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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-23
(54)【発明の名称】転炉自己適応懸架構造
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/50 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
C21C5/50 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563817
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2022082423
(87)【国際公開番号】W WO2022262348
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110668132.1
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515228678
【氏名又は名称】シーアイエスディーアイ エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】余 楊
(72)【発明者】
【氏名】ワン キン
(72)【発明者】
【氏名】曾 鳴
【テーマコード(参考)】
4K070
【Fターム(参考)】
4K070CB01
(57)【要約】
本発明は、転炉自己適応懸架構造を開示し、支え輪本体の下縁と、転炉の下半炉体を接続する垂直リンク機構を含み、さらに支え輪本体の上縁と、転炉の上半炉体を接続する水平リンク機構とを含み、水平リンク機構は垂直リンク機構の上方に位置し、支え輪本体のトラニオンの軸線と支え輪本体の軸線が位置する平面を第1の基準面とし、各組の垂直リンク機構自体の対称中心は第1の角の放射領域に位置し、第1の角を形成する2つの平面はいずれも支え輪本体の軸線と重合し、2つの平面はそれぞれ第1の基準面と15°と50°の角を形成する。本発明の懸架構造は、転炉の傾動に異音がなく、運行がさらに安定し、不静定問題を解消するだけでなく、転炉懸架リンク機構の自己適応運転モードに有利で、懸架リンク機構の耐用年数を向上させ、長期的にメンテナンスが不要で、リンク機構の主要部品の互換を実現し、設備予備部品と設備メンテナンス作業量を減少する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支え輪本体の下縁と転炉の下半炉体とを接続する垂直リンク機構と、
前記支え輪本体の上縁と転炉の上半炉体とを接続する水平リンク機構とを含む転炉自己適応懸架構造であって、
前記水平リンク機構は、前記垂直リンク機構の上方に対応して位置し、
前記支え輪本体のトラニオン軸線と前記支え輪本体の軸線が所在の平面を第1の基準面とし、それぞれの前記垂直リンク機構自体の対称中心が第1の角の放射領域に位置し、
前記第1の角を形成する2つの平面は、すべて前記支え輪本体の軸線と重合し、2つの平面は、それぞれ前記第1の基準面と15°と50°の角を形成し、各前記垂直リンク機構は、前記第1の基準面に対して対称的に配置され、各前記水平リンク機構は、前記第1の基準面に対して対称的に配置される、ことを特徴とする転炉自己適応懸架構造。
【請求項2】
各前記垂直リンク機構自体の対称中心は、いずれも前記支え輪本体の軸線と面一である、ことを特徴とする請求項1に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項3】
前記水平リンク機構は取り付け位置基準マークを有し、
前記取り付け位置基準マークは第2の角の放射領域に位置し、
前記垂直リンク機構自体の対称中心と前記支え輪本体の軸線が所在の平面を第2の基準面とし、前記取り付け位置基準マークは前記第2の角の放射範囲に位置し、前記第1の角を形成する2つの平面はいずれも前記支え輪本体の軸線と重合し、それぞれが前記第2の基準面と-10°と10°の角を形成することを特徴とする請求項2に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項4】
