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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ラミネート缶蓋材
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/04 20060101AFI20240517BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240517BHJP
   B65D 47/36 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B65D8/04 L
B32B15/08 F
B65D47/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564651
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2022071695
(87)【国際公開番号】W WO2022226470
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,323
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-トビアス ペイプ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン タッシング
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト フォン ツベール
(72)【発明者】
【氏名】マーカス マンゲルス
(72)【発明者】
【氏名】コルネリア シュレーダー
【テーマコード(参考)】
3E061
3E084
4F100
【Fターム(参考)】
3E061AA16
3E061AB13
3E061AC01
3E061AC05
3E061AC09
3E061AD03
3E061BA01
3E061BA02
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA23
3E084AA37
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC02
3E084CC08
4F100AB01A
4F100AB10A
4F100AK01B
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100AK53C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA13B
4F100EH46
4F100EJ41
4F100EJ42
4F100GB18
4F100HB00B
4F100JL10B
(57)【要約】
本明細書では、アルミニウム缶蓋材(CES)及びCESの製造方法が提供されている。CESは、ポリマフィルムコーティングを有し、有益には低フェザリング、低ヘアリング、及び高い耐摩耗性を示すラミネート金属ストリップを含む。ラミネート金属ストリップは、外向き側にラミネートポリマコティングと、内向き側にラッカコーティングとを含み得る。CESは、金属ストリップの、ある側にポリマフィルムをラミネートし、ラミネート金属ストリップをアニーリングすることによって形成される。場合によっては、金属ストリップにラミネートされるポリマフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、PETフィルムは着色されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋材を調製する工程であって、
金属ストリップを250℃未満の第1の温度に予熱することと、
前記金属ストリップの第1の側にポリマフィルムをラミネートしてラミネート金属ストリップを作成することであって、前記金属ストリップの前記第1の側は前記金属ストリップから形成された缶蓋の外向き側に対応する、前記ラミネート金属ストリップを作成することと、
前記ラミネート金属ストリップを、175℃より高いアニーリング温度でアニーリングすることと
を含む、前記工程。
【請求項2】
前記金属ストリップが、アルミニウムストリップである、請求項1に記載の工程。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムを含む、請求項1に記載の工程。
【請求項4】
前記金属ストリップに接着コーティングを塗布することをさらに含み、前記金属ストリップの前記第1の側に前記ポリマフィルムをラミネートすることは、前記接着コーティングに前記ポリマフィルムをラミネートすることを含む、請求項1に記載の工程。
【請求項5】
前記ポリマフィルムが、着色剤を含む、請求項1に記載の工程。
【請求項6】
前記着色剤が、カーボンブラック及び二酸化チタンからなる群から選択される、請求項5に記載の工程。
【請求項7】
前記金属ストリップの第2の側にラッカ層を塗布することをさらに含み、前記金属ストリップの前記第2の側は、前記金属ストリップから形成された缶蓋の内向き側に対応する、請求項1に記載の工程。
【請求項8】
前記ラッカが、エポキシ系溶液、ポリエステル溶液、またはそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の工程。
【請求項9】
前記アニーリング温度が、225゜Cより高い、請求項1に記載の工程。
【請求項10】
前記アニーリング温度が、300゜C未満である、請求項1に記載の工程。
【請求項11】
前記ラミネート金属ストリップをアニーリングした後、前記ラミネート金属ストリップを冷却することをさらに含む、請求項1に記載の工程。
【請求項12】
前記ラミネート金属ストリップをアニーリングした後、前記ラミネート金属ストリップに潤滑剤を塗布することをさらに含む、請求項1に記載の工程。
【請求項13】
請求項1に記載の工程に従って調製された缶蓋材製品。
【請求項14】
前記金属ストリップの前記第1の側が、前記缶蓋材製品の外向き側に対応する、請求項13に記載の缶蓋材製品。
【請求項15】
前記ポリマフィルムが、150μm未満の厚さを有する、請求項13に記載の缶蓋材製品。
【請求項16】
本体部品とエンドキャップとを含む飲料缶であって、前記エンドキャップは、請求項1に記載の工程に従って調製された缶蓋材から形成される、前記飲料缶。
【請求項17】
金属ストリップを受け入れ、前記金属ストリップを予熱温度まで予熱するための予熱炉と、
前記予熱温度で前記金属ストリップを受け入れ、前記金属ストリップの第1の側にポリマフィルムを塗布するために、前記予熱炉の下流に配置されたラミネーションシステムであって、前記金属ストリップの前記第1の側は前記金属ストリップから形成された缶蓋の外向き側に対応する、前記ラミネーションシステムと、
ラミネート金属ストリップを受け入れ、前記ラミネート金属ストリップを200℃より高いアニーリング温度で加熱するために前記ラミネーションシステムの下流に配置されたアニーリング炉とを備える、
システム。
【請求項18】
前記金属ストリップがアルミニウムストリップである、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記金属ストリップに接着コーティングを塗布するための接着コーティング塗布システムをさらに備え、前記ラミネーションシステムは、前記接着コーティングに前記ポリマフィルムを塗布するように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記ラミネーションシステムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムの供給部に結合される、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記金属ストリップの第2の側にラッカ層を塗布するためのラッカ塗布システムをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記アニーリング温度が、225゜Cより高い、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
前記アニーリング温度が、300゜C未満である、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月22日に出願された米国出願第63/178,323号に対する利益及び優先権を主張し、この出願は、すべての目的に対してその全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般的に、金属加工に関し、より具体的には、缶蓋材としての使用に適したラミネート金属ストリップと、その製造に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム製の飲料缶などの、ある種の金属製品は、金属とその内容物との間に、保護層を必要とする場合がある、または保護層から恩恵を受ける場合がある。例えば、飲料缶は多くの場合、ソーダ及びコーラなどの刺激の強い飲料による金属への損傷を避けるために、ならびに、変色または味の変化といった、飲料への望ましくない影響を避けるために、飲料缶の金属と、飲料缶の中に含まれる飲料との間に、十分な保護を提供しなければならない。さらに、金属製品は、金属と外部環境との間の保護層からさらに恩恵を受ける場合がある。例えば、飲料缶の外側の保護層は、製造工程中の摩耗またはその他の損傷から飲料缶を保護することができる。飲料缶の外側の保護層はまた、飲料缶に外観のデザインを適用する上で必要または有益な場合がある。
