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特表2024-520231誘導コイルおよび中間コイルを用いて金属粉末を製造するための装置および方法
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  • 特表-誘導コイルおよび中間コイルを用いて金属粉末を製造するための装置および方法 図1
  • 特表-誘導コイルおよび中間コイルを用いて金属粉末を製造するための装置および方法 図2
  • 特表-誘導コイルおよび中間コイルを用いて金属粉末を製造するための装置および方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-23
(54)【発明の名称】誘導コイルおよび中間コイルを用いて金属粉末を製造するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/08 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B22F9/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023569648
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2022062464
(87)【国際公開番号】W WO2022238317
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021112151.5
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523049030
【氏名又は名称】アーエルデー バキューム テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック フランツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン レーネルト
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ビントン
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイス スピタンス
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA02
4K017BA03
4K017BA07
4K017BA10
4K017EB04
4K017EB08
4K017EB12
4K017FA04
4K017FA06
(57)【要約】
本発明は、金属粉末を製造するための装置(10、100)に関する。この装置は、溶融室(12)、下流側霧化塔(14)および融液噴流(24)を霧化するためのノズルアセンブリ(16)を含む。装置はさらに、溶融室(12)内部に配置され溶融周波数fmeltで動作させられる誘導コイル(20)であって、内部に少なくとも区分毎に収容された材料ロッド(22)を局所的に溶融して霧化すべき融液噴流(24)を生成するように適応されている誘導コイル(20)、および、溶融室(12)内部に配置され基本周波数fbaseで動作させられる別個の中間コイル(30、130)であって、誘導コイル(20)の下流側に配置され誘導コイル(20)と同軸で整列させられている別個の中間コイル(30、130)を含む。中間コイル(30、130)は、誘導コイル(20)とノズルアセンブリ(16)の間の領域内で融液噴流(24)を過熱するように構成されている。基本周波数fbase対溶融周波数fmeltの周波数比には、1≦FBS=fbase/fmelt≦500なる関係が成立する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末を製造するための装置(10、100)において:
溶融室(12)と;
前記溶融室(12)の下流側に配置された霧化塔(14)と;
前記溶融室(12)を霧化塔(14)に連結する、融液噴流(24)を霧化するためのノズルアセンブリ(16)と;
前記溶融室(12)内部に配設され、溶融周波数fmeltで動作させられる誘導コイル(20)であって、霧化すべき融液噴流(24)を生成する目的で内部に少なくとも区分毎に収容された材料ロッド(22)を局所的に溶融するように構成されている誘導コイル(20)と、
前記溶融室(12)の内部に配設され、基本周波数fbaseで動作させられ、かつ前記誘導コイル(20)の下流側に配設されかつ前記誘導コイル(20)と同軸で整列させられている別個の中間コイル(30、130)であって、前記誘導コイル(20)と前記ノズルアセンブリ(16)の間の領域内で前記融液噴流(24)を過熱するように構成されている別個の中間コイル(30、130)と、
を含み、
前記基本周波数fbaseと前記溶融周波数fmeltの周波数比FBSについて、
1≦FBS=fbase/fmelt≦500
なる関係が成立する、装置(10、100)。
【請求項2】
前記中間コイル(30、130)は、変調周波数fmodが基本周波数fbase上に変調されるような形で構成されている、請求項1に記載の装置(10、100)。
【請求項3】
前記中間コイル(30、130)が、前記誘導コイル(20)に対面する前記中間コイル(30、130)の端部部分に形成された干渉区分(32)を含み、前記中間コイル(30、130)が、前記干渉区分(32)内で、小さい内径を有している、請求項2に記載の装置(10、100)。
【請求項4】
前記溶融周波数fmeltが10kHz~500kHz、好ましくは100kHz~400kHz、より好ましくは200kHz~300kHzであり、かつ/または
前記基本周波数fbaseが、100kHz~5000kHz、好ましくは200kHz~4500kHz、さらに好ましくは500kHz~4000kHz、より好ましくは1000kHz~3000kHz、さらに一層好ましくは1500kHz~2500kHzであり、かつ/または、
