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特表2024-520248酸素濃縮装置を備えた内燃機関、並びに酸素濃縮装置を備えた内燃機関を動作させるための方法、プログラム製品、及びコンピュータ可読媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】酸素濃縮装置を備えた内燃機関、並びに酸素濃縮装置を備えた内燃機関を動作させるための方法、プログラム製品、及びコンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/02 20060101AFI20240517BHJP
   F02M 33/00 20060101ALI20240517BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F02D21/02
F02M33/00 C
F02D13/02 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547637
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 HU2021050074
(87)【国際公開番号】W WO2022248896
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P2100202
(32)【優先日】2021-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523297619
【氏名又は名称】カルパティ,イストバン
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルパティ,イストバン
(72)【発明者】
【氏名】カルパティ,ステファン
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AB18
3G092FA15
(57)【要約】
発明の解決策は、内燃機関で通例使用される圧縮行程の代わりに、酸素濃縮装置を動作させる吸入行程が使用される酸素濃縮装置を備えた内燃機関である。発明の本質は、シリンダ空間(15)と酸素濃縮装置(80)の1つ又は複数のセルとが、機関の各吸入行程中に一時的に透過性にされることである。吸気行程中にシリンダ空間(15)に取り込まれ、吸入行程中にピストン(5)によって押し出されたガスが、酸素濃縮装置(80)の1つ又は複数のセル(41A~41Z、51A~51Z)をチャージし、セル(41A~41Z、51A~51Z)内の窒素の大部分を分離した後、コンプレッサ(33)を通る酸素富化ガスが、動力行程の開始時に噴射器(11)によってシリンダ空間(15)に噴射される。燃料も、動力行程の開始時に噴射器(19)によってシリンダ空間(15)に導入される。点火は、スパーク点火、自己点火(熱点火)、又はそれらの荷重依存、速度依存、若しくは電力要件依存の動的組み合わせであってもよい。発明の主題はまた、酸素濃縮装置を備えた内燃機関を動作させる方法、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ可読媒体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダ壁(1)、ピストン(5)、及びシリンダヘッド(17)によって囲まれるシステムを備える内燃機関を動作させる方法であって、
(a)前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムが、吸気行程、吸入行程、動力行程、及び排気行程によって動作し、
(b)前記吸入行程中に、前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムから前記ピストン(5)によって押し出されるガスが使用されて、酸素濃縮装置(80)を動作させ、
(c)前記酸素濃縮装置(80)によって抽出される酸素富化ガスが、酸素富化ガス噴射器(11)によって、コンプレッサ(33)を通じて前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムに噴射され、
(d)前記燃料が、燃料噴射器(19)によって、前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムに噴射される、方法。
【請求項2】
