(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-23
(54)【発明の名称】PSD-95阻害剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/60 20170101AFI20240516BHJP
C07K 1/04 20060101ALI20240516BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240516BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240516BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240516BHJP
C07K 5/113 20060101ALN20240516BHJP
C07K 5/10 20060101ALN20240516BHJP
【FI】
A61K47/60
C07K1/04
A61K38/16
A61K38/10
A61P9/00
C07K5/113 ZNA
C07K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023569757
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2022062893
(87)【国際公開番号】W WO2022238530
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508335820
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ コペンハーゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】セレイカイテ,ヴィタ
(72)【発明者】
【氏名】ベック-バートリング,クリスチャン レインハード オットー
(72)【発明者】
【氏名】ストロムガード,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC11
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA31
4C084BA41
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA15
4C084ZA36
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA40
4H045BA57
4H045EA20
4H045FA34
(57)【要約】
本発明は、PSD-95のPDZドメインに結合することができる化合物、及びPSD-95によって媒介されるタンパク質間相互作用の阻害剤としてのそれらの医療的使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.アミノ酸配列X
2TX
3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなる第1のペプチド(P
1)(配列中、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、
b.アミノ酸配列X
5TX
6V(配列番号55)を含むか、またはそれからなる第2のペプチド(P
2)(配列中、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、ならびに
c.下記からなる群から選択される細胞膜透過ペプチド(CPP):
i.3~20個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)、
ii.yGrkkrrqrrr(配列番号9、D-TAT)、
iii.RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14、L-Pen)、
iv.rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、
v.RKKRRRESRKKRRRES(配列番号17、L-DPV3)、
vi.LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、
vii.KLALKLALKALKAALKLA(配列番号16、L-MAP)、
viii.PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、
ix.|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び
x.|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)、
を含む、化合物であって、前記CPPが、そのC末端を介してリンカーに連結されており、P
1及びP
2が、それらのN末端を介して前記リンカーにコンジュゲートされており、前記化合物が、式(I):
【化1】
の一般構造を有する、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
P
1が、配列X
1X
2TX
3V(配列番号54)を含むか、またはそれからなり、配列中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
P
2が、配列X
4X
5TX
6V(配列番号56)を含むか、またはそれからなり、配列中、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
P
1及び/またはP
2が、4~10個のアミノ酸残基、例えば5個のアミノ酸残基からなる、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
X
3及びX
6が、L、T、V、及びRからなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含み、前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含み、前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらし、前記CPPが、アミド結合によって前記リンカーの前記窒素原子に連結されている、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含み、前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらし、前記CPPが、アミド結合によって前記リンカーの前記窒素原子に連結されており、前記化合物が、式(III):
【化2】
の一般構造を有し、式中、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、
先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
P
1が、P
2と同一である、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETLV(配列番号2)からなる、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETTV(配列番号3)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETVV(配列番号4)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETRV(配列番号5)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列ISTDV(配列番号6)からなる、請求項1~3または5~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列VETVV(配列番号7)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記CPPが、3~20個のL-アルギニン残基、例えば3~15個、例えば3~12個、例えば3~10個のL-アルギニン残基からなる、ポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、式(VI):
【化3】
の一般構造を有し、式中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10であり、
ポリ-Argが、3~20個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチドである、
先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記ポリ-Argが、3~20個のL-アルギニン残基、例えば3~15個、例えば3~12個、例えば3~10個のL-アルギニン残基からなる、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記CPPが、RRRRRRRRR(配列番号12)である、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記CPPが、RRRRRRRR(配列番号57)である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
前記CPPが、RRRRRRR(配列番号58)である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
前記CPPが、RRRRRR(配列番号59)である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
前記CPPが、RRRRR(配列番号60)である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
前記CPPが、RRRR(配列番号61)である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
前記CPPが、RRRである、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
前記CPPが、yGrkkrrqrrr(配列番号9、D-TAT)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
前記CPPが、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14、L-Pen)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
前記CPPが、rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
前記CPPが、RKKRRRESRKKRRRES(配列番号17、L-DPV3)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
前記CPPが、LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
前記CPPが、KLALKLALKALKAALKLA(配列番号16、L-MAP)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
前記CPPが、PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
前記CPPが、|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
前記CPPが、|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
pが2であり、qが2である、請求項8または17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
前記CPPの前記N末端が、アセチル化されているか、または前記CPPの前記N末端が、下記の構造を有するクロロアルカンタグ(CA)にコンジュゲートされている、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【化4】
【請求項37】
前記化合物が、式(XXVIII):
【化5】
の一般構造を有し、式中、P
1、P
2、及びCPPが、下記の通りであり、
前記CPPの前記N末端が、任意選択でアセチル化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項38】
前記化合物が、下記の式(X)~(XXIII)からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化6】
【請求項39】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列IETDV(配列番号1)からなり、前記CPPが、rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)からなる群から選択される、請求項1~3、5~9、35、または36のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項40】
前記化合物が、式(XXVIII):
【化7】
の一般構造を有し、式中、P
1及びP
2が、アミノ酸配列IETDV(配列番号1)からなり、前記CPPが、rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項41】
前記化合物が、PSD-95阻害剤である、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項42】
医薬として使用するための、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項43】
例えば急性虚血性脳卒中及びくも膜下出血から選択される脳卒中等の興奮毒性関連疾患を処置する、予防する、低減する、及び/またはその発症を遅延させる際に使用するための、請求項1~41のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項44】
請求項1~41のいずれか1項に記載の化合物を製造するための方法であって、
a.ペプチドP
1/P
2を合成する一般ステップと、
b.a)の前記ペプチドをOPEG
nまたはNPEG
nリンカー(ここで、「n」は、PEG部分の数である)により二量体化する一般ステップと、
c.例えば自動ペプチド合成装置を使用することによって、前記NPEGリンカーの前記NにてCPPタグを付着させる一般ステップと、
を含む、前記方法。
【請求項45】
請求項1~41のいずれか1項に記載の化合物を製造するための方法であって、
a.Ns-NPEG二酸リンカーを用意する一般ステップと、
b.Fmocベースの固相ペプチド合成法を使用してペプチドP
1/P
2を調製する一般ステップと、
c.Fmoc脱保護ペプチドP
1/P
2を前記Ns-NPEG二酸リンカーにより二量体化して、リンカー-二量体コンジュゲートを形成させる一般ステップと、
d.例えば自動ペプチド合成装置を使用することによって、前記リンカー-二量体コンジュゲートの前記NPEGリンカーの前記NにCPPを付着させる一般ステップと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PSD-95のPDZドメインに結合することができる化合物、及びPSD-95によって媒介されるタンパク質間相互作用の阻害剤としてのそれらの医療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PSD-95は、そのPSD-95/Discs-large/ZO-1(PDZ)ドメインを介してN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体(Kornau et al.1995)及び神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)と相互作用する、ニューロンのシナプスにおける足場タンパク質である。脳虚血時に、過剰なグルタミン酸の放出がNMDA受容体の過剰な活性化ならびに細胞内Ca2+及びNOレベルの有害な上昇をもたらし、これが最終的に興奮毒性を誘導してニューロン死及び脳損傷をもたらす(Aarts et al.,2002、Dawson et al.,1991、Huang et al.,1994、Sattler et al.,1999)。PSD-95は、急性虚血性脳卒中(AIS)及び脳の関連する虚血性病態における薬物標的として探求されている。
【0003】