前記水平リンク機構は、第1のリンク座と、水平リンクと、第2のリンク座とを有し、前記第1のリンク座が転炉の上半炉体に設置され、前記第2のリンク座が前記支え輪本体の上縁に設置され、前記水平リンクは前記第1のリンク座と第2のリンク座とにそれぞれヒンジ接続され、前記水平リンクに前記取り付け位置基準マークが表示される、ことを特徴とする請求項3に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項5】
前記取り付け位置基準マークは、前記水平リンクの中心に位置する、ことを特徴とする請求項4に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項6】
前記取り付け位置基準マークは、前記水平リンクに設置された識別穴である、ことを特徴とする請求項5に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項7】
前記垂直リンク機構は、第3のリンク座と、垂直リンクと、第4のリンク座とを有し、前記第3のリンク座が転炉の下半炉体に設置され、前記第4のリンク座が前記支え輪本体の下縁に設置され、前記第3のリンク座と前記第4のリンク座とは前記垂直リンクとにそれぞれヒンジ接続されることを特徴とする請求項3に記載の転転炉自己適応懸架構造。
【請求項8】
前記水平リンク機構の各々における前記水平リンクと、前記垂直リンク機構の各々における前記垂直リンクとは、同じ形状および寸法を有する、ことを特徴とする請求項7に記載の転炉の適応懸架構造。
【請求項9】
前記第1のリンク座と前記第2のリンク座とは、第1の関節軸受および第1のヒンジ軸を介して前記水平リンクとそれぞれ回転可能に接続され、
前記第3のリンク座と前記第4のリンク座とは、第2の関節軸受および第2のヒンジ軸を介して前記垂直リンクとそれぞれ回転可能に接続され、
前記第1の関節軸受および前記第2の関節軸受の構造および寸法は同じであり、
前記第1のヒンジ軸および前記第2のヒンジ軸の構造および寸法は同じである、ことを特徴とする請求項8に記載の転炉適応懸架下げ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金分野に関し、具体的に、転炉自己適応懸架構造に関する。
【背景技術】
【0002】
懸架システムは、転炉の肝心な部材の一つであり、実際には、懸架システムの支え輪は異なるタイプの懸架構造によって炉体外に位置決めされ、炉体に対する支持を実現する。稼動時に、支え輪のトラニオンに傾動モーメントを加えることによって、モーメントを支え輪から炉体に伝達させるとともに、支え輪は炉体が温度変化によって発生する様々な応力および形態変化を吸収する。
【0003】
しかし、転炉の下懸架支持システムの技術的難しさは、転炉が非垂直稼動姿勢にある時の水平支持であり、特にリンク機構の水平支持構造と配置と転炉運行であり、転炉のトン数が比較的大きい時に設備運行安全と運行品質(転炉の傾動が安定しているかどうか、衝撃、振動、摩損と異音、および転炉設備の安全余裕度などがあるかどうか)に特に直接影響を与え、リンク機構が設置される数量と転炉設備に配置される位置は、リンク機構の水平支持の核心技術構想である。
【0004】
理論分析と工程実施により、いかなる懸架構造を採用しても、転炉が稼動して傾動回転する時、正逆回転で起動と停止して、巨大な制動慣性機械力が頻繁に衝撃しおよび高熱負荷による設備変形する場合に、炉体と支え輪本体との間にいずれも、転炉が傾動する時に支え輪自体が受けたねじり作用による「交代転位量」と、炉体と支え輪本体との間に設備構造や運動慣性および熱膨張の差異などによる「交代転位」とを含む「交代転位」が発生されるため、懸架構造の多くは、このような交代転位に適応するために一定の自己適応変形能力を持つようになっている。
【0005】