前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムに噴射される前記酸素富化ガスと前記燃料との混合物が、スパーク点火によって点火される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムに噴射される前記酸素富化ガスと前記燃料との混合物が、自己点火によって点火される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムに噴射される前記酸素富化ガスと前記燃料との混合物が、スパーク点火と自己点火の荷重依存、速度依存、及び電力依存の動的組み合わせによって点火される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素濃縮装置(80)が、二セル又は多セル吸収式ガス分離酸素濃縮装置(81)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸素濃縮装置(80)が、単セル又は多セル膜式ガス分離酸素濃縮装置(82)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1の方法を適用し、少なくとも1つのシリンダ壁(1)、ピストン(5)、及びシリンダヘッド(17)によって囲まれるシステムと、少なくとも1つの前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムに接続される吸気弁(7)及び排気弁(14)とを備える、内燃機関であって、
少なくとも1つの前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムがチャージ弁(9)を備え、
前記チャージ弁(9)が、チャージマニホルド(8)を通じて酸素濃縮装置(80)の入力(58)に接続され、
前記酸素濃縮装置(80)の第1の出力(30)が、コンプレッサ(33)の入力に接続され、
前記コンプレッサ(33)の出力が、酸素富化ガス噴射器(11)の入力に接続され、
前記酸素富化ガス噴射器(11)の出力が、少なくとも1つの前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システム内にあり、
燃料噴射器(19)の出力が、少なくとも1つの前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及び前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システム内にあり、
前記酸素濃縮装置(80)の第2の出力(30)が、真空ポンプ(38)の入力に接続され、
前記真空ポンプ(38)の出力が、開放雰囲気中にあり、
前記酸素富化ガス噴射器(11)及び前記燃料噴射器(19)が、制御モジュール(50)によって動作させられる、内燃機関。
【請求項8】
スパークプラグ(12)の出力が、少なくとも1つの前記シリンダ壁(1)、前記ピストン(5)、及びa前記シリンダヘッド(17)によって囲まれる前記システムに接続され、
前記スパークプラグの入力が、スパークモジュール(65)の出力に接続され、
前記スパークモジュール(65)が、前記制御モジュール(50)によって動作させられる、請求項7に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記酸素濃縮装置(80)が、二セル又は多セル吸収式ガス分離酸素濃縮装置(81)である、請求項7又は請求項8に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記酸素濃縮装置(80)が、単セル又は多セル膜式ガス分離酸素濃縮装置(82)である、請求項7又は請求項8に記載の内燃機関。
【請求項11】
コンピュータによって実行される請求項1に記載の方法の工程を実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
コンピュータによって実行される請求項1に記載の方法の工程を実行する命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、酸素濃縮装置を備えた内燃機関であり、酸素濃縮装置を動作させるための吸入工程を使用することによって、機関の効率を向上させ、汚染物質の排出を低減する。発明の適用分野は、内燃機関が使用される全てのエネルギー変換分野である。発明の目的はまた、酸素濃縮装置を備えた内燃機関を動作させるための方法、プログラム製品、及びコンピュータ可読媒体である。
【背景技術】
【0002】
内燃機関における汚染物質の排出物を低減するためのいくつかの解決策が既知である。解決策のうちの1つによれば、燃料を燃焼させるためのガスの酸素濃度は周囲空気の酸素濃度よりも高いため、燃料の燃焼を向上させ、炭化水素及び窒素酸化物排出物を低減する。中国特許第1309237号明細書は、このような解決策を記載している。同特許の発明の本質は、導入されたガスの窒素成分の一部を分離する多セルゼオライト含有膜式又は吸収式酸素濃縮装置が使用され、酸素富化ガス生成物が機関に導入されることである。燃料は、機関の燃焼室内のこのガス生成物で燃焼される。