前記変調周波数fmodが、0.001kHz~5kHz、好ましくは0.005kHz~4.5kHz、さらに好ましくは0.01kHz~4kHz、より好ましくは0.05kHz~3.5kHz、さらに一層好ましくは0.1kHz~3kHz、さらに一層好ましくは1kHz~2.5kHzである、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項5】
前記中間コイル(30、130)が、好ましくは主に一定の直径を伴う円筒形状を有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項6】
前記中間コイル(30、130)の長さが、前記ノズルアセンブリ(16)の最小内径の4倍超、好ましくは5倍超、より好ましくは6倍超である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項7】
前記中間コイル(30、130)が、前記ノズルアセンブリ(16)と前記誘導コイル(20)の間の最小距離によって定義される長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%内において前記融液噴流(24)を過熱するように適応されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項8】
前記ノズルアセンブリ(16)がラバルノズルを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項9】
前記ノズルアセンブリ(16)が環状ノズルを含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項10】
前記ラバルノズルは、前記融液噴流(24)が前記溶融室(12)から前記霧化塔(14)内へと前記ラバルノズルを通過し、添加ガスが前記溶融室(12)から前記霧化塔(14)内へ前記ラバルノズルを通って流れるような形で構成され配設されており、前記添加ガスが、前記ラバルノズルを通過するにつれて前記融液噴流(24)を加速し、
前記環状ノズルは、追加の霧化ガスが霧化ガス供給源から前記霧化塔(14)まで前記環状ノズルを通って流れ、その結果として前記霧化塔(14)に隣接する前記ラバルノズルの出口開口部の一領域内に局所的に低下した逆圧が生成され得るような形で、前記ラバルノズルの下流側でかつ/または前記ラバルノズルの前記領域内に配設されており、こうして前記溶融室(12)の予圧Pと前記局所的に低下した逆圧Pとの間の圧力比Dには、
D=P/P≧2
なる関係が成立するようになっている、
少なくとも請求項8および9に記載の装置(10、100)。
【請求項11】
金属粉末を製造するための方法において、
- 溶融室(12)の内部で少なくとも区分毎に材料ロッド(22)を取り囲む誘導コイル(20)を用いて前記材料ロッド(22)を局所的に溶融させることによって霧化すべき融液噴流(24)を生成するステップであって、前記誘導コイル(20)が溶融周波数fmeltで動作させられるステップと;
- 前記誘導コイル(20)の下流側に配設され前記誘導コイル(20)と同軸で整列した別個の中間コイル(30、130)を用いて、前記誘導コイル(20)とノズルアセンブリ(16)の間の領域内で前記融液噴流(24)を過熱するステップであって、前記中間コイル(30、130)が基本周波数fbaseで動作させられ、前記基本周波数fbase対前記溶融周波数fmeltの周波数比FBSには:
1≦FBS=fbase/fmelt≦500
なる関係が成立する、ステップと;
- 前記ノズルアセンブリ(16)を用いて前記過熱された融液噴流(24)を霧化するステップであって、前記溶融室(12)が前記ノズルアセンブリ(16)を介して霧化塔(14)に連結されている、ステップと;
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導コイルおよび中間コイルを使用することによって高純度粉末を製造するための装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、材料を溶融し霧化して粉末を製造するための装置および方法に関する。詳細には、粉末は、Ni超合金粉末、貴金属粉末、または高融点で反応性の金属合金粉末などの高純度金属粉末であり得る。例えば、装置および方法は、チタン、ジルコニウム、ニオブおよび/またはタンタル合金粉末を製造するのに役立ち得る。
【背景技術】
【0002】
金属粉末は、多くの利用分野において、半完成品および成形部品の製造のための出発材料として役立つ。詳細には、金属粉末はこの目的で、焼結または積層造形技術を用いてさらに加工可能である。例えば航空宇宙産業、エネルギ技術、化学工業、エレクトロニクス産業およびバイオメディカル技術におけるその広範囲の利用分野に起因して、(金属)粉末に対する需要そして(金属)粉末の品質に関する要件は絶えず増大し続けている。
【0003】
粉末製造のための従来の装置には、材料融液を製造または提供するための手段、ならびに材料融液の融液噴流を霧化または噴霧化するための手段が含まれる。
【0004】
材料融液を製造するための公知のプロセスは、例えばEIGA(Electrode Induction Melting Inert Gas Atomization)プロセス、VIGA(Vaccuum Induction Melting Inert Gas Atomization)プロセスおよびPIGA(Plasma Inert Gas Atomization)プロセスである。
【0005】