特許文献1である『傾動型転炉』において、支え輪下部と転炉本体との間に複数のリンク機構が設けられ、前記リンク機構は、垂直リンク機構と水平リンク機構との2種類があり、水平リンク機構は3組設けられ、転炉支え輪の下方中央に揺動ロッド7のリンク式サスペンションが設けられた外、転炉支え輪の下方の各側のトラニオンが水平に支持する薄弱部位に一つの水平揺動ロッドが設けられている。工事実施により、各側のトラニオン端に一つの水平揺動ロッドが設けられた場合、大トン数転炉の運転モードへの適応に不利であり、転炉が炉口上向きの垂直稼動姿勢に位置すると、受け力は垂直リンク機構に主に集中し、垂直リンク機構は自己適応に動作可能であり、転炉が非垂直稼動姿勢に位置すると、受け力は水平リンク機構に主に集中し、水平リンク機構は受け力によっても自己適応に動作することができることは証明された。しかし、有限要素分析と工程実施により、このような転炉では、転炉の直立と倒置の2種類の姿勢において、水平リンク機構がトラニオンに近い支え輪の下方の取り付け部位に受けたねじり作用が最も顕著であり、転炉全体の傾動回転過程においてこの部位での「交代転位量」の上昇が明らかであり、「交代転位量」は7mm~13mmに近く、実工程で測定したデータは最大15mmに達し、リンク機構自体は自己適応動作によって相対変位を一部吸収することができるが、この部位の転位量のずれ量が大きく、この部位の転位が交互ずれ衝撃変位であるため、水平リンク機構はすべての相対変位を吸収しにくく、水平リンクの二力バー部材が引張圧力のみを受ける作動原理状況にある程度影響するだけでなく、水平リンク機構の作動寿命にも影響することが証明された。また、工程実施により、このような傾動型転炉の水平支持構造と配置は設計に固有の「短所」であることが証明された。
【0006】
特許文献2である『転炉の4か所リンク懸架装置の配置構造』では、支え輪下縁と転炉ケーシングとの間に4か所の垂直リンク機構が設けられ、支え輪の上縁と転炉ケーシングとの間にバッフル機構が設けられ、ここの垂直リンク機構も一定の自己適応変形能力を有するが、転炉にバッフル機構が設けられれば、転炉設備のいかなる位置にバッフル機構が配置しても、転炉ケーシングのバッフルと支え輪支持座との間に交代弾性滑りが存在し、摩擦および摩損を生じ、転炉ケーシングバッフルと支え輪支持座との間に隙間が生成し、転炉の強大な慣性正逆転制動の際に、強烈な衝撃と音響が生じ、更にバッフルが衝撃で脱落することを招き、転炉の運行に必然的に設備と人身安全のリスクをもたらすため、定期的にバッフル機構のメンテナンスと磨損部材の交換を行わなければならず、これは、バッフル機構自体が解決し難い根本的な「硬傷」である。この特許に開示された提案において、バッフルと支え輪支持座との間に交換可能な減摩パッドが設けられたが、減摩パッドとバッフルまたは支持座との間に接続部材で接続する必要があることを意味し、転炉製鋼の高温、粉塵およびスパッタなどの劣悪な製錬作業状況下で、前記接続部材を1つずつ解体し、バッフルと支持座との間の狭い空間で減摩パッドを交換することは非常に困難であり、接続部材は、高温、粉塵およびスパッタ環境で変形し、接着および噛み込むようにするため、全く解体できず、切断して交換するしかなく、設備のメンテナンスコストとメンテナンス時間を増加する。
【0007】
また、特許文献1である『傾動型転炉』に採用された揺動ロッド6または7のリンク式サスペンションの方式であっても、特許文献2である『転炉の4か所リンク懸架装置の配置構造』に開示された提案において転炉ケーシングのトラニオン軸方向に沿った移動を限定する案内座が設けられた方式であっても、転炉全体の懸架支持システムが複雑であり、不静定をもたらすだけでなく、転炉の懸架システムの自己適応運転に不利であり、かつ設備のメンテナンス作業量を増加し、実際に、工事の応用によって検証する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願番号 93117357.4
【特許文献2】中国特許出願番号 201210291941.6
【発明の概要】
【0009】
前記従来技術の不足に鑑み、本発明の目的は、リンク機構が設置された数量と転炉設備に配置される位置を最適化し、大トン数転炉の運転状況に適応し、かつ懸架構造の耐用年数を向上させ、かつ懸架構造の設備メンテナンスコストを低下させる転炉自己適応懸架構造を提供することである。
【0010】
前記目的およびその他の関連目的を実現するため、本発明の技術的方案は以下のとおりである。
【0011】
転炉自己適応懸架構造は、支え輪本体の下縁と転炉の下半炉体とを接続する垂直リンク機構と、支え輪本体の上縁と転炉の上半炉体とを接続する水平リンク機構とを含み、前記水平リンク機構は前記垂直リンク機構の上方に対応して位置し、支え輪本体のトラニオン軸線と支え輪本体の軸線が所在の平面を第1の基準面とし、それぞれの前記垂直リンク機構自体の対称中心が第1の角の放射領域に位置し、前記第1の角を形成する2つの平面はすべて支え輪本体の軸線と重合し、2つの平面のそれぞれは前記第1の基準面と15°と50°の角を形成する。