【0003】
言及する特許出願の両方の酸素分離システムは、外部コンプレッサを使用する。コンプレッサが故障した場合、機関は、燃料を燃焼させるのに必要な酸素含有ガスを有していないため、動作可能でなくなる。
【0004】
米国特許第9149757号明細書は、膜式吸収酸素分離システムを記載している。このシステムは上述の特許出願と同様のシステムについて説明しているが、このシステムは、酸素分離システムが動作不能になった場合のためのバイパス路を有する。このシステムの欠点は、酸素分離システムの動作中、コンプレッサの出力空気流を、機関のガス質量要件に合わせて動的に調節しなければならず、このことは面倒であり、コンプレッサの早期の故障を招く場合がある。
【0005】
米国特許第4240381号明細書は、任意選択的に、酸素富化ガスが、電力需要が一定速度走行状況の場合よりも高くなる動力行程の前に燃焼室に噴射される直接燃料噴射機関を示している。このシステムの欠点は、酸素富化圧縮ガスが、機関から独立した装置で生成されることで、上記装置の故障に由来して機関の信頼性を低下させることである。
【発明の概要】
【0006】
発明の目的は、信頼性及び燃料効率が高く、かつ汚染物質の排出が少ない内燃機関を提供することである。
【0007】
発明の解決策は、内燃機関で通例使用される圧縮行程の代わりに、酸素濃縮装置を動作させるための吸入行程が使用される、酸素濃縮装置を備えた内燃機関である。発明の本質は、シリンダ空間と酸素濃縮装置の1つ又は複数のセルとが、機関の各吸入行程中に一時的に透過性にされることである。吸気行程中にシリンダ空間に取り込まれ、吸入行程中にピストンによって押し出された空気が酸素濃縮装置の1つ又は複数のセルをチャージし、セル内の窒素の大部分を分離した後、酸素富化ガスが、動力行程の開始時に噴射器によってコンプレッサを通じてシリンダ空間に導入される。燃料も、動力行程の開始時に噴射器によってシリンダ空間に導入される。点火は、スパーク点火、自己点火(熱点火)、又はそれらの荷重依存、速度依存、若しくは電力要件依存の動的組み合わせであってもよい。発明の目的は、請求項1に定義される方法、請求項7に定義される装置、請求項11に記載のコンピュータプログラム製品、及び請求項12に記載のコンピュータ可読媒体によって達成されている。発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
酸素濃縮装置を有する内燃機関の発明を、図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1】本発明による、内燃機関の1つのシリンダ、酸素濃縮装置、及びコンプレッサの接続を示す。
図2】本発明による、吸気行程の開始時(排気行程の終了時)の内燃機関の1つのシリンダを示す。
図3】本発明による、吸入行程の開始時の内燃機関の1つのシリンダを示す。
図4】本発明による、チャージ弁の開放時の内燃機関の1つのシリンダを示す。
図5】本発明による、動力行程前の内燃機関の1つのシリンダを示す。
図6】本発明による、動力行程の開始時の内燃機関の1つのシリンダを示す。
図7】本発明による、排気行程の開始時の内燃機関の1つのシリンダを示す。
図8】本発明による、吸収式ガス分離を伴う多セル酸素濃縮装置を示す。
図9】本発明による、膜式ガス分離を伴う多セル酸素濃縮装置を示す。
図10】本発明による、酸素濃縮装置を備えた内燃機関の制御モジュールを示す。
図11】本発明による、吸収式ガス分離を伴う多セル酸素濃縮装置の周期的動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明による、内燃機関の1つのシリンダ70、酸素濃縮装置80、及びコンプレッサ33の接続を示す。シリンダ70のチャージマニホルド8が酸素濃縮装置80の入力に接続され、酸素濃縮装置80の出力がコンプレッサ33の入力に接続され、コンプレッサ33の出力が噴射器11に接続される。燃料は、噴射器19を通ってシリンダ70に送達される。酸素濃縮装置80の入力は、ピストンによってシリンダ空間から押し出されるチャージガスであり、機関を動作させるために使用される酸素濃縮装置80の出力における酸素ガス濃度は、空気の酸素濃度よりも高く、雰囲気に放出されるガスの窒素濃度は、空気の窒素濃度よりも高い。
【0010】
図2~7は、本発明による内燃機関の1つのシリンダ70のシリンダ壁1を示しており、これは、クランクケース2と、及びクランクケース2に組み込まれたクランクシャフト3と、クランクシャフト3上のピストンロッド4を通じてピストン5と、に接続されている。シリンダ空間15は、ピストン5の上面によって底部から、シリンダ壁1によって側部から、シリンダヘッド17によって上部から区切られる。シリンダヘッド17は、クランクシャフト3と同期して動作する吸気弁7、排気弁14、及びチャージ弁9と、酸素富化ガス噴射器11と、酸素富化ガス噴射器11に接続された酸素富化ガス供給源10と、燃料噴射器19と、燃料噴射器19に接続された燃料供給源18と、並びにスパーク点火の場合のスパークプラグ12と、を備える。