【0004】
多くの場合、金属製品の内面及び外面の両方の保護層に課される要件が存在する。例えば、保護層は、金属製品に十分に接着される必要がある。さらなる例として、外面では、保護層は、典型的には、ラミネーション後の色の均一性、耐摩耗性、適切な開放挙動、及び蓋製造中の適切な一般的挙動を示さなければならない。従来の保護層、例えばラッカは、耐摩耗性が不十分であることが分かった。一方、従来の保護層に代えて以前に試みられたものも、望ましくないヘアリング及びフェザリングを示すことが分かった。さらに、従来の保護層は、金属製品への接着が不十分であり、コスト及び時間のかかる製造工程を必要とする。したがって、従来の保護層は効果的ではない。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様では、本開示は、金属ストリップを250°C未満の第1の温度まで予熱することと、ポリマフィルムを金属ストリップの第1の側にラミネートして、ラミネート金属ストリップを製造することであって、金属ストリップの第1の側は、金属ストリップから形成された缶蓋の外向き側に対応するラミネート金属ストリップを製造することと、ラミネート金属ストリップを175°Cより高いアニーリング温度でアニーリングすることとを含む、缶蓋材を製造する工程を提供する。場合によっては、金属ストリップはアルミニウムストリップである。場合によっては、ポリマフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムを含む。場合によっては、工程は、金属ストリップに接着コーティングを塗布することをさらに含み、ポリマフィルムを金属ストリップの第1の側にラミネートすることは、ポリマフィルムを接着コーティングにラミネートすることを含む。場合によっては、ポリマフィルムは、着色剤を含む。場合によっては、着色剤は、カーボンブラック及び二酸化チタンからなる群から選択される。場合によっては、工程はさらに、金属ストリップの第2の側にラッカ層を塗布することを含み、金属ストリップの第2の側は、金属ストリップから形成された缶蓋の内向き側に対応する。場合によっては、ラッカは、エポキシ系溶液、ポリエステル溶液、またはそれらの組み合わせを含む。場合によっては、アニーリング温度は225°Cより高い。場合によっては、アニーリング温度は300°C未満である。場合によっては、工程は、ラミネート金属ストリップをアニーリングした後、ラミネート金属ストリップを冷却することをさらに含む。場合によっては、工程は、ラミネート金属ストリップをアニーリングした後、ラミネート金属ストリップに潤滑剤を塗布することをさらに含む。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載されている工程に従って調製された缶蓋材製品を提供する。場合によっては、金属ストリップの第1の側は、缶蓋材製品の外向き側に対応する。場合によっては、ポリマフィルムは、150μm未満の厚さを有する。
【0007】
いくつかの態様において、本開示は、本体部品とエンドキャップとを備える飲料缶を提供し、エンドキャップは、いずれかの先行実施形態の工程に従って調製された缶蓋材から形成される。
【0008】
いくつかの態様において、本開示は、金属ストリップを受け入れ、金属ストリップを予熱温度まで予熱するための予熱炉と、予熱温度で金属ストリップを受け入れて、金属ストリップの第1の側にポリマフィルムを塗布するために予熱炉の下流に配置されたラミネーションシステムであって、金属ストリップの第1の側は、金属ストリップから形成された缶蓋の外向き側に対応するラミネーションシステムと、ラミネート金属ストリップを受け入れて、200℃より高いアニーリング温度でラミネート金属ストリップを加熱するためにラミネーションシステムの下流に配置されたアニーリング炉とを備えるシステムを提供する。場合によっては、金属ストリップはアルミニウムストリップである。場合によっては、システムは、金属ストリップに接着コーティングを塗布するための接着コーティング塗布システムをさらに備え、ラミネーションシステムは、ポリマフィルムを接着コーティングに塗布するように構成される。場合によっては、ラミネーションシステムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムの供給部に結合される。場合によっては、システムは、ラッカ層を金属ストリップの第2の側に塗布するためのラッカ塗布システムをさらに備える。場合によっては、アニーリング温度は225°Cより高い。場合によっては、アニーリング温度は300°C未満である。
【0009】
本開示を、添付の図面を参照して以下で詳細に説明する。図中、類似の数字は類似の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の特定の態様による缶蓋材を調製するためのシステムの概略図である。
図2図1の缶蓋材の拡大側面図である。
図3A】本開示の特定の態様による缶蓋材のシートである。
図3B】本開示の特定の態様による切断後の、図3Aの缶蓋材のシートを示す。
図3C】本開示の特定の態様による、図3Aの缶蓋材のシートから製造された缶蓋ブランクのセットを示す。
図3D】本開示の特定の態様による、図3Cの缶蓋ブランクから形成された缶蓋を含む飲料缶を示す。
図4】本開示の特定の態様による、缶蓋材の一部分の複数の層を示す等角切り欠き図である。
図5】本開示の特定の態様による、缶蓋材を調製するための工程を示すフローチャートである。
図6】本開示の特定の態様による、ラミネーションシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、アルミニウムストリップなどの金属ストリップから缶蓋材を製造するための工程及びシステムが記載される。本明細書に記載の工程では、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリマフィルムが金属ストリップの外面にラミネートされる。得られた缶蓋材は、例えば飲料缶に使用することができる。
【0012】
本明細書に記載の方法に従って製造された缶蓋材は、有利なことに、改善された特性を示す。特に、缶蓋材は、改善された耐摩耗性を示す。さらに、本明細書に記載された缶蓋材は、高い耐摩耗性に加えて、低フェザリング及び低ヘアリングを示すように特に開発された。後述するように、フェザリング及びヘアリングは、耐摩耗性缶蓋材の開発において直面する問題であった。本明細書に記載の缶蓋材は、耐摩耗性、低フェザリング及び低ヘアリングの3つ全てを達成する。
【0013】
さらに、本明細書に記載の方法は、保護フィルム(複数可)を金属ストリップに塗布するためのより効率的な手段を提供し得る。従来の工程は、多くの場合、複数の工程ステップを必要とする。場合によっては、従来の工程は、異なる目的のために連続したラッカ層を塗布する。例えば、保護ラッカ層及び別個の着色ラッカ層である。他方で、本明細書に記載の方法は、単一の層で保護及び表示(例えば、着色)の両方を実現することができる。さらに、本明細書に記載の方法は、(例えば金属ストリップの外面に塗布されたラッカ層から溶媒を除去するための)乾燥ステップを必要としない場合がある。これらの改良は、時間及び費用の両方を節約する。
定義及び説明
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「発明」、「その発明」、「この発明」、及び「本発明」は、この特許出願の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定しない、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を限定しないことが理解されるべきである。
【0015】
この説明では、「シリーズ」または「7xxx」などのアルミニウム業界の名称によって特定される合金に言及する。アルミニウム及びその合金の命名及び識別において最も一般的に使用されている番号指定システムの理解に関しては、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」(いずれもアルミニウム協会によって発行されている)を参照されたい。
【0016】
アルミニウム合金は、合金の総重量に基づいた重量パーセント(wt%)での元素組成で本明細書に記載されている。各合金の特定の例では、残部はアルミニウムであり、不純物の合計の最大wt%は、0.15%である。
【0017】