20量体ペプチドネリネチド(別名、Tat-NR2B9cまたはNA-1)は、アルテプラーゼ(組織プラスミノーゲン活性化因子、tPA)等の標準治療に加えたネリネチドでの処置が、虚血性脳卒中を有する患者及び血管内血栓除去術を受けている患者に対して臨床転帰を改善するかどうかを評価する第3相臨床試験ESCAPE-NA1(Hill et al.,2020)において最近調査された(Hill et al.,2020)。総計1105名の患者がこの研究に組み入れられ、このうち659名の患者がtPA処置を受け、446名の患者はそれを受けなかった。ネリネチドはアルテプラーゼを受けている患者において有効でなかったが、アルテプラーゼを受けていない群においては、ネリネチドが改善された機能的転帰、死亡率の低減、及び梗塞体積の低減をもたらしたことが判明した(Hill et al.,2020)。tPA処置群における効果の欠如は、ネリネチドとtPAとの間の薬物間相互作用によって説明可能であることが最近実証された。具体的に述べると、tPAは、ネリネチドを切断するセリンプロテアーゼであるプラスミンを生成する(Mayor-Nunez et al.2021)。故に、薬物が、AISの標準治療である血栓溶解剤の投与と適合性であることは非常に有利である。
【0004】
ネリネチドは、標的PSD-95に対する親和性が比較的低いという欠点を有し、これがTat-N-二量体及びO-二量体、それぞれ別名UCCB01-144(AB144)及びUCCB01-125等の二量体化合物の設計のきっかけとなった(Bach et al.,2009,2012、WO2010/004003、WO2012/156308、Kucharz et al.,2017)。インビトロ蛍光偏光(FP)アッセイにおいて、PSD-95のPDZ1及びPDZ2に対するネリネチドのKi値は5~10μMであった(Bach et al.,2012)。対照的に、AB144及びUCCB01-125は、それらの二量体構造及び二価の性質に起因して、PSD-95のPDZ1及びPDZ2に同時に結合して、単量体ネリネチドのそれと比べてPDZ1~2に対して500~1000倍高い親和性(それぞれ4.6及び9.5nMのKi値)をもたらす(Bach et al.,2012)。永久中大脳動脈閉塞(pMCAO)を受けたマウスにおいて、虚血後30分で与えたAB144(3nmol/g)の単回静脈内(i.v.)ボーラス注射は、食塩水の効果と比較して、それぞれ虚血後生存期間の6時間及び48時間で梗塞体積を40%及び37%低減した(Bach et al.,2012)。さらに、握力及びロータロッド能力等の機能的帰結が改善し、故に梗塞サイズの低減と相関があった。同じ実験条件及び用量(3nmol/g)の下で、ネリネチドは、有意な神経保護特性を示さなかった(Bach et al.,2012)。同様に、Tat部分を有しないUCCB01-125は脳に到達せず、神経保護特性を何ら示さなかった(Bach et al.,2012)。
【0005】
したがって、PSD-95は、くも膜下出血(SAH)及びAIS等の急性病態の処置のための特定の有望な薬物標的とみなされる。重要な点として、PSD-95は細胞内に位置するため、PSD-95を標的とするいずれの薬物も、細胞膜を効率的に横断して、PSD-95に結合する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、PSD-95に対して高い親和性を有する一連の新規化合物を開発した。ネリネチドのような既知のPSD-95阻害剤と比較して、本発明の化合物は、改善された細胞内取込み及びはるかにより高いプラスミン安定性を有する。故に、本発明の化合物は、AIS及びSAH等の興奮毒性関連疾患の処置において有用であり、血栓溶解剤等の標準治療と適合性である。
【0007】
一態様では、本発明は、
a.アミノ酸配列X
2TX
3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなる第1のペプチド(P
1)(配列中、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、
b.アミノ酸配列X
5TX
6V(配列番号55)を含むか、またはそれからなる第2のペプチド(P
2)(配列中、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、ならびに
c.下記からなる群から選択される細胞膜透過ペプチド(CPP):
i.3~20個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)、
ii.yGrkkrrqrrr(配列番号9、D-TAT)、
iii.RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14、L-Pen)、
iv.rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、
v.RKKRRRESRKKRRRES(配列番号17、L-DPV3)、
vi.LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、
vii.KLALKLALKALKAALKLA(配列番号16、L-MAP)、
viii.PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、
ix.|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び
x.|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)、
を含む、化合物であって、該CPPが、そのC末端を介してリンカーに連結されており、P
1及びP
2が、それらのN末端を介して該リンカーにコンジュゲートされており、該化合物が、式(I):
【化1】
の一般構造を有する、該化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0008】
別の態様では、本発明は、医薬として使用するための、本明細書で定義される化合物に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、例えば急性虚血性脳卒中及びくも膜下出血から選択される脳卒中等の興奮毒性関連疾患を処置する、予防する、低減する、及び/またはその発症を遅延させる際に使用するための、本明細書で定義される化合物に関する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、疼痛の処置または予防において使用するための、本明細書で定義される化合物に関する。
【0011】
さらに、本発明は、本明細書で定義される化合物を製造するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】FPによって決定した、O-PEG
4二量体(化合物1~7)のPSD-95 PDZ1~2に対する親和性。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図2】FPによって決定した、Ac-TAT及びAc-ポリArgに融合された二量体リガンドのPSD-95 PDZ1~2に対する親和性。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図3】FPによって決定した、種々のCPPタグ(配列番号8~22)に融合されたN-PEG
4(IETDV)
2のPSD-95 PDZ1~2に対する親和性。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図4】FPによって決定した、ポリArg CPPタグに融合されたNPEG
4-(KETLV)
2二量体リガンドのPSD-95 PDZ1~2に対する親和性。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図5】インビトロプラスミン安定性アッセイにおいて決定した、Ac-TAT及びAc-ポリArgに融合された二量体リガンドの半減期。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図6】インビトロプラスミン安定性アッセイにおいて決定した、種々のCPPタグ(配列番号8~22)に融合されたN-PEG
4(IETDV)
2の半減期。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図7】CAPAによって決定した、Ac-TAT及びAc-ポリArgに融合された二量体リガンドの細胞内取込み。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図8】CAPAによって決定した、種々のCPPタグ(配列番号8~22)に融合されたN-PEG
4(IETDV)
2の細胞内取込み。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図9】CAPAによって決定した、種々のポリArg CPPタグに融合されたN-PEG
4(IETDV)
2及びN-PEG
4(KETLV)
2の細胞内取込み。データは平均値+SEM、n=3として提示する。
【
図10】ヒト血漿中安定性アッセイにおいて決定した、ポリArg CPPタグに融合されたN-PEG
4(IETDV)
2及びN-PEG
4(KETLV)
2の半減期。データは平均値±SEM、n=3として提示する。
【
図11】PSD-95のPDZ1~2に結合する化合物の一般構造。R
1からR
5は、本明細書に記載されるアミノ酸側鎖であり、R
6は、本明細書に記載されるCPPタグを表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
アミド結合:本明細書で使用される「アミド結合」という用語は、カルボン酸とアミンとの間の反応によって形成される化学結合(及び同時に起こる水の離脱)である。反応が2つのアミノ酸残基間である場合、反応の結果として形成される結合は、ペプチド結合(peptide linkage)(ペプチド結合(peptide bond))として知られる。
【0014】
含む:本明細書で使用される「含む」という用語は、包括的な様態で理解されるべきである。よって、例として、化合物Xを含む組成物は、化合物X及び任意選択で追加の化合物を含んでもよい。
【0015】
二量体:本明細書で使用される二量体という用語は、化学的または物理的相互作用によって会合された2つの同一のまたは同一でない化学部分を指す。例として、二量体は、リンカーによって連結された2つの同一の化学部分等のホモ二量体であり得る。二量体はまた、リンカーによって連結された2つの異なる化学部分等のヘテロ二量体であってもよい。二量体の例は、リンカーの手段によって共有結合性で連結されている2つのペプチドを含む化合物である本発明のPSD-95阻害剤であり、これらのペプチドが、PSD-95のPDZ1及びPDZ2ドメインに同時に結合するか、またはそれらと同時に相互作用することができる。
【0016】
ジペプチド:本明細書で使用される「ジペプチド」という用語は、ペプチド結合によって連結された2つの天然または非天然アミノ酸を指す。
【0017】
脂肪酸:本明細書で使用される脂肪酸(FAと略称される)という用語は、典型的には、飽和または不飽和のいずれでもあり得る、長い脂肪族炭素鎖を有するカルボン酸を指す。脂肪酸は、短鎖脂肪酸(SCFA)、中鎖脂肪酸(MCFA)、長鎖脂肪酸(LCFA)、及び超長鎖脂肪酸(VLCFA)から選択され得る。短鎖脂肪酸(SCFA)は、6個よりも少ない炭素の脂肪族尾部を有する脂肪酸(すなわち酪酸)である。中鎖脂肪酸(MCFA)は、中鎖トリグリセリドを形成し得る、6~12個の炭素の脂肪族尾部を有する脂肪酸である。長鎖脂肪酸(LCFA)は、13~21個の炭素の脂肪族尾部を有する脂肪酸である。超長鎖脂肪酸(VLCFA)は、22個の炭素よりも長い脂肪族尾部を有する脂肪酸である。本発明の脂肪酸は、当業者に既知の任意の好適な脂肪酸または脂肪酸誘導体であり得る。
【0018】
タンパク質を構成しないアミノ酸:タンパク質を構成しないアミノ酸(別称、非コード、非標準、または非天然アミノ酸)は、遺伝コードによってコードされないアミノ酸である。タンパク質を構成しないアミノ酸の非網羅的リストには、γ-アミノ酪酸,L-3-(2-ナフチル)アラニン,L-2,3-ジアミノプロピオン酸、α-アミノ-n-酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン、tert-ロイシン、α-アミノ-n-ヘプタン酸、ピペコリン酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、オルニチン、アロトレオニン、ホモシステイン、ホモセリン、β-アラニン、β-アミノ-n-酪酸、β-アミノイソ酪酸、α-アミノイソ酪酸、イソバリン、サルコシン、N-エチルグリシン、N-プロピルグリシン、N-イソプロピルグリシン、N-メチルアラニン、N-エチルアラニン、N-メチルβ-アラニン、N-エチルβ-アラニン、イソセリン、及びα-ヒドロキシ-γ-アミノ酪酸が含まれる。
【0019】
タンパク質を構成するアミノ酸:タンパク質を構成するアミノ酸(別称、天然アミノ酸)には、アラニン、システイン、セレノシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、ピロリジン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、及びチロシンが含まれる。大文字の略号は、L-アミノ酸を示し、一方で、小文字の略号は、D-アミノ酸を示す。
【0020】
PDZ:本明細書で使用される「PDZ」という用語は、シナプス後肥厚部(Postsynaptic density)タンパク質-95(PSD-95)、Drosophila homologue discs large腫瘍抑制因子(DlgA)、Zonula occludens-1タンパク質(zo-1)を指す。
【0021】
PSD-95:本明細書で使用される「PSD-95」という用語は、シナプス後肥厚部タンパク質-95を指す。
【0022】
PSD-95阻害剤:本明細書で使用される「PSD-95阻害剤」という用語は、PSD-95のPDZ1、PDZ2、またはPDZ1及びPDZ2の両方に結合して、細胞内のこれらのPDZドメインによって促進されるタンパク質間相互作用を阻害する化合物を指す。PSD-95阻害剤によって阻害される相互作用の例は、nNOS、PSD-95、及びNMDA受容体の間の三元複合体形成である。
【0023】
化合物
一態様では、本発明は、細胞膜透過ペプチド(CPP)に連結された第1のペプチド(P
1)を含む化合物に関する。一実施形態では、P
1は、リンカーを介してCPPに連結されている。一実施形態では、該化合物は、第2のペプチド(P
2)をさらに含む。一実施形態では、CPPは、リンカーを介してP
1及びP
2に連結されている。故に、一実施形態では、CPPは、そのC末端を介してリンカーに連結されており、P
1及びP
2は、それらのN末端を介してリンカーにコンジュゲートされており、該化合物は、以下の式(I)の一般構造を有する。
【化2】
【0024】
故に、一実施形態では、本発明の化合物は、第1のペプチド(P1)及び第2のペプチド(P2)を含み、P1及びP2の両方が、PSD-95のPDZ1及びPDZ2ドメインに同時に結合することができ、すなわち該化合物は、二量体PSD-95阻害剤である。
【0025】
一態様では、本発明は、アミノ酸配列X2TX3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなるペプチド(P1)を含む化合物に関し、配列中、
a.X2が、E及びSからなる群から選択され、
b.X3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
P1が、細胞膜透過ペプチド(CPP)に連結されている。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、リンカーを介して第2のペプチド(P
2)に連結された第1のペプチド(P
1)を含む化合物、例えば、式(XXIV):
【化3】
の一般構造を有する化合物に関し、式中、リンカー、P
1、及びP
2は、本明細書で定義される通りである。好ましくは、P
1及びP
2は、KETLV(配列番号2)、KETTV(配列番号3)、KETVV(配列番号4)、KETRV(配列番号5)、ISTDV(配列番号6)、またはVETVV(配列番号7)を含むか、またはそれからなる。任意選択で、リンカーは、細胞膜透過ペプチド(CPP)またはアルブミン結合部分にさらにコンジュゲートされており、それによって膜または血液脳関門を通るペプチドの通過を増加させる。アルブミン結合部分は、アルブミンに結合する任意の好適な化学基であり得る。好ましくは、アルブミン結合部分は、脂肪酸である。一実施形態では、リンカーは、CPPにさらにコンジュゲートされ、すなわち該化合物は、式(I)の一般構造を有する。