【0011】
図8は、本発明による、吸収式ガス分離によって動作する多セル酸素濃縮装置81を示し、吸収式ガス分離セル41A~41Zの材料は、セルに送達される大気圧よりも高いガスのうち酸素よりも多く窒素成分を吸収する。吸収式ガス分離セルの材料は、典型的にはゼオライトである。吸収式ガス分離セル41A~41Zのチャージは、電磁弁23を介した内燃機関のチャージマニホルド8からの内燃機関のピストン5の移動の結果として、シリンダ空間15からガスを押し出し、任意選択的にフィルタ21及びインタークーラ22を挿入し、瞬間的電力要件に応じて、リザーバ40に保管された酸素富化ガスの量と酸素濃度の関数としてチャージ毎に1つ又は複数の吸収式ガス分離セルをチャージすることによって、実行される。チャージ後に特定の時間が経過すると、吸収式ガス分離セルの雰囲気は酸素富化ガスを含有するが、窒素は吸収式ガス分離セルの材料に吸収される。次いで、酸素富化ガス用の電磁弁29が開放され、酸素富化ガスが、吸収式ガス分離多セル酸素濃縮装置81の第1の出力30、及び任意選択的にフィルタ31と任意選択的にインタークーラ32とを通って酸素富化ガスのコンプレッサ33に至り、使用されるまで高圧酸素富化ガスはリザーバ40内に保管される。吸収式ガス分離セルの材料の吸収能力は、吸収された窒素の量に相反する。飽和した吸収式分離セルの再生中、電磁弁37は開放され、真空ポンプ38は、真空を提供することによって、吸収式ガス分離多セル酸素濃縮装置81の第2の出力42を通じて吸収式ガス分離セルの材料から窒素を除去する。窒素は再生工程後も、すなわち、電磁弁37の閉鎖後も解放されるが、吸収式ガス分離セル内の圧力は、酸素富化ガスがセルから引き出される前の圧力よりも低い。吸収式ガス分離セルは、再生工程後に酸素富化ガスを提供する準備が整っている。吸収式ガス分離セル41A~41Zは、任意選択的に、酸素センサ26A~26Z、圧力センサ27A~27Z、及び温度センサ28A~28Zによって監視されてもよい。
【0012】
図9は、本発明による、膜式ガス分離によって動作する単セル又は多セル酸素濃縮装置82を示し、膜式ガス分離セル51A~51Zは、セルに送達される大気圧よりも高いガスのうち酸素成分を透過させる一方、送達された窒素成分は膜の端に残る。膜式ガス分離セル51A~51Zの材料は、典型的には、ポリスルホン酸塩(PSO)、ポリイミド(PI)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)(PPO)、又はゼオライトである。吸収式ガス分離セル51A~51Zのチャージは、電磁弁23を通じて内燃機関のチャージマニホルド8から上死点への内燃機関のピストン5の上方移動の結果として、シリンダ空間15から押し出されるガスによって実行され、任意選択的にフィルタ21及びインタークーラ22を挿入する。膜式ガス分離セル51を透過した酸素富化成分は、膜式ガス分離セル51の酸素富化ガス蓄積出力54上で、任意選択的にフィルタ31及び任意選択的にインタークーラ32を通じて、チューブ56を介して膜式ガス分離単セル又は多セル酸素濃縮装置82の第1の出力30に至り、使用時まで高圧酸素富化ガスがリザーバ40内に保管される。膜式ガス分離セル51A~51Zの窒素富化出力55A~55Zは、チューブ57A~57Z及び膜式ガス分離単セル又は多セル酸素濃縮装置82の第2の出力42を通じて真空ポンプ38に接続される。膜式ガス分離セル51A~51Zは、任意選択的に、酸素センサ26A~26Z、圧力センサ27A~27Z、及び温度センサ28A~28Zによって監視されてもよい。
【0013】
図2はシリンダ70の吸気行程の開始時を示し、チャージ弁9が閉鎖され、排気弁14が部分的に開放され、吸気弁7が完全に開放されることによってシリンダ70のチャージを促進する。ピストン5が上死点から下死点に向かって始動するとすぐに、排気弁14が閉鎖され、吸気弁7は下死点に到達するまで開放されたままである。
【0014】
図3は、シリンダ70の吸入行程の開始時を示し、排気弁14及びチャージ弁9が閉鎖され、吸気弁7が完全に開放されている。ピストン5が下死点から上死点に向かって始動するとすぐに、吸気弁7が閉鎖される。
【0015】
図4は、チャージ弁9の開放時のシリンダ70を示し、排気弁14及び吸気弁7が閉鎖されているときに、ピストン5は上死点に向かって移動する。チャージ弁9の開放は、ピストン5の特定の位置で、又はシリンダ空間15の圧力が酸素濃縮装置80の入力58上の圧力センサ66によって読み取られる圧力よりも高いときに可能となる。