本明細書で使用される場合、「フェザリング」とは、金属ストリップ上の保護層(例えば、ポリマフィルム)における伸び及び層間剥離を指す。フェザリングの程度は、伸び及び層間剥離の結果として、切断されたアルミニウムの端部の上に広がる保護層(例えば、ポリマフィルム)の量によって測定される。缶蓋材は、缶蓋材から円板を切り出して缶蓋を製造するときに特にフェザリングが起きやすい。さらに、飲料缶を開けた際に形成される開口部など、金属の破損部にフェザリングが生じるリスクがある。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ヘアリング」は、金属ストリップ上の保護層(例えば、ポリマフィルム)における目に見える毛髪状の変形の形成を指す。缶蓋材は、保護層(例えば、ポリマフィルム)を切断してスコア線を形成する時に特にヘアリングが生じやすい。場合によっては、ヘアリングは、保護層の金属ストリップへの不十分な接着の結果として生じる。
【0019】
この出願では、合金の調質または質別に言及する。最も一般的に使用される合金質別の説明の理解に関しては、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F調質または質別は、製作されたままのアルミニウム合金を指す。O調質または質別は、アニーリング後のアルミニウム合金を指す。T1調質または質別は、熱間加工から冷却され、(例えば、室温で)自然時効されたアルミニウム合金を指す。T2調質または質別は、熱間加工から冷却され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T3調質または質別は、溶体化熱処理して冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T4調質または質別は、溶体化熱処理され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T5調質または質別は、熱間加工から冷却され、(高温で)人工時効されたアルミニウム合金を指す。T6調質または質別は、溶体化熱処理され、人工時効されたアルミニウム合金を指す。T7調質または質別は、溶体化熱処理され、人工過時効されたアルミニウム合金を指す。T8x調質または質別は、溶体化熱処理され、冷間加工され、人工時効されたアルミニウム合金を指す。T9調質または質別は、溶体化熱処理され、人工時効され、冷間加工されたアルミニウム合金を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」の意味は、文脈が明確に別途指示しない限り、単数形及び複数形の言及を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃の温度、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃を含み得る。
【0022】
本明細書で開示したすべての範囲は、そこに包含される任意の及びすべての部分範囲を含むと理解すべきである。例えば、記述された範囲「1~10」は、最小値「1」及び最大値「10」の間の(及び1と10を含む)任意の及びすべての部分範囲、すなわち、最小値1以上(例えば、1~6.1)から始まり、最大値10以下(例えば、5.5~10)で終わるすべての部分範囲を含むとみなされるべきである。
【0023】
金属ストリップ
本開示は、金属ストリップから缶蓋材を製造するための工程及びシステムを提供する。より具体的には、本明細書に記載された方法は、ポリマフィルムを金属ストリップの第1の側にラミネートすることを含む。ポリマフィルムがラミネートされる金属ストリップの組成は限定されない。本明細書に記載された方法は、アルミニウムストリップに特に良好に適しているが、これに限定されない。ポリマフィルムは、例えば、任意の適切なアルミニウム合金、例えば、アルミニウム合金の連続コイルに適用されてよい。適切なアルミニウム合金は、例えば、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、及び8xxxシリーズのアルミニウム合金を含む。
【0024】
非限定的な例として、金属ストリップとして使用するための例示的な1xxxシリーズのアルミニウム合金は、AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199を含み得る。場合によっては、アルミニウム合金は、少なくとも99.9%の純アルミニウム(例えば、少なくとも99.91%、少なくとも99.92%、少なくとも99.93%、少なくとも99.94%、少なくとも99.95%、少なくとも99.96%、少なくとも99.97%、少なくとも99.98%、または少なくとも99.99%の純アルミニウム)である。
【0025】
金属ストリップとして使用するための2xxxシリーズのアルミニウム合金の非限定的な例は、AA2001、AA2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、またはAA2199を含み得る。
【0026】
金属ストリップとして使用するための3xxxシリーズのアルミニウム合金の非限定的な例は、AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065を含み得る。
【0027】
金属ストリップとして使用するための4xxxシリーズアルミニウム合金の非限定的な例は、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147を含み得る。
【0028】
金属ストリップとして使用するための5xxxシリーズアルミニウム合金の非限定的な例は、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088を含み得る。
【0029】
金属ストリップとして使用するための6xxxシリーズアルミニウム合金の非限定的な例は、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092を含み得る。
【0030】
金属ストリップとして使用するための7xxxシリーズアルミニウム合金の非限定的な例は、AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、AA7204、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099を含み得る。
【0031】
金属ストリップとして使用するための8xxxシリーズアルミニウム合金の非限定的な例は、AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、及びAA8093を含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、金属ストリップは、AA3104、AA5006、AA5182、またはそれらの組み合わせを含む。
【0033】
本開示を通してアルミニウム合金製品が記載されているが、方法及び製品は任意の金属ストリップに適用される。いくつかの実施形態では、金属ストリップは、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、チタン、チタン系材料、銅、銅系材料、鋼、鋼系材料、青銅、青銅系材料、真鍮、真鍮系材料、複合物、複合物で使用されるシート、または任意の他の好適な金属もしくは材料の組合せである。製品は、モノリシック材料、ならびに非モノリシック材料、例えばロールボンド材料、クラッド材料、複合材料、または様々な他の材料を含み得る。いくつかの例では、金属物品は、金属コイル、金属ストリップ、金属プレート、金属シート、金属ビレット、金属インゴットなどである。
【0034】
金属ストリップは任意の適切な質別の合金から調製することができる。特定の例では、合金はF、O、T3、T4、T6、T8xの質別で使用することができる。合金は、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)もしくは半連続鋳造、連続鋳造(例えば、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、ブロック鋳造機、またはその他任意の連続鋳造機の利用を含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または他の鋳造方法により製造することができる。
【0035】
ポリマフィルム
本明細書に記載の工程及びその工程から製造される缶蓋材は、ポリマフィルムを金属ストリップにラミネートすることを含む。詳細には、本開示の方法は、金属ストリップから形成された缶蓋の外向き側に対応する、金属ストリップの側(例えば、第1の側)にポリマフィルムをラミネートすることを含む。このように、ポリマフィルムは、缶蓋材の外側の一部を形成する。
【0036】
以下の例でさらに詳述するように、(例えばラッカとは対照的に)缶蓋の外向き側にポリマフィルムを使用すると、缶蓋製品の品質が有益に改善される。詳細には、ポリマフィルムは、従来の缶蓋製品に比べて、より大きな耐摩耗性を付与する。さらに、本明細書に記載のポリマフィルム、特に本明細書に記載の製造方法に従って処理されたポリマフィルムは、フェザリング及び/またはヘアリングの低減を示す。