EIGA技術を使用して材料棒を溶融しその後溶融材料を霧化することにより金属粉末を製造するための装置は、独国特許出願公開第4102101A1号および欧州特許出願公開第3083107A1号から知られている。しかしながら、これらの装置によって製造された粉末の品質には制限があり、改善された粉末品質を有するさらに細かくより均一な粉末に対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第4102101A1号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3083107A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、先行技術の不利点を克服する装置および方法を提供することにある。
【0008】
詳細には、本発明の目的は、さらに細かく、より均一でかつ/または品質的に改善された粉末の製造を可能にする装置および方法を提供することにある。粉末品質の改善とは、粉末中の衛星形成および/または粉末中の気体介在物の削減、および/または最適な球形度の達成を意味し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立クレームの主題によって達成される。装置および方法のさらなる開発および実施形態が、従属クレームおよび以下の説明の主題である。
【0010】
本発明の一態様は、粉末を製造するための、詳細には金属粉末を製造するための装置およびシステムに関する。装置は、チタン、ジルコニウム、ニオブおよび/またはタンタル合金の高純度粉末を製造するため、および/またはNi超合金粉末、貴金属粉末または高融点および反応性の金属合金粉末を製造するための装置であり得る。
【0011】
該装置は、溶融室およびこの溶融室の下流側の霧化塔を含む。下流側とはここでは、霧化塔が動作中溶融室の下方に位置設定されていることを意味し得る。溶融室には予圧が印加され得る。霧化塔は逆圧を受ける可能性がある。逆圧は、予圧よりも低いものであり得る。逆圧は、予圧に等しいものであってもよい。逆圧が予圧に等しい一実施形態においては、溶融室はバイパスを介して霧化塔に連結されてよい。
【0012】
装置は、融液噴流を霧化するためのノズルアセンブリを含み、これを介して溶融室は霧化塔に連結される。
【0013】
溶融室の内部には誘導コイルが配設されている。誘導コイルは、複数の巻回を含み得る。誘導コイルは、溶融周波数fmeltで動作させられ、少なくとも内部に区分毎に収容された材料ロッドを局所的に溶融して、霧化すべき融液噴流を生成するように構成されている。ここで局所的に溶融するとは、一端部(誘導コイル内に配設された一端部)の部域内で誘導コイルにより材料ロッドが加熱され溶融されることを意味するものと理解され得る。材料ロッドは、連続した均一な融液噴流を生成できるように、連続的に前進させられ得る。材料ロッドは、金属ロッドであり得る。したがって、融液噴流は金属融液噴流であり得る。材料ロッドはチタン、ジルコニウム、ニオブおよび/またはタンタル合金、Ni超合金粉末貴金属または別の高融点で反応性の金属合金を含み得る。融液噴流は連続的であり得、あるいは、短い連続小滴で形成されていてよい。
【0014】
溶融周波数fmeltは、調整可能である。融液噴流の直径および融液噴流の溶融速度および溶融率は、溶融周波数の特定の選択によって影響され得る。溶融率dm/dtは、0.1kg/min~10kg/min、好ましくは0.5kg/min~8kg/min、好ましくは1.5kg/min~6kg/minであり得る。溶融すべき材料は、マグネシウムを含んでいてよく、1600kg/mの密度を有し得る。溶融すべき材料は、アルミニウムを含んでいてよく、2700kg/mの密度を有し得る。溶融すべき材料はタングステンを含んでいてよく、19000kg/mの密度を有し得る。融液噴流の直径は、2mm~10mm、好ましくは3mm~9mm、より好ましくは4.5mm~7.5mmであってよい。溶融速度は、0.01m/s~9m/s、好ましくは0.1m/s~5m/s、より好ましくは0.5m/s~4m/sであり得る。融液噴流の直径および溶融速度ならびに溶融率についての規定された値範囲は、充分に高い溶融速度を伴いながら、可能なかぎり最小の融液噴流直径を提供するための有利な組合せ、すなわち最適なバランスを表わす。
【0015】
さらに、溶融室の内部には、別個の中間コイルが配設されている。ここで別個のとは、中間コイルが誘導コイルから構造的に別個であること、すなわち単に誘導コイルの一区分を形成するものでないことを意味し得る。中間コイルは同様に、誘導コイルとは別個に制御可能であり得、2つのコイルの制御は互いに整合され得るものの、誘導コイルの制御および周波数に必ずしも依存していなくてよい。中間コイルは複数の巻回を含み得る。
【0016】
中間コイルおよび/または誘導コイルの各々を、遮蔽材料、例えばフェライトシースによって包囲することができる。このようにして、特定の力線誘導を実現することができる。これにより、別個のコイルの周波数範囲を適応させることが可能となると同時に、コイル間の相互干渉が防止される。
【0017】
中間コイルは、誘導コイルの下流側に位置設定され、誘導コイルと同軸で整列している。したがって、中間コイルは、誘導コイルとノズルアセンブリの間に配設され、ここで中間コイルは、誘導コイルから離隔されている。中間コイルは同様に、ノズルアセンブリから離隔されていてよく、詳細には、中間コイルの最終巻回はノズルアセンブリの入口開口部から離隔され得る。代替的には、中間コイルは下端部でノズルアセンブリ内へ延在していてよい。この場合、中間コイルの最終巻回は、少なくともノズルアセンブリの最小内径を有する部分から離隔され得る。
【0018】
詳細には、誘導コイルおよび中間コイルは、誘導コイルにより生成される融液噴流が中間コイルを通過するような形で(下流側でかつ互いに同軸整列した状態で)配設される。ここで下流側とは、中間コイルに対面する誘導コイルの最終巻回が、誘導コイルに対面する中間コイルの最初の巻回から(両コイルの長手方向軸に沿って)軸方向に離隔されていることを意味し得、ここで中間コイルの最初の巻回は誘導コイルの最終巻回よりも霧化塔に近いところに配設されている、すなわち中間コイルの最初の巻回は霧化塔の方向で誘導コイルの最終巻回から離隔されている。