【0012】
好ましくは、各前記垂直リンク機構自体の対称中心は、いずれも支え輪本体の軸線と面一である。
【0013】
好ましくは、前記水平リンク機構は、取り付け位置基準マークを有し、前記取り付け位置基準マークは第2の角の放射領域に位置し、前記垂直リンク機構自体の対称中心と支え輪本体の軸線が所在の平面を第2の基準面とし、前記取り付け位置基準マークは第2の角の放射範囲に位置し、前記第1の角を形成する2つの平面はいずれも支え輪本体の軸線と重合し、それぞれが前記第2の基準面と-10°と10°の角を形成し、各前記垂直リンク機構は前記第1の基準面に対して対称的に配置し、各前記水平リンク機構は前記第1の基準面に対して対称的に配置される。
【0014】
好ましくは、前記水平リンク機構は、第1のリンク座と、水平リンクと、第2のリンク座とを有し、前記第1のリンク座が転炉の上半炉体に設置され、前記第2のリンク座が支え輪本体の上縁に設置され、前記水平リンクは前記第1のリンク座と第2のリンク座とにそれぞれヒンジ接続され、前記水平リンクに前記取り付け位置基準マークが表示される。
【0015】
好ましくは、前記取り付け位置基準マークは前記水平リンクの中心に位置する。
【0016】
好ましくは、前記取り付け位置基準マークは、前記水平リンクに設置された識別穴である。
【0017】
好ましくは、前記垂直リンク機構は、第3のリンク座と、垂直リンクと、第4のリンク座とを有し、前記第3のリンク座が転炉の下半炉体に設置され、前記第4のリンク座が支え輪本体の下縁に設置され、前記第3のリンク座と前記第4のリンク座とは前記垂直リンクとにそれぞれヒンジ接続される。
【0018】
好ましくは、前記水平リンク機構の各々における前記水平リンクと前記垂直リンク機構の各々における前記垂直リンクとは、同じ形状および寸法を有する。
【0019】
好ましくは、前記第1のリンク座と前記第2のリンク座とは、第1の関節軸受および第1のヒンジ軸を介して前記水平リンクとそれぞれ回転可能に接続され、前記第3のリンク座と前記第4のリンク座とは、第2の関節軸受および第2のヒンジ軸を介して前記垂直リンクとそれぞれ回転可能に接続され、前記第1の関節軸受および前記第2の関節軸受の構造および寸法は同じであり、前記第1のヒンジ軸および前記第2のヒンジ軸の構造および寸法は同じである。
【0020】
好ましくは、前記垂直リンク機構と前記水平リンク機構の数はいずれも4組であり、前記基準面の両側に2組の垂直リンク機構と2組の水平リンク構造がそれぞれ設置される。
【0021】
本発明に係る転炉自己適応懸架構造は、実際作業中に転炉が傾動しても異音がなく、運行がさらに安定し、リンク機構は調整作業が不要で、不静定の問題を解消するだけでなく、転炉懸架リンク機構の自己適応運転状況に有利で、懸架機構の耐用年数を向上させ、設備を長期的にメンテナンス不要にし、かつ水平と垂直リンク機構の主要部品は交換でき、設備部品品種と設備メンテナンス作業量を減少する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の転炉自己適応懸架構造を用いた実施例を示す概略構成図である。
図2図1の平面図である。
図3図2のK方向からの図である。
図4図1のI部の拡大図である。
図5図2のII部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について所定の実施例によって説明され、当業者であれば、本明細書に開示された内容から本発明の他の利点および効果を容易に理解することができる。
【0024】
図1から図3を参照し、転炉は、炉体1と支え輪2とを含み、支え輪2は、支え輪本体21と、支え輪本体21に設けられたトラニオン軸22とを有し、本発明に係る転炉自己適応懸架構造は、垂直リンク機構3と水平リンク機構4とを備え、垂直リンク機構3は、支え輪本体21の下縁と転炉1の下半炉体との間に接続し、水平リンク機構4は、支え輪本体21の上縁と転炉1の上半炉体との間に接続し、各組の水平リンク機構4は、1組の垂直リンク機構3の上方に対応し設けられ、支え輪本体21のトラニオン軸22の軸線と支え輪本体21の軸線が所在する平面を第1の基準面mとし、各組の垂直リンク機構3自体の対称中心が第1の角αの放射領域に位置し、第1の角αを形成する2つの平面はいずれも支え輪本体21の軸線と重合し、2つの平面では、第1の平面Aと第1の基準面mとは15°の角を形成し、第2の平面Bと第1の基準面mとは50°の角を形成する。ここでの15°の角は、時計回りの情況も反時計回りの情況も含み、同一組の垂直リンク機構3に対して、その第1の平面Aと第2の平面Bとは、第1の基準面mの同じ側に位置する。