【0027】
一態様では、本発明は、
a.アミノ酸配列X
2TX
3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなる第1のペプチド(P
1)(配列中、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、
b.アミノ酸配列X
5TX
6V(配列番号55)を含むか、またはそれからなる第2のペプチド(P
2)(配列中、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、ならびに
c.下記からなる群から選択される細胞膜透過ペプチド(CPP):
i.3~20個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)、
ii.yGrkkrrqrrr(配列番号9、D-TAT)、
iii.RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14、L-Pen)、
iv.rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、
v.RKKRRRESRKKRRRES(配列番号17、L-DPV3)、
vi.LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、
vii.KLALKLALKALKAALKLA(配列番号16、L-MAP)、
viii.PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、
ix.|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び
x.|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)、
を含む、化合物であって、該CPPが、そのC末端を介してリンカーに連結されており、P
1及びP
2が、それらのN末端を介して該リンカーにコンジュゲートされており、該化合物が、式(I):
【化4】
の一般構造を有する、該化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0028】
結合ペプチドP1及びP2
ペプチドP1及びP2は、PSD-95のPDZ1及びPDZ2ドメインに対して高い親和性を有する。一実施形態では、該化合物は、PSD-95阻害剤であり、すなわち該化合物は、PSD-95のPDZドメインのうちの1つまたは複数に結合することができる。
【0029】
一実施形態では、該化合物は、アミノ酸配列X2TX3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなる第1のペプチド(P1)を含み、配列中、
a.X2が、E及びSからなる群から選択され、
b.X3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される。
【0030】
一実施形態では、P1は、配列X1X2TX3V(配列番号54)を含むか、またはそれからなり、配列中、
a.X1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
b.X2が、E及びSからなる群から選択され、
c.X3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される。
【0031】
一実施形態では、P1は、IETDV(配列番号1)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P1は、KETLV(配列番号2)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P1は、KETTV(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P1は、KETVV(配列番号4)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P1は、KETRV(配列番号5)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P1は、ISTDV(配列番号6)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P1は、VETVV(配列番号7)を含むか、またはそれからなる。
【0032】
一実施形態では、P1は、4~10個のアミノ酸残基、例えば5個のアミノ酸残基、例えば6個のアミノ酸残基からなる。配列番号53または配列番号54に与えられるアミノ酸残基を超過するアミノ酸残基は、タンパク質を構成するアミノ酸であっても、またはタンパク質を構成しないアミノ酸であってもよい。
【0033】
一実施形態では、該化合物は、アミノ酸配列X5TX6V(配列番号55)を含むか、またはそれからなる第2のペプチド(P2)をさらに含み、配列中、
a.X5が、E及びSからなる群から選択され、
b.X6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される。
【0034】
一実施形態では、P2は、配列X4X5TX6V(配列番号56)を含むか、またはそれからなり、配列中、
a.X4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
b.X5が、E及びSからなる群から選択され、
c.X6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される。
【0035】
一実施形態では、P2は、IETDV(配列番号1)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P2は、KETLV(配列番号2)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P2は、KETTV(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P2は、KETVV(配列番号4)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P2は、KETRV(配列番号5)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P2は、ISTDV(配列番号6)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、P2は、VETVV(配列番号7)を含むか、またはそれからなる。
【0036】
一実施形態では、P2は、4~10個のアミノ酸残基、例えば5個のアミノ酸残基、例えば6個のアミノ酸残基からなる。配列番号55または配列番号56に与えられるアミノ酸残基を超過するアミノ酸残基は、タンパク質を構成するアミノ酸であっても、またはタンパク質を構成しないアミノ酸であってもよい。
【0037】
一実施形態では、P1及びP2は、同一である。
【0038】
一実施形態では、X2がEである場合、X3はDではない。一実施形態では、X5がEである場合、X6はDではない。一実施形態では、P1及び/またはP2は、IETDV(配列番号1)ではない。
【0039】
好ましい実施形態では、ペプチドP1及びP2は、それらのN末端を介してリンカーまたはCPPにコンジュゲートされている。一実施形態では、アミノ酸配列X2TX3V(配列番号53)は、P1のC末端である。一実施形態では、アミノ酸配列X5TX6V(配列番号55)は、P2のC末端である。
【0040】
細胞膜透過ペプチド(CPP)
本発明の化合物は、細胞膜透過ペプチド(CPP)に連結されたペプチドP1を含む。CPPは、哺乳類細胞の血液脳関門(BBB)及び/または形質膜を横断する能力を特徴とし、それによって、それが連結されているペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド等のカーゴ分子の細胞内送達を生じさせ得る。
【0041】
一実施形態では、CPPは、ポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である。一実施形態では、ポリ-Argは、3~20個のL-アルギニン残基からなる。一実施形態では、ポリ-Argは、5~10個のL-アルギニン残基、例えば7~10個のL-アルギニン残基、例えば8個または9個のL-アルギニン残基からなる。一実施形態では、ポリ-Argは、3~10個のL-アルギニン残基からなる。一実施形態では、CPPは、アミノ酸配列RRRRRRRRR(L-Arg9、配列番号12)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、CPPは、アミノ酸配列RRRRRRRR(L-Arg8、配列番号57)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、CPPは、アミノ酸配列RRRRRRR(L-Arg7、配列番号58)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、CPPは、アミノ酸配列RRRRRR(L-Arg6、配列番号59)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、CPPは、アミノ酸配列RRRRR(L-Arg5、配列番号60)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、CPPは、アミノ酸配列RRRR(L-Arg4、配列番号61)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、CPPは、アミノ酸配列RRR(L-Arg3)を含むか、またはそれからなる。
【0042】
一実施形態では、CPPは、表1に与えられるCPPから選択される。
【表1】
【0043】
一実施形態では、CPPは、L-Arg9、D-TAT、L-Pen、D-Pen、L-DPV3、L-pVEC、L-MAP、L-TP2、MiniAp4、及びCPP12等のポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)からなる群から選択されるペプチドを含む。一実施形態では、CPPは、L-Arg9、D-TAT、L-Pen、D-Pen、L-DPV3、L-pVEC、L-MAP、L-TP2、MiniAp4、及びCPP12等のポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)からなる群から選択される。一実施形態では、CPPは、D-TATである。一実施形態では、CPPは、L-Penである。一実施形態では、CPPは、D-Penである。一実施形態では、CPPは、L-DPV3である。一実施形態では、CPPは、L-pVECである。一実施形態では、CPPは、L-MAPである。一実施形態では、CPPは、L-TP2である。一実施形態では、CPPは、MiniAp4である。一実施形態では、CPPは、CPP12である。
【0044】
一実施形態では、CPPは、20個以下のアミノ酸残基、例えば19個以下、例えば18個以下、例えば17個以下、例えば16個以下、例えば15個以下、例えば14個以下、例えば13個以下、例えば12個以下、例えば11個以下、例えば10個以下、例えば9個以下、例えば8個以下、例えば7個以下のアミノ酸残基を含む。
【0045】
一部の実施形態では、CPPは、非ペプチド部分にコンジュゲートされている。例えば、CPPは、メチル化またはアセチル化されてもよい。一部の実施形態では、ペプチドが、特定のアミノ酸残基の配列からなるように本明細書で定義される場合、該ペプチドは、いずれの他のアミノ酸残基にもコンジュゲートされていないが、該ペプチドは、非ペプチド部分へのコンジュゲーションが別のアミノ酸配列をもたらさない限り、非ペプチド部分にコンジュゲートされていてもよい。一部の実施形態では、CPPのN末端は、非ペプチド部分にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、CPPのC末端は、非ペプチド部分にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、CPPのN末端は、アセチル化されており、すなわち化学構造CH
3C(O)-に結合している。例えば、CPPは、N末端がアセチル化されている、9個のL-アルギニン残基からなるポリ-Argペプチドであってもよい。一部の実施形態では、CPPのN末端は、下記の構造を有するクロロアルカンタグ(CA)にコンジュゲートされている。
【化5】
【0046】
一実施形態では、CPPのN末端は、メチル化されている。別の実施形態では、CPPのN末端は、ホルミル化されている。
【0047】
リンカー
本明細書で使用される「リンカー」という用語は、1つの化学物質から別の化学物質への接続を形成する1個または複数の原子を指す。例として、本明細書で言及される「リンカー」は、2つのPDZドメイン結合ペプチドP1及びP2を、それらのN末端の各々への連結を形成することによって接合し得る。種々のリンカーが当該技術分野で既知である。リンカーは、例えば、化学リンカーもしくはペプチドリンカー、またはそれらの組み合わせであってもよい。一実施形態では、リンカーは、求電子性官能基または求核性官能基等の活性な官能基を含み、これを使用してリンカーを各ペプチドに付着させることができる。
【0048】
一実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)単位を含む。
【0049】
PEGは、化学式C
2nH
4n+2O
n+1、及び下記の反復構造:
【化6】
を有するエチレングリコールのポリマーであり、式中、nは、整数である。
【0050】
故に、PEG単位は、以下の構造を有する。
【化7】
【0051】
例えば、4つのPEG部分からなるポリマー、またはPEG4は、4つのエチレングリコール部分のポリマーに対応する(n=4)。
【0052】
「PEG単位」及び「PEG部分」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0053】
一実施形態では、PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらす。本明細書で使用される「エチレングリコール部分」という用語は、PEGまたはNPEGリンカーを構成する構造単位を指す。
【0054】
一実施形態では、2つのPDZドメイン結合ペプチドP1及びP2のN末端は、1つまたは複数のPEG単位を含むリンカーを介して互いに連結されており、PEG単位の少なくとも1個の酸素原子が、任意選択で窒素原子により置き換えられている。一実施形態では、P1及び/またはP2は、スペーサー基を介して、例えば短いアルカン鎖を介してPEG/NPEG単位に個々に結合している。
【0055】
一実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のPEG単位を含み、PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらす。
【0056】
一実施形態では、リンカーは、NPEG単位を含み、CPPは、NPEGリンカーの骨格における窒素原子への直接または間接的のいずれかの化学結合を介して、リンカーに連結されている。NPEGリンカーの窒素へのCPPの結合は、アミド結合、銅触媒によるアジド-アルキン環化付加等の1,3-双極性環化付加、マレイミドカップリング、ジスルフィド結合、またはN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、p-ニトロフェニルエステル、炭酸スクシンイミジル、炭酸p-ニトロフェニル、スクシンイミジルウレタン、イソシアネート、イソチオシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、カーボネート、イミジオエステル(imidioester)もしくは無水物の中から選択されるアミノ反応性求電子基;及びハロアセチル、ハロゲン化アルキル誘導体、アジリジン、アクリロイル誘導体アリール化剤の中から選択されるチオ反応性基を介して媒介されてもよい。一実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のPEG単位を含み、PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらし、CPPが、アミド結合によってリンカーの窒素原子に連結されている。代替として、NPEG単位を含むリンカーの窒素へのCPPの結合は、スペーサー基を介して媒介されてもよく、ここで、好適なスペーサー基は、例えば、任意のアミノ酸(複数可)、短いアルカン鎖または短いPEG/NPEG鎖であり得る。
【0057】