【0037】
ポリマフィルムは特に限定されず、缶蓋材の所望の使用(例えば、飲料缶として)に適した任意のポリマを含み得る。ポリマフィルムに適したポリマとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)が含まれる。場合によっては、金属ストリップにラミネートされたポリマフィルムは、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(BoPET)フィルムなどの二軸配向ポリマである。
【0038】
いくつかの実施形態では、ポリマフィルムは、さらに、染料または着色剤などの着色剤を含む。換言すれば、ポリマフィルムは、着色ポリマフィルム(例えば、着色PETフィルム)であってよい。以下の例でさらに詳述されるように、着色ポリマフィルムを使用すると、缶蓋製品の品質が有益に改善することが分かった。無色ポリマフィルムと比べて、着色フィルムはヘアリング傾向が低いことが分かった。理論に拘束されるものではないが、フィルム中の着色剤粒子の存在は、(例えば、飲料缶を開ける際の開口部の形成時に)フィルムの滑らかな破断を容易にするように、フィルムの組成に影響を与えると考えられる。
【0039】
着色ポリマフィルムに使用される着色剤は、特に制限されていない。適切な着色剤は、例えば、(例えば、白色ポリマフィルムを製造するための)二酸化チタン、及び(例えば、黒色ポリマフィルムを製造するための)カーボンブラックを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリマフィルムは、5μm~150μmの平均厚さを有する。例えば5μm~125μm、5μm~100μm、5μm~75μm、5μm~50μm、5μm~25μm、6μm~150μm、6μm~125μm、6μm~100μm、6μm~75μm、6μm~50μm、6μm~25μm、8μm~150μm、8μm~125μm、8μm~100μm、8μm~75μm、8μm~50μm、8μm~25μm、10μm~150μm、10μm~125μm、10μm~100μm、10μm~75μm、10μm~50μm、10μm~25μm、12μm~150μm、12μm~125μm、12μm~100μm、12μm~75μm、12μm~50μm、または12μm~25μmの平均厚さを有する。
【0041】
下限に関しては、ポリマフィルムは、5μmより大きい、例えば6μmより大きい、8μmより大きい、10μmより大きい、または12μmより大きい平均厚さを有し得る。上限に関しては、ポリマフィルムは、150μm未満、例えば、125μm未満、100μm未満、75μm未満、50μm未満、または25μm未満の平均厚さを有し得る。
【0042】
ポリマフィルムの適切な平均厚さの例は、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、50μm、51μm、52μm、53μm、54μm、55μm、56μm、57μm、58μm、59μm、60μm、及びこれらの間の任意の厚さを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本開示の工程は、ポリマフィルムの複数の層を金属ストリップ上にラミネートすることを含む。これらの実施形態では、ポリマフィルムの各層は、独立して、上記のようなポリマフィルムであってよい。場合によっては、ポリマフィルムの複数の層が金属ストリップ上にラミネートされ、(例えば、組成、着色剤、及び/または厚さに関して)各層は同一である。場合によっては、ポリマフィルムの複数の層が金属ストリップ上にラミネートされ、(例えば、組成、着色剤、及び/または厚さに関して)各層は同一ではない。
【0044】
接着コーティング
いくつかの実施形態では、本開示に従って製造された缶蓋材は接着コーティングを含む。詳細には、金属ストリップに接着コーティングを施し、その上にポリマフィルムをラミネートすることができる。接着コーティングは、有益なことに、ポリマフィルムを金属ストリップに固定する。
【0045】
以下の例に示すように、接着コーティングは、改善されたフェザリング性能を提供することができる。詳細には、適切な接着コーティングを選択し、工程パラメータ(例えば、以下に記載するようなアニーリング温度)を制御することにより、金属ストリップへのポリマフィルムの接着を制御(例えば、改善)することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、接着コーティングは、金属ストリップに施される前処理、例えば金属ストリップに適した前処理である。接着コーティングとして使用することができる適切な前処理の商用例には、Solvay(ベルギー、ブリュッセル)製Addibond712-CP30が含まれる。
【0047】
ワックスコーティング
いくつかの実施形態では、本開示に従って製造された缶蓋材はワックスコーティングを含む。場合によっては、例えば、ワックスコーティングは、ポリマフィルムの外向き側に塗布されてよい。ワックスコーティングは、有益なことに、缶蓋材の外観を改善する。詳細には、本開示によるワックスコーティングは、外観に筋が最小限であるか、または全くない均質な外観を示す。さらに、ワックスコーティングは、表面における摩擦力を減じるための潤滑剤として作用する。缶蓋材の製造に使用される機械の適切な機能を確保するために潤滑が必要な場合がある。
【0048】
ワックスコーティングは、ワックス、例えばカルナバワックスの溶液を含み得る。ワックスコーティングとして使用することができる適切なワックス製品の商用例には、Munzing(ドイツ、アプシュタット)製LUBA-print965-Aが含まれる。いくつかの実施形態においては、ワックスコーティングは、水へのカルナバワックスの希釈を含む。例えば、ワックスコーティングは、カルナバワックス(例えばLUBA-print965-A)を1:2~1:50(例えば、1:5、1:6、1:8、1:10、1:12、1:14、1:16、1:18または1:20)の体積比で水で希釈したものを含み得る。ワックスコーティングを希釈することで、商業応用中にワックスコーティングをニップ(nip)に送り込むことができ、発泡を軽減できることが保証される。これによって、乾くと、缶蓋材の表面に固体カルナバ粒子ができることが分かった。
【0049】
いくつかの実施形態では、ワックスコーティングは、5mg/m~150mg/mの平均厚さを有する。例えば、5mg/m~120mg/m、5mg/m~115mg/m、5mg/m~110mg/m、5mg/m~105mg/m、5mg/m~100mg/m、6mg/m~150mg/m、6mg/m~120mg/m、6mg/m~115mg/m、6mg/m~110mg/m、6mg/m2~105mg/m、6mg/m~100mg/m、7mg/m~150mg/m、7mg/m~120mg/m、7mg/m~115mg/m、7mg/m~110mg/m、7mg/m~105mg/m、7mg/m~100mg/m、8mg/m~150mg/m、8mg/m~120mg/m、8mg/m~115mg/m、8mg/m~110mg/m、8mg/m~105mg/m、8mg/m~100mg/m、9mg/m~150mg/m、9mg/m~120mg/m、9mg/m~115mg/m、9mg/m~110mg/m、9mg/m~105mg/m、9mg/m~100mg/m、10mg/m~150mg/m、10mg/m~120mg/m、10mg/m~115mg/m、10mg/m~110mg/m、10mg/m~105mg/m、または10mg/m~100mg/mの平均厚さを有する。
【0050】
下限に関しては、ワックスコーティングは、5mg/mより大きい、例えば6mg/mより大きい、7mg/mより大きい、8mg/mより大きい、9mg/mより大きい、または10mg/mより大きい平均厚さを有し得る。上限に関しては、ワックスコーティングは、125mg/m未満、例えば120mg/m未満、115mg/m未満、110mg/m未満、105mg/m未満、または100mg/m未満の平均厚さを有し得る。
【0051】
ラッカ
いくつかの実施形態では、本開示に従って製造された缶蓋材はラッカ層を含む。場合によっては、例えばラッカ層は、金属ストリップの表面、例えば内向き表面に塗布されてよい。これらの実施形態では、ラッカは、金属ストリップと缶蓋材の内容物(例えば、缶蓋材から形成される飲料缶の内容物)との間に保護層を形成する。
【0052】
本明細書に記載される工程での使用に適したラッカの組成は、特に限定されない。場合によっては、ラッカは、水性及び/または溶媒系の組成物を含有し、これらの組成物は、好ましくは金属ストリップの表面に吹き付け、流し込み、またはその他の方法で塗布されてよい。いくつかの実施形態において、金属ストリップの表面に塗布されるラッカは、エポキシ系溶液、ポリエステル溶液、またはそれらの組み合わせを含む。本開示のためのラッカとしての使用に適した組成物の商用例としては、Sherwin-Williams(オハイオ州クリーブランド)製EzDexが含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態においては、ラッカ層は、2μm~20μmの平均厚さを有する。例えば2μm~18μm、2μm~16μm、2μm~14μm、2μm~12μm、2μm~10μm、3μm~20μm、3μm~18μm、3μm~16μm、3μm~14μm、3μm~12μm、3μm~10μm、4μm~20μm、4μm~18μm、4μm~16μm、4μm~14μm、4μm~12μm、4μm~10μm、5μm~20μm、5μm~18μm、5μm~16μm、5μm~14μm、5μm~12μm、5μm~10μm、6μm~20μm、6μm~18μm、6μm~16μm、6μm~14μm、6μm~12μm、または6μm~10μmの平均厚さを有する。