【0019】
中間コイルは、基本周波数fbaseで動作させられ、誘導コイルとノズルアセンブリの間の部域内で融液噴流を過熱するように構成されている。過熱は同様に、融液噴流を材料の液相温度より高く加熱しかつ/または維持することとしても記述することができる。より精確には、基本周波数fbaseで動作させられる中間コイルは、中間コイルの長手方向軸に沿った融液噴流および、少なくとも誘導コイルの最終巻回と両コイルに対面するノズルアセンブリの入口開口部の間の部域の一部分の中の融液噴流を加熱することができる。このようにして、ノズルアセンブリに進入する前の融液噴流の冷却に対して標的を絞り込んだ影響を及ぼすことができ、こうしてこの冷却を防止または削減することができる。この部域内における融液噴流の冷却を防止または削減することにより、ノズルアセンブリに進入する前にすでに融液噴流の複数の部域が(部分的に)凝固してしまうのを回避することができる。霧化前の凝固は、製造される粉末の品質に多大な影響を及ぼす。これは、中間コイルによって特定的に抑制され得、こうして粉末の品質は改善される。
【0020】
例えば、誘導コイルを介した溶融の直後で中間コイルへの進入前に、溶融材料は、その固相温度よりも高くかつその液相温度よりも多くとも70℃高い温度を有し得る(Tsol≦T≦(Tliq+70℃))。融液噴流は、中間コイルの通過後に(すなわち霧化塔に対面する中間コイルの下端部において)中間コイルを介したさらなる過熱に起因して、その固相温度よりも高くその液相温度よりも多くとも100℃高い温度を有し得る(Tsol≦T≦(Tliq+100℃))。
【0021】
中間コイルは、(融液噴流が一定程度冷却する結果になると思われる)輻射損失を補償するためまたは融液噴流の過熱をさらに増大させるために役立ち得る。
【0022】
溶融周波数fmeltに対する基本周波数fbaseの周波数比FBSについては、以下の関係が成立し得る:
1≦FBS=fbase/fmelt≦500;
好ましくは1≦fbase/fmelt≦250;
さらに好ましくは1≦fbase/fmelt≦100;
より好ましくは3≦fbase/fmelt≦50;
さらに一層好ましくは8≦fbase/fmelt≦25。
【0023】
詳細には、FBSは5~15、好ましくは6.5~13.5、より好ましくは8~12、さらに好ましくは9~11、さらに一層好ましくは約10であり得る。
【0024】
溶融周波数fmeltに対する基本周波数fbaseの規定の周波数比FBSは、一方では冷却が高い信頼性で充分に削減され得ることそして他方では、材料ロッドの溶融(すなわち融液噴流の生成)と融液噴流の過熱の間の円滑な移行を実現できることを理由として、極めて有利な関係を表わしている。
【0025】
溶融周波数fmelt、基本周波数fbaseおよび/または周波数比FBSは、溶融すべき材料に応じて、および/または製造すべき粉末(およびその所望される利用分野)に応じて、および/またはコイルの幾何形状および構造に応じて選択され得る。換言すると、必要に応じてコイルを制御し、対応する周波数で動作させることができる。この目的のために配設の設計を修正する必要がないことから、本発明に係る配設を異なる利用分野に極めて柔軟に適応させることが可能である。
【0026】
誘導コイルとノズルアセンブリの間の部域は、誘導コイルとノズルアセンブリの間の最小距離、すなわちノズルアセンブリに対面する誘導コイルの最終巻回とノズルアセンブリの上位入口開口部の間の距離とすることができる。
【0027】
さらなる開発において、中間コイルは、変調周波数fmodを基本周波数fbaseへと変調させるように構成され得る。基本周波数fbaseへ変調された変調周波数fmodを使用して、連続融液噴流の本質的に同じサイズを有する個別の連続小滴への標的を絞り込んだ分離または崩壊をひき起こすかまたはもたらすことが可能である。換言すると、こうして、変調された変調周波数fmodは、融液噴流の同じサイズの個別の小滴への標的を絞り込んだ分離または崩壊をひき起こす摂動または干渉周波数を表わす。連続小滴への融液噴流の分離の場合、後続する霧化を最適な形で準備することができ、こうして、達成可能な粉末の品質に関して、より効率の良いより一層優れた霧化を達成することが可能である。誘導コイルとノズルアセンブリの間の部域内で融液小滴に作用する追加の基本周波数fbaseは、融液噴流の所望されない冷却そして詳細にはその凝固を防止し、このことは融液噴流、特に多数の融液小滴で形成された融液噴流の場合に、所望される粉末の品質を保証する目的でさらに一層重要である。変調周波数fmodを用いた融液噴流に標的を絞り込んだ崩壊は、溶融周波数fmeltを用いた融液噴流の直径および融液噴流の溶融速度の先行する標的を絞り込んだ設定と合わせて、標的を絞り込んだ、そして利用分野に関連する形で粉末の粒子サイズおよび品質を設定することを可能にする。この設定は、可変的かつ容易に適応させることができる。本質的に同じサイズの小滴を設定することにより、凝固が均一になり、極めて均質な粉末の製造が保証される。
【0028】
中間コイルは、誘導コイルに対面する中間コイルの端部領域に形成された干渉区分またはゾーンを含むことができる。したがって、干渉区分は、融液噴流が中間コイルに進入する中間コイルの一領域内に提供されることから、初期干渉区分または入力干渉区分とも呼ぶことができる。干渉区分または干渉ゾーンに接する中間コイルの残りの部分を、過熱区分または過熱ゾーンとして記述することが可能である。干渉区分は、集中区分を表わし、融液噴流を局所的に、短時間でかつ強力に圧搾するように設計され得る。中間コイルは、干渉区分内でより小さい内径、より具体的には過熱区分または中間コイルの残りの部分に比べて小さい直径を有し得る。干渉区分は、中間コイルの長さの5%~25%、好ましくは10%~20%、より好ましくは12.5%~17.5%にわたり延在し得る。干渉区分は、小さい直径の特定の巻回を含み得る。干渉区分内には、低温壁るつぼのパリセードを巻回内部に配置することができ、これが、融液噴流の通過する直径を削減する。干渉区分は、中間コイルの残りの巻回とは別個でかつ残りの巻回と並列に接続された1つの巻回を含み得る。別個の巻回は、残りの巻回よりも高い電流で動作させることが可能である。