【0016】
図5は、チャージ弁9の閉鎖時のシリンダ70を示し、このとき排気弁14及び吸気弁7は閉鎖され、チャージ弁9は閉鎖されている。この時点で、ピストン5は依然として上死点の前にある。
【0017】
図6は、燃焼開始時のシリンダ70を示す。この時点で、排気弁14、吸気弁7、及びチャージ弁9は閉鎖されており、ピストン5は依然として上死点の前にある。噴射器11は、必要な機関出力の機能として、加圧酸素富化ガスライン10からシリンダ空間15へ酸素富化圧縮ガスを噴射する。噴射器19は、必要な機関出力の機能として、加圧燃料ライン18からシリンダ空間15へ燃料を噴射する。燃料と酸素富化圧縮ガスの混合物は、スパーク点火の場合、スパークプラグ12によって点火される。燃料と酸素富化圧縮ガスの混合物は、自己点火の場合、燃料が噴射されたときに点火される。ピストン5は、シリンダ70内で上死点から下死点に向かって移動しており、燃料の燃焼から生成されるエネルギーの一部を機械エネルギーに変換する。
【0018】
図7は、排気行程の開始時のシリンダ70を示す。この時点で、排気弁14は開放され、吸気弁7及びチャージ弁9は閉鎖されている。ピストン5は、シリンダ70において下死点から上死点に向かって移動し、排気弁14及び排気マニホルド13を通じて排気ガスの大半を除去している。
【0019】
シリンダ70の排気行程の最後は、シリンダ70の吸気行程の最初と同一であって、図2に示されている。シリンダ70の動作は、機関を動作させる条件(クランクシャフトの回転エネルギー、燃料供給、酸素供給、スパーク点火の場合の点火、熱及び排気ガスの除去)が提供される限り、図2図7に示される工程を繰り返すことによって連続的である。
【0020】
図10は、本発明による、酸素濃縮装置80を備えた内燃機関の制御モジュール50を示す。制御モジュール50は、クランクシャフト位置センサ16、カムシャフト位置センサ20、酸素センサ34、圧力センサ35、温度センサ36、酸素センサ26A~26Z、圧力センサ27A~26Z、温度センサ28A~28Z、圧力センサ66、並びに任意選択的に、荷重センサ61、タコメータセンサ62、及びペダル位置センサ63の入力、入力電磁弁23A~23Z、出力電磁弁29A~29Z、電磁弁37A~37Z、真空ポンプ38、コンプレッサ制御装置39、酸素富化ガス噴射器11、酸素富化ガス噴射器11に接続された酸素富化ガス供給源10、燃料噴射器19、及び点火制御出力64を有する。点火制御出力64は点火制御モジュール65に接続され、点火制御モジュール65はスパークプラグ12に接続される。
【0021】
制御モジュール50を用いた内燃機関の動作は以下の通りである。
【0022】
制御モジュール50は、クランクシャフト3とカムシャフトの位置を検出し、吸気行程中、ピストン5は、シリンダ壁1とシリンダヘッド17によって包囲されたシリンダ空間15に空気を引き込む。チャージ弁9は、吸入行程中に下死点位置の後ろの所与の位置で開放される。
【0023】
図8に示される吸収式ガス分離によって動作する多セル酸素濃縮装置81を使用する場合、今度は、最後に使用され再生された吸収式ガス分離セル41A~41Zに属する電磁弁23A~23Zが開放され、上死点に向かって移動するピストン5が、吸気行程の開始時に最後に使用され再生された吸収式ガス分離セル41A~41Zを、シリンダ空間15に引き入れられた空気とシリンダ内に残る残留ガスでチャージする。最後の1つ前に使用され再生された吸収式ガス分離セル41A~41Zは、この吸入行程に続く次の吸入行程でチャージされる。図11のセルの配置では、最後の吸収式ガス分離セル41Zの隣に順に第1のセル41Aを置くことによってセルを円形に配置する場合、制御モジュール50が、典型的には最後に使用され再生された吸収式ガス分離セル41A~41Z(図11では吸収式ガス分離セル41B)から円の外周に沿った両方向から最も遠くに位置付けられたセル(図11では吸収式ガス分離セル41N)で以下の工程を実行する:a)吸収式ガス分離セル41Nの電磁弁29が開放され、酸素富化ガスが、任意選択のフィルタ31、任意選択のインタークーラ32、及び酸素富化ガス用のコンプレッサ33を通じて、吸収式ガス分離によって動作する多セル酸素濃縮装置81の第1の出力30からリザーバ40に至る、b)吸収式ガス分離セル41Nが、吸収式ガス分離セル41Nの電磁弁37Nを開放することによって再生相に至る。制御モジュール50は、典型的には、最後に使用され再生されたセル41A~41Zから見出されるセルの電磁弁37C~37Mを、円の外周に沿った両方向から最も遠くに位置付けられたセル41A~41Zから最後の1つ前に使用され再生されたセルに向かう方向に開放し、それらのセルを再生相に保持する。