【0025】
ここで、垂直リンク機構3自体の対称中心とは、実質的に中心面nをいう。ここでの水平リンク機構4を垂直リンク機構3の上方に対応させるとは、炉体1が垂直姿勢にあるときに、水平リンク機構4が完全に垂直リンク機構3の直上にあるか、垂直リンク機構3の上方から少しだけ外れた位置にあることをいう。
【0026】
図1から図3を参照すると、リンク機構の数は、水平リンク機構4が4組、垂直リンク機構3が4組の合計8組である。実際の実施過程において、リンク機構の数は、実際の転炉トン数の情況に基づいて決定することができ、8組(4組の垂直リンク機構と4組の水平リンク機構)、さらに必要によってより多くのリンク機構を配置することができる。
【0027】
いくつかの実施例では、図2を参照すると、垂直リンク機構3の各組自体の対称中心は、支え輪本体21の軸とは面一である。もちろん、実際の実施過程において、垂直リンク機構3の対称中心は、第1の角の放射領域であれば、支え輪本体21と面一でなくてもよい。
【0028】
いくつかの実施例では、水平リンク機構4は取り付け位置基準マーク401を有し、取り付け位置基準マーク401は、第2の角の放射領域に位置し、垂直リンク機構3自体の対称中心と支え輪本体21の軸線が所在の平面を第2の基準面nとし、前記取り付け位置基準マーク401が第2の角の放射範囲に位置し、第1の角を形成する2つの平面がいずれも支え輪本体21の軸線と重合し、それぞれが第2の基準面nと-10°および10°の角を形成する。すなわち、図2において、βの範囲は-10°以上10°以下である。ここで、βの値の正負は、それぞれ反時計回りと時計回りを表す。
【0029】
このように、水平リンク機構4を垂直リンク機構3の上方に位置させることができ、垂直リンク機構3から過度に外れることがなく、水平リンク機構4および垂直リンク機構3のペア毎に、信頼性が高く、かつ、自己適応調整能力を有する2か所支持構造を形成することができる。
【0030】
いくつかの実施例では、水平リンク機構4は、第1のリンク座41、水平リンク42、および第2のリンク座43を含み、第1のリンク座41は、転炉1の上半炉本体に配置され、第2のリンク座43は、支え輪本体21の上縁に配置され、水平リンク42は、第1のリンク座41および第2のリンク座43にそれぞれヒンジ接続され、取り付け位置基準マーク401は水平リンク42にある。例えば、図2および図5を参照すると、取り付け位置基準マーク401は、水平リンク42に設けられた識別穴であってもよい。実際の実施過程において、水平リンク機構4の構造は垂直リンク機構3と異なり、水平リンク機構4自体は対称的な構造を採用しない可能性があるため、対称的な中心面がなく、水平リンク機構4の水平リンク42は水平に設置され、その具体的な設置位置は確定しにくく、前記取り付け位置基準マーク401を水平リンク42に設置することは水平リンク機構4の配置位置を把握することに有利であり、水平リンク機構4が「交代転位」の比較的小さい領域に位置することを保証する。
【0031】
いくつかの実施例では、取り付け位置基準マーク401は、水平リンク42の中心に位置する。
【0032】
いくつかの実施例では、図1図4を参照すると、垂直リンク機構3は、第3のリンク座31、垂直リンク32、および第4のリンク座33を含み、第3のリンク座31は、転炉1の下半炉体に配置され、第4のリンク座33は、支え輪本体21のリング本体の下縁に配置され、第3のリンク座31および第4のリンク座33は、垂直リンク32とそれぞれヒンジ接続されている。
【0033】
いくつかの実施例では、各水平リンク機構4の水平リンク42と各垂直リンク機構3の垂直リンク32とが、同じ形状および寸法を有するので、水平リンク42と垂直リンク32とが相互に交換でき、部品の種類が減少し、設備の予備部品のコストが低減され、組立が容易になる。
【0034】