【0054】
下限に関しては、ラッカ層は、2μmより大きい、例えば3μmより大きい、4μmより大きい、5μmより大きい、または6μmより大きい平均厚さを有し得る。上限に関しては、ラッカ層は、20μm未満、例えば、18μm未満、16μm未満、14μm未満、12μm未満、または10μm未満の平均厚さを有し得る。
【0055】
ラッカ層の適切な平均厚さの例には、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm及び20μm、ならびにそれらの間のあらゆる厚さが含まれる。
【0056】
場合によっては、ラッカ層の厚さは、坪量で表されてよい。いくつかの実施形態では、ラッカ層は、1g/m~15g/mの坪量を有する。例えば、1g/m~14g/m、1g/m~12g/m、1g/m~10g/m、1g/m~8g/m、1g/m~6g/m、1.5g/m~15g/m、1.5g/m~14g/m、1.5g/m~12g/m、1.5g/m~10g/m、1.5g/m~8g/m、1.5g/m~6g/m、2g/m~15g/m、2g/m~14g/m、2g/m~12g/m、2g/m~10g/m、2g/m~8g/m、2g/m~6g/m、2.5g/m~15g/m、2.5g/m~14g/m、2.5g/m~12g/m、2.5g/m~10g/m、2.5g/m~8g/m、2.5g/m~6g/m、3g/m~15g/m、3g/m~14g/m、3g/m~12g/m、3g/m~10g/m、3g/m~8g/m、または3g/m~6g/mの坪量を有する。
【0057】
下限に関しては、ラッカ層は、1g/mより大きい、例えば1.5g/mより大きい、2g/mより大きい、2.5g/mより大きい、または3g/mより大きい坪量を有し得る。上限に関しては、ラッカ層は、15g/m未満、例えば14g/m未満、12g/m未満、10g/m未満、8g/m未満、または6g/m未満の坪量を有し得る。
【0058】
ラッカ層の適切な坪量の例には、1g/m、1.5g/m、2g/m、2.5g/m、3g/m、3.5g/m、4g/m、4.5g/m、5g/m、5.5g/m、6g/m、6.5g/m、7g/m、7.5g/m、8g/m、9g/m、10g/m、11g/m、12g/m、13g/m、14g/m、15g/m、及びそれらの間の任意の厚さが含まれる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示に従って製造された缶蓋材は、金属ストリップとラッカ層との間に接着コーティングを含む。詳細には、金属ストリップに接着コーティングを塗布し、その上にラッカを塗布してよい。接着コーティングは、有益なことに、ラッカを金属ストリップに固定する。いくつかの実施形態では、接着コーティングは、金属ストリップに施される前処理、例えば金属ストリップに適した前処理である。金属ストリップとラッカ層との間の接着コーティングは、ポリマフィルムと金属ストリップとの間の接着コーティングと同じであっても異なっていてもよい。金属ストリップとラッカとの間の接着コーティングとして使用することができる適切な前処理の商用例には、チタンジルコニウム(Ti-Zr)ベースの前処理、例えばHenkel Adhesive Technologies(ドイツ、デュッセルドルフ)製のBonderiteが含まれる。
【0060】
缶蓋材を調製する工程及びシステム
いくつかの態様では、本開示は、缶蓋材を調製するための工程を提供する。本明細書に記載された工程は、低フェザリング及び低ヘアリングを有するラミネート缶蓋材を有利に製造する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の工程は、層間剥離を引き起こし得る酸性条件に対するラミネートの耐食性を評価することができる酢酸試験など、他の試験パラメータにおいても高い性能を示すラミネート缶蓋材を製造する。これらの工程は、ポリマフィルムを金属ストリップにラミネートすることと、ラミネート金属ストリップをアニーリング温度(T)でアニーリングすることとを含むことができ、さらに、ポリマフィルムを金属ストリップにラミネートする前に、金属ストリップを予熱温度(T)まで予熱することを含み得る。本開示の工程によれば、ラミネート金属ストリップをアニーリングすることは、175°Cを超える温度Tまで加熱することを含む。理論に拘束されるものではないが、これらの温度でのアニーリングは、金属ストリップへのポリマフィルムの接着性を改善し、それにより、製造される缶蓋材の性能特性を大幅に改善すると考えられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、金属ストリップは両側でコーティングされる。本開示による実施形態では、金属ストリップは、片面がラミネートされ、反対側がラッカ塗布されてよい。例えば、金属ストリップは、外向き面がラミネートされ、内向き面がラッカ塗布されてよいが、他の構成を使用することもできる。このハイブリッドラミネート/ラッカ塗布金属ストリップによれば、ラッカの使用によって缶蓋材の内側の機能性能を向上させながら、ヘアリングしにくいポリマフィルムを用いて、缶蓋材の外側で高い装飾性と機能性能を維持することができる。場合によっては、前述のように、ポリマフィルムは、着色剤等の添加剤を含んでよく、着色剤は、フィルムを着色し、缶蓋材の性能特性を改善することが分かった。
【0062】
場合によっては、ラミネート金属材料は、ラミネーション工程からアニーリング工程(例えば、アニーリング炉)に直接送られる。場合によっては、ラミネート金属材料は、ラミネーション工程からラッカ塗布システムに直接送られ、その後、アニーリング工程(例えば、アニーリング炉)に送られる。場合によっては、ラミネート金属材料は、ラッカ塗布システムに入る前に焼入れ(例えば空気焼入れまたは水焼入れ)される。
【0063】
缶蓋材を調製するためのいくつかの従来の工程では、金属ストリップは両側にラッカ塗布される。ラッカ組成物は、比較的高い溶媒含有量を有するので、ラッカを金属ストリップの両側に塗布し、同時に炉でアニーリングすることはできない。さらに、ラッカ組成物の高い溶媒含有量は、追加の乾燥ステップを必要とする。このため、従来の工程は、通常、ラッカ組成物を塗布及び乾燥するために複数の工程ステップを必要とする。これによってライン速度が制限され、製造時に付加的なパスが必要となるため、コストが増加する。
【0064】
本明細書に記載の工程及びシステム、ならびに様々な追加の特徴及びそれらの例について図面を参照して記載する。図中、類似の数字は類似の要素を示し、方向の記述を使用して、例示的な実施形態を説明しているが、例示的な実施形態と同様、本開示を限定するために使用してはいない。本明細書の図に含まれる要素は、縮尺通りに描写されていない場合がある。
【0065】
図1は、本開示の特定の態様による、缶蓋材(CES)を調製するためのシステム100の概略図である。金属ストリップ102が予熱炉112に送られ、予熱炉112が金属ストリップ102を予熱温度(T)まで加熱する。予熱温度Tは、金属ストリップ102にラミネートされるポリマフィルム120の溶融温度を十分に下回る。いくつかの実施形態では、予熱温度Tは、175°C~300°Cの温度である。例えば、175°C~290°C、175°C~280°C、175°C~270°C、175°C~260°C、175°C~250℃、185°C~300°C、185°C~290°C、185°C~280°C、185°C~270°C、185°C~260°C、185°C~250°C、195°C~300°C、195°C~290°C、195°C~280°C、195°C~270°C、195°C~260°C、195°C~250°C、205°C~300°C、205°C~290°C、205°C~280°C、205°C~270°C、205°C~260°C、205°C~250°C、215°C~300°C、215°C~290°C、215°C~280°C、215°C~~270°C、215°C~260°C、215°C~250°C、225°C~300°C、225°C~290°C、225°C~280°C、225°C~270°C、225°C~260°C、または225°C~250°Cの温度である。下限に関しては、Tは、175°Cより高くてよい、例えば、185°Cより高くてよい、195°Cより高くてよい、205°Cより高くてよい、または215°Cより高くてよい。上限に関しては、Tは、300°C未満、例えば、290°C未満、280°C未満、270°C未満、260°C未満、または250°C未満であってよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、金属ストリップ102の表面は、予熱炉に入る前に表面を清浄にするために、(例えば硫酸、フッ化水素酸、リン酸またはそれらの組み合わせなどの酸性溶液を用いて)脱脂されてよい。