吸収式ガス分離セル41Cは次の吸入行程でチャージされ、生成された酸素富化ガスが使用され、電磁弁29Oを開閉することによって吸収式ガス分離セル41Oから除去され、電磁弁37Oは、吸収式ガス分離セル41Oが反復チャージされ、吸収式ガス分離セル41Oが再生相に入るまで開放されたままである。最後に使用された吸収式ガス分離セルと最初に使用された吸収式ガス分離セルとの間の距離は、機関に必要な瞬間的な酸素富化ガスの量に応じて変更され得る、すなわち、酸素富化ガスの量の需要が高い場合、使用される再生相のセルの数を増やすことができ、酸素富化ガスの量の需要が低い場合、チャージ相のセルの数を増やすことができる。吸収式ガス分離多セル酸素濃縮装置81を使用する場合、次のチャージに備えたセル41A~41Z内の圧力は大気圧未満であり、この低い圧力はピストン5の上方移動を助けるため、下死点の直後で、次のチャージに備えたセル41A~41Zのうちの1つとチャージ弁9とに属する電磁弁23A~23Zの1つを開放することが有利である。シリンダ空間15に取り込まれた空気の体積変化に基づいて計算された瞬間的圧力が、圧力センサ66の圧力読取り値以下であるとき、プロセスはこれによって更に最適化され得る。
【0024】
膜式ガス分離によって動作する単セル又は多セル酸素濃縮装置82を使用する場合、最後に使用された膜式ガス分離セル51に属する電磁弁23が開放され、上死点に向かって移動するピストン5は、吸気行程の開始時にシリンダ空間15に引き込まれた空気とシリンダに残った残留ガスで、最後に使用された膜式ガス分離セル51をチャージする。最後の1つ前に使用され再生された膜式ガス分離セル51は、この吸入行程に続く次の吸入行程でチャージされる。再生工程は、膜式ガス分離によって動作する単セル又は多セル酸素濃縮装置82を使用する場合には不要である。ピストン5によって押し出されたガスからの酸素の分離は継続的である。膜式ガス分離セル51A~51Zの窒素富化出力55A~55Zは、チューブ57A~57Z及び膜式ガス分離単セル又は多セル酸素濃縮装置82の第2の出力42を通じて真空ポンプ38に接続される。膜式ガス分離セル51A~51Zを透過した酸素富化成分は、膜式ガス分離セル51A~51Zの酸素富化ガス蓄積出力54A~54Z上で、チューブ56A~56Zを介して弁なしで膜式ガス分離単セル又は多セル酸素濃縮装置82の第1の出力30に至り、任意選択的にフィルタ31と任意選択的にインタークーラ32を通じて、及びコンプレッサ33を通じて、高圧酸素富化ガスはリザーバ40に至る。
【0025】
制御モジュール50は、機関の調節可能なパラメータ、例えば、早期点火、酸素富化ガス及び燃料の量、並びに酸素センサ26A~26Z、酸素センサ34、圧力センサ27A~26Z、圧力センサ35、温度センサ28A~28Z、温度センサ36、荷重センサ61、タコメータセンサ62、及びペダル位置センサ63の入力の読取り値に基づく噴射の量、タイミング、及び長さを制御する。
【0026】
制御モジュール50はまた、酸素センサ26A~26Z、酸素センサ34、圧力センサ27A~26Z、圧力センサ35、温度センサ28A~28Z、温度センサ36、荷重センサ61、タコメータセンサ62、及びペダル位置センサ63の入力の読取り値に基づいて、1つ以上前に選択された同じ吸収式セル41又は次の吸収式セル41をチャージする必要があるかどうかを判定する。
【0027】
本発明による機関の追加の利点は、コンプレッサ33の動作不良の場合にチャージ弁9を閉鎖することによって、緊急モードで機関を更に動作させ得ることである。
【0028】
本発明の利点は、キャビティ24A~24Z又はキャビティ53A~53Zの容積が、吸入行程中にシリンダ空間15に追加されることである。したがって、本発明による機関は、吸収式ガス分離によって動作する多セル酸素濃縮装置81を使用するか、又は膜式ガス分離によって動作する単セル又は多セル酸素濃縮装置82を使用する場合には圧縮行程の代わりに吸入行程を使用するため、アトキンソン機関に比べて、本発明による機関では圧縮工程中に生じるエネルギー損失が低減される。吸入行程中にコンプレッサ33及び真空ポンプ38によって吸収式ガス分離セル41A~41Z又は膜式ガス分離セル51A~51Z内で生成される大気圧より低い圧力は、ピストン5の上方移動を更に助ける。
【0029】
本発明の追加の利点は、汚染排出物、何よりもNxOy排出物が、従来の機関と比較して少ないことである。
【0030】
追加の利点は、空気によって燃料を燃焼させる機関よりも燃料がより完全に燃焼されるために、燃料消費量が少なくなることである。
【0031】
追加の利点は、ピストン、ピストンピン、ピストンロッド、及びクランクシャフトが、ピストンによる圧縮がないことで高トルクに晒されないために、従来の機関よりも機関の摩耗が少ないことである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】