【0029】
中間コイルは、中間コイルのインダクタンスをさらに増大させるために、非導電性フェライト材料により区分毎に包囲されてよい。
【0030】
干渉区分の内径または内部横断面が比較的小さいことに起因して、中間コイル、詳細には変調された変調周波数fmodによる融液噴流の影響の集中を実現することができる。これにより、融液噴流はこの干渉区分内で、ひいては中間コイル内への進入の開始時点ですでに個別の連続小滴へと崩壊することができる。これらの小滴は、その後、過熱区分を通過するときに過熱される。
【0031】
溶融周波数fmeltは、10kHz~500kHz、好ましくは100kHz~400kHz、より好ましくは200kHz~300kHzであり得る。溶融周波数fmeltは、少なくとも10kHz、好ましくは少なくとも50kHz、さらに好ましくは少なくとも100kHz、より好ましくは少なくとも200kHz、さらに一層好ましくは少なくとも250kHzであり得る。溶融周波数fmeltは、500kHz以下、好ましくは450kHz以下、さらに好ましくは350kHz以下、より好ましくは300kHz以下、さらに一層好ましくは250kHz以下であり得る。規定された範囲内の溶融周波数fmeltは、本明細書において関連する材料について、2mm~10mmの融液噴流直径を設定することを可能にする。
【0032】
基本周波数fbaseは、100kHz~5000kHz、好ましくは200kHz~4500kHz、さらに好ましくは500kHz~4000kHz、より好ましくは1000kHz~3000kHz、さらに一層好ましくは1500kHz~2500kHzであり得る。基本周波数fbaseは、少なくとも100kHz、好ましくは少なくとも200kHz、さらに好ましくは少なくとも500kHz、より好ましくは少なくとも1000kHz、さらに一層好ましくは少なくとも1500kHzであり得る。基本周波数fbaseは、5000kHz以下、好ましくは4500kHz以下、さらに好ましくは4000kHz以下、より好ましくは3000kHz以下、さらに一層好ましくは2500kHz以下であり得る。規定された範囲内の基本周波数fbaseは、ここで関連する材料についての融液噴流、詳細には、好ましくは2mm~10mmに設定された融液噴流直径を有する融液噴流の望ましくない冷却を防止するかまたは削減することができる。
【0033】
変調周波数fmodは、0.001kHz~5kHz、好ましくは0.005kHz~4.5kHz、さらに好ましくは0.01kHz~4kHz、より好ましくは0.05kHz~3.5kHz、さらに一層好ましくは0.1kHz~3kHz、さらに一層好ましくは1kHz~2.5kHzであり得る。変調周波数fmodは、少なくとも0.001kHz、好ましくは少なくとも0.005kHz、さらに好ましくは少なくとも0.01kHz、より好ましくは少なくとも0.05kHz、さらに一層好ましくは少なくとも0.1kHz、さらに一層好ましくは少なくとも1kHzであり得る。変調周波数fmodは5kHz以下、好ましくは4.5kHz以下、さらに好ましくは4kHz以下、より好ましくは3.5kHz以下、さらに一層好ましくは3kHz以下、さらに一層好ましくは2.5kHz以下であり得る。規定された範囲内の変調周波数fmodにより、本明細書において関連する材料について、詳細には、好ましくは2mm~10mmに設定された融液噴流直径で、所望された直径を有する連続小滴への融液噴流の標的を絞り込んだ崩壊を実現することができる。
【0034】
変調周波数fmodは、詳細には干渉領域内での融液噴流直径および溶融速度に応じて選択され得る。ここでは、以下の関係式が成立する:
【数1】
式中、
【数2】
式中、vはm/s単位の溶融速度であり、μはPa・s単位のそれぞれの材料の融液粘度であり、ρはkg/m単位のそれぞれの材料の融液密度であり、γはN/m単位のそれぞれの材料の融液表面張力である。
【0035】
中間コイルは、円筒形形状を有し得る。中間コイルは、少なくとも区分毎でかつ/または主に一定の直径を伴う円筒形形状を有し得る。主に一定の直径とは、ここでは、中間コイルの長手方向軸に沿って見た場合に、中間コイルの少なくとも70%、好ましくは中間コイルの少なくとも80%、より好ましくは中間コイルの少なくとも85%が一定の直径を有することを意味し得る。これにより、融液噴流は、中間コイルの領域内の各々の場所において同じエネルギ入力を受け、かくして中間コイル内のその通過(落下)全体を通して各々の場所で実質的に同等に加熱されることが可能となる。
【0036】
中間コイルの長手方向軸に沿って見たその長さは、ノズルアセンブリの最小直径の4倍超、好ましくは5倍超、より好ましくは6倍超であり得る。このようにして、誘導コイルとノズルアセンブリの間の領域内において融液噴流の極めて効果的な過熱を達成することができる。
【0037】
中間コイルは、(中間コイルまたは装置の長手方向軸に沿って見た場合の)ノズルアセンブリと誘導コイルの間の最小距離によって定義される距離の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、さらに一層好ましくは少なくとも80%内で融液噴流を過熱するように構成され得る。この距離のこのような最小限の部分を網羅することにより、融液噴流の望ましくない冷却を効果的かつ充分に削減することができる。
【0038】
誘導コイルは、少なくともノズルアセンブリに向かう方向にある区分において円錐形である形状を有することができ、こうして、材料ロッドの効果的な溶融を実現することができる。
【0039】
ノズルアセンブリは、ラバルノズルを含むかまたはラバルノズルの形をしていてよい。
【0040】
ノズルアセンブリは、環状ノズルを含むかまたは環状ノズルの形状で形成されてよい。