いくつかの実施例では、第1のリンク座41と第2のリンク座43とは、第1の関節軸受44および第1のヒンジ軸45を介して水平リンク42にそれぞれ回転可能に接続され、第3のリンク座31と第4のリンク座33とは、第2の関節軸受34および第2のヒンジ軸35を介して垂直リンク32にそれぞれ回転可能に接続され、第1の関節軸受44および第2の関節軸受34の構造および寸法は同じであり、第1のヒンジ軸45および第2のヒンジ軸35の構造および寸法は同じである。組立時に、水平リンク機構4と垂直リンク機構3の構造の関節軸受とヒンジ軸も交換でき、さらに部品の種類を減少し、さらに設備部品のコストを低下させ、さらに組立の敏捷性を向上させる。
【0035】
いくつかの実施例では、図1から図2を参照すると、各水平リンク機構の対称部分は第1の基準面mの両側に配置し、各垂直リンク機構の対称部分は第2の基準面nの両側に配置される。
【0036】
本発明の有利な効果は以下のとおりである。
1.有限要素分析と大量の工程実施により、このような懸架構造は、垂直リンク機構3を所定の角度領域(ここで、第1の角αの放射領域)に設置し、かつ水平リンク機構4を垂直リンク機構3の真上に設置し、垂直リンク機構が水平リンク機構4の支持面「交代転位」を拘束する主要な機構になるだけでなく、垂直リンク機構3と水平リンク機構4がいずれも炉体1と支え輪2との間の交差転位量が最大(~15mm)の位置から離れ、水平リンク機構4が炉体1と支え輪2との間「交代転位」の最小(1mm~2mm)位置範囲に位置し、水平リンク機構4の取り付け「基礎面」がより堅固であり、作業状況がより理想的であり、作業寿命がより長く、転炉全体の下懸架の自己適応懸架構造配置の最適化を実現する。特許第ZL93117357.4号の水平リンク支持機構をトラニオンの支え輪の下方に近い位置に設置するのは、傾動「発生した力は可能な限り荷重トラニオンに直接導かれことによって、支え輪は最大に無応力状態に保持される」を主な原因とするが、この位置は支え輪全体がねじり作用による「交代転位量」最大と水平リンクの運転状況が最も不利な位置であることを見落とし、実際、転炉の支え輪体とトラニオン設備全体の剛性と強度は水平リンク機構よりはるかに大きく、相対的に言えば、ここに設置される水平リンク機構の剛性と強度機械性能は非常に弱いため、水平リンク機構を転炉設備炉体と支え輪との間の比較的小さい「交代転位」位置に取り付けることが最適な位置である。
【0037】
2.中国特許出願番号93117357.4号の揺動ロッド7のリンク式サスペンションと中国特許出願番号201210291941.6号の転炉ケーシングが傾動過程中にトラニオンの軸方向に沿って移動する案内座を省略することにより、転炉下の水平支持機構を簡約化し、従来の懸架構造に存在する不静定の問題を解消し、転炉懸架リンク機構の自己適応モードに有利であり、設備のメンテナンス作業量を低下させる。
【0038】
3.より重要なことは、本発明の新規な転炉自己適応懸架構造は、ペアになる水平リンク機構と垂直リンク機構を利用して支え輪の上、下両側の2か所支持構造を形成し、特許第ZL93117357.4号に各側のトラニオンの下方に水平リンク機構が設けられて一か所支持を形成する方式と比べ、本発明の懸架構造は、さらに大トン数転炉の運転モードに適用できる。
【0039】
4.簡単で、信頼できる転炉下懸架システムであり、支え輪と転炉ケーシングとの間の完璧で最適な静定設計であり、支え輪と転炉ケーシングの間の柔軟で強固な接続であり、各リンクは均等に荷重を分配し、自己適応で熱変形を補償できる。高い機械力と熱負荷、長寿命、過酷な環境に対応する。
【0040】
5.本発明の懸架構造における垂直リンク機構3および水平リンク機構4の主要部品、例えば、垂直リンク32、水平リンク42、関節軸受34、44およびヒンジ軸35、45などはいずれも交換でき、これによって垂直リンク機構3と水平リンク機構4の設備予備部品の品種、設備メンテナンスコストおよび設備メンテナンス時間を大幅に低下させる。
【0041】
6.バッフル機構の方式と比較し、リンク機構は調整作業が不要であり、本発明の懸架構造では、水平リンク機構にも垂直リンク機構にも自己適応動作の能力を有し、脂肪潤滑が不足する環境に対して敏感ではなく、転炉の傾動運転は異音を生成せず、かつ稼働寿命がさらに長く、設備を長期的にメンテナンスフリーにする。
【0042】
この技術に熟習している者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、上記の実施例を修正または変更することができる。したがって、通常の知識を有する者が本発明によって開示された精神および技術的思想から逸脱することなく行ったすべての同等の修正または変更は、特許請求の範囲によって含まれるべきである。