一実施形態では、リンカーは、NPEG単位を含み、CPPは、アミド結合によってリンカーの窒素原子に連結されている。例えば、一実施形態では、該化合物は、式(III):
【化8】
の一般構造を有し、式中、
CPP、P
1及びP
2が、本明細書で定義される通りであり、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である。
【0058】
一実施形態では、p=qである。一実施形態では、p>qである。一実施形態では、p<qである。一実施形態では、p及びqの和は、1~20の整数である。一実施形態では、pは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択される整数である。一実施形態では、pは、0~4の整数である。一実施形態では、qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択される整数である。一実施形態では、qは、0~4の整数である。一実施形態では、エチレングリコール部分の総数p+qは、2~12、例えば2、例えば4、例えば6、例えば8、例えば10、例えば12である。一実施形態では、エチレングリコール部分の総数p+qは、4である。一実施形態では、pは2であり、qは2である。
【0059】
全体的な二量体構造
一実施形態では、該化合物は、式(XXV):
【化9】
の一般構造を有し、式中、
P
1及びP
2が、本明細書で定義される通りであり、
X
aが、
【化10】
からなる群から選択され、
CPPが、本明細書で定義される通りであり、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である。
【0060】
一実施形態では、p及びqは2であり、該化合物は、式(XXVI)の一般構造を有する。
【化11】
【0061】
一実施形態では、該化合物は、式(XXVI)のものであり、式中、Xaは、-O-であり、P1及びP2は、KETLV(配列番号2)であり、故に、化合物2、すなわちOPEG4-(KETLV)2を形成する。
【0062】
一実施形態では、該化合物は、式(XXVI)のものであり、式中、Xaは、-O-であり、P1及びP2は、KETTV(配列番号3)であり、故に、化合物3、すなわちOPEG4-(KETTV)2を形成する。
【0063】
一実施形態では、該化合物は、式(XXVI)のものであり、式中、Xaは、-O-であり、P1及びP2は、KETVV(配列番号4)であり、故に、化合物4、すなわちOPEG4-(KETVV)2を形成する。
【0064】
一実施形態では、該化合物は、式(XXVI)のものであり、式中、Xaは、-O-であり、P1及びP2は、KETRV(配列番号5)であり、故に、化合物5、すなわちOPEG4-(KETRV)2を形成する。
【0065】
一実施形態では、該化合物は、式(XXVI)のものであり、式中、Xaは、-O-であり、P1及びP2は、ISTDV(配列番号6)であり、故に、化合物6、すなわちOPEG4-(ISTDV)2を形成する。
【0066】
一実施形態では、該化合物は、式(XXVI)のものであり、式中、Xaは、-O-であり、P1及びP2は、VETVV(配列番号7)であり、故に、化合物7、すなわちOPEG4-(VETVV)2を形成する。
【0067】
一実施形態では、該化合物は、式(V):
【化12】
の一般構造を有し、式中、
CPPが、本明細書で定義される通りであり、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である。
【0068】
式(V)の化合物(式中、p及びqは、2である)は、
図11にさらに図示される。R
1からR
5は、ペプチドX
1X
2TX
3V(配列番号54)及びX
4X
5TX
6V(配列番号56)のアミノ酸側鎖であり、R
6は、本明細書に記載されるCPPタグを表す。
【0069】
CPPとしてのポリ-Arg
一実施形態では、CPPは、ポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である。故に、一実施形態では、該化合物は、以下の式(II):
【化13】
の一般構造を有し、式中、ポリ-Arg、リンカー、P
1及びP
2は、本明細書で定義される通りである。
【0070】
一実施形態では、CPPは、3~20個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である。一実施形態では、CPPは、3~15個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である。一実施形態では、CPPは、3~12個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である。一実施形態では、CPPは、3~10個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である。一実施形態では、ポリ-ArgのN末端は、任意選択で修飾され、例えば任意選択でアセチル化されている。
【0071】
L-Arg9(配列番号12)等のポリ-Arg CPPタグを有する本発明の化合物は、低いCP
50値を有し(実施例4、
図7~9)、すなわち細胞内取込みが非常に効率的であり、このことはより優れたBBB透過及び細胞内送達を示唆する。驚くべきことに、CPP L-Arg
9(配列番号12)を含有する化合物は、D-アミノ酸または大環状CPPを含有する化合物と同等のインビトロプラスミン半減期時間を示した(
図5~6)。興味深いことに、L-Arg
9含有化合物の半減期は、L-TAT(配列番号8)よりも有意に優れていた(
図5)。
【0072】
一実施形態では、CPPは、ポリ-Argであり、リンカーは、NPEG単位を含むPEGリンカーであり、CPPは、アミド結合によってリンカーの窒素原子に連結されている。故に、一実施形態では、該化合物は、式(IV):
【化14】
の一般構造を有し、式中、
ポリ-Arg、P
1及びP
2が、本明細書で定義される通りであり、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である。
【0073】
一実施形態では、pは2であり、qは2である。故に、一実施形態では、該化合物は、式(VII):
【化15】
の一般構造を有し、式中、ポリ-Arg、P
1及びP
2は、本明細書で定義される通りである。
【0074】
一実施形態では、該化合物は、式(VI):
【化16】
の一般構造を有し、式中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である。
【0075】
一実施形態では、pは2であり、qは2である。故に、一実施形態では、該化合物は、式(VIII):
【化17】
の一般構造を有し、式中、ポリ-Arg、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、及びX
6は、本明細書で定義される通りである。
【0076】
一実施形態では、CPPは、L-Arg
9であり、pは2であり、qは2である。故に、一実施形態では、該化合物は、式(IX):
【化18】
の一般構造を有し、式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、及びX
6は、本明細書で定義される通りである。
【0077】
一実施形態では、化合物は、下記の式(X)~(XVI)からなる群から選択される。
【化19】
【0078】
一実施形態では、ペプチドP
1、P
2、及び/またはCPPのうちのいずれかが、さらに修飾されている。例えば、一実施形態では、CPPのN末端は、任意選択でアセチル化されている。故に、一実施形態では、該化合物は、下記の式(XVII)~(XXIII)からなる群から選択される。
【化20】
【0079】
特定の化合物
一実施形態では、該化合物は、CPP-NPEG
4-(P
1)(P
2)の一般構造を有し、すなわち該化合物は、式(XXVIII):
【化21】
のものであり、CPP、P
1及びP
2は、表2で定義される通りである。一実施形態では、該化合物は、化合物9~63からなる群から選択される。
【表2】
【0080】
一実施形態では、該化合物は、式(XXVII):
【化22】
のものであり、P
1及びP
2は、表3で定義される通りである。一実施形態では、該化合物は、化合物2~7からなる群から選択される。
【表3】
【0081】
一実施形態では、該化合物は、下記の式(XXIX)~(XXXIV)からなる群から選択される。
【化23】
【0082】
一実施形態では、P1及びP2は、アミノ酸配列IETDV(配列番号1)からなり、CPPは、D-Pen(rqikiwfqnrrmkwkk、配列番号15)、L-pVEC(LLIILRRRIRKQAHAHSK、配列番号18)、L-TP2(PLIYLRLLRGQF、配列番号19)、MiniAp4(|(Dap)KAPETALD|、配列番号21)、及びCPP12(|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K、配列番号22)からなる群から選択される。
【0083】
塩及びプロドラッグ
本明細書で定義される化合物は、該化合物の薬学的に許容される塩またはプロドラッグの形態であり得る。本発明の一実施形態では、本明細書で定義される化合物は、該化合物の薬学的に許容される付加塩または水和物、例えば、限定されないがK+、Na+、ならびに非塩、例えば、H+として製剤化され得る。
【0084】
薬学的組成物
一態様では、本発明は、本明細書で定義される化合物を含む薬学的組成物に関する。本発明の化合物の薬学的組成物への製剤化は当該技術分野で周知されており、Gennaro(ed.),2000,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Lippincott,Williams & Wilkins(2000)、及びAnsel et al.,1999,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th ed.,Lippincott Williams & Wilkins Publishersにさらに記載される。
【0085】
膜透過性
PSD-95は細胞内に位置するため、PSD-95を標的とするいずれの薬物も、細胞膜を効率的に横断することが必須である。本明細書で定義される化合物の細胞透過性及びサイトゾルへの送達を評価するために、細胞クロロアルカン透過アッセイ(CAPA)が使用されてもよい(Peraro et al.2018)。このアッセイは、クロロアルカン(CA)分子に共有結合するように設計された修飾ハロアルカン脱ハロゲン酵素を利用する。HaloTag、緑色蛍光タンパク質(GFP)、及びミトコンドリア標的化ペプチドを含む融合タンパク質を発現するHeLa細胞株を使用して、サイトゾル送達が報告される。CAPAの一般形式は、パルス・チェイスアッセイである(Deprey & Kritzer,2020)。HaloTag酵素を発現する細胞が、CAタグ融合ペプチドと共にインキュベートされる。これらのCA-ペプチドが細胞膜を透過して、サイトゾルに到達するとき、それらはHaloTagに結合して、それと反応することになる(パルスステップ)。洗浄ステップに次いで、細胞は、細胞膜を定量的に透過して、残存する未反応のHaloTag部位と反応するCAタグ融合色素と共にインキュベートされる(チェイスステップ)。フローサイトメトリーを使用して細胞の蛍光強度が測定され、測定された蛍光は、透過された細胞に到達するCA-ペプチドの量と反比例するため、これを使用してサイトゾル送達を評価することができる。得られたデータは、一般的に、50%の細胞透過が観察される濃度であるCP
50値として表される。化合物のCP
50値は、実施例4に記載されるように測定されてもよい。実施例4は、記載される化合物の細胞内取込みが、86.1μM(化合物22)~0.68μM(化合物30)の範囲のCP
50値を測定して、用いられたCPPに大きく依存することを示す(
図7)。さらに、様々なCPPタグ(配列番号8~22)にコンジュゲートされたNPEG
4(IETDV)
2の細胞内取込み効率は、予測不能な範囲のCP
50値をもたらした(
図8)。
【0086】
一実施形態では、該化合物は、250μM以下、例えば200μM以下、例えば150μM以下、例えば100μM以下、例えば80μM以下、例えば70μM以下、例えば60μM以下、例えば50μM以下、例えば40μM以下、例えば30μM以下、例えば20μM以下、例えば15μM以下、例えば10μM以下、例えば5μM以下のCP50値を有する。好ましくは、該化合物は、60μM以下のCP50値を有する。
【0087】
プラスミン安定性
虚血性脳卒中(別称、「脳(brain)虚血」または「脳(cerebral)虚血」)は通常、脳に血液を供給する動脈の閉塞によって引き起こされる。閉塞は、脳への血流及び酸素を低減して、脳細胞の損傷または死につながる。血管の閉塞は、様々な機械デバイスを使用して、または静脈内もしくは動脈内に送達される「血栓溶解剤(clot busting agent)」を使用して除去され得る。かかる血栓溶解剤の中には、プラスミノーゲンからプラスミンを生成する組織プラスミノーゲン因子(tPA)がある。組換えtPAの例は、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼであり、血栓を分解する他の血栓溶解薬には、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、及びデスモテプラーゼ(desmotaplase)が含まれる。
【0088】
一実施形態では、本発明の化合物は、AISに対する標準治療であるtPAまたは組換えtPAを受けている対象に投与される。故に、該化合物が、セリンプロテアーゼであるプラスミンの生成を含めて、tPAの投与と適合性であることは必須である。
【0089】
本発明の化合物のインビトロプラスミン安定性を実施例3で決定した。一実施形態では、該化合物は、実施例3に記載されるプラスミン安定性アッセイにおいて、プラスミンの存在下で少なくとも10分間、例えば少なくとも30分間、例えば少なくとも1時間、例えば少なくとも2時間、例えば少なくとも3時間、例えば少なくとも4時間、例えば少なくとも5時間、例えば少なくとも6時間、例えば少なくとも7時間、例えば少なくとも8時間、例えば少なくとも9時間、例えば少なくとも10時間、例えば少なくとも15時間、例えば少なくとも20時間、例えば少なくとも30時間の半減期を有する。
【0090】
PSD-95のPDZ1~2に対する親和性
好ましくは、本発明の化合物は、PSD-95のPDZ1~2に対してナノモル濃度範囲の親和性を有することにより、効力の高い阻害剤となる。PSD-95のPDZ1~2に対する親和性は、治療効果を達成するために必要とされる薬物の閾値濃度を低減する上で必要不可欠な要素であり、これは、薬物がその標的に到達するために血液脳関門(BBB)を横断しなければならない場合、BBBが標的における薬物濃度の蓄積を制限する傾向があることから、特に重要である。
【0091】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、PDZ1及びPDZ2に同時に結合する二量体PSD-95阻害剤であり、これが、これらのドメインに対するそれらの高い親和性を説明し得る。
【0092】
実施例2に記載されるように、本発明の化合物についてのPSD-95のPDZ1~2に対する得られた親和性は、低ナノモル濃度範囲にあり、L-TAT-NPEG4(IETDV)2に類似する。
【0093】
一実施形態では、PSD-95のPDZ1~2に対する該化合物のKi値は、100nM以下、例えば80nM以下、例えば70nM以下、例えば60nM以下、例えば50nM以下、例えば40nM以下、例えば30nM以下、例えば20nM以下、例えば10nM以下である。
【0094】
医療的使用
本発明の一態様では、本明細書で定義される化合物は、医薬として使用するためのものである。
【0095】
PSD-95のPDZ1及びPDZ2ドメインは、NMDA型のイオンチャネル型グルタミン酸受容体及び一酸化窒素(NO)産生酵素nNOSの同時結合を含めて、いくつかのタンパク質と相互作用する。NMDA受容体は、神経変性疾患及び急性脳損傷に関係があるとされる興奮毒性、すなわちグルタミン酸媒介性神経毒性の主要なメディエーターである。PSD-95は、それぞれPDZ1及びPDZ2を介して、NMDA受容体、主としてGluN2A及びGluN2Bサブユニット、ならびにnNOSに同時に結合する。NMDA受容体の活性化は、カルシウムイオンの流入を引き起こし、これがnNOSを活性化することによってNO生成をもたらす。故に、PSD-95は、NMDA受容体活性化とNO産生との間の特定の提携を媒介し、これは長期間持続する場合に細胞にとって有害であり得、グルタミン酸媒介性神経毒性の主要な促進因子である。PSD-95を標的とすることによるnNOS/PSD-95/NMDA受容体の三元複合体の相互作用の阻害は、イオン流入及びNMDA受容体の生存促進シグナル伝達経路等の生理機能を無傷のままにしながら、カルシウムイオン流入とNO産生との間の機能的連結を損なうことによって、マウスにおいて虚血性脳損傷を予防することが知られている。興奮毒性の特異的阻害は、PSD-95阻害剤を使用して細胞内nNOS/PSD-95/NMDA受容体複合体を撹乱することによって得ることができる。