【0067】
予熱された金属ストリップ104はラミネーションシステム114内へ送られる。金属ストリップ102は、予熱された金属ストリップ104として、ポリマフィルム120を金属ストリップ102の一方の側に塗布するラミネーションシステム114を通過する。場合によっては、ポリマフィルムは、金属ストリップ102の両側に塗布することができる。ラミネーションシステム114は、ポリマフィルム120を金属ストリップ102にラミネートするための任意の適切なシステムであってよい。場合によっては、ラミネーションシステム114は、ホットメルトラミネーションシステムである。ラミネート金属ストリップ106がラミネーションシステム114を出て、金属ストリップ102をポリマフィルム120と結合させる。
【0068】
いくつかの実施形態では、ラミネート金属ストリップ106は、ラッカ塗布システム116内へ送ることができる。ラッカ塗布システム116に入る前に、ラミネート金属ストリップ106は、冷却(例えば空冷または水冷)されてよい。ラッカ124は、ラッカ塗布システム116によって金属ストリップ102に塗布される。ラッカ塗布システム116は、ラッカ124を金属ストリップ102に塗布するための任意の適切なシステムであってよい。ラッカ塗布システム116は、ラッカ124を加熱して金属ストリップ102上に硬化させるための炉を含み得る。場合によっては、ラッカ塗布システム116は、ラミネーションシステム114の下流(例えば後)にある。場合によっては、ラッカ塗布システム116は、アニーリング炉118の上流(例えば前)にある。場合によっては、ラッカ塗布システム116は、ラミネーションシステム114または予熱炉112の上流にある。場合によっては、ラッカ塗布システム116は、ラミネーションシステム114及びアニーリング炉118の両方の下流にある。図1に示す実施形態では、ラッカ塗布システム116は、ラミネーションシステム114とアニーリング炉118との間に位置している。ラミネートされ、ラッカ塗布された金属ストリップ108は、ラッカ塗布システム116を出ることができる。
【0069】
上流のラッカ塗布システム116が使用される場合、ラミネートされ、ラッカ塗布された金属ストリップ108はアニーリング炉118内に送ることができる。場合によっては、ラッカ塗布システム116が、ラミネーションシステム114とアニーリング炉118との間で使用されない場合には、ラミネート金属ストリップ106は、アニーリング炉に送ることができる。
【0070】
アニーリング炉118は、ラミネーションシステム114及び任意選択でラッカ塗布システム116の下流に(例えば後に)配置することができる。場合によっては、アニーリング炉118は、ラッカ塗布システム116の直ぐ下流に配置されており、これにより、ラッカ塗布システム116を出るラッカ塗布されたラミネート金属ストリップ108は、他の機械またはシステムに送られる前または他の機械またはシステムと接触する前に、アニーリング炉118内に送られる。
【0071】
アニーリング炉118は、ラッカ塗布されたラミネート金属ストリップ108の温度をアニーリング温度(T)まで上昇させる。いくつかの実施形態では、アニーリング温度Tは、175°C~300°Cの温度である。例えば、175°C~290°C、175°C~280°C、175°C~270°C、175°C~260°C、175°C~250℃、185°C~300°C、185°C~290°C、185°C~280°C、185°C~270°C、185°C~260°C、185°C~250°C、195°C~300°C、195°C~290°C、195°C~280°C、195°C~270°C、195°C~260°C、195°C~250°C、205°C~300°C、205°C~290°C、205°C~280°C、205°C~270°C、205°C~260°C、205°C~250°C、215°C~300°C、215°C~290°C、215°C~280°C、215°C~270°C、215°C~260°C、215°C~250°C、225°C~300°C、225°C~290°C、225°C~280°C、225°C~270°C、225°C~260°C、または225°C~250°Cの温度である。下限に関しては、Tは、175°Cより高くてよい、例えば、185°Cより高くてよい、195°Cより高くてよい、205°Cより高くてよい、または215°Cより高くてよい。上限に関しては、Tは、300°C未満、例えば、290°C未満、280°C未満、270°C未満、260°C未満、または250°C未満であってよい。
【0072】
ラッカ塗布されたラミネート金属ストリップ108は、金属ストリップ102のアニーリング及びポリマフィルム120の所望の接着を含む所望の特性を、ラッカ塗布されたラミネート金属ストリップ108に与えるために、十分な長さのアニーリング炉118内で時間を費やす。アニーリング炉118内の時間は、炉の長さ及び金属ストリップの速度に基づいてよい。場合によっては、当該時間は、約2秒~約30秒、約9秒~約15秒、約10秒~約14秒の範囲内、または約12秒であってよい。場合によっては、必要に応じて(例えば金属ストリップの速度を調整することにより)時間を調製して、アニーリング炉118内の温度の変化を補償することができる。
【0073】
アニーリング炉118を出た後、缶蓋材110(例えば、アニーリング、ラッカ塗布及びラミネートされた金属ストリップ)は、任意選択で、空気もしくは焼入れ液(例えば、水)等によって、または缶蓋材110への冷却剤の塗布によって、焼入れされてよい。缶蓋材110は、アニーリング炉118を出た直後に、焼入れまたは他の方法で冷却することができる。
【0074】
場合によっては、システム100により製造された缶蓋材110は、金属ストリップ102を含むことができ、金属ストリップ102には、図1及び2に示すように、ラミネートポリマフィルム120の層が第1の側に塗布され、ラッカ層124が第2の側に塗布されている。
【0075】
場合によっては、金属ストリップ102は、上述のように、1つまたは複数の接着コーティング層を含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、1つまたは複数の接着コーティング層は、予熱炉112またはラミネーションシステム114に入る前に予め塗布されてよい。
【0076】
場合によっては、ワックスコーティングは、アニーリング炉118を出た後に缶蓋材110にさらに塗布することができる。
【0077】
図2は、図1の缶蓋材110の拡大側面図である。缶蓋材110は、ラミネートポリマフィルム120とラッカ層124との間に挟まれた金属ストリップ102を含む。
【0078】
上述したように、場合によっては、向上した接着性能を提供するように金属ストリップを調製するために、1つまたは複数の接着コーティング層202が地金に塗布されてよい。この接着コーティング202は、接着性の向上、低温殺菌後の白化の低減、及び酢酸試験における良好な耐食性能を提供することができる。場合によっては、金属ストリップ102は、ラミネートポリマフィルム120及びラッカ層124のうちの一方または両方の間に配置された1つまたは複数の接着コーティング202を含み得る。
【0079】
図3A~3Dは、製造の様々な段階における缶蓋材302の不等角投影図である。場合によっては、缶蓋材302は、ラミネートポリマフィルム及びラッカを含む、本明細書に記載の缶蓋材である。
【0080】
図3Aは、本開示の特定の態様による缶蓋材302のシートである。缶蓋材302のシートは、図1に示される缶蓋材110または同様の缶蓋材であってよい。図3Bは、図3Aが切断された後の、図3Aの缶蓋材302のシートを示す。缶蓋材302のシートは、図3Cに示したように缶蓋ブランク306を製造するためにダイカットによって、パンチを用いて、または他の方法で切断することができる。図3Cは、図3Aの缶蓋材のシートから製造された缶蓋ブランク306のセットを示す。図3Dは、図3Cの缶蓋ブランク306から形成された缶蓋308を含む飲料缶310を示す。
【0081】
缶蓋308は、(例えば、図3Dに見える)外向きの面、及び(例えば、飲料缶310の内部を向く)内向きの面を含む。本明細書に記載の通り、缶蓋308は、ラッカ層が内向き側に存在する一方で、外向き側にラミネートポリマフィルムが存在するように形成することができるが、これは必須ではない。
【0082】
図4は、本開示に従って調製された缶蓋材400の一部分の複数の層を示す等角切り欠き図である。缶蓋材400は、ラミネートポリマフィルム402で囲まれたアルミニウム(例えば、アルミニウム合金)などの金属層404と、ラッカ層406とを含み得る。缶蓋材400は、図1の缶蓋材110であってよい。
【0083】