【0041】
ラバルノズルは、融液噴流が溶融室から霧化塔内へラバルノズルを通過し、追加のガスが溶融室から霧化塔内へラバルノズルを通って流れるような形で構成され配設され得、ここで追加のガスは、ラバルノズルを通って流れる時に融液噴流を加速する。環状ノズルは、ラバルノズルの下流側に配設され得、かつ/または追加の霧化ガスが霧化ガス供給源から霧化塔まで環状ノズルを通って流れ、その結果として霧化塔に隣接するラバルノズルの出口開口部の一領域内に局所的に低下した逆圧が生成され得るような形で、ラバルノズルの領域内に配設され得、こうして溶融室の予圧Pと局所的に低下した逆圧Pとの間の圧力比Dには、
D=P/P≧2
なる関係が成立するようになっている。
【0042】
このような2重ノズルアセンブリおよび規定された圧力比を用いて、ノズルを通る臨界流れを達成することができ、融液噴流の霧化を改善することができる。
【0043】
本発明の別の態様は、金属粉末の製造方法に関する。
【0044】
該方法は:
- 溶融室の内部で少なくとも区分毎に材料ロッドを取り囲む誘導コイルを用いて材料ロッドを局所的に溶融させることによって霧化すべき融液噴流を生成するステップであって、誘導コイルが溶融周波数fmeltで動作させられるステップと;
- 誘導コイルの下流側に配設され誘導コイルと同軸で整列した別個の中間コイルを用いて、誘導コイルとノズルアセンブリの間の領域内で融液噴流を過熱するステップであって、中間コイルが基本周波数fbaseで動作させられ、基本周波数fbase対溶融周波数fmeltの周波数比FBSについて:
1≦FBS=fbase/fmelt≦500
なる関係が成立する、ステップと;
- ノズルアセンブリを用いて過熱された融液噴流を霧化するステップであって、溶融室がノズルアセンブリを介して霧化塔に連結されている、ステップと;
を含む。
【0045】
本発明の別の態様は、金属粉末を製造するための装置に関する。該装置は:
溶融室と;
溶融室の下流側に配置された霧化塔と;
溶融室を霧化塔に連結する、融液噴流を霧化するためのノズルアセンブリと;
溶融室内部に配設され、溶融周波数fmeltで動作させられる誘導コイルであって、霧化すべき融液噴流を製造する目的で内部に少なくとも区分毎に収容された材料ロッドを溶融するように構成されている誘導コイルと;
溶融室の内部に配設され、基本周波数fbaseで動作させられている別個の中間コイルであって、誘導コイルの下流側に配設され、誘導コイルと同軸で整列させられており、誘導コイルとノズルアセンブリの間の領域内で融液噴流を過熱するように構成されている別個の中間コイルと;
を含み、
ここで中間コイルは、変調周波数fmodが基本周波数fbaseに変調されるような形で構成されている。
【0046】
以上では、装置の唯一の態様に関連していくつかの特徴、利点、機能、動作様式、実施形態およびさらなる開発について説明してきたが、これらは、変更すべきところは変更して、方法および別の態様に対して適用できるものであり、その逆も同様である。
【0047】
以下では、本発明の例示的実施形態について、添付図を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る装置の概略図である。
図2図2は、本発明のさらなる実施形態に係る装置の概略図である。
図3図3は、中間コイルが動作させられる基本周波数fbaseおよび変調周波数fmodを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、高純度金属粉末を製造するための装置またはシステム10を示す。装置10は、溶融室12および溶融室12の下流側の霧化塔14を含む。図示した実施形態において、溶融室12は、動作中霧化塔14の上方に配設されている。溶融室12は、ノズルアセンブリ16を介して霧化塔14に連結されている。すなわち、ノズルアセンブリ16の上端部は、溶融室12に隣接して配置されているか、または溶融室12内に延在する。ノズルアセンブリ16の下端部は、霧化塔14に隣接して配置されるか、あるいは霧化塔14内に延在する。
【0050】
ノズルアセンブリ16は、溶融室12内に一構成要素として統合され得る。ノズルアセンブリ16は、溶融室12内および霧化塔14内に一構成要素として統合され得る。ノズルアセンブリ16は、霧化塔14内に一構成要素として統合され得る。ノズルアセンブリ16は、溶融室12と霧化塔14の間に、別個の構成要素として提供されてよい。図1に示されている実施形態において、ノズルアセンブリ16は、溶融室12と霧化塔14の間に、別個の構成要素として提供されている。
【0051】
溶融室12の内部には、複数の巻回を有する誘導コイル20を含むEIGA(Electrode Induction Melting Inert Gas Atomization)アセンブリ18が提供されている。誘導コイル20は、ノズルアセンブリ16の上方に配置され、ノズルアセンブリ16と同軸である。誘導コイル20は、ノズルアセンブリ16に向かってテーパの付いた形状を有する。
【0052】
さらに、材料ロッド22、この場合には金属または金属合金、好ましくはTi64合金製の材料ロッド22が、溶融室12の内部に配設されている。ノズルアセンブリ16に対面する材料ロッド22の端部が、少なくとも部分的に誘導コイル20内に収容されるか、または誘導コイル20内に延在する。
【0053】