【0096】
本発明の化合物は、PSD-95阻害剤であり、故に興奮毒性を阻害することができる。よって、本発明の化合物は、様々な疾患、特に神経学的疾患、とりわけ興奮毒性によって部分的に媒介される疾患を処置する上で有用である。かかる疾患及び病態には、脳卒中、癲癇、低酸素症、外傷性脳損傷及び脊髄損傷等の脳卒中に関連しないCNSへの外傷性損傷、他の脳虚血、アルツハイマー病、ならびにパーキンソン病が含まれる。
【0097】
一態様では、本発明は、興奮毒性関連疾患を予防する、処置する、低減する、及び/またはその発症を遅延させる際に使用するための、本明細書で定義される化合物に関する。一実施形態では、興奮毒性関連疾患は、脳卒中である。一実施形態では、興奮毒性関連疾患は、虚血性脳卒中である。一実施形態では、興奮毒性関連疾患は、脳虚血である。一実施形態では、興奮毒性関連疾患は、急性虚血性脳卒中である。一実施形態では、興奮毒性関連疾患は、くも膜下出血である。
【0098】
一態様では、本発明は、興奮毒性関連疾患を予防する、処置する、低減する、及び/またはその発症を遅延させるための医薬の製造のための、本明細書で定義される化合物の使用に関する。
【0099】
一態様では、本発明は、興奮毒性関連を予防する、処置する、低減する、及び/またはその発症を遅延させるための方法に関し、該方法は、治療上有効量の本明細書で定義される化合物を投与することを含む。
【0100】
一態様では、本発明は、興奮毒性の損傷影響を低減する及び/またはそれから保護する際に使用するための化合物に関する。一実施形態では、該化合物は、脳卒中の損傷影響を低減する際に使用するためのものである。一実施形態では、該化合物は、急性虚血性脳卒中の損傷影響を処置する際に使用するためのものである。一実施形態では、該化合物は、くも膜下出血の損傷影響を処置する際に使用するためのものである。
【0101】
一態様では、本発明は、対象における脳または脊髄への興奮毒性の損傷影響から保護する及び/またはそれを低減するための方法に関し、該方法は、損傷影響から保護する及び/またはそれを低減するために有効量の本明細書で定義される化合物を対象に投与するステップを含む。
【0102】
一態様では、本発明は、興奮毒性によって媒介される病態を処置する、低減する、またはその発症を遅延させる方法に関し、該方法は、該病態を有するかまたはその危険性があるヒト対象に、本明細書で定義される化合物を投与することを含む。
【0103】
一態様では、本発明は、対象における興奮毒性によって媒介される病態の少なくとも1つの徴候または症状を処置する、または阻害する、または遅延させる方法に関し、該方法は、該病態、または該病態に関連する危険因子を有する対象に、本明細書で定義される化合物を投与することを含む。一実施形態では、該病態は、脳卒中またはCNSへの外傷性損傷である。一実施形態では、興奮毒性関連疾患は、CNSへの/それにおける/その虚血性損傷または外傷性損傷である。
【0104】
一態様では、本発明は、脳卒中を有する対象における脳卒中の損傷影響を低減する方法に関し、該方法は、脳卒中の損傷影響を低減するために対象に有効量の本明細書で定義される化合物を投与することを含む。
【0105】
本明細書で使用されるとき、「脳卒中」は、細胞死に至る、脳に供給する1つまたは複数の血管の閉塞または出血によって引き起こされる病態を指す一般用語である。本明細書で使用される「虚血性脳卒中」は、脳に供給する1つまたは複数の血管の閉塞によって引き起こされる脳卒中を指す。虚血性脳卒中の種類には、例えば、塞栓性脳卒中、心原性脳塞栓症(cardioembolic stroke)、血栓性脳卒中、大血管血栓症(large vessel thrombosis)、ラクナ梗塞、動脈間脳卒中(artery-artery stroke)、及び潜因性脳卒中が含まれる。「脳虚血」は、動脈における閉塞が、酸素を豊富に含む血液の脳への送達を制限して、脳組織への損傷をもたらす病態である。脳虚血は、脳虚血または脳血管虚血と呼ばれることがある。
【0106】
本明細書で使用される「出血性脳卒中」は、脳に供給する1つまたは複数の血管の出血によって引き起こされる脳卒中を指す。出血性脳卒中の種類には、例えば、硬膜下脳卒中、実質内脳卒中、硬膜外脳卒中、及びくも膜下脳卒中が含まれる。
【0107】
一実施形態では、本発明の化合物によって処置可能な疾患は、CNSの虚血性損傷または外傷性損傷である。一態様では、本発明は、対象における脳または脊髄への外傷性損傷または虚血の損傷影響を低減する方法に関し、該方法は、該低減を達成するために本明細書で定義される化合物により該対象を処置することを含む。
【0108】
一態様では、本発明は、血管内手術に起因する脳虚血を阻害する方法に関し、該方法は、血管内手術を受けている対象に、脳虚血を阻害するために有効な計画において本明細書で定義される化合物を投与することを含む。
【0109】
一態様では、本発明は、動脈瘤を処置するための血管内手術、血管造影診断、または頸動脈ステント留置術による虚血性損傷を阻害する方法に関し、該方法は、有効な計画での本明細書で定義される化合物を、動脈瘤を処置するための血管内手術または血管造影診断を受けている対象に投与することを含む。
【0110】
一態様では、本発明は、脳神経外科手術による虚血性損傷を阻害する際に使用するための、本明細書で定義される化合物に関する。一実施形態では、該脳神経外科手術は、脳の血管造影診断または動脈瘤を処置するための血管内手術である。
【0111】
一部の実施形態では、該化合物は、再潅流療法と組み合わせて投与される。一実施形態では、該化合物及び該再潅流は、対象に同時に、順次に、または別個に投与される。
【0112】
本明細書で使用される「再潅流療法」という用語は、閉塞した動脈を通してまたはその周りでのいずれかで血流を取り戻すための医療処置を指す。再潅流療法は、医療剤及び機械的再潅流を含む。該医療剤は、血栓溶解と呼ばれるプロセスで使用される血栓溶解剤または線維素溶解剤であり得る。一部の実施形態では、再潅流療法は、プラスミノーゲン活性化因子、例えばtPA等の血栓溶解剤を投与することによって実施される。
【0113】
一実施形態では、該化合物は、化合物8(AB144)であり、該化合物は、プラスミノーゲン活性化因子、例えばtPAと組み合わせて投与される。
【0114】
一部の実施形態では、再潅流療法は、外科手術を含む機械的再潅流である。実施される外科手術は、低侵襲血管内手術であり得る。
【0115】
機械的再潅流デバイスの中には、動脈内ケーター(cater)、バルーン、ステント、及び種々の血栓回収デバイスがある。
【0116】
一実施形態では、該化合物は、血栓溶解剤と組み合わせて投与され、該化合物及び該血栓溶解剤は、対象に同時に、順次に、または別個に投与される。
【0117】
一態様では、本発明は、中枢神経系に対する虚血の損傷影響を処置する方法に関し、該方法は、
a)本明細書で定義される化合物を、虚血を有するかまたはその危険性がある対象に投与することと、
b)対象に対して再潅流療法を実施することと、を含み、
該化合物及び該再潅流療法が、対象の中枢神経系に対する虚血の損傷影響を処置する。
【0118】
一態様では、本発明は、虚血を有するかまたはその危険性がある対象における中枢神経系に対する虚血の損傷影響を処置する際に使用するための、本明細書で定義される化合物に関し、再潅流療法が対象に対して実施され、該化合物及び該再潅流療法が、対象の中枢神経系に対する虚血の損傷影響を処置する。
【0119】
一実施形態では、該方法は、血栓溶解剤を対象に同時に、順次に、または別個に投与することをさらに含む。
【0120】
一態様では、本発明は、少なくとも2つの別個の単位剤形(A)及び(B)を含むパーツのキットに関し、
(A)が、本明細書で定義される化合物を含み、
(B)が、血栓溶解剤を含む。
【0121】
一態様では、本明細書で定義されるパーツのキットは、中枢神経系に対する虚血の損傷影響の処置において使用するためのものであり、(A)及び(B)が、対象に同時に、順次に、または別個に投与される。
【0122】
一態様では、本発明は、くも膜下出血の損傷影響を処置する際に使用するための、本明細書で定義される化合物に関する。本明細書で使用される「くも膜下出血」という用語は、くも膜下腔における出血状態を指す。
【0123】
一態様では、本発明は、対象におけるくも膜下出血を処置する方法に関し、該方法は、本明細書で定義される化合物を、くも膜下出血を有する対象に投与することを含み、対象における神経認知欠損の発症が阻害される。
【0124】
一態様では、本発明は、対象におけるくも膜下出血の神経学的欠損または神経認知欠損の発症を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書で定義される化合物を、くも膜下出血を有する対象に投与することを含み、対象における神経学的欠損または神経認知欠損の発症が阻害される。
【0125】
興奮毒性に関連することが知られていない、本発明の化合物によって処置可能な他の神経学的疾患には、不安症及び疼痛が含まれる。PSD-95を標的とする二量体リガンドは、慢性疼痛及び虚血性脳卒中に対する処置として前臨床/臨床評価が進行中である(Andreasen et al.,Neuropharmacol,2013,67,193-200、Bach et al,PNAS USA,2012,109,3317-3322)。一実施形態では、本明細書で定義される化合物は、疼痛の処置または予防において使用するためのものである。
【0126】
一実施形態では、本明細書で言及される対象は、ヒト等の哺乳動物である。
【0127】
合成
本明細書で定義される本発明の化合物は、
a)本明細書で定義されるペプチドP1/P2を合成する一般ステップと、
b)a)のペプチドをOPEGnまたはNPEGnリンカー(ここで、「n」は、PEG部分の数である)により二量体化する一般ステップと、
c)例えば自動ペプチド合成装置を使用することによって、NPEGリンカーのNにてCPPタグを付着させる一般ステップと、
を含む方法によって製造されてもよい。
【0128】
一実施形態では、該化合物は、
a)Ns-NPEG二酸リンカーを用意する一般ステップと、
b)Fmocベースの固相ペプチド合成法を使用してペプチドP1/P2を調製する一般ステップと、
c)Fmoc脱保護ペプチドP1/P2をNs-NPEG二酸リンカーにより二量体化して、リンカー-二量体コンジュゲートを形成させる一般ステップと、
d)例えば自動ペプチド合成装置を使用することによって、リンカー-二量体コンジュゲートのNPEGリンカーのNにCPPを付着させる一般ステップと、
を含む方法によって製造される。
【0129】
一実施形態では、本発明の化合物は、下記に記載されるように合成される。
【0130】
Ns-NPEG二酸リンカー:
「Ns-NPEG二酸リンカー」は、NPEGリンカーがリンカー窒素上のオルト-ニトロベンゼンスルホニル(Ns)保護基により窒素上で保護され、NPEGリンカーの末端がカルボン酸を含む、構造である。この化学試薬または構成要素は、2つのペプチド部分であるP1及びP2を二量体化するために使用される。
【0131】
オルト-ニトロベンゼンスルホニル(Ns)保護NPEGリンカーは、固相上または溶液中のいずれかで生産される。
【0132】
固相手順は、典型的には、特定の樹脂(例えば、DCM、DMF、ACN、THF)及び塩基(例えば、DIPEA、DBU、コリジン、NMM)に適切な有機溶媒を使用して、2-クロロトリチルクロリド樹脂等の固相ペプチド合成に有用な固体支持体に、Fmoc-NH-PEG-CH2CH2COOHを負荷することによって開始する。
【0133】
Fmoc基は、適切な溶媒(例えば、DMF、DCM、ACN、THF)中の塩基(例えば、ピペリジン、ジメチルアミン、モルホリン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン、DMAP)によって除去することができる。
【0134】
オルト-ニトロベンゼンスルホニルクロリドを、塩基(例えば、DIPEA、DBU、コリジン、NMM)及び適切な溶媒(例えば、THF、DCM)を使用して遊離アミンにカップリングして、Ns-NH-PEG-CH2CH2COO-樹脂を得ることができる。
【0135】
リンカー生成物の第2の部分は、光延化学反応の使用によって樹脂結合リンカー部分に接続することができる。樹脂をトリフェニルホスフィン、HO-PEG-CH2CH2COOtBu、溶媒、及びアゾジカルボン酸のエステル試薬またはアミド試薬(例えば、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、DIAD;アゾジカルボン酸ジエチル、DEAD;1,1’-(アゾジカルボニル)-ジピペリジン、ADDP)で処理する。
【0136】
樹脂をトリフルオロ酢酸(TFA)等の酸で処置することによって、最終的なNs-NPEG二酸リンカーが得られる。
【0137】
溶液相手順は、NH2-PEG-CH2CH2COOtBuのアミン基のNsによる保護、続いてトリフェニルホスフィン及びDIAD、DEAD、もしくはADDP、または類似の試薬、HO-PEG-CH2CH2COOtBu、ならびに適切な溶媒(THF、DCM)を使用した溶液中での光延化学反応によって実施することができる。次いで、TFA等の酸での処置によって、最終的なNs保護NPEG-リンカーが得られる。
【0138】
ペプチド合成:ペプチド配列は、2-クロロトリチルクロリド樹脂またはWang樹脂等の固体支持体、Fmoc保護アミノ酸、塩基、カップリング試薬(例えば、HBTU[N,N,N’,N’-テトラメチル-O(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート]、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート[HATU]、PyBOB、DIC/HOBt)、及び溶媒を使用したFmocベースの固相ペプチド合成法によって合成される。カップリング試薬の代替として、Fmoc保護アミノ酸の活性化エステル(例えば、ペンタフルオロフェニル、スクシンイミド)を使用することができる。
【0139】
二量体化:Fmoc脱保護樹脂結合ペプチドは、樹脂を準化学量論的な量(例えば、1/6)のNs-NPEG二酸リンカー、塩基、カップリング試薬、及び適切な溶媒(例えば、DMF、DCM、THF)で繰り返し処理することによる樹脂上の二量体化プロセスによって、Ns-NPEG二酸リンカーにより二量体化される。カップリング試薬の代替として、Ns-NPEGリンカーの活性化エステルを使用することができる。
【0140】
二量体化プロセスはまた、溶媒(例えば、ACN、DMF、DCM、THF)中の1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)またはヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)のいずれかと一緒にしたNs-NPEGリンカーの活性化エステル(例えば、ペンタフルオロフェニル、スクシンイミド)、及び適切な側鎖保護ペプチド(例えば、tert-ブチル)を使用して、溶液中で形成することもできる。また、溶液中の二量体化は、Ns-NPEG二酸リンカー、カップリング試薬(例えば、HBTU、HATU等)、塩基、及び溶媒を使用して実施することもできる。
【0141】
Ns基をメルカプトエタノール及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)によって、またはナトリウムチオフェノラートによって除去する。
【0142】
リンカー-二量体コンジュゲートのNPEGリンカーのNH部分へのCPPの付着:最初に、アミノ酸をNPEGリンカーのNH部分にカップリングし、その後、樹脂上の標準的な(手動/自動)Fmoc SPPSに従ってCPPを合成する。
【0143】
エステル保護基は、切断された生成物を塩基水溶液(例えば、NaOH、LiOH)及びアセトニトリル中で撹拌し、続いてTFAまたはHClで酸性化することによって除去することができる。
【0144】
凍結乾燥及びHPLCまたは類似のクロマトグラフ法による精製によって、本発明の最終的な化合物が得られる。
【0145】
さらなる実施形態では、本発明の化合物の合成は、実施例1に概説されるように実施される。
【0146】
条項
1.アミノ酸配列X2TX3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなる第1のペプチド(P1)を含み、配列中、
a.X2が、E及びSからなる群から選択され、