図5は、本開示の実施形態による缶蓋材を調製するための工程500を示すフローチャートである。ブロック502で、金属ストリップが提供される。金属ストリップは、缶蓋材を形成するのに適したアルミニウムストリップであってよい。金属ストリップの表面は、任意選択で(例えば、酸性溶液を使用して)脱脂されてよい。ブロック503で、接着コーティングが任意選択で金属ストリップに塗布される。ブロック504で、金属ストリップは、予熱温度Tまで予熱される。ブロック506で、金属ストリップは、ポリマフィルム、例えばPETフィルムでラミネートされる。ブロック508で、ワックスコーティングが、金属ストリップの片側または両側に任意選択で塗布される。ブロック510で、ラミネート金属ストリップは、アニーリング温度Tでアニーリングされる。ブロック512で、アニーリングされた金属ストリップは任意選択で焼入れされる。
【0084】
図6は、本開示の特定の態様による、ラミネーションシステム614の概略図である。ラミネーションシステム614は、図1のラミネーションシステム114または別のラミネーションシステムであってよい。図6に示す特定の要素は、説明のためだけに誇張された縮尺で示されている。
【0085】
ラミネーションシステム614は、予熱された金属ストリップ604が通過し得る一対のローラ652を含み得る。ローラ652は、ゴムまたは金属(例えば、鋼)などの任意の適切な材料から構成されてよい。場合によっては、ローラ652のうちの一方(例えば、ポリマフィルム側のローラ)は、ゴムから構成され、ローラ652のうちの他方(例えば、反対側のローラ)は、鋼から構成される。予熱された金属ストリップ604は、例えば図1の予熱炉112によって予熱された金属ストリップ602を含み得る。場合によっては、予熱された金属ストリップ604は、1つまたは複数の変換層603を含む。
【0086】
ローラ652を通過する際に、ポリマフィルム624を予熱された金属ストリップ604に押し付けて、ラミネート金属ストリップ606を製造することができる。場合によっては、単一のラミネーションシステム614は、予熱された金属ストリップ604のポリマフィルム624とは反対側に第2のポリマフィルムを塗布するための付加的なローラのセットを含み得る。場合によっては、ローラ652は、付加的に、予熱された金属ストリップ604のポリマフィルム624とは反対側に第2のポリマフィルムを塗布することができる。
【0087】
缶蓋材の特性
上記のように、本開示の缶蓋材、例えば上記の工程に従って製造された缶蓋材は、有利には多くの改善された特性を示す。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示の缶蓋材は低ヘアリングを示す。上記で定義したように、ヘアリングとは、飲料缶を開ける際に生じる開口部などの金属の破断部において特に、金属ストリップ上の保護層(例えば、ポリマフィルム)に目に見える毛髪状の変形を形成することを指す。本開示の缶蓋材を開発する際に、ヘアリングが特に問題であることが判明した。場合によっては、ヘアリングが目に見える場合があり、缶蓋材が見苦しくなり、商業的用途には不適切となる可能性がある。場合によっては、ヘアリングは、缶蓋材の腐食に寄与する可能性がある。早期試験(以下に詳述)では、外面にポリマフィルムを有する缶蓋材は、ヘアリングを示した。
【0089】
しかしながら、本開示の缶蓋材は、ヘアリングの問題を克服している。いくつかの実施形態では、この缶蓋材は大きな(例えば目に見える)ヘアリングを示さない。詳細には、着色(例えば、黒色または白色)ポリマフィルムを有する缶蓋材の実施形態は、ヘアリングに対して特に耐性であった。場合によっては、無色の(例えば、透明な)外側コーティングを含む缶蓋材は、缶を開ける時にスコア線領域においてヘアリングを示した。着色(例えば、黒色または白色)ポリマフィルムを含む実施形態は、非常に低減されたヘアリング傾向を示す。理論に拘束されるものではないが、ポリマフィルム中の着色剤(例えば、カーボンブラックまたは二酸化チタン)の粒子は、滑らかなフィルム破断を促進すると考えられる。
【0090】
いくつかの態様において、缶蓋材は、缶蓋製造工程中に低ヘアリングか、またはヘアリングが生じないことを示す。例えば、(例えばV字形での)スコア線のスタンピング中、従来の缶蓋は、特にヘアリングが生じやすい可能性がある。しかしながら、本開示の缶蓋材は、そのような工程中、低ヘアリングか、またはヘアリングが生じないことを示す。
【0091】
いくつかの態様において、缶蓋材は、開ける時、低ヘアリングか、またはヘアリングが生じないことを示す。ここで、初期状態、及び低温殺菌処理後の試験を行う。例えば、飲料缶を開ける時、従来の缶蓋は、特にヘアリングが生じやすい可能性がある。しかしながら、本開示の缶蓋材は、そのような工程中、低ヘアリングか、またはヘアリングを生じないことを示す。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示の缶蓋材は、改善された接着性を示す。場合によっては、例えば、本開示の缶蓋材は、3%酢酸試験において改善された結果を示す。本明細書で使用される場合、3%酢酸試験は、希釈された酸性媒質に対して約100°Cで30分間、コーティングの耐性を評価することを含み得る。この試験は、クロスハッチマークをサンプルに切断し、サンプルを3%酢酸溶液中に約100°Cで30分間置き、その後、サンプルを取り出して冷却することを含み得る。冷却後、各サンプルに追加の一連のクロスカットを行い、接着テープを酸浴前及び酸浴後のクロスハッチ領域の上に置き、約60°の角度で0.5~1秒で確実に除去する。(例えば層間剥離の存在及び強度に基づいた)試験の結果を使用して、所望の仕様を考慮して、金属ストリップが許容可能であるかまたは許容不能であるかを判断することができる。層間剥離の程度が観察され、層間剥離が起こる程度まで、1(最小限の層間剥離)~5のスケールで評価される。本明細書で使用される場合、サンプルは層間剥離が生じないか、または少ないことを示す場合、3%酢酸試験に合格する。
【0093】
従来の金属ストリップ(例えば、外表面に塗布されたラッカ層を有する金属ストリップ)は、3%酢酸試験では不十分なスコアを有することが多い。場合によっては、本明細書に開示されているアニーリングされたラミネート缶蓋材は、標準的なラッカ塗布された缶蓋材より3%の酢酸試験(例えば、層間剥離が無いかまたは少ない)でより好ましい結果を得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている缶蓋材は、層間剥離が少ない3%酢酸試験に合格する。場合によっては、本明細書に開示されるアニーリングされたラミネート缶蓋材は、層間剥離を伴わずに3%酢酸試験に合格する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示の缶蓋材はフェザリングの低下を示す。場合によっては、例えば、本開示の缶蓋材は、標準的なフェザリング試験において改善された結果を示す。本明細書で使用される場合、標準的なフェザリング試験は、缶蓋に対して行うことができ、缶蓋を約75°Cの脱イオン水の浴に30分間浸漬し、缶蓋を低温の脱イオン水ですすぎ、缶蓋を室温に戻し、次に直ちに缶蓋のタブを開けることを含み得る。スコアパネルまたは流出孔開口部でフェザリングを観察、測定することができる。場合によっては、フェザリング試験は、平坦な金属シート、例えば平坦な缶蓋材シートに対して行うことができる。このような場合、フェザリング試験は、サンプルを80°Cの脱塩水に40分間浸漬させた後、サンプルを室温まで冷却し、サンプルを切断することができ、金属ストリップは、切断部から離れる方向に引っ張ることによって分離することができる。いずれのフェザリング試験でも、フェザリング量を測定することができ、0.7mm未満の最大フェザリング量を示す缶蓋材が試験に合格するとされる。
【0095】
いくつかの例では、本明細書に記載されている缶蓋材は、標準的なフェザリング試験に合格する。いくつかの実施形態では、缶蓋材は、0.7mm未満、例えば、0.6mm未満、0.5mm未満、0.4mm未満、0.3mm未満または0.2mm未満の最大フェザリング量を示す。このフェザリング量は、開放された缶蓋の開口部に沿った特定の指示位置に位置し得る。フィルムのフェザリング量は、製品の切断、成形、及び打抜き工具の設計にも依存する。
【0096】
いくつかの実施形態では、本開示の缶蓋材は、改善された耐摩耗性を示す。場合によっては、例えば、缶蓋材は、2000サイクルの摩擦摩耗に曝された後、0.25%未満の重量低下を示す。例えば、0.2%未満、0.15%未満、0.14%未満、0.13%未満、0.12%未満、0.11%未満または0.1%未満の重量低下を示す。
【0097】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、発明のいかなる限定も構成しない。それどころか、当然ながら、様々な実施形態、変更、及びそれらの均等物に用いられてよく、本明細書を読むと、本発明の趣旨から逸脱することなく、それらが当業者へと示唆され得る。
【0098】
実施例1:缶蓋材
