使用したため、焼成時間が長くなり、酸化が遅くなった。その結果、Li/Niが著しく乱れ、粒界にクラックが形成されやすくなり、圧縮強度が低下する。同時に、Li+の輸送が妨げられた。この点に関して、初期容量は正常であったものの、Li+が効果的に元の位置に戻ることができず、レート性能とサイクル性能の両方が低下した。実施例2-1、2-2と比較例2-1~2-3を比較すると、結果は上記と一致した。
図1A
図1B
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~13m/gの固有比表面積を有する正極材料であって、
以下の式:
2.1nm≦R 10 ≦2.5nm、23.0nm≦R 50 ≦27.0nmおよび100.0nm≦R 90 ≦160.0nm
を満たす固有細孔径を有する、正極材料。
【請求項2】
前記正極材料の平均粒径が7.8~14.2μmであるか、または前記正極材料の圧縮密度が2.0~3.8g/cmである、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極材料を1.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA1.5が15%以下である;または
前記正極材料を2.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA2.5が40%以下である;または
前記正極材料を3.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA3.5が60%以下である;または
前記正極材料を4.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA4.5が100%以下である
請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質と、任意にその表面の少なくとも一部上のコーティング層とを含み、
ここで、前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質中の前記ニッケルコバルトマンガン活物質は、組成LiNiCoMnを有し、ここで、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5であり、
ここで、前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質のドーパントは、AlとZrとからなる群から選択される少なくとも一つである第一のドーパント元素M;Y、Ti、Nb、Cr、ErおよびMgからなる群より選択される少なくとも一つである第二のドーパント元素G;およびBa、V、Sr、Ta、Mo、WおよびCeからなる群から選択される少なくとも一つである第三のドーパント元素Tを含んでおり、
ここで、前記コーティング層は、B、Al、SiOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの酸化物を含む、
請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質が、組成Li1+a(NiCoMn)Oを有し、ここで、0≦a≦0.1、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5、0<d≦0.08、0<e≦0.05、0<f≦0.03、1<e/f<5、およびx+y+z+d+e+f=1である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の正極材料を製造する方法であって、該方法は、
前駆体をリチウム源と混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することによって、前記正極材料の前駆体をリチウム化に付することを含み、
前記順序化された焼成は:
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよびニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である
方法。
【請求項7】
前記酸素雰囲気は酸素を導入することによって形成され、好ましくは酸素の流量Qが1~2m/kg・hである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の焼成が350~450℃の温度で1~10時間行われ、
前記第二の焼成において、焼成温度Tが690+(1-x)500~770+(1-x)500℃であり、ここで、0.3≦x≦0.99であり;
酸素の流量Q(m/kg・h)および第二の焼成時間t(時間)が、-13.17ln(Q)+14.54≦t≦-13.17ln(Q)+16.54の関係を満たし、ここで、酸素の流量Qが1~2m/kg・hである、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
(1)ニッケル塩、コバルト塩、およびマンガン塩を共沈して、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体を形成すること;
(2)前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体を、リチウム源、第一のドーパント元素を含む第一のドーパント、第二のドーパント元素を含む第二のドーパント、および第三のドーパント元素を含む第三のドーパントと混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することにより、前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体をドーピングおよびリチウム化に付すことであって、
ここで、前記順序化された焼成が、
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよび前記ニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である、ドーピングおよびリチウム化に付すこと;および
(3)前記第二の焼成生成物の表面の少なくとも一部にコーティング層を設けること;
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ニッケル塩が、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、および塩化ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記コバルト塩が、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルトおよび硫酸コバルトからなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記マンガン塩が、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガンおよび塩化マンガンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記リチウム源が、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウムおよび酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第一のドーパント元素を含む前記第一のドーパントが、第一のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第一のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第一のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第一のドーパント元素の前記塩は、前記第一のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記第二のドーパント元素を含む前記第二のドーパントが、前記第二のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第二のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第二のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第二のドーパント元素の前記塩は、前記第二のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記第三のドーパント元素を含む前記第三のドーパントが、前記第三のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第三のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第三のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第三のドーパント元素の前記塩は、前記第三のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記共沈が、沈殿剤の溶液および錯化剤の溶液の存在下で行われ、
好ましくは、前記沈殿剤が、NaOH、KOHおよびLiOHからなる群から選択される少なくとも一つであり、前記錯化剤が、アンモニア、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング層を設けることが、前記第二の焼成生成物とコーティング剤とを混合し、250~500℃での第三の焼成に付することを含み;
好ましくは、前記コーティング剤が、ホウ酸、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、ケイ酸、オルトケイ酸またはパラタングステン酸アンモニウムを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の焼成が一定温度で行われ、前記第二の焼成が一定温度で行われ、前記第三の焼成が一定温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載の正極材料のリチウム電池における使用。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の正極材料を含む、リチウム電池用の正極。