誘導コイル20は、溶融周波数fmeltで動作させられ、内部に収容された材料ロッド22の端部を局所的に溶融するように構成されている。ここで、誘導コイルは250kHzの溶融周波数fmeltで動作させられている。このようにして、この実施例においては5mmの融液噴流直径dを有する霧化すべき融液噴流24が生成される。図示された実施形態において、融液噴流24は当初、実質的に連続的にコヒーレントな融液噴流24である。矢印26、28によって標示されているように、材料ロッド22は、可動な形で組付けられている。したがって、材料ロッド22は、その長手方向軸A(矢印28)を中心として回転可能であり、これにより材料ロッド22の均一な溶融を達成することができる。さらに、材料ロッド22は、材料ロッド22が連続的に補給可能で、溶融すべき(そしてその後霧化または噴霧化すべき)材料が霧化または噴霧化プロセス中に連続的に補給され得るように、ノズルアセンブリ16の方向(矢印26)に変位可能である。材料ロッド22を移動させるために、この材料ロッドはその反対側の端部において対応するアクチュエータ(図示せず)に連結されている。材料ロッド22は、誘導コイル20と同軸的に、かつノズルアセンブリ16と同軸的に配設されている。軸Aは、EIGAアセンブリ18、誘導コイル20、材料ロッド22およびノズルアセンブリ16の長手方向軸または中心軸を表わす。
【0054】
装置10は、溶融室12内に配置され基本周波数fbaseで動作させられる中間コイル30を含む。図示された実施形態において、基本周波数は2000kHzである。したがって、ここで、溶融周波数fmeltに対する基本周波数fbaseの周波数比FBSは8である。
【0055】
図1図2も)を見ると分かるように、中間コイル30は、誘導コイル20に加えて、それとは構造的に別個である別個の中間コイル30として形成されている。中間コイル30は、誘導コイル20の下流側に配置され、誘導コイル20と同軸で整列させられている。したがって、融液噴流24は、誘導コイル20からノズルアセンブリ16内へ長手方向軸Aに沿って中間コイル30を通過するかまたはそれを通って落下する。中間コイル30の基本周波数fbaseは、中間コイル30が、誘導コイル20とノズルアセンブリ16の間の領域内で融液噴流24を過熱し、こうしてノズルアセンブリ16内への進入に先立ち融液噴流24の冷却を防止するかまたは少なくとも削減するような形で選択される。図示されている実施形態において、中間コイル30は、誘導コイル20、より具体的には誘導コイル20の下端部と、ノズルアセンブリ16、より具体的にはノズルアセンブリ16の上位入口開口部との間の最短距離の約50%の距離全体にわたり、融液噴流24を過熱する。
【0056】
図1に示されている装置10の中間コイル30は、干渉区分32または干渉ゾーン32およびそれに隣接する過熱区分34または過熱ゾーン34を含む。干渉区分32は、誘導コイル20に対面する中間コイル30の上位端部領域に、すなわち融液噴流24が中間コイル30に進入する領域内に形成される。中間コイル30は、干渉区分32の領域内において、過熱区分34の内径に比べて小さい内径を有する。ここで、干渉区分32は、中間コイル30の全長の約15%にわたり延在している。
【0057】
0.006kHzの追加の変調周波数fmodが、中間コイル30を動作させる基本周波数fbase上に変調される。すなわち、この変調周波数fmodが基本周波数fbaseに重ね合わされる。この変調周波数fmodの効果により、融液噴流24は擾乱され、こうして標的を絞り込んだ形で個別の小滴Tへと崩壊させられる。これらの小滴Tは連続して互いに追従し合い、こうして共に融液噴流24を形成する。その結果として、図示された実施形態において、融液噴流24はすでに個別の小滴Tの形になってノズルアセンブリ16に進入し、これらの小滴はその後ノズルアセンブリ16により霧化される。誘導コイル20の溶融周波数fmeltを用いて融液噴流直径dを選択的に設定すること、そしてfmeltまたは融液噴流直径dおよび溶融速度に応じた変調周波数fmodの選択的設定によって、装置10は、標的を絞り込んだ形で小滴サイズに影響を及ぼしこれを設定することができる。このようにして、標的を絞り込んだ形で粉末特性に影響を及ぼすことができる。基本周波数fbaseおよび変調周波数fmodは、図3に概略的に示されている。
【0058】
融液噴流24(すなわち小滴T)の霧化の後、霧化された小滴は霧化塔14内で冷え、そこで凝固して粉末を形成する。
【0059】
図2は、さらなる実施形態に係る、高純度金属粉末を製造するための装置またはシステム100を示す。装置100は、本質的に図1の装置10と類似のものである。
【0060】
図1の装置10とは対照的に、図2の装置100の中間コイル130は、異なる区分またはゾーンを含まず、その長さ全体にわたり過熱ゾーン134として連続的に形成されている。それでも、この実施形態においても、融液噴流(図2には図示せず)を過熱するために中間コイル130が動作させられる基本周波数fbase上に、変調周波数fmodを任意に変調させることができる。図1の実施形態と同じまたは他の周波数が提供され得る。
【0061】
図2の装置100と図1の装置10の間のさらなる差異は、装置100の中間コイル130が、ノズルアセンブリ1内に区分毎に延在するという点にある。詳細には、霧化塔14に対面する中間コイル130の少なくとも1つの最後の巻回が、ここでは、ノズルアセンブリ130の内部に配設されている。
【0062】
図2の実施形態において、中間コイル130は、ノズルアセンブリ16に対面する誘導コイル130の最後の巻回とノズルアセンブリ16の上位入口開口部の間の最短距離の約80%を網羅し、この領域内の融液噴流を過熱する。その上、この実施形態においては、中間コイル130は、ノズルアセンブリ1に対面する誘導コイル20の最後の巻回とノズルアセンブリ16の最小内径を有する部分の間の最短距離の範囲の約77%にわたって延在する。したがって、中間コイル130は、ノズルアセンブリ16の入口区分内でさえ融液噴流をなおも過熱する。
【0063】
図3は、中間コイル30、130が動作させられる周波数を例示する一実施形態の概略的図表を示す。したがって、この図表は、時間軸上の基本周波数fbaseおよび変調された変調周波数fmodを例示している。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末を製造するための装置(10、100)において:
溶融室(12)と;
前記溶融室(12)の下流側に配置された霧化塔(14)と;