b.X3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
P1が、細胞膜透過ペプチド(CPP)に連結されている、化合物。
【0147】
2.リンカーによって第2のペプチド(P2)に連結された第1のペプチド(P1)を含み、P1及びP2が、KETLV(配列番号2)、KETTV(配列番号3)、KETVV(配列番号4)、KETRV(配列番号5)、ISTDV(配列番号6)、及びVETVV(配列番号7)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、化合物。
【0148】
3.P1及びP2が、前記リンカーを介して細胞膜透過ペプチド(CPP)またはアルブミン結合部分に連結されており、それによって膜または血液脳関門を通る前記ペプチドの通過を増加させる、条項2に記載の化合物。
【0149】
4.前記化合物が、250μM以下、例えば200μM以下、例えば150μM以下、例えば100μM以下、例えば80μM以下、例えば70μM以下、例えば60μM以下、例えば50μM以下、例えば40μM以下、例えば30μM以下、例えば20μM以下、例えば15μM以下、例えば10μM以下、例えば5μM以下のCP50値を有する、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0150】
5.前記化合物が、プラスミン安定性アッセイにおいて、少なくとも10分間、例えば少なくとも30分間、例えば少なくとも1時間、例えば少なくとも2時間、例えば少なくとも3時間、例えば少なくとも4時間、例えば少なくとも5時間、例えば少なくとも6時間、例えば少なくとも7時間、例えば少なくとも8時間、例えば少なくとも9時間、例えば少なくとも10時間、例えば少なくとも15時間、例えば少なくとも20時間、例えば少なくとも30時間の半減期を有する、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0151】
6.前記PSD-95のPDZ1~2に対する前記化合物のKi値が、100nM以下、例えば80nM以下、例えば70nM以下、例えば60nM以下、例えば50nM以下、例えば40nM以下、例えば30nM以下、例えば20nM以下、例えば10nM以下である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0152】
7.CPPが、ポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0153】
8.前記ポリ-Argが、5~10個のL-アルギニン残基、例えば7~10個のL-アルギニン残基、例えば8個または9個のL-アルギニン残基からなる、条項7に記載の化合物。
【0154】
9.前記ポリ-Argが、アミノ酸配列RRRRRRRRR(配列番号12)を含むか、またはそれからなる、条項7に記載の化合物。
【0155】
10.前記CPPが、L-TAT(YGRKKRRQRRR、配列番号8)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0156】
11.前記CPPが、D-TAT(yGrkkrrqrrr、配列番号9)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0157】
12.前記CPPが、mTAT(rRrGrKkRr、配列番号10)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0158】
13.前記CPPが、riTAT(rrrqrrkkr、配列番号11)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0159】
14.前記CPPが、D-Arg9(rrrrrrrrr、配列番号13)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0160】
15.前記CPPが、L-Pen(RQIKIWFQNRRMKWKK、配列番号14)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0161】
16.前記CPPが、D-Pen(rqikiwfqnrrmkwkk、配列番号15)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0162】
17.前記CPPが、L-DPV3(RKKRRRESRKKRRRES、配列番号17)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0163】
18.前記CPPが、L-pVEC(LLIILRRRIRKQAHAHSK、配列番号18)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0164】
19.前記CPPが、L-MAP(KLALKLALKALKAALKLA、配列番号16)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0165】
20.前記CPPが、L-TP2(PLIYLRLLRGQF、配列番号19)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0166】
21.前記CPPが、D-TP2(pliylrllrGqf、配列番号20)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0167】
22.前記CPPが、MiniAp4(|(Dap)KAPETALD|、配列番号21)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0168】
23.前記CPPが、CPP12(|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K、配列番号22)である、条項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【0169】
24.前記アミノ酸配列X2TX3V(配列番号53)が、P1のC末端である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0170】
25.P1が、4~10個のアミノ酸残基、例えば5個のアミノ酸残基、例えば6個のアミノ酸残基からなる、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0171】
26.P1が、
配列X1X2TX3V(配列番号54)を含むか、またはそれからなり、配列中、
a.X1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
b.X2が、E及びSからなる群から選択され、
c.X3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される、
先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0172】
27.P1が、KETLV(配列番号2)、KETTV(配列番号3)、KETVV(配列番号4)、KETRV(配列番号5)、ISTDV(配列番号6)、VETVV(配列番号7)、及びIETDV(配列番号1)を含むか、またはそれからなる、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0173】
28.前記化合物が、アミノ酸配列X5TX6V(配列番号55)を含むか、またはそれからなる第2のペプチド(P2)を含み、配列中、
a.X5が、E及びSからなる群から選択され、
b.X6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される、
先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0174】
29.前記アミノ酸配列X5TX6V(配列番号55)が、P2のC末端である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0175】
30.P2が、4~10個のアミノ酸残基、例えば5個のアミノ酸残基、例えば6個のアミノ酸残基からなる、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0176】
31.P2が、配列X4X5TX6V(配列番号56)を含むか、またはそれからなり、配列中、
a.X4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
b.X5が、E及びSからなる群から選択され、
c.X6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される、
先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0177】
32.P2が、KETLV(配列番号2)、KETTV(配列番号3)、KETVV(配列番号4)、KETRV(配列番号5)、ISTDV(配列番号6)、VETVV(配列番号7)、及びIETDV(配列番号1)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0178】
33.P1及びP2が、同一である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0179】
34.P1及びP2が、それらのN末端を介してリンカーにコンジュゲートされている、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0180】
35.ポリ-Arg等の前記CPPが、リンカーを介してP1に連結されている、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0181】
36.ポリ-Arg等の前記CPPが、リンカーを介してP1及びP2に連結されている、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0182】
37.ポリ-Arg等の前記CPPが、そのC末端を介して前記リンカーに連結されており、P1及びP2が、それらのN末端を介してリンカーにコンジュゲートされており、前記化合物が、以下の式(I)の一般構造を有する、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0183】
【0184】
38.前記CPPが、ポリ-Argであり、前記化合物が、以下の式(II)の一般構造を有する、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【化25】
【0185】
39.前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含む、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0186】
40.前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置換されてNPEGをもたらす、条項39に記載の化合物。
【0187】
41.前記リンカーが、NPEG単位を含み、ポリ-Arg等の前記CPPが、アミド結合によって前記リンカーの前記窒素原子に連結されている、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0188】
42.前記化合物が、式(III):
【化26】
の一般構造を有し、式中、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、
先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0189】
43.前記化合物が、式(IV):
【化27】
の一般構造を有し、式中、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、
先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0190】
44.前記化合物が、式(V):
【化28】
の一般構造を有し、式中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、
先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0191】
45.前記化合物が、式(VI):
【化29】
の一般構造を有し、式中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、
先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0192】
46.p=qである、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0193】
47.p>qである、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0194】
48.p<qである、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0195】
49.前記p及びqの和が、1~20の整数である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0196】
50.エチレングリコール部分の数pが、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10個のエチレングリコール部分から選択される、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0197】
51.エチレングリコール部分の数pが、0~4である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0198】
52.エチレングリコール部分の数qが、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10個のエチレングリコール部分から選択される、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0199】
53.エチレングリコール部分の数qが、0~4である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0200】
54.前記エチレングリコール部分の総数p+qが、2~12、例えば2、例えば4、例えば6、例えば8、例えば10、例えば12である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0201】
55.前記エチレングリコール部分の総数p+qが、4である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0202】
56.pが2であり、qが2である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0203】
57.前記化合物が、式(VII)の一般構造を有する、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【化30】
【0204】
58.前記化合物が、式(VIII)の一般構造を有する、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【化31】
【0205】
59.前記化合物が、式(IX)の一般構造を有する、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【化32】
【0206】
60.前記化合物が、下記の式(X)~(XVI)からなる群から選択される、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【化33】
【0207】
61.前記CPPの前記N末端が、アセチル化されている、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0208】
62.前記CPPの前記N末端が、下記の構造を有するクロロアルカンタグ(CA)にコンジュゲートされている、条項1~60のいずれか1項に記載の化合物。
【化34】
【0209】
63.前記CPPの前記N末端が、メチル化されている、条項1~60のいずれか1項に記載の化合物。
【0210】
64.前記CPPの前記N末端が、ホルミル化されている、条項1~60のいずれか1項に記載の化合物。
【0211】
65.前記化合物の薬学的に許容される塩またはプロドラッグの形態である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0212】
66.