【符号の説明】
【0043】
1 炉体(転炉)
2 支え輪
21 支え輪本体
22 トラニオン
3 垂直リンク機構
31 第3のリンク座
32 垂直リンク
33 第4のリンク座
34 第2の関節軸受
35 第2のヒンジ軸
4 水平リンク機構
41 第1のリンク座
42 水平リンク
43 第2のリンク座
44 第1の関節軸受
45 第1のヒンジ軸
401 取り付け位置基準マーク
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支え輪本体の下縁と転炉の下半炉体とを接続する垂直リンク機構と、
前記支え輪本体の上縁と転炉の上半炉体とを接続する水平リンク機構とを含む転炉自己適応懸架構造であって、
前記水平リンク機構は、前記垂直リンク機構の上方に対応して位置し、
前記支え輪本体のトラニオン軸線と前記支え輪本体の軸線が所在の平面を第1の基準面とし、それぞれの前記垂直リンク機構自体の対称中心が第1の角の放射領域に位置し、
前記第1の角を形成する2つの平面は、すべて前記支え輪本体の軸線と重合し、2つの平面は、それぞれ前記第1の基準面と15°と50°の角を形成し、各前記垂直リンク機構は、前記第1の基準面に対して対称的に配置され、各前記水平リンク機構は、前記第1の基準面に対して対称的に配置され
前記水平リンク機構は、第1のリンク座と、水平リンクと、第2のリンク座とを有し、前記第1のリンク座が転炉の上半炉体に設置され、前記第2のリンク座が前記支え輪本体の上縁に設置され、前記水平リンクは前記第1のリンク座と第2のリンク座とにそれぞれヒンジ接続され、
前記水平リンク機構は取り付け位置基準マークを有し、前記取り付け位置基準マークは第2の角の放射領域に位置し、前記垂直リンク機構自体の対称中心と前記支え輪本体の軸線が所在の平面を第2の基準面とし、前記取り付け位置基準マークは前記第2の角の放射範囲に位置し、前記第1の角を形成する2つの平面はいずれも前記支え輪本体の軸線と重合し、それぞれが前記第2の基準面と-10°と10°の角を形成する、ことを特徴とする転炉自己適応懸架構造。
【請求項2】
各前記垂直リンク機構自体の対称中心は、いずれも前記支え輪本体の軸線と面一である、ことを特徴とする請求項1に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項3】
記水平リンクに前記取り付け位置基準マークが表示される、ことを特徴とする請求項に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項4】
前記取り付け位置基準マークは、前記水平リンクの中心に位置する、ことを特徴とする請求項に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項5】
前記取り付け位置基準マークは、前記水平リンクに設置された識別穴である、ことを特徴とする請求項に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項6】
前記垂直リンク機構は、第3のリンク座と、垂直リンクと、第4のリンク座とを有し、前記第3のリンク座が転炉の下半炉体に設置され、前記第4のリンク座が前記支え輪本体の下縁に設置され、前記第3のリンク座と前記第4のリンク座とは前記垂直リンクとにそれぞれヒンジ接続されることを特徴とする請求項に記載の転炉自己適応懸架構造。
【請求項7】
前記水平リンク機構の各々における前記水平リンクと、前記垂直リンク機構の各々における前記垂直リンクとは、同じ形状および寸法を有する、ことを特徴とする請求項に記載の転炉の適応懸架構造。
【請求項8】
前記第1のリンク座と前記第2のリンク座とは、第1の関節軸受および第1のヒンジ軸を介して前記水平リンクとそれぞれ回転可能に接続され、
前記第3のリンク座と前記第4のリンク座とは、第2の関節軸受および第2のヒンジ軸を介して前記垂直リンクとそれぞれ回転可能に接続され、
前記第1の関節軸受および前記第2の関節軸受の構造および寸法は同じであり、
前記第1のヒンジ軸および前記第2のヒンジ軸の構造および寸法は同じである、ことを特徴とする請求項に記載の転炉適応懸架下げ構造。
【国際調査報告】