缶蓋材のいくつかのサンプルを、開示された方法に従って調製した。サンプルは、金属ストリップとしてゲージ0.208mmのAA5182アルミニウム合金を使用して調製した。試験した各サンプルを表1に示す。各サンプルを表1に示すように前処理し、缶蓋材を、ポリマフィルムを第1の側(外側)にラミネートし、第2の側(内側)にラッカ層を塗布し、アニーリング温度でアニーリングすることにより調製した。比較サンプル(A)も、AA5182アルミニウム合金を使用するが、ラッカ層を第1の側(外側)に塗布し、ポリマフィルムを第2の側(内側)にラミネートし、アニーリング温度でアニーリングすることによって調製した。

【表1】
【0099】
上記のサンプルの缶蓋材の性能を評価するために、様々な試験を実施した。接着性を評価するために、各サンプルを、上記の3%酢酸試験に従って試験した。層間剥離が観察される程度まで、1(最小限の層間剥離)から5までのスケールで評価した。1の評価は、層間剥離が観察されなかったことを示す。2の評価は、層間剥離領域がサンプルの5%未満であったことを示す。評価3は、層間剥離領域がサンプルの5%~15%であったことを示す。4の評価は、層間剥離領域がサンプルの15%を超えたことを示す。5の評価は、サンプルが完全に層間剥離したことを示す。1または2の評価を合格とみなし、3の評価を境界線とし、4または5の評価を不合格とみなす。この試験結果を表2に示す。
【0100】
フェザリングを評価するために、上記試験を、サンプルを80°Cの脱塩水に40分間浸漬することにより行った。例示的な缶蓋材からのサンプルを、低温殺菌前及び後に試験した。0.7mm未満の最大フェザリングは合格とみなし、0.7~0.8mmの最大フェザリングは境界線とみなし、0.8mmを超える最大フェザリングは不合格とみなす。この試験の結果も表2に示す。
【0101】
ヘアリングを評価するために、缶蓋材は、シーミング及び/または開放時に、目に見えるヘアリングを観察した。各サンプルには1~3のランクが割り当てられた。1の評価は、ヘアリングは視認できず、合格と見なされることを示す。2の評価は、小さなヘアリングが視認され、境界線と見なされることを示す。3の評価は、長いヘアリングが視認され、失敗とみなされることを示す。これらの試験の結果は、表3に示す。
【表2】
【0102】
試験したサンプル(サンプル1~9)は、優れた付着性、フェザリングを生じにくいこと、及び目に見えるヘアリングが無いことを示した。
【0103】
耐摩耗性を評価するために、Taber Indus(ニューヨーク州ドナウォンダ)製Taber Abraserを使用して各サンプルを試験した。2つの研磨ホイールを用いてサンプルに摩擦摩耗を施した。試験サンプルを、穿孔を用いて10×10cmに切断してサンプルを機械に固定し、Taber Abraserの2000サイクルに曝した。試験前後の重量を測定し、重量損失率を測定した。いくつかの例示的な缶蓋材から3つのサンプルを試験し、平均重量損失を表3に報告する。
【表3】
【0104】
試験したサンプル(サンプル5及び7)は、比較サンプル(サンプルA及びB)と比較して特に、摩耗に対して高い耐性を示した。
【0105】
実施形態
以下で使用されている場合、一連の実施形態への参照はいずれも、それらの各実施形態を選言的に参照するものとして理解されたい(例えば、「実施形態1~4」は「実施形態1、2、3、または4」として理解されたい)。
【0106】
実施形態1は、缶蓋材を調製するための工程であって、金属ストリップを250℃未満の第1の温度に予熱することと、前記金属ストリップの第1の側にポリマフィルムをラミネートしてラミネート金属ストリップを作成することであって、前記金属ストリップの前記第1の側は前記金属ストリップから形成された缶蓋の外向き側に対応する、前記ラミネート金属ストリップを作成することと、前記ラミネート金属ストリップを、175℃より高いアニーリング温度でアニーリングすることとを含む。
【0107】
実施形態2は、前記金属ストリップがアルミニウムストリップである、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0108】
実施形態3は、前記ポリマフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムを含む、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0109】
実施形態4は、前記金属ストリップに接着コーティングを塗布することをさらに含み、前記ポリマフィルムを前記金属ストリップの前記第1の側にラミネートすることは、前記ポリマフィルムを前記接着コーティングにラミネートすることを含む、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0110】
実施形態5は、前記ポリマフィルムが着色剤を含む、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0111】
実施形態6は、前記着色剤が、カーボンブラック及び二酸化チタンからなる群から選択される、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0112】
実施形態7は、前記金属ストリップの第2の側にラッカ層を塗布することをさらに含み、前記金属ストリップの前記第2の側は、前記金属ストリップから形成された缶蓋の内向き側に対応する、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0113】
実施形態8は、前記ラッカがエポキシ系溶液、ポリエステル溶液、またはそれらの組み合わせを含む、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0114】
実施形態9は、前記アニーリング温度が225°Cより高い、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0115】
実施形態10は、前記アニーリング温度が300°C未満である、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0116】
実施形態11は、前記ラミネート金属ストリップをアニーリングした後、前記ラミネート金属ストリップを冷却することをさらに含む、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0117】
実施形態12は、前記ラミネート金属ストリップをアニーリングした後、前記ラミネート金属ストリップに潤滑剤を塗布することをさらに含む、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の工程である。
【0118】
実施形態13は、いずれかの先行実施形態に記載の工程に従って調製された缶蓋材製品である。
【0119】
実施形態14は、前記金属ストリップの前記第1の側が、前記缶蓋材製品の外向き側に対応する、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の缶蓋材製品である。
【0120】
実施形態15は、前記ポリマフィルムが150μm未満の厚さを有する、いずれかの先行または後続の実施形態に記載の缶蓋材製品である。
【0121】
実施形態16は、本体部品とエンドキャップとを含む飲料缶であって、前記エンドキャップは、いずれかの先行実施形態に記載の工程に従って調製された缶蓋材から形成される。
【0122】
実施形態17は、金属ストリップを受け入れ、前記金属ストリップを予熱温度まで予熱するための予熱炉と、前記予熱温度で前記金属ストリップを受け入れ、前記金属ストリップの第1の側にポリマフィルムを塗布するために、前記予熱炉の下流に配置されたラミネーションシステムであって、前記金属ストリップの前記第1の側は前記金属ストリップから形成された缶蓋の外向き側に対応する、前記ラミネーションシステムと、ラミネート金属ストリップを受け入れ、前記ラミネート金属ストリップを200℃より高いアニーリング温度で加熱するために前記ラミネーションシステムの下流に配置されたアニーリング炉とを備えるシステムである。
【0123】
実施形態18は、前記金属ストリップが、アルミニウム合金である、いずれかの先行または後続の実施形態に記載のシステムである。
【0124】
実施形態19は、前記金属ストリップに接着コーティングを塗布するための接着コーティング塗布システムをさらに備え、前記ラミネーションシステムは、前記ポリマフィルムを前記接着コーティングに塗布するように構成される、いずれかの先行または後続の実施形態に記載のシステムである。
【0125】
実施形態20は、前記ラミネーションシステムがポリエチレンテレフタレートフィルムの供給部に結合される、いずれかの先行または後続の実施形態に記載のシステムである。
【0126】
実施形態21は、ラッカ層を前記金属ストリップの第2の側に塗布するためのラッカ塗布システムをさらに備える、いずれかの先行または後続の実施形態に記載のシステムである。
【0127】
実施形態22は、前記アニーリング温度が225°Cより高い、いずれかの先行または後続の実施形態に記載のシステムである。
【0128】
実施形態23は、前記アニーリング温度が300°C未満である、いずれかの先行または後続の実施形態に記載のシステムである。
図1
図2
図3A-3D】
図4
図5
図6
【国際調査報告】