a.アミノ酸配列X
2TX
3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなる第1のペプチド(P
1)(配列中、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、
b.アミノ酸配列X
5TX
6V(配列番号55)を含むか、またはそれからなる第2のペプチド(P
2)(配列中、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、ならびに
c.細胞膜透過ペプチド(CPP)、
を含む、化合物であって、前記CPPが、そのC末端を介してリンカーに連結されており、P
1及びP
2が、それらのN末端を介して前記リンカーにコンジュゲートされており、前記化合物が、式(I):
【化35】
の一般構造を有し、前記化合物が、20μM以下のCP
50値を有する、前記化合物。
【0213】
67.P1が、配列X1X2TX3V(配列番号54)を含むか、またはそれからなり、配列中、
X1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X2が、E及びSからなる群から選択され、
X3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
P2が、配列X4X5TX6V(配列番号56)を含むか、またはそれからなり、配列中、
X4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X5が、E及びSからなる群から選択され、
X6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される、
条項66に記載の化合物。
【0214】
68.P1及び/またはP2が、4~10個のアミノ酸残基、例えば5個のアミノ酸残基からなる、条項66または67のいずれか1項に記載の化合物。
【0215】
69.X3及びX6が、L、T、V、及びRからなる群から選択される、条項66~68のいずれか1項に記載の化合物。
【0216】
70.P1及びP2が、KETLV(配列番号2)、KETTV(配列番号3)、KETVV(配列番号4)、KETRV(配列番号5)、ISTDV(配列番号6)、及びVETVV(配列番号7)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、条項66~68のいずれか1項に記載の化合物。
【0217】
71.前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含み、前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらし、前記CPPが、アミド結合によって前記リンカーの前記窒素原子に連結されており、前記化合物が、式(III):
【化36】
の一般構造を有し、式中、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、
条項66~70のいずれか1項に記載の化合物。
【0218】
72.前記CPPが、ポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)、D-TAT(yGrkkrrqrrr、配列番号9)、L-Pen(RQIKIWFQNRRMKWKK、配列番号14)、D-Pen(rqikiwfqnrrmkwkk、配列番号15)、L-DPV3(RKKRRRESRKKRRRES、配列番号17)、L-pVEC(LLIILRRRIRKQAHAHSK、配列番号18)、L-MAP(KLALKLALKALKAALKLA、配列番号16)、L-TP2(PLIYLRLLRGQF、配列番号19)、MiniAp4(|(Dap)KAPETALD|、配列番号21)、及びCPP12(|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K、配列番号22)からなる群から選択される、条項66~71のいずれか1項に記載の化合物。
【0219】
73.前記CPPが、ポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)、例えば5~10個のL-アルギニン残基、例えば8個または9個のL-アルギニン残基からなるポリ-Argを含むか、またはそれからなり、例えば前記ポリ-Argが、アミノ酸配列RRRRRRRRR(配列番号12)を含むか、またはそれからなる、条項66~72のいずれか1項に記載の化合物。
【0220】
74.前記化合物が、式(VI):
【化37】
の一般構造を有し、式中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、
条項66~73のいずれか1項に記載の化合物。
【0221】
75.pが2であり、qが2である、条項66~74のいずれか1項に記載の化合物。
【0222】
76.前記CPPの前記N末端が、アセチル化されているか、または前記CPPの前記N末端が、下記の構造を有するクロロアルカンタグ(CA)にコンジュゲートされている、条項66~75のいずれか1項に記載の化合物。
【化38】
【0223】
77.前記化合物が、PSD-95阻害剤である、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0224】
78.先行条項のいずれか1項に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【0225】
79.医薬として使用するための、先行条項のいずれか1項に記載の化合物。
【0226】
80.興奮毒性関連疾患を処置する、予防する、低減する、及び/またはその発症を遅延させる際に使用するための、条項1~77のいずれか1項に記載の化合物。
【0227】
81.前記興奮毒性関連疾患が、脳卒中である、条項80に記載の使用に向けた化合物。
【0228】
82.前記興奮毒性関連疾患が、虚血性脳卒中である、条項80に記載の使用に向けた化合物。
【0229】
83.前記興奮毒性関連疾患が、脳虚血である、条項80に記載の使用に向けた化合物。
【0230】
84.前記興奮毒性関連疾患が、急性虚血性脳卒中である、条項80に記載の使用に向けた化合物。
【0231】
85.前記興奮毒性関連疾患が、くも膜下出血である、条項80に記載の使用に向けた化合物。
【0232】
86.疼痛の処置または予防において使用するための、条項1~77のいずれか1項に記載の化合物。
【0233】
87.少なくとも2つの別個の単位剤形(A)及び(B)を含むパーツのキットであって、
(A)が、条項1~77のいずれか1項に記載の化合物を含み、
(B)が、血栓溶解剤を含む、
前記パーツのキット。
【0234】
88.興奮毒性関連疾患及び/または疼痛を処置する、予防する、低減する、及び/またはその発症を遅延させる際に使用するためのものであり、(A)及び(B)が、前記対象に同時に、順次に、または別個に投与される、条項87に記載のパーツのキット。
【実施例】
【0235】
実施例1:合成
樹脂結合化合物2~7(OPEG4-KETLV、OPEG4-KETTV、OPEG4-KETVV、OPEG4-KETRV、OPEG4-ISTDV及びOPEG4-VETVV)を、Bach et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2009,48,9685に以前に記載されたように合成した。
【0236】
樹脂結合NPEG4-IETDV、NPEG4-KETLV、NPEG4-KETTV、NPEG4-KETVV、NPEG4-KETRV、NPEG4-ISTDV、及びNPEG4-VETVVを、Bach et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2012,109,3317によって以前に記載されたように合成した。線状CPP(L-TAT、DTAT、mTAT、riTAT、ポリR、D-ポリR、L-Pen、D-Pen、L-pVEC、L-MAP、L-DPV3、L-TP2、D-TP2、MiniAp4、CPP12)の最初のC末端アミノ酸(Fmoc-Ala-OH、Fmoc-L-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-D-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Asp(OAll)-OH、Fmoc-L-Lys(Boc)-OH、Fmoc-D-Lys(Boc)-OH、Fmoc-L-Lys(Ns)-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-D-Phe-OH、Fmoc-L-Ser(tBu)-OH)を、カップリング試薬としてO-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HCTU)を使用して、NPEG4リンカーの窒素に手動で3回カップリングした。その後、CPPの合成は、自動ペプチド合成装置(Prelude X、Gyros Protein Technologies,US)を使用して達成した。Prelude Xを使用した合成のために、全ての試薬はDMF中の溶液として調製した:Fmoc保護アミノ酸(0.2M)、HCTU(0.4M)、及びDIPEA(1.0M)。配列伸長は、以下のプロトコルを使用して達成した:脱保護(2×2分間、室温、350rpmでの振とう)及びカップリング(3×10分間、50℃、350rpmでの振とう)。樹脂負荷量に対して5倍過剰のFmoc-アミノ酸/HCTU/DIPEA(1:1:2.5)の混合物を使用して、アミノ酸を3重にカップリングした。環状CPP(MiniAp4及びCPP12)含有ペプチドを、ジクロロメタン(DCM)中20当量のPhSiH3及び0.2当量のPd(PPh3)4により窒素下で2×15分間処理して、アリル保護基及びalloc保護基を除去した。樹脂をDCM、続いてジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した。Asp/Dapの側鎖及びまたはGluのC末端とPheのN末端との間の環化反応を、DMF中2当量の(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)及び2当量のDIPEAによるペプチドの室温で16時間の処理、続いてDMFでの洗浄によって実施した。CPPタグ融合二量体ペプチドの合成が成功した後、樹脂を2つに分割した。樹脂結合ペプチドの一方の部分のN末端を、DMF:無水酢酸:DIPEA(8:1.5:0.5)の混合物を使用して2回、10分間キャップ付加した。樹脂結合ペプチドの他方の部分のN末端をクロロアルカンタグ(CA)で官能基化した。CAタグを、DMF中のCA:PyBOP:DIPEAの混合物(3:3:10)を使用してCPPタグ融合ペプチドのN末端の窒素基に16時間カップリングした。CPP12含有ペプチドの場合、CAタグのカップリングの前に、DMF(2mL)中の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU、0.5mmol)及びDMF(2mL)中のメルカプトエタノール(0.5mmol)を添加し、30分間振とうすることによって、オルト-ニトロベンゼンスルホニル(Ns)基を除去した。DMF中で流動洗浄した後、メルカプトエタノール/DBU処理を4回繰り返した。DMF中で最終的に流動洗浄した後、CAタグをLys残基の側鎖窒素にカップリングした。
【0237】
ペプチド化合物2~75を、TFA/トリイソプロピルシラン/2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール(DODT)/H2O(90/2.5/2.5)を2時間用いて、乾燥させた樹脂から切断し、続いて濾過し、蒸発させ、氷冷エーテルで沈殿させ、凍結乾燥させ、分取RP-HPLCによって精製した。最終的なペプチドリガンドを、分子量決定のためにLC-MS、及び純度(>95%)に関してUPLC(214nm)によって特性評価した。
【0238】
また、上述したような合成を40mmolでまたは最大100mmolスケールで実施して、本明細書で報告されるペプチド化合物のマルチグラム調製物をもたらすこともできる。
【0239】
本明細書に記載のペプチド化合物は、25mg/mL濃度以上に達する優れた溶解特性を示した。
【0240】
この実施例は、リガンドを合成し、精製し、純粋な形態で得ることができることを実証する。
【0241】
実施例2:PSD-95のPDZ1~2に対する親和性の決定
PSD-95のPDZ1~2に対する化合物1~75の結合親和性を、Bach et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2012,109,3317によって記載されるようなインビトロ蛍光偏光(FP)アッセイを使用して測定した。最初に、蛍光二量体プローブとPSD-95のPDZ1~2との間の相互作用についてのKD値を決定するために飽和結合曲線を得た。漸増濃度のPDZ1~2(0.015~30nM)を一定濃度のプローブ(0.5nM)に添加した。試料の蛍光偏光(FP)を635/670nmの励起波長/発光波長で測定し、発生したFP値を、ソフトウェアGraphPad Prismを使用して一部位結合モデルに適合させた。次いで、PSD-95 PDZ12に対する非標識ペプチドの親和性を、異種競合結合アッセイにおいて、飽和結合実験の場合と同じ条件を使用して試験ペプチドを漸増濃度(0.4~960nM、最終濃度)で、固定量のPSD-95 PDZ12(4nM)及びプローブ(0.5nM)に添加することによって評価した。FP値をGraphPad prismで一部位競合(可変勾配)モデルに適合させた。得られたIC50値を、Nikolovska-Coleska et al.,Anal.Biochem.,2004,332,261によって以前に記載されたようにKi値に変換した。
【0242】
この実施例は、PSD-95のPDZ1~2に結合するリガンドの親和性を決定する方法について記載する。結果を表4~7、及び
図1~4に提示する。結論として、試験した化合物は、低ナノモル濃度範囲の親和性(K
i値)を示し、これは化合物1と同等である。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0243】
実施例3:リガンドのインビトロプラスミン安定性
化合物8~62のインビトロプラスミン安定性を、プラスミン(5ug/mL)を補充したリン酸緩衝食塩水(PBS)中で100μMのリガンドを37℃で0~1440分間インキュベートすることによって決定した。インキュベーション中の選択される時点で、80μLの50%アセトニトリル(ACN)での処理によってリガンドを80μLのアッセイマトリックスから抽出した。試料を濾過し、UPLCによって分析して、残存するリガンドの量を決定した。LC-MS分析を実施して、リガンドの完全性を確認し、切断部位を特定した。
【0244】
この実施例は、PSD-95のPDZ1~2に結合するリガンドのインビトロプラスミン安定性を決定する方法について記載する。結果を表8及び9、ならびに
図5及び6に提示する。結論として、CPP L-Arg
9(配列番号12)を含有する試験した化合物は、D-アミノ酸または大環状CPPを含有する化合物と同等のインビトロプラスミン半減期時間を示す(
図6)。予想外にも、L-Arg
9含有化合物の半減期は、L-TAT(配列番号8)よりも有意に優れていた(
図5及び6)。
【表8】
【表9】
【0245】
実施例4:リガンドの膜透過性及び細胞内取込みの決定
化合物10~75の膜透過性を、サイトゾルに排他的に位置するハロGFPを安定に発現するHeLa細胞において決定した。実験の1日前に細胞を40.000細胞/ウェルの密度で播種した。増殖培地を吸引し、100μLのOpti-MEMにより置き換えた後、Opti-MEM中の25μLのリガンドの調製された段階希釈物を細胞に加え(一定のDMSO濃度)、プレートを37℃及び5%CO2で4時間インキュベートした。ウェルの内容物を吸引し、細胞を新鮮なOpti-MEMで15分間洗浄した。洗浄物の吸引後、細胞をTAMRA-CA(5μM)と共に15分間インキュベートした。チェイス溶液の吸引後、細胞をOpti-MEMで30分間洗浄した。洗浄物の除去に次いで、細胞をトリプシン処理し、PBS(2%FBS)に再懸濁し、卓上フローサイトメーターを使用して分析した。リガンドなし及びTAMRA-CAなしの対照ウェルを使用して、得られた蛍光強度データを正規化し、用量反応曲線としてプロットした。報告されるCP50値は、リガンドの細胞透過に反比例して挙動する赤色蛍光の最大半量を表す。
【0246】
この実施例は、PSD-95のPDZ1~2に結合するCAタグ融合化合物の膜透過性及び細胞内取込みを決定する方法について記載する。結果を表10~12、及び
図7~9に提示する。結論として、試験した化合物は、有意に異なる細胞内取込み効率を示し、これは用いられたCPPに大きく依存する。驚くべきことに、CPPタグL-Arg
9(配列番号12)及びL-pVEC(配列番号18)は、最も低いCP
50値をもたらす(
図8)。二量体リガンドに依存して、L-Arg
9はさらに、CP
50値が1μMを下回り(
図7)、非常に効率的な細胞内取込みを促進し、このことはより優れたBBB透過及び細胞内送達を示唆する。さらに、L-Arg
9CPPタグは、その細胞透過特性を喪失することなく7、6、5、または4つのアルギニンまで切り詰めることが可能である(表12を参照されたい)(
図9)。
【表10】
【表11】
【表12】
【0247】
実施例5:インビトロ血漿中安定性の決定