前記溶融室(12)を霧化塔(14)に連結する、融液噴流(24)を霧化するためのノズルアセンブリ(16)と;
前記溶融室(12)内部に配設され、溶融周波数fmeltで動作可能な誘導コイル(20)であって、霧化すべき融液噴流(24)を生成する目的で内部に少なくとも区分毎に収容された材料ロッド(22)を局所的に溶融するように構成されている誘導コイル(20)と、
前記溶融室(12)の内部に配設され、基本周波数fbaseで動作可能であり、かつ前記誘導コイル(20)の下流側に配設されかつ前記誘導コイル(20)と同軸で整列させられている別個の中間コイル(30、130)であって、前記誘導コイル(20)と前記ノズルアセンブリ(16)の間の領域内で前記融液噴流(24)を過熱するように構成されている別個の中間コイル(30、130)と、
を含み、
前記中間コイル(30、130)は、変調周波数fmodが基本周波数fbase上に変調されるように構成されており、
前記基本周波数fbaseと前記溶融周波数fmeltの周波数比FBSについて、
1≦FBS=fbase/fmelt≦500
となるように設定可能である、装置(10、100)。
【請求項2】
前記中間コイル(30、130)が、前記誘導コイル(20)に対面する前記中間コイル(30、130)の端部部分に形成された干渉区分(32)を含み、前記中間コイル(30、130)が、前記干渉区分(32)内で、小さい内径を有している、請求項に記載の装置(10、100)。
【請求項3】
前記溶融周波数fmeltが10kHz~500kHz、好ましくは100kHz~400kHz、より好ましくは200kHz~300kHzの間で設定可能であり、かつ/または
前記基本周波数fbaseが、100kHz~5000kHz、好ましくは200kHz~4500kHz、さらに好ましくは500kHz~4000kHz、より好ましくは1000kHz~3000kHz、さらに一層好ましくは1500kHz~2500kHzの間で設定可能であり、かつ/または、
前記変調周波数fmodが、0.001kHz~5kHz、好ましくは0.005kHz~4.5kHz、さらに好ましくは0.01kHz~4kHz、より好ましくは0.05kHz~3.5kHz、さらに一層好ましくは0.1kHz~3kHz、さらに一層好ましくは1kHz~2.5kHzの間で設定可能である、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項4】
前記中間コイル(30、130)が、好ましくは主に一定の直径を伴う円筒形状を有する、請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項5】
前記中間コイル(30、130)の長さが、前記ノズルアセンブリ(16)の最小内径の4倍超、好ましくは5倍超、より好ましくは6倍超である、請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項6】
前記中間コイル(30、130)が、前記ノズルアセンブリ(16)と前記誘導コイル(20)の間の最小距離によって定義される長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%内において前記融液噴流(24)を過熱するように適応されている、請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項7】
前記ノズルアセンブリ(16)がラバルノズルを含む、請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項8】
前記ノズルアセンブリ(16)が環状ノズルを含む、請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置(10、100)。
【請求項9】
前記ラバルノズルは、前記融液噴流(24)が前記溶融室(12)から前記霧化塔(14)内へと前記ラバルノズルを通過し、添加ガスが前記溶融室(12)から前記霧化塔(14)内へ前記ラバルノズルを通って流れるような形で構成され配設されており、前記添加ガスが、前記ラバルノズルを通過するにつれて前記融液噴流(24)を加速し、
前記環状ノズルは、追加の霧化ガスが霧化ガス供給源から前記霧化塔(14)まで前記環状ノズルを通って流れ、その結果として前記霧化塔(14)に隣接する前記ラバルノズルの出口開口部の一領域内に局所的に低下した逆圧が生成され得るような形で、前記ラバルノズルの下流側でかつ/または前記ラバルノズルの前記領域内に配設されており、こうして前記溶融室(12)の予圧Pと前記局所的に低下した逆圧Pとの間の圧力比Dには、
D=P/P≧2
なる関係が成立するようになっている、
少なくとも請求項およびに記載の装置(10、100)。
【請求項10】
金属粉末を製造するための方法において、
- 溶融室(12)の内部で少なくとも区分毎に材料ロッド(22)を取り囲む誘導コイル(20)を用いて前記材料ロッド(22)を局所的に溶融させることによって霧化すべき融液噴流(24)を生成するステップであって、前記誘導コイル(20)が溶融周波数fmeltで動作させられるステップと;
- 前記誘導コイル(20)の下流側に配設され前記誘導コイル(20)と同軸で整列した別個の中間コイル(30、130)を用いて、前記誘導コイル(20)とノズルアセンブリ(16)の間の領域内で前記融液噴流(24)を過熱するステップであって、前記中間コイル(30、130)が基本周波数fbaseで動作させられ、変調周波数fmodが基本周波数fbase上に変調され、かつ、前記基本周波数fbase対前記溶融周波数fmeltの周波数比FBSには:
1≦FBS=fbase/fmelt≦500
なる関係が成立する、ステップと;
- 前記ノズルアセンブリ(16)を用いて前記過熱された融液噴流(24)を霧化するステップであって、前記溶融室(12)が前記ノズルアセンブリ(16)を介して霧化塔(14)に連結されている、ステップと;
を含む方法。
【国際調査報告】