【請求項16】
正極、負極、および前記正極と負極との間のセパレータを備え、前記正極が請求項1~のいずれか一項に記載の正極材料を含む、リチウム電池。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~13m/gの固有比表面積を有する正極材料であって、
以下の式:
2.1nm≦R10≦2.5nm、23.0nm≦R50≦27.0nmおよび100.0nm≦R90≦160.0nm
を満たす固有細孔径を有する、正極材料。
【請求項2】
前記正極材料の平均粒径が7.8~14.2μmであるか、または前記正極材料の圧縮密度が2.0~3.8g/cmである、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極材料を1.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA1.5が15%以下である;または
前記正極材料を2.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA2.5が40%以下である;または
前記正極材料を3.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA3.5が60%以下である;または
前記正極材料を4.5トンの圧力で圧縮したとき、圧縮後の前記正極材料の比表面積の増加率ΔSSA4.5が100%以下である
請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質と、任意にその表面の少なくとも一部上のコーティング層とを含み、
ここで、前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質中の前記ニッケルコバルトマンガン活物質は、組成LiNiCoMnを有し、ここで、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5であり、
ここで、前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質のドーパントは、AlとZrとからなる群から選択される少なくとも一つである第一のドーパント元素M;Y、Ti、Nb、Cr、ErおよびMgからなる群より選択される少なくとも一つである第二のドーパント元素G;およびBa、V、Sr、Ta、Mo、WおよびCeからなる群から選択される少なくとも一つである第三のドーパント元素Tを含んでおり、
ここで、前記コーティング層は、B、Al、SiOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの酸化物を含む、
請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
前記ドープされたニッケルコバルトマンガン活物質が、組成Li1+a(NiCoMn)Oを有し、ここで、0≦a≦0.1、0.3≦x≦0.99、0.01≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5、0<d≦0.08、0<e≦0.05、0<f≦0.03、1<e/f<5、およびx+y+z+d+e+f=1である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の正極材料を製造する方法であって、該方法は、
前駆体をリチウム源と混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することによって、前記正極材料の前駆体をリチウム化に付することを含み、
前記順序化された焼成は:
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよびニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である
方法。
【請求項7】
前記酸素雰囲気は酸素を導入することによって形成され、酸素の流量Qが1~2m/kg・hである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の焼成が350~450℃の温度で1~10時間行われ、
前記第二の焼成において、焼成温度Tが690+(1-x)500~770+(1-x)500℃であり、ここで、0.3≦x≦0.99であり;
酸素の流量Q(m/kg・h)および第二の焼成時間t(時間)が、-13.17ln(Q)+14.54≦t≦-13.17ln(Q)+16.54の関係を満たし、ここで、酸素の流量Qが1~2m/kg・hである、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(1)ニッケル塩、コバルト塩、およびマンガン塩を共沈して、ニッケルコバルトマンガン活物質の前駆体を形成すること;
(2)前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体を、リチウム源、第一のドーパント元素を含む第一のドーパント、第二のドーパント元素を含む第二のドーパント、および第三のドーパント元素を含む第三のドーパントと混合し、酸素雰囲気下で順序化された焼成に付することにより、前記ニッケルコバルトマンガン活物質の前記前駆体をドーピングおよびリチウム化に付すことであって、
ここで、前記順序化された焼成が、
第一の焼成を300~500℃で行って第一の焼成生成物を得ること、および
第二の焼成を行って第二の焼成生成物を得ることを含み、
前記第二の焼成において、焼成温度Tおよび前記ニッケルコバルトマンガン活物質中のNi含有量が次式:
670+(1-x)500≦T≦780+(1-x)500
に従い、ここで、0.3≦x≦0.99である、ドーピングおよびリチウム化に付すこと;および
(3)前記第二の焼成生成物の表面の少なくとも一部にコーティング層を設けること;
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ニッケル塩が、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、および塩化ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記コバルト塩が、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルトおよび硫酸コバルトからなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記マンガン塩が、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガンおよび塩化マンガンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記リチウム源が、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウムおよび酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第一のドーパント元素を含む前記第一のドーパントが、第一のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第一のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第一のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第一のドーパント元素の前記塩は、前記第一のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記第二のドーパント元素を含む前記第二のドーパントが、前記第二のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第二のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第二のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第二のドーパント元素の前記塩は、前記第二のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記第三のドーパント元素を含む前記第三のドーパントが、前記第三のドーパント元素の酸化物、または第二の焼成条件下で前記第三のドーパント元素の酸化物に変換できる前記第三のドーパント元素の塩であり、ここで、前記第三のドーパント元素の前記塩は、前記第三のドーパント元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記共沈が、沈殿剤の溶液および錯化剤の溶液の存在下で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記沈殿剤が、NaOH、KOHおよびLiOHからなる群から選択される少なくとも一つであり、前記錯化剤が、アンモニア、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング層を設けることが、前記第二の焼成生成物とコーティング剤とを混合し、250~500℃での第三の焼成に付することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング剤が、ホウ酸、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、ケイ酸、オルトケイ酸またはパラタングステン酸アンモニウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第一の焼成が一定温度で行われ、前記第二の焼成が一定温度で行われ、前記第三の焼成が一定温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の正極材料のリチウム電池における使用。
【請求項17】
請求項1~5のいずれか一項に記載の正極材料を含む、リチウム電池用の正極。
【請求項18】
正極、負極、および前記正極と負極との間のセパレータを備え、前記正極が請求項1~5のいずれか一項に記載の正極材料を含む、リチウム電池。
【国際調査報告】