化合物8、23、35、67、69、71、及び73のインビトロ血漿中安定性を、未希釈のプールされたヒト血漿中で100μMのリガンドを37℃で1440分間インキュベートすることによって決定した。インキュベーション中の選択される時点で、アッセイマトリックスを6Mの尿素に添加し、続いてアセトン中20%のTCAを使用して沈殿させることによって、リガンドをアッセイマトリックスから抽出した。一晩のインキュベーション後、試料を濾過し、UPLCによって分析して、残存するリガンドの量を決定した。LC-MS分析を実施して、リガンドの完全性を確認し、切断部位を特定した。
【0248】
この実施例は、PSD-95のPDZ1~2に結合するリガンドのインビトロ血漿中安定性を決定する方法について記載する。結果を表13、及び
図10に提示する。結論として、L-Arg
9CPPタグは、ヒト血漿に対する安定性が有意に低下することなく、7、6、5、または4つのアルギニンまで切り詰めることが可能である(表13を参照されたい)。
【表13】
【0249】
実施例6:静脈内注射後のインビボ脳内レベルの決定
雌性Balb/cマウス(3匹の動物からなる4つの群)に、ビヒクルとして等張食塩水を使用して18nmol/g体重で目的の化合物を投与する。群1は、静脈内注射後の選択される時点での(注射後最大4時間)血中濃度プロファイルを得るために使用する。群2~4は、3つの異なる時点での血中濃度及び脳内濃度を決定するために使用する。したがって、動物は、静脈内注射後の選択される時点で殺処分され、関連する組織を収集し、適切な方法(LC-MS/MS)を使用して分析する。
【0250】
この実施例は、PSD-95のPDZ1~2に結合するリガンドのインビボ脳内レベルを決定する方法について記載する。さらに、化合物が血液脳関門を横断して脳内の標的に到達する能力についての情報を提供する、血液と脳の比率及び関連する組織標的化効率を決定する。
【0251】
実施例7:pMCAOマウスモデルを使用した脳卒中誘発性損傷に対するインビボ神経保護効果の決定
実験及び手術の詳細については、Bach et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2012,109,3317を参照されたい。簡潔に述べると、C57BL/6Jマウスにおける永久中大脳動脈閉塞(pMCAO)モデルを使用した無作為割付け二重盲検プラセボ対照試験において虚血性梗塞の程度が測定されている。麻酔及び動脈閉塞に次いで、動物に手術後30分で投与を行う。手術後6時間を生き延びた動物を殺処分し、脳を注意深く取り出した。脳の固定化及び薄片化に次いで、梗塞体積分析を実施し、総梗塞体積を算出した。
【0252】
この実施例は、PSD-95のPDZ1~2に結合するリガンドのインビボ神経保護効果を決定する方法について記載する。読み出しパラメータは、化合物処置群対プラセボ対照群における梗塞体積である。
参考文献
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【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.アミノ酸配列X
2TX
3V(配列番号53)を含むか、またはそれからなる第1のペプチド(P
1)(配列中、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、
b.アミノ酸配列X
5TX
6V(配列番号55)を含むか、またはそれからなる第2のペプチド(P
2)(配列中、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される)、ならびに
c.下記からなる群から選択される細胞膜透過ペプチド(CPP):
i.3~9個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチド(ポリ-Arg)、
ii.yGrkkrrqrrr(配列番号9、D-TAT)、
iii.RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14、L-Pen)、
iv.rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、
v.RKKRRRESRKKRRRES(配列番号17、L-DPV3)、
vi.LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、
vii.KLALKLALKALKAALKLA(配列番号16、L-MAP)、
viii.PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、
ix.|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び
x.|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)、
を含む、PSD-95阻害剤であって、前記CPPが、そのC末端を介してリンカーに連結されており、P
1及びP
2が、それらのN末端を介して前記リンカーにコンジュゲートされており、前記PSD-95阻害剤が、式(I):
【化1】
の一般構造を有する、前記PSD-95阻害剤、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
P
1が、配列X
1X
2TX
3V(配列番号54)を含むか、またはそれからなり、配列中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
P
2が、配列X
4X
5TX
6V(配列番号56)を含むか、またはそれからなり、配列中、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択される、
請求項1に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項3】
P
1及び/またはP
2が、4~10個のアミノ酸残基、例えば5個のアミノ酸残基からなる、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項4】
X
3及びX
6が、L、T、V、及びRからなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項5】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項6】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含み、前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項7】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含み、前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらし、前記CPPが、アミド結合によって前記リンカーの前記窒素原子に連結されている、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項8】
前記リンカーが、1つまたは複数のPEG単位を含み、前記PEG単位のうちの1つの少なくとも1個の酸素原子が、窒素原子で置き換えられてNPEGをもたらし、前記CPPが、アミド結合によって前記リンカーの前記窒素原子に連結されており、前記PSD-95阻害剤が、式(III):
【化2】
の一般構造を有し、式中、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10である、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項9】
P
1が、P
2と同一である、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項10】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETLV(配列番号2)からなる、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項11】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETTV(配列番号3)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項12】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETVV(配列番号4)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項13】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列KETRV(配列番号5)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項14】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列ISTDV(配列番号6)からなる、請求項1~3または5~9のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項15】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列VETVV(配列番号7)からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項16】
前記PSD-95阻害剤が、式(VI):
【化3】
の一般構造を有し、式中、
X
1が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
2が、E及びSからなる群から選択され、
X
3が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
X
4が、K、V、及びIからなる群から選択され、
X
5が、E及びSからなる群から選択され、
X
6が、L、T、V、R、及びDからなる群から選択され、
pが、整数0~10であり、
qが、整数0~10であり、
ポリ-Argが、3~9個のL-アルギニン残基からなるポリ-L-アルギニンペプチドである、
先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項17】
前記ポリ-Argが、3~9個のL-アルギニン残基からなる、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項18】
前記CPPが、RRRRRRRRR(配列番号12)である、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項19】
前記CPPが、RRRRRRRR(配列番号57)である、請求項1~18のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項20】
前記CPPが、RRRRRRR(配列番号58)である、請求項1~18のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項21】
前記CPPが、RRRRRR(配列番号59)である、請求項1~18のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項22】
前記CPPが、RRRRR(配列番号60)である、請求項1~18のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項23】
前記CPPが、RRRR(配列番号61)である、請求項1~18のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項24】
前記CPPが、RRRである、請求項1~18のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項25】
前記CPPが、yGrkkrrqrrr(配列番号9、D-TAT)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項26】
前記CPPが、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14、L-Pen)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項27】
前記CPPが、rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項28】
前記CPPが、RKKRRRESRKKRRRES(配列番号17、L-DPV3)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項29】
前記CPPが、LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項30】
前記CPPが、KLALKLALKALKAALKLA(配列番号16、L-MAP)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項31】
前記CPPが、PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項32】
前記CPPが、|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項33】
前記CPPが、|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)である、請求項1~15のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項34】
pが2であり、qが2である、請求項8または17のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項35】
前記CPPの前記N末端が、アセチル化されているか、または前記CPPの前記N末端が、下記の構造を有するクロロアルカンタグ(CA)にコンジュゲートされている、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【化4】
【請求項36】
前記PSD-95阻害剤が、式(XXVIII):
【化5】
の一般構造を有し、式中、P
1、P
2、及びCPPが、下記の通りであり、
前記CPPの前記N末端が、任意選択でアセチル化されている、請求項1に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項37】
前記PSD-95阻害剤が、下記の式(X)~(XXIII)からなる群から選択される、請求項1に記載のPSD-95阻害剤。
【化6】
【請求項38】
P
1及びP
2が、アミノ酸配列IETDV(配列番号1)からなり、前記CPPが、rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)からなる群から選択される、請求項1~3、5~9、35、または36のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項39】
前記PSD-95阻害剤が、式(XXVIII):
【化7】
の一般構造を有し、式中、P
1及びP
2が、アミノ酸配列IETDV(配列番号1)からなり、前記CPPが、rqikiwfqnrrmkwkk(配列番号15、D-Pen)、LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号18、L-pVEC)、PLIYLRLLRGQF(配列番号19、L-TP2)、|(Dap)KAPETALD|(配列番号21、MiniAp4)、及び|Ff(Nal2)RrRrQ|GABA-K(配列番号22、CPP12)からなる群から選択される、請求項1に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項40】
医薬として使用するための、先行請求項のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項41】
例えば急性虚血性脳卒中及びくも膜下出血から選択される脳卒中等の興奮毒性関連疾患を処置する、予防する、低減する、及び/またはその発症を遅延させる際に使用するための、請求項1~39のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤。
【請求項42】
請求項1~39のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤を製造するための方法であって、
a.ペプチドP
1/P
2を合成する一般ステップと、
b.a)の前記ペプチドをOPEG
nまたはNPEG
nリンカー(ここで、「n」は、PEG部分の数である)により二量体化する一般ステップと、
c.例えば自動ペプチド合成装置を使用することによって、前記NPEGリンカーの前記NにてCPPタグを付着させる一般ステップと、
を含む、前記方法。
【請求項43】
請求項1~39のいずれか1項に記載のPSD-95阻害剤を製造するための方法であって、
a.Ns-NPEG二酸リンカーを用意する一般ステップと、
b.Fmocベースの固相ペプチド合成法を使用してペプチドP
1/P
2を調製する一般ステップと、
c.Fmoc脱保護ペプチドP
1/P
2を前記Ns-NPEG二酸リンカーにより二量体化して、リンカー-二量体コンジュゲートを形成させる一般ステップと、
d.例えば自動ペプチド合成装置を使用することによって、前記リンカー-二量体コンジュゲートの前記NPEGリンカーの前記NにCPPを付着させる一般ステップと、
を含む